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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09D
審判 全部申し立て 2項進歩性  C09D
管理番号 1343845
異議申立番号 異議2017-700487  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-10-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-05-16 
確定日 2018-07-11 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6026933号発明「遮熱性艶消し水性塗料組成物及び遮熱性艶消し塗膜形成方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6026933号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?7〕について訂正することを認める。 特許第6026933号の請求項1?7に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6026933号の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成25年3月26日に特許出願され、平成28年10月21日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、平成29年5月16日に特許異議申立人清水すみ子により特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 8月16日付け:取消理由通知
同年10月20日 :訂正請求書、意見書の提出(特許権者)
同年11月22日 :意見書の提出(特許異議申立人)
平成30年 1月30日付け:取消理由通知(決定の予告)
同年 3月28日 :訂正請求書、意見書の提出(特許権者)
同年 4月26日 :意見書の提出(特許異議申立人)

なお、平成29年10月20日にした訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。

2.訂正請求について
(1)訂正の内容
平成30年3月28日に提出された訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正事項は、以下のとおりである。
ア 訂正事項1 請求項1?7に係る訂正
特許請求の範囲の請求項1において、
「固形分当たりの酸価が2.5?30mgKOH/gの範囲内の水性樹脂(A)、顔料分(B)及びHLB値が10以上のノニオン性界面活性剤(C)を含む水性塗料組成物であって、顔料分(B)が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、鉛白(炭酸亜鉛)から選ばれる少なくとも1種の無機白色顔料(b1)、タルク、マイカ、ガラスフレークから選ばれる少なくとも1種の薄片状体質顔料(b2)並びに炭酸カルシウム、シリカ、硫酸バリウム、カオリンクレーから選ばれる少なくとも1種の(b2)以外の体質顔料(b3)を含み、顔料分(B)の顔料体積濃度が45?80%の範囲内にあり、顔料分(B)全体積に占める無機白色顔料(b1)、薄片状体質顔料(b2)及び体質顔料(b3)の体積割合が、
無機白色顔料(b1)が、60?15%、
薄片状体質顔料(b2)が、5?70%、
体質顔料(b3)が、20?80%であり、
ノニオン性界面活性剤(C)の含有量が、水性樹脂(A)の固形分を基準として0.3?10質量%の範囲内にあることを特徴とする遮熱性艶消し水性塗料組成物。」
と記載されているのを、
「固形分当たりの酸価が2.5?30mgKOH/gの範囲内の水性樹脂(A)、顔料分(B)及びHLB値が10以上のノニオン性界面活性剤(C)を含む水性塗料組成物であって、顔料分(B)が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、鉛白(炭酸亜鉛)から選ばれる少なくとも1種の無機白色顔料(b1)、タルク、マイカ、ガラスフレークから選ばれる少なくとも1種の薄片状体質顔料(b2)並びに炭酸カルシウム、シリカ、硫酸バリウム、カオリンクレーから選ばれる少なくとも1種の(b2)以外の体質顔料(b3)を含み、顔料分(B)の顔料体積濃度が58?80%の範囲内にあり、顔料分(B)全体積に占める無機白色顔料(b1)、薄片状体質顔料(b2)及び体質顔料(b3)の体積割合が、
無機白色顔料(b1)が、60?15%、
薄片状体質顔料(b2)が、5?60%、
体質顔料(b3)が、20?80%であり、
ノニオン性界面活性剤(C)の含有量が、水性樹脂(A)の固形分を基準として0.3?10質量%の範囲内にあることを特徴とする遮熱性艶消し水性塗料組成物。」
に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2?7も同様に訂正する。

(2)訂正の適否についての判断
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載されていた「顔料分(B)の顔料体積濃度が45?80%の範囲内にあり」という発明特定事項を、本件特許明細書の段落[0100]?[0101]表3に記載された実施例8の顔料体積濃度(58%)に基づいて、「顔料分(B)の顔料体積濃度が58?80%の範囲内にあり」に訂正することにより数値範囲を減縮し、さらに、訂正前の請求項1に記載されていた「薄片状体質顔料(b2)が、5?70%」という発明特定事項を、本件特許明細書の段落[0054]における「薄片状体質顔料(b2)が、5?70%であり、好ましくは10?60%」という記載に基づいて、「薄片状体質顔料(b2)が、5?60%」に訂正することにより数値範囲を減縮するものであるから、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記訂正は、新規事項を追加するものではなく、カテゴリーや対象、目的を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかであるから、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

イ 一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1?7は、請求項2?7が請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。また、訂正事項1により訂正された後の請求項2?7は、いずれも訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正される。よって、訂正事項1は一群の請求項に対して請求されたものといえるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

ウ 独立特許要件について
本件においては、訂正前のすべての請求項1?7に対して特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1?7に係る訂正事項1については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

エ 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第3項、第4項、並びに同条第9項において読み替えて準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、訂正後の請求項〔1?7〕について訂正を認める。

3.本件発明について
本件訂正により訂正された特許請求の範囲の請求項1?7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明7」という。まとめて、「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「[請求項1]
固形分当たりの酸価が2.5?30mgKOH/gの範囲内の水性樹脂(A)、顔料分(B)及びHLB値が10以上のノニオン性界面活性剤(C)を含む水性塗料組成物であって、顔料分(B)が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、鉛白(炭酸亜鉛)から選ばれる少なくとも1種の無機白色顔料(b1)、タルク、マイカ、ガラスフレークから選ばれる少なくとも1種の薄片状体質顔料(b2)並びに炭酸カルシウム、シリカ、硫酸バリウム、カオリンクレーから選ばれる少なくとも1種の(b2)以外の体質顔料(b3)を含み、顔料分(B)の顔料体積濃度が58?80%の範囲内にあり、顔料分(B)全体積に占める無機白色顔料(b1)、薄片状体質顔料(b2)及び体質顔料(b3)の体積割合が、
無機白色顔料(b1)が、60?15%、
薄片状体質顔料(b2)が、5?60%、
体質顔料(b3)が、20?80%であり、
ノニオン性界面活性剤(C)の含有量が、水性樹脂(A)の固形分を基準として0.3?10質量%の範囲内にあることを特徴とする遮熱性艶消し水性塗料組成物。
[請求項2]
顔料分(B)の顔料体積濃度が臨界顔料体積濃度以上にあることを特徴とする請求項1に記載の遮熱性艶消し水性塗料組成物。
[請求項3]
中空粒子を更に含む請求項1または2に記載の遮熱性艶消し水性塗料組成物。
[請求項4]
水性樹脂(A)がカルボニル基を有するものであり、さらにヒドラジン誘導体を含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載の遮熱性艶消し水性塗料組成物。
[請求項5]
アルキルシリケート化合物をさらに含む請求項1ないし4のいずれか1項に記載の遮熱性艶消し水性塗料組成物。
[請求項6]
基材面に、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の遮熱性艶消し水性塗料組成物を塗装することを特徴とする遮熱性艶消し塗膜形成方法。
[請求項7]
建築物の外壁面に、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の遮熱性艶消し水性塗料組成物を塗装することにより建築物内部の温度上昇を抑制する方法。」

4.取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由(理由II)の概要
訂正前の請求項1?7(平成29年10月20日に提出された訂正請求により訂正された請求項1?7)に係る特許に対して平成30年1月30日付けで特許権者に通知した取消理由(理由II)の要旨は、次のとおりである。
理由II(進歩性)
本件特許の請求項1?7に係る発明は、本件特許の出願日前日本国内又は外国において頒布された引用文献1に記載された発明及び引用文献2?10に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、上記請求項に係る特許は取り消すべきものである。

<引用文献等一覧>
1.室井宗一,「建築塗料における 高分子ラテックスの応用」,第1版第1刷,株式会社工文社,昭和58年4月15日,第53?55頁,第67?69頁,第99?107頁,第130?134頁,第178?183頁(甲第1号証)
2.特開2002-47450号公報(甲第2号証)
3.特開2007-238640号公報(甲第3号証)
4.清野学,「酸化チタン 物性と応用技術」,1版5刷,技報堂出版株式会社,2003年6月20日,第145頁,第148?149頁(甲第4号証)
5.特開2000-129172号公報(甲第5号証)
6.特開平10-259356号公報(甲第6号証)
7.室井宗一,「高分子ラテックス入門」,初版第1刷,株式会社工文社,昭和55年7月29日,第1頁,第54?56頁,第66?68頁(甲第7号証)
8.社団法人日本塗料工業会編,「塗料原料便覧」,改訂7版,社団法人日本塗料工業会,平成11年5月31日,第287頁,第370?371頁,第374?375頁(甲第8号証)
9.国際公開第2005/019358号(周知技術を示す文献)
10.特開2011-122096号公報(周知技術を示す文献)

5.取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由(理由II)についての判断
(II)理由II(進歩性)について
ア 引用文献等に記載された事項
(i)引用文献1には、以下の事項が記載されている。
(1-1)「1.ラテックス塗料の構成
1.1 構成
・・・このように多種類の材料から構成されるラテックス塗料であるが,基本的な構成成分としては,顔料,バインダー(またはビヒクル),および添加剤に分けることができる.」(第53頁7?13行)

