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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1343526
審判番号 不服2017-12259  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-18 
確定日 2018-08-20 
事件の表示 特願2015-198957号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年2月4日出願公開、特開2016-19912号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年5月8日に出願した特願2009-113349号の一部を平成25年5月31日に新たな特許出願(特願2013-115744号)とし、さらにその一部を平成26年7月2日に新たな特許出願(特願2014-136551号)とし、さらにその一部を平成27年10月6日に新たな特許出願としたものである。
そして、平成28年5月18日に手続補正書が提出され、同年9月15日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月10日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月21日付けで最後の拒絶の理由が通知され、平成29年1月5日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成29年5月29日付け(発送日:平成29年6月2日)で、平成29年1月5日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、平成29年8月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1.本件補正について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載を含む補正であり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、平成28年11月10日付けの手続補正書における、

「 遊技媒体を用いた遊技を行う遊技機であって、
所定条件の成立に基づいて判定を行う判定手段と、
前記判定手段の判定結果が特別の結果であった場合に、遊技者に利益を付与する利益付与手段と、
前記判定手段の判定結果に基づいて演出を制御する演出制御手段と、
前記演出として所定の表示演出が行われる演出表示部と、
当該遊技機の前面側を構成する前扉に設けられた可動体と、
を備え、
前記可動体は、通常の状態である第1状態と、該第1状態とは異なる第2状態とに変化可能であり、前記第1状態および前記第2状態の何れにあるときにも前記演出表示部で行われる前記表示演出を隠蔽しないように設けられたものであって、
前記演出制御手段は、
前記可動体の動作にかかる制御を行う可動体動作制御手段と、
前記可動体動作制御手段による制御を受けて前記可動体が前記第2状態に変化した場合に、該可動体が前記第1状態にある場合には行われることのない所定の動作対応演出を実行可能な動作対応演出実行手段と、を有し、
前記動作対応演出実行手段は、前記動作対応演出として前記演出表示部で特定の表示演出を実行可能であり、
該特定の表示演出を前記可動体が前記第2状態にある間に実行しうる
ことを特徴とする遊技機。」(以下「本件補正前請求項1」という。)から、

「A 遊技媒体を用いた遊技を行う遊技機であって、
B 所定条件の成立に基づいて判定を行う判定手段と、
C 前記判定手段の判定結果が特別の結果であった場合に、遊技者に利益を付与する利益付与手段と、
D 前記判定手段の判定結果に基づいて演出を制御する演出制御手段と、
E 前記演出として所定の表示演出が行われる演出表示部と、
F 当該遊技機の前面側を構成する前扉に設けられた可動体と、
を備え、
G 前記可動体は、所定方向に向けて動作している状態と、所定方向に向けて動作していない状態の何れにあるときにも前記演出表示部で行われる表示演出を隠蔽しないように設けられたものであって、
H 前記演出制御手段は、
前記可動体を所定方向に向けて動作させる制御を行う可動体動作制御手段と、
I 前記可動体動作制御手段の制御により前記可動体が所定方向に向けて動作するときに、所定の動作対応演出を実行可能な動作対応演出実行手段と、を有し、
J 前記動作対応演出実行手段は、前記動作対応演出として前記演出表示部で特定の表示演出を実行するものであり、
K 該特定の表示演出は、前記可動体を所定方向に向けて動作させている期間に実行される
L ことを特徴とする遊技機。」
(下線部は補正箇所を示す。また、A?Lの符号は分説のため当審にて付与したものである。)に補正された。

2.補正の適否
(1)本件補正
本件補正は、特許請求の範囲について、平仄を合わせるための補正を除き、以下に挙げる補正事項を含むものである。
ア 「通常の状態である第1状態と、該第1状態とは異なる第2状態と」という記載を「所定方向に向けて動作している状態と、所定方向に向けて動作していない状態」と変更する補正(構成G)

イ 「前記可動体の動作にかかる制御」という記載を「前記可動体を所定方向に向けて動作させる制御」と変更する補正(構成H)

ウ 「前記可動体が前記第2状態に変化した場合」という記載を「前記可動体が所定方向に向けて動作するとき」と変更する補正(構成I)

エ 「該可動体が前記第1状態にある場合には行われることのない所定の動作対応演出」を「所定の動作対応演出」と変更する補正(構成I)

オ 「前記可動体が前記第2状態にある間」という記載を「前記可動体を所定方向に向けて動作させている期間」と変更する補正(構成K)

(2)新規事項の有無についての検討
本件補正により加入された上記(1)ア?ウ、オの補正事項は何れも、可動体が制御される状態に、所定方向に向けて動作している状態と、所定方向に向けて動作していない状態とが存在することに関するものであり、願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」という。)の【0354】、【0365】、【0378】などに記載された事項に基づくものであり、新規事項を追加するものではない。
また、上記(1)エの補正により、「所定の動作対応演出」が「可動体が第1状態にある場合」すなわち本件補正後の「可動体が所定方向に向けて動作していない状態」おいても実行されうる場合が含まれることとなったといえるが、当初明細書の【0407】?【0412】には、リングキャップ341が回転を開始する前後に跨がって液晶表示装置640の表示が変化することが記載されていることから、当該補正事項も新規事項を追加するものとまではいえない。

(3)補正の目的要件違反についての検討
ア 上記(1)ア、ウ、オの補正事項は、本件補正前請求項1に記載した、発明を特定するために必要な事項である「可動体」の「通常の状態である第1状態」を、可動体が「所定方向に向けて動作していない状態」と限定し、同じく「可動体」の「第2状態」を可動体が「所定方向に向けて動作している状態」と限定するものである。
よって、該各補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 上記(1)イの補正事項は、本件補正前請求項1に記載した、発明を特定するために必要な事項である「可動体の動作にかかる制御」に関し、その制御内容を「所定方向に向けて動作させる」ものに限定するものである。
よって、該各補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

ウ 上記(1)エの補正事項は、本件補正前請求項1に記載した、発明を特定するために必要な事項である「所定の動作対応演出」について、「可動体が前記第1状態にある場合には行われることのない」ものであるとの限定事項を削除するものである。
よって、当該補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当しない。
また、同号第1、3、4号の何れを目的とするものでもない。

エ 以上のとおりであるから、上記(1)の各補正事項のうちエは、特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものではない。
よって、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

しかしながら、事案に鑑み、本件補正が特許法第17条の2第3項及び第5項の規定に違反せず、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものと仮定して、本件補正により補正された請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、念のため以下検討を続けることとする。

3.本件補正発明の独立特許要件についての検討
(1)本件補正発明について
本件補正発明は、上記1.に示した次のとおりのものである。
「A 遊技媒体を用いた遊技を行う遊技機であって、
B 所定条件の成立に基づいて判定を行う判定手段と、
C 前記判定手段の判定結果が特別の結果であった場合に、遊技者に利益を付与する利益付与手段と、
D 前記判定手段の判定結果に基づいて演出を制御する演出制御手段と、
E 前記演出として所定の表示演出が行われる演出表示部と、
F 当該遊技機の前面側を構成する前扉に設けられた可動体と、
を備え、
G 前記可動体は、所定方向に向けて動作している状態と、所定方向に向けて動作していない状態の何れにあるときにも前記演出表示部で行われる表示演出を隠蔽しないように設けられたものであって、
H 前記演出制御手段は、
前記可動体を所定方向に向けて動作させる制御を行う可動体動作制御手段と、
I 前記可動体動作制御手段の制御により前記可動体が所定方向に向けて動作するときに、所定の動作対応演出を実行可能な動作対応演出実行手段と、を有し、
J 前記動作対応演出実行手段は、前記動作対応演出として前記演出表示部で特定の表示演出を実行するものであり、
K 該特定の表示演出は、前記可動体を所定方向に向けて動作させている期間に実行される
L ことを特徴とする遊技機。」

(2)刊行物1に記載された発明
ア 本願の遡及日前に頒布された刊行物である特開2007-301099号公報(以下「刊行物1」という。)の明細書には、次の事項が記載されている(下線は当審にて付した。以下同じ。)。

