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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F16L
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  F16L
審判 全部無効 2項進歩性  F16L
管理番号 1343271
審判番号 無効2016-800132  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-12-02 
確定日 2018-07-25 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4787121号発明「管体の屈曲部保護カバー」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4787121号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?3〕について訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許4787121号(以下「本件特許」という。)は、平成18年10月6日の出願であって、平成23年7月22日にその発明について特許権の設定登録がなされた。
そして、本件無効審判に係る手続の経緯の概要は、以下のとおりである。
平成28年12月 2日 審判請求書
平成29年 3月 3日 答弁書、訂正請求書
同年 4月18日付け 審理事項通知書
同年 6月 2日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
同年 6月 6日 口頭審理陳述要領書(請求人)
同年 6月20日 第2口頭審理陳述要領書(被請求人)
同年 6月20日 口頭審理
同年 6月29日 上申書(請求人)
同年 7月14日 上申書(被請求人)

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
平成29年3月3日付け訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?3について訂正することを求めるものである。
そして、本件訂正における訂正事項は以下のとおりである(なお、訂正箇所を下線で示す。)。

訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「一次折曲部の側端縁を、内径カバー体の側端縁と略テーパー状に対向させて内方へ位置させると共に、二次折曲部の側端縁を、一次折曲部の側端縁と略テーパー状に対向させてさらに内方に位置させることで、」とあるのを、「一次折曲部の側端縁を、内径カバー体の側端縁と略テーパー状に対向させ幅方向において内方へ位置させると共に、二次折曲部の側端縁を、一次折曲部の側端縁と略テーパー状に対向させてさらに幅方向において内方に位置させることで、」に訂正する。
なお、上記訂正事項1について、「さらに幅方向において」との記載は、訂正特許請求の範囲に記載されたとおりの「幅方向においてさらに」の誤記と認める。

2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の目的、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更について
ア 訂正の目的の適否
(ア)訂正事項1に係る訂正前の請求項1は、「内方」とされる方向が必ずしも明瞭な記載ということができなかった。これに対して、訂正後の請求項1では、「内方」とされる方向が「幅方向」を基準とした方向であることを明らかにすることによって、不明瞭な記載を正すものであるから、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号に掲げる事項を目的とするものである。
(イ)訂正事項1は、訂正後の請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2及び3についても訂正するものであるところ、上記(ア)と同様に、訂正後の請求項2及び3についても、「内方」とされる方向を明らかにすることによって、不明瞭な記載を正すものであるから、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号に掲げる事項を目的とするものである。

新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。また、本件明細書とともに特許請求の範囲及び図面を併せて「本件明細書等」という。)の「また雌係合部3aは、これら3つの折曲部7?9において、一次折曲部7から二次折曲部8を経て三次折曲部9に向かうに従い、その幅を漸次幅狭となるように形成している。すなわち、図6(a)に示すように、雌係合部3aの幅方向において、一次折曲部7の側端縁を、内径カバー体2aの側端縁と略テーパー状に対向させて内方へ位置させると共に、二次折曲部8の側端縁を、一次折曲部7の側端縁と略テーパー状に対向させてさらに内方に位置させるように構成して、内径カバー体2aの雌係合部3aに形成される厚みを、雌係合部3aの中央部から側端縁に向かって漸次的に薄くなるように構成している。」(段落【0031】、下線は当審で付した。)との記載によれば、「内方」とされる方向が「幅方向」を基準とした方向であることは明らかであり、図6(a)にもそのように示されている。
したがって、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正といえ、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項1は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(2)一群の請求項ごとに訂正の請求をするものであることについて
訂正前の請求項2及び3は、請求項1を直接的又は間接的に引用して記載されているから、訂正前の請求項1?3は一群の請求項である。
したがって、上記訂正事項1に係る本件訂正は、一群の請求項ごとに特許請求の範囲の訂正を請求するものであって、特許法第134条の2第3項の規定に適合する。

3 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条第3項、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正を認める。

第3 本件発明
上記「第2」で述べたとおり本件訂正は認められるから、本件訂正により訂正された請求項1?3に係る発明(以下「本件発明1?3」という。)は、平成29年3月3日付け訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
管体の屈曲部の外径周面を覆う外径カバー体と、管体の屈曲部の内径周面を覆う内径カバー体とを一体に連接して構成した、弾性素材からなる管体の屈曲部保護カバーにおいて、
前記内径カバー体の内径部分を管体周面と交差する方向に分離離隔して、第1の内径カバー体と、第2の内径カバー体とを形成し、それぞれの対向する端部を係合接続自在に構成すると共に、
前記第1、第2の内径カバー体のうち一方の内径カバー体は、
その端部を内方へ折曲して形成した一次折曲部と、この一次折曲部からの延長部分を中途で外方へ折返して、同一次折曲部と対面させて形成した二次折曲部と、この二次折曲部と前記一次折曲部との間に形成された略V字状溝部と、前記二次折曲部からの延長部分を内方へ折曲して形成した係合受歯とを備え、
他方の内径カバー体は、その端部において、前記係合受歯と係合自在に形成された係合歯を備え、
一次折曲部の側端縁を、内径カバー体の側端縁と略テーパー状に対向させて幅方向において内方へ位置させると共に、二次折曲部の側端縁を、一次折曲部の側端縁と略テーパー状に対向させて幅方向においてさらに内方に位置させることで、前記第1の内径カバー体と前記第2の内径カバー体とを係合接続したときに形成される係合接続部分の厚みを、その中央部から側端縁部に向かって漸次的に薄くなるように構成することにより、その側端縁部を前記管体の内径面に密着させた状態で管体を内装するべく構成したことを特徴とする管体の屈曲部保護カバー。
【請求項2】
前記一方の内径カバー体に形成された前記略V字状溝部中に前記他方の内径カバー体の端部を嵌入した際に、前記係合受歯と前記係合歯とが係合して、前記第1、第2の内径カバー体の対向する端部が接続されて両内径カバー体が一体となるべく構成したことを特徴とする請求項1に記載の管体の屈曲部保護カバー。
【請求項3】
前記内径カバー体は、前記係合受歯及び前記係合歯の少なくとも一方を、対向する端部から互いに離隔する方向へ連続して複数段に備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の管体の屈曲部保護カバー。」

なお、請求人は、平成29年6月6日付け口頭審理陳述要領書(2?5頁「ア.」の項)において、本件発明1は、その一部の発明特定事項を捨象して認定すべき旨主張するが、後記「第6 2 2-2(1)イ(イ)」で述べるとおり請求人の主張は理由がないから、上記のとおり認定する。

第4 請求人の主張の概要
請求人は、「特許第4787121号発明の特許請求の範囲の請求項1、2及び3に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、甲第1?8号証を添付して平成28年12月2日付け審判請求書を提出し、甲第9及び10号証を添付して平成29年6月6日付け口頭審理陳述要領書を提出し、甲第11及び12号証を添付して平成29年6月29日付け上申書を提出し、以下の無効理由1?3により、本件特許は、特許法第123条第1項第2号及び第4号に該当し、無効とすべきものであると主張している。

1 無効理由1
本件発明1は、その外延を明確に理解することができないから、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない。また、請求項1を引用して発明を特定する本件発明2及3も本件発明1と同様にそれらの外延を明確に理解することができないから、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない。
よって、本件発明1?3に係る各特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである(審判請求書5頁の「(3)」の項、同5?9頁の「(4-1)」の項、口頭審理陳述要領書8?10頁「(2)」の項、及び第1回口頭審理調書の「請求人 2」の項)。

2 無効理由2
本件発明1及び2は、いずれも、本件特許に係る特許出願の出願前に日本国内で頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当する発明である。
よって、それらの特許は、同法第123条第1項第2号の規定により無効にされるべきものである(審判請求書5頁の「(3)」の項、及び同9?13頁の「(4-2)」の項)。

3 無効理由3
本件発明1及び2は、甲第1号証の図4に記載された発明に甲第1号証の図2に記載された技術事項を適用することで容易に想到し得るものである。
本件発明1及び2は、甲第1号証に記載された発明に甲第4?8号証に記載されている周知技術を適用することで、また、甲第2号証に記載された発明に甲第4?8号証に記載されている周知技術を適用することで、さらに、甲第3号証に記載された発明に甲第4?8号証に記載されている周知技術を適用することで、容易に想到し得るものである。
本件発明3は、甲第2号証に記載された発明に甲第4?8号証に記載されている周知技術を適用することで容易に想到し得るものである。
よって、それらの特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである(審判請求書5頁の「(3)」の項、同13?20頁の「(4-3)」の項、及び第1回口頭審理調書の「請求人 2」の項)。

また、請求人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。
甲第1号証 :登録実用新案第3079994号公報
甲第2号証 :実願平2-107659号
(実開平4-64692号)のマイクロフィルム
甲第3号証 :実願昭59-82532号
(実開昭60-194696号)のマイクロフィルム
甲第4号証 :実公昭46-21562号公報
甲第5号証 :実公昭48-19180号公報
甲第6号証 :特開昭61-36596号公報
甲第7号証 :特開昭62-242197号公報
甲第8号証 :特開2002-372188号公報
甲第9号証 :平成26年(行ケ)第10046号 判決
甲第10号証:平成23年(行ケ)第10396号 判決
甲第11号証:「スピードエルボ」のカタログ(写し)
甲第12号証:JTIA「保温」2009 No.239
一般社団法人 日本保温保冷工業協会 56?57頁

第5 被請求人の主張の概要
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする」との審決を求めるものである。
そして、被請求人は、平成29年3月3日付けの答弁書を提出するとともに、同日付けの訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?3について訂正することを求め、平成29年6月2日付けの口頭審理陳述要領書を提出し、乙第1?3号証を添付して平成29年6月20日付けの第2口頭審理陳述要領書を提出し、乙第4号証を添付して平成29年7月14日付けの上申書を提出し、本件発明1?3は、請求人の主張する無効理由及び証拠によっては無効とすることはできない旨主張している。

また、被請求人の提出した証拠方法は、以下のとおりである。
乙第1号証:旭産業株式会社ホームページ
「製品情報 SHエルボカバー」(写し)
http://www.asahi-sangyou.co.jp/sh_elbow_cover.html
乙第2号証:「第40回 建築総合展 NAGOYA 2010」
と題するホームページ(写し)
http://www.chukei-news.co.jp/kenchiku2010_past/
display/exibitor/introduction.php
http://www.chukei-news.co.jp/kenchiku2010_past/
display/exibitor/introduction/index_5.php
乙第3号証:JTIA「保温」2009 No.239
一般社団法人 日本保温保冷工業協会 57頁
乙第4号証:「JUST ELBOW」を紹介する資料(写し)

