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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1343381
審判番号 不服2017-181  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-06 
確定日 2018-08-16 
事件の表示 特願2012-16775「ボトル」拒絶査定不服審判事件〔平成25年8月15日出願公開、特開2013-154907〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願(以下「本願」という。)は、平成24年1月30日の出願であって、平成28年10月26日付けの拒絶査定がされ(謄本送達日同年11月1日)、これに対して、平成29年1月6日に審判請求がされ、平成30年3月7日付けで当審から拒絶理由が通知され、それに対して、同年5月8日に意見書の提出とともに、手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本願発明
本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「合成樹脂材料で有底筒状に形成されたボトルであって、
胴部に、全周にわたって連続して延びる周溝が上下方向に間隔をあけて複数形成され、
それぞれの周溝は、胴部の側面視で上下方向に屈曲しながら周方向に沿って周期的に延びる波形状を呈し、
上下方向で隣り合う周溝の各頂部の周方向の位置が、互いにずらされており、
上下方向で隣り合う周溝は、一方の周溝が位置する上下方向の領域と、他方の周溝が位置する上下方向の領域と、が重複しないように前記胴部に配置され、
上下方向で隣り合う周溝同士のうち、一方の周溝における頂部が、他方の周溝において、周方向で隣り合う頂部同士の間に位置する中間部が位置する周方向領域の範囲内に位置し、
前記底部の底壁部は、
外周縁部に位置する接地部と、
該接地部にボトル径方向の内側から連なり上方に向けて延びる立ち上がり周壁部と、
該立ち上がり周壁部の上端部からボトル径方向の内側に向けて突出する環状の可動壁部と、
該可動壁部のボトル径方向の内端部から上方に向けて延びる陥没周壁部と、を備え、
前記可動壁部は、前記陥没周壁部を上下方向に移動させるように、前記立ち上がり周壁部との接続部分を中心に回動自在に配設されていることを特徴とするボトル。」

第3 当審からの拒絶理由通知
1 平成30年3月7日付けの当審が通知した拒絶理由のうちの理由2のうち補正前の本願の請求項3(本願発明に相当)に対する拒絶の理由は、下記2の理由を含むものである。
2 本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献6及び7に記載された事項、及び引用文献2及び3に記載された周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1 特開2000-127231号公報
引用文献2 特開2007-269392号公報
引用文献3 特開2007-253997号公報
引用文献6 意匠登録第1187669号公報
引用文献7 実用新案登録第3058345号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載事項
引用文献1には、次の記載がある。
(1)請求項1
「有底のプリフォームを縦方向と横方向とに延伸ブローして形成された合成樹脂の薄肉ボトルであって、胴部周壁の全面をエンドレスに形成した横方向の多数本の凹リブにより上下方向に区画して側面強度を増大するとともに、その凹リブを凹凸状にかつ上下交互に相反する方向に弯曲又は屈曲して、上位凹リブの各凹部と下位凹リブの各凸部とを互いに対向させて座屈強度を増大してなることを特徴とする延伸ブロー成形による薄肉ボトル。」
(2)発明が解決しようとする課題
ア 段落【0002】
「延伸ブロー成形によるボトルでは、プリフォームを機械的な縦方向の延伸とエアブローによる横方向の延伸とによって、胴部の平均肉厚が0.3mm前後ほどの薄肉に形成されている。このようなPETボトルでは延伸による分子の配向により剛性が増大して、薄肉でありながら結構な側面強度や座屈強度を有するが、移送過程や充填工程の過程で変形しないように凹リブの形成により補強が施されている。」
イ 段落【0003】
「この凹リブには横リブや縦リブなどがあり、その多数本が目的に応じて単一的に或いは複合化するなどして採用されているが、肉厚が0.2mm以下のボトルになると凹リブによる補強効果も低減して、設定状態によっては側面強度のために形成した横方向の凹リブが座屈強度の低下を招くということすらある。」
(3)発明の実施の形態
ア 段落【0008】
「図中1はボトル本体で、首部2の下側から胴部3及び底部4に至る全体が、延伸ブロー成形により有底のプリフォーム(図は省略)を、縦方向と横方向とに延伸されて薄肉(0.175mm)に形成されている。」
イ 段落【0009】
「5,5は、胴部3の周壁全面にエンドレスに形成した横方向の10本の凹リブで、胴部周壁はこれらの凹リブ5,5により上下方向に11区画に形成されて側面強度が増大されている。」
ウ 段落【0010】
「図1及び図2に示す実施態様は、上記凹リブ5,5を上下に凸凹状に、かつ上下交互に相反する方向に波形に弯曲して、上位凹リブの各凹部5aと下位凹リブの各凸部5bとを互いに対向させて座屈強度を増大し、さらに胴部周壁の上部に、胴部3を掴み持ったときの指掛かりとなる所要数の円形凹所6,6を形成した構造からなる。」
エ 段落【0012】
「上記構造において、首部7に押圧力が加わると、その押圧力は胴部3では壁面が側上位凹リブの各凹部5aと下位凹リブの各凸部5bとが円周方向に交互に対向位置していることによって、押圧力が分散され、押圧力の集中する個所がなくなるので、胴部肉厚が0.3mm前後の通常肉厚のボトルは勿論のこと、肉厚が0.2mmを下回る薄肉ボトルであっても、単に波形の凹リブを横方向に形成した場合よりも側面強度と座屈強度とが増大するようになる。」
オ 段落【0013】
「・・・また凹リブ5,5が上下交互に相反する方向に弯曲又は折曲形成され、その凹リブ5,5により上下に区画された壁面形状とによって、胴部の壁面形状が形成されることから外観上も見苦しいものではなく、凹リブ5,5の形状によって新たな審美感を付与することも可能となる。」
カ 図1に関して
(ア)図面の簡単な説明(段落【0013】)
「【図1】 この発明の薄肉ボトルの立面図である。」
(イ)【図1】



