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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  D01D
審判 全部無効 2項進歩性  D01D
管理番号 1343273
審判番号 無効2017-800091  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-07-11 
確定日 2018-07-30 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5946569号発明「メルトブロー用口金及び極細繊維製造装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5946569号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?6〕について訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件に係る主な手続の経緯を以下に示す。
平成27年 7月 3日 本件出願(特願2015-134059号
(優先権主張番号特願2015-84742号
優先日平成27年4月17日))
平成28年 6月10日 設定登録(特許第5946569号(以下
「本件特許」という。))
平成29年 7月11日 本件審判請求
平成29年10月27日 答弁書の提出、訂正の請求
平成29年12月25日 審理事項通知
平成30年 2月 2日 請求人・被請求人口頭審理陳述要領書(以下
「請求人要領書(1)」等という。)
平成30年 2月13日 審理事項通知
平成30年 2月26日 請求人・被請求人口頭審理陳述要領書(以下
「請求人要領書(2)」等という。)
平成30年 2月26日 被請求人手続補正書
平成30年 3月 2日 被請求人口頭審理陳述要領書(以下「被請求人
要領書(3)という。」)
平成30年 3月 2日 第1回口頭審理

以下、「審判請求書」を「請求書」と、「甲第1号証」等を「甲1」等と略記する。また、「第1回口頭審理」の調書を単に「調書」という。

第2 当事者の主張
1.請求人の主張及び証拠方法
請求人は、「特許第5946569号の特許を無効とする」、「審判請求の費用は被請求人の負担とする」との審決を求めており、請求人の主張の概要、証拠方法は以下のとおりである。
(1)訂正の請求について
ア.願書に添付した明細書、特許請求の範囲には、「液ノズル」と「熱風ノズル」とが「対をなすように設けられ」とした明文の記載はなく、その示唆もない。また、図面からも、そのような発明が一義的に導き出せるものではないから、新規事項を新たな発明として記述するものであり、訂正は認められるべきではない。(請求人要領書(1)9頁17?10頁8行)

イ.訂正後の請求項1では、「液ノズル」と「熱風ノズル」の数が同数であるとの規定はされていないが故に、対をなしていない「液ノズル」或いは「熱風ノズル」の存在を含み得る訂正である。そのため、訂正前は、全ての「液ノズル」及び「熱風ノズル」が、「それぞれ一定の断面形状を有する柱状中空体であり、互いに近接し」、「液ノズルの中心軸と熱風ノズルの中心軸は同一平面上に存在するとともに」、「液ノズルの中心軸の延長線と熱風ノズルの中心軸の延長線が口金下面の下方側において交差するように配置される」と規定されていたものが、対をなしていない「液ノズル」或いは「熱風ノズル」については、そのような規定はされなくなったため、当該規定を満たさない「液ノズル」及び「熱風ノズル」までをも特許請求の範囲に含まれるものとなったから、このような訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張するものである。(請求人要領書(1)10頁下から12行?12頁末行)

(2)無効理由について
ア.主張する無効理由は、以下の無効理由1及び2であり、これらのみである。(請求書「7(4)」、調書の「請求人」の欄の「3」)
(ア)無効理由1
本件特許の請求項1、3、5及び6に係る発明は、甲1発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものである。また、仮に甲1発明との間に実質的な相違点があるとしても、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものである。
本件特許の請求項2に係る発明は、甲1発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものである。
本件特許の請求項4に係る発明は、甲1発明及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものである。
よって、本件特許の請求項1?6に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(イ)無効理由2
本件特許の請求項1、5及び6に係る発明は、甲5発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものである。また、仮に甲5発明との間に実質的な相違点があるとしても、甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものである。
よって、本件特許の請求項1、5及び6に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

イ.無効理由1及び無効理由2における相違点について
(ア)本件特許の請求項1に係る発明の「1箇所の前記液ノズルに対して1箇所の前記熱風ノズルが対をなすように設けられ」とは、「1箇所の前記液ノズル」に対して「1箇所の前記熱風ノズル」が「対をなすように設けられ」、さらに、甲1や甲5に記載されているような、対をなしていない「他の箇所の液ノズル」が設けられているものを含むものであり、その点で本件特許の請求項1に係る発明と甲1発明あるいは甲5発明との間に相違はない。(請求人要領書(1)18頁16行?19頁14行)
(イ)「1箇所の液ノズル」に対して「1箇所の熱風ノズル」を「対をなすように設ける」ことは、本件特許の技術分野では新規の技術ではなく、例えば、甲4においても、「溶融物孔6」(「液ノズル」に対応)と、それを包囲する「開口14」(「熱風ノズル」に対応)の対により構成される多数の吹き出しノズル16が開示されており、このように「1箇所の液ノズル」と「1箇所の熱風ノズル」を対に配置する周知技術を甲1発明に適用して本件特許の請求項1に係る発明を構成することは、当業者にとっては、何ら困難性はない。
また、「1箇所の液ノズル」に対して「1箇所の熱風ノズル」を「対をなすように設ける」ことは周知技術であり、甲4以外にも、甲7、甲8及び甲12に開示されている。(請求人要領書(1)19頁下から6行?20頁7行、請求人要領書(2)8頁6?24行)
(ウ)液吐出ノズルとガス吐出ノズルが「平行配置」された甲7及び甲8記載の発明を検討する際に、中心線が「交差する配置」とされた構成をも十分に検討した上で、「平行配置」の構成を発明としているものであり、同じ紡糸用の口金に関する発明として、甲7及び甲8に記載された「液ノズルと熱風ノズルを対に配置する」という周知技術を、甲1発明或いは甲5発明のノズル配置に適用することは、当業者であればトライすべき事項であり、容易に想到できるものである。(請求人要領書(2)6頁25行?7頁3行)

(3)証拠方法
甲1:特開昭61-113809号公報
甲2:米国特許第4818464号明細書
甲3:特開2011-132654号公報
甲4:特開平4-228606号公報
甲5:特開2013-227703号公報
甲6:特許第5946565号公報
甲7:特開2011-111686号公報
甲8:特開2010-185153号公報
甲9:特開2011-132654号公報
甲10:特表2005-520068号公報
甲11:特開昭58-88136号公報
甲12:特開2011-168928号公報

2.被請求人の主張及び証拠方法
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求めており、被請求人の主張の概要、証拠方法は以下のとおりである。
(1)訂正の請求について
ア.(ア)訂正事項1、2は、いずれも、図1?9に示されるメルトブロー用口金及び図10、図11に示される極細繊維製造装置、並びに、明細書記載の段落【0010】?【0046】に記載されている第1の実施形態から第6の実施形態に係るメルトブロー用口金及び極細繊維製造装置に基づいて導き出される構成である。(訂正請求書6頁10?18行、7頁11?19行、被請求人要領書(1)3頁3行?7頁下から3行)
(イ)「対」とは「二つそろって一組をなすもの」を意味することから(乙1)、訂正事項1、2の「1箇所の前記液ノズルに対して1箇所の前記熱風ノズルが対をなすように設けられ、」の「対をなす」とは、「1箇所の前記液ノズルに対して1箇所の前記熱風ノズルがそろって一組をなす」という意味である。
ここでの「一組」とは、本件特許の請求項1に係る発明のメルトブロー用口金が、液ノズルから吐出される溶融樹脂に熱風ノズルから熱風を吹き出して繊維状に延伸させるものであるから、溶融樹脂を吐出する液ノズルと、そこから吐出される溶融樹脂に熱風を吹き出すという関係にある熱風ノズルとからなる組であることを意味する。(被請求人要領書(1)2頁16?24行)

イ.訂正前の請求項1に係る発明は、「1箇所以上の液ノズル」と「1箇所以上の熱風ノズル」を備えることを特定している。
これに対して、訂正後の請求項1は、「1箇所の前記液ノズルに対して1箇所の前記熱風ノズルが対をなすように設けられ、」との記載により、訂正後の請求項1に係る発明における「1箇所以上の液ノズル」と「1箇所以上の熱風ノズル」の配置を具体的に特定し、限定するものである。(訂正請求書3頁末行?4頁6行)

(2)請求人の主張する無効理由1及び無効理由2における相違点について
ア.甲1発明のように、2箇所あるいは複数箇所の液ノズル(熱可塑性材料押出し開口)に対して1箇所の熱風ノズル(高速度気体送出ノズル)が配置された構成では、1箇所の熱風ノズルから吹き出す熱風の一部が、液ノズルから吐出された溶融樹脂のどれにも当たらず、無駄なものとなるが、本件特許の請求項1に係る発明は、「1箇所の前記液ノズルに対して1箇所の前記熱風ノズルが対をなすように設けられ」ていることで、甲1発明と同様に液ノズルを2箇所以上備える構成において、お互いに一定の距離をあけて離間している各溶融樹脂に熱風ノズルから吹き出す熱風を当てる際、これらの溶融樹脂に対して個別の熱風ノズルから吹き出す熱風を当てることができる。
そのため、本件特許の請求項1に係る発明は、2箇所の液ノズルから吐出される各溶融樹脂の間のスペースに向かう無駄な熱風を生じさせることなく、すべての溶融樹脂に熱風を当てることが可能である。(被請求人要領書(1)10頁10?21行)

イ.甲7及び甲8における「これら中心軸が交差又はねじれの位置にあると、加熱ガス及び随伴気流による剪断力が作用しないか、作用したとしても不均一であることから、安定して繊維を紡糸することができない。」という記載は、両ノズルの中心線が「平行配置」である甲7及び甲8に記載の技術を、両ノズルの中心線が「交差する配置」である甲1発明へ適用することの明確な阻害要因となる。
このような明確な阻害要因が存在する以上、両ノズルの中心線が「交差する配置」である甲1発明に対し、甲7及び甲8に記載された技術(両ノズルの中心線が「平行配置」である技術)を適用することが、当業者にとって容易に想到し得るとすることはできない。(被請求人要領書(3)6頁3?12行)

