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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1342870
審判番号 不服2017-16494  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-06 
確定日 2018-08-28 
事件の表示 特願2015-245015「照明電力および制御システムに関するシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年6月16日出願公開、特開2016-106397、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
この審判事件に関する出願(以下、「本願」という。)は、平成22年12月8日にされた国際特許出願(特願2012-536797)の一部を平成27年12月16日に新たな特許出願としたものである。そして、平成29年6月13日に特許請求の範囲についての補正がされ、同30日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、同年7月4日に査定の謄本が送達された。
これに対して、同年11月6日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に特許請求の範囲についての補正(以下、「本件補正」という。)がされた。

第2 本件補正の却下の決定
[結論]
本件補正を却下する。

[理由]
本件補正は、以下に述べるとおり、特許法第17条の2第5項第1号ないし第4号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもない。
したがって、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下するべきものである。

1 本件補正の内容
本件補正前(平成29年6月13日にされた補正の後をいう。以下同じ。)及び本件補正後の特許請求の範囲の記載は、以下のとおりである。

(1)本件補正前
「【請求項1】
デジタル式に制御される直列構成のシステムであって、前記デジタル式に制御される直列構成のシステムは、
定格電流レベルを有する電力を供給する電源と、
ラインドライバ回路であって、前記ラインドライバ回路は前記電源から電力を受信し、前記ラインドライバ回路はコントローラシステムから制御データを受信し、前記ラインドライバ回路は電流で出力ラインを駆動し、前記ラインドライバ回路は前記制御データを前記電流で変調する、ラインドライバ回路と、
前記出力ラインに直列構成で接続される2つ以上の制御されるユニットであって、前記制御されるユニットは分路を使用して前記出力ライン上の前記電流から動作電力を取り込み、前記制御されるユニットはそれぞれ前記出力ラインから前記制御データを復調し、前記制御されるユニットはそれぞれ前記制御データを使用し、前記制御されるユニットに接続される少なくとも1つのローカル回路を制御する、制御されるユニットと、
を備える構成において、
前記ラインドライバ回路は、少なくとも電流の下降ランプを使用して前記電流で前記制御データを変調し、下降ランプは、電流の挙動モデルから予測した下降傾斜に基づいて決定される時間で開始し、電流レベルがデータ周期の中央で前記定格電流レベルと交わるように設定されるデジタル式に制御される直列構成のシステム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのローカル回路は、発光ダイオードのドライバ回路を備える、請求項1に記載のデジタル式に制御される直列構成のシステム。
【請求項3】
前記制御されるユニットはそれぞれ、互いに接近して構成した複数の照明デバイスに接続され、前記複数の照明デバイスから出力される様々な色を組み合わせて、幅広い色のスペクトルを生成することができる、請求項1に記載のデジタル式に制御される直列構成のシステム。
【請求項4】
前記制御されるユニットは、ローカルコンデンサを充電することにより前記出力ライン上の前記電流からの動作電力を前記ローカルコンデンサへ向け、前記ローカルコンデンサに十分な電力が存在する場合は前記ローカルコンデンサに係る前記電流を前記出力ラインへ分路して戻す、請求項1に記載のデジタル式に制御される直列構成のシステム。
【請求項5】
前記制御されるユニットは、前記出力ライン上の前記電流を基準電流として使用する、請求項1に記載のデジタル式に制御される直列構成のシステム。
【請求項6】
前記制御されるユニットは、前記出力ラインをヒートシンクとして使用する、請求項1に記載のデジタル式に制御される直列構成のシステム。
【請求項7】
直列構成のドライバラインに接続される2つ以上の電子ユニットを給電し、制御する方法であって、前記方法は、
電源から電力を受信することと、
コントローラシステムからデジタル制御データを受信することと、
定格電流レベルを有するDC電流で前記ドライバラインを駆動することと、
前記DC電流で前記デジタル制御データを変調し、所定の時間内における前記定格電流レベルからの電流降下である電流ディップを用い、前記デジタル制御データにおけるデータビット周期の前半または後半のいずれかで電流のディップを発生させることによってデータを変調することと、
出力ラインに接続される電子ユニット内の前記出力ライン上の前記DC電流から動作電力を取り込むために分路を停止することと、
前記出力ライン上の前記DC電流から前記デジタル制御データを復調することと、
前記出力ライン上の前記DC電流から復調した前記デジタル制御データを使用し、前記電子ユニットに接続された少なくとも1つのローカル回路を制御することと、
を含む、方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのローカル回路は発光ダイオードを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記DC電流で前記デジタル制御データを変調することは、前記定格電流レベル近傍で電流を増減させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記出力ラインに接続する前記電子ユニットは、複数の点灯デバイスから発信される様々な色を組み合わせて幅広い色のスペクトルを生成することができるように、互いに接近して構成した前記複数の点灯デバイスを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記出力ラインに接続する前記電子ユニットは、前記DC電流をローカルコンデンサに向けて流し、前記ローカルコンデンサが十分に充電されると前記DC電流を分路して前記出力ラインに再び電流を流すことによって、前記DC電流から動作電力を取り込む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記電子ユニットは、前記出力ライン上の前記DC電流を基準電流として使用する、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記電子ユニットは、前記出力ラインをヒートシンクとして使用する、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記2つ以上の電子ユニットはそれぞれ独自のアドレスを有する、請求項7に記載の方法。」

