• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  C10L
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  C10L
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  C10L
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C10L
管理番号 1343750
審判番号 無効2017-800131  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-10-10 
確定日 2018-09-03 
事件の表示 上記当事者間の特許第5017321号発明「オガライト製造装置、およびオガ炭」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯等

1 本件無効審判に係る特許
本件審判に係る特許第5017321号は、平成21年6月29日、被請求人(特許権者)である鈴木健及び鈴木啓次郎から出願され、特願2009-153570号として審査され、平成24年6月15日、発明の名称「オガライト製造装置、およびオガ炭」、請求項の数「2」として特許権の設定登録を受けたものである(以下、各請求項に係る特許を「本件特許1」などといい、まとめて「本件特許」という。また、各請求項に係る発明を「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」という。)。

2 本件無効審判における手続の経緯
本件無効審判は、請求人である株式会社三峡より請求されたものであって、手続の経緯(両当事者からの提出書類など)は以下のとおりである。
平成29年10月10日 審判請求書(請求人)
同年10月25日 手続補正書(審判請求書の代理人の欄の 補正:請求人)
同年11月29日 手続補正書(審判請求書の請求の理由及 び証拠方法の欄の補正:請求人)
平成30年 1月31日 審判事件答弁書(被請求人)
同年 3月22日付け 審理事項通知
同年 5月11日 口頭審理陳述要領書(請求人)
同年 5月25日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
同年 6月 8日 上申書(請求人)
同年 6月 8日 第1回口頭審理
同年 6月19日 上申書(被請求人)

第2 両当事者の主張の概要と証拠方法

1 両当事者の主張
(1) 請求の趣旨(請求人)
特許第5017321号の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。
(2) 答弁の趣旨(被請求人)
本件請求は成り立たない。審判費用は、審判請求人の負担とする、との審決を求める。

2 証拠方法
両当事者から提出された証拠方法は以下のとおりである(以下、甲第1号証を「甲1」などと略して記載する。)。
(1) 請求人から提出された証拠
甲1:特開昭54-159401号公報
甲2:実願昭58-161971号(実開昭60-71648号)のマ イクロフィルム
甲3:実公平8-8085号公報
甲4:実公平7-30664号公報
甲5:実公昭41-9707号公報
甲6:登録実用新案第3147139号公報
甲7:特開平11-302670号公報
甲8:実公平5-15434号公報
甲9:実公平4-36884号公報
(以上、審判請求書に添付して提出)
なお、審判請求書に添付して下記参考資料1が、平成30年5月11日提出の口頭審理陳述要領書に添付して下記参考資料2が、平成30年6月8日提出の上申書に添付して参考資料3?9が、それぞれ提出された(ただし、参考資料3?6は第1回口頭審理のための説明用資料であり、参考資料7?9については口頭審理の際に撤回された。第1回口頭審理調書参照)。
参考資料1:建築用語辞典編集委員会編「図解 建築用語辞典(第2版 )」、平成29年5月15日第2版第15刷発行、株式会 社オーム社、第187頁「ぞろ 揃」の項の「面一」に関 する記載
参考資料2:吉川昌範ら著「新機械工作」、平成18年2月25日発行 、実教出版株式会社、第56、57頁
(2) 被請求人から提出された証拠
乙第1号証:2018年(平成30年)6月11日付け島田一成氏証言 書
(以上、平成30年6月19日提出の上申書に添付して提出)

第3 請求人が主張する無効理由

請求人が主張する無効理由は、次に示す無効理由1、2、4及び5である。
なお、平成30年6月8日に行われた第1回口頭審理において、請求人が当初主張していた無効理由3(本件特許1に対して、甲2に記載された発明及び甲3、4、1に記載された周知技術に基づく特許法第29条第2項所定の規定違反を主張するもの)については、被請求人の同意の下、取り下げられ、また、無効理由4については、無効理由1に理由があることを前提とするものであることが確認された(第1回口頭審理調書参照)。

1 無効理由1(新規性:対象特許は本件特許1:証拠は甲1)
本件発明1は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本件特許1は、同法第123条第1項第2号に該当するため、無効とすべきものである。

2 無効理由2(進歩性:本件特許1:甲1、3?5)
本件発明1は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された甲1に記載された発明及び甲3?5に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本件特許1は、同法第123条第1項第2号に該当するため、無効とすべきものである。

3 無効理由4(進歩性:本件特許2:甲1、6?9)
本件発明2は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された甲1に記載された発明及び甲6?9に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本件特許2は、同法第123条第1項第2号に該当するため、無効とすべきものである。

4 無効理由5(実施可能要件、サポート要件、明確性要件:本件特許1、2:参考資料1)
本件特許の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載には、以下に示す(1)及び(2)のとおり、本件発明1の「面一」の用語に関連する記載不備(実施可能要件、サポート要件、明確性要件)及び同じく「成形されるオガライトが溝無しの外形に整えられるように構成され」の用語に関連する記載不備(実施可能要件、サポート要件)が存在する。
本件発明2についても同様である。
したがって、本件特許は、特許法第36条第4項第1号並びに第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当するため、無効とすべきものである。
(1) 「面一」の用語に関連する記載不備(実施可能要件、サポート要件、明確性要件)について
本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明及び図面を参酌しても、当業者が本件発明1の「面一」を把握することは困難であり、本件発明1と明細書の発明の詳細な説明の対応関係は不明瞭であり、かつ、本件発明1を実施することはできない。
(2) 「成形されるオガライトが溝無しの外形に整えられるように構成され」の用語に関連する記載不備(実施可能要件、サポート要件)について
当業者は、「前記凸条の厚みは、排出方向に向かって徐々に薄く形成され、前記凸条の高さは、排出方向に向かって徐々に低く形成されて、」の規定から、「成形されたオガライトの表面から溝が消滅する」を把握することはできず、当業者が、「成形されたオガライトの表面から溝が消滅する」を実現するためには、期待し得る程度を超える試行錯誤等が必要である。

第4 本件特許請求の範囲の記載

本件特許請求の範囲の記載は以下のとおりである。
「【請求項1】
木粉を入口から出口に向かって内径が縮径した圧縮筒に圧入して、さらに内径が縮径した成形器を通過させることによって、高温・高圧状態となして、棒状で溝無し孔無しのオガライトを成形するオガライト製造装置において、
前記成形器の内面には、所定の厚みの凸条が圧入側から排出側に向かって形成され、
前記凸条の厚みは、排出方向に向かって徐々に薄く形成され、
前記凸条の高さは、排出方向に向かって徐々に低く形成されて、成形器の排出側の内径と面一になるように構成され、
前記圧縮筒と前記成形器の後に、前記成形器の排出側の内径と同じ内径の整形スリーブが配設されており、
前記圧縮筒にて圧縮された木粉が、前記成形器を通過した後に前記整形スリーブに押し込まれて、成形されるオガライトが溝無しの外形に整えられるように構成されていることを特徴とするオガライト製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載のオガライト製造装置で製造した棒状で溝無し孔無しのオガライトを炭化させることによって得られた、棒状で溝無し孔無しのオガ炭。」

第5 甲各号証の記載事項

甲各号証には、請求人が、審判請求書(平成29年10月25日付けの手続補正書及び同年11月29日付けの手続補正書により補正されたもの)においておおむね摘示しているとおり、次の記載を認めることができる。