(1-2)「1.2 構成成分の役割
・・・
着色顔料 着色顔料は塗膜の着色と隠ペイ力の付与を主たる役割とする.着色の目的を達するために,着色顔料は単独で使用されるよりも,複数種類を組合せ,色合せして配合されることが多い.材質的には有機系と無機質系がある.詳細については103頁参照.
体質顔料 体質顔料は積極的な役割と消極的な役割を担っている.積極的な役割は,『丸1』(当審注:丸で囲まれた数字の1。以下、『丸2』、『丸3』も同様。)塗膜をツヤ消しにする,『丸2』塗料の流動性を改良する,『丸3』若干ではあるが塗料の隠ペイ力を高めることにある.他方,消極的な役割は,コスト低減のための増量剤としての効果である.詳細については99頁参照.
ポリマーラテックス バインダーとしてのラテックスは,顔料を結合して不透明な塗膜を形成するという役割を担っている.もっとも顔料が添加されない透明なフィルムもクリヤ塗膜と呼ばれるので,バインダー自体を塗料の本体とみることもできる.ラテックスは,このバインダーという呼び方以外にも,フィルム形成材(film former)と呼ばれることもある.詳細については67頁参照.」(第55頁1?18行)

(1-3)「ポリマー粒子は,その界面に形成される保護層のはたらきで,ラテックス粒子として安定に水中に分散されているが,この保護層は大きく吸着保護層(absorbed protective layer)と(化学的)結合保護層(chemically bonded protective layer)に分けられる.吸着保護層は界面活性剤や水溶性ポリマーが粒子界面に物理吸着して形成されるのに対して,結合保護層はカルボキシル基や水酸基または水溶性ポリマーが粒子に化学結合して形成される.結合保護層形成の最も典型的な方法は,不飽和カルボン酸の共重合によるカルボキシル化や保護コロイドのグラフト共重合である.両保護層の最も大きな効果の相違は,安定性の水準にあらわれる.」(第68頁下から13行?下から5行)

(1-4)「1.体質顔料
1.1 体質顔料のはたらき
体質顔料(extender)は,ラテックス塗料において,積極的なはたらきと消極的なはたらきをする.積極的なはたらきは次の通りである.
『丸1』塗膜をツヤ消しにする.
『丸2』塗料の流動性を改良する.
『丸3』若干ではあるが,塗料の隠ペイ力を高める.
他方,消極的なはたらきは増量材としてであり,その場合には塗料の性能の向上よりもコストの低下を目的として添加される.
・・・
体質顔料粒子はたいていの着色顔料粒子よりも大きくかつ吸水性が小さいので,大量に配合することも可能である.ラテックス塗料に使用される主な体質顔料は次の通りである.

1.2 各種体質顔料
1.2.1 炭酸カルシウム(CaCO_(3))
・・・

1.2.2 チャイナクレー(Al_(2)O_(3)・2SiO_(2)・2H_(2)O)
チャイナクレー(china clay)のうち,天然産のものは特にカオリン(kaoline)または陶土と呼ばれる.・・・

1.2.3 タルク(3MgO・4SiO_(2)・2H_(2)O)
・・・

1.2.4 マイカ粉(KAl_(2)(Al,Si)_(4)O_(10)(OH,F)_(2),KMg_(3)(AlSi)_(4)O_(10)(OH,F)_(2))
・・・

1.2.6 微粉シリカ(SiO_(2)・nH_(2)O)」(第99頁8行?第101頁12行)

(1-5)「2.着色顔料
2.1 ラテックス塗料に使用される着色顔料
ラテックス塗料には、無機顔料および有機顔料のいずれも使用することができるが,塗料の安定性および塗膜の耐候性からみて,一般に無機顔料のほうが適しているといえる.第5.2表には,ラテックス塗料に使用できる着色顔料の例を示す.フタロシアニン系を除く他の有機顔料は屋外で退色しやすいので,やむを得ざる場合を除いては,無機顔料を選択すべきである.
第5.2表 ラテックス塗料に使用される着色顔料の例

」(第103頁下から5行?第104頁第5.2表)

(1-6)「3.分散剤と湿潤剤
3.1 分散と湿潤
ラテックス塗料において顔料が十分にその役割を果たすためには,顔料2次粒子(second particle)が完全に1次粒子(primary particle)に解こう・分散され,再凝集することなくその状態を保つことが必要である.顔料2次粒子の解こう・分散を助ける物質は分散剤(dispersant),顔料粒子の水に対するぬれを改良し,分散安定性を保つのに役立つ物質は湿潤剤(wetting agent)と呼ばれる.」(第105頁下から8行?末行)

(1-7)「3.3 湿潤剤
湿潤剤としては次のようなノニオン性界面活性剤がおもに使用される.ポリオキシエチレン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル,ポリオキシエチレンスルホコハク酸エステルなど.
安定な分散系を得るためには,湿潤剤としてのノニオン活性剤に適正なHLB(hydrophile lypophile balance)をもつものが選ばれなければならない.適当するHLBは,分散相の顔料の極性または親水性が増すにつれて大きくなる.次に各種顔料の分散に最適のHLBを示す.

」(第106頁下から4行?第107頁13行)

(1-8)「4.5 光沢
塗膜の光沢(gloss)は,後述する第6.11図に示すように,PVC20%以下では高い値を保つが,この濃度を越えるとPVCとともに急速に低下する.光沢に関しては,臨界PVCにおける急激な変化は観察されない.・・・

4.7 実用的なPVC領域
以上,PVCと主要な塗膜物性の関係について述べたが,耐汚染性を除き,おおむね塗膜物性はPVCが高くなるにつれて低下する傾向にある.そしてこの低下傾向は,臨界PVCを越えると拍車がかかる.他方,経済面からみると,体質顔料はバインダーラテックスに比べて圧倒的に安価であるから,塗料コストはPVCを高くすることにより急激に低下することになる.
したがって,ラテックス塗料の配合に際しては,塗装目的に即した塗膜性能と経済性を勘案して,PVCが適正な水準に設定されることになる.各種フラット状仕上げ塗料に対するPVCは,目安的に示せば,大体第6.2表の通りである.

同表に示したように,光沢が最も重要な塗膜性能であるツヤあり塗料は,光沢の発現が可能な20?25%の低PVCに,耐候性が重要な塗膜性能である屋外塗料は臨界PVC以下に配合される.これに対して,屋外塗料ほど高い塗膜性能の要求されない屋内塗料は,特別の場合を除いては,臨界PVC以上に配合されることが多い.なお,フラット状仕上げ塗料については,第VIII章で詳しく述べる.」(第133頁7行?第134頁表下6行)

(1-9)「2. ツヤ消しフラット状仕上げ塗料
最も一般的なフラット状仕上げ塗料であり,建築物の屋内・外の塗装に使用される.おもな適用下地は,モルタル・コンクリート,せっこうプラスター,ドロマイトプラスターなどの塗り壁,およびPC板,石綿スレート板,せっこうボードなどの乾式板壁である.米国においては木材の塗装にも多量に使用されているが,わが国やヨーロッパではこの用途にはあまり向けられていない.塗装はハケ,ローラーバケ,スプレーガンで行なわれる.

2.1 屋外用塗料

屋外用フラット状仕上げ塗料(exterior flat wall paint)には,すぐれた耐候性や汚れにくさなどが必須の条件として要求されるのはもちろんのこと,そのほかにも塗装作業性ならびに塗装下地や下塗り塗膜に対する密着性が重要視される(屋外塗料の要件に関しては第I章,塗装作業性に関しては第VII章を参照されたい).
屋外用塗料のバインダーとしては,一般にVAc共重合体ラテックスやアクリル系ラテックスが使用されるが,他のラテックスも下地の条件および再塗装の条件によっては十分使用に耐える.・・・
アクリル系ラテックスは,一般に,問題なく屋外塗料用のバインダーとして適している.場合によっては,塗膜面が汚れやすいという欠点もみられることもあるが,塗料のPVCを高くすることによって改良することができる.」(第178頁下から2行?第181頁5行)

(1-10)「木材を対象とするラテックス塗料は,前述したように,わが国やヨーロッパではあまり使用されない.しかし,米国では建築材料として木材が比較的多く使用されている関係上,木部用塗料に関する研究や試験が活発に行なわれている.木材は膨張係数が比較的大きく,かつ膨張しやすいので,塗膜がそれに対応できるだけの柔軟性をもたないと,ワレやフクレが生ずるおそれがある.また塗膜の水蒸気透過性が十分でない場合にも,木材内部の水分が蒸発するときの圧力でフクレが起きることがある.・・・第8.3表には,アクリル系ラテックスの屋外用木部塗料の配合例を示す.

