ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C12N 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N |
---|---|
管理番号 | 1342901 |
審判番号 | 不服2017-3056 |
総通号数 | 225 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-03-01 |
確定日 | 2018-08-08 |
事件の表示 | 特願2014-527291「核酸の高忠実度アセンブリのための組成物および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月 7日国際公開、WO2013/032850、平成26年10月 9日国内公表、特表2014-526899〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成24(2012)年8月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年8月26日 米国(US)、2011年9月9日 米国(US)、2012年8月23日 米国(US))を国際出願日とする国際出願であって、主な経緯は以下のとおりである。 平成28年 5月20日付け 拒絶理由通知書 平成28年 8月26日 意見書・手続補正書 平成28年10月25日付け 拒絶査定 平成29年 3月 1日 審判請求書 平成29年 4月13日 手続補正書(審判請求書の請求の理由) 2.本願発明 本願の請求項1?32に係る発明は、平成28年8月26日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?32に記載された発明特定事項により特定されるものであるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)、以下のとおりのものと認める。 「所定の配列を有する標的核酸を作製する方法であって、 複数の平滑末端二本鎖核酸断片の各々の両端に制限酵素認識配列を有する、複数の平滑末端二本鎖核酸断片を提供すること、ここで、複数の平滑末端二本鎖核酸断片の各々は、5’末端および/または3’末端に位置するユニバーサルプライマー結合部位を含む; 複数の平滑末端二本鎖核酸断片の酵素消化を経て、標的核酸配列をともに含む複数の付着末端二本鎖核酸断片を生成すること、ここで、複数の付着末端二本鎖核酸配列の各々が2つの異なる非相補性突出を有する; 複数の付着末端二本鎖核酸断片を突出にてアニーリングすること、ここで、第一の付着末端二本鎖核酸断片の第一の突出が、第二の付着末端二本鎖核酸断片の第二の突出に一意的に相補である領域を含むように設計される;および 複数の付着末端二本鎖核酸断片をリガーゼでライゲーションし、所定の配列を有する標的核酸を形成すること、を含む、方法。」 3.原査定における拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、 (1)この出願の請求項1?31に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、 (2)この出願の請求項1?31に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、 というものである。 引用文献1.特表2008-523786号公報 4.引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日である平成23(2011)年8月26日より前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特表2008-523786号公報(平成20年7月10日国内公表)(引用文献1)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。 摘記A 予め特定された配列を有する長いポリヌクレオチド構造物(construct)のアセンブル方法であり、下記ステップを含む方法: (a)構造体(construction)オリゴヌクレオチドのプールを用意するステップ; (b)下記(i)、(ii)、又は(i)及び(ii)を順番に又は同時に行うステップ: (i)構造体オリゴヌクレオチドを増幅する; (ii)構造体オリゴヌクレオチドをエラー減少プロセスで処理する;並びに (c)構造体オリゴヌクレオチドのプールをハイブリダイゼーション条件並びに1以上の下記(i)?(iii)条件下に曝し:(i)ライゲーション条件、(ii)鎖伸長条件、又は(iii)鎖伸長及びライゲーション条件、上記構造体オリゴヌクレオチドよりも長い少なくとも1の二本鎖サブアセンブリ構造物の複数のコピーを形成するステップ; (d)下記(i)、(ii)、又は(i)及び(ii)を順番に又は同時に行うステップ: (i)上記サブアセンブリ構造物を増幅する; (ii)そのサブアセンブリ構造物をエラー減少プロセスにかける;並びに (e)2以上のサブアセンブリ構造物をハイブリダイゼーション条件及び1以上の下記条件下でインキュベートし:(i)ライゲーション条件、(ii)鎖伸長条件、又は(iii)鎖伸長及びライゲーション条件、長いポリヌクレオチド構造物の複数のコピーを形成するステップ。 (請求項1) オリゴヌクレオチド固体サポート上で合成される請求項1又は3に記載の方法。(請求項62) オリゴヌクレオチドは、増幅前に固体サポートから切り離される請求項62に記載の方法。(請求項68) オリゴヌクレオチドは、上記オリゴヌクレオチドの少なくとも一部分へフランキングし、少なくとも1のサブセットの上記オリゴヌクレオチドに共通する少なくとも1対のプライマーハイブリダイゼーション部位を有する請求項1又は3に記載の方法。(請求項69) 全てのオリゴヌクレオチドは、共通する少なくとも1対のプライマーハイブリダイゼーション部位を有する請求項69に記載の方法。 (請求項70) オリゴヌクレオチドは、プライマーハイブリダイゼーション部位の少なくとも一部分及びオリゴヌクレオチド間の切断部位を有する請求項69に記載の方法。(請求項71) 切断部位は制限エンドヌクレアーゼ部位である請求項71に記載の方法。(請求項72) 制限エンドヌクレアーゼはタイプIISエンドヌクレアーゼである請求項72に記載の方法。(請求項73) サブアセンブリ構造物は、上記サブアセンブリ構造物の少なくとも一部分へフランキングし、上記サブアセンブリ構造物の少なくとも1のサブセットに共通する少なくとも1対のプライマーハイブリダイゼーション部位を有する請求項1又は46に記載の方法。 (請求項74) サブアセンブリ構造物は、プライマーハイブリダイゼーション部位の少なくとも1及びサブアセンブリ構造物間の切断部位を有する請求項74に記載の方法。(請求項75) 5.アセンブリ方法: 様々な態様において、本発明の方法は、短オリゴヌクレオチドから長いポリヌクレオチド構造物へのアセンブル方法を使用し、例えば、PCR型アセンブリ方法(PAM又はポリメラーゼアセンブリ複合化を含む)及びライゲーション型アセンブリ方法(例えば、相補的又は平滑末端を有する核酸セグメントの結合)が挙げられる。・・・ (【0131】) 摘記B 2.高忠実度の長い核酸分子のアセンブリ: 例えば、本発明は高忠実度を有する合成核酸を提供する。・・・本発明の例示では、合成核酸は、2以上の構造体オリゴヌクレオチド及び/又はサブアセンブリからアセンブルされたポリヌクレオチド構造物である。・・・予め決定された配列を有する2以上のポリヌクレオチド構造物を製造するために、一組の構造体オリゴヌクレオチドが、それぞれのポリヌクレオチド構造物の完全配列を一緒にカバーするように設計された。構造体オリゴヌクレオチドは、オーバーラップする相補的領域を有するように設計され、その領域は相補的領域間のハイブリダイゼーションを可能として、ハイブリダイゼーション条件下で一緒に混合された場合に構造体オリゴヌクレオチドの正確に配列された鎖を生じる(例えば図2C中のabc、def及びghi)。アセンブリ混合物は次に、ライゲーション又は重合及びライゲーションされてサブアセンブリ又はポリヌクレオチド構造物を形成する(図2D)。例えば、構造体オリゴヌクレオチドは、ポリヌクレオチド構造物の完全長さをカバーするために、一緒に混合された場合にはオリゴは単純に一緒にライゲートされてサブアセンブリ/ポリヌクレオチド構造物を形成する(例えば、図3A)。・・・例えば、種々の構造体オリゴヌクレオチドのサブアセンブリは、更にアセンブルされてより一層長いポリヌクレオチド構造物となる。・・・サブアセンブリは、目的の配列で種々のサブアセンブリの結合を可能とする配列特異的付着末端を含んでもよい(例えば、3’又は5’オーバーハング)。付着末端は構造体オリゴヌクレオチドの設計(例えば、5’及び/又は3’最末端構造体オリゴヌクレオチドは、一本鎖オーバーハングを有するように設計できる)により形成されてもよく、サブアセンブリが1以上の制限エンドヌクレアーゼで消化され付着末端を形成することもできる。付着末端を通したサブアセンブリの結合後に、ポリヌクレオチド構造物は、ライゲーション及び/又は鎖伸長により形成できる。一組のサブアセンブリから形成されるポリヌクレオチド構造物は、任意で更に一連のアセンブリが行われ、より一層長いポリヌクレオチド構造物が製造される(参照、例えば、図4)。(【0090】?【0091】) (図2) (図3) (図4) 摘記C 同様に、本発明は、ユニバーサルプライマーを使用する1以上のステップで核酸を増幅することを含むポリヌクレオチド構造物のアセンブル方法を提供する。例えば図5に示されるように、構造体オリゴヌクレオチド(例えば、a,b,c,d,e及びf)は、ユニバーサルプライマーのための結合部位(例えば、白及び黒の四角で表される)を囲むように設計されてもよい。基質からの構造体オリゴヌクレオチドの除去の前後で、完全プールはただ一組のユニバーサルプライマーを使用して増幅される。本発明の例示では、ユニバーサルプライマーは、増幅後に酵素的又は化学的切断により除去される。増幅された構造体オリゴヌクレオチドのプールは、次に融解され、アニールされ、ライゲーション及び/又は鎖伸長されてサブアセンブリを形成する(例えば図5中のabc又はdef)。例えばサブアセンブリ自体が、第2のユニバーサルプライマーセット(図示せず)を使用して増幅されてもよい。例えば5’'及び3’最末端構造体オリゴヌクレオチド(例えばそれぞれ図5中のa及びd及びc及びf)は、第2のユニバーサルプライマーセット結合部位を囲むように設計されてもよい(参照図6)。第2のユニバーサルプライマーセットのサブアセンブリプールへの添加において、複数のサブアセンブリが増幅される。本発明の例示では、第2のユニバーサルプライマーセットは、次に化学的又は酵素的切断により除去される。サブアセンブリは、次に、相補鎖のハイブリダイゼーション又は付着末端による結合(上記記載の通り)それに続くライゲーション及び/又は鎖伸長によりアセンブルされて更により長いポリヌクレオチド構造物となる。・・・(【0092】) (図5) (図6) 摘記D ・・・例えば、構造体オリゴヌクレオチドは、完全なポリヌクレオチド構造物を形成するためには、単に一緒にハイブリダイズされ、ライゲーションされるだけでよい。・・・ 本発明の例示では、構造体及び/又は選択オリゴヌクレオチドは、1セットの又は数セットのプライマーを使用する核酸のプールの増殖に使用されるユニバーサルプライマーのための1以上のセットの結合部位を含む。ユニバーサルプライマー結合部位の配列は、有効なプライマーハイブリダイゼーション及び鎖伸長を効率的に行うことを可能とする適切な長さ及び配列を有するように選択される。・・・例えば、化学的又は酵素的切断により核酸分子から除去されるプライマー等のユニバーサルプライマーは、一時的プライマーとして設計されてもよい。核酸の化学的、熱的、光による、又は酵素的な切断方法は、下記に詳細に記載される。本発明の例示では、ユニバーサルプライマーは、タイプIIS制限エンドヌクレアーゼ又はDNAグリコシラーゼを使用して除去される。(【0095】?【0098】) 摘記E 例えば、構造体及び/又は選択オリゴヌクレオチドは、ユニバーサルタグを含む。ユニバーサルタグは、5’末端若しくは3’末端のいずれか又は両方上の構造体オリゴヌクレオチドにフランキングし、かつプール中の少なくとも一部分の構造体及び/又は選択オリゴヌクレオチドと共通する配列である。・・・(【0096】) 用語「タイプII制限エンドヌクレアーゼ」は、非パリンドローム認識配列及び認識部位の外側(例えば認識部位から0?約20ヌクレオチド遠位)で発生する切断部位を有する制限エンドヌクレアーゼを言う。タイプII制限エンドヌクレアーゼは、1の二本鎖核酸分子中に1のニックを生じるか、平滑又は付着末端のいずれかを生じる1の二本鎖破断を生じる(例えば5’又は3’オーバーハングのいずれか)。タイプIIエンドヌクレアーゼの例として、3’オーバーハングを生じる酵素、例えばBsrI、BsmI、BstF5I、BsrDI、BtsI、MnlI、BciVI、HphI、MboII、EciI、AcuI、BpmI、MmeI、BsaXI、BcgI、BaeI、BfiI、TspDTI、TspGWI、TaqII、Eco57I、Eco57MI、GsuI、PpiI及びPsrI等;5’オーバーハングを生じる酵素、例えばBsmAI、PleI、FauI、SapI、BspMI、SfaNI、HgaI、BvbI、FokI、BceAI、BsmFI、Ksp632I、Eco31I、Esp3I、AarI等;及び平滑末端を生じる酵素、例えばMlyI及びBtrIが挙げられる。・・・ 用語「ユニバーサルタグ」は、5’及び/又は3’末端上の多数の核酸配列へフランキングするヌクレオチド配列を言い、例えばユニバーサルタグは更に1以上の核酸配列に共通する。ユニバーサルタグには1以上の下記が含まれる:プライマーハイブリダイゼーション配列、ミスマッチ修復酵素切断部位、制限酵素認識部位、制限酵素切断部位(又は半分部位、例えば、部位の半分はユニバーサルタグ中に含まれ部位の半分は核酸配列中に含まれる)、アプタマー、1以上のウラシル残基、1以上の修飾された核酸残基、又は検出及び/又は固定化を促進する薬剤(例えば、ビオチン、フルオレセイン、検出用マーカー等)。・・・例えば、ユニバーサルタグは、ユニバーサルプライマー用結合部位を含有する。 用語「ユニバーサルプライマー」は、多数の核酸配列の鎖伸長/増幅に使用される一組のプライマー(例えば、フォワード及びリバースプライマー)、例えば多数の核酸配列に共通する部位へハイブリダイズするプライマーを言う。・・・例えばユニバーサルプライマーは、増幅後に酵素的又は化学的切断により除去される一時的プライマーでもよい。・・・例示的な修飾として、例えば3’又は5’末端キャップ、又は核酸の検出、固定化又は単離を促進する薬剤(例えば、フルオレセイン又はビオチン等)が挙げられる。 (【0085】?【0087】) 摘記F 本発明の別の例では、階層化されたアセンブリが制限エンドヌクレアーゼを使用して実施され、目的の順序で一緒に結合される相補末端を形成する。構造体オリゴヌクレオチドは、特定の順序での結合を促進する部位に、1以上の制限エンドヌクレアーゼが認識及び切断部位を有するように設計され合成される。DNAデュプレックス形成後、オリゴヌクレオチドのプールは1以上の制限エンドヌクレアーゼと接触し、相補末端を形成する。プールは次にハイブリダイゼーション条件及びライゲーション条件へ曝されて、デュプレックスを一緒に結合する。結合の順番は、相補的相補末端のハイブリダイゼーションにより決定される。制限エンドヌクレアーゼは、一度に1のみのサブセットの相補末端が形成するように時差を設けて添加される。次にこれら末端は互いに結合され、続いて別の一連のエンドヌクレアーゼ消化、ハイブリダイゼーション、ライゲーションが次々と続く。本発明の例示では、タイプIISエンドヌクレアーゼ認識部位が構造体オリゴヌクレオチドの末端へ組み込まれ、タイプIIS制限エンドヌクレアーゼによる切断を可能とする。(【0142】) 摘記G 長いDNA分子中のエラーを減少させる簡単な方法は、DNA主鎖の両ストランドを、短い一本鎖オーバーハングを切断部位に生成する部位特異的エンドヌクレアーゼ等により、複数の部位で切断することである。得られるセグメントでは、ミスマッチをいくらか含むことが予測される。・・・セグメントの残存プールは、完全長配列へ再ライゲートできる。・・・ 制限エンドヌクレアーゼの最も共通するタイプがこの手法に使用される場合、全てのDNA切断部位は同一のオーバーハングを生じる。従って、セグメントは、ランダムな順序で結合及びライゲートする。しかし部位特異的「外側カッター」エンドヌクレアーゼ(HgaI、FokI、又はBspMI等)の使用は、(非オーバーラップする)DNA認識部位へ近接した切断部位を生じる。従って、それぞれのオーバーハングは他の部位のそれから識別できるDNA部分に特異的な配列を有する。これら特異的に相補的な相補末端の再結合は、次にセグメントを適切な順序で組み合わせる。生成した相補末端は、5個までの塩基長となり、4^(5)=1024種までの異なる組み合わせを可能とする。たぶん、この多くの識別性のある制限部位が、相補末端間でのニアマッチを避ける必要性からこの数字は少なくなるにしても使用できる。 (【0193】?【0194】) 5.引用発明の認定 摘記Aには、予め特定された配列を有する長いポリヌクレオチド構造物のアセンブル方法において、構造体オリゴヌクレオチドのプールを用意する工程、構造体オリゴヌクレオチドのプールをハイブリダイゼーション条件並びにライゲーション条件下に曝し、上記構造体オリゴヌクレオチドよりも長い少なくとも1の二本鎖サブアセンブリ構造物の複数のコピーを形成する工程を含む方法が記載され、また、2以上のサブアセンブリ構造物を、ハイブリダイゼーション条件及びライゲーション条件下でインキュベートし長いポリヌクレオチド構造物の複数のコピーを形成する工程を含む方法が記載されている。 そして、ライゲーションにおいて、リガーゼを用いることは、引用文献1の【0048】や摘記Bの図3、4に記載されている。 (1)付着末端について 摘記B、Dには、ポリヌクレオチド構造物の完全長さをカバーするために、構造体オリゴヌクレオチドが、ライゲートされてサブアセンブリ又はポリヌクレオチド構造物を形成すること、サブアセンブリが、ライゲートされてポリヌクレオチド構造物を形成することが記載されている。 一方、摘記Bに、「サブアセンブリは、目的の配列で種々のサブアセンブリの結合を可能とする配列特異的付着末端を含んでもよい」、「サブアセンブリが1以上の制限エンドヌクレアーゼで消化され付着末端を形成することもできる」の記載があり、摘記Fにも、「階層化されたアセンブリが制限エンドヌクレアーゼを使用して実施され、目的の順序で一緒に結合される相補末端を形成する」、「オリゴヌクレオチドのプールは1以上の制限エンドヌクレアーゼと接触し、相補末端を形成する」の記載があることから、構造体オリゴヌクレオチドやサブアセンブリは、相補的な付着末端(突出末端、オーバーハング)の配列が生成するものを包含していると認められる。 また、摘記B、F、Gによれば、付着末端は、タイプII制限エンドヌクレアーゼの消化によって生成し、この付着末端を、特異的な配列とすることにより、構造体オリゴヌクレオチド又はサブアセンブリは、目的の配列(順序)で結合できるとされている。 以上の記載事項から、引用文献1には、複数の構造体オリゴヌクレオチド又はサブアセンブリが、酵素消化を経て、複数の付着末端を生成し、この付着末端の特異的な配列(特異的な相補突出)によって、構造体オリゴヌクレオチド又はサブアセンブリを目的の配列(順序)で結合して、ポリヌクレオチド構造物が得られることが、記載されている。 (2)ユニバーサルプライマーについて 摘記C、D、Eには、構造体オリゴヌクレオチド又はサブアセンブリが、5’及び3’末端にユニバーサルタグを含み、このユニバーサルタグが、ユニバーサルプライマーのための結合部位や制限酵素認識部位等を有することが記載されている。 そして、摘記Cによれば、構造体オリゴヌクレオチド又はサブアセンブリは、ユニバーサルプライマーを用いて増幅がなされるので、二重鎖で平滑末端を有するものと認められる。 以上の記載事項からすると、引用文献1には、 「予め特定された配列を有する長いポリヌクレオチド構造物のアセンブル方法において、 ユニバーサルプライマーの結合部位、制限酵素認識配列を両端に持つ平滑末端の二重鎖構造体オリゴヌクレオチド又はサブアセンブリのプールを用意する工程、 制限エンドヌクレアーゼにより、ユニバーサルプライマーの結合部位が除去されるとともに付着末端が形成し、この付着末端の核酸配列が、配列特異的な相補突出を有する工程、 付着末端を持つ二重鎖構造体オリゴヌクレオチド又はサブアセンブリを、配列特異的な相補突出にて、適切な順序で組み合わせ、リガーゼでライゲーションして、ポリヌクレオチド構造物を形成する工程を含む方法」の発明(引用発明)が記載されていると認められる。 6.本願発明と引用発明の対比・判断 摘記Aによると、引用発明の「ポリヌクレオチド構造物のアセンブル方法」は、ライゲーションによって核酸セグメントを結合する方法に当たるから、本願発明の「核酸を作製する方法」に相当し、引用発明の「予め特定された配列を有する長いポリヌクレオチド構造物」、「二重鎖構造体オリゴヌクレオチド」又は「サブアセンブリ」は、本願発明の「所定の配列を有する標的核酸」、「二本鎖核酸断片」にそれぞれ相当する。 引用発明の「二重鎖構造体オリゴヌクレオチド」又は「サブアセンブリ」と本願発明の「二本鎖核酸断片」は、共に、5’末端および3’末端にユニバーサルプライマー結合部位、制限酵素認識配列を有し、FokI、BsmFI等の5’オーバーハングを生じるタイプII制限エンドヌクレアーゼ(摘記E、G及び本願の請求項14)の酵素消化を経ることで、付着末端を生成するものである。 次に、本願発明と引用発明の付着末端について、以下で検討する。 本願発明の「複数の付着末端二本鎖核酸断片を突出にてアニーリングすること、ここで、第一の付着末端二本鎖核酸断片の第一の突出が、第二の付着末端二本鎖核酸断片の第二の突出に一意的に相補である領域を含むように設計される」は、本願明細書の「隣接している核酸断片の間で重複する相補的な領域は、核酸断片の一意的なアラインメント(例えば、断片の選択または設計されたアラインメント)のアセンブリを促進できる程度(例えば、熱力学的な支持)に異なるように設計(または、選択)される。・・・そして、4-塩基の突出は、(4^4+1)=257までの異なる断片が高特異性および高忠実性でライゲーションされることを許容できる。」(【0071】)、「より長い付着末端は、正しい付着末端アニーリング(例えば、お互いにアニーリングされるように設計された付着末端に関する)および不正確な付着末端アニーリング(例えば、非相補的な付着末端の間)を区別する、十分に区別可能な配列をより柔軟に設計または選択することを提供し得る」(【0072】)の記載から、標的核酸において隣接する配置となる複数の付着末端二本鎖核酸断片が、お互いにアニーリングするように設計された付着末端を有することを意図したものと解される。 また、本願発明の「付着末端二本鎖核酸配列の各々が2つの異なる非相補性突出を有する」は、不正確な付着末端アニーリングが生じないように(誤った順序で二本鎖核酸配列がライゲーションしないように)、各々の付着末端二本鎖核酸配列が、両端に異なる非相補性突出を有することを意図したものと解される。 一方、引用発明の「付着末端の核酸配列が、配列特異的な相補突出を有する」、「配列特異的な相補突出にて、適切な順序で組み合わせ」は、摘記Fに記載されるように、結合の順序が、相補末端(相補突出)のハイブリダイゼーションによって決定され、摘記Gによれば、5塩基の突出の場合には、4^(5)=1024種までの異なる組み合わせにより相補突出が識別されることで、「高忠実度の長い核酸分子のアセンブリ」(摘記B)が可能となるものである。 そうすると、引用発明の二重鎖構造体オリゴヌクレオチド又はサブアセンブリは、本願発明と同様に、高忠実にライゲーションできるように、お互いにアニーリングするよう設計された付着末端を有し、他方、誤った順序でライゲーションしないように、各々の二重鎖構造体オリゴヌクレオチド又はサブアセンブリの両端は異なる非相補性突出を有していると認められる。 したがって、引用発明の二重鎖構造体オリゴヌクレオチド又はサブアセンブリと本願発明の二本鎖核酸断片において、タイプII制限エンドヌクレアーゼによって生じる付着末端が、核酸配列や機能等の面で、相違しているとは認められない。 してみれば、本願発明と引用発明は、 「所定の配列を有する標的核酸を作製する方法であって、 複数の平滑末端二本鎖核酸断片の各々の両端に制限酵素認識配列を有する、複数の平滑末端二本鎖核酸断片を提供すること、ここで、複数の平滑末端二本鎖核酸断片の各々は、5’末端および/または3’末端に位置するユニバーサルプライマー結合部位を含む; 複数の平滑末端二本鎖核酸断片の酵素消化を経て、標的核酸配列をともに含む複数の付着末端二本鎖核酸断片を生成すること、ここで、複数の付着末端二本鎖核酸配列の各々が2つの異なる非相補性突出を有する; 複数の付着末端二本鎖核酸断片を突出にてアニーリングすること、ここで、第一の付着末端二本鎖核酸断片の第一の突出が、第二の付着末端二本鎖核酸断片の第二の突出に一意的に相補である領域を含むように設計される;および 複数の付着末端二本鎖核酸断片をリガーゼでライゲーションし、所定の配列を有する標的核酸を形成すること、を含む、方法。」で一致しており、両者は、同一の発明である。 また、仮に、本願発明と引用発明が、付着末端において、相違するものであったとしても、両発明の解決しようとする課題は、高忠実度のアセンブリ方法を提供する点で共通し、当該課題の解決手段として、タイプII制限エンドヌクレアーゼによって生じる付着末端(突出末端)の核酸配列を操作する点で、両者に相違は認められないから、引用発明の二重鎖構造体オリゴヌクレオチド又はサブアセンブリにおいて、第一の付着末端の第一の突出が、第二の付着末端の第二の突出に一意的に相補である領域を含むように設計したり、二重鎖構造体オリゴヌクレオチド又はサブアセンブリの各々が2つの異なる非相補性突出を有すると規定することは、当業者であれば、容易に想到し得たものである。 7.審判請求人の主張 審判請求人は、「引用文献1は単に、「サブアセンブリ」を制限エンドヌクレアーゼで消化して配列特異的付着末端で結合することを開示する。すなわち、引用文献1は、本願発明の請求項に記載されているような、適合する付着末端を生成するように出発オリゴヌクレオチドを設計できること」を開示しない点、「驚くべきことに、適切なライゲーション条件下で、ただ1つのヌクレオチドによる違いは、完全な適合(100%相補的な付着末端)およびミスマッチ(100%未満の相補的な付着末端)の間を十分に区別する力を提供する。そして、4-塩基の突出は、(4^4+1)=257までの異なる断片が高特異性および高忠実性でライゲーションされることを許容できる。」点を根拠に、本願発明は、引用発明に対して進歩性を有する旨を主張している。 しかし、本願発明の「二本鎖核酸断片」(本願明細書の【0028】に記載される「核酸断片」)に相当する「二重鎖構造体オリゴヌクレオチド」又は「サブアセンブリ」が、FokI、BsmFI等のタイプII制限エンドヌクレアーゼによって、適切な順序のライゲーションを可能とする特異的配列の付着末端を生成することは、摘記B、F、Gに記載されているところであるし、摘記Gには、5個までの塩基長の付着末端(突出末端)による識別で、完全長配列へ再ライゲートできることも記載されている。 そうすると、上記審判請求人の主張は、いずれも理由が無く、採用することはできない。 8.むすび 上記のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、または、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないので、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-02-27 |
結審通知日 | 2018-03-06 |
審決日 | 2018-03-27 |
出願番号 | 特願2014-527291(P2014-527291) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C12N)
P 1 8・ 113- Z (C12N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 布川 莉奈、飯室 里美、池上 京子 |
特許庁審判長 |
中島 庸子 |
特許庁審判官 |
福井 悟 高堀 栄二 |
発明の名称 | 核酸の高忠実度アセンブリのための組成物および方法 |
代理人 | 田中 光雄 |
代理人 | 冨田 憲史 |
代理人 | 稲井 史生 |
代理人 | 山崎 宏 |