1 甲1の記載事項(下線は当審が付した。)
(1) 「2.特許請求の範囲
強圧縮と刃先強靭の押出スクリュー(3)(4)と、複数個の縦溝(9)突堤(10)を設けた逆流防止案内筒(8)と超硬質のテーパーブッシュ(6)平行ブッシュ(7)を装入した圧縮筒を備える固型燃料成型機」(第1頁左下欄3?8行)
(2) 「この発明は鋸屑、プレナー屑、豆殻、紙屑等廃材を原料とし之を乾燥機で乾燥した資料を熱と圧縮で棒状に連続成型する固型燃料成型機に関する。」(第1頁左下欄10?13行)
(3) 「元来之等の資料を圧縮成型するには、熱と圧縮に依らねば固型化しない。故に従来成型機は圧縮筒(5)に吊下炉(11)装着して、重油、石油、ガス、固型燃料等で終日加熱した。成型するには先づ圧縮筒を加熱した後、主軸(1)を回転し、ホッパー(2)に供給する原料をスクリュー(3)で圧縮筒(5)に送り込み圧縮成型するが一見圧縮筒(5)は先が開口しているので、難なく成型出来る様に思われるが、実際には圧縮筒(5)に熱がないと非常な抵抗が生じ、絶対に押出不可能である。圧縮筒(5)が250℃前後の適温を保持して始めて圧縮筒(5)開口部から硬度の高い製品が連続成型押出される、即ち圧縮筒(5)の加熱温度が220℃以下に下降すると圧縮筒での押出抵抗が増大してスクリュー(3)に依る押出が不可能になり、原料が逆流して生産が停止し、圧縮ガスの多発によって爆走の危険がある。又逆に圧縮筒の加熱温度が270℃以上に上昇すると上昇温度に比例して押出抵抗が弱まり圧縮の悪い製品が出来る。その為従来は終日圧縮筒(5)の加熱温度を加減修正する感を必要とする煩わしい作業であった。
この加熱温度調節の無駄を省くには、押出速度を倍加して、スクリュー(3)に依る圧縮熱と圧縮筒(5)内の製品通過による摩擦熱を増大して固型化の適温250℃を保持させる事が必要である。押出速度が遅いと圧縮の摩擦熱が固型の適温に至らないので、加熱炉で終日圧縮筒(5)の加熱を要する事になる。然し押出速度を倍加すると圧縮筒(5)内の交換ブッシュ(6)(7)は単なる焼入程度の硬度では押出の側圧によって25時間前後で甚だしく摩耗して押出不可能となる。」(第1頁左下欄14行?第2頁左上欄13行)
(4) 「この発明は以上説明した欠点を全く排除し、圧縮筒(5)を終日加熱調整する事なく、スクリュー刃先(4)の欠損を皆無とし、原料供給の増減にも支障なく、原料送りの逆流を防ぎ、圧縮筒(5)のブッシュ(6)(7)交換の手間を省き硬度の高い製品が感を要せずして量産出来ると共に、生産原価引下げを図る事を目的とする。」(第2頁右上欄14行?左下欄3行)
(5) 「本発明の実施例を図面によって説明すると次の通りである。
スクリュー(3)で押出成型する時原料が圧縮筒(5)へ送られ強圧縮されると、製品硬化の側圧を受けて圧縮筒(5)内の交換ブッシュが摩耗する為、圧縮筒のテーパーブッシュ(6)は昭和40年実用新案登録第756566号を援用し超硬質テーパーブッシュ(6)を使用するが、本発明の如く押出速度が従来の2倍以上となると、テーパーブッシュ(6)だけ超硬にしても之に接続する平行ブッシュ(7)が従来の焼入れ丈ではテーパーブッシュ(6)と平行ブッシュ(7)の接続内面に製品通過の摩耗による段差が生じる。従ってテーパーで一旦固型化したものが、摩耗で生じた之の段差部を製品が通過する時にここで膨張し、固型化の低下した製品が出来る様になる。その為50日前後で平行ブッシュの交換を要するのでテーパーブッシュ(6)と仝質の超硬質の平行ブッシュ(7)にして耐摩耗を強化し長年月交換の必要がない様にした。」(第2頁左下欄4行?右下欄6行)
(6) 「次に逆流防止案内筒(8)は第2図に示す如く、スクリューとの接触内面に複数個の縦溝(9)を設け、且つこの溝に夫々2?3個の突堤(10)を設けた。スクリュー(3)の回転によってホッパー(2)より送り込まれる原料は逆流防止案内筒(8)を通過して圧縮筒(5)に送られる。この際にスクリュー(3)(4)の圧縮熱によって木ガスが発生し、之が原料を吹返して逆流させようとする働きが生ずる。この逆流しようとする原料は縦溝(9)に溜った原料と三角状の突堤(10)に引掛って逆流を防ぎ、原料の逆流防止の目的を果した。」(第3頁右上欄1?12行)
(7) 「この発明は以上説明した様に、従来終日圧縮筒(5)の加熱を必要としたものが、運転前の20分前後加熱する丈で製造中は加熱の必要がなく、従って圧縮筒の加熱費が従来の1/30以下で済み、且つ圧縮熱丈で固型化の適温度を保持するので硬度の高い品質のものが一定して生産出来る。又圧縮筒のブッシュ(6)(7)は従来に比べ2.5倍の生産をするにも関わらず1.5?2年と長年月交換する事なく使用出来た。亦スクリュー先端(4)の損傷なく逆流防止案内筒(8)の働きも相まって強圧縮が可能となった。従って従来とは大いに異り煩わしい感と作業を要せず無人運転を可能にし、量産が出来て大巾な生産原価引下げの効果がある。」(第3頁右上欄13行?左下欄9行)
(8) 「

」(第1図及び第2図)

