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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
管理番号 1342979
異議申立番号 異議2017-701088  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-09-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-11-20 
確定日 2018-06-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6132947号発明「飲料及びルテインの飲料中安定性を調節する方法」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第6132947号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1?6〕,7について訂正することを認める。 特許第6132947号の請求項1?7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯の概略
特許第6132947号の請求項1?7に係る特許(以下「本件特許」という。)についての手続の経緯は,概ね,次のとおりである。
平成28年 3月24日 出願
平成29年 4月28日 特許権の設定登録
平成29年 5月24日 特許掲載公報
平成29年11月20日 特許異議の申立て
(特許異議申立人:清水すみ子)
平成30年 1月24日 取消理由通知書
平成30年 3月27日 意見書(特許権者)及び訂正請求書
平成30年 5月 1日 意見書(特許異議申立人)
以下,平成30年3月27日付けの訂正請求書に係る訂正を「本件訂正」という。

第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正の請求は,本件特許の特許請求の範囲を,訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1?7について訂正することを求めるものであって,その訂正の内容は次のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に,「4.8以下である飲料。」と記載されているのを,「4.8以下である,10℃超の常温流通及び保管用飲料。」に訂正する。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項6に,「請求項4又は5記載の」と記載されているのを,「請求項4記載の」に訂正する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項7に,「ルテインを含む飲料」と記載されているのを,「ルテインを含む10℃超の常温流通及び保管用飲料」に訂正する。

2 本件訂正の適否について
(1) 訂正事項1
前記訂正事項1は,本件訂正後の請求項1に係る発明の「飲料」について,「10℃超の常温流通及び保管用飲料」と限定するものであるから,前記訂正事項1に係る本件訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
そして,本件訂正前の請求項6に「容器詰め飲料の流通又は保存方法であって,前記飲料を10℃超の常温で保管する方法」と記載され,本件特許明細書に「本発明の容器詰め飲料の流通又は保存方法は,設備,コストなどの観点から,10℃超の常温下が好ましい。」(【0026】)と記載されている。
よって,前記訂正事項1に係る本件訂正は,新規事項を追加するものではなく,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
(2) 訂正事項2
前記訂正事項2は,本件訂正後の請求項6について,請求項5を引用しないものとして引用する請求項を減ずるものであるから,前記訂正事項2に係る本件訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
また,本件訂正前の請求項6において,請求項5を引用する場合の請求項6に係る発明が明確でなかったところ(後記取消理由5),これに対応するものであるから,前記訂正事項2に係る本件訂正は,明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。
よって,前記訂正事項2に係る本件訂正は,新規事項を追加するものではなく,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
(3) 訂正事項3
前記訂正事項3は,本件訂正後の請求項7に係る発明の「飲料」について,「10℃超の常温流通及び保管用飲料」であると限定するものであるから,前記訂正事項3に係る本件訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
そして,本件訂正前の請求項6に「容器詰め飲料の流通又は保存方法であって,前記飲料を10℃超の常温で保管する方法」と記載され,本件特許明細書に「本発明の容器詰め飲料の流通又は保存方法は,設備,コストなどの観点から,10℃超の常温下が好ましい。」(【0026】)と記載されている。
よって,前記訂正事項3に係る本件訂正は,新規事項を追加するものではなく,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
(4) さらに,本件訂正は一群の請求項ごとに請求されたものである。
(5) 以上のとおりであるから,本件訂正は特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであって,同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合し,本件訂正の請求は同条4項に適合するので,訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1?6〕,7について訂正することを認める。

第3 本件発明
前記第2のとおり,本件訂正は認められるから,本件特許の請求項1?7に係る発明は,訂正特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。以下,本件特許に係る発明を請求項の番号に従って「本件発明1」などといい,総称して「本件発明」という。
【請求項1】
ルテインを含み,
前記ルテインの含有量が飲料に対して,10ppm以上50ppm以下であり,
pH4.0以上(ただし,4.0は除く)4.8以下である,10℃超の常温流通及び保管用飲料。
【請求項2】
pH4.2以上である請求項1記載の飲料。
【請求項3】
pH4.6以下である請求項1又は2記載の飲料。
【請求項4】
請求項1から3いずれか記載の飲料を容器内に含む容器詰め飲料。
【請求項5】
飲料に,85℃,30分間の加熱殺菌と生物学的に同等以上の殺菌価で殺菌を行う工程を含む請求項4記載の容器詰め飲料の作製方法。
【請求項6】
請求項4記載の容器詰め飲料の流通又は保存方法であって,前記飲料を10℃超の常温で保管する方法。
【請求項7】
ルテインを含む10℃超の常温流通及び保管用飲料のpHを,4.0以上(ただし,4.0は除く)4.8以下の範囲において,調節することで,飲料に対して,10ppm以上50ppm以下含まれるルテインの飲料中安定性を調節する方法。

