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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C22B
審判 全部申し立て 2項進歩性  C22B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C22B
管理番号 1342999
異議申立番号 異議2017-701128  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-09-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-11-30 
確定日 2018-07-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6135380号発明「転炉ダストの回収方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6135380号の特許請求の範囲を訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?3〕について訂正することを認める。 特許第6135380号の請求項1?3に係る特許を維持する。  
理由 理 由
第1 手続きの経緯
特許第6135380号の請求項1?3に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成25年 8月 6日を出願日とする出願であって、平成29年 5月12日に特許権の設定登録がされ、同年 5月31日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、請求項1?3に係る特許に対し、同年11月30日に特許異議申立人藤井正弘(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、当審において、平成30年 2月21日付けで取消理由を通知し、同年 4月26日付けで、特許権者より、意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して申立人から同年 6月 8日付けで意見書の提出がされたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
平成30年 4月26日付けの訂正請求書による訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)の内容は、以下のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「1または複数の回収領域を定め」と記載されているのを、
「、銅を回収する第1回収領域、鉛を回収する第2回収領域、およびビスマスを回収する第3回収領域からなる3つの回収領域を定め」に訂正する。
また、請求項1の記載を引用する請求項2?3も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記回収領域の数および/または境界位置を変更する」と記載されているのを、
「前記回収領域の境界位置を変更する」に訂正する。
また、請求項1の記載を引用する請求項2?3も同様に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2に、
「前記回収領域の数および/または境界位置を変更する」と記載されているのを、
「前記回収領域の境界位置を変更する」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3に、
「前記回収領域の数および/または境界位置を変更する」と記載されているのを、
「前記回収領域の境界位置を変更する」に訂正する。

2 訂正の可否について
2-1 訂正事項1について
(1)訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1における「1または複数の回収領域を定め」との発明特定事項について、「1の回収領域」を排除し、さらに、「複数の回収領域」を、「銅を回収する第1回収領域、鉛を回収する第2回収領域、およびビスマスを回収する第3回収領域からなる3つの回収領域」に限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の規定に適合するものである。

(2)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記(1)で検討したように、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(3)新規事項の追加の有無
明細書には、以下の記載がある。なお、下線は当審が付与した。
「【0034】
図4(3)に示すように、第1排出口34a、第3排出口34cおよび第4排出口34dを開き、第2排出口34bを閉じると、第1、第2区3a、3bを第1回収領域として、この領域の転炉ダストはまとめて第1排出口34aから排出される。また、第3区3cを第2回収領域として、この領域の転炉ダストは第3排出口34cから排出される。また、第4区3dを第3回収領域として、この領域の転炉ダストは第4排出口34dから排出される。」
「【0041】
図4(3)に示すように、第1、2区3a、3bを第1回収領域として、この領域の転炉ダストを第1排出口34aから排出し、銅精錬プロセスに繰り返すとともに、第3区3cを第2回収領域として、この領域の転炉ダストを第3排出口34cから排出し、第4区3d第3回収領域として、この領域の転炉ダストを第4排出口34dから排出してもよい。このように回収領域を定めることで、鉛とビスマスを分離して回収することもできる。第2回収領域から回収された転炉ダストを鉛処理工程に排出し、第3回収領域から回収された転炉ダストをビスマス処理工程に排出すればよい。このように、不純物を金属ごとに分離することで、その不純物に適した方法で処理できる。また、このように回収領域の数は任意に設定できる。」
以上のとおり、「銅を回収する第1回収領域、鉛を回収する第2回収領域、およびビスマスを回収する第3回収領域からなる3つの回収領域を定め」ることは、願書に添付した明細書等に記載されている。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合する。

2-2 訂正事項2について
(1)訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項1に、
「前記回収領域の数および/または境界位置を変更する」と記載されているのを、回収領域の数を変更することを削除し 「前記回収領域の境界位置を変更する」に限定するものである。
したがって、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の規定に適合するものである。

(2)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記(1)で検討したように、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(3)新規事項の追加の有無
訂正事項2は、上記(1)のとおり、「前記回収領域の数および/または境界位置を変更する」と記載されているのを、回収領域の数を変更することを削除し 「前記回収領域の境界位置を変更する」に限定するものであるから、願書に添付された明細書又は図面に記載した事項の範囲内でしたものであるといえるので、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。

2-3 訂正事項3について
訂正事項3は、実質的に訂正事項2と同様の訂正である。
したがって、訂正事項2と同様に、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の規定に適合するものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。

2-4 訂正事項4について
訂正事項4は、実質的に訂正事項2と同様の訂正である。
したがって、訂正事項2と同様に、訂正事項4は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の規定に適合するものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。

2-5 一群の請求項について
訂正に係る本件訂正前の請求項2?3は、請求項1を引用するものであって、訂正によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1?3に対応する訂正後の請求項1?3は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