第6 当審の判断
1 各甲号証の記載事項等
(1)甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明
本件特許出願日前に頒布された刊行物である甲第1号証には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。
(1a)「【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、冷媒あるいは温水を供給する管の表面を被覆した保温材を保護するための保護カバーに関している。」
(1b)「【0004】
【考案が解決しようとする課題】
本考案は、接続部分に設けたシール部材が接着力を有するものであって、接続部分を圧接状態にしなくても所望するシール効果が得られる保護カバーを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
解決手段の第1は、保護カバーが直管カバーであって、カバーの側端部に形成した雌型及び雄型係合部のいずれか一方または双方の部材並びに軸方向の端部に形成した上部及び下部接合部のいずれか一方または双方の部材にブチルゴム又はこれと同質資材によるシール材を貼着したことを特徴とするものである。
解決手段の第2は、保護カバーが屈曲管カバーであって、エルボ胴部の正面視で該エルボ胴部の両端内側部から締付け板に至る部分にブチルゴム又はこれと同質資材によるシール材を貼着したことを特徴とする。
解決手段の第3は、解決手段の第1、第2において、シール材の表面にテープを貼布したものであることを特徴とする。」
(1c)「【0006】
【考案の実施の形態】
図1は直管カバーの接続部を、図2は直管カバー接続部の横断面を、図3は直管カバー接続部の縦断面を、図4は屈曲管カバーを示している。
【0007】
図1において、1は直管カバーであって、円筒形状に形成されていて軸方向の側端部に雌型係合部2及び雄型係合部3を設け、保温材の表面に装着するまでは各係合部2,3が開放されている。雌型係合部2は、軸方向に平行する側端部を三つ折りに折り曲げたものであり、又、雄型係合部3は、前記雌型係合部2と係合させるものであって、抜け止め突子4を設けたものである。
【0008】
直管カバー1は軸方向に接続するものであって、カバー1aの上端部に新たなカバー1bを接続する。カバー1(図面で「1a」と表示したカバー)の上端部に設けた上部接合部5は、雌型係合部2及び雄型係合部3の延長線方向の端部を斜状に切除して斜状部6,7を形成し、又、カバー1(図面で「1b」と表示したカバー)の下端部に設けた下部接合部8は、端縁部に外側方向に突出する補強リブ9を形成している。
なお、下部接合部8は上記したカバー1aの上部接合部5の外側に重合するに際し、カバー1aが既でに雌型及び雄型係合部2,3を閉じて円筒状に形成された状態になってから上部接合部5に重合するものである。
【0009】
10は直管カバー1の雄型係合部3の外側面に設けた軟質のブチルゴム又はこれと同質資材によるシール材であり、雄型係合部3の全幅でかつ接合部全長にわたって貼着し、表面に剥離可能なテープ11を貼布したものである。12は直管カバー1の下部接合部8の内側面に設けたシール材であり、カバーの全周面にわたって貼着している。シール材12は上記と同質のものであり、この場合もシール材12にテープ13が貼布されている。
実施例において、シール材10は雌型及び雄型係合部2,3の接続部のうち雄型係合部3に設けたが、該シール材10を雌型及び雄型係合部2,3の双方に設けることができ、又、同様にシール材12も上部及び下部接合部5,8の双方に設けることができる。
【0010】
次に直管カバーの接続工程並びに接続された状態を説明する。まず直管カバー1(1a)を配管された管20に被覆した保温材21の外側に当接し、雌型係合部2に雄型係合部3をテープ11を剥がしたシール材10とともに差し込み係合して当該保温材21の外側に装着する。
図2に示すように、直管カバー1は軸方向に平行して形成された接続部にシール材10が貼着されているので、当該シール材10によって雌型及び雄型係合部2,3の縦方向の隙間が閉塞される。
【0011】
つづいて筒状に形成された直管カバー1(1a)の上端部に新たな直管カバー1(1b)を接続する。既でに筒状に形成された直管カバー1aの上端部に形成した上部接合部5の外側に新たな直管カバー1bの下部接合部8を重合し、各シール材10,12のテープ11,13を剥がして雌型係合部2と雄型係合部3を係合するので、直管カバー1bが筒状に形成されるとともに、当該直管カバー1bが軸方向に延設される。
【0012】
直管カバー1bは、下端部に形成した補強リブ9内にシール材12が設けられており、図3に示すように、軸方向に直交して形成される接合部に当該シール材12が接着されているので、該シール材12によって雌型及び雄型係合部2,3の横方向の隙間が閉塞される。」
(1d)「【0013】
図4に示す屈曲管カバーは、一般にエルボカバーと称されており配管された管の屈曲部分に装着するものである。
屈曲管カバー30は、中央部が幅広な短冊状部材を半円形に折り曲げた状態で複数枚を連結してエルボ胴部31を形成し、該エルボ胴部31の前後面に正面形状が銀杏葉状の締付け板32を固着したものであって、エルボ胴部31の正面視で該エルボ胴部31の両端内側部から締付け板32に至る部分にシール材33を接着したものである。シール材33は直管カバー1に設けたものと同質のものであって、軟質のブチルゴム又はこれと同質資材によるものである。なお、34はシール材33に貼布したテープを示している。
【0014】
屈曲管カバー30の装着状態は図示しないが、配管された管20の直管部分には先に説明した直管カバー1を装着し、直角又は任意角度に屈曲している屈曲部分に屈曲管カバー30を装着する。
配管された管の屈曲部分に装着された屈曲管カバー30は、シール材33が直管カバーと屈曲管カバーの接続部の隙間を閉塞する。」
(1e)甲第1号証の図1及び2には、直管カバーに関する以下の図が示されている。



(1f)甲第1号証の図4には、屈曲管カバーに関する以下の図が示されている。

甲第1号証には、「冷媒あるいは温水を供給する管の表面を被覆した保温材を保護するための保護カバー」に関する技術について開示されているところ(摘示(1a))、かかる保護カバーを、図4(摘示(1f))に示される「屈曲管カバー」として構成した場合の具体的な構造として、
屈曲管カバーは、
配管された管20の直角又は任意角度に屈曲している屈曲部分に装着されること(摘示(1d)【0014】)、
中央部が幅広な短冊状部材を半円形に折り曲げた状態で複数枚を連結してエルボ胴部31が形成され、前記エルボ胴部31の前後面に正面形状が銀杏葉状の締付け板32が固着され、前記エルボ胴部31の正面視で該エルボ胴部31の両端内側部から締付け板32に至る部分にシール材33が接着されること(摘示(1d)【0013】)、及び、
配管された管の屈曲部分に装着された屈曲管カバー30は、シール材33が直管カバーと屈曲管カバーの接続部の隙間を閉塞すること(摘示(1d)【0014】)、が明らかである。

以上によれば、甲第1号証には、
「配管された管20の直角又は任意角度に屈曲している屈曲部分に装着される屈曲管カバー30において、
中央部が幅広な短冊状部材を半円形に折り曲げた状態で複数枚を連結してエルボ胴部31が形成され、
前記エルボ胴部31の前後面に正面形状が銀杏葉状の締付け板32が固着され、
前記エルボ胴部31の正面視で該エルボ胴部31の両端内側部から締付け板32に至る部分にシール材33が接着され、
配管された管の屈曲部分に装着された屈曲管カバー30は、シール材33が直管カバーと屈曲管カバーの接続部の隙間を閉塞する、
屈曲管カバー30。」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

(2)甲第2号証の記載事項及び甲第2号証に記載された発明
本件特許出願日前に頒布された刊行物である甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
(2a)「〔産業上の利用分野〕
この考案は、給湯管等の配管の屈曲部を被覆するエルボに係り、繋ぎ作業を改善できる配管カバー用エルボに関するものである。」(明細書1頁18行?2頁1行)
(2b)「第1図は繋ぎ合わせ前の配管カバー用エルボ16の斜視図である。外側湾曲部18は、配管カバー用エルボ16の周方向へ半円状に曲げられて、配管カバー用エルボ16の延び方向へ相互に結合されている複数枚の板金20から成り、板金20は、一方の隣接側において突条膨出部22を有し、突条膨出部22はリブとして機能する。繋ぎ側部分24,26は、配管カバー用エルボ16の周方向における外側湾曲部18の端部に一端側を固定される板金から成り、それら板金は繋ぎ合わせ前の状態ではほぼ真っ直に延びている。
第2図は繋ぎ側部分24,26の端部の詳細図である。繋ぎ側部分24は、端部において3回折り返されて、嵌入溝28を形成する。繋ぎ側部分24の端縁30は、嵌入溝28の奥の方へ折り返されている。繋ぎ側部分24の折り返しは、所定の弾力性を保持しているので、嵌入溝28は弾力的に拡開自在である。繋ぎ側部分26は、パンチ工具等により予めポケット状凸部32を端部に加工されるもので、繋ぎ側部分26の長手方向、すなわち配管カバー用エルボ16の周方向へ複数個、形成される。ポケット状凸部32は、繋ぎ側部分26の先端方向へ徐々に傾斜し、繋ぎ側部分26の基端方向へ段部を形成している。
第3図は繋ぎ側部分24,26を相互に繋ぎ合わせた状態を示している。・・・最初に第1図の状態の配管カバー用エルボ16を配管10の屈曲部に外角側から被せる。次に、繋ぎ側部分24,26を湾曲させつつ、接近させ、繋ぎ側部分26の端部を繋ぎ側部分24の嵌入溝28内へ嵌入する。・・・繋ぎ側部分26が嵌入溝28から抜け出ようとする変位に対しては、ポケット状凸部32の段部が端縁30に当接し、抜けが阻止される。」(明細書5頁12行?7頁8行)
(2c)甲第2号証の第1?4図には、配管カバー用エルボに関する以下の図が示されている。



甲第2号証には、「給湯管等の配管の屈曲部を被覆するエルボに係り、繋ぎ作業を改善できる配管カバー用エルボ」に関する技術について開示されているところ(摘示(2a))、第1?4図(摘示(2c))に示される配管カバー用エルボの具体的な構造として、
配管の屈曲部を被覆する配管カバー用エルボは、
外側湾曲部18及び繋ぎ側部分24、26を有すること(摘示(2b)(2c))、及び、
前記外側湾曲部18は、配管カバー用エルボ16の周方向へ半円状に曲げられて、配管カバー用エルボ16の延び方向へ相互に結合されている複数枚の板金20から成り、前記繋ぎ側部分24、26は、配管カバー用エルボ16の周方向における外側湾曲部18の端部に一端側を固定される板金から成り、前記繋ぎ側部分24は、端部において3回折り返されて嵌入溝28が形成され、繋ぎ側部分24の端縁30は、嵌入溝28の奥の方へ折り返され、前記繋ぎ側部分26の端部には、繋ぎ側部分26の長手方向に複数個のポケット状凸部32が形成され、前記繋ぎ側部分26の端部を繋ぎ側部分24の嵌入溝28内へ嵌入すること(摘示(2b))、が明らかである。

