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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  F25B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F25B
審判 全部申し立て 2項進歩性  F25B
管理番号 1342983
異議申立番号 異議2016-701067  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-09-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-11-18 
確定日 2018-06-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5927633号発明「空気調和機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 (結論) 特許第5927633号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2-4〕について、訂正することを認める。 特許第5927633号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5927633号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成28年5月13日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人松田亘弘により請求項1ないし4に対して平成28年11月18日に特許異議の申立てがされ、平成29年2月1日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年4月24日付けで特許権者により意見書の提出及び訂正請求がされ、平成29年6月7日付けで特許異議申立人から意見書が提出され、その後、平成29年8月2日付けで取消理由が通知され、その指定期間内に特許権者により平成29年11月2日付けで意見書の提出び訂正請求がされ、平成29年12月21日付けで特許異議申立人より意見書が提出され、その後さらに、平成30年3月2日付けで取消理由が通知され、その指定期間内に特許権者により平成30年4月26日付けで意見書の提出び訂正請求がされ、平成30年5月7日付けの通知書で、特許異議申立人に期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許異議申立人からは応答がなかったものである。
なお、平成29年4月24日付け及び平成29年11月2日付けの訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取下げられたものとみなす。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
平成30年4月26日付けの訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、「前記冷媒として、R32単独の冷媒またはR32を所定の質量パーセント以上含む混合冷媒を使用し、前記室外機の有する圧縮機には、液冷媒と潤滑油の二層分離が生じないように所定値以上の潤滑油が混合した冷媒を供給する」と記載されているのを、「前記冷媒として、R32単独の冷媒またはR32を70質量パーセント以上含む混合冷媒を使用し、液冷媒と潤滑油の二層分離が生じうる低温域において前記二層分離が生じないように、供給油量調整部により前記室外機の有するアキュムレータ内の潤滑油混合率を所定値以上に調整し、前記室外機の有する圧縮機に所定値以上の潤滑油が混合した冷媒を供給する」に訂正する。

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2において、「前記室外機は、前記圧縮機と、該圧縮機の吐出側に接続され、前記圧縮機から吐出された冷媒中の油を分離して回収する油分離器と、前記圧縮機の流入側に接続され、冷媒から液冷媒を分離して蓄積し、ガス冷媒を前記圧縮機に供給するためのアキュムレータと、前記油分離器で分離した潤滑油を前記アキュムレータに戻すことで、前記アキュムレータ内に蓄積される液冷媒と潤滑油との混合液における潤滑油混合率を前記所定値以上に調整するための供給油量調整部と、を備える請求項1に記載の空気調和機。」と記載されているのを、「室内機と室外機を配管を介して接続し、冷媒を循環させる空気調和機において、前記冷媒として、R32単独の冷媒またはR32を70質量パーセント以上含む混合冷媒を使用し、前記室外機の有する圧縮機には、液冷媒と潤滑油の二層分離が生じうる低温域において前記二層分離が生じないように所定値以上の潤滑油が混合した冷媒を供給し、前記室外機は、前記圧縮機と、該圧縮機の吐出側に接続され、前記圧縮機から吐出された冷媒中の油を分離して回収する油分離器と、前記圧縮機の流入側に接続され、冷媒から液冷媒を分離して蓄積し、ガス冷媒を前記圧縮機に供給するためのアキュムレータと、前記油分離器で分離した潤滑油を前記アキュムレータに戻すことで、前記アキュムレータ内に蓄積される液冷媒と潤滑油との混合液における潤滑油混合率を前記所定値以上に調整するための供給油量調整部と、を備える空気調和機。」に訂正する。

(3) したがって、特許権者は、特許請求の範囲を、次の訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを請求する(下線は訂正箇所を示す。)。
「 【請求項1】
室内機と室外機を配管を介して接続し、冷媒を循環させる空気調和機において、
前記冷媒として、R32単独の冷媒またはR32を70質量パーセント以上含む混合冷媒を使用し、
液冷媒と潤滑油の二層分離が生じうる低温域において前記二層分離が生じないように、供給油量調整部により前記室外機の有するアキュムレータ内の潤滑油混合率を所定値以上に調整し、前記室外機の有する圧縮機に所定値以上の潤滑油が混合した冷媒を供給する、
空気調和機。
【請求項2】
室内機と室外機を配管を介して接続し、冷媒を循環させる空気調和機において、
前記冷媒として、R32単独の冷媒またはR32を70質量パーセント以上含む混合冷媒を使用し、
前記室外機の有する圧縮機には、液冷媒と潤滑油の二層分離が生じうる低温域において前記二層分離が生じないように所定値以上の潤滑油が混合した冷媒を供給し、
前記室外機は、
前記圧縮機と、
該圧縮機の吐出側に接続され、前記圧縮機から吐出された冷媒中の油を分離して回収する油分離器と、
前記圧縮機の流入側に接続され、冷媒から液冷媒を分離して蓄積し、ガス冷媒を前記圧縮機に供給するためのアキュムレータと、
前記油分離器で分離した潤滑油を前記アキュムレータに戻すことで、前記アキュムレータ内に蓄積される液冷媒と潤滑油との混合液における潤滑油混合率を前記所定値以上に調整するための供給油量調整部と、
を備える空気調和機。
【請求項3】
前記供給油量調整部により前記油分離器から前記アキュムレータに戻される潤滑油の返油率をx(x=潤滑油流量/冷媒全流量)、
前記アキュムレータから前記圧縮機に流れる混合液の比率をR(R=(液冷媒流量+潤滑油流量)/冷媒全流量)、
前記アキュムレータ内の液冷媒と潤滑油との混合液が二層に分離する限界の潤滑油混合率をn(n=潤滑油量/液冷媒量)、
前記油分離器から冷凍サイクルへ流れる潤滑油の循環率をy(y=潤滑油流量/冷媒全流量)としたとき、x≧n・R-yが成立する、
請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記nの値を0.4以上に設定する、
請求項3に記載の空気調和機。」

2 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否等
(1) 訂正事項1について
上記訂正事項1は、本件訂正前の請求項1について、請求項1に係る発明の使用する冷媒に関し、本件訂正前の「R32単独の冷媒またはR32を所定の質量パーセント以上含む混合冷媒」を本件訂正後の「R32単独の冷媒またはR32を70質量パーセント以上含む混合冷媒」として、冷媒をより具体的に特定し、さらに限定すると共に、請求項1に係る発明の冷媒の供給に関し、本件訂正前の「前記室外機の有する圧縮機には、液冷媒と潤滑油の二層分離が生じないように所定値以上の潤滑油が混合した冷媒を供給する」を本件訂正後の「液冷媒と潤滑油の二層分離が生じうる低温域において前記二層分離が生じないように、供給油量調整部により前記室外機の有するアキュムレータ内の潤滑油混合率を所定値以上に調整し、前記室外機の有する圧縮機に所定値以上の潤滑油が混合した冷媒を供給する」として、液冷媒と潤滑油の二層分離が生じうる低温域においてという供給の条件を特定すると共に、供給油量調整部により室外機の有するアキュムレータ内の潤滑油混合率を所定値以上に調整する調整手段を特定して、さらに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。また、特許明細書の【0017】の記載事項と【0004】、【0008】、【0020】、【0040】、【0045】及び【0047】の記載事項とからすれば、上記訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

(2) 訂正事項2について
上記訂正事項2は、本件訂正前の請求項2について、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とすると共に、請求項2に係る発明の使用する冷媒に関し、本件訂正前の「R32単独の冷媒またはR32を所定の質量パーセント以上含む混合冷媒」を本件訂正後の「R32単独の冷媒またはR32を70質量パーセント以上含む混合冷媒」として、冷媒をより具体的に特定すると共に、請求項2に係る発明の冷媒の供給に関し、本件訂正前の「液冷媒と潤滑油の二層分離が生じないように」を本件訂正後の「液冷媒と潤滑油の二層分離が生じうる低温域において前記二層分離が生じないように」として、供給の条件を特定して、さらに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。また、特許明細書の【0017】の記載事項からすれば、上記訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

(3) 一群の請求項について
本件訂正は本件訂正前の一群の請求項1ないし4について請求するものであるから、特許法第120条の5第4項の規定についても適合するものである。

3 むすび
したがって、本件訂正による上記訂正事項1及び2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第4項の規定に適合し、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正後の請求項1、〔2-4〕について、訂正することを認める。
本件訂正後の請求項2ないし4に係る訂正事項2は、いわゆる引用関係の解消を目的とする訂正を含み、その訂正は認められるものである。そして、特許権者から、訂正後の請求項2ないし4について訂正が認められるときは、請求項1とは別の訂正単位として扱われることの求めがあったことから、本件訂正後の請求項1、〔2-4〕について、請求項ごと又は一群の請求項ごとに訂正することを認める。

第3 当審の判断
1 特許第5927633号の請求項1ないし4に係る発明
特許第5927633号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし4に係る発明(以下、請求項1ないし4に係る発明をそれぞれ「特許発明1ないし4」といい、それらを総合して「特許発明」という。)は、それぞれ、本件訂正により訂正された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものである(上記「第2 1 (3)」参照。)。

2 特許異議申立に係る各甲号証及び記載事項等
(1) 特許異議申立書の各甲号証
甲第1号証:特開2005-248773号公報
甲第2号証:特開2002-38176号公報
甲第3号証:特開2005-83704号公報
甲第4号証:特開2011-208860号公報
甲第5号証:特開2009-228976号公報
甲第6号証:特開2012-154509号公報

(2) 各甲号証の記載事項等
ア 甲第1号証には、次の事項が記載されている。
・「【0008】
上記目的を解決するために本発明の冷凍装置は、R32、R125,R134aからなるHFC系冷媒と、そのHFC系冷媒とで臨界溶解温度が0℃以下望ましくは-20℃以下となる溶解度ダイヤグラムから求めたエステル油との組合せを備えるものである。この冷媒範囲であれば使用する圧縮機の起動時の低温寝込み現象による摺動部潤滑不良を回避することができる。」

・「【0013】
この冷媒圧縮機がヒートポンプ用冷凍サイクルで使用する冷媒は、HFCのR410AやR407Cである。この場合の冷凍機油はHFCと相溶性の良いエステル油である。従来のHFC系冷媒用の冷凍機油としては、40℃の時の粘度が2?70cSt、100℃の時の粘度が1?9cStのものとし、エステル油の化学式がC・(CH_(2)OCOR^(2))_(4)-(1)でR^(2)が5?12の範囲のものが含まれており、ヒートポンプサイクルとしてはR^(2)がiC_(7)酸と iC_(8)酸の混合酸であるものを用いられていた。」

・「【0016】
現在、ルームエアコンは特に国内では室外機と室内機が分離しているセパレートタイプが主流である。寒冷地であってもセパレートタイプの室外機は屋外に設置される。この室外機では、圧縮機の停止時に外気温が0℃以下となると、温度の高い室内側の冷媒が温度の低い室外機に移動する。このとき圧縮機に貯留している冷凍機油14は、戻り冷媒により二層分離を起こす。冷凍機油であるエステル油より比重の重い冷媒14bは圧縮機の底部に溜る。圧縮機起動時には、クランク軸7の先端が液冷媒14bに浸っているので、液冷媒14bがクランク軸7を通り、軸穴13より摺動部に供給される。そのため、摺動部には一時的に低粘度の液冷媒が供給され潤滑油膜が切断され摺動部の潤滑不良が発生し、圧縮機の起動不良の要因となる。」