2-6 独立して特許を受けることができるものであること
本件特許の全請求項について特許異議の申立てがされたので、訂正事項1?4は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件についての規定の適用はない。

2-7 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、同条第9項で準用する特許法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?3〕について、訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
前記第2のとおり、本件訂正請求による訂正が認められるので、本件特許の請求項1?3に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明3」という。)は、それぞれ、次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
転炉から排出された排気ガスに含まれる転炉ダストを電気集塵機で集塵し、
前記電気集塵機内において前記排気ガスの流動方向に、銅を回収する第1回収領域、鉛を回収する第2回収領域、およびビスマスを回収する第3回収領域からなる3つの回収領域を定め、該回収領域ごとに集塵された前記転炉ダストを回収するにあたり、
前記排気ガスの流動方向における前記転炉ダストの金属品位の分布を繰り返し測定し、測定結果を基に前記回収領域の境界位置を変更する
ことを特徴とする転炉ダストの回収方法。
【請求項2】
前記電気集塵機は、
集塵された前記転炉ダストを前記排気ガスの流動方向に沿って搬送する搬送手段と、
前記搬送手段の複数位置に設けられ、該搬送手段から前記転炉ダストを排出する複数の排出口と、を備え、
前記排気ガスの流動方向における前記転炉ダストの金属品位の分布を繰り返し測定し、測定結果を基に前記排出口の開閉を切り替えて、前記回収領域の境界位置を変更する
ことを特徴とする請求項1記載の転炉ダストの回収方法。
【請求項3】
前記電気集塵機は、
集塵された前記転炉ダストを前記排気ガスの流動方向に沿って搬送する搬送手段と、
前記搬送手段の複数位置に設けられ、該搬送手段から前記転炉ダストを排出する複数の排出口と、を備え、
前記排気ガスの流動方向における前記転炉ダストの金属品位の分布を繰り返し測定し、測定結果を基に前記排出口から排出された前記転炉ダストの搬送先を切り替えて、前記回収領域の境界位置を変更する
ことを特徴とする請求項1記載の転炉ダストの回収方法。」

2 特許異議申立理由の概要
申立人は、証拠として甲第第1号証?甲第4号証を提出し、以下の理由により、訂正前の請求項1?3に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

(1)申立理由1(特許法第29条第1項第3号)
申立理由2(特許法第29条第2項)
(1-1)訂正前の請求項1に係る発明について
(a)甲第1号証を主引用例とする場合(特許異議申立書第14頁第15行?第16頁第31行)
訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証?甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、訂正前の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号または同法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

(b)甲第2号証を主引用例とする場合(特許異議申立書第16頁第32行?第17頁第27行)
訂正前の請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であるか、甲第1号証?甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、訂正前の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号または同法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

(1-2)訂正前の請求項2に係る発明について(特許異議申立書第18頁第23行?第19頁第19行)
訂正前の請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証?甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、訂正前の請求項2に係る特許は、特許法第29条第1項第3号または同法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

(1-3)訂正前の請求項3に係る発明について(特許異議申立書第17頁第28行?第18頁第22行)
訂正前の請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証?甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、訂正前の請求項3に係る特許は、特許法第29条第1項第3号または同法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
)

(2)申立理由3(特許法第36条第6項第1号)(特許異議申立書第19頁第20行?第20頁第1行)
訂正前の請求項1?3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、訂正前の請求項1?3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してなされたものである。

[証拠方法]
甲第1号証:特開2000-189847号公報
甲第2号証:特開昭52-141410号公報
甲第3号証:李昇憲 外4名「電気集じん機により段別採取したフライアッシュの特性と脱炭素処理によるフライアッシュの改質」材料(1999)Vol.48 No.8 p.837-842
甲第4号証:李昇憲 外3名「電気集じん機により別段採取したフライアッシュの鉱物組成の変化」Journal of the Ceramic Society of Japan(2003)Vol.111 No.1 p.11-15
以下、それぞれ「甲1」?「甲4」という。

3 平成30年 2月21日付け取消理由の概要
訂正前の請求項1?3に係る特許に対して平成30年 2月21日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、以下のとおりである。

(1)取消理由1(前記申立理由2のうち、甲1?甲2のみ採用)
訂正前の請求項1?3に係る発明は、甲第1号証?甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、訂正前の請求項1?3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

4 平成30年 6月 8日付けの申立人の意見の概要
申立人は、以下の理由により、訂正後の請求項1?3に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

(1)申立理由4(平成30年 6月 8日付けの申立人の意見書第3頁第19行?第4頁第27行)
訂正後の請求項1?3に係る発明は、明確ではないから、特許法第36条第6項第2号の規定する要件を満たしていない。

(2)申立理由5(平成30年 6月 8日付けの申立人の意見書第2頁第22行?第3頁第18行、第4頁最終行?第10頁第5行)(前記取消理由1)
訂正後の請求項1?3に係る発明は、甲第1号証?甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、訂正後の請求項1?3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