以上によれば、甲第2号証には、
「配管の屈曲部を被覆する配管カバー用エルボ16において、
外側湾曲部18及び繋ぎ側部分24、26を有し、
前記外側湾曲部18は、配管カバー用エルボ16の周方向へ半円状に曲げられて、配管カバー用エルボ16の延び方向へ相互に結合されている複数枚の板金20から成り、
前記繋ぎ側部分24、26は、配管カバー用エルボ16の周方向における外側湾曲部18の端部に一端側を固定される板金から成り、
前記繋ぎ側部分24は、端部において3回折り返されて嵌入溝28が形成され、繋ぎ側部分24の端縁30は、嵌入溝28の奥の方へ折り返され、
前記繋ぎ側部分26の端部には、繋ぎ側部分26の長手方向に複数個のポケット状凸部32が形成され、
前記繋ぎ側部分26の端部を繋ぎ側部分24の嵌入溝28内へ嵌入する、 配管カバー用エルボ16。」の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。

(3)甲第3号証の記載事項及び甲第3号証に記載された発明
本件特許出願日前に頒布された刊行物である甲第3号証には、以下の事項が記載されている(なお、促音、拗音は小文字で記した。)。
(3a)「 2 実用新案登録請求の範囲
エルボの外側を断熱材で囲みこの断熱材の外側を覆う薄い金属板よりなり主体部から細長く延びる1対の結合片部を結合させるエルボジャケットカバーであって、一方側の前記結合片部にはこの結合片部の先端部をわずかの所定長さだけ外方へ折曲げて折曲げない部分に近接するようにして端縁部を係合縁部とした第1の折曲片部と、この第1の折曲片部に続いてこの第1の折曲片部と共にこれより長い所定長さだけ外方へ折曲げて折曲げない部分に近接するようにした第2の折曲片部と、この第2の折曲片部に続いてこれより長い所定長さだけ前記第1及び第2の折曲片部と共に内方へ折曲げて折曲げない部分に近接するようにして第1及び第2の折曲片部との間に挿入部を形成する第3の折曲片部とを有しており、他方側の前記結合片部の先端付近には一部に切断して内方へ突出した突起部が形成してあり、この突起部を形成した結合片部の先端部を前記挿入部へ挿入して突起部を係合縁部へ係合させるようにしたエルボジャケットカバー。」(明細書1頁4行?2頁4行)
(3b)「この考案はエルボの部分を断熱材で囲みその外周を覆って保護する薄い金属板よりなるエルボジャケットカバーに関するものである。」(明細書2頁7?9行)
(3c)「10はエルボジャケットカバーの主体部、11,12は結合片部、17は第1の折曲片部、18は第2の折曲片部、19は第3の折曲片部、21は係合縁部、22は挿入部、23は突起部。」(明細書7頁末行?8頁3行)
(3d)甲第3号証の第1?3図には、エルボジャケットカバーに関する以下の図が示されている。


甲第3号証には、「エルボの部分を断熱材で囲みその外周を覆って保護する薄い金属板よりなるエルボジャケットカバー」に関する技術について開示されているところ(摘示(3b))、その実用新案登録請求の範囲の記載(摘示(3a))によれば、甲第3号証には、
「エルボの外側を断熱材で囲みこの断熱材の外側を覆う薄い金属板よりなり主体部10から細長く延びる1対の結合片部11、12を結合させるエルボジャケットカバーであって、
一方側の前記結合片部11にはこの結合片部11の先端部をわずかの所定長さだけ外方へ折曲げて折曲げない部分に近接するようにして端縁部を係合縁部21とした第1の折曲片部17と、この第1の折曲片部17に続いてこの第1の折曲片部17と共にこれより長い所定長さだけ外方へ折曲げて折曲げない部分に近接するようにした第2の折曲片部18と、この第2の折曲片部18に続いてこれより長い所定長さだけ前記第1及び第2の折曲片部17、18と共に内方へ折曲げて折曲げない部分に近接するようにして第1及び第2の折曲片部17、18との間に挿入部22を形成する第3の折曲片部19とを有しており、
他方側の前記結合片部12の先端付近には一部に切断して内方へ突出した突起部23が形成してあり、
この突起部23を形成した結合片部12の先端部を前記挿入部22へ挿入して突起部23を係合縁部21へ係合させるようにした、
エルボジャケットカバー。」の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているといえる。
なお、甲3発明における各構成要素の符号は、摘示(3c)(3d)等の記載を参酌して付した。

(4)甲第4号証
本件特許出願日前に頒布された刊行物である甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
(4a)「本考案は鉄管等で保温を要するもの、殊にその屈曲部の保温材を保護するための保護金具に関するものである。」(1欄19?21行)
(4b)「1は保温を要する鉄管で略90°に屈曲した個所をもち、鉄管全体に保温材2が巻付けられている。3,3は鉄管の直線部分の保護金具で保温材2の外側に巻付けて固定してある。
4は屈曲部分の保護金具で、中央部が端部に比し若干幅広く形成された短冊状の部材5,6,7,8,9を夫々側面U字状に彎曲させて組合わせさらに銀杏葉状に形成した巻付部材10,10を前記部材5……9の端部上下に結合して組立てるものである。」(1欄32行?2欄2行)
(4c)「而してこれを予め保温材2を巻いた鉄管1の屈曲部に嵌め込み、屈曲している管の内側に巻付部材10,10を引き出し保温材2と保護金具4の間に隙間が生じないように密着させて巻付部材10,10の端部を噛(当審注:「噛」は旧字体を新字体に改めた。)み合わせて結合部20を形成して固着するのである。」(2欄28?33行)
(4d)甲第4号証には、保護金具に関する以下の第1?5図が示されている。



(5)甲第5号証
本件特許出願日前に頒布された刊行物である甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
(5a)「本考案は主として屋外に放置される鉄管等で保温を要するもの、殊にその屈曲部の保温材を風雨から守るための保護金具の改良に関するものである。」(1欄19?22行)
(5b)「11は保温すべき鉄管等で略90°に屈曲した部分があり、これに保温材12が巻きつけられている。13,13は直線部分の保護金具で保温材12に巻装固定してある。14は屈曲部分の保護金具で断面U字状で長手方向の開放部を円心側にして平面扇形に形成した屈曲部材15の円心側端側に銀杏葉状の締付部材16,16を溶着してある17は結合部である。
而して屈曲部の保温材12上に保護金具14を嵌め込み、屈曲せる円心側に締付部材16,16を出し保温材12と金具の間に隙間が生じないように密着させて締付部材16,16の端部を噛(当審注:「噛」は旧字体を新字体に改めた。)み合わせ結合部17を形成て固定する。」(2欄13?25行 )
(5c)甲第5号証には、保護金具に関する以下の第1?3図が示されている。

(6)甲第6号証
本件特許出願日前に頒布された刊行物である甲第6号証には、以下の事項が記載されている。
(6a)「本発明は冷暖房などの空調設備の配管に使用する保温材保護カバーの製造方法に関するものである。」(1頁左下欄下から6?4行)
(6b)「カバー本体1は5枚の短冊状部材2,3,4,5,6と2枚の巻付部材7,7からなっている。前記短冊状部材2…6は何れも中央部が端部に対して若干幅広く形成されており、各部材の側縁どうしを接続すると全体で90°屈曲したカバー本体1が形成される。
・・・
次に仮止めした結合部に銀杏葉状の巻付部材7を重合し、・・・巻付部材7,7とカバー本体1を結合する。」(2頁右上欄16行?同頁右下欄3行)
(6c)甲第6号証には、保温材保護カバーに関する以下の第1及び4図が示されている。

(7)甲第7号証
本件特許出願日前に頒布された刊行物である甲第7号証には、以下の事項が記載されている。
(7a)「本発明は冷暖房などの空調設備の配管に使用する保温材保護カバーの製造方法に関している。」(1頁左下欄下から3?2行)
(7b)「カバー本体1は5枚の短冊部材2,3,4,5,6と2枚の巻付部材7,7からなっており、短冊部材2…6は中央部が端部に比してやや幅広く形成されており、又、巻付部材7,7は銀杏葉状に形成されている。
第1図を参照して短冊部材2…6は各部材を断面U字状に折り曲げると共に各部材を接合し、全体の形状を「蝦」の腹部に似せた形状に仕上げる。また巻付部材7,7はカバー本体1が正面扇形に形成されるので、扇の要に相当する部分に重合して接着する。」(2頁右上欄1?11行)
(7c)甲第7号証には、保温材保護カバーに関する以下の第1及び4図が示されている。

(8)甲第8号証
本件特許出願日前に頒布された刊行物である甲第8号証には、以下の事項が記載されている。
(8a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、湯管の放熱を防ぐための外被保温筒のL型屈曲部(エルボ)を覆うために装着するエルボカバーの構造に関する。」
(8b)「【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明は、カラー鉄板製の各背甲片1のうち両端背甲片1aについてはその内側の両端部にのみ切込み舌片2aを、その両端背甲片1a,1aに挟まれた複数の背甲片1bには対向両側の一端部に切込み舌片2a、他端部に舌片差込部2bを設ける。そして、前記各背甲片1を求芯方向に湾曲させて段重ねする際に、前記切込み舌片2aを舌片差込部2bに差込んで各要部位の仮止め4をした上、両外側方からアゴ板3を鋲着5して湯管の外被保温筒におけるエルボカバーを構成する。」
(8c)甲第8号証には、エルボカバーに関する以下の図1、2、4及び5が示されている。

