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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09J
審判 全部申し立て 2項進歩性  C09J
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  C09J
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C09J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C09J
管理番号 1343013
異議申立番号 異議2017-701083  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-09-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-11-17 
確定日 2018-07-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6128837号発明「接着剤組成物の製造方法、接着剤組成物及び接着フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6128837号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?6〕及び〔7?11〕について訂正することを認める。 特許第6128837号の請求項1?8及び11に係る特許を維持する。 特許第6128837号の請求項9及び10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6128837号の請求項1?11に係る特許についての出願は、平成24年12月26日(優先権主張 平成24年2月21日)に特許出願され、平成29年4月21日に特許権の設定登録がされ、同年5月17日にその特許公報が発行され、平成29年11月17日に、その請求項1?11に係る発明の特許に対し、袖岡恭子(以下「特許異議申立人A」という。)により、特許異議の申立てがされ、請求項1?4、7?11に対し、駒井佳子(以下「特許異議申立人B」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
特許異議の申立て後の手続の経緯は次のとおりである。
平成30年 1月26日付け 取消理由通知
同年 3月30日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 4月11日付け 通知書
同年 5月16日 意見書(特許異議申立人A)
同年 5月16日 意見書(特許異議申立人B)

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
平成30年3月30日付けの訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の「請求の趣旨」は「特許第6128837号の明細書、特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?11について訂正することを求める。」というものであり、その内容は、以下の訂正事項1?12のとおりである(なお、訂正に関連する箇所に下線を付す。)。

(1)訂正事項1
訂正前の請求項1において
「接着剤組成物に含まれる、金属成分を含む膠着防止剤を除去する精製工程を包含し、
上記精製工程において、上記接着剤組成物を含む溶液を濾過することを特徴とするウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物の製造方法。」とあるのを、
訂正後の請求項1において
「(i)炭化水素樹脂またはエラストマーと、(ii)塩鉱物により構成される膠着防止剤と、(iii)炭化水素系溶剤と、を含む樹脂溶液から、上記(ii)膠着防止剤を除去する精製工程を包含し、
上記精製工程は、上記樹脂溶液を濾過することにより樹脂溶液中の上記塩鉱物の量を低減させることを特徴とする、ウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物の製造方法。」に訂正する。

(2)訂正事項2
訂正前の請求項2において
「上記精製工程において、上記接着剤組成物に含まれる上記膠着防止剤に由来する金属成分の含有量を、上記接着剤組成物の全固体重量に対して2ppm以下にすることを特徴とする請求項1に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物の製造方法。」とあるのを、
訂正後の請求項2において
「上記精製工程において、上記接着剤組成物に含まれる上記膠着防止剤の含有量を、上記接着剤組成物の全固体重量に対して2ppm以下にすることを特徴とする請求項1に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物の製造方法。」に訂正する。

(3)訂正事項3
訂正前の請求項3において
「上記精製工程の前に、上記接着剤組成物を形成する樹脂を含む樹脂溶液中において当該樹脂を再沈殿させた後、当該樹脂溶液から取り出した樹脂を上記接着剤組成物に含有させることを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物の製造方法。」とあるのを、
訂正後の請求項3において
「上記精製工程の前に、上記炭化水素樹脂またはエラストマーを含む樹脂溶液中において当該炭化水素樹脂またはエラストマーを再沈殿させた後、当該樹脂溶液から取り出した炭化水素樹脂またはエラストマーを上記接着剤組成物に含有させることを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物の製造方法。」に訂正する。

(4)訂正事項4
訂正前の請求項4において
「上記精製工程の前に、上記接着剤組成物を形成する樹脂を溶液中において洗浄した後、当該樹脂を含む溶液から取り出した樹脂を上記接着剤組成物に含有させることを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物の製造方法。
」とあるのを、
訂正後の請求項4において
「上記精製工程の前に、上記接着剤組成物を形成する炭化水素樹脂またはエラストマーを溶液中において洗浄した後、当該炭化水素樹脂またはエラストマーを含む溶液から取り出した炭化水素樹脂またはエラストマーを上記接着剤組成物に含有させることを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物の製造方法。」に訂正する。

(5)訂正事項5
訂正前の請求項5において
「上記精製工程の前に、風力選別により上記接着剤組成物に含まれる上記膠着防止剤を集塵することを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物の製造方法。」とあるのを、
訂正後の請求項5において
「上記精製工程の前に、風力選別により上記接着剤組成物に含まれる上記膠着防止剤を集塵することを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物の製造方法。」に訂正する。

(6)訂正事項6
訂正前の請求項6において
「上記精製工程の前に、上記接着剤組成物を形成する樹脂を溶液中に浸漬させた状態で、超音波洗浄した後、当該樹脂を含む溶液から取り出した樹脂を上記接着剤組成物に含有させることを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物の製造方法。」とあるのを、
訂正後の請求項6において
「上記精製工程の前に、上記接着剤組成物を形成する炭化水素樹脂またはエラストマーを溶液中に浸漬させた状態で、超音波洗浄した後、当該炭化水素樹脂またはエラストマーを含む溶液から取り出した炭化水素樹脂またはエラストマーを上記接着剤組成物に含有させることを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物の製造方法。」に訂正する。

(7)訂正事項7
訂正前の請求項7において
「膠着防止剤として、金属成分を含む膠着防止剤のみを含み、該膠着防止剤に由来する金属成分の含有量が、全固体重量に対して、10ppb以上、2ppm以下であることを特徴とするウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物。」とあるのを、
訂正後の請求項7において
「(i)炭化水素樹脂またはエラストマーと、(ii)塩鉱物により構成される膠着防止剤と、(iii)炭化水素系溶剤と、を含むウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物であって、
上記膠着防止剤の含有量が、上記接着剤組成物の全固体重量に対して、10ppb以上、2ppm以下であることを特徴とするウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物。」に訂正する。

(8)訂正事項8
訂正前の請求項8において
「上記ウエハは、上記支持体と接着した後に電極形成工程に供されることを特徴とする請求項7に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物。」とあるのを、
訂正後の請求項8において
「上記ウエハは、上記支持体と接着した後に電極形成工程に供されることを特徴とする請求項7に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物。」に訂正する。

(9)訂正事項9
訂正前の請求項9を削除する。

(10)訂正事項10
訂正前の請求項10を削除する。

(11)訂正事項11
訂正前の請求項11において
「フィルム上に、請求項7?10のいずれか1項に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物からなる接着層が形成されていることを特徴とする接着フィルム。」とあるのを、
訂正後の請求項11において
「フィルム上に、請求項7または8に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物からなる接着層が形成されていることを特徴とする接着フィルム。」に訂正する。

(12)訂正事項12
訂正前の明細書の段落0114において
「接着剤組成物を濾過してメタル含有量を測定する以外は、」とあるのを
訂正後の明細書の段落0114において
「接着剤組成物を濾過しないでメタル含有量を測定する以外は、」に訂正する。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「金属成分を含む膠着防止剤」について、「金属成分」を「塩鉱物」に特定し、「膠着防止剤」が「塩鉱物により構成される」ものであることを特定し、同「精製工程」における「濾過」について、「塩鉱物の量を低減させる」ものであることに特定し、同「接着剤組成物」の用途について、「ウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後に」、さらに、「ウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤によって除去するため」のものである点を特定するものであるとともに、同「精製工程」において「濾過」される「溶液」について、「(i)炭化水素樹脂またはエラストマーと、(ii)塩鉱物により構成される膠着防止剤と、(iii)炭化水素系溶剤と、を含む樹脂溶液」であることを特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

イ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
上記アで述べたように、訂正事項1は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ 新規事項の有無(特許明細書等に記載した事項の範囲内のものか否か)
(ア)訂正後の請求項1の「(i)炭化水素樹脂またはエラストマーと、(ii)塩鉱物により構成される膠着防止剤と、(iii)炭化水素系溶剤と、を含む樹脂溶液から、上記(ii)膠着防止剤を除去する精製工程」について、
本件特許明細書の段落0038に「本発明に係る接着剤組成物は、炭化水素樹脂又はエラストマーを溶解する溶剤を含んでいる…溶剤としては、例えば、非極性の炭化水素系溶剤…を用いることができる」と記載され、同段落0015に「当該樹脂としては炭化水素樹脂およびエラストマーから選択される少なくとも1種を含む」と記載され、同段落0060に「膠着防止剤の例として、例えば、タルク…等の塩鉱物」と記載されていることから、
上記「精製工程」は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものと認める。

(イ)訂正後の請求項1の「上記精製工程は、上記樹脂溶液を濾過することにより樹脂溶液中の上記塩鉱物の量を低減させること」について、
本件特許明細書の段落0061に「接着剤組成物中に含まれる膠着防止剤の量が低減している」と記載され、上記「濾過」の作用についての特定は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものと認められる。

(ウ)訂正後の請求項1の「ウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物の製造方法」について、
本件特許明細書の段落0077に「ウエハと支持体とを接着した状態で接着剤層に直接溶剤を供給することによって、容易に接着剤層が溶解して当該接着剤層が除去され、ウエハと支持体とを分離することができる」と記載され、同段落0118に、接着剤層の溶解による除去が、有機溶媒の一種である「p-メンタン」を用いて行われることが記載されているから、上記「接着剤組成物」の用途の特定は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(エ)したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(2)訂正事項2
ア 訂正の目的
請求項2は請求項1を引用するものであるところ、訂正事項2は、訂正前の請求項2の「膠着防止剤に由来する金属成分の含有量」について、上記訂正事項1によって、請求項1において、「金属成分」が「塩鉱物」に特定され、「膠着防止剤」が「塩鉱物により構成される」ものであることが特定されたことにともない、「膠着防止剤の含有量」と特定するものであり、また、同「接着剤組成物」の用途について、訂正事項1と同様に、「ウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤によって除去するため」のものである点を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

イ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
上記アで述べたように、訂正事項2は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ 新規事項の有無(特許明細書等に記載した事項の範囲内のものか否か)
(ア)上記アで述べたように、訂正事項2は訂正事項1にともなうものであるから、訂正事項1と同様に、訂正事項2の訂正事項は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものと認められる。

(ウ)したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(3)訂正事項3
ア 訂正の目的
請求項3は請求項1又は2を引用するものであるところ、訂正事項3は、訂正前の請求項1の「精製工程」において「濾過」される「溶液」について、「(i)炭化水素樹脂またはエラストマーと、(ii)塩鉱物により構成される膠着防止剤と、(iii)炭化水素系溶剤と、を含む樹脂溶液」であることを特定する訂正事項1にともない、接着剤組成物を形成する「樹脂」について、「炭化水素樹脂またはエラストマー」と特定し、さらに、同「接着剤組成物」の用途について、訂正事項1と同様に、「ウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤によって除去するため」のものである点を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

イ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
上記アで述べたように、訂正事項3は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ 新規事項の有無(特許明細書等に記載した事項の範囲内のものか否か)
上記アで述べたように、訂正事項3は訂正事項1及び2にともなうものであるから、訂正事項3は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(4)訂正事項4
ア 訂正の目的
請求項4は請求項1又は2を引用するものであるところ、訂正事項4は、訂正事項3と同様に、接着剤組成物を形成する「樹脂」について、「炭化水素樹脂またはエラストマー」と特定し、さらに、同「接着剤組成物」の用途について、「ウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤によって除去するため」のものである点を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

イ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
上記アで述べたように、訂正事項4は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ 新規事項の有無(特許明細書等に記載した事項の範囲内のものか否か)
訂正事項3と同様に、訂正事項4は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(5)訂正事項5
ア 訂正の目的
請求項5は、請求項1又は2を引用するものであるところ、訂正事項5は、訂正事項1と同様に、「接着剤組成物」の用途について、「ウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後に」、さらに、「ウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤によって除去するため」のものである点を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

イ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
上記アで述べたように、訂正事項5は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ 新規事項の有無(特許明細書等に記載した事項の範囲内のものか否か)
訂正事項3と同様に、訂正事項5は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(6)訂正事項6
ア 訂正の目的
請求項6は、請求項1又は2を引用するものであるところ、訂正事項6は、訂正事項3と同様に、「接着剤組成物を形成する樹脂」について、「炭化水素樹脂またはエラストマー」と特定し、さらに、同「接着剤組成物」の用途について、「ウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤によって除去するため」のものである点を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

イ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
上記アで述べたように、訂正事項6は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ 新規事項の有無(特許明細書等に記載した事項の範囲内のものか否か)
訂正事項3と同様に、訂正事項6は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(7)訂正事項7について
ア 訂正の目的
訂正事項7は、訂正前の請求項7の「金属成分を含む膠着防止剤」について、「金属成分」を「塩鉱物」に特定し、「膠着防止剤」が「塩鉱物により構成される」ものであることを特定し、同「膠着防止剤に由来する金属成分の含有量」を「膠着防止剤の含有量」と特定し、該含有量を規定する固体重量の基準を「接着剤組成物」と特定し、同「接着剤組成物」に含まれる組成について、「(i)炭化水素樹脂またはエラストマーと、(ii)塩鉱物により構成される膠着防止剤と、(iii)炭化水素系溶剤と、を含む」点を特定し、同「接着剤組成物」の用途について、「ウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後に」、さらに、「ウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤によって除去するため」のものである点を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