(2)本件補正後
「【請求項1】
単一の導体ラインに直列で接続された2つのみの外部電気接続を有する電子回路ノードであって、
ローカル電力供給を蓄えるためのローカルコンデンサと、
入力ポート及び出力ポートを有する前記単一の導体ラインに前記直列で接続され、前記集積回路は、前記入力ポートで受信した電流を前記ローカルコンデンサに周期的に向けて前記ローカル電源を生成し、前記集積回路は、前記入力ポートで受信した電流を前記ローカルコンデンサに向けていない場合は、前記入力ポートからの前記電流を前記出力ポートに分路する集積回路と、
前記集積回路に接続され、前記ローカル電源を使用して動作する少なくとも1つの印加回路と、を備える
ことを特徴とする電子回路ノード。
【請求項2】
前記少なくとも1つの印加回路は、発光ダイオード(LED)を含む、請求項1に記載の電子回路ノード。
【請求項3】
前記集積回路は、データ抽出サブ回路であって、前記電流に上乗せして変調された制御データを復調するためのデータ抽出サブ回路を備える、請求項1に記載の電子回路ノード。
【請求項4】
前記データ抽出サブ回路は、前記電流における定格定電流レベルからの電流偏差を検出することにより前記制御データを復調する、請求項3に記載の電子回路ノード。
【請求項5】
前記集積回路は、前記制御データを使用して前記少なくとも1つの印加回路を制御する、請求項3に記載の電子回路ノード。
【請求項6】
前記単一の出力ポートは、前記電子回路ノードのローカル接地として機能する、請求項1に記載の電子回路ノード。
【請求項7】
前記入力ポートは、上流側の電子回路ノードの上流側の出力ポートに接続されている、請求項1に記載の電子回路ノード。
【請求項8】
2つのみの外部電気接続を備える電子回路ノード上の印加回路を駆動する方法であって、前記方法は、
単一の入力ラインで受信した直流をローカルコンデンサに周期的に向けてローカル電源を生成することと、
前記直流を前記ローカルコンデンサに向けていない場合は、前記単一の入力ラインで受信した前記直流を単一の出力ラインに分路することと、
前記ローカルコンデンサ内に蓄えられた前記ローカル電源を使用して前記出力回路を駆動することと、を含む
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
前記印加回路を駆動することは、発光ダイオード(LED)を駆動することを含む、請求項8に記載の前記電子回路ノード上の前記印加回路を駆動する方法。
【請求項10】
前記方法は、前記直流に上乗せして変調された制御データを復調することを更に含む、請求項8に記載の前記電子回路ノード上の前記印加回路を駆動する方法。
【請求項11】
制御データを復調することは、前記直流における電流偏差のパターンを検出することを含む、請求項10に記載の前記電子回路ノード上の前記印加回路を駆動する方法。
【請求項12】
前記単一の出力ラインは、前記電子回路ノードのローカル接地として機能する、請求項8に記載の前記電子回路ノード上の前記印加回路を駆動する方法。
【請求項13】
前記単一の入力ラインは、上流側の電子回路ノードの上流側の単一の出力ラインに接続されている、請求項8に記載の前記電子回路ノード上の前記印加回路を駆動する方法。
【請求項14】
複数の印加回路を駆動するための単一の導体の電子回路ループであって、
ループ回路上で直流を駆動する電流発生器と、
前記ループ回路に直列で接続され、2つのみの外部電気接続を有する複数の個々の回路ノードとを備え、
前記個々の電子回路ノードのそれぞれは、
ローカル電源を蓄えるためのローカルコンデンサと、
入力ポート及び出力ポートを有する前記単一の導体の電子回路ループに前記直列で接続され、前記集積回路は、前記入力ポートで受信した前記直流を前記ローカルコンデンサに周期的に向けて前記ローカル電源を生成し、前記集積回路は、前記入力ポートで受信した前記直流を前記ローカルコンデンサに向けていない場合は、前記入力ポートからの前記直流を前記出力ポートに分路する集積回路と、
前記集積回路に接続され、前記ローカル電源を使用して動作する少なくとも1つの印加回路と、を備える
ことを特徴とする単一の導体の電子回路ループ。
【請求項15】
前記印加回路は、発光ダイオードを含む、請求項14に記載の単一の導体の電子回路ループ。
【請求項16】
前記集積回路は、前記ループ回路上の前記直流に上乗せして変調された制御データを復調するためのデータ抽出サブ回路を備える、請求項14に記載の単一の導体の電子回路ループ。
【請求項17】
前記データ抽出サブ回路は、前記直流における定格電流レベルからの電流偏差を検出することにより前記制御データを復調する、請求項16に記載の単一の導体の電子回路ループ。
【請求項18】
前記集積回路は、前記制御データを使用して前記少なくとも1つの印加回路を制御する、請求項16に記載の単一の導体の電子回路ループ。
【請求項19】
前記出力ポートは、前記個々の回路ノードのローカル接地として機能する、請求項14に記載の単一の導体の電子回路ループ。
【請求項20】
前記入力ポートは、上流側の電子回路ノードの上流側の出力ポートに接続されている、請求項14に記載の単一の導体の電子回路ループ。」