2 無効理由について
2-1 無効理由1について
(1)本件発明1について
ア 請求人は、本件発明1について、「前記第1、第2の内径カバー体のうち一方の内径カバー体は、その端部を内方へ折曲して形成した一次折曲部と、この一次折曲部からの延長部分を中途で外方へ折返して、同一次折曲部と対面させて形成した二次折曲部と、この二次折曲部と前記一次折曲部との間に形成された略V字状溝部と、前記二次折曲部からの延長部分を内方へ折曲して形成した係合受歯とを備え」との事項(以下「事項A」という。)における「内方」とされる向きと、「一次折曲部の側端縁を、内径カバー体の側端縁と略テーパー状に対向させて幅方向において内方へ位置させると共に、二次折曲部の側端縁を、一次折曲部の側端縁と略テーパー状に対向させて幅方向においてさらに内方に位置させることで、前記第1の内径カバー体と前記第2の内径カバー体とを係合接続したときに形成される係合接続部分の厚みを、その中央部から側端縁部に向かって漸次的に薄くなるように構成することにより、その側端縁部を前記管体の内径面に密着させた状態で管体を内装するべく構成した」との事項(以下「事項B」という。)における「内方」とされる向きとが、同様の向きを意味するとすれば、事項Bの「一次折曲部の側端縁を、内径カバー体の側端縁と略テーパー状に対向させて内方へ位置させる」という発明特定事項、及び「二次折曲部の側端縁を、一次折曲部の側端縁と略テーパー状に対向させてさらに内方に位置させる」という発明特定事項を明確に理解することができない旨主張するので(審判請求書6?8頁「イ 不明確性1」の項)、以下検討する。
事項Aについて、「内方」が「一次折曲部」の折り曲げの向きを意味し、「外方」が「二次折曲部」の折り曲げの向きを意味することは、請求人も審判請求書(6頁下から10?5行)で自認するとおり、請求項1の記載から明らかである(図6にもそのように記載されている)。
他方、事項Bは、上記「第2 1」のとおり、本件訂正によって、訂正前の「一次折曲部の側端縁を、内径カバー体の側端縁と略テーパー状に対向させて内方へ位置させる」及び「二次折曲部の側端縁を、一次折曲部の側端縁と略テーパー状に対向させてさらに内方に位置させる」との事項は、「一次折曲部の側端縁を、内径カバー体の側端縁と略テーパー状に対向させ幅方向において内方へ位置させる」及び「二次折曲部の側端縁を、一次折曲部の側端縁と略テーパー状に対向させて幅方向においてさらに内方に位置させる」との事項に訂正された(なお、訂正箇所を下線で示す。)。
そして、上記「第2 2(1)」で述べたとおり、かかる訂正によって、事項Bについて、「内方」とされる方向は、「幅方向」を基準とした方向であることが明らかとなり、不明瞭な記載は正された。
したがって、事項A及びBは明確に理解することができるから、請求人の上記主張は採用できない。

イ 請求人は、本件発明1について、「側端縁」という用語と「側端縁部」という用語が存在するが、本件明細書にはそれら各用語の意味の違いについて説明していないから、「一次折曲部の側端縁を、内径カバー体の側端縁と略テーパー状に対向させて幅方向において内方へ位置させると共に、二次折曲部の側端縁を、一次折曲部の側端縁と略テーパー状に対向させて幅方向においてさらに内方に位置させることで、前記第1の内径カバー体と前記第2の内径カバー体とを係合接続したときに形成される係合接続部分の厚みを、その中央部から側端縁部に向かって漸次的に薄くなるように構成することにより、その側端縁部を前記管体の内径面に密着させた状態で管体を内装するべく構成した」という事項(以下「事項C」という。)を明確に理解することができない旨主張するので(審判請求書8?9頁「ウ 不明確性2」の項)、以下検討する。
事項Cの「一次折曲部の側端縁を、内径カバー体の側端縁と略テーパー状に対向させて幅方向において内方へ位置させると共に、二次折曲部の側端縁を、一次折曲部の側端縁と略テーパー状に対向させて幅方向においてさらに内方に位置させる」との構成によれば、「側端縁」として、「一次折曲部の側端縁」、「内径カバー体の側端縁」及び「二次折曲部の側端縁」の3つの側端縁を明確に特定することができるから、「側端縁」とは、上記「一次折曲部」、「内径カバー体」及び「二次折曲部」の各側端縁を意味することが明らかである。
また、事項Cの「前記第1の内径カバー体と前記第2の内径カバー体とを係合接続したときに形成される係合接続部分の厚みを、その中央部から側端縁部に向かって漸次的に薄くなるように構成する」との構成において、「その中央部から側端縁部」が、「係合接続部分」の「中央部から側端縁部」であることは文言上明らかであるから、「側端縁部」とは、「前記第1の内径カバー体と前記第2の内径カバー体とを係合接続したときに形成される係合接続部分」における側端縁部を意味することが明らかであり、さらに、上記「係合接続部分」の厚みが、「その中央部から側端縁部に向かって漸次的に薄くなるように構成する」ことは、事項Cの「一次折曲部の側端縁を、内径カバー体の側端縁と略テーパー状に対向させて幅方向において内方へ位置させると共に、二次折曲部の側端縁を、一次折曲部の側端縁と略テーパー状に対向させて幅方向においてさらに内方に位置させること」に起因した構成であることも技術的に明らかである。
したがって、事項Cに「側端縁」と「側端縁部」という用語が存在するとしても、それらの用語が意味する構成は技術的に明らかであるから、事項Cの構成が不明確であるということはできず、よって、請求人の上記主張は採用できない。

ウ 以上のとおり、本件発明1は、特許を受けようとする発明が明確であり、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に適合し、本件特許は、同条同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、同法第123条第1項第4号に該当せず、無効理由1によって無効とすべきものではない。

(2)本件発明2及び3に対して
請求人は、本件特許の請求項2及び3は請求項1を引用しているので、その限りにおいて、本件発明2及び3も同様にそれらの外延を明確に理解することができず、よって、本件発明2及び3は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしておらず、それら特許も特許法第123条第1項第4号の規定により無効にされるべきものである旨主張するので(審判請求書9頁「エ」の項)、以下検討する。
請求人の上記主張は、本件発明1が不明確であるとの主張を前提とするものであるが、上記(1)で述べたとおり、その主張は理由がない。
したがって、本件発明2及び3に係る特許は、本件発明1に係る特許と同様に無効理由1によって無効とすべきものではない。

(3)小括
以上のとおり、本件発明1?3に係る特許は、無効理由1によって無効とすべきものではない。

2-2 無効理由2について
(1)本件発明1に対して
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「配管された管20」及び「直角又は任意角度に屈曲している屈曲部分」は、本件発明1の「管体」及び「屈曲部」にそれぞれ相当する。
(イ)甲1発明の「エルボ胴部31」は、管20の屈曲部分の外径周面を覆うことが明らかであるから、本件発明1の「管体の屈曲部の外径周面を覆う外径カバー体」に相当するものといえる。
(ウ)甲1発明の「銀杏葉状の締付け板32」は、管20の屈曲部分の内径周面を覆うことが明らかであるから、本件発明1の「管体の屈曲部の内径周面を覆う内径カバー体」に相当するものといえる。
(エ)甲1発明の「前記エルボ胴部31の前後面に正面形状が銀杏葉状の締付け板32が固着され」という構成は、上記(ア)?(ウ)をも踏まえると、本件発明1の「管体の屈曲部の外径周面を覆う外径カバー体と、管体の屈曲部の内径周面を覆う内径カバー体とを一体に連接して構成した」という構成に相当するものといえる。
さらに、上記「締付け板32」は、「前記エルボ胴部31の前後面に」「固着され」るものであり、締付け板32の内径部分を管体周面と交差する方向に分離離隔して形成されることが明らかであるから、かかる締付け板32の配設構成は、本件発明1の「前記内径カバー体の内径部分を管体周面と交差する方向に分離離隔して、第1の内径カバー体と、第2の内径カバー体とを形成し」という構成に相当するものといえる。
(オ)甲1発明の「屈曲管カバー30」は、その技術的意義において、本件発明1の「管体の屈曲部保護カバー」に相当するものといえる。

したがって、本件発明1と甲1発明とは、
「管体の屈曲部の外径周面を覆う外径カバー体と、管体の屈曲部の内径周面を覆う内径カバー体とを一体に連接して構成した、管体の屈曲部保護カバーにおいて、
前記内径カバー体の内径部分を管体周面と交差する方向に分離離隔して、第1の内径カバー体と、第2の内径カバー体とを形成した、
管体の屈曲部保護カバー。」の点で一致し、以下の点で相違している。
〔相違点1〕
「管体の屈曲部保護カバー」の素材について、本件発明1は、「弾性素材からなる」ものであるのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。
〔相違点2〕
「第1、第2の内径カバー体」について、本件発明1は、「それぞれの対向する端部を係合接続自在に構成すると共に」、「前記第1、第2の内径カバー体のうち一方の内径カバー体は、その端部を内方へ折曲して形成した一次折曲部と、この一次折曲部からの延長部分を中途で外方へ折返して、同一次折曲部と対面させて形成した二次折曲部と、この二次折曲部と前記一次折曲部との間に形成された略V字状溝部と、前記二次折曲部からの延長部分を内方へ折曲して形成した係合受歯とを備え、他方の内径カバー体は、その端部において、前記係合受歯と係合自在に形成された係合歯を備え、一次折曲部の側端縁を、内径カバー体の側端縁と略テーパー状に対向させて幅方向において内方へ位置させると共に、二次折曲部の側端縁を、一次折曲部の側端縁と略テーパー状に対向させて幅方向においてさらに内方に位置させることで、前記第1の内径カバー体と前記第2の内径カバー体とを係合接続したときに形成される係合接続部分の厚みを、その中央部から側端縁部に向かって漸次的に薄くなるように構成することにより、その側端縁部を前記管体の内径面に密着させた状態で管体を内装するべく構成した」ものであるのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。

