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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1343837 |
審判番号 | 不服2017-16798 |
総通号数 | 226 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-11-13 |
確定日 | 2018-09-06 |
事件の表示 | 特願2015-210294号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年5月18日出願公開、特開2017- 79957号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年10月27日の出願であって、平成28年10月28日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月26日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年5月12日付けで拒絶の理由が通知され、同年7月20日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年8月9日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年11月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成29年11月13日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成29年11月13日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、本件補正前の平成29年7月20日付けの手続補正書における特許請求の範囲の請求項1の 「【請求項1】 遊技者が操作可能な操作手段と、 態様を変化させることが可能な可動体と、 前記操作手段が操作されたことを検出する操作検出手段と、 前記可動体が所定の態様となったことを検出する態様検出手段と、 第一演出および第二演出を含む操作可動演出を実行する手段であって、前記操作検出手段によって操作手段の操作が検出されたことを契機として前記第一演出を実行し、前記態様検出手段によって前記可動体が前記所定の態様となったことが検出されたことを契機として前記第一演出とは異なる前記第二演出を実行する演出実行手段と、 を備え、 前記第一演出は、前記操作手段から演出効果が発現される特定演出を含むことを特徴とする遊技機。」 は、 「【請求項1】 A 遊技者が操作可能な操作手段と、 B 態様を変化させることが可能な可動体と、 C 前記操作手段が操作されたことを検出する操作検出手段と、 D 前記可動体が所定の態様となったことを検出する態様検出手段と、 E 前記操作手段から演出効果が発現される演出態様を有する第一演出および前記可動体の態様によらず実行することが可能な第二演出を含む操作可動演出を実行する手段であって、前記操作検出手段によって操作手段の操作が検出されたことを契機として前記第一演出を開始させるとともに前記可動体の動作を開始させ、前記態様検出手段によって前記可動体が前記所定の態様となったことが検出されたことを契機として前記第一演出とは異なる前記第二演出を開始させる演出実行手段と、 F を備えることを特徴とする遊技機。」 に補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審にて付した。また、当審においてA?Fに分説した。)。 2 補正の適否 願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面の段落【0043】ないし【0049】、図4等の記載に基づいて、本件補正は、「演出実行手段」において、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第一演出」に関して、「操作手段から演出効果が発現される演出態様を有する」との特定事項の記載箇所を形式的に変更するとともに、「第二演出」に関して、「前記可動体の態様によらず実行することが可能な」と限定し、「操作検出手段によって操作手段の操作が検出されたことを契機」とするものが、「第一演出を開始させるとともに可動体の動作を開始させ」ることに限定するものであって、かつ、補正前の請求項に記載された発明と補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、本件補正は、新規事項を追加するものではなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。 3 独立特許要件 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 (1)引用例1 ア 引用例1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2015-97827号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の(1-a)?