2 本件補正の適否の判断
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項14に記載された事項によって特定される発明は、「デジタル式に制御される直列構成のシステム」の発明(請求項1ないし請求項6)及び「直列構成のドライバラインに接続される2つ以上の電子ユニットを給電し、制御する方法」の発明(請求項7ないし請求項14)である。
これに対し、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項20に記載された事項によって特定される発明は、「単一の導体ラインに直列で接続された2つのみの外部電気接続を有する電子回路ノード」の発明(請求項1ないし請求項7)、「2つのみの外部電気接続を備える電子回路ノード上の印加回路を駆動する方法」の発明(請求項8ないし請求項13)及び「複数の印加回路を駆動するための単一の導体の電子回路ループ」の発明(請求項14ないし請求項20)である。
そうすると、本件補正後の特許請求の範囲の各請求項に記載された事項によって特定される発明は、本件補正前の特許請求の範囲の各請求項に記載された事項によって特定される発明のいずれにも対応していない。
したがって、本件補正は、請求項の削除、特許請求の範囲の限定的減縮、誤記の訂正及び明瞭でない記載の釈明のいずれを目的とするものでもないことが明らかである。

3 本件補正の却下の決定のむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号ないし第4号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもない。
したがって、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下するべきものである。

第3 本願に係る発明について
1 本願に係る発明
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし請求項14に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明14」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項14に記載された事項によって特定される前記第2の1(1)のとおりのものである。
なお、本願発明2ないし本願発明6は、本願発明1の構成を全て含み、本願発明8ないし本願発明14は、本願発明7の構成を全て含む。

2 原査定の概要
本願発明7ないし本願発明12及び本願発明14は、後記の引用文献1、引用文献2、引用文献4及び引用文献5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本願発明13は、後記の引用文献1ないし引用文献5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願発明7ないし本願発明14は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特表2009-503778号公報
引用文献2:国際公開第2010/055456号
引用文献3:特開2000-68426号公報
引用文献4:特開2010-122945号公報
引用文献5:特開平9-64796号公報

3 引用文献に記載された発明等
(1)引用文献1
ア 引用文献1の記載
引用文献1には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光源を制御するための照明システム及び方法に関する。」

「【0006】
本発明によれば、照明システムは、電流源およびシステム制御ユニットを備えている。これらは別個のユニットでもよいが、好ましくは1つの装置に一体化されていてもよい。電流源および制御ユニットは、変調されたコマンドデータを有する電流を一緒に供給する。電流は交流でもよいが、好ましくは直流である。電流は、好ましくは実質的に一定であり、例外的に変調されたものである。変調コマンドデータは、システム制御ユニットから複数の照明ユニットに向けられたコマンド情報であり、変調形式で与えられる。本文脈での変調は、情報を運ぶために時間と共に搬送波(供給電流)が変化する任意のタイプのものと理解される。直流の場合、変調はパルス変調、すなわち、異なる電流値(例えば、公称値の100%/50%)の間で、電流を連続的に又は交互にオンとオフに変化させることを含んでいてもよい。改変例では、特に電流値のより高度な変調方法、交流の場合では周波数又は位相のより高度な変調方法を採用してもよい。
【0007】
本発明による照明システムは、さらに、各々少なくとも1つの光源(好ましくはLED)を有している複数の照明ユニットを備えている。これら照明ユニットは、電源に直列接続されている。本文脈では、これは、これらユニットが電源にすべてが直接的に電源に接続されず、順々に接続されていることを意味していると理解される。作動中、(後述するように、ある照明ユニットが他の照明ユニットをショートカットする作動モードを除いて)供給電流は各照明ユニットを通り、これにより、各照明ユニットでの電流は実質的に等しい。
【0008】
各照明ユニットにおいて、供給電流は光源を駆動することができる。光源の作動を制御するため、本発明による制御可能なバイパス手段があり、これは光源を選択的にバイパスすることを許容する。バイパス手段は、照明ユニット内で制御ユニットにより制御される。制御ユニットは、変調コマンドデータを受取り、それにしたがいバイパス手段を制御する。このようにして、システム制御ユニットは、変調コマンドデータのようなコマンドを供給し、適切な照明ユニットの制御ユニットが、光源を供給電流により作動させるか又はバイパスさせるコマンドを実行する。」

「【0027】
図1は、電流源12と複数の照明ユニット4,6,8を備えた照明システム10を示している。電流源12は、出力電流Iが送り出される電流出力を有している。他端子には、戻り電流I_(back)が戻っており、これは一般的にIと等しい。
【0028】
各照明ユニット4,6,8は、3つの端子を有しており、第1の端子は入力電流I_(in)を受入れ、第2の端子は順方向出力電流I_(fwd)を送り出し、第3の端子はショートカット出力電流I_(sc)を送り出す。照明ユニット(4,6,8)は、直列配線接続で電流源12に接続されている。列の第1のLEDユニット4は、電流源12から電流Iが供給される。次の照明ユニット6は、先行する照明ユニット4の順方向出力電流I_(fwd)が供給され、以下同様である。全てのショートカット電流出力端子は、電流源12の第2端子に接続され、I_(back)を送り出す。」