木部塗料の配合に関しては,特にPVCの決定が重要である.新しい木材に塗装すると,木目に沿ってワレ目が生じやすいが,VAc共重合体ラテックス塗料を白松材に塗装した一連の実験によると,ワレは30?45%の中程度のPVCで最も多く起きるという.これよりも低いPVCの塗膜でワレが少ないのは,塗膜の柔軟性が大きいためであるが,反対にこれよりも高いPVCの塗膜でもワレが少ないのは,すでに臨界PVCを越えているために,塗膜が不連続で,水蒸気透過性が非常に高かったためと考えられている.」(第181頁20行?第183頁7行)

(ii)引用文献2には、以下の事項が記載されている。
(2-1)「[請求項1]揮発性有機化合物の含有量が1重量%未満である、樹脂エマルションおよび増粘剤を含む水性塗料組成物において、前記増粘剤がニュートン性粘性付与剤と擬塑性粘性付与剤とからなり、かつ、その含有量が塗料組成物中に固形分で0.3?3.0重量%であることを特徴とする水性塗料組成物。
・・・
[請求項5]前記エマルション樹脂がアクリル樹脂エマルションであり、前記塗料組成物中の前記アクリル樹脂エマルションの含有量が樹脂固形分で3重量%以上である請求項1ないし4に記載の水性塗料組成物。
・・・
[請求項7]さらに、ノニオン性界面活性剤を含んでいて、その含有量が0.2?5重量%である請求項1ないし6のうちのいずれか1つに記載の水性塗料組成物。
[請求項8]前記ノニオン性界面活性剤のHLBが12.5?18.5である請求項7に記載の水性塗料組成物。
[請求項9]さらに、顔料を含んでいて、その含有量が顔料体積濃度で25%以上である請求項1ないし8のうちのいずれか1つに記載の水性塗料組成物。」

(2-2)「[0002]
[従来の技術]室内の塗装に用いられる水性塗料は、通常、凍結防止剤や造膜助剤としてVOCと呼ばれる揮発性有機化合物を含んでいるが、近年の環境問題や、不快臭やシックハウス症候群、化学物質過敏症等の人体に与える影響の観点から、塗料自体に含まれるVOCや、得られる塗膜から放出されるVOCをできるだけ少なくする水性塗料が商品化されている。
[0003]このような水性塗料として代表的なものとしては、樹脂エマルションを主成分とした水性塗料を挙げることができる。しかしながらこのような塗料は、粘性が低いため、塗装作業性が悪く、具体的には、ハケ塗りの際にハケすべりが強く、かぶりが悪いという問題点があった。そのため、ハケ塗りの際に適度な粘性を与えるために、ニュートン性粘性を付与する増粘剤の添加が試みられてきたが、ハケ塗りの際の粘性を充分に得るためには、塗料に対する添加量が多くなり、かえって塗装の際のタレ性の低下や得られる塗膜性能の劣化を引き起こしたり、塗料自体の粘度が高くなるために取り扱いにくくなったりする恐れがあった。特に、最近開発されつつある、揮発性有機化合物の含有量が1重量%未満である実質的に揮発性有機化合物を含まない水性塗料では、この傾向が顕著であり、実用上の問題が生じていた。
[0004]
[発明が解決しようとする課題]本発明は、ハケ塗りの際にハケすべり、および、かぶりに優れた揮発性有機溶剤の含有量が1重量%未満である水性塗料組成物を提供することを目的とする。
・・・
[0017]上記樹脂エマルションがアクリル樹脂エマルションである場合、そのTgは-60?-10℃であり、-45?-20℃であることが好ましい。また、数平均分子量は5000?20000であり、5000?15000であることが好ましい。さらに、酸価は15?50であり、25?45であることが好ましい。
・・・
[0021]上記アクリル樹脂エマルションの酸価が50を超える場合、塗膜の耐水性が悪化し、また、15未満である場合、塗膜付着性が低下し好ましくない。」

(2-3)「[0025]上記エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸またはメタクリル酸およびそのアルキルエステル類、例えば、メチルエステル、エチルエステル、イソブチルエステル、s-ブチルエステル、t-ブチルエステル、2-エチルヘキシルエステル、ラウリルエステル等;ビニル化合物、例えば、スチレン、メチルスチレン等;カルボン酸類、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等;アクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類、例えば、ヒドロキシエチルエステル、ヒドロキシプロピルエステル、ヒドロキシブチルエステル等;ニトリル類、例えば、(メタ)アクリロニトリル等;アミド類、例えば(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド等を挙げることができる。これらのエチレン性不飽和モノマーは2種以上を用いてもよい。」

(2-4)「[0032]本発明の水性塗料組成物は、さらに、ノニオン性界面活性剤を含むことができる。上記ノニオン性界面活性剤を含むことで塗料の凍結を防止することができる。上記ノニオン性界面活性剤として具体的には、ポリオキシアルキレン系のものを挙げることができる。このようなポリオキシアルキレン系のノニオン性界面活性剤のHLB(hydrophile-lipophile balance)は、12.5?18.5であることが好ましい。上記HLBが18.5を超える場合、親水性が高すぎて粒子表面の疎水性部への吸着性が低下して凍結安定化機能が発現せず、また、12.5未満である場合、親水基の水和能力が低下し凍結時の塗料安定性が確保できなくなる。」

(2-5)「[0036]本発明の水性塗料組成物が上記顔料を含む場合、塗料組成物の塗料樹脂固形分中におけるその含有量は顔料体積濃度(PVC)で25%以上であり、45?70%であることが好ましい。上記顔料体積濃度が25%未満である場合、塗膜の表面粘着性が大きくなり、塗膜品質が劣り実用的でない恐れがある。
[0037]さらに、本発明の水性塗料組成物は、上記の成分の他に必要に応じて、顔料分散剤、体質顔料、表面調整剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防かび剤、防藻剤等、当業者によってよく知られているその他成分を含有することができる。」

(iii)引用文献3には、以下の事項が記載されている。
(3-1)「[請求項1]
塗料用樹脂の固形分100重量部に対し、赤外線透過性粉体及び/または赤外線反射性粉体を1?200重量部、シリケート化合物をSiO_(2)換算で0.1?20重量部含有し、前記シリケート化合物として、
テトラアルコキシシラン縮合物(a)が、一分子中に水酸基を3個以上有し分子量が500未満である多価アルコール(b)によって変性された変性シリケート化合物
を含むことを特徴とする塗料組成物。」

(3-2)「[0003]
建築物の温度上昇を抑制する方法として、屋根、屋上、外壁等の建築物外装面基材に遮熱塗料を塗装する方法が知られている。このような遮熱塗料の一例として、特許文献1には、ビヒクル及び顔料を主成分とする塗料において、粒径50μm以下の太陽熱遮蔽顔料を塗料固形分中2?60重量%含む太陽熱遮蔽塗料組成物が記載されている。また、特許文献2には、顔料として、近赤外領域で高い太陽放射反射率を有する粒径50μm以下の赤、橙、黄、緑、青、紫系顔料のいずれか2種以上を用い、加法混色により無彩色である黒に調色した太陽熱遮蔽塗料組成物が記載されている。
・・・
[0006]
本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、塗膜表面への汚染物質の付着を抑制することができ、十分な遮熱機能を発揮することができる塗料組成物を得ることを
目的とするものである。」

(3-3)「[0011]
本発明の塗料組成物は、塗料用樹脂と、赤外線透過性粉体及び/または赤外線反射性粉体と、変性シリケート化合物とを主成分とするものである。
[0012]
塗料用樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂等、あるいはこれらの複合系等を挙げることができる。これらは1種または2種以上で使用することができる。このような塗料用樹脂の形態としては、溶剤可溶性樹脂、非水分散性樹脂、水溶性樹脂、水分散性樹脂、無溶剤型樹脂等が挙げられる。」

(3-4)「[0014]
本発明における塗料用樹脂は架橋反応性を有するものであってもよい。塗料用樹脂が架橋反応型樹脂である場合は、塗膜の強度、耐水性、耐候性、密着性等を高めることができる。架橋反応型樹脂は、それ自体で架橋反応を生じるもの、あるいは別途混合する架橋剤によって架橋反応を生じるもののいずれであってもよい。このような架橋反応性は、例えば、水酸基とイソシアネート基、カルボニル基とヒドラジド基、エポキシ基とアミノ基、アルド基とセミカルバジド基、ケト基とセミカルバジド基、アルコキシル基どうし、カルボキシル基と金属イオン、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とアジリジン基、カルボキシル基とオキサゾリン基等の反応性官能基を組み合わせることによって付与することができる。この中でも水酸基-イソシアート基架橋反応型樹脂が好適である。」

(3-5)「[0016]
本発明組成物は、赤外線反射性粉体及び/または赤外線透過性粉体を含有する。本発明では、かかる成分を含有することにより、塗料を所望の色に着色しつつ、太陽光による塗膜の蓄熱を抑制することが可能となる。
[0017]
具体的に、赤外線反射性粉体としては、例えば、アルミニウムフレーク、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化インジウム、アルミナ、鉄クロム複合酸化物、マンガンビスマス複合酸化物、マンガンイットリウム複合酸化物等が挙げられる。
一方、赤外線透過性粉体としては、例えば、ペリレン顔料、アゾ顔料、黄鉛、弁柄、朱、チタニウムレッド、カドミウムレッド、キナクリドンレッド、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、コバルトブルー、インダスレンブルー、群青、紺青等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。一般に、赤外線反射性粉体を使用するのみでは、表出可能な色相に限界があるが、これら赤外線透過性粉体を適宜組み合わせることにより、様々な色相の塗膜を形成することが可能となる。
[0018]
本発明組成物では、赤外線反射性粉体及び/または赤外線透過性粉体を含むことにより赤外線反射率が20%以上(好ましくは40%以上、さらに好ましくは55%以上)の塗膜、または赤外線透過率が20%以上(好ましくは40%以上、さらに好ましくは55%以上)の塗膜を形成することができる。なお、ここで言う赤外線反射率とは、波長800?2100nmの光に対する分光反射率を測定し、その平均値を算出することにより得られる値である。赤外線透過率とは、波長800?2100nmの光に対する分光透過率を測定し、その平均値を算出することにより得られる値である。」