第4 取消理由についての判断
1 取消理由の概要
本件訂正前の本件特許に対し通知した取消理由は,概ね,次のとおりである。なお,下記取消理由は本件特許異議の申立てにおける全ての申立理由(特許法29条1項3号,29条2項,36条4項1号,36条6項1号,36条6項2号)を含んでいる。
(1) 取消理由1
本件特許の請求項1?7に係る発明は,本件特許の出願前に日本国内又は外国において,頒布された甲第1号証に記載された発明であって,特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができないから,その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2) 取消理由2
本件特許の請求項1?7に係る発明は,本件特許の出願前に日本国内又は外国において,頒布された甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,その発明に係る特許は取り消すべきものである。
また,本件特許の請求項1?5に係る発明は,本件特許の出願前に日本国内又は外国において,頒布された甲第3号証に記載された発明及び甲第1号証,甲第2号証,甲第4号証の1,甲第4号証の2に記載された事項に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(3) 取消理由3
本件特許は,発明の詳細な説明の記載が次の点で不備のため,特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり,取り消すべきものである。すなわち,請求項1?7に係る発明をどのように製造するかが,発明の詳細な説明に開示されていないから,発明の詳細な説明の記載が,当業者が実施できる程度に明確かつ十分であるとはいえない。
(4) 取消理由4
本件特許は,特許請求の範囲の記載が次の点で不備のため,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり,取り消すべきものである。すなわち,請求項1?7に係る発明は,発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えている。
(5) 取消理由5
本件特許は,特許請求の範囲の記載が次の点で不備のため,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり,取り消すべきものである。請求項6において引用する請求項5に係る発明は容器詰め飲料の発明ではないから,請求項6に係る発明が明確でない。

2 証拠方法
異議申立人が提出した証拠方法(甲第1号証?甲第7号証)は以下のとおりである。以下,各号証を証拠の番号に従って「甲1」などという。
甲1:特開2014-82993号公報
甲2:長田隆,“トマトジュースの商業的無菌性を確保する新たな加熱殺菌条件に関する研究”,新潟大学,2015年
甲3:“あなたの健康をバックアップ! 宅配専用商品『MEGMILK 毎日1本 アスタキサンチン 緑黄色野菜』瓶100ml 宅配専用商品『MEGMILK 毎日1本 ルテイン 緑黄色野菜とフルーツ』瓶100ml 平成25年3月29日(金)より全国で新発売”,雪印メグミルク株式会社,平成25年3月14日
甲4の1:特開2009-142180号公報
甲4の2:特開平6-327435号公報
甲5:株式会社エルビー“ニュースリリース ビルベリーエキス150mg,カシスエキス70mg,ルテイン3mgを配合 『ルテイン3mgとカシスも入ってとってもうれしいブルーベリー』 3月23日(火)新発売 !”のウェブページの印刷物,2010年3月9日,[2018年4月25日検索]
<URL:http://www.elbee.jp/company/news/20100309a.html>
甲6:特開2011-177183号公報
甲7:特開2010-130903号公報