イ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
上記アで述べたように、訂正事項7は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、訂正事項7は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ 新規事項の有無(特許明細書等に記載した事項の範囲内のものか否か)
本件特許明細書の段落0038に「本発明に係る接着剤組成物は、炭化水素樹脂又はエラストマーを溶解する溶剤を含んでいる…溶剤としては、例えば、非極性の炭化水素系溶剤、極性及び無極性の石油系溶剤等を用いることができる」と記載され、同段落0015に「当該樹脂としては炭化水素樹脂およびエラストマーから選択される少なくとも1種を含む」と記載され、同段落0060に「膠着防止剤の例として、例えば、タルク…等の塩鉱物」と記載され、同段落0062に「膠着防止剤に由来する金属成分の含有量が、接着剤組成物の全固体重量に対して、10ppb以上、2ppm以下である」と記載され、同段落0077に「ウエハと支持体とを接着した状態で接着剤層に直接溶剤を供給することによって、容易に接着剤層が溶解して当該接着剤層が除去され、ウエハと支持体とを分離することができる」と記載されていることから、訂正事項7は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(8)訂正事項8
ア 訂正の目的
請求項8は、請求項7を引用するものであるところ、訂正事項8は、訂正前の請求項8の「接着剤組成物」の用途について、訂正事項7と同様に、「ウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤によって除去するため」のものである点を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

イ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
上記アで述べたように、訂正事項8は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、訂正事項8は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ 新規事項の有無(特許明細書等に記載した事項の範囲内のものか否か)
訂正事項7と同様に、訂正事項8は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(9)訂正事項9
ア 訂正の目的
訂正事項9は、訂正前の請求項9を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。

イ 特許請求の範囲の拡張又は変更
訂正事項9は、訂正前の請求項9を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ 新規事項の有無(特許明細書等に記載した事項の範囲内のものか否か)
訂正事項9は、訂正前の請求項9を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(10)訂正事項10
ア 訂正の目的
訂正事項10は、訂正前の請求項10を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
したがって、訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。

イ 特許請求の範囲の拡張又は変更
訂正事項10は、訂正前の請求項10を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項10は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ 新規事項の有無(特許明細書等に記載した事項の範囲内のものか否か)
訂正事項10は、訂正前の請求項10を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項10は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(11)訂正事項11
ア 訂正の目的
訂正前の請求項11は、請求項7?10のいずれか1項を引用するものであるところ、訂正事項9、10に係る訂正にともない、多数項を引用している請求項11において、引用先の請求項9、10を削除し、引用請求項数を減少し、さらに、訂正前の請求項11の「接着剤組成物」の用途について、訂正事項7と同様に、「接着剤組成物を形成する樹脂」について、「炭化水素樹脂またはエラストマー」と特定し、さらに、同「接着剤組成物」の用途について、「ウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤によって除去するため」のものである点を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

イ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
上記アで述べたように、訂正事項11は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、訂正事項11は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項11は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ 新規事項の有無(特許明細書等に記載した事項の範囲内のものか否か)
訂正事項8と同様に、訂正事項11は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項11は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(12)訂正事項12
ア 訂正の目的
訂正事項12は、本件特許明細書の段落0114の記載について、本件特許の出願当時の技術常識に照らして意味不明の「接着剤組成物を濾過してメタル含有量を測定する」との記載部分を、技術常識に適合する「接着剤組成物を濾過しないでメタル含有量を測定する」との記載に改めるためのものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
したがって、訂正事項12は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものに該当する。

イ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
訂正事項12は、本件特許明細書中の記載を本件特許の出願当時の技術常識に適合する記載に改めるためのものであって、訂正前の明細書に記載された「接着剤組成物を濾過してメタル含有量を測定する」の内容が技術常識に照らして「接着剤組成物を濾過しないでメタル含有量を測定する」を本来意図していることが明らかであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項12は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ 新規事項の有無(特許明細書等に記載した事項の範囲内のものか否か)
訂正事項12は、本件特許明細書中の記載を本件特許の出願当時の技術常識に適合する記載に改めるためのものであって、訂正前の明細書に記載された「接着剤組成物を濾過してメタル含有量を測定する」の内容が技術常識に照らして「接着剤組成物を濾過しないでメタル含有量を測定する」を本来意図していることが明らかであるから、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項12は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(13)一群の請求項について
訂正事項1?6に係る訂正前の請求項1?6について、その請求項2?6はそれぞれ請求項1を直接又は間接に引用しているものであるから、訂正前の請求項1?6に対応する訂正後の請求項1?6は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
したがって、訂正事項1?6による本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。

訂正事項7?11に係る訂正前の請求項7?11について、その請求項8?11はそれぞれ請求項7を直接又は間接に引用しているものであるから、訂正前の請求項7?11に対応する訂正後の請求項7?8及び11は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
したがって、訂正事項7?11による本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。

訂正事項12による明細書の訂正に係る請求項は、訂正前の請求項1?11であるから、訂正事項12と関係する一群の請求項が請求の対象とされている。
したがって、訂正事項12による本件訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第4項に適合するものである。

(4)訂正の適否のまとめ
以上総括するに、訂正事項1?12による本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?6〕、〔7?11〕について訂正を認める。

第3 本件発明
本件訂正により訂正された請求項1?11に係る発明(以下「本1発明」?「本11発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1?11に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(訂正箇所に下線を付す。)。

「【請求項1】(i)炭化水素樹脂またはエラストマーと、(ii)塩鉱物により構成される膠着防止剤と、(iii)炭化水素系溶剤と、を含む樹脂溶液から、上記(ii)膠着防止剤を除去する精製工程を包含し、
上記精製工程は、上記樹脂溶液を濾過することにより樹脂溶液中の上記塩鉱物の量を低減させることを特徴とする、ウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物の製造方法。
【請求項2】上記精製工程において、上記接着剤組成物に含まれる上記膠着防止剤の含有量を、上記接着剤組成物の全固体重量に対して2ppm以下にすることを特徴とする請求項1に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物の製造方法。
【請求項3】上記精製工程の前に、上記炭化水素樹脂またはエラストマーを含む樹脂溶液中において当該炭化水素樹脂またはエラストマーを再沈殿させた後、当該樹脂溶液から取り出した炭化水素樹脂またはエラストマーを上記接着剤組成物に含有させることを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物の製造方法。
【請求項4】上記精製工程の前に、上記接着剤組成物を形成する炭化水素樹脂またはエラストマーを溶液中において洗浄した後、当該炭化水素樹脂またはエラストマーを含む溶液から取り出した炭化水素樹脂またはエラストマーを上記接着剤組成物に含有させることを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物の製造方法。
【請求項5】上記精製工程の前に、風力選別により上記接着剤組成物に含まれる上記膠着防止剤を集塵することを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物の製造方法。
【請求項6】上記精製工程の前に、上記接着剤組成物を形成する炭化水素樹脂またはエラストマーを溶液中に浸漬させた状態で、超音波洗浄した後、当該炭化水素樹脂またはエラストマーを含む溶液から取り出した炭化水素樹脂またはエラストマーを上記接着剤組成物に含有させることを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物の製造方法。
【請求項7】(i)炭化水素樹脂またはエラストマーと、(ii)塩鉱物により構成される膠着防止剤と、(iii)炭化水素系溶剤と、を含むウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物であって、
上記膠着防止剤の含有量が、上記接着剤組成物の全固体重量に対して、10ppb以上、2ppm以下であることを特徴とするウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物。
【請求項8】上記ウエハは、上記支持体と接着した後に電極形成工程に供されることを特徴とする請求項7に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物。
【請求項11】フィルム上に、請求項7または8に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物からなる接着層が形成されていることを特徴とする接着フィルム。」

第4 取消理由の概要
1 当審が通知した取消理由の概要
訂正前の請求項1?11に係る発明の特許に対して平成30年1月26日付けで当審が特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

〔理由1〕本件特許の請求項1?11に係る発明は、発明の詳細な説明の記載が下記の(1)?(5)の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。

〔理由2〕本件特許の請求項1?11に係る発明は、特許請求の範囲の記載が下記の(1)?(4)の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。

(1)請求項1の「金属成分を含む膠着防止剤を除去する」という事項の意味するところが明確ではなく、その実施をすることができない。

(2)請求項7の「膠着防止剤として、金属成分を含む膠着防止剤のみを含み」の「のみ」という事項の意味するところが明確ではなく、その実施をすることができない。

(3)請求項1の「除去」と請求項7の「を含み」という事項の意味するところが明確ではなく、その実施をすることができない。

(4)請求項2及び7の「膠着防止剤に由来する金属成分」の意味ないし内容が明確ではなく、その実施をすることができない。

(5)本件特許明細書の「実施例1?10」において「膠着防止剤に由来する金属成分」がどのようなものか明らかではなく、その実施をすることができない。

よって、本件特許の請求項1?11に係る発明に係る特許は、同法第36条第4項第1号及び第6項第2号の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第1項第4号の規定により取り消されるべきものである。

〔理由3〕本件特許の請求項7及び9に係る発明は、本件出願日前に日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

刊行物1:特開平11-293224号公報(特許異議申立人Bの甲第6号証)

よって、本件特許の請求項7及び9に係る発明に係る特許は、同法第29条の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである。

〔理由4〕本件特許の請求項1?4及び7?11係る発明は、本件出願日前に日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明に基いて、本件出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

甲第1号証:特開2006-328104号公報
甲第2号証:特開2004-303999号公報
甲第3号証:増補 プラスチックおよびゴム用添加剤実用便覧
甲第4号証:「特集 熱可塑性エラストマー/粘着剤」〔日本ゴム協会誌第61巻第2号(1988)〕
甲第5号証:特開2005-213200号公報
甲第6号証:特開平11-293224号公報
甲第7号証:特表平11-508924号公報
甲第8号証:特開2002-371136号公報
甲第9号証:特開2002-338933号公報
甲第10号証:国際公開第2011/125616号

よって、本件特許の請求項1?4及び7?11に係る発明に係る特許は、同法第29条の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである。

2 特許異議申立人Aが申し立てた取消理由の概要
特許異議申立人Aが申し立てた取消理由の概要は、取消理由1(特許法第36条第4項第1号)及び取消理由2(特許法第36条第6項第2号)により、訂正前の本件特許の請求項1?11に係る特許を取り消す旨の決定がなされるべきものであると主張し、その不備として以下の(1)?(5)を指摘しているものである。

(1)本1発明は、接着剤組成物を含む溶液を濾過することにより金属成分を含む膠着防止剤を除去するのか、或いは、接着剤組成物を含む溶液を濾過することにより膠着防止剤に含まれる金属成分を除去するのか、発明が明瞭とは言い難い(特許異議申立書の第15頁第27行?第16頁第2行)。

(2)本件特許明細書の実施例からは、膠着防止剤を含む組成物が明示されていないので、当業者は本1?6発明の実施ができないものである(特許異議申立書の第16頁第15?17行)。

(3)本2発明は、「接着剤組成物に含まれる上記膠着防止剤に由来する金属成分」の文言が不明であり、接着剤組成物に含まれる金属成分が、膠着防止剤に由来するものか、そうでないのかを当業者はどう判別するのか不明である(特許異議申立書の第16頁第26行?第17頁第2行)。

(4)本7発明の構成要件「膠着防止剤として、金属成分を含む膠着防止剤のみを含み」とする「のみ」の表現が何を意味するのかが不明であり、そのような市販品を入手するにはどのようにすべきかは全く不明であるから、当業者が本件特許発明を実施することができない(特許異議申立書の第18頁第18行?第19頁第6行)。

(5)炭化水素樹脂には、通常、重合触媒残渣に由来する金属が含まれており、様々な金属供給源由来の金属が含まれていると考えられる接着剤組成物中の含有金属について、「膠着防止剤に由来する金属成分の含有量」をどのように測定するかを明らかにする記載が見当たらないので、本2及び7発明などを当業者が実施することは不可能である(特許異議申立書の第19頁第25行?第20頁第25行)。

3 特許異議申立人Bが申し立てた取消理由の概要
特許異議申立人Bは、取消理由1(特許法第29条第2項)により、訂正前の本件特許の請求項1?4及び7?11に係る特許を取り消す旨の決定がなされるべきものであると主張し、証拠として上記『1〔理由4〕』に示した甲第1号証?甲第10号証を提示している。

第5 当審の判断
1 取消理由通知に記載した理由1(実施可能要件)及び理由2(明確性要件)について
上記第4 1(1)?(5)の点について、本件訂正により、本件特許の特許請求の範囲の記載から、同(1)の訂正前の「金属成分を含む膠着防止剤」という事項、同(2)の訂正前の「膠着防止剤として、金属成分を含む膠着防止剤のみを含み」という事項、同(3)の訂正前の「除去」と「を含み」に対応する事項、並びに同(4)及び(5)の訂正前の「膠着防止剤に由来する金属成分」という事項についての記載はなくなり、取消理由通知に記載した理由1及び2はいずれも解消した。

また、同(1)の点について、訂正前の請求項1の「金属成分を含む膠着防止剤を除去する精製工程」という事項は、訂正後の請求項1の「上記(ii)膠着防止剤を除去する精製工程」という事項に訂正されたので、その「除去」の対象となる成分が「(ii)塩鉱物により構成される膠着防止剤」のみを意味することが明確になった。

また、同(2)の点について、訂正前の請求項7の「膠着防止剤として、金属成分を含む膠着防止剤のみを含み」という事項は、訂正後の請求項7の「(ii)塩鉱物により構成される膠着防止剤」のみを「含む」という事項に訂正されたので、その膠着防止剤の範囲に、本件特許明細書の段落0060の記載にあるステアリン酸鉛などの鉱物に由来しない金属塩を含まず、タルクやハイドロタルクなどの鉱物に由来する金属塩のみを含むことを意味することが明確になった。

また、同(3)の点について、訂正前の請求項1の「金属成分を含む膠着防止剤を除去する」という事項と、訂正前の請求項7の「膠着防止剤として、金属成分を含む膠着防止剤のみを含み」という事項は、訂正後の請求項1の「上記塩鉱物の量を低減させる」という事項と、訂正後の請求項7の「上記膠着防止剤の含有量が、…10ppb以上、2ppm以下である」という事項に訂正されたので、塩鉱物により構成される膠着防止剤の含有量が一定レベルの濃度にまで低減されることを意味するものとして明確になった。