5 甲号証の記載事項について
5-1 甲1について
ア 甲1には、以下の記載がある。(下線は当審が付与した。以下同様。)
(ア)「【請求項1】 電気集塵機の集塵部を含塵ガスの流動方向に沿って複数ゾーンに区画し、このゾーン毎に捕捉・収容された集塵ダストを、ガス流方向に従った複数系統に区分して排出することを特徴とする非鉄金属製錬における集塵ダスト排出方法。」
(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、銅、ニッケルなどの非鉄金属の製錬において、マットから粗金属を製造する転炉と呼ばれる回転炉から排出される含塵ガスに含まれているダストを電気集塵機で集塵して排出する非鉄金属製錬における集塵ダストの排出方法およびその装置に関する。」
(ウ)「【0004】コットレルは通常その集塵能力によって煙道を平行する複数の流路に分割してそれぞれの流路に設置され、さらにそれぞれの集塵部1およびホッパ2は含塵ガスの流動方向に沿って複数のゾーン、例えば3室に別れている。以下これを上流側から第1室、第2室、第3室と呼び、区別する場合、例えばホッパについては第1室のものを2a、第2室のものを2b、第3室のものを2cとする。ホッパ2の底部に設けられているスクリューコンベヤ3については取り出し口4はそれぞれ1か所であるから、3室の集塵ダストは混合され、同じ排出系統に集められて処理を受けることになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで本発明者らは、転炉の電気集塵機の各室毎に集塵ダストを採集してその成分を調査したところ、銅、金、銀などの有価金属と、鉛、亜鉛、砒素、アンチモン、ビスマス等の不純物とではその分布に相違があり、ガス流にして上流側である第1室の集塵ダストがもっとも有価金属を多く含み、不純物が少ないのに対し、有害な不純物である鉛、亜鉛、砒素、アンチモン、ビスマス等は下流側である第3室にもっとも多く含まれるという知見が得られた。
【0006】しかしこれまで各室の集塵ダストは混合されて全量が亜鉛製錬所等のダスト処理設備に送られていたため送鉱量が多く、輸送コストおよび処理コストが大きいという問題点を有していた。本発明は、従来混合されてしまっていた有害成分の少ない第1室の集塵ダストを別系統にして取り出し、製錬炉に回収することによりダスト処理のための送鉱量を減少させるとともに有価金属を有効に回収することのできる電気集塵機における集塵ダストの排出方法およびその設備を実現することを目的とする。」
(エ)「【0008】また、本発明の非鉄金属製錬における集塵ダスト排出装置は、電気集塵機の集塵部で捕捉した集塵ダストを下部にあるホッパ内に収容し、ホッパ底部からスクリューコンベヤで排出する非鉄金属製錬における集塵ダストの排出装置において、前記ホッパを含塵ガスの流動方向に沿って複数の室に分割するとともに、前記スクリューコンベヤをホッパ底部の含塵ガスの流動方向に沿って設置し、このスクリューコンベヤの中間部および終端部に複数の取り出し口を設け、含塵ガスの流動方向に沿った複数系統に区分して排出できるようにしたことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、図2に示した銅製錬を行う転炉の電気集塵機を例として説明する。電気集塵機の集塵部およびその下部にあるホッパは、図2に示した場合と同様にガス流方向に3つの室に分割されている。第1室、第2室、第3室のそれぞれについて、集塵ダスト中の金属の分析値を調査した結果を表1に示す。
【0010】
【表1】

