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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1343483
審判番号 不服2017-8700  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-14 
確定日 2018-08-22 
事件の表示 特願2015-102960「パッド構造」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 1日出願公開、特開2015-173284〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成25年(2013年)9月2日の出願(パリ条約による優先権主張 2012年9月28日(以下,左の日を「本願優先日」という。),米国)である特願2013-181328号の一部を,平成27年5月20日に新たな出願としたものであって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年 5月20日 審査請求
平成28年 5月13日 拒絶理由通知
平成28年 9月26日 意見書・手続補正書
平成29年 2月 9日 拒絶査定
平成29年 6月14日 審判請求・手続補正書

第2 補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
審判請求と同時にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正により,本件補正前の特許請求の範囲の請求項1は,本件補正後の請求項1へ補正された。
(1)本件補正前
本件補正前の,特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
接着領域と,
前記接着領域下のパッドと,
前記パッド下の第一層間領域と,
前記第一層間領域下の第一金属間領域と,
前記第一層間領域下に設置された第一追加金属間領域と,
前記第一追加金属間領域下のパッシベーション酸化物領域と,
パッシベーション酸化物領域下のウェハと,
を含むパッド構造において,
第一領域は,前記第一層間領域,前記第一金属間領域,前記パッシベーション酸化物領域,前記第一追加金属間領域,および,前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記接着領域および前記パッド下に設置され,
第二領域は,前記第一層間領域,前記第一金属間領域,前記パッシベーション酸化物領域,前記第一追加金属間領域,および,前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記パッド下に前記第一領域に隣接して設置され,
前記第一層間領域は,前記第一領域の誘電体材料と前記第二領域の第一パッド接続を含み,
前記第一金属間領域は,前記第一領域の前記第一層間領域および前記第一金属間領域間の誘電体-誘電体インターフェースを形成する前記第一領域の誘電体材料,および,前記第二領域の金属を含み,および
前記第一追加金属間領域は,前記第二領域に設置され,テーパの付いた側壁を有し,前記第一金属間領域の前記第二領域の前記金属とインターフェース接続する第一ビアを含むことを特徴とするパッド構造。」
(2)本件補正後
本件補正後の,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである。(当審注。補正個所に下線を付した。下記(3)も同じ。)
「【請求項1】
接着領域と,
前記接着領域下のパッドと,
前記パッド下の第一層間領域と,
前記第一層間領域下の第一金属間領域と,
前記第一層間領域下に設置された第一追加金属間領域と,
前記第一追加金属間領域下のパッシベーション酸化物領域と,
パッシベーション酸化物領域下のウェハと,
を含むパッド構造において,
第一領域は,前記第一層間領域,前記第一金属間領域,前記パッシベーション酸化物領域,前記第一追加金属間領域,および,前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記接着領域および前記パッド下に設置され,
第二領域は,前記第一層間領域,前記第一金属間領域,前記パッシベーション酸化物領域,前記第一追加金属間領域,および,前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記パッド下に前記第一領域に隣接して設置され,
前記第一層間領域は,前記第一領域の誘電体材料と前記第二領域の第一パッド接続を含み,
前記第一金属間領域は,前記第一領域の前記第一層間領域および前記第一金属間領域間の誘電体-誘電体インターフェースを形成する前記第一領域の誘電体材料,および,前記第二領域の金属を含み,および