(3-6)「[0020]
本発明の塗料組成物は、シリケート化合物として、テトラアルコキシシラン縮合物(a)(以下「(a)成分」という)が、一分子中に水酸基を3個以上有し分子量が500未満である多価アルコール(b)(以下「(b)成分」という)によって変性された変性シリケート化合物を含むものである。本発明では、かかる変性シリケート化合物の作用により塗膜表面の親水性が高まり、塗膜表面への汚染物質の付着を抑制することができ、ひいては塗膜の遮熱性能を十分に発揮させることができる。
[0021]
(a)成分としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn-ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラsec-ブトキシシラン、テトラt-ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、モノエトキシトリメトキシシラン、モノブトキシトリメトキシシラン、モノペントキシトリメトキシシラン、モノヘトキシトリメトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、ジメトキシジブトキシシラン等の縮合物が挙げられる。このうち、テトラメトキシシラン縮合物、テトラエトキシシラン縮合物が耐汚染性発現の点において有利である。なお、(a)成分の平均縮合度は、通常1?100、好ましくは4?20程度である。」

(3-7)「[0045]
本発明組成物は、屋根、屋上、外壁等の建築物外装面の表面仕上げに使用することができるものである。外装面の基材としては、特に限定されず、例えば、コンクリート、モルタル、金属、プラスチック、あるいはスレート板、押出成形板、サイディングボード等の各種ボード類等が挙げられる。本発明組成物は、このような基材を有する既存の建築物に対して塗装することができる。塗装方法としては、ハケ塗り、スプレー塗装、ローラー塗装等の方法を適宜採用することができる。各種ボード類については、予め工場等でプレコートすることもできる。」

(iv)引用文献4には、以下の事項が記載されている。
(4-1)「6.6.2 吸油量の影響
一般に,塗膜の顔料濃度が増すと,顔料粒子は次第に接近し,ついには粒子間距離が0の最密充てん状態になり,これ以上の粒子接近は布可能となる.この限界PVCをクリチカルPVC(Critical PVC CPVC)とよび,JISの吸油量に相当する顔料濃度である.さらに顔料濃度を上げると,顔料粒子間を埋めているバインダー量が不足し,気泡が混入する.このため,CPVCを境界として図-6.19のように塗膜の通気性,光沢,隠ぺい性などの諸特性が大きく変化する.
・・・
体質顔料を含有する塗料は一般にPVCが高く,CPVCをこえる高顔料濃度の塗料も多い.この塗膜のCPVCに影響する吸油量は体質顔料,酸化チタン顔料の型および両者の混合比率によって変化する.」(第145頁表下1行?下から3行)

(4-2)「また,体質顔料として大粒径の(5μm以下)タルク・炭カル混合物を使った別の試験では,酸化チタンの種類を変え,E-PVCは20%一定とし,T-PVC30?70%のアクリルエマルション塗料を作成し,塗膜の光散乱率を測定した.
・・・
また,隠ぺい力,光散乱率が極小となるPVCは,その塗膜の顔料のCPVCに相当すると考えられる.これらの図の顔料組成がそれぞれ違うので若干の変動はあるが,CPVCは汎用ルチルでは55?60%,中濃度エマルション塗料用ルチルでは50?55%,高濃度エマルション用ルチルでは45?50%付近と推定される.」(第148頁下から3行?第149頁表下8行)

(v)引用文献5には、以下の事項が記載されている。
(5-1)「[請求項1] 可視領域で吸収を示し近赤外領域では反射を示す顔料と、耐候性に優れるビヒクルとを含有することを特徴とする遮熱性塗料。
・・・
[請求項6] 前記白色顔料が、酸化チタン顔料であることを特徴とする請求項4又は5記載の遮熱性塗料。
・・・
[請求項10] 反射機能又は断熱機能を有する骨材を含有することを特徴とする請求項1乃至9記載の遮熱性塗料。
[請求項11] セラミックバルーン及び構造保持剤を含有することを特徴とする請求項1乃至9記載の遮熱性塗料。」

(5-2)「[0001]
[発明の属する技術分野]本発明は、太陽熱等に対して遮蔽効果を有する遮熱性塗料及びその塗装方法に関する。さらに詳しくは、濃彩色の塗料であっても熱としての吸収が少なく、そのため優れた耐候性を発揮する遮熱性塗料及びその塗装方法に関する。」

(5-3)「[0023]さらに本発明の遮熱性塗料は、耐候性の優れたビヒクルを用いることを特徴とする。ここでいう耐候性に優れたビヒクルとは、耐黄変性、保色性、光沢保持性、耐薬品性、及び耐白亜化性等に優れたビヒクルをいい、水溶性型及び溶剤型、あるいは常温乾燥型及び焼き付け型のいずれも用いることができる。このようなビヒクルを上述の濃彩色反射顔料と共に用いることにより、塗膜全体としての優れた耐候性を得ることができる。」

(5-4)「[0032]本発明の遮熱性塗料には上記の顔料及びビヒクルに加えて、反射機能及び断熱機能を有する骨材を含有することができる。骨材の具体例としてはシラスバルーン、ポリスチレンバルーン、セラミックバルーン等の中空粒子が挙げられる。これらの骨材は反射機能及び断熱機能を有するため上述の濃彩色反射顔料とあいまって、塗膜の遮熱性、耐候性をさらに向上させることができる。」

(5-5)「[0036]以上の塗料を塗布する素材としては特に限定されるものではなく、木材、コンクリート、アスベスト、金属、樹脂等の種々の素材が選択可能である。また塗布する用途は、遮熱機能を付与したい場所であれば適用でき、例えば家、工場、保冷倉庫等の建築物や、車、電車、ベンチ、冷凍車等の輸送車、貯蔵タンク、タンカー等の構造物の屋根、天井、外壁、内壁等が挙げられる。」

(vi)引用文献6には、以下の事項が記載されている。
(6-1)「[請求項1] カルボニル基含有共重合体水分散液(A)に、不飽和ポリウレタン樹脂を2?50重量%、カルボニル基含有エチレン性不飽和単量体を0.01?40重量%、及び他の重合性不飽和単量体を10?97.99重量%からなる割合で共重合して得られるカルボニル基含有水性ウレタングラフト樹脂(B)を、(A)の固形分100重量部に対して5?500重量部配合し、さらに架橋剤として、1分子当り少なくとも2個以上のヒドラジド基又はセミカルバジド基を有するヒドラジン誘導体(C)を、(A)及び(B)成分中に含まれるカルボニル基の1モルに対して(C)成分中のヒドラジド基又はセミカルバジド基が0.01?2モルとなるよう配合してなる水性塗料用樹脂組成物。」

(6-2)「[0001]
[産業上の利用分野]本発明は、耐候性、耐水性、および耐久性に優れる塗膜を形成することができる水性塗料用樹脂組成物に関し、特に、建築物内・外装、橋梁、船舶および車両等の塗装に適する常温架橋型水性塗料用樹脂組成物に関する。」

(6-3)「[0006]上記ヒドラジン誘導体(C)の添加量は、前記(A)及び(B)成分中のカルボニル基1モルに対し、ヒドラジド基又はセミカルバジド基の量が0.01?2.0モル、好ましくは0.05?1.5モルとなる量である。0.01モルより少なくなる量では、十分な架橋効果が得られず造膜時の脆弱性の問題が発生し、2.0モルより多い量では、所望の架橋効果以上の効果を得ることはできない。
[0007]カルボニル基含有共重合体水分散液(A)を形成する単量体(a)としては、例えばアクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4?7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えばビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等が挙げられる。このうち特にダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミドが好適である。」

(6-4)「[0011]カルボニル基含有共重合体水分散液を形成するために使用する単量体(a)、(b)、(c)の使用割合は(a)0.1?30重量%、(b)0?10重量%、(c)60?99.9重量%であって、この単量体混合物を乳化剤の存在下で乳化重合させることにより水分散液を製造することができる。単量体(a)が0.1重量%より少ないと十分な架橋効果が得られず造膜時の脆弱性の問題が発生し好ましくない。また30重量%より多くしても所望の架橋効果以上の効果を得ることはできないので0.1?30重量%が好ましい。単量体(b)の使用量が10重量%より多いと得られる塗膜の耐水性が低下し好ましくない。単量体(c)の使用量が60重量%より少ないと得られる塗膜の耐水性が低下し、99、9重量%より多いと十分な架橋効果が得られず造膜時の脆弱性の問題が発生し好ましくない。」

(vii)引用文献7には、以下の事項が記載されている。
(7-1)「4.2.2 カルボキシル化
特に疎水性ポリマーラテックスの場合,不飽和カルボン酸コモノマーを共重合し,中和によりカルボキシル基を解離させると,吸着保護層による安定化ではとうてい到達できないほど高い水準の機械的安定性が得られる。第3.3表には中和の効果を・・・示す。