「【0010】
<第1の実施形態>
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るスロットマシン100の外観斜視図である。スロットマシン100は、メダルの投入により遊技が開始され、遊技の結果によりメダルが払い出されるものである。
【0011】
<全体構成> スロットマシン100の本体101の中央内部には、外周面に複数種類の絵柄が配置されたリールが3個(左リール110、中リール111、右リール112)収納され、スロットマシン100の内部で回転できるように構成されている。本実施形態において、各絵柄は帯状部材に等間隔で適当数印刷され、この帯状部材が所定の円形枠材に貼り付けられて各リール110乃至112が構成されている。リール110乃至112上の絵柄は、遊技者から見ると、絵柄表示窓113から縦方向に概ね3つ表示され、合計9つの絵柄が見えるようになっている。そして、各リール110乃至112を回転させることにより、遊技者から見える絵柄の組み合せが変動することとなる。なお、本実施形態では、3個のリールをスロットマシン100の中央内部に備えているが、リールの数やリールの設置位置はこれに限定されるものではない。」

「【0021】
<スタートレバーの構成> 次に、スタートレバー135の構成について詳述する。図5Aはスタートレバー135及びその周辺周辺構造の分解斜視図、スタートレバー135およびその周辺構造の組立図(一部省略)である。スタートレバー135は、中空で略球状の操作部501と、一端に操作部501が固定され、他端に被検知部材511が連結された筒状の軸体503と、を備え、前面扉102に固定される筒状の支持部材506に支持されて遊技者が操作可能になっている。
・・・
【0026】
次に、操作部501内には星を形どった可動の演出部材502が配設されている。操作部501は上記の通り中空で略球状であり、有色透明(つまり半透明)の材料で構成されている。従って、操作部501を通して遊技者は演出部材502を視認することができ、操作部501は遊技者が演出部材502を視認可能なように演出部材502を覆うカバー部材として機能する。本実施形態では、操作部501を有色透明の材料から構成したが、無色透明としてもよく、また、不透明な材料とした場合であっても操作部501の一部に開口部を設けて内部を覗けるようにすることで、遊技者が演出部材502を視認可能なように演出部材502を覆うようにすることもできる。」

「【0045】
<副制御部> 次に、図4を参照してスロットマシン100の副制御部400について説明する。副制御部400は、主制御部300より送信されたコマンドに基づいて副制御部400の全体を制御する演算処理装置であるCPU410や、CPU410が各IC、各回路と信号の送受信を行うためのデータバス及びアドレスバスを備え、以下に述べる構成を有する。
・・・
【0050】
時計IC423が接続されていることで、CPU410は、現在時刻を取得することが可能である。7セグメント表示器440は、スロットマシン100の内部に設けられており、たとえば副制御部400に設定された所定の情報を店の係員等が確認できるようになっている。更に、出力インタフェース470には、デマルチプレクサ419が接続されている。デマルチプレクサ419は、出力インタフェース470から送信された信号を各表示部等に分配する。即ち、デマルチプレクサ419は、CPU410から受信されたデータに応じて上部ランプ150、サイドランプ151等を制御する。なお、CPU410は、演出装置制御部500へのコマンド送信はデマルチプレクサ419を介して実施する。演出装置制御部500は演出装置600を制御する制御部である。また、デマルチプレクサ419には演出部材502を駆動するモータ402のモータドライバ401が接続されている。従って、副制御部400はモータ402を制御する制御手段として機能することになる。」

「【0051】
<遊技の基本的制御> 図6はスロットマシン100における主制御部300の処理を示すフローチャートである。遊技の基本的制御はCPU310が中心になって行い、電源断等を検知しないかぎり、同図の遊技処理を実行する。以下、この処理について説明する。なお、特に説明しないが主制御部300は、スロットマシン100に対する遊技者の操作や、各処理の処理結果を示すコマンドを随時副制御部400へ送信する。副制御部400は、スロットマシン100のステータス情報としてこれをRAM413に格納しておき、スロットマシン100の状態を常時把握することができる。
・・・
【0057】
S608では全リール110乃至112の回転を開始させるリール回転処理を行なう。S609ではリール停止制御処理を行なう。ここでは、S607で選択したリール停止制御テーブルに従い、ストップボタン137乃至139に対する操作に応じて、リール110乃至112のうち、操作されたストップボタン137乃至139に対応するいずれかのリールを制御して停止させる。全リール110乃至112が停止するとS609へ進む。
【0058】
S610では入賞判定処理を行う。ここでは、有効化された入賞ライン上に、内部当選した入賞役又は内部当選中のボーナスの入賞役に対応する絵柄組合せが表示された場合にその入賞役に入賞したと判定する。例えば、有効化された入賞ライン上に「俵-俵-俵」が揃っていたならば俵(小役)入賞と判定する。また、入賞した入賞役に対応するフラグをリセットし、その入賞役の内部当選状態を解除する。S606の内部抽選でBB及びRBに当選しながら入賞しなかった場合はボーナスの内部当選状態が維持される(フラグがリセットされない)。
【0059】
S611では、払い出しのある何らかの入賞役に入賞していれば、その入賞役に対応する枚数のメダルを払い出す払出処理を行なう。S612では、遊技状態制御処理を実行する。この遊技状態制御処理では、遊技状態を移行するための制御が行われ、例えば、ビッグボーナスやレギュラーボーナスのようなボーナス入賞の場合に次回から対応するボーナスゲームを開始できるよう準備し、それらの最終遊技では、次回から通常遊技が開始できるよう準備する。以上により1ゲームの処理が終了し、S602へ戻って同様の処理を繰り返すことにより遊技が進行することになる。」

「【0060】
<副制御部400の処理> 次に、副制御部400の処理について説明する。副制御部400のCPU410は主制御部300からのコマンドに従って以下の処理を実行する。図8は副制御部400のメイン処理を示すフローチャート、図7は副制御部400の割り込み処理を示すフローチャートである。まず、図7を参照して所定周期で行なわれる割り込み処理から説明する。
・・・
【0066】
<演出の概略> 次に、スロットマシン100で実行される演出について説明する。スロットマシン100で実行される演出の内容は複数種類用意されており、それらをそれぞれ演出パターンと称する。副制御部400は演出パターン設定対象コマンドを受信すると、複数種類の演出パターンの中から予め定めた方法によりいずれかを選択し、その演出パターンで定義されている演出内容を実行する。
【0067】
<演出パターン> 各演出パターンには、演出デバイスの制御内容が定義される。例えば、演出部材502の動作制御(モータ402の駆動制御)、演出装置600のLCDで表示される画像の表示制御、スピーカ483から出力される音の制御、等の内容である。
【0068】
演出デバイスの制御内容を示すデータは、その演出デバイスを管理する制御部が有する。例えば、演出部材502の動作制御(モータ402の駆動制御)やスピーカ483の出力制御の制御データは副制御部400が有し、演出装置600のLCD表示される画像の表示制御の制御データは演出装置制御部500が有する。
・・・
【0079】
次に、図10(b)を参照してBBゲーム時、RBゲーム又はSRBゲーム時の演出パターンの選択方法の例を示す。BBゲーム時は複数種類の演出モード1乃至3毎に演出パターンが区分けされている。本実施形態の場合、演出モードが異なると演出内容に登場するメインキャラクター(演出装置600のLCDに表示される)が異なる。本実施形態の場合、メインキャラクターは殿、姫、爺の3種ある。演出モードはBBゲーム開始時に遊技者の選択に従い設定され、その設定処理は例えばS806の他の処理に含むことができる。演出パターンは演出モード毎に設定されており(演出パターン群)、BBゲームの進行に応じて順次選択されていくことになる。RBゲーム又はSRBゲーム時は本実施形態の場合、演出パターンは毎度同じ内容としている。」

「【0080】
<演出部材502による演出例> 本実施形態において演出部材502はモータ402の駆動により操作部501内で回転する。演出部材502は常時回転させておくこともできるが、通常は停止しておき、予め定められた条件が成立した場合に、演出部材502が動作するよう、モータ402を制御することもできる。
・・・
【0082】
また、予め定めた条件として、例えば、特定の入賞役(例えば、BBやRB)に入賞したことが挙げられ、ボーナスゲーム中に演出部材502を回転させることもできる。これにより、演出部材502の回転はボーナスゲームを盛り上げる演出となる。更に、予め定めた条件として、例えば、上述したAT、RT、CTの成立が挙げられ、これらの期間において演出部材502を回転することでこれらの期間のの報知演出となる。」

イ 刊行物1の図面には以下の事項が記載されている。
「図1




「図5B





(ア)上記【0011】及び【0067】の記載事項を参酌すると、スロットマシン100の外観図である図1からは、演出部材502が内蔵されるスタートレバー135がスロットマシン100の前面側中央部に位置するリール110?112の下方に、ほぼ水平に前方へ向かって突出するように設けられる一方、上記LCDを備える演出装置600は前記リール110?112の上方に設けられていることを読み取ることができる。