(3)証拠方法
乙1、乙1-1:新村出編、「広辞苑第6版」、株式会社岩波書店、2008年1月11日第6版第1刷、1850頁
乙2、乙2-1:新村出編、「広辞苑第6版」、株式会社岩波書店、2008年1月11日第6版第1刷、1813頁
乙3、乙3-1:新村出編、「広辞苑第6版」、株式会社岩波書店、2008年1月11日第6版第1刷、1668頁
乙4、乙4-1:新村出編、「広辞苑第6版」、株式会社岩波書店、2008年1月11日第6版第1刷、178頁

第3 訂正の請求について
1.訂正の内容
本件特許に係る訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)は、「特許第5946569号の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?6について訂正する」ことを求めるものであり、その訂正の内容は、訂正箇所を下線を付して示すと、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「加熱した溶融樹脂を吐出できる1箇所以上の液ノズルと、前記液ノズルから吐出される溶融樹脂に熱風を吹き出して繊維状に延伸する1箇所以上の熱風ノズルを備えるメルトブロー用口金であって、
前記液ノズルと前記熱風ノズルは、それぞれ一定の断面形状を有する柱状中空体であり、互いに近接し、
前記液ノズルの中心軸と前記熱風ノズルの中心軸は同一平面上に存在するとともに、前記液ノズルの中心軸の延長線と前記熱風ノズルの中心軸の延長線が前記口金下面の下方側において交差するように配置されることを特徴とするメルトブロー用口金。」とあるのを、
「加熱した溶融樹脂を吐出できる1箇所以上の液ノズルと、前記液ノズルから吐出される溶融樹脂に熱風を吹き出して繊維状に延伸する1箇所以上の熱風ノズルを備えるメルトブロー用口金であって、
1箇所の前記液ノズルに対して1箇所の前記熱風ノズルが対をなすように設けられ、
前記対をなす前記液ノズルと前記熱風ノズルは、それぞれ一定の断面形状を有する柱状中空体であり、互いに近接し、
前記対をなす前記液ノズルの中心軸と前記熱風ノズルの中心軸は同一平面上に存在するとともに、前記対をなす前記液ノズルの中心軸の延長線と前記熱風ノズルの中心軸の延長線が前記口金下面の下方側において交差するように配置されることを特徴とするメルトブロー用口金。」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2?6についても、同様に訂正する。)

(2)訂正事項2
願書に添付した明細書の段落【0007】に
「上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、加熱した溶融樹脂を吐出できる1箇所以上の液ノズルと、液ノズルから吐出される溶融樹脂に熱風を吹き出して繊維状に延伸する1箇所以上の熱風ノズルを備えるメルトブロー用口金であって、液ノズルと熱風ノズルは、それぞれ一定の断面形状を有する柱状中空体であり、互いに近接し、液ノズルの中心軸と熱風ノズルの中心軸は同一平面上に存在するとともに、液ノズルの中心軸の延長線と熱風ノズルの中心軸の延長線が口金下面の下方側において交差するように配置されることを特徴とするメルトブロー用口金である。このように構成すると、少ない熱風ガスの量であっても安定して溶融樹脂を微細な繊維に紡糸することができる。また、口金内の吐出ノズルと熱風ノズルの配置の自由度が増すこととなる。」とあるのを、
「上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、加熱した溶融樹脂を吐出できる1箇所以上の液ノズルと、前記液ノズルから吐出される溶融樹脂に熱風を吹き出して繊維状に延伸する1箇所以上の熱風ノズルを備えるメルトブロー用口金であって、1箇所の前記液ノズルに対して1箇所の前記熱風ノズルが対をなすように設けられ、前記対をなす前記液ノズルと前記熱風ノズルは、それぞれ一定の断面形状を有する柱状中空体であり、互いに近接し、前記対をなす前記液ノズルの中心軸と前記熱風ノズルの中心軸は同一平面上に存在するとともに、前記対をなす前記液ノズルの中心軸の延長線と前記熱風ノズルの中心軸の延長線が口金下面の下方側において交差するように配置されることを特徴とするメルトブロー用口金である。このように構成すると、少ない熱風ガスの量であっても安定して溶融樹脂を微細な繊維に紡糸することができる。また、口金内の吐出ノズルと熱風ノズルの配置の自由度が増すこととなる。」に訂正する。

2.訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア.訂正前の請求項1では、メルトブロー用口金が備える「1箇所以上の液ノズル」と「1箇所以上の熱風ノズル」について、「前記液ノズルと前記熱風ノズルは、それぞれ一定の断面形状を有する柱状中空体であり、互いに近接し、前記液ノズルの中心軸と前記熱風ノズルの中心軸は同一平面上に存在するとともに、前記液ノズルの中心軸の延長線と前記熱風ノズルの中心軸の延長線が前記口金下面の下方側において交差するように配置される」と特定されていたものを、訂正によりさらに、「1箇所の液ノズル」に対して「1箇所の熱風ノズル」が、「対をなすよう」に設けられていると限定するものであるから、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ.(ア)本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書」という。)には、第1実施形態として、図1及び図2に、液ノズル22と熱風ノズル24が、それぞれ1箇所設けられることが示され、段落【0011】に、「液ノズル22と熱風ノズル24は、それぞれ一定の断面を有する柱状中空体であり、互いに近接して配置されている。さらに、液ノズル22の中心軸O_(r)と熱風ノズル24の中心軸O_(g)が同一平面上に存在するとともに、口金20において中心軸O_(r)が傾斜し、中心軸O_(r)の延長線と中心軸O_(g)の延長線が口金下面20aの下方側の点Xにおいて角度θ_(1)で交差するように構成されている。これにより、熱風ノズル24から吹き出される熱風ガスが少ない量であっても、液ノズル22から吐出された溶融樹脂が熱風ノズル24から吹き出される熱風ガスにより延伸され極細な繊維が得られる。」と記載されている。
また、第2実施形態に係る図3には、液ノズル32と熱風ノズル34が、第3実施形態に係る図4及び図5には、液ノズル42と熱風ノズル44が、それぞれ1箇所設けられ、互いに近接し、吐出方向が口金下面の下方で交差するように設けられることが示されている。
さらに、第4実施形態に係る図6には、「溶融樹脂を吐出する液ノズル52が直径D_(1)を有する円周上に多数設けられている。さらに、それぞれの液ノズル52には、ここでは図示していないが熱風を吹き出す熱風ノズルが近接し、熱風ノズルの吹き出し方向と液ノズル52の吐出方向が口金下面50aの下方で交差するように設けられている」(段落【0027】)こと、第5実施形態に係る図7には、「溶融樹脂を吐出する液ノズル62が直径D_(1)を有する円周上に多数設けられている。さらに、多数の熱風ノズル64は、液ノズル62が配置されている円と同じ中心を有する直径D_(2)の円周上にそれぞれの液ノズル62に近接して配置されている」(段落【0031】)こと、第6実施形態に係る図9には、「溶融樹脂を吐出する液ノズル72が直線l_(1)上に多数設けられている。さらに、それぞれの液ノズル72には、熱風を吹き出す熱風ノズル74が配置されている」(段落【0038】)ことが、それぞれ示され、第4?第6実施形態をとることにより、「それぞれの熱風ノズルから吹き出される熱風ガスが少ない量であっても、それぞれの液ノズルから吐出された溶融樹脂が吹き出す熱風ガスにより延伸され微細な繊維が多数得られるので生産性に優れている」(段落【0027】、【0032】、【0038】)とされている。
(イ)上記のように、本件特許明細書に記載された実施形態のすべては、「液ノズル」と「熱風ノズル」は、「それぞれ一定の断面形状を有する柱状中空体であり、互いに近接し」、「液ノズルの中心軸と熱風ノズルの中心軸が同一平面上に存在するとともに、液ノズルの中心軸の延長線と熱風ノズルの中心軸の延長線が口金下面の下方側において交差する」ように配置され、かつ、「それぞれの熱風ノズルから吹き出される熱風ガスが少ない量であっても、それぞれの液ノズルから吐出された溶融樹脂が吹き出す熱風ガスにより延伸され」るように配置されているものと理解できる。それぞれの「液ノズル」に、それぞれの「熱風ノズル」が配置されるのであるから、このことは、「1箇所の液ノズル」と「1箇所の熱風ノズル」の組により、極細な繊維が形成されることを意味する。
そして、このような1箇所の液ノズルと1箇所の熱風ノズルで一組となす配置関係をとることにより、「熱風ガスが少ない量であっても」、「微細な繊維が多数得られるので生産性に優れ」るとの作用効果を奏するのであり、これ以外の配置関係をとるものは、本件特許明細書中には記載されていない。
(ウ)そうすると、本件特許明細書の記載全体からみて、メルトブロー用口金が備える「1箇所以上の液ノズル」と「1箇所以上の熱風ノズル」の配置関係は、液ノズルと熱風ノズルが「それぞれ一定の断面形状を有する柱状中空体であり、互いに近接し」、「液ノズルの中心軸と熱風ノズルの中心軸が同一平面上に存在するとともに、液ノズルの中心軸の延長線と熱風ノズルの中心軸の延長線が口金下面の下方側において交差する」ように配置されるものであるとともに、1箇所の液ノズルと1箇所の熱風ノズルが、そろって一組をなすように配置されているものといえる。そして、一般に、「二つそろって一組をなすもの」を、「対」という(乙1)ことからすれば、上記の配置関係は、「1箇所の液ノズル」と「1箇所の熱風ノズル」が「対をなすよう」な配置関係であるともいえる。
よって、本件特許明細書には、メルトブロー用口金が備える「1箇所以上の液ノズル」と「1箇所以上の熱風ノズル」について、「前記液ノズルと前記熱風ノズルは、それぞれ一定の断面形状を有する柱状中空体であり、互いに近接し、前記液ノズルの中心軸と前記熱風ノズルの中心軸は同一平面上に存在するとともに、前記液ノズルの中心軸の延長線と前記熱風ノズルの中心軸の延長線が前記口金下面の下方側において交差するように配置される」とともに、「1箇所の液ノズル」と「1箇所の熱風ノズル」が「対をなすよう」な配置関係であるものが記載されているから、訂正事項1は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ.訂正事項1は、メルトブロー用口金が備える「1箇所以上の液ノズル」と「1箇所以上の熱風ノズル」について、さらに、「対をなすよう」な配置関係であると限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正事項1に係る特許請求の範囲の記載の訂正に伴い、明細書の記載の整合を図るものであり、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項2は、上記訂正事項1と同様に、本件特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合し、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(3)一群の請求項について
訂正前の請求項2?6は、訂正前の請求項1を、直接又は間接に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正請求は、特許法第134条の2第3項に規定する、一群の請求項ごとにされたものである。
また、訂正事項2による本件特許明細書の訂正に係る請求項は、請求項1、及びこの請求項1を直接又は間接に引用する請求項2?6であり、本件訂正請求は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第4項に規定する、一群の請求項の全てについて行われたものである