(1-j)の事項が記載されている。 (1-a)「【0001】 本発明は、パチンコ遊技機やパチスロ遊技機等の遊技機に関する。」 (1-b)「【0012】 ガラス扉部14の前面側には、ガラス部14aの下方の皿ユニット部14bに、上皿42aと下皿42bとを有した球受け皿42、発射ハンドル43、下皿42bの球を抜く皿球抜きボタン44、上皿42aの球を下皿42bに移す通路球抜きボタン45、演出ボタン46、及び、十字キーボタン50が、配設されている。また、ガラス扉部14の前面側には、上部側に、スピーカ56や枠ランプ57が配設されている。」 (1-c)「【0042】 なお、演出制御部90には、演出ボタン46(図1参照)が押下操作されたことを検出する演出ボタン検出SW46aが接続されており、演出ボタン46が押下されると、演出ボタン検出SW46aから演出制御部90に対して信号が出力される。 ・・・ 【0043】 (3)可動役物装置の構造 可動役物装置110は、図1,3?8に示すように、装飾体としての略円柱状の可動役物111を備え、可動役物111の正面には、表示面としての第2画像表示部20の表示エリア20aが保護カバー113に覆われて配設されている。可動役物111は、図4のA,Bに示すように、先端部111a側を反時計回り方向の下方に倒し、さらに、図4のB、図5のAに示すように、可動役物111の長手方向に沿った回動軸RCを中心として、表示エリア20aを背面側に配置させるように回転し、さらに、図5のA,Bに示すように、表示エリア20aの背面側に配置されているハート型のギミック161を上方へ繰り出し、その後、順に逆戻りして、図4のAの始動位置(傾動初期位置)KFに復帰するように、動作する。」 (1-d)「【0049】 そして、支持軸126には、突起状の被検知部129を設けた回転板130が固定され、回転板130の周囲に、被検知部129により遮光された際に、ON信号を出力する光電センサ等からなる回動センサ127,128が回動軸RC周りで180°ずれて配設されている。回動センサ127は、可動役物111が正面を向いている原点位置(正面位置)P1への配置時に、被検知部129により遮光されてランプ制御部100にON信号を出力し、回動センサ128は、可動役物111が背面を向いている背面位置PBへの配置時に、被検知部129により遮光されてランプ制御部100にON信号を出力するように構成されている。 ・・・ 【0052】 また、ウォームホイールギヤ146には、突起状の被検知部149が配設され、その周囲には、被検知部149に遮光されてON信号をランプ制御部100を出力可能な光電センサ等からなる傾動センサ147,148が配設されている。傾動センサ147は、可動役物111が傾動初期位置KFにある時、被検知部149により遮光されて、ランプ制御部100にON信号を出力するように配設され、傾動センサ148は、可動役物111が傾動完了位置KBにある時、被検知部149により遮光されて、ランプ制御部100にON信号を出力するように配設されている。 【0053】 繰出装置160は、図5に示すように、可動役物111が傾動完了位置KBでかつ背面位置PBに配置された際に、可動役物111の正面側に配置され、その前面側が装飾パネル114で覆われている。繰出装置160は、図8に示すように、駆動源としての可逆回転可能なステッピングモータからなる繰出モータ162を作動させて、ハート型のギミック161を、装飾パネル114で覆われた繰出初期位置LDから上方の繰出完了位置LUまで繰り出すものである。」 (1-e)「【0092】 [演出ボタン処理] 演出ボタン処理(S1002)では、演出制御部90は、図19に示すように、演出ボタン検出SW46aからの信号により、演出ボタン46が押下されたか(ONされたか)否かを判定し(S1401)、ONされていなければ処理を終え、ONされていれば演出ボタンコマンドをセットする(S1402)。」 (1-f)「【0140】 [可動役物演出処理] 可動役物演出処理(S3002)では、ランプ制御部100は、演出制御部90から受信した役物演出開始コマンドに基づき、図27?29に示すように、回動センサ127,128、傾動センサ147,148、繰出センサ171の信号を入力しつつ、回動モータ122、傾動モータ143、及び、繰出モータ162を駆動させて、可動役物111を図4のA,B、図5のA,Bに示すように演出動作させる。」 (1-g)「【0147】 なお、実施形態では、この可動役物111の図4,5に示す演出動作は、遊技者に有利な特別遊技、すなわち、15Rの大当たり遊技(通常及び確変の両者を含む)を実行可能に、大当たり判定処理(S409)で15R大当たりと判定された際に、その大当たりを示唆する示唆演出として、実行されるものであり、さらに、演出ボタン46の押下操作を条件に、動作されるものである。」 (1-h)「【0151】 そして、ランプ制御部100は、ステップS3217での判定において、演出ボタン46の押下操作に伴なう演出ボタンコマンドを受信すれば、演出開始フラグをONして(S3224)、傾動モータ143を正転駆動させる(S3225)。