(イ)上記【0021】、【0026】の記載事項を参酌すると、スタートレバー135の細部に関する図5Bからは、スタートレバー135の先端部に部分球状の操作部501が取り付けられ、その内部に演出部材502が設けられることを読み取ることができる。

(ウ)上記(ア)、(イ)に基づいて図1を図5Bと対比すると、図1に描かれたスタートレバー135の先端部の球状の要素は操作部501であると理解される。

(エ)上記(ア)?(ウ)に基づけば、図1及び図5Bから、スタートレバー135は、仮にスロットマシン100の前面部から突出する部分をすべて上方へ屈曲したとしても、前記リール110?112の前方へすら達しない程度に短いことから、前記スタートレバー135先端の操作部501及びその内部の演出部材502は、前記スタートレバー135の操作によって多少揺動したとしても、前記リール110?112のさらに上方に設けられた前記演出装置600のLCDの前方へ達することがないことを読み取ることができる。

ウ 上記アの各記載事項及び上記イで認定した図面の記載事項から、以下の事項が導かれる。
(ア)上記【0010】には、「メダルの投入により遊技が開始され、遊技の結果によりメダルが払い出されるスロットマシン100」が記載されているといえる。

(イ)上記【0051】?【0058】には、「全リール110乃至112の回転を開始したあと、全リール110乃至112が停止すると、有効化された入賞ライン上に、内部当選した入賞役又は内部当選中のボーナスの入賞役に対応する絵柄組合せが表示された場合にその入賞役に入賞したと判定する入賞判定処理を行う、主制御部300」が記載されているといえる。

(ウ)上記【0051】?【0059】には、「入賞判定処理において、払い出しのある何らかの入賞役に入賞していれば、その入賞役に対応する枚数のメダルを払い出す払出処理を行なう、主制御部300」が記載されているといえる。

(エ)上記【0058】?【0059】には、主制御部300による制御内容として、「入賞判定処理を行」い、「遊技状態制御処理を実行する。この遊技状態制御処理では、遊技状態を移行するための制御が行われ、例えば、ビッグボーナス・・・のようなボーナス入賞の場合に次回から対応するボーナスゲームを開始できるよう準備」することが記載されているといえる。
そして、同じく主制御部300による制御内容に関する上記【0051】には「特に説明しないが主制御部300は、・・・各処理の処理結果を示すコマンドを随時副制御部400へ送信する」と記載されていることから、前記「入賞判定処理」及び「遊技状態制御処理」においては、それぞれ、ビッグボーナス入賞である旨、及び、遊技状態がビッグボーナスゲームである旨を示すコマンドが副制御部400へ送信されるものと理解できる。
一方、上記【0060】?【0079】には、「副制御部400のCPU410は主制御部300からのコマンドに従って以下の処理を実行する。・・・副制御部400は・・・複数種類の演出パターンの中から予め定めた方法によりいずれかを選択し、その演出パターンで定義されている演出内容を実行する。・・・BBゲーム時は複数種類の演出モード1乃至3毎に演出パターンが区分けされている。本実施形態の場合、演出モードが異なると演出内容に登場するメインキャラクター(演出装置600のLCDに表示される)が異なる。本実施形態の場合、メインキャラクターは殿、姫、爺の3種ある。演出モードはBBゲーム開始時に遊技者の選択に従い設定され・・・る。演出パターンは演出モード毎に設定されており(演出パターン群)、BBゲームの進行に応じて順次選択されていく」と記載されている。ここで「BBゲーム」がビッグボーナスゲームを意味することは明らかである。
また、上記【0067】には、演出パターンに関し、「各演出パターンには、演出デバイスの制御内容が定義される。例えば、・・・演出装置600のLCDで表示される画像の表示制御・・・の内容である。」と記載されている。
以上から、刊行物1には、「主制御部300が入賞判定処理においてビッグボーナス入賞と判定した場合は、遊技状態制御処理において次回からビッグボーナスゲームに遊技状態を移行するように制御され、その旨のコマンドを受信することにより、ビッグボーナスゲームの進行に応じ遊技者が選択した演出モードごとに設定された演出パターンで定義された演出内容を実行する、副制御部400」、及び、「前記演出モードごとに異なる殿、姫、爺の3種のメインキャラクターを含む画像を表示する、演出装置600のLCD」が記載されているといえる。

(オ)上記【0021】には「スタートレバー135は、中空で略球状の操作部501と、一端に操作部501が固定され、他端に被検知部材511が連結された筒状の軸体503と、を備え、前面扉102に固定される筒状の支持部材506に支持されて遊技者が操作可能になっている。」と記載され、また、上記【0026】には「操作部501内には星を形どった可動の演出部材502が配設され・・・操作部501を通して遊技者は演出部材502を視認することができ」ることが記載されているといえる。
ここで、「演出部材502」は、「前面扉102に固定される筒状の支持部材506に支持されて遊技者が操作可能になっている」「スタートレバー135」の「中空で略球状の操作部501」内に設けられているのであるから、該「演出部材502」も「前面扉102」に設けられているといえる。
よって、刊行物1には、「スロットマシン100の前面扉102に設けられた可動の演出部材502」が記載されているといえる。

(カ)上記【0080】には「演出部材502はモータ402の駆動により操作部501内で回転する。・・・通常は停止しておき、予め定められた条件が成立した場合に、演出部材502が動作するよう、モータ402を制御する・・・予め定めた条件として、例えば、特定の入賞役(例えば、BBやRB)に入賞したことが挙げられ、ボーナスゲーム中に演出部材502を回転させる」と記載されている。
また、上記イ(ア)?(エ)で認定したとおり、図1、図5Bからは、設計上、スタートレバー135先端の操作部501は、該スタートレバー135の操作による揺動を想定したとしても、演出装置600のLCD前方へ達することがないことを看取できる。
さらに、該操作部501に内蔵される前記演出部材502は、前記のとおり該操作部501内で停止または回転するのみで、回転している場合も停止している場合も、前記操作部501外に位置することはない。
以上のことから、前記演出部材502は、回転している場合も、停止している場合も、前記演出装置600のLCDの前方に達することはないといえる。
よって、刊行物1には、「演出部材502は、回転している場合も、停止している場合も、演出装置600のLCDの前方に達しないように設けられている」ことが記載されているといえる。

(キ)上記【0045】?【0050】には、「副制御部400は・・・CPU410・・・を備え、」「CPU410は、演出装置制御部500へのコマンド送信はデマルチプレクサ419を介して実施」し、「デマルチプレクサ419には演出部材502を駆動するモータ402のモータドライバ401が接続されている。従って、副制御部400はモータ402を制御する制御手段として機能する」ことが記載されている。
よって、刊行物1には、「副制御部400は、演出部材502を駆動するモータ402を制御する制御手段としての機能を備える」ことが記載されているといえる。

(ク)上記(カ)で抜記したとおり上記【0080】には、ビッグボーナスゲーム中に演出部材502を回転させることが記載されており、上記(キ)で認定したとおり、副制御部400がモータ402を制御することにより、演出部材502が駆動される。
また、上記(エ)で認定したとおり、「副制御部400」は「ビッグボーナスゲームの進行に応じ遊技者が選択した演出モードごとに設定された演出パターンで定義された演出内容を実行する」。
よって、刊行物1には、「ビッグボーナスゲーム中に、演出部材502を回転させるよう制御し、遊技者が選択した演出モードごとに設定された演出パターンで定義された演出内容を実行する、副制御部400」が記載されているといえる。

(ケ)上記(エ)でも抜記したとおり、上記【0060】?【0079】の特に【0066】?【0067】には、「副制御部400は・・・複数種類の演出パターンの中から予め定めた方法によりいずれかを選択し、その演出パターンで定義されている演出内容を実行する。・・・各演出パターンには、演出デバイスの制御内容が定義される。例えば、・・・演出装置600のLCDで表示される画像の表示制御・・・の内容である。」と記載されている。
これと、上記(エ)で認定した刊行物1の記載事項とから、刊行物1には、「副制御部400は、ビッグボーナス中、ビッグボーナスゲームの進行に応じ遊技者が選択した演出モードごとに設定された演出パターンとして、演出モードごとに異なる殿、姫、爺の3種のメインキャラクターを含む画像を演出装置600のLCDに表示する」ことが記載されているといえる。