不飽和カルボン酸としては,一般的には,アクリル酸またはメタクリル酸が使用されるが,イタコン酸やマレイン酸が使用されることもある。このような不飽和カルボン酸の共重合・中和で高い機械的安定性が得られるのは,前述したように,結合保護層が形成されるからである。」(第55頁下から5行?第56頁表下7行)

(7-2)「6.3 粉末顔料混和性
粉末顔料混和性とは,前述したように,顔料2次粒子を直接配合する場合のラテックスの混和安定性であり,磨砕顔料混和性に比べて,条件は各段に厳しくなる。
ラテックスに顔料2次粒子を加えると,粒子周辺の水が多孔性の2次粒子内部に急速に吸収される。すると,それに伴って,2次粒子周辺のラテックス粒子濃度が局部的に急上昇して,粒子の周りに凝集フィルムが形成される。これを強引に攪拌すると,混和性のすぐれたラテックスの場合には凝集フィルムは再分散されてもとの分散状態にもどり,同時に2次粒子も1次粒子に還元される。しかし混和性の劣るラテックスの場合には,凝集フィルムは再分散されることなく,多数の1次粒子を固着したゲル状破片に粉砕されるにとどまる。
すなわち,ザラザラした顔料配合ラテックスとなり,実用上の価値がなくなる。

・・・
また,カルボキシル化したラテックスは非常に高い粉末顔料混和(安定)性を示すが,同じ理由によるものである。
粉末顔料混和性を考えるに際して,化学的および機械的安定性のすぐれたラテックスをモデルとしたが,上述したように,粉末顔料による部分凝集を阻止する方法と機械的安定性を改良する方法は同じであるという結論に達した。したがって,結論として粉末顔料混和性も,化学的安定性と機械的安定性,すなわち化学的機械的安定性に等しいということになる。」(第66頁1行?第68頁14行)

(viii)引用文献8には、以下の事項が記載されている。
(8-1)引用文献8の第287頁には、チタン白(一般名 酸化チタン)のルチル形の結晶形態のものの比重が4.2であることが記載されている。

(8-2)引用文献8の第370頁には、炭酸カルシウムの比重が2.6?2.7であることが記載されている。

(8-3)引用文献8の第374頁には、タルク(含水硅酸マグネシウム)の比重が2.7?2.8であることが記載されている。

(ix)引用文献9には、以下の事項が記載されている。
(9-1)「発明の効果
本発明の遮熱性被膜形成用塗料組成物によれば、樹脂成分(A)の被膜の屈折率、及び白色顔料(B)の平均粒子径及び屈折率を、それぞれ特定範囲内に調整したことにより、以下のような顕著な効果が得られる。
(1)建築物等の各種被塗物上に、遮熱効果に優れ、十分な下地隠蔽性及び光沢を有する塗膜を、単層で又は複層で形成できる。従って、被塗物内部の温度上昇の抑制に貢献できる。
(2)樹脂成分(A)の種類等を選択することにより、形成される塗膜に、耐汚染性、耐候性等の機能を付与することができる。
(3)当該塗料組成物に、着色顔料を含有させて、上塗り塗料として使用することにより、遮熱効果に優れ且つ濃色等の色調のバリエーションが豊富な塗膜を得ることが可能である。従って、建築物等の被塗物の外壁、屋根等に塗装することにより、被塗物内部の温度上昇を抑制できるのに加えて、美粧性に優れた外観とすることができる。
(4)当該塗料組成物から形成される塗膜が特定の明度となるように調整して、下塗り塗料として使用することにより、遮熱効果及び隠蔽性に優れる下塗り塗膜を形成できる。従って、この下塗り塗膜上に塗装される上塗り塗料の塗膜の色調に悪影響を及ぼすことがなく、良好な外観の遮熱効果に優れた複層塗膜を形成できる。このような複層塗膜によれば、例えば、上塗り塗膜が濃彩色の外観であっても、複層塗膜全体として、外観不良を起こすことなく、被塗物の美観を長期的に保持しながら、その内部温度上昇を抑制できる。
遮熱性被膜形成用塗料組成物
本発明の遮熱性被膜形成用塗料組成物は、屈折率が1.30?1.60の範囲内の被膜を形成する樹脂成分(A)、及び平均1次粒子径が500?2,000nmの範囲内で且つ屈折率が1.80?3.00の範囲内の白色顔料(B)を含有する。
本発明塗料組成物においては、上記樹脂成分(A)に、上記白色顔料(B)を組み合わせたことにより、白色顔料(B)の有する赤外線を反射・散乱する作用が、効果的に発揮され、得られる塗膜の遮熱効果が優れることになる。ここで、白色顔料(B)の上記作用は、特に波長780?2,100nm程度の近赤外線を、効率よく反射・散乱する作用である。」(明細書第4頁3行?第5頁4行)

(9-2)「樹脂成分(A)としては、該成分により形成される被膜が上記範囲の屈折率となるものであれば、その内容は制限されない。樹脂成分(A)は、水溶性もしくは水分散性樹脂、有機溶剤に可溶性もしくは分散性の樹脂、又は粉体樹脂のいずれであってもよい。また、樹脂成分(A)は、本発明塗料組成物が、主に、建築物等の外面等の屋外での塗装に使用されることから、常温で乾燥できる樹脂であることが望ましい。
また、樹脂成分(A)は、架橋型樹脂及び非架橋型樹脂のいずれであってもよい。
架橋型樹脂は、通常、自己架橋性樹脂を、又は架橋性官能基含有樹脂と架橋剤とを、媒体に溶解又は分散した状態で使用される。媒体としては、水及び/又は有機溶剤を使用する。架橋型樹脂を含有する塗料組成物は、塗装後に、媒体が揮発することによって、架橋反応が起こり、3次元架橋塗膜を形成する。
一方、非架橋型樹脂は、通常、媒体に溶解又は分散した状態で使用される。媒体としては、水及び/又は有機溶剤を使用する。非架橋型樹脂を含有する塗料組成物は、塗装後に、媒体が揮発することによって塗膜を形成する。非架橋型樹脂としては、例えばセルロース誘導体、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂等を挙げることができる。
樹脂成分(A)としては、架橋型アクリル樹脂又は非架橋型アクリル樹脂を使用するのが、本発明の組成物から形成される塗膜の光沢が良好である点から、望ましい。
また、樹脂成分(A)としては、カルボニル基含有アクリル共重合体とその架橋剤であるヒドラジン誘導体との組み合わせ、マレイミド基含有アクリル共重合体、不飽和脂肪酸変性アクリル共重合体等の架橋型樹脂が好ましい。カルボニル基含有アクリル共重合体は、単独で非架橋型樹脂として用いても構わない。
樹脂成分(A)であるカルボニル基含有アクリル共重合は、エマルションとして用いることが好ましい。
・・・
カルボニル基含有アクリル共重合体エマルションに、ヒドラジン誘導体を組み合わせることにより、常温で架橋する樹脂成分とすることができ、耐水性、耐候性等に優れる架橋塗膜が形成できる。」(同第5頁20行?第7頁21行)

(9-3)「樹脂成分(A)は、必要に応じて、耐汚染化剤としてのオルガノシリケート化合物を含有することができる。該化合物により、形成塗膜が、親水性になり、雨水等により表面が洗浄され易くなるため、汚れにくくなるという利点が得られる。
上記オルガノシリケート化合物としては、例えば、下記式(3)で表される直鎖状の縮合物をあげることができる。

式中、R^(5)は、独立して、水素原子又は炭素数1?10の炭化水素基を示す。mは1?100の整数を示す。
炭素数1?10の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、n-ヘキシル基、i-ヘキシル基、n-オクチル基などのアルキル基;フェニル基などのアリール基等が好ましい。
上記式(3)のオルガノシリケート化合物としては、R^(5)が炭素数1?4の低級アルキル基であってmが2?15のものが、より好ましい。
上記オルガノシリケート化合物としては、上記式(3)で表される直鎖状の化合物以外に、分岐状の化合物又は環状の化合物も包含される。
また、樹脂成分(B)が水性である場合においては、上記オルガノシリケート化合物に、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール系化合物を反応させて、変性オルガノシリケート化合物として、配合してもよい。」(同第11頁6?28行)