2 甲3の記載事項
(1) 「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】オガ粉を圧縮スクリューにてスリーブを経て加熱筒に圧入し、オガライトを加熱成型するオガライト成型機において、
前記スリーブの内壁に軸方向のリブ状突起を少なくとも一本設け、前記スリーブに透孔を少なくとも一つ穿設し、前記圧縮スクリューの先端にスクリュー軸より小径で且つ若干先細りの小軸を突設し、螺旋状のスクリュー刃を前記小軸の基部まで形成したことを特徴とするオガライト成型機。」(第1欄1?10行)
(2) 「【考案が解決しようとする課題】
しかし、まだ立ち消えすることも考えられるので、穴を設けたオガライトが要求されている。
しかしこの場合、大きい穴では火持ちが悪いので小さい穴を設ける必要がある。
ところが、小さい穴を設けるために、以前の穴のあるオガライト成型用の圧縮スクリューの先端の軸を細くするだけでは、オガ粉を押し込む作用が、周辺部では充分働くが、軸芯部では充分作用しないので、軸にオガ粉がこびり付いてしまうという問題がある。
また、小さな穴は詰まりやすいので、従来の穴のあるオガライト成型用の装置では、一旦穴が詰まるとガスの抜け道がなくなるので、オガライトが爆発的に飛び出すという危険性もある。
そこで、穴なしオガライト成型機の構造を利用して、小さな穴のあるオガライトを安全に成型できる装置の提供を目的として本考案はなされたものであある。」(第3欄22?38行)
(3) 「【実施例】
以下に、本考案にかかる好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
第1図は前記実施例のオガライト成型機の一部断面側面図、第2図は前記オガライト成型機のスクリューの先端部の拡大側面図、第3図は前記オガライト成型機のスリーブの側面断面図、第4図は前記スリーブの正面図、第5図はオガライトの正面断面図である。
図面において、
2はベルトを介してモータにて回転駆動されるプーリ、3はオガライト成型機の本体、4は材料のオガ粉を入れるホッパー、5は該ホッパーのオガ粉を圧縮して押し出す圧縮スクリュー、6は導入案内筒、8は前記圧縮スクリュー5の先端部に配置された取り替え交換可能な交換案内筒、9はオガライト成型機の本体3に設けられた加熱筒、10は前記加熱筒9に内装された加熱スリーブ、11は前記加熱筒9を加熱する加熱釜、15は前記加熱筒9に内装されたスリーブ、14は前記スリーブ15の内部で加熱されるオガ粉から発生するガスを筒外へ排除するためのガス抜き穴である。前記加熱スリーブ15の内面には歯18を凸設した。第2図において、51はスクリュー軸、52は該スクリュー軸51の周囲に形成されたスクリュー刃、53は前記スクリュー軸51の先に延設された小径軸である。
上記構成のオガライト成型機において、前記ホッパー4に供給されるオガ粉は、前記圧縮スクリュー5の後端部Aのスクリューにより前記導入案内筒6へ搬送される。この導入案内筒6内のオガ粉は更に前記交換案内筒8へ押し込まれる。この交換案内筒8の内径は先細りになっていて、オガ粉は、前記圧縮スクリュー5の先端部Bのスクリューにて前記スリーブ15へ押し込まれる。
このスリーブ15においては、前記圧縮スクリュー5で押し込まれたオガ粉は前記加熱筒9内に充満しているオガ粉で制限されると共に、スリーブ15の内径は軸方向に先細りのテーパーとなっているため、内径の減少による抵抗により圧縮される。そして、前記加熱釜11の熱により前記加熱筒9を介して加熱される。
このとき、前記圧縮スクリュー5の先端にスクリュー軸51より小径で且つ若干先細りの小径軸53を突設したので、オガライト20には小さな穴22が形成される。
小径軸を先細りにしたので、オガライト20の穴22周辺のオガ粉が小径軸53に巻きつくことがなくなる。
施状のスクリュー刃52を前記小径軸53の基部まで形成したので、オガライト20が小径軸53に巻きつくことなく、オガライト20を押し出す力が作用する。
このようにして、オガ粉は前記スリーブ15から前記加熱釜11にかけて加熱と圧縮されるので、棒状の固いオガライト20として成型される。
このとき、成型されるオガライト20は前記歯18によって軸廻りの回転を規制されながら押されるとともに、その表面には、前記歯18によって溝21が形成される。
そして、発生したガスは前記ガス抜き穴14と前記オガライトの表面に軸方向に形成されたガス抜き溝21とから排出されるので、オガライトが前記加熱筒10の先端から飛び出すことは無い。」(第4欄21行?第5欄第24行)
(4) 「前記スリーブ15の形状を第3図および第4図に基づいて以下に詳述する。
前記スリーブ15の内壁には4本の歯18が設けられている。この歯18は、入り口側から出口側へ向かって薄くまた低くテーパを持たせてある。例えば、歯18の入口側の厚みを6mm、出口側の厚みを4mmとする。」(第5欄27?32行)
(5) 「

」(【第1図】?【第5図】)

3 甲4の記載事項
(1) 「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】オガ粉を、圧縮スクリューにてスリーブを経て加熱筒に圧入し、穴なしオガライトを加熱成型する穴なしオガライト成型機において、
前記スリーブの内壁に軸方向のリブ状突起を少なくとも一本設けたことを特徴とする穴なしオガライト成型機。」(第1欄1?6行)
(2) 「そこで、この考案は、以上の欠点を解消し均質な穴なしオガライトを成型するために、加熱筒内でオガライトが回転しないような成型機の提供を目的としている。」(第3欄9?11行)
(3) 「〔実施例〕
以下に、本考案にかかる好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
第1図は前記実施例の穴なしオガライト成型機の一部断面側面図、第2図は前記穴なしオガライト成型機のスリーブの構造を示す一部断面側面図、第3図は前記スリーブの正面図である。
図面において、
2はベルトを介してモータにて回転駆動されるプーリ、3は穴なしオガライト成型機の本体、4は材料のオガ粉を入れるホッパー、5は該ホッパーのオガ粉を圧縮して押し出す圧縮スクリュー、6は導入案内筒、8は前記圧縮スクリュー5の先端部に配置された取り替え交換可能な交換案内筒、9は穴なしオガライト成型機の本体3に設けられた加熱筒、10は前記加熱筒9に内装された加熱スリーブ、11は前記加熱筒9を加熱する加熱釜、15は前記加熱筒9に内装されたスリーブ、14は前記スリーブ15の内部で加熱されるオガ粉から発生するガスを筒外へ排除するためのガス抜き穴である。前記加熱スリーブ15の内面には歯18を凸設した。
上記構成の穴なしオガライト成型機において、前記ホッパー4に供給されるオガ粉は、前記圧縮スクリュー5の後端部Aのスクリューにより前記導入案内筒6へ搬送される。この導入案内筒6内のオガ粉は更に前記交換案内筒8へ押し込まれる。この交換案内筒8の内径は先細りになっていて、オガ粉は、前記圧縮スクリュー5の先端部Bのスクリューにて前記スリーブ15へ押し込まれる。
このスリーブ15においては、前記圧縮スクリュー5で押し込まれたオガ粉は前記加熱筒9内に充満しているオガ粉で制限されると共に、スリーブ15の内径は軸方向に先細りのテーパーとなっているため、内径の減少による抵抗により圧縮される。そして、前記加熱釜11の熱により前記加熱筒9を介して加熱される。
このようにして、オガ粉は前記スリーブ15から前記加熱釜11にかけて加熱と圧縮されるので、棒状の固いオガライトとして成型される。
このとき、成型されるオガライトは前記歯18によって軸廻りの回転を規制されながら押されるとともに、その表面には、前記歯18によって溝19が形成される。
そして、発生したガスは前記ガス抜き穴14と前記オガライトの表面に軸方向に形成されたガス抜き溝19とから排出されるので、オガライトが前記加熱筒10の先端から飛び出すことは無い。
前記ガス抜き穴14からこぼれ出るオガ粉は、前記加熱釜11内に落ちて、燃焼するので燃料となる。
前記スリーブ15の形状を第2図に基づいて以下に詳述する。
前記スリーブ15の内壁には4本の歯18が設けられている。この歯18は、入り口側から出口側へ向かって薄くまた低くテーパを持たせてある。例えば、歯18の入口側の厚みを6mm、出口側の厚みを4mmとする。」(第3欄30行?第4欄30行)
(4) 「〔効果〕
本考案にかかる穴なしオガライト成型機によれば、スリーブの内壁に軸方向のリブ状突起を少なくとも一本設けたので、成形されるオガライトの表面に軸方向の溝が形成される。
この溝と前記リブ状突起とが噛み合ってオガライトの回転を防止するので、オガライトの品質が均一となり、炭釜にて炭化するときに硬いオガ炭になる高品質なオガライトを成型できるという効果が得られる。
また、加熱されたオガ粉から発生するガスは、オガライト表面に形成された溝を通って排出されて内部に滞留しないので、オガライトの棒が前記加熱筒の先端から前記ガスの圧力により爆発的に飛び出すということも防止でき、オガライトの成型を安全に行えるという効果も得られる。」(第5欄22行?第6欄12行)
(5) 「

」(【第1図】?【第3図】)