(4)請求人の主張について
ア.請求人は、本件訂正請求について、「1箇所の前記液ノズルに対して1箇所の前記熱風ノズルが対をなすように設けられ」とする訂正は、本件特許明細書に明文の記載はなく、その示唆もないから、新規事項を新たな発明として記述するものであり、訂正は認められるべきではない旨主張する。(前記「第2 1.(1)ア.」)
しかし、前記「第3 2.(1)イ.」のとおり、本件特許明細書全体からみれば、メルトブロー用口金が備える「1箇所以上の液ノズル」と「1箇所以上の熱風ノズル」について、1箇所の液ノズルと1箇所の熱風ノズルが、そろって一組をなすような、すなわち、1箇所の液ノズルと1箇所の熱風ノズルが「対をなすよう」な配置関係で設けられることは、本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものといえるから、本件訂正請求は、請求人が主張するような「新規事項を新たな発明として記述するもの」ではない。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

イ.また、請求人は、訂正後の請求項1は、対をなしていない「液ノズル」或いは「熱風ノズル」の存在を含み得るところ、訂正前には全ての「液ノズル」及び「熱風ノズル」について、「それぞれ一定の断面形状を有する柱状中空体であり、互いに近接し、前記液ノズルの中心軸と前記熱風ノズルの中心軸は同一平面上に存在するとともに、前記液ノズルの中心軸の延長線と前記熱風ノズルの中心軸の延長線が前記口金下面の下方側において交差するように配置」されていたが、訂正後は、対をなしていない「液ノズル」或いは「熱風ノズル」については、そのような配置がされていなくてもよいものとなり、それは実質上特許請求の範囲を拡張するものであり、訂正は認められるべきではない旨主張する。(前記「第2 1.(1)イ.」)
しかし、訂正後の請求項1の「1箇所の前記液ノズルに対して1箇所の前記熱風ノズルが対をなすように設けられ」との記載の「前記液ノズル」と「前記熱風ノズル」の「前記」とは、それらより前に記載された「1箇所以上の液ノズル」と「1箇所以上の熱風ノズル」を指すことが明らかである上、対をなさない液ノズル又は熱風ノズルについては何ら特定がないことからすれば、「1箇所の前記液ノズルに対して1箇所の前記熱風ノズルが対をなすように設けられ」との記載は、メルトブロー用口金が備える「1箇所以上の液ノズル」と「1箇所以上の熱風ノズル」の全ての液ノズルと熱風ノズルが、「1箇所の液ノズル」に対して「1箇所の熱風ノズル」が「対をなすよう」な配置関係であることを意味するものと理解するのが相当である。
そして、この理解は、前記「第3 2.(1)イ.」で述べたように、本件特許明細書に、「1箇所の液ノズル」と「1箇所の熱風ノズル」が、「対をなすよう」な配置関係のもののみ記載され、それ以外の配置関係のものは記載されていないこととも整合する。また、本件特許明細書には、それぞれの熱風ノズルから吹き出される熱風ガスが少ない量であっても、それぞれの液ノズルから吐出された溶融樹脂が吹き出す熱風ガスにより延伸され、微細な繊維が多数得られ生産性に優れる旨(段落【0027】等)記載され、1箇所の液ノズルに対して1箇所の熱風ノズルを対することによって、少ない熱風ガスであっても生産性良く微細な繊維を得られるとの効果を奏するものとされており、この効果についての記載も、上記理解と矛盾しない。
そうすると、訂正後の請求項1は、メルトブロー用口金が備える「1箇所以上の液ノズル」と「1箇所以上の熱風ノズル」の配置関係について記載するものであり、訂正前と変わるものではないから、請求人が主張する、「1箇所以上の液ノズル」と「1箇所以上の熱風ノズル」のうち、対をなしていないものが訂正により含まれるようになったということはなく、「実質上特許請求の範囲を拡張する」ものではない。
よって、請求人の上記主張は当を得たものであるとはいえない。

3.訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第134条の2第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第3項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?6〕について訂正を認める。

第4 無効理由についての当審の判断
1.請求項1?6に係る発明
本件訂正請求が認められるから、本件特許の請求項1?6に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
加熱した溶融樹脂を吐出できる1箇所以上の液ノズルと、前記液ノズルから吐出される溶融樹脂に熱風を吹き出して繊維状に延伸する1箇所以上の熱風ノズルを備えるメルトブロー用口金であって、
1箇所の前記液ノズルに対して1箇所の前記熱風ノズルが対をなすように設けられ、
前記対をなす前記液ノズルと前記熱風ノズルは、それぞれ一定の断面形状を有する柱状中空体であり、互いに近接し、
前記対をなす前記液ノズルの中心軸と前記熱風ノズルの中心軸は同一平面上に存在するとともに、前記対をなす前記液ノズルの中心軸の延長線と前記熱風ノズルの中心軸の延長線が前記口金下面の下方側において交差するように配置されることを特徴とするメルトブロー用口金。
【請求項2】
前記熱風ノズルの吹き出し部の少なくとも一部がテーパー形状をなしていることを特徴とする、請求項1に記載のメルトブロー用口金。
【請求項3】
複数の前記液ノズルが直径D_(1)の円周上に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のメルトブロー用口金。
【請求項4】
複数の前記熱風ノズルが、前記液ノズルが配置されている円と同じ中心を有する直径D_(2)の円周上に配置されているとともに、D_(2)はD_(1)よりも小さいか又は大きいことを特徴とする請求項3に記載のメルトブロー用口金。
【請求項5】
複数の前記液ノズルが直線上に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のメルトブロー用口金。
【請求項6】
請求項1?請求項5のいずれかに記載のメルトブロー用口金を備え、
前記液ノズルより溶融樹脂を吐出するとともに、吐出された溶融樹脂に対して前記熱風ノズルから熱風を吹き出して繊維状に延伸された樹脂繊維によって微細な繊維を製造することを特徴とする極細繊維製造装置。」