「【0030】
図2は、電流源12をより詳細に示している。電流源は、定電流Iを送り出す定電流源14を備えている。図示する本実施形態では、電流源14は直流を送り出す。さらに、電流源は、読取り書込みメモリ18にアクセスする、システム制御ユニットとして機能する電流源コントローラ16を備えている。電流源コントローラ16は、好ましい実施形態で変調スイッチ20として示されている変調装置を制御する。電流源コントローラ16により制御される変調スイッチ20は連続的に開閉されるので、電流源12により送り出される電流Iは変調される。オン/オフ変調の代わりに、当業者に知られているように、他のより高度な変調形式が可能である。
【0031】
電流源12は、本文脈では「インテリジェント」電流源の意味であり、以下の記載で明らかとなるように、実質的に定電流I(変調を除いて一定振幅)を送り出すだけでなく、照明ユニット4,6,8を制御するための変調データを送り出す。
【0032】
図3は、3つの端子I_(in),I_(fwd),I_(sc)を有する照明ユニット4,6,8の1つを示している。各照明ユニットは、I_(in)に接続されたLED光源22を備えている。バイパススイッチ24(例えば、トランジスタ)が、LED22と並列に接続されている。バイパススイッチ24が閉じると、LED22は入力電流I_(in)がバイパスされるので、LED22は作動しない。バイパススイッチ24が開くと、LED22は通過して流れる電流I_(in)により作動する。
【0033】
さらに、照明ユニット4,6,8は、制御ユニット26と電力変換装置28を備えている。電力変換装置28は、入力電流I_(in)に直列接続に接続され、(例えば、低インピーダンス抵抗器を介して)通過して流れる電流から制御ユニット26のための作動電圧(接地に対する電圧として記号で図示)を生成する。制御ユニット26のために必要なエネルギーは、光源を作動させるための電力よりも数桁大きさが小さい。作動電圧は(例えば、大容量キャパシタで)バッファ/格納/蓄積されて、電流Iがオフに転じてもしばらくの間、制御ユニット26が作動できることが好ましい。」

【図1】


【図2】


【図3】


イ 引用文献1に記載された発明
引用文献1の前記アの記載によれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「複数の光源を制御する方法であって
電流源およびシステム制御ユニットは、変調されたコマンドデータを有する電流を一緒に供給し、
電流は、直流であり、実質的に一定であり、例外的に変調されたものであり、
変調コマンドデータは、システム制御ユニットから複数の照明ユニットに向けられたコマンド情報であり、変調形式で与えられ、
変調は、情報を運ぶために時間と共に搬送波(供給電流)が変化する任意のタイプのものであり、パルス変調、すなわち、異なる電流値(例えば、公称値の100%/50%)の間で、電流を連続的に又は交互にオンとオフに変化させることを含んでいてもよく、電流値のより高度な変調方法を採用してもよく、
複数の照明ユニットは、電流源に直列接続されており、作動中、供給電流は各照明ユニットを通り、これにより、各照明ユニットでの電流は実質的に等しく、
各照明ユニットにおいて、供給電流は光源を駆動することができ、光源の作動を制御するため、制御可能なバイパス手段があり、これは光源を選択的にバイパスすることを許容し、バイパス手段は、照明ユニット内で制御ユニットにより制御され、
照明ユニットの制御ユニットは、変調コマンドデータを受取り、それにしたがいバイパス手段を制御し、光源を供給電流により作動させるか又はバイパスさせるコマンドを実行し、
各照明ユニットは、制御ユニットと電力変換装置を備えており、
電力変換装置は、入力電流に直列接続に接続され、(例えば、低インピーダンス抵抗器を介して)通過して流れる電流から制御ユニットのための作動電圧を生成し、
作動電圧は(例えば、大容量キャパシタで)バッファ/格納/蓄積されて、電流がオフに転じてもしばらくの間、制御ユニットが作動できる方法。」

(2)引用文献2
ア 引用文献2の記載
引用文献2には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。原文の引用の後に記載した日本語訳は、引用文献2に対応する公表特許公報(特表2012-508962号公報)の記載に基づいて当合議体が作成した。