イ 判断
(ア)上記アのとおり、本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は、上記相違点1及び相違点2で相違することが明らかであるから、本件発明1は、甲1発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当しないものといえる。
(イ)請求人の主張
a 請求人は、平成29年6月6日付け口頭審理陳述要領書(2?5頁「ア.」の項)において、上記相違点2に係る本件発明1の構成に関連し、「その側端縁部を前記管体の内径面に密着させた状態で管体を内装するべく構成した」との事項は、発明特定事項として無意味であり、単なる願望、発明の目的を記載したにすぎず、また、「前記第1の内径カバー体と前記第2の内径カバー体とを係合接続したときに形成される係合接続部分の厚みを、その中央部から側端縁部に向かって漸次的に薄くなるように構成する」との事項は、係合接続時という発明の作用時の構造を表現したものであって発明の構成自体を表現したものではないから、本件発明1の「前記第1の内径カバー体と前記第2の内径カバー体とを係合接続したときに形成される係合接続部分の厚みを、その中央部から側端縁部に向かって漸次的に薄くなるように構成することにより、その側端縁部を前記管体の内径面に密着させた状態で管体を内装するべく構成した」との事項は捨象されるべきである旨主張するので、以下検討する。
本件明細書の記載によれば、本件発明1は、「管体に装着する際に係合接続させる係合部が管体の屈曲部内径に干渉することを防止して、装着性を向上させた管体の屈曲部保護カバーを提供する」という課題を解決するために(段落【0011】)、少なくとも、「前記第1の内径カバー体と前記第2の内径カバー体とを係合接続したときに形成される係合接続部分の厚みを、その中央部から側端縁部に向かって漸次的に薄くなるように構成することにより、その側端縁部を前記管体の内径面に密着させた状態で管体を内装するべく構成した」との発明特定事項を課題解決手段として採用したものといえる(段落【0012】)。
そして、上記発明特定事項を採用することで、「両内径カバー体の係合接続部分において、それぞれ端部に向かって可及的に漸次幅狭となるように形成した両内径カバー体を、両端部近傍が重合するように互いを係合させることで、係合接続部分における突出部分を可及的に小さくすると共に係合接続部分の側縁部における厚みを可及的に薄くして、管体へ装着した際に、内径カバー体が管体の屈曲部内径面に干渉することを防止して、管体への装着性を向上させて管体の屈曲部を効果的に保護することができる。」(段落【0016】)及び「一次折曲部から二次折曲部、二次折曲部から係合受歯へ向かう板幅を、漸次的に幅狭として一方の内径カバー体における側端縁部の厚みを可及的に薄くすることができ、管体への装着時に、両内径カバー体の接続部分が管体の屈曲部内径と干渉することを防止して、管体への装着性を向上させることができる。」(段落【0017】)という効果を奏するものと理解することができる。
したがって、上記発明特定事項は、上記課題を解決するとともに上記効果を奏する特徴的部分を構成し、これを特定したものということができるから、請求人が主張するような、発明特定事項として無意味であり、単なる願望、発明の目的を記載したにすぎず、発明の構成自体を表現したものではない、というものではない。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

b また、請求人は、同口頭審理陳述要領書(5?8頁「イ.」の項)において、
(a)甲1発明の認定について、本件発明1と甲1発明との対比において、内径カバー体の先端に至るまで「漸次幅狭形状」であるかどうかを検討する必要はない旨(5?7頁「a.」の項)、及び、
(b)甲第1号証の図4の屈曲管カバー30における先端の係合接続構造は、図示が省略されているのみであり、図2に示す直管カバー1と同様の構造により係合接続がされると解される旨(7?8頁「b.」の項)、主張する。
しかし、甲第1号証には、そもそも屈曲管カバー30における先端の係合接続構造が何ら記載されていないのであるから、そのような屈曲管カバー30における先端の係合接続構造を特定することはできないし、図2に示す直管カバー1と同様の構造により係合接続がされると解すべき合理性もない。
これについて補足すれば、甲第1号証には、「課題を解決するための手段」として、「解決手段の第1は、保護カバーが直管カバーであって、カバーの側端部に形成した雌型及び雄型係合部のいずれか一方または双方の部材・・・にブチルゴム又はこれと同質資材によるシール材を貼着したことを特徴とする」こと、及び「解決手段の第2は、保護カバーが屈曲管カバーであって、エルボ胴部の正面視で該エルボ胴部の両端内側部から締付け板に至る部分にブチルゴム又はこれと同質資材によるシール材を貼着したことを特徴とする」ことが記載されており(摘示(1b)【0005】)、保護カバーを「直管カバー」として構成する場合には、「雌型及び雄型係合部」を具備することを前提として、「雌型及び雄型係合部」の部材にシール材を貼着するものとされている一方で、保護カバーを「屈曲管カバー」として構成する場合には、エルボ胴部の両端内側部から締付け板に至る部分にシール材を貼着するものとされていること(「雌型及び雄型係合部」は記載も示唆もなされていない)、さらに、甲第4号証に記載される結合部20の構造(摘示(4c)(4d)第2図)や甲第5号証に記載される結合部17の構造(摘示(5b)(5c)第2図))をも考慮すれば、後者の場合には、むしろ「雌型及び雄型係合部」は形成されていない、と解するのが自然である。
したがって、請求人の上記(b)の主張は採用できない。
また、仮に、保護カバーを「屈曲管カバー」として構成する場合において、上記「直管カバー」と同様な「雌型及び雄型係合部」を具備することが想定されているとしても、締付け板32(本件発明1の「内径カバー体」に相当)の形状について、その先端に至るまで「漸次幅狭形状」であるかどうかを特定することができないことから(請求人も、上記(a)のとおり、カバー体の先端に至るまで「漸次幅狭形状」であるかどうかを検討する必要はない旨主張している)、締め付け板32に形成される二次折曲部の側端縁が、一次折曲部の側端縁と略テーパー状に対向させた構造になるとまで断ずることはできない。
補足すれば、締め付け板32に「漸次幅狭形状」の部分が存在するとしても、かかる締め付け板32に対する一次折曲部、二次折曲部及び係合受歯の形成域は特定できないのであるから、上記「漸次幅狭形状」の部分に二次折曲部が形成される(二次折曲部の側端縁が、一次折曲部の側端縁と略テーパー状に対向させた構造になる)とまで断ずることはできない。
さらに、甲第1号証には、管の屈曲部分に対する屈曲カバーの取付け態様が何ら示されていないことから、そのように想定した「屈曲管カバー」における「雌型及び雄型係合部」の構成が、上記相違点2に係る本件発明1の「前記第1の内径カバー体と前記第2の内径カバー体とを係合接続したときに形成される係合接続部分の厚みを、その中央部から側端縁部に向かって漸次的に薄くなるように構成することにより、その側端縁部を前記管体の内径面に密着させた状態で管体を内装するべく構成した」ということもできない。
したがって、上記相違点2は実質的な相違点といえる。
(ウ)以上のとおりであるから、本件発明1と甲1発明とは、少なくとも上記相違点2で実質的に相違することが明らかであるから、本件発明1は、甲1発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当しない。

(2)本件発明2に対して
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに減縮したものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当しない。

(3)小括
以上のとおり、本件発明1及び2に係る特許は、無効理由2によって無効とすべきものではない。

2-3 無効理由3について
2-3-1 甲1発明を主引用発明とした場合
(1)本件発明1に対して
(1-1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者の一致点及び相違点は、上記「2-2(1)ア」に示すとおりである。

(1-2)判断
ア 相違点1について
管体の屈曲部保護カバーを「弾性素材」で構成することは、かかる技術分野の周知技術といえる(例えば、甲第2号証に記載された板金からなる配管カバー用エルボ16(摘示(2a)(2b))、甲第3号証に記載された薄い金属板よりなるエルボジャケットカバー(摘示(3b))、など参照)。
そして、甲1発明は、「屈曲管カバー30」の素材について特に特定されるものではないが、屈曲管カバーとして機能する素材が適宜選択され得ることは技術的に明らかであるから、上記周知技術をも参考とすれば、甲1発明の屈曲管カバー30を弾性素材で構成することは、当業者にとって格別困難なことではない。

イ 相違点2について
(ア)請求人は、上記相違点2に係る本件発明1の構成について、甲第1号証の図4には、銀杏葉状の「締付け板32」が示されており、「各締付け板32」は、先端側にいくに従って徐々に幅狭となっているから、甲第1号証の図2に記載された直管カバー1の接続部の構造を図4の屈曲カバー30に適用すれば容易に想到し得るものである旨主張するので(審判請求書10頁下から8?5行、13?14頁「(4-3-1)」の項)、以下検討する。
甲第1号証には、締付け板32(本件発明1の「内径カバー体」に相当)の形状について、「正面形状が銀杏葉状」と記載されている(摘示(1d)【0013】)。
しかし、上記「2-2(1)イb」で述べたとおり、締付け板32の形状が、その先端に至るまで「漸次幅狭形状」であるかどうかを特定することができないことから、甲1発明の「屈曲管カバー」に、甲第1号証の図4に示される「直管カバー」と同様な「雌型及び雄型係合部」を形成しても、二次折曲部の側端縁が、一次折曲部の側端縁と略テーパー状に対向させた構造になるとまで断ずることはできない。
さらに、甲第1号証には、管の屈曲部分に対する屈曲カバーの取付け態様も何ら示されていないことから、上記相違点2に係る本件発明1の「前記第1の内径カバー体と前記第2の内径カバー体とを係合接続したときに形成される係合接続部分の厚みを、その中央部から側端縁部に向かって漸次的に薄くなるように構成することにより、その側端縁部を前記管体の内径面に密着させた状態で管体を内装するべく構成した」ということもできない。
したがって、甲1発明に甲第1号証の図2等に記載された技術事項を適用したとしても、上記相違点2に係る本件発明1の構成に至るものではなく、当業者が容易になし得たものとはいえない。