4 甲5の記載事項
(1) 「実用新案登録請求の範囲
図面に示すように、先端部を適宜小さくしたスクリユーコンベヤー1が適合するシリンダー2の内周面の平行部分および傾斜部分の適宜の範囲に適宜の深さの凹部3を形成し、この凹部3中を長手方向に立壁4で適宜数に劃設し、凹部3に壊炉灰5を充填(当審注:ワープロの都合上、「てん」の漢字は原文と異なる。)するようにした壊炉灰の押出装置。」(第2頁右欄3?9行)
(2) 「従来先端部を小さくしたスクリユーコンベヤーで壊炉灰を練合せながら押し出して適宜の形状のノズルにより壊炉灰を形成する壊炉灰の押出装置において、・・・シリンダーの内周面の適宜の範囲に疵をつけることによつて、壊炉灰との抵抗を大きくしての空転を防止して順次押し出すようにしているが、暫らく使用しているとシリンダーの内周面の疵は壊炉灰との摩擦によつて摩耗し平滑となつてしまうので度々疵を付ける必要があるものであつた。」(第1頁左欄21?38行)
(3) 「本案は、シリンダーの内周面に疵を付けることなく、シリンダーの内周面とスクリユーコンベヤーで押し出す壊炉灰との間に摩擦を常に生じさせるようにして壊炉灰の空転を完全に防止するものであつて、シリンダー2の内周面の平行部分および傾斜部分の適宜の範囲に、適宜の深さの凹部3を形成し、この凹部3を長手方向に立壁4で適宜数に劃設したものである。」(第1頁左欄39行?右欄3行)
(4) 「

」(第1図及び第2図)

5 甲6の記載事項
「以上のようにして中実棒状に成型したオガライトを、炭化炉もしくは炭化装置に入れて、高温で炭化することによって、図5に示したようなオガ炭2を得る。」(【0011】)

6 甲7の記載事項
「このようにして成形された円柱体の成形体90は、棒状の固形燃料として使用される。また、炭窯で炭化されることにより成形炭として利用することもできる。」(【0050】)

7 甲8の記載事項
「オガライトを炭釜にて炭化する」(第3欄4、5行)

8 甲9の記載事項
「炭化釜にて、オガライトを炭化、オガ炭を製造する」(第1欄21、22行)

第6 無効理由1、2(甲1を主引例とする本件発明1の新規性及び進歩性)についての当審の判断

1 甲1に記載された発明(甲1発明)の認定
無効理由1、2は、甲1を主引例とするものである。そこで、甲1についてみると、甲1の特許請求の範囲(上記「第5 1(1)」)、並びに、第1、2図に記載された固型燃料成型機(上記「第5 1(8)」)及びその説明(上記「第5 1(5)(6)」)から、次の発明(以下、「甲1発明」という。)を認定することができる。
なお、甲1の第1図から、ホッパー(2)は、その排出側に向かって内径が縮径した出口(請求人が、平成30年5月11日提出の口頭審理陳述要領書5頁において、「シリンダのノズル」と呼称する部分。以下、「テーパー状出口」という。)を有することを看取することができる。そして、第1回口頭審理において、甲1のホッパー(2)に、このような部分が存在すること自体は、被請求人も認めているところであり、両当事者から、下記のような甲1発明の認定について特段異論はなかった。
「固型燃料成型機であって、以下の部材を備えるもの。
・テーパー状出口を有するホッパー(2)
・押出スクリュー(3)
・複数個の縦溝(9)及び突堤(10)を設けた逆流防止案内筒(8)
・超硬質のテーパーブッシュ(6)及び平行ブッシュ(7)を装入した圧 縮筒(5)」

2 本件発明1と甲1発明との対比
(1) 両者の対応関係
ア 甲1発明に係る「固型燃料成型機」は、原料として、鋸屑等廃材を予定し、これを熱と圧縮で棒状に連続成型するものであるから(上記「第5 1(2)」を参照した。)、本件発明1でいう、「木粉」から「棒状」「のオガライトを成形するオガライト製造装置」に相当するものといえるところ、具体的には、甲1の第1、2図及びその説明のとおり(上記「第5 1(5)(6)(8)」に加え、従来の成型機について記載した上記「第5 1(3)」を参照した。)、テーパー状出口を有するホッパー(2)及び逆流防止案内筒(8)内に押出スクリュー(3)が配設され、その回転によって、ホッパー(2)より送り込まれた原料は、逆流防止案内筒(8)を通過して圧縮筒(5)に送られ、当該圧縮筒(5)〔テーパーブッシュ(6)及び平行ブッシュ(7)〕において、当該原料を、固型化し圧縮成型して、最終的に、当該圧縮筒(5)の開口部から硬度の高い製品(固型燃料)が連続的に成型押出されて製造されるものである。
イ ここで、甲1発明に係る固型燃料成型機の各部材の主な役割について、その背景技術及び課題に照らしながら、整理しておく。
(ア) 甲1発明の背景技術及び課題については、甲1の記載から、次のように理解することができる(上記「第5 1(3)」を参照した。)。すなわち、従来の固型燃料成型機においては、終日圧縮筒(5)の加熱温度を加減修正する感を必要とする煩わしい作業が必要であったため、このような加熱温度調節の無駄を省くには、押出速度を倍加して、スクリュー(3)に依る圧縮熱と圧縮筒(5)内の製品通過による摩擦熱を増大して、圧縮筒(5)における加熱温度を、固型化の適温である250℃前後に保持させる必要があるところ、押出速度を倍加すると圧縮筒(5)内の交換ブッシュ(6)(7)が甚だしく摩耗して押出不可能となることなどを課題としていることが分かる。
このような課題に鑑み、甲1発明の固型燃料成型機は、圧縮筒(5)内の交換ブッシュ(6)(7)を超硬質とするなどして、結果、以下の効果(上記「第5 1(7)を参照した。)を奏し得たものである。
「従来終日圧縮筒(5)の加熱を必要としたものが、運転前の20分前後加熱する丈で製造中は加熱の必要がなく、従って圧縮筒の加熱費が従来の1/30以下で済み、且つ圧縮熱丈で固型化の適温度を保持するので硬度の高い品質のものが一定して生産出来る。又圧縮筒のブッシュ(6)(7)は従来に比べ2.5倍の生産をするにも関わらず1.5?2年と長年月交換する事なく使用出来た。亦スクリュー先端(4)の損傷なく逆流防止案内筒(8)の働きも相まって強圧縮が可能となった。従って従来とは大いに異り煩わしい感と作業を要せず無人運転を可能にし、量産が出来て大巾な生産原価引下げの効果がある。」
(イ) 上記の課題等を併せ考えると、甲1発明の固型燃料成型機の各部材の主な役割は、おおむね次のように解するのが相当である。なお、当該成型機を構成するベース部材(従来の固型燃料成型機においても用いられている基本的な部材)の主たる役割は、従来のものと何ら変わるところはないと解される。
甲1発明の「押出スクリュー(3)」は、従来の固型燃料成型機においても用いられるベース部材であるところ、当該押出スクリュー(3)は、これを囲むテーパー状出口や逆流防止案内筒(8)などと協働して、主に、原料の投入口であるホッパー(2)に投入された原料を、圧縮しながら圧縮筒(5)に送る働きをするものであり、併せて、圧縮筒(5)を固型化の適温である250℃前後に保持するために必要となる圧縮熱を得る役割を果たすものであるといえる。ここで、甲1発明の「ホッパー(2)」は、上記のとおり、一般に、原料を投入するために用いられるものであり、それが有する「テーパー状出口」は、上記押出スクリュー(3)と協働して、原料に対する若干の圧縮作用を与えるものと解される。
また、同じくベース部材である甲1発明の「圧縮筒(5)」は、超硬質のテーパーブッシュ(6)及び平行ブッシュ(7)を装入して改良を加えたものであるが、その主な役割は、上記圧縮熱に加えて当該圧縮筒(5)内の製品通過による摩擦熱(ただし、甲1発明の場合は、上記効果の記載のとおり、圧縮熱によるところが大きい。)により、固型化の適温である250℃前後に保持された状態で、原料を固型化し圧縮成型することであるということができる。
さらに、甲1発明の「複数個の縦溝(9)及び突堤(10)を設けた逆流防止案内筒(8)」は、上記押出スクリュー(3)との接触内面に複数個の縦溝(9)を設け、且つこの溝に夫々2?3個の突堤(10)を設けたものであり、これにより、上記圧縮熱によって発生する木ガスが原料を吹返して逆流させることを防止し(上記「第5 1(6)」を参照した。)、上記効果の記載のとおり、ひいては強圧縮を可能とする役割を果たすものであると解される。
ウ 続けて、本件発明1の「圧縮筒」及び「成形器」の役割についても確認しておく。
(ア) 当該役割に関して、本件特許明細書には次の記載がある。
・「【0012】
・・・
図1は、オガライト製造装置Aの要部の断面図である。
図1に示したように、
1はスクリュー圧縮器であり、供給されるおが屑などの木粉を、らせん状のスクリューを用いて、筒状の成形器2に圧力を加えて押し込むことによって、圧縮するように構成されている。」
・「【0014】
前記回り止め部材21の厚みは、圧入側(これを前側という。)より排出側(これを後側という。)が徐々に狭くなるように構成されている。したがって、圧入される木粉と前記回り止め部材21との間には、圧力が周囲より低い領域が形成されるので、成形されるオガライトとの間の抵抗が少なくなる。また、スクリューの回転方向の下流側の圧力が低くなる。したがって、この領域では、固形化されつつあるオガライトがスクリューの回転によって共回りすることを防止する回り止め効果と、圧力を逃がす効果が得られ、圧縮される木粉間及び固形化しつつ密度が粗から密へ変化する際に発生するガスが通過しやすくなり、回り止め部材21の側面を通過したガスは、固形化されつつあるオガライトと整形スリーブ3の間や、回り止め部材21と成形器2との隙間を通ってガス抜き用の溝41から外部へ排出されやすい。」
・「【0022】
以上のように、本発明のオガライト製造装置Aによれば、回り止め部材21を設けたことにより、オガライト内にガスによる横ヒビ及び空間などを包含せずに、硬くて芯に孔の無い溝無しオガライトを、成形することができるのである。
しかも、回り止め部材21の下流側側面に沿ってガス抜きができるので、優れたガス抜き効果が得られる。
また、前記脚部24の高さHは成形器2の本体20の内周面に対して、圧入側から排出側に向かって徐々に薄くなっているので、成形されるオガライトに溝は残らない。さらに、成形器2を通過した後に整形スリーブ3に押し込まれるので、成形されるオガライトの外形が膨らんで変形することが抑制され、外観の優れたオガライトを成形することができる。」
・「【図1】


