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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01N
審判 全部申し立て 2項進歩性  G01N
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G01N
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  G01N
審判 全部申し立て 特174条1項  G01N
管理番号 1343897
異議申立番号 異議2017-701075  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-10-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-11-15 
確定日 2018-08-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6128153号発明「組織染色方法および生体物質検出方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6128153号の明細書及び特許請求の範囲を、平成30年5月24日付けの手続補正書により補正された訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、3、〔4、6〕について訂正することを認める。 特許第6128153号の請求項1ないし2、4ないし6に係る特許を維持する。 特許第6128153号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6128153号の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、2011年(平成23年)3月15日(優先権主張 平成22年8月31日2件、平成22年8月30日)を国際出願日とする特願2012-531709号の一部を平成27年3月23日に新たな特許出願としたものであって、平成29年4月21日にその特許権の設定登録がされ、同年5月17日に特許掲載公報が発行され、その後、その請求項1ないし6に係る特許について、同年11月15日に特許異議申立人 金山 愼一 (以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがなされ、平成30年1月29日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年4月2日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)があり、訂正請求書について同年4月20日付けで手続補正が指令され、その指定期間内である同年5月24日に手続補正書が提出され、本件訂正請求に対して申立人から同年6月27日付けで意見書が提出されたものである。


第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容

平成30年5月24日付け手続補正書により補正された本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の具体的内容は、以下のとおりである。

(1)請求項1ないし3を一群の請求項とする訂正

ア 請求項1に係る訂正

(訂正事項1-1)
特許請求の範囲の請求項1に、「蛍光物質を複数集積した樹脂粒子に生体物質認識部位が結合されたものを染色試薬として用いて組織を染色する組織染色方法」とあるのを、「生体物質認識部位が結合された、蛍光物質を複数集積した樹脂粒子を、染色試薬として用いて組織切片を染色した情報から、前記樹脂粒子に基づく輝点数及び/又は発光輝度を計測するために行う組織染色方法」に訂正する(下線は訂正箇所を表す。訂正事項において以下同様。)。

(訂正事項1-2)
特許請求の範囲の請求項1に、「前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子が、前記蛍光物質がナノ粒子内部に分散された樹脂粒子又は前記蛍光物質がナノ粒子外部に集積した樹脂粒子であり」とあるのを、「前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子が、前記蛍光物質が前記樹脂粒子内部に分散された樹脂粒子又は前記蛍光物質が前記樹脂粒子外部に集積した樹脂粒子であり、当該樹脂粒子の平均粒子径が30nm?800nmであり」に訂正する。

(訂正事項1-3)
特許請求の範囲の請求項1に、「、
前記蛍光物質が、有機蛍光色素である組織染色方法。」とあるのを、「、前記蛍光物質が、有機蛍光色素であって、
目的とする生体物質と前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子とを、反応させたのち、未反応の前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子を除去する工程を有する、組織染色方法。」に訂正する。

なお、請求項1の訂正に伴い、請求項1を引用する請求項2も同様に訂正される。

イ 請求項2に係る訂正

(訂正事項2)
特許請求の範囲の請求項2に、「ナノ粒子内部」とあるのを、「前記樹脂粒子内部」に訂正する。

ウ 請求項3に係る訂正

(訂正事項3)
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

エ 明細書に係る訂正

(訂正事項4)
明細書の段落【0011】の記載、
「 上記課題を解決するために、
本発明の第1の態様によれば、
蛍光物質を複数集積した樹脂粒子に生体物質認識部位が結合されたものを染色試薬として用いて組織を染色する組織染色方法において、前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子が、前記蛍光物質がナノ粒子内部に分散された樹脂粒子又は前記蛍光物質がナノ粒子外部に集積した樹脂粒子であり、
前記蛍光物質が、有機蛍光色素である組織染色方法が提供される。」を、
「 上記課題を解決するために、
本発明の第1の態様によれば、
生体物質認識部位が結合された、蛍光物質を複数集積した樹脂粒子を、染色試薬として用いて組織切片を染色した情報から、前記樹脂粒子に基づく輝点数及び/又は発光輝度を計測するために行う組織染色方法において、
前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子が、前記蛍光物質が前記樹脂粒子内部に分散された樹脂粒子又は前記蛍光物質が前記樹脂粒子外部に集積した樹脂粒子であり、当該樹脂粒子の平均粒子径が30nm?800nmであり、前記蛍光物質が、有機蛍光色素であって、
目的とする生体物質と前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子とを、反応させたのち、未反応の前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子を除去する工程を有する、組織染色方法が提供される。」に訂正する。

(2)請求項4及び6を一群の請求項とする訂正

ア 請求項4に係る訂正

(訂正事項5-1)
特許請求の範囲の請求項4に、「前記第1の樹脂粒子が、前記第1の蛍光物質がナノ粒子内部に分散された樹脂粒子又は前記第1の蛍光物質がナノ粒子外部に集積した樹脂粒子であり、」とあるのを、「前記第1の樹脂粒子が、前記第1の蛍光物質が前記第1の樹脂粒子内部に分散された樹脂粒子又は前記第1の蛍光物質が前記第1の樹脂粒子外部に集積した樹脂粒子であり、」に訂正する。

(訂正事項5-2)
特許請求の範囲の請求項4に、「前記第2の樹脂粒子が、前記第2の蛍光物質がナノ粒子内部に分散された樹脂粒子又は前記第2の蛍光物質がナノ粒子外部に集積した樹脂粒子であり、」とあるのを、「前記第2の樹脂粒子が、前記第2の蛍光物質が前記第2の樹脂粒子内部に分散された樹脂粒子又は前記第2の蛍光物質が前記第2の樹脂粒子外部に集積した樹脂粒子であり、」に訂正する。

(訂正事項5-3)
特許請求の範囲の請求項4において、「前記第1の蛍光物質及び前記第2の蛍光物質が、有機蛍光色素である」との記載の前に、「前記第1及び第2の樹脂粒子の平均粒子径がそれぞれ30nm?800nmであり、」との記載を挿入する。

なお、請求項4の訂正に伴い、請求項4を引用する請求項6も同様に訂正される。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)請求項1に係る訂正について

ア 訂正の目的の適否

(ア)訂正事項1-1について
訂正事項1-1は、「蛍光物質を複数集積した樹脂粒子に生体物質認識部位が結合されたものを染色試薬として用いて組織を染色する組織染色方法」が、「組織切片を染色した情報から、前記樹脂粒子に基づく輝点数及び/又は発光輝度を計測するために行う」ものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)訂正事項1-2について
本件特許についての出願の願書に添付した明細書の段落【0026】の「〔蛍光物質を複数集積した粒子〕
本発明において蛍光物質を複数集積した粒子とは、蛍光物質がナノ粒子内部に分散されたもの(蛍光物質を複数内包したナノ粒子(蛍光物質内包ナノ粒子))、粒子外部に集積したもの、粒子の内部、外部によらず集積したものをいい、蛍光物質とナノ粒子自体とが化学的に結合していても、していなくてもよい。」との記載によれば、訂正前の記載は、「樹脂粒子」が「ナノ粒子」、すなわち、その大きさがナノオーダーであることを特定しようとしたものであると認められるところ、訂正事項1-2は、その点を明瞭にするととともに、「ナノ」を「平均粒子径が30nm?800nmであ」ると減縮したものである。
よって、訂正事項1-2は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明及び同項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(ウ)訂正事項1-3について
訂正事項1-3は、「組織染色方法」が、「目的とする生体物質と前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子とを、反応させたのち、未反応の前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子を除去する工程を有する」ものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無

(ア)訂正事項1-1について
訂正事項1-1は、本件特許についての出願の願書に添付した明細書の「【0054】
[手順3:蛍光物質内包粒子を用いた組織染色]
手順2で作製した抗ヒトER抗体結合・蛍光物質内包シリカナノ粒子を用いてヒト乳房組織の免疫染色を行った。染色切片は、コスモバイオ社製の組織アレイスライド(CB-A712)を用いた。組織アレイスライドを脱パラフィン処理した後、組織アレイスライドを浸漬する液体をキシレン、エタノール、水の順に置換して洗浄し、10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)中で15分間オートクレーブ処理することで、抗原の賦活化処理を行った。抗原の賦活化処理後の組織アレイスライドは、PBS緩衝液を用いて洗浄後、湿潤箱中で1時間1%BSA含有PBS緩衝液を用いてブロッキング処理を行った。
【0055】
ブロッキング処理後、1%BSA含有PBS緩衝液で0.05nMに希釈した各抗ヒトER抗体結合・蛍光物質内包シリカナノ粒子を組織切片と3時間反応させた。抗ヒトER抗体結合・蛍光物質内包シリカナノ粒子と反応させた後、組織アレイスライドをPBS緩衝液で洗浄し、Merck Chemicals社製Aquatexを用いて封入した。
【0056】
[手順4:蛍光物質内包粒子を用いて染色した組織の輝点計測]
手順3で染色した組織切片についてオリンパス社製DSU共焦点顕微鏡を用いて画像を取得し、ジーオングストローム社製の輝点計測ソフトウェア、G-countを用いて輝点の計測を行った。
Cy5の観察は、励起フィルター(640/30nmのバンドパスフィルター)、ビームスプリッター(660nm)、蛍光フィルター(690/50nmのバンドパスフィルター)のフィルターセットを用いた。
テトラメチルローダミンの観察は、励起フィルター(550/25nmのバンドパスフィルター)、ビームスプリッター(570nm)、蛍光フィルター(605/70nmのバンドパスフィルター)のフィルターセットを用いた。
FITCの観察は、励起フィルター(470/40nmのバンドパスフィルター)、ビームスプリッター(495nm)、蛍光フィルター(525/50nmのバンドパスフィルター)のフィルターセットを用いた。
組織アレイスライド中の予めDAB染色で染色濃度が異なることが予測された8スポットについて、各30細胞の輝点の数を計測し、1細胞当たりの輝点の数(平均値)を求めた。また、同様に、8スポットについて、各30細胞の発光輝度を計測し、1細胞当たりの発光輝度(平均値)を求めた。」等の記載に基づくものであるから、本件特許についての出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項1-1は、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

(イ)訂正事項1-2について
訂正事項1-2は、特許明細書等の段落【0026】の「〔蛍光物質を複数集積した粒子〕
本発明において蛍光物質を複数集積した粒子とは、蛍光物質がナノ粒子内部に分散されたもの(蛍光物質を複数内包したナノ粒子(蛍光物質内包ナノ粒子))、粒子外部に集積したもの、粒子の内部、外部によらず集積したものをいい、蛍光物質とナノ粒子自体とが化学的に結合していても、していなくてもよい。
ナノ粒子を構成する素材は特に限定されるものではなく、ポリスチレン、ポリ乳酸、シリカ等を挙げることができる。」、段落【0032】の「本発明で用いられる蛍光物質を複数集積した粒子の平均粒径は特に限定されないが、30?800nm程度のものを用いることができる。平均粒径が30nm未満の場合には、集積粒子に含まれる蛍光物質が少なく、目的とする生体物質の定量評価が困難となり、800nmを超える場合には、病理組織での生体物質との結合が困難となるためである。」との記載に基づくものであるから、特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項1-2は、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

(ウ)訂正事項1-3について
訂正事項1-3は、特許明細書等の段落【0044】の「次いで、PBSを入れた容器に、染色後の切片を浸漬させ、未反応蛍光物質集積ナノ粒子の除去を行う。」との記載に基づくものであるから、特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項1-3は、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否

上記ア及びイの検討を踏まえれば、訂正事項1-1ないし1-3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(2)請求項2に係る訂正について

訂正事項2は、蛍光物質が内部に分散された粒子が生体物質認識部位が結合された「樹脂粒子」そのものであることを明瞭にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、訂正事項1-2と同様に特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合し、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

また、請求項2は、請求項1を引用していることから実質的に請求項1に係る訂正と同様に訂正されるが、当該訂正は、上記(1)で検討したとおり訂正の要件を満たすものである。

(3)請求項3に係る訂正について

訂正事項3は、請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合し、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(4)明細書に係る訂正について

訂正事項4は、訂正前の段落【0011】の記載が訂正前の請求項1の記載に対応したものであったのを、訂正後の請求項1の記載に整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、訂正事項1-1ないし1-3と同様に特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合し、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(5)請求項4に係る訂正について

ア 訂正の目的の適否

特許明細書等の段落【0026】の「〔蛍光物質を複数集積した粒子〕
本発明において蛍光物質を複数集積した粒子とは、蛍光物質がナノ粒子内部に分散されたもの(蛍光物質を複数内包したナノ粒子(蛍光物質内包ナノ粒子))、粒子外部に集積したもの、粒子の内部、外部によらず集積したものをいい、蛍光物質とナノ粒子自体とが化学的に結合していても、していなくてもよい。」との記載によれば、訂正前の記載は、「第1の樹脂粒子」及び「第2の樹脂粒子」がいずれも「ナノ粒子」、すなわち、その大きさがナノオーダーであることを特定しようとしたものであると認められるところ、訂正事項5-1ないし5-3は、その点を明瞭にするととともに、「ナノ」を第1及び第2の樹脂粒子について「平均粒子径がそれぞれ30nm?800nmであ」ると減縮したものである。
よって、訂正事項5-1ないし5-3は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明及び同項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無

訂正事項5-1及び5-2は、特許明細書等の段落【0026】の記載に基づくものであり、訂正事項5-3は、特許明細書等の段落【0032】の記載に基づくものであるから、いずれも特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項5-1ないし5-3は、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否

上記ア及びイの検討を踏まえれば、訂正事項5-1ないし5-3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(6)請求項6に係る訂正について

請求項6は、請求項4を引用していることから実質的に請求項4に係る訂正と同様に訂正されるが、当該訂正は、上記(5)で検討したとおり訂正の要件を満たすものである。

3 一群の請求項について

(1)訂正前の請求項1ないし請求項3は、請求項2及び請求項3が上記訂正事項1-1ないし1-3の対象となる請求項1の記載をそれぞれ直接又は間接的に引用しているものであるから、一群の請求項であり、上記訂正事項1-1ないし訂正事項3は、この一群の請求項について訂正を請求するものと認められる。