また、同(4)の点について、訂正前の請求項2及び7の「膠着防止剤に由来する金属成分の含有量」という事項は、訂正後の請求項2及び7の「上記接着剤組成物の全固体重量」に対する「上記膠着防止剤の含有量」という事項に訂正されたので、その「含有量」の意味するところが明確になった。

また、同(5)の点について、本件特許明細書の段落0108には「得られた接着剤組成物中の膠着防止剤に由来する金属成分の含有量(メタル含有量)」を「ICP-MS(アジレントテクノロジー株式会社製、製品名:7500cs)」により測定できると記載されており、同段落0060の記載にあるように、タルク(Mg_(3)Si_(4)O_(10)(OH)_(2))などの塩鉱物に含まれる金属成分の割合は当業者の技術常識として知られている。そして、膠着防止剤を添加する前の樹脂材料に含まれる不純物としての金属成分の量も同段落0108の測定装置により測定できることは明らかであり、樹脂材料に配合する膠着防止剤の種類と量を仕様書に指定して原料の調達をできることは当業者に明らかであり、精製工程により塩鉱物の量を低減させた後の接着剤組成物中に含まれる金属成分の含有量を測定する方法も同段落0108に記載されているから、本件特許明細書の実施例1?10で使用された樹脂材料の内容が不明であったとしても、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者であれば、過度の試行錯誤を要することなく、本1?8及び11発明を実施できるといえる。

以上のとおりであるから、訂正後の請求項1?8及び11の記載は、特許を受けようとする発明が明確であって、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないとはいえない。
また、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本1発明?本8発明及び本11発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであって、特許法第36条第4項第1号に適合するものではないとはいえない。
そして、取消理由通知に記載した理由1及び2によっては、本1発明?本8発明及び本11発明に係る特許が、特許法第36条第4項第1号又は第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものであるとすることはできない。

2 取消理由通知において採用しなかった実施可能要件及び明確性要件に関する特許異議申立理由について
(1)上記第4 2(1)の「本1発明は、接着剤組成物を含む溶液を濾過することにより金属成分を含む膠着防止剤を除去するのか、或いは、接着剤組成物を含む溶液を濾過することにより膠着防止剤に含まれる金属成分を除去するのか、発明が明瞭とは言い難い」という点について、
本件訂正により、訂正前の「金属成分を含む膠着防止剤」という事項についての記載はなくなり、訂正後の本1発明は、濾過により「塩鉱物により構成される膠着防止剤」を除去することが明らかになったので、当該(1)の点について理由があるとはいえない。

(2)上記第4 2(2)の「本件特許明細書の実施例からは、膠着防止剤を含む組成物が明示されていないので、当業者は本1?6発明の実施ができない」という点について、
本1?6発明の実施に必要な膠着防止剤を含む組成物は、本件特許明細書の段落0060に説明された「タルク」などの「塩鉱物」を「膠着防止剤」として樹脂材料に配合すれば得られるものであり、そのために必要な塩鉱物や樹枝材料の各々は周知慣用のものであって、樹脂材料のメーカーに普通に発注して得られることが明らかであるから、実施例で使用されている市販品の仕様が不明であったとしても、そのことにより本1?6発明の実施ができないということはできない。このため、当該(2)の点について理由があるとはいえない。

(3)上記第4 2(3)の「本2発明は、「接着剤組成物に含まれる上記膠着防止剤に由来する金属成分」の文言が不明であり、接着剤組成物に含まれる金属成分が、膠着防止剤に由来するものか、そうでないのかを当業者はどう判別するのか不明である」という点について、
本件訂正により、訂正前の「膠着防止剤に由来する金属成分」という事項についての記載はなくなり、訂正後の本2発明は、塩鉱物により構成される膠着防止剤の含有量を2ppm以下にすることが明らかになったので、当該(3)の点について理由があるとはいえない。

(4)上記第4 2(4)の「本7発明の構成要件「膠着防止剤として、金属成分を含む膠着防止剤のみを含み」とする「のみ」の表現が何を意味するのかが不明であり、そのような市販品を入手するにはどのようにすべきかは全く不明であるから、当業者が本件特許発明を実施することができない」という点について、
本件訂正により、訂正前の「のみ」に対応する事項についての記載はなくなり、訂正後の本7発明は、膠着防止剤として「塩鉱物により構成される膠着防止剤」を含むものであることが明らかになったので、当該(4)の点について理由があるとはいえない。

(5)上記第4 2(5)の「炭化水素樹脂には、通常、重合触媒残渣に由来する金属が含まれており、様々な金属供給源由来の金属が含まれていると考えられる接着剤組成物中の含有金属について、「膠着防止剤に由来する金属成分の含有量」をどのように測定するかを明らかにする記載が見当たらないので、本2及び7発明などを当業者が実施することは不可能である」という点について、
本件訂正により、訂正前の「膠着防止剤に由来する金属成分」という事項についての記載はなくなり、訂正後の本2及び7発明は、塩鉱物により構成される膠着防止剤の含有量を2ppm以下にすることが明らかになったので、当該(5)の点について理由があるとはいえない。

(6)したがって、上記第4 2(1)?(5)の理由によっては、本1発明?本8発明及び本11発明に係る特許が、特許法第36条第4項第1号又は第6項第2項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものであるとすることはできない。

3 取消理由通知に記載した理由1及び2に関する意見書の特許異議申立人A及びBの主張について
(1)特許異議申立人Aの平成30年5月16日付けの意見書の第2頁の「訂正後の請求項1は、「上記樹脂溶液を濾過することにより樹脂溶液中の上記塩鉱物の量を低減させること」を構成要件とし、特許権者は、濾過によって膠着防止剤が減少することを明確に記載していると述べておられるが、濾過の対象となる樹脂溶液中の塩鉱物の量が不明であり定まっていないものであるから、濾過によって膠着防止剤が減少さえすれば発明の目的や解決課題が十分に達成できるとは到底考え難いものである。」との主張について、課題解決の達成の可否は、理由1(実施可能要件)及び理由2(明確性要件)の取消理由と関係のないことはさておき、濾過の対象となる塩鉱物の当初の量が不明であっても、その量が少しでも低減されれば、本件特許明細書の段落0008の「残渣が生じると、基板の電気特性や歩留まりの低下」という問題が少なくなることは明らかなので、当該主張を斟酌しても本1発明?本8発明及び本11発明に係る特許が、特許法第36条第4項第1号又は第6項第2項に規定する要件を満たしていないとすることはできない。

(2)特許異議申立人Aの同意見書の第3頁の「本件訂正後の請求項1では、「…上記(ii)膠着防止剤を除去する精製工程を包含し、…」と記載があるが、膠着防止剤を除去することは膠着防止剤が完全に取り除かれるものと解することができるところ、その後の表現には、「上記樹脂溶液を濾過することにより樹脂溶液中の上記塩鉱物の量を低減させること」と記載しており、塩鉱物(膠着防止剤)を除去することと低減することとは矛盾があるようにも考えられる。従って、本件訂正後の請求項1に係る発明は、依然として、不明瞭である。」との主張について、訂正後の請求項1の「除去」は「完全に除去」として特定されておらず、膠着防止剤の「一部を除去」するものを意味するものと自然には解されるので、当該主張を斟酌しても本1発明?本8発明及び本11発明に係る特許が、特許法第36条第4項第1号又は第6項第2項に規定する要件を満たしていないとすることはできない。

(3)特許異議申立人Aの同意見書の第3?6頁の「本件特許明細書には、実施例で使用している(濾過前の)接着剤組成物の市販品の入手の際のカタログ・製品情報等から、当該接着剤組成物に含まれる膠着防止剤の種類を把握することができず、…したがって、本件特許明細書の実施例からは、膠着防止剤を含む組成物が明示されておらず、また出願時の技術常識を鑑みても当業者は本件訂正後の請求項1および7に係る発明を実施することができないものである。」との主張、並びに特許異議申立人Bの平成30年5月16日付けの意見書の第7?8頁の「樹脂材料のメーカがそのノウハウ等のため、カタログ等には材料の成分を詳細に記載することはなく、…このため、本件特許発明を実施することは困難である。」との主張について、本1発明?本8発明及び本11発明の実施に必要な樹脂材料は、周知慣用の「(i)炭化水素樹脂またはエラストマー」に、本件特許明細書の段落0060に説明された「タルク」などの「塩鉱物」を「膠着防止剤」として配合すれば、普通に得られるものであり、その入手は市販品に限られるものではなく、樹脂材料のメーカーに普通に発注すれば得られることが明らかであるから、当該主張を斟酌しても本1発明?本8発明及び本11発明に係る特許が、特許法第36条第4項第1号又は第6項第2項に規定する要件を満たしていないとすることはできない。

4 取消理由通知に記載した理由3(訂正前の本7及び9発明の新規性)について
(1)甲第6号証(刊行物1)の記載事項
甲第6号証には、次の記載がある。
摘記6a:請求項1
「【請求項1】シリコンウエハーを加工処理する際に一時的に仮着しておくために使用するアルカリ水溶液可溶性接着剤であって、ロジンまたはその誘導体またはロジンの二塩基酸の変性物の単独またはその混合物からなり、そのナトリウム金属イオン、カルシウム金属イオン、マグネシウム金属イオン、亜鉛金属イオン、鉄金属イオン、銅金属イオン、ニッケル金属イオン、錫金属イオン、鉛金属イオン、クロム金属イオン、カリウム金属イオン、塩素イオン、硫酸イオンのそれぞれの含有量が10ppb以下、アルミニウム金属イオンの含有量が20ppb以下であり、かつ、金属イオン総含有量が50ppb以下であることを特徴とするシリコンウエハー用仮着接着剤。」

摘記6b:段落0001
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、シリコンウエハー用仮着接着剤に関し、精密切断、穴開け、研磨加工や、ウエハと定盤との間の仮着といったような種々の加工の際の仮着に有用な接着剤に関するものである。」

(2)甲第6号証に記載された発明
摘記6aの「接着剤であって、…そのナトリウム金属イオン、カルシウム金属イオン、マグネシウム金属イオン、亜鉛金属イオン、鉄金属イオン、銅金属イオン、ニッケル金属イオン、錫金属イオン、鉛金属イオン、クロム金属イオン、カリウム金属イオン、塩素イオン、硫酸イオンのそれぞれの含有量が10ppb以下、アルミニウム金属イオンの含有量が20ppb以下であり、かつ、金属イオン総含有量が50ppb以下であることを特徴とするシリコンウエハー用仮着接着剤。」との記載、及び
摘記6bの「本発明は…ウエハと定盤との間の仮着…に有用な接着剤に関するものである。」との記載、及び
摘記6cの「実施例1」に関する記載からみて、甲第6号証には、
『ウエハと定盤との間の仮着に有用な接着剤であって、そのナトリウム金属イオン、カルシウム金属イオン、マグネシウム金属イオン、亜鉛金属イオン、鉄金属イオン、銅金属イオン、ニッケル金属イオン、錫金属イオン、鉛金属イオン、クロム金属イオン、カリウム金属イオン、塩素イオン、硫酸イオンのそれぞれの含有量が10ppb以下、アルミニウム金属イオンの含有量が20ppb以下であり、かつ、金属イオン総含有量が50ppb以下であるシリコンウエハー用仮着接着剤。』についての発明(以下「甲6発明」という。)が記載されているといえる。

(3)対比
本7発明と甲6発明とを対比する。
甲6発明の「ウエハと定盤との間の仮着に有用な接着剤」と本7発明の「ウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物」は、両者とも「ウエハと当該ウエハの支持体とを仮着するための接着剤組成物」という点において共通する。
また、甲6発明の「そのナトリウム金属イオン、カルシウム金属イオン、マグネシウム金属イオン、亜鉛金属イオン、鉄金属イオン、銅金属イオン、ニッケル金属イオン、錫金属イオン、鉛金属イオン、クロム金属イオン、カリウム金属イオン、塩素イオン、硫酸イオンのそれぞれの含有量が10ppb以下、アルミニウム金属イオンの含有量が20ppb以下であり、かつ、金属イオン総含有量が50ppb以下である」と本7発明の「膠着防止剤の含有量が、上記接着剤組成物の全固体重量に対して、10ppb以上、2ppm以下」は、両者とも「金属含有成分の含有量が、上記接着剤組成物の全固体重量に対して、10ppb以上、2ppm以下」という点において共通する。

してみると、本7発明と甲6発明は、『ウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物であって、金属含有成分の含有量が、上記接着剤組成物の全固体重量に対して、10ppb以上、2ppm以下であるウエハと当該ウエハの支持体とを仮着するための接着剤組成物。』という点において一致し、次の〔相違点α〕の点において相違する。

〔相違点α〕接着剤組成物が、本7発明においては「(i)炭化水素樹脂またはエラストマーと、(ii)塩鉱物により構成される膠着防止剤と、(iii)炭化水素系溶剤」を含むものとして特定されているのに対して、甲6発明は、本7発明の「(ii)塩鉱物により構成される膠着防止剤」を含まない点。

(4)判断
上記〔相違点α〕について、甲第6号証には、本件特許明細書の段落0060に例示される「タルク(Mg_(3)Si_(4)O_(10)(OH)_(2))」などの「塩鉱物」を「膠着防止剤(滑剤)」として含むことについて、示唆を含めて記載がなく、上記〔相違点α〕が微差であるともいえない。
そして、本7発明と甲6発明との対比において、上記〔相違点α〕の相違点が実質的な相違点として存在する以上、本7発明が甲第6号証に記載された発明であるとは認められない。
したがって、取消理由通知に記載した理由3によっては、本7発明に係る特許が、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであるとはいえないから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものであるとすることはできない。
なお、本9発明は訂正により削除されているので、本9発明について、取消理由通知に記載した理由3は成り立たない。