(イ) そうすると、本件発明1の圧縮筒(図1に示された上記スクリュー圧縮器1の筒状部分。被請求人が平成30年5月25日に提出した口頭審理陳述要領書に添付された図1の修正図も参照した。)は、木粉を、らせん状のスクリューを用いて成形器に圧力を加えて押し込むことによって、圧縮する役割を果たしていることが分かる。また、本件発明1の成形器(さらには整形スリーブ)は、内部に設けられた凸条(回り止め部材21が成形器2の内部に突出した部分)により、スクリューの回転によって原料(オガライト)が共回りすることを防止しながら、溝は残らないオガライトへと、固形化していく役割を果たしているものと解することができる。
エ 上記イ、ウにおいて整理した本件発明1と甲1発明の各部材の役割を踏まえて、両者の対応関係を考えてみると、甲1発明において、実際に原料を固型化し圧縮成型する役割を担う部材は、固型化の適温である250℃前後に保持された「超硬質のテーパーブッシュ(6)及び平行ブッシュ(7)を装入した圧縮筒(5)」であると解されるから、当該圧縮筒(5)は、本件発明1において同様の役割を担っている、本件発明1の「内径が縮径した成形器」ないし「整形スリーブ」に相当するものであるといえ、さらに、当該「テーパーブッシュ(6)」及び「平行ブッシュ(7)」は、それらの配置や形状などからみて、それぞれ本件発明1の「内径が縮径した成形器」及び「整形スリーブ」に相当する部材であるということができる。
また、甲1発明における、「テーパー状出口」、「逆流防止案内筒(8)」及び「押出スクリュー(3)」は、いずれも上記圧縮筒(5)の上流側に位置し、協働して、ホッパー(2)に供給された原料を、その逆流を防止しながら、圧縮し、圧縮熱を得、上記圧縮筒(5)に送る役割を担う部材であるということができるから、これらのうち、押出スクリュー(3)を囲む「テーパー状出口」ないし「逆流防止案内筒(8)」は、その役割や配置(原料の固型化・圧縮成型を担う部材である圧縮筒(5)の前に配設されていること)からみて、本件発明1における「入口から出口に向かって内径が縮径した圧縮筒」に相当するものと解するのが合理的である。
オ さらに、甲1発明の固型燃料成型機において製造される固型燃料についてみる。
上記のとおり、甲1発明に係る固型燃料成型機は、原料を熱と圧縮で棒状に連続成型して固型燃料を製造するものであるから、当該固型燃料は、棒状であるといえ、かつ、甲1の第1図に示されたテーパーブッシュ(6)及び平行ブッシュ(7)の内周面の形状からみて、その外表面に溝は存在しないものと解される。
しかしながら、次の点からみて、内部に孔が存在するもの(芯に孔を有する形状)と考えるのが合理的である。
すなわち、甲1発明の固型燃料成型機は、第1図のとおり、原料の固型化・圧縮成型を担う圧縮筒(5)のテーパーブッシュ(6)の内部に、スクリュー先端部(4)から延出する部材(先細りの小軸)を有しているところ、甲1には、圧縮熱などにより発生するガスへの対処策については特に記載されておらず、また、甲1発明は、固型燃料の外周に溝を設けるなど、当該ガスに対する特別な対処策を講じているわけでもないから、当該スクリュー先端部(4)から延出する部材(先細りの小軸)は、ガス抜き用の孔を形成するためのものであると推認するのが妥当である(例えば、甲3の第2欄8?11行及び第2図に記載された棒状軸あるいは小径軸53や、甲9の第2欄9、10行及び図4に点線部として記載されたガス抜き穴成型用案内棒部にみられるように、従来から、成型機のスクリュー先端部に延設された棒状軸等は、ガス抜き用の孔を形成するために用いられてきたことを参照した。)。そうである以上、甲1発明の固型燃料成型機において製造される固型燃料は、内部にガス抜き用の孔を有するものと解すべきである。
カ ここで、請求人は、平成30年5月11日提出の口頭審理陳述要領書において、本件発明1と甲1発明の対応関係に関し、概略、以下の(i)及び(ii)の点を主張するので、これらの点について検討する。
(i) 甲1記載のシリンダのノズル(上記甲1発明の「テーパー状出口」のこと)、逆流防止案内筒(8)、テーパーブッシュ(6)及び平行ブッシュ(7)は、参考資料2の射出成形のしくみに照らすと、それぞれ本件発明1における圧縮筒(1)、成形器(2)、整形スリーブ(3)及び平行スリーブ(4)に相当する(口頭審理陳述要領書第7、8頁の(1-2)の項を参照した。)。
(ii) 甲1には「棒状に連続成型する固型燃料成型機に関する」(上記「第5 1(2)」参照)との記載があるから、これを文言通りに捉えれば、甲1の固型燃料は、孔あり(中空)ではなく、中実な棒状である(口頭審理陳述要領書第4頁下から6行目?最下行を参照した。)。
(ア) 主張(i)についての検討
まず、上記主張(i)について仔細にみると、請求人は、当該主張の論拠として、具体的に次の点を挙げている(同口頭審理陳述要領書第7、8頁)。
・参考資料2から明らかなとおり、一般に、押出成形や射出成形は、ホッパから供給された材料がシリンダを通り、先端が先細るシリンダのノズルを通過した後で、材料が金型に充填されて成形されることから、甲1発明の「テーパー状出口」は、本件発明1の圧縮筒(1)に相当し、そうすると、材料が充填されて成形される金型に該当する部分は、甲1発明においては、逆流防止案内筒(8)、テーパーブッシュ(6)及び平行ブッシュ(7)であり、本件発明1においては、成形器(2)、整形スリーブ(3)及び平行スリーブ(4)であるから、結局、甲1発明の逆流防止案内筒(8)及びテーパーブッシュ(6)は、それぞれ本件発明1の成形器(2)及び整形スリーブ(3)に該当するものである。
しかしながら、当該主張(i)の論拠は、以下のとおり、妥当なものとはいえないから、当該主張(i)を採用することはできない。
確かに、請求人がいうとおり、一般に、射出成形にあっては、ホッパに投入された粒状のプラスチック材料は、当該ホッパから、スクリューが内在する加熱シリンダに送られ、そこで軟化され、スクリューの回転によって高圧状態になり、当該加熱シリンダ先端のノズルから金型内に圧入されて、それを冷却して製品がつくられるが(参考資料2を参照した。)、本件発明1のオガライト製造装置及び甲1発明の固型燃料成型機は、当該射出成形のしくみを利用しているわけではないから、そもそも当該射出成形のしくみを当てはめて、甲1発明と本件発明1の構成要素の対応関係を論じることは妥当でない。
また、上記射出成形のしくみを甲1発明に当てはめて考えてみても、上記主張(i)は当を得たものとはいえない。すなわち、当該射出成形において、金型内に材料を圧入するノズルは、あくまで加熱シリンダ先端に設けられたノズルであって、ホッパの出口に設けられたものではない。その上、当該金型内に材料を圧入する、加熱シリンダ先端に設けられたノズルは、スクリューの回転によって高圧状態となった材料を金型に圧入するものであるから、当該ノズル内部(あるいはノズルの上流側)にスクリューが存在することはあっても、当該ノズルよりも下流側(すなわち金型内部)にスクリューが存在するような配置はあり得ない。このような射出成形のしくみに照らすと、甲1発明における「テーパー状出口」は、あくまで甲1発明のホッパー(2)の出口であるから、上記射出成形に当てはめてみても、単に射出成形におけるホッパの出口に相当するものにすぎないのであって、請求人が指摘する「金型内に材料を圧入する、加熱シリンダ先端に設けられたノズル」とは異なるものというほかないし、甲1発明における逆流防止案内筒(8)の内部には、スクリュー(3)が内在することから、当該逆流防止案内筒(8)は、射出成形でいえば、金型よりも上流側に位置する部材であると解するのが合理的であり、これが、射出成形における金型に該当する部分であるとは到底いえない。
(イ) 主張(ii)についての検討
確かに、甲1には、請求人が主張するとおり、「棒状に連続成型する固型燃料成型機」なる記載があるが、当該記載は、固型燃料成型機において成型される固型燃料が、単に「棒状」であることを示すものであって、これが、中実の棒状であるとか、孔あり(中空)の棒状であるといったことまでを記載したものとは認められない。そして、既に述べたとおり、甲1発明の固型燃料成型機は、原料の固型化・圧縮成型を担う圧縮筒(5)のテーパーブッシュ(6)の内部に、スクリュー先端部(4)から延出する部材(先細りの小軸)を有していることから、製造される固型燃料は、これに対応した孔が存在するもの(芯に孔を有する形状)と考えるのが妥当である。
また、請求人は、上記主張(i)のとおり、甲1発明の逆流防止案内筒(8)は、本件発明1の成形器(2)に相当するものであるというのであるから、この点を併せ考えると、甲1発明では、当該逆流防止案内筒(8)において、原料のおおよその固型化・圧縮成型が完了する(固型燃料の形状がおおむね決まる)と解するほかないところ、この場合、当該逆流防止案内筒(8)の内部には、回転するスクリュー(3)が内在するのであるから、当該スクリュー(3)に影響されることなく、固型燃料の形状が中実となるとは考え難い(そもそも当該逆流防止案内筒(8)の内部にスクリュー(3)が存在していては、固型化・圧縮成型そのものが不可能であると考えるのが合理的である。)。
したがって、請求人が主張する上記主張(ii)についても採用することはできない。
キ 両者の対応関係のまとめ
以上をまとめると、甲1発明の固型燃料成型機を構成する各部材と、本件発明1のオガライト製造装置を構成する各部材との対応関係は、次のとおりであると認められる。
・甲1発明の「固型燃料成型機」は、本件発明1の「オガライト製造装置」に対応するものであり、当該甲1発明の「固型燃料成型機」で製造される「固型燃料」(形状は、棒状で溝無しであるものの、芯に孔を有している)は、本件発明1の「オガライト製造装置」で製造される「オガライト」(形状は、棒状で溝無し孔無し)に対応するものである。
・甲1発明の、押出スクリュー(3)を取り囲んでいる「テーパー状出口」ないし「逆流防止案内筒(8)」は、本件発明1の「圧縮筒」に対応するものである。
・甲1発明の、圧縮筒(5)に装入された「テーパーブッシュ(6)」及び「平行ブッシュ(7)」は、それぞれ本件発明1の「成形器」及び「整形スリーブ」に対応するものである。
・甲1発明
(2) 相違点の認定
上記の対応関係を考慮すると、本件発明1と甲1発明はともに、鋸屑などの木粉から棒状のオガライトを成形するオガライト製造装置であるといえるものの、少なくとも、次の点で相違するというべきである。
ア 相違点1(成形器の構造に関するもの)
成形器の構造に関し、本件発明1は、「成形器の内面には、所定の厚みの凸条が圧入側から排出側に向かって形成され、前記凸条の厚みは、排出方向に向かって徐々に薄く形成され、前記凸条の高さは、排出方向に向かって徐々に低く形成されて、成形器の排出側の内径と面一になるように構成され」ていると特定しているのに対して、甲1発明における「テーパーブッシュ(6)」(本件発明1における「内径が縮径した成形器」に相当するもの)には、当該凸条にあたるものが形成されていない点。
イ 相違点2(オガライトの形状に関するもの)
オガライトの形状に関し、本件発明1は、「棒状で溝無し孔無し」と特定しているのに対して、甲1発明の固型燃料は、棒状で溝無しであるものの、芯に孔を有している点。