3 取消理由1(29条1項3号)及び取消理由2(29条2項)について
(1) 甲1について
ア 甲1に記載された事項
・「【請求項1】
(a)ガレート型カテキン,(b)コラーゲン,(c)大豆多糖類及び(d)水不溶性機能性成分を含有し,
前記(a)成分,(b)成分,(c)成分,(d)成分の含有量[A],[B],[C],[D](単位:重量%)が以下の式の範囲内にある機能性飲料。
i)0.02≦[A]≦0.5
ii)3.0≦([B]/[A])≦20
iii)([C]/[A])≧1.0
iv)0.0001≦[D]≦0.6
【請求項2】
前記(d)成分が,プロポリスエキス,コエンザイムQ10,還元型コエンザイムQ10,脂溶性ビタミン,オメガ3脂肪酸,ルテイン及びアスタキサンチンからなる群より選ばれる1種以上である請求項1に記載の機能性飲料。」
・「【0001】
本発明は,ガレート型カテキン及び水不溶性機能性成分を含有する機能性飲料に関する。」
・「【0013】
本発明の機能性飲料は,ガレート型カテキン,コラーゲン及び水不溶性機能性成分などの機能性成分を安定に含有する飲料である。さらに本発明の機能性飲料は,水不溶性機能性成分の不快味や不快臭が低減され,ガレート型カテキンの苦渋味やコラーゲンの不快味のない嗜好性の高い飲料である。」
・「【0024】
〔(d)水不溶性機能性成分〕
・・・具体的には,ポリフェノール類,カロテノイド,アルカロイド,不飽和脂肪酸類,天然物の有機溶媒抽出物,などを指す。中でも,本発明の飲料においては,・・・還元型コエンザイムQ10,・・・ルテイン,・・・が好適である。」
・「【0026】
本発明の機能性飲料は,前記(a)ガレート型カテキンの含有量[A](重量%)と前記(b)コラーゲンの含有量[B](重量%)と前記(c)大豆多糖類の含有量[C](重量%)と前記(d)水不溶性機能性成分の含有量[D](重量%)とを,以下の式の範囲内に調整することにより,ガレート型カテキン,コラーゲン及び水不溶性機能性成分を含有しながら,これらの成分に由来する不快味や不快臭が低減され,しかも分離,沈殿などが生じない安定な状態の外観を有する飲料とすることができる。
i)0.02≦[A]≦0.5
ii)3.0≦([B]/[A])≦20
iii)([C]/[A])≧1.0
iv)0.0001≦[D]≦0.6」
・「【0033】
・・・なお,本発明の機能性飲料のpHについては特に限定はない。」
・「【0044】
(実施例4)
ゼラチン0.6gと大豆多糖類0.2gを60℃の水6gに溶かした。ここに緑茶抽出物(・・・ガレート型カテキン含有率65重量%・・・)0.15gを80℃の水5gに溶かした水溶液を加え,その後,還元型コエンザイムQ10・・・0.02gを加え,100℃に加熱して攪拌混合した。そしてビタミンCを0.2g,甘味料0.05g,レモン香料0.1gを加え,最後に水を加えて総重量100gの飲料を作製した。これをガラス瓶に入れ密栓し,85℃で30分加熱殺菌し,1日静置して放冷した。得られた飲料は,成分の沈殿や分離がなく,・・・安定性に優れた機能性飲料であった。また,得られた機能性飲料は,還元型コエンザイムQ10に由来する不快味や不快臭が低減され,ガレート型カテキン成分に由来する苦渋味やコラーゲン成分に由来する不快味のない嗜好性の高い飲料であった。」
・「【0048】
(実施例7)
ゼラチン1.0gと大豆多糖類0.35gを60℃の水3gに溶かした。ここにEGCg0.18gを80℃の水2gに溶かした水溶液を加え,その後,ルテイン(ルテイン含有量40重量%・・・)0.01gを加え,100℃に加熱して攪拌混合し,最後に水を加えて総重量100gの飲料を作製した。これをガラス瓶に入れ密栓し,85℃で30分加熱殺菌し,1日静置して放冷した。得られた飲料は,成分の沈殿や分離がなく,・・・安定性に優れた機能性飲料であった。また,得られた機能性飲料は,ルテインに由来する不快味や不快臭が低減され,ガレート型カテキン成分に由来する苦渋味やコラーゲン成分に由来する不快味のない嗜好性の高い飲料であった。」
・「【0051】


・「【0058】
(試験例3:物理化学的安定性)
実施例4で作製した,ガラス瓶の容器に入れて密栓した機能性飲料を,そのままの状態で約3ヶ月間室温下にて保管した。保管後のガラス瓶内の飲料の様子を観察したところ,作製直後と同様に,成分の沈殿や分離がなかった。・・・還元型コエンザイムQ10に由来する不快味や不快臭が低減され,ガレート型カテキン成分に由来する苦渋味やコラーゲン成分に由来する不快味もなく,作製直後と同様に嗜好性の高い飲料のままであった。」
イ 以上の記載からすると,甲1には実施例7に関し,以下の発明(以下,それぞれ「甲1発明の1」,「甲1発明の2」,「甲1発明の3」,「甲1発明の4」という。)が記載されているといえる。
(甲1発明の1)
「ゼラチン,大豆多糖類,EGCg,ルテインを含み,
前記ルテインの含有量が飲料に対して0.004重量%であり,ガラス瓶に入れ密栓された飲料。」
(甲1発明の2)
「85℃で30分加熱殺菌する工程を含む,甲1発明の1に係る飲料の作製方法。」
(甲1発明の3)
「飲料を1日静置して放冷する,甲1発明の1に係る飲料の保管方法。」
(甲1発明の4)
「ゼラチン,大豆多糖類,EGCg,ルテインを含む飲料において,(a)EGCgの含有量[A]0.18重量%,(b)ゼラチンの含有量[B]1重量%,(c)大豆多糖類の含有量[C]0.35重量%,(d)ルテインの含有量[D]0.004重量%に調整することにより,成分の沈殿や分離が生じない,安定性に優れた飲料とする方法。」
(2) 甲3について
ア 甲3に記載された事項
・「


・「


イ 以上の記載からすると,甲3には,以下の発明(以下,それぞれ「甲3発明の1」,「甲3発明の2」という。)が記載されているといえる。
(甲3発明の1)
「ルテインを含み,ルテインの含有量が6mgである,10℃以下要冷蔵保存の,100ml瓶入りの野菜・果実ミックスジュース。」
(甲3発明の2)
「緑黄色野菜汁と果汁をブレンドする,甲3発明の1に係る飲料の作製方法。」
(3) 甲2,甲4の1,甲4の2について
ア 甲2
甲2には,以下の事項が記載されている。
・「野菜飲料は食品衛生法(第11条関連「食品,添加物糖の規格基準」清涼飲料水の部)におけるpH4.0以上4.6未満の清涼飲料水に区分されるものが主体となり,85℃,30分の加熱,またはそれと同等以上の効果を有する方法で殺菌することが,表1-1の清涼飲料水の製造基準で義務付けられている.」(6頁4?7行)
・「