(ア)(要約)
「Abstract: A lighting system (1) comprises a power unit (20) for
producing data- modulated current, and a light unit (10) receiving
this current at its input and output terminals (11, 12). The light
unit comprises two or more light modules (100A; 100B; 100C)
connected in series. Each light module comprises: a LED string (110)
of one or more LEDs (111, 112, 113) connected between module input
and output terminals (101, 102), each LED having an associated
controllable shunt switch (121, 122, 123) connected in parallel
thereto; - a module controller (190) for controlling the shunt
switches, the module controller (190) having a input terminals
(191, 192) connected to said module input and output terminals,
respectively. The module controller demodulates the data and
controls the switches on the basis of an action command contained
therein, if an address information contained therein matches the
unique controller address.」
「要約:照明システム(1)は、データ変調された電流を生成するための電力ユニット(20)と、入力及び出力端子(11、12)でこの電流を受信するライトユニット(10)とを有する。ライトユニットは、直列に接続された2つ又はそれより多くのライトモジュール(100A、100B、100C)を有する。各ライトモジュールは、モジュールの入力及び出力端子(101、102)の間に接続された1つ又はそれより多くのLED(111、112、113)のLEDストリング(110)を有し、各LEDは、該LEDと並列に接続された関連付けられた制御可能な短絡スイッチ(121、122、123)をもち、各ライトモジュールは、短絡スイッチを制御するためのモジュールコントローラ(190)を有し、モジュールコントローラ(190)は、前記モジュールの入力及び出力端子にそれぞれ接続された入力端子(191、192)をもつ。モジュールコントローラは、データを復調し、このデータに含まれたアドレス情報が固有のコントローラアドレスに適合する場合には、このデータに含まれたアクションコマンドに基づいてスイッチを制御する。」

(イ)(第4ページ第25行ないし第5ページ第5行)
「The module controller 190 has a first input terminal 191 connected
to the module input terminal 101 and a second input terminal 192
connected to the module output terminal 102. A one-way conductive
element 181, for instance comprising one or more diodes in series,
assures polarity at said input terminals 191, 192. In view of the
voltage drop developing over the LEDs 111, 112, 113, the module
controller 190 receives a supply voltage.
Preferably, the module controller 190 is provided with an energy
buffer 182, for instance a capacitor, parallel to its input
terminals 191, 192.
If all switches 131, 132, 133 are closed, it may be that the
voltage drop over the module input and output terminals 101, 102 is
too low for being able to supply the module controller 190,
particularly in view of the fact that the one-way conductive element
181 develops a voltage drop when conducting. This can be solved if
the controller 190 is provided with a controllable switch bridging
the one-way conductive element 181, so that the controller 190 can
regularly short the element 181 briefly to obtain a charge current
pulse. This is, however, not illustrated as it does not relate to
the controlling of the LEDs.」
「モジュールコントローラ190は、モジュール入力端子101に接続された第1の入力端子191と、モジュール出力端子102に接続された第2の入力端子192とをもつ。例えば直列の1又はそれ以上のダイオードを有する一方向導通要素181は、入力端子191、192での極性を保証する。LED111、112、113間で生じる電圧降下の観点において、モジュールコントローラ190は、供給電圧を受信する。
好ましくは、モジュールコントローラ190は、その入力端子191、192と並列に、エネルギバッファ182、例えばキャパシタを備えている。
全てのスイッチ131、132、133が閉にされた場合には、モジュールの入力及び出力端子101、102間の電圧降下は、詳細には一方向導通要素181が導通時に電圧降下をもたらすという事実を考慮して、モジュールコントローラ190に供給可能にするには低過ぎるかもしれない。これは、コントローラ190が、一方向導通要素181をブリッジングする制御可能なスイッチを備える場合に解決され、従って、コントローラ190は、チャージ電流パルスを得るために要素181を一時的に一定間隔で短絡することができる。しかしながら、これは、LEDの制御に関連しないので示されていない。」

(ウ)(図1)


(エ)(図2)


イ 引用文献2に記載された技術事項
引用文献2の前記アの記載によれば、引用文献2には、以下の技術事項が記載されている。

「データ変調された電流を生成するための電力ユニット20と、直列に接続された2つ以上のライトモジュール100A、100B、100Cを有するライトユニット10とを有する照明システム1であって、
各ライトモジュールは、その入力端子101及び出力端子102の間に接続された1つ以上のLED111、112、113と、モジュールコントローラ190とを有し、
各LEDは、該LEDと並列に接続された関連付けられた制御可能な短絡スイッチ121、122、123をもち、
モジュールコントローラ190は、データを復調し、このデータに含まれたアクションコマンドに基づいて短絡スイッチ121、122、123を制御し、
モジュールコントローラ190は、ライトモジュールの入力端子101に接続された第1の入力端子191と、ライトモジュールの出力端子102に接続された第2の入力端子192とをもち、
モジュールコントローラ190の第1の入力端子191と第2の入力端子192での極性を保証する、例えば直列の1つ以上のダイオードを有する一方向性導通要素181があり、
モジュールコントローラ190は、その第1の入力端子191及び第2の入力端子192と並列に、例えばキャパシタであるエネルギバッファ182を備える照明システム1において、
モジュールコントローラ190は、チャージ電流パルスを得るために一方向性導通要素181を一時的に一定間隔で短絡する。」

(3)引用文献3
引用文献3の【0028】及び【0033】の記載によれば、引用文献3には、ダイオードチップに電流が流れることにより発生した損失熱を電力線へ放熱するという技術事項が記載されている。

(4)引用文献4
引用文献4の【0003】ないし【0005】、【0040】、【0055】、図3及び図8の記載によれば、引用文献4には、信号の符号化にモディファイ・ミラー符号を用いるという技術事項が記載されている。