(イ)また、請求人は、甲第4号証の第1図及び第4図には、「巻付部材10」の形状として、先端側にいくに従って徐々に幅狭となる形状が示されており(審判請求書15頁下から10?9行)、甲第5号証の第3図には、「巻付部材16(当審注:「締付部材16」の誤記と認める。)」の形状として、先端側にいくに従って徐々に幅狭となる形状が示されており(同16頁10?11行)、甲第6号証の第1図Bには、「巻付け部材7」(当審注:「巻付部材7」の誤記と認める。)の形状として、先端側にいくに従って徐々に幅狭となる形状が示されており(同16頁下から4?3行)、 甲第7号証の第1図(B)には、「巻付部材7」の形状として、先端側にいくに従って徐々に幅狭となる形状が示されており(同17頁13?14行)、甲第8号証の第4図には、「アゴ板3」の形状として、先端側にいくに従って徐々に幅狭となる形状が示されているから(同18頁1?2行)、本件発明1の「第一の内側カバー体」、「第二の内側カバー体」(当審注:「第1内径カバー体」、「第2の内径カバー体」の誤記と認める。)に相当する部材の形状を、先端にいくに従って漸次幅狭となる形状とすることは周知技術といえ、かかる周知技術を甲1発明に適用すれば本件発明1は容易に想到し得る旨主張するので(同18?19頁「イ」「ウ」の項)、以下検討する。
a 甲第4号証には、鉄管等の屈曲部の保温材を保護するための保護金具に関し(摘示(4a))、保護金具4の巻付部材10,10を銀杏葉状に形成することが記載されている(摘示(4b))。
しかし、甲第4号証には、上記銀杏葉状に形成された巻付部材10,10の形状が、その先端に至るまで漸次幅狭形状であると明記されるものではなく、また、上記巻付部材10,10を図示した第3図及び第5図の記載(摘示(4d))を検討しても、巻付部材10,10の形状がその先端に至るまで漸次幅狭形状であるなどと断ずることもできない。補足すれば、上記図面は、「特許図面」であって設計図面ほど正確に描かれた図面ではなく、さらに、「斜視図」として示されていることから、そのような図面に基づいて巻付部材10,10の先端に至る形状を看取することはできない。そもそも甲第4号証には、本件発明1の「管体に装着する際に係合接続させる係合部が管体の屈曲部内径に干渉することを防止して、装着性を向上させた管体の屈曲部保護カバーを提供する」という課題(段落【0011】)は記載も示唆もなされていないのであるから、かかる課題を解決するための手段の前提となる巻付部材10,10の形状を、第3図や第5図(摘示(4d))といった特許図面のみから看取することはできない。
さらに、甲第4号証には、保護金具4の取付けについて、屈曲している管の内側に巻付部材10,10を引き出し、保温材2と保護金具4の間に隙間が生じないように密着させて巻付部材10,10の端部を噛み合わせて結合部20を形成して固着することが記載されているところ(摘示(4c))、かかる結合部20の構造は、第2図(摘示(4d))の断面図にも示されるとおり、甲第1号証の図2に記載された「雌型及び雄型係合部」とはその具体的構造が異なるものであるから、上記「巻付部材10,10」に、「雌型及び雄型係合部」を形成することが企図されるものでないことも技術的に明らかである。
したがって、甲1発明の締付け板32に、甲第1号証の図2に記載された「雌型及び雄型係合部」の構造を適用するに際し、甲第4号証に記載された巻付部材10,10の形状を採用すべき動機付けはないし、かかる巻付部材10,10の形状を採用しても、その形状が先端に至るまで漸次幅狭形状ということはできないことから、上記相違点2に係る本件発明1の「一次折曲部の側端縁を、内径カバー体の側端縁と略テーパー状に対向させて幅方向において内方へ位置させると共に、二次折曲部の側端縁を、一次折曲部の側端縁と略テーパー状に対向させてさらに幅方向において内方に位置させることで、前記第1の内径カバー体と前記第2の内径カバー体とを係合接続したときに形成される係合接続部分の厚みを、その中央部から側端縁部に向かって漸次的に薄くなるように構成」される、ということはできず、さらに、その配設態様が、「その側端縁部を前記管体の内径面に密着させた状態で管体を内装するべく構成した」ものということもできない。

b 甲第5号証には、鉄管等の屈曲部の保温材を風雨から守るための保護金具に関し(摘示(5a))、保護金具14の締付部材16,16を銀杏葉状に形成することが記載されている(摘示(5b))。
しかし、甲第5号証には、上記銀杏葉状に形成された締付部材16,16の形状が、その先端に至るまで漸次幅狭形状であると明記されるものではなく、また、上記締付部材16,16を図示した第3図の記載(摘示(5c))を検討しても、締付部材16,16の形状がその先端に至るまで漸次幅狭形状であるなどと断ずることもできない。補足すれば、上記図面は、「特許図面」であって設計図面ほど正確に描かれた図面ではなく、さらに、「斜視図」として示されていることから、そのような図面に基づいて締付部材16,16の先端に至る形状を看取することはできない。そもそも甲第5号証には、本件発明1の「管体に装着する際に係合接続させる係合部が管体の屈曲部内径に干渉することを防止して、装着性を向上させた管体の屈曲部保護カバーを提供する」という課題(段落【0011】)は記載も示唆もなされていないのであるから、かかる課題を解決するための手段の前提となる締付部材16,16の形状を、第3図(摘示(5c))といった特許図面のみから看取することはできない。
さらに、甲第5号証には、保護金具4の取付けについて、屈曲部の保温材12上に保護金具14を嵌め込み、屈曲せる円心側に締付部材16,16を出し、保温材12と金具の間に隙間が生じないように密着させて締付部材16,16の端部を噛み合わせ結合部17を形成して固定することが記載されているところ(摘示(5b))、かかる結合部17の構造は、第2図(摘示(4c))の断面図にも示されるとおり、甲第1号証の図2に記載された「雌型及び雄型係合部」とはその具体的構造が異なるものであるから、上記「締付部材16,16」に、「雌型及び雄型係合部」を形成することが企図されるものでないことも技術的に明らかである。
したがって、甲1発明の締付け板32に、甲第1号証の図2に記載された「雌型及び雄型係合部」の構造を適用するに際し、甲第5号証に記載された締付部材16,16の形状を採用すべき動機付けはないし、かかる締付部材16,16の形状を採用しても、その形状が先端に至るまで漸次幅狭形状ということはできないことから、上記相違点2に係る本件発明1の「一次折曲部の側端縁を、内径カバー体の側端縁と略テーパー状に対向させて幅方向において内方へ位置させると共に、二次折曲部の側端縁を、一次折曲部の側端縁と略テーパー状に対向させてさらに幅方向において内方に位置させることで、前記第1の内径カバー体と前記第2の内径カバー体とを係合接続したときに形成される係合接続部分の厚みを、その中央部から側端縁部に向かって漸次的に薄くなるように構成」される、ということはできず、さらに、その配設態様が、「その側端縁部を前記管体の内径面に密着させた状態で管体を内装するべく構成した」ものということもできない。

c 甲第6号証には、配管に使用する保温材保護カバーに関し(摘示(6a))、保温材保護カバーをなすカバー本体1の巻付部材7,7を銀杏葉状に形成することが記載されている(摘示(6b))。
しかし、甲第6号証には、上記銀杏葉状に形成された巻付部材7,7の形状が、その先端に至るまで漸次幅狭形状であると明記されるものではなく、また、上記巻付部材7,7を図示した第1図及び第4図の記載(摘示(6c))を検討しても、巻付部材7,7の形状がその先端に至るまで漸次幅狭形状であるなどと断ずることもできない。補足すれば、上記図面は、「特許図面」であって設計図面ほど正確に描かれた図面ではなく、さらに、「斜視図」として示されていることから、そのような図面に基づいて巻付部材7,7の先端に至る形状を看取することはできない。そもそも甲第6号証には、本件発明1の「管体に装着する際に係合接続させる係合部が管体の屈曲部内径に干渉することを防止して、装着性を向上させた管体の屈曲部保護カバーを提供する」という課題(段落【0011】)は記載も示唆もなされていないのであるから、かかる課題を解決するための手段の前提となる巻付部材7,7の形状を、第1図や第4図(摘示(6c))といった特許図面のみから看取することはできない。
したがって、甲1発明の締付け板32に、甲第1号証の図2に記載された「雌型及び雄型係合部」の構造を適用するに際し、甲第6号証に記載された巻付部材7,7の形状を採用しても、その形状が先端に至るまで漸次幅狭形状ということはできないことから、上記相違点2に係る本件発明1の「一次折曲部の側端縁を、内径カバー体の側端縁と略テーパー状に対向させて幅方向において内方へ位置させると共に、二次折曲部の側端縁を、一次折曲部の側端縁と略テーパー状に対向させてさらに幅方向において内方に位置させることで、前記第1の内径カバー体と前記第2の内径カバー体とを係合接続したときに形成される係合接続部分の厚みを、その中央部から側端縁部に向かって漸次的に薄くなるように構成」される、ということはできず、さらに、甲第6号証には、配管に対する保温材保護カバーの取付け態様も何ら示されていないことから、その配設態様が、「その側端縁部を前記管体の内径面に密着させた状態で管体を内装するべく構成した」ものということもできない。

d 甲第7号証には、配管に使用する保温材保護カバーに関し(摘示(7a))、保温材保護カバーをなすカバー本体1の巻付部材7,7を銀杏葉状に形成することが記載されている(摘示(7b))。
しかし、甲第7号証には、上記銀杏葉状に形成された巻付部材7,7の形状が、その先端に至るまで漸次幅狭形状であると明記されるものではなく、また、上記巻付部材7,7を図示した第1図及び第4図の記載(摘示(7c))を検討しても、巻付部材7,7の形状がその先端に至るまで漸次幅狭形状であるなどと断ずることもできない。補足すれば、上記図面は、「特許図面」であって設計図面ほど正確に描かれた図面ではなく、さらに、「斜視図」として示されていることから、そのような図面に基づいて巻付部材7,7の先端に至る形状を看取することはできない。そもそも甲第7号証には、本件発明1の「管体に装着する際に係合接続させる係合部が管体の屈曲部内径に干渉することを防止して、装着性を向上させた管体の屈曲部保護カバーを提供する」という課題(段落【0011】)は記載も示唆もなされていないのであるから、かかる課題を解決するための手段の前提となる巻付部材7,7の形状を、第1図や第4図(摘示(7c))といった特許図面のみから看取することはできない。
したがって、甲1発明の締付け板32に、甲第1号証の図2に記載された「雌型及び雄型係合部」の構造を適用するに際し、甲第7号証に記載された巻付部材7,7の形状を採用しても、その形状が先端に至るまで漸次幅狭形状ということはできないことから、上記相違点2に係る本件発明1の「一次折曲部の側端縁を、内径カバー体の側端縁と略テーパー状に対向させて幅方向において内方へ位置させると共に、二次折曲部の側端縁を、一次折曲部の側端縁と略テーパー状に対向させてさらに幅方向において内方に位置させることで、前記第1の内径カバー体と前記第2の内径カバー体とを係合接続したときに形成される係合接続部分の厚みを、その中央部から側端縁部に向かって漸次的に薄くなるように構成」される、ということはできず、さらに、甲第7号証には、配管に対する保温材保護カバーの取付け態様も何ら示されていないことから、その配設態様が、「その側端縁部を前記管体の内径面に密着させた状態で管体を内装するべく構成した」ものということもできない。

