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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1343458
審判番号 不服2017-13820  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-19 
確定日 2018-09-11 
事件の表示 特願2015-544293「コンテンツを表示する方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月 5日国際公開、WO2014/082290、平成28年 3月 3日国内公表、特表2016-506558、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年11月30を国際出願日とする出願であって、平成28年9月20日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年2月17日付けで手続補正がされ、同年6月21日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年9月19日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に、手続補正がされ、平成30年5月14日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、同年7月19日付けで手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年6月21日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.(新規性)この出願の請求項1-6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.(進歩性)この出願の請求項1-6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

<引用文献等一覧>
A.特開2011-216066号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

(進歩性)本件出願の請求項1-6に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引 用 文 献 等 一 覧

引用例1:特開2011-216066号公報(拒絶査定時の引用文献A)

第4 本願発明
本願請求項1-6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は、平成30年7月19日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-6は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
複数のピクセルをもつスクリーン上にコンテンツを表示する方法であって、スクリーン上での前記複数のピクセルの光強度が調節可能であり、当該方法は、
スクリーンのすべてのピクセルの光強度を光強度なしまたはより低い光強度に設定するステップであって、前記より低い光強度は、対応するピクセル上に表示されるコンテンツがユーザーにとって知覚可能であることを可能にするものである、ステップと;
スクリーンのすべてのピクセルの光強度が光強度なしまたは前記より低い光強度に設定されている状態で、タッチするオブジェクトの前記スクリーン上でのタッチを受領するステップと;
前記タッチするオブジェクトと前記スクリーンとの間の接触点の周囲のピクセルがより高い光強度をもち、残りのピクセル全部が光強度をもたないまたは前記より低い光強度のままであるように、ピクセルの光強度を調節するステップとを含み、
当該方法はさらに、
ピクセルの光強度が調節されたときからの所与の時間期間の経過後に、前記ピクセルの光強度を、前記より高い光強度から前記より低い光強度または光強度なしに調節し直すステップを含む、
方法。
【請求項2】
当該方法が前記周囲のピクセルを決定する段階をさらに含み、前記周囲のピクセルは、その中心または重心が前記接触点に対応する領域をなす、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記領域が、正方形、長方形、楕円および円を含む形のうちの一つである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
当該方法が、前記タッチするオブジェクトの前記スクリーンとの接触を維持しつつ前記タッチするオブジェクトを前記スクリーン上で動かすステップをさらに含み、動く軌跡に沿ったすべての接触点のすべての周囲のピクセルが前記より高い光強度をもつ、請求項1記載の方法。
【請求項5】
コンテンツを表示するよう構成されているスクリーン上にコンテンツを表示する装置であって、前記スクリーンは、光強度が調節可能である複数のピクセルを有しており、
タッチするオブジェクトの前記スクリーン上でのタッチを受領するよう構成されている入力モジュールと、
前記スクリーンのすべてのピクセルの光強度を制御するよう構成されている制御モジュールとを有しており、
前記制御モジュールは、スクリーンのすべてのピクセルの光強度を光強度なしまたはより低い光強度に設定し、スクリーンのすべてのピクセルの光強度が光強度なしまたは前記より低い光強度に設定されている状態で前記入力モジュールによって受領されたタッチに応答して、前記制御モジュールは、前記タッチするオブジェクトと前記スクリーンとの間の接触点の周囲のピクセルがより高い光強度をもち、残りのピクセル全部が光強度をもたないまたは前記より低い光強度のままであるようにピクセルの光強度を調節し、前記より低い光強度は、ユーザーにとって知覚可能な、対応するピクセル上に表示されるコンテンツを可能にするものであり、
当該装置がさらに、ピクセルについて時間をカウントするよう構成されたタイミング・モジュールを有しており、
前記タイミング・モジュールによってカウントされる、ピクセルの光強度が調節されたときからの所与の時間期間の経過後に、前記制御モジュールが、前記ピクセルの光強度を、前記より高い光強度から前記より低い光強度または光強度なしに、または前記より低い光強度または光強度なしから前記より高い光強度に調節し直す、
装置。
【請求項6】
前記入力モジュールが、前記タッチするオブジェクトの前記スクリーンとの接触を維持しながらの前記タッチするオブジェクトの連続的なタッチを受領するよう構成されており、前記制御モジュールは、動く軌跡に沿ったすべての接触点のすべての周囲のピクセルが前記より高い光強度をもつよう光強度を調整するよう構成されている、請求項5記載の装置。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
平成30年5月14日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