・「【0018】
図3に基本的な冷凍サイクル構成図を示す。冷媒圧縮機15、凝縮器16、膨張機構17、蒸発器18よりなる冷凍サイクルを備えた冷凍装置について説明する。冷媒圧縮機15は、低温低圧の冷媒ガスを圧縮し、高温高圧の冷媒ガスを吐出し凝縮器16に送る。凝縮器16に送られた冷媒ガスは、その熱を空気中に放出しながら高温高圧の冷媒液となり、膨張機構17に送られる。膨張機構を通過する高温高圧の冷媒液は絞り効果により低温低圧の湿り蒸気となり蒸発器18へ送られる。蒸発器18に入った冷媒は周囲から熱を吸収して蒸発し、蒸発器18を出た低温低圧の冷媒ガスは圧縮機15に吸い込まれ、以下同じサイクルが繰り返される。この冷凍サイクルにおいて、ルームエアコンなどでは中温度の蒸発器温度(-10℃以下)を必要としている。ここで冷媒と相溶性の劣る冷凍機油を使
用した場合、熱交換器や膨張機構で冷媒と分離した冷凍機油が蓄積し、圧縮機への油戻り性が落ちる。圧縮機から持ち出される冷凍機油が増加することにより摺動部に供給される油量が不足する現象が起きる。
【0019】
図4はR410Aとエステル油の相溶性試験の結果である。この二層分離温度曲線の下側が分離状態であり、最も高いところが臨界溶解温度である。この臨界溶解温度が低いほど相溶性に優れる冷凍機油と言える。
【0020】
ここでR410Aとエステル油の相溶性を比べた場合、従来のエステル油Aの臨界溶解温度は+9℃であるが、本発明における油Bは臨界溶解温度が-23℃と大幅に改善されている。これは原料脂肪酸の成分が異なるためである。油Aは、炭素数8のイソ有機酸(i-C8)と炭素数9のイソ有機酸(i-C9)の比率が50:50である原料脂肪酸とペンタエリスリトールからなるエステル油であった。本発明の油Bは、炭素数5のノルマル脂肪酸(n-C5)と炭素数9のイソ脂肪酸(i-C9)の比率が30:70である原料脂肪酸とペンタエリスリトールからなるエステル油であり、種々の実験から見出したのである。また、この特性は酸化防止剤や酸捕捉剤、極圧添加剤、消泡剤、腐食防止剤等の添加剤を添加しても適量であれば冷媒溶解特性はかわらない。
【0021】
図5は各冷媒と冷凍機油の臨界溶解温度である。油Aと油Bを比較したところ、R32を除き、いずれの冷媒においても油Bの方が臨界溶解温度が低くなっていることが判る。
【0022】
図6は油Bの冷媒溶解度ダイヤグラムである。また、図7は油Aの冷媒溶解度ダイヤグラムである。本油Bは従来の油Aに比べて冷媒相溶性が優れているため、例えばR32,R125,R134aの三成分のダイヤグラムを作成した場合、冷媒溶解部分が広くなっている。このダイヤグラムによるとR410A、R407Cとも-20℃以下の冷媒溶解を示し2層分離が解消されていることがわかる。また、三成分の混合比率が異なる例えばR407A(R32/125/134a=20/40/40wt%)、 R407B(R32/125/134a=10/70/20wt%)、R407D(R32/125/134a=15/15/70wt%)、R407E(R32/125/134a=25/15/60wt%)、R410B(R32/125=45/55wt%)等の冷媒についても-20℃以下の冷媒溶解範囲に入っていることが判る。また、本発明で使用されるエステル油に対する冷媒の溶解度は、冷媒ごとにそれぞれ異なることから、サイクル内では封入冷媒組成とは異なる部分も存在すると推測される。しかしその場合でも十分に溶解範囲に入っているといえる。」

・「【0025】
上述の説明のとおり、以上説明した本発明にて使用される冷凍機油を備えた本発明の冷凍装置及び圧縮機では、R410AやR407Cに代表されるHFC冷媒の組成が、図6のP134a(R134a=100%)、A0(R32/R134a=65/35)、B0(R32/R125=23/77)、P125(R125=100%)に囲まれた範囲と本発明のエステル油の組合せにおいて臨界溶解温度が0℃以下であるエステル油を用いることにより、寒冷地での低温寝込み現象による摺動部への液冷媒供給を回避することができる。そのため、摺動部の潤滑不良の発生を低減し、信頼性の高い冷媒圧縮機及び冷凍装置をそれぞれ提供することができる。」

・図5には、冷媒R32に対する臨界溶解温度(℃)が、「油A」で「20より大」、「油B」で「20より大」であることが記載されており、図6には、油Bの冷媒溶解度ダイヤグラムが示されており、【0025】の記載と合わせると、A0(R32/R134a=65/35),B0(R32/R125=77/23)のとき臨界溶解温度が0℃であること、及び、B0(R32/R125=77/23)からP125(R125=100%)までの混合冷媒では臨界溶解温度が0℃以下であることが示されている。

以上のことを総合すると、甲第1号証には、特に図6の記載内容を参照すると、次の「甲1発明」が記載されていると認められる。

「室内機と室外機が分離している、冷媒を使用する冷凍サイクルのルームエアコンにおいて、
前記冷媒として、B0(R32/R125=77/23)からP125(R125=100%)までの混合冷媒を使用し、
外気温が0℃以下となると従来の冷媒と冷凍機油の二層分離が起こるところ、前記混合冷媒と、その冷媒との臨界溶解温度が0℃以下となる溶解度ダイヤグラムから求めたエステル油である冷凍機油を用いて、冷媒と冷凍機油の臨界溶解温度を0℃以下とした、
ルームエアコン。」

イ 甲第2号証には、次の事項が記載されている。
・「【要約】
【課題】 特にジフルオロメタンに対して優れた相溶性を示す冷凍機用潤滑油組成物、及びこの冷凍機用潤滑油組成物と上記冷媒を含み、耐摩耗性,潤滑特性及び安定性などに優れる冷凍機用作動流体組成物を提供すること。
【解決手段】 基油として(a)ポリビニルエーテル系誘導体と、基油全量に基づき、(b)ポリカーボネート系含酸素化合物0.1重量%以上60重量%未満を含む冷凍機用潤滑油組成物であって、塩素を有しない炭素数1の冷媒に対し、合計量に基づき3?50重量%の範囲で含有させた場合、そのいずれかの含有率において、低温側の2層分離温度が5℃以下である冷凍機用潤滑油組成物、並びに(A)塩素を有しない炭素数1の冷媒、及び(B)上記冷凍機用潤滑油組成物を含む冷凍機用作動流体組成物である。」

・「【0002】
【従来の技術】一般に圧縮型冷凍機は少なくとも圧縮機、凝縮器、膨張機構(膨張弁など)、蒸発器、あるいは更に乾燥機から構成され、冷媒と潤滑油の混合液体がこの密閉された系内を循環する構造となっている。このような圧縮型冷凍機においては、装置の種類にもよるが、一般に、圧縮機内では高温、冷却器内では低温となるので、冷媒と潤滑油は低温から高温まで幅広い温度範囲内で相分離することなく、この系内を循環することが必要である。一般に、冷媒と潤滑油とは低温側と高温側に相分離する領域を有し、そして、低温側の分離領域の最高温度としては、5℃以下が望ましく、3℃以下が好ましい。より好ましくは0℃以下、さらに好ましくは-2℃以下、もっとも好ましくは-5℃以下である。もし、冷凍機の運転中に相分離が生じると、装置の寿命や効率に著しい悪影響を及ぼす。例えば、圧縮機部分で冷媒と潤滑油の相分離が生じると、可動部が潤滑不良となって、焼き付きなどを起こして装置の寿命を著しく短くし、一方蒸発器内で相分離が生じると、粘度の高い潤滑油が存在するため熱交換の効率低下をもたらす。
【0003】従来、圧縮型冷凍機、特に空気調整器の冷媒としては、クロロジフルオロメタン(以下、R22と称する。)やクロロジフルオロメタンとクロロペンタフルオロエタンの重量比48.8:51.2の混合物(以下、R502と称する。)が多く用いられ、また潤滑油としては、前記の要求特性を満たす種々の鉱油や合成油が用いられてきた。しかしながら、R22やR502は、成層圏に存在するオゾン層を破壊するなど環境汚染をもたらすおそれがあることから、最近、世界的にその規制が厳しくなりつつある。そのため、新しい冷媒として1,1,1,2-テトラフルオロエタン、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン、1,1,1-トリフルオロエタン(以下、それぞれR134a、R32、R125、R143aと称することがある。)に代表されるハイドロフルオロカーボンが注目されるようになってきた。このハイドロフルオロカーボン、特にR134a、R32、R125、R143aはオゾン層を破壊するおそれがなく、圧縮型冷凍機用冷媒として好ましいものである。
【0004】また、省エネルギーの観点から、さらなる対応が求められるようになり、上記新しい冷媒の中で、特にジフルオロメタン(R32)が注目されている。しかしながら、このR32冷媒は、従来の冷媒と比較して、使用圧力及び温度が共に高く、新たに潤滑上の問題が生じる可能性が高い。これまで、前記の新しい冷媒用として検討されてきた冷凍機用潤滑油においては、該R32に対して充分な相溶性を示すものはないのが実状であり、R134a、R407c、(R32とR125とR134aとの重量比23:24:52の混合物)、R410A(R32とR125との重量比50:50の混合物)と同等レベルの相溶性を示す冷凍機用潤滑油の開発が待たれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような状況下で、塩素を有しない炭素数1の冷媒、特にジフルオロメタン(R32)に対して優れた相溶性を示す冷凍機用潤滑油組成物、及びこの冷凍機用潤滑油組成物と上記冷媒を含み、耐摩耗性、潤滑特性及び安定性などに優れた冷凍機用作動流体組成物を提供することを目的とするものである。」

・「【0056】次に、本発明冷凍機用作動流体組成物は、(A)塩素を有しない炭素数1の冷媒、及び(B)前述の本発明の冷凍機用潤滑油組成物を含むものである。上記(A)成分の塩素を有しない炭素数1の冷媒としては、ジフルオロメタン(R32)を挙げることができる。該(A)成分と(B)成分との含有割合は、通常重量比で、5:95ないし99:1、好ましくは10:90ないし99:1の範囲で選定される。冷媒の量が上記範囲より少ない場合は冷凍能力の低下が見られ、また上記範囲よりも多い場合は潤滑性能が低下し好ましくない。本発明の冷凍機用潤滑油組成物は、種々の冷凍機に使用可能であるが、特に、圧縮型冷凍機の圧縮式冷凍サイクルに好ましく適用できる。例えば、特開平4-183788号公報、同8-259975号公報、同8-240362号公報、同8-253779号公報、同8-240352号公報、同5-17792号公報、同8-226717号公報、及び同8-231972号公報などに開示されている冷凍装置に好適であり、本発明の冷凍機用潤滑油組成物は、例えば添付図1?3の各々で示されるような油分離器及び/又はホットガスラインを有する圧縮式冷凍サイクルに適用する場合にもその効果を有効に奏する。なお、図1は、油分離器及びホットガスラインを有する「圧縮機-凝縮機-膨張弁-蒸発機」の圧縮式冷凍サイクルの一例を示す流れ図、図2は、油分離器を有する「圧縮機-凝縮機-膨張弁-蒸発機」の圧縮式冷凍サイクルの一例を示す流れ図で、図3は、ホットガスラインを有する「圧縮機-凝縮機-膨張弁-蒸発機」の圧縮式冷凍サイクルの一例を示す流れ図である。符号1は圧縮機、2は凝縮機、3は膨張弁、4は蒸発機、5は油分離器、6はホットガスライン、7はホットガスライン用弁である。通常、圧縮式冷凍サイクルは、図4で示すような圧縮機-凝縮機-膨張弁-蒸発機からなる。また、冷凍機用の潤滑油は、一般に、冷凍機に使用される冷媒と相溶性が良好なものが使用される。しかし、上記の冷凍サイクルで(A)成分を主成分とする冷媒を用いたときに、冷凍機を一般に使用されている冷凍機油で潤滑すると耐摩耗性が不十分であったり、安定性が不足して長期安定使用ができなかった。特に、電気冷蔵庫や小型エアコンディショナーなどの冷凍サイクルのように、膨張弁としてキャピラリーチューブを使用する場合にこの傾向が著しい。本発明の冷凍機用潤滑油組成物は、油分離器及び/又はホットガスラインを有する圧縮式冷凍サイクルを(A)成分を主成分とする冷媒使用して運転する場合にも、冷凍機用潤滑油組成物として有効である。
【0057】本発明の冷凍機用作動流体組成物においては、前記(A)成分と(B)成分との相溶性が極めてよく、特に低温側分離領域の最高温度としては5℃以下であり、好ましくは3℃以下、より好ましくは0℃以下、さらに好ましくは-2℃以下、もっとも好ましくは-5℃以下である。本発明の冷凍機用作動流体組成物は、このように、低温側の分離領域の最高温度が5℃以下であるので、冷凍機の運転中に低温側において相分離することがなく、冷凍機の安定した運転を可能とする。」