3 相違点についての検討
請求人は、無効理由2として、甲1発明及び甲3?5に記載された周知技術に基づく特許法第29条第2項の規定違反について主張するから、甲3?5として提出された証拠についてみると、確かに、請求人が指摘するとおり、甲3のスリーブ(15)及び甲4のスリーブ(15)の内壁には、いずれも「歯(18)」が設けられていることが見て取れる(上記「第5 2(4)(5)、3(3)(5)」を参照した。)。
しかしながら、当該「歯(18)」は、上記相違点1に係る本件発明1の凸条の形態、特にその高さに関する特定の形態について示唆するものではない。その上、当該甲3、4記載のオガライトは、いずれも、当該「歯(18)」によって、溝(甲3の上記「第5 2(3)」などに記載された「ガス抜き溝(21)」、甲4の上記「第5 3(3)」などに記載された「ガス抜き溝(19)」をそれぞれ参照)が形成されることから、上記相違点2に係る本件発明1のオガライトの形状を有するものでもない。
したがって、甲3及び甲4は、いずれも上記相違点に係る本件発明1の技術的事項について教示するものではない。
さらに、甲5をみると、甲5はそもそも壊炉灰の押出装置について記載するものであって、オガライト製造装置とは無関係である上、請求人が指摘する甲5のシリンダー(2)は、内部にスクリユーコンベヤー(1)を有しており、本件発明1の成形器(2)に対応する部材であるとは認められないから、甲5に記載された技術的事項は、上記相違点2に係る本件発明1のオガライトの形状について何ら教示するものではない上、甲5記載の上記シリンダー(2)の内部構造も、上記相違点1に係る本件発明1の凸条の形態の容易想到性の論拠となり得るものとは到底いえない。
加えて、甲1発明において、甲3?5記載の技術的事項を採用して、本件発明1とする動機となり得る事実も見当たらない。
そして、本件発明1は、当該相違点に係る技術的事項を具備することにより、本件特許明細書記載の効果を奏することができたものである。
してみると、上記相違点1、2はいずれも実質的な相違点である上、当該相違点に係る本件発明1の技術的事項が容易想到の事項であるということもできない。

