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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H05K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H05K
管理番号 1343856
異議申立番号 異議2017-700553  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-10-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-06-01 
確定日 2018-07-23 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6082578号発明「ラック、補強フレーム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6082578号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-3〕につて訂正することを認める。 特許第6082578号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1.手続の経緯
特許第6082578号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成24年11月29日に特許出願され、平成29年1月27日にその特許権の設定登録がされ、その特許に対して、平成29年6月1日に特許異議申立人 松永 健太郎により特許異議の申立てがされた。そして、平成29年12月4日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年2月6日に特許権者により意見書の提出及び訂正の請求がされたものである。


第2.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
平成30年2月6日付けの訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は以下の訂正事項のとおりである。

(1)訂正事項
特許請求の範囲の請求項1に「特徴とする請求項1に記載のラック」と記載されているのを、「特徴とするラック」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2ないし3も同様に訂正する)。


2.訂正要件についての判断
(1)一群の請求項要件
訂正前の請求項1ないし3は、請求項2ないし3が、訂正の対象である請求項1を引用する関係にあるから、これらの請求項は訂正前において一群の請求項に該当する。本件訂正請求は、一群の請求項ごとにされたものであるから、特許法120条の5第4項に規定する要件を満たす。


(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

訂正事項は、訂正前の独立請求項である請求項1に「特徴とする請求項1に記載のラック」と自請求項を引用する記載であったところを、自請求項を引用する記載を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項は、自請求項を引用する記載を削除するのみであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
さらに、訂正事項は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第5項から第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正を認める。


第3.特許異議の申立について
1.本件発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明4」という。)は、平成30年2月6日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
左右に設けられる一対の支柱で上架と下架が支持されたラックにおいて、
左右の前記支柱に掛け渡されるようにして前記上架及び下架に配置される補強フレームを備え、
前記支柱と上架、前記支柱と下架、及び前記補強フレームと左右の支柱は、筋交い部材で連結されており、
前記補強フレームは、断面が略コ字状に形成された上側部材及び下側部材を中空状になるように側壁部同士が互いに重なり合うようにして組み合わせ、前記補強フレームと左右の支柱を連結する筋交い部材は、前記下側部材と一体的に形成され、対向配置される両方の側壁端部に前記支柱に対して斜め方向に傾斜する傾斜辺を有する略三角形状の傾斜部を有することを特徴とするラック。
【請求項2】
前記筋交い部材は、前記支柱の前後方向及び前記ラックの内側方向の三方向に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のラック。
【請求項3】
前記上架、下架、および支柱は、断面が略コ字状に形成された部材、またはその部材の組み合わせで構成されており、前記上架及び下架には、前記補強フレームを取り付けるための空間部を有するように枠組みされて形成されていることを特徴とする請求項1、又は2に記載のラック。
【請求項4】
左右に設けられる一対の支柱で上架と下架が支持されたラックに用いられる補強フレームであって、
断面が略コ字状に形成された上側部材及び下側部材を中空状になるように側壁部同士が互いに重なり合うようにして組み合わせ、左右の前記支柱に掛け渡されるようにして前記上架及び下架に配置され、
前記下側部材には、対向配置される両方の側壁端部に前記支柱に対して斜め方向に傾斜する傾斜辺を有する略三角形状の傾斜部を有し、前記補強フレームと左右の支柱とを連結する筋交い部材が一体的に形成されていることを特徴とする補強フレーム。」


2.取消理由通知に記載した取消理由について
ア.取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし3に係る発明についての特許に対して平成29年12月4日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

請求項1ないし3に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである。

・請求項1ないし3について
請求項1の末尾に、「?を特徴とする請求項1に記載のラック。」とあって、自請求項である請求項1を引用する形式となっており、その記載は不明確である。また、請求項1を引用する請求項2及び3の記載も不明確である。

イ.判断
本件訂正請求により、請求項1の「特徴とする請求項1に記載のラック」は、「特徴とするラック」に訂正され、自請求項を引用するものではなくなった。
したがって、当審による取消理由で指摘した不備な点は解消され、本件の請求項1及び請求項1に従属する請求項2ないし3に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してなされたものではない。

3.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)申立理由の概要
ア.理由1(特許法第29条第1項第3号)
訂正前の請求項1ないし4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
イ.理由2(特許法第29条第2項)
訂正前の請求項1ないし4に係る発明は、甲第1号証に記載され発明と甲第2号証ないし甲第9号証に例示する周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

甲第1号証 特開2010-232483号公報
甲第2号証 実願昭58-188875号(実開昭60-99032号 )のマイクロフィルム
甲第3号証 特開平7-331910号公報
甲第4号証 特開2005-213789号公報
甲第5号証 特開2011-054710号公報
甲第6号証 特開平11-312870号公報
甲第7号証 米国特許出願公開2007/0175836号明細書
甲第8号証 米国特許第6279756号
甲第9号証 特開2003-232133号公報