・「【0065】(注)
PVE-1:ポリ〔エチルビニルエーテル/イソブチルビニルエーテル(モル比9/1)〕共重合体
PVE-2:ポリ〔エチルビニルエーテル/イソブチルビニルエーテル(モル比8/2)〕共重合体
PVE-3:ポリエチルビニルエーテル
PC-1:製造例1で得たれたポリカーボネート
PC-2:製造例2で得られたポリカーボネート
実施例1?5
第2表に示す種類の基油(a)と基油(b)とを該表に示す割合で混合して潤滑油を調製し、その諸特性を求めた。結果を第2表に示す。
比較例1?3
第2表に示す種類のポリビニルエーテル単独からなる潤滑油の諸特性を求めた。結果を第2表に示す。」

・「【0068】(注)
1)臨界溶解温度における重量%は、〔試料/(試料+R32)〕×100の値である。
【0069】
【発明の効果】本発明の冷凍機用潤滑油組成物は、基油としてポリビニルエーテル系誘導体とポリカーボネート系含酸素化合物、好ましくは特定構造のポリカーボネート化合物を含むものであって、塩素を有しない炭素数1の冷媒、特にジフルオロメタンに対して優れた相溶性を示す。この冷凍機用潤滑油組成物と該冷媒を含む本発明の冷凍機用作動流体組成物は、耐摩耗性、潤滑特性及び安定性などに優れている。」

・【表2】(第2表)には「臨界溶解温度(℃)」が「15重量%」及び「20重量%」について、実施例1で「0」と「-8」、実施例2で「-4」と「-12」、実施例3で「-2」と「-16」、実施例4で「-3」と「-10」及び実施例5で「-9」と「-18」であることが記載されており、「油の相違により臨界溶解温度も相違すること」が理解でき、また、【0068】の記載と合わせると、「R32に対する潤滑油の混合量が増えると、臨界溶解温度(℃)が低下する」ことが理解できる。

・図1ないし図4には、圧縮機-凝縮機-膨張弁-蒸発機の圧縮式冷凍サイクルの一例を示す流れ図が、それぞれ示されている。

以上のことを総合すると、甲第2号証には、次の「甲2発明」が記載されていると認められる。

「冷媒配管を介して接続し、冷媒を循環させる圧縮式冷凍サイクルの空気調整器において、
前記冷媒として、R32を使用し、
前記冷媒と冷凍機用潤滑油組成物の相分離が生じないように、基油としてポリビニルエーテル系誘導体と特定構造のポリカーボネート化合物を含む、特にR32に対して優れた相溶性を示す冷凍機用潤滑油組成物と該R32とを含む冷凍機用作動流体組成物を循環した、
空気調整器。」

ウ 甲第3号証には、次の事項が記載されている。
・「【0006】
本発明に係る冷凍サイクルは、圧縮機、四方弁、室内熱交換器、膨張弁、室外熱交換器、アキュームレータを環状に接続し、冷媒と冷凍機油を封入した冷凍サイクルにおいて、前記圧縮機の吐出配管と吸入配管とをバイパス用二方弁を介して接続するバイパス回路と、前記アキュームレータ内の液冷媒の温度を推定し、推定した液冷媒温度に基づいて前記バイパス用ニ方弁を所定時間開けるよう制御する制御手段と、を有するものである。
【発明の効果】
【0007】
アキュームレータ内の液冷媒の温度に基づいて所定時間、圧縮機の吐出配管と吸入配管とを接続するバイパス回路のバイパス用バイパス用ニ方弁を開けることにより、圧縮機から吐出した大量の冷凍機油は、バイパス回路を通って圧縮機の吸入配管に戻るため、、アキュームレータ内、低圧側で冷媒と冷凍機油との二層分離状態が発生し得る例えば、R32冷媒を少なくとも50%以上含む混合冷媒あるいはR32単体冷媒とこの冷媒に対して低温側二層分離温度が-20℃を上回る冷凍機油等を封入した場合でも、アキュームレータ内の液冷媒の温度に基づいて圧縮機内の冷凍機油の減少を抑制することが可能となるとともに、アキュームレータに流入して二層分離し滞留する冷凍機油の量を減少させることが可能となり、圧縮機摺動部の潤滑不良による焼付き、異常磨耗等を防止し信頼性の高い冷凍サイクルを得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る例えば空気調和機の冷凍サイクルを示すブロック図である。なお、図1の冷凍サイクルは、暖房運転時の状態を示している。また、図2は、本発明の実施の形態1におけるバイパス用二方弁11の制御フローチャートを示す。また、図3に暖房運転時の蒸発温度とアキュームレータ温度の関係の一例を示す。また、図17は冷媒とエステル油の組合せに対する低温側二層分離温度の関係を示す。
【0009】
図1において、1は圧縮機、2は四方弁、3は室外熱交換器、4は膨張弁、5は室内熱交換器、6はアキュームレータ、7はアキュームレータ内吸入管8に設けられた油戻し穴、9はアキュームレータ6内に貯留された液冷媒、10は圧縮機1の吐出配管と吸入配管を接続するバイパス回路、11はバイパス回路を開閉するためのバイパス用二方弁、21はバイパス用二方弁11の制御装置、22は室外熱交換器3に設けられ、暖房運転時に蒸発温度を検知するサーミスタである。そして、この冷凍サイクルには、R32冷媒を少なくとも50%以上含む混合冷媒あるいはR32単体冷媒等と、この冷媒に対して低温側二層分離温度が-20℃を上回る冷凍機油等とを用いて説明するが、本発明は、この冷媒および冷凍機油に限らず、これら以外またはこれ以外の配合のの冷媒および冷凍機油でも良く、アキュームレータ6内にて冷媒と冷凍機油との二層分離状態が発生する、あるいは発生する可能性のある冷媒および冷凍機油であれば良い。
【0010】
次に、このように構成された冷凍サイクルにおいて、暖房運転初期の冷媒および冷凍機油の動作を、図1を用いて説明する。
圧縮機1の起動後、圧縮された高温高圧の前記冷媒、すなわちR32冷媒を少なくとも50%以上含む混合冷媒あるいはR32単体冷媒は、圧縮機1内部で攪拌された冷凍機油とともに圧縮機1の吐出配管から吐出され、四方弁2を通って室内熱交換器5に入り室内空気と熱交換し、乾き度の低い二相冷媒または液冷媒まで凝縮し、室内熱交換器5から流出する。
【0011】
室内熱交換器5から流出した乾き度の低い前記冷媒は、膨張弁4を通って低圧に減圧されて低圧の冷媒となり、室外熱交換器3へ流入する。室外熱交換器3に流入した冷媒は、外気と熱交換し乾き度の高い冷媒となって室外熱交換器3を流出し、四方弁2を介してアキュームレータ6に流入する。アキュームレータ6に流入した低圧冷媒は気液分離され、ガス冷媒は、アキュームレータ内吸入配管8の端部より流出する一方、液冷媒と冷凍機油は、油戻し穴7より流出する。そして再びガス冷媒と液冷媒および冷凍機油はアキュームレータ内吸入配管8の内部で合流し、圧縮機1の吸入配管へ戻る。
【0012】
ここで、本冷凍サイクルは、冷媒としてR32冷媒を少なくとも50%以上含む混合冷媒あるいはR32単体冷媒を使用することを前提としている。R32冷媒は、冷凍機油との相互溶解性が低下する特性を有しており、図17に示すように、従来、HFC冷媒に対し相溶油として認知されているエステル油との組合せにおける低温側二層分離温度は、R32の比率が小さいR407C冷媒(R32:R125:R134a=23:25:52重量%)に比べて、R32の比率の大きいR410A(R32:R125=50:50重量%)やR32冷媒単体のほうが高くなる特性となっており、空調機として使用される温度帯である-20℃以上の領域においても二層分離が発生する可能性がある。
【0013】
また、本冷凍サイクルの場合、圧縮機1の吸入部に液冷媒を貯留するアキュームレータ6を有しているが、特に、暖房起動運転時は大量の冷凍機油が圧縮機1より流出し、冷媒回路をまわってアキュームレータ6に流入するが、外気条件等によってはアキュームレータ6内の液冷媒9の温度が低温側二層分離温度以下となってしまうため、アキュームレータ6内では液冷媒9と冷凍機油が二層分離状態となり、密度の小さい冷凍機油は液冷媒9の上部に滞留する。このため、油戻し穴7からは極めて油濃度の小さい液冷媒9が圧縮機1に戻ることになり、圧縮機1内は冷凍機油が不足する状態となる。特に、圧縮機1が一定速タイプにおいては、圧縮機1の起動直後は冷凍サイクルの低圧は大きくアンダーシュートするため、定常運転時よりも低い圧力となり、アキュームレータ6内の液冷媒温度はより低くなり、二層分離状態が発生しやすくなる。
【0014】
そこで、本実施の形態1の場合、圧縮機1の吐出配管と吸入配管とをバイパス用二方弁11を介して接続するバイパス回路10を設けると共に、次に説明するように、制御装置21が蒸発温度Tevaよりアキュームレータ6内の液冷媒温度Taccを推定して、所定時間バイパス用二方弁11を開けるよう制御ように制御する。
【0015】
つまり、本実施の形態1の制御装置21は、図2の制御フローに示すように、圧縮機1の起動指令を受けた後(ST1)、暖房運転時に蒸発器となる室外熱交換器2に設けた蒸発温度サーミスタ22により蒸発温度Tevaを検知し(ST2)、例えば圧縮機1が一定速タイプで圧縮機1の回転数が固定されるような場合は、図3に示すようにその空調機が持つ蒸発温度Tevaとアキュームレータ6内の液冷媒温度Taccとが固有の関係を持つので、蒸発温度Tevaからアキュームレータ6内の液冷媒温度Taccを推定する(ST3)。
【0016】
そして、推定したアキュームレータ6内の液冷媒温度Taccが低温側二層分離温度を下回わる場合のみ(ST4“Y”)、バイパス用二方弁11を所定時間開き(ST5,ST6“N”)、所定時間経過後(ST6“Y”)、バイパス用二方弁11を閉じるように制御する(ST7)。
【0017】
従って、本実施の形態1では、アキュームレータ6内の液冷媒温度Taccが低温側二層分離温度を下回わる場合は、バイパス用二方弁11を所定時間開く返油制御により、圧縮機1から吐出した大量の冷凍機油をバイパス回路10を通って圧縮機1の吸入配管に戻るので、圧縮機1内の冷凍機油の減少を抑制することが可能となるとともに、アキュームレータ6に流入して二層分離し滞留する冷凍機油の量を減少させることが可能となり、圧縮機1の摺動部の潤滑不良による焼付き、異常磨耗等を防止し信頼性の高い冷凍サイクルを得ることが可能となる。
【0018】
特に、本実施の形態1の冷凍サイクルでは、室外熱交換器3の温度を検知する室外熱交換器温度サーミスタ22を設け、制御装置21が室外熱交換器温度サーミスタ22で検知した蒸発温度Tevaに基づきアキュームレータ6内の液冷媒温度を推定して、アキュームレータ6内部で液冷媒と冷凍機油が二層分離しているか否かを判断しているので、アキュームレータ6内の液冷媒温度Taccを直接検出しなくても、簡単にアキュームレータ6内の冷媒と冷凍機油との二層分離状態を判断することが可能である。」

・「【0037】
実施の形態5.
次に、本発明の実施の形態5に係る冷凍サイクルを説明する。
図11は、本発明の実施の形態5に係る例えば空気調和機の冷凍サイクルを示すブロック図である。図において、12は圧縮機1から吐出される冷媒と冷凍機油を分離する気液分離器であり、圧縮機1と四方弁2との間に設け、かつ、気液分離機8の底部と圧縮機1の吸入配管をバイパス用二方弁11を介して接続するバイパス回路10を有する。なお、本実施の形態5では、制御装置21がアキュームレータ6内の液冷媒温度Taccを推定して、推定したアキュームレータ6内の液冷媒温度Taccが低温側二層分離温度を下回る場合のみ、バイパス用二方弁11を所定時間開けるよう制御するが、制御装置21によるアキュームレータ6内の液冷媒温度Taccの推定方法は、前記実施の形態1?4のどれでも良いので、図11では、一例として、図1に示す実施の形態1における外熱交換器3に設けられ蒸発温度サーミスタ22が暖房運転時に検知した蒸発温度Tevaに基づく液冷媒温度Taccの推定方法の例を示している。
【0038】
次に、このように構成された実施の形態5の冷凍サイクルにおいて、アキュームレータ6内の液冷媒温度Taccが二層分離温度を下回った場合の動作について図7を用いて説明する。
【0039】
圧縮機起動後、圧縮された高温高圧の二相冷媒は、圧縮機1内部で攪拌された冷凍機油とともに圧縮機1から吐出して気液分離器12に入り、ここで、冷媒ガスと冷媒液および冷凍機油は分離される。ここで、前記実施の形態1で上述したように、制御装置21はアキュームレータ6内の液冷媒温度Taccを推定して、推定したアキュームレータ6内の液冷媒温度Taccが二層分離温度を下回る場合は、所定時間バイパス用二方弁11が開くように制御するので、気液分離器12で分離された液冷媒と冷凍機油は、バイパス回路10を通って圧縮機1の吸入配管に戻る一方、ガス冷媒は四方弁2へ流れ、四方弁2を介し冷媒回路を循環することになる。
【0040】
従って、本実施の形態5によれば、前記実施の形態1?4の構成に加えて、圧縮機1から吐出される冷媒と冷凍機油を分離する気液分離器12を設け、アキュームレータ6内の液冷媒温度Taccが低温側二層分離温度を下回わる場合は、バイパス用二方弁11を所定時間開く返油制御により、圧縮機1から吐出した大量の冷凍機油のほとんどが気液分離器12によって確実に分離されて圧縮機1に戻るようにしたので、アキュームレータ6内の液冷媒温度が二層分離状態を下回る場合においても、アキュームレータ6に滞留する冷凍機油の量は極めて少なくなり、圧縮機1内の冷凍機油の減少を防止し、圧縮機1の摺動部の潤滑不良による焼付き、異常磨耗等を防止する信頼性の高い冷凍サイクルを得ることが可能となる。」

・「【0045】
実施の形態7.
図14は、本発明の実施の形態7に係る例えば空気調和機の冷凍サイクルを示すブロック図である。図において、41は膨張弁4を制御する制御装置であり、本実施の形態7では、前記実施の形態1?6とは異なり、圧縮機1の吐出配管と吸入配管を接続するバイパス回路10およびバイパス回路10を開閉するためのバイパス用二方弁11は備えていない。また、制御装置41がアキュームレータ6内の液冷媒温度Taccを推定するための方法は、前記実施の形態1?5と同じで良い。また、図15は、本発明の実施の形態7の制御装置41による膨張弁4の制御フローチャートを示す。なお、暖房運転初期の冷媒および冷凍機油の動作については、図1を用いて説明した前述の内容と同じであるため、省略する。
【0046】
本実施の形態7における膨張弁の制御処理を、図15を用いて説明する。
本実施の形態7の場合、制御装置41は、圧縮機1の起動指令を受けると(ST51)、実施の形態1?5で説明したように、蒸発温度サーミスタ22や外気温度サーミスタ23、低圧冷媒温度サーミスタ24、低圧冷媒圧力センサー25の検知結果に基づいてアキュームレータ6内の液冷媒温度Taccを推定し(ST52)、推定したアキュームレータ6内の液冷媒温度Taccを低温側二層分離温度と比較する(ST53)。ここまでの処理は、前記実施の形態1?5の処理と同じである。
【0047】
本実施の形態7の場合、アキュームレータ6内の液冷媒温度Taccが二層分離温度よりも低い場合(ST53“Y”)、制御装置41は、アキュームレータ内の液冷媒温度Taccが二層分離温度以上になるように膨張弁4の開度を所定時間大きくする一方(ST54)、アキュームレータ6内の液冷媒温度Taccが二層分離温度よりも高い場合は(ST53“N”)、膨張弁4の開度を維持し(ST55)、所定時間経過後に(ST56“Y”)、膨張弁4の開度は定常制御へ戻すように制御する(ST57)。これにより、圧縮機1の起動から定常運転に至るまでの過渡運転において、アキュームレータ6内の液冷媒温度Taccが二層分離温度よりも低くなることを防止することが可能となる。
【0048】
従って、本実施の形態7によれば、アキュームレータ6内の液冷媒温度Taccが二層分離温度よりも低い場合は、アキュームレータ6内の液冷媒温度Taccが二層分離温度以上になるように所定時間膨張弁4の開度を大きくするようにしたので、圧縮機1より大量に冷凍機油が流出し、冷媒回路を循環してアキュームレータ6に流入する圧縮機起動後の過渡運転においても、アキュームレータ6内の液冷媒温度Taccが二層分離温度よりも低くならず、アキュームレータ6内で液冷媒9の上部に冷凍機油が滞留することを防止することができる。その結果、アキュームレータ内の油戻し穴7から圧縮機への返油を確保することができるため、圧縮機1内の冷凍機油の減少を防止し、圧縮機1の摺動部の潤滑不良による焼付き、異常磨耗等を防止する信頼性の高い冷凍サイクルを得ることが可能となる。
【0049】
また、本実施の形態7では、上述した図15に示す膨張弁4の開度制御ではなく、図16に示す膨張弁4の開度制御を行なうようにしても良い。つまり、図16に示すように、制御装置41は、圧縮機1の起動指令を受けると(ST61)、圧縮機1の起動後の膨張弁4の開度をあらかじめその安定時開度よりも十分大きく設定することを所定時間維持し(ST62,ST63“N”)、所定時間経過後は膨張弁4の開度は定常制御に戻すように制御する(ST64)。このようにすれば、圧縮機1の起動から定常運転に至るまでの過渡運転においては、圧縮機1の起動後の膨張弁4の開度をあらかじめその安定時開度よりも十分大きく設定することを所定時間維持するので、、液冷媒温度Taccが二層分離温度よりも低くならないように膨張弁4の開度をその安定時開度よりも十分大きく設定することにより、たとえアキュームレータ6内の液冷媒温度Taccが過度に低下しても、アキュームレータ6の内部で液冷媒と冷凍機油が二層分離することを防止して、油戻し穴7から圧縮機1への返油を確保することができるため、圧縮機1内の冷凍機油の減少を抑制することで、圧縮機1摺動部の潤滑不良による焼付き、異常磨耗等を防止する信頼性の高い冷凍サイクルを得ることが可能となる。
【0050】
なお、本実施の形態7では、前記実施の形態1?6とは異なり、バイパス回路10を開閉するためのバイパス用二方弁11の開閉を制御せずに膨張弁4の開度を制御してアキュームレータ6内での二層分離を防止するように説明したが、例えば、本実施の形態7と前記実施の形態1?6とを組み合わせて、バイパス用二方弁11の開閉制御と膨張弁4の開度制御とを同時に行なっても良いし、また選択的にバイパス用二方弁11の開閉制御と膨張弁4の開度制御とを片方ずつ実施するようにしても勿論よい。」

・図1には実施の形態1に係る例えば空気調和機の冷凍サイクルを示すブロック図が、図2には実施の形態1におけるバイパス用二方弁11の制御フローチャートが、図3には蒸発温度とアキュームレータ温度の関係を示すグラフが、図11には実施の形態5における冷凍サイクルに係る空気調和機の冷凍サイクルを示すブロック図が、図14には実施の形態7における冷凍サイクルに係る空気調和機の冷凍サイクルを示すブロック図が、図15には実施の形態7における冷凍サイクルに係る膨張弁の制御フローチャートが、図17には冷媒と冷凍機油の組合せにおける低温側二層分離温度が、それぞれ示されている。

以上のことを総合すると、甲第3号証には、特に、実施の形態1及び実施の形態7に係る記載(【0008】?【0018】及び【0047】?【0049】)と【0050】の記載に着目すると、次の「甲3発明」が記載されていると認められる。

「室内熱交換器と室外熱交換器を配管を介して接続し、冷媒を循環させる空気調和機において、
前記冷媒として、R32冷媒を少なくとも50%以上含む混合冷媒あるいはR32単体冷媒を用い、
圧縮機にはアキュームレータ内の液冷媒温度が液冷媒と冷凍機油の二層分離温度よりも低い場合、アキュームレータ内の液冷媒温度が二層分離温度以上になるように所定時間膨張弁の開度を大きくするようにして、圧縮機より大量に冷凍機油が流出し、冷媒回路を循環してアキュームレータに流入する圧縮機起動後の過渡運転においても、アキュームレータ内の液冷媒温度が二層分離温度よりも低くならず、さらに返油制御により、圧縮機から吐出した大量の冷凍機油をバイパス回路を通って圧縮機の吸入配管に戻す、
空気調和機。」

また、甲第3号証には、特に、実施の形態1、実施の形態5及び実施の形態7に係る記載(【0008】?【0018】、【0037】?【0040】及び【0047】?【0049】)と【0050】の記載に着目すると、次の「甲3の2発明」が記載されていると認められる。

「室内熱交換器と室外熱交換器を配管を介して接続し、冷媒を循環させる空気調和機において、
前記冷媒として、R32冷媒を少なくとも50%以上含む混合冷媒あるいはR32単体冷媒を用い、
圧縮機にはアキュームレータ内の液冷媒温度が液冷媒と冷凍機油の二層分離温度よりも低い場合、アキュームレータ内の液冷媒温度が二層分離温度以上になるように所定時間膨張弁の開度を大きくするようにして、圧縮機より大量に冷凍機油が流出し、冷媒回路を循環してアキュームレータに流入する圧縮機起動後の過渡運転においても、アキュームレータ内の液冷媒温度が二層分離温度よりも低くならず、さらに返油制御により、圧縮機から吐出した大量の冷凍機油をバイパス回路を通って圧縮機の吸入配管に戻す、
空気調和機であって、
前記圧縮機と、
該圧縮機の吐出側に接続され、前記圧縮機から吐出された冷媒中の冷凍機油を分離して回収する気液分離器と、
前記圧縮機の流入側に接続され、冷媒から液冷媒を分離して蓄積し、ガス冷媒を前記圧縮機に戻すためのアキュームレータと、
前記気液分離器で分離した冷凍機油を返油制御により前記圧縮機に戻すことで、液冷媒と冷凍機油との混合液における潤滑油混合率を調整するためのバイパス用二方弁と、
を備える空気調和機。」

エ 甲第4号証には、次の事項が記載されている。
・「【0008】
本発明の目的は、圧縮機から冷凍サイクル内に放出される冷凍機油の量を低減することのできる空気調和機を得ることにある。」

・「【0016】
図1は本発明の空気調和機の実施例1を示す冷凍サイクル構成図である。図において、Aは室外ユニット、Bは室内ユニットである。
室外ユニットAは、圧縮機1、油分離器10、四方弁8、室外熱交換器2、室外膨張弁(絞り機構)3a、液タンク9、液阻止弁11a、ガス阻止弁11b、気液分離器7などが冷媒配管6で接続されている。なお、5aは室外ファン、12aは圧縮機の吐出側の温度を検出する温度検出器、12bは室外機へ流入する室外空気の温度を検出する温度検出器、12cは室外熱交換器2から出た冷媒の温度を検出する温度検出器、13aは吸込圧力検出器、13bは吐出圧力検出器である。前記圧縮機1の吸入側と前記四方弁8とを接続する吸入側冷媒配管6cには前記気液分離器7が設けられ、前記油分離器10の下部と前記気液分離器7上流側の吸入側冷媒配管6cとは油戻し回路15で接続されている。この油戻し回路15には電子膨張弁(絞り機構)3cが設けられている。」

・「【0018】
圧縮機1で圧縮された冷媒ガスは、油分離器10に流入して、冷媒ガス中に含まれている冷凍機油が分離され、冷媒ガスは前記四方弁8に流れて、冷房時であれば室外熱交換器2側に流れ、暖房時であれば前記室内ユニットBの室内熱交換器4側に流れる。
【0019】
例えば、冷房運転の場合、冷媒は、室外熱交換器2で凝縮し、室内ユニットB側の室内膨張弁3bで膨張して、室内熱交換器4で蒸発する。その後、冷媒は、気液分離器7で圧縮機1へ吸入される冷媒ガスとして適した乾き度に調整された後、再び圧縮機に吸入される一連のサイクルを形成している。また、室外熱交換器2及び室内熱交換器4にそれぞれ設けられたファン5a,5bにより導入された空気と熱交換することにより空調を行う。室外ユニットAには、前記温度検出器12a,12b,12c、吸込圧力検出器13a及び吐出圧力検出器13bからの出力(信号)を用いて前記圧縮機1や膨張弁3a,3cなどを制御する制御機器(図示せず)も設置され、空気温度、冷媒温度、冷媒圧力を検出して適切な運転が行なわれるよう構成されている。」

・「【0021】
圧縮機1の内部には冷媒を圧縮するための機構部品が内蔵されており、これら機構部品の潤滑剤として冷凍機油が封入されている。冷凍機油は冷媒と共に冷凍サイクル内を循環するが、室外熱交換器2や室内熱交換器4の内面に付着すると、冷媒の熱交換を阻害する要因となるため、圧縮機1の内部で冷媒と冷凍機油が一次分離される構造となっている。更に、冷凍機油が冷凍サイクルを循環する量を減らすため、油分離器10が設置されている。この油分離器10で分離された冷凍機油は、油戻し回路15及び電子膨張弁(絞り機構)3cを介して、圧縮機1の吸入側である気液分離器7上流側の吸入側冷媒配管6cに戻され、再び前記圧縮機1内に流れる構成となっている。なお、この例では、分離した冷凍機油を気液分離器7の上流に戻すようにしたが、気液分離器7に直接戻したり、或いは圧縮機1と気液分離器7との間の吸入側冷媒配管6cなどに戻すようにしても良い。」

・「【0023】
前記油戻し回路15の電子膨張弁3cの開度を大きくすると、油分離器10からの冷凍機油が圧縮機1内に多量に戻され、圧縮機内の油面が上昇して、前述したように、液圧縮して圧縮機入力を増大させたり、圧縮機から冷凍サイクルに吐出される冷凍機油量も増大して空気調和機の性能が低下する。前記油戻し回路15の電子膨張弁3cの開度を小さくし過ぎると、油分離器10からの冷凍機油の戻し量が減少して圧縮機1内は油量不足となり、圧縮機の機構部品への給油が不足して信頼性を低下させる。」

・「【0035】
このように本実施例では、絞り機構3cとして連続的に絞り量を調節することが可能な電子膨張弁を用い、運転周波数と、圧縮機の吸入側と吐出側の圧力差とに応じて膨張弁開度指令値を決めるので、油上りによる性能低下の影響を最小限にすることができると共に、圧縮機内の油量低下や油量過多による信頼性低下も防止できる。」

以上のことを総合すると、甲第4号証には、次の「甲4発明」が記載されていると認められる。

「室外機は、圧縮機と
該圧縮機の吐出側に接続され、前記圧縮機からの吐出された冷媒中の冷凍機油(特許発明の「潤滑油」に相当する。)を分離して回収する油分離器と、
前記圧縮機の流入側に接続され、冷媒から液冷媒を分離して蓄積し、ガス冷媒を前記圧縮機に供給するための気液分離器(特許発明の「アキュムレータ」に相当する。)と、
前記油分離器で分離した冷凍機油を前記気液分離器、あるいは圧縮機の吸入側冷媒配管に戻す油戻し回路と、
を備える、圧縮機から冷凍サイクル内に放出される冷凍機油の量を低減することのできる空気調和機。」

オ 甲第5号証には、次の事項が記載されている。
・「【0005】
本発明の目的は、冷凍サイクル装置中の油上がり率を抑え、冷暖房運転時の冷凍サイクルの効率及び圧縮機の信頼性を向上することのできる冷凍サイクル装置を得ることにある。」

・「【0011】
図1は、本発明の実施例1における冷凍サイクル系統図である。図1に示す冷凍サイクルは、圧縮機1,四方弁2,室外側熱交換器3,膨張弁4,室内側熱交換器5,アキュムレータ6を環状に配管接続した構成と成っている。圧縮機1の吐出側と四方弁2の間には、油分離器7が設けられており、前記油分離器7と四方弁2の間に逆止弁8が設けられている。また、油分離器7の下部からアキュムレータ6に対して接続するバイパス回路9が設けられ、前記バイパス回路9の途中にバイパス回路を流れる冷凍機油の循環量を調整するキャピラリチューブ(油循環量調整手段)10が設けられている。」

・「【0013】
本図に示す実線矢印は暖房運転時における冷媒の流れを示し、破線矢印は冷房運転時における冷媒の流れを示している。暖房運転時は、圧縮機1で圧縮された高温高圧のガス冷媒と冷凍機油は、油分離器7に流入しガス冷媒と冷凍機油に分離され、ガス冷媒は油分離器7の登頂部から流出して四方弁2を通過して室内側熱交換器5に流入し、室内側熱交換器5を通過する空気と熱交換して凝縮液化して膨張弁4に流入する。膨張弁4に送られた冷媒は室外側熱交換器3で蒸発できる圧力まで減圧され室外側熱交換器3に流入し、室外側熱交換器3を通過する空気と熱交換して蒸発ガス化して流出し、四方弁2を通過してアキュムレータ6内に流入する。また、油分離器7の下部より流出する冷凍機油は、バイパス回路9を通過しキャピラリチューブ10で所定の循環量に調整され、アキュムレータ6内に流入する。そして、アキュムレータ6内で合流した低圧低温のガス冷媒と冷凍機油は、アキュムレータ6から所定のかわき度で流出し圧縮機1に戻ることで冷凍サイクルが形成される。」

・「【0015】
ここで、バイパス回路9を流れる冷凍機油の循環量Goil1は、油分離器7内の圧力とアキュムレータ6内の圧力の圧力差とキャピラリチューブ10の抵抗により決定されるものである。また、アキュムレータ6内から圧縮機1に戻る流体のかわき度は、図3に示すアキュムレータ6の導出管に設けられた油戻し穴18の径と均圧穴19の径により決定されるものであり、そのかわき度の値Xは圧縮機1の最大油上がり率ηoilとアキュムレータ6内の冷媒溶解度Crを用いて、以下に示す式が成立つように決定されている。
【0016】
ηoil<(1-X)×(1-Cr)・・・(数1)
すなわち、圧縮機1の最大油上がり率に対してアキュムレータ6からもどる油単体でのかわき度が大きくなるように決定されているものである。そして、アキュムレータ6から圧縮機1に戻る油単体の循環量Goil2は、冷凍サイクルを流れる冷媒循環量Grと上記アキュムレータ6の特性から、以下に示す式で示される。
【0017】
Goil2=Gr×(1-X)×(1-Cr)・・・(数2)
本実施例では、冷凍サイクル装置の運転範囲全域において、バイパス回路9を流れる冷凍機油の循環量Goil1とアキュムレータ6から圧縮機1に戻る油単体の循環量Goil2がGoil1>Goil2となるようにバイパス回路9に付設するキャピラリチューブ10の抵抗を決定しているため、冷凍サイクル装置で必要としない余剰の冷凍機油は、アキュムレータ6内に貯留することができ、油分離器7内には冷凍機油が溜まらないため、冷凍機油とガス冷媒を分離する空間を常に最大にすることができ、油分離器7の分離効率を最大に引き出すことが可能となり、冷凍サイクル中に流出する冷凍機油を最小に抑えることができる。従って、接続配管や熱交換器等での圧力損失が軽減されると共に、熱交換器の配管内に油膜が形成されないため熱交換効率も高くなり、冷凍サイクルの効率が向上する。また、余剰の冷凍機油は、低温,低圧のアキュムレータ6内に貯留されているため、圧縮機1に吸込まれる冷凍機油の粘度を高くすることができ、起動時等での粘度低下を抑制することが可能となり、圧縮機1の信頼性を向上できる。」

以上のことを総合すると、甲第5号証には、次の「甲5発明」が記載されていると認められる。

「圧縮機と、
該圧縮機の吐出側に接続され、前記圧縮機から吐出された冷媒中の冷凍機油(特許発明の「潤滑油」に相当する。)を分離して回収する油分離器と、
前記圧縮機の流入側に接続され、冷媒から液冷媒を分離して蓄積し、ガス冷媒を前記圧縮機に供給するためのアキュムレータと、
前記油分離器で分離した冷凍機油を前記アキュムレータに戻すバイパス回路と、油循環量調整手段と、
を備える冷凍サイクル装置中の油上がり率を抑え、冷暖房運転時の冷凍サイクルの効率及び圧縮機の信頼性を向上することのできる冷凍サイクル装置(特許発明の「空気調和機」に相当する。)。」

カ 甲第6号証には、次の事項が記載されている。
・「【0008】
本発明によれば、圧縮機が故障することのない許容油濃度以上となるように、冷凍機油を圧縮機に直接戻す経路と、アキュムレーターを介して圧縮機に戻す経路を切り替えることによって、圧縮機の故障を防止し、空調能力の低下を抑制することができる。」

・「【0010】
実施の形態1.
(空気調和機の構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係る空気調和機の冷媒回路の構成図である。
図1で示されるように、本実施の形態に係る空気調和機は、圧縮機1、油分離器2、四方弁3、熱源側熱交換器4、絞り装置5a?5c、利用側熱交換器6a?6c、アキュムレーター7、油戻し経路10a、10b、及び、制御装置20を備えている。本実施の形態に係る空気調和機の冷凍サイクルは、圧縮機1、油分離器2、四方弁3、熱源側熱交換器4、絞り装置5a?5c、利用側熱交換器6a?6c、四方弁3、アキュムレーター7、そして、再び圧縮機1の順で冷媒配管によって接続されて構成されている。」

・「【0013】
油分離器2は、圧縮機1から吐出されたガス冷媒と同時に吐出された冷凍機油を、冷媒と冷凍機油とに分離するものである。ただし、この油分離器2によって、冷媒から冷凍機油の大半が分離されるが、冷凍機油の一部は、完全に分離されることはなく、分離されなかった冷凍機油は冷媒と共に四方弁3へ向かい、冷凍サイクルを循環する。」

・「【0019】
アキュムレーター7は、圧縮機1の冷媒の吸入側に配置されており、ガス冷媒、液冷媒及び冷凍機油を圧縮機1に送る機能、及び、余剰となった液冷媒を貯留し、液冷媒を過剰に圧縮機1に送らない機能を有する。また、アキュムレーター7は、その内部に、前述のように、貯留している液冷媒の液面を検出するための液面検出部7eが設置されている。アキュムレーター7についてのその他の構成は、図2において後述する。
【0020】
油戻し経路10aは、油分離器2側から開閉弁9a、そして、絞り機構8aを備えており、油分離器2によって冷媒から分離された冷凍機油を、圧縮機1の吸入口へ直接戻す経路である。このとき、油分離器2によって冷媒と冷凍機油とは完全に分離されることはなく、油戻し経路10aを介して圧縮機1に戻される冷凍機油には、ある程度の冷媒が含まれている。絞り機構8aは、油戻し経路10aを介して、圧縮機1に冷凍機油を戻す場合、この冷凍機油に含まれる高温高圧の冷媒を過剰に圧縮機1に戻さないように流量を調整する役割を有するものである。これによって、高温高圧の冷媒が圧縮機1に戻ることによる吸入冷媒の密度の低下、及び、吐出冷媒流量の低下を抑制し、空調能力の低下を抑制することができる。また、開閉弁9aは、制御装置20に電気的に接続(図示せず)され、制御装置20から出力される駆動信号によって開閉制御され、開状態の場合のみ、油分離器2によって分離された冷凍機油を流通させる。この開閉制御についての詳細は、後述する。
なお、絞り機構8a、開閉弁9a及び油戻し経路10aは、それぞれ本発明の「第1膨張機構」、「第1開閉弁」及び「第1油戻し経路」に相当する。
【0021】
油戻し経路10bは、油分離器2側から開閉弁9b、そして、絞り機構8bを備えており、油分離器2によって冷媒から分離された冷凍機油を、アキュムレーター7の流入側に送る経路である。このとき、前述のように、油分離器2によって冷媒と冷凍機油とは完全に分離されることはなく、油戻し経路10bを介してアキュムレーター7に送られる冷凍機油には、ある程度の冷媒が含まれている。絞り機構8bは、油戻し経路10b及びアキュムレーター7を介して圧縮機1に冷凍機油を戻す場合、この冷凍機油に含まれる高温高圧の冷媒を過剰に圧縮機1に戻さないように流量を調整する役割を有するものである。これによって、高温高圧の冷媒が圧縮機1に戻ることによる吸入冷媒の密度の低下、及び、吐出冷媒流量の低下を抑制し、空調能力の低下を抑制することができる。また、開閉弁9bは、制御装置20に電気的に接続(図示せず)され、制御装置20から出力される駆動信号によって開閉制御され、開状態の場合のみ、油分離器2によって分離された冷凍機油を流通させる。この開閉制御については、前述の開閉弁9aと同様に、後述する。
なお、絞り機構8b、開閉弁9b及び油戻し経路10bは、それぞれ本発明の「第2膨張機構」、「第2開閉弁」及び「第2油戻し経路」に相当する。」

以上のことを総合すると、甲第6号証には、次の「甲6発明」が記載されていると認められる。

「圧縮機と、
該圧縮機の吐出側に接続され、前記圧縮機から吐出された冷媒中の冷凍機油(特許発明の「潤滑油」に相当する。)を分離して回収する油分離器と、
前記圧縮機の流入側に接続され、冷媒から液冷媒を分離して蓄積し、ガス冷媒を前記圧縮機に供給するためのアキュムレーターと、
前記油分離器で分離した冷凍機油を前記アキュムレーターに戻すか圧縮機の吸入口に直接戻す油戻し経路と、
を備え、
圧縮機が故障することのない許容油濃度以上となるように、冷凍機油を圧縮機に直接戻す経路と、アキュムレーターを介して圧縮機に戻す経路を切り替えることによって、圧縮機の故障を防止し、空調能力の低下を抑制することができる空気調和機。」

3 取消理由について
(1) 平成30年3月2日付け取消理由通知において新たに通知した取消理由アの概要は、特許発明1は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第3号証に記載された発明(甲3発明)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許発明1についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである、というものである。
1) 取消理由アについての判断
特許発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「冷凍機油」は特許発明1の「潤滑油」に相当し、甲3発明の「アキュームレータ」は特許発明1の「アキュムレータ」に相当する。
また、甲3発明の「室内熱交換器と室外熱交換器を配管を介して接続し、冷媒を循環させる空気調和機」は空気調和機の技術常識からして、特許発明1の「室内機と室外機を配管を介して接続し、冷媒を循環させる空気調和機」に相当するといえる。
そして、特許発明1の「冷媒として、R32単独の冷媒またはR32を70質量パーセント以上含む混合冷媒を使用し」た態様と、甲3発明の「冷媒として、R32冷媒を少なくとも50%以上含む混合冷媒あるいはR32単体冷媒を用い」た態様とは、「冷媒として、R32単独の冷媒またはR32を70質量パーセント以上含む混合冷媒を使用し」た態様の限りにおいて一致している。
また、特許発明1の「液冷媒と潤滑油の二層分離が生じうる低温域において前記二層分離が生じないように、供給油量調整部により前記室外機の有するアキュムレータ内の潤滑油混合率を所定値以上に調整し、前記室外機の有する圧縮機に所定値以上の潤滑油が混合した冷媒を供給する」態様と、甲3発明の「圧縮機にはアキュームレータ内の液冷媒温度が液冷媒と冷凍機油の二層分離温度よりも低い場合、アキュームレータ内の液冷媒温度が二層分離温度以上になるように所定時間膨張弁の開度を大きくするようにして、圧縮機より大量に冷凍機油が流出し、冷媒回路を循環してアキュームレータに流入する圧縮機起動後の過渡運転においても、アキュームレータ内の液冷媒温度が二層分離温度よりも低くならず、さらに返油制御により、圧縮機から吐出した大量の冷凍機油をバイパス回路を通って圧縮機の吸入配管に戻す」態様とは、少なくとも「液冷媒と潤滑油の二層分離が生じないようにする」態様の概念で共通している。
したがって、両者は、
「室内機と室外機を配管を介して接続し、冷媒を循環させる空気調和機において、
前記冷媒として、R32単独の冷媒またはR32を70質量パーセント以上含む混合冷媒を使用し、
液冷媒と潤滑油の二層分離が生じないようにする、
空気調和機。」
で一致し、以下の点で相違している。

[相違点A] 「液冷媒と潤滑油の二層分離が生じないようにする」態様が、特許発明1では「液冷媒と潤滑油の二層分離が生じうる低温域において前記二層分離が生じないように、供給油量調整部により前記室外機の有するアキュムレータ内の潤滑油混合率を所定値以上に調整し、前記室外機の有する圧縮機に所定値以上の潤滑油が混合した冷媒を供給する」のに対し、甲3発明では「圧縮機にはアキュームレータ内の液冷媒温度が液冷媒と冷凍機油の二層分離温度よりも低い場合、アキュームレータ内の液冷媒温度が二層分離温度以上になるように所定時間膨張弁の開度を大きくするようにして、圧縮機より大量に冷凍機油が流出し、冷媒回路を循環してアキュームレータに流入する圧縮機起動後の過渡運転においても、アキュームレータ内の液冷媒温度が二層分離温度よりも低くならず、さらに返油制御により、圧縮機から吐出した大量の冷凍機油をバイパス回路を通って圧縮機の吸入配管に戻す」点。

上記相違点Aについて検討する。
上記相違点Aは、少なくとも、アキュムレータ内に蓄積される液冷媒と潤滑油との混合液については、特許発明1では「供給油量調整部により」「アキュムレータ内の潤滑油混合率を所定値以上に調整」するのに対し、甲3発明では「所定時間膨張弁の開度を大きくするようにして、」「圧縮機より大量に冷凍機油が流出し、冷媒回路を循環してアキュームレータに流入」し「アキュームレータ内の液冷媒温度が二層分離温度以上になるように」する温度の調整を行う点で、すなわち、特許発明1ではその温度ではなく潤滑油混合率を調整するのに対し、甲3発明では潤滑油混合率ではなくその温度を調整する点で相違しているといえる。
しかしながら、液冷媒と冷凍機油の二層分離に着目した空気調和機において、アキュムレータ内に蓄積される液冷媒と潤滑油との混合液について潤滑油混合率ではなくその温度を調整するものに替えて、その温度ではなく潤滑油混合率を調整するものとする動機付けとなることは、甲第3号証を見ても記載も示唆もされていないのみならず、甲第1、2、4ないし6号証を見ても記載や示唆されているとはいえないし、また、そのような構成とすることも甲第1ないし6号証に記載や示唆されているとはいえない(上記「2(2)アないしカ」の甲1発明ないし甲6発明参照。)。
したがって、甲3発明をして上記相違点Aに係る特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるということはできない。

2) まとめ
よって、特許発明1は甲第3号証に記載された発明(甲3発明)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでないから、特許発明1についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。

(2) 平成29年2月1日付け、及び、平成29年8月2日付けで通知した取消理由の概要は、1)取消理由1:特許発明が解決しようとする課題は、特許明細書の【0006】に記載されている「液冷媒と潤滑油とが二層に分離するのを抑制し、潤滑不足の発生を低減できるようにした空気調和機を提供すること」であるところ、(ア)特許発明の使用する冷媒はR32を70質量パーセント以上含む混合冷媒以外のものについての具体的な開示が発明の詳細な説明になく、又、(イ)特許発明の冷媒に混合する潤滑油は特許明細書の【0040】に記載されている冷媒としてR32を用いた場合に図3に示す冷媒と潤滑油の混合特性を示す潤滑油以外のものについての具体的な開示が発明の詳細な説明にないから、開示された以外の冷媒及び潤滑油について、「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えているため、特許発明1ないし4が発明の詳細な説明に記載したものではなく、本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである、及び、2)取消理由2:特許発明1は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明(順に、甲1発明、甲2発明及び甲3発明)であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、特許発明1に係る特許は取り消すべきものである、というものである。

1) 取消理由1:特許法第36条第6項第1号についての判断
ア 上記(ア)に係る理由について
特許発明は、その使用する冷媒が、本件訂正前に「R32単独の冷媒またはR32を所定の質量パーセント以上含む混合冷媒」と特定されていたところ、本件訂正後には「R32単独の冷媒またはR32を70質量パーセント以上含む混合冷媒」と特定されているから、R32を70質量パーセント以上含む混合冷媒以外のものについての具体的な記載が発明の詳細な説明にないとしても、「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えているとはいえない。よって、上記(ア)に係る理由については理由がない。

イ 上記(イ)に係る理由について
特許発明は、その冷媒に混合する潤滑油に関し、「液冷媒と潤滑油の二層分離が生じうる低温域において前記二層分離が生じないように、供給油量調整部により前記室外機の有するアキュムレータ内の潤滑油混合率を所定値以上に調整し、前記室外機の有する圧縮機に所定値以上の潤滑油が混合した冷媒を供給する」こと、あるいは、「室外機の有する圧縮機には、液冷媒と潤滑油の二層分離が生じうる低温域において前記二層分離が生じないように所定値以上の潤滑油が混合した冷媒を供給」することが特定されているから、その特性として「液冷媒と潤滑油の二層分離が生じうる低温域」の存在とともに、「所定値以上の潤滑油が混合した冷媒」はそのような「低温域において」も「二層分離が生じないような」ものであることが特定されている。さらに、その冷媒については「R32単独の冷媒またはR32を70質量パーセント以上含む混合冷媒」と特定されている。そして、潤滑油の特性に関しては、冷媒としてR32を用いた場合の図3に示す冷媒と潤滑油の混合特性について、本件特許の明細書(【0040】)に記載され、また冷媒に関し、「ここで、本実施形態では、R32を70質量パーセント以上含む混合冷媒を使用する。R32の比率が70質量パーセント以上になると、GWPの値、吸入湿り、油との相溶性などの特性がR32と同等になるためである。」と同明細書(【0011】)に記載されている。一方、本件特許の出願当時の冷媒と潤滑油に係る技術常識を考慮すると、「R32単独の冷媒またはR32を70質量パーセント以上含む混合冷媒」に対し、液冷媒と潤滑油の二層分離に係る特性は周知のものといえるから、当業者は、図3に示すのと同様な冷媒と潤滑油の混合特性について、他の潤滑油に対しても理解できる。そうすると、上記特許発明に係る冷媒と潤滑油に係る発明特定事項は、発明の詳細な説明に開示された範囲内であるといえる。よって、特許発明は「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えているとはいえず、上記(イ)に係る理由については理由がない。

ウ まとめ
以上のとおりであるから、特許発明1ないし4は発明の詳細な説明に記載したものではなく訂正特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさない、とはいえない。
よって、特許発明1ないし4についての特許は、特許法第113条第4号に該当しないので、取り消されるべきものであるとはいえない。

2) 取消理由2:特許法第29条第1項第3号についての判断
ア 甲1発明について
特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「室内機と室外機が分離している、冷媒を使用する冷凍サイクルのルームエアコン」は特許発明1の「室内機と室外機を配管を介して接続し、冷媒を循環させる空気調和機」に相当する。
また、特許発明1の「冷媒として、R32単独の冷媒またはR32を70質量パーセント以上含む混合冷媒を使用し」た態様と、甲1発明の「冷媒として、B0(R32/R125=77/23)からP125(R125=100%)までの混合冷媒を使用し」た態様とは、「冷媒として、R32を70質量パーセントから77質量パーセント含む混合冷媒を使用し」た態様の限りにおいて一致している。
そして、特許発明1の「液冷媒と潤滑油の二層分離が生じうる低温域において前記二層分離が生じないように、供給油量調整部により前記室外機の有するアキュムレータ内の潤滑油混合率を所定値以上に調整し、前記室外機の有する圧縮機に所定値以上の潤滑油が混合した冷媒を供給する」態様と、甲1発明の「外気温が0℃以下となると従来の冷媒と冷凍機油の二層分離が起こるところ、前記混合冷媒と、その冷媒との臨界溶解温度が0℃以下となる溶解度ダイヤグラムから求めたエステル油である冷凍機油を用いて、冷媒と冷凍機油の臨界溶解温度を0℃以下とした」態様とは、少なくとも「液冷媒と潤滑油の二層分離が生じないようにする」態様の概念で共通している。
したがって、両者は、
「室内機と室外機を配管を介して接続し、冷媒を循環させる空気調和機において、
前記冷媒として、R32を70質量パーセントから77質量パーセント含む混合冷媒を使用し、
液冷媒と潤滑油の二層分離が生じないようにする、
空気調和機。」
で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1] 「液冷媒と潤滑油の二層分離が生じないようにする」態様が、特許発明1では「液冷媒と潤滑油の二層分離が生じうる低温域において前記二層分離が生じないように、供給油量調整部により前記室外機の有するアキュムレータ内の潤滑油混合率を所定値以上に調整し、前記室外機の有する圧縮機に所定値以上の潤滑油が混合した冷媒を供給する」のに対し、甲1発明では「外気温が0℃以下となると従来の冷媒と冷凍機油の二層分離が起こるところ、前記混合冷媒と、その冷媒との臨界溶解温度が0℃以下となる溶解度ダイヤグラムから求めたエステル油である冷凍機油を用いて、冷媒と冷凍機油の臨界溶解温度を0℃以下とした」点。

上記相違点1について検討すると、少なくとも、特許発明1では液冷媒と潤滑油の混合割合を調整するのに対し、甲1発明では特定の冷凍機油を採用するものといえるから、上記相違点1は実質的な相違点である。
そうすると、特許発明1は甲1発明であるとはいえない。

イ 甲2発明について
特許発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「冷媒を循環させる圧縮式冷凍サイクルの空気調整器」は特許発明1の「冷媒を循環させる空気調和機」に相当し、同様に、「冷媒として、R32を使用」する態様は「冷媒として、R32単独の冷媒を使用し」た態様に相当し、「冷凍機用潤滑油組成物」は「潤滑油」に相当し、「相分離が生じない」態様は「二層分離が生じない」態様に相当する。
また、甲2発明の「冷媒配管を介して接続し、冷媒を循環させる圧縮式冷凍サイクルの空気調整器」は空気調和機の技術常識からして、特許発明1の「室内機と室外機を配管を介して接続し、冷媒を循環させる空気調和機」に相当するといえる。
そして、特許発明1の「液冷媒と潤滑油の二層分離が生じうる低温域において前記二層分離が生じないように、供給油量調整部により前記室外機の有するアキュムレータ内の潤滑油混合率を所定値以上に調整し、前記室外機の有する圧縮機に所定値以上の潤滑油が混合した冷媒を供給する」態様と、甲2発明の「冷媒と冷凍機用潤滑油組成物の相分離が生じないように、基油としてポリビニルエーテル系誘導体と特定構造のポリカーボネート化合物を含む、特にR32に対して優れた相溶性を示す冷凍機用潤滑油組成物と該R32とを含む冷凍機用作動流体組成物を循環した」態様とは、少なくとも「液冷媒と潤滑油の二層分離が生じないようにする」態様の概念で共通している。
したがって、両者は、
「室内機と室外機を配管を介して接続し、冷媒を循環させる空気調和機において、
前記冷媒として、R32単独の冷媒を使用し、
液冷媒と潤滑油の二層分離が生じないようにする、
空気調和機。」
で一致し、以下の点で相違している。

[相違点2] 「液冷媒と潤滑油の二層分離が生じないようにする」態様が、特許発明1では「液冷媒と潤滑油の二層分離が生じうる低温域において前記二層分離が生じないように、供給油量調整部により前記室外機の有するアキュムレータ内の潤滑油混合率を所定値以上に調整し、前記室外機の有する圧縮機に所定値以上の潤滑油が混合した冷媒を供給する」のに対し、甲2発明では「冷媒と冷凍機用潤滑油組成物の相分離が生じないように、基油としてポリビニルエーテル系誘導体と特定構造のポリカーボネート化合物を含む、特にR32に対して優れた相溶性を示す冷凍機用潤滑油組成物と該R32とを含む冷凍機用作動流体組成物を循環した」点。

上記相違点2について検討すると、少なくとも、特許発明1では液冷媒と潤滑油の混合割合を調整するのに対し、甲2発明では特定の冷凍機油を採用するものといえるから、上記相違点2は実質的な相違点である。
そうすると、特許発明1は甲2発明であるとはいえない。

ウ 甲3発明について
特許発明1と甲3発明とを対比すると、既に「3(1)」で検討したとおり、上記[相違点A]において実質的に相違している。
よって、特許発明1は甲3発明ではないから、特許発明1についての特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではない。

エ まとめ
以上のとおり、特許発明1についての特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではないから、特許法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものでない。

4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1) 特許法第36条第6項第2号について
特許異議申立人の申立てた理由は、概ね、(ア)請求項1に記載された「R32を所定の質量パーセント以上含む混合冷媒」の「所定の質量パーセント」が「10パーセント」以下といった小さい数値を含むのか「70パーセント」以上といった大きい数値を意味するのか明確でなく、特許発明の混合冷媒を技術的に理解することができないので、その範囲が不明確となっており、明確性要件不備の理由がある、(イ)請求項1に記載された「所定値以上の潤滑油が混合した冷媒を供給する」の数値範囲は上限を示さず下限だけを示すものであり、且つ、「所定値」という曖昧な表現を用いているから、特許発明は微量の潤滑油が混合した冷媒を供給する空気調和機や潤滑油が大量に混合した冷媒を供給する空調機も含むことになるが、二層分離が生じない現実の潤滑油の混合割合を示す「所定値」を技術的に理解することができないので、その範囲が不明確となっており、明確性要件不備の理由がある、というものである(特許異議申立書7ページ20行?8ページ16行参照。)。
上記(ア)について検討すると、本件訂正前の請求項1の「R32を所定の質量パーセント以上含む混合冷媒」の記載は本件訂正により「R32を70質量パーセント以上含む混合冷媒」と訂正された。また、訂正前に請求項1の記載を引用する請求項2の記載を本件訂正により当該他の請求項1の記載を引用しないものとした請求項2においても、同様に「R32を70質量パーセント以上含む混合冷媒」と訂正された。したがって、本件訂正後の請求項1及び2に「所定の質量パーセント」との記載はないから、上記申立て理由は理由がない。
上記(イ)について検討すると、本件訂正前の請求項1の「液冷媒と潤滑油の二層分離が生じないように所定値以上の潤滑油が混合した冷媒を供給する」の記載は本件訂正により「液冷媒と潤滑油の二層分離が生じうる低温域において前記二層分離が生じないように、」「所定値以上の潤滑油が混合した冷媒を供給する」と訂正された。また、訂正前に請求項1の記載を引用する請求項2の記載を本件訂正により当該他の請求項1の記載を引用しないものとした請求項2においても、同様に「液冷媒と潤滑油の二層分離が生じうる低温域において前記二層分離が生じないように所定値以上の潤滑油が混合した冷媒を供給し」と訂正された。ここで、本件特許に係る【図3】(例えば、甲第2号証(上記「2(2)イ」における「表2」に関する記載も参照。)からも明らかなように、油比率がある程度以上の場合、「冷媒R32に対する潤滑油の混合量が増えると、臨界溶解温度(℃)が低下する」現象を考慮すれば、特定される「所定値」とは「液冷媒と潤滑油の二層分離が生じうる低温域において」も「二層分離が生じない」ように「潤滑油が混合した」割合、潤滑油混合率と呼べるものの値であって、臨界溶解温度(℃)に応じて定まる変数であるといえる。そうすると、「所定値」を具体的な数値で表現する必要はなく、二層分離が生じない現実の潤滑油の混合割合を示すものとして技術的に理解できるから、その範囲が不明確で明確性要件不備の理由があるということはできない。
よって、本件特許の請求項1ないし4に係る特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に違反しているとはいえないから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第113条第4号に該当しないので、取り消されるべきものであるとはいえない。

(2) 特許法第29条第2項について
特許異議申立人の申立てた理由は、概ね、特許発明2は甲第3号証に記載された発明(甲3の2発明)と甲第4あるいは5号証に係る事項(及び甲第6号証に係る設計事項)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許発明2についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである、というものである(特許異議申立書25ページ13行?30ページ2行参照。)。
特許発明2と甲3の2発明とを対比すると、上記「3(1)」に記載した特許発明1と甲3発明とを対比した両者の関係と同様な関係に加え、次の関係にある。
甲3の2発明の「冷媒中の冷凍機油を分離する気液分離器」は特許発明2の「冷媒中の油を分離して回収する油分離器」に相当し、同様に「ガス冷媒を前記圧縮機に戻すための(アキュームレータ)」は「ガス冷媒を前記圧縮機に供給するための(アキュムレータ)」に相当する。
そして、特許発明2の「油分離器で分離した潤滑油を前記アキュムレータに戻すことで、前記アキュムレータ内に蓄積される液冷媒と潤滑油との混合液における潤滑油混合率を前記所定値以上に調整するための供給油量調整部」と、甲3の2発明の「気液分離器で分離した冷凍機油を返油制御により前記圧縮機に戻すことで、液冷媒と冷凍機油との混合液における潤滑油混合率を調整するためのバイパス用二方弁」とは、少なくとも「液冷媒と潤滑油の二層分離が生じないようにするための構成」の概念で共通している。
したがって、両者は、
「室内機と室外機を配管を介して接続し、冷媒を循環させる空気調和機において、
前記冷媒として、R32単独の冷媒またはR32を70質量パーセント以上含む混合冷媒を使用し、
液冷媒と潤滑油の二層分離が生じないようにする、
空気調和機であって、
前記圧縮機と、
該圧縮機の吐出側に接続され、前記圧縮機から吐出された冷媒中の油を分離して回収する油分離器と、
前記圧縮機の流入側に接続され、冷媒から液冷媒を分離して蓄積し、ガス冷媒を前記圧縮機に供給するためのアキュムレータと、
液冷媒と潤滑油の二層分離が生じないようにするための構成と、
を備える空気調和機。」
で一致し、以下の点で相違している。

[相違点B] 「液冷媒と潤滑油の二層分離が生じないようにする」態様及び構成が、特許発明2では「前記室外機の有する圧縮機には、液冷媒と潤滑油の二層分離が生じうる低温域において前記二層分離が生じないように所定値以上の潤滑油が混合した冷媒を供給」する態様で「油分離器で分離した潤滑油を前記アキュムレータに戻すことで、前記アキュムレータ内に蓄積される液冷媒と潤滑油との混合液における潤滑油混合率を前記所定値以上に調整するための供給油量調整部」を「室外機」が「備える」のに対し、甲3の2発明では「圧縮機にはアキュームレータ内の液冷媒温度が液冷媒と冷凍機油の二層分離温度よりも低い場合、アキュームレータ内の液冷媒温度が二層分離温度以上になるように所定時間膨張弁の開度を大きくするようにして、圧縮機より大量に冷凍機油が流出し、冷媒回路を循環してアキュームレータに流入する圧縮機起動後の過渡運転においても、アキュームレータ内の液冷媒温度が二層分離温度よりも低くならず、さらに返油制御により、圧縮機から吐出した大量の冷凍機油をバイパス回路を通って圧縮機の吸入配管に戻す」態様で「気液分離器で分離した冷凍機油を返油制御により前記圧縮機に戻すことで、液冷媒と冷凍機油との混合液における潤滑油混合率を調整するためのバイパス用二方弁」を「空気調和機」が備える点。

上記相違点Bについて検討する。
上記相違点Bは、少なくとも、アキュムレータ内に蓄積される液冷媒と潤滑油との混合液については、特許発明2では「供給油量調整部」で「アキュムレータ内」の「潤滑油混合率を前記所定値以上に調整する」のに対し、甲3の2発明では「所定時間膨張弁の開度を大きくするようにして、」「圧縮機より大量に冷凍機油が流出し、冷媒回路を循環してアキュームレータに流入」し「アキュームレータ内の液冷媒温度が二層分離温度以上になるように」する温度の調整を行う点で、すなわち、特許発明2ではその温度ではなく潤滑油混合率を調整するのに対し、甲3の2発明では潤滑油混合率ではなくその温度を調整する点で相違しているといえ、結局、上記相違点Aと同様であるといえる。
そうすると、既に上記相違点Aについて検討したのと同様に、甲3の2発明をして上記相違点Bに係る特許発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるということはできない。
よって、特許発明2は甲第3号証に記載された発明(甲3の2発明)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでないから、特許発明2についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものということはできない。

5 その他
特許異議申立人は、(ア)訂正後の請求項1(及び2)の「前記室外機の有する圧縮機には、液冷媒と潤滑油の二層分離が生じうる低温域において前記二層分離が生じないように所定値以上の潤滑油が混合した冷媒を供給する」における「液冷媒と潤滑油の二層分離が生じうる低温域」は不明確であって、明細書を参酌してもこの低温域が何℃から何℃までの領域を指しているのかを認識することはできないので、特許発明の範囲が不明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである旨、平成29年6月7日付け意見書において主張し(平成29年6月7日付け意見書5ページ21行?6ページ4行)、(イ)訂正後の特許発明1は、「前記室外機の有するアキュムレータ内の潤滑油混合率を所定値以上に調整」することを特定しているものの、その方法については、請求項2に特定される「前記油分離器で分離した潤滑油を前記アキュムレータに戻すことで、前記アキュムレータ内に蓄積される液冷媒と潤滑油との混合液における潤滑油混合率を前記所定値以上に調整する」という方法が発明の詳細な説明に開示されているのみであるから、出願時の技術常識に照らして特許発明1の範囲まで発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから、特許発明1は、発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである旨、平成29年12月21日付け意見書において主張している(平成29年12月21日付け意見書2ページ14行?3ページ末行)。
しかしながら、上記(ア)については、上記「4(1)(イ)」に記載したとおり、特許発明の冷媒に混合する潤滑油の特性は、「液冷媒と潤滑油の二層分離が生じうる低温域」の存在とともに、「所定値以上の潤滑油が混合した冷媒」はそのような「低温域において」も「二層分離が生じないような」ものであることが特定されている。すなわち、「所定値以上の潤滑油が混合した冷媒」でないと「液冷媒と潤滑油の二層分離が生じうる低温域」が存在することを特定するとともに、そのような「低温域において」も「二層分離が生じないような」「所定値以上の潤滑油が混合した冷媒」であることも特定している。そうすると、「液冷媒と潤滑油の二層分離が生じうる低温域」は、「所定値以上の潤滑油が混合した冷媒」でないと、「液冷媒と潤滑油の二層分離が生じうる低温域」であって、何℃から何℃までの領域というような具体的数値を特定した温度の範囲に限定されるものではなく、液冷媒と潤滑油自体の特性のみならず、液冷媒と潤滑油の混合割合等、さまざまな条件で特定される液冷媒と潤滑油の二層分離が生じうる温度の範囲内の領域を指すことが理解できるから、不明確であるとはいえない。
また、上記(イ)については、特許発明の課題解決手段は「室外機の有するアキュムレータ内の潤滑油混合率を所定値以上に調整」することといえるところ、加えてその調整が「供給油量調整部によ」ると特定されるのであるから、更に詳細な特定を要するものではない。そうすると、特許発明1は、発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえない。なお、「供給油量調整部」としては本件特許の明細書書の【0020】に「返油キャピラリ107」が例示されている。そして、斯界の技術常識からすると、発明の詳細な説明に記載された「キャピラリ」と同様の機能を奏するものとして、絞りのある、例えば「弁」など、他のものを想定できることは当業者にとって自明のことといえる。また、「返油」の潤滑油は同【0020】に「オイルセパレータ106」で回収する旨記載され、請求項2で特定される「該圧縮機の吐出側に接続され、前記圧縮機から吐出された冷媒中の油を分離して回収する油分離器」に相当し、さらに請求項2では「前記油分離器で分離した潤滑油を前記アキュムレータに戻す」と特定されている。しかしながら、斯界の技術常識からすると、返油する潤滑油の回収は、機能の観点からすると潤滑油を回収することは「油分離器」でなくとも可能であるし、また、設置位置の観点からすると「圧縮機の吐出側に接続され」た位置でなく圧縮機内や他の箇所であっても可能であることからすると、発明の詳細な説明に記載された「オイルセパレータ106」と同様の機能を奏する他のものを想定できることは当業者にとって自明のことである。
よって、平成29年6月7日付け意見書及び平成29年12月21日付け意見書における上記主張は採用できない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、特許発明1は甲第1ないし3号証のいずれかに記載された発明ではないし、甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号及び特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでなく、また、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に違反したものでないので、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、取消理由によって取り消すべきものであるとはいえない。
さらに、特許発明2は甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許の請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでなく、また、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に違反したものでないので、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
そして、他に本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内機と室外機を配管を介して接続し、冷媒を循環させる空気調和機において、
前記冷媒として、R32単独の冷媒またはR32を70質量パーセント以上含む混合冷媒を使用し、
液冷媒と潤滑油の二層分離が生じうる低温域において前記二層分離が生じないように、供給油量調整部により前記室外機の有するアキュムレータ内の潤滑油混合率を所定値以上に調整し、前記室外機の有する圧縮機に所定値以上の潤滑油が混合した冷媒を供給する、
空気調和機。
【請求項2】
室内機と室外機を配管を介して接続し、冷媒を循環させる空気調和機において、
前記冷媒として、R32単独の冷媒またはR32を70質量パーセント以上含む混合冷媒を使用し、
前記室外機の有する圧縮機には、液冷媒と潤滑油の二層分離が生じうる低温域において前記二層分離が生じないように所定値以上の潤滑油が混合した冷媒を供給し、
前記室外機は、
前記圧縮機と、
該圧縮機の吐出側に接続され、前記圧縮機から吐出された冷媒中の油を分離して回収する油分離器と、
前記圧縮機の流入側に接続され、冷媒から液冷媒を分離して蓄積し、ガス冷媒を前記圧縮機に供給するためのアキュムレータと、
前記油分離器で分離した潤滑油を前記アキュムレータに戻すことで、前記アキュムレータ内に蓄積される液冷媒と潤滑油との混合液における潤滑油混合率を前記所定値以上に調整するための供給油量調整部と、
を備える空気調和機。
【請求項3】
前記供給油量調整部により前記油分離器から前記アキュムレータに戻される潤滑油の返油率をx(x=潤滑油流量/冷媒全流量)、
前記アキュムレータから前記圧縮機に流れる混合液の比率をR(R=(液冷媒流量+潤滑油流量)/冷媒全流量)、
前記アキュムレータ内の液冷媒と潤滑油との混合液が二層に分離する限界の潤滑油混合率をn(n=潤滑油量/液冷媒量)、
前記油分離器から冷凍サイクルへ流れる潤滑油の循環率をy(y=潤滑油流量/冷媒全流量)としたとき、x≧n・R-yが成立する、
請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記nの値を0.4以上に設定する、
請求項3に記載の空気調和機。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-06-21 
出願番号 特願2012-244492(P2012-244492)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (F25B)
P 1 651・ 537- YAA (F25B)
P 1 651・ 113- YAA (F25B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鈴木 充  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 佐々木 正章
田村 嘉章
登録日 2016-05-13 
登録番号 特許第5927633号(P5927633)
権利者 日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
発明の名称 空気調和機  
代理人 特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所  
代理人 特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所  
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