前記第一追加金属間領域は,前記第二領域に設置され,テーパの付いた側壁を有し,前記第一金属間領域の前記第二領域の前記金属とインターフェース接続する第一ビアを含み,前記第一ビアは,前記第一金属間領域の前記第二領域の前記金属とのインターフェースから延在し,前記ウェハに接近する方向に沿って増大する幅を有する
ことを特徴とするパッド構造。」
(3)本件補正事項
本件補正は,請求項1に記載された「第一追加金属間領域」の「第一ビア」について「前記第一ビアは,前記第一金属間領域の前記第二領域の前記金属とのインターフェースから延在し,前記ウェハに接近する方向に沿って増大する幅を有する」と限定する補正(以下,この補正事項を「本件補正事項」という。)を含むものである。
2 補正の適否
本件補正事項は,新規事項を追加するものではないから特許法17条の2第3項の規定に適合し,特許請求の範囲の減縮を目的とするから,同条4項の規定に適合し,同条5項2号に掲げるものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項)につき,さらに検討する。
(1)本願補正発明
本願補正発明は,本件補正後の請求項1に記載された,次のとおりのものと認める。(再掲)
「接着領域と,
前記接着領域下のパッドと,
前記パッド下の第一層間領域と,
前記第一層間領域下の第一金属間領域と,
前記第一層間領域下に設置された第一追加金属間領域と,
前記第一追加金属間領域下のパッシベーション酸化物領域と,
パッシベーション酸化物領域下のウェハと,
を含むパッド構造において,
第一領域は,前記第一層間領域,前記第一金属間領域,前記パッシベーション酸化物領域,前記第一追加金属間領域,および,前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記接着領域および前記パッド下に設置され,
第二領域は,前記第一層間領域,前記第一金属間領域,前記パッシベーション酸化物領域,前記第一追加金属間領域,および,前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記パッド下に前記第一領域に隣接して設置され,
前記第一層間領域は,前記第一領域の誘電体材料と前記第二領域の第一パッド接続を含み,
前記第一金属間領域は,前記第一領域の前記第一層間領域および前記第一金属間領域間の誘電体-誘電体インターフェースを形成する前記第一領域の誘電体材料,および,前記第二領域の金属を含み,および
前記第一追加金属間領域は,前記第二領域に設置され,テーパの付いた側壁を有し,前記第一金属間領域の前記第二領域の前記金属とインターフェース接続する第一ビアを含み,前記第一ビアは,前記第一金属間領域の前記第二領域の前記金属とのインターフェースから延在し,前記ウェハに接近する方向に沿って増大する幅を有する
ことを特徴とするパッド構造。」
(2)引用文献1の記載
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された,本願優先日前に日本国内で頒布された刊行物である,特開2002-222811号公報(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。(下線は,当審で付加した。以下同じ。)
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,ボンディングパッド領域を有する半導体装置およびその製造方法に関する。」
(イ)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は,パッド開口部が達している配線層の下方の層間絶縁層においてクラックが生じるのが抑えられた半導体装置およびその製造方法を提供することにある。」
(ウ)「【0014】
【発明の実施の形態】以下,本発明の好適な実施の形態について,図面を参照しながら説明する。
【0015】[半導体装置]図1は,半導体装置を模式的に示す平面図である。図2(a)は,図1の領域A10を拡大した図である。図2(b)は,図2(a)におけるA-A線に沿った断面を模式的に示す断面図である。
【0016】まず,半導体装置1000の平面構造を説明する。半導体装置1000は,図1に示すように,能動部100と,パッド領域200とを有する。パッド領域200は,能動部100の周辺に形成されている。
【0017】次に,半導体装置1000の断面構造を説明する。能動部における半導体基板10の表面上には,半導体素子(図示せず)が形成されている。半導体素子は,たとえばMISトランジスタ,メモリトランジスタである。半導体基板10の上には,第1の層間絶縁層20が形成されている。第1の層間絶縁層20の上には,第1の配線層30が形成されている。第1の層間絶縁層20および第1の配線層30の上には,第2の層間絶縁層22が形成されている。具体的には,上方に後述の保護絶縁層50が形成されている第1の層間絶縁層20の上面を第1の領域とすると,第1の配線層30は,第1の領域の上に形成されている。また,上方に後述のパッド開口部60が形成されている第1の層間絶縁層20の上面を第2の領域とすると,第2の領域の上には,第2の層間絶縁層22が形成されている。第2の層間絶縁層22において,第1の配線層30と第2の配線層32とを電気的に接続するための第1のプラグ70が形成されている。