その結果、可動役物111は、図4のAからBに示すように、先端部111a側を元部111bの左横方向に倒し始める。」 (1-i)「【0156】 一方、ランプ制御部100は、ステップS3225において、傾動モータ143を正転駆動させた後、可動役物(装飾体)111が始動位置(傾動開始位置)KFから傾動完了位置KBに配置されて、傾動センサ148が被検知部149に遮光されてON信号を出力すれば(S3226でYES)、図4のAからBに示す状態となって、可動役物111が傾動を完了させることから、傾動モータ143の駆動を停止し(S3227)、Lに1を入れる(S3228)。 【0157】 そして、ランプ制御部100は、ギミック161を繰り出すために、可動役物111を反転させるように、回動モータ122を反転駆動する(S3229)。その後、回動センサ128のON信号を受信して(S3230でYES)、可動役物(装飾体)111の反転が完了すれば、図4のBから装飾パネル114が可動役物I11の前面側に配置される図5のAに示す状態となって、回動モータ122の駆動を停止し(S3231)、Lに2を入れ(S3232)、ギミック161を繰り出すように、繰出モータ162を正転駆動する(S3233)。 【0158】 その後、ランプ制御部100は、ギミック161が繰出完了位置LUに配置されたか否かを判定し(S3234)、繰出センサ171のON信号に基づいて、図5のBに示すように、ギミック161が繰出完了位置LUに配置されたことを検出すれば、繰出モータ162の駆動を停止し(S3235)、Lに3を入れて(S3236)、ステップS3237に移行する。 【0159】 ステップS3237では、ギミック161の繰出完了位置LUへの配置の余韻を遊技者に楽しませるように、停止時間(例えば、3秒)の経過の有無を判定し、停止時間が経過すれば(S3237でYES)、Lに4を入れて(S3238)、可動役物111を演出動作前の状態に戻すように、繰出モータ162を反転駆動する(S3239)。 【0160】 その後、ランプ制御部100は、繰出センサ171の信号に基づいて、図5のAに示すように、ギミック161が繰出初期位置LDに配置されたことを検出すれば(S3240でYES)、繰出モータ162の駆動を停止し(S3241)、Lに5を入れて(S3242)、可動役物111を背面位置PBから原点位置(正面位置)P1に戻すように、回動モータ122を正転駆動させ(S3243)、ステップS3244に移行する。」 (1-j)「【0168】 そして、遊技者が、図30の案内G1により、演出ボタン46を押下操作すれば、画像音響制御部95は、客待ち演出処理(図22参照)のステップS2006,S2010,S2011、さらに、メニュー画面処理(図23参照)のS2101?S2104に移行し、第1画像表示部19の表示画面19aに図31に示すメニュー画面を表示する。」 イ 認定事項 上記「ア」から、次の(1-k)?(1-q)の事項が認定できる。 (1-k) 段落【0012】には、「ガラス扉部14の前面側には、・・・演出ボタン46、及び、十字キーボタン50が、配設されている。」と記載され、段落【0168】には、「遊技者が、図30の案内G1により、演出ボタン46を押下操作」と記載されていることから、引用例1には、遊技者が押下操作可能な演出ボタン46が記載されているといえる。 (1-l) 段落【0043】には、「装飾体としての略円柱状の可動役物111を備え・・・可動役物111は、図4のA,Bに示すように、先端部111a側を反時計回り方向の下方に倒し、さらに、図4のB、図5のAに示すように、可動役物111の長手方向に沿った回動軸RCを中心として、表示エリア20aを背面側に配置させるように回転し、さらに、図5のA,Bに示すように、表示エリア20aの背面側に配置されているハート型のギミック161を上方へ繰り出し、その後、順に逆戻りして、図4のAの始動位置(傾動初期位置)KFに復帰するように、動作する。」と記載されていることから、引用例1には、先端部を下方に倒す動作及び長手方向に沿った回動軸を中心として回転する動作を行う可動役物111が記載されているといえる。 (1-m) 段落【0042】には、「演出制御部90には、演出ボタン46(図1参照)が押下操作されたことを検出する演出ボタン検出SW46aが接続されており、演出ボタン46が押下されると、演出ボタン検出SW46aから演出制御部90に対して信号が出力される。」と記載されていることから、引用例1には、演出ボタン46が押下操作されたことを検出する演出ボタン検出SW46aが記載されているといえる。 (1-n) 段落【0049】には、「回動センサ128は、可動役物111が背面を向いている背面位置PBへの配置時に、被検知部129により遮光されてランプ制御部100にON信号を出力する」と記載され、段落【0052】には、「傾動センサ148は、可動役物111が傾動完了位置KBにある時、被検知部149により遮光されて、ランプ制御部100にON信号を出力する」と記載され、段落【0053】には、「可動役物111が傾動完了位置KBでかつ背面位置PBに配置された際に・・・ハート型のギミック161を、装飾パネル114で覆われた繰出初期位置LDから上方の繰出完了位置LUまで繰り出す」と記載されていることから、引用例1には、ギミック161を繰り出す際に、可動役物111が傾動完了位置KBでかつ背面位置PBであることを検知する傾動センサ148及び回動センサ128が記載されているといえる。 (1-o) 段落【0140】には、「可動役物演出処理(S3002)では、ランプ制御部100は、演出制御部90から受信した役物演出開始コマンドに基づき、図27?29に示すように、回動センサ127,128、傾動センサ147,148、繰出センサ171の信号を入力しつつ、回動モータ122、傾動モータ143、及び、繰出モータ162を駆動させて、可動役物111を図4のA,B、図5のA,Bに示すように演出動作させる。」と記載され、段落【0147】には、「この可動役物111の図4,5に示す演出動作は、・・・その大当たりを示唆する示唆演出として、実行されるものであり、さらに、演出ボタン46の押下操作を条件に、動作されるものである。」と記載され、段落【0156】-【0159】には、「ランプ制御部100は、ステップS3225において、傾動モータ143を正転駆動させた後、可動役物(装飾体)111が始動位置(傾動開始位置)KFから傾動完了位置KBに配置されて・・・ランプ制御部100は、ギミック161を繰り出すために、可動役物111を反転させるように、回動モータ122を反転駆動する(S3229)。・・・可動役物(装飾体)111の反転が完了すれば、・・・ギミック161を繰り出すように、繰出モータ162を正転駆動する(S3233)。・・・その後、ランプ制御部100は、ギミック161が繰出完了位置LUに配置されたか否かを判定し(S3234)・・・ギミック161の繰出完了位置LUへの配置の余韻を遊技者に楽しませるように、停止時間(例えば、3秒)の経過の有無を判定し、停止時間が経過すれば・・・可動役物111を演出動作前の状態に戻すように、繰出モータ162を反転駆動する」と記載されていることから、引用例1には、演出ボタン46の押下操作を条件に、ギミック161を繰り出す演出を含む可動役物111を用いた可動役物演出を実行するランプ制御部100が記載されているといえる。 (1-p) 段落【0092】には、「演出ボタン検出SW46aからの信号により、演出ボタン46が押下されたか(ONされたか)否かを判定し(S1401)、ONされていなければ処理を終え、ONされていれば演出ボタンコマンドをセットする。」と記載され、段落【0151】には、「ランプ制御部100は、ステップS3217での判定において、演出ボタン46の押下操作に伴なう演出ボタンコマンドを受信すれば、演出開始フラグをONして(S3224)、傾動モータ143を正転駆動させる(S3225)。その結果、可動役物111は、図4のAからBに示すように、先端部111a側を元部111bの左横方向に倒し始める。」と記載され、段落【0053】には、「可動役物111が傾動完了位置KBでかつ背面位置PBに配置された際に・・・ハート型のギミック161を、装飾パネル114で覆われた繰出初期位置LDから上方の繰出完了位置LUまで繰り出す」と記載され、段落【0156】-【0160】には、「可動役物(装飾体)111が始動位置(傾動開始位置)KFから傾動完了位置KBに配置されて、傾動センサ148が被検知部149に遮光されてON信号を出力すれば(S3226でYES)、図4のAからBに示す状態となって、可動役物111が傾動を完了させることから、傾動モータ143の駆動を停止し(S3227)、・・・可動役物111を反転させるように、回動モータ122を反転駆動する(S3229)。その後、回動センサ128のON信号を受信して(S3230でYES)、可動役物(装飾体)111の反転が完了すれば、図4のBから装飾パネル114が可動役物I11の前面側に配置される図5のAに示す状態となって、回動モータ122の駆動を停止し(S3231)、Lに2を入れ(S3232)、ギミック161を繰り出すように、繰出モータ162を正転駆動する(S3233)・・・図5のBに示すように、ギミック161が繰出完了位置LUに配置されたことを検出すれば、繰出モータ162の駆動を停止し(S3235)、・・・ステップS3237では、ギミック161の繰出完了位置LUへの配置の余韻を遊技者に楽しませるように、停止時間(例えば、3秒)の経過の有無を判定し・・・可動役物111を背面位置PBから原点位置(正面位置)P1に戻すように、回動モータ122を正転駆動させ」と記載されていることから、引用例1には、演出ボタン検出SW46aからの信号により演出ボタン46の押下されたことを判定した場合には、可動役物111を倒す動作を開始させ、可動役物111が傾動完了位置KBかつ背面位置PBであることを傾動センサ148及び回動センサ128で検知すると、ギミック161を繰り出す演出を行うランプ制御部が記載されているといえる。 (1-q) 段落【0001】には、「本発明は、パチンコ遊技機やパチスロ遊技機等の遊技機に関する。」と記載されていることから、引用例1には、遊技機が記載されているといえる。 ウ 引用例1に記載された発明 上記(1-a)?