2.無効理由1について
(1)甲1の記載事項と甲1に記載された発明
ア.甲1の記載事項
(ア)「2.特許請求の範囲
(1)ダイヘッドを有する熱可塑性材料押し出し機構において、前記ダイヘッドが、
剪断層を有する少くとも一個のガス噴流を連続的に放出するようになっており、中央部位に配置された高速ガス流送出手段と、
前記熱可塑性材料のための少くとも一個の室と、
熱可塑性材料の送出手段であって、前記高速ガス流送出手段の近くに、且つこれを少くとも部分的に取り囲むように設けられ、押し出された溶融熱可塑性材料を前記ガス噴流に向けて方向づけ、それによって押し出された熱可塑性材料を前記ガス噴流の剪断層中に導入せしめるようになった前記熱可塑性材料送出手段と、
前記少くともひとつの室と前記熱可塑性材料送出手段とを連通せしめる手段とを有していることを特徴とする熱可塑性材料押し出し機構。」(特許請求の範囲請求項1)
(イ)「(24)熱可塑性材料の繊維を製造する方法において、
(a)中央に位置し且つ剪断層を有する少くともひとつの高速気体噴流を形成する段階と、
(b)前記高速気体噴流のうちの少くともひとつに近接して設けられ且つこれを少くとも部分的に取り囲むように配置された熱可塑性材料送出手段から溶融熱可塑性材料の少くともひとつの流れを押し出す段階と、
(c)前記熱可塑性材料の少くともひとつの流れを前記少くともひとつの高速気体噴流と奏合せしめて前記熱可塑性材料を繊維状となし、もって熱可塑性材料の繊維の流れを形成する段階とを有することを特徴とする、熱可塑性材料の繊維を形成する方法。」(特許請求の範囲請求項24)
(ウ)「3.発明の詳細な説明
発明の分野
本発明は繊維及び不織マットを製造する押出し工程及び装置に係わり、特に溶融状態で出口ノズルより押出された熱可塑性材料が、高速度気体送出ノズルより生じた気体噴流の剪断層に併合するようにして押出されるメルトブロー処理法に係わる。」(4頁右下欄1?8行)
(エ)「本発明の一実施例が第1図に示されている。それによれば、ダイヘッドすなわち押出しヘッド10には、高分子の、通常熱可塑性の材料を容れるための室12が設けられている。熱可塑性材料は、供給ホッパーや押出スクリューのような供給手段すなわち装置36によって、加圧されて室12に供給され得る。熱可塑性材料は、室12を囲むか、ホッパーそしてまたはホッパーと室との間を囲むかするように適切に配置された一つ以上の加熱器39によって、流体あるいは溶融状態になされ得る。第1図及び第3図aから第3図fに示されるように室12は熱可塑性材料の溶融状態の流れを室12から、複数の熱可塑性材料押出し出口または開口またはオリフィス18および20、あるいはこれに類する単一の開口19へと通すための流出通路14及び16が設けられる。単一の開口19は好ましくは円形のダイ先端内に位置し、通常不活性な気体、たとえば空気を高速度でノズル22及びこれに類する開口をもって、不活性な気体の供給源23から送出するための手段を中央に置き、これを取囲むように配列される。熱可塑性材料のように、高速度ノズルから出る空気は加熱器(図示せず)によって加熱され得る。この加熱器は、不活性な気体の供給源23またはノズル22自身を取り囲むか、あるいはこれらの内部に位置するように適切に配置される。」(6頁左上欄10行?右上欄15行)
(オ)「本発明によれば、高速度気体送出手段すなわち空気ノズル22を含む開口を取り囲む単一のまたはそれに近い数の熱可塑性材料押出し開口19、あるいは高速度気体送出手段すなわち空気ノズル22を含む開口の回りに配置される少なくとも二つ以上の熱可塑性材料押出し開口18及び20が存在し得る。しかしながらメルトブローされるダイ先端に一層共通なものとして、高速度気体送出手段22が長く伸ばされた開口すなわちスロットの形をとり、一連のまたは個々の熱可塑性材料押出し開口またはスリット18及び20は、第3図a及びbに示されるように気体送出手段22の両側に列を作るように配置される。開口18及び20は、それらの長さ方向の軸が高速度気体送出ノズルの長さ方向の軸に対して約30°以上約90°未満の交角をなすように配列される。第2図に示される実施例においてこの角度は典型的には60°である。」(6頁左下欄7行?右下欄4行)
(カ)「底面より見られた、本発明による中央に配置されたガス噴射ノズル及びそれを取り囲む熱可塑性樹脂押出口の構成のいくつかが第3a-f図に示される。第3a図で示される1つの好適な構成においては、2連の孔の列18と20が列をなして、直線の細長い開口すなわちスロットとして形成されるノズル22に実質的に平行に、またノズル22の対応する両側に配置される。列18の開口のそれぞれは、列20の相応する孔にそれぞれ対応して配置されてもよい。もしくは、2列の孔は他の列の孔に対してずれた、または斜めの関係になってもよい。第3b図で描かれる構成では、2つの熱可塑性樹脂押出口18と20は、細長い直線状の気体ノズルすなわちスロット22に平行に配置されまたノズルの向かい合う両側に配置され、細長い直線状の開口またはスリットの形状を有する。第3c図で示される構成では、不活性の気体は、高分子材料が流出する細長いスリット19の内に配置される毛管ガスノズル22から発せられる。ノズル22はここではスリットの中心を通る面に沿って直線状にまたスリットの細長い端部に平行に配置されるが、互い違いになった、すなわちジグザクに空気ノズルが配置されるような他の構成も可能である。」(6頁右下欄5行?7頁左上欄8行)
(キ)「第3d図に図示される押出構成においては、円形の断面を有する不活性な気体用ノズル22は、円筒形の開口の内表面と不活性な気体用ノズルの外表面が環状の押出開口19を形成するように円筒形の開口の内に中心を同じくして配置される。この態様及び第3e図に示される構成では、中央の空気ノズル22は約5.08センチ(約2インチ)までの直径を有してもよい。第3e図で示される態様には、不活性な気体用ノズルの周囲でお互いに、また不活性な気体用ノズルに対して隔置された関係に配置される複数個の熱可塑性ポリマー押出口18と19(当審注:19は20の誤記であると認める。)が設けられる。最後に、第3f図は円形の断面を有する熱可塑性樹脂押出口19の内でその中心に配置される複数個の毛管ガスノズル22を図示する。」(7頁左上欄9行?右上欄3行)
(ク)「第3a図及び第3b図に示される好適な態様においては、溶融押出物が1つもしくはそれ以上の噴流の周辺部分すなわち剪断層で最初に繊細化されそれによりフィラメントもしくは繊維が成形されこれらは混合されてダイヘッドに近接して配置される例えばロール(第8図に示す)のような成形すなわち収集のための多孔質面37もしくは移動するワイヤーに向けられそこで繊維が母材もしくはマット38を形成する。」(7頁右上欄15行?左下欄3行)
(ケ)「環状の押出口19がノズル口22の周囲に延在する第3d図に示された実施例を除いて、熱可塑性材料の押出物の少なくとも2つの流れが本発明の押出ヘッドにより形成され、これらの流れは最終的に繊細化されて細かいフィラメントもしくは不織マットの繊維を形成するので、本発明は、従来の方法及びそのために使用される装置に比較して倍以上の押出量の繊維成形の可能性を提供する。」(7頁左下欄6?13行)

イ.甲1に記載された発明
上記(ア)によれば、「ダイヘッド」は、「高速ガス流送出手段」と「熱可塑性材料送出手段」を備えており、上記(イ)によれば、当該「ダイヘッド」は、「溶融状態で出口ノズルより押出された熱可塑性材料が、高速度気体送出ノズルより生じた気体噴流の剪断層に併合するようにして押出されるメルトブロー処理法」により、「繊維及び不織マットを製造する押出し工程及び装置」に用いられるものである。
これらの「高速ガス流送出手段」と「熱可塑性材料送出手段」は、上記(オ)によれば、それぞれ「空気ノズル」と「熱可塑性樹脂押出し開口」であり、「空気ノズル」の「開口の回り」に、「少なくとも二つ以上の熱可塑性材料押出し開口」が配置される。
この「熱可塑性樹脂押出し開口」は、上記(オ)によれば、「それらの長さ方向の軸が高速度気体送出ノズルの長さ方向の軸に対して約30°以上約90°未満の交角をなすように配列され」る。
また、上記(エ)によれば、空気ノズルから出る空気は「加熱器」によって加熱される。
さらに、「空気ノズル」と「熱可塑性樹脂押出し開口」の配置について、上記(カ)には、第3a図の態様として「2連の孔の列18と20が列をなして、直線の細長い開口すなわちスロットとして形成されるノズル22に実質的に平行に、またノズル22の対応する両側に配置され」る態様が、上記(キ)には、第3d図の態様として「不活性な気体用ノズルの周囲でお互いに、また不活性な気体用ノズルに対して隔置された関係に配置される複数個の熱可塑性ポリマー押出口18と19が設けられる」態様が、それぞれ記載されている。

よって、甲1には、以下の甲1発明が記載されている。
「溶融状態で熱可塑性材料押出し開口より押出された熱可塑性材料が、空気ノズルより生じた気体噴流の剪断層に併合するようにして押出されるメルトブロー処理法により、繊維及び不織マットを製造する押出し工程及び装置に用いられる、ダイヘッドにおいて、
空気ノズルの開口の回りに、少なくとも二つ以上の熱可塑性材料押出し開口が配置され、
熱可塑性材料押出し開口は、それらの長さ方向の軸が空気ノズルの長さ方向の軸に対して約30°以上約90°未満の交角をなすように配列され、
空気ノズルから出る気体は加熱器によって加熱され、
2連の熱可塑性材料押出し開口が列をなして、直線の細長い開口すなわちスロットとして形成される空気ノズルに実質的に平行に、また空気ノズルの対応する両側に配置され、
あるいは、
空気ノズルの周囲でお互いに、また空気ノズルに対して隔置された関係に配置される複数個の熱可塑性材料押出し開口が設けられる、
ダイヘッド。」

(2)本件発明1について
ア.本件発明1と甲1発明を対比する。
(ア)甲1発明の熱可塑性材料を溶融状態で押出す複数個の「熱可塑性材料押出し開口」は、本件発明1の「加熱した溶融樹脂を吐出できる1箇所以上の液ノズル」に相当する。
(イ)甲1発明の溶融状態で熱可塑性材料押出し開口より押出された熱可塑性材料に、加熱器によって加熱された気体噴流の剪断層を併合させて、メルトブロー処理法により繊維及び不織マットを製造する「空気ノズル」は、本件発明1の「前記液ノズルから吐出される溶融樹脂に熱風を吹き出して繊維状に延伸する1箇所以上の熱風ノズル」に相当する。
(ウ)甲1発明の「ダイヘッド」は、本件発明1の「メルトブロー用口金」に相当する。
(エ)甲1発明の「熱可塑性材料押出し開口」と「空気ノズル」は、それぞれ、溶融樹脂や気体を流動させ開口へと導くように、流動方向に長い断面形状の中空の空間を有することは明らかであり、また、「熱可塑性材料押出し開口」は「空気ノズル」の開口の回りに配置されるから、「熱可塑性材料押出し開口」は、「空気ノズル」と近接して配置されるものである。
そうすると、甲1発明の「空気ノズルの開口の回りに、少なくとも二つ以上の熱可塑性材料押出し開口が配置され」ることは、本件発明1の「前記液ノズルと前記熱風ノズルは、それぞれ一定の断面形状を有する柱状中空体であり、互いに近接」することに相当する。
(オ)また、甲1発明の「熱可塑性材料押出し開口は、それらの長さ方向の軸が空気ノズルの長さ方向の軸に対して約30°以上約90°未満の交角をなすように配列され」とは、「熱可塑性材料押出し開口」と「空気ノズル」から長さ方向に延長した軸が、口金の下方で交差するものと解され、このことから、「熱可塑性材料押出し開口」と「空気ノズル」の長さ方向の軸は同一平面上に存在するものといえる。
そうすると、甲1発明の「熱可塑性材料押出し開口は、それらの長さ方向の軸が空気ノズルの長さ方向の軸に対して約30°以上約90°未満の交角をなすように配列され」ることは、本件発明1の「前記液ノズルの中心軸と前記熱風ノズルの中心軸は同一平面上に存在するとともに」、「前記液ノズルの中心軸の延長線と前記熱風ノズルの中心軸の延長線が前記口金下面の下方側において交差するように配置されること」に相当する。

イ.よって、本件発明1と甲1発明は、
「加熱した溶融樹脂を吐出できる1箇所以上の液ノズルと、液ノズルから吐出される溶融樹脂に熱風を吹き出して繊維状に延伸する1箇所の熱風ノズルを備えるメルトブロー用口金であって、
液ノズルと熱風ノズルは、それぞれ一定の断面形状を有する柱状中空体であり、互いに近接し、
液ノズルの中心軸と熱風ノズルの中心軸は同一平面上に存在するとともに、液体ノズルの中心軸の延長線と熱風ノズルの中心軸の延長線が口金下面の下方側において交差するように配置される、メルトブロー用口金」である点で一致し、以下の点で相違する。