キ 図2に関して
(ア)図面の簡単な説明(段落【0013】)
「【図2】 図1のA-A線断面図である。」
(イ)【図2】



2 引用発明の認定
(1)図面からの認定
上記1の図面から、「凹リブ5」について、次の事項が読み取れる。
ア 凹リブ5が上下方向に間隔をあけて複数形成される点。
イ それぞれの凹リブ5が上下方向に屈曲しながら周方向に沿って周期的に延びる波形状を呈する点。
ウ 上下方向で隣り合う凹リブは、一方の周溝が位置する上下方向の領域と他方の周溝が位置する上下方向の領域と、が重複しないように胴部に配置されている点。
(2)引用発明
上記1の記載及び(1)の認定から、引用文献1には、「首部2の下側に胴部3及び底部4を有する合成樹脂の薄肉ボトル1であって、胴部3の周壁の全面をエンドレスに形成した横方向の多数本の凹リブ5により上下方向に区画して側面強度を増大するとともに、その凹リブ5を上下方向の波形状の凹凸状にかつ上下交互に相反する方向に弯曲又は屈曲して、上位凹リブの各凹部と下位凹リブの各凸部とを互いに対向させて座屈強度を増大した薄肉ボトル1であって、上下方向で隣り合う凹リブは、一方の周溝が位置する上下方向の領域と他方の周溝が位置する上下方向の領域と、が重複しないように胴部に配置されている薄肉ボトル。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
3 引用文献6の記載事項
引用文献6には、次の記載がある。
(1)書誌事項
ア 【意匠に係る物品】
「包装用瓶」
イ 【意匠の説明】
「瓶口部のねじ山部分を除いた、本願意匠の主要構成部分が、背面図は正面図と、右側面図は左側面図と各同一に現れるので、背面図と右側面図は省略した。」
(2)底面図



(3)平面図



(4)左側面図



(5)正面図



(6)A-A線切断部端面図



(7)B-B線切断部端面図



(8)C-C線切断部端面図



4 引用文献7の記載事項
引用文献7には、以下の記載がある。
(1)実用新案登録請求の範囲
「【請求項1】 瓶底部(4)と瓶首部(5)との間に延在している壁(3)により画成された中空の細長い本体(2)を有している瓶(1)であって、4つの握持用凹所(6)を有しており、該凹所の各々は前記壁(3)に関して前記瓶の内側に引っ込められた区切られた区域を有していることを特徴とする瓶。
・・・
【請求項9】 請求項1から8までのいずれか1項に記載の瓶において、複数個のリブ(8)を更に有していることを特徴とする瓶。
【請求項10】 請求項9に記載の瓶において、前記リブ(8)は波形経路を有していることを特徴とする瓶。
・・・」
(2)段落【0009】
「図1を参照して、瓶1、好ましくは、実質的に1.5あるいは2.0リットルのサイズを有するポリエチレン・テレフタラートでなる瓶1は中空の細長い本体2を有している。該細長い本体2は、壁、例えば、平面図でみて実質的に四辺形の形状を与える4つの壁により画成されている。壁は形状決めされた瓶の底部4と瓶の首部5との間に延在しており、該瓶の首部5は、閉鎖素子のためのネジ部を備えている。更に示されているのは波形経路を有する複数個のリブ8である。このようなリブは、瓶を美観的に気持ちのよいものとするばかりでなく、該瓶を強化している。」
(3)図1について
ア 図面の簡単な説明
「【図1】
使用者の手により保持される際の瓶の斜視図を示す。」
イ 【図1】



5 引用文献2及び3の記載事項
(1)引用文献2
引用文献2には、次の記載がある。
ア 特許請求の範囲
「【請求項1】
内容液の充填密封後に、内部に減圧が発生する2軸延伸ブロー成形された合成樹脂製壜体であって、高い保形性を有する筒状の胴部の下端に連設された底部を、中央に位置して前記胴部内に陥没したドーム状の陥没壁部と、該陥没壁部の外側に位置した、略平リング板状をした平坦壁部と、該平坦壁部の外側に位置し、外周端を湾曲して立ち上がるヒール壁部を介して胴部に連設した脚壁部と、から構成し、該脚壁部と平坦壁部との境界部に、前記胴部内に陥没する周溝を設け、少なくとも該周溝の内側の壁部分で構成される反転壁部を、反転変形可能に形成した合成樹脂製壜体。
・・・
【請求項3】
反転壁部を、周溝の内側の壁部分から平坦壁部にかけての部分とした請求項1または2記載の合成樹脂製壜体。
・・・」
イ 段落【0035】
「図1は、本発明による2軸延伸ブロー成形された合成樹脂製壜体の第一の実施形態例を示す全体正面図で、壜体は、下端を底部1で塞いだ円筒状の胴部11の上端に、肩部13を介して、外周面に螺条とネックリングとを設けた口筒部14を連設して構成されている。」
ウ 段落【0036】
「この壜体は、容器としての主体部分である胴部11を、充分な肉厚で成形するとか、図示実施形態例のように、複数(図示例の場合、6本)の補強周溝12を並設して構成することにより、外観的に充分に高い保形性を有するものとなっている。」
エ 段落【0037】
「胴部11の下端に連設された底部1(図2および図3参照)は、中央に位置して、胴部11内に陥没したドーム状の陥没壁部2と、この陥没壁部2の外周端に、拡径した段部4を介して連設された平リング板状の平坦壁部5と、この平坦壁部5の外周端に、胴部11内に陥没する周溝6を介して連設された平リング板状の脚壁部8と、この脚壁部8の外周端と胴部11の下端とを連設する、湾曲して立ち上がった湾曲筒状に成形されたヒール壁部9と、から構成されている。」
オ 段落【0039】
「段部4および平坦壁部5は、陥没壁部2と補強リブ3との組合せ部分に、2軸延伸ブロー成形時に発生する内部応力が、脚壁部8に影響するのを防止する部分であり、また底部1に作用する内圧を弾性的に受け止める部分でもある。」
カ 段落【0040】
「周溝6は、脚壁部8と平坦壁部5との境界部に沿って周設されているが、脚壁部8の下面(接地面)と平坦壁部5の下面との間には段差dがあるので、この周溝6の内側の壁部分は外側の壁部分に比べて、この段差dだけ高さ幅が小さいことになり、この高さ幅の小さい内側の壁部分が反転壁部7を形成している。」
キ 段落【0041】
「この反転壁部7は、その肉厚を、反転変形可能となる程度まで薄くしたものであるが、この反転壁部7の成形は、壜体に2軸延伸ブロー成形される一次成形品を成形する際に、この一時成形品を、予め設定された形態に肉厚コントロールして成形することにより達成される。」
ク 段落【0042】
「壜体内の減圧が大きくなると、この減圧力により反転壁部7が、略周溝6の底部分を基点として反転弾性変形し、図2に仮想線で示すように、内側部分(陥没壁部2、補強リブ3、段部4そして平坦壁部5)が胴部11内に陥没変位し、この陥没変位により発生した減圧を吸収する。」
ケ 【図1】



コ 【図2】



サ 【図3】



(2)引用文献3
引用文献3には、次の記載がある。
ア 請求項1
「口部と、該口部の下方に二軸延伸された筒状の胴部と、該胴部の下部を閉塞する底部とを備える合成樹脂製ボトルにおいて、
前記底部は、胴部の下端に連設されて環状に形成された接地面を有する脚部と、該脚部の内周縁に連設された反転部とを備え、
前記反転部は、胴部及び脚部と共に延伸されていて胴部内方乃至胴部外方に向かって対称形状に凹凸反転自在の傾斜部と、該傾斜部に包囲された領域における底部中央部に形成され、該傾斜部より肉厚寸法が大とされた厚肉部とを備えることを特徴とする合成樹脂製ボトル。」
イ 段落【0030】
「本実施形態の合成樹脂製ボトル1は、図1(a)に示すように、口部2と、該口部2の下方に連設された筒状の胴部3と、該胴部3の下部を閉塞する底部4とを備えている。ボトル1は、射出成形されたポリエチレンテレフタレート樹脂製の図示しないプリフォームから二軸延伸ブロー成形され、これによって、胴部3及び底部4が二軸延伸された状態で形成されている。また、本実施形態のボトル1は、ヒートセットされて耐熱性が付与されている。なお、口部2はプリフォームの状態で既に結晶化されて耐熱性が付与されている。口部2の外周にはキャップ(図示せず)を螺着するための螺着部5が形成されており、螺着部5の下部には外周に張り出す鍔部6が形成されている。」
ウ 段落【0031】
「次に、本実施形態の合成樹脂製ボトル1の底部4について詳しく説明する。底部4は、図2及び図3に示すように、胴部3の下端に連続して形成された環状の脚部7と、該脚部7に包囲された領域に形成された反転部8とを備えている。脚部7は環状の接地面9を備えており、接地面9を接地させることにより安定してボトル1を自立させることができる。」
エ 段落【0032】
「前記反転部8は、脚部7の内周縁に第1ヒンジ部10を介して連設された傾斜部11と、該傾斜部11の内周縁に第2ヒンジ部12を介して連設された内方突出部13とを備えている。」
オ 段落【0033】
「傾斜部11は、第1ヒンジ部10から第2ヒンジ部12にかけて底部4の中央部に向かって胴部内方に傾斜する大略円錐状に形成されている。傾斜部11の傾斜角θは、脚部7の接地面9に対して約30°(15°?45°が好ましい)とされており、ボトル1のブロー成形時に約6倍(少なくとも1.5倍が好ましい)の延伸倍率に形成されている。また、傾斜部11は、厚み寸法が約0.5mm(0.2mm?1.0mmが好ましい)とされ、略放射状に延びる複数の窪み線14と、各窪み線14間のパネル面15とにより構成されている。更に、ボトル1に耐熱性を付与する場合には、ヒートセット処理が行われる。」
カ 【図1】



キ 【図2】



ク 【図3】



(3)周知技術の認定
ア 上記引用文献2及び3の記載から、ボトルの底部の底壁部の構造として、外周縁部に位置する接地部を有し、その接地部のボトル径方向の内側から連なり上方に向けて延びる立ち上がり周壁部と、立ち上がり周壁部の上端部からボトル径方向の内側に向けて突出する環状の可動壁部と、可動壁部のボトル径方向の内端部から上方に向けて延びる陥没周壁部とを有するものは周知のものと認められる。
イ この点、審判請求人が提出した平成30年5月8日付け意見書の2.(1)において、「引用文献2?4には、底壁部に、外周縁部に位置する接地部と、接地部にボトル径方向の内側から連なり上方に向けて延びる立ち上がり周壁部と、立ち上がり周壁部の上端部からボトル径方向の内側に向けて突出する環状の可動壁部と、可動壁部のボトル径方向の内端部から上方に向けて延びる陥没周壁部と、が備えられたボトルが記載されています。」と記載されているところである。
ウ そして、引用文献2(図2)及び引用文献3(図3)において、陥没周壁部を上下する機能を有する可動周壁における回動中心は、引用文献2においては、周溝6の底部分であり、また、引用文献3においては、第1ヒンジ部10であることが読み取れる。これらは、いずれも、「立ち上がり周溝部の上端部」に相当する。したがって、「前記可動壁部は、前記陥没周壁部を上下方向に移動させるように、前記立ち上がり周壁部との接続部分を中心に回動自在に配設されている」ことも読み取ることができる。
エ そうすると、引用文献2及び引用文献3から「底部の底壁部は、
外周縁部に位置する接地部と、
該接地部にボトル径方向の内側から連なり上方に向けて延びる立ち上がり周壁部と、
該立ち上がり周壁部の上端部からボトル径方向の内側に向けて突出する環状の可動壁部と、
該可動壁部のボトル径方向の内端部から上方に向けて延びる陥没周壁部と、を備え、
前記可動壁部は、前記陥没周壁部を上下方向に移動させるように、前記立ち上がり周壁部との接続部分を中心に回動自在に配設されている」という構成(以下「本件底部構造」という。)が、引用文献2及び引用文献3に記載されているように、周知の構造であったと認めることができる。