4 小括
(1) 本件発明1と甲1発明の間に存在する上記相違点は、実質的なものであるから、本件発明1が甲1発明である(甲1に記載された発明である)ということはできない。
よって、無効理由1に理由はないから、本件特許1を、特許法第123条第1項第2号に該当するとして、無効とすることはできない。
(2) また、本件発明1は、甲1発明及び甲3?5の記載事項に照らしても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、無効理由2にも理由はなく、本件特許1を、特許法第123条第1項第2号に該当するとして、無効とすることはできない。

第7 無効理由4(甲1を主引例とする本件発明2の進歩性)についての当審の判断

無効理由4は、無効理由1に理由があることを前提とするものであるから、上記「第6」において説示したとおり、無効理由1に理由があるとはいえない以上、当該無効理由4についても理由があるとはいえない。

第8 無効理由5(実施可能要件、サポート要件、明確性要件)についての当審の判断

1 「面一」の用語に関連する記載不備(実施可能要件、サポート要件、明確性要件)について
(1) 本件特許請求の範囲の請求項1には、凸条について、「前記成形器の内面には、所定の厚みの凸条が圧入側から排出側に向かって形成され、前記凸条の厚みは、排出方向に向かって徐々に薄く形成され、前記凸条の高さは、排出方向に向かって徐々に低く形成されて、成形器の排出側の内径と面一になるように構成され」と記載されている。
(2) また、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がある。
・「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上のような経過から、回り止めやガス抜きのためには溝が必要であるが、自然な外観を得るためには溝は邪魔であるという相反する問題があった。
そこで、発明者は、以上のような相反する要求を解決するために本発明をしたのである。」
・「【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明にかかるオガライト製造装置を、その実施の形態を示した図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、オガライト製造装置Aの要部の断面図である。
図1に示したように、
1はスクリュー圧縮器であり、供給されるおが屑などの木粉を、らせん状のスクリューを用いて、筒状の成形器2に圧力を加えて押し込むことによって、圧縮するように構成されている。
【0013】
前記成形器2の内面には回り止め部材21が着脱自在に凸設されているので、スクリューが回転しても供回りしない。
成形器2を通過して形成されたオガライトは、成形器2を通過した後に、内面に溝が形成されていて、その溝が回り止め部材21の先の延長部で塞がれた整形スリーブ3に押し込まれ、前記整形スリーブ3を通過したオガライトは、ガス抜き用の溝41が形成され内径が、前記整形スリーブ3の内径と同一の筒状の平行スリーブ4を通過して、その終端から排出されるように構成されている。
【0014】
前記回り止め部材21の厚みは、圧入側(これを前側という。)より排出側(これを後側という。)が徐々に狭くなるように構成されている。したがって、圧入される木粉と前記回り止め部材21との間には、圧力が周囲より低い領域が形成されるので、成形されるオガライトとの間の抵抗が少なくなる。また、スクリューの回転方向の下流側の圧力が低くなる。したがって、この領域では、固形化されつつあるオガライトがスクリューの回転によって共回りすることを防止する回り止め効果と、圧力を逃がす効果が得られ、圧縮される木粉間及び固形化しつつ密度が粗から密へ変化する際に発生するガスが通過しやすくなり、回り止め部材21の側面を通過したガスは、固形化されつつあるオガライトと整形スリーブ3の間や、回り止め部材21と成形器2との隙間を通ってガス抜き用の溝41から外部へ排出されやすい。」
・「【0017】
図4には、回り止め部材21の脚部24と、成形器2の本体20の内周面の一部を拡大して示した。
この図4に示したように、前記脚部24の厚みDは圧入側から排出側に向かって徐々に薄くなっており、前記脚部24の高さHは成形器2の本体20の内周面に対して、圧入側から排出側に向かって徐々に薄くなっている。
したがって、成形されたオガライトの表面には、前記成形器2を通過するときに圧入側では一時的に溝が形成されるが、排出側では回り止め部材21が低くなっているので一時的に形成されていた前記溝は消滅する。
【0018】
成形器2を通過して形成されたオガライトは、成形器2を通過した後に、図5に示した成形スリーブ3のように、内面に溝が形成されていて、その溝が回り止め部材21の先の延長部で塞がれた整形スリーブ3に押し込まれるように形成されている。
前記整形スリーブ3を通過することによって、オガライトは、溝がない形態で外形が安定して排出される。
また、前記整形スリーブ3の後には、排気用の溝が形成された平行スリーブ4を配設した。したがって、オガライトから発生するガスが前記排気用の溝を介して外部へ排出されるので、ガス爆発や、オガライトの飛び出し事故を防止することができる。
【0019】
以上のように構成された成形器2を備えたオガライト製造装置Aでは、木粉を連続的に圧入するとき、前記回り止め部材21によって、形成されるオガライトの供回りが規制される。また、オガライトの形状が安定するまでは、前記整形スリーブ3によって膨張が規制される。したがって、ガス抜き用の溝41が形成され平行スリーブ4を通過するときには、オガライトの形状は安定しているので、前記ガス抜き用の溝41の部分で膨らむことはない。
このようにして、芯には孔がなく、また、表面には畝状の膨らみも溝も無いオガライトを順次成形することができるのである。」
・「【図4】


(3) 上記(1)の請求項1の記載のとおり、本件発明1は、凸条の形態を、「前記凸条の高さは、排出方向に向かって徐々に低く形成されて、成形器の排出側の内径と面一になるように構成され」ると特定するものである(以下、単に「面一に関する特定」ということがある。)。
一方、本件特許明細書において、本件発明1の具体例として記載されたオガライト製造装置A(【0012】など)には、「凸条」と明示されたものはない。しかし、当業者であれば、上記【0013】の記載から、成形器2の内面に着脱自在に凸設された回り止め部材21(正確には、そのうちの、当該成形器2の内面から突出した部分)が、これに該当する部材であることを理解することができる。
また、当該回り止め部材21(凸条)に関し、【0017】(【図4】)には、「図4には、回り止め部材21の脚部24と、成形器2の本体20の内周面の一部を拡大して示した。この図4に示したように、前記脚部24の厚みDは圧入側から排出側に向かって徐々に薄くなっており、前記脚部24の高さHは成形器2の本体20の内周面に対して、圧入側から排出側に向かって徐々に薄くなっている。したがって、成形されたオガライトの表面には、前記成形器2を通過するときに圧入側では一時的に溝が形成されるが、排出側では回り止め部材21が低くなっているので一時的に形成されていた前記溝は消滅する。」と記載されているものの、「面一」について詳述されている箇所は見当たらない。しかし、当該【図4】には、凸条の脚部24の高さHが、成形器の圧入側から排出側に向かって減少し、最終的に、当該脚部24の上面が、成形器2の本体20の内周面とおおむね一致した状態(高さHがゼロの状態)が示されているから、当業者は、当該「面一」の意味合いを、同図に示された状態として捉えることができる。
そして、本件発明1が「面一に関する特定」を有する技術上の意義についてみても、本件特許明細書の【0003】には、回り止めやガス抜きのためには溝が必要であるが、自然な外観を得るためには溝は邪魔であるという相反する要求を解決するために本件発明1がなされたこと(本件発明の課題)が記載され、上記のとおり、【0017】(さらに回り止め部材21の厚みについて記載した【0014】も参照した。)に、回り止め部材21(凸条)の特定の形態は、一時的な溝(回り止めやガス抜きのための溝)の形成と、その後の溝の消滅を可能にするものであることが記載されているから、本件発明1の「面一に関する特定」は、回り止めやガス抜きのための溝を一時的に形成するとともに、当該溝が最終的には消滅することを期待して設けられた、上記課題を解決するための具体的な手段であることが分かる。
そうすると、本件発明1の「面一」(「面一に関する特定」)に特段不明確なところは認められず、その意味合いや技術上の意義についても、発明の詳細な説明において十分に説明され、当業者がこれを実施することができる程度の記載が認められるから、請求人が主張する、「面一」の用語に関連する記載不備は認められない。

2 「成形されるオガライトが溝無しの外形に整えられるように構成され」の用語に関連する記載不備(実施可能要件、サポート要件)について
上記のとおり、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明1の「面一に関する特定」の技術上の意義や、さらには、当該「面一に関する特定」を採用することによって一時的に形成された溝が消滅するに至る作用機序(メカニズム)をおおよそ理解することができる。また、オガライト(木粉)が固形化されていく状況について、本件特許明細書の【0014】には、回り止め部材21の厚みを、圧入側(前側)より排出側(後側)が徐々に狭くなるように構成したことにより、圧入される木粉と回り止め部材21との間には、圧力が周囲より低い領域が形成され、この領域では、固形化されつつあるオガライトがスクリューの回転によって共回りすることを防止する回り止め効果と、圧力を逃がす効果が得られることが記載され、さらに【0018】には、整形スリーブ3を通過することによって、オガライトは、溝がない形態で外形が安定して排出されることが記載されているから、当該回り止め部材21が形成された成形器2内において、オガライト(木粉)は、固形化されつつある状態にあること、並びに、成形器2及び整形スリーブ3を通過することにより、オガライトは、溝がない形態で外形が安定して排出されることを理解することができる。
そうすると、成形器内のオガライト(木粉)は、完全に固形化された状態ではなく、ある程度の流動性があるものと解され、成形器の圧入側の凸条により形成された溝が、排出側まで必ずしもそのまま保持されるとはいえないから、本件特許明細書の記載に接した当業者は、その記載のとおりに理解して、本件発明1の「面一に関する特定」などにより規定された凸条の形態(さらには整形スリーブ)を採用すれば、上記作用機序(メカニズム)に従って、溝無しのオガライトを安定して得ることができると認識すると考えるのが合理的である、
したがって、請求人が主張する、「成形されるオガライトが溝無しの外形に整えられるように構成され」の用語に関連する記載不備は認められない。

3 平成30年5月11日提出の口頭審理陳述要領書における請求人の主張について
(1) 請求人は、平成30年5月11日提出の口頭審理陳述要領書第20、21頁の「6.3.」の項目において、次のように主張する。
ア 「面一」の用語に関連する記載不備について(「6.3.1」参照)
特許請求の範囲に記載された用語の意義が一義的に明確である場合には、特許請求の範囲の記載に従って、その発明の要旨の認定をすべきであり、その用語の意義が一義的に明確でない場合には、発明の詳細な説明の記載及び図面を考慮して、特許請求の範囲の記載を解釈すべきであるものの、その用語が本来的に有する意義を超えて、その用語の意義の解釈をなすことはできないことは当然であり、いずれの場合にも、用語の意義の解釈の名の下に、特許請求の範囲に新たな用語を付加して記載したのと同様な結果となる解釈をして、発明の要旨の認定をすることができないことは当然である。
「面一」という用語は「敷居と畳などの二つの材が接合する上面に段差がなく、同一平面であること」(参考資料1参照)を意味し、本件発明1においても、明細書の発明を実施するための形態や図面の記載から「異なる二つの材が接合する上面に段差がなく、同一平面であること」を意味すると解される。
そして、「面一」の用語の意義が一義的に明確であるにも関わらず、「面一」の用語が本来的に有する意義を超えて、その用語の意義の解釈をなすことができない。
イ 「成形されるオガライトが溝無しの外形に整えられるように構成され」の用語に関連する記載不備について(「6.3.2」参照)
「前記凸条の厚みは、排出方向に向かって徐々に薄く形成され、前記凸条の高さは、排出方向に向かって徐々に低く形成されて、」の規定から、「成形されたオガライトの表面から溝が消滅する」を把握することはできず、当業者が、「成形されたオガライトの表面から溝が消滅する」を実現するためには、期待しうる程度を超える試行錯誤等が必要である。
(2) 上記主張についての検討
ア 上記主張アについて
上記主張アと、明確性要件違反及び実施可能要件違反の論拠との関係は定かでないが、確かに、本件特許請求の範囲の請求項1に記載された「前記凸条の高さは、排出方向に向かって徐々に低く形成されて、成形器の排出側の内径と面一になるように構成され」(上記「面一に関する特定」)は、凸条の高さに関する規定であり、面同士の関係を規定するものではないから、「面一」という、本来、面同士の関係を表現する用語が、当該凸条の高さを規定するのに必ずしも適したものとはいえない。しかし、上記のとおり、当業者であれば、本件特許明細書及び図面の記載に照らして、当該「面一」(「面一に関する特定」)が本来意図する内容を理解することができるのであるから、本件特許請求の範囲の請求項1の記載に明確性要件違反といえるほどの不明確なところがあるとはいえず、また、その意味合いや技術上の意義についても、発明の詳細な説明において十分に説明され、当業者がこれを実施することができる程度の記載が認められるから、実施可能要件違反といえるほどの不備も認められない。
この点は、上記主張アに左右されるものでもないから、当該主張を採用して、本件特許請求の範囲及び特許明細書の発明の詳細な説明の記載に請求人が主張するような記載不備があるとすることはできない。
イ 上記主張イについて
当該主張に、審判請求書に既に記載されたこととは異なる新たな記載不備の論拠は見当たらないから、当該主張を採用して、本件特許を無効とすることもしない。

第9 むすび

以上検討のとおり、請求人が主張する無効理由には、いずれも理由がない。
したがって、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件発明1及び2に係る特許を無効とすることはできない。
そして、審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-07-05 
結審通知日 2018-07-09 
審決日 2018-07-23 
出願番号 特願2009-153570(P2009-153570)
審決分類 P 1 113・ 113- Y (C10L)
P 1 113・ 537- Y (C10L)
P 1 113・ 536- Y (C10L)
P 1 113・ 121- Y (C10L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森 健一  
特許庁審判長 國島 明弘
特許庁審判官 佐々木 秀次
日比野 隆治
登録日 2012-06-15 
登録番号 特許第5017321号(P5017321)
発明の名称 オガライト製造装置、およびオガ炭  
代理人 杉本 勝徳  
復代理人 吉田 淳一  
代理人 伊藤 充  
代理人 岡田 充浩  
代理人 岡田 充浩  
代理人 松本 浩一郎  
代理人 杉本 勝徳  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