5 取消理由通知に記載した理由4(訂正前の本1?4及び7?11発明についての進歩性)について
(1)引用した刊行物の記載事項
ア 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、次の記載がある。
摘記1a:請求項1
「【請求項1】溶融温度が50?300℃であり、溶融温度幅が30℃以下であり、かつ、溶融温度における溶融粘度が0.1Pa・s以下である接着機能成分と、溶剤と、必要に応じて添加剤とを含む溶液型の接着剤組成物であって、該接着機能成分の含有量が5?30wt%であり、かつ、該組成物の25℃における溶液粘度が5?100mPa・sの範囲にあることを特徴とする接着剤組成物。」

摘記1b:段落0051
「【0051】なお、以下の実施例で用いた接着機能成分は、予めテトラヒドロフラン溶液とし、20重量部のイオン交換樹脂を加えて10時間攪拌混合することによって脱イオン化処理を行い、Na,K,Ca,Fe,Cu,Ni,Cr,Alの各金属含有量が1ppmであることを確認して用いた。」

イ 甲第6号証(刊行物1)の記載事項
甲第6号証には、上記第5 4(1)に示したとおりの記載がある。

(2)刊行物に記載された発明
ア 甲第1号証に記載された発明
摘記1aの「溶融温度が50?300℃であり、溶融温度幅が30℃以下であり、かつ、溶融温度における溶融粘度が0.1Pa・s以下である接着機能成分と、溶剤と、必要に応じて添加剤とを含む溶液型の接着剤組成物であって、該接着機能成分の含有量が5?30wt%であり、かつ、該組成物の25℃における溶液粘度が5?100mPa・sの範囲にあることを特徴とする接着剤組成物。」との記載、及び
摘記1bの「なお、以下の実施例で用いた接着機能成分は、予めテトラヒドロフラン溶液とし、20重量部のイオン交換樹脂を加えて10時間攪拌混合することによって脱イオン化処理を行い、Na,K,Ca,Fe,Cu,Ni,Cr,Alの各金属含有量が1ppmであることを確認して用いた。」との記載からみて、甲第1号証には、
『予めテトラヒドロフラン溶液とし、20重量部のイオン交換樹脂を加えて10時間攪拌混合することによって脱イオン化処理を行い、Na,K,Ca,Fe,Cu,Ni,Cr,Alの各金属含有量が1ppmであることを確認して用いた接着機能成分と、溶剤と、必要に応じて添加剤とを含む溶液型の接着剤組成物の製造方法。』についての発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

イ 甲第6号証に記載された発明
甲第6号証には、上記第5 4(2)に示したとおりの「甲6発明」が記載されているといえる。
また、甲第6号証には、上記第5 4(2)に示したのと同様な理由により、製造方法の発明として、以下の発明(以下「甲6方法発明」という。)が記載されているといえる。
『ウエハと定盤との間の仮着に有用な接着剤の製造方法であって、そのナトリウム金属イオン、カルシウム金属イオン、マグネシウム金属イオン、亜鉛金属イオン、鉄金属イオン、銅金属イオン、ニッケル金属イオン、錫金属イオン、鉛金属イオン、クロム金属イオン、カリウム金属イオン、塩素イオン、硫酸イオンのそれぞれの含有量が10ppb以下、アルミニウム金属イオンの含有量が20ppb以下であり、かつ、金属イオン総含有量が50ppb以下であるシリコンウエハー用仮着接着剤の製造方法。』

(3)甲第1号証を主引用例とした場合の検討(本1?4発明)
ア 対比
本1発明と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「接着機能成分と、溶剤と、必要に応じて添加剤とを含む溶液型の接着剤組成物」と本1発明の「(i)炭化水素樹脂またはエラストマーと、(ii)塩鉱物により構成される膠着防止剤と、(iii)炭化水素系溶剤と、を含む樹脂溶液」は、本件特許明細書の段落0015の「本発明に係る接着剤組成物は、接着性を付与するための樹脂を含んでいる。当該樹脂としては炭化水素樹脂およびエラストマーから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。」との記載からみて、本1発明の「(i)炭化水素樹脂またはエラストマー」は「接着性を付与」するための「接着機能成分」に相当することから、両者とも「(i)接着機能成分と、(ii)金属含有成分と、(iii)溶剤とを含む溶液」という点において共通する。
また、甲1発明の「予めテトラヒドロフラン溶液とし、20重量部のイオン交換樹脂を加えて10時間攪拌混合することによって脱イオン化処理を行い、Na,K,Ca,Fe,Cu,Ni,Cr,Alの各金属含有量が1ppmであることを確認して用い」ることと本1発明の「上記(ii)膠着防止剤を除去する精製工程を包含し、上記精製工程は、上記樹脂溶液を濾過することにより樹脂溶液中の上記塩鉱物の量を低減させること」とは、両者とも「上記(ii)金属含有成分を除去する精製工程を包含し、上記精製工程は、上記溶液を処理することにより溶液中の上記金属の量を低減させる」点において共通する。
そして、甲1発明の「接着剤組成物の製造方法」は、本1発明の「接着剤組成物の製造方法」に相当する。

してみると、本1発明と甲1発明は、『(i)接着機能成分と、(ii)金属含有成分と、(iii)溶剤と、を含む溶液から、上記(ii)金属含有成分を除去する精製工程を包含し、上記精製工程は、上記溶液を処理することにより溶液中の上記金属の量を低減させる、接着剤組成物の製造方法。』という点において一致し、次の〔相違点β〕?〔相違点ε〕の点において相違する。

〔相違点β〕(i)の接着機能成分が、本1発明においては「(i)炭化水素樹脂またはエラストマー」であるのに対して、甲1発明においては、接着機能成分の具体的な種類が特定されていない点(なお、甲第1号証の請求項3には「分子内にステロイド骨格およびまたは水酸基を含有する化合物またはその誘導体」が例示されている。)。

〔相違点γ〕(ii)の金属含有成分が、本1発明においては「(ii)塩鉱物により構成される膠着防止剤」であるのに対して、甲1発明においては「Na,K,Ca,Fe,Cu,Ni,Cr,Alの各金属」である点。

〔相違点δ〕(iii)の溶剤が、本1発明においては「(iii)炭化水素系溶剤」であるのに対して、甲1発明においては、溶剤の具体的な種類が特定されていない点(なお、甲第1号証の請求項7には「イソプロピルアルコール」などが例示されている。)。

〔相違点ε〕精製工程が、本1発明においては「上記樹脂溶液を濾過することにより樹脂溶液中の上記塩鉱物の量を低減させる」ものであるのに対して、甲1発明においては「予めテトラヒドロフラン溶液とし、20重量部のイオン交換樹脂を加えて10時間攪拌混合することによって脱イオン化処理を行」って「Na,K,Ca,Fe,Cu,Ni,Cr,Alの各金属含有量」を低減させるものである点。

イ 判断
上記〔相違点γ〕について、甲第1号証には、本件特許明細書の段落0060に例示される「タルク(Mg_(3)Si_(4)O_(10)(OH)_(2))」などの「塩鉱物」を「膠着防止剤(滑剤)」として含む樹脂溶液について、示唆を含めて記載がない。
また、本1発明は、本件特許明細書の段落0008の「膠着防止剤が含まれる接着剤をウエハとウエハの支持体との接着に使用した場合、…ウエハ上に残渣が生じ…基板の電気特性や歩留まりの低下に繋がる」との記載にある問題を解決課題としているところ、甲1発明は「膠着防止剤が含まれる接着剤」に関するものではないので、膠着防止剤が含まれる接着剤における問題を解決するための手段を採用すべき動機付けがない。
そして、甲第1号証?甲第10号証のうちの公知刊行物の全ての記載を精査しても、甲1発明の接着剤組成物に含まれる金属含有成分の種類を、「タルク」などの「塩鉱物」に置き換えることを示唆する記載は見当たらない。
したがって、甲1発明の「Na,K,Ca,Fe,Cu,Ni,Cr,Alの各金属」として、塩鉱物を採用する動機付けは見出せず、上記〔相違点γ〕については、当業者が容易に想到し得ることとは認められない。
そして、上記〔相違点γ〕について、当業者が容易に想到し得ない以上、上記〔相違点β〕、〔相違点δ〕及び〔相違点ε〕について検討するまでもなく、本1発明が、甲第1号証?甲第10号証に記載された発明又は技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

ウ 本2発明?本4発明について
本2発明?本4発明は、本1発明を更に限定したものであるところ、本1発明が甲第1?10号証に記載された発明又は技術事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえないことは上述のとおりであるから、本2発明?本4発明が、甲第1?10号証に記載された発明又は技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができた発明であるとはいえない。

(4)甲第6号証を主引用例とした場合の検討(本1、2、7?11発明)
ア 本7?11発明について
(ア)対比
本7発明と甲6発明とを対比すると、両者は、上記第5 4(3)に示した〔相違点α〕の点において相違する。

(イ)判断
上記〔相違点α〕について、甲第6号証には、本件特許明細書の段落0060に例示される「タルク(Mg_(3)Si_(4)O_(10)(OH)_(2))」などの「塩鉱物」を「膠着防止剤(滑剤)」として含むことについて、示唆を含めて記載がない。
そして、本7発明は、本件特許明細書の段落0008の「膠着防止剤が含まれる接着剤をウエハとウエハの支持体との接着に使用した場合、…ウエハ上に残渣が生じ…基板の電気特性や歩留まりの低下に繋がる」との記載にある問題を解決課題としているところ、甲6発明は「膠着防止剤が含まれる接着剤」に関するものではないので、膠着防止剤が含まれる接着剤における問題を解決するための手段を採用すべき動機付けがない。
そして、甲第1号証?甲第10号証のうちの公知刊行物の全ての記載を精査しても、甲6発明の「シリコンウエハー用仮着接着剤」に「タルク」などの「塩鉱物により構成される膠着防止剤」を含ませるという構成を示唆する記載は見当たらないので、本7発明が、甲第1号証?甲第10号証に記載された発明又は技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

(ウ)本8?11発明について
本8及び11発明は、本7発明を更に限定したものであるところ、本7発明が甲第1?10号証に記載された発明又は技術事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえないことは上述のとおりであるから、本8及び11発明が、甲第1?10号証に記載された発明又は技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができた発明であるとはいえない。
なお、本9及び10発明は訂正により削除されているので、本9及び10発明について、取消理由通知に記載した理由4は成り立たない。

イ 本1及び2発明について
(ア)対比
本1発明と甲6方法発明とを対比する。
甲6方法発明の「ウエハと定盤との間の仮着に有用な接着剤の製造方法」は、本1発明の「ウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を…除去するための接着剤組成物の製造方法」に相当する。
甲6発明の「そのナトリウム金属イオン、カルシウム金属イオン、マグネシウム金属イオン、亜鉛金属イオン、鉄金属イオン、銅金属イオン、ニッケル金属イオン、錫金属イオン、鉛金属イオン、クロム金属イオン、カリウム金属イオン、塩素イオン、硫酸イオンのそれぞれの含有量が10ppb以下、アルミニウム金属イオンの含有量が20ppb以下であり、かつ、金属イオン総含有量が50ppb以下である」と、本1発明の「(i)炭化水素樹脂またはエラストマーと、(ii)塩鉱物により構成される膠着防止剤と、(iii)炭化水素系溶剤と、を含む樹脂溶液から、上記(ii)膠着防止剤を除去する精製工程を包含し、上記精製工程は、上記樹脂溶液を濾過することにより樹脂溶液中の上記塩鉱物の量を低減させることを特徴とする」とは、両者とも「(ii)金属含有成分を含む溶液から、上記(ii)金属含有成分を除去する精製工程を包含し、上記精製工程は、上記溶液を処理することにより溶液中の上記金属含有成分の量を低減させる」という点において共通する。

してみると、本1発明と甲6方法発明は、『(ii)金属含有成分を含む溶液から、上記(ii)金属含有成分を除去する精製工程を包含し、上記精製工程は、上記溶液を処理することにより溶液中の上記金属含有成分の量を低減させる、ウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を除去するための接着剤組成物の製造方法。』という点において一致し、次の〔相違点ζ〕?〔相違点θ〕において相違する。

〔相違点ζ〕金属含有成分が、本1発明においては「塩鉱物により構成される膠着防止剤」であるのに対して、甲6方法発明においては、ナトリウム金属イオン、カルシウム金属イオン、マグネシウム金属イオン、亜鉛金属イオン、鉄金属イオン、銅金属イオン、ニッケル金属イオン、錫金属イオン、鉛金属イオン、クロム金属イオン、カリウム金属イオン、及びアルミニウム金属イオンであって、塩鉱物により構成される膠着防止剤として規定されていない点。

〔相違点η〕溶液の処理が、本1発明においては「濾過」に特定されているのに対して、甲6方法発明においては「濾過」に特定されていない点。

〔相違点θ〕仮着後の接着剤層の除去が、本1発明においては「有機溶剤により除去」されるものとして特定されているのに対して、甲6方法発明においては「有機溶剤により除去」されるものとして特定されていない点。

