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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G07D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G07D
管理番号 1343005
異議申立番号 異議2017-700904  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-09-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-09-22 
確定日 2018-07-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6101338号発明「貨幣管理装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6101338号の特許請求の範囲を、平成30年2月13日付け訂正請求書に添付され平成30年4月19日付けの手続補正書により補正された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?5〕について訂正することを認める。 特許第6101338号の請求項1、3?5に係る特許を維持する。 特許第6101338号のの請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。  
理由 第1 手続の経緯
特許第6101338号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし5についての出願は、平成20年6月2日に特許出願された特願2014-158631号の一部を、平成27年12月25日に分割して新たな特許出願(特願2015-253371号)としたものであって、平成29年3月3日に特許権の設定登録がなされたところ(特許公報の発行日は平成29年3月22日)、平成29年9月22日に特許異議申立人 赤松 智信(以下「申立人」という。)より特許異議の申立てがなされた。
その後、平成29年12月20日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年2月13日に意見書及び訂正請求書が提出されたが、当該訂正請求に対して、同年3月27日付けで訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年4月19日に意見書並びに手続補正書及び訂正特許請求の範囲が提出されたものである。
そして、申立人に対し平成30年5月2日付けで特許法第120条の5第5項に基づく通知がなされたが、それに対して申立人から応答がなされなかったものである。

なお、本決定において、特許法の条文を表記する際に「特許法」という表記を省略することがある。また「甲第1号証」等を単に「甲1」などという。

第2 訂正の適否

1 訂正請求書の補正の適否
(1)補正事項の内容
上記平成30年4月19日の訂正請求書の補正は、上記平成30年2月13日の訂正請求(以下、「原訂正請求」ということがある。)について、以下の補正事項についてするものである。
(ア)補正事項1
原訂正請求における訂正事項6を削除する。
(イ)補正事項2
上記補正事項1に係る訂正事項6の削除に伴い、平成30年2月13日の訂正請求書(以下、「原訂正請求書」ということがある。)における「7 請求理由」の「(2)訂正事項」及び「(3)訂正の理由」の記載を整合させる。
(ウ)補正事項3
上記補正事項1に係る訂正事項6の削除に伴い、上記平成30年4月19日付け訂正特許請求の範囲の記載を整合させる。

(2)補正の適法性
上記各補正が、訂正請求書の要旨を変更(第120条の5第9項において準用する第131条の2第1項参照)するものであるか否かにつき検討する。

(ア)補正事項1について
補正事項1は、原訂正請求における訂正事項6を削除するものであるから、原訂正請求書の要旨を変更するものではないことは明らかである。
(イ)補正事項2及び3について
補正事項2及び3は、いずれも、補正事項1に伴い、原訂正請求書又は訂正特許請求の範囲の記載を整合させるものであり、原訂正請求書の要旨を変更するものではないことは明らかである。
(ウ)小括
したがって、上記平成30年4月19日の訂正請求書の補正は、原訂正請求書の要旨を変更するものではないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第131条の2第1項の規定に適合する。

2 訂正の内容
上記1のとおり、訂正請求書の補正は認められるから、特許権者が求める補正後の訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下(1)ないし(9)のとおりである。 (下線は、特許権者が訂正部分を示すために付したものである。)

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、冒頭「出納機と通信可能に構成された貨幣管理装置であって、」との記載を追加する訂正を行う。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記収納庫に入出される貨幣の金種または数量を含む入出操作の詳細情報を入力するための入力手段と、」と記載されているのを、
「前記収納庫に入出される貨幣の金種を含む入出操作の詳細情報を入力するための入力手段と、」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「入出操作の詳細情報は前記出納機で入力することもでき、前記貨幣管理装置は、通信機能を利用して前記出納機で入力された入出操作の詳細情報を取得し、」との記載を追加する訂正を行う。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に「前記ロック制御手段は、前記出納機で入力された入出操作の詳細情報に基づいても前記収納庫の開閉を個別に制御し、
」との記載を追加する訂正を行う。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1に「前記複数の収納庫は、当該収納庫ごとに収納保管される貨幣の金種が決められ、紙幣が収納保管される第1の紙幣収納ドロアと、当該第1の紙幣収納ドロアに収納される紙幣の金種でない他の金種の紙幣が収納保管される第2の紙幣収納ドロアと、を含み、」との記載を追加する訂正を行う。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項2を削除する訂正を行う。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1または2に記載の」と記載されているのを、「請求項1に記載の」に訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1ないし3の何れか一項に記載の」と記載されているのを、「請求項1または3に記載の」に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1ないし4の何れか一項に記載の」と記載されているのを、「請求項1、3および4の何れか一項に記載の」に訂正する。