(1-j)の記載事項及び(1-k)?(1-q)の認定事項を総合すると、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。 「a 遊技者が押下操作可能な演出ボタン46と、(認定事項1-k) b 先端部を下方に倒す動作及び長手方向に沿った回動軸を中心として回転する動作を行う可動役物111と、(認定事項1-l) c 演出ボタン46が押下操作されたことを検出する演出ボタン検出SW46aと、(認定事項1-m) d ギミック161を繰り出す際に、可動役物111が傾動完了位置KBでかつ背面位置PBであることを検知する傾動センサ148及び回動センサ128と、(認定事項1-n) e 演出ボタン46の押下操作を条件に、ギミック161を繰り出す演出を含む可動役物111を用いた可動役物演出を実行するランプ制御部100であって、(認定事項1-o) 演出ボタン検出SW46aからの信号により演出ボタン46の押下されたことを判定した場合には、可動役物111を倒す動作を開始させ、可動役物111が傾動完了位置KBでかつ背面位置PBであることを傾動センサ148及び回動センサ128で検知すると、ギミック161を繰り出す演出を行うランプ制御部と、(認定事項1-p) f を有する遊技機。(認定事項1-q)」 (2)対比 本願補正発明と引用発明とを対比する(下記の(a)?(f)は、引用発明の構成に対応している。)。 (a)引用発明の「遊技者が押下操作可能な演出ボタン46」は、本願補正発明の「遊技者が操作可能な操作手段」に相当する。 (b)引用発明における「可動役物111」は、先端部を下方に倒す動作及び長手方向に沿った回動軸を中心として回転する動作を行うことにより、その位置や角度を変化させて、「可動役物111」の異なった態様を遊技者に認識させるものであるから、引用発明の「先端部を下方に倒す動作及び長手方向に沿った回動軸を中心として回転する動作を行う」ことは、本願補正発明の「態様を変化させること」に相当する。 よって、引用発明の「先端部を下方に倒す動作及び長手方向に沿った回動軸を中心として回転する動作を行う可動役物111」は、本願補正発明の「態様を変化させることが可能な可動体」に相当する。 (c)引用発明の「演出ボタン46が押下操作されたことを検出する演出ボタン検出SW46a」は、本願補正発明の「前記操作手段が操作されたことを検出する操作検出手段」に相当する。 (d)引用発明における「可動役物111が傾動完了位置KBでかつ背面位置PBであること」は、「可動役物111」が所定の位置で所定の向きにあることであり、「可動役物111」の態様の一つであるから、引用発明においては、「可動役物111」が所定の態様となったことを「傾動センサ148及び回動センサ128」が検出しているといえる。 よって、引用発明の「ギミック161を繰り出す際に、可動役物111が傾動完了位置KBでかつ背面位置PBであることを検知する傾動センサ148及び回動センサ128」は、本願補正発明の「前記可動体が所定の態様となったことを検出する態様検出手段」に相当する。 (e)引用発明の「ギミック161を繰り出す演出」と、本願補正発明の「第二演出」とは、所定の演出である点で共通し、また、引用発明の「可動役物演出」と、本願補正発明の「操作可動演出」とは、所定の演出を含む演出である点で共通する。 よって、引用発明の「演出ボタン46の押下操作を条件に、ギミック161を繰り出す演出を含む可動役物111を用いた可動役物演出を実行するランプ制御部」と、本願補正発明の「前記操作手段から演出効果が発現される演出態様を有する第一演出および前記可動体の態様によらず実行することが可能な第二演出を含む操作可動演出を実行する手段」とは、「所定の演出を含む演出を実行する手段」である点で一致する。 そして、引用発明の「演出ボタン検出SW46aからの信号により演出ボタン46の押下されたことを判定した場合には、可動役物111を倒す動作を開始させること」は、本願補正発明の「前記操作検出手段によって操作手段の操作が検出されたことを契機として」「前記可動体の動作を開始させ」ることに相当する。 また、引用発明の「可動役物111が傾動完了位置KBで反転されて背面位置PBであることを傾動センサ148及び回動センサ128で検知すると、ギミック161を繰り出す演出を行う」ことと、本願補正発明の「前記態様検出手段によって前記可動体が前記所定の態様となったことが検出されたことを契機として」「前記第二演出を開始させる」こととは、「前記態様検出手段によって前記可動体が前記所定の態様となったことが検出されたことを契機として前記所定の演出を開始させる」ことである点で一致する。 よって、引用発明の「演出ボタン検出SW46aからの信号により演出ボタン46の押下されたことを判定した場合には、可動役物111を倒す動作を開始させ、可動役物111が傾動完了位置KBでかつ背面位置PBであることを傾動センサ148及び回動センサ128で検知すると、ギミック161を繰り出す演出を行うランプ制御部」と、本願補正発明の「前記操作検出手段によって操作手段の操作が検出されたことを契機として前記第一演出を開始させるとともに前記可動体の動作を開始させ、前記態様検出手段によって前記可動体が前記所定の態様となったことが検出されたことを契機として前記第一演出とは異なる前記第二演出を開始させる演出実行手段」とは、「前記操作検出手段によって操作手段の操作が検出されたことを契機として前記可動体の動作を開始させ、前記態様検出手段によって前記可動体が前記所定の態様となったことが検出されたことを契機として前記所定の演出を開始させる演出実行手段」である点で一致する。 (f)引用発明の「遊技機」は、本願補正発明の「遊技機」に相当する。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、 「A 遊技者が操作可能な操作手段と、 B 態様を変化させることが可能な可動体と、 C 前記操作手段が操作されたことを検出する操作検出手段と、 D 前記可動体が所定の態様となったことを検出する態様検出手段と、 E’所定の演出を含む演出を実行する手段であって、前記操作検出手段によって操作手段の操作が検出されたことを契機として前記可動体の動作を開始させ、前記態様検出手段によって前記可動体が前記所定の態様となったことが検出されたことを契機として前記所定の演出を開始させる演出実行手段と、 F を備える遊技機。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 本願補正発明は、操作可動演出に「前記操作手段から演出効果が発現される演出態様を有する第一演出」を含むのに対して、引用発明はそのように構成されていない点。(構成E) [相違点2] 本願補正発明は、第二演出が「前記可動体の態様によらず実行することが可能な」ものであるとともに、「前記第一演出とは異なる」ものであるのに対して、引用発明の「所定の演出」はそのようなものではない点。(構成E) [相違点3] 本願補正発明は、「前記操作検出手段によって操作手段の操作が検出されたことを契機として前記第一演出を開始させるとともに前記可動体の動作を開始させ」るのに対して、引用発明は、操作検出手段によって操作手段の操作が検出されたことを契機として可動体の動作を開始させるものの、第一演出を開始するようには構成されていない点。(構成E) (3)判断 ア 相違点1及び相違点3についての検討 上記相違点1及び上記相違点3は、いずれも操作手段及び第一演出に関するものなので、まとめて検討する。 遊技機において、操作手段での操作の検出に応じて、操作手段自体から演出の効果を発現させる態様の演出を行うことは周知技術(以下、「周知技術1」という。例.特開2015-167750号公報の段落【0038】-【0039】、【0064】-【0073】、【0131】、図6、特開2009-254633号公報の段落【0167】-【0169】、【0289】-【0290】、特開2010-252949号公報の段落【0004】-【0009】、【0173】-【0181】等)である。 そして、引用発明においては、操作検出手段によって操作手段の操作が検出されたことを契機として可動体の動作を開始させていることを参酌すれば、可動体の動作を開始させる際の操作手段の操作の検出の際に、周知技術である操作手段自体から演出の効果を発現させる態様の演出を行うように構成、すなわち、操作検出手段によって操作手段の操作が検出されたことを契機として、操作手段自体から演出の効果を発現させる態様の演出を開始させるとともに可動体の動作を開始させるように構成し、上記相違点1及び上記相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が周知技術1に基づいて容易になし得たことである。 イ 相違点2についての検討 遊技機において、可動体を用いた演出を行う際に、可動体の動作にあわせて音声を出力する演出を行うことは周知技術(以下、「周知技術2」という。例.特開2009-50545号公報の段落【0300】、図20-21、特開2015-165906号公報の段落【0307】-【0312】、特開2004-229682号公報の段落【0001】-【0006】等)である。 そして、このような音声を出力する演出は、可動体の位置や向き等の態様によらず実行することが可能であることは自明の事項である。また、可動体の動作にあわせて音声を出力する演出は、「前記操作手段から演出効果が発現される演出態様を有する」演出とは異なる演出であることは明らかである。 よって、引用発明に当該周知技術2を適用し、引用発明において、態様検出手段によって可動体が所定の態様となったことが検出されたことを契機として開始させる所定の演出として、可動体の態様によらず実行することが可能な音声を出力する演出であって、操作手段から演出効果が発現される演出態様を有する演出とは異なる演出を行うように構成し、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が周知技術2に基づいて容易になし得たことである。 ウ 本願補正発明が奏する効果について 上記相違点1ないし3によって本願補正発明が奏する効果は、当業者が引用発明、周知技術1及び周知技術2から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。 