(9-4)「白色顔料(B)
本発明の組成物に用いられる白色顔料(B)は、形成塗膜に遮熱性を付与するものであり、平均1次粒子径が500?2,000nm、好ましくは550?1,600nm、より好ましくは600?1,400nmの範囲内であって、且つ屈折率が1.80?3.00、好ましくは1.90?2.80、好ましくは1.95?2.70の範囲内である。
白色顔料(B)は、上記粒子径及び屈折率を有することにより、塗膜中で波長780?2,100nm程度の近赤外線を効率的に反射・散乱することができ、遮熱性顔料としての効果を発揮することができる。効果的な白色顔料としては、二酸化チタン及び酸化亜鉛が挙げられ、これらの少なくとも一種を用いるのが好ましい。二酸化チタンを用いるのが特に好ましい。
白色顔料(B)の平均1次粒子径が500nm未満では、可視光を効率よく散乱することはできるが、波長780?2,100nm程度の赤外線を透過してしまい、形成塗膜の遮熱効果が不十分になる。一方2,000nmを超えると、形成塗膜の隠蔽性及び光沢が低下するので、好ましくない。また、屈折率が1.80未満では、形成塗膜の遮熱効果が十分でなく、又隠蔽性の点からも好ましくない。
ここで、平均1次粒子径とは、個々の独立した顔料粒子の粒子径の平均値である。一般に顔料粒子は凝集して存在しているので、通常の粒子径分布測定装置では粒子の凝集したものと個々の独立した粒子を区別して測定することは困難であるが、電子顕微鏡観察等により、独立した顔料粒子自体の平均粒子径を判定することが可能である。
本明細書において、顔料の「平均1次粒子径」は、電子顕微鏡観察により判定したものである。また、顔料の「屈折率」は、JIS K 0062に記載のアッベ屈折率計で測定した値である。
本発明において、白色顔料(B)としての二酸化チタンの結晶系は、上記した平均粒子径と屈折率の範囲であれば、ルチル型であってもアナターゼ型であってもよい。また、二酸化チタン表面を、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、二酸化珪素等の無機酸化物;アミン、アルコール等の有機化合物などで被覆処理をしてもよい。
本発明においては、十分な遮熱効果を得る点から、形成塗膜の中に含まれる白色顔料(B)の顔料体積濃度(pigment volume concentration;PVC)が、5?30%程度であるのが好ましく、6?25%程度であるのがより好ましい。従って、このような顔料体積濃度となるように、樹脂成分(A)に白色顔料(B)を配合する。顔料体積濃度は、塗膜中に含まれる顔料の体積百分率である。顔料体積濃度は、走査型電子顕微鏡により測定した塗膜断面の面積に対するその顔料の占める総面積の割合として算出することができる。
白色顔料(C)
本発明の遮熱性被膜形成用塗料組成物においては、平均1次粒子径が400nm未満、好ましくは200?300nm程度の白色顔料(C)をさらに含有することが、本発明組成物から形成される塗膜の下地隠蔽性を向上させることができる点から、好ましい。
かかる白色顔料(C)としては、二酸化チタン及び酸化亜鉛が挙げられ、これらの少なくとも一種を用いるのが好ましい。二酸化チタンを用いるのが特に好ましい。
上記二酸化チタン(C)の結晶型は、ルチル型、アナターゼ型のいずれであってもよいが、形成される塗膜の隠蔽性及び耐候性に優れる点から、ルチル型が好ましい。
着色顔料(D)
本発明の遮熱性被膜形成用塗料組成物は、着色顔料(D)をさらに含有することもできる。着色顔料(D)とは、塗膜に所望の色彩を与えるための顔料をいい、通常、無彩色顔料と有彩色顔料に分類することができる。
無彩色顔料としては、白色顔料及び黒色顔料等が挙げられる。白色顔料としては、例えば、鉛白、塩基性硫酸鉛、硫酸鉛、リトポン、硫化亜鉛、アンチモン白、白色顔料(B)及び白色顔料(C)以外の二酸化チタン又は二酸化亜鉛等が挙げられる。」(同第12頁8行?第14頁6行)

(9-5)「上記体質顔料としては、例えば、バリタ粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト等を挙げることができる。」(同第15頁26?29行)

(9-6)「請求の範囲
1.(A)屈折率1.30?1.60の範囲内の被膜を形成する樹脂成分、及び
(B)平均1次粒子径が500?2,000nmの範囲内で、且つ屈折率が1.80?3.00の範囲内である白色顔料
を含有する遮熱性被膜形成用塗料組成物。
2.樹脂成分(A)が、架橋型アクリル樹脂又は非架橋型アクリル樹脂を含有する請求項1に記載の塗料組成物。
3.樹脂成分(A)が、カルボニル基含有アクリル共重合体及びヒドラジン誘導体を含有する請求項1に記載の塗料組成物。」(請求の範囲)

(x)引用文献10には、以下の事項が記載されている。
(10-1)「[請求項1]
外殻部と前記外殻部の内部の中空部とを有し、かつ前記中空部の平均径が0.1μm以上5μm未満である中空無機酸化物粒子を含有する、塗料組成物。
[請求項2]
中空無機酸化物粒子が、炭素原子を除く周期表第2族、3族、4族、12族、13族、及び14族の元素から選ばれる1種以上の元素を含む無機酸化物粒子である、請求項1記載の塗料組成物。
[請求項3]
中空無機酸化物粒子が、シリカを含む成分から構成される外殻部を備える中空シリカ粒子である、請求項1又は2に記載の塗料組成物。
[請求項4]
JIS K5602(2008年)に規格される日射反射率が10%以上である塗膜を形成するために用いる、請求項1から3のいずれかに記載の塗料組成物。」

(10-2)「[0011]
本発明は、中空部の平均径が0.1?5μm程度の中空無機酸化物粒子が、塗料において、白色顔料として使用できるとともに、可視光線及び赤外線を効果的に反射することができ、遮熱性が良好な塗料組成物が提供できるという知見に基く。
[0012]
中空部の平均径が0.1μm以上5μm未満の中空無機酸化物粒子が可視光線及び赤外線を効果的に反射できるメカニズムの詳細は明らかではないが、中空部が光の波長と同程度の大きさに設定することによりMie散乱理論より、波長との関係から可視光線及び赤外線領域の反射が強いものと考えられる。また、粒子-樹脂界面と比較して粒子-中空部界面の方がより屈折率差及び屈折率比が大きいことから、粒子-中空部界面で可視光線及び赤外線の反射が大きくなるものと考えられる。また、0.1μm以上5μm未満の中空部径を持つ中空無機酸化物粒子は可視光線及び赤外線の反射に好適であると共に、これらを含有する塗膜は表面の凹凸も少なく利用価値も高い。但し、本発明はこのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
[0013]
すなわち、本発明は、外殻部と前記外殻部の内部の中空部とを有し、前記中空部の平均径が0.1μm以上5μm未満である中空無機酸化物粒子を含有する塗料組成物(以下、「本発明の塗料組成物」ともいう。)に関する。本発明の塗料組成物によれば、可視光線及び赤外線を効果的に反射でき、それにより遮熱性を発揮する塗膜を形成し得る。」

(10-3)「[0037]
[塗料組成物]
本発明の塗料組成物は、前述の中空無機酸化物粒子のほか、塗膜形成材、溶媒、顔料、添加剤等を含有することができる。
[0038]
[塗膜形成材]
本発明の塗料組成物に含有され得る塗膜形成材としては、アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、シリコーン樹脂、フッ素樹脂の1種類又は複数種類が挙げられる。前述のとおり、本発明の塗料組成物の遮熱効果は中空無機酸化物粒子自身の反射作用によってもたらされるものであるから、塗膜形成材はその種類によらず本発明の塗料組成物に使用できる。
[0039]
[溶媒]
溶媒としては、ガソリン、灯油、トルエン、キシレンなどの炭化水素、エタノール、ブタノールなどのアルコール類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトンなどのケトン類、カルビトールセロソルブなどのエーテル類、水などを挙げることができる。」

(10-4)「[0040]
[顔料]
前述した中空無機酸化物粒子は、可視光域における反射率が高いため、白色顔料として使用できる。よって、本発明の塗料組成物の一態様は、中空無機酸化物粒子を白色顔料として含む塗料組成物であり、さらに、その他の態様として、中空無機酸化物粒子を白色顔料として含む白色用(白色系)塗料組成物である。本発明の塗料組成物に含まれうるその他の顔料としては、チタン白、酸化クロムなどの金属酸化物、及び、紺青、ファスト・エロー、フタロシアニン・ブルーなどの無機顔料及び/又は有機顔料が挙げられる。」

(10-5)「[0046]
本発明の塗料組成物を、例えば、家、工場などの建築物、又は、冷蔵庫、貯蔵タンク、電車、飛行機、車、船などの構造物の屋根、天井、外壁、内壁など、遮熱性を付与したい場所に塗布することができる。したがって、本発明はその他の態様として、遮熱方法であって、遮熱性を付与したい部分に本発明の塗料組成物を塗布することを含む方法である。」

(10-6)「[0052]
[実施例1:塗料組成物及び塗膜の製造]
水性アクリル塗料(和信ペイント製、つや出しニス、アクリル樹脂を30重量%含有)3.6gに前記中空無機酸化物粒子を0.4g混合し、実施例1の塗料組成物を得た。この塗料組成物をバーコーター(250mm)を用いてHP金属板(H-102MN、太佑機材製)に塗布し、室温で1時間乾燥後、同条件にて再度塗布することで塗膜を作製した。得られた塗膜を分光光度計(島津製作所製、SOLID SPEC 2700)を用いて200?2500nmの分光反射率の測定を行った。」