(2)甲号証の記載事項
ア.甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。(下線は、当審において付加した。以下、同じ。)

a.「【請求項1】
底板と天板との間にわたって電子機器を装着可能なマウントフレームを具備している電子機器用ラックにおいて、
前記底板と天板の各々は、横幅方向に離間するとともに前後方向へ延設された二本の止着フレームを有する一体状に構成され、
前記マウントフレームは、横幅方向に離間して立設された二本の支柱と、これら支柱の上端側と下端側とをそれぞれ連結する連結杆とからなる一体枠状に構成されるとともに、前記底板の二本の止着フレーム間に対し着脱可能であって、且つ前記天板の二本の止着フレーム間に対しても着脱可能であることを特徴とする電子機器用ラック。
【請求項2】
前記支柱の一端側及び/又は他端側に前後方向へ延設された補強片を固定し、この補強片を前記止着フレームに対し着脱可能に止着したことを特徴とする請求項1記載の電子機器用ラック。」
b.「【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばサーバーコンピュータ等の電子機器を収納するための電子機器用ラック、及び該電子機器用ラックを複数用いたラックシステムの製造方法に関するものである。」
c.「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来事情に鑑みてなされたものであり、その課題とする処は、横幅方向へ複数設置する場合に、その設置作業を軽減することができる電子機器用ラック及び該電子機器用ラックを複数用いたラックシステムの製造方法を提供することにある。」
d.「【発明の効果】
【0009】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような作用効果を奏する。
底板、天板、マウントフレームを、それぞれ独立した一体のパーツとして扱えるため、現場での組立作業が容易である。例えば、底板を横幅方向へ複数並べた後に、その上にマウントフレームを順次に立設する等、効率的な作業工程を採用することができる。
よって、横幅方向へ複数設置する場合に、その設置作業を軽減することができる。」
e.「【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
この電子機器用ラック1は、図1?4に示すように、床面に敷設される底板10と、該底板10の上方に間隔を置くとともに底板10に対向して配置される天板20と、これら底板10と天板20との間にわたって立設されたマウントフレーム30と、底板10と天板20の間の前面側と後面側をそれぞれ覆う扉体41,42と、底板10と天板20の間の側面を覆う側板50とを具備している。
そして、この電子機器用ラック1は、図11に示すように、横幅方向へ複数配設されることで、電子機器用のラックシステムAを構成する。
【0012】
底板10は、横幅方向に離間するとともに前後方向へ延設された二本の止着フレーム11と、横幅方向の端部側に位置するとともに後述する側板50に対し係合可能な凸部15とを一体に有する部材であればよい。この底板10は、例えば、板金部材や、形鋼材などを適宜に組み合わせ溶接して平面視略矩形枠状に形成される。
【0013】
各止着フレーム11は、断面逆L字状に立ち上るとともに(図7参照)、前後方向へ延設された部材であり、その立上がり部分には、前後方向へわたって所定間隔置きに止着孔11aが多数設けられている(図9参照)。該止着フレーム11の上端側は、外側(図7の左方向側)へ曲げられている。
各止着孔11aは、螺合部材12(具体例としてはねじやボルト等)を挿通可能な貫通孔である。
【0014】
各止着フレーム11の内側(図7によれば右側)の側部には、マウントフレーム30下端側の補強片35が螺合部材12によって止着されるようになっている。
また、各止着フレーム11の外側(図7によれば左側)の側部には、螺合部材12と螺合可能なネジ孔を有する板状部材13が設けられる。
【0015】
凸部15は、図示例によれば、底板10の横幅方向の端部側から上方へ突出するとともに前後方向へわたって連続する突片状の部位であり、後述する側板50の下端部に対し凹凸状に嵌まり合う。
この凸部15は、図示例によれば、底板10の前後方向の略全長に設けられるが、他例としては、底板10の前後方向に部分的に設けた態様や、底板10の前後方向に複数設けた態様等とすることも可能である。
【0016】
また、天板20は、底板10と略同様に、横幅方向に離間するとともに前後方向へ延設された二本の止着フレーム21と、横幅方向の端部側に位置するとともに後述する側板50に係合可能な凸部22とを一体に有する部材であればよい。この天板20は、例えば、板金部材や、形鋼材などを適宜に組み合わせ溶接して平面視略矩形枠状に形成される。
【0017】
各止着フレーム21は、断面L字状に垂設されるとともに(図7参照)、前後方向へ延設された部材であり、その垂下した部分には、前後方向へわたって所定間隔置きに止着孔21aが複数設けられている(図8参照)。該止着フレーム21の下端側は、外側(図7の左方向側)へ曲げられている。
各止着孔21aは、螺合部材12(具体的にはねじやボルト等)を挿通可能な貫通孔である。
【0018】
各止着フレーム21の内側(図7によれば右側)の側部には、マウントフレーム30上端側の補強片34が螺合部材12によって止着されるようになっている。
また、各止着フレーム11の外側(図7によれば左側)の側部には、螺合部材12と螺合可能なネジ孔を有する板状部材14が設けられる。」
f.「【0019】
また、マウントフレーム30は、底板10及び天板20間の手前側に立設される前側マウントフレーム31と、その後側に間隔を置いて立設される後側マウントフレーム32とから構成される(図2参照)。
【0020】
前側マウントフレーム31は、横幅方向に離間して立設された二本の支柱31a,31bと、これら支柱31a,31bの上端側と下端側とをそれぞれ連結する連結杆31c,31dとからなる一体の略矩形枠状に構成される。各支柱31a(又は31b)の上端側と下端側には、前後方向(図8又は図9によれば左右方向)へ延びる補強片34,35が固定されている。
【0021】
各支柱31a(又は31b)は、底板10と天板20の間にわたる長尺状の部材であり、例えば、図5(a)又は図5(b)に示す横断面形状に形成される。
図5(a)に示す支柱31a(又は31b)は、板金材料を横断面略コ字状やクランク状等の適宜形状に曲げ加工することで強度アップした態様である。
また、図5(b)に示す支柱31a(又は31b)は、図5(a)の態様に対し、上下方向へわたる横断面コ字状の補強部材31cを固定することで、一層の強度アップをはかった態様である。
なお、図5及び図6中、支柱31a前面側の貫通孔31a1は、サーバーコンピュータ等の電子機器を止着するための孔である。
また、同図5及び図6中、支柱31a側面側の貫通孔31a2は、電子機器の重量が比較的大きい場合等に、必要に応じて、前記電子機器を支持するための支持部材(図示せず)を止着するための孔である。
【0022】
また、後側マウントフレーム32は、前側マウントフレーム31と略同様に、横幅方向に離間して立設された二本の支柱32a,32bと、これら支柱32a,32bの上端側と下端側とをそれぞれ連結する連結杆32c,32dとからなる略矩形枠状に構成され、各支柱32a(又は32b)の上端側と下端側には前後方向(図8又は図9によれば左右方向)へ延びる補強片34,35が固定されている。
各支柱32a(又は32b)の断面形状は、前側マウントフレーム31の支柱31a(又は32b)と略同様の補強構造となっている。
【0023】
補強片34は、支柱31a,31b,32a,32bの各々の上端側に固定されている(図8参照)。同様に補強片35は、支柱31a,31b,32a,32bの各々の下端側に固定されている(図9参照)。
これら補強片34,35は、例えば溶接やネジ止め、リベット止め等により前記支柱31a(31b,32a,又は32b)に固定されていてもよいし、前記支柱31a(31b,32a,又は32b)を板金加工する際に一体に構成された部位としてもよい。
【0024】
上側の補強片34は、支柱31a(又は31b,32a,32b)の上端側から前後方向の両側へ延設された略翼状の部材である。
この補強片34には、複数の螺合部材12のうちの一部(図示例によれば二つ)を挿通可能な貫通孔34aと、前記複数の螺合部材12のうちの他の一部(図示例によれば一つ)のネジ部分に対し上方から嵌脱可能な切欠部34bとが前後方向(図8によれば左右方向)へ間隔を置いて設けられている。
【0025】
これら貫通孔34a,34aと切欠部34bは、天板20の止着フレーム21に設けられる多数の止着孔21aのうちの三つに対応して配設される。また、止着フレーム21の裏側の板状部材14には、前記貫通孔34a,34a及び切欠部34bに対応して三つの雌ネジ孔(図示せず)が設けられる。
前記二つの貫通孔34a,34aと切欠部34bには、それぞれ螺合部材12が挿通され、各螺合部材12の先端側が板状部材14の前記雌ネジ孔に螺合される。
【0026】
また、下側の補強片35は、支柱31a(又は31b,32a,32b)の下端側から前後方向の両側へ延設された略翼状の部材である。
この補強片35には、複数(図示例によれば三つ)の螺合部材12を挿通可能なように、複数(図示例によれば三つ)の貫通孔35aが前後方向(図9によれば左右方向)へ間隔を置いて設けられている」
g.「【0051】
また、電子機器の前後方向寸法が汎用品と異なる場合等には、前後のマウントフレーム31,32を一旦外して、これら前後のマウントフレーム31,32を、その前後位置を変えて、止着フレーム11,21に複数設けられた他の止着孔11a,21aに止着することが可能である。すなわち、前後のマウントフレーム31,32の前後方向の止着位置の変更を容易に行うことができる。」
h.「【0053】
なお、図8に示す一例では、切欠部34bを、前側マウントフレーム31又は後側マウントフレーム32の上端側の補強片34に一箇所設けたが、この切欠部34bは、当該電子機器用ラック1の耐震性や強度、施工性等に応じて適宜箇所に設ければよく、例えば、前側マウントフレーム31と後側マウントフレーム32の双方、又は何れか一方の補強片34に設けたり、下側の補強片35に設けたり等することが可能である。」

i.「




j.「




・上記e.の段落【0011】には、床面に敷設される底板10と、該底板10の上方に間隔を置くとともに底板10に対向して配置される天板20と、これら底板10と天板20との間にわたって立設されたマウントフレーム30と、底板10と天板20の間の前面側と後面側をそれぞれ覆う扉体41,42と、底板10と天板20の間の側面を覆う側板50とを具備している電子機器用ラック1、が記載されている。
・上記e.の段落【0012】、【0014】によれば、前記底板10は、横幅方向に離間するとともに前後方向へ延設され、マウントフレーム30下端側の補強片35が螺合部材12によって止着される二本の止着フレーム11と、横幅方向の端部側に位置するとともに側板50に対し係合可能な凸部15とを一体に有する部材である、ことが記載されている。
・上記e.の段落【0016】、【0018】によれば、前記天板20は、横幅方向に離間するとともに前後方向へ延設され、マウントフレーム30上端側の補強片34が螺合部材12によって止着される二本の止着フレーム21と、横幅方向の端部側に位置するとともに側板50に係合可能な凸部22とを一体に有する部材である、ことが記載されている。
・上記f.の段落【0019】には、マウントフレーム30は、底板10及び天板20間の手前側に立設される前側マウントフレーム31と、その後側に間隔を置いて立設される後側マウントフレーム32とから構成される、ことが記載されている。
・上記f.の段落【0020】、【0022】には、前記前側マウントフレーム31、及び後側マウントフレーム32は、横幅方向に離間して立設された二本の支柱31a,31b、32a,32bと、これら支柱31a,31b、32a,32bの上端側と下端側とをそれぞれ連結する連結杆31c,31d、32c,32dとからなる一体の略矩形枠状に構成される、ことが記載されている。
・上記f.の段落【0021】、【0022】には、前記各支柱31a、31b、32a,32bは、底板10と天板20の間にわたる長尺状の横断面略コ字状の部材に、一層の強度アップをはかるために、横断面コ字状の補強部材31cを固定する、ことが記載されている。
・図2、図6から、連結杆31c,31d、32c,32dは、横断面略コ字状の部材であることが読み取れる。
・上記f.の段落【0024】、【0026】には、前記補強片34は、支柱31a,31b,32a,32bの各々の上端側に固定される前後方向の両側へ延設された略翼状の部材であって、前記補強片35は支柱31a,31b,32a,32bの各々の下端側に固定される前後方向の両側へ延設された略翼状の部材である、ことが記載されている。
・上記d.の段落【0009】には、電子機器用ラック1は、前記底板10、前記天板20、前記マウントフレーム30を、それぞれ独立した一体のパーツとして扱え、現場での組立作業が容易である、ことが記載されている。

上記記載事項(特に、下線部)によれば、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が開示されていると認められる。

「床面に敷設される底板10と、該底板10の上方に間隔を置くとともに底板10に対向して配置される天板20と、これら底板10と天板20との間にわたって立設されたマウントフレーム30と、底板10と天板20の間の前面側と後面側をそれぞれ覆う扉体41,42と、底板10と天板20の間の側面を覆う側板50とを具備している電子機器用ラック1において、
前記底板10は、横幅方向に離間するとともに前後方向へ延設され、マウントフレーム30下端側の補強片35が螺合部材12によって止着される二本の止着フレーム11と、横幅方向の端部側に位置するとともに側板50に対し係合可能な凸部15とを一体に有する部材であって、
前記天板20は、横幅方向に離間するとともに前後方向へ延設され、マウントフレーム30上端側の補強片34が螺合部材12によって止着される二本の止着フレーム21と、横幅方向の端部側に位置するとともに側板50に係合可能な凸部22とを一体に有する部材であって、
マウントフレーム30は、底板10及び天板20間の手前側に立設される前側マウントフレーム31と、その後側に間隔を置いて立設される後側マウントフレーム32とから構成され、
前記前側マウントフレーム31、及び後側マウントフレーム32は、横幅方向に離間して立設された二本の支柱31a,31b、32a,32bと、これら支柱31a,31b、32a,32bの上端側と下端側とをそれぞれ連結する連結杆31c,31d、32c,32dとからなる一体の略矩形枠状に構成され、
前記各支柱31a、31b、32a,32bは、底板10と天板20の間にわたる長尺状の横断面略コ字状の部材に、一層の強度アップをはかるために、横断面コ字状の補強部材31cを固定したものであって、
前記連結杆31c,31d、32c,32dは、横断面略コ字状の部材であって、
前記補強片34は、支柱31a,31b,32a,32bの各々の上端側に固定される前後方向の両側へ延設された略翼状の部材であって、前記補強片35は支柱31a,31b,32a,32bの各々の下端側に固定される前後方向の両側へ延設された略翼状の部材であり、
前記底板10、前記天板20、前記マウントフレーム30を、それぞれ独立した一体のパーツとして扱え、現場での組立作業が容易である電子機器用ラック。」


イ.甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。

a.図1ないし図3から「一対の断面コ字状のチャネルの各々を中空状になるように側壁同士が互いに重なりあうように組み合わさせる」点が看取できる。

ウ.甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。

a.図3ないし図5から「一対の断面コ字状の中尺アングル材の各々を中空状になるように側壁同士が互いに重なりあうように組み合わさせる」点が看取できる。

エ.甲第4号証の記載事項
甲第4号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。

a.図1ないし図3及び図8ないし図9から「一対の断面コ字状の部材の各々を中空状になるように側壁同士が互いに重なりあうように組み合わさせる」点が看取できる。

オ.甲第5号証の記載事項
甲第5号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。

a.「【0006】
上述した特許文献2に記載の合成樹脂製ウェーハ用フレーム体は、金属製ウェーハ用フレーム体と比較してある程度の軽量化が図られるが、大径のウェーハ用として大型に形成される場合には所定の機械的剛性を付与するために全体の厚みが大きくなる。合成樹脂製ウェーハ用フレーム体は、厚みが大きな成形体であることから部分的に成形歪みが生じ易くなり、ウェーハを安定した状態で保持することが困難となる。
したがって、本発明は、ウェーハを確実に保護する充分な機械的剛性を保持しながら軽量化や低コスト化或いは作業性の向上を図り、大径ウェーハ用としても好適に用いることが可能なウェーハ用ホルダを提供することを目的に提案されたものである。」

b.図2ないし図3から「一対の断面コ字状のフレーム体の各々を中空状になるように側壁同士が互いに重なりあうように組み合わさせる」点が看取できる。

上記甲第2ないし5号証の記載及び図面、並びに技術常識を考慮すると、甲第2ないし5号証には、以下の周知の技術(以下、「周知技術1」という。)が開示されていると認められる。

「断面が略コ字状に形成された上側部材及び下側部材を中空状になるように側壁同士が互いに重なりあうように組み合わさせたフレームとすることで、強度を保持しつつ軽量化をすること。」

カ.甲第6号証の記載事項
甲第6号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。

a.「【0001】
【発明の技術分野】本発明は、電気的エンクロージャとフレーム、詳細には耐震サブフレームを有する電気的エンクロージャに関する。」

b.「【0011】図1、2、9で明示されているように、エンクロージャフレーム32は、一般的にコーナーフレーム部40a、40b、40c、40dを含む。更に、上フレームクロス部42a,42b,42c,42dおよび下フレームクロス部44a、44b,44c,44dが略矩形のフレーム構成を形成する。各部40,42,44はその隅のところで、これらの様々なフレーム部40,42,44を受け入れるよう構成された取付けブロック46により、相互に接続される。フレーム部40,42,44はいくつか形状を持ち得るが、普通、矩形の案内チャネルを形成し、各部の長さ方向に沿って離間する取付孔を持っている。各部40,42,44は、好ましい実施形態においては溶接が施される。取付けブロック46には、他の要素を取付けるために、ネジを立てた孔を設けてもよい。フレーム32には、フレーム32への追加支持を提供するために、フレーム当て板48を上下の矩形案内チャネルのところで持たせるようにしてもよい。」

c.「【0012】図3Aと3Bを参照すると、エンクロージャ20用耐震サブフレーム50のラックアングル材つまりサブフレーム要素54が示されている。図1、2、9に示すサブフレーム50は、エンクロージャ20の融通性と手の入れ易さを維持しつつ、フレーム32に追加の支持と補強を提供する。サブフレーム50は、各々が2つの垂直サブフレーム要素54を含む1つ以上のサブフレームアセンブリ52を有する。各長尺フレーム要素54は、矩形案内チャネルを形成する形状を持ち、一方の側から延びるフランジを含む。後述するように、他の実施形態では、追加フランジまたは延長部分を含んでもよい。サブフレーム要素54は、各要素54の種々の面に長手方向に沿い、間隔を空けた取付孔を含む。このことは、フレーム32へのサブフレーム要素54の取付けに高い融通性をもたらすとともに、サブフレーム50への種々の付属品やラックの取付けを可能にする。各垂直要素54は、図3Aに明確に示すように、帯板60を受け入れる切り欠きを持つ。各サブフレーム52の上下には、図4に示す補強材62が取付けてある。各補強材62は、チャネル型形状を成し、フレーム32の前と後の、上クロスフレーム部42と下クロスフレーム部44に取付けられる。各補強材62は、その端に当て板を、そしてその長手方向に形成される矩形チャネルとを含む。補強材62は、最上部と最下部に取付けてあり、従ってサブフレーム52の前面と後面は、エンクロージャ20内にラックや付属品を挿入したり、種々の部品に手を入れるために実質的に開口したままである。」

d.「図2




e.「図4




・上記b.の記載、上記d.の図2によれば、「コーナーフレーム部40a、40b、40c、40d」、「上フレームクロス部42a,42b,42c,42d」、「下フレームクロス部44a、44b,44c,44d」
は相互に「取付けブロック46」により接続され、さらに、三角形状の「フレーム当て板48」で「追加支持」されるものであるから、「フレーム当て板48」は筋交いの機能を有しているものと認められる。