(コ)上記(ク)で認定した事項から、刊行物1には「遊技者が選択した演出モードごとに設定された演出パターンで定義された演出内容を実行するのは、演出部材502を回転させるよう制御するのと同じビッグボーナスゲーム中である」ことが記載されているといえる。

エ 上記アの各記載事項、上記イ・ウの認定事項から、刊行物1には次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる(a?lは、本件補正発明のA?Lに対応させて付与した。)。

「a メダルの投入により遊技が開始され、遊技の結果によりメダルが払い出されるスロットマシン100であって、(ウ(ア))
b 全リール110乃至112の回転を開始したあと、全リール110乃至112が停止すると、有効化された入賞ライン上に、内部当選した入賞役又は内部当選中のボーナスの入賞役に対応する絵柄組合せが表示された場合にその入賞役に入賞したと判定する入賞判定処理を行う、主制御部300と、(ウ(イ))
c 入賞判定処理において、払い出しのある何らかの入賞役に入賞していれば、その入賞役に対応する枚数のメダルを払い出す払出処理を行なう、主制御部300と、(ウ(ウ))
d 主制御部300が入賞判定処理においてビッグボーナス入賞と判定した場合は、遊技状態制御処理において次回からビッグボーナスゲームに遊技状態を移行するように制御され、その旨のコマンドを受信することにより、ビッグボーナスゲームの進行に応じ遊技者が選択した演出モードごとに設定された演出パターンで定義された演出内容を実行する、副制御部400と、(ウ(エ))
e 前記演出モードごとに異なる殿、姫、爺の3種のメインキャラクターを含む画像を表示する、演出装置600のLCDと、(ウ(エ))
f スロットマシン100の前面扉102に設けられた可動の演出部材502と、を備え、(ウ(オ))
g 演出部材502は、回転している場合も、停止している場合も、演出装置600のLCDの前方に達しないように設けられており、(ウ(カ))
h 副制御部400は、演出部材502を駆動するモータ402を制御する制御手段としての機能を備え、(ウ(キ))
i ビッグボーナスゲーム中に、演出部材502を回転させるよう制御し、遊技者が選択した演出モードごとに設定された演出パターンで定義された演出内容を実行する、副制御部400を備え、(ウ(ク))
j 副制御部400は、ビッグボーナス中、ビッグボーナスゲームの進行に応じ遊技者が選択した演出モードごとに設定された演出パターンとして、演出モードごとに異なる殿、姫、爺の3種のメインキャラクターを含む画像を演出装置600のLCDに表示するものであり、(ウ(ケ))
k 遊技者が選択した演出モードごとに設定された演出パターンで定義された演出内容を実行するのは、演出部材502を回転させるよう制御するのと同じビッグボーナスゲーム中である、(ウ(コ))
l スロットマシン100。(ウ(ア))」

(3)対比
ア 刊行物1発明の構成a、lの「メダル」、「スロットマシン100」は、それぞれ、本件補正発明の構成A、Lの「遊技媒体」、「遊技機」に相当する。
よって、前記構成aの「メダルの投入により遊技が開始され、遊技の結果によりメダルが払い出されるスロットマシン100」、前記構成lの「遊技機」は、それぞれ、前記構成Aの「遊技媒体を用いた遊技を行う遊技機」、前記構成Lの「遊技機」に相当する。

イ 刊行物1発明の構成bの「全リール110乃至112の回転を開始したあと、全リール110乃至112が停止すると、有効化された入賞ライン上に、内部当選した入賞役又は内部当選中のボーナスの入賞役に対応する絵柄組合せが表示された場合」、「その入賞役に入賞したと判定する入賞判定処理を行う」ことは、それぞれ、本件補正発明の構成Bの「所定条件の成立」、「判定を行う」に相当する。
よって、前記構成bの「全リール110乃至112の回転を開始したあと、全リール110乃至112が停止すると、有効化された入賞ライン上に、内部当選した入賞役又は内部当選中のボーナスの入賞役に対応する絵柄組合せが表示された場合にその入賞役に入賞したと判定する入賞判定処理を行う、主制御部300」の機能は、前記構成Bの「所定条件の成立に基づいて判定を行う判定手段」の機能に相当する。

ウ 上記イで認定したとおり、刊行物1発明の構成b、cの「入賞判定処理」を行う機能が上記構成Bの「判定手段」の機能に相当するから、前記構成cの「入賞判定処理において、払い出しのある何らかの入賞役に入賞してい」る場合は、本件補正発明の構成Cの「前記判定手段の判定結果が特別の結果であった場合」に相当する。
また、前記構成cの「その入賞役に対応する枚数のメダルを払い出す払出処理を行なう」ことは、遊技者へのメダルの払い出しが遊技者の利益に外ならないから、前記構成Cの「遊技者に利益を付与する」ことに相当する。
よって、前記構成cの「入賞判定処理において、払い出しのある何らかの入賞役に入賞していれば、その入賞役に対応する枚数のメダルを払い出す払出処理を行なう、主制御部300」の機能は、前記構成Cの「前記判定手段の判定結果が特別の結果であった場合に、遊技者に利益を付与する利益付与手段」の機能に相当する。

エ 刊行物1発明の構成dの「主制御部300が入賞判定処理においてビッグボーナス入賞と判定した場合」は、入賞判定処理の判定結果のひとつであるから、本件補正発明の構成Dの「前記判定手段の判定結果」に相当する。
また、前記構成dにおける、ビッグボーナス入賞と判定した場合に「ビッグボーナスゲームに遊技状態を移行するように制御され」、「ビッグボーナスゲームの進行に応じ遊技者が選択した演出モードごとに設定された演出パターンで定義された演出内容を実行する」ことは、前記構成Dの「判定手段の判定結果に基づいて演出を制御する」ことに相当する。
そうすると、前記構成dの「主制御部300が入賞判定処理においてビッグボーナス入賞と判定した場合は、遊技状態制御処理において次回からビッグボーナスゲームに遊技状態を移行するように制御され、その旨のコマンドを受信することにより、ビッグボーナスゲームの進行に応じ遊技者が選択した演出モードごとに設定された演出パターンで定義された演出内容を実行する、副制御部400」の機能は、「前記判定手段の判定結果に基づいて演出を制御する演出制御手段」の機能に相当する。

オ 刊行物1発明の構成eの「前記演出モードごとに異なる殿、姫、爺の3種のメインキャラクターを含む画像を表示する」演出は、上記構成dの「ビッグボーナスゲームの進行に応じ遊技者が選択した演出モードごとに設定された演出パターンで定義された演出内容」の演出の具体的な演出態様であるから、本件補正発明の構成Eにおける、同構成Dの「前記判定手段の判定結果に基づいて」「制御」される「演出」を指す同構成Eの「前記演出」の具体的な演出態様である、「前記演出として」の「所定の表示演出」に相当する。
また、前記構成eの「演出装置600のLCD」は前記構成Eの「演出表示部」に相当する。
よって、前記構成eの「前記演出モードごとに異なる殿、姫、爺の3種のメインキャラクターを含む画像を表示する、演出装置600のLCD」は、前記構成Eの「前記演出として所定の表示演出が行われる演出表示部」に相当する。

カ 刊行物1発明の構成fの「スロットマシン100の前面扉102に設けられた可動の演出部材502」が、本件補正発明の構成Fの「当該遊技機の前面側を構成する前扉に設けられた可動体」に相当することは明らかである。

キ 刊行物1発明の構成gの「回転している場合」には、右回転・左回転何れも含まれ得るが、その何れであるとしても、左右いずれかの回転方向である点で、本件補正発明の構成Gの「所定方向」に相当する。
また、前記構成gの「停止している場合」、「演出装置600のLCDの前方に達しない」ことは、それぞれ、前記構成Gの「所定方向に向けて動作していない状態」、「前記演出表示部で行われる表示演出を隠蔽しない」こと、に相当する。
よって、前記構成gの「演出部材502は、回転している場合も、停止している場合も、演出装置600のLCDの前方に達しないように設けられて」いることは、前記構成Gの「前記可動体は、所定方向に向けて動作している状態と、所定方向に向けて動作していない状態の何れにあるときにも前記演出表示部で行われる表示演出を隠蔽しないように設けられ」ていることに相当する。