イ 引用文献1に記載された発明
引用文献1には、ツヤ消しフラット状仕上げ塗料の一種として、屋外用フラット状仕上げ塗料が記載されており(摘記1-9)、バインダーとしては、一般にVAc共重合体ラテックスやアクリル系ラテックスが使用されること、アクリル系ラテックスは、一般に問題なく屋外塗料用のバインダーとして適していること、場合によっては塗膜面が汚れやすいという欠点もみられることもあるが、塗料のPVCを高くすることによって改良することができることが記載されている(摘記1-9)。また、第8.3表(摘記1-10)には、アクリル系ラテックスを用いた屋外用木部塗料の配合例が記載されており、再塗装用配合として、非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンオクチルフェノール)を2.0重量部、酸化チタン(ルチル型)を175.0重量部、タルクを65.0重量部、炭酸カルシウムを257.9重量部含む顔料ペーストと、Rhoplex AC-34という商品名で特定される固形分46%のアクリル系ラテックスを400.7重量部含むバインダーとを含有し、PVC(顔料体積濃度)が49.8%である水性塗料の配合例が記載されている。ここで、上記配合例における非イオン性界面活性剤の含有量(2.0重量部)は、上記アクリル系ラテックスの固形分(400.7重量部の46%=184.3重量部)を基準とすると、約1.1質量%に相当する。また、引用文献8(摘記8-1?8-3)には、酸化チタン(ルチル型)の比重が4.2、炭酸カルシウムの比重が2.6?2.7、タルクの比重が2.7?2.8であることが記載されているから、数値に幅のある場合は中間値を採用することとして、上記配合例における各顔料の重量部を体積に換算すると、酸化チタン(ルチル型)が約41.7、タルクが約23.6、炭酸カルシウムが約97.3、合計162.6となり、百分率にすると、それぞれ25.6%、14.5%、59.8%と計算される。さらに、上記水性塗料の配合例は、ツヤ消しフラット状仕上げ塗料の一種である屋外用フラット状仕上げ塗料の配合例と解されること(摘記1-9)、一般に、PVCが20%以下の塗料の塗膜は高い光沢を保つが、この濃度を超えるとPVCとともに急速に低下することが知られていること(摘記1-8)、タルク及び炭酸カルシウムは体質顔料の一種であり、塗膜をツヤ消しにする機能を有していること(摘記1-4、1-2)、及び上記水性塗料の配合例はPVCが49.8%であることに鑑みると、上記水性塗料の配合例により形成される塗膜はツヤ消しになるものと解される。
そうすると、引用文献1の第8.3表の配合例(再塗装用配合)には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「アクリル系ラテックス、顔料分及び非イオン性界面活性剤を含む水性塗料組成物であって、顔料分が酸化チタン(ルチル型)、タルク及び炭酸カルシウムであり、顔料分の顔料体積濃度が49.8%であり、顔料分全体積に占める上記各顔料の体積割合が、酸化チタン25.6%、タルク14.5%、炭酸カルシウム59.8%であり、非イオン性界面活性剤の含有量が、アクリル系ラテックスの固形分を基準として1.1質量%である、ツヤ消し水性塗料組成物。」(以下、「引用発明」という。)

また、引用発明の水性塗料組成物は、屋外用木部塗料の配合例であるから、引用文献1には、実質的に以下の発明も記載されているものと認められる。
「屋外木部に、引用発明のツヤ消し水性塗料組成物を塗装することにより、ツヤ消し塗膜を形成する方法。」(以下、「引用発明b」という。)

ウ 理由II(進歩性)についての判断
(II-1)本件発明1について
(II-1-1)本件発明1と引用発明との対比
本件発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における「アクリル系ラテックス」、「顔料分」、「非イオン性界面活性剤」及び「ツヤ消し」は、それぞれ本件発明1における「水性樹脂(A)」、「顔料分(B)」、「ノニオン性界面活性剤(C)」及び「艶消し」に相当する。また、引用発明における「酸化チタン(ルチル型)」、「タルク」及び「炭酸カルシウム」は、それぞれ本件発明1における「無機白色顔料(b1)」、「薄片状体質顔料(b2)」及び「(b2)以外の体質顔料(b3)」の選択肢の一つに相当する顔料である。さらに、引用発明における顔料分の全体積に占める各顔料の体積割合は、いずれも本件発明1における顔料分(B)全体積に占める(b1)?(b3)の各体積割合の範囲内に含まれており、引用発明におけるアクリル系ラテックスの固形分を基準とした非イオン性界面活性剤の含有量は、本件発明1における水性樹脂(A)の固形分を基準としたノニオン性界面活性剤の含有量の範囲内に含まれている。
そうすると、両者は、
「水性樹脂(A)、顔料分(B)及びノニオン性界面活性剤(C)を含む水性塗料組成物であって、顔料分(B)が、酸化チタン(ルチル型)である無機白色顔料(b1)、タルクである薄片状体質顔料(b2)及び炭酸カルシウムである体質顔料(b3)を含み、顔料分(B)全体積に占める無機白色顔料(b1)、薄片状体質顔料(b2)及び体質顔料(b3)の体積割合が、
無機白色顔料(b1)が、25.6%、
薄片状体質顔料(b2)が、14.5%、
体質顔料(b3)が、59.8%であり、
ノニオン性界面活性剤(C)の含有量が、水性樹脂(A)の固形分を基準として1.1質量%である艶消し水性塗料組成物。」の点で一致し、

相違点1:水性樹脂(A)について、本件発明1においては固形分当たりの酸価が2.5?30mgKOH/gの範囲内であることが特定されているのに対し、引用発明のアクリル系ラテックスにおいてはそのようなことが明らかでない点
相違点2:ノニオン性界面活性剤について、本件発明1においてはHLBが10以上であることが特定されているのに対し、引用発明の非イオン性界面活性剤においてはそのようなことが明らかでない点
相違点3:本件発明1は「遮熱性」であることが特定されているのに対し、引用発明はそのようなことが明らかでない点
で相違する。
相違点4:顔料分(B)の顔料体積濃度が、本件発明1においては58?80%であることが特定されているのに対し、引用発明においてはそのように特定されていない点
で相違する。
そこで、事案に鑑み、まず相違点4について検討する。

(II-1-2)相違点4について

(ア)引用文献1の記載について
引用文献1の摘記1-8には、塗料における実用的なPVC(顔料体積濃度)領域について、「耐汚染性を除き、おおむね塗膜物性はPVCが高くなるにつれて低下する傾向にあ」り、「この低下傾向は、臨界PVCを越えると拍車がかかる」が、他方、経済面からみると「塗料コストはPVCを高くすることにより急激に低下することになる」こと、「したがって、ラテックス塗料の配合に際しては、塗装目的に即した塗膜性能と経済性を勘案して、PVCが適正な水準に設定されることになる」ことが記載されており、同第6.2表には、フラット状仕上げ塗料のうち一般屋外塗料に対するPVCは、目安的に示せば40?55%であることが記載されている。また、引用文献1の摘記1-9には、アクリル系ラテックスは、場合によっては塗膜面が汚れやすいという欠点もみられることもあるが、塗料のPVCを高くすることによって改良することができることが記載されている。
そこで、仮に、これらの記載に基づいて当業者が引用発明における顔料体積濃度をより高く変更することに思い至るとしても、塗膜物性の低下に鑑みれば無制限に顔料体積濃度を高くできるものではなく、目安的に示された数値範囲の上限である55%が最大であることを理解するから、上記相違点4に係る本件発明1の構成には至らない。
なお、引用文献1の摘記1-8には、一般屋内塗料及び安価な屋内塗料に対するPVCは、目安的に示せばそれぞれ45?70%及び75%以上であること(第6.2表)、「耐候性が重要な塗膜性能である屋外塗料は臨界PVC以下に配合される」こと、及び「屋外塗料ほど高い塗膜性能の要求されない屋内塗料は、特別の場合を除いては、臨界PVC以上に配合されることが多い」ことが記載されているが、引用発明の水性塗料組成物は「屋外木部塗料の配合例」であって(摘記1-10)、上記の記載は引用発明のような屋外木部塗料における顔料体積濃度について示唆するものではなく、当業者が上記の記載を見ても、引用発明における顔料体積濃度を本件発明1のように「58?80%」の範囲内のものとすることが動機づけられるものではない。
さらに、引用発明が木部塗料の一種であることに鑑みて、引用文献1における木材塗料についての記載(摘記1-10)について検討すると、引用文献1には、「木材は膨張係数が比較的大きく、かつ膨張しやすいので、塗膜がそれに対応できるだけの柔軟性をもたないと、ワレやフクレが生ずるおそれがある」こと、「塗膜の水蒸気透過性が十分でない場合にも、木材内部の水分が蒸発するときの圧力でフクレが起きることがある」こと、「新しい木材に塗装すると、木目に沿ってワレ目が生じやす」く、「ワレは30?45%の中程度のPVCで最も多く起きる」こと、及び「これよりこれよりも高いPVCの塗膜でもワレが少ないのは、すでに臨界PVCを越えているために、塗膜が不連続で、水蒸気透過性が非常に高かったためと考えられている」ことが記載されているから、ワレやフクレの観点からは45%を越える顔料体積濃度を採用することが一応動機付けられるとしても、上記のとおり、「塗膜物性はPVCが高くなるにつれて低下する傾向にあ」り、「この低下傾向は、臨界PVCを越えると拍車がかかる」(摘記1-8)のであるから、木部塗料であっても、それが屋外で使用される限りは、一般屋外塗料に対する顔料体積濃度の上限の目安である55%を超えて、本件発明1のように「58?80%」の範囲の顔料体積濃度を採用することが動機付けられるとはいえない。
よって、引用文献1の記載に基づいて、当業者が上記相違点4に係る本件発明1の構成に至ることは容易なことではない。

(イ)引用文献2?10の記載について
引用文献2の摘記2-5には、「本発明の水性塗料組成物が上記顔料を含む場合、塗料組成物の塗料樹脂固形分中におけるその含有量は顔料体積濃度(PVC)で25%以上であり、45?70%であることが好ましい。」と記載されているが、引用文献2に記載された水性塗料組成物は、「室内の塗装に用いられる水性塗料」(摘記2-2の[0002])についての課題を解決しようとするものであるから、屋外木部塗料の配合例である引用発明における顔料体積濃度を、本件発明1のように「58?80%」の範囲内のものとすることが動機付けられるものではない。
また、引用文献4の摘記4-1には、「体質顔料を含有する塗料は一般にPVCが高く、CPVCをこえる高顔料濃度の塗料も多い」ことが記載され、「体質顔料として大粒径の(5μm以下)タルク・炭カル混合物を使った」試験が実施されているが、これらの記載も、引用文献1において塗膜物性の低下の観点から上限とされている55%を超えて、引用発明における顔料体積濃度を本件発明1のように「58?80%」の範囲内のものとすることを動機付けるものではない。。
さらに、他の引用文献の記載を検討しても、引用発明における顔料体積濃度を、引用文献1に記載された範囲を超える高い値に調整することを動機付ける記載は見出せない。
よって、引用文献1?10の記載に基づいて、当業者が上記相違点4に係る構成に至ることは容易なことではない。

(ウ)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、平成30年4月26日に提出した意見書において、「引用文献1には、単に『目安』として、PVCを『40?55%』に調製できることが記載・・・されているにすぎず、更に、本件訂正発明1の『顔料分(B)の顔料体積濃度が58%』は、上記目安の『55%』とは数値が近く、特許権者の主張するような『大きな隔たり』がないことは明らかである。」(第5頁)と主張しているが、上記5.(II)ウ(II-1)(II-1-2)(ア)「引用文献1の記載について」及び同(イ)「引用文献2?10の記載について」において検討したとおり、いずれの引用文献にも、引用発明における顔料体積濃度を55%を超える値に調整することは記載も示唆もされていないし、本件特許に係る出願の出願日前に、屋外木部塗料の技術分野において「58?80%」の顔料体積濃度を採用することが周知の技術的事項であったとも認められないから、特許異議申立人の主張は採用できない。
また、特許異議申立人は上記意見書において、「本件明細書の実施例及び比較例の結果から、訂正後の数値限定の内と外における有利な効果について、量的な顕著な差異は証明されておらず、臨界的意義も認められない。」(第6頁)と主張している。しかしながら、本件発明が、「耐候性や塗料の貯蔵安定性等が良好であり、長期にわたり遮熱性と艶消しの落ち着きのある仕上がり外観が維持でき、建築物の外壁等にも好適に使用できる遮熱性艶消し水性塗料組成物」(本件明細書[0010])であることは、本件明細書に記載された実施例で確認されており、引用発明に比して有利な効果を有するものであることが認められることから、特許異議申立人の主張は採用できない。

(エ)相違点4についてのまとめ
そうすると、上記相違点4は実質的な相違点であり、引用文献1?10の記載に基づいて当業者が相違点4に係る構成に容易に想到し得たものとは認められない。

(II-1-3)本件発明1についてのまとめ
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は引用発明及び引用文献1?10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

(II-2)本件発明2?7について
本件発明2?7は、いずれも本件発明1を引用する発明であるから、引用発明又は引用発明bとの対比においては、少なくとも上記5.(II)ウ(II-1)(II-1-1)「本件発明1と引用発明との対比」に記載した上記相違点4の点で相違するものと認められ、当該相違点4についての判断は、同(II-1-2)「相違点4について」に記載したとおりである。
よって、本件発明2?7は、いずれも引用発明又は引用発明b及び引用文献1?10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

(II-3)理由II(進歩性)についてのまとめ
以上のとおりであるから、当審が通知した理由II(進歩性)の取消理由によって、本件請求項1?7に係る特許を取り消すことはできない。

6.取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった取消理由について
(1)平成29年8月16日付け取消理由通知に記載した取消理由(理由I)の概要
訂正前の請求項1?7(願書に添付された特許請求の範囲の請求項1?7)に係る特許に対して平成29年8月16日付けで特許権者に通知した取消理由(理由I)の要旨は、次のとおりである。
理由I(明確性)
訂正前の請求項1においては、顔料分(B)全体積に占める無機白色顔料(b1)、薄片状体質顔料(b2)及び体質顔料(b3)の体積割合が、それぞれ(b1)60?15%、(b2)5?70%及び(b3)20?80%である旨が特定されているが、例えば(b2)を上限値の70%とすると、(b1)の下限値15%及び(b3)の下限値20%を採用しても、(b1)?(b3)の合計が105%となり、100%を超えてしまうから、数値範囲の特定に誤りがあることが明らかである。よって、訂正前の請求項1は技術的に正しくない記載を含んでおり、発明が不明確となっているから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用して記載されている訂正前の請求項2?7も、同じ理由により特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(2)理由I(明確性)についての判断
ア 本件発明1について
本件訂正により訂正された本件発明1においては、顔料分(B)全体積に占める無機白色顔料(b1)、薄片状体質顔料(b2)及び体質顔料(b3)の体積割合は、それぞれ(b1)60?15%、(b2)5?60%及び(b3)20?80%である旨が特定されているから、(b1)を上限値の60%としても、(b1)?(b3)の合計は100%を超えないということができる。
よって、本件発明1は明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものである。

イ 本件発明2?7について
本件発明1を直接又は間接的に引用して記載されている本件発明2?7も、同じ理由により特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものである。

ウ 理由I(明確性)についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1?7は、いずれも特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものであるから、当審が通知した理由I(明確性)の取消理由によって、本件請求項1?7に係る特許を取り消すことはできない。

7.取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人が申し立てた特許異議申立理由は、当審が通知した取消理由通知(決定の予告)の理由II(進歩性)に相当するものであり、取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由はない。

8.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?7に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分当たりの酸価が2.5?30mgKOH/gの範囲内の水性樹脂(A)、顔料分(B)及びHLB値が10以上のノニオン性界面活性剤(C)を含む水性塗料組成物であって、顔料分(B)が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、鉛白(炭酸亜鉛)から選ばれる少なくとも1種の無機白色顔料(b1)、タルク、マイカ、ガラスフレークから選ばれる少なくとも1種の薄片状体質顔料(b2)並びに炭酸カルシウム、シリカ、硫酸バリウム、カオリンクレーから選ばれる少なくとも1種の(b2)以外の体質顔料(b3)を含み、顔料分(B)の顔料体積濃度が58?80%の範囲内にあり、顔料分(B)全体積に占める無機白色顔料(b1)、薄片状体質顔料(b2)及び体質顔料(b3)の体積割合が、
無機白色顔料(b1)が、60?15%、
薄片状体質顔料(b2)が、5?60%、
体質顔料(b3)が、20?80%であり、
ノニオン性界面活性剤(C)の含有量が、水性樹脂(A)の固形分を基準として0.3?10質量%の範囲内にあることを特徴とする遮熱性艶消し水性塗料組成物。
【請求項2】
顔料分(B)の顔料体積濃度が臨界顔料体積濃度以上にあることを特徴とする請求項1に記載の遮熱性艶消し水性塗料組成物。
【請求項3】
中空粒子を更に含む請求項1または2に記載の遮熱性艶消し水性塗料組成物。
【請求項4】
水性樹脂(A)がカルボニル基を有するものであり、さらにヒドラジン誘導体を含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載の遮熱性艶消し水性塗料組成物。
【請求項5】
アルキルシリケート化合物をさらに含む請求項1ないし4のいずれか1項に記載の遮熱性艶消し水性塗料組成物。
【請求項6】
基材面に、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の遮熱性艶消し水性塗料組成物を塗装することを特徴とする遮熱性艶消し塗膜形成方法。
【請求項7】
建築物の外壁面に、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の遮熱性艶消し水性塗料組成物を塗装することにより建築物内部の温度上昇を抑制する方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-06-29 
出願番号 特願2013-64393(P2013-64393)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C09D)
P 1 651・ 537- YAA (C09D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 ▲吉▼澤 英一牟田 博一西澤 龍彦  
特許庁審判長 川端 修
特許庁審判官 原 賢一
天野 宏樹
登録日 2016-10-21 
登録番号 特許第6026933号(P6026933)
権利者 関西ペイント株式会社
発明の名称 遮熱性艶消し水性塗料組成物及び遮熱性艶消し塗膜形成方法  
代理人 三橋 真二  
代理人 高橋 正俊  
代理人 胡田 尚則  
代理人 胡田 尚則  
代理人 出野 知  
代理人 出野 知  
代理人 青木 篤  
代理人 三橋 真二  
代理人 高橋 正俊  
代理人 青木 篤  
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