【0018】第2の層間絶縁層22および第1のプラグ70の上には,第2の配線層32が形成されている。第2の層間絶縁層22および第2の配線層32の上には,第3の層間絶縁層24が形成されている。具体的には,上方に後述の保護絶縁層50が形成されている第2の層間絶縁層22の上面を第3の領域とすると,第2の配線層32は,第3の領域の上に形成されている。また,上方に後述のパッド開口部60が形成されている第2の層間絶縁層22の上面を第4の領域とすると,第4の領域の上には,第3の層間絶縁層24が形成されている。
【0019】第3の層間絶縁層24の上には,第3の配線層40が形成されている。第3の配線層40の厚さは,第1および第2の配線層30,32より厚いことが好ましい。第3の層間絶縁層24において,第3の配線層40と第2の配線層32とを電気的に接続するための第2のプラグ72が形成されている。
【0020】第3の層間絶縁層24およびプラグ配線層40の上において,保護絶縁層50が形成されている。保護絶縁層50において,パッド開口部60が形成されている。パッド開口部60は,第3の配線層40の上面に達している。パッド開口部60の幅は,たとえば30?150μmである。パッド開口部60の平面の面積は,たとえば30×30?150×150μm^(2)である。このパッド開口部60において,外部と第3の配線層40とを電気的に接続するために,たとえばワイヤボンディングがなされる。
【0021】次に,本実施の形態における特徴点を説明する。第3の配線層40の下のレベルにおいて形成された,第1および第2の配線層30,32は,平面的にみてパッド開口部60の領域外において形成されている。つまり,パッド開口部60の下方の領域において,第1および第2の配線層30,32が形成されていない。このため,たとえばワイヤボンディングの際に,第3の配線層40に衝撃が加わっても,その衝撃を層間絶縁層20,22,24のみで受けることができる。その結果,第3の配線層40の下の層間絶縁層20,22,24においてクラックが生じるのを抑えることができる。また,配線層と層間絶縁層との界面において,膜はがれが生じるのを抑えることができる。」
(エ)「【0022】[半導体装置の製造方法]以下,図2を参照して,実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する。
【0023】まず,半導体基板10の上に,半導体素子(たとえばMISトランジスタ,メモリトランジスタ)を形成する。次に,公知の方法により,酸化シリコンからなる第1の層間絶縁層20を形成する。第1の層間絶縁層20は,必要に応じて,化学的機械的研磨法(CMP法)により,平坦化される。
【0024】次に,第1の層間絶縁層20の上に,第1の配線層30を形成する。第1の配線層30は,公知の方法により導電層(たとえばアルミニウム層,アルミニウムと銅との合金層)を形成し,その導電層をパターニングすることにより形成される。第1の配線層30は,パッド開口部60が形成される領域以外の領域に形成されるようにする。
【0025】次に,第1の配線層30および第1の層間絶縁層20の上において,公知の方法により,酸化シリコンからなる第2の層間絶縁層22を形成する。第2の層間絶縁層22は,必要に応じて,CMP法により平坦化される。次に,第2の層間絶縁層22において,第1の配線層30に達するスルーホール22aを形成する。スルーホール22aの幅は,たとえば0.2?0.5μmである。スルーホール22aの平面の面積は,たとえば0.2×0.2?0.5×0.5μm^(2)である。次に,スルーホール22a内に,第1のプラグ70を形成する。第1のプラグ70は,タングステン層を全面に形成し,そのタングステン層をエッチバックすることにより形成される。
【0026】次に,第1のプラグ70および第2の層間絶縁層22の上に,第2の配線層32を形成する。第2の配線層32は,公知の方法により導電層(たとえばアルミニウム層,アルミニウムと銅との合金層)を形成し,その導電層をパターニングすることにより形成される。第2の配線層32は,パッド開口部60が形成される領域以外の領域に形成されるようにする。