【0011】銀については顕著な差が認められないものの、銅、金については第1室が最も高品位で、第2室がこれに次いでいる。一方、鉛、亜鉛、ビスマスなど、有害不純物については下流に進むにしたがって濃度が上昇していることがわかる。そこで、第3室の集塵ダストをその出口において抜き出して、第1室と第2室の集塵ダストとは別系統で処理することができるように、従来のスクリューコンベヤ終端部のものに加え、スクリューコンベヤの中間位置にも取り出し口を設けた。」
(オ)「【0012】図1は本発明の電気集塵機における集塵ダストの排出設備の要部を示す部分正面図で、スクリューコンベヤ3の搬送方向を矢印で示している。スクリューコンベヤ3の終端部にある取り出し口4、ロータリーバルブ5およびチェーンコンベヤ6は図2、図3に示した従来のものと同様であるが、スクリューコンベヤ3の上流寄り中間部、すなわち第3室のホッパ2cの出口付近に設けた取り出し口4aと、これに接続するロータリーバルブ5a、チェーンコンベヤ6aは本発明により新規につけ加えたものである。
【0013】この結果、有価金属の品位が低く、有害不純物の多い第3室の集塵ダストはほぼ全量がこの新たな取り出し口4aから排出され、ロータリーバルブ5aを経てチェーンコンベヤ6aの系統でダスト処理系統に搬出されるが、従来集塵ダストの全量をダスト処理系統に搬出していたのに比べれば送鉱量が大幅に減少する。ビスマスを例にとると、従来一括して処理していた集塵ダストが毎月50tあったとして、ビスマスはその1.5 %であるから月当たり 750kgのビスマスを処理していたわけであるが、本発明により第3室の集塵ダストのみを処理することで送鉱量が25tに半減し、しかもその2.8 %に当たる 700kgのビスマスを処理することができた。つまり有害成分の処理量は変わらず、送鉱量は半減する。他の成分についても同様である。
【0014】一方、第2室、第1室の集塵ダストはスクリューコンベヤ3の終端部にある取り出し口4、ロータリーバルブ5およびチェーンコンベヤ6の別系統で系外に排出される。例えば、自溶炉などの製錬炉が近くに存在する場合には、有価金属の品位の高い第1室、第2室の集塵ダストはチェーンコンベヤ6から直接、あるいは間接的に、こうした製錬炉に戻してやることができ、歩留り向上に極めて有効である。
【0015】なお、ロータリーバルブ5aを停止させれば、従来と同様に集塵ダストの全量を一括して処理することもできる。さらに新たな取り出し口をホッパ第2室2bの出口付近にも設けることにより、第2室の集塵ダストを第1室のものと別個に取り出すことも可能である。」
(カ)





イ 以上の記載によれば、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明)
「転炉から排出される含塵ガスに含まれているダストを、電気集塵機で集塵し、前記電気集塵機の集塵部を含塵ガスの流動方向に沿って複数ゾーンに区画し、このゾーン毎に捕捉・収容されたダストを、ガス流動方向に従った複数系統に区分して回収する、ダストの回収方法であって、
電気集塵機は、含塵ガスの流動方向に沿ってダストを搬送するスクリューコンベアと、当該スクリューコンベアの中間部および終端部に複数の取り出し口とを備える、
ダストの回収方法。」