e 甲第8号証には、外被保温筒のL型屈曲部(エルボ)を覆うために装着するエルボカバーに関し(摘示(8a))、アゴ板3を備えたエルボカバーが記載されている(摘示(8b))。
しかし、甲第8号証には、上記アゴ板3の形状が、その先端に至るまで漸次幅狭形状であると明記されるものではなく、また、上記アゴ板3を図示した図4及び図5の記載(摘示(8c))を検討しても、アゴ板3の形状がその先端に至るまで漸次幅狭形状であるなどと断ずることもできない。補足すれば、上記図面は、「特許図面」であって設計図面ほど正確に描かれた図面ではなく、さらに、「斜視図」として示されていることから、そのような図面に基づいてアゴ板3の先端に至る形状を看取することはできない。そもそも甲第8号証には、本件発明1の「管体に装着する際に係合接続させる係合部が管体の屈曲部内径に干渉することを防止して、装着性を向上させた管体の屈曲部保護カバーを提供する」という課題(段落【0011】)は記載も示唆もなされていないのであるから、かかる課題を解決するための手段の前提となるアゴ板3の形状を、図4や図5(摘示(8c))といった特許図面のみから看取することはできない。
したがって、甲1発明の締付け板32に、甲第1号証の図2に記載された「雌型及び雄型係合部」の構造を適用するに際し、甲第8号証に記載されたアゴ板3の形状を採用しても、その形状が先端に至るまで漸次幅狭形状ということはできないことから、上記相違点2に係る本件発明1の「一次折曲部の側端縁を、内径カバー体の側端縁と略テーパー状に対向させて幅方向において内方へ位置させると共に、二次折曲部の側端縁を、一次折曲部の側端縁と略テーパー状に対向させてさらに幅方向において内方に位置させることで、前記第1の内径カバー体と前記第2の内径カバー体とを係合接続したときに形成される係合接続部分の厚みを、その中央部から側端縁部に向かって漸次的に薄くなるように構成」される、ということはできず、さらに、甲第8号証には、外被保温筒のL型屈曲部(エルボ)に対するエルボカバーの取付け態様も何ら示されていないことから、その配設態様が、「その側端縁部を前記管体の内径面に密着させた状態で管体を内装するべく構成した」ものということもできない。

f 以上のとおり、甲第4?8号証には、本件発明1の「第1の内径カバー体」及び「第2の内径カバー体」に相当する部材として、根元部分に比較して、先端にいくに従って、「その部分的な形状」が漸次幅狭となるものが図面にて記載されているにとどまり、「その先端に至るまでの形状」が漸次幅狭となるものが記載されるものではない。
したがって、本件発明1の「第1の内径カバー体」及び「第2の内径カバー体」に相当する部材の形状として、根元部分に比較して、先端にいくに従って、「その部分的な形状」が漸次幅狭となるものが上記甲第4?8号証に記載されるように周知技術であるとしても、かかる周知技術は、「その先端に至るまでの形状」が漸次幅狭となるものではないから、甲1発明に上記周知技術を適用しても、上記相違点2に係る本件発明1の構成(特に、一次折曲部の側端縁を、内径カバー体の側端縁と略テーパー状に対向させて幅方向において内方へ位置させると共に、二次折曲部の側端縁を、一次折曲部の側端縁と略テーパー状に対向させて幅方向においてさらに内方に位置させることで、前記第1の内径カバー体と前記第2の内径カバー体とを係合接続したときに形成される係合接続部分の厚みを、その中央部から側端縁部に向かって漸次的に薄くなるように構成することにより、その側端縁部を前記管体の内径面に密着させた状態で管体を内装するべく構成したもの)に至るものではない。

(ウ)そして、本件明細書の記載によれば、本件発明1は、「管体に装着する際に係合接続させる係合部が管体の屈曲部内径に干渉することを防止して、装着性を向上させた管体の屈曲部保護カバーを提供する」という課題を解決するために(段落【0011】)、少なくとも、上記相違点2に係る本件発明1の構成を採用し(段落【0012】)、かかる構成によって「両内径カバー体の係合接続部分において、それぞれ端部に向かって可及的に漸次幅狭となるように形成した両内径カバー体を、両端部近傍が重合するように互いを係合させることで、係合接続部分における突出部分を可及的に小さくすると共に係合接続部分の側縁部における厚みを可及的に薄くして、管体へ装着した際に、内径カバー体が管体の屈曲部内径面に干渉することを防止して、管体への装着性を向上させて管体の屈曲部を効果的に保護することができる。」(段落【0016】)及び「一次折曲部から二次折曲部、二次折曲部から係合受歯へ向かう板幅を、漸次的に幅狭として一方の内径カバー体における側端縁部の厚みを可及的に薄くすることができ、管体への装着時に、両内径カバー体の接続部分が管体の屈曲部内径と干渉することを防止して、管体への装着性を向上させることができる。」(段落【0017】)という効果を奏するものであるところ、甲第1、4?8号証には、そのような課題、解決手段及び効果について何ら記載も示唆もない。

(エ)したがって、甲1発明に甲第1号証の図2等に記載された技術事項を適用したとしても、あるいは、甲1発明に甲第1、4?8号証に記載された技術事項(周知技術)を適用したとしても、上記相違点2に係る本件発明1の構成に至るものではないし、本件発明1の効果も甲1発明及び甲第1、4?8号証に記載された技術事項(周知技術)から当業者が予測しうる範囲のものということもできない。

(1-3)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明及び甲第1号証に記載された技術事項に基いて、あるいは、甲1発明及び甲第1、4?8号証に記載された技術事項(周知技術)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。

(2)本件発明2に対して
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに減縮したものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明及び甲第1号証に記載された技術事項に基いて、あるいは、甲1発明及び甲第1、4?8号証に記載された技術事項(周知技術)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。

2-3-2 甲2発明を主引用発明とした場合
(1)本件発明1に対して
(1-1)対比
ア 甲2発明の「配管」及び「屈曲部」は、本件発明1の「管体」及び「屈曲部」にそれぞれ相当する。
イ 甲2発明の「外側湾曲部18」は、配管の屈曲部の外径周面を覆うことが明らかであり、また、甲2発明の「繋ぎ側部分24、26」は、配管の屈曲部の内径周面を覆うことが明らかである。
また、甲2発明の「配管カバー用エルボ16」は、「外側湾曲部18及び繋ぎ側部分24、26を有し」て構成されるものであるところ、「前記繋ぎ側部分24、26は、配管カバー用エルボ16の周方向における外側湾曲部18の端部に一端側を固定される」ものであるから、上記「配管カバー用エルボ16」は、上記「外側湾曲部18」と「繋ぎ側部分24、26」とを一体に連接して構成されることも明らかである。
さらに、上記「外側湾曲部18」は「相互に結合されている複数枚の板金20から成り」、上記「繋ぎ側部分24、26」は、「板金から成」るものであるから、上記「配管カバー用エルボ16」は弾性素材から構成されたものと理解することができる。
してみると、甲2発明の「外側湾曲部18及び繋ぎ側部分24、26を有」する「配管カバー用エルボ16」は、本件発明1の「管体の屈曲部の外径周面を覆う外径カバー体と、管体の屈曲部の内径周面を覆う内径カバー体とを一体に連接して構成した、弾性素材からなる管体の屈曲部保護カバー」に相当するものといえる。
ウ 甲2発明の「繋ぎ側部分24、26」は、「配管カバー用エルボ16の周方向における外側湾曲部18の端部に一端側を固定される」ものであって、「前記繋ぎ側部分26の端部を繋ぎ側部分24の嵌入溝28内へ嵌入する」ものであるから、上記繋ぎ側部分24、26の内径部分を管体周面と交差する方向に分離離隔して形成されること、及び上記繋ぎ側部分24、26のそれぞれの対向する端部を係合接続自在に構成することが明らかである。
したがって、甲2発明の「繋ぎ側部分24、26」の配設構成は、本件発明1の「前記内径カバー体の内径部分を管体周面と交差する方向に分離離隔して、第1の内径カバー体と、第2の内径カバー体とを形成し、それぞれの対向する端部を係合接続自在に構成する」ことに相当するものといえる。
エ 甲2発明の「繋ぎ側部分24」における「端部において3回折り返されて嵌入溝28が形成され、繋ぎ側部分24の端縁30は、嵌入溝28の奥の方へ折り返され」との構成は、その機能・構造に照らして、本件発明1の「一方の内径カバー体」における「その端部を内方へ折曲して形成した一次折曲部と、この一次折曲部からの延長部分を中途で外方へ折返して、同一次折曲部と対面させて形成した二次折曲部と、この二次折曲部と前記一次折曲部との間に形成された略V字状溝部と、前記二次折曲部からの延長部分を内方へ折曲して形成した係合受歯とを備え」との構成に相当するものといえる。
オ 甲2発明の「繋ぎ側部分26」における「端部には、繋ぎ側部分26の長手方向に複数個のポケット状凸部32が形成された」との構成は、その機能・構造に照らして、本件発明1の「他方の内径カバー体」における「その端部において、前記係合受歯と係合自在に形成された係合歯を備え」との構成に相当するものといえる。

したがって、本件発明1と甲2発明とは、
「管体の屈曲部の外径周面を覆う外径カバー体と、管体の屈曲部の内径周面を覆う内径カバー体とを一体に連接して構成した、弾性素材からなる管体の屈曲部保護カバーにおいて、
前記内径カバー体の内径部分を管体周面と交差する方向に分離離隔して、第1の内径カバー体と、第2の内径カバー体とを形成し、それぞれの対向する端部を係合接続自在に構成すると共に、
前記第1、第2の内径カバー体のうち一方の内径カバー体は、
その端部を内方へ折曲して形成した一次折曲部と、この一次折曲部からの延長部分を中途で外方へ折返して、同一次折曲部と対面させて形成した二次折曲部と、この二次折曲部と前記一次折曲部との間に形成された略V字状溝部と、前記二次折曲部からの延長部分を内方へ折曲して形成した係合受歯とを備え、
他方の内径カバー体は、その端部において、前記係合受歯と係合自在に形成された係合歯を備えた、
管体の屈曲部保護カバー。」の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点I〕
本件発明1は、「一次折曲部の側端縁を、内径カバー体の側端縁と略テーパー状に対向させて幅方向において内方へ位置させると共に、二次折曲部の側端縁を、一次折曲部の側端縁と略テーパー状に対向させて幅方向においてさらに内方に位置させることで、前記第1の内径カバー体と前記第2の内径カバー体とを係合接続したときに形成される係合接続部分の厚みを、その中央部から側端縁部に向かって漸次的に薄くなるように構成することにより、その側端縁部を前記管体の内径面に密着させた状態で管体を内装するべく構成した」ものであるのに対し、甲2発明は、そのように特定されていない点。