《相違点1-1》
本件発明1が「1箇所の液ノズルに対して1箇所の熱風ノズルが対をなすように設けられ」ているのに対し、
甲1発明は「2連の熱可塑性材料押出し開口が列をなして、直線の細長い開口すなわちスロットとして形成される高速度気体送出ノズルに実質的に平行に、また高速度気体送出ノズルの対応する両側に配置され、
あるいは、
高速度気体送出ノズルの周囲でお互いに、また高速度気体送出ノズルに対して隔置された関係に配置される複数個の熱可塑性材料押出し開口が設けられる」点。

ウ.上記相違点1-1について検討する
(ア)甲1発明は、「2連の熱可塑性材料押出し開口が列をなして、直線の細長い開口すなわちスロットとして形成される空気ノズルに実質的に平行に、また空気ノズルの対応する両側に配置され、あるいは、空気ノズルの周囲でお互いに、また空気ノズルに対して隔置された関係に配置される複数個の熱可塑性材料押出し開口が設けられる」ものであり、すなわち、複数の熱可塑性材料押出し開口に対して1つの空気ノズルが対する関係である。
これに対し、本件発明1は、1箇所の液ノズルに対して1箇所の熱風ノズルを設けるものであるから、上記相違点1-1は実質的な相違点である。
(イ)そして、甲1発明により、「環状の押出口19がノズル口22の周囲に延在する第3d図に示された実施例を除いて、熱可塑性材料の押出物の少なくとも2つの流れが本発明の押出ヘッドにより形成され、これらの流れは最終的に繊細化されて細かいフィラメントもしくは不織マットの繊維を形成するので」、「従来の方法及びそのために使用される装置に比較して倍以上の押出量の繊維成形の可能性を提供する」(甲1の上記記載(ケ))ことができるとされていることからみて、甲1発明は、「倍以上の押出量の繊維成形」を行うために、1箇所の空気ノズルに対して複数の熱可塑性材料押出し開口を配置することを前提とするものであるから、それを敢えて、1箇所対1箇所の対をなす配置に換えようとする動機付けがない。
(ウ)この点について、請求人は、甲4においても、「溶融物孔6」と、それを包囲する「開口14」の対により構成される多数の吹き出しノズル16が開示されているし、甲7、甲8及び甲12にも「1箇所の液ノズル」に対して「1箇所の熱風ノズル」を「対をなすように設ける」ことが記載されており、このような「1箇所の液ノズル」と「1箇所の熱風ノズル」を対に配置する周知技術を甲1発明に適用することは、当業者にとって困難性はない旨主張する。(前記「第2 1.(2)イ.(イ)」)
しかし、甲4の吹き出しノズルは、溶融樹脂を吐出する「溶融物孔6」を、空気を吹き出す「開口14」が包囲する構造であり、この構造を本件発明1の「液ノズル」と「熱風ノズル」に適用すると、本件発明1のように「液ノズルの中心軸と熱風ノズルの中心軸は同一平面上に存在するとともに、液ノズルの中心軸の延長線と熱風ノズルの中心軸の延長線が口金下面の下方側において交差するように配置」することができなくなる。
また、甲7、甲8及び甲12のいずれも、「液吐出部」と「ガス吐出部」の吐出方向中心軸が「平行」に配置される旨記載されており、この構造は本件発明1の「液ノズルの中心軸と熱風ノズルの中心軸は同一平面上に存在するとともに、液ノズルの中心軸の延長線と熱風ノズルの中心軸の延長線が口金下面の下方側において交差するように配置」する構造とは相違し、そのまま適用できるものではない。
(エ)さらに、請求人は、甲7及び甲8の「液吐出部」と「ガス吐出部」を「平行配置」する構成の発明を検討する際に、中心線が「交差する配置」した構成をも十分に検討した上で、「平行配置」の構成を発明としているのであるから、甲7及び甲8に記載された「液ノズルと熱風ノズルを対に配置する」という周知技術の甲1発明への適用は、当業者であればトライすべき事項である旨主張する。(前記「第2 1.(2)イ.(ウ)」)
しかし、甲7の段落【0029】に、「液用柱状中空部Hlの吐出方向中心軸Alとガス用柱状中空部Hgの吐出方向中心軸Agとが平行で、吐出された紡糸液に対して1本の直線状に加熱ガス及び随伴気流を作用させることができるため、安定して繊維を紡糸することができる。例えば、円柱状の液用中空部を中空円柱状のガス中空部で覆った状態、又は円柱状のガス中空部を中空円柱状の液用中空部で覆った状態であるように、これら中心軸が一致すると、加熱ガス及び随伴気流の剪断力を1本の直線状に作用させることができず、繊維化が不十分となり、ショット、或いはビーズ(粒子形状の樹脂)が多くなる。また、これら中心軸が交差又はねじれの位置にあると、加熱ガス及び随伴気流による剪断力が作用しないか、作用したとしても不均一であることから、安定して繊維を紡糸することができない。」と記載され、甲8の段落【0043】にも同様の記載があることからすると、甲1発明への甲7及び甲8記載の周知技術の適用を検討した場合、これら甲7や甲8に記載された示唆にしたがって、「中心軸が交差」している構造から、中心軸が「平行」な構造を採用しようと試みると考える方が自然であり、「液ノズルと熱風ノズルを対に配置する」ことのみを抽出して甲1発明に適用することは妥当でない。
よって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。

エ.以上より、本件発明1は、甲1発明と、上記相違点1-1で相違するから、甲1発明ではない。また、本件発明1の相違点1-1に係る構成は、当業者が容易に想到することができたものではないから、本件発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明2及び4について
ア.本件発明2及び4は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、これらの本件発明2及び4を、甲1発明と対比すると、それぞれ、請求項2記載の構成、請求項4記載の構成のほか、上記相違点1-1で相違する。

イ.甲3の特に図2には、熱風ノズルの吹き出し部の少なくとも一部がテーパー形状をなすように構成することが記載され、甲4の特に図2、図3には、2つの同心円上に配置されているノズル群から構成された紡糸口金が記載されているものの、いずれも、本件発明1の上記相違点1-1に係る構成について記載も示唆もない。
すると、本件発明1の発明特定事項を全て含む本件発明2、あるいは、本件発明1の発明特定事項を全て含む本件発明4は、甲1発明と上記相違点1-1で相違し、この相違点に係る構成は、前記「第4 2.(2)」で述べたように、甲1発明から容易に想到することができたものではなく、甲3あるいは甲4に記載も示唆もないから、本件発明2及び4は、いずれも、甲1発明、並びに甲3及び甲4に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件発明3及び5について
ア.本件発明3及び5は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、これらの本件発明3及び5を、甲1発明と対比すると、いずれも上記相違点1-1で相違する。

イ.この相違点1-1は、前記「第4 2.(2)」で述べたように実質的な相違点であり、また、甲1発明からは容易に想到することができたものではないから、本件発明3及び5は、いずれも甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(5)本件発明6について
ア.本件発明6は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに「前記液ノズルより溶融樹脂を吐出するとともに、吐出された溶融樹脂に対して前記熱風ノズルから熱風を吹き出して繊維状に延伸された樹脂繊維によって微細な繊維を製造することを特徴とする極細繊維製造装置」であることを特定するものである。
一方、甲1には、上記甲1発明のダイヘッドを備える熱可塑性樹脂押し出し機構(以下「甲1-1発明」)が記載されている。

イ.本件発明6と、この甲1-1発明を対比すると、甲1-1発明も、成形された微細なフィラメントもしくは繊維がダイヘッドに近接して配置されるロールやワイヤーに向けられ、堆積されるように構成される(甲1の上記記載(ク))ものであり、これは、本件発明6の上記発明特定事項に相当するものといえるが、本件発明1の発明特定事項を全て含む本件発明6は、上記甲1-1発明と、上記相違点1-1で相違する。
この相違点1-1は、前記「第4 2.(2)」で述べたように実質的な相違点であり、また、甲1-1発明からは容易に想到することができたものではないから、本件発明6は甲1-1発明ではなく、また、甲1-1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない

(6)まとめ
したがって、本件発明1、3、5及び6は、甲1発明あるいは甲1-1発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、甲1発明あるいは甲1-1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反するものではない。
また、本件発明2は、甲1発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反するものではない。
また、本件発明4は、甲1発明及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反するものではない。
よって、本件発明1?6に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当するものではなく、無効理由1によっては無効とすべきではない。

3.無効理由2について
(1)甲5の記載事項及び甲5に記載された発明
ア.甲5の記載事項
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、メルトブロー法により不織布を製造する製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メルトブロー法により不織布を連続的に製造する製造装置が周知である(例えば特許文献1参照)。こうした製造装置は、熱風を生成する電気ヒータと、溶融樹脂を押し出す押出機と、樹脂通路と熱風通路とが形成されたメルトブロー部とを備えている。そして、押出機から押し出された溶融樹脂をメルトブロー部の樹脂通路を流通させてフィラメント状にして押し出すとともに、上記電気ヒータから供給される熱風をメルトブロー部の熱風通路に流通させて上記フィラメント状の溶融樹脂に吹き付けることにより、溶融樹脂が微細化されて紡出される。また、メルトブロー部の下方にはベルトコンベアやローラ等の集積部が設けられており、メルトブロー部から紡出される微細化された樹脂がこの集積部にて集積させれることで不織布が形成される。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、こうした従来の不織布製造装置では、上述したようにメルトブロー部に対して供給される熱風を電気ヒータ等の加熱装置によって生成する必要がある。そのため、熱風を生成するために多くの電力を要することとなり、不織布を製造する際のエネルギ消費量が大きなものとなっている。
【0005】
本発明の目的は、不織布を製造する際に要するエネルギを低減することのできる不織布製造装置を提供することにある。」
(ウ)「【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1?図3を参照して本発明を具体化した一実施形態について説明する。
図1に示すように、不織布製造装置は、溶融樹脂を押し出す押出機15と、送風機16と、送風機16から送られる空気を加熱する加熱装置17と、溶融樹脂を紡出するメルトブロー部11とを備えている。このメルトブロー部11には、溶融樹脂を流すための樹脂通路12と、熱風を流すための一対の熱風通路13a,13bとが形成されている。これら一対の熱風通路13a,13bは樹脂通路12を挟むとともに同樹脂通路12に対して傾斜して設けられている。実際には、これら樹脂通路12及び熱風通路13a,13bは図1の紙面に直交する方向に沿って複数形成されている。ちなみに、加熱装置17としては例えば電気ヒータが望ましい。また、送風機16としては例えばブロワが望ましい。」
(エ)「【0028】
メルトブロー部11から微細化された樹脂Fが紡出されると、この樹脂Fがローラ14の外周面にてウェブ状に集積されて不織布Cが形成される。また、不織布Cはローラ14の回転によって下方に送り出される。」

イ.甲5に記載された発明
上記(ア)によれば、「メルトブロー法により不織布を製造する製造装置」は、「溶融樹脂」を「紡出」する「メルトブロー部」を備える。
この「メルトブロー部」は、上記(ウ)によれば、「溶融樹脂を流すための樹脂通路と、熱風を流すための一対の熱風通路とが形成され、これら一対の熱風通路は樹脂通路を挟むとともに同樹脂通路に対して傾斜して設けられ」ている。
また、上記(ウ)に、「これら樹脂通路12及び熱風通路13a,13bは図1の紙面に直交する方向に沿って複数形成されている」と記載されており、これは、「樹脂通路及び熱風通路は、樹脂通路及び熱風通路を含む平面に直交する方向に沿って複数形成されている」ことを意味する。

よって、甲5には、以下の甲5発明が記載されている。
「メルトブロー法により不織布を製造する製造装置の溶融樹脂を紡出するメルトブロー部において、
このメルトブロー部には、溶融樹脂を流すための樹脂通路と、熱風を流すための一対の熱風通路とが形成され、これら一対の熱風通路は樹脂通路を挟むとともに同樹脂通路に対して傾斜して設けられ、これら樹脂通路及び熱風通路は、樹脂通路及び熱風通路を含む平面に直交する方向に沿って複数形成されている、
メルトブロー部。」

(2)本件発明1について
ア.本件発明1と甲5発明を対比する。
(ア)甲5発明の溶融樹脂を流すための「樹脂通路」は、樹脂通路及び熱風通路を含む平面に直交する方向に沿って複数形成されていることから、本件発明1の「加熱した溶融樹脂を吐出できる1箇所以上の液ノズル」に相当する。
(イ)甲5発明の熱風を流すための「熱風通路」は、樹脂通路及び熱風通路を含む平面に直交する方向に沿って複数形成されていることから、本件発明1の「前記液ノズルから吐出される溶融樹脂に熱風を吹き出して繊維状に延伸する1箇所以上の熱風ノズル」に相当する。
(ウ)甲5発明の「メルトブロー部」は、本件発明1の「メルトブロー用口金」に相当する。
(エ)甲5発明の「樹脂通路」と「熱風通路」は、それぞれ、溶融樹脂や気体を流動させ開口へと導くように、流動方向に長い断面形状の中空の空間を有することは明らかであり、また、溶融樹脂を熱風により延伸できる距離に、一対の熱風通路が樹脂通路を挟むように配置されることから、「樹脂通路」は「熱風通路」と近接して配置されるものといえる。
そうすると、甲5発明の「溶融樹脂を流すための樹脂通路と、熱風を流すための一対の熱風通路とが形成され、これら一対の熱風通路は樹脂通路を挟む」ように設けられることは、本件発明1の「液ノズルと熱風ノズルは、それぞれ一定の断面形状を有する柱状中空体であり、互いに近接」することに相当する。
(オ)甲5発明の「これら樹脂通路及び熱風通路は、樹脂通路及び熱風通路を含む平面に直交する方向に沿って複数形成されている」ことから、「樹脂通路」と「熱風通路」は同一平面上に存在し、また「これら一対の熱風通路は樹脂通路を挟むとともに同樹脂通路に対して傾斜して設けられ」ることから、「熱風通路」と「樹脂通路」の延長線は交差するものといえる。
そうすると、甲5発明の「これら一対の熱風通路は樹脂通路を挟むとともに同樹脂通路に対して傾斜して設けられ、これら樹脂通路及び熱風通路は、樹脂通路及び熱風通路を含む平面に直交する方向に沿って複数形成されている」ことは、本件発明1の「液ノズルの中心軸と熱風ノズルの中心軸は同一平面上に存在するとともに、液ノズルの中心軸の延長線と熱風ノズルの中心軸の延長線が口金下面の下方側において交差するように配置されること」に相当する。

イ.よって、本件発明1と甲5発明は、
「加熱した溶融樹脂を吐出できる1箇所以上の液ノズルと、液ノズルから吐出される溶融樹脂に熱風を吹き出して繊維状に延伸する1箇所以上の熱風ノズルを備えるメルトブロー用口金であって、
液ノズルと熱風ノズルは、それぞれ一定の断面形状を有する柱状中空体であり、互いに近接し、
液ノズルの中心軸と熱風ノズルの中心軸は同一平面上に存在するとともに、液体ノズルの中心軸の延長線と熱風ノズルの中心軸の延長線が口金下面の下方側において交差するように配置される、メルトブロー用口金」である点で一致し、以下の点で相違する。

《相違点5-1》
本件発明1が「1箇所の液ノズルに対して1箇所の熱風ノズルが対をなすように設けられ」ているのに対し、
甲5発明は「一対の熱風通路は樹脂通路を挟むとともに同樹脂通路に対して傾斜して設けられ」たものである点。

ウ.上記相違点5-1について検討する。
(ア)甲5発明の樹脂通路及び熱風通路は、「一対の熱風通路は樹脂通路を挟むとともに同樹脂通路に対して傾斜して設けられ」、「樹脂通路及び熱風通路を含む平面に直交する方向に沿って複数形成されている」ものである。これは、1箇所の「樹脂通路」に対して、「樹脂通路」を挟んで「一対の熱風通路」を設ける、すなわち、1箇所の「樹脂通路」に対して2箇所の「熱風通路」が配置されることを意味する。
一方、本件発明1は、1箇所の液ノズルに対して1箇所の熱風ノズルを設けるものであり、甲5発明の1箇所の「樹脂通路」に対して2箇所の「熱風通路」を設けるものとの相違である上記相違点5-1は、実質的な相違点である。
(イ)そして、甲5発明の1箇所の「樹脂通路」に対して2箇所の「熱風通路」を設ける配置を、1箇所の「樹脂通路」に対して1箇所の「熱風通路」を設ける配置に、あえて換えようとする動機付けについて、甲5に記載はなく、そのことを示す証拠も示されていない。
(ウ)この点について、請求人は、甲4、さらに、甲7、甲8及び甲12の「1箇所の液ノズル」と「1箇所の熱風ノズル」を対に配置する周知技術を甲5発明に適用することは、当業者にとって困難性はない旨主張する。(前記「第2 1.(2)イ.(イ)、(ウ)」)
しかし、甲4の吹き出しノズルは、溶融樹脂を吐出する「溶融物孔6」を、空気を吹き出す「開口14」が包囲する構造であり、また、甲7、甲8及び甲12のものは、「液吐出部」と「ガス吐出部」の吐出方向中心軸が「平行」に配置されるものであり、甲4、甲7、甲8及び甲12に記載されたノズルの配置構成を甲5発明に適用しても、本件発明1の「1箇所の液ノズル」と「1箇所の熱風ノズル」の中心軸の延長線が口金下方で交差する配置構成を想到することができないことは、前記「第4 2.(2)ウ.(ウ)、(エ)」)で述べたことと同様である。
よって、請求人の上記主張を採用することができない。

エ.以上より、本件発明1は、甲5発明と、上記相違点5-1で相違するから、甲5発明ではない。また、本件発明1の相違点5-1に係る構成は、当業者が容易に想到することができたものではないから、本件発明1は、甲5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明5について
本件発明5は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、この本件発明5は、甲5発明と、上記相違点5-1で相違する。
この相違点5-1は、前記「第4 3.(2)」で述べたように実質的な相違点であり、また、甲5発明からは容易に想到することができたものではないから、本件発明5は甲5発明ではなく、また、甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(4)本件発明6について
ア.本件発明6は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに「前記液ノズルより溶融樹脂を吐出するとともに、吐出された溶融樹脂に対して前記熱風ノズルから熱風を吹き出して繊維状に延伸された樹脂繊維によって微細な繊維を製造することを特徴とする極細繊維製造装置」であることを特定するものである。
一方、甲5には、甲5発明のメルトブロー部を備えた不織布製造装置(以下「甲5-1発明」という。)が記載されている。

イ.本件発明6と、この甲5-1発明を対比すると、甲5-1発明のメルトブロー部を備えた不織布製造装置も、メルトブロー部から微細化された樹脂が紡出されると、この樹脂がローラの外周面にてウェブ状に集積されて不織布が形成される(甲5の上記記載(エ))ものであり、これは、本件発明6の上記発明特定事項に相当するものといえるが、本件発明1の発明特定事項を全て含む本件発明6は、甲5-1発明と、上記相違点5-1で相違する。
この相違点5-1は、前記「第4 3.(2)」で述べたように実質的な相違点であり、また、甲5-1発明からは容易に想到することができたものではないから、本件発明6は甲5-1発明ではなく、また、甲5-1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(5)まとめ
したがって、本件発明1、5及び6は、甲5発明あるいは甲5-1発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、甲5発明あるいは甲5-1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反するものではない。
よって、本件発明1、5及び6に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当するものではなく、無効理由2によっては無効とすべきではない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由によっては、本件発明1?6に係る特許を無効にすることはできない。
審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
メルトブロー用口金及び極細繊維製造装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、メルトブロー口金及びこの口金を備える極細繊維製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
メルトブロー法により微細な繊維からなる不織布を連続的に製造する製造装置が周知である(例えば特許文献1参照)。こうした製造装置では、加熱した溶融樹脂を吐出ノズルから吐出させて高速の熱風により繊維状に延伸させて不織布や極細繊維を形成している。
【0003】
特許文献1によれば、図12及び図13に示すように、プレート11とプレート12が互いにねじ止めされた状態において、溶融樹脂を吐出する円形の液ノズル6のまわりに高温高速のガスを吹き出す熱風ノズル16が同心円状に備えられている口金の構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-228606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、メルトブロー紡糸装置において安定した紡糸を達成するためには、口金において、例えば溶融樹脂の温度だけでなく吹き出す高温ガスの温度を所定の温度範囲で管理する必要がある。
それに対し、特許文献1にみられるような構成の口金の場合、溶融樹脂を延伸させるのに大量の高温ガスを必要としていた。このため、紡糸時に吹き出しノズルを通過するガス温度が低下しないよう、口金の上流側に設けるガス加熱装置を大型にしたり、口金に直接加熱できる装置を取り付けるなどの対策が必要であった。それにより、エネルギーコストの上昇や口金の大型化・複雑化を招き、ひいては製造コストが上昇するという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、前記問題点に鑑みなされたものであり、少ない熱風ガスの量であっても溶融樹脂を安定して微細な繊維に紡糸することができ、かつ、小型化や軽量化が容易で製造コストを抑制できるメルトブロー用口金及び極細繊維製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、加熱した溶融樹脂を吐出できる1箇所以上の液ノズルと、前記液ノズルから吐出される溶融樹脂に熱風を吹き出して繊維状に延伸する1箇所以上の熱風ノズルを備えるメルトブロー用口金であって、1箇所の前記液ノズルに対して1箇所の前記熱風ノズルが対をなすように設けられ、前記対をなす前記液ノズルと前記熱風ノズルは、それぞれ一定の断面形状を有する柱状中空体であり、互いに近接し、前記対をなす前記液ノズルの中心軸と前記熱風ノズルの中心軸は同一平面上に存在するとともに、前記対をなす前記液ノズルの中心軸の延長線と前記熱風ノズルの中心軸の延長線が前記口金下面の下方側において交差するように配置されることを特徴とするメルトブロー用口金である。このように構成すると、少ない熱風ガスの量であっても安定して溶融樹脂を微細な繊維に紡糸することができる。また、口金内の吐出ノズルと熱風ノズルの配置の自由度が増すこととなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、少ない熱風ガスの量で溶融樹脂を安定して微細な繊維に紡糸することができることから、熱風ガスの使用量を削減できる。また、吐出ノズルや吹き出しノズルを備えるのに要するスペースが小さく、口金内にこうしたノズルを多数配置することができる。そのため、口金の小型化や軽量化が達成できるとともに、ひいては製造コストの抑制も達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態によるメルトブロー用口金の断面図とそれを備える極細繊維製造装置のブロックである。
【図2】図1に示すメルトブロー用口金の平面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態によるメルトブロー用口金の断面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態によるメルトブロー用口金の断面図である。
【図5】図4に示すメルトブロー用口金の平面図である。
【図6】本発明の第4の実施形態によるメルトブロー用口金の平面図である。
【図7】本発明の第5の実施形態によるメルトブロー用口金の平面図である。
【図8】図7のA?A線に沿ったメルトブロー用口金の断面図である。
【図9】本発明の第6の実施形態によるメルトブロー用口金の平面図である。
【図10】図7のメルトブロー用口金を備えた極細繊維製造装置の斜視図である。
【図11】図9のメルトブロー用口金を備えた極細繊維製造装置の斜視図である。
【図12】従来のメルトブロー用口金の断面図である。
【図13】図12の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1と図2を参照して、第1の実施形態のメルトブロー用口金20及び極細繊維製造装置について説明する。
図1に示すように、極細繊維製造装置は、溶融樹脂を押し出す押出機200と、熱風を生成する熱風生成装置300と、押出機200から押し出された溶融樹脂を繊維状にして吐出する口金20とを備えている。
【0011】
図1及び図2に示すように、口金20の内部には溶融樹脂を吐出する液ノズル22と、熱風ガスを吹き出す熱風ノズル24とが形成されている。
ここで、液ノズル22と熱風ノズル24は、それぞれ一定の断面を有する柱状中空体であり、互いに近接して配置されている。さらに、液ノズル22の中心軸O_(r)と熱風ノズル24の中心軸O_(g)が同一平面上に存在するとともに、口金20において中心軸O_(r)が傾斜し、中心軸O_(r)の延長線と中心軸O_(g)の延長線が口金下面20aの下方側の点Xにおいて角度θ_(1)で交差するように構成されている。
これにより、熱風ノズル24から吹き出される熱風ガスが少ない量であっても、液ノズル22から吐出された溶融樹脂が熱風ノズル24から吹き出される熱風ガスにより延伸され微細な繊維が得られる。
【0012】
液ノズル22は溶融樹脂を吐出できるものであれば良く、断面の形状は特に限定するものではないが、例えば、円形、楕円形、四角形や六角形などの多角形であることができる。均一な加工のしやすさから、円形であることが好ましい。
【0013】
また、液ノズル22の断面の大きさは溶融樹脂の種類や温度などにより適宜選択されるが、円形の場合、直径は0.1mmから1.0mmが好ましく、0.15mmから0.7mmがより好ましく、0.2mmから0.5mmがさらに好ましい。
【0014】
熱風ノズル24は熱風ガスを吹き出すことができるものであれば良く、断面の形状は特に限定するものではないが、例えば、円形、楕円形、四角形や六角形などの多角形や四角形などを湾曲させた形状であっても良い。
【0015】
また、熱風ノズル24の断面の大きさは溶融樹脂の種類や温度などにより適宜選択されるが、円形の場合、直径は0.2mmから2.5mmが好ましく、0.25mmから1.5mmがより好ましく、0.3mmから1mmがさらに好ましい。
【0016】
液ノズル22と熱風ノズル24は、互いに近接して配置されており、両者の口金下面20aにおける最短距離t1が0.1mmから5mmが好ましく、1mmから4.5mmがより好ましく、2mmから4mmがさらに好ましい。0.1mm未満では、接近しすぎて加工が難しくなり、5mmを超えると熱風ガスによる溶融樹脂の延伸が不十分で微細な繊維が得られ難くなるためである。
【0017】
図1において、中心軸O_(r)の延長線と中心軸O_(g)の延長線が成す角度θ_(1)は、0度から30度が好ましく、0度から25度がより好ましく、5度から20度がさらに好ましい。30度を超えると、熱風ガスによる溶融樹脂の延伸が不十分で微細な繊維が得られ難くなるためである。なお、角度θ_(1)が0度に近づくとともに、図1に示す点Xと口金下面20aとの距離は大きくなるが、この場合でも熱風ガスによる溶融樹脂の延伸がなされ微細な繊維が得られる。
【0018】
図1では、口金20において、液ノズル22を傾斜させている。代わりに熱風ノズル24を傾斜させても良いし、両方とも傾斜させても良い。ただし、これらの場合でも、中心軸O_(r)の延長線と中心軸O_(g)の延長線が成す角度θ_(1)は、30度以内が好ましい。
【0019】
図3を参照して、第2の実施形態のメルトブロー用口金30について説明する。
【0020】
図3に示すように、メルトブロー用口金30において、液ノズル32の上流側に、液ノズル32の断面より大きな断面を有する中空部である液保持部32bを設けている。一般に、液ノズル32の断面は、例えば直径が0.5mm程度と小さいため、口金の厚み全体を貫通する加工は困難な場合がある。そのため、このような液保持部32bを設けることにより液ノズル32の加工厚みを小さく抑えることができ好ましい。
【0021】
図3では、液ノズルの上流側にこうした大きな断面を有する中空部32bを設けているが、代わりに熱風ノズルの上流側に設けても良いし、互いに中空部がぶつからない範囲で両方に設けても良い。
【0022】
図4及び図5を参照して、第3の実施形態のメルトブロー用口金40について説明する。
【0023】
図4及び図5に示すように、口金40の内部には溶融樹脂を吐出する液ノズル42と、熱風ガスを吹き出す熱風ノズル44が形成されている。
ここで、口金40において、液ノズル42を傾斜させている。一方、熱風ノズル44は、口金下面40a近くにおいて、その一部がテーパー形状からなるテーパー部44aを有している。
これにより、熱風ノズル44から吹き出される熱風ガスが少ない量であっても、液ノズル42から吐出された溶融樹脂が熱風ノズルのテーパー部44aに沿って吹き出す熱風ガスにより効果的に延伸され微細な繊維となる。
【0024】