5-2 甲2について
ア 甲2には、以下の記載がある。
(ア)「2.特許請求の範囲
集塵機の下部に供給排ガスの流れ方向に沿つて配設され、該集塵機から落下する含亜鉛ダストを貯留するダスト貯留部と、該ダスト貯留部の下部に貯えたダストを前記排ガスの流れと逆方向にかき寄せるスクレーパーと、前記ダスト貯留部の下部に前記排ガスの流れ方向に沿つて複数個設けられた開閉自在のダスト排出孔とからなる含亜鉛製鉄ダストの分別回収装置。
3.発明の詳細な説明
本発明は、含亜鉛製鉄ダストの分別回収装置に関し、特に直接還元製鉄造時の集塵機における含亜鉛ダストの分別回収装置に関するものである。
製鉄所内の原料処理、製銑、製鋼、圧延およびその他の工程において発生する鉄分を多量に含有するダスト(以下、含鉄ダストと称する)は集塵機で捕集されており、前記含鉄ダストは微粉であるため直ちに製銑炉、製鋼炉に装入再使用することは困難であるので、事前処理の一つとしてペレツトあるいはブリケツトに成形した上で、グレートキルンあるいは竪型炉等で還元焼成し、製銑炉または製鋼炉用原料として再使用する方法がある。
しかしながら、前記還元焼成の際に発生し、電気集塵機で捕集されるダストには通常5?15%程度の亜鉛分が含有されており(以下、このダストを含亜鉛製鉄ダストということがある)、一方還元焼成に供される原料含鉄ダスト中の亜鉛分の含有量は通常0.2?20%程度であることから、この含鉄ダスト中の亜鉛は還元焼成工程中に揮発して含亜鉛製鉄ダスト中に移行することが知られている。」(第1欄、第2欄)
(イ)「原料含鉄ダスト中の亜鉛は0.2?2.0%の範囲で変動し、さらに直接還元鉄製造時の操業条件によつて集塵機で捕集されたダスト中の亜鉛含有量は異なつてくるので、必ずしも一定品質(均一亜鉛含有量)の含亜鉛製鉄ダストが得られるとは限らない。また含亜鉛製鉄ダスト中の亜鉛含有量をどの程度にするかは、そのときの亜鉛鉱石の需給状況、価格または精練方式によつて異なり、一概には決定できない。そのため、集塵機から排出されるダストを亜鉛含量に応じて分別することができれば、極めて有利である。 本発明の目的は、上記実状に鑑み、集塵機から排出される含亜鉛製鉄ダストを、所望の一定亜鉛含量以上のものに分別回収することができる装置を提供することにある。
本発明者らは、含亜鉛製鉄ダストを電気集塵機で捕集する際に、排ガスが供給される電気集塵機の入口側における亜鉛ダストの捕集効率が悪く、その出口側に行くほど捕集効率が高くなることに着目し、鋭意研究の結果本発明に到達したものである。
すなわち、本発明の分別回収装置は、集塵機の下部に供給排ガスの流れ方向に沿つて配設され、該集塵機から落下する含亜鉛ダストを貯留するダスト貯留部と、該ダスト貯留部の下部に貯つたダストを前記ガスの流れと逆方向にかき寄せるスクレーパーと、前記ダスト貯留部の下部に前記排ガスの流れ方向に沿つて複数個設けられた開閉自在のダスト排出孔とからなることを特徴とするものである。
以下、本発明の一実施例を図面に従って説明する。
第1図は、本発明装置の一実施態様を示す正面断面図、第2図はその平面図、および第3図は第1図の主要部拡大断面図である。」(第3欄第12行?第5欄第8行)
(ウ)「上記装置において、電気集塵機1に導入された含亜鉛製鉄ダストは、集塵機(図示せず)で捕集されたのち、落下して集塵機下部のダスト貯留部3に貯留される。ダストの亜鉛含量は、第4図に示すように集塵機の入口側で低く、出口側で高くなるため、該貯留部3のダスト組成も集塵機の入口から出口方向に向つて亜鉛含有量が高くなつている。
ダスト貯留部3においては、無端チェーンスクレーパー2が上部はガスの流れ方向に下部は反ガス流方向に回転しておりダストは、上記チェーンスクレーパーの間を通つてダスト貯留部3の下部に貯まる。その下部に貯つたダストのうち、高亜鉛含量のものは、反ガス流方向にかき寄せられ、排出孔4Bからその下方のチェーンコンベア5上に排出される。次いでこのダストはチェーンコンベア8を経てホッパー10に回収される。一方、低亜鉛含量のダストは、ダスト貯留部の排ガス入口方向にかき寄せられ、その端部の排出孔4Dからチェーンコンベア6上に排出され、次いでチェーンコンベア9を経てホツパー11内に回収される。
上記実施例において、さらに高い亜鉛含量を有する含亜鉛製鉄ダストを回収する場合には、ダスト貯留部の前記排出孔4Bを閉じ、チェーンコンベア5を排ガスの流れ方向に若干移動して、排出孔4Aの下部に置き、そのバルブを開くことによってより高い亜鉛含量のダストを得ることができる。すなわち排出孔4Aを経てチェーンコンベア5上に落下するダストは、ダスト導入孔7Aを経てチェーンコンベア8上に排出され、前記と同様にホツパー内に回収される。この場合、ダスト貯留部の端部の排出孔4Dから排出されるダストは、若干、亜鉛含量が高くなる。
また逆に実施例より低い亜鉛含量を有するダストを回収する場合には、ダスト貯留部の排出孔4A、4Bを閉じ、チェーンコンベア5を排出孔4Cの下部に置き、そのバルブを開いて同様に操作すればよい。
上記操作において、例えば原料含鉄ダストの亜鉛含有量が変化した場合には、チェーンコンベア5を適宜移動して排出孔4A、4Bおよび4Cのいづれかに合わせることにより、含亜鉛製鉄ダストの亜鉛含量を所望の一定値以上に保持することができる。例えば、今、排出孔4Cを開き、チェーンコンベア5を介して20%の亜鉛含有量のダストを得ていた場合、原料中の亜鉛含有量が低下し、相対的にダスト中の亜鉛含有量を20%に維持できなくなつたときには、チェーンコンベア5を排出孔4Bに移動し、なお亜鉛含量が不足する場合には、さらに4Aの位置に移動して同様にダストを排出すればよい。逆に原料中の亜鉛含有量が増加し、排出孔4Cの位置で亜鉛含有量が20%を越えこれ以上亜鉛含量を高める必要がない場合には、排出孔4A、4Bおよび4Cを閉じてすべてのダストを排出孔4Dから排出させればよい。以上の排出孔のロータリーバルブの開閉は、手動で行なってもよいが、例えば各排出孔のダストの亜鉛含有量を自動的に測定し、その測定値と設定値との差を検出し、これに応じてバルブを開閉するように自動化することもできる。
上記実施例において、ダスト貯留部3のダスト排出孔およびこれと対応するチェーンコンベア8のダスト導入孔はそれぞれ4個であるが、これらをより多数設ければ、それだけ精度よく、所望の亜鉛含有量のダストを得ることができる。また上記チェーンコンベア5は、1個のみならず2個以上設けてもよく、またその取付位置の移動は、例えば該チェーンコンベア5の底部に車輪を取付け、チェーンコンベアの前記移動方向に架設したレール上を走行させるようにしていてもよい。」(第7欄第4行?第10欄下から第4行)(エ)