【0027】次に,第2の層間絶縁層22および第2の配線層32の上に,公知の方法により,酸化シリコンからなる第3の層間絶縁層24を形成する。第3の層間絶縁層24は,必要に応じて,CMP法により平坦化される。次に,第3の層間絶縁層24において,第2の配線層32に達するスルーホール24aを形成する。スルーホール24aの幅は,たとえば0.2?0.5μmである。スルーホール24aの平面の面積は,たとえば0.2×0.2?0.5×0.5μm^(2)である。次に,スルーホール24a内に,第2のプラグ72を形成する。第2のプラグ72は,タングステン層を全面に形成し,そのタングステン層をエッチバックすることにより形成される。
【0028】次に,第3の層間絶縁層24および第2のプラグ72の上に,第3の配線層40を形成する。第3の配線層40は,公知の方法により導電層(たとえばアルミニウム層,アルミニウムと銅との合金層)を形成し,その導電層をパターニングすることにより形成される。」
(オ)「【0030】(作用効果)本実施の形態に係る半導体装置の製造方法の作用効果を説明する。
【0031】本実施の形態においては,第1および第2の配線層30,32をパッド開口部60の領域外において形成されるようにしている。このため,パッド開口部60の下方の領域において,第1および第2の配線層30,32が形成されていない。その結果,ボンディングの際にかかる応力は,第1?第3の層間絶縁層20,22,24のみで受けることができる。このため,第1?第3の層間絶縁層20,22,24においてクラックが生じるのを抑えることができる。また,層間絶縁層と配線層との界面において,膜はがれが生じるのを抑えることができる。」
(カ)「【0032】[変形例]本実施の形態は,次の変形が可能である。
(中略)
【0040】(6)上記実施の形態においては,第3の配線層40の下の配線層は,第1の配線層および第2の配線層であり,2層であった。しかし,第3の配線層40の下の配線層は,1層であってもよく,または,3層以上であってもよい。」
イ 引用発明
前記アより,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「半導体装置1000のパッド領域200であって,
パッド開口部60においてワイヤボンディングがなされ,パッド開口部60は第3の配線層40の上面に達しており,
第3の層間絶縁膜24の上には,第3の配線層40が形成されており,第2の層間絶縁層22の上には,第2の配線層32及び第3の層間絶縁層24が形成されており,第1の層間絶縁層20の上には,第1の配線層30及び第2の層間絶縁層22が形成されており,半導体基板10の上には,第1の層間絶縁層20が形成されており,
上方にパッド開口部60が形成されている第2の領域の上には,第2の層間絶縁膜22が形成され,上方にパッド開口部60が形成されている第4の領域の上には,第3の層間絶縁層24が形成されており,
第1の配線層30及び第2の配線層32は,平面的にみてパッド開口部60の領域外において形成され,
第3の層間絶縁層24において,第3の配線層40と第2の配線層32とを電気的に接続するための第2のプラグ72が形成されている。」
(3)引用文献2の記載
ア 引用文献2
本願優先日前に日本国内で頒布された刊行物である,特開平8-172130号公報(以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,金属配線材料で開口部内が確実に埋め込まれた接続孔が形成された半導体装置の配線構造及びその形成方法,更に詳しくは,所謂高圧リフロー法に基づいた半導体装置の配線構造及びその形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体デバイスの高集積化に伴い,寸法ルールが微細化している。そして,半導体デバイスの配線形成プロセスにおいては,狭くて深い(アスペクト比の高い)コンタクトホール,ビアホール,スルーホール(以下,総称して接続孔と呼ぶ)を安定に形成する技術が極めて重要となっている。接続孔は,例えば導体層の上方に形成された絶縁層に開口部を設け,かかる開口部内に金属配線材料を埋め込むことによって形成される。例えばアルミニウム系合金から成る金属配線材料をスパッタ法にて開口部内を含む絶縁層上に成膜する場合,アルミニウム系合金のスパッタ粒子が開口部の側壁の影になる部分には多く入射しない,所謂シャドウイング効果が生じる。その結果,開口部内での金属配線材料のカバレッジが悪くなり,金属配線材料の堆積が少ない開口部底部の近傍において断線不良が発生し易い問題が生じている。そのため,開口部内を金属配線材料で確実に埋め込むプロセス技術が要求されている。」
(イ)「【0009】従って,本発明の目的は,接続孔とその下に形成された導体層との間のコンタクト抵抗を増加させることなく,確実に金属配線材料で開口部内が埋め込まれた接続孔を有する半導体装置の配線構造及びその形成方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するための本発明の半導体装置の配線構造は,(イ)導体層が設けられた基体上に形成された絶縁層と,(ロ)該導体層の上方の絶縁層に形成された開口部及び該開口部内に埋め込まれた金属配線材料から成る接続孔と,(ハ)該金属配線材料から成り,該絶縁層上に形成され,該接続孔と接続された配線,から成る半導体装置の配線構造であって,開口部の側壁には,絶縁材料から成るオーバーハング状のサイドウオールが形成されていることを特徴とする。」