ク 刊行物1発明の構成hにおける「演出部材502」は同構成gにおいて特定されるとおり「回転」動作をするものであり、その駆動源が前記構成hの「演出部材502を駆動するモータ402」なのであるから、外構成hの「演出部材502を駆動するモータ402を制御する」ことは、本件補正発明の構成Hの「前記可動体を所定方向に向けて動作させる制御を行う」ことに相当する。
よって、前記構成hの「副制御部400」の備える「演出部材502を駆動するモータ402を制御する制御手段としての機能」は、前記構成Hの「前記演出制御手段」が備える「可動体動作制御手段」の「前記可動体を所定方向に向けて動作させる制御を行う」機能に相当する。

ケ 上記キ、クから、刊行物1発明の構成iにおける「演出部材502を回転させるよう制御」する「副制御部400」の機能は、本件補正発明の構成Iの「前記可動体が所定方向に向けて動作」させる「可動体動作制御手段」の機能に相当する。
また、前記構成iで「副制御部400」が前記「演出部材502を回転させるよう制御」を行う「ビッグボーナスゲーム中」は、本件補正発明の構成Iの「前記可動体動作制御手段の制御により前記可動体が所定方向に向けて動作するとき」に相当する。
さらに、前記構成iにおける「遊技者が選択した演出モードごとに設定された演出パターンで定義された演出内容を実行」する演出も、前記「演出部材502を回転させる」演出と同じく「ビッグボーナスゲーム中」の演出として、すなわち「ビッグボーナスゲーム」という共通の遊技状態に関連して行われるのであるから、前記「遊技者が選択した演出モードごとに設定された演出パターンで定義された演出内容を実行」する演出は、前記「演出部材502を回転させる」演出と相互に対応付けられた演出であり、前記構成Iの「所定の動作対応演出」すなわち「動作」に「対応」する演出に相当する。
よって、前記構成iの「ビッグボーナスゲーム中に、演出部材502を回転させるよう制御し、遊技者が選択した演出モードごとに設定された演出パターンで定義された演出内容を実行する、副制御部400」の機能は、前記構成Iの「前記可動体動作制御手段の制御により前記可動体が所定方向に向けて動作するときに、所定の動作対応演出を実行可能な」、演出制御手段が有する「動作対応演出実行手段」の機能に相当する。

コ 刊行物1発明の構成jの「演出モードごとに異なる殿、姫、爺の3種のメインキャラクターを含む画像を演出装置600のLCDに表示する」ことは、上記ケのとおり本件補正発明の「動作対応演出」に相当する「遊技者が選択した演出モードごとに設定された演出パターンで定義された演出内容を実行」する演出の具体的な内容であるから、本件補正発明の構成Jの「前記動作対応演出として前記演出表示部で特定の表示演出を実行する」ことに相当する。
よって、前記構成jの「副制御部400は、ビッグボーナス中、ビッグボーナスゲームの進行に応じ遊技者が選択した演出モードごとに設定された演出パターンとして、演出モードごとに異なる殿、姫、爺の3種のメインキャラクターを含む画像を演出装置600のLCDに表示する」ことは、前記構成Jの演出制御手段の「動作対応演出実行手段は、前記動作対応演出として前記演出表示部で特定の表示演出を実行する」ことに相当する。

サ 刊行物1発明の構成kの「遊技者が選択した演出モードごとに設定された演出パターンで定義された演出内容を実行する」演出は、上記コから、本件補正発明の構成Kの「特定の表示演出」に相当する。
また、前記構成kにおける、「演出部材502を回転させるよう制御」される「ビッグボーナスゲーム中」は、前記構成Kの「前記可動体を所定方向に向けて動作させている期間」に相当する。
そうすると、前記構成kで、「遊技者が選択した演出モードごとに設定された演出パターンで定義された演出内容を実行する」演出が「演出部材502を回転させるよう制御」される「ビッグボーナスゲーム中」に実行されることは、前記構成Kの「特定の表示演出は、前記可動体を所定方向に向けて動作させている期間に実行される」ことに相当する。

シ 上記ア?サによれば、本件補正発明と刊行物1発明とは、下記の点で一致し、両者の間に相違点はない。

「A 遊技媒体を用いた遊技を行う遊技機であって、
B 所定条件の成立に基づいて判定を行う判定手段と、
C 前記判定手段の判定結果が特別の結果であった場合に、遊技者に利益を付与する利益付与手段と、
D 前記判定手段の判定結果に基づいて演出を制御する演出制御手段と、
E 前記演出として所定の表示演出が行われる演出表示部と、
F 当該遊技機の前面側を構成する前扉に設けられた可動体と、
を備え、
G 前記可動体は、所定方向に向けて動作している状態と、所定方向に向けて動作していない状態の何れにあるときにも前記演出表示部で行われる表示演出を隠蔽しないように設けられたものであって、
H 前記演出制御手段は、
前記可動体を所定方向に向けて動作させる制御を行う可動体動作制御手段と、
I 前記可動体動作制御手段の制御により前記可動体が所定方向に向けて動作するときに、所定の動作対応演出を実行可能な動作対応演出実行手段と、を有し、
J 前記動作対応演出実行手段は、前記動作対応演出として前記演出表示部で特定の表示演出を実行するものであり、
K 該特定の表示演出は、前記可動体を所定方向に向けて動作させている期間に実行される
L ことを特徴とする遊技機。」

(4)請求人の主張について
請求人は審判請求書において、平成29年1月5日付けの手続補正の却下及び拒絶査定において引用された特開2007-296090号公報、特開2008-183361号公報には、本件補正発明の構成J?Kに相当する構成が記載されておらず、また、該構成は前記各公報に記載された事項から容易に着想もできない旨主張している。
しかし、刊行物1(特開2007-301099号公報)に記載された上記刊行物1発明は、上記(3)で説示したとおり、前記構成J?Kに相当する構成も含め、本件補正発明のすべての構成に相当する発明であるから、前記主張は採用できない。

(5)小括
したがって、上記(2)?(4)において検討したように、本件補正発明は、刊行物1に記載された発明(刊行物1発明)であるか、両者に差異があるとしても微差であって、本件補正発明は当業者が刊行物1発明に基づいて容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、または特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.むすび
上記3.において検討したことからみて、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年11月10日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、以下のとおりのものである。

「A 遊技媒体を用いた遊技を行う遊技機であって、
B 所定条件の成立に基づいて判定を行う判定手段と、
C 前記判定手段の判定結果が特別の結果であった場合に、遊技者に利益を付与する利益付与手段と、
D 前記判定手段の判定結果に基づいて演出を制御する演出制御手段と、
E 前記演出として所定の表示演出が行われる演出表示部と、
F 当該遊技機の前面側を構成する前扉に設けられた可動体と、
を備え、
G’前記可動体は、通常の状態である第1状態と、該第1状態とは異なる第2状態とに変化可能であり、前記第1状態および前記第2状態の何れにあるときにも前記演出表示部で行われる前記表示演出を隠蔽しないように設けられたものであって、
H’前記演出制御手段は、
前記可動体の動作にかかる制御を行う可動体動作制御手段と、
I’前記可動体動作制御手段による制御を受けて前記可動体が前記第2状態に変化した場合に、該可動体が前記第1状態にある場合には行われることのない所定の動作対応演出を実行可能な動作対応演出実行手段と、を有し、
J’前記動作対応演出実行手段は、前記動作対応演出として前記演出表示部で特定の表示演出を実行可能であり、
K’該特定の表示演出を前記可動体が前記第2状態にある間に実行しうる
L ことを特徴とする遊技機。」(A?Lの符号は分説のため当審にて付与したものである。上記本件補正発明と実質的に共通する構成には共通の符号を付与した。)

2.原査定の拒理の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願遡及日前に頒布された刊行物である特開2007-296090号公報(以下「刊行物2」という。)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3.刊行物2に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物2には、次の事項が記載されている(下線は当審にて付した。)。
(1)刊行物2の明細書には次の事項が記載されている。
「【0001】
この発明は、パチンコ遊技機、アレンジボール機、雀球遊技機、スロットマシン、パロット(商標)遊技機等の遊技機に遊技者が操作し得るように設けられる遊技機用押ボタンスイッチの構造に関するものである。」

「【0003】
また例えば、遊技機の一種であるパチンコ遊技機では、下記特許文献1に示されたように、遊技盤面に設けられた図柄変動表示装置がリーチ状態(例えば3列の変動図柄のうち2列が同一図柄に揃った状態)になると、遊技者がチャンスボタンと称する押ボタンを操作することにより、図柄の変動時間を短縮させたり、図柄の変動パターンを変更させることが可能となるようにし、遊技者が遊技画面の進行に影響を与えられるようにすることにより、遊技に多様性を持たせられるようにしている。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般に遊技中の遊技者は、図柄変動表示装置等のディスプレイの状況の変化を注視しているあまり、他の事項に注意が回らない状況であり、例えば押ボタンが操作可能な状況になったとしてもその変化に気づかない場合があり、ランプを点灯させることでその状況を知らしめることはあったとしても、遊技者にインパクトを与えることができなかったので、遊技性が乏しく面白味に欠けるものであった。
そこでこの発明は、遊技中の遊技者にも強いインパクトを適時与えることができる遊技機用押ボタンスイッチを提供しようとするものである。」