イ 以上の記載によれば、甲2には、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲2発明)
「含亜鉛製鉄ダストを、電気集塵機で分別回収する方法であって、
分別回収装置は、集塵機の下部に供給排ガスの流れ方向に沿って配設され、該集塵機から落下する含亜鉛ダストを貯留するダスト貯留部と、該ダスト貯留部の下部に貯ったダストを前記ガスの流れと逆方向にかき寄せるスクレーパーと、前記ダスト貯留部の下部に前記排ガスの流れ方向に沿って複数個設けられた開閉自在のダスト排出孔とからなり、
分別回収装置下部には、複数のチェーンコンベアを備え、ダストは、当該チェーンコンベアを経て、複数のホッパーに回収され、
各排出孔のダストの亜鉛含有量を自動的に測定し、その測定値と設定値との差を検出し、これに応じて、前記ダスト排出孔の開閉を行い、複数個のダスト排出孔のうち、チェーンコンベアと接続するダスト排出孔を選択し、ダストは、複数のホッパーに分別してそれぞれ回収される、方法。」

5-3 甲3について
甲3には、以下の事項が記載されている。
「フライアッシュは、微粉炭燃焼ボイラーより排出された後、高温フレーム燃焼で溶融されガラス質球状微粒子として煙道ガスと共に輸送され、電気集じん機により捕集される。電気集じん機は、流路中に数列に配置されており、集じん箇所の違いにより捕集されたフライアッシュの諸性質は大きく異なる。」(第837頁左欄第16行?右欄第2行)
「2 実験
2・1試料
実験に用いたフライアッシュは、同一石炭火力発電所において排出されたもので、発電負荷および使用炭種を変化させ、電気集じん機ホッパにより捕集された瀝青炭灰である。Aシリーズはボイラーの負荷が600MW(通常運転)で運転されている昼間時に生成したフライアッシュであり、A’シリーズはAシリーズと同じ石炭を用いボイラーの負荷が300MWで運転される夜間時に、採取したものである。BシリーズはAシリーズと同様にボイラーの負荷が600MW(通常運転)で、異なる石炭を用いて発電した際に採取したフライアッシュである。電気集じん機の最もボイラーに近い1段目のホッパで捕集されたフライアッシュをA-1,A'-1,B-1,2段目のホッパにより捕集されたものをA-2,A'-2,B-2,出口(煙突)寄りに配置されている3段目のホッパにより捕集されたものをA-3,A'-3,B-3とする。」(第838頁左欄第9行?第25行)
「2・2 フライアッシュの物理化学的性質
フライアッシュの化学的性質として化学組成、全炭素量(堀内製作所。クーロマチック-C)および強熱減量を測定した。物理的性質としてブレーン比表面積、粒度分布(日機装、Microtrack-9320HRA)および比重を測定した。鉱物組成として、ガラス相の量は全体から結晶質の化合物の合計量と強熱減量を差し引いて求めた。フライアッシュ中の結晶質の量は粉末X線回折(XRD)内部標準法により求めた。」(第838頁左欄第29行?第37行)
「3 結果と考察
3・1 フライアッシュの物理・化学的性質
フライアッシュの物理的性質をTable Iに示す。発電負荷および使用炭種によらず後段に向かって、ブレーン法による比表面積が順次大きくなっている。Fig.1にフライアッシュの粒度分布を示す。1段目から3段目に行くほど最大粒径と平均粒径は小さく、粒度分布の範囲は狭くなっている。なお、発電負荷よりも炭種によって粒度分布に差が生じている。」(第838頁右欄下から5行?第839頁左欄第4行)


」(第839頁左欄)
「フライアッシュの化学組成をTable IIに示す。網目形成酸化物であるSiO_(2)とAl_(2)O_(3)量の合計はAおよびA’シリーズは80mass%、Bシリーズは75mass%以上を示しており、採取ヶ所が集じん機の1段から3段目にいくにつれて、若干減少し、また、粒子が細かくなるほどSiO_(2)量は減少し、Al_(2)O_(3)量が増加している。一方、フライアッシュの溶融温度を低下させると考えられるFe_(2)O_(3)、アルカリやアルカリ土類の合計は10%であり、1段から3段にいくにつれて若干増加している。」(第839頁右欄第7行?第15行)


」(第839頁下部)

5-4 甲4について
甲4には、以下の事項が記載されている。
「2. Experimental procedures
2.1 Fly ashes
Fly ashues used in the experiment were from a coal-fired power plant in Japan.The fly ashes were collected from a hopper attached to an electrostatic precipitator after changing the burning condition and the type of bituminous coal.A series is the fly ash generated when the load of the boiler was 600 MW,while A' series is the collected fly ash when the load of the boiler was 300 MW(at night)with the same type of coal used for A series.B series is the fly ash when a different bituminous coal was used under the same load(600MW)as A series.As shown in Fig.1,the electrostatic precipitator has three hoppers in the direction of flue gas exhaustion.Fly ashes collected from the hopper closest to the inlet were named A-1,A'-1 and B-1.Fly ashes collected from the second hopper were named A-2,A'-2 and B-2.Finally,fly ashes collected from the hopper located at the outlet were named A-3,A'-3 and B-3.
Chemical analysis of fly ashes was carried out using an atomic absorption spectrophotometer(Shimadzu Co.,AA-680,Japan).Carbon content was determined by carbon analyzer(Horiba Co.,Chromatic-C,Japan)and loss on ignition was done following JIS A 6210.Mean particle size of fly ashes was measured by a laser diffraction method(Microtrack-9320 HRA,USA).Measurement of Blaine value was performed according to JIS R 5201.」(第11頁右欄第24行?第12頁左欄第9行)


」(第12頁左欄上)
当審訳
「2. 実験手順
2.1 フライアッシュ
日本の石炭火力発電所からのフライアッシュを実験で使用した。フライアッシュは、燃焼条件および瀝青炭の種類を変更後、電気集塵機に取り付けられたホッパーから収集した。Aシリーズは、ボイラーの負荷が600MWのときに発生するフライアッシュであり、A’シリーズはAシリーズと同じ種類の石炭を用いてボイラーの負荷を300MW(夜間)とした場合に収集されたフライアッシュである。Bシリーズは、Aシリーズと同じ負荷(600MW)とし、Aシリーズと異なる瀝青炭を使用した場合のフライアッシュである。図1に示すように、電気集塵装置は、煙道ガスの排出方向に3つのホッパーを有する。入口に最も近いホッパーから採取したフライアッシュをA-1、A’-1、B-1と命名した。第2のホッパーから集められたフライアッシュをA-2、A’-2およびB-2と命名した。最後に、出口に位置するホッパーから集められたフライアッシュをA-3、A’-3およびB-3と命名した。
フライアッシュの化学分析は、原子吸光分光光度計(島津製作所、AA-680、日本)を用いて行った。炭素分析計(堀場製作所、クロマチック-C、日本)により炭素含有量を測定し、JIS A 6201に準拠して着火損失を測定した。フライアッシュの平均粒子径はレーザー回折法(Micro-track-9320 HRA、アメリカ合衆国)により測定した。ブレイン値の測定は、JIS R 5201に準拠して行った。」




6 判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
ア 本件発明1と甲1発明とを対比すると、本件発明1は、「銅を回収する第1回収領域、鉛を回収する第2回収領域、およびビスマスを回収する第3回収領域からなる3つの回収領域を定め」るとの事項を有するのに対し、甲1発明は、当該事項を有していない点で相違する。

イ 相違点につき検討するに、前記5-1 ア (エ)によれば、甲1の【0010】の表1には、第1室、第2室、第3室で、銅、鉛、ビスマスのそれぞれの金属品位が異なることが記載されている。また、同(オ)によれば、甲1の【0015】には、「さらに新たな取り出し口をホッパ第2室2bの出口付近にも設けることにより、第2室の集塵ダストを第1室のものと別個に取り出すことも可能である。」と記載されている。

ウ しかしながら、前記5-1 ア (ウ)によれば、甲1には、「従来混合されてしまっていた有害成分の少ない第1室の集塵ダストを別系統にして取り出し、製錬炉に回収することによりダスト処理のための送鉱量を減少させるとともに有価金属を有効に回収する(【0006】)」方法が記載されているにとどまるというべきであり、不純物の各成分を分離することについては記載も示唆もないし、ましてや、不純物である、鉛とビスマスに着目し、これらを別に回収することは記載も示唆もない。

エ そして、当該「銅を回収する第1回収領域、鉛を回収する第2回収領域、およびビスマスを回収する第3回収領域からなる3つの回収領域を定め」るとの事項は、甲2にも記載も示唆もない。

オ 以上ア?エより、本件発明1は、甲1?甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるというには及ばない。

カ また、本件発明2?3も、「銅を回収する第1回収領域、鉛を回収する第2回収領域、およびビスマスを回収する第3回収領域からなる3つの回収領域を定め」るとの特定事項を備えるものであるから、本件発明1と同様に、甲1?甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
ア 前記申立理由1(特許法第29条第1項第3号 新規性)及び
申立理由2(特許法第29条第2項)について
前記(1)のとおりであるから、本件発明1?3は、甲1に記載された発明ではない。
また、前記5-3?5-4のとおり、甲3?甲4のいずれにも、前記(1)アの相違点に係る事項は記載も示唆もない。
したがって、本件発明1?3は、甲1?甲4に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 前記申立理由3(特許法第36条第6項第1号)について
(ア)申立人は、特許異議申立書第19頁第20行?第20頁第1行において、訂正前の請求項1?3に係る発明は、回収領域の数が1の場合も含み得るものとなっているが、不純物と銅とを分離できていない態様をも含むから、訂正前の請求項1?3に係る発明は、課題を解決し得ない範囲を含むと主張している。