(1-2)判断
上記相違点Iに係る本件発明1の構成は、上記「2-2 ア」で述べた相違点2に係る本件発明1の「一次折曲部の側端縁を、内径カバー体の側端縁と略テーパー状に対向させて幅方向において内方へ位置させると共に、二次折曲部の側端縁を、一次折曲部の側端縁と略テーパー状に対向させて幅方向においてさらに内方に位置させることで、前記第1の内径カバー体と前記第2の内径カバー体とを係合接続したときに形成される係合接続部分の厚みを、その中央部から側端縁部に向かって漸次的に薄くなるように構成することにより、その側端縁部を前記管体の内径面に密着させた状態で管体を内装するべく構成した」との構成と実質的に同様であり、かかる構成が甲第4?8号証に記載された技術事項(周知技術)を含めて検討しても容易想到でないことは、上記「2-3-1(1)(1-2)イ(イ)(ウ)」で述べたとおりである。
したがって、本件発明1は、上述した理由と同様の理由により、甲2発明及び甲第4?8号証に記載された技術事項(周知技術)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。

(2)本件発明2及び3に対して
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに減縮したものであるから、本件発明1と同様に、甲2発明及び甲第4?8号証に記載された技術事項(周知技術)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。

2-3-3 甲3発明を主引用発明とした場合
(1)本件発明1に対して
(1-1)対比
ア 甲3発明の「エルボ」は、本件発明1の「管体の屈曲部」に相当する。
イ 甲3発明の「主体部10」は、エルボの外径周面を覆うことが明らかであり、また、甲3発明の「1対の結合片部11、12」は、エルボの内径周面を覆うことが明らかである。
また、甲3発明の「エルボジャケットカバー」は、「主体部10から細長く延びる1対の結合片部11、12を結合させ」て構成されるものであるから、上記「エルボジャケットカバー」は、上記「主体部10」と「1対の結合片部11、12」とを一体に連接して構成されることが明らかである。
さらに、上記「エルボジャケットカバー」は「薄い金属板より」構成されるものであるから、弾性素材から構成されたものと理解することができる。
してみると、甲3発明の「主体部10から細長く延びる1対の結合片部11、12を結合させるエルボジャケットカバー」は、本件発明1の「管体の屈曲部の外径周面を覆う外径カバー体と、管体の屈曲部の内径周面を覆う内径カバー体とを一体に連接して構成した、弾性素材からなる管体の屈曲部保護カバー」に相当するものといえる。
ウ 甲3発明は、「主体部10から細長く延びる1対の結合片部11、12を結合させ」るものであるから、上記1対の結合片部11、12の内径部分を管体周面と交差する方向に分離離隔して形成されることが明らかである。
さらに、甲3発明は、「一方側の前記結合片部11には・・・第1の折曲片部17と、・・・第2の折曲片部18と、・・・第1及び第2の折曲片部17、18との間に挿入部22を形成する第3の折曲片部19とを有しており、他方側の前記結合片部12の先端付近には一部に切断して内方へ突出した突起部23が形成してあ」ることを前提として、「この突起部23を形成した結合片部12の先端部を前記挿入部22へ挿入して突起部23を係合縁部21へ係合させるように」構成されるものであるから、上記1対の結合片部11、12のそれぞれの対向する端部を係合接続自在に構成することも明らかである。
したがって、甲3発明の「1対の結合片部11、12」の配設構成は、本件発明1の「前記内径カバー体の内径部分を管体周面と交差する方向に分離離隔して、第1の内径カバー体と、第2の内径カバー体とを形成し、それぞれの対向する端部を係合接続自在に構成する」ことに相当するものといえる。
エ 甲3発明において、「一方側の前記結合片部11」における「この結合片部11の先端部をわずかの所定長さだけ外方へ折曲げて折曲げない部分に近接するようにして端縁部を係合縁部21とした第1の折曲片部17と、この第1の折曲片部17に続いてこの第1の折曲片部17と共にこれより長い所定長さだけ外方へ折曲げて折曲げない部分に近接するようにした第2の折曲片部18と、この第2の折曲片部18に続いてこれより長い所定長さだけ前記第1及び第2の折曲片部17、18と共に内方へ折曲げて折曲げない部分に近接するようにして第1及び第2の折曲片部17、18との間に挿入部22を形成する第3の折曲片部19とを有しており」との構成は、その機能・構造に照らして、本件発明1の「一方の内径カバー体」における「その端部を内方へ折曲して形成した一次折曲部と、この一次折曲部からの延長部分を中途で外方へ折返して、同一次折曲部と対面させて形成した二次折曲部と、この二次折曲部と前記一次折曲部との間に形成された略V字状溝部と、前記二次折曲部からの延長部分を内方へ折曲して形成した係合受歯とを備え」との構成に相当するものといえる。
オ 甲3発明において、「他方側の前記結合片部12」における「先端付近には一部に切断して内方へ突出した突起部23が形成してあり」との構成は、その機能・構造に照らして、本件発明1の「他方の内径カバー体」における「その端部において、前記係合受歯と係合自在に形成された係合歯を備え」との構成に相当するものといえる。

したがって、本件発明1と甲3発明とは、
「管体の屈曲部の外径周面を覆う外径カバー体と、管体の屈曲部の内径周面を覆う内径カバー体とを一体に連接して構成した、弾性素材からなる管体の屈曲部保護カバーにおいて、
前記内径カバー体の内径部分を管体周面と交差する方向に分離離隔して、第1の内径カバー体と、第2の内径カバー体とを形成し、それぞれの対向する端部を係合接続自在に構成すると共に、
前記第1、第2の内径カバー体のうち一方の内径カバー体は、
その端部を内方へ折曲して形成した一次折曲部と、この一次折曲部からの延長部分を中途で外方へ折返して、同一次折曲部と対面させて形成した二次折曲部と、この二次折曲部と前記一次折曲部との間に形成された略V字状溝部と、前記二次折曲部からの延長部分を内方へ折曲して形成した係合受歯とを備え、
他方の内径カバー体は、その端部において、前記係合受歯と係合自在に形成された係合歯を備えた、
管体の屈曲部保護カバー。」の点で一致し、以下の点で相違している。
〔相違点A〕
本件発明1は、「一次折曲部の側端縁を、内径カバー体の側端縁と略テーパー状に対向させて幅方向において内方へ位置させると共に、二次折曲部の側端縁を、一次折曲部の側端縁と略テーパー状に対向させて幅方向においてさらに内方に位置させることで、前記第1の内径カバー体と前記第2の内径カバー体とを係合接続したときに形成される係合接続部分の厚みを、その中央部から側端縁部に向かって漸次的に薄くなるように構成することにより、その側端縁部を前記管体の内径面に密着させた状態で管体を内装するべく構成した」ものであるのに対し、甲3発明は、そのように特定されていない点。

(1-2)判断
上記相違点Aに係る本件発明1の構成は、上記「2-2 ア」で述べた相違点2に係る本件発明1の「一次折曲部の側端縁を、内径カバー体の側端縁と略テーパー状に対向させて幅方向において内方へ位置させると共に、二次折曲部の側端縁を、一次折曲部の側端縁と略テーパー状に対向させて幅方向においてさらに内方に位置させることで、前記第1の内径カバー体と前記第2の内径カバー体とを係合接続したときに形成される係合接続部分の厚みを、その中央部から側端縁部に向かって漸次的に薄くなるように構成することにより、その側端縁部を前記管体の内径面に密着させた状態で管体を内装するべく構成した」との構成と実質的に同様であり、かかる構成が甲第4?8号証に記載された技術事項(周知技術)を含めて検討しても容易想到でないことは、上記「2-3-1(1)(1-2)イ(イ)(ウ)」で述べたとおりである。
したがって、本件発明1は、上述した理由と同様の理由により、甲3発明及び甲第4?8号証に記載された技術事項(周知技術)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。

(2)本件発明2に対して
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに減縮したものであるから、本件発明1と同様に、甲3発明及び甲第4?8号証に記載された技術事項(周知技術)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。

2-3-4 小括
以上のとおり、本件発明1?3に係る特許は、無効理由3によって無効とすべきものではない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由1?3及び提出した証拠方法によっては、本件発明1?3に係る特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体の屈曲部の外径周面を覆う外径カバー体と、管体の屈曲部の内径周面を覆う内径カバー体とを一体に連接して構成した、弾性素材からなる管体の屈曲部保護カバーにおいて、
前記内径カバー体の内径部分を管体周面と交差する方向に分離離隔して、第1の内径カバー体と、第2の内径カバー体とを形成し、それぞれの対向する端部を係合接続自在に構成すると共に、
前記第1、第2の内径カバー体のうち一方の内径カバー体は、
その端部を内方へ折曲して形成した一次折曲部と、この一次折曲部からの延長部分を中途で外方へ折返して、同一次折曲部と対面させて形成した二次折曲部と、この二次折曲部と前記一次折曲部との間に形成された略V字状溝部と、前記二次折曲部からの延長部分を内方へ折曲して形成した係合受歯とを備え、
他方の内径カバー体は、その端部において、前記係合受歯と係合自在に形成された係合歯を備え、
一次折曲部の側端縁を、内径カバー体の側端縁と略テーパー状に対向させて幅方向において内方へ位置させると共に、二次折曲部の側端縁を、一次折曲部の側端縁と略テーパー状に対向させて幅方向においてさらに内方に位置させることで、前記第1の内径カバー体と前記第2の内径カバー体とを係合接続したときに形成される係合接続部分の厚みを、その中央部から側端縁部に向かって漸次的に薄くなるように構成することにより、その側端縁部を前記管体の内径面に密着させた状態で管体を内装するべく構成したことを特徴とする管体の屈曲部保護カバー。
【請求項2】
前記一方の内径カバー体に形成された前記略V字状溝部中に前記他方の内径カバー体の端部を嵌入した際に、前記係合受歯と前記係合歯とが係合して、前記第1、第2の内径カバー体の対向する端部が接続されて両内径カバー体が一体となるべく構成したことを特徴とする請求項1に記載の管体の屈曲部保護カバー。
【請求項3】
前記内径カバー体は、前記係合受歯及び前記係合歯の少なくとも一方を、対向する端部から互いに離隔する方向へ連続して複数段に備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の管体の屈曲部保護カバー。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2017-09-08 
結審通知日 2017-09-12 
審決日 2017-09-26 
出願番号 特願2006-275665(P2006-275665)
審決分類 P 1 113・ 121- YAA (F16L)
P 1 113・ 113- YAA (F16L)
P 1 113・ 537- YAA (F16L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 大輔  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
氏原 康宏
登録日 2011-07-22 
登録番号 特許第4787121号(P4787121)
発明の名称 管体の屈曲部保護カバー  
代理人 長竹 信幸  
代理人 小林 元治  
代理人 大坪 勤  
代理人 井手 大展  
代理人 大坪 勤  
代理人 中谷 健二  
代理人 小林 元治  
代理人 中谷 健二  
代理人 神田 秀斗  
代理人 井手 大展  
代理人 保立 浩一  
代理人 長竹 信幸  

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