(5)引用文献5
引用文献5の【0045】、【0046】及び図5の記載によれば、引用文献5には、通信方式の通信波形として、マンチェスタコードを使用するという技術事項が記載されている。

4 対比・判断
(1)本願発明7について
ア 対比
本願発明7と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。

(ア)引用発明の「照明ユニット」は、本願発明7の「電子ユニット」に相当し、引用発明の「複数の照明ユニット」は、本願発明7の「2つ以上の電子ユニット」に相当する。

(イ)引用発明の「電流源」は、本願発明7の「電源」に相当する。

(ウ)引用発明の「複数の照明ユニット」は、「電流源に直列接続されており、作動中、供給電流は各照明ユニットを通り、これにより、各照明ユニットでの電流は実質的に等しく」なっているから、本願発明7の「直列構成のドライバラインに接続される2つ以上の電子ユニット」に相当する。

(エ)引用発明の「複数の照明ユニット」は、「電流源に直列接続されて」いる以上、給電されていることが明らかであるから、引用発明の「複数の光源を制御する方法」は、本願発明7の「直列構成のドライバラインに接続される2つ以上の電子ユニットを給電」「する方法」に相当し、また、本願発明7の「電源から電力を受信すること」に相当することを含むものと認められる。

(オ)引用発明の「複数の照明ユニット」は、「照明ユニットの制御ユニット」が「変調コマンドデータを受取り、それにしたがいバイパス手段を制御し、光源を供給電流により作動させるか又はバイパスさせるコマンドを実行」するから、引用発明の「複数の光源を制御する方法」は、「直列構成のドライバラインに接続される2つ以上の電子ユニットを」「制御する方法」にも相当する。

(カ)引用発明の「電流」は、「直流であり、実質的に一定であり、例外的に変調されたものであ」るから、本願発明7の「定格電流レベルを有するDC電流」に相当し、引用発明の「電流源およびシステム制御ユニット」は、「変調されたコマンドデータを有する電流を一緒に供給」するから、引用発明の「複数の光源を制御する方法」は、本願発明7の「定格電流レベルを有するDC電流で前記ドライバラインを駆動すること」に相当することを含むものと認められる。

(キ)引用発明の「コマンドデータ」は、本願発明7の「デジタル制御データ」に相当する。そして、引用発明の「電流源およびシステム制御ユニット」は、「変調されたコマンドデータを有する電流を一緒に供給」し、「変調コマンドデータは、」「変調形式で与えられ」るから、引用発明の「コマンドデータ」の「変調」は、本願発明7の「デジタル制御データ」の「変調」に相当し、したがって、引用発明の「複数の光源を制御する方法」は、本願発明7の「前記DC電流で前記デジタル制御データを変調し、」「データを変調すること」に相当することを含むものと認められる。

(ク)引用発明の「照明ユニットの制御ユニット」は、「変調コマンドデータを受取り、それにしたがいバイパス手段を制御」するものであり、ここで、「変調コマンドデータ」は、「電流源およびシステム制御ユニット」が「変調されたコマンドデータを有する電流」として「一緒に供給」したものであるから、引用発明の「複数の光源を制御する方法」は、本願発明7の「前記出力ライン上の前記DC電流から前記デジタル制御データを復調すること」に相当することを含むものと認められる。

(ケ)引用発明は、「各照明ユニットにおいて、供給電流は光源を駆動することができ、光源の作動を制御するため、制御可能なバイパス手段があり、これは光源を選択的にバイパスすることを許容し、バイパス手段は、照明ユニット内で制御ユニットにより制御され」るから、引用発明の「照明ユニット」は、「光源」及び「バイパス手段」を含み、そして、引用発明の「光源」及び「バイパス手段」は、本願発明7の「少なくとも1つのローカル回路」に相当する。

(コ)引用発明の「照明ユニットの制御ユニット」は、「変調コマンドデータを受取り、それにしたがいバイパス手段を制御し、光源を供給電流により作動させるか又はバイパスさせるコマンドを実行」するから、本願発明7の「前記出力ライン上の前記DC電流から復調した前記デジタル制御データを使用し、」「少なくとも1つのローカル回路を制御すること」に相当することを含むものと認められる。

イ 一致点及び相違点
前記アの対比の結果をまとめると、本願発明7と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(ア)一致点
「直列構成のドライバラインに接続される2つ以上の電子ユニットを給電し、制御する方法であって、前記方法は、
電源から電力を受信することと、
定格電流レベルを有するDC電流で前記ドライバラインを駆動することと、
前記DC電流で前記デジタル制御データを変調し、データを変調することと、
前記出力ライン上の前記DC電流から前記デジタル制御データを復調することと、
前記出力ライン上の前記DC電流から復調した前記デジタル制御データを使用し、少なくとも1つのローカル回路を制御することと、
を含む、方法。」