a)「【0001】
本発明は、情報処理装置に係り、特に、表示部の輝度の制御に関する。」(下線は当審で付与。以下、同様。)

b)「【0018】
表示部15は、使用者に操作を促す表示や、使用者が操作した内容の表示や、装置の動作状態の表示等に用いられる有機ELディスプレーであって、制御部11及び装置の各部に制御されることで、文字、数字、更に、アイコンを含む画像データを表示する。表示部15の表示輝度は、表示部点灯制御機能11aによって制御される。また、画像の一部は、操作を識別するソフトキーであり、タッチパッド16のその画像に対応する位置への接触によって入力操作とされる。
【0019】
タッチパッド16は、表示部15の表示画面の大きさと略等しい大きさであって、指やスタイラスペン(以後、指及びスタイラスペンを指等と称する。)が接触されたこと、及び、接触がなくなったことを検出する。なお、接触とは、距離が所定の閾値未満であることを含む。そして、接触が検出された際、接触が検出された1つ又は複数の位置を制御部11に通知する。指等が接触されたままタッチパッド16上を移動した場合、所定の時間間隔で接触された位置を制御部11に通知することによって、指等が表示画面をなぞったことが制御部11によって識別される。」

c)「【0024】
表示部点灯制御機能11aは、表示部15の表示画面の点灯及び消灯を制御し、更に、点灯の際の輝度を制御する。この制御に際し、表示部点灯制御モード11bが輝度固定モード(このモードである場合、表示部点灯制御機能11aは、従来から知られた、タッチパッド16への接触や、キー入力部17から入力があった場合等に表示部15を点灯させ、所定の時間に渡って接触や入力がない場合、表示部15を消灯させる等の制御動作を行う。)であるか、輝度変動モードであるかに従う。」

d)「【0029】
ここで、通常点灯とは、使用者の容易な視認が可能な輝度での点灯である。そして、所定の時間に渡って上記接触も、上記キー操作もない場合、消費電力削減のために表示部15を所定の微点灯時間に渡って微点灯させた後、消費電力削減のために消灯させる。ここで、微点灯とは、通常点灯より輝度が小さい点灯であるが、微点灯させるステップはなく、通常点灯から消灯に移っても良い。」

e)「【0032】
ここで、図2に示すフローチャートを参照して、輝度変動モードにおける表示部点灯制御機能11aによる表示部15の点灯及び消灯、更に、点灯の際の輝度を制御する動作の詳細を説明する。第1の実施形態に係る表示部点灯制御機能11aは、長期的に輝度変動モードであり、かつ、消費電力削減のために表示部15を微点灯又は消灯中にタッチパッド16への接触が検出されることにより、又は、装置の各部の動作によって新たな表示がされる際、上記制御動作を開始する(ステップS101)。
【0033】
表示部点灯制御機能11aは、まず、表示部15の全表示画面を所定の時間に渡って通常点灯させる(ステップS102)。次に、表示部15の表示画面のうち、接触が検出された位置を含む所定の領域を通常点灯させ、その領域外を暗く点灯させる(ステップS103)。この際の通常点灯させる領域については、後述する。なお、ステップS102の通常点灯中に、接触された位置が移動した場合、及び、接触がなくなった場合、表示部点灯制御機能11aは、所定の時間の経過を待たず、ステップS103の所定の領域を通常点灯させる動作を経て、又は、経ずに後述するステップS104の動作に移る(図示せず)。」

f)「【0036】
接触がなくなった、即ち、指等がタッチパッド16から離れた場合、表示部点灯制御機能11aは、所定の待ち時間をおいて(ステップS105)、ステップS103で通常点灯及び暗く点灯させた状況を継続させる。その後、表示部15の全表示画面を所定の時間に渡って通常点灯させ(ステップS106)、微点灯を経て消灯させて(ステップS107)、制御動作を終了する(ステップS108)。
【0037】
なお、ステップS102及びステップS106の全表示画面の通常点灯のステップは、輝度固定モードの場合の動作を取り入れることによって、装置の使用者が違和感を覚えることがないようにしたものであって、一方又は両方は、省いても良い。」

g)「【0039】
なお、ステップS101の動作開始の契機となったタッチパッド16への接触がソフトキーが表示された位置に行われた場合、表示部15が微点灯又は消灯中であれば、制御部11は、そのソフトキーへの接触によって開始される動作を行わない。なぜなら、その接触がされた際、使用者は、表示部15の表示を視認できない、又は、視認が困難であって、そのソフトキーに対応付けられた動作をさせるとの意思を持たないと考えられるからである。一方、表示部15が通常点灯又は暗く点灯中であれば、制御部11は、そのソフトキーへの接触によって開始される動作を行う。」

h)「【0046】
図3を参照して、第2の通常点灯させる領域を説明する。図3(a)は、第2の通常点灯させる領域を示し、その領域は、指等が触れた接触位置15aを中心とする第1の半径R1の円内である第1の領域15bである。そして、表示部点灯制御機能11aは、第1の領域15bと同じ中心であり、第1の半径R1より大きい第2の半径R2の円内であり、かつ、第1の領域15bを除いた第2の領域15cを暗く点灯させる。図では、右上から左下への疎なハッチングで示す。そして、第1の領域15b及び第2の領域15c以外である、図では左上から右下への密なハッチングで示した第3の領域15dを更に暗く、即ち、第2の領域15cよりも暗く点灯、例えば、微点灯と同じ輝度で点灯させる。なお、更に暗い点灯は、消灯を含む。」

i)「【0049】
また、第1の領域15b及び第2の領域15cは、円状に限るものではない。指等が触れた接触位置15aを重心とする楕円であっても良く、長方形であっても良い。表示部15の表示画面が縦長であると例示したため、この楕円は縦長の形状が好ましい。また、この長方形は、表示部15と相似な縦長の形状が好ましい。」

j)「【0053】
表示部点灯制御機能11aは、通常点灯させる領域は透明な画素、暗く点灯させる領域は透明な画素及び黒色の画素、更に暗く点灯させる領域は透明な画素及び黒色の画素からなる輝度制御画像を、輝度制御レイヤとして記憶部の画像メモリに記憶させる。ここで、更に暗く点灯させる領域に含まれる黒色の画素の割合は、暗く点灯させる領域に含まれる黒色の画素より多い。図4には、図3(a)に示す輝度が領域毎に制御された画像を表示部15に表示させるための輝度制御画像の例を示す。なお、色等が異なる輝度制御画像を使い分けることによって、暗い点灯、更に暗い点灯の詳細を切り替えることができる。
【0054】
そして、制御部11の表示機能は、標準レイヤの上に輝度制御レイヤを重ねる動作を画像レイヤ処理ハードウェア(図示せず)に行わせることによって、輝度が領域毎に制御された、例えば、図3(a)に示す画像を作成させて、表示部15に表示させる。このように、輝度制御を画像レイヤ処理ハードウェアに行わせることによって、高速に輝度を変更することができる。」

k)「【0080】
以上の説明で、領域は、通常点灯、暗く点灯、及び更に暗く点灯の3段階の異なる輝度で点灯されるとしたが、これに限るものではない。通常点灯及び暗く点灯、又は、通常点灯及び更に暗く点灯の2段階の異なる輝度で点灯されても良い。また、4段階以上の異なる輝度で点灯されても良い。更に、輝度は離散的に異なる値をとるのではなく、連続的に異なる値をとるとしても良い。」

上記下線部及び関連箇所の記載によれば、引用文献1には、表示部の輝度の制御方法として、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「表示部15は、使用者に操作を促す表示や、使用者が操作した内容の表示や、装置の動作状態の表示等に用いられる有機ELディスプレーであり、
タッチパッド16は、表示部15の表示画面の大きさと略等しい大きさであって、指やスタイラスペン(以後、指及びスタイラスペンを指等と称する。)が接触されたこと、及び、接触がなくなったことを検出し、
表示部点灯制御機能11aは、表示部15の表示画面の点灯及び消灯を制御し、更に、点灯の際の輝度を制御し、
通常点灯とは、使用者の容易な視認が可能な輝度での点灯であり、微点灯とは、通常点灯より輝度が小さい点灯であり、
輝度変動モードにおける表示部点灯制御機能11aによる表示部15の点灯及び消灯、更に、点灯の際の輝度を制御する動作は、
消費電力削減のために表示部15を微点灯又は消灯中にタッチパッド16への接触が検出されることにより、又は、装置の各部の動作によって新たな表示がされる際、上記制御動作を開始(ステップS101)し、
表示部15の全表示画面を所定の時間に渡って通常点灯させ(ステップS102)、
表示部15の表示画面のうち、接触が検出された位置を含む所定の領域を通常点灯させ、その領域外を暗く点灯させ(ステップS103)、
接触がなくなった、即ち、指等がタッチパッド16から離れた場合、表示部点灯制御機能11aは、所定の待ち時間をおいて(ステップS105)、ステップS103で通常点灯及び暗く点灯させた状況を継続させ、
その後、表示部15の全表示画面を所定の時間に渡って通常点灯させ(ステップS106)、
微点灯を経て消灯させ(ステップS107)るものであり、
ステップS102及びステップS106の全表示画面の通常点灯のステップは、省いても良く、
表示部15が微点灯又は消灯中であれば、使用者は、表示部15の表示を視認できない、又は、視認が困難であり、
通常点灯させる領域は、指等が触れた接触位置15aを中心とする第1の半径R1の円内である第1の領域15bであり、そして、表示部点灯制御機能11aは、第1の領域15bと同じ中心であり、第1の半径R1より大きい第2の半径R2の円内であり、かつ、第1の領域15bを除いた第2の領域15cを暗く点灯させ、そして、第1の領域15b及び第2の領域15c以外である、第3の領域15dを更に暗く、即ち、第2の領域15cよりも暗く点灯、例えば、微点灯と同じ輝度で点灯させ、なお、更に暗い点灯は、消灯を含むものであり、
また、第1の領域15b及び第2の領域15cは、円状に限るものではなく、指等が触れた接触位置15aを重心とする楕円であっても良く、長方形であっても良く、
表示部点灯制御機能11aは、通常点灯させる領域は透明な画素、暗く点灯させる領域は透明な画素及び黒色の画素、更に暗く点灯させる領域は透明な画素及び黒色の画素からなる輝度制御画像を、輝度制御レイヤとして記憶部の画像メモリに記憶させ、ここで、更に暗く点灯させる領域に含まれる黒色の画素の割合は、暗く点灯させる領域に含まれる黒色の画素より多く、
標準レイヤの上に輝度制御レイヤを重ねる動作を行わせることによって、輝度が領域毎に制御された画像を作成させて、表示部15に表示させ、
領域は、通常点灯、暗く点灯、及び更に暗く点灯の3段階の異なる輝度で点灯されるとしたが、通常点灯及び更に暗く点灯の2段階の異なる輝度で点灯されても良い
表示部の輝度の制御の方法。」

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア.引用発明は、「使用者に操作を促す表示や、使用者が操作した内容の表示や、装置の動作状態の表示等に用いられる有機ELディスプレー」である「表示部15」において、「表示部点灯制御機能11aは、通常点灯させる領域は透明な画素、暗く点灯させる領域は透明な画素及び黒色の画素、更に暗く点灯させる領域は透明な画素及び黒色の画素からなる輝度制御画像を、輝度制御レイヤとして記憶部の画像メモリに記憶させ、ここで、更に暗く点灯させる領域に含まれる黒色の画素の割合は、暗く点灯させる領域に含まれる黒色の画素より多く、標準レイヤの上に輝度制御レイヤを重ねる動作を行わせることによって、輝度が領域毎に制御された画像を作成させて、表示部15に表示させる」「表示部の輝度の制御の方法」であるから、引用発明の「表示部の輝度の制御の方法」は本願発明1の「複数のピクセルをもつスクリーン上にコンテンツを表示する方法であって、スクリーン上での前記複数のピクセルの光強度が調節可能であ」ることに相当するといい得るものである。

イ.引用発明において、「表示部15」を「消灯」することは、本願発明1の「ピクセルの光強度を光強度なし」に設定することに相当するから、引用発明の「消費電力削減のために表示部15を微点灯又は消灯中にタッチパッド16への接触が検出されることにより、又は、装置の各部の動作によって新たな表示がされる際、上記制御動作を開始」するステップS101は、本願発明1の「スクリーンのすべてのピクセルの光強度を光強度なしまたはより低い光強度に設定するステップであって、前記より低い光強度は、対応するピクセル上に表示されるコンテンツがユーザーにとって知覚可能であることを可能にするものである、ステップ」と「スクリーンのすべてのピクセルの光強度を光強度なしに設定するステップ」である点では共通するといえる。

ウ.引用発明のステップS103は、「表示部15の表示画面のうち、接触が検出された位置を含む所定の領域を通常点灯させ、その領域外を暗く点灯させ」るものであるから、接触を検出するためにステップS103が「タッチするオブジェクトの前記スクリーン上でのタッチを受領する」といい得る構成を有することは明らかであり、また、引用発明は「ステップS102及びステップS106の全表示画面の通常点灯のステップは、省いても良」いものであるから、引用発明のうち、ステップS101の後にステップS102を省いて行われるステップS103は、本願発明1の「スクリーンのすべてのピクセルの光強度が光強度なしまたは前記より低い光強度に設定されている状態で、タッチするオブジェクトの前記スクリーン上でのタッチを受領するステップ」と「スクリーンのすべてのピクセルの光強度が光強度なしに設定されている状態で、タッチするオブジェクトの前記スクリーン上でのタッチを受領するステップ」である点では共通するといえる。

エ.引用発明は、ステップS103において「表示部15の表示画面のうち、接触が検出された位置を含む所定の領域を通常点灯させ、その領域外を暗く点灯させ」るものであり、「通常点灯させる領域は、指等が触れた接触位置15aを中心とする第1の半径R1の円内である第1の領域15bであり、そして、表示部点灯制御機能11aは、第1の領域15bと同じ中心であり、第1の半径R1より大きい第2の半径R2の円内であり、かつ、第1の領域15bを除いた第2の領域15cを暗く点灯させ、そして、第1の領域15b及び第2の領域15c以外である、第3の領域15dを更に暗く、即ち、第2の領域15cよりも暗く点灯、例えば、微点灯と同じ輝度で点灯させ、なお、更に暗い点灯は、消灯を含むものであり」、「領域は、通常点灯、暗く点灯、及び更に暗く点灯の3段階の異なる輝度で点灯されるとしたが、通常点灯及び更に暗く点灯の2段階の異なる輝度で点灯されても良い」ものであるから、引用発明が「接触が検出された位置を含む所定の領域」であり「指等が触れた接触位置15aを中心とする第1の半径R1の円内である第1の領域15b」である「通常点灯させる領域」を「通常点灯」させることは、本願発明1の「前記タッチするオブジェクトと前記スクリーンとの間の接触点の周囲のピクセルがより高い光強度をも」つように「ピクセルの光強度を調節する」ことに相当する。
また、引用発明のうち、「その領域外を暗く点灯させ」るものであり、「通常点灯及び更に暗く点灯の2段階の異なる輝度で点灯」するものは、「通常点灯」される「第1の領域15b」以外の領域全てを「消灯」を含む「更に暗く点灯」させるものが想定できるから、本願発明1の「残りのピクセル全部が光強度をもたないまたは前記より低い光強度のままであるように、ピクセルの光強度を調節する」ことと「残りのピクセル全部が光強度をもたないままであるように、ピクセルの光強度を調節する」点では共通するといえる。
したがって、引用発明は、本願発明1の「前記タッチするオブジェクトと前記スクリーンとの間の接触点の周囲のピクセルがより高い光強度をもち、残りのピクセル全部が光強度をもたないまたは前記より低い光強度のままであるように、ピクセルの光強度を調節するステップ」と「前記タッチするオブジェクトと前記スクリーンとの間の接触点の周囲のピクセルがより高い光強度をもち、残りのピクセル全部が光強度をもたないままであるように、ピクセルの光強度を調節するステップ」である点で共通する構成を有するといえる。

オ.引用発明は、「接触がなくなった、即ち、指等がタッチパッド16から離れた場合、表示部点灯制御機能11aは、所定の待ち時間をおいて(ステップS105)、ステップS103で通常点灯及び暗く点灯させた状況を継続させ、その後、表示部15の全表示画面を所定の時間に渡って通常点灯させ(ステップS106)、微点灯を経て消灯させ(ステップS107)るものであり、ステップS102及びステップS106の全表示画面の通常点灯のステップは、省いても良」いものであるから、引用発明のうち、ステップS105の後にステップS106を省いて行われるステップS107は、本願発明1の「ピクセルの光強度が調節されたときからの所与の時間期間の経過後に、前記ピクセルの光強度を、前記より高い光強度から前記より低い光強度または光強度なしに調節し直すステップ」と「所与の時間期間の経過後に、前記ピクセルの光強度を、前記より高い光強度から前記光強度なしに調節し直すステップ」である点で共通するといえる。

したがって、両者は以下の一致点と相違点とを有する。

〈一致点〉
「複数のピクセルをもつスクリーン上にコンテンツを表示する方法であって、スクリーン上での前記複数のピクセルの光強度が調節可能であり、当該方法は、
スクリーンのすべてのピクセルの光強度を光強度なしに設定するステップと;
スクリーンのすべてのピクセルの光強度が光強度なしに設定されている状態で、タッチするオブジェクトの前記スクリーン上でのタッチを受領するステップと;
前記タッチするオブジェクトと前記スクリーンとの間の接触点の周囲のピクセルがより高い光強度をもち、残りのピクセル全部が光強度をもたないままであるように、ピクセルの光強度を調節するステップとを含み、
当該方法はさらに、
所与の時間期間の経過後に、前記ピクセルの光強度を、前記より高い光強度から前記光強度なしに調節し直すステップを含む、
方法 。」

〈相違点1〉
本願発明1は、「スクリーンのすべてのピクセルの光強度を光強度なしまたはより低い光強度に設定する」ものであって「前記より低い光強度は、対応するピクセル上に表示されるコンテンツがユーザーにとって知覚可能であることを可能にするもの」であり、オブジェクトとスクリーンとの間の接触点の周囲のピクセルがより高い光強度をもち、「残りのピクセル全部が光強度をもたないまたは前記より低い光強度のままであるように」ピクセルの光強度を調節し、また、所定の時間期間の経過後にピクセルの光強度を「より高い光強度から前記より低い光強度または光強度なしに調節し直す」ものであるのに対して、引用発明は、「表示部15を微点灯又は消灯」とするものであって、「表示部15が微点灯又は消灯中であれば、使用者は、表示部15の表示を視認できない、又は、視認が困難であり」、「表示部15の表示画面のうち、接触が検出された位置を含む所定の領域を通常点灯させ、その領域外を暗く点灯させ」る場合に、「通常点灯」及び「微点灯と同じ輝度」である「消灯」を含む「更に暗い点灯」の2段階の異なる輝度で点灯するものである点。

〈相違点2〉
本願発明1は、「ピクセルの光強度が調節されたときからの所与の時間期間の経過後に」、「前記より低い光強度または光強度なしに調節し直す」ものであるのに対して、引用発明は、「接触がなくなった、即ち、指等がタッチパッド16から離れた場合、」「所定の待ち時間をおいて」、「微点灯を経て消灯させる」ものである点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について判断すると、上記引用文献1には、「表示部15の表示を視認できない、又は、視認が困難」である「点灯又は消灯」とすることは記載されているものの、上記相違点1に係る本願発明1の「スクリーンのすべてのピクセルの光強度を光強度なしまたはより低い光強度に設定する」ものであって「前記より低い光強度は、対応するピクセル上に表示されるコンテンツがユーザーにとって知覚可能であることを可能にするもの」であり、オブジェクトとスクリーンとの間の接触点の周囲のピクセルがより高い光強度をもち、「残りのピクセル全部が光強度をもたないまたは前記より低い光強度のままであるように」ピクセルの光強度を調節し、また、所定の時間期間の経過後にピクセルの光強度を「より高い光強度から前記より低い光強度または光強度なしに調節し直す」ものであるという構成は、上記引用文献1には記載されておらず、本願出願日前において周知技術であるともいえない。
また、引用発明において、「表示部15の表示を視認できない、又は、視認が困難」である「点灯又は消灯」とすることを、「光強度を光強度なしまたはより低い光強度に設定する」ものであって「前記より低い光強度は、対応するピクセル上に表示されるコンテンツがユーザーにとって知覚可能であることを可能にするもの」とすることに変更する起因もない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-4について
本願発明2-4は、本願発明1を引用するものであり、上記「1.請求項1について」にて述べたのと同じ理由により、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

3.本願発明5について
本願発明5も、本願発明1の「スクリーンのすべてのピクセルの光強度を光強度なしまたはより低い光強度に設定する」ものであって「前記より低い光強度は、対応するピクセル上に表示されるコンテンツがユーザーにとって知覚可能であることを可能にするもの」であり、オブジェクトとスクリーンとの間の接触点の周囲のピクセルがより高い光強度をもち、「残りのピクセル全部が光強度をもたないまたは前記より低い光強度のままであるように」ピクセルの光強度を調節し、また、所定の時間期間の経過後にピクセルの光強度を「より高い光強度から前記より低い光強度または光強度なしに調節し直す」ものであるという構成と実質的に同じ構成を備えるものであるから、上記「1.請求項1について」にて述べたのと同じ理由により、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

4.本願発明6について
本願発明6は、本願発明5を引用するものであり、上記「3.請求項5について」にて述べたのと同じ理由により、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 原査定について
本願発明1-6は、「スクリーンのすべてのピクセルの光強度を光強度なしまたはより低い光強度に設定する」ものであって「前記より低い光強度は、対応するピクセル上に表示されるコンテンツがユーザーにとって知覚可能であることを可能にするもの」であり、オブジェクトとスクリーンとの間の接触点の周囲のピクセルがより高い光強度をもち、「残りのピクセル全部が光強度をもたないまたは前記より低い光強度のままであるように」ピクセルの光強度を調節し、また、所定の時間期間の経過後にピクセルの光強度を「より高い光強度から前記より低い光強度または光強度なしに調節し直す」ものであるという技術的事項を有し、当該技術的事項は、原査定における引用文献A(当審拒絶理由における引用文献1)には記載されておらず、本願出願日前における周知技術でもないので、本願発明1-6は、当業者であっても、原査定における引用文献Aに基づいて容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-08-28 
出願番号 特願2015-544293(P2015-544293)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 池田 聡史  
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 山田 正文
稲葉 和生
発明の名称 コンテンツを表示する方法および装置  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  

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