(2)訂正前の請求項4及び請求項6は、請求項6が上記訂正事項5-1ないし5-3の対象となる請求項4の記載を直接引用しているものであるから、一群の請求項であり、上記訂正事項5-1ないし5-3は、この一群の請求項について訂正を請求するものと認められる。

(3)訂正事項4は、願書に添付した明細書についての訂正であって、段落【0011】の記載を訂正後の請求項1の記載に整合させるものであるから、請求項1を含む一群の請求項である、請求項1ないし請求項3からなる一群の請求項について行うものと認められる。

4 むすび

以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-3〕、〔4、6〕について訂正を認める。

訂正後の請求項3に係る訂正事項3は、請求項3を削除するものであって、その訂正は認められるものである。そして、特許権者から、訂正後の請求項3について訂正が認められるときは、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位として扱われることの求めがあったことから、訂正後の請求項〔1-3〕、〔4、6〕について請求項〔1、2〕、3、〔4、6〕を訂正単位として訂正することを認める。


第3 本件発明

上記第2で述べたように、本件訂正は認められるので、本件の請求項1ないし6に係る発明(以下それぞれ「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明6」という。)は、平成30年4月2日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

【請求項1】
生体物質認識部位が結合された、蛍光物質を複数集積した樹脂粒子を、染色試薬として用いて組織切片を染色した情報から、前記樹脂粒子に基づく輝点数及び/又は発光輝度を計測するために行う組織染色方法において、
前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子が、前記蛍光物質が前記樹脂粒子内部に分散された樹脂粒子又は前記蛍光物質が前記樹脂粒子外部に集積した樹脂粒子であり、当該樹脂粒子の平均粒子径が30nm?800nmであり、前記蛍光物質が、有機蛍光色素であって、
目的とする生体物質と前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子とを、反応させたのち、未反応の前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子を除去する工程を有する、組織染色方法。

【請求項2】
請求項1に記載の組織染色方法において、
前記蛍光物質が前記樹脂粒子内部に分散された樹脂粒子は、前記蛍光物質を複数内包した樹脂粒子である組織染色方法。

【請求項3】
(削除)

【請求項4】
病理切片から生体物質を特異的に検出する生体物質検出方法において、
染色試薬を用いて前記病理切片を染色する工程と、
染色後の前記病理切片から前記生体物質を検出する工程とを、有しており、
前記病理切片を染色する工程では、前記染色試薬として、第1の生体物質認識部位が結
合し、かつ、第1の蛍光物質を複数集積した第1の樹脂粒子と、前記第1の生体物質認識部位とは異なる第2の生体物質認識部位が結合し、かつ、前記第1の蛍光物質とは異なる蛍光波長を有する第2の蛍光物質を複数集積した第2の樹脂粒子とを、用い、
前記第1の樹脂粒子が、前記第1の蛍光物質が前記第1の樹脂粒子内部に分散された樹脂粒子又は前記第1の蛍光物質が前記第1の樹脂粒子外部に集積した樹脂粒子であり、
前記第2の樹脂粒子が、前記第2の蛍光物質が前記第2の樹脂粒子内部に分散された樹脂粒子又は前記第2の蛍光物質が前記第2の樹脂粒子外部に集積した樹脂粒子であり、
前記第1及び第2の樹脂粒子の平均粒子径がそれぞれ30nm?800nmであり、前記第1の蛍光物質及び前記第2の蛍光物質が、有機蛍光色素であることを特徴とする生体物質検出方法。

【請求項5】
病理切片から生体物質を特異的に検出する生体物質検出方法において、
染色試薬を用いて前記病理切片を染色する工程と、
染色後の前記病理切片から前記生体物質を検出する工程とを、有しており、
前記病理切片を染色する工程では、前記染色試薬として、第1の生体物質認識部位が結合し、かつ、有機蛍光色素である第1の蛍光物質を複数集積した第1の粒子と、前記第1の生体物質認識部位とは異なる第2の生体物質認識部位が結合し、かつ、前記第1の蛍光物質とは異なる蛍光波長を有する有機蛍光色素である第2の蛍光物質を複数集積した第2の粒子とを、用い、
前記生体物質を検出する工程では、
前記第1の粒子及び前記第2の粒子における1粒子あたりの輝度と、
輝点数の計測に基づいて求められる輝度分布のピーク値と、から、
前記第1の粒子及び前記第2の粒子の数を求めることを特徴とする生体物質検出方法。

【請求項6】
請求項4または5に記載の生体物質検出方法において、
前記第1の生体物質認識部位が抗ヒトER抗体であり、
前記第2の生体物質認識部位が抗HER2抗体であることを特徴とする生体物質検出方法。


第4 取消理由についての判断

1 取消理由の概要

訂正前の請求項1ないし6に係る特許に対して平成30年1月29日付けで特許権者に通知した取消理由は、要旨次のとおりである。

甲第1号証:国際公開第2007/097318号(以下「甲1」という。)

(1)取消理由1(特許法第29条第1項第3号に係る取消理由)

請求項1ないし3に係る発明は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。よって、その特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)取消理由2(特許法第29条第2項に係る取消理由)

請求項1ないし3に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。よって、その特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(3)取消理由3(特許法第36条第6項第2号に係る取消理由)

請求項1ないし6の記載において、「樹脂粒子」及び「ナノ粒子」の記載があるが、両者の関係が不明瞭であり、発明を明確に把握することができない。
すなわち、「樹脂粒子」が「ナノ粒子」であることを意味するのか、「樹脂粒子」が「ナノ粒子」を備えている(例えば、「樹脂粒子」に「ナノ粒子」が結合している、「樹脂粒子」が「ナノ粒子」を内包している、など。)ことを意味するのか、あるいは、その他の関係を意味するのかが不明瞭である。
よって、本件発明1ないし6は明確でない。
したがって、本件の請求項1ないし6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

2 取消理由で採用した甲号証の記載事項

(1)本件特許に係る出願の優先権主張日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である甲1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付加した。)。

(甲1-ア)「[0001] 本発明は、消化器癌の内視鏡による早期発見/治療のための診断用マーカーに関するものである。」

(甲1-イ)「[0003] ・・・癌細胞或いは癌組織を特異的に染色する診断用マーカーが試みられており、例えば特許文献1に記載されている。
しかし、この診断用マーカーは、癌細胞や癌組織に特異的に結合する抗体を蛍光化合物と結合(あるいは蛍光性官能基を抗体に導入)したものであり、確かに癌組織あるいはその周辺の粘膜組織を染色することができるが、癌組織以外の正常組織上にもある程度結合してしまい、また抗体当たりの蛍光化合物量が少なく、従って癌組織と正常組織のコントラストが低く診断精度の高いものではなかった。」

(甲1-ウ)「[0005] 従って、本発明の目的は、癌組織と正常組織のコントラストを高くすることが可能で、消化器癌の内視鏡による早期発見/治療に有益な診断用マーカー、及びその製造方法を提供することにある。
課題を解決するための手段
[0006] 本発明は、粒子径1nm?100μmの粒子であって、その粒子の表面に、消化器癌粘膜上の特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位及び消化器粘膜に対する結合性の低い部位を有し、且つ上記粒子中に識別性物質を有する、当該粒子を含有することを特徴とする、診断用マーカーを提供することにより、上記目的を達成したものである。」

(甲1-エ)「[0011] まず、本発明の診断用マーカーを好ましい実施態様について説明する。
本発明に用いられる粒子は、粒子径1nm?100μmの粒子であって、その粒子の表面に、消化器癌粘膜上の特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位及び消化器粘膜に対する結合性の低い部位を有し、且つ該粒子中に識別性物質を有するものであれば特に限定されるものではなく、ベースとなる粒子としても特に限定されるものではなく、シリカ等の無機粒子でも、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル等の有機ポリマーでもよいが、好ましくは水中や生理食塩水中での分散安定性の観点からは有機ポリマーが適している。」

(甲1-オ)「[0012] 上記粒子は、その粒子径が1nm?100μmの粒子であることが必要であり、好ましくは10nm?100μm、より好ましくは50nm?100μm、最も好ましくは100nm?10μmの粒子であることがよい。粒子径が小さすぎても大きすぎても癌組織と正常組織のコントラストを高くすることができない。」

(甲1-カ)「[0013] 本発明の診断用マーカーに含有される粒子は、その粒子の表面に、消化器癌粘膜上の特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位を有するものである。
この消化器癌粘膜上の特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位としては、特に限定されるものではないが、好ましくは抗体及び/又はレクチンを例示することができ、好ましくはレクチンを例示することができる。
[0014] 例えば大腸癌を例にとると、大腸癌が発生した部位には、大腸粘膜細胞の癌化によって、正常な粘膜表面とは異なる糖鎖構造を呈す事が知られている。中でもガラクトシルβ1-3-N-アセチルガラクトサミン残基(以下、TF抗原という場合がある。)が良く知られている。
このTF抗原に対する特異的な結合性の高い物質としてはレクチンが知られており、例えば、Arachis hypogaea(ピーナッツレクチン。以下、PNAと略記する場合がある。)、又はAgaricus bisporus(マッシュルームレクチン。以下、ABAと略記する場合がある。)、又はBauhinia purpurea(以下、BPAと略記する場合がある。)などを例示することができ、これらの物質を粒子の表面に存在させることにより、消化器癌粘膜上の特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位とすることができる。
[0015] TF抗原は大腸癌以外の消化器癌においても発生するので、これらのレクチンは同様に消化器癌全般を対象とする診断用マーカーとする場合に利用することができるが、特に大腸癌には顕著であるので、大腸癌を対象とする診断用マーカーの場合に特にこれらのレクチンは好ましい。
[0016] そのほか、消化器癌においては、他にも細胞の癌化の結果としてN-アセチルノイラミン酸や、N-アセチルガラクトサミンがα2,6結合したもの(シアリルTn)等も存在することから、これらと特異的に結合性の高いレクチンを選択する事も可能である。
また、レクチン以外の、消化器癌細胞認識性分子として、抗体等、例えば市販されているanti-Thomsen Friedenreich Antigen, mouse monoclonal, clone A78-G/A7等を選択することも可能である。」

(甲1-キ)「[0018] また、本発明の診断用マーカーに含有される粒子において、その粒子の表面に有する消化器粘膜に対する結合性の低い部位としては、特に限定されるものではないが、ノニオン性で且つ水和力が高いものがよく、例えば、N-ビニルアセトアミドを構成単位とする重合鎖やポリエチレングリコール鎖などが、消化器粘膜に対する結合性の低い部位として好ましい。
・・・
[0047]〔マクロモノマーAの製造〕
N-ビニルアセトアミド50g、2-メルカプトエタノール18.4g及びN,N-アゾビスイソブチロニトリル0.96gをトルエン250mLに加えて、窒素バブリングしながら60℃で6時間攪拌還流させた。沈殿物をエタノールに溶解させて、アセトンへ再沈殿させることで生成物24gを回収した。生成物であるN-ビニルアセトアミドポリマーをサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で分析した結果、その分子量はMw/Mn=14,000/5,000であった。前記式(4)のnに相当する数としては約60であった。
得られたN-ビニルアセトアミドポリマー20gをDMF100mLに溶解させて、NaH(オイルディスパージョン)0.26g及びテトラブチルホスホニウムブロマイド0.34g加えて室温で3時間攪拌した後、4?ビニルベンジルクロライド2.6gを添加して室温で24時間攪拌した。反応溶液を水/メタノール=1/1混合溶媒へ再沈殿させることで生成物15gを回収した。生成物であるビニルベンジル末端N-ビニルアセトアミドポリマーを ^(1)H-NMRで分析した結果、ビニルベンジル基のプロトン由来のピークを確認した。これをマクロモノマーAとする。
・・・
[0049]〔マクロモノマーCの製造〕
N-ビニルアセトアミド50g、2-メルカプトエタノール23.0g及びN,N-アゾビスイソブチロニトリル0.96gをエタノール250mLに加えて、窒素バブリングしながら60℃で6時間攪拌還流させた。反応溶液にエタノール50mLを加えて、アセトン中へ再沈殿させることで生成物16.1gを回収した。生成物であるN-ビニルアセトアミドポリマーをサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で分析した結果、その分子量はMw/Mn=9,500/4,000であった。前記式(4)のnに相当する数としては約50であった。
得られたN-ビニルアセトアミドポリマー20gをDMF100mLに溶解させて、NaH(オイルディスパージョン)0.26g及びテトラブチルホスホニウムブロマイド0.34gを加えて室温で3時間攪拌した後、4?ビニルベンジルクロライド2.6gを添加して室温で24時間攪拌した。反応溶液を水/メタノール=1/1混合溶媒へ再沈殿させることで生成物15gを回収した。生成物であるビニルベンジル末端N-ビニルアセトアミドポリマーを ^(1)H-NMRで分析した結果、ビニルベンジル基のプロトン由来のピークを確認した。これをマクロモノマーCとする。」

(甲1-ク)「[0025] 本発明の診断用マーカーにおいて、粒子中に有する識別性物質は、特に限定されるものではなく、内視鏡等による観察において、裸眼で認識可能か、或いは装置、例えば分光光度計又は蛍光光度計等を用いて検出できるかの何れかによって、その存在が識別可能なものであれば良いが、好ましくは蛍光発光性物質が良い。
このような蛍光発光性物質としては、例えば、フルオレセイン類、ローダミン類、クマリン類、ダンシル類、NBD型色素、フィコビリプロテイン、BODIPY誘導体等を例示することができ、またこれらの蛍光発光性物質を疎水性の高い物質(例えばコレステロールなど)と結合させた誘導体も使用することができる。
これらの中でも感度や用いる光源の観点からフルオレセイン類の蛍光発光性物質及びその誘導体(例えばコレステロールをフルオレセイン類物質と結合させた、ラベル化コレステロールなど)や、発光強度が強く水溶性の低いクマリン類(例えばクマリン6など)が最も好ましい。
[0026] 蛍光発光性物質の上記粒子への導入方法についても特に限定されず、識別に必要な感度を保ち、水性環境に溶出が起こらなければ良い。例えば、粒子の合成を行う過程で合成反応系内に導入することにより粒子を構成する分子間に挟持させても良い。このような蛍光発光性物質として好ましい具体例としては、クマリン6(Coumarin 6, Sigma-Aldrich社製)を例示することができる。
また、粒子を合成した後に蛍光発光性物質を粒子内に吸収させるなどして導入しても良い。このような蛍光発光性物質として好ましい具体例としては、fluorecein-5-carbonyl azide, diacetate(F6218,Molecular Probe社製)を、疎水性の高いコレステロールと結合させたラベル化コレステロール(フルオレセイン化コレステロールとも言う)を例示することができる。このようなラベル化コレステロールはポリマー製の粒子を合成した後に、蛍光発光性物質をその粒子の内部に容易に吸収させて、粒子内に蛍光発光性物質を含有させることができる点からも好ましいものである。」