(イ)相違点
a 相違点1
本願発明7は、「コントローラシステムからデジタル制御データを受信すること」を含むのに対し、
引用発明は、「コマンドデータ」(本願発明7の「デジタル制御データ」に相当する。)をどこから得るかが不明な点。

b 相違点2
本願発明7は、「デジタル制御データ」の「変調」が「所定の時間内における前記定格電流レベルからの電流降下である電流ディップを用い、前記デジタル制御データにおけるデータビット周期の前半または後半のいずれかで電流のディップを発生させることによって」行われるのに対し、
引用発明は、「コマンドデータ」の「変調」(本願発明7の「デジタル制御データ」の「変調」に相当する。)が「情報を運ぶために時間と共に搬送波(供給電流)が変化する任意のタイプのものであり、パルス変調、すなわち、異なる電流値(例えば、公称値の100%/50%)の間で、電流を連続的に又は交互にオンとオフに変化させることを含んでいてもよく、電流値のより高度な変調方法を採用してもよく」とされているにとどまる点。

c 相違点3
本願発明7は、「出力ラインに接続される電子ユニット内の前記出力ライン上の前記DC電流から動作電力を取り込むために分路を停止すること」を含むのに対し、
引用発明は、これに相当するものを含むとされていない点。

d 相違点4
本願発明7は、「少なくとも1つのローカル回路」が「前記電子ユニットに接続された」ものであるのに対し、
引用発明は、「光源」及び「バイパス手段」(本願発明7の「少なくとも1つのローカル回路」に相当する。)が「照明ユニット」(本願発明7の「電子ユニット」に相当する。)に含まれる点。

ウ 相違点3についての判断
事案に鑑み、まず、相違点3について検討する。

(ア)本願発明7の「出力ラインに接続される電子ユニット内の前記出力ライン上の前記DC電流から動作電力を取り込むために分路を停止すること」に関し、本願の明細書には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。

「【0057】
ドライバラインの電流でデータを変調することは容易なプロセスではない。ドライバライン上で様々なLEDユニット470を動作させることで、LEDラインドライバ回路425がドライバライン上で電流を安定して制御することが困難になる。特に、図5Aのように、様々なLEDユニット570は、ローカルコンデンサを充電する電流を流すか(これによってLEDユニットにより大きい電圧降下が起こる)、ライン電流を分路して(これによってLEDユニットに小さい電圧降下のみが起こる)、Vsupply511とVline514との間の電圧降下がLEDユニットの分路の有無に応じて変動するようにする。その結果、インダクタ562にかかる電圧も同じように変動するため、(FET561がオンのときの)上昇する電流ランプは常に正確に同じ勾配にはならない。これと同じ現象が下降する電流ランプにも起こる。特に、図5Bのように、LEDユニット570にかかる電圧が変動することで、Vclamp512からインダクタを介してVline514までかかる逆電圧バイアスは常に同じにはならないため、下降する電流ランプの傾斜は変動する。この現象を軽減するため、様々なLEDユニット570がデータビットのエッジ付近で時間どおりに分路を停止するのを制限する必要がある。それでも、LEDユニット570がデータビットのエッジ付近で分路したり分路を停止したりすることは、依然としてデータの変調・復調タスクに影響を及ぼす。」

「【0100】
このようにローカル電源コンデンサ729を充電することによって、ドライバラインの入力721からドライバラインの出力722までのLEDコントローラ760にかかる電圧降下が増大する。このLEDコントローラ760にかかる電圧降下が増大すると、同一ラインにある他のLEDコントローラへの電圧が低下することになるため、他のLEDコントローラは充電を開始する閾値には達しない。LEDコントローラが充電を完了すると、このLEDコントローラの電源システム720は、電流をドライバライン入力721からドライバライン出力722へ直接分路し、ローカル電源コンデンサ729からのローカル電力により動作するため、LEDコントローラ760にかかる電圧降下が著しく減少する。これによって同一ラインにある他のLEDコントローラは増大した電圧を受けることができるため、他のLEDコントローラのいずれかが閾値電圧を超え、充電を開始するようになる。」

「【0102】
再度図8を参照すると、LEDコントローラが閾値電圧を超えたあと、電源システム720は工程810で外部電源コンデンサ729を充電し、工程815で電源システム720が外部電源コンデンサ729にLEDコントローラ760(電源システム720を含む)内の論理回路を作動させるのに十分な電力があると判断するまで充電を続ける。外部電源コンデンサ729は、実質的には小型のバッテリとして働いてLEDユニット750内のLEDコントローラ760に給電する。電源システム720は、定期的に分路を停止してドライバライン721から電流を取り込み、電力要件に応じて電源コンデンサ729を再充電する。」

「【0105】
正常運転840の間、電源システム720は電源コンデンサの充電状態をモニタリングし、必要に応じてラインの分路からコンデンサの充電へ切り替え、LEDコントローラ760を動作するのに十分な電荷が外部コンデンサ729で確実に使用できるようにする。特に、電力が必要なときは、分路がオフになり、外部コンデンサ729に電荷が蓄積される。コンデンサが満杯になったと思われると、電源システム720は充電を停止してラインの電流を分路し、小さい電圧降下を起こすだけで、ドライバラインの入力721に流れてくる電流が電源システム720を通ってドライバラインの出力722へ流れるようにする。ドライバラインの出力722から出て行く電流はその後、顆粒のLEDユニットを駆動し、最終的にはLEDラインドライバ回路を巡って一周し、この回路を終了する。」