(ウ)「【0019】(実施例1)実施例1の半導体装置の配線構造の模式的な一部断面図を図1の(A)に示す。実施例1の配線構造は,絶縁層20と,接続孔25と,配線26から構成されている。絶縁層20は,導体層15が設けられた基体10上に形成されている。実施例1においては,導体層15はソース・ドレイン領域であり,基体10は半導体基板である。接続孔25は,導体層15の上方の絶縁層20に形成された開口部21,及びこの開口部21内に埋め込まれた金属配線材料24から成る。配線26は,金属配線材料24から成り,絶縁層20上に形成されており,しかも接続孔25と接続されている。実施例1においては,金属配線材料24はAl-0.5%Cuから構成されている。
【0020】開口部21の側壁には,絶縁材料から成るオーバーハング状のサイドウオール22が形成されている。実施例1においては,サイドウオール22はSiO_(2)から成る。それ故,図1の(B)に一部の図示を省略して示した開口部の部分を示すように,絶縁層20の表面近傍における開口部の径が最小値(R_(0))をとり,開口部の底部に向かって開口部の径が増加する。」
(エ)「【0033】(実施例2)実施例2の半導体装置の配線構造は,実質的には実施例1にて説明した配線構造と同様である。但し,図4に示すように,実施例2においては,基体は,半導体基板(図示せず)の上方に形成された下層絶縁層30から成り,導体層は下層絶縁層30の上に形成された下層配線層31から成る。尚,下層絶縁層30に溝部を形成し,かかる溝部内に下層配線層31を形成してもよい。図4において,下層配線層31は紙面の垂直方向に延びている。
【0034】実施例2が実施例1と相違する点は,サイドウオールの形成工程が相違する点にある。即ち,実施例2においては,サイドウオールの形成工程は,供給律速形のCVD法により絶縁層上及び開口部内に絶縁材料層を堆積させた後,絶縁層上及び開口部底部の絶縁材料層を除去する工程から構成されている。サイドウオールはSiNから成る。供給律速形のCVD法を採用することによって,カバレッジの悪い,コンフォーマルではない絶縁材料層を形成することが可能になり,開口部の側壁にオーバーハング状のサイドウオールを形成することができる。以下,図5を参照して,実施例2の半導体装置の配線構造形成方法を説明する。
【0035】[工程-200]例えばCVD法にて形成されたSiO_(2)から成る下層絶縁層30(基体に相当する)の上に金属配線材料から成る下層配線層31を公知の方法で形成する(図5の(A)参照)。尚,下層配線層31から下方へと延びる接続孔を形成しておくこともできる。
【0036】[工程-210]次に,下層配線層31(導体層に相当する)が形成された下層絶縁層30(基体に相当する)上に絶縁層20を形成する。絶縁層20は,例えばSiO_(2)から成り,CVD法にて形成することができる。その後,下層配線層31の上方の絶縁層20に,フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて開口部21を設ける(図5の(B)参照)。開口部自体の径(R_(1))を0.5μm,アスペクト比を1.5とした。
【0037】[工程-220]その後,供給律速形のCVD法により絶縁層20上及び開口部21内に,SiNから成る絶縁材料層を堆積させる。絶縁材料層の絶縁層20上での厚さを0.15μmとした。CVDの条件を以下に例示する。尚,実施例2においては,カバレッジのよいSiN膜を形成する場合と比較して,N_(2)Oガスの供給量が少なく,供給律速形のCVD条件となっている。
使用ガス :SiH_(4)/N_(2)O=50/10sccm
圧力 :330Pa
RFパワー :190W
基体加熱温度:400゜C
【0038】その後,異方性のドライエッチングによる絶縁材料層の全面エッチバックを行う。これによって,開口部21の底部の薄い絶縁材料層及び絶縁層20上の絶縁材料層が除去され,絶縁層20の表面近傍における開口部の最小径(R_(0))が0.4μm未満の,逆テーパ形状(オーバーハング状)のサイドウオール22が形成された(図5の(C)参照)。
【0039】次に,実施例1の[工程-130]の下地層23の形成,金属配線材料層24Aの形成,[工程-140]の高圧リフロー処理,[工程-150]の配線の形成を実施例1と同様に行い,図4に示した配線構造を完成させる。」
イ 引用技術的事項
前記アより,引用文献2には,次の技術的事項(以下,「引用技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「接続孔とその下に形成された導体層との間のコンタクト抵抗を増加させることなく,確実に金属配線材料で開口部内が埋め込まれた接続孔を有する半導体装置の配線構造であって,接続孔は,導体層の上方の絶縁層に形成された開口部及びこの開口部内に埋め込まれた金属配線材料から成り,開口部の側壁には,オーバーハング状のサイドウオールが形成されており,絶縁層の表面近傍における開口部の径が最小値をとり,開口部の底部に向かって開口部の径が増加すること。」
(4)本願補正発明と引用発明との対比
ア 引用発明において「パッド開口部60においてワイヤボンディングがなされ」るから,同「パッド開口部60」は本願補正発明の「接着領域」に相当する。
イ 引用発明において「パッド開口部60は第3の配線層40の上面に達しており」,前記アを考慮すると,同「第3の配線層40」は本願補正発明の「前記接着領域下のパッド」に相当する。
ウ 引用発明において「第3の層間絶縁膜24の上には,第3の配線層40が形成されており」かつ「第2の層間絶縁層22の上には,第2の配線層32及び第3の層間絶縁層24が形成されて」いるから,前記イを考慮すると,同「第2の配線層32及び第3の層間絶縁膜24」は本願補正発明の「前記パッド下の第一層間領域」といえる。
エ 引用発明において「第2の層間絶縁層22の上には,第2の配線層32及び第3の層間絶縁層24が形成されており」かつ「第1の層間絶縁層20の上には,第1の配線層30及び第2の層間絶縁層22が形成されて」いるから,前記ウを考慮すると,同「第1の配線層30及び第2の層間絶縁層22」は本願補正発明の「前記第一層間領域下の第一金属間領域」といえる。
オ 引用発明において「半導体基板10の上には,第1の層間絶縁層20が形成されており」,第1の層間絶縁層20は「酸化シリコンからなる」(前記(2)ア(エ)【0023】)から,同「半導体基板10」及び「第1の層間絶縁層20」は,下記相違点1を除いて,それぞれ本願補正発明の「パッシベーション酸化物領域下のウェハ」及び「パッシベーション酸化物領域」に相当する。
カ 引用発明の「半導体装置1000のパッド領域200」は,下記相違点1を除いて,本願補正発明の「パッド構造」に相当する。
キ 引用発明において「上方にパッド開口部60が形成されている第2の領域」及び「上方にパッド開口部60が形成されている第4の領域」はともに「上方にパッド開口部60が形成されている」「領域」であり,また「パッド開口部60の下方の領域において,第1および第2の配線層30,32が形成されていない」(前記(2)ア(オ))という技術的思想が示されているから,前記アないしオを考慮すると,同「領域」は,下記相違点1を除いて,本願補正発明の「第一領域は,前記第一層間領域,前記第一金属間領域,前記パッシベーション酸化物領域,および,前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記接着領域および前記パッド下に設置され」を満たす。
ク 引用発明において「第1の配線層30及び第2の配線層32は,平面的にみてパッド開口部60の領域外において形成され」ており,前記キの技術的思想とともに,前記アないしオを考慮すると,同「平面的にみてパッド開口部60の領域外」の領域は,下記相違点1を除いて,本願補正発明の「第二領域は,前記第一層間領域,前記第一金属間領域,前記パッシベーション酸化物領域,および,前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記パッド下に前記第一領域に隣接して設置され」を満たす。
ケ 引用発明において,「上方にパッド開口部60が形成されている第4の領域の上には,第3の層間絶縁層24が形成されており」また「第3の層間絶縁層24において,第3の配線層40と第2の配線層32とを電気的に接続するための第2のプラグ72が形成されて」いるから,前記アないしクを考慮すると,同「第3の層間絶縁層24」及び「第2のプラグ72」は,本願補正発明の「前記第一層間領域は,前記第一領域の誘電体材料と前記第二領域の第一パッド接続を含み」を満たす。
コ 引用発明において,「上方にパッド開口部60が形成されている第2の領域の上には,第2の層間絶縁膜22が形成され」また「第1の配線層30は,平面的にみてパッド開口部60の領域外において形成され」ており,「第1の配線層30」は具体的には「アルミニウム層,アルミニウムと銅との合金層」といった金属で形成される(前記(2)ア(エ)【0024】)から,前記アないしケを考慮すると,同「第2の層間絶縁膜22」及び「第1の配線層30」は,本願補正発明の「前記第一金属間領域は,前記第一領域の前記第一層間領域および前記第一金属間領域間の誘電体-誘電体インターフェースを形成する前記第一領域の誘電体材料,および,前記第二領域の金属を含み」を満たす。
サ すると,本願補正発明と引用発明とは,下記シの点で一致し,下記スの点で相違する。
シ 一致点
「接着領域と,
前記接着領域下のパッドと,
前記パッド下の第一層間領域と,
前記第一層間領域下の第一金属間領域と,
パッシベーション酸化物領域と,
パッシベーション酸化物領域下のウェハと,
を含むパッド構造において,
第一領域は,前記第一層間領域,前記第一金属間領域,前記パッシベーション酸化物領域,および,前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記接着領域および前記パッド下に設置され,
第二領域は,前記第一層間領域,前記第一金属間領域,前記パッシベーション酸化物領域,および,前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記パッド下に前記第一領域に隣接して設置され,
前記第一層間領域は,前記第一領域の誘電体材料と前記第二領域の第一パッド接続を含み,
前記第一金属間領域は,前記第一領域の前記第一層間領域および前記第一金属間領域間の誘電体-誘電体インターフェースを形成する前記第一領域の誘電体材料,および,前記第二領域の金属を含む
ことを特徴とするパッド構造。」
ス 相違点
(ア)相違点1
本願補正発明では,「前記第一層間領域下に設置された第一追加金属間領域」を含み,「パッシベーション酸化物領域」は「前記第一追加金属間領域下のパッシベーション酸化物領域」であり,「第一領域」及び「第二領域」は「前記第一追加金属間領域」にも延在し,「前記第一追加金属間領域は,前記第二領域に設置され,テーパの付いた側壁を有し,前記第一金属間領域の前記第二領域の前記金属とインターフェース接続する第一ビアを含」むのに対し,引用発明ではこの旨が明示されない点。
(イ)相違点2
本願補正発明では,「前記第一ビアは,前記第一金属間領域の前記第二領域の前記金属とのインターフェースから延在し,前記ウェハに接近する方向に沿って増大する幅を有する」のに対し,引用発明ではこの旨が明示されない点。
(5)相違点についての検討
ア 相違点1について
引用文献1には「変形例」として「第3の配線層40の下の配線層は,3層以上であってもよい」(前記(2)ア(カ))と記載されているから,引用発明において配線層を3層以上とすることが示唆されている。すると,この示唆にしたがって引用発明において第1の配線層30及び第2の層間絶縁層22の下に,同様な位置関係を有する配線層とプラグを含む層間絶縁層(本願補正発明の「第一追加金属間領域」に相当)を追加することは当業者が容易になし得ることである。
そして,その際にプラグ(ビア)を実際に形成しようとすれば,ビアは通常エッチングにより上方(ウェハから遠い方)から下方に掘り進めて形成するから上方でより長時間エッチャントにさらされることにより,本質的にテーパー形状となるのであって(特開2009-99993号公報【0006】参照。),「テーパーのついた側壁を有する」ビアとすることは,プラグ(ビア)形成技術の具体的適用に伴う設計的事項にすぎない。
イ 相違点2について
ビアを相違点2に係る形状とすることの技術的意義やその効果について検討する。本願明細書を参酌すると,本願の図2及び図3には指示番号「162A」が付された「下方が幅広の台形形状のもの」が記載されているが,同図を参照する本願明細書の段落【0009】及び【0018】には,「ウェハに接近する方向に沿って増大する幅を有する」ことの技術的意義やその製造方法について言及はない。かえって,本願の図4には「下方が幅広の台形形状のもの」と逆向きである「上方が幅広の台形形状のもの」の両方が記載されており,これを参照して本願明細書の段落【0021】には「図4は,具体例による剥離を軽減する実例パッド構造400の断面図である。」と記載されているのであるから,本願明細書の段落【0003】に記載された「本発明は,剥離を軽減するパッド構造を提供することを目的とする。」という課題との関係において,「下方が幅広の台形形状のもの」であろうが「上方が幅広の台形形状のもの」であろうがどちらでもよいとしか理解できず,「ウェハに接近する方向に沿って増大する幅を有する」ことの技術的意義やその効果は,当業者にとって不明と言うほかはない。
そもそも,本願の図1ないし図4のすべてにおいて,指示番号「120」が付された「パッド」の直下に位置する,指示番号「122」が付された「パッド接続」はテーパーの付いていない長方形として表現されており,最もパッド120における力190の影響を受けるパッド接続122がテーパー不要のものとして表現されているのであるから,テーパーの向きはおろかテーパーを付けること自体にすら本願補正発明における技術的意義やその効果を認めることはできない。
