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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1343609
審判番号 不服2017-13381  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-08 
確定日 2018-09-21 
事件の表示 特願2016- 77766「情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 7月21日出願公開、特開2016-131044、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年9月28日にされた特許出願の一部を平成28年4月8日に新たな特許出願としたものであって、平成29年2月20日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月21日付けで手続補正がされ、同年6月23日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年9月8日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、同年10月11日に前置報告がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年6月23日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-5に係る発明は、以下の引用文献1-3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2010-218369号公報
2.特開平10-334079号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2008-52386号公報(周知技術を示す文献)

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正は、請求項2を削除して項番を繰り上げるとともに、補正後の請求項1、3、4(補正前の請求項1、4、5)について、削除された請求項2で特定されていた「入力フィールドへの情報の入力を行う画面」である「入力支援画面」が「電卓状の画面、カレンダー状の画面、50音表状の画面、キーボード状の画面のうちのいずれか」である旨を限定し、さらに、「入力フィールド」が「表が有するセル」である旨を限定するものであるところ、いずれも、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、当初明細書の段落【0060】及び【0034】等の記載からみて、いずれも新規事項を追加するものではない。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-4に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1-4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は、平成29年9月8日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
記録媒体に、
1以上の入力フィールドを有する画面を示す情報であり、当該1以上の各入力フィールドに入力される情報の属性を示す1以上の入力属性情報を有する1以上の画面情報と、
入力フィールドへの情報の入力を行う画面であり、電卓状の画面、カレンダー状の画面、50音表状の画面、キーボード状の画面のうちのいずれかの画面である入力支援画面を表示するためのアイコンである入力支援画面表示アイコンと、
入力属性情報と、アイコンの位置を示す情報であるアイコン位置情報とを有する1以上のアイコン位置管理情報と、
入力支援画面を示す1以上の入力支援画面情報とが格納され、
前記1以上の各入力属性情報に対応するアイコン位置情報を、前記記録媒体から取得するアイコン位置情報取得部と、
前記入力支援画面表示アイコンを、前記1以上の各入力フィールド上の位置であり、前記アイコン位置情報取得部が取得したアイコン位置情報が示す位置に出力する入力支援画面表示アイコン出力部と、
前記画面上の入力支援画面表示アイコンの選択を受け付ける受付部と、
前記受付部が前記入力支援画面表示アイコンの選択を受け付けた場合に、前記入力支援画面情報を用いて、入力支援画面を出力する入力支援画面出力部とを具備し、
前記入力支援画面出力部が出力した入力支援画面に対する入力は、前記入力支援画面に対応する入力フィールドに出力され、
前記入力フィールドは、
表が有するセルである情報処理装置。
【請求項2】
前記入力支援画面出力部は、
対応する入力フィールドに隣接する位置に入力支援画面情報を出力する請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
記録媒体に、
1以上の入力フィールドを有する画面を示す情報であり、当該1以上の各入力フィールドに入力される情報の属性を示す1以上の入力属性情報を有する1以上の画面情報と、
入力フィールドへの情報の入力を行う画面であり、電卓状の画面、カレンダー状の画面、50音表状の画面、キーボード状の画面のうちのいずれかの画面である入力支援画面を表示するためのアイコンである入力支援画面表示アイコンと、
入力属性情報と、アイコンの位置を示す情報であるアイコン位置情報とを有する1以上のアイコン位置管理情報と、
入力支援画面を示す1以上の入力支援画面情報とが格納され、
アイコン位置情報取得部と、入力支援画面表示アイコン出力部と、受付部と、入力支援画面出力部とを用いて行われる情報処理方法であって、
前記アイコン位置情報取得部が、
前記1以上の各入力属性情報に対応するアイコン位置情報を、前記記録媒体から取得するアイコン位置情報取得ステップと、
前記入力支援画面表示アイコン出力部が、
前記入力支援画面表示アイコンを、前記1以上の各入力フィールド上の位置であり、前記アイコン位置情報取得部が取得したアイコン位置情報が示す位置に出力する入力支援画面表示アイコン出力ステップと、
前記受付部が、
前記画面上の入力支援画面表示アイコンの選択を受け付ける受付ステップと、
前記入力支援画面出力部が、
前記受付部が前記入力支援画面表示アイコンの選択を受け付けた場合に、前記入力支援画面情報を用いて、入力支援画面を出力する入力支援画面出力ステップとを具備し、
前記入力支援画面出力ステップで出力された入力支援画面に対する入力は、前記入力支援画面に対応する入力フィールドに出力され、
前記入力フィールドは、
表が有するセルである情報処理方法。
【請求項4】
記録媒体に、
1以上の入力フィールドを有する画面を示す情報であり、当該1以上の各入力フィールドに入力される情報の属性を示す1以上の入力属性情報を有する1以上の画面情報と、
入力フィールドへの情報の入力を行う画面であり、電卓状の画面、カレンダー状の画面、50音表状の画面、キーボード状の画面のうちのいずれかの画面である入力支援画面を表示するためのアイコンである入力支援画面表示アイコンと、
入力属性情報と、アイコンの位置を示す情報であるアイコン位置情報とを有する1以上のアイコン位置管理情報と、
入力支援画面を示す1以上の入力支援画面情報とが格納され、
コンピュータを、
前記1以上の各入力属性情報に対応するアイコン位置情報を、前記記録媒体から取得するアイコン位置情報取得部と、
前記入力支援画面表示アイコンを、前記1以上の各入力フィールド上の位置であり、前記アイコン位置情報取得部が取得したアイコン位置情報が示す位置に出力する入力支援画面表示アイコン出力部と、
前記画面上の入力支援画面表示アイコンの選択を受け付ける受付部と、
前記受付部が前記入力支援画面表示アイコンの選択を受け付けた場合に、前記入力支援画面情報を用いて、入力支援画面を出力する入力支援画面出力部として機能させるためのプログラムであって、
前記入力支援画面出力部が出力した入力支援画面に対する入力は、前記入力支援画面に対応する入力フィールドに出力され、
前記入力フィールドは、
表が有するセルであるものとして、コンピュータを機能させるためのプログラム。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