(イ)判断
上記〔相違点ζ〕について、甲第6号証には、本件特許明細書の段落0060に例示される「タルク(Mg_(3)Si_(4)O_(10)(OH)_(2))」などの「塩鉱物」を「膠着防止剤(滑剤)」として含むことについて、示唆を含めて記載がない。
また、本1発明は、本件特許明細書の段落0008の「膠着防止剤が含まれる接着剤をウエハとウエハの支持体との接着に使用した場合、…ウエハ上に残渣が生じ…基板の電気特性や歩留まりの低下に繋がる」との記載にある問題を解決課題としているところ、甲6方法発明は「膠着防止剤が含まれる接着剤の製造方法」に関するものではないので、膠着防止剤が含まれる接着剤の製造方法における問題を解決するための手段を採用すべき動機付けがない。
そして、甲第1号証?甲第10号証のうちの公知刊行物の全ての記載を精査しても、甲6方法発明の「シリコンウエハー用仮着接着剤の製造方法」において使用される溶液に「タルク」などの「塩鉱物により構成される膠着防止剤」を含ませるという構成を示唆する記載は見当たらない。
したがって、甲6発明の「ナトリウム金属イオン、カルシウム金属イオン、マグネシウム金属イオン、亜鉛金属イオン、鉄金属イオン、銅金属イオン、ニッケル金属イオン、錫金属イオン、鉛金属イオン、クロム金属イオン、カリウム金属イオン」及び「アルミニウム金属イオン」として、塩鉱物を採用する動機付けは見出せず、上記〔相違点γ〕については、当業者が容易に想到し得ることとは認められない。
そして、上記〔相違点ζ〕について、当業者が容易に想到し得ない以上、上記〔相違点η〕及び〔相違点θ〕について検討するまでもなく、本1発明が、甲第1号証?甲第10号証に記載された発明に記載された発明又は技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

(ウ)本2発明について
本2発明は、本1発明を更に限定したものであるところ、本1発明が甲第1?10号証に記載された発明又は技術事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえないことは上述のとおりであるから、本2発明が、甲第1?10号証に記載された発明又は技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができた発明であるとはいえない。

(6)取消理由通知に記載した理由4(進歩性)についてのまとめ
以上検討したように、取消理由通知に記載した理由4によっては、本1?4、7?8及び11発明に係る特許が、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるとはいえないから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものであるとすることはできない。
なお、本9及び10発明は訂正により削除されているので、本9及び10発明について、取消理由通知に記載した理由4は成り立たない。

6 取消理由通知において採用しなかった進歩性に関する特許異議申立理由について
上記第4 3の特許異議申立人Bが主張する取消理由1(進歩性)は、甲第1?10号証に基づき、訂正前の本1?4及び7?11発明の進歩性がないという趣旨のものであるところ、その甲第1?10号証は、取消理由通知に記載した理由4(進歩性)において引用した刊行物に同じである。
したがって、上記第4 3の理由によっては、本1発明?本8発明及び本11発明に係る特許が、特許法第29条の規定に違反してなされたものであるとはいえないから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものであるとすることはできない。
また、本9及び10発明は訂正により削除されているので、本9及び10発明についての理由は成り立たない。

7 取消理由通知に記載した理由3及び4に関する意見書の特許異議申立人Bの主張について
(1)理由3(新規性)に関する特許異議申立人Bの主張について
特許異議申立人Bは、平成30年5月16日付けの意見書の第4頁第24行?第5頁第5行で「ウエハの仮止めにおいてウエハの良好な電気統制が実現されることとする本件特許発明の目的・解決課題は、ウエハの仮止め接着剤を使用する当業者において周知な課題であり、…シリコンウエハー用仮止接着剤組成物において金属イオンの含有量が極めて低くすることにより半導体デバイスに影響を与えることを極力低減しようとすることと全く異ならない技術事項ないし技術課題である。従って、本件訂正後の請求項7に係る発明は、第1刊行物(甲第6号証)に記載された発明の内容と実質的に同一であり、また上記刊行物から容易に発明し得たものである。」と主張しているが、本7発明と甲6発明との対比において、上記〔相違点α〕の相違点が存在する以上、本7発明が甲第6号証に記載された発明の内容と実質的に同一であるとは認められず、また、上記〔相違点α〕について、当業者が容易に発明し得たといえる事情も見当たらないので、特許異議申立人Bの上記主張は採用できない。


(2)理由4(進歩性)に関する特許異議申立人Bの主張について
特許異議申立人Bは、平成30年5月16日付けの意見書の第3頁第4?10行で「刊行物1には、塩鉱物により構成される膠着防止剤を含む接着剤組成物が記載されておらず、樹脂溶液を濾過することにより樹脂溶液中の塩鉱物の量を低減させることが記載されていないが、この点は、異議申立書で述べたように、甲第8,9号証に記載されているように、熱可塑性エラストマーをベース樹脂とするペレット状粘着剤組成物では、樹脂成分に対してタルクやステアリン酸亜鉛等の滑剤(自着防止剤)を添加することは周知事項であり、また、粘着剤組成物に含まれる金属イオンをろ過等により除去することは容易になし得る事項である。」と主張している。
しかしながら、甲第8号証(特開2002-371136号公報)の段落0055?0056には、ブロッキング防止剤として「タルク」を用いた比較例3のものの方が、ブロッキング防止剤として「ポリプロピレン微粒子」を用いた実施例1?2のものに比して、耐ブロッキング性などの面で劣ることが記載されており、甲第9号証(特開2002-338933号公報)の段落0014には「従来、…粘着剤ペレットの表面にタルク等の粉末をまぶしたり…等の工夫が必要であったが、…前記工夫等は特に設ける必要がなく、粘着テープの製造コストダウンを図ることができ、粘着テープ製品の生産性を向上させることが可能となる。」との記載がなされているので、甲第8号証及び甲第9号証の記載に接した当業者にしてみれば、その使用が望ましくないとされている「タルク」等の塩鉱物を、甲1発明に組み合わせるという着想に至るとは認められない。
このため、甲1発明の接着剤組成物に「タルク」などの「塩鉱物」を含ませるという構成を示唆する記載が、甲第8号証又は甲第9号証になされているとは認められず、特許異議申立人Bの上記主張は採用できない。