なお、テーパー部44aは、熱風ノズル44の出口側の周囲全体に設ける必要はなく、少なくとも液ノズル42に最も近い側に設けることが好ましく、熱風ノズル44又は液ノズル42の断面が円形の場合は、どちらかの直径と同程度の幅を有することが好ましい。さらに、図4において、テーパー部44aにおいて、熱風ノズルの中心軸とテーパー方向の成す角度θ_(2)は、35度以内が好ましく、25度以内がより好ましく、15度以内がさらに好ましい。35度を超えると、熱風ガスによる溶融樹脂の延伸が不十分で微細な繊維が得られ難くなるためである。
また、図4及び図5において、テーパー形状44aは、口金下面40aにおいて、液ノズル42の出口とほぼ接するように設けているが、角度θ_(2)を小さくして液ノズル42の出口に近づけるように設けてもよい。
【0025】
以上、図4及び図5では、第1の実施形態のメルトブロー用口金を用いて熱風ノズルの吹き出し部の少なくとも一部がテーパー状をなす場合について説明したが、第2の実施形態のメルトブロー用口金を用いた場合にも同様に適用できる。
【0026】
図6を参照して、第4の実施形態のメルトブロー用口金50について説明する。
【0027】
図6に示すように、口金50の内部には溶融樹脂を吐出する液ノズル52が直径D_(1)を有する円周上に多数設けられている。さらに、それぞれの液ノズル52には、ここでは図示していないが熱風を吹き出す熱風ノズルが近接し、熱風ノズルの吹き出し方向と液ノズル52の吐出方向が口金下面50aの下方で交差するように設けられている。これにより、それぞれの熱風ノズルから吹き出される熱風ガスが少ない量であっても、それぞれの液ノズル52から吐出された溶融樹脂が吹き出す熱風ガスにより延伸され微細な繊維が多数得られるので生産性に優れている。また、熱風ノズルの配置に柔軟性を持たせることができるので液ノズルを高密度に備える場合に有利である。
【0028】
口金50の外形は、断面が必ずしも円形である必要はなく、楕円形、四角形や六角形などの多角形であっても良い。口金の加工のしやすさから、円形であることが好ましい。
【0029】
また、図6では、液ノズル52を円周上に12箇所備えているが、口金50の外形や寸法などに応じてさらに多数備えてもよい。
ここで、隣接する液ノズル52間の距離は、2mmから12mmが好ましく、3mmから10mmがより好ましい。2mm未満では、接近しすぎて隣の液ノズルとの干渉により紡糸が安定せず、12mmを超えると液ノズルが少なく生産性が低下するためである。
【0030】
図7及び図8を参照して、第5の実施形態のメルトブロー用口金60について説明する。
【0031】
図7に示すように、口金60の内部には溶融樹脂を吐出する液ノズル62が直径D_(1)を有する円周上に多数設けられている。さらに、多数の熱風ノズル64は、液ノズル62が配置されている円と同じ中心を有する直径D_(2)の円周上にそれぞれの液ノズル62に近接して配置されている。ここで、直径D_(2)は直径D_(1)より小さくしている。
【0032】
これにより、それぞれの熱風ノズルから吹き出される熱風ガスが少ない量であっても、それぞれの液ノズル62から吐出された溶融樹脂が吹き出された熱風ガスにより延伸され微細な繊維が多数得られるので生産性に優れている。
【0033】
また、口金60において、溶融樹脂の導入経路を直径D_(1)の円周付近の厚み方向に、一方、熱風ガスの導入経路を直径D_(2)の円周付近の厚み方向に、分けて配置している。
このような配置をとることにより、溶融樹脂と熱風ガスのそれぞれの導入経路の切り分けが容易となり、口金の加工や小型化に有利となる。
【0034】
なお、図7及び図8では、熱風ノズル64の吹き出し部にテーパー部64aを設けている。それにより、吐出される溶融樹脂が熱風ガスにより効果的に延伸される。
また、図7では、熱風ノズル64に繋がる熱風導入口300bを側面部から中心部に設けているため、それと干渉する位置にある液ノズルと熱風ノズルを省略している。それを避けるため、熱風導入口300bを口金下面の反対面である口金上面に移しても良い。
【0035】
図7において、熱風ノズル64は断面を円形としたが、楕円形、四角形や六角形などの多角形であってもよい。また、細長い四角形を直径D_(2)の円周上に沿うよう湾曲させた形状であっても良く、この場合、吐出された微細な繊維が直径D_(2)の円周の内側に飛び込むことを防止でき好ましい。
【0036】
以上述べてきた口金60では、直径D_(2)は直径D_(1)より小さい場合の構成である。
逆に、直径D_(2)が直径D_(1)より大きい場合でも、同じく微細な繊維からなる極細繊維を多数得ることができ、また、溶融樹脂と熱風ガスのそれぞれの導入経路の切り分けが容易であることなど同様である。
【0037】
図9を参照して、第6の実施形態のメルトブロー用口金70について説明する。
【0038】
図9に示すように、口金70の内部には溶融樹脂を吐出する液ノズル72が直線l_(1)上に多数設けられている。さらに、それぞれの液ノズル72には、熱風を吹き出す熱風ノズル74が配置されている。熱風ノズル74は液ノズル72に近接し、熱風ノズル74の吹き出し方向と液ノズル72の吐出方向が口金下面70aの下方で交差するように設けられている。これにより、それぞれの熱風ノズル74から吹き出される熱風ガスが少ない量であっても、それぞれの液ノズル72から吐出された溶融樹脂が吹き出す熱風ガスにより延伸され微細な繊維からなる極細繊維が得られるので生産性に優れている。また、熱風ノズルの配置に柔軟性を持たせることができるので液ノズルを高密度に備える場合に有利であり、極細繊維からなる幅広の不織布を製造する上で好ましい。
【0039】
なお、口金70の外形は、断面が細長い四角形の形状が好ましいが、特にそれに限定されない。
【0040】
また、隣接する液ノズル72間の距離は、2mmから12mmが好ましく、3mmから10mmがより好ましい。2mm未満では、接近しすぎて隣の液ノズルとの干渉により紡糸が安定せず、12mmを超えると溶液ノズルが少なく生産性が低下するためである。
【0041】
図10は、図7に示すメルトブロー用口金60を複数備えた極細繊維製造装置である。押出機から押し出された溶融樹脂は、液導入配管200aより液導入口200bを経て口金60に多数形成されている液ノズル62から繊維状に吐出される。一方、熱風生成装置から出された熱風ガスは、熱風導入配管300aより熱風導入口300bを経て口金60に多数形成されている熱風ノズル64より吹き出す。これにより、液ノズル62から吐出された樹脂繊維は延伸され微細化された樹脂繊維が得られる。
【0042】
また、図10に示すように、口金60の下方にはメッシュ状のベルトコンベアが設けられており、微細化された樹脂繊維が走行中のベルト上に集積されることで極細繊維が形成される。
【0043】
なお、図10では口金60を幅方向に3台備えているが、生産性をアップさせるためより多数備えても良い。
また、複数の口金60に同種の樹脂材料からなる溶融樹脂を供給してもよい。一方、口金60ごとに種類や特性が異なる樹脂材料からなる溶融樹脂を供給することで、複合化した極細繊維とすることもできる。
【0044】
図11は、図9に示すメルトブロー用口金70を複数備えた極細繊維製造装置である。押出機から押し出された溶融樹脂は、液導入配管210aより液導入口210bを経て口金70に多数形成されている液ノズル72から繊維状に吐出される。一方、熱風生成装置から出された熱風ガスは、熱風導入配管310aより熱風導入口310bを経て口金70に多数形成されている熱風ノズル74より吹き出す。これにより、液ノズル72から吐出された樹脂繊維は延伸され微細化された樹脂繊維が得られる。
【0045】
また、図11に示すように、口金70の下方にはメッシュ状のベルトコンベアが設けられており、微細化された樹脂繊維が走行中のベルト上に集積されることで極細繊維が形成される。
【0046】
なお、図11では口金70をベルトコンベアの進行方向に3台備えているが、生産性をアップさせるためより多数備えても良い。
また、複数の口金70に同種の樹脂材料からなる溶融樹脂を供給してもよい。一方、口金70ごとに種類や特性が異なる樹脂材料からなる溶融樹脂を供給することで、複合化した極細繊維とすることもできる。
【符号の説明】
【0047】
20、30、40、50、60、70:メルトブロー用口金
20a、30a、40a、50a、60a、70a:口金下面
22、32、42、52、62、72:液ノズル
24、34、44、64、74:熱風ノズル
32b:液保持部
44a、64a:熱風ノズルのテーパー部
200:押出機
200a、210a:液導入配管
200b:液導入口
300:熱風生成装置
300a、310a:熱風導入配管
300b:熱風導入口
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱した溶融樹脂を吐出できる1箇所以上の液ノズルと、前記液ノズルから吐出される溶融樹脂に熱風を吹き出して繊維状に延伸する1箇所以上の熱風ノズルを備えるメルトブロー用口金であって、
1箇所の前記液ノズルに対して1箇所の前記熱風ノズルが対をなすように設けられ、
前記対をなす前記液ノズルと前記熱風ノズルは、それぞれ一定の断面形状を有する柱状中空体であり、互いに近接し、
前記対をなす前記液ノズルの中心軸と前記熱風ノズルの中心軸は同一平面上に存在するとともに、前記対をなす前記液ノズルの中心軸の延長線と前記熱風ノズルの中心軸の延長線が前記口金下面の下方側において交差するように配置されることを特徴とするメルトブロー用口金。
【請求項2】
前記熱風ノズルの吹き出し部の少なくとも一部がテーパー形状をなしていることを特徴とする、請求項1に記載のメルトブロー用口金。
【請求項3】
複数の前記液ノズルが直径D_(1)の円周上に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のメルトブロー用口金。
【請求項4】
複数の前記熱風ノズルが、前記液ノズルが配置されている円と同じ中心を有する直径D2の円周上に配置されているとともに、D_(2)はD_(1)よりも小さいか又は大きいことを特徴とする請求項3に記載のメルトブロー用口金。
【請求項5】
複数の前記液ノズルが直線上に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のメルトブロー用口金。
【請求項6】
請求項1?請求項5のいずれかに記載のメルトブロー用口金を備え、
前記液ノズルより溶融樹脂を吐出するとともに、吐出された溶融樹脂に対して前記熱風ノズルから熱風を吹き出して繊維状に延伸された樹脂繊維によって微細な繊維を製造することを特徴とする極細繊維製造装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2018-06-05 
結審通知日 2018-06-07 
審決日 2018-06-19 
出願番号 特願2015-134059(P2015-134059)
審決分類 P 1 113・ 121- YAA (D01D)
P 1 113・ 113- YAA (D01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加賀 直人佐藤 玲奈福井 弘子  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 井上 茂夫
蓮井 雅之
登録日 2016-06-10 
登録番号 特許第5946569号(P5946569)
発明の名称 メルトブロー用口金及び極細繊維製造装置  
代理人 黒田 壽  
代理人 入澤 直志  
代理人 奥川 勝利  
代理人 黒田 壽  
代理人 特許業務法人オーパス国際特許事務所  
代理人 奥川 勝利  
代理人 入澤 直志  
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