エ 請求人の主張について 請求人は、審判請求書において「ここで、繰出演出について検討する。繰出演出は、引用文献1の図5Bに記載されるように、可動役物111に支持されたギミック161が、傾倒演出後の可動役物111に対して上方に向かって変位する演出であることが認められる。仮に、傾倒演出前の可動役物111(図1、図3A、図4A等に示される原位置に位置する可動役物111)に対して繰出演出が行われるとすると、ギミック161は、原位置に位置する可動役物111に対して右方に向かって変位するということになる。しかし、原位置に位置する可動役物111の右方には、ギミック161が繰り出すためのスペースが存在するとは認められない(図1、図3A、図4Aからすると、このようなスペースは存在しないと判断するのが妥当である)し、仮に当該スペースが存在するとしても、右方へ繰り出したギミック161は遊技者には視認困難な状態となるのであるから、このような演出を実行する意味はないというべきである。事実、引用文献1を通じて、可動役物111が原位置に位置する状態で、ギミック161を右方に繰り出す演出を発生させることについては記載されていない。 つまり、繰出演出は、可動役物111が左に傾倒した状態(図5Aに示す状態)となってはじめて実行することができる演出であると捉えられるものであるから、可動役物111の態様によらず実行することが可能な演出であるとは認められない。すなわち、引用文献1には、本願発明が特定する『可動体の態様によらず実行することが可能な第二演出』に相当する構成は開示されていない。 また、周知技術を示す文献として提示された引用文献2?4に、本願発明が特定する『可動体の態様によらず実行することが可能な第二演出』に相当する構成が開示されていないことは明らかである。 このように、少なくとも、本願発明が特定する『可動体の態様によらず実行することが可能な第二演出』とした事項は、引用文献1?4のいずれにも開示されていないから、その余の本願発明が特定する事項について引用文献1?4に開示されているか否かを検討するまでもなく、本願発明が引用文献1?4の存在を根拠として特許法第29条第2項の規定により拒絶されるとする理由は成り立たない。」と主張しており(審判請求書の「(4)本願発明が特許されるべき理由」参照。)、引用文献1(引用例1)に記載の発明におけるギミックの繰出演出は、本願発明の第二演出のような可動体の態様によらず実行することが可能なものでは無く、引用文献1及び周知技術を示す文献として引用された引用文献2-4には「可動体の態様によらず実行することが可能な第二演出」が開示されていない旨を主張している。 しかしながら、上記「イ 相違点2についての検討」において検討したように、遊技機において、可動体を用いた演出を行う際に、可動体の動作にあわせて音声を出力する演出を行うことは周知技術であることを参酌すれば、引用発明において、可動体が所定の態様となったことが検出された際に、可動体の態様によらずに実行が可能な音声を出力する演出を開始するように構成することは、当業者が容易になし得たことである。 よって、請求人の上記主張は採用できない。 (4)まとめ 以上のように、本願補正発明は、当業者が引用発明及び周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4 むすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成29年7月20日付けの手続補正書により補正された、上記第2の1で示した特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、本願発明は引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 3 引用例 原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された引用例1の記載事項は、上記第2の3(1)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、本願補正発明の発明特定事項から、上記第2の1の補正箇所を示す下線部のうち記載箇所を移動させた形式的な修正である「第一演出」に関するものを除く下線部の構成に係る限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2の3(3)で検討したとおり、当業者が引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-07-04 |
結審通知日 | 2018-07-10 |
審決日 | 2018-07-23 |
出願番号 | 特願2015-210294(P2015-210294) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 野田 華代 |
特許庁審判長 |
鉄 豊郎 |
特許庁審判官 |
蔵野 いづみ 田付 徳雄 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 特許業務法人上野特許事務所 |