・なお、上記c.、上記e.の記載によれば、サブフレーム52を構成する補強材62の側壁に端部には三角形状の当て板が設けられているが、該当て板が、サブフレーム52の垂直フレーム要素54に対して接続されているのか記載されておらず、該当て板は筋交いとは認められない。


キ.甲第7号証の記載事項
甲第7号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。(当審仮訳は特許異議申立人による抄訳文を参考にした。以下、同様。)

a.「[0043] The frame structure 2 comprises two vertical members 3 , four depth members 4 and two transverse members 5 , which are so positioned and interconnected that a frontal frame recess 8 and a rear frame recess 9 are formed. FIG. 1 and the larger scale partial representation of FIG. 2 make it clear that cable routing without disadvantageous threading is possible, because both the generally conventional front and rear vertical members and also the front and rear upper and lower transverse members are omitted. 」
(当審仮訳: [0043] フレーム構造2は、2つの垂直部材3と、4つの奥行き部材4と2つの横断部材5とを備え、これらの部材は、前部フレーム凹部8と後部フレーム凹部9が形成されるように位置決めされ、相互接続されている。図1と図2の拡大部分図から明らかなように、従来の一般的な前後の垂直部材及び横部材の両方が省略されているので、不都合に曲がりくねることないケーブルの経路指定が可能である。)

b.「[0057] The transverse member according to FIG. 6 is upwardly and downwardly open and in cross-section is U or C-shaped and is provided on either side of a horizontally positioned leg 45 with vertical legs 44 and bent horizontal marginal webs 42 , which are directed inwards and are terminally embraced by fixing side plates 43 . The fixing side plates 43 are constructed as bevelled 90# bends of the fixing plates 40 and contribute to increasing the supporting and carrying function.
(当審仮訳:[0057] 図6に係る横断部材は、上方又は下方に開放されており、その横断面がU字形またはC字形であり、水平に位置する脚部45の両側に垂直脚部44および屈曲水平縁部ウェブ42が設けられ、これらは内側に向けられ、側板43を固定することによって、最終的に寄り合わされている。固定側板43は、固定板40を斜め90°に折り曲げることによって構成され、サポート機能や運搬機能を向上するようになっている。

c.「



d.「



・上記a.?d.の記載によれば、「垂直部材3」に連結される「横断部材5」は、断面U字状であって、その側壁に、サポート機能を有する三角形状の「固定側板43」を有することが記載されており、「固定側板43」は「垂直部材3」をサポート支持するものであって、筋交いの機能を有しているものと認められる。

ク.甲第8号証の記載事項
甲第8号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。

a.「 As can be appreciated with particular reference to FIGS. 6A-6C, reinforcement gussets 20A, 20B each comprise 5 walls defined by 4 bends in the metal in order to increase the strength of the upright-to-base junction in a smaller size gusset than conventional L-shaped anchor brackets 18A, 18B while still providing significant enhanced strength to equipment rack 10 and allowing selected models of equipment rack 10 to meet seismic force resistant standards required by the industry.」
(当審仮訳:補助ガゼット20A、20Bはそれぞれ、従来のL字型アンカーブラケット18A、18Bよりも小さいサイズのガゼットにおける直立のベース接合部の強度を増加させるために、金属において4つの曲げによって画定される5つの壁を備えており、設備ラック10に著しく強化された強度を提供し、設備ラック10の選択されたモデルが産業界において要求される耐震基準を満たすことを可能にする。)

b.「



上記a.、b.、によれば、補助ガゼット20A、20Bは、直立のベース接合部の強度を増加させるものであって、三角形状の部材であるから、筋交いと認められる。

ケ.甲第9号証の記載事項
甲第9号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。

a.「



・上記a.によれば、土台と柱の間に、三角形状の接合補強金具が設けられており、接合補強金具は筋交いの機能を有しているものと認められる。


上記甲第6ないし9号証の記載及び図面、並びに技術常識を考慮すると、甲第6ないし9号証には、以下の周知の技術(以下、「周知技術2」という。)が開示されていると認められる。

「支柱と、土台の部材を三角形状の筋交いで連結し補強すること。」


(3)対比・判断
ア.理由1について(特許法第29条第1項第3号)
(ア)本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比すると以下のとおりである。

・甲1発明の「天板20」、「底板10」は、本件発明1の「上架」、「下架」に相当する。
また、甲1発明の「前側マウントフレーム31」の一対の「支柱31a,31b」、または「後側マウントフレーム32」の一対の「支柱32a,32b」は、「底板10と天板20との間にわたって立設され」るものであって、「底板10と天板20」を支持しているといえるから、甲1発明の「支柱31a,31b」または「支柱32a,32b」は、本件発明1の「左右に設けられる一対の支柱」に相当する。
そして、甲1発明の「電子機器用ラック」は、「支柱31a,31b」、「支柱32a,32b」、「天板20」、「底板10」を具備するものであるから、甲1発明の「ラック」に相当する。

・甲1発明の「補強片34」は、「支柱31a,31b,32a,32bの各々の上端側に固定され」、「 天板20」の「前後方向の両側へ延設された略翼状の部材で」あって、「前後方向へ延設され」た「止着フレーム21」に止着されるものであり、「支柱31a,31b,32a,32b」を中心に翼が広がって上部の「止着フレーム21」に翼が固定されるものであるから、「支柱31a,31b,32a,32b」と「天板20」の間で筋交いの機能を有しているものと認められる。よって、甲1発明の「補強片34」は、本件発明1の「前記支柱と上架」を「連結」する「筋交い部材」に相当する。
同様に、甲1発明の「補強片35」は、「支柱31a,31b,32a,32bの各々の下端側に固定され」、「底板10」の「前後方向の両側へ延設された略翼状の部材で」あって、「前後方向へ延設され」た「止着フレーム11」に止着されるものであり、「支柱31a,31b,32a,32b」を中心に翼が広がって下部の「止着フレーム11」に翼が固定されるものである。よって、甲1発明の「補強片35」は、本件発明1の「前記支柱と下架」を「連結」する「筋交い部材」に相当する。
してみると、甲1発明の「支柱31a,31b,32a,32b」の「補強片34」を「天板20の止着フレーム21」に止着させること、及び「支柱31a,31b,32a,32b」の「補強片35」を「底板10の止着フレーム11」に止着させることは、本件発明1の「前記支柱と上架、及び前記支柱と下架」は、「筋交い部材で連結され」に相当する。

・また、甲1発明の「連結杆31c,31d、32c,32d」は、「支柱31a,31b、32a,32bの上端側と下端側とをそれぞれ連結する」ものであって、「横断面略コ字状の部材」である。また、「支柱31a,31b、32a,32bの上端側と下端側」は、「天板20」及び「底板10」に止着されるものであり、「天板20」及び「底板10」に配置されると認められる。しかしながら、「連結杆31c,31d、32c,32d」は「支柱31a,31b、32a,32b」と「一体」のものであって、補強のための部材とは認められないし、「連結杆31c,31d、32c,32d」と「支柱31a,31b、32a,32b」間に筋交い部材も存在しない。
したがって、甲1発明の「連結杆31c,31d、32c,32d」と、本件発明1の「左右の前記支柱に掛け渡されるようにして前記上架及び下架に配置される補強フレーム」、及び「前記補強フレームは、断面が略コ字状に形成された上側部材及び下側部材を中空状になるように側壁部同士が互いに重なり合うようにして組み合わせ、前記補強フレームと左右の支柱を連結する筋交い部材は、前記下側部材と一体的に形成され、対向配置される両方の側壁端部に前記支柱に対して斜め方向に傾斜する傾斜辺を有する略三角形状の傾斜部を有する」とは、「左右の前記支柱に掛け渡されるようにして前記上架及び下架に配置される部材」及び「前記部材は、断面が略コ字状に形成された部材である」点では共通する。

そうすると、両者は、

<一致点>
「左右に設けられる一対の支柱で上架と下架が支持されたラックにおいて、
左右の前記支柱に掛け渡されるようにして前記上架及び下架に配置される部材を備え、
前記支柱と上架、及び前記支柱と下架は、筋交い部材で連結されており、
前記部材は、断面が略コ字状に形成された部材であるラック。」

である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点1>
上架及び下架に配置される「部材」が、本件発明1では、「補強フレーム」であって、「補強フレームと左右の支柱は、筋交い部材で連結されて」おり、さらに、「前記補強フレームは、断面が略コ字状に形成された上側部材及び下側部材を中空状になるように側壁部同士が互いに重なり合うようにして組み合わせ、前記補強フレームと左右の支柱を連結する筋交い部材は、前記下側部材と一体的に形成され、対向配置される両方の側壁端部に前記支柱に対して斜め方向に傾斜する傾斜辺を有する略三角形状の傾斜部を有する」のに対して、
甲1発明では、その旨の特定はされていない点。

このように、本件発明1は、甲1発明と相違点1において相違するものであることから、本件発明1が、甲第1号証に記載された発明ではない。

(イ)本件発明2ないし3について
本件発明1を引用する本件発明2ないし3は、本件発明1にさらに他の発明特定事項を付加したものであるから、本件発明1と同じ理由により、甲第1号証に記載された発明ではない。

(ウ)本件発明4について
本件発明4は、本件発明1を「補強フレーム」の観点から記載したものであり、本件発明4と甲1発明は、上記相違点1で相違するから、本件発明1と同じ理由により、甲第1号証に記載された発明ではない。


イ.理由2(特許法第29条2項)について
(ア)本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比すると、上記「ア.理由1(特許法第29条1項3号)について」の「(ア)本件発明1について」で記したように、上記相違点1で相違する。

上記相違点1について検討する。
甲第2ないし5号証にも記載されるように、断面が略コ字状に形成された上側部材及び下側部材を中空状になるように側壁同士が互いに重なりあうように組み合わさせたフレームとすることで、強度を保持しつつ軽量化をすることは、周知の技術(「周知技術1」)である。
さらに、甲第6ないし9号証にも記載されるように、支柱と、土台の部材を三角形状の筋交いで連結し補強することも周知の技術(「周知技術2」)である。
しかしながら、甲1発明においては、「連結杆31c,31d、32c,32d」は、「支柱31a」と「支柱31b」、および「支柱32a」と「支柱32b」の間を一体に連結することで一体の「マウントフレーム30」を構成し、そのことによって「独立した一体のパーツとして扱え、現場での組立作業が容易である」ものであるから、「支柱31a,31b,32a,32b」と「連結杆31c,31d、32c,32d」を別体とする理由がなく、また、一体のものを他の部材で連結する必要性も認められない。


したがって、本件発明1は、当業者が甲1発明および甲第2号証ないし甲第9号証に例示する周知技術1、周知技術2に基づいて容易に発明することができたものではない。

(イ)本件発明2ないし3について
本件発明1を引用する本件発明2ないし3は、本件発明1にさらに他の発明特定事項を付加したものであるから、本件発明1と同じ理由により、当業者が甲1発明および甲第2号証ないし甲第9号証に例示する周知技術1、周知技術2に基づいて容易に発明することができたものではない。

(ウ)本件発明4について
本件発明4は、本件発明1を「補強フレーム」の観点から記載したものであり、本件発明4と甲1発明は、上記相違点1で相違するから、本件発明1と同じ理由により、当業者が甲1発明および甲第2号証ないし甲第9号証に例示する周知技術1、周知技術2に基づいて容易に発明することができたものではない。


第4.むすび

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した異議申立ての理由によっては、本件発明1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に本件請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に設けられる一対の支柱で上架と下架が支持されたラックにおいて、
左右の前記支柱に掛け渡されるようにして前記上架及び下架に配置される補強フレームを備え、
前記支柱と上架、前記支柱と下架、及び前記補強フレームと左右の支柱は、筋交い部材で連結されており、
前記補強フレームは、断面が略コ字状に形成された上側部材及び下側部材を中空状になるように側壁部同士が互いに重なり合うようにして組み合わせ、前記補強フレームと左右の支柱を連結する筋交い部材は、前記下側部材と一体的に形成され、対向配置される両方の側壁端部に前記支柱に対して斜め方向に傾斜する傾斜辺を有する略三角形状の傾斜部を有することを特徴とするラック。
【請求項2】
前記筋交い部材は、前記支柱の前後方向及び前記ラックの内側方向の三方向に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のラック。
【請求項3】
前記上架、下架、および支柱は、断面が略コ字状に形成された部材、またはその部材の組み合わせで構成されており、前記上架及び下架には、前記補強フレームを取り付けるための空間部を有するように枠組みされて形成されていることを特徴とする請求項1、又は2に記載のラック。
【請求項4】
左右に設けられる一対の支柱で上架と下架が支持されたラックに用いられる補強フレームであって、
断面が略コ字状に形成された上側部材及び下側部材を中空状になるように側壁部同士が互いに重なり合うようにして組み合わせ、左右の前記支柱に掛け渡されるようにして前記上架及び下架に配置され、
前記下側部材には、対向配置される両方の側壁端部に前記支柱に対して斜め方向に傾斜する傾斜辺を有する略三角形状の傾斜部を有し、前記補強フレームと左右の支柱とを連結する筋交い部材が一体的に形成されていることを特徴とする補強フレーム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-07-12 
出願番号 特願2012-261073(P2012-261073)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (H05K)
P 1 651・ 537- YAA (H05K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 三森 雄介  
特許庁審判長 國分 直樹
特許庁審判官 山澤 宏
井上 信一
登録日 2017-01-27 
登録番号 特許第6082578号(P6082578)
権利者 センターピア株式会社
発明の名称 ラック、補強フレーム  
代理人 石橋 良規  
代理人 特許業務法人インテクト国際特許事務所  
代理人 特許業務法人 インテクト国際特許事務所  
代理人 石橋 良規  

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