3 訂正の適否
上記訂正事項1ないし9につき、訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否を検討する。

(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1に「出納機と通信可能に構成された貨幣管理装置であって、」との記載を追加するものであるところ、貨幣管理装置が出納機と通信可能に構成されることを限定することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
次に、訂正事項1は、発明特定事項を上位概念から下位概念に変更するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当しないことは明らかであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
また、訂正事項1の内容は、願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」ということがある。)の段落【0033】の記載などに裏付けられており、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「特許明細書等」ということがある。)に記載した事項の範囲内の訂正といえ、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項1に「貨幣の金種または数量を含む」と記載されているのを「貨幣の金種を含む」と訂正するものであるところ、択一的記載の一方の要素である「数量」の記載を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
次に、訂正事項2は、択一的記載の一方の要素を削除するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当しない。
また、訂正事項2は、択一的記載の一方の要素を削除するものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかである。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、人出操作の詳細情報が出納機でも入力され、貨幣管理装置が通信機能を利用して出納機で入力された人出操作の詳細情報を取得することを限定することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
次に、訂正事項3は、発明特定事項を直列的に付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当しない。
また、訂正事項3のうち、「入出操作の詳細時報は前記出納機で入力することもでき、」との記載は、特許明細書の段落【0051】の「暗証番号の照合の後、操作者(操作許可者)は、キーボード式操作部16を用いて、入出操作の詳細を入力する(STEP16)。具体的には、入出対象の金種や金額(束数あるいは本数でもよい)のデータが入力される。」の記載などに裏付けられ、「前記貨幣管理機能装置は、通信機能を利用して前記出納機で入力された入出操作の詳細情報を取得し」との記載は、特許明細書の段落【0056】の「これにより、貨幣管理装置200は、通信機能を利用して、・・・・をピックアップし(STEP27)、」の記載などに裏付けられる。よって、訂正事項3は、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正といえる。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、ロック制御手段が出納機で入力された入出操作の詳細情報に基づいても収納庫の開閉を個別に制御することを限定することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものものに該当する。
次に、訂正事項4は、発明特定事項を上位概念から下位概念に変更するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当しない。
また、訂正事項4は、本件明細書の段落【0036】の「操作情報とは、例えば入出金操作毎に設定される操作情報であり、通常は入出金の金種及び金額のデータであるが、人出操作の手順に関するデータを含むこともあり得る。操作情報の照合の具体的態様としては、例えば、予め許可操作として設定された操作の操作情報が、出納機100から通信機能を利用して例えばRAM225eに転送記憶され、」との記載、及び「この態様においては、好適なことに、人出操作の具体的内容に即して、開閉電磁ロック211m?215mを個別に制御することが可能である。」との記載などに裏付けられる。よって、訂正事項4は、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正といえる。

(5)訂正事項5について
訂正事項5は、複数の収納庫が、当該収納庫ごとに収納保管される貨幣の金種が決められること、および、第1の紙幣収納ドロアと第2の紙幣収納ドロアとを含むことを限定することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
次に、訂正事項5は、発明特定事項を上位概念から下位概念に変更するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当しない。
また、訂正事項5は、本件明細書の段落【0022】及び図4の記載などに裏付けられているので、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正といえる。

(6)訂正事項6について
訂正事項6は、請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許明細書等に記載した事項の範囲内で行われたことは明らかである。

(7)訂正事項7ないし9について
訂正事項7ないし9は、訂正前の請求項3ないし5が請求項2を引用する記載であったところ、訂正事項6による請求項2の削除に伴い、いずれも請求項2を引用しないものとした訂正であって、多数項を引用している請求項の引用請求項数を減少するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項7ないし9は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許明細書等に記載した事項の範囲内で行われたことは明らかである。

4 小括
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正を認める。

第3 本件訂正発明
上記第2のとおり本件訂正は認容されるので、本件訂正後の本件特許の請求項1,3ないし5に係る発明(以下「本件訂正発明1」などということがある。また、これらをまとめて単に「本件訂正発明」ということがある。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、平成30年4月19日付け手続補正書により補正された訂正特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
出納機と通信可能に構成された貨幣管理装置であって、
貨幣を収納保管する複数の収納庫と、
前記収納庫に入出される貨幣の金種を含む入出操作の詳細情報を入力するための入力手段と、
前記入力手段で入力された入出操作の詳細情報に基づいて、前記収納庫の開閉を個別に制御するロック制御手段と、を備え、
入出操作の詳細時報は前記出納機で入力することもでき、前記貨幣管理装置は、通信機能を利用して前記出納機で入力された入出操作の詳細情報を取得し、
前記ロック制御手段は、前記出納機で入力された入出操作の詳細情報に基づいても前記収納庫の開閉を個別に制御し、
前記複数の収納庫は、
当該収納庫ごとに収納保管される貨幣の金種が決められ、
紙幣が収納保管される第1の紙幣収納ドロアと、当該第1の紙幣収納ドロアに収納される紙幣の金種でない他の金種の紙幣が収納保管される第2の紙幣収納ドロアと、を含み、
前記ロック制御手段は、前記詳細情報に基づいて複数の前記収納庫のロックを解除するとき、それら収納庫が同時に開状態とならないよう制御する、
ことを特徴とする貨幣管理装置。」
「【請求項3】
有価証券類を投入可能な予備収納庫を、さらに備え、
前記ロック制御手段は、前記入力手段で入力された入出操作の詳細情報に基づいて、前記予備収納庫の開閉を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の貨幣管理装置。
【請求項4】
前記各収納庫に収納保管された貨幣の量を測定する測定手段と、
前記入力手段で入力された貨幣の金種または数量と前記測定手段で測定された貨幣の量とを用いて精査を行う精査手段と、をさらに備えた、
ことを特徴とする請求項1または3に記載の貨幣管理装置。
【請求項5】
報知装置を、さらに備え、
前記ロック制御手段により前記複数の収納庫のいずれかのロックが解除されてから所定時間が経過してもその収納庫が開放されない場合に、前記報知装置が作動する、
ことを特徴とする請求項1、3および4の何れか一項に記載の貨幣管理装置。」

第4 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1、3?5に係る特許(以下「本件発明1」などということがある。)に対して平成29年12月20日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

1 取消理由1(サポート要件違反)
本件発明1及びこれを引用する本件発明3?5は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、本件発明1及び本件発明3?5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものである。

2 取消理由2(明確性要件違反)
本件発明1及びこれを引用する本件発明3ないし5は明確でないから、本件発明1ないし5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものである。

3 取消理由3(進歩性違反)
本件発明1、3?5は、刊行物1記載の発明、刊行物2ないし4記載の技術事項及び従来周知の技術事項から、当業者が容易に想到し得たものであるから、本件発明1、3?5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

刊行物1:特開2001-236567号公報(申立人の甲1)
刊行物2:特開2005-275804号公報(申立人の甲3)
刊行物3:実願平4-45591号(実開平6-11089号)
のCD-ROM(申立人の甲7)
刊行物4:登録実用新案第3062708号公報(申立人の甲8)

第5 取消理由1(サポート要件違反)及び取消理由2(明確性要件違反)についての判断

1 取消理由1(サポート要件違反)についての判断
当審の取消理由通知にて示した取消理由1は、より詳しくは、本件発明1が解決しようとする課題は、「入出操作の具体的内容に即して、複数のドロアの開閉状態を個別に制御する」ことと認められるところ、本件訂正前の請求項1においては、「収納庫」ごとの収納対象が定められておらず、そのため、「入出操作の具体的内容」と、「複数の収納庫」の開閉状態との間に何ら関係が無い発明が含まれており、本件発明1には本願発明が解決しようとする課題を解決しない発明が含まれている、というものである。
これについては、本件訂正(訂正事項5)により、「前記複数の収納庫は、当該収納庫ごとに収納保管される貨幣の金種が決められ、」との特定事項が請求項1に追加されたことにより、発明の詳細な説明に記載されるとおりの、「収納庫」ごとに収納対象が定められることが特定され、本件発明1についての取消理由1は解消した。
また、本件発明3?5についても、同様に取消理由1は解消した

2 取消理由2(明確性要件違反)についての判断
当審の取消理由通知にて示した取消理由2は、本件発明1に関して、本件訂正前の請求項1には「貨幣の金種または数量を含む入出操作の詳細情報」なる記載があるところ、「貨幣の数量」とはどの様なものであり、かつ、その値に基づいてどの様に収納庫の開閉状態を定めるのかが不明、というものである。
これについては、本件訂正(訂正事項2)により本件発明1の「貨幣の」「数量」との特定事項が削除されたことから、本件発明1及び引用する本件発明3?5に対する取消理由2は解消した。

第6 取消理由3(進歩性違反)についての判断

1 刊行物の記載
当審の取消理由に引用した、本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である刊行物1ないし4には、以下の発明又は事項が記載されていると認められる。
(1)刊行物1
刊行物1(甲1)の、主として請求項1、段落【0022】?【0023】、段落【0030】、段落【0032】?【0035】並びに、【図1】、【図2】、【図6】及び【図7】に注目して整理すれば、刊行物1には次に示す刊行物1発明が記載されているものと認める。なお、【図1】及び【図2】を下に示す。

<刊行物1発明>
「貨幣を収納保管する複数の引出し22,23と、顧客の購入商品および預り金の金額を入力するためのキーボード60と、キーボード60で入力された顧客の購入商品および預り金の金額に基づいて釣銭の金額を算出し、釣銭の金額に基づいて釣銭に紙幣を含むか否かをチェックし、その判断に基づいて引出し22,23の開閉を個別に制御するCPU51と、を備え、
当該引出し22,23は、
引出しごとに収納保管される貨幣の金種が決められ、
紙幣が収納保管される引出し22と、硬貨が収納保管される引出し23と、を含み、
前記CPUは、複数の引出し22,23のロックを解除するとき、紙幣収納用引出し22と硬貨収納用引出し23とが同時に開状態にならないよう制御する、ECR20。」

(2)刊行物2
刊行物2(甲3)には、“レジスタ20において、両替時に入出金金額および両替金種を、キーを用いて入力すること”が記載されている。(段落【0044】?【0045】等参照。以下、「刊行物2事項」と言う)

(3)刊行物3
刊行物3(甲7)には、“現金を収納する引出し7と小切手・証券を収納する引出し8とを有し、入力手段からの入力内容に応じて各引出しの開閉動作を制御するECR1”が記載されている。(段落【0009】?【0013】、【0027】?【0029】、【図1】、【図2】、【図13】等参照。以下、「刊行物3事項」と言う。)

(4)刊行物4
刊行物4(甲8)には、“各トレイに保管された貨幣の重量を測定する計重手段を有し、測定重量を用いて、釣り銭の払い間違いや盗難等を確認する、貨幣計数機1”が記載されている。(段落【0013】?【0015】、【0057】等参照。)

2 本件訂正発明1
(1)対比
本件訂正発明1と刊行物1発明とを対比すると以下のとおりである。
刊行物1発明の「引出し22,23」が本件訂正発明1の「収納庫」に相当することは、その機能に照らして明らかであり、以下同様にそれぞれの機能及び技術常識を踏まえれば、「キーボード60」は「入力手段」に、「釣銭の金額」及び「釣り銭に紙幣を含むか否か」による「判断」は「貨幣の金種を含む入出操作の詳細情報」に、「CPU51」は「ロック制御手段」に、「ECR20」は「貨幣管理装置」に各々相当する。
また、刊行物1発明が「紙幣が収納保管される引出し22と、硬貨が収納保管される引出し23と、を含」むことは、本件訂正発明1が「紙幣が収納保管される第1の紙幣収納ドロアと、当該第1の紙幣収納ドロアに収納される紙幣の金種でない他の金種の紙幣が収納保管される第2の紙幣収納ドロアと、を含」むことと、
“紙幣が収納保管される第1の貨幣収納ドロアと、他の金種の貨幣が収納保管される第2の貨幣収納ドロアと、を含”む点において共通する。

よって、両者は、以下の5点で相違し、その他の点で一致するものと認められる。
<相違点1>
本件訂正発明1の貨幣管理装置は出納機と通信可能に構成されているのに対し、刊行物1発明の貨幣管理装置(ECR20)は、そのようなものか不明である点。
<相違点2>
本件訂正発明1は、貨幣の金種を含む入出操作の詳細情報が入力手段により入力されるのに対して、刊行物1発明は、顧客の購入商品および預り金の金額がキーボード60により入力され、貨幣の金種を含む入出操作の詳細情報(「釣銭の金額」及び「釣り銭に紙幣を含むか否か」による「判断」)は、入力された顧客の購入商品および預り金の金額から求められるものである点。
<相違点3>
本件訂正発明1は、入出操作の詳細情報を出納機で入力することもでき、貨幣管理装置は、通信機能を利用して前記出納機で入力された入出操作の詳細情報を取得するのに対し、刊行物1発明は、そのようなものか不明である点。
<相違点4>
ロック制御手段は、出納機で入力された入出操作の詳細情報に基づいても収納庫の開閉を個別に制御するのに対し、刊行物1発明は、釣銭の金額に基づいて釣銭に紙幣を含むか否かをチェックし、その判断に基づいて引出し22,23の開閉を個別に制御するものの、出納機で入力された入出操作の詳細情報にも基づいて収納庫の開閉を個別に制御するか不明である点。
<相違点5>
本件訂正発明1の第2の紙幣収納ドロアは、第1の紙幣収納ドロアに収納される紙幣の金種でない他の金種の紙幣が収納保管されるものであるのに対し、刊行物1発明の引出し23は、硬貨が収納保管されるものである点。

(2)相違点についての判断
ア 相違点1、3及び4について
事案に鑑み、まず相違点1、3及び4について検討する。
相違点1、3及び4に係る本件訂正発明1の構成は、いずれも貨幣管理装置は出納機と通信可能に構成されていること(相違点1)を前提とし、入出操作の詳細情報を出納機で入力する(相違点3)、及び出納機で入力された入出操作の詳細情報に基づいても収納庫の開閉を個別に制御する(相違点4)というものである。
これに対して、刊行物1記載の貨幣管理装置(ECR20)は、店舗等のレジやカウンタなどの金銭等の受け渡し場所で用いられる電子式金銭登録機であることから(刊行物1の段落【0002】等参照)、ネットワークに接続されることはあり得ても、出納機と通信可能に構成されることは、想定されないものと考えられる。まして、刊行物1発明において、接続が想定されていない出納機での入力(相違点3)、出納機で入力された詳細情報に基づく収納庫の開閉の制御(相違点4)は、いずれも当業者がおよそ想到し得ない機能というほかはない。
また、刊行物2事項及び刊行物3事項は、相違点1、3及び4に係る本件訂正発明1の構成について記載するものでも示唆するものでもなく、さらに申立人の提出した他の証拠にも、そのような点を示唆する記載は見当たらない。
よって、刊行物1発明について、相違点1、3及び4に係る本件訂正発明1の構成とすることを想到容易とすることはできない。

イ 小括
したがって、相違点1、3及び4に係る本件訂正発明1の構成は、刊行物1発明(及び刊行物2,3記載)から当業者が容易に想到し得たものとはいえないから、他の相違点2,5について検討するまでもなく本件訂正発明1当業者が容易に発明し得たものとすることはできないから、本件訂正発明1に係る特許は、取消理由3によって取り消すことはできない。

3 本件訂正発明3ないし5
本件訂正発明3ないし5は、実質的に、本件訂正発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を付すものである。そして、本件訂正発明1に係る特許を取消理由3により取り消すことはできないことは、上記2にて説示したとおりである。したがって、本件訂正発明3ないし5に係る特許も、取消理由3によって取り消すことはできない。

4 取消理由3に関する判断のまとめ
したがって、本件訂正発明1、3ないし5に係る特許は、取消理由3によって取り消すことはできない。

第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立人の異議申立書の「III 申立ての理由」「第4 具体的理由」欄における「2 サポート要件違反まる1(当審注:丸数字の1を表す。以下同様)」は、本件(訂正)発明1の課題が不明であるからサポート要件(第36条第6項第1号)違反であると主張するものであるが、特許法第36条第6項第1号の条文は、発明の課題が明確であることまでも求めるものではなく、請求人の主張には理由がない。

2 申立人の異議申立書の「III 申立ての理由」「第4 具体的理由」欄における「3 サポート要件違反まる2」及び「5 サポート要件違反まる4」については、いずれも本件訂正により解消したことは明らかである。

3 申立人の異議申立書の「III 申立ての理由」「第4 具体的理由」欄における「4 サポート要件違反まる3」は、本件特許明細書には棒金又は束紙幣を収納する収納庫についてしか開示がなされておらず、バラの紙幣又はバラの硬貨についてまで本件(訂正)発明1が含むのはサポート要件(第36条第6項第1号)違反であると主張するものである。しかしながら、技術常識を踏まえれば、本件訂正発明をバラの紙幣又はバラの硬貨に限定しなければならないとまではいえず、請求人の主張には理由がない。

第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由1ないし3及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、3?5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、3?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
なお、請求項2に係る特許は、本件訂正により削除されたため、本件特許の請求項2に対して、申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出納機と通信可能に構成された貨幣管理装置であって、
貨幣を収納保管する複数の収納庫と、
前記収納庫に入出される貨幣の金種を含む入出操作の詳細情報を入力するための入力手段と、
前記入力手段で入力された入出操作の詳細情報に基づいて、前記収納庫の開閉を個別に制御するロック制御手段と、を備え、
入出操作の詳細情報は前記出納機で入力することもでき、前記貨幣管理装置は、通信機能を利用して前記出納機で入力された入出操作の詳細情報を取得し、
前記ロック制御手段は、前記出納機で入力された入出操作の詳細情報に基づいても前記収納庫の開閉を個別に制御し、
前記複数の収納庫は、
当該収納庫ごとに収納保管される貨幣の金種が決められ、
紙幣が収納保管される第1の紙幣収納ドロアと、当該第1の紙幣収納ドロアに収納される紙幣の金種でない他の金種の紙幣が収納保管される第2の紙幣収納ドロアと、を含み、
前記ロック制御手段は、前記詳細情報に基づいて複数の前記収納庫のロックを解除するとき、それら収納庫が同時に開状態とならないよう制御する、
ことを特徴とする貨幣管理装置。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
有価証券類を投入可能な予備収納庫を、さらに備え、
前記ロック制御手段は、前記入力手段で入力された入出操作の詳細情報に基づいて、前記予備収納庫の開閉を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の貨幣管理装置。
【請求項4】
前記各収納庫に収納保管された貨幣の量を測定する測定手段と、
前記入力手段で入力された貨幣の金種または数量と前記測定手段で測定された貨幣の量とを用いて精査を行う精査手段と、をさらに備えた、
ことを特徴とする請求項1または3に記載の貨幣管理装置。
【請求項5】
報知装置を、さらに備え、
前記ロック制御手段により前記複数の収納庫のいずれかのロックが解除されてから所定時間が経過してもその収納庫が開放されない場合に、前記報知装置が作動する、
ことを特徴とする請求項1、3および4の何れか一項に記載の貨幣管理装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-06-26 
出願番号 特願2015-253371(P2015-253371)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (G07D)
P 1 651・ 537- YAA (G07D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大谷 謙仁  
特許庁審判長 高木 彰
特許庁審判官 熊倉 強
長屋 陽二郎
登録日 2017-03-03 
登録番号 特許第6101338号(P6101338)
権利者 グローリー株式会社
発明の名称 貨幣管理装置  
代理人 芝野 正雅  
代理人 芝野 正雅  
代理人 大橋 誠  
代理人 大橋 誠  
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