」(8頁)
・「

」(9頁)
イ 甲4の1
甲4の1には,以下の事項が記載されている。
・「【請求項1】
グルコサミン類と,水中油型のエマルション粒子とを含む容器詰飲料。
・・・
【請求項3】
前記エマルション粒子が,カロチノイド類,脂溶性ビタミン類および脂溶性ビタミン様物質類からなる群より選択される少なくとも1種を含有する請求項1又は請求項2記載の容器詰飲料。」
・「【0017】
カロチノイド類は一般に植物素材から抽出することができる。これらのカロチノイド類は種々の機能を有しており,例えば,マリーゴールドの花弁から抽出するルテインは家禽の餌の原料として広く使用され,家禽の皮膚及び脂肪並びに家禽が産む卵に色を付ける機能がある。
【0018】
本発明においてカロチノイド類は,カロチノイド類の効果(例えば,人体における抗酸化効果,着色効果など)を十分に得る観点から,本飲料全体の質量に対して,好ましくは0.0001?0.1質量%,より好ましくは0.0005?0.05質量%,更に好ましくは0.001?0.02質量%である。0.0001質量%以上であればカロチノイド類の効果が充分であり,0.1質量%以下であれば添加量に対して効率よく効果を得ることができるため好ましい。」
ウ 甲4の2
甲4の2には,以下の事項が記載されている。
・「【請求項1】 インスリン分泌亢進アミノ酸及び抗酸化作用を有する食品素材を必須成分として含有させたことを特徴とする栄養補給組成物。」
・「【0016】本発明栄養補給組成物において用いられる抗酸化作用を有する食品素材には,例えばカルチノイド,・・・等が包含される。・・・
【0017】上記カロチノイドは,・・・α-カロチン,β-カロチン,γ-カロチン,リコペン,ルテイン,カンタキサンチン等や,之等を混合して又は単味で含む各種動植物等の粉末やエキス等であってもよい。」
・「【0019】・・・例えば飲料形態の本発明組成物を調製する場合は,カロチノイドでは飲料100ml中に0?30mg,好ましくは0.5?10mgの範囲で添加配合できる。」
・「【0045】
【実施例1?16】抗酸化ビタミン(・・・ルテイン,・・・),インスリ分泌亢進アミノ酸(アルギニン,リジン),・・・を表1及び表2に示すそれぞれの配合量で用いて,飲料形態の本発明組成物を調製した。」
・「【0047】
【表2】


(4) 甲1に基づく検討
ア 本件発明1について
(ア) 対比
本件発明1と甲1発明の1とを,その機能に照らして対比すると,甲1発明の1の「ルテイン」,「ガラス瓶に入れ密栓された飲料」は,それぞれ,本件発明1の「ルテイン」,「飲料」に相当する。
そして,甲1発明の1の「ルテイン」の含有量は0.004%(=40ppm)であるから,本件発明1のルテイン含有量の範囲内である。
そうすると,本件発明1と甲1発明の1とは,以下の点で一致し,相違する。
(一致点)
「ルテインを含み,
前記ルテインの含有量が飲料に対して,10ppm以上50ppm以下である,飲料。」
(相違点1)
本件発明1は,「pH4.0以上(ただし,4.0は除く)4.8以下である」のに対し,甲1発明の1はpHが明らかでない点。
(相違点2)
本件発明1は,「10℃超の常温流通及び保管用飲料」であるのに対し,甲1発明の1はその点が明らかでない点。
(イ) 判断
a まず,相違点1についてみるに,甲1には,「本発明の機能性飲料のpHについては特に限定はない。」(【0033】)と記載されているのみで,特定のpHに調整する旨の記載はない。
ところで,甲1には,甲1発明の1について,85℃で30分加熱殺菌して,作製されたことが記載されているところ(甲1【0048】),食品衛生法により,pH4.0以上4.6未満の清涼飲料水に区分されるものについては,85℃,30分間,又は同等以上の効果を有する方法で殺菌することが義務付けられている(甲2)。
しかし,85℃,30分間,又は同等以上の効果を有する方法で殺菌された清涼飲料水が,当然にpH4.0以上4.6未満の飲料であるとまでは認められない(例えば,特開2004-129596号公報(意見書(特許権者)添付参考資料)には,ストロベリースムージー風飲料(pH3.8)の調整に当たり,85℃30分間加熱殺菌した旨記載されている(【0015】)。)。
次に,相違点2についてみるに,甲1発明の1は,「ガラス瓶に入れ密栓し,・・・1日静置して放冷した。」(甲1【0048】)ものであるが,甲1には,ルテインを含む10℃超の常温流通及び保管用飲料に関する記載はない(還元型コエンザイムQ10を含む飲料について,約3ヶ月間室温下にて保管したところ,成分の沈殿や分離がなかった旨記載されているが(試験例3(【0044】,【0058】)),ルテインを含むものではなく,ルテインの分解や減少について確認したものではない。)。
そして,本件発明1は,「pH4.0以上(ただし,4.0は除く)4.8以下である」,「10℃超の常温流通及び保管用飲料」であることにより,ルテインの安定性に優れる10℃超の常温流通及び保管用飲料を提供できるといった顕著な効果を奏するものであるから,相違点1及び2は実質的なものである。
そうすると,本件発明1は甲1に記載された発明であるとは認められない。
b 甲1によれば,甲1発明の1は,飲料の,(a)EGCgの含有量[A](重量%)と(b)ゼラチンの含有量[B](重量%)と(c)大豆多糖類の含有量[C](重量%)と(d)ルテインの含有量[D](重量%)とを,所定の範囲内に調整することにより,成分の沈殿や分離が生じない,安定な状態の飲料としたものであると認められるが(【0026】),ルテインの分解や減少について着目したものではない。既に述べたとおり,甲1には,飲料を特定のpHに調整する旨の記載はなく,ルテインを含む10℃超の常温流通及び保管用飲料に関する記載はない。
ルテイン含有量24ppmの常温保存可能な飲料が従前知られているとしても(甲5),甲1発明の1において,上記相違点1及び2に係る本件発明1の構成とすることの動機付けは,特段認められない。
c これに対し,本件発明1は,相違点1及び2に係る構成を備えることにより,ルテインの安定性に優れる10℃超の常温流通及び保管用飲料を提供できるといった顕著な効果を奏するものである。
この点に関し,特許異議申立人は,試験例でルテイン製剤として1種類のみが使用されていること,使用されたルテイン製剤がどのようなものであるか(乳化物であるのか分散物であるのか等)不明であることを理由に,技術常識やルテイン製剤のルテイン以外の成分がルテインの安定性に及ぼす影響に照らして,試験例の結果から,どんな条件でもpHさえ調整すれば,10℃超の常温流通及び保管下で効果を奏するとはいえない,と主張している(意見書(特許異議申立人)3頁)。
しかし,試験例の結果から,本件発明1が当該効果を奏するといえることは明らかである(後記5)。
一般的に,温度が高温になるほど粒子同士の衝突頻度が上がり安定性が低下するとしても,一般的な常温流通及び保管下でルテインの安定性に影響を及ぼすとまでは認められず,試験例(37℃2週間保管)と同様の効果を奏するものと認められる。
また,β-カロテンを含む飲料に関する,β-カロテンに係る製剤の室温保存での状況(甲6,7)から,ルテインの形態(乳化状態,結晶分散状態)が常温での安定性に影響を及ぼすとは認められない。
d そうすると,甲1発明の1において,相違点1及び2に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものとは認められない。
よって,本件発明1は,甲1発明の1及び甲2,5に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
(ウ) 以上のとおり,本件発明1は,甲1に記載された発明であるとは認められず,甲1発明の1及び甲2,5に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
イ 本件発明2?6について
本件発明2?6は,本件発明1を特定するための事項を全て含むものであるところ,既に述べたとおり,本件発明1は,甲1に記載された発明であるとは認められず,甲1発明の1及び甲2,5に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
そうすると,本件発明2?4は,その余事項を検討するまでもなく,同様の理由により,甲1に記載された発明であるとは認められず,甲1発明の1及び甲2,5に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
また,本件発明5は,その余事項を検討するまでもなく,同様の理由により,甲1に記載された発明(甲1発明の2)であるとは認められず,甲1発明の2及び甲2,5に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
そして,本件発明6は,その余事項を検討するまでもなく,同様の理由により,甲1に記載された発明(甲1発明の3)であるとは認められず,甲1発明の3及び甲2,5に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
ウ 本件発明7について
(ア) 対比
本件発明7と甲1発明の4とを,その機能に照らして対比すると,甲1発明の4の「ルテイン」,「飲料」は,それぞれ,本件発明7の「ルテイン」,「飲料」に相当する。
また,甲1発明の4の「ルテイン」の含有量は0.004%(=40ppm)であるから,本件発明7のルテイン含有量の範囲内である。
そして,甲1発明の4は,ルテインを含む飲料において,安定性に優れた飲料とする方法であるから,本件発明7と同様に,ルテインの飲料中安定性を調節する方法であるといえる。
そうすると,本件発明7と甲1発明の4とは,以下の点で一致し,相違する。
(一致点)
「ルテインを含む飲料に対して,10ppm以上50ppm以下含まれるルテインの飲料中安定性を調節する方法。」
(相違点3)
本件発明7は,「飲料のpHを,4.0以上(ただし,4.0は除く)4.8以下の範囲において,調節することで」,「ルテインの飲料中安定性を調節する方法」であるのに対し,甲1発明の4はpHを調整するものであるか明らかでない点。
(相違点4)
本件発明7は,「10℃超の常温流通及び保管用飲料」に係る方法であるのに対し,甲1発明の4はその点が明らかでない点。
(イ) 判断
相違点3及び4は,前記相違点1及び2と実質的に同じであると認められ,その判断についても同様である。
そうすると,本件発明1について検討したのと同様の理由により,本件発明7は,甲1に記載された発明であるとは認められず,甲1発明の4及び甲2,5に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
(5) 甲3に基づく検討
ア 本件発明1について
(ア) 対比
本件発明1と甲3発明の1とを,その機能に照らして対比すると,甲3発明の1の「ルテイン」,「100ml瓶入りの野菜・果実ミックスジュース」は,それぞれ,本件発明1の「ルテイン」,「飲料」に相当する。
そうすると,本件発明1と甲3発明の1とは,以下の点で一致し,相違する。
(一致点)
「ルテインを含む,飲料。」
(相違点5)
本件発明1は,「前記ルテインの含有量が飲料に対して,10ppm以上50ppm以下であ(る)」のに対し,甲3発明の1の「ルテイン」の含有量は,100ml当たり6mg(=60ppm)である点。
(相違点6)
本件発明1は,「pH4.0以上(ただし,4.0は除く)4.8以下である」のに対し,甲3発明の1はpHが明らかでない点。
(相違点7)
本件発明1は,「10℃超の常温流通及び保管用飲料」であるのに対し,甲1発明の3は「10℃以下要冷蔵保存」の飲料である点。
(イ) 判断
甲3発明の1は,完成され上市される商品に係る飲料であるから,ルテイン含有量が10ppm以上50ppm以下である飲料が知られているとしても(甲1,4の1,4の2),特徴点であるルテインの含有量を減ずる動機付けは認められず,同様に,保存方法について変更する動機付けも認められない。
甲3にはpHに関する記載は特段なく,野菜飲料が食品衛生法におけるpH4.0以上4.6未満の清涼飲料水に区分されるものが主体となるとしても(甲2),甲3発明の1が当然にpH4.0以上4.6未満の飲料であるとまでは認められないとともに,そうすることの動機付けも特段認められない。
そして,既に述べたとおり,本件発明1は,顕著な効果を奏するものである(前記(4)ア(イ))。
そうすると,甲3発明の1において,相違点5?7に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものとは認められない。
(ウ) 以上のとおり,本件発明1は,甲3発明の1及び甲1,2,4の1,4の2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
イ 本件発明2?5について
本件発明2?5は,本件発明1を特定するための事項を全て含むものであるところ,既に述べたとおり,本件発明1は,甲3発明の1及び甲1,2,4の1,4の2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
そうすると,本件発明2?4は,その余事項を検討するまでもなく,同様の理由により,甲3発明の1及び甲1,2,4の1,4の2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
また,本件発明5は,その余事項を検討するまでもなく,同様の理由により,甲3発明の2及び甲1,2,4の1,4の2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

4 取消理由3(36条4項1号)
(1) 本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載には,実施例に関する飲料の製造方法が具体的に記載され(【0029】),pHやルテインの測定方法も記載されている(【0030】,【0031】)。
また,ルテイン製剤は市販されており,当業者であれば入手することができるものと認められる。
そうすると,当業者は,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から,過度の試行錯誤を要することなく,本件発明の飲料を製造することができるものと認められる。
(2) 特許異議申立人は,
・ルテインが乳化状態か結晶分散状態かでは存在形態が大きく異なり,両者に同様の技術が利用できるとは考えがたく,高温になるほど安定性が低下することが技術常識であることを踏まえれば,pHさえ本件発明に規定する範囲内であれば安定な飲料を実施することができるということはできない,
・試験例に係るルテイン製剤におけるルテイン以外の成分の影響を無視することができず,試験例と同じpHに調整することで,常温流通に耐えうるものが得られるか否か,当業者が理解することができないから,本件発明を実施することができない,
などと主張している(意見書(特許異議申立人)4,5頁)
しかし,既に述べたとおり,一般的に高温になるほど安定性が低下するとしても,一般的な常温流通及び保管下でルテインの安定性に影響を及ぼすとまでは認められず,ルテインの形態(乳化状態,結晶分散状態)が常温での安定性に影響を及ぼすとも認められない。
また,一般的に,ルテイン製剤中のルテイン以外の成分がルテインの安定性を損なうものとは解されず,ルテインの分解,減少に影響を及ぼすとは認められない(後記5(5))。
(3) 以上のとおりであるから,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が,当業者が実施できる程度に明確かつ十分ではないとは認められない。

5 取消理由4(36条6項1号)
(1) 本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載によれば, ルテインは,強力な抗酸化作用を持つカロテノイドの1種で,眼の網膜の保護や治癒に有益な成分として知られ,眼の視覚機能向上,眼精疲労からくる肩こりや全身の倦怠感の緩和にも効果を発揮することから,飲料をはじめとする様々な食品に配合されているが,飲料に含有されるルテインは経時的に減少することが確認されており,ルテインの安定性の向上が求められているところ,本件発明は,以上の実情に鑑み,ルテインの安定性に優れる飲料,この飲料を含む容器詰め飲料,容器詰飲料の作製方法,及び容器詰飲料の流通又は保存方法,並びにルテインの飲料中安定性を調節する方法を提供することを目的としてなされた。本件発明者らは,ルテインの安定性が,飲料のpHによって異なることを見出し,本件発明を完成させたもので,本件発明によれば,ルテインの安定性に優れる飲料,この飲料を含む容器詰め飲料,容器詰飲料の作製方法,及び容器詰飲料の流通又は保存方法,並びにルテインの飲料中安定性を調節する方法を提供できるというものである(【0002】?【0008】)。
(2) また,発明の詳細な説明には,以下の点が記載されている。
・本件発明の飲料はルテインを含み,pH3.8以上4.8以下であり,好ましくはpH4.0以上4.6以下,より好ましくは4.2以上4.6以下である。飲料のpHが前記範囲であることにより,微生物制御が施された状態でルテインの安定性を維持することができる。pHが3.8未満の酸性の飲料中では,脱水酸基化によりルテインが分解しやすいと考えられ,ルテインが経時的に減少してしまうため好ましくない。pHが4.8超の飲料では,微生物制御が難しくなり,品質が安定しないため好ましくない(【0011】)。
・微生物制御の観点では,pHが4.0以上の飲料は,pH4.0未満の飲料よりも殺菌価の高い加熱殺菌処理,例えば85℃30分での加熱殺菌処理が必要となるため(厚生省告示370号),ルテインが加熱殺菌処理により分解されるデメリットが予想されるが,pHが4.0以上の飲料中においてルテインの安定性が増すメリットがデメリットを上回るから,pHは4.0以上であってもよい(【0013】)。
・pHが4.6超の飲料では,さらに殺菌価の高い加熱殺菌処理,例えば120℃4分以上の加熱殺菌処理が必要であるため(衛食第245号),ルテインの安定性を向上させる観点では,pHは大きい方が好ましいが,飲料の嗜好性を維持する観点では,pHは4.6以下であることが好ましい(【0014】)。
・本件発明の飲料の総ルテインの含有量は,飲料に対して10ppm以上であることが好ましく,総ルテインの含有量が10ppm以上であることにより,ルテインの摂取効果を期待できる一方,本件発明の飲料におけるルテインの安定性は高いことから,過剰のルテインを含有させる必要性は低く,嗜好性の観点では,総ルテインの含有量は飲料に対して,50ppm以下が好ましい(【0016】)。
・本件特許明細書でいうルテインは,フリー体で存在するルテインである(【0017】)。
・本件発明の飲料の提供形態は,容器内に含まれる容器詰め飲料であることが好ましい(【0023】)。
・本件発明の容器詰め飲料の作製方法は,飲料に,85℃,30分間の加熱殺菌と生物学的に同等以上の殺菌価で殺菌を行う工程を含んでもよい(【0024】)。
・本件発明の容器詰め飲料の流通又は保存方法は,設備,コストなどの観点から,10℃超の常温下が好ましい(【0026】)。
・本件発明のルテインの飲料中安定性を調節する方法は,ルテインを含む飲料のpHを調整する。pH7以内でpHを上げて弱酸性化を図ることにより,ルテインの飲料中安定性を向上させることができ,その結果,飲料中のルテインの経時的な減少を抑制することが可能となる(【0027】)。
(3) そして,このような本件発明について,実施例(試験例1?3)として,
・果糖ブドウ糖液糖5.5質量%,ビタミンC0.1質量%,ルテイン製剤0.18質量%,微量の健康素材(アミノ酸,カフェインなど),人工甘味料を加え,酸味料(無水クエン酸)にてpH3.6,pH3.8,pH4.0,pH4.2,pH4.4となるようにそれぞれ調合し,フラッシュ・パスツリゼーション殺菌装置(FP)(93℃で15秒間)により殺菌し,炭酸ガスを圧入させて得られた炭酸飲料(試験例1)
・炭酸ガスの圧入を行わず,超高温瞬間殺菌装置(UHT)(124℃,30秒間)により殺菌を行った以外は,試験例1と同様の条件により得られた,pH3.6,pH4.0,pH4.3,pH4.6となる非炭酸飲料(試験例2)
・炭酸ガスの圧入を行わず,フラッシュ・パスツリゼーション殺菌装置(FP)又は超高温瞬間殺菌装置(UHT)により殺菌を行った以外は,試験例1と同様の条件により得られた,pH3.6,pH4.0となる非炭酸飲料(試験例3)
が記載され,これらの炭酸飲料(4℃で保管)の初期ルテイン量と,37℃で2週間保管した後の保管後ルテイン量とを測定し,ルテイン残存率[保管後のルテイン量/初期ルテイン量]を求めたところ,飲料のpHを上げることにより,ルテインの残存率を高く保持できることが確認されたものである(【0029】?【0033】,【0035】?【0038】,図1?3)。
(4) このように,発明の詳細な説明には本件発明が記載されている上,本件発明により,ルテインの安定性に優れる10℃超の常温流通及び保管飲料,この飲料を含む容器詰め飲料,容器詰飲料の作製方法,及び容器詰飲料の流通又は保存方法,並びにルテインの飲料中安定性を調節する方法を提供できることが,実施例により具体的に裏付けられていることがわかる。
(5) これに対し,特許異議申立人は,
・実施例に係る飲料の「ルテイン製剤」中にどの程度のフリー体のルテインが含まれているか不明で,実施例に係る飲料にフリー体のルテインが10ppm以上50ppm以下の範囲で存在しているか不明である,
・当該「ルテイン製剤」中の乳化剤や分散剤の種類や量は,ルテインの安定性に深く関わるはずであるが,どのような乳化剤や分散剤がどの程度使用されているか不明である,
・仮に,実施例に係る飲料にフリー体のルテインが10ppm以上50ppm以下の範囲で存在しているとしても,1点の試験例をもって,本件発明全体へ拡張ないし一般化することはできない,
・ルテインの含有量が50ppm以下という点にいかなる意義があるのか課題との関係も明らかでない,
・本件発明2に関連し,試験例2(図2)では,pH4.3の飲料とpH4.0の飲料との間でルテイン残存率(%)が1.3の値しか違いがない点からも,課題解決に対応していない,
などと主張している(特許異議申立書26?28頁)。
しかし,発明の詳細な説明には,フリー体のルテインを使用したことが記載され(【0031】),実施例として,本件発明の範囲外のものを殊更選択するとは考えがたいことから,本件発明の実施例におけるルテインの含有量が10ppm以上50ppm以下であることが窺える。
仮に,フリー体のルテインの含有量が不明であるとしても,実施例は,同一の「ルテイン製剤」を同一量含有させ,pHを変化させて得られた飲料に係るものであるから,実施例の結果から,ルテインの残存率とpHとの関連性が理解できる。
そして,飲料中のルテインの含有量がルテインの分解,減少に関わるとする証拠は特段認められず,ルテインの含有量の違いによって,飲料のpHを変化させた際の傾向が異なるとは解されないから,ルテインの含有量が10ppm以上50ppm以下の飲料についても,実施例と同様の傾向を示すものと認められる。
また,一般的に,ルテイン製剤中のルテイン以外の成分が,有効成分であるルテインの安定性を損なうものとは解されないから,ルテイン以外の成分がルテインの分解,減少に影響を及ぼすとは認められない。
よって,試験例1?3の結果を,本件発明の範囲まで拡張ないし一般化できるものと認められる。
なお,本件発明におけるルテインの含有量は,本件発明の課題との関係で定められたものではないから(本件特許明細書【0016】),ルテインの含有量が50ppm以下という点が課題との関係でどのような技術的な意義を有するかは,本件発明が課題を解決するものであるか否かの判断に影響しない。
また,本件発明2はpH4.2以上と特定しているところ,試験例2においてpH4.3の飲料とpH4.0の飲料のルテイン残存率(%)を踏まえても,試験例1,2の結果からすると,pH4.2以上であれば良好な結果が得られるものと解され,本件発明2は課題を解決できるものと認められる。
(6) 以上のとおりであるから,本件発明は,発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えているものとは認められない。

6 取消理由5(36条6項2号)
前記第2のとおり本件訂正が認められ,請求項6において請求項5を引用しないものとなったから,取消理由5は解消した。

第5 むすび
以上のとおり,本件の請求項1?7に係る特許は,特許法29条1項3号,29条2項の規定に違反してされたものとは認められず,同法36条4項1号,36条6項1号,36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとは認められないから,前記取消理由により取り消すことはできない。
また,他に本件の請求項1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルテインを含み、
前記ルテインの含有量が飲料に対して、10ppm以上50ppm以下であり、
pH4.0以上(ただし、4.0は除く)4.8以下である、10℃超の常温流通及び保管用飲料。
【請求項2】
pH4.2以上である請求項1記載の飲料。
【請求項3】
pH4.6以下である請求項1又は2記載の飲料。
【請求項4】
請求項1から3いずれか記載の飲料を容器内に含む容器詰め飲料。
【請求項5】
飲料に、85℃、30分間の加熱殺菌と生物学的に同等以上の殺菌価で殺菌を行う工程を含む請求項4記載の容器詰め飲料の作製方法。
【請求項6】
請求項4記載の容器詰め飲料の流通又は保存方法であって、前記飲料を10℃超の常温で保管する方法。
【請求項7】
ルテインを含む10℃超の常温流通及び保管用飲料のpHを、4.0以上(ただし、4.0は除く)4.8以下の範囲において、調節することで、飲料に対して、10ppm以上50ppm以下含まれるルテインの飲料中安定性を調節する方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-06-21 
出願番号 特願2016-60708(P2016-60708)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A23L)
P 1 651・ 537- YAA (A23L)
P 1 651・ 113- YAA (A23L)
P 1 651・ 536- YAA (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 白井 美香保  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 窪田 治彦
槙原 進
登録日 2017-04-28 
登録番号 特許第6132947号(P6132947)
権利者 アサヒ飲料株式会社
発明の名称 飲料及びルテインの飲料中安定性を調節する方法  
代理人 正林 真之  
代理人 正林 真之  
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