そして,引用技術的事項により「接続孔とその下に形成された導体層との間のコンタクト抵抗を増加させることなく,確実に金属配線材料で開口部内が埋め込まれた接続孔」として「絶縁層の表面近傍における開口部の径が最小値をとり,開口部の底部に向かって開口部の径が増加すること」が示されており,引用発明においてプラグを設計する際に「接続孔とその下に形成された導体層との間のコンタクト抵抗を増加させることなく,確実に金属配線材料で開口部内が埋め込まれた接続孔」を実現するために,引用技術的事項を採用することにより,ビアを相違点2に係る形状とすることは,当業者が適宜なし得る設計変更にすぎない。
ウ 効果について
「パッド構造に関連する剥離を軽減する」(本願明細書段落【0005】)という本願補正発明の効果については,前記(2)ア(オ)のとおり,引用発明も同様の効果を奏するものであるから,引用発明に比して格別のものではない。なお,相違点2に係る構成による効果も上述イのとおり,格別のものと認めることはできない。
(6)まとめ
以上のとおり,本願補正発明は,引用文献1及び2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 むすび
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明の特許性の有無について
1 本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成28年9月26日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された,次のとおりのものと認める。
「接着領域と,
前記接着領域下のパッドと,
前記パッド下の第一層間領域と,
前記第一層間領域下の第一金属間領域と,
前記第一層間領域下に設置された第一追加金属間領域と,
前記第一追加金属間領域下のパッシベーション酸化物領域と,
パッシベーション酸化物領域下のウェハと,
を含むパッド構造において,
第一領域は,前記第一層間領域,前記第一金属間領域,前記パッシベーション酸化物領域,前記第一追加金属間領域,および,前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記接着領域および前記パッド下に設置され,
第二領域は,前記第一層間領域,前記第一金属間領域,前記パッシベーション酸化物領域,前記第一追加金属間領域,および,前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記パッド下に前記第一領域に隣接して設置され,
前記第一層間領域は,前記第一領域の誘電体材料と前記第二領域の第一パッド接続を含み,
前記第一金属間領域は,前記第一領域の前記第一層間領域および前記第一金属間領域間の誘電体-誘電体インターフェースを形成する前記第一領域の誘電体材料,および,前記第二領域の金属を含み,および
前記第一追加金属間領域は,前記第二領域に設置され,テーパの付いた側壁を有し,前記第一金属間領域の前記第二領域の前記金属とインターフェース接続する第一ビアを含む
ことを特徴とするパッド構造。」
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,本願発明は,本願優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用文献1:特開2002-222811号公報
3 引用文献
前記第2の2(2)のとおり,引用文献1には引用発明が記載されていると認められる。
4 判断
本願発明と引用発明を対比すると,前記第2の2(4)と同様であり,同じ相違点1で相違するが,その余の点で一致する。そして,前記第2の2(5)アのとおり,相違点1に係る構成を得ることは,当業者が容易になし得ることであり,本願発明の効果については,同ウで述べたところと同様であるから,引用発明に比して格別のものではない。
5 まとめ
よって,本願発明は,引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

第4 結言
したがって,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないから,その余の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-03-20 
結審通知日 2018-03-27 
審決日 2018-04-09 
出願番号 特願2015-102960(P2015-102960)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河合 俊英  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 大嶋 洋一
深沢 正志
発明の名称 パッド構造  
代理人 井上 和真  
代理人 田澤 英昭  
代理人 辻岡 将昭  
代理人 中島 成  
代理人 濱田 初音  
代理人 坂元 辰哉  

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