(イ)以上の記載によれば、本願発明7の「出力ラインに接続される電子ユニット内の前記出力ライン上の前記DC電流から動作電力を取り込むために分路を停止する」とは、具体的には、ドライバライン入力721からの電流を直接ドライバライン出力722へ流す動作(すなわち、「分路」)を停止し、ドライバライン入力721から電流を取り込んで電源コンデンサ729を充電することであり、それによって、LEDコントローラ760の動作に十分な電荷を電源コンデンサ729に蓄積した後は、再びドライバライン入力721からの電流を直接ドライバライン出力722へ流す動作(すなわち、「分路」)を行うものと認められる。

(ウ)これに対して、引用発明は、「各照明ユニット」が「制御ユニットと電力変換装置を備えており」、「電力変換装置は、入力電流に直列接続に接続され、(例えば、低インピーダンス抵抗器を介して)通過して流れる電流から制御ユニットのための作動電圧を生成し、」「作動電圧は(例えば、大容量キャパシタで)バッファ/格納/蓄積されて、電流がオフに転じてもしばらくの間、制御ユニットが作動できる」というものであるから、「照明ユニット」(本願発明7の「電子ユニット」に相当する。)に供給される「電流」(これは「直流」であるから、本願発明7の「DC電流」に相当する。)から「作動電圧」(本願発明7の「動作電力」に相当する。)を取り込んでいる点では、本願発明7と共通するということもできる。
しかし、引用発明の「電力変換装置」は、「入力電流に直列接続に接続され、(例えば、低インピーダンス抵抗器を介して)通過して流れる電流から制御ユニットのための作動電圧を生成」するだけであるから、「DC電流から動作電力を取り込むために分路を停止する」ものではないし、そもそも電流の「分路」自体を示唆するものではない。

(エ)また、引用文献2に記載された技術事項(前記3(2)イ)において、「モジュールコントローラ190」が「チャージ電流パルスを得るために一方向性導通要素181を一時的に一定間隔で短絡する」のは、「例えばキャパシタであるエネルギバッファ182」を充電するためであると認められるから、引用文献2に記載された技術事項に係る「照明システム1」は、「データ変調された電流」から動作電力を取り込んでいるということもできる。
しかし、引用文献2に記載された技術事項に係る「照明システム1」においては、「チャージ電流パルスを得るために一方向性導通要素181を一時的に一定間隔で短絡する」ことで停止される動作(すなわち、本願発明7の「分路」に相当する動作)が見当たらない。
したがって、引用文献2に記載された技術事項は、相違点3に係る本願発明7の構成を示唆するものではない。

(オ)さらに、引用文献3ないし引用文献5に記載された技術事項(前記3(3)ないし(5))も、相違点3に係る本願発明7の構成を示唆するものではない。

(カ)したがって、相違点3に係る本願発明7の構成は、引用発明及び引用文献1ないし引用発明5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に思い付くものであるということはできない。

エ 本願発明7についてのまとめ
以上のとおりであるから、相違点1、相違点2及び相違点4について検討するまでもなく、本願発明7は、引用文献1、引用文献2、引用文献4及び引用文献5に記載された発明に基づいて、又はさらに引用文献3に記載された発明に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(2)本願発明8ないし本願発明14について
本願発明8ないし本願発明14は、本願発明7の構成を全て含むから、少なくとも本願発明7と引用発明との相違点1ないし相違点4(前記(1)イ(イ)aないしd)で引用発明と相違する。
そして、前記(1)ウのとおり、相違点3に係る本願発明7の構成は、引用発明及び引用文献1ないし引用文献5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に思い付くものであるということはできないから、相違点3に係る本願発明8ないし本願発明14の構成も同様である。
したがって、本願発明8ないし本願発明14は、引用文献1ないし引用文献5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

5 原査定について
原査定は、データビット周期の前半又は後半のいずれかでディップを発生させてデータを変調する技術は引用文献4及び引用文献5にマンチェスタ方式の変調技術として示されているように周知であり、引用文献1又は引用文献2に記載された発明においてどのような変調技術を用いるかは当業者が適宜決め得る設計的事項にすぎないから、周知のマンチェスタ方式の変調技術を採用することに特段の困難性はないと判断した。
しかし、引用文献1又は引用文献2に記載された発明において周知のマンチェスタ方式の変調技術を採用することに特段の困難性がないことは、相違点3に係る本願発明7の構成は引用発明及び引用文献1ないし引用発明5に記載された事項に基づいて当業者が容易に思い付くものであるということはできないとの認定(4(1)ウ)を左右するものではない。
したがって、原査定の理由は、維持することができない。

6 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願は拒絶をするべきものであるということはできない。
また、他に、本願は拒絶をするべきものであるという理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-08-10 
出願番号 特願2015-245015(P2015-245015)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 57- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西島 篤宏  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 ▲うし▼田 真悟
小林 紀史
発明の名称 照明電力および制御システムに関するシステムおよび方法  
代理人 新保 斉  

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