8 本件特許の請求項9及び10について
本件特許の請求項9及び10は訂正により削除されているので、請求項9及び10に係る特許についての申立てを却下する。

第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本1発明?本8発明及び本11発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に、本1発明?本8発明及び本11発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
訂正前の請求項9及び10は削除されているので、請求項9及び10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
接着剤組成物の製造方法、接着剤組成物及び接着フィルム
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物の製造方法、接着剤組成物及び接着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、デジタルAV機器およびICカード等の高機能化に伴い、搭載される半導体シリコンチップ(以下、チップ)を小型化および薄型化することによって、パッケージ内にシリコンを高集積化する要求が高まっている。例えば、CSP(chip size package)またはMCP(multi-chip package)に代表されるような複数のチップをワンパッケージ化する集積回路において、薄型化が求められている。パッケージ内のチップの高集積化を実現するためには、チップの厚さを25?150μmの範囲にまで薄くする必要がある。
【0003】
しかしながら、チップのベースになる半導体ウエハ(以下、ウエハ)は、研削することにより肉薄になるため、その強度は弱くなり、ウエハにクラックまたは反りが生じ易くなる。また、薄板化することによって強度が弱くなったウエハを自動搬送することは困難であるため、人手によって搬送しなければならず、その取り扱いが煩雑であった。
【0004】
そのため、研削するウエハにサポートプレートと呼ばれる、ガラス、硬質プラスチック等からなるプレートを貼り合わせることによって、ウエハの強度を保持し、クラックの発生およびウエハの反りを防止するウエハハンドリングシステムが開発されている。ウエハハンドリングシステムによりウエハの強度を維持することができるため、薄板化した半導体ウエハの搬送を自動化することができる。
【0005】
ウエハハンドリングシステムにおいて、ウエハとサポートプレートとは粘着テープ、熱可塑性樹脂、接着剤等を用いて貼り合わせられる。そして、サポートプレートが貼り付けられたウエハを薄板化した後、ウエハをダイシングする前にサポートプレートを基板から剥離する。このウエハとサポートプレートとの貼り合わせに接着剤を用いた場合、接着剤を溶解してウエハをサポートプレートから剥離する。
【0006】
ここで、近年、上記接着剤として、炭化水素系の接着剤が開発されている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2009-529065(2009年8月13日公開)
【特許文献2】特表2010-506406(2010年2月25日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来技術に係る炭化水素系の接着剤に使用される材料は、ペレット状のものが多く、ペレット状に成型する工程において使用される膠着防止剤(滑剤)が接着剤中に含まれてしまう。このような膠着防止剤が含まれる接着剤をウエハとウエハの支持体との接着に使用した場合、使用後に溶剤で溶解させて洗浄しても、洗浄後のウエハ上に残渣が生じてしまう。ウエハ上にこのような残渣が生じると、基板の電気特性や歩留まりの低下に繋がる。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ウエハと当該ウエハの支持体との接着に使用した後、溶剤で溶解して洗浄したときの、ウエハ上における残渣の発生を防止した接着剤組成物の製造方法、および、当該接着剤組成物を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係る、ウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物の製造方法は、接着剤組成物に含まれる膠着防止剤を除去する精製工程を包含することを特徴としている。
【0011】
本発明に係る、ウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物は、膠着防止剤に由来する金属成分の含有量が、全固体重量に対して、10ppb以上、2ppm以下であることを特徴としている。
【0012】
本発明に係る、ウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着フィルムは、フィルム上に、本発明に係るウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物からなる接着層が形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る、ウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物の製造方法は、接着剤組成物に含まれる膠着防止剤を除去する精製工程を包含している。それゆえ、ウエハとウエハの支持体との接着に使用した後、溶剤で溶解して洗浄したときの、ウエハ上における残渣の発生を防止した接着剤組成物を製造することができる。また、ウエハと当該ウエハの支持体との接着に使用した後、溶剤で溶解して洗浄したときの、ウエハ上における残渣の発生を防止した接着剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔接着剤組成物〕
本発明に係る接着剤組成物は、膠着防止剤が除去された接着剤組成物であり、膠着防止剤に由来する金属成分の含有量が、接着剤組成物の全固体重量に対して、10ppb以上、2ppm以下である。本発明に係る接着剤組成物は、炭化水素樹脂又はエラストマーを含んでいてもよい。
【0015】
本発明に係る接着剤組成物は、接着性を付与するための樹脂を含んでいる。当該樹脂としては炭化水素樹脂およびエラストマーから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0016】
(炭化水素樹脂)
炭化水素樹脂は、炭化水素骨格を有し、単量体成分を重合してなる樹脂である。炭化水素樹脂としては、例えば、シクロオレフィンポリマー(以下、「樹脂A」ともいう)、ならびにテルペン系樹脂、ロジン系樹脂および石油系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂(以下、「樹脂B」ともいう)が挙げられる。
【0017】
シクロオレフィンポリマーは、単量体成分であるシクロオレフィンモノマーを重合してなる樹脂である。シクロオレフィンモノマーとしては、例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエン等の二環体、ジシクロペンタジエン、ヒドロキシジシクロペンタジエン等の三環体、テトラシクロドデセン等の四環体、シクロペンタジエン三量体等の五環体、テトラシクロペンタジエン等の七環体、またはこれら多環体のアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)置換体、アルケニル(ビニル等)置換体、アルキリデン(エチリデン等)置換体、アリール(フェニル、トリル、ナフチル等)置換体等が挙げられる。樹脂(A)としては、これらシクロオレフィンモノマーのうち1種のみを重合させてなるものであってもよいし、2種以上を共重合させてなるものであってもよい。
【0018】
また、樹脂(A)に含まれる単量体成分はシクロオレフィンモノマーに限定されるものではなく、当該シクロオレフィンモノマーと共重合可能な他のモノマーを含有していてもよい。他のモノマーとしては、例えば、直鎖状または分岐鎖状のアルケンモノマーが挙げられ、そのようなアルケンモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、および1-ヘキセン等のα-オレフィンが挙げられる。なお、アルケンモノマーは1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
樹脂(A)の分子量は特に限定されないが、例えば、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値として測定した重量平均分子量(Mw)が50,000?200,000であり、より好ましくは50,000?150,000である。樹脂(A)の重量平均分子量が上記範囲内であれば、成膜後にクラックが発生し難く、且つ特定の溶剤への溶解性を得ることができる。
【0020】
また、樹脂(A)を構成する単量体成分は、その5モル%以上がシクロオレフィンモノマーであることが高耐熱性(低い熱分解性・熱重量減少性)の点から好ましく、10モル%以上がシクロオレフィンモノマーであることがより好ましく、20モル%以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが、80モル%以下であることが溶解性および溶液での経時安定性の点から好ましく、70モル%以下であることがさらに好ましい。他のモノマーとして、直鎖状または分岐鎖状のアルケンモノマーを含有する場合、樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対して10?90モル%であることが溶解性および柔軟性の点から好ましく、20?85モル%がさらに好ましく、30?80モル%が特に好ましい。
【0021】
単量体成分の重合方法および重合条件は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いて行えばよい。
【0022】
樹脂(A)として用いられ得る市販品としては、例えば、三井化学社製の「APEL(商品名)」、ポリプラスチックス社製の「TOPAS(商品名)」、日本ゼオン社製の「ZEONOR(商品名)」および「ZEONEX(商品名)」、ならびにJSR社製の「ARTON(商品名)」が挙げられる。
【0023】
樹脂(B)は、上述したようにテルペン系樹脂、ロジン系樹脂および石油系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である。テルペン系樹脂としては、例えば、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂および水添テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。ロジン系樹脂としては、例えば、ロジン、ロジンエステル、水添ロジン、水添ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステルおよび変性ロジン等が挙げられる。石油系樹脂としては、例えば、脂肪族または芳香族石油樹脂、水添石油樹脂、変性石油樹脂、脂環族石油樹脂およびマロン・インデン石油樹脂等が挙げられる。これらの中でも、特に、水添テルペン樹脂および水添テルペンフェノール樹脂が好ましい。
【0024】
樹脂(B)の分子量は特に限定されないが、例えば、GPCによるポリスチレン換算値として測定した重量平均分子量(Mw)が300?10,000であり、より好ましくは500?5,000である。樹脂(B)の重量平均分子量が上記範囲内であれば、成膜後にクラックが発生し難く、且つ高い耐熱性(熱分解性・昇華性への耐性)が得られる。
【0025】
なお、樹脂(A)と樹脂(B)とを混合して使用してもよい。樹脂(A)の含有量が炭化水素樹脂全体の40重量部以上であることが好ましく、60重量部以上であることがより好ましい。樹脂(A)の含有量が炭化水素樹脂全体の40重量部以上である場合には、柔軟性とともに高い耐熱性(低い熱分解性)が発揮できる。
【0026】
(エラストマー)
本発明に係る接着剤組成物は、エラストマーを含むことが好ましい。本発明に係る接着剤組成物に含まれるエラストマーは、主鎖の構成単位としてスチレン単位を含むことが好ましい。具体的には、当該スチレン単位の含有量が15重量%以上、50重量%以下の範囲であり、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲であればよい。
【0027】
本明細書において「構成単位」とは重合体を構成する構造において、一分子の単量体に起因する構造をいう。本明細書において「スチレン単位」とは、スチレンを重合した際に重合体に含まれる当該スチレン由来の構成単位であり、当該「スチレン単位」は置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、炭素数1?5のアルキル基、炭素数1?5のアルコキシ基、炭素数1?5のアルコキシアルキル基、アセトキシ基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0028】
スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲であり、エラストマーの重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲であれば、後述する炭化水素系の溶剤に容易に溶解するので、より容易且つ迅速に除去することができる。また、スチレン単位の含有量及び重量平均分子量が上記の範囲であることにより、ウエハがレジストリソグラフィー工程に供されるときに曝されるレジスト溶剤(例えばPGMEA、PGME等)、酸(フッ化水素酸等)、アルカリ(TMAH等)に対して優れた耐性を発揮する。
【0029】
スチレン単位の含有量は、より好ましくは17重量%以上であり、また、より好ましくは40重量%以下である。
【0030】
重量平均分子量のより好ましい範囲は20,000以上であり、また、より好ましい範囲は150,000以下である。
【0031】
エラストマーとしては、スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲であり、エラストマーの重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲であれば、種々のエラストマーを用いることができる。例えば、ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロックコポリマー(SEP)、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー(SBBS)、エチレン-プロピレンターポリマー(EPT)、及び、これらの水添物、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー(スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー)(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー(SEEPS)、スチレンブロックが反応架橋型のスチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー(SeptonV9461(クラレ社製))、スチレンブロックが反応架橋型のスチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー(反応性のポリスチレン系ハードブロックを有する、SeptonV9827(クラレ社製))等であって、スチレン単位の含有量及び重量平均分子量が上述の範囲であるものを用いることができる。
【0032】
また、エラストマーの中でも水添物がより好ましい。水添物であれば熱に対する安定性が向上し、分解や重合等の変質が起こりにくい。また、炭化水素系溶剤への溶解性及びレジスト溶剤への耐性の観点からもより好ましい。
【0033】
また、エラストマーの中でも両端がスチレンのブロック重合体であるものがより好ましい。熱安定性の高いスチレンを両末端にブロックすることでより高い耐熱性を示すからである。
【0034】
より具体的には、スチレン及び共役ジエンのブロックコポリマーの水添物であることがより好ましい。熱に対する安定性が向上し、分解や重合等の変質が起こりにくい。また、熱安定性の高いスチレンを両末端にブロックすることでより高い耐熱性を示す。さらに、炭化水素系溶剤への溶解性及びレジスト溶剤への耐性の観点からもより好ましい。
【0035】
本発明に係る接着剤組成物に含まれるエラストマーとして用いられ得る市販品としては、例えば、クラレ社製「セプトン(商品名)」、クラレ社製「ハイブラー(商品名)」、旭化成社製「タフテック(商品名)」、JSR社製「ダイナロン(商品名)」等が挙げられる。
【0036】
本発明に係る接着剤組成物に含まれるエラストマーの含有量としては、例えば、接着剤組成物全量を100重量部として、10重量部以上、80重量部以下が好ましく、20重量部以上、60重量部以下がより好ましい。
【0037】
また、エラストマーは複数の種類を混合してもよい。つまり、本発明に係る接着剤組成物は、複数の種類のエラストマーを含んでもよい。複数の種類のエラストマーのうち少なくとも一つが、主鎖の構成単位としてスチレン単位を含み当該スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲であり、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲であれば、本発明の範疇である。また、本発明に係る接着剤組成物において、複数の種類のエラストマーを含む場合、混合した結果、スチレン単位の含有量が上記の範囲となるように調製してもよい。例えば、スチレン単位の含有量が30重量%であるクラレ社製のセプトン(商品名)のSepton8007と、スチレン単位の含有量が13重量%であるセプトン(商品名)のSepton2063とを重量比1対1で混合すると接着剤組成物に含まれるエラストマー全体に対するスチレン含有量は21?22重量%となり、14重量%以上となる。また、例えば、スチレン単位が10重量%のものと60重量%のものとを1対1で混合すると35重量%となり、上記の範囲内となる。本発明はこのような形態でもよい。また、本発明に係る接着剤組成物に含まれる複数の種類のエラストマーは、全て上記の範囲でスチレン単位を含み、且つ、上記の範囲の重量平均分子量であることが最も好ましい。
【0038】
(溶剤)
本発明に係る接着剤組成物は、炭化水素樹脂又はエラストマーを溶解する溶剤を含んでいることが好ましい。このような溶剤としては、例えば、非極性の炭化水素系溶剤、極性及び無極性の石油系溶剤等を用いることができる。
【0039】
好ましくは、溶剤は、縮合多環式炭化水素を含み得る。溶剤が縮合多環式炭化水素を含むことによって、接着剤組成物を液状形態で(特に低温にて)保存した際に生じ得る白濁化を避けることができ、製品安定性を向上させることができる。
【0040】
炭化水素系溶剤としては、直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素が挙げられる。例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、メチルオクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の直鎖状の炭化水素、炭素数3から15の分岐状の炭化水素;p-メンタン、o-メンタン、m-メンタン、ジフェニルメンタン、α-テルピネン、β-テルピネン、γ-テルピネン、1,4-テルピン、1,8-テルピン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン、α-ピネン、β-ピネン、ツジャン、α-ツジョン、β-ツジョン、カラン、ロンギホレン等が挙げられる。
【0041】
また、石油系溶剤としては、例えば、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ナフタレン、デカヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレンなどが挙げられる。
【0042】
また、縮合多環式炭化水素とは、2つ以上の単環がそれぞれの環の辺を互いに1つだけ供給してできる縮合環の炭化水素であり、2つの単環が縮合されてなる炭化水素を用いることが好ましい。
【0043】
そのような炭化水素としては、5員環及び6員環の組み合わせ、又は2つの6員環の組み合わせが挙げられる。5員環及び6員環を組み合わせた炭化水素としては、例えば、インデン、ペンタレン、インダン、テトラヒドロインデン等が挙げられ、2つの6員環を組み合わせた炭化水素としては、例えば、ナフタレン、テトラヒドロナフタリン(テトラリン)及びデカヒドロナフタリン(デカリン)等が挙げられる。
【0044】
また、溶剤が上記縮合多環式炭化水素を含む場合、溶剤に含まれる成分は上記縮合多環式炭化水素のみであってもよいし、例えば、飽和脂肪族炭化水素等の他の成分を含有していてもよい。この場合、縮合多環式炭化水素の含有量が炭化水素系溶剤全体の40重量部以上であることが好ましく、60重量部以上であることがより好ましい。縮合多環式炭化水素の含有量が炭化水素系溶剤全体の40重量部以上である場合には、上記樹脂に対する高い溶解性が発揮できる。縮合多環式炭化水素と飽和脂肪族炭化水素との混合比が上記範囲内であれば、縮合多環式炭化水素の臭気を緩和させることができる。
【0045】
上記飽和脂肪族炭化水素としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、メチルオクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の直鎖状の炭化水素、炭素数3から15の分岐状の炭化水素、p-メンタン、o-メンタン、m-メンタン、ジフェニルメンタン、1,4-テルピン、1,8-テルピン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン、ツジャン、カラン、ロンギホレン等が挙げられる。
【0046】
なお、本発明に係る接着剤組成物における溶剤の含有量としては、当該接着剤組成物を用いて成膜する接着層の厚さに応じて適宜調整すればよいが、例えば、接着剤組成物の全量を100重量部としたとき、20重量部以上、90重量部以下の範囲であることが好ましい。溶剤の含有量が上記範囲内であれば、粘度調整が容易となる。
【0047】
(熱重合禁止剤)
本発明に係る接着剤組成物は、熱重合禁止剤を含有していてもよい。熱重合禁止剤は、熱によるラジカル重合反応を防止する機能を有する。具体的には、熱重合禁止剤はラジカルに対して高い反応性を示すため、モノマーよりも優先的に反応してモノマーの重合を禁止する。そのような熱重合禁止剤を含む接着剤組成物は、高温環境下(特に、250℃?350℃)において重合反応が抑制される。
【0048】
例えば半導体製造工程において、支持体が接着されたウエハを250℃で1時間加熱する高温プロセスを含む場合がある。このとき、高温により接着剤組成物の重合が起こると高温プロセス後にウエハからサポートプレート(支持板)を剥離する剥離液への溶解性が低下し、ウエハからサポートプレートを良好に剥離することができない。しかし、熱重合禁止剤を含有している本発明の接着剤組成物では熱による酸化及びそれに伴う重合反応が抑制されるため、高温プロセスを経たとしてもサポートプレートを容易に剥離することができ、残渣の発生を抑えることができる。
【0049】
熱重合禁止剤としては、熱によるラジカル重合反応を防止するのに有効であれば特に限定されるものではないが、フェノールを有する熱重合禁止剤が好ましい。これにより、大気下での高温処理後にも良好な溶解性が確保できる。そのような熱重合禁止剤としては、ヒンダードフェノール系の酸化防止剤を用いることが可能であり、例えば、ピロガロール、ベンゾキノン、ヒドロキノン、メチレンブルー、tert-ブチルカテコール、モノベンジルエーテル、メチルヒドロキノン、アミルキノン、アミロキシヒドロキノン、n-ブチルフェノール、フェノール、ヒドロキノンモノプロピルエーテル、4,4’-(1-メチルエチリデン)ビス(2-メチルフェノール)、4,4’-(1-メチルエチリデン)ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[1-〔4-(1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル)フェニル〕エチリデン]ビスフェノール、4,4’,4”-エチリデントリス(2-メチルフェノール)、4,4’,4”-エチリデントリスフェノール、1,1,3-トリス(2,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルプロパン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、3,9-ビス[2-(3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-プロピオニルオキシ)-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、トリエチレングリコール-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、n-オクチル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリルテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名IRGANOX1010、チバ・ジャパン社製)、トリス(3,5-ジ-tert-ブチルヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が挙げられる。熱重合禁止剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
熱重合禁止剤の含有量は、炭化水素樹脂又はエラストマーの種類、並びに接着剤組成物の用途及び使用環境に応じて適宜決定すればよいが、例えば、炭化水素樹脂又はエラストマーの量を100重量部としたとき、0.1重量部以上、10重量部以下であることが好ましい。熱重合禁止剤の含有量が上記範囲内であれば、熱による重合を抑える効果が良好に発揮され、高温プロセス後において、接着剤組成物の剥離液に対する溶解性の低下をさらに抑えることができる。
【0051】
また、本発明に係る接着剤組成物は、熱重合禁止剤を溶解し、炭化水素樹脂又はエラストマーを溶解するための溶剤とは異なる組成からなる添加溶剤を含有する構成であってもよい。添加溶剤としては、特に限定されないが、接着剤組成物に含まれる成分を溶解する有機溶剤を用いることができる。
【0052】
有機溶剤としては、例えば、接着剤組成物の各成分を溶解し、均一な溶液にすることができればよく、任意の1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
有機溶剤の具体例としては、例えば、極性基として酸素原子、カルボニル基又はアセトキシ基等を有するテルペン溶剤が挙げられ、例えば、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、メントール、イソメントール、ネオメントール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオール、テルピネン-1-オール、テルピネン-4-オール、ジヒドロターピニルアセテート、1,4-シネオール、1,8-シネオール、ボルネオール、カルボン、ヨノン、ツヨン、カンファーが挙げられる。また、γ-ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン(CH)、メチル-n-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、上記多価アルコール類又は上記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル又はモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体(これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい);ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル等の芳香族系有機溶剤等を挙げることができる。
【0054】
添加溶剤の含有量は、熱重合禁止剤の種類等に応じて適宜決定すればよいが、例えば、熱重合禁止剤を1重量部としたとき、1重量部以上、50重量部以下であることが好ましく、1?30重量部がさらに好ましく、1?15重量部が最も好ましい。熱重合禁止剤の含有量が上記範囲内であれば、熱重合禁止剤を十分に溶解することができる。
【0055】
(その他の成分)
本発明に係る接着剤組成物には、本発明における本質的な特性を損なわない範囲において、混和性のある他の物質をさらに含んでいてもよい。例えば、接着剤の性能を改良するための付加的樹脂、可塑剤、接着補助剤、安定剤、着色剤及び界面活性剤等、慣用されている各種添加剤をさらに用いることができる。
【0056】
(接着剤組成物の調製方法)
膠着防止剤の含有量を調整する前の、接着剤組成物の調製方法は特に限定されず、公知の方法を用いればよいが、例えば、炭化水素樹脂又はエラストマーを溶剤に溶解させ、既存の攪拌装置を用いて、各組成を攪拌することにより、接着剤組成物を得ることができる。
【0057】
また、接着剤組成物に熱重合禁止剤を添加する場合には、熱重合禁止剤を、予め熱重合禁止剤を溶解させるための添加溶剤に溶解させたものを添加することが好ましい。
【0058】
そして、このように調製した接着剤組成物を、後述する本発明に係る接着剤組成物の製造方法における精製工程に供して、本発明に係る接着剤組成物を得ることができる。なお、後述する本発明に係る接着剤組成物の製造方法以外の方法であっても、膠着防止剤を除去できる方法であれば、本発明に係る接着剤組成物を製造することができる。
【0059】
(膠着防止剤)
精製工程において、接着剤組成物から除去される膠着防止剤は、滑剤と称することもあり、接着剤組成物に用いる樹脂(炭化水素樹脂、エラストマー)をペレット状に成型するときに、当該樹脂に含有されるものである。その結果、当該樹脂を用いて接着剤組成物を調製すると、最終的に膠着防止剤が接着剤組成物に含有されることとなる。商業的に入手可能な樹脂はペレット状で供給されるものが多いため、多くの接着剤組成物に膠着防止剤が含まれている。
【0060】
膠着防止剤の例として、例えば、タルク(Mg_(3)Si_(4)O_(10)(OH)_(2))、ハイドロタルク(Mg_(6)Al_(2)(CO_(3))(OH)_(16)・4H_(2)O、Mg_(6)Fe_(2)(CO_(3))(OH)_(16)・4H_(2)O、Mg_(6)Mn_(2)(CO_(3))(OH)_(16)・4H_(2)O)等の塩鉱物、ステアリン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸塩、流動パラフィン、パラフィンワックス等のパラフィン類、ステアリン酸、ステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エルカ酸アマイド等の脂肪酸アマイドが挙げられる。
【0061】
本発明に係る接着剤組成物は、接着剤組成物中に含まれる膠着防止剤の量が低減している。接着剤組成物中に含まれる膠着防止剤の量は、膠着防止剤に由来する金属成分の含有量により表すことができる。膠着防止剤に由来する金属成分としては、例えば、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、鉛、亜鉛等が挙げられる。
【0062】
本発明に係る接着剤組成物は、膠着防止剤に由来する金属成分の含有量が、接着剤組成物の全固体重量に対して、10ppb以上、2ppm以下である。
【0063】
接着剤組成物に含まれる膠着防止剤に由来する金属成分の含有量が、接着剤組成物の全固体重量に対して2ppm以下であれば、この接着剤組成物を用いてウエハと支持体とを接着し、溶解させて洗浄した後でも、ウエハ上に残渣が発生しないため好ましい。なお、接着剤組成物に含まれる膠着防止剤に由来する金属成分の含有量の下限値は、「0」であることが望ましいものの、実質的には金属成分の検出限界値(一般的に10ppb)とすればよい。したがって、接着剤組成物に含まれる膠着防止剤に由来する金属成分の含有量の下限値は、接着剤組成物の全固体重量に対して10ppbである。
【0064】
接着剤組成物中に含まれる膠着防止剤に由来する金属成分の含有量は、例えば、ICP-MS(誘電結合プラズマ質量分析法)による接着剤組成物中の金属成分の定量化により求めることができる。具体的には、接着剤組成物を含む溶液において、上記方法によりその金属含有量を測定した測定結果を接着剤組成物の全固体重量に対する値に換算し、接着剤組成物中における含有濃度として、接着剤組成物中の膠着防止剤に由来する金属成分の含有量を算出することができる。
【0065】
なお、本発明に係る接着剤組成物は、接着剤組成物に含まれる膠着防止剤に由来する金属成分のうち、最も多く含まれる金属成分の含有量が、接着剤組成物の全固体重量に対して、10ppb以上、2ppm以下になっていればよい。
【0066】
(接着剤組成物の用途)
本発明に係る接着剤組成物は、ウエハと当該ウエハの支持体とを接着するために用いられる。
【0067】
支持体は、例えば、ウエハを薄化する工程においてウエハを支持する役割を果たしており、本発明に係る接着剤組成物によってウエハに接着される。一実施形態において、支持体は、例えば、その膜厚が500?1000μmであるガラス又はシリコンで形成されている。
【0068】
なお、一実施形態において、支持体には、当該支持体を厚さ方向に貫通する孔が設けられている。この孔を介して接着剤組成物を溶解する溶剤を、支持体とウエハとの間に流し込むことによって、支持体と基板とを容易に分離することができる。
【0069】
また、他の実施形態において、支持体とウエハとの間には、接着層の他に反応層が介在していてもよい。反応層は、支持体を介して照射される光を吸収することによって変質するようになっており、反応層に光等を照射して反応層を変質させることによって、支持体とウエハとを容易に分離することができる。この場合、支持体は厚さ方向に貫通する孔が設けられていない支持体を用いることが好ましい。
【0070】
反応層に照射する光としては、反応層が吸収可能な波長に応じて、例えば、YAGレーザ、リビーレーザ、ガラスレーザ、YVO_(4)レーザ、LDレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザ、色素レーザ等の液体レーザ、CO_(2)レーザ、エキシマレーザ、Arレーザ、He-Neレーザ等の気体レーザ、半導体レーザ、自由電子レーザ等のレーザ光、又は、非レーザ光を適宜用いればよい。反応層に吸収されるべき光の波長としては、これに限定されるものではないが、例えば、600nm以下の波長の光であり得る。
【0071】
反応層は、例えば光等によって分解される光吸収剤を含んでいてもよい。光吸収剤としては、例えば、グラファイト粉、鉄、アルミニウム、銅、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、亜鉛、テルル等の微粒子金属粉末、黒色酸化チタン等の金属酸化物粉末、カーボンブラック、又は芳香族ジアミノ系金属錯体、脂肪族ジアミン系金属錯体、芳香族ジチオール系金属錯体、メルカプトフェノール系金属錯体、スクアリリウム系化合物、シアニン系色素、メチン系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素等の染料若しくは顔料を用いることができる。このような反応層は、例えば、バインダー樹脂と混合して、支持体上に塗布することによって形成することができる。また、光吸収基を有する樹脂を用いることもできる。
【0072】
また、反応層として、プラズマCVD法により形成した無機膜又は有機膜を用いてもよい。無機膜としては、例えば、金属膜を用いることができる。また、有機膜としては、フルオロカーボン膜を用いることができる。このような反応膜は、例えば、支持体上にプラズマCVD法により形成することができる。
【0073】
本発明に係る接着剤組成物は、支持体と接着した後に薄化工程に供されるウエハと支持体との接着に好適に用いられる。上述のように、この支持体はウエハを薄化する際に、ウエハの強度を保持する。本発明に係る接着剤組成物は、このようなウエハと支持体との接着に好適に用いられる。
【0074】
また、本発明に係る接着剤組成物は、支持体と接着した後に電極形成工程に供されるウエハと、支持体との接着に好適に用いられる。
【0075】
接着剤組成物に膠着防止剤が含まれていれば、膠着防止剤に由来する金属成分がウエハ上に残存してしまい、電極が形成されたウエハの電気特性に悪影響を及ぼす。一方、本発明に係る接着剤組成物は、膠着防止剤が除去されているので、ウエハと支持体とを接着し、溶解させて洗浄した後に、ウエハ上に残渣が生じない。それゆえ、本発明に係る接着剤組成物をウエハと支持体との接着に用いれば、電極などの電気素子が設けられたウエハの電気特性、特に接続特性が良好である。
【0076】
本発明に係る接着剤組成物によれば、ウエハと当該ウエハの支持体との接着に使用した後、溶剤で溶解して洗浄したときの、ウエハ上における残渣の発生を防止することができる。
【0077】
(接着剤組成物により形成された接着剤層の除去)
本発明に係る接着剤組成物によって接着されたウエハと支持体とを、上記の反応層を変質すること等によって分離した後に、接着剤層を除去する場合、接着剤組成物を溶解する溶剤を用いれば容易に溶解して除去できる。また、上記の反応層等を用いずに、ウエハと支持体とを接着した状態で接着剤層に直接溶剤を供給することによって、容易に接着剤層が溶解して当該接着剤層が除去され、ウエハと支持体とを分離することができる。この場合、接着剤層への溶剤の供給効率を上げるため、支持体には貫通した孔が設けられていることがより好ましい。
【0078】
〔接着剤組成物の製造方法〕
本発明に係る、ウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物の製造方法は、接着剤組成物に含まれる膠着防止剤を除去する精製工程を包含している。また、本発明に係る接着剤組成物の製造方法は、上記精製工程において、上記接着剤組成物に含まれる膠着防止剤に由来する金属成分の含有量を、上記接着剤組成物の全固体重量に対して2ppm以下にすることが好ましい。なお、接着剤組成物に含まれる膠着防止剤に由来する金属成分の含有量の下限値は、「0」であることが望ましいものの、実質的には金属成分の検出限界値(一般的に10ppb)にすればよい。
【0079】
(精製工程)
精製工程において、接着剤組成物に含まれる膠着防止剤を除去する方法としては、具体的には、(1)接着剤組成物を濾過して膠着防止剤を除去する方法が挙げられる。
【0080】
接着剤組成物を濾過して膠着防止剤を除去する方法においては、まず、接着剤組成物を、孔径0.01?10μmのフィルターを通過させて(好ましくは0.1?10μm)、膠着防止剤を溶液から除去する。フィルターの孔径は、接着剤組成物に含まれる膠着防止剤の種類に応じて適宜選択することができる。すなわち、フィルターは、当該膠着防止剤を濾過することが可能な孔径であればよい。
【0081】
フィルターの材質は、例えば、ポリプロピレン、ナイロン(ポリアミド)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。孔径は0.01?10μm、好ましく0.1?10μmから適宜選択すればよい。
【0082】
なお、上記精製工程(1)の前処理工程(2)として、接着剤組成物に使用する樹脂を溶剤に溶解させた樹脂溶液を、当該樹脂溶液に対して貧溶媒となる、例えば水、アルコール中に滴下して、樹脂を再沈殿(析出)させてもよい。このようなアルコールは、炭素数1?4のアルコールであることが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等が挙げられる。樹脂を溶解させる溶剤としては、上述したp-メンタン等のテルペン系溶剤、上述したシクロヘキサン、デカヒドロナフタリン等の石油系溶剤が挙げられる。そして沈殿した樹脂を、上記膠着防止剤が分散した溶液から取り出すことによって、樹脂から膠着防止剤を除去する。このように膠着防止剤が除去された樹脂を用いて接着剤組成物を調製する。そして、上記精製工程(1)により接着剤組成物をさらに精製することによって、膠着防止剤が除去された接着剤組成物を製造することができる。
【0083】
溶液中に沈殿した樹脂は、濾過、上澄みの除去(デカンテーション)、遠心分離、樹脂の再沈殿等の方法によって、溶液から取り出すことができる。
【0084】
また、上記精製工程(1)の前処理工程(2)として、ペレット状の樹脂を洗浄して膠着防止剤を除去することもできる。まず、ペレット状の樹脂を、水、アルコール(好ましくは炭素数1?4のアルコール)等の貧溶媒中において撹拌しながら洗浄し、ペレット状の樹脂の表面に付着している膠着防止剤を脱離させる。そして、ペレットが分散した溶液を、例えば孔径10?200μmのような、目の粗いメッシュフィルターにより濾過し、樹脂から脱離した膠着防止剤を除去する。このように膠着防止剤が除去された樹脂を用いて接着剤組成物を調製する。そして、上記精製工程(1)により接着剤組成物をさらに精製することによって、膠着防止剤が除去された接着剤組成物を製造することができる。
【0085】
また、上述した水、アルコール等による洗浄と同様に、ペレット状の樹脂をフッ酸等の酸に浸漬して膠着防止剤を溶解除去する、酸による洗浄除去方法によって、膠着防止剤を溶解除去してもよい。
【0086】
また、風力選別機(ジェットセパレータ)を使用して、比較的軽い膠着防止剤を風力により集塵させ、比較的重いペレットのみを回収することによって、樹脂から膠着防止剤を除去してもよい。
【0087】
また、上記精製工程(1)の前処理工程(2)として、樹脂を溶液中に浸漬させた状態で、超音波洗浄することにより膠着防止剤を除去することもできる。樹脂を浸漬させる溶液としては、貧溶媒が挙げられる。貧溶媒としては、例えば、グリコールエーテル類である、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、炭素数1?5の低級アルコールである、メタノール、エタノール、プロパノール等が挙げられる。これらの貧溶媒を用いることで、樹脂自体は実質的に溶解しないものの、樹脂を膨潤させることで、膠着防止剤を除去することが可能となる。さらに、樹脂を溶液に浸漬させる温度としては、20度以上、50度以下であることが好ましい。超音波洗浄する時間としては、5分以上、60分以下であることが好ましい。このように膠着防止剤が除去された樹脂を用いて接着剤組成物を調製する。そして、上記精製工程(1)により接着剤組成物をさらに精製することによって、膠着防止剤が除去された接着剤組成物を製造することができる。
【0088】
樹脂を溶液中に浸漬させた状態で超音波洗浄するときは、公知の超音波洗浄機を使用すればよい。
【0089】
上述したような、接着剤組成物に含まれる膠着防止剤を除去する方法は、それぞれ単独で行ってもよいし、複数の方法を組み合わせて行ってもよい。すなわち、膠着防止剤を沈殿させて除去する方法により樹脂に含まれる膠着防止剤を除去した接着剤組成物を、さらに濾過して膠着防止剤を除去する方法に供してもよい。
【0090】
上述した樹脂を再沈殿(析出)させた場合や、樹脂を洗浄した場合には、目の粗いメッシュフィルターにより濾過した後、p-メンタン等のテルペン系溶剤、シクロヘキサン、デカヒドロナフタリン等の石油系溶剤に溶解させることによって、樹脂を回収してもよい。接着剤組成物を濾過して膠着防止剤を除去した場合には、濾過して得られた溶液を、接着剤組成物とする。
【0091】
本発明に係る接着剤組成物の製造方法によれば、精製工程により接着剤組成物に含まれる膠着防止剤を除去するので、ウエハとウエハの支持体との接着に使用した後、溶剤で溶解して洗浄したときの、ウエハ上における残渣の発生を防止した接着剤組成物を製造することができる。また、ウエハと当該ウエハの支持体との接着に使用した後、溶剤で溶解して洗浄したときの、ウエハ上における残渣の発生を防止した接着剤組成物を提供することができる。
【0092】
なお、本発明に係る接着剤組成物の製造方法によって、膠着防止剤が除去される対象となる接着剤組成物、及び本発明に係る接着剤組成物を用いてウエハと支持体とを接着する積層体の製造方法、当該積層体のウエハに電極を形成する電極形成方法、当該積層体のウエハから支持体を剥離する剥離方法、支持体を剥離したウエハを洗浄する洗浄方法も本発明の範疇である。
【0093】
〔接着フィルム〕
本発明に係る接着剤組成物は、用途に応じて様々な利用形態を採用することができる。例えば、液状のまま、半導体ウエハなどの被加工体の上に塗布して接着剤層を形成する方法を用いてもよいし、本発明に係る接着フィルム、すなわち、予め可撓性フィルムなどのフィルム上に上記何れかの接着剤組成物を含む接着剤層を形成した後、乾燥させておき、このフィルム(接着フィルム)を、被加工体に貼り付けて使用する方法(接着フィルム法)を用いてもよい。
【0094】
このように、本発明に係る接着フィルムは、フィルム上に、上記何れかの接着剤組成物を含有する接着剤層を備える。
【0095】
接着フィルムは、接着剤層にさらに保護フィルムを被覆して用いてもよい。この場合には、接着剤層上の保護フィルムを剥離し、被加工体の上に露出した接着剤層を重ねた後、接着剤層から上記フィルムを剥離することによって被加工体上に接着剤層を容易に設けることができる。
【0096】
したがって、この接着フィルムを用いれば、被加工体の上に直接、接着剤組成物を塗布して接着剤層を形成する場合と比較して、膜厚均一性及び表面平滑性の良好な接着剤層を形成することができる。
【0097】
接着フィルムの製造に使用する上記フィルムとしては、フィルム上に製膜された接着剤層を当該フィルムから剥離することができ、接着剤層を保護基板やウエハなどの被処理面上に転写できる離型フィルムであれば限定されるものではない。例えば、膜厚15?125μmのポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、及びポリ塩化ビニルなどの合成樹脂フィルムからなる可撓性フィルムが挙げられる。上記フィルムには、必要に応じて、転写が容易となるように離型処理が施されていることが好ましい。
【0098】
上記フィルム上に接着剤層を形成する方法としては、所望する接着剤層の膜厚や均一性に応じて適宜、公知の方法を用いて、フィルム上に接着剤層の乾燥膜厚が10?1000μmとなるように、本発明に係る接着剤組成物を塗布する方法が挙げられる。
【0099】
また、保護フィルムを用いる場合、保護フィルムとしては、接着剤層から剥離することができる限り限定されるものではないが、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、及びポリエチレンフィルムが好ましい。また、各保護フィルムは、シリコンをコーティング又は焼き付けしてあることが好ましい。接着剤層からの剥離が容易となるからである。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、15?125μmが好ましい。保護フィルムを備えた接着フィルムの柔軟性を確保できるからである。
【0100】
接着フィルムの使用方法は、特に限定されるものではないが、例えば、保護フィルムを用いた場合には、これを剥離した上で、被加工体の上に露出した接着剤層を重ねて、フィルム上(接着剤層の形成された面の裏面)から加熱ローラを移動させることにより、接着剤層を被加工体の表面に熱圧着させる方法が挙げられる。このとき、接着フィルムから剥離した保護フィルムは、順次巻き取りローラなどのローラでロール状に巻き取れば、保存し再利用することが可能である。
【実施例】
【0101】
〔接着剤組成物の調製〕
実施例1?10及び比較例1?4において使用した樹脂(炭化水素樹脂又はエラストマー)、重合禁止剤、主溶剤、添加溶剤を以下の表1及び2に示す。なお、表2中の「部」は全て重量部である。
【0102】
炭化水素樹脂としては、ポリプラスチックス社製の「TOPAS(商品名)8007X10、Mw=95,000、Mw/Mn=1.9、m:n=35:65(モル比)」(以下、COC Aと称する)、及び三井化学社製の「APEL(商品名)8008T COC、Mw=100,000、Mw/Mn=2.1、m:n=80:20(モル比)」(以下、COC 1と称する)を用いた。
【0103】
エラストマーとしては、クラレ社製のセプトン(商品名)のHG252(SEEPS-OH:ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン 末端水酸基変性)、HG253、及びSepton8007(SEBS:ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン)、並びに、旭化成社製のタフテック(商品名)のH1051(SEBS、水添スチレン系熱可塑性エラストマー)、及びH1053(SEBS、水添スチレン系熱可塑性エラストマー)を用いた。なお、本実施例における「水添」とは、スチレンとブタジエンのブロックコポリマーの二重結合を水素添加したポリマーである。
【0104】
使用したエラストマー中のスチレン含有量及びエラストマーの重量平均分子量を、以下の表1に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
また、熱重合禁止剤としては、BASF社製の「IRGANOX(商品名)1010」を用いた。また、主溶剤としては、下記化学式(I)に示すデカヒドロナフタリンを用いた。また、添加溶剤として、酢酸ブチルを用いた。
【0107】
【化1】

【0108】
実施例1の接着剤組成物の調製は次のとおり行った。まず、表2に示す樹脂100重量部を主溶剤255重量部に溶解させた。次に熱重合禁止剤入りの酢酸ブチル溶液をエラストマー100重量部に対して、熱重合禁止剤が1重量部、酢酸ブチルが45重量部となるように加えた。このようにして得た接着剤組成物を、孔径1μmのPTFEフィルター(PALL社製)を用いて濾過した。得られた接着剤組成物中の膠着防止剤に由来する金属成分の含有量(メタル含有量)をICP-MS(アジレントテクノロジー株式会社製、製品名:7500cs)により測定した。
【0109】
また、接着剤組成物について、濁度を測定することにより、膠着防止剤除去効果を確認した。濁度はSHIMADZU UV-3600を用いて測定した。
【0110】
接着剤組成物中の金属成分の含有量は、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、及び銅の10元素のうち、接着剤組成物中に最も多く含まれている金属成分の含有量として表した。接着剤組成物中のメタル含有量を表2に示した。また、実施例2?4及び6についても、同様の手法により接着剤組成物を得た。実施例5及び7については、膠着防止剤の除去を、接着剤樹脂成分を23℃でメタノール中に浸漬した状態でスリーワンモータで攪拌・洗浄した後同様に濾過して行ったこと、実施例8については、膠着防止剤の除去を、接着剤樹脂成分のデカヒドロナフタリン溶解液(10w%濃度)を貧溶媒として、水/メタノール(重量比2/8)に滴下し接着剤樹脂成分を再沈殿させた後に同様に濾過して行ったこと以外は、実施例1と同様の手法により接着剤組成物を得た。また、実施例9については、膠着防止剤の除去を、風力選別機(ジェットセパレータ(ACO社製、ジェットセパレータCFS))を用いて接着剤樹脂成分から膠着防止剤を集塵した後、同様に濾過して行った事以外は、実施例1と同様の手法により接着剤組成物を得た。
【0111】
実施例10については接着剤樹脂成分をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに、35℃で浸漬させた状態で超音波洗浄機中(アイワ医科工業製、型番:AU-70C、発振出力:100W、周波数:28kHz)で30分間洗浄することで膠着防止剤を除去した後、同様に濾過して行った事以外は、実施例1と同様の手法により接着剤組成物を得た。
【0112】
実施例5、7?10の樹脂に対して上記所定の処理を施した後、処理後の樹脂を用いて接着剤組成物を調製した。ここで、実施例5、7、9、10では、ペレットをそのまま処理した。実施例8では、ペレットを一度溶解させて、再沈殿処理をした。
【0113】
実施例1?10の各接着剤組成物中のメタル含有量は、いずれも、接着剤組成物の全固体重量に対して、10ppb以上、2ppm以下であった。また、接着剤組成物の濁度についても、全て5%以下と良好であった。
【0114】
比較例1?4については、接着剤組成物を濾過しないでメタル含有量を測定する以外は、実施例1と同様の手法により接着剤組成物を得た。
【0115】
〔接着剤層の形成〕
12インチSiウエハに各接着剤組成物をスピン塗布して、100℃、160℃、200℃で各5分焼いて接着剤層を形成した(膜厚50μm)。
【0116】
一方支持体には、後でレーザを照射して変質させることで支持体とウエハとを剥がすための反応層を設けた。反応層として、流量400sccm、圧力700mTorr、高周波電力2500W及び成膜温度240℃の条件下において、反応ガスとしてC_(4)F_(8)を使用したCVD法により、フルオロカーボン膜(1μm)をサポートプレート(12インチガラス、厚さ700μm)上に形成した。
【0117】
〔積層体の薄化処理〕
ウエハと支持体との積層体を用いて、ウエハの薄化処理、フォトリソグラフィー処理等を行った。
【0118】
〔接着剤層の洗浄〕
532nmレーザを照射してウエハと支持体とを分離した。支持体を取り除いたウエハを、p-メンタンによってスプレー洗浄し、接着剤層を除去した。接着剤層の除去後のウエハ表面を顕微鏡観察し、残渣の発生を確認した。結果を表2に示す。なお、表2において「○」と示した結果は、残渣が確認されなかったことを示し、「△」と示した結果は、小さな又は少量の残渣が確認されたことを示し、「×」と示した結果は、大きな又は多量の残渣が確認されたことを示す。
【0119】
【表2】

【0120】
表2に示すように、実施例では、洗浄後のウエハに残渣が生じなかったが、比較例では、洗浄後のウエハ表面に1?100μmの結晶物の残渣が確認された。また、比較例では、接着剤組成物の濁度についても、全て5%を超えていた。
【0121】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明に係る製造方法、接着剤組成物及び接着フィルムは、例えば、微細化された半導体装置の製造工程において好適に利用することができる。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)炭化水素樹脂またはエラストマーと、(ii)塩鉱物により構成される膠着防止剤と、(iii)炭化水素系溶剤と、を含む樹脂溶液から、上記(ii)膠着防止剤を除去する精製工程を包含し、
上記精製工程は、上記樹脂溶液を濾過することにより樹脂溶液中の上記塩鉱物の量を低減させることを特徴とする、ウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物の製造方法。
【請求項2】
上記精製工程において、上記接着剤組成物に含まれる上記膠着防止剤の含有量を、上記接着剤組成物の全固体重量に対して2ppm以下にすることを特徴とする請求項1に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物の製造方法。
【請求項3】
上記精製工程の前に、上記炭化水素樹脂またはエラストマーを含む樹脂溶液中において当該炭化水素樹脂またはエラストマーを再沈殿させた後、当該樹脂溶液から取り出した炭化水素樹脂またはエラストマーを上記接着剤組成物に含有させることを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物の製造方法。
【請求項4】
上記精製工程の前に、上記接着剤組成物を形成する炭化水素樹脂またはエラストマーを溶液中において洗浄した後、当該炭化水素樹脂またはエラストマーを含む溶液から取り出した炭化水素樹脂またはエラストマーを上記接着剤組成物に含有させることを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物の製造方法。
【請求項5】
上記精製工程の前に、風力選別により上記接着剤組成物に含まれる上記膠着防止剤を集塵することを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物の製造方法。
【請求項6】
上記精製工程の前に、上記接着剤組成物を形成する炭化水素樹脂またはエラストマーを溶液中に浸漬させた状態で、超音波洗浄した後、当該炭化水素樹脂またはエラストマーを含む溶液から取り出した炭化水素樹脂またはエラストマーを上記接着剤組成物に含有させることを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物の製造方法。
【請求項7】
(i)炭化水素樹脂またはエラストマーと、(ii)塩鉱物により構成される膠着防止剤と、(iii)炭化水素系溶剤と、を含むウエハと当該ウエハの支持体とを接着するための接着剤組成物であって、
上記膠着防止剤の含有量が、上記接着剤組成物の全固体重量に対して、10ppb以上、2ppm以下であることを特徴とするウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物。
【請求項8】
上記ウエハは、上記支持体と接着した後に電極形成工程に供されることを特徴とする請求項7に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物。
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
(削除)
【請求項11】
フィルム上に、請求項7または8に記載のウエハと当該ウエハの支持体とを接着した後にウエハと支持体とを接着する接着剤層を溶解して除去する有機溶剤により除去するための接着剤組成物からなる接着層が形成されていることを特徴とする接着フィルム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-06-29 
出願番号 特願2012-283680(P2012-283680)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (C09J)
P 1 651・ 537- YAA (C09J)
P 1 651・ 121- YAA (C09J)
P 1 651・ 536- YAA (C09J)
P 1 651・ 851- YAA (C09J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐宗 千春牟田 博一  
特許庁審判長 川端 修
特許庁審判官 原 賢一
木村 敏康
登録日 2017-04-21 
登録番号 特許第6128837号(P6128837)
権利者 東京応化工業株式会社
発明の名称 接着剤組成物の製造方法、接着剤組成物及び接着フィルム  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
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