「【0009】
次にこの発明の実施形態をパチンコ遊技機について説明する。図1はパチンコ遊技機の正面図で、1は前面ガラスによって覆われ図柄変動表示装置や複数の入賞口,可変入賞装置等が設けられた遊技盤、2,3はその下方に設けられた上部球受皿と下部球受皿、4は打球発射用ハンドルである。そして下部球受皿3の一側に前方張出部5が延設され、該前方張出部5にこの発明に係る押ボタン6が設けられる。
・・・
【0012】
また、底板22の上面には前記スイッチ12と対峙するように遮断片22aが上向きに突設されている。また、22bは該底板22の一側に一体に成形された取付台、25は該取付台上に水平に固着される電動アクチュエータたるソレノイドで、その作動杆25aの先端に係合手段である係合片26を固着し、該作動杆25aの外周に第2の付勢部材であるコイル状の第2スプリング27を設け、該第2スプリングがソレノイド本体と該係合片26との間で弱い圧縮状態となるようにしている。なお、係合片26の先端部26aは先端縁に向かって下傾する斜面状に形成されている。そして、該ソレノイド25を取付台22b上に固着し、該ソレノイド25が作動することで該係合片26が図4に矢印で示したように押ボタン6と直交する方向に進退動するようにすると共に、該ソレノイド25が非励磁状態であるときは第2スプリング27の弾性により係合片26の基部26bがケース体20の側面開口20bの上縁に当接し、その状態で該係合片26の斜面状の先端部26aが押ボタン6の係合部7と対峙し得るようにしている。
【0013】
このため、図4に示した状態で遊技者が押ボタン6を押操作して該押ボタンを第1スプリング24の弾性に抗して下動させると、図5に示したように、係合部7が係合片26の斜面状の先端部26aに当たって該係合片26を第2スプリング27の弾性に抗して退動させ、さらに該押ボタン6が押し下げられると図6に示したように該押ボタン6の下面に設けられたスイッチ12の投光器と受光器の間に遮断片22aが介在し遮光することになるため該スイッチ12を作動させる。なおこの状態で係合片26は第2スプリング27の弾性により復帰する。即ち、図6に示したように進出状態となる。
そして、遊技者が押ボタン6から手を離すと、図7に示したように、第1スプリング24の弾性により押ボタン6が上動し、進出状態となっている係合片26の下面に係合部7が係合することで該押ボタン6の上動がその上動の途中で阻止され、そのとき、図7に示したように、スイッチ12の投光器と受光器は遮断片22aから離脱した状態となる。このため、この状態で遊技者がまた押ボタン6を押操作すればスイッチ12を何度も作動させることができる。
【0014】
また、図7に示したように、係合片26の下面に係合部7が係合することで押ボタン6が完全に上まで突出していないとき(途中まで下動した状態にあるとき)に、ソレノイド25を励磁させ係合片26を第2スプリング27の弾性に抗して退動させると、該係合片26と係合部7との係合が解除され、第1スプリング24の弾性により図4に示したように押ボタン6が完全に上まで突出する。このため、遊技中に適時にソレノイド25に電流を流して励磁させることで、遊技者に押ボタン6の存在を知らしめることができる。例えば、遊技中に押ボタン6を押せば特典が得られるチャンスが巡ってきたときに押ボタン6がこのように大きく突出するようにすれば、遊技者に強烈なインパクトを与え、押ボタン6をすぐに押操作するよう促すことができる。なお、LEDランプ11は適時点灯させることで押ボタン6の上部が光り、さらに目立たせることができる。」

(2)刊行物2の図面には以下の事項が記載されている。
「図1




「図2




「図4




「図5




「図6




ア 図1からは、上記【0009】の記載事項を参酌すると、遊技盤1の中央部に、「777」と表示された例で示される矩形状の図柄変動表示装置が設けられることを読み取ることができる。

イ 図1からは、上記【0009】の記載事項を参酌すると、押ボタン6が、内部に矩形状の図柄変動表示装置が設けられたほぼ円形の遊技盤1の下方にある上部球受皿2よりもさらに下方の下部球受皿3の左側に、遊技者に対し前記「図柄変動表示装置」を隠蔽しない状態で設置されていることを読み取ることができる。
また、図1と図2、4?6とを見比べると、図1に描かれた押ボタン6は、図2、図4に記載された場合のように、上記【0014】にいう「押ボタン6が完全に上まで突出」し状態であるのか、図6に記載されたように押ボタン6部が押し込まれた、上記【0014】にいう「押ボタン6が完全に上まで突出していないとき」にあたるのか判然としないが、仮に図1に描かれた状態が前記「押ボタン6が完全に上まで突出していないとき」にあたるとしても、「押ボタン6が完全に上まで突出」した図4の状態において、押ボタン6の突出高さはその直径程度であることから、図1においてさらに押ボタン6をその直径程度上方に突出させた場合を想定しても、該押ボタン6は前記「図柄変動表示装置」の前方はおろか、遊技盤1の前方にさえ達せず、遊技者に対し前記「図柄変動表示装置」を隠蔽しないことが明らかであることが、該図1から明らかであるといえる。
さらに、図1に描かれた押ボタン6が「完全に上まで突出していないとき」、「完全に上まで突出」した時の何れにあたるとしても、後者であれば「完全に上まで突出していないとき」には押ボタン6の上端位置はさらに下方となるのであるから、該図1、2、4?6から、押ボタン6が「完全に上まで突出していないとき」に遊技者に対し前記「図柄変動表示装置」を隠蔽しないことを読み取ることができるといえる。

(3)上記(1)の各記載事項及び上記(2)で認定した図面の記載事項から、以下の事項が導かれる。
ア 上記【0001】には、刊行物2に記載された発明が「パチンコ遊技機」に関するものであることが記載されている。

イ 上記【0009】及び上記(2)アの認定事項から、刊行物2には、「パチンコ遊技機の正面の遊技盤1の中央部に設けられ、例えば「777」などと表示される図柄変動装置」が記載されているといえる。

ウ 上記【0009】には「図1はパチンコ遊技機の正面図で・・・下部球受皿3の一側に延設された前方張出部5に押ボタン6が設けられる」と記載されているから、刊行物2には、「パチンコ遊技機の正面の下部球受皿3の一側に延設された前方張出部5に設けられた押ボタン6」が記載されているといえる。

エ 上記【0014】には「係合片26の下面に係合部7が係合することで押ボタン6が完全に上まで突出していないときに、ソレノイド25を励磁させ係合片26を第2スプリング27の弾性に抗して退動させると、該係合片26と係合部7との係合が解除され、第1スプリング24の弾性により・・・押ボタン6が完全に上まで突出する」と記載されている。
また、上記(2)イで認定したとおり、図1、2、4?6から、「押ボタン6が完全に上まで突出」した状態でも、「押ボタン6が完全に上まで突出していないとき」でも、該押ボタン6が遊技者に対し前記「図柄変動表示装置」を隠蔽しないことを読み取ることができる。
よって、刊行物1には、「押ボタン6は、完全に上まで突出していない状態と、完全に上まで突出した状態との間で変化が可能であり、完全に上まで突出していない状態と、完全に上まで突出した状態との何れの状態でも、遊技者に対し図柄変動表示装置を隠蔽しないように設けられている」こと、が記載されているといえる。

オ 上記【0012】には「電動アクチュエータたるソレノイド」と記載され、同【0014】には、上記エで摘記した事項に加え、「遊技中に適時にソレノイド25に電流を流して励磁させることで、遊技者に押ボタン6の存在を知らしめることができる。」と記載されている。ここで、押ボタン6を完全に上まで突出させるべく「遊技中に適時にソレノイド25に電流を流して励磁させ」るのは「遊技者に押ボタン6の存在を知らしめる」ために行われるのであるから、遊技者が自らの操作によって「ソレノイド25に電流を流して励磁させる」制御を行うのではなく、パチンコ遊技機側において自動的に、遊技者の意表を突いて当該制御が行われること、当該制御のための制御手段がパチンコ遊技機側に備わることが明らかであるといえる。
よって、刊行物2には、「パチンコ遊技機は、押ボタン6を完全に上まで突出していない状態から完全に上まで突出した状態へと変化させるためにソレノイド25に電流を流して励磁させる制御を行う制御手段」を備えることが記載されているといえる。

(4)上記(1)の各記載事項、上記(2)、(3)の認定事項から、刊行物2には次の発明(以下「刊行物2発明」という。)が記載されていると認められる(2a?2lは、本件補正発明のA?Lに対応させて付与した。)。

「2a パチンコ遊技機であって、((3)ア)
2e パチンコ遊技機の正面の遊技盤1の中央部に設けられ、例えば「777」などと表示される図柄変動装置と、((2)イ)
2f パチンコ遊技機の正面の下部球受皿3の一側に延設された前方張出部5に設けられた押ボタン6を備え、((3)ウ)
2g 押ボタン6は、完全に上まで突出していない状態と、完全に上まで突出した状態との間で変化が可能であり、
完全に上まで突出していない状態と、完全に上まで突出した状態との何れの状態でも、遊技者に対し図柄変動表示装置を隠蔽しないように設けられており、((3)エ)
2h パチンコ遊技機は、押ボタン6を完全に上まで突出していない状態から完全に上まで突出した状態へと変化させるためにソレノイド25に電流を流して励磁させる制御を行う制御手段を有する、((2)オ)
2l パチンコ遊技機。((2)ア)」

4.対比
(1)刊行物2発明の構成2aにおける「パチンコ遊技機」が、遊技媒体として遊技球を用いた遊技を行う遊技機であることは自明である。
よって、前記構成2aの「パチンコ遊技機」は、本願発明の構成Aの「遊技媒体を用いた遊技を行う遊技機」及び同構成Lの「遊技機」に相当する。

(2)刊行物2発明の構成2eにおける「図柄変動装置」は本願発明の構成Eの「演出表示部」に相当する。
また、前記構成2eにおいて、「図柄変動装置」への表示例としての「777」なる表示は、当該分野の技術常識に照らせば、装飾図柄が変動の結果大当り図柄で停止した演出結果を示しているといえる。
よって、前記構成2eにおける前記「777」なる表示に例示される演出は、前記構成Eの「演出表示部」における演出「所定の表示演出」に相当する演出の一つであるといえる。
したがって、前記構成2eの「パチンコ遊技機の正面の遊技盤1の中央部に設けられ、例えば「777」などと表示される図柄変動装置」は、前記構成Eと、「所定の表示演出が行われる演出表示部」である点で共通する。

(3)刊行物2発明の構成2fの「押ボタン6」は、同構成2gから「完全に上まで突出していない状態と、完全に上まで突出した状態との間で変化」する、すなわち可動であるから、本願発明の構成Fの「可動部」に相当する。
また、前記構成2fの「パチンコ遊技機の前面部」は、前記構成Fの「遊技機の前面側」に相当する。
よって、前記構成2fと前記構成Fとは、「当該遊技機の前面側に設けられた可動体」を備える点で共通する。

(4)刊行物2発明の構成2gの「完全に上まで突出していない状態」、「完全に上まで突出した状態」は、それぞれ、本願発明の構成G’の「通常の状態である第1状態」、「該第1状態とは異なる第2状態」に相当する。
また、前記構成2gの「遊技者に対し図柄変動表示装置を隠蔽しない」ことによって、図柄変動表示装置において実行される、同構成2eの「例えば「777」などと表示される」演出が遊技者に対し隠蔽されないこととなるから、前記構成2gの「遊技者に対し図柄変動表示装置を隠蔽しない」ことは、前記構成G’の「演出表示部で行われる前記表示演出を隠蔽しない」ことに相当する。
よって、前記構成2gの「押ボタン6は、完全に上まで突出していない状態と、完全に上まで突出した状態との間で変化が可能であり、完全に上まで突出していない状態と、完全に上まで突出した状態との何れの状態でも、遊技者に対し図柄変動表示装置を隠蔽しないように設けられて」いることは、前記構成G’の「前記可動体は、通常の状態である第1状態と、該第1状態とは異なる第2状態とに変化可能であり、前記第1状態および前記第2状態の何れにあるときにも前記演出表示部で行われる前記表示演出を隠蔽しないように設けられ」ることに相当する。

(5)刊行物2発明の構成2hの「押ボタン6を完全に上まで突出していない状態から完全に上まで突出した状態へと変化させるためにソレノイド25に電流を流して励磁させる制御を行う」こと、「制御手段」は、それぞれ、本願発明の構成H’の「可動体の動作にかかる制御を行う」こと、「可動体動作制御手段」に相当する。
よって、前記構成2hと前記構成H’とは、遊技機が「前記可動体の動作にかかる制御を行う可動体動作制御手段」を備える点で共通する。

(6)以上(1)?(5)によれば、本願発明と刊行物2発明とは、下記アの点で一致し、下記イ?キの点で相違する。

ア 一致点
「A 遊技媒体を用いた遊技を行う遊技機であって、
Eo 所定の表示演出が行われる演出表示部と、
Fo 当該遊技機の前面側に設けられた可動体と、
を備え、
G’前記可動体は、通常の状態である第1状態と、該第1状態とは異なる第2状態とに変化可能であり、前記第1状態および前記第2状態の何れにあるときにも前記演出表示部で行われる前記表示演出を隠蔽しないように設けられたものであって、
H’o 前記遊技機は、
前記可動体の動作にかかる制御を行う可動体動作制御手段を有する
L ことを特徴とする遊技機。」

イ 相違点1(構成B?D)
本願発明は構成B?Dとして、所定条件の成立に基づいて判定を行う判定手段と、前記判定手段の判定結果が特別の結果であった場合に遊技者に利益を付与する利益付与手段と、前記判定手段の判定結果に基づいて演出を制御する演出制御手段と、を備えるのに対し、刊行物2発明は該各手段を備えるか不明である点。

ウ 相違点2(構成E)
相違点1に関連し、演出表示部で行われる所定の表示演出が、本願発明では「前記演出として」すなわち構成Dで特定される「判定手段の判定結果に基づい」た「演出」であるのに対し(以下「特定事項ウ」という。)、刊行物2発明では「判定手段」の存否が不明であるため、その存在を前提とする前記特定事項ウについても不明である点。

エ 相違点3(構成F)
可動体が、本願発明では「前扉」に設けられるのに対し、刊行物2発明ではこの点が明示的に特定されていない点。

オ 相違点4(構成H’)
相違点1に関連し、可動体動作制御手段が、本願発明では「演出制御手段」に含まれる手段として特定されているのに対し、刊行物2発明では該「演出制御手段」の存否が不明であり、そのため「可動体動作制御手段」が該「演出制御手段」に含まれるかも不明である点。

カ 相違点5(構成I’)
本願発明は演出制御手段が「前記可動体動作制御手段による制御を受けて前記可動体が前記第2状態に変化した場合に、該可動体が前記第1状態にある場合には行われることのない所定の動作対応演出を実行可能な動作対応演出実行手段」を備えるのに対し、刊行物2発明では、そのような動作対応演出の存否が不明である点。

キ 相違点6(構成J’、K’)
本願発明は「前記動作対応演出実行手段は、前記動作対応演出として前記演出表示部で特定の表示演出を実行可能であ」り、「該特定の表示演出を前記可動体が前記第2状態にある間に実行しうる」と特定するのに対し、刊行物2発明は、そのような「動作対応演出」の存否が不明である点。

5.当審の判断
(1)相違点1、2について
パチンコ遊技機が(a)始動口入賞を契機として乱数を取得し、該乱数が大当り等に対応する既定の数値範囲と一致するか判定する機能、(b)該判定の結果が大当りであれば大入賞口を開成することで多数の入賞とそれに伴う賞球の付与を行う機能、を備える主制御手段などと称される手段を備えること、(c)前記判定の結果が大当りである場合には、それを示す主制御手段からのコマンドを受けて、液晶表示装置などの表示装置に大当りを示す特定の画像を表示する演出を実行する機能を備える副制御手段、を備えること、あるいは、前記(a)?(c)の構成を備えるパチンコ遊技機は、逐一文献を引くまでもなく当該技術分野における周知な事項であり、パチンコ遊技機が一般に前記各構成を備えることは自明であるともいえる。
そして、前記主制御手段が備える(a)、(b)の各機能はそれぞれ本願発明の構成B、Cの各手段の機能に相当し、前記(c)の機能を備える副制御手段は本願発明の構成Dの「演出制御手段」に相当する。
また、前記(c)における「大当りを示す特定の画像を表示する演出」が「液晶表示装置などの表示装置」において実行されるのが、「判定の結果が大当りである場合には、それを示す主制御手段からのコマンドを受けて」行われる点は、相違点2に係る「所定の表示演出」が「前記演出として」、すなわち構成Dの「判定手段の判定結果に基づい」た「演出」である点に相当する。
よって、相違点1、2に係る構成は、刊行物2発明が一般的なパチンコ遊技機として備えることが自明であり、相違点1、2は実質的な相違点ではないか、そうとまでいえないとしても、刊行物2発明において、一般的なパチンコ遊技機が備える相違点1、2に係る構成を備えるようにすることは、周知技術にもとづいて当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点3について
パチンコ遊技機において、最前面に「前扉」が設けられること、球受皿が該前扉に形成されることは、周知かつ自明である。
そして、刊行物2発明において、押ボタン6は球受皿の一つである下部球受皿3の一側に設けられるのであるから、該押ボタン6も前扉に設けられていることは明らかであるといえる。
よって、相違点3は実質的な相違点であるとはいえない。
また、仮に相違点であるとしても、パチンコ遊技機において前扉にボタン演出用(遊技参加用)の押ボタンを設けることは、例えば本願の遡及日前に頒布された刊行物である特開2007-37972号公報(前扉7に配設された参加ボタン22;【請求項1】、【0009】、【0028】)、同特開2007-553号公報(前扉7に設けるプッシュボタン42;【0027】、【0037】)にも記載されたとおり、周知であるから、刊行物2発明において、押ボタン6をパチンコ遊技機の前扉に設けるようにすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。

(3)相違点4について
パチンコ遊技機においては一般に、主制御手段が司る遊技球発射、入賞判定、当り判定、賞球払出など、遊技球を用いたパチンコ遊技の基本的な進行制御とは直接関係しない、装飾図柄の表示変動や電飾、いわゆるボタン演出用の押ボタン等の演出用部材の動作の制御は、主制御手段とは別の、本願発明の演出制御手段に相当する副制御手段が担う機能として設計される。
刊行物2発明の押ボタン6は、刊行物2中では、その操作により具体的にどのような効果があるのかについて開示がないものの、その操作が当り判定や賞球払出などに直接関与するとの記載はなく、従来技術として【0003】に「遊技盤面に設けられた図柄変動表示装置がリーチ状態(例えば3列の変動図柄のうち2列が同一図柄に揃った状態)になると、遊技者がチャンスボタンと称する押ボタンを操作することにより、図柄の変動時間を短縮させたり、図柄の変動パターンを変更させることが可能となるようにし、遊技者が遊技画面の進行に影響を与えられるようにする」ことが例示されているので、その操作により図柄の変動時間や変動パターンなど遊技画面の進行に影響を与えるもの、すなわち、演出用部材であることを少なくとも含んで想定されているといえる。
そして、演出用部材としての押ボタン6が、前記副制御手段の一機能により制御されることは、当該分野における技術常識及び周知技術に照らし明らかである。
よって、刊行物2発明のパチンコ遊技機において、本願発明の演出制御手段に相当する副制御手段が、演出用部材としての「押ボタン6」を完全に上まで突出していない状態から完全に上まで突出した状態へと変化させるためにソレノイド25に電流を流して励磁させる制御(以下「突出制御」という。)を行う機能を備えること、言い換えると、前記突出制御を行う機能を担う手段を副制御手段が含むことは、技術常識及び周知技術に照らし明らかであるといえる。
そして、該突出制御を行う機能を担う手段は相違点4に係る本願発明の「可動体動作制御手段」に相当する。

(4)相違点5、6について
ア 刊行物2の【0003】には、押ボタン操作契機に関する従来技術として、「遊技盤面に設けられた図柄変動表示装置がリーチ状態(例えば3列の変動図柄のうち2列が同一図柄に揃った状態)になると、遊技者がチャンスボタンと称する押ボタンを操作する」ものが挙げられている。
また、刊行物2では、前記従来技術についての課題として【0006】に「遊技中の遊技者は・・・例えば押ボタンが操作可能な状況になったとしてもその変化に気づかない場合があり、・・・遊技性が乏しく面白味に欠ける・・・そこでこの発明は、遊技中の遊技者にも強いインパクトを適時与えることができる遊技機用押ボタンスイッチを提供しようとするもの」と記載されている。
よって、刊行物2発明は、遊技盤面に設けられた図柄変動表示装置がリーチ状態になると押ボタン6が操作可能となるパチンコ遊技機において、該押ボタン6が操作可能な状況に変化したことを遊技者に気付かせるために、適時に該押ボタン6を「完全に上まで突出していない状態から完全に上まで突出した状態へと変化させる」ことを目的の一つとするものと位置付けることができる(以下「発明認定1」という。)。また、仮にそうとまで言えないとしても、刊行物2発明に前記従来技術のボタン演出態様を適用することは刊行物2の記載において想定されているといえる(以下「発明認定2」という。)。
そうすると、刊行物2発明において、押ボタン6を「完全に上まで突出していない状態から完全に上まで突出した状態へと変化させる」タイミングは、例えば、前記従来技術における「遊技盤面に設けられた図柄変動表示装置がリーチ状態」になったときであり、逆に、リーチ状態となっていない時には押ボタン6を操作するタイミングではないから、押ボタン6は「完全に上まで突出していない状態」にあることとなる。
裏を返せば、「遊技盤面に設けられた図柄変動表示装置がリーチ状態」となる演出(「所定の動作対応演出」)は、押ボタン6(「可動体」)が「完全に上まで突出していない状態」(「第1状態」)では実行されておらず、押ボタン6が「完全に上まで突出した状態」(「第2状態」)となった場合には実行されるといえる。(以下「認定事項4-1」という。)
この関係から、前記「遊技盤面に設けられた図柄変動表示装置がリーチ状態」となる演出は、押ボタン6が「完全に上まで突出した状態」に変化したことに対応して実行される、図柄変動表示装置で行われる演出であるといえる。(以下「認定事項4-2」という。)
そして、前記認定事項4-1は本願発明の相違点5に係る構成に、前記認定事項4-2は同じく相違点6に係る構成に相当する。
よって、刊行物2発明を前記発明認定1、2何れに解釈するとしても、つまり、前記【0006】に記載された従来技術を刊行物2発明に含めると解釈しても、刊行物2発明と組合せる対象として想定されているに過ぎないと解釈しても、刊行物2発明及び刊行物2に記載された従来技術に基づいて前記相違点5、6の構成を想起することは、当業者が容易になし得た事項である。

イ 一方、パチンコ遊技機において、遊技者に押ボタンを操作させて演出に変化を持たせるいわゆるボタン演出として、ボタン演出が開始してボタン操作が可能になると、該ボタン操作が可能な期間のみ、本願発明の演出表示部に相当する液晶表示器に、本願発明の「動作対応演出」に相当する、ボタン操作を促す画像や映像を表示することは、共に本願遡及日前に頒布された刊行物である特開2009-89903号公報(【1047】?【1048】、図229)、特開2007-54309号公報(【0212】、図24)にも記載されたとおり、周知技術である。
そして、該周知技術において、ボタン操作が可能でない状態が本願発明の「第1状態」に、ボタン操作が可能な状態が同「第2状態」に対応し、「液晶表示器」は「演出表示部」に相当することから、前記周知技術は相違点5、6に係る構成に相当する。
よって、仮に刊行物2の【0006】に記載された従来技術を刊行物2発明の前提としたり、刊行物2発明に適用したりすることに阻害要因があるとしても、刊行物2発明において、前記相違点5、6の構成とすることは、周知技術にもとづいて当業者が容易に想到し得た事項である。

(5)また、本願発明により奏される効果は、当業者が、刊行物2発明及び刊行物2に記載された従来技術及び周知技術から予測し得た範囲内のものであって、格別のものではない。

(6)よって、本願発明は刊行物2発明ならびに刊行物2に記載された従来技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物2に記載された発明ならびに刊行物2に記載された従来技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-06-21 
結審通知日 2018-06-22 
審決日 2018-07-06 
出願番号 特願2015-198957(P2015-198957)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 572- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武田 知晋  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 松川 直樹
樋口 宗彦
発明の名称 遊技機  

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