A 「【0013】・・実施の形態1に係る工程管理システム1はパーソナルコンピュータ等の計算機から構成され、この発明の実施の形態1に係るソフトウエアである表形式データ入力支援プログラムの一例である工程管理プログラムを実行するためのハードウエアである。実施の形態1に係る工程管理システム1は、図2に示すように、内部にCPU11が設けられ、CPU11には、内部バス12を介して、キーボードおよびマウス等によりデータの入力が行われる入力部13と、ディスプレイ等の表示装置により工程管理データ等の表示を行う表示部14と、プリンタ等により工程管理データ等の印刷を行う印刷部15と、通信網3を介してサーバ2等の外部装置との通信を行う通信部16と、工程管理処理および工程管理データ入力処理等の種々の処理を行うための工程管理プログラムが記憶されている工程管理プログラム記憶部17と、当該工程管理プログラムにより作成された工程管理データを記憶する工程管理データ記憶部18と、ROM19と、RAM20とが接続されている。
【0014】工程管理プログラム記憶部17は、工程管理データやスケジュールデータの入力、編集、管理、表示、印刷等を行うための工程管理プログラムを格納しており、例えば、後述の図5、図6、図8、図11、図13等に示したフローチャートに従うコンピュータプログラムを格納している・・。これらのコンピュータプログラムは、CPU11により実行される。
【0015】この発明に係る工程管理システム1は、図3に示すように、複数のセルが行方向(横方向)および列方向(縦方向)に配列された表形式のインターフェース(スプレッドシート)を備え、当該インターフェースにより、各セルごとにデータを入力してそれを記憶し、予め設定された画面上の表示位置に、各セルごとに、当該データに基づく情報を表示して、表形式の工程管理データを作成および管理するシステムである。・・・このような工程管理データにおいては、種々の条件により、入力が制限されることがある。そのような条件の例としては、例えば、計上済み期間への作業入力や、計上済み期間の作業に影響する変更、削除などは行えないので、それらの条件に該当する場合には、そのセルへの入力を制限する制限処理が施される。また、計画(予定)のデータは入力可能であるが、実績に関するデータは変更できないため、これに該当するセルについても入力制限処理が施される。この発明においては、当該工程管理データにおけるセルへの入力制限を施したときに、その入力制限を視覚的に直ちに把握できるようにしたものである。具体的には、入力制限の理由ごとに個別のマークを設定し、そのマークを各セルの隅に表示するようにした。また、ユーザが該マークをマウスでポイントすることで、入力制限理由が画面表示される構成にした。」

B 「【0016】この方法を実現するためのポイント(機能)には、以下の3点が挙げられる。
【0017】(I)セルの入力制限マーク表示方法(手段)
図3(a),(b)に例を示すように、入力制限に対応した入力制限マーク31,32を、入力制限されているセル30に表示する。複数の入力制限にセルが該当した場合には、そのセル上には、複数の入力制限マークを表示する必要があるので、表示位置の指定方法についても適宜設定可能とする。・・・」
「【0021】(I)セルの入力制限マーク表示方法(手段)について
入力制限マーク31,32の表示位置をセル30の四隅(右上、右下、左上、左下)から選択して設定し、その位置に表示する。なお、入力制限マークを複数個表示する場合には、選択設定された位置に、予め設定された順番で(例えば、後述の入力制限番号(ID番号)順に)、等間隔で順次表示する。なお、選択設定された位置が、右上および右下の場合には右つめ表示とし、左上および左下の場合には左つめ表示とする。
【0022】図4(a)に、入力制限マークの表示パターン設定データ形式の一例を示す。図4(a)に示すように、入力制限マークの表示パターン設定データ形式には、各入力制限の種別に対して付せられた固有の識別番号である入力制限番号(ID番号)と、各入力制限の名称である入力制限名、入力制限が施される条件または理由である入力制限条件、入力制限マークの表示/非表示を切り替えるマーク表示切替、入力制限マーク(表示マークの種類)、マークの色、セル内のマークの表示位置、および、入力制限内容を説明した画面に表示されるメッセージ等の各項目が含まれる。これらの表示パターン設定データの各項目の内容は予めデフォルト値が設定されていてもよいし、ユーザが設定するようにしてもよい。なお、登録された表示パターン設定データは、図1に示すデータベース4内に格納されて全ユーザ共通としてもよく、あるいは、図2に示す工程管理データ記憶部18内またはRAM20内に格納されてユーザごととしてもよい。
【0023】なお、図4(a)に示す入力制限マークの表示パターン設定データは、入力制限の内容ごとに設定されるので、その個数は入力制限数(n個)だけ存在する。設定方法(登録方法)については、図7の入力画面によりユーザがデータを入力して行う。これについては後述する。なお、入力制限番号については、ユーザが入力するものではなく、登録順に自動採番されることとする。また、各入力制限のリストは、入力制限番号順に(すなわち、1?nまで順に)、図4(b)に示すような入力制限テーブルに登録されており、図4(b)の入力制限テーブルと図4(a)の入力制限マークの表示パターン設定データとの間にはリンクが張られているため、図4(a)の入力制限マークの表示パターン設定データを新たに登録すると、図4(b)の入力制限テーブルにそれが追加され、自動更新される。
【0024】また、さらに詳細にいえば、図4(a)の入力制限マークの表示パターン設定データは、各セルのセルデータ内の属性データとして記憶される。以下に説明する。
【0025】この発明の工程管理データのデータ構造を図10に示す。工程管理データは、図10に示すように、全体の表属性とセルデータとから構成される。このうちの全体の表属性には、用紙の大きさ、余白、用紙の置く向き(横向き、縦向き)、表の行数および列数、タイトルなどの表全体に関するデータが含まれる。また、セルデータは、各セルごとに記憶されるものであって、図10に示すように、データとセル属性とから構成される。なお、データとしては、例えば、数字やかなあるいは漢字などの1以上の文字からなる文字列か、あるいは、数値、あるいは、計算式等から構成される。また、セル属性には、書体、文字サイズ、割り付け、入力制限属性などが含まれる。図4(a)の入力制限マークの表示パターン設定データは、このセル属性内の入力制限属性として格納される。
【0026】図5に、セルの入力制限マーク表示方法の処理の流れを示す。本実施の形態1では、工程管理データの表形式のスプレッドシートを表示する際に、それの各セルについて、当該セルが、入力制限テーブルに登録されている全ての入力制限(n個)のうちのいずれかの入力制限に合致するか否かを、セルデータと入力制限条件とを比較することにより、順次確認していき、該当する入力制限があれば、それに対応する入力制限マークを当該セルに表示する。・・・」

C 「【0029】(II)入力制限内容のメッセージ表示方法(手段)について
本実施の形態1においては、メッセージ表示方法として、ユーザが入力制限マークをポイントした時に、メッセージ表示を行うこととする。すなわち、図3(a),(b)に示すように、セルに対して入力制限マーク31,32が画面表示されているときに、ユーザが、マウスを用いて、マウスポインタ37により、画面に表示されている入力制限マーク31,32の中のいずれか1つをポイントすると、当該入力制限マーク31または32に対応する入力制限の内容を吹き出しによりメッセージとして表示する。・・・」

D 「【0031】(III)各入力制限に対する表示パターンの編集方法(手段)について
本実施の形態1においては、入力制限に対する入力制限マークおよびメッセージの表示パターンは自由に編集定義可能とする。すなわち、図4(a)に示した入力制限表示パターン設定データの内容を更新することにより、編集可能である。表示パターンは、全ユーザ共通でも、ユーザごとでも、いずれも可能とし、画面上での編集も可能とする。入力制限マーク(表示マーク)、マーク色及びマーク表示位置は、所定の選択肢から選択する。図7に、図4に示した入力制限表示パターン設定データの内容を更新するための定義画面例を示す。図7の定義画面は図2の入力部13に含まれる。図7の定義画面における、入力制限名、マーク表示切替(ON・OFF)、表示マーク、マーク色、表示位置、メッセージ等の所定の入力欄に内容を入力するか、あるいは、それらの入力欄にすでに入力されている内容を変更するかにより、図4に示した入力制限表示パターン設定データの内容を登録または更新することができる。」

E 「【0032】以上のように、この発明は、上記の実施の形態1で説明したように、工程管理データのスプレッドシートのセルに対して入力制限処理を施す場合に、予めそれらの入力制限の内容ごとに異なる入力制限マークを設定しておき、その入力制限マークを該当するセルの隅に表示するようにしたので、入力制限されているセルか否かを、ユーザが視覚的に直ちに把握することができる。また、その入力制限マークにマウスポインタを当てるだけで、入力制限された理由がメッセージとして画面表示されるので、ユーザが容易に入力制限内容を理解することができる。これにより、ユーザは、入力制限(ロック)されているセルがどれで、また、その理由が何であるかを、視覚的に迅速に把握でき、手間取ることなく、スムーズに工程管理データの入力や削除または変更等の操作を行うことができるという効果を奏する。」

F 「【0049】本実施の形態5においては、入力制限だけでなくヘルプ(操作案内)などへの応用について説明する。すなわち、入力制限マークとして説明したマークを、セルへの入力制限のみでなく、操作案内のマークとして用い、そのメッセージも表示可能にする。これにより、セルごとに簡易ヘルプをつけるなどの応用ができる。
【0050】図15に、表示パターン設定画面の一例を示す。基本的に、図7に示した定義画面と同じであるが、図7との違いは、図15においては、種別として、入力制限の定義であるか、操作案内の定義であるかを、ボタンにより選択入力するようになっている点である。本実施の形態5では、当該ボタンにより、登録する入力制限マークが、入力制限であるか、操作案内であるかを選択入力する。これにより、入力制限マークを、セルへの入力制限のみでなく、操作案内のマークとして用い、ユーザがマウスでポイントしたときに、操作案内のメッセージが吹き出しで画面表示されるので、ユーザから操作案内についてよくある質問については、その操作案内をメッセージで画面表示するようにすれば、ユーザはヘルプ機能で検索して操作案内を探す手間がなく、簡単に操作案内を参照することができる。」

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 複数のセルが行方向(横方向)および列方向(縦方向)に配列された表形式のインターフェース(スプレッドシート)を備え、当該インターフェースにより、各セルごとにデータを入力してそれを記憶し、予め設定された画面上の表示位置に、各セルごとに、当該データに基づく情報を表示して、表形式の工程管理データを作成および管理する工程管理システム1を構成する計算機であって、
各セルごとに記憶されるセルデータがデータとセル属性とから構成され、そのうち、データは、例えば、数字やかなあるいは漢字などの1以上の文字からなる文字列か、あるいは、数値、あるいは、計算式等から構成されるものであり、また、セル属性には、書体、文字サイズ、割り付け、入力制限属性などが含まれており、
当該工程管理データにおけるセルへの入力制限を施したときに、その入力制限を視覚的に直ちに把握できるようにしたものであって、入力制限の理由ごとに個別のマークを設定し、そのマークを各セルの隅に表示するようにし、ユーザが該マークをマウスでポイントすることで、入力制限理由が画面表示されるものであり、
セル属性内の入力制限属性として格納される表示パターン設定データは、定義画面における、入力制限名、マーク表示切替(ON・OFF)、表示マーク、マーク色、表示位置、メッセージ等の所定の入力欄の内容の入力または更新により登録または更新されるものであり、
マークは、セルへの入力制限のみでなく、操作案内のマークとしても用いられ、セルごとに簡易ヘルプをつけるなどの応用ができるものである、
計算機。」

2.周知技術(引用文献2、引用文献3)について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2の段落【0033】、引用文献3の段落【0091】の記載からみて、「入力フィールドに隣接する位置において、カレンダー等の入力支援画面を表示させ、入力を受け付けるようにすること」は、周知技術である。

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明の「計算機」は、本願発明1の「情報処理装置」に相当する。また、引用発明の「表形式のインターフェース(スプレッドシート)」及び「セル」は、それぞれ、本願発明1の「表」である「1以上の入力フィールドを有する画面」及び「表が有するセル」である「入力フィールド」に相当する。また、引用発明の入力フィールドごとに記憶されるデータが文字列、数値、計算式等のいずれであるかを示す情報は、本願発明1の「入力属性情報」に相当する。
よって、本願発明1と引用発明とは、いずれも、「記録媒体に、1以上の入力フィールドを有する画面を示す情報であり、当該1以上の各入力フィールドに入力される情報の属性を示す1以上の入力属性情報を有する1以上の画面情報と、が格納され、前記入力フィールドは、表が有するセルである情報処理装置」であるといえる。

イ 引用発明における、「入力制限理由」や「簡易ヘルプ」を表示するための画面は、電卓状の画面、カレンダー状の画面、50音表状の画面、キーボード状の画面のうちのいずれかである入力フィールドへの情報の入力を行う画面ではないものの、入力支援のための画面である点において、本願発明1の「入力支援画面」に対応しており、両者は、記録媒体に格納された入力支援のための画面を示す1以上の情報を用いて入力支援のための画面を出力するものである点で、共通するといえる。

ウ 引用発明の「マーク」は、この入力支援のための画面を表示するために入力フィールド上の位置に出力されるアイコンである点で、本願発明1の「入力支援画面表示アイコン」に対応する。また、引用発明では、入力フィールド上の位置にこのアイコンを出力するにあたって、セルを構成するセル属性内の入力制限属性として格納された表示パターン設定データが含むアイコンの位置を取得し、取得された情報が示す位置にアイコンを出力するところ、引用発明の表示パターン設定データは、アイコンの位置を示す情報であるから、本願発明の「アイコン位置情報」に相当するといえる。
そして、この引用発明のアイコン位置情報を含む「入力制限属性」は、セルを構成するセル属性として格納されるものであって「入力属性情報」と対応づけて格納されるものではないものの、取得されるアイコン位置情報を含む記録媒体に格納される情報である点で、本願発明の「アイコン位置管理情報」に対応するといえるから、引用発明と本願発明とは、アイコンを入力フィールド上の位置に出力する点、及び、その際、記憶媒体に格納されたアイコンの出力される位置を示すために取得される情報を取得し、取得された情報が示す位置にアイコンを表示するものである点でも、共通するといえる。

エ イ、ウに示したところに照らして、引用発明は、アイコン位置情報を、前記記録媒体から取得し、取得したアイコン位置情報が示す位置にアイコンを出力し、画面上のアイコンの選択を受け付け、該アイコンの選択を受け付けた場合に入力支援のための画面を出力するものであり、これらの点において、本願発明1の「アイコン位置情報取得部」、「入力支援画面表示アイコン出力部」、「受付部」及び「入力支援画面出力部」にそれぞれ対応する情報取得部、アイコン出力部、受付部及び画面出力部を具備するものといえる。

オ したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
記録媒体に、
1以上の入力フィールドを有する画面を示す情報であり、当該1以上の各入力フィールドに入力される情報の属性を示す1以上の入力属性情報を有する1以上の画面情報と、
入力を支援するための画面を表示するためのアイコンと、
アイコンの位置を示す情報であるアイコン位置情報を含む情報と、
1以上の入力支援のための画面を示す情報とが格納され、
アイコン位置情報を、前記記録媒体から取得する情報取得部と、
入力支援のための画面を表示するために入力フィールド上の位置に出力されるアイコンを、前記1以上の各入力フィールド上の位置であって取得したアイコン位置情報が示す位置に出力するアイコン出力部と、
画面上の該アイコンの選択を受け付ける受付部と、
前記受付部が該アイコンの選択を受け付けた場合に、前記入力支援のための画面を示す情報を用いて入力支援のための画面を出力する画面出力部とを具備し、
前記入力フィールドは、表が有するセルである情報処理装置。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1では、入力支援のための画面が「入力フィールドへの情報の入力を行う画面であり、電卓状の画面、カレンダー状の画面、50音表状の画面、キーボード状の画面のうちのいずれかの画面であ」り、「入力支援画面に対する入力は、前記入力支援画面に対応する入力フィールドに出力され」るのに対し、引用発明では、「入力制限理由」又は「簡易ヘルプ」を表示するための画面であって、この画面に対する入力が対応する入力フィールドに出力されるものではない点。

(相違点2)本願発明1では、記録媒体に「入力属性情報とアイコンの位置を示す情報であるアイコン位置情報とを有する1以上のアイコン位置管理情報」が格納されており、入力支援のための画面を表示するためのアイコンを入力フィールド上の位置に出力するにあたって、情報取得部がこのアイコン位置管理情報のアイコン位置情報を取得するのに対し、引用発明では、記録媒体に「入力属性情報とアイコンの位置を示す情報であるアイコン位置情報とを有する1以上のアイコン位置管理情報」が格納されておらず、情報取得部は「アイコン位置管理情報」のアイコン位置情報ではなく、セル属性である入力制限属性のアイコン位置情報を取得する点。

(相違点3)情報取得部、アイコン出力部、受付部、画面出力部について、本願発明では、それぞれ「アイコン位置情報取得部」、「入力支援画面表示アイコン出力部」、「受付部」及び「入力支援画面出力部」であるのに対し、引用発明では、そうではない点

(2)相違点についての判断
上記相違点のうち、相違点1、2について検討する。
相違点1と相違点2とを克服するには、入力フィールドであるセルの属性に対応づけられたものである引用発明の「入力制限理由」又は「簡易ヘルプ」の表示をそこに入力され得る情報の属性に対応づけられる性質の表示へと変更するとともに、アイコン位置情報の格納方法についても、セルの属性として格納するのではなくセルに入力される情報の属性として格納するものへと変更する必要がある。
しかし、そもそも引用発明は、「セルへの入力制限及びその制限内容を視覚的に直ちに把握できるようにする」(引用文献1【0008】)という課題の解決のために「入力制限理由」又は「簡易ヘルプ」の表示を行うものであり、このような「入力制限理由」又は「簡易ヘルプ」の表示が入力フィールドに入力され得る情報に対応してではなく入力フィールドであるセルに対応づけられている必要があるからこそ、アイコン位置情報もセルに入力され得る情報の属性としてではなくセル属性として格納している。このことに照らせば、引用発明についての上記の変更は、引用発明をこのような課題の解決手段として成り立たなくさせるものであるから、このような変更が動機づけられることはない。「第5」の「2.」で示したとおりの周知技術が認定できるとしても、引用発明においてこの周知技術を採用する動機づけに欠けるものである。
したがって、上記相違点3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2について
本願発明2も、本願発明1について「1.」で検討した相違点1、2に係る構成と同じ構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

3.本願発明3、4について
本願発明3、4は、それぞれ、装置発明である本願発明1に対応する方法発明及びプログラム発明であり、本願発明1について「1.」で検討した相違点1、2に係る構成と同じ構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1-4は、「第6」に示した相違点1、2に係る事項を有するものであることが明確となっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用発明及び周知技術に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-09-11 
出願番号 特願2016-77766(P2016-77766)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松野 広一  
特許庁審判長 金子 幸一
特許庁審判官 上嶋 裕樹
相崎 裕恒
発明の名称 情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム  
代理人 谷川 英和  

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