第5 対比
1 本願発明と、引用発明とを対比する。
(1)ボトル全体の構造について
引用発明における「首部2の下側に胴部3及び底部4を有する合成樹脂の薄肉ボトル」は、本願発明の「合成樹脂材料で有底筒状に形成されたボトル」に相当する。
(2)ボトルの胴部について
引用発明における「胴部周壁の全面をエンドレスに形成した」、「凹リブ」は、その形状からみて、本願発明の「全周にわたって連続して延びる」、「周溝」に相当する。
(3)周溝について
本願発明における「全周にわたって連続して延びる」、「周溝」、「周方向」、「複数形成」、は、引用発明における「エンドレス」、「凹リブ」、「横方向」、「多数本」にそれぞれ相当する。
2 一致点
上記1での検討のとおり、両者は、
「合成樹脂材料で有底筒状に形成されたボトルであって、
胴部に、全周にわたって連続して延びる周溝が上下方向に間隔をあけて複数形成され、
それぞれの周溝は、胴部の側面視で上下方向に屈曲しながら周方向に沿って周期的に延びる波形状を呈し、
上下方向で隣り合う周溝同士のうち、一方の周溝における頂部が、他方の周溝において、周方向で隣り合う頂部同士の間に位置する中間部が位置する周方向領域の範囲内に位置」する「ボトル」である点で一致する。
3 相違点
両者は次の点で相違する。
<相違点1>
上下方向で隣り合う周溝同士の関係において、本願発明においては、「上下方向で隣り合う周溝の各頂部の周方向の位置が、互いにずらされており、」「上下方向で隣り合う周溝同士のうち、一方の周溝における頂部が、他方の周溝において、周方向で隣り合う頂部同士の間に位置する中間部が位置する周方向領域の範囲内に位置」するのに対して、引用発明においては、「上位凹リブの各凹部と下位凹リブの各凸部とを互いに対向させ」るように位置している点。
<相違点2>
本願発明においては、本件底部構造を有するのに対して、引用発明においては、その底部構造が明らかでない点。

第6 判断
以下、相違点について検討する。
1 相違点1について
(1)引用発明においては、座屈強度を増大させるために、凹リブの各凸部を互いに対向させる構成を採用しているが、前記第4、1(1)オに摘記したように、引用文献1には、凹リブの形状によって新たな審美感を付与できるとされており、前記第4、4(2)で摘記したように引用文献7には、波形経路を有する複数個のリブ・・・は、美観的に気持ちのよいものとするばかりでなく、該瓶を強化している」と記載されている。そして、引用文献6は、意匠公報であり、その説明はないが、上下方向で隣り合う周溝同士の関係において「上下方向で隣り合う周溝の各頂部の周方向の位置が、互いにずらされており、」「上下方向で隣り合う周溝同士のうち、一方の周溝における頂部が、他方の周溝において、周方向で隣り合う頂部同士の間に位置する中間部が位置する周方向領域の範囲内に位置」することが読み取れ、この点を引用発明の上下方向で隣り合う周溝同士の関係に適用することは、審美感を考慮して当業者が容易になし得ることと認められる。
(2)平成30年5月8日付け意見書での主張に対して
審判請求人は、引用文献7の前記第4、4(2)で摘記した部分について、引用文献7においては、複数の周溝の位相が全て一致した構成のみが記載されているから、位相が全て一致した場合に、美観的に向上すると記載されていると解するべきと主張する。しかしながら、周溝が一本であっても、直線状に周回するよりも、波形状である方が、目立つことは経験則上明らかである。引用文献6に記載された構成を引用発明に適用することの阻害事由とはならない。
2 相違点2について
上記第4、5(3)で検討したように、本件底部構造は、引用文献2及び3に記載のように本願出願前周知の事項であったと認められ、この点を引用発明に適用することは、当業者が容易になし得ることといえる。
3 小括
(1)上記1及び2から、相違点1及び相違点2は、いずれも当業者が容易に想到し得ることであって、両相違点を総合しても、容易想到性を阻害するということはできない。
(2)さらに、引用発明に対して、引用文献6に記載された事項を採用することで、審美性が向上することは予測可能なことであり、引用発明に対して、本件底部構造を採用することで、ボトル内の減圧に対応可能となることも予測可能なことであるから、本願発明が予測を超える作用効果を奏するということもできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用発明及び引用文献2及び3に記載された事項並びに引用文献6及び7に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-06-13 
結審通知日 2018-06-19 
審決日 2018-07-02 
出願番号 特願2012-16775(P2012-16775)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
P 1 8・ 113- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西堀 宏之  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 門前 浩一
竹下 晋司
発明の名称 ボトル  
代理人 志賀 正武  
代理人 鈴木 三義  
代理人 仁内 宏紀  
代理人 棚井 澄雄  

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