(イ)しかしながら、訂正により、本件発明1?3は、「銅を回収する第1回収領域、鉛を回収する第2回収領域、およびビスマスを回収する第3回収領域からなる3つの回収領域を定め」との事項を備えるものとなり、回収領域の数が1の場合は含まないものなった。

(ウ)よって、申立人の主張は前提を欠くものであり、採用できない。

ウ 前記申立理由4(特許法第36条第6項第2号 明確性)について
(ア)申立人は、平成30年 6月 8日付けの申立人の意見書第3頁第19行?第4頁第27行において、「銅を回収する第1回収領域、鉛を回収する第2回収領域、およびビスマスを回収する第3回収領域からなる3つの回収領域を定め」との特定事項について、発明の範囲が不明確であると主張している。

(イ)しかしながら、本件明細書には、以下の記載がある。
「【0041】
図4(3)に示すように、第1、2区3a、3bを第1回収領域として、この領域の転炉ダストを第1排出口34aから排出し、銅精錬プロセスに繰り返すとともに、第3区3cを第2回収領域として、この領域の転炉ダストを第3排出口34cから排出し、第4区3d第3回収領域として、この領域の転炉ダストを第4排出口34dから排出してもよい。このように回収領域を定めることで、鉛とビスマスを分離して回収することもできる。第2回収領域から回収された転炉ダストを鉛処理工程に排出し、第3回収領域から回収された転炉ダストをビスマス処理工程に排出すればよい。このように、不純物を金属ごとに分離することで、その不純物に適した方法で処理できる。また、このように回収領域の数は任意に設定できる。」

これによれば、「銅を回収する第1回収領域」は、この領域の転炉ダストを、銅精錬プロセスに繰り返す領域であり、「鉛を回収する第2回収領域」は、この領域の転炉ダストを鉛処理工程に排出する領域であり、「ビスマスを回収する第3回収領域」は、この領域の転炉ダストをビスマス処理工程に排出する領域である。
そして、本件発明1?3は、「排気ガスの流動方向における前記転炉ダストの金属品位の分布を繰り返し測定し、測定結果を基に前記回収領域の境界位置を変更する」ことで、所望の金属品位の転炉ダストを、それぞれの回収領域に回収する発明であって、回収領域の境界位置は、所望の金属品位によって実施者が任意に設定できるものであると認識することができる。

(ウ)以上のとおりであるから、本件発明1?3は明確であり、申立人の主張は採用できない。

エ 申立理由5(特許法第29条第2項)について
前記(1)のとおりであるから、本件発明1?3は、甲1?甲2に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転炉から排出された排気ガスに含まれる転炉ダストを電気集塵機で集塵し、
前記電気集塵機内において前記排気ガスの流動方向に、銅を回収する第1回収領域、鉛を回収する第2回収領域、およびビスマスを回収する第3回収領域からなる3つの回収領域を定め、該回収領域ごとに集塵された前記転炉ダストを回収するにあたり、
前記排気ガスの流動方向における前記転炉ダストの金属品位の分布を繰り返し測定し、測定結果を基に前記回収領域の境界位置を変更する
ことを特徴とする転炉ダストの回収方法。
【請求項2】
前記電気集塵機は、
集塵された前記転炉ダストを前記排気ガスの流動方向に沿って搬送する搬送手段と、
前記搬送手段の複数位置に設けられ、該搬送手段から前記転炉ダストを排出する複数の排出口と、を備え、
前記排気ガスの流動方向における前記転炉ダストの金属品位の分布を繰り返し測定し、測定結果を基に前記排出口の開閉を切り替えて、前記回収領域の境界位置を変更する
ことを特徴とする請求項1記載の転炉ダストの回収方法。
【請求項3】
前記電気集塵機は、
集塵された前記転炉ダストを前記排気ガスの流動方向に沿って搬送する搬送手段と、
前記搬送手段の複数位置に設けられ、該搬送手段から前記転炉ダストを排出する複数の排出口と、を備え、
前記排気ガスの流動方向における前記転炉ダストの金属品位の分布を繰り返し測定し、測定結果を基に前記排出口から排出された前記転炉ダストの搬送先を切り替えて、前記回収領域の境界位置を変更する
ことを特徴とする請求項1記載の転炉ダストの回収方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-06-25 
出願番号 特願2013-163429(P2013-163429)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C22B)
P 1 651・ 113- YAA (C22B)
P 1 651・ 121- YAA (C22B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 酒井 英夫  
特許庁審判長 板谷 一弘
特許庁審判官 金 公彦
結城 佐織
登録日 2017-05-12 
登録番号 特許第6135380号(P6135380)
権利者 住友金属鉱山株式会社
発明の名称 転炉ダストの回収方法  
代理人 特許業務法人山内特許事務所  
代理人 特許業務法人山内特許事務所  
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