(甲1-ケ)「[0051]〔実施例1〕
上記で得られたマクロモノマーA1.0g、スチレン1.0g及びN,N-アゾビスイソブチロニトリル15mgを、イオン交換水5mLとエタノール10mLの混合液に溶解させ、窒素バブリングを30分間行った。次いで、封をして、これを60℃の湯浴中で24時間震蕩することで微粒子を生成させた。
遠心分離によって微粒子を分離した後、凍結乾燥させて生成物としての微粒子を得た。微粒子の平均粒子径は400nm(動的光散乱法にて測定)であった。
得られた微粒子100mgに対して上記で得られたフルオレセイン化コレステロールを5mg加え、これをエタノール5mLに分散させた後に、攪拌しながらイオン交換水を10倍容量加えた。これを遠心分離して微粒子を取り出し、イオン交換水へ再分散を3回繰り返し、これを凍結乾燥することでフルオレセイン化コレステロールを識別性物質として含有する微粒子(ラベル化微粒子)を得た。
得られたラベル化微粒子10mgを、ピーナッツレクチン1mgをリン酸緩衝食塩水(商品名:Dulbecco’s Phosphate Buffered Saline D8537、シグマアルドリッチジャパン社製。以下PBSと略記する。)1mLに溶解した溶液に加えて攪拌してラベル化微粒子を分散させた。これを4℃で24時間震蕩させることでラベル化微粒子の表面にピーナッツレクチンを吸着させた。その後、遠心分離とPBSへの再分散を3回繰り返す事で未吸着のピーナッツレクチンを除去した。最後にリン酸緩衝食塩水(Ca及びMg含有)(商品名:Dulbecco’s Phosphate Buffered Saline D8662、シグマアルドリッチジャパン社製。以下PBS(Ca+Mg)と略記する。)に分散させた状態で、本発明の診断用マーカー1を得た。
[0052]〔実施例2〕
上記で得られたマクロモノマーA0.75g、上記で得られたマクロモノマーB0.25g、スチレン1.0g及びN,N-アゾビスイソブチロニトリル15mgを、イオン交換水5mLとエタノール10mLの混合液に溶解させ、窒素バブリングを30分間行った。次いで封をして、これを60℃の湯浴中で24時間震蕩することで微粒子を生成させた。遠心分離によって微粒子を分離した後、凍結乾燥させて生成物としての微粒子を得た。微粒子の平均粒子径は470nm(動的光散乱法にて測定)であった。
得られた微粒子100mgに対し、実施例1と同様にしてフルオレセイン化コレステロールを識別性物質として含有させ、ラベル化微粒子を得た。
得られたラベル化微粒子10mgを、0.05M-KH_(2) PO_(4) 水溶液800μLに分散させた。一方、0.05M-KH_(2) PO_(4) 水溶液に水溶性カルボジイミド〔1-エチル-3-(3' -ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド〕を1質量%溶解させた溶液200μLを用意しておき、これを加えて4℃で30分間震蕩した。これを遠心分離(6000rpm,10分間)で上澄みを除去し、ピーナッツレクチン1mgをPBS1mLに溶解した溶液を加えて攪拌してラベル化微粒子を分散させた。これを4℃で24時間震蕩させることでラベル化微粒子の表面にピーナッツレクチンを結合させた。その後、遠心分離とPBSへの再分散を3回繰り返す事で未反応のピーナッツレクチンを除去した。最後にPBS(Ca+Mg)に分散させた状態で、本発明の診断用マーカー2を得た。
[0053]〔実施例3〕
上記で得られたマクロモノマーA0.50g、上記で得られたマクロモノマーB0.50g、スチレン1.0g及びN,N-アゾビスイソブチロニトリル15mgを、イオン交換水5mLとエタノール10mLの混合液に溶解させ、窒素バブリングを30分間行った。次いで封をして、これを60℃の湯浴中で24時間震蕩することで微粒子を生成させた。遠心分離によって微粒子を分離した後、凍結乾燥させて生成物としての微粒子を得た。微粒子の平均粒子径は400nm(動的光散乱法にて測定)であった。
得られた微粒子100mgに対し、実施例2と同様にしてフルオレセイン化コレステロールを識別性物質として含有させ、ラベル化微粒子を得た。
得られたラベル化微粒子10mgに対し、実施例2と同様にしてピーナッツレクチンをラベル化微粒子の表面に結合させ、PBS(Ca+Mg)に分散させた状態で、本発明の診断用マーカー3を得た。
[0054]〔実施例4〕
マクロモノマーAを0.25g、マクロモノマーBを0.75gに変更した他は、実施例3と同様にして微粒子を得た。微粒子の平均粒子径は360nm(動的光散乱法にて測定)であった。
得られた微粒子を、実施例3と同様にしてラベル化し、実施例3と同様にしてピーナッツレクチンをラベル化微粒子の表面に結合させ、PBS(Ca+Mg)に分散させた状態で、本発明の診断用マーカー4を得た。
[0055]〔実施例5〕
実施例4で得られたラベル化微粒子の表面にピーナッツレクチンを結合させる際に、ピーナッツレクチンの使用量を0.125mgに変更した他は実施例4と同様にして、ラベル化微粒子の表面にピーナッツレクチンを結合させ、PBS(Ca+Mg)に分散させた状態で、本発明の診断用マーカー5を得た。
[0056]〔実施例6〕
上記で得られたマクロモノマーB0.5g、上記で得られたマクロモノマーC0.5g、スチレン1.0g及びN,N-アゾビスイソブチロニトリル15mgを、イオン交換水5mLとエタノール10mLの混合液に溶解させ、窒素バブリングを30分間行った。次いで封をして、これを60℃の湯浴中で24時間震蕩することで微粒子を生成させた。
遠心分離によって微粒子を分離した後、凍結乾燥させて生成物としての微粒子を得た。微粒子の平均粒子径は230nm(動的光散乱法にて測定)であった。
得られた微粒子100mgに対し、実施例2と同様にしてフルオレセイン化コレステロールを識別性物質として含有させ、ラベル化微粒子を得た。
得られたラベル化微粒子10mgに対し、実施例2と同様にしてピーナッツレクチンをラベル化微粒子の表面に結合させ、PBS(Ca+Mg)に分散させた状態で、本発明の診断用マーカー6を得た。
[0057]〔実施例7〕
上記で得られたマクロモノマーB0.5g、上記で得られたマクロモノマーC0.5g、スチレン1.0g及びN,N-アゾビスイソブチロニトリル15mg、更にクマリン6(Coumarin 6 Sigma-Aldrich社製)2mgを、イオン交換水5mLとエタノール10mLの混合液に溶解させ、窒素バブリングを30分間行った。次いで封をして、これを60℃の湯浴中で24時間震蕩することで、クマリン6を内包したラベル微粒子を生成させた。
遠心分離によってこのラベル化微粒子を分離した後、凍結乾燥させて生成物としてのラベル化微粒子を得た。ラベル化微粒子の平均粒子径は230nm(動的光散乱法にて測定)であった。
実施例2と同様にしてピーナッツレクチンをラベル化微粒子の表面に結合させ、PBS(Ca+Mg)に分散させた状態で、本発明の診断用マーカー7を得た。」

(2)甲1に記載された発明

ア (甲1-ア)ないし(甲1-ウ)の記載から、診断用マーカーを用いて消化器における癌組織を染色することが読み取れる。

イ (甲1-エ)及び(甲1-キ)の記載から、(甲1-ケ)の実施例1ないし7における微粒子は、消化器粘膜に対する結合性の低い部位としてN-ビニルアセトアミドを構成単位とする重合鎖を有する有機ポリマーで形成されていることが読み取れる。

ウ 上記ア及びイを踏まえると、(甲1-ア)ないし(甲1-エ)から、甲1には以下の発明が記載されていると認められる。

「 表面に、消化器癌粘膜上の特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位及び消化器粘膜に対する結合性の低い部位を有し、且つ内部に識別性物質を有する、微粒子を含有する診断用マーカーを用いて消化器における癌組織を染色する方法であって、
前記微粒子は、
消化器粘膜に対する結合性の低い部位としてN-ビニルアセトアミドを構成単位とする重合鎖を有する有機ポリマーで形成され、
表面にピーナッツレクチンを吸着させてあり、
フルオレセイン化コレステロールを識別性物質として含有し、
平均粒子径が400nmである、
消化器における癌組織を染色する方法。」
(以下「甲1発明1」という。)

「 表面に、消化器癌粘膜上の特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位及び消化器粘膜に対する結合性の低い部位を有し、且つ内部に識別性物質を有する、微粒子を含有する診断用マーカーを用いて消化器における癌組織を染色する方法であって、
前記微粒子は、
消化器粘膜に対する結合性の低い部位としてN-ビニルアセトアミドを構成単位とする重合鎖を有する有機ポリマーで形成され、
表面にピーナッツレクチンを結合させてあり、
フルオレセイン化コレステロールを識別性物質として含有し、
平均粒子径が470nmである、
消化器における癌組織を染色する方法。」
(以下「甲1発明2」という。)

「 表面に、消化器癌粘膜上の特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位及び消化器粘膜に対する結合性の低い部位を有し、且つ内部に識別性物質を有する、微粒子を含有する診断用マーカーを用いて消化器における癌組織を染色する方法であって、
前記微粒子は、
消化器粘膜に対する結合性の低い部位としてN-ビニルアセトアミドを構成単位とする重合鎖を有する有機ポリマーで形成され、
表面にピーナッツレクチンを結合させてあり、
フルオレセイン化コレステロールを識別性物質として含有し、
平均粒子径が400nmである、
消化器における癌組織を染色する方法。」
(以下「甲1発明3」という。)

「 表面に、消化器癌粘膜上の特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位及び消化器粘膜に対する結合性の低い部位を有し、且つ内部に識別性物質を有する、微粒子を含有する診断用マーカーを用いて消化器における癌組織を染色する方法であって、
前記微粒子は、
消化器粘膜に対する結合性の低い部位としてN-ビニルアセトアミドを構成単位とする重合鎖を有する有機ポリマーで形成され、
表面にピーナッツレクチンを結合させてあり、
フルオレセイン化コレステロールを識別性物質として含有し、
平均粒子径が360nmである、
消化器における癌組織を染色する方法。」
(以下「甲1発明4」という。)

「 表面に、消化器癌粘膜上の特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位及び消化器粘膜に対する結合性の低い部位を有し、且つ内部に識別性物質を有する、微粒子を含有する診断用マーカーを用いて消化器における癌組織を染色する方法であって、
前記微粒子は、
消化器粘膜に対する結合性の低い部位としてN-ビニルアセトアミドを構成単位とする重合鎖を有する有機ポリマーで形成され、
表面にピーナッツレクチンを結合させてあり、
フルオレセイン化コレステロールを識別性物質として含有し、
平均粒子径が230nmである、
消化器における癌組織を染色する方法。」
(以下「甲1発明5」という。)

「 表面に、消化器癌粘膜上の特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位及び消化器粘膜に対する結合性の低い部位を有し、且つ内部に識別性物質を有する、微粒子を含有する診断用マーカーを用いて消化器における癌組織を染色する方法であって、
前記微粒子は、
消化器粘膜に対する結合性の低い部位としてN-ビニルアセトアミドを構成単位とする重合鎖を有する有機ポリマーで形成され、
表面にピーナッツレクチンを結合させてあり、
クマリン6を識別性物質として内包し、
平均粒子径が230nmである、
消化器における癌組織を染色する方法。」
(以下「甲1発明6」という。)

3 判断

本件特許の請求項3は、上記第2で述べたとおり本件訂正が認められることにより、削除されたため、以下、本件訂正発明1、2、4ないし6に係る取消理由についての判断を示す。

(1)取消理由1について

ア 本件訂正発明1について

(ア)本件訂正発明1と甲1発明1とを対比すると、次のことがいえる。

a 甲1発明1の「ピーナッツレクチン」は、「消化器癌粘膜上の特定抗原に対する特異的な結合性の高い」ものであるから、本件訂正発明1の「生体物質認識部位」に相当する。

b 甲1発明1の「有機ポリマーで形成され」た「微粒子」は、本件訂正発明1の「樹脂粒子」に相当する。

c 本件訂正発明1の「樹脂粒子」に対する「生体物質認識部位」の「結合」とは、特許明細書等の段落【0035】に「生体物質認識部位と蛍光物質集積ナノ粒子の結合の態様としては特に限定されず、共有結合、イオン結合、水素結合、配位結合、物理吸着及び化学吸着等が挙げられる。」と記載されているものであることに鑑みれば、甲1発明1の「吸着させてあ」ることは、本件訂正発明1の「結合され」ていることに相当する。

d 甲1発明1の「フルオレセイン化コレステロール」は、本件訂正発明1の「有機蛍光色素であ」る「蛍光物質」に相当する。

e 本件訂正発明1の「蛍光物質を複数集積した樹脂粒子」は、本件特許の明細書の段落【0026】に「本発明において蛍光物質を複数集積した粒子とは、蛍光物質がナノ粒子内部に分散されたもの(蛍光物質を複数内包したナノ粒子(蛍光物質内包ナノ粒子))、粒子外部に集積したもの、粒子の内部、外部によらず集積したものをいい、蛍光物質とナノ粒子自体とが化学的に結合していても、していなくてもよい。」と記載されているものであることに鑑みれば、甲1発明1の「内部に識別性物質を有する」「微粒子」であって、「フルオレセイン化コレステロールを識別性物質として含有し」ている「微粒子」は、本件訂正発明1の「蛍光物質を複数集積した樹脂粒子」であって、「前記蛍光物質が前記樹脂粒子内部に分散された樹脂粒子」に相当する。

f 甲1発明1の「診断用マーカー」は、本件訂正発明1の「染色試薬」に相当する。

g 甲1発明1の「消化器における癌組織」と、本件訂正発明1の「組織切片」とは、「生体組織」である点において共通する。

h 甲1発明1の「消化器における癌組織を染色する方法」は、本件訂正発明1の「組織染色方法」に相当する。

i 甲1発明1の「有機ポリマーで形成され」た「微粒子」の「平均粒子径が400nmである」ことは、本件訂正発明1の「当該樹脂粒子の平均粒子径が30nm?800nmであ」る条件を満たす。

j 甲1発明1の「特定抗原」は、本件訂正発明1の「目的とする生体物質」に相当する。

k 甲1発明1は、「表面に、消化器癌粘膜上の特定抗原に対する特異的な結合性の高い」「ピーナッツレクチンを吸着させ」、「且つ内部に」「フルオレセイン化コレステロールを識別性物質として含有し」ている「微粒子を含有する診断用マーカーを用いて消化器における癌組織を染色する方法」であるから、「特定抗原」と「フルオレセイン化コレステロールを識別性物質として含有し」ている「微粒子」とを反応させていることは明らかである。
よって、甲1発明1は、本件訂正発明1の「目的とする生体物質と前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子とを、反応させ」る工程に相当する工程を備えている。

(イ)そうすると、本件訂正発明1と甲1発明1とは、

「 生体物質認識部位が結合された、蛍光物質を複数集積した樹脂粒子を、染色試薬として用いて生体組織を染色する組織染色方法において、
前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子が、前記蛍光物質が前記樹脂粒子内部に分散された樹脂粒子であり、当該樹脂粒子の平均粒子径が30nm?800nmであり、前記蛍光物質が、有機蛍光色素であって、
目的とする生体物質と前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子とを、反応させる、組織染色方法。」

の発明である点において一致し、次の3点において相違する。

(相違点1)
染色する生体組織が、本件訂正発明1においては「組織切片」であるのに対し、甲1発明1においては「消化器における癌組織」である点。

(相違点2)
組織染色方法が、本件訂正発明1においては、「染色した情報から、前記樹脂粒子に基づく輝点数及び/又は発光輝度を計測するために行う」ものであるのに対し、甲1発明1においては、そのような特定がされていない点。

(相違点3)
目的とする生体物質と前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子とを、反応させたのち、本件訂正発明1は、「未反応の前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子を除去する工程を有する」のに対し、甲1発明1においては、そのような特定がされていない点。

上記相違点1ないし3は実質的な相違点であるから、本件訂正発明1は甲1発明1と同一ではない。

(ウ)本件訂正発明1と甲1発明2ないし6との対比

甲1発明2は、甲1発明1の「表面にピーナッツレクチンを吸着させてあり」を「表面にピーナッツレクチンを結合させてあり」に、「平均粒子径が400nmである」を「平均粒子径が470nmである」にそれぞれ置き換えたものに相当する。
甲1発明3は、甲1発明1の「表面にピーナッツレクチンを吸着させてあり」を「表面にピーナッツレクチンを結合させてあり」に置き換えたものに相当する。
甲1発明4は、甲1発明1の「表面にピーナッツレクチンを吸着させてあり」を「表面にピーナッツレクチンを結合させてあり」に、「平均粒子径が400nmである」を「平均粒子径が360nmである」にそれぞれ置き換えたものに相当する。
甲1発明5は、甲1発明1の「表面にピーナッツレクチンを吸着させてあり」を「表面にピーナッツレクチンを結合させてあり」に、「平均粒子径が400nmである」を「平均粒子径が230nmである」にそれぞれ置き換えたものに相当する。
甲1発明6は、甲1発明1の「表面にピーナッツレクチンを吸着させてあり」を「表面にピーナッツレクチンを結合させてあり」に、「フルオレセイン化コレステロール」を「クマリン6」に、「平均粒子径が400nmである」を「平均粒子径が470nmである」にそれぞれ置き換えたものに相当する。
ここで、「クマリン6」は、有機蛍光色素である。

そうすると、本件訂正発明1と甲1発明2ないし6とは、上記相違点1ないし3と実質的に同じ点において相違する。
よって、本件訂正発明1は甲1発明2ないし6と同一ではない。

(エ)以上のとおり、本件訂正発明1は甲1に記載された発明であるとはいえないから、取消理由1によって本件訂正発明1に係る特許を取り消すことはできない。

イ 本件訂正発明2について

本件訂正発明2は、「前記蛍光物質が前記樹脂粒子内部に分散された樹脂粒子」について本件訂正発明1を更に限定したものであるから、本件訂正発明1と同様に、甲1発明1ないし6と同一ではない。

よって、取消理由1によって本件訂正発明2に係る特許を取り消すことはできない。

(2)取消理由2について

ア 本件訂正発明1について

上記相違点1が想到容易であるかについて検討する。
甲1発明1は、消化器における癌組織を染色する方法であるところ、ここでの「消化器」は、生体内に存在している状態の「消化器」を意味するものである。
このことは、(甲1-ア)の「本発明は、消化器癌の内視鏡による早期発見/治療のための診断用マーカーに関するものである。」、(甲1-ウ)の「従って、本発明の目的は、癌組織と正常組織のコントラストを高くすることが可能で、消化器癌の内視鏡による早期発見/治療に有益な診断用マーカー、及びその製造方法を提供することにある。」との記載と整合するものであって、甲1発明1は、内視鏡観察時に行うことを前提とするものである。
そうすると、内視鏡観察時に行うことを前提とする甲1発明1において、染色する生体組織を組織切片とする動機付けがあるとはいえない。

したがって、相違点2及び3について検討するまでもなく、本件訂正発明1は甲1発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
同様に、本件訂正発明1は甲1発明2ないし6に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

よって、取消理由2によって本件訂正発明1に係る特許を取り消すことはできない。

イ 本件訂正発明2について

本件訂正発明2は、「前記蛍光物質が前記樹脂粒子内部に分散された樹脂粒子」について本件訂正発明1を更に限定したものであるから、本件訂正発明1と同様に、甲1発明1ないし6に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

よって、取消理由2によって本件訂正発明2に係る特許を取り消すことはできない。

(3)取消理由3について

本件訂正により、請求項1及び2における「樹脂粒子」、並びに請求項4における「第1の樹脂粒子」及び「第2の樹脂粒子」が、それぞれナノオーダーの大きさを有する粒子であることが明瞭になった。
また、請求項5は、そもそも「ナノ粒子」という表記を用いておらず、取消理由3は該当しない。
よって、取消理由3によって本件訂正発明1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。

4 特許異議申立人の意見について

申立人は、特許異議申立書の第14頁15?19行において、甲1の実施例に赤血球を用いた診断用マーカーのTF光源への特異的結合性評価試験及び消化器粘膜への結合性評価試験が記載されていることをもって、甲1には実質的に染色試薬を用いて病理「切片」を染色する工程が記載されている旨主張しているが、上記実施例は診断用マーカーを評価するために大腸癌の粘膜表面のモデル表面として赤血球を用いているにすぎず、甲1は内視鏡による体内組織の診断技術を示したものであって、身体から取り出した組織の「切片」を染色対象とするものではないことから、この主張は前提において誤りである。
そして、本件訂正により本件訂正発明1及び2について染色する対象が組織「切片」に訂正されたものの、これについて、申立人は意見書において何ら主張していないことから、申立人は依然として、甲1には病理「切片」を染色することについても記載されていると、前提において誤った解釈をしているものである。


第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について

本件特許の請求項3は、上記第2で述べたとおり本件訂正が認められることにより、削除されたため、以下、本件訂正発明1、2、4ないし6に係る特許異議申立理由についての判断を示す。

申立人は、証拠方法として、主たる証拠である甲1に加えて、従たる証拠として下記の甲第2ないし5号証を提出している。

甲第2号証:特表平7-508309号公報(以下「甲2」という。)
甲第3号証:特開2002-228654号公報(以下「甲3」という。)
甲第4号証:特開2005-345764号公報(以下「甲4」という。)
甲第5号証:特表2006-519376号公報(以下「甲5」という。)


1 特許法第29条第1項第3号に係る特許異議申立理由について

申立人は、甲1には、
「 蛍光物質を含む樹脂粒子に生体物質認識部位が結合されたものを染色試薬として用いて組織を染色する組織染色方法において、
前記蛍光物質を含む樹脂粒子が、前記蛍光物質がナノ粒子内部に分散された樹脂粒子又は前記蛍光物質がナノ粒子外部に集積した樹脂粒子であり、
前記蛍光物質が、有機蛍光色素である組織染色方法。」
の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認定し、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲1に記載された発明である旨主張している。

ここで、甲2は、特許明細書等の段落【0030】でポリスチレンナノ粒子への有機蛍光色素の含有法を例示するために引用された米国特許5326692号に対応する特許出願の公表公報であり、甲1に記載されたポリスチレン粒子が、蛍光物質を複数集積した樹脂粒子であることを示すために提出されたものである。

しかしながら、甲1発明は染色する組織が「組織切片」であることを特定するものではないから、本件訂正発明1及び2は、甲1発明と同一ではない。
よって、本件訂正発明1及び2は、甲1に記載された発明であるとはいえないから、申立人の上記主張は理由がない。

2 特許法第29条第2項に係る特許異議申立理由について

(1)請求項1及び2について

申立人は、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張している。

しかしながら、上記「第4 3(2)ア」で甲1発明1について述べたのと同様に、甲1発明は内視鏡観察時に行うことを前提とするものであるから、甲1発明において、染色する組織を組織切片とする動機付けがあるとはいえない。
よって、本件訂正発明1及び2は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、申立人の上記主張は理由がない。

(2)請求項4について

申立人は、本件特許の請求項4に係る発明は、甲1発明及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張している。

甲3は、組織マッピング方法及び組織マップ分析装置に関する文献であって、同一の組織試料に対して異なる物質と反応する試薬で染色するごとに蛍光強度測定を行い画像化することが記載されている。

しかしながら、本件訂正発明4は、病理切片から生体物質を特異的に検出する生体物質検出方法であって、染色試薬を用いて病理切片を染色する工程を有するものであるところ、甲1発明において、染色する組織を病理切片、すなわち組織切片とする動機付けがあるとはいえないことは、上記(1)で述べたとおりである。
よって、本件訂正発明4は、甲1発明及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、申立人の上記主張は理由がない。

(3)請求項5について

申立人は、本件特許の請求項5に係る発明は、甲1発明並びに甲3及び4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張している。

甲4は、走査型光学装置に関する文献であって、走査光学系により試料上を走査し、蛍光の輝度を検出することが記載されている。

しかしながら、本件訂正発明5は、病理切片から生体物質を特異的に検出する生体物質検出方法であって、染色試薬を用いて病理切片を染色する工程を有するものであるところ、甲1発明において、染色する組織を病理切片、すなわち組織切片とする動機付けがあるとはいえないことは、上記(1)で述べたとおりである。
よって、本件訂正発明5は、甲1発明並びに甲3及び4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、申立人の上記主張は理由がない。

(4)請求項6について

申立人は、本件特許の請求項6に係る発明は、甲1発明及び甲3ないし5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張している。

甲5は、免疫組織化学、免疫細胞化学及び分子細胞遺伝学のための標準に関する文献であって、HER2を検出対象として抗HER2抗体を用いて染色すること、及びERを検出対象とすることが記載されている。

しかしながら、本件訂正発明6は、本件訂正発明4又は5を生体物質認識部位に関して減縮したものであるから、本件訂正発明4又は5と同様の理由により、甲1発明及び甲3ないし5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない
よって、申立人の上記主張は理由がない。

3 特許法第17条の2第3項に係る特許異議申立理由について

申立人は、平成28年4月21日に提出された手続補正書による「樹脂粒子」という用語を追加する補正は、本件特許に係る出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲においてしたものではないから、本件特許の請求項1ないし4、及び6に係る特許は、特許法第17条の2第3項に記載する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであり、その特許は同法第113条第1項に該当し、取り消されるべきものである旨主張している。

そこで検討するに、当初明細書等には以下の記載がある。

「 【0026】
〔蛍光物質を複数集積した粒子〕
本発明において蛍光物質を複数集積した粒子とは、蛍光物質がナノ粒子内部に分散されたもの(蛍光物質を複数内包したナノ粒子(蛍光物質内包ナノ粒子))、粒子外部に集積したもの、粒子の内部、外部によらず集積したものをいい、蛍光物質とナノ粒子自体とが化学的に結合していても、していなくてもよい。
ナノ粒子を構成する素材は特に限定されるものではなく、ポリスチレン、ポリ乳酸、シリカ等を挙げることができる。」

「 【0030】
有機蛍光色素を内包したポリスチレンナノ粒子は、米国特許4326008(1982)に記載されている重合性官能基をもつ有機色素を用いた共重合法や、米国特許5326692(1992)に記載されているポリスチレンナノ粒子への有機蛍光色素の含浸法を用いて作製することができる。」

段落【0026】には、蛍光物質を複数集積した粒子を構成するナノ粒子の素材は特に限定されるものではないことが記載され、素材の例として樹脂であるポリスチレン及びポリ乳酸が記載されている。
この段落【0026】の記載は、蛍光物質を複数集積した粒子を構成するナノ粒子の素材として、ポリスチレン及びポリ乳酸以外の樹脂を使用することを想定しているものといえる。
そして、段落【0026】に「蛍光物質とナノ粒子自体とが化学的に結合していても、していなくてもよい」と記載されていることに鑑みれば、蛍光物質を複数集積した粒子を構成するナノ粒子の素材としてポリスチレン及びポリ乳酸以外の樹脂を使用することが可能であることも明らかである。
また、段落【0030】には、ポリスチレンナノ粒子の場合の製造方法の例が記載されているが、当該記載がナノ粒子を構成する素材をポリスチレンに限定するものとは解されない。
そうすると、有機蛍光色素を複数集積した粒子として樹脂粒子を使用することは、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
よって、申立人の上記主張は理由がない。


第6 請求項3に対する特許異議の申立てについて

本件特許の請求項3は、上記第2で述べたとおり本件訂正が認められることにより、削除されたため、本件特許の請求項3についての申立人がした特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなった。

よって、本件特許の請求項3についての申立人の特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。


第7 むすび

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び申立人の特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、2、4ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
そして、他に本件請求項1、2、4ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件特許の請求項3に対して申立人がした特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
組織染色方法および生体物質検出方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織染色方法、組織評価方法および生体物質検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
病理診断では、まず採取した組織を固定するために脱水し、パラフィンによるブロック化といった処理を行った後、2?8μmの厚さの薄片に切り、パラフィンを取り除き、染色して顕微鏡観察を行う。病理医は、この顕微鏡画像の中で、細胞の核の大きさや形の変化、組織としてのパターンの変化等の形態学的な情報、染色情報をもとに診断を行っている。画像のデジタル化技術の発達に伴い、病理診断の分野においても、顕微鏡やデジタルカメラ等を用いてデジタルカラー画像として入力された病理画像から、病理医が病理診断を行う際に必要となる情報を抽出・計測して表示する自動化された病理診断支援装置が普及してきている。
【0003】
例えば、特許文献1には、病理画像から細胞核領域及び細胞質領域をそれぞれ特定する核・細胞質分布推定手段と、病理画像から腺腔領域(細胞組織を殆ど含まない領域)を特定する腺腔分布抽出手段と、癌細胞が存在するか否かを判定する癌部位推定手段と、癌の進行度を判定する進行度判定手段と、癌細胞の分布図や進行度等を表示する画像表示手段と、を有する病理診断支援装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、正常部位と癌部位をそれぞれ選択的に染色するような2種類の染料で病理標本を染色し、更にスペクトル画像からランベルト・ベールの法則を用いて染色濃度を評価し、癌細胞の有無を判定する癌細胞の検出方法が開示されている。
【0005】
しかし、いずれの評価法を用いた場合でも、組織染色方法は従来の色素染色法(例えばヘマトキシリン-エオジン染色)、酵素を用いた色素染色法(例えばDAB染色)であり、その染色濃度は温度、時間等の環境条件により大きく左右され、病理診断支援装置の正確な定量測定性能を生かし切れていない。
【0006】
また、色素に代わる標識試薬として感度性能が高い蛍光色素が組織染色の研究に用いられているが(非特許文献1参照)、発明者らが、特許文献3に開示されている細胞識別・定量方法により、有機蛍光色素であるFITCを用い作製した病理切片を蛍光顕微鏡下で観察したところ、その発光輝度は極めて弱く、極微量のバイオマーカーを発光レベルによって自動判別することはできず、更なる改善が必要であることがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-286666号公報
【特許文献2】特表2001-525580号公報
【特許文献3】特開昭63-66465号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「病理と臨床 Vol.25 2007年臨時増刊号 診断に役立つ免疫組織化学」文光堂 2007年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これに対し、近年、抗体医薬を中心とした分子標的薬治療の広がりに伴い、分子標的薬をより効率的に使用するため、正確な診断法の必要性が高まってきている。病理診断においても、より正確に疾病の診断を行うため、極微量のバイオマーカーを組織切片上で定量的に検出することが求められている。しかし、従来の病理組織染色方法では、安定した定量性能、微量検出性能を得ることは困難であった。
【0010】
本発明は、上記の従来技術における問題に鑑みてなされたものであり、微量の生体物質(バイオマーカー)を定量的に検出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、
本発明の第1の態様によれば、
生体物質認識部位が結合された、蛍光物質を複数集積した樹脂粒子を、染色試薬として用いて組織切片を染色した情報から、前記樹脂粒子に基づく輝点数及び/又は発光輝度を計測するために行う組織染色方法において、
前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子が、前記蛍光物質が前記樹脂粒子内部に分散された樹脂粒子又は前記蛍光物質が前記樹脂粒子外部に集積した樹脂粒子であり、当該樹脂粒子の平均粒子径が30nm?800nmであり、前記蛍光物質が、有機蛍光色素であって、
目的とする生体物質と前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子とを、反応させたのち、未反応の前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子を除去する工程を有する、組織染色方法が提供される。
【0012】
本発明の第2の態様によれば、
病理切片から生体物質を特異的に検出する生体物質検出方法において、
染色試薬を用いて前記病理切片を染色する工程と、
染色後の前記病理切片から前記生体物質を検出する工程とを、有しており、
前記病理切片を染色する工程では、前記染色試薬として、第1の生体物質認識部位が結合し、かつ、有機蛍光色素である第1の蛍光物質を複数集積した第1の粒子と、前記第1の生体物質認識部位とは異なる第2の生体物質認識部位が結合し、かつ、前記第1の蛍光物質とは異なる蛍光波長を有する有機蛍光色素である第2の蛍光物質を複数集積した第2の粒子とを、用い、
前記生体物質を検出する工程では、
前記第1の粒子及び前記第2の粒子における1粒子あたりの輝度と、
輝点数の計測に基づいて求められる輝度分布のピーク値と、から、
前記第1の粒子及び前記第2の粒子の数を求めることを特徴とする生体物質検出方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、蛍光物質を複数集積した粒子に生体物質認識部位が結合されたものを染色試薬として用いることにより、蛍光観察時の1粒子当たりの輝度が高くなるため、微量の生体物質を感度良く、定量的に検出することができる。
本発明の第2の態様によれば、微量の生体物質を定量的に検出することができるのに加え、互いに異なる生体物質認識部位が結合され、蛍光波長が互いに異なる蛍光物質が複数集積された粒子を用いるから、1つの病理切片から複数の生体物質を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】1細胞当たりの粒子数と1細胞当たりの輝度の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0016】
本実施形態では、組織染色方法と、これを利用した組織評価方法および生体物質検出方法とを、提供する。
本実施形態にかかる組織染色方法では、生体物質認識部位が結合した蛍光物質を集積したナノ粒子を用いる。
【0017】
本実施形態にかかる組織評価方法では、生体物質認識部位が結合された蛍光物質又は蛍光物質集積粒子を用い、その輝点の数に基づいて組織切片上に存在するバイオマーカーと結合した蛍光物質又は蛍光物質集積粒子の数を求める。
【0018】
本実施形態にかかる生体物質検出方法は、病理切片から生体物質を特異的に検出する方法であり、基本的には、(1)染色試薬を用いて病理切片を染色する工程と、(2)染色後の病理切片から生体物質を検出する工程とを、有している。
特に、(2)の工程では、染色試薬として2種類のナノ粒子を使用する。
一方のナノ粒子には、一定の生体物質認識部位が結合され、かつ、一定の蛍光物質が内包されている。他方のナノ粒子には、一方のナノ粒子の生体物質認識部位とは異なる生体物質認識部位が結合され、かつ、一方のナノ粒子の蛍光物質とは異なる蛍光波長を有する蛍光物質が内包されている。すなわち、各ナノ粒子には、互いに異なる生体物質認識部位が結合され、蛍光波長が互いに異なる蛍光物質が内包されている。そのため、蛍光物質に起因する蛍光波長の違いから、生体物質認識部位に応じた2種の生体物質を検出することができるし、生体物質認識部位の選定から、将来的には現在未確認の抗原を特定することもできると考えられる。
なお、本発明の好ましい実施形態では、2種類のナノ粒子を用いた例を示すが、生体物質認識部位と蛍光物質(蛍光波長)とが互いに異なれば、3種類以上のナノ粒子を用いて3種類以上の生体物質を検出するものとしてもよい。
蛍光物質などの種類や特性、生体物質検出方法の詳細は下記のとおりである。
【0019】
〔蛍光物質〕
本発明で用いられる蛍光物質としては、有機蛍光色素、量子ドット(半導体粒子)、希土類粒子を挙げることができる。200?700nmの範囲内の波長の紫外?近赤外光により励起されたときに、400?900nmの範囲内の波長の可視?近赤外光の発光を示すことが好ましい。
【0020】
有機蛍光色素としては、フルオレセイン系色素分子、ローダミン系色素分子、Alexa Fluor(インビトロジェン社製)系色素分子、BODIPY(インビトロジェン社製)系色素分子、カスケード系色素分子、クマリン系色素分子、エオジン系色素分子、NBD系色素分子、ピレン系色素分子、Texas Red系色素分子、シアニン系色素分子等を挙げることができる。
【0021】
具体的には、5-カルボキシ-フルオレセイン、6-カルボキシ-フルオレセイン、5,6-ジカルボキシ-フルオレセイン、6-カルボキシ-2’,4,4’,5’,7,7’-ヘキサクロロフルオレセイン、6-カルボキシ-2’,4,7,7’-テトラクロロフルオレセイン、6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン、ナフトフルオレセイン、5-カルボキシ-ローダミン、6-カルボキシ-ローダミン、5,6-ジカルボキシ-ローダミン、ローダミン 6G、テトラメチルローダミン、X-ローダミン、及びAlexa Fluor 350、Alexa Fluor 405、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 500、Alexa Fluor 514、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 555、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 610、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 635、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680、Alexa Fluor 700、Alexa Fluor 750、BODIPY FL、BODIPY TMR、BODIPY 493/503、BODIPY 530/550、BODIPY 558/568、BODIPY 564/570、BODIPY 576/589、BODIPY 581/591、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665(以上インビトロジェン社製)、メトキシクマリン、エオジン、NBD、ピレン、Cy5、Cy5.5、Cy7等を挙げることができる。単独でも複数種を混合したものを用いてもよい。
【0022】
量子ドットとしては、II-VI族化合物、III-V族化合物、又はIV族元素を成分として含有する量子ドット(それぞれ、「II-VI族量子ドット」、「III-V族量子ドット」、「IV族量子ドット」ともいう。)のいずれかを用いることができる。単独でも複数種を混合したものを用いてもよい。
【0023】
具体的には、CdSe、CdS、CdTe、ZnSe、ZnS、ZnTe、InP、InN、InAs、InGaP、GaP、GaAs、Si、Geが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
上記量子ドットをコアとし、その上にシェルを設けた量子ドットを用いることもできる。以下、本明細書中シェルを有する量子ドットの表記法として、コアがCdSe、シェルがZnSの場合、CdSe/ZnSと表記する。例えば、CdSe/ZnS、CdS/ZnS、InP/ZnS、InGaP/ZnS、Si/SiO_(2)、Si/ZnS、Ge/GeO_(2)、Ge/ZnS等を用いることができるが、これらに限定されない。
量子ドットは必要に応じて、有機ポリマー等により表面処理が施されているものを用いてもよい。例えば、表面カルボキシ基を有するCdSe/ZnS(インビトロジェン社製)、表面アミノ基を有するCdSe/ZnS(インビトロジェン社製)等が挙げられる。
【0025】
希土類粒子としては、例えば、酸化ネオジム、塩化ネオジム、硝酸ネオジム、酸化イッテルビウム、塩化イッテルビウム、硝酸イッテルビウム、酸化ランタン、塩化ランタン、硝酸ランタン、酸化イットリウム、塩化イットリウム、硝酸イットリウム、塩化プラジオセム、塩化エルビウム、オルトリン酸、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム等を用いることができる。
【0026】
〔蛍光物質を複数集積した粒子〕
本発明において蛍光物質を複数集積した粒子とは、蛍光物質がナノ粒子内部に分散されたもの(蛍光物質を複数内包したナノ粒子(蛍光物質内包ナノ粒子))、粒子外部に集積したもの、粒子の内部、外部によらず集積したものをいい、蛍光物質とナノ粒子自体とが化学的に結合していても、していなくてもよい。
ナノ粒子を構成する素材は特に限定されるものではなく、ポリスチレン、ポリ乳酸、シリカ等を挙げることができる。
【0027】
本発明で用いられる蛍光物質を複数集積した粒子は、公知の方法により作製することが可能である。
例えば、有機蛍光色素を内包したシリカナノ粒子は、ラングミュア 8巻 2921ページ(1992)に記載されているFITC内包シリカ粒子の合成を参考に合成することができる。FITCの代わりに所望の有機蛍光色素を用いることで種々の有機蛍光色素内包シリカナノ粒子を合成することができる。
【0028】
量子ドットを内包したシリカナノ粒子は、ニュー・ジャーナル・オブ・ケミストリー 33巻 561ページ(2009)に記載されているCdTe内包シリカナノ粒子の合成を参考に合成することができる。
【0029】
量子ドットを外包したシリカナノ粒子は、ケミカル・コミュニケーション 2670ページ(2009)に記載されているCdSe/ZnSを5-amino-1-pentanolとAPSでキャッピングした粒子を表面に集積したシリカナノ粒子の合成を参考に合成することができる。
【0030】
有機蛍光色素を内包したポリスチレンナノ粒子は、米国特許4326008(1982)に記載されている重合性官能基をもつ有機色素を用いた共重合法や、米国特許5326692(1992)に記載されているポリスチレンナノ粒子への有機蛍光色素の含浸法を用いて作製することができる。
【0031】
量子ドットを内包したポリマーナノ粒子は、ネイチャー バイオテクノロジー 19巻631ページ(2001)に記載されているポリスチレンナノ粒子への量子ドットの含浸法を用いて作製することができる。
【0032】
本発明で用いられる蛍光物質を複数集積した粒子の平均粒径は特に限定されないが、30?800nm程度のものを用いることができる。平均粒径が30nm未満の場合には、集積粒子に含まれる蛍光物質が少なく、目的とする生体物質の定量評価が困難となり、800nmを超える場合には、病理組織での生体物質との結合が困難となるためである。なお、平均粒径は、40?500nmの範囲内であることがより好ましい。ここで、平均粒径を40?500nmとしたのは、40nm未満の場合には、高価な検出系が必要となり、500nmを超える場合には、物理的な大きさから定量範囲が狭まるためである。また、粒径のばらつきを示す変動係数(=(標準偏差/平均値)×100%)は特に限定されないが、20%のものを用いることができる。平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて電子顕微鏡写真を撮影し十分な数の粒子について断面積を計測し、各計測値を円の面積としたときの円の直径を粒径として求めた。本願においては、1000個の粒子の粒径の算術平均を平均粒径とした。変動係数も、1000個の粒子の粒径分布から算出した値とした。
【0033】
〔緩衝液〕
緩衝液とは、抗原-抗体反応に適した環境を安定して維持するための溶媒である。例えば、リン酸緩衝液生理的食塩水(PBS)、リン酸緩衝液、Tris緩衝液、MES緩衝液、クエン酸-リン酸緩衝液等である。
【0034】
〔生体物質認識部位と蛍光物質を集積したナノ粒子との結合〕
本発明に係る生体物質認識部位とは、目的とする生体物質と特異的に結合及び/又は反応する部位である。例えば、ヌクレオチド鎖、タンパク質、抗体等が挙げられる。具体的には、細胞表面に存在するタンパク質であるHER2に特異的に結合する抗HER2抗体、細胞核に存在するエストロゲン受容体(ER)に特異的に結合する抗ER抗体、細胞骨格を形成するアクチンに特異的に結合する抗アクチン抗体等があげられる。中でも抗HER2抗体及び抗ER抗体を蛍光物質集積ナノ粒子に結合させたものは、乳癌の投薬選定に用いることができ、好ましい。
【0035】
生体物質認識部位と蛍光物質集積ナノ粒子の結合の態様としては特に限定されず、共有結合、イオン結合、水素結合、配位結合、物理吸着及び化学吸着等が挙げられる。結合の安定性から共有結合等の結合力の強い結合が好ましい。
【0036】
また、生体物質認識部位と蛍光物質集積ナノ粒子の間を連結する有機分子があってもよい。例えば、生体物質との非特異的吸着を抑制するため、ポリエチレングリコール鎖を用いることができ、Thermo Scientific社製SM(PEG)12を用いることができる。
【0037】
蛍光物質集積シリカナノ粒子へ生体物質認識部位を結合させる場合、蛍光物質が有機蛍光色素の場合でも、量子ドットの場合でも、希土類粒子の場合でも同様の手順を適用することができる。
例えば、無機物と有機物を結合させるために広く用いられている化合物であるシランカップリング剤を用いることができる。このシランカップリング剤は、分子の一端に加水分解でシラノール基を与えるアルコキシシリル基を有し、他端に、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、アルデヒド基等の官能基を有する化合物であり、上記シラノール基の酸素原子を介して無機物と結合する。
具体的には、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ポリエチレングリコール鎖をもつシランカップリング剤(例えば、Gelest社製PEG-silane no.SIM6492.7)等が挙げられる。シランカップリング剤を用いる場合、二種以上を併用してもよい。
【0038】
有機蛍光色素集積シリカナノ粒子とシランカップリング剤との反応手順は、公知の手法を用いることができる。
例えば、得られた有機蛍光色素集積シリカナノ粒子を純水中に分散させ、アミノプロピルトリエトキシシランを添加し、室温で12時間反応させる。反応終了後、遠心分離又はろ過により表面がアミノプロピル基で修飾された有機蛍光色素集積シリカナノ粒子を得ることができる。続いてアミノ基と抗体中のカルボキシル基とを反応させることで、アミド結合を介し抗体を有機蛍光色素集積シリカナノ粒子と結合させることができる。必要に応じて、EDC(1-Ethyl-3-[3-Dimethylaminopropyl]carbodiimide Hydrochloride:Pierce社製)のような縮合剤を用いることもできる。
【0039】
必要により、有機分子で修飾された有機蛍光色素集積シリカナノ粒子と直接結合しうる部位と、分子標的物質と結合しうる部位とを有するリンカー化合物を用いることができる。
具体例として、アミノ基と選択的に反応する部位とメルカプト基と選択的に反応する部位の両方をもつsulfo-SMCC(Sulfosuccinimidyl 4[N-maleimidomethyl]-cyclohexane-1-carboxylate:Pierce社製)を用いると、アミノプロピルトリエトキシシランで修飾した有機蛍光色素集積シリカナノ粒子のアミノ基と、抗体中のメルカプト基を結合させることで、抗体結合した有機蛍光色素集積シリカナノ粒子ができる。
【0040】
蛍光物質集積ポリスチレンナノ粒子へ生体物質認識部位を結合させる場合、蛍光物質が有機蛍光色素の場合でも、量子ドットの場合でも、希土類粒子の場合でも同様の手順を適用することができる。すなわち、アミノ基等の官能基をもつポリスチレンナノ粒子へ有機蛍光色素、量子ドット又は希土類粒子を含浸することにより、官能基もつ蛍光物質集積ポリスチレンナノ粒子を得ることができ、以降EDC又はsulfo-SMCCを用いることで、抗体結合した蛍光物質集積ポリスチレンナノ粒子ができる。
【0041】
〔染色方法(生体物質検出方法)〕
以下、本発明の染色方法(生体物質検出方法)について述べる。
本発明の染色方法は病理切片組織に限定せず、細胞染色にも適用可能である。
本発明の染色方法が適用できる切片の作製法は特に限定されず、公知の方法により作製されたものを用いることができる。
【0042】
1)脱パラフィン工程
キシレンを入れた容器に、病理切片を浸漬させ、パラフィンを除去する。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は、3分以上30分以下であることが好ましい。また、必要により浸漬途中でキシレンを交換してもよい。
次いで、エタノールを入れた容器に病理切片を浸漬させ、キシレンを除去する。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は、3分以上30分以下であることが好ましい。また、必要により浸漬途中でエタノールを交換してもよい。
次いで、水を入れた容器に、病理切片を浸漬させ、エタノールを除去する。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は、3分以上30分以下であることが好ましい。また、必要により浸漬途中で水を交換してもよい。
【0043】
2)賦活化処理
公知の方法にならい、目的とする生体物質の賦活化処理を行う。
賦活化条件に特に定めはないが、賦活液としては、0.01Mクエン酸緩衝液(pH6.0)、1mMEDTA溶液(pH8.0)、5%尿素、0.1Mトリス塩酸緩衝液等を用いることができる。加熱機器は、オートクレーブ、マイクロウェーブ、圧力鍋、ウォーターバス等を用いることができる。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。温度は50-130℃、時間は5-30分で行うことができる。
次いで、水、PBSを入れた容器に、賦活化処理後の切片を浸漬させ、洗浄を行う。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は、3分以上30分以下であることが好ましい。また、必要により浸漬途中でPBSを交換してもよい。
【0044】
3)生体物質認識部位が結合された蛍光物質集積ナノ粒子を用いた染色
生体物質認識部位が結合された蛍光物質集積ナノ粒子のPBS分散液を病理切片に載せ、目的とする生体物質と反応させる。蛍光物質集積ナノ粒子と結合させる生体物質認識部位を変えることにより、さまざまな生体物質に対応した染色が可能となる。
複数(2種以上)の生体物質を検出しようとする場合は、生体物質認識部位が異なる蛍光物質内包ナノ粒子PBS分散液をそれぞれ調製し、病理切片に載せ、目的とする生体物質との反応を行う。病理切片に載せる際に、それぞれの蛍光物質内包ナノ粒子PBS分散液をあらかじめ混合してもよいし、別々に順次載せてもよい。混合比は特に限定されるものではないが、本発明の効果が表れるには両者の比は1:1?5:1でよい。
蛍光物質集積ナノ粒子のPBS分散液には、BSA含有PBS等、公知のブロッキング剤やTween20等の界面活性剤を含有させてもよい。
温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。反応時間は、30分以上24時間以下であることが好ましい。
蛍光物質集積ナノ粒子による染色を行う前に、BSA含有PBS等、公知のブロッキング剤を滴下することが好ましい。
次いで、PBSを入れた容器に、染色後の切片を浸漬させ、未反応蛍光物質集積ナノ粒子の除去を行う。PBS溶液にはTween20等の界面活性剤を含有させてもよい。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は、3分以上30分以下であることが好ましい。また、必要により浸漬途中でPBSを交換してもよい。
組織の形態観察のため、ヘマトキシリン-エオジン染色を行ってもよい。
カバーガラスを切片に載せ、封入する。必要に応じて市販の封入剤を使用してもよい。
【0045】
4)蛍光顕微鏡下の観察
染色した病理切片に対し蛍光顕微鏡を用いて、目的とする生体物質の発現レベルを輝点数又は発光輝度に基づいて評価する。
輝点数又は発光輝度の計測では、用いた蛍光物質の吸収極大波長及び蛍光波長に対応した励起光源は及び蛍光検出用光学フィルターを選択する。
輝点数又は発光輝度の計測は、画像解析ソフト、例えば、公開解析ソフトImageJ、株式会社ジーオングストローム社製の全輝点自動計測ソフトG-Countを用いて行うことができる。
【0046】
次に、本発明を上記実施形態に基づいて具体的に実施した実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例1】
【0047】
[手順1:蛍光物質内包粒子の合成]
テトラメチルローダミン(インビトロジェン社製TAMRA-SE)6.6mgと3-アミノプロピルトリメトキシシラン(3-aminopropyltrimetoxysilane、信越シリコーン社製、KBM903)3μLをDMF中で混合し、オルガノアルコキシシラン化合物を得た。得られたオルガノアルコキシシラン化合物0.6mlを48mlのエタノール、0.6mlのTEOS(テトラエトキシシラン)、2mlの水、2mlの28%アンモニア水と3時間混合した。
【0048】
上記工程で作製した混合液を10000Gで20分遠心分離を行い、上澄みを除去した。エタノールを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順でエタノールと純水による洗浄を2回ずつ行った。
得られたテトラメチルローダミン内包・シリカナノ粒子のSEM観察を行い、200粒子の粒子径を測定したところ、平均粒径104nm、変動係数は12%であった。
【0049】
同様の方法で、Cy5-SE(ロシュ社製)を用いて平均粒子径20、42、103、204、498nmのCy5内包・シリカナノ粒子を得た。
【0050】
また、同様の方法で、FITC-SE(インビトロジェン社製)を用いて平均粒子径106nmのFITC内包・シリカナノ粒子を得た。
【0051】
[手順2:蛍光物質内包粒子への抗体の結合]
手順1で得られた蛍光物質内包シリカナノ粒子(テトラメチルローダミン内包・シリカナノ粒子、Cy5内包・シリカナノ粒子、FITC内包・シリカナノ粒子)のそれぞれを、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を2mM含有したPBS(リン酸緩衝液生理的食塩水)を用いて3nMに調整し、この溶液に最終濃度が10mMとなるようSM(PEG)12(サーモサイエンティフィック社製、succinimidyl-[(N-maleomidopropionamid)-dodecaethyleneglycol]ester)を混合し、1時間反応させた。この混合液を10000Gで20分遠心分離を行い、上澄みを除去した後、EDTAを2mM含有したPBSを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで抗体結合用シリカナノ粒子を得た。
【0052】
一方、抗ヒトER抗体を1Mジチオスレイトール(DTT)で還元処理を行い、ゲルろ過カラムにより過剰のDTTを除去することにより、シリカ粒子に結合可能な還元化抗体溶液を得た。
【0053】
上記で得られた抗体結合用シリカナノ粒子と還元化抗体溶液とを、EDTAを2mM含有したPBS中で混合し、1時間反応させた。10mMメルカプトエタノールを添加し、反応を停止させた。得られた溶液を10000Gで20分遠心分離を行い、上澄みを除去した後、EDTAを2mM含有したPBSを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで抗ヒトER抗体結合・蛍光物質内包シリカナノ粒子を得た。
【0054】
[手順3:蛍光物質内包粒子を用いた組織染色]
手順2で作製した抗ヒトER抗体結合・蛍光物質内包シリカナノ粒子を用いてヒト乳房組織の免疫染色を行った。染色切片は、コスモバイオ社製の組織アレイスライド(CB-A712)を用いた。組織アレイスライドを脱パラフィン処理した後、組織アレイスライドを浸漬する液体をキシレン、エタノール、水の順に置換して洗浄し、10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)中で15分間オートクレーブ処理することで、抗原の賦活化処理を行った。抗原の賦活化処理後の組織アレイスライドは、PBS緩衝液を用いて洗浄後、湿潤箱中で1時間1%BSA含有PBS緩衝液を用いてブロッキング処理を行った。
【0055】
ブロッキング処理後、1%BSA含有PBS緩衝液で0.05nMに希釈した各抗ヒトER抗体結合・蛍光物質内包シリカナノ粒子を組織切片と3時間反応させた。抗ヒトER抗体結合・蛍光物質内包シリカナノ粒子と反応させた後、組織アレイスライドをPBS緩衝液で洗浄し、Merck Chemicals社製Aquatexを用いて封入した。
【0056】
[手順4:蛍光物質内包粒子を用いて染色した組織の輝点計測]
手順3で染色した組織切片についてオリンパス社製DSU共焦点顕微鏡を用いて画像を取得し、ジーオングストローム社製の輝点計測ソフトウェア、G-countを用いて輝点の計測を行った。
Cy5の観察は、励起フィルター(640/30nmのバンドパスフィルター)、ビームスプリッター(660nm)、蛍光フィルター(690/50nmのバンドパスフィルター)のフィルターセットを用いた。
テトラメチルローダミンの観察は、励起フィルター(550/25nmのバンドパスフィルター)、ビームスプリッター(570nm)、蛍光フィルター(605/70nmのバンドパスフィルター)のフィルターセットを用いた。
FITCの観察は、励起フィルター(470/40nmのバンドパスフィルター)、ビームスプリッター(495nm)、蛍光フィルター(525/50nmのバンドパスフィルター)のフィルターセットを用いた。
組織アレイスライド中の予めDAB染色で染色濃度が異なることが予測された8スポットについて、各30細胞の輝点の数を計測し、1細胞当たりの輝点の数(平均値)を求めた。また、同様に、8スポットについて、各30細胞の発光輝度を計測し、1細胞当たりの発光輝度(平均値)を求めた。
【0057】
[比較例:蛍光色素単体を用いた組織染色]
比較例として、Cy5、テトラメチルローダミン、FITC蛍光色素単体に抗ヒトER抗体を結合させたものを用い、手順3と同様の方法で組織アレイスライドを染色し、手順4と同様の方法で組織の輝点を計測した。
具体的には、組織アレイスライド中の8スポットについて、各30細胞の輝点の数及び発光輝度を計測し、1細胞当たりの輝点の数及び1細胞当たりの発光輝度を求めた。
【0058】
[実験結果A]
まず、標識体に含まれる蛍光色素の違い(すなわち、発光波長の違い)によるバイオマーカー(ER)の検出感度の差について検討した。
表1に、Cy5内包・シリカナノ粒子(平均粒子径103nm)、テトラメチルローダミン内包・シリカナノ粒子(平均粒子径104nm)、FITC内包・シリカナノ粒子(平均粒子径106nm)のそれぞれを用いた場合に計測された1細胞当たりの輝点数を示す。表1において、「-」は、バックグラウンドレベル以上の輝点がないことを示し、「+」は、発光が強く、周囲の輝点と区別がつかないことを示している。
【0059】
【表1】

【0060】
表1に示すように、いずれの蛍光物質内包粒子を用いた場合でも、輝点数の差によりバイオマーカーの定量評価が可能となっている。ただし、スポット番号2の組織切片について、Cy5内包・シリカナノ粒子及びテトラメチルローダミン内包・シリカナノ粒子を用いた場合には、輝点数を計測可能であったのに対し、FITC内包・シリカナノ粒子を用いた場合には、バックグラウンドレベル以上の輝点は計測されなかった。すなわち、励起波長が長いCy5(励起波長650nm、発光波長670nm)、テトラメチルローダミン(励起波長550nm、発光波長570nm)の内包粒子の方が、FITC(励起波長495nm、発光波長520nm)の内包粒子と比べて、より微量のバイオマーカーを検出できることがわかる。
【0061】
[実験結果B]
次に、標識体の粒子径の違いによるバイオマーカー(ER)の検出感度の差について検討した。
表2に、Cy5内包・シリカナノ粒子(平均粒子径20、42、103、204、498nm)のそれぞれと、Cy5色素単体(比較例)とを用いた場合に計測された1細胞当たりの輝点数を示す。表2において、「-」は、バックグラウンドレベル以上の輝点がないことを示し、「+」は、発光が強く、周囲の輝点と区別がつかないことを示している。
【0062】
【表2】

【0063】
表2に示すように、平均粒子径が42、103、204、498nmのCy5内包・シリカナノ粒子を用いた場合には、輝点数を計測可能な各スポットにおいて、輝点数の差によりバイオマーカーの定量評価が可能となっている。しかし、平均粒子径が498nmのCy5内包・シリカナノ粒子を用いた場合には、スポット番号6の組織切片において輝点の区別がつかなくなっており、バイオマーカーが高頻度に発現している場合の定量範囲が狭まることがわかる。
【0064】
また、Cy5色素単体を用いた場合、平均粒子径20nmのCy5内包・シリカナノ粒子を用いた場合には、スポット番号1?4の組織切片では、バックグラウンドレベル以上の輝点がなく、スポット番号5?8の組織切片では、周囲の輝点と区別がつかないため、微量のバイオマーカーに対する輝点レベルの定量評価が不可能なことがわかる。
【0065】
[実験結果C]
次に、蛍光色素内包粒子と蛍光色素単体とによるバイオマーカー(ER)の検出感度を輝点数で比較した。
表3に、Cy5内包・シリカナノ粒子(平均粒子径103nm)、テトラメチルローダミン内包・シリカナノ粒子(平均粒子径104nm)、FITC内包・シリカナノ粒子(平均粒子径106nm)、Cy5、テトラメチルローダミン、FITCのそれぞれを用いた場合に計測された1細胞当たりの輝点数を示す。表3において、「-」は、バックグラウンドレベル以上の輝点がないことを示し、「+」は、発光が強く、周囲の輝点と区別がつかないことを示している。
【0066】
【表3】

【0067】
表3から、蛍光色素単体を用いて組織染色を行った場合には、スポット番号1?4の組織切片では、バックグラウンドレベル以上の輝点がなく、スポット番号5?8の組織切片では、周囲の輝点と区別がつかないため、微量のバイオマーカーに対する輝点レベルの定量評価が不可能なことがわかる。
一方、標識体として蛍光物質内包粒子を用いた場合には、微量のバイオマーカーに対しても、精度良く定量的に検出することができる。
【0068】
[実験結果D]
次に、蛍光色素内包粒子と蛍光色素単体とによるバイオマーカー(ER)の検出感度を発光輝度で比較した。
表4に、Cy5内包・シリカナノ粒子(平均粒子径103nm)、テトラメチルローダミン内包・シリカナノ粒子(平均粒子径104nm)、FITC内包・シリカナノ粒子(平均粒子径106nm)、Cy5、テトラメチルローダミン、FITCのそれぞれを用いた場合に、DSU共焦点顕微鏡により取得された画像データに基づいて計測された1細胞当たりの発光輝度を示す。発光輝度の単位はa.u.(任意単位)である。表4において、「0」は、バックグラウンドレベル以下の発光であることを示している。
【0069】
【表4】

【0070】
表4から、蛍光色素単体を用いた場合と比較して、蛍光物質内包粒子を用いた場合には、より微量なバイオマーカーを検出可能なことがわかる。
【0071】
以上説明したように、蛍光物質を複数集積した粒子に生体物質認識部位が結合されたものを染色試薬として用いることにより、組織切片を蛍光観察する際の1粒子当たりの輝度が高くなるため、微量のバイオマーカー(生体物質認識部位に対応する生体物質)を感度良く、定量的に検出することができる。
【0072】
また、蛍光物質を複数内包した粒子を用いる場合には、蛍光物質が粒子に内包されることにより、蛍光物質の耐久性が高まる。
【実施例2】
【0073】
[手順1:蛍光物質集積粒子の合成]
テトラメチルローダミン(インビトロジェン社製TAMRA-SE)(励起波長550nm、発光波長570nm)6.6mgと3-アミノプロピルトリメトキシシラン(3-aminopropyltrimetoxysilane、信越シリコーン社製、KBM903)3μLをDMF中で混合し、オルガノアルコキシシラン化合物を得た。得られたオルガノアルコキシシラン化合物0.6mlを48mlのエタノール、0.6mlのTEOS(テトラエトキシシラン)、2mlの水、2mlの28%アンモニア水と3時間混合した。
【0074】
上記工程で作製した混合液を10000Gで20分遠心分離を行い、上澄みを除去した。エタノールを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順でエタノールと純水による洗浄を2回ずつ行った。
得られたテトラメチルローダミン集積・シリカナノ粒子のSEM観察を行い、200粒子の粒子径を測定したところ、平均粒径104nm、変動係数は12%であった。
【0075】
同様の方法で、Cy5-SE(ロシュ社製)(励起波長650nm、発光波長670nm)を用いて平均粒子径103nmのCy5集積・シリカナノ粒子を得た。
【0076】
[手順2:蛍光物質集積粒子と量子ドットへの抗体の結合]
手順1で得られた蛍光物質集積シリカナノ粒子(テトラメチルローダミン集積・シリカナノ粒子、Cy5集積・シリカナノ粒子)のそれぞれを、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を2mM含有したPBS(リン酸緩衝液生理的食塩水)を用いて3nMに調整し、この溶液に最終濃度が10mMとなるようSM(PEG)12(サーモサイエンティフィック社製、succinimidyl-[(N-maleomidopropionamid)-dodecaethyleneglycol]ester)を混合し、1時間反応させた。この混合液を10000Gで20分遠心分離を行い、上澄みを除去した後、EDTAを2mM含有したPBSを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで抗体結合用シリカナノ粒子を得た。
【0077】
一方、抗ヒトER抗体を1Mジチオスレイトール(DTT)で還元処理を行い、ゲルろ過カラムにより過剰のDTTを除去することにより、シリカ粒子に結合可能な還元化抗体溶液を得た。
【0078】
上記で得られた抗体結合用シリカナノ粒子と還元化抗体溶液とを、EDTAを2mM含有したPBS中で混合し、1時間反応させた。10mMメルカプトエタノールを添加し、反応を停止させた。得られた溶液を10000Gで20分遠心分離を行い、上澄みを除去した後、EDTAを2mM含有したPBSを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで抗ヒトER抗体結合・蛍光物質集積シリカナノ粒子を得た。
【0079】
インビトロジェン社製QD655抗体標識キット(Q22021MP)を用いて量子ドットに抗ヒトER抗体を結合させた。抗体の結合はキットの処方にしたがい、SMCCによる量子ドットの活性化、DTTによる抗体の還元工程を経て、量子ドットと抗体の結合反応を行うことで行った。
【0080】
[手順3:蛍光物質集積粒子と量子ドットを用いた組織染色]
手順2で作製した抗ヒトER抗体結合・蛍光物質集積シリカナノ粒子と抗ヒトER抗体結合・量子ドットを用いてヒト乳房組織の免疫染色を行った。染色切片は、コスモバイオ社製の組織アレイスライド(CB-A712)を用いた。組織アレイスライドを脱パラフィン処理した後、組織アレイスライドを浸漬する液体をキシレン、エタノール、水の順に置換して洗浄し、10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)中で15分間オートクレーブ処理することで、抗原の賦活化処理を行った。抗原の賦活化処理後の組織アレイスライドは、PBS緩衝液を用いて洗浄後、湿潤箱中で1時間1%BSA含有PBS緩衝液を用いてブロッキング処理を行った。
【0081】
ブロッキング処理後、1%BSA含有PBS緩衝液で0.05nMに希釈した各抗ヒトER抗体結合・蛍光物質集積シリカナノ粒子又は抗ヒトER抗体結合・量子ドットを組織切片と3時間反応させた。その後、組織アレイスライドをPBS緩衝液で洗浄し、Merck Chemicals社製Aquatexを用いて封入した。
【0082】
[手順4:染色した組織の輝点、輝度、粒子数計測]
手順3で染色した組織切片についてオリンパス社製DSU共焦点顕微鏡を用いて画像を取得し、ジーオングストローム社製の輝点計測ソフトウェア、G-countを用いて輝点の計測を行った。
Cy5の観察は、励起フィルター(640/30nmのバンドパスフィルター)、ビームスプリッター(660nm)、蛍光フィルター(690/50nmのバンドパスフィルター)のフィルターセットを用いた。
テトラメチルローダミンの観察は、励起フィルター(550/25nmのバンドパスフィルター)、ビームスプリッター(570nm)、蛍光フィルター(605/70nmのバンドパスフィルター)のフィルターセットを用いた。
QD655の観察は、励起フィルター(350/50nmのバンドパスフィルター)、ビームスプリッター(400nm)、蛍光フィルター(590nmのロングパスフィルター)のフィルターセットを用いた。
組織アレイスライド中の予めDAB染色で染色濃度が異なることが予測された8スポットについて、各60細胞の輝点の数と各輝点の輝度を計測した。
【0083】
[実験結果A]
まず、蛍光物質集積粒子や量子ドットを用いた場合に得られた各輝点の輝度分布(輝度毎の輝点数)に基づいて、1粒子当たりの輝度を求めた。具体的には、輝度分布から、最も頻度の高い輝度を1粒子当たりの輝度とする。
Cy5集積・シリカナノ粒子、テトラメチルローダミン集積・シリカナノ粒子、QD655のそれぞれを用い、8スポット(各スポットにつき各60細胞)から輝点を計測した。その結果、Cy5集積・シリカナノ粒子を用いた測定では輝度82の輝点数が最も多く、テトラメチルローダミン集積・シリカナノ粒子を用いた測定では輝度69の輝点数が最も多く、QD655を用いた測定では輝度64の輝点数が最も多かった。
【0084】
表5に、Cy5集積・シリカナノ粒子、テトラメチルローダミン集積・シリカナノ粒子、QD655のそれぞれを用いた場合の、8スポット全体(60細胞×8スポット)から計測された各輝点の輝度分布を示す。輝度の単位はa.u.(任意単位)である。表5は、輝度が0-30、31-60、61-90、91-120、121-150、151-180、181-210、211-255の範囲の輝点数を示している。
【0085】
【表5】

【0086】
表5から、Cy5集積・シリカナノ粒子では、輝度が61-90、151-180、211-255の範囲にピークが存在していることがわかる。Cy5集積・シリカナノ粒子では、輝度82の輝点数が最も多いため、輝度151-180に含まれる輝点は2粒子分の合計輝度であり、輝度211-255に含まれる輝点は3粒子分の合計輝度であることがわかる。このように、輝度分布に基づいて、蛍光物質集積粒子や量子ドット1粒子当たりの輝度を求めることができる。
【0087】
[実験結果B]
次に、実験結果Aの結果に基づいて、Cy5集積・シリカナノ粒子では1粒子当たりの輝度を82、テトラメチルローダミン集積・シリカナノ粒子では1粒子当たりの輝度を69、QD655では1粒子当たりの輝度を64と仮定して、各スポットでの「1細胞当たりの輝度の和」を「1粒子当たりの輝度」で割ることで、各スポットでの「1細胞当たりの粒子数」を求めた。
表6に、Cy5集積・シリカナノ粒子、テトラメチルローダミン集積・シリカナノ粒子、QD655のそれぞれを用いた場合の、各スポットでの1細胞当たりの粒子数を示す。表6において、「-」は、バックグラウンドレベル以上の輝点がないことを示している。
【0088】
【表6】

【0089】
表6に示すように、Cy5集積・シリカナノ粒子、テトラメチルローダミン集積・シリカナノ粒子、QD655のそれぞれについて、1細胞当たりの粒子数の差によりバイオマーカーの発現レベルを定量的に評価することができる。しかし、より微量のバイオマーカーに対する輝点レベルの定量評価(スポット番号2、3)においては、Cy5集積・シリカナノ粒子、テトラメチルローダミン集積・シリカナノ粒子を用いた場合の方が、QD655を用いた場合よりも、検出感度が優れていることがわかる。
【0090】
[実験結果C]
次に、蛍光物質集積粒子又は量子ドットを用いて染色した組織における輝点の経時変化について検討した。
手順3で染色した組織切片を作製してから0日、3日、30日、90日後に、手順4に従って組織アレイスライド中のスポット番号6の組織切片の60細胞に含まれる輝点の数と各輝点の輝度を計測した。次いで、実験結果Bと同様の方法で、1細胞当たりの粒子数を算出した。また、各輝点の輝度の和を細胞数で割ることにより、1細胞当たりの輝度を算出した。
図1に、Cy5集積・シリカナノ粒子、テトラメチルローダミン集積・シリカナノ粒子、QD655のそれぞれを用いた場合の、スポット番号6の組織切片について算出された1細胞当たりの粒子数と1細胞当たりの輝度の経時変化を示す。
図1から、1細胞当たりの輝度は、組織切片の作製から時間が経過するにつれて次第に減少しているが、1細胞当たりの粒子数は、組織切片作製後90日後も安定した数値を示すことがわかる。すなわち、各粒子が発する蛍光輝度は次第に減少するが、組織切片に存在するバイオマーカーと結合した粒子の数は変化しない。したがって、1細胞当たりの粒子数の差に基づいてバイオマーカーの発現レベルを定量的に評価することで、より安定した評価結果を得ることができる。
【0091】
[実験結果D]
次に、蛍光物質集積粒子や量子ドットを用いて染色した場合と蛍光色素単体を用いた場合とを比較した。
蛍光色素単体を用いた場合の例として、Cy5、テトラメチルローダミンに抗ヒトER抗体を結合させたものを用い、手順3と同様の方法で組織アレイスライドを染色し、手順4と同様の方法で組織アレイスライド中の8スポットについて、各60細胞に含まれる輝点の数と各輝点の輝度を計測した。次いで、実験結果Bと同様の方法で、1細胞当たりの粒子数を算出した。
【0092】
表7に、Cy5集積・シリカナノ粒子、テトラメチルローダミン集積・シリカナノ粒子、QD655、Cy5、テトラメチルローダミンのそれぞれを用いた場合の、各スポットでの1細胞当たりの粒子数を示す。表7において、「-」は、バックグラウンドレベル以上の発光がないことを示し、「+」は、バックグラウンドレベル以上の発光はあるが、輝点の判定はできないことを示している。
【0093】
【表7】

【0094】
表7から、蛍光色素単体での組織染色では、バイオマーカーに対する輝点レベルでの定量評価が不可能であることがわかる。
【0095】
以上説明したように、組織切片から計測された蛍光輝点の数に基づいて、生体物質の発現レベルを評価するので、生体物質の定量評価において、安定した評価結果を得ることができる。
【0096】
また、蛍光物質を複数集積した蛍光物質集積粒子を用いることにより、蛍光観察時の1粒子当たりの輝度が高くなるため、微量の生体物質を感度良く、定量的に検出することができる。
【実施例3】
【0097】
[蛍光物質内包ナノ粒子a?fの合成]
[合成例1:蛍光有機色素内包シリカ:Cy5内包シリカナノ粒子の合成]
下記工程(1)?(4)の方法により、「ナノ粒子a」を作製した。
工程(1):Cy5のN-ヒドロキシスクシンイミドエステル誘導体(GEヘルスケア社製)1mg(0.00126mmol)とテトラエトキシシラン 400μL(1.796mmol)とを混合した。
工程(2):エタノール40mL、14%アンモニア水10mLを混合した。
工程(3):工程(2)で作製した混合液を室温下撹拌しているところに、工程(1)で調製した混合液を添加した。添加開始から12時間撹拌を行った。
工程(4):反応混合物を10000gで60分遠心分離を行い、上澄みを除去した。エタノールを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順でエタノールと純水による洗浄を一回ずつ行った。
得られたシリカナノ粒子aの走査型電子顕微鏡(SEM;日立社製S-800型)観察を行ったところ、平均粒径は110nm、変動係数は12%であった。
【0098】
[合成例2:蛍光有機色素内包シリカ:TAMRA内包シリカナノ粒子の合成]
下記工程(1)?(4)の方法により、「ナノ粒子b」を作製した。
工程(1):TAMRAのN-ヒドロキシスクシンイミドエステル誘導体(GEヘルスケア社製)2mg(0.00126mmol)とテトラエトキシシラン400μL(1.796mmol)とを混合した。
工程(2):エタノール40mL、14%アンモニア水10mLを混合した。
工程(3):工程(2)で作製した混合液を室温下撹拌しているところに、工程(1)で調製した混合液を添加した。添加開始から12時間撹拌を行った。
工程(4):反応混合物を10000gで60分遠心分離を行い、上澄みを除去した。エタノールを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順でエタノールと純水による洗浄を一回ずつ行った。
得られたシリカナノ粒子bの走査型電子顕微鏡(SEM;日立社製S-800型)観察を行ったところ、平均粒径は100nm、変動係数は15%であった。
【0099】
[合成例3:量子ドット内包シリカ:発光波長655nmのCdSe/ZnS内包シリカナノ粒子の合成]
下記工程(1)?(4)の方法により、「ナノ粒子c」を作製した。
工程(1):CdSe/ZnSデカン分散液(インビトロジェン社Qdot655)10μLとテトラエトキシシラン40μLとを混合した。
工程(2):エタノール4mL、14%アンモニア水1mLを混合した。
工程(3):工程(2)で作製した混合液を室温下撹拌しているところに、工程(1)で作製した混合液を添加した。添加開始から12時間撹拌を行った。
工程(4):反応混合物を10000gで60分遠心分離を行い、上澄みを除去した。エタノールを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順でエタノールと純水による洗浄を1回ずつ行った。
得られたシリカナノ粒子cのSEM観察を行ったところ、平均粒径は130nm、変動係数は13%であった。
【0100】
[合成例4:量子ドット内包シリカ:発光波長585nmのCdSe/ZnS内包シリカナノ粒子の合成]
下記工程(1)?(4)の方法により、「ナノ粒子d」を作製した。
工程(1):CdSe/ZnSデカン分散液(インビトロジェン社Qdot585)10μLとテトラエトキシシラン40μLとを混合した。
工程(2):エタノール4mL、14%アンモニア水1mLを混合した。
工程(3):工程(2)で作製した混合液を室温下撹拌しているところに、工程(1)で作製した混合液を添加した。添加開始から12時間撹拌を行った。
工程(4):反応混合物を10000gで60分遠心分離を行い、上澄みを除去した。エタノールを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順でエタノールと純水による洗浄を1回ずつ行った。
得られたシリカナノ粒子dのSEM観察を行ったところ、平均粒径は120nm、変動係数は12%であった。
【0101】
[合成例5:蛍光有機内包ポリスチレンナノ粒子:Cy5内包ポリスチレンナノ粒子の合成]
下記工程(1)?(3)の方法により、「ナノ粒子e」を作製した。
工程(1):Cy5のN-ヒドロキシスクシンイミドエステル誘導体(GEヘルスケア社製)1mg(0.00126mmol)を、ジクロロメタン60μL、エタノール120μLに溶解させた。
工程(2):表面官能基アミノ基で粒径100nmポリスチレンナノ粒子水分散液(micromod社製)1.5mLを激しく撹拌しているところに、工程(1)で作製した混合液を添加した。添加開始から12時間撹拌を行った。
工程(3):反応混合物を10000gで60分遠心分離を行い、上澄みを除去した。エタノールを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順でエタノールと純水による洗浄を1回ずつ行った。
得られたポリスチレンナノ粒子eのSEM観察を行ったところ、平均粒径は100nm、変動係数は5%であった。
【0102】
[合成例6:蛍光有機内包ポリスチレンナノ粒子:TAMRA内包ポリスチレンナノ粒子の合成]
下記工程(1)?(3)の方法により、「ナノ粒子f」を作製した。
工程(1):TAMRAのN-ヒドロキシスクシンイミドエステル誘導体(GEヘルスケア社製)2mg(0.00126mmol)を、ジクロロメタン60μL、エタノール120μLに溶解させた。
工程(2):表面官能基アミノ基で粒径100nmポリスチレンナノ粒子水分散液(micromod社製)1.5mLを激しく撹拌しているところに、工程(1)で作製した混合液を添加した。添加開始から12時間撹拌を行った。
工程(3):反応混合物を10000gで60分遠心分離を行い、上澄みを除去した。エタノールを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順でエタノールと純水による洗浄を1回ずつ行った。
得られたポリスチレンナノ粒子fのSEM観察を行ったところ、平均粒径は100nm、変動係数は6%であった。
【0103】
[蛍光物質内包シリカナノ粒子への抗体の結合]
蛍光物質内包シリカナノ粒子a?dに対し、以下の手順により抗体結合を行った。
詳しくは、ナノ粒子a,cに対して工程(1)?(7),工程(8)?(9),工程(12)?(14)の操作をおこなって抗体を結合し「粒子A,C」を形成し、ナノ粒子b,dに対して工程(1)?(7),工程(10)?(11),工程(15)?(17)の操作をおこなって抗体を結合し「粒子B,D」を形成した。
【0104】
工程(1):1mgのナノ粒子a?dを純水5mLに分散させた。アミノプロピルトリエトキシシラン水分散液100μLを添加し、室温で12時間撹拌した。
工程(2):反応混合物を10000gで60分遠心分離を行い、上澄みを除去した。
工程(3):エタノールを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順でエタノールと純水による洗浄を1回ずつ行った。得られたアミノ基修飾したシリカナノ粒子a?dのFT-IR測定を行ったところ、アミノ基に由来する吸収が観測でき、アミノ基修飾できたことを確認できた。
工程(4):工程(3)で得られたアミノ基修飾したシリカナノ粒子a?dを、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を2mM含有したPBS(リン酸緩衝液生理的食塩水)を用いて3nMに調整した。
工程(5):工程(4)で調整した溶液に最終濃度10mMとなるようSM(PEG)12(サーモサイエンティフィック社製、succinimidyl-[(N-maleomidopropionamid)-dodecaethyleneglycol]ester)を混合し、1時間反応させた。
工程(6):反応混合液を10000gで60分遠心分離を行い、上澄みを除去した。
工程(7):EDTAを2mM含有したPBSを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行った。最後に500μLPBSを用い再分散させた。
【0105】
工程(8):100μgの抗ヒトER抗体を100μLのPBSに溶解させたところに、1Mジチオスレイトール(DTT)を添加し、30分反応させた。
工程(9):反応混合物についてゲルろ過カラムにより過剰のDTTを除去し、還元化抗ヒトER抗体溶液を得た。
【0106】
工程(10):100μgの抗HER2抗体を100μLのPBSに溶解させたところに、1Mジチオスレイトール(DTT)を添加し、30分反応させた。
工程(11):反応混合物についてゲルろ過カラムにより過剰のDTTを除去し、還元化抗HER2抗体溶液を得た。
【0107】
工程(12):粒子aまたは粒子cを出発原料にして、工程(7)で得られた粒子分散液と工程(9)で得られた還元化抗ヒトER抗体溶液とをPBS中で混合し、1時間反応させた。
工程(13):10mMメルカプトエタノール4μLを添加し、反応を停止させた。
工程(14):反応混合物を10000gで60分遠心分離を行い、上澄みを除去した後、EDTAを2mM含有したPBSを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行った。最後に500μLのPBSを用い再分散させ、抗ヒトER抗体結合した蛍光物質内包シリカナノ粒子Aおよび粒子Cを得た。
【0108】
工程(15):粒子bまたは粒子dを出発原料にして、工程(7)で得られた粒子分散液と工程(11)で得られた還元化抗HER2抗体溶液とをPBS中で混合し、1時間反応させた。
工程(16):10mMメルカプトエタノール4μLを添加し、反応を停止させた。
工程(17):反応混合物を10000gで60分遠心分離を行い、上澄みを除去した後、EDTAを2mM含有したPBSを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行った。最後に500μLのPBSを用い再分散させ、抗HER2抗体結合した蛍光物質内包シリカナノ粒子Bおよび粒子Dを得た。
【0109】
[蛍光物質内包ポリスチレンナノ粒子への抗体の結合]
蛍光物質内包ポリスチレンナノ粒子e,fに対し、以下の手順により抗体結合を行った。
詳しくは、ナノ粒子eに対して工程(1)?(2),工程(5)?(7)の操作をおこなって抗体を結合し「粒子E」を形成し、ナノ粒子fに対して工程(3)?(4),工程(8)?(10)の操作をおこなって抗体を結合し「粒子F」を形成した。
【0110】
工程(1):100μgの抗ヒトER抗体を100μLのPBSに溶解させたところに、1Mジチオスレイトール(DTT)を添加し、30分反応させた。
工程(2):反応混合物についてゲルろ過カラムにより過剰のDTTを除去し、還元化抗ヒトER抗体溶液を得た。
【0111】
工程(3):100μgの抗HER2抗体を100μLのPBSに溶解させたところに、1Mジチオスレイトール(DTT)を添加し、30分反応させた。
工程(4):反応混合物についてゲルろ過カラムにより過剰のDTTを除去し、還元化抗HER2抗体溶液を得た。
【0112】
工程(5):粒子eの分散液と工程(2)で得られた還元化抗ヒトER抗体溶液とをPBS中で混合し、1時間反応させた。
工程(6):10mMメルカプトエタノール4μLを添加し、反応を停止させた。
工程(7):反応混合物を10000gで60分遠心分離を行い、上澄みを除去した後、EDTAを2mM含有したPBSを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行った。最後に500μLのPBSを用い再分散させ、抗ヒトER抗体結合した蛍光物質内包ポリスチレンナノ粒子Eを得た。
【0113】
工程(8):粒子fの分散液と工程(4)で得られた還元化抗ヒトHER2抗体溶液とをPBS中で混合し、1時間反応させた。
工程(9):10mMメルカプトエタノール4μLを添加し、反応を停止させた。
工程(10):反応混合物を10000gで60分遠心分離を行い、上澄みを除去した後、EDTAを2mM含有したPBSを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行った。最後に500μLのPBSを用い再分散させ、抗HER2抗体結合した蛍光物質内包ポリスチレンナノ粒子Fを得た。
【0114】
[蛍光物質への抗体結合]
比較として、抗ヒトER抗体をCy5に結合させた「色素G」と、抗HER2抗体をTAMRAに結合させた「色素H」とを、以下の手順により作製した。
詳しくは、工程(1)?(2),工程(5)?(6),工程(9)?(11)の操作をおこなって色素Gを形成し、工程(3)?(4),工程(7)?(8),工程(12)?(14)の操作をおこなって色素Hを形成した。
【0115】
工程(1):100μgの抗ヒトER抗体を100μLのPBSに溶解させたところに、1Mジチオスレイトール(DTT)を添加し、30分反応させた。
工程(2):反応混合物についてゲルろ過カラムにより過剰のDTTを除去し、還元化抗ヒトER抗体溶液を得た。
【0116】
工程(3):100μgの抗HER2抗体を100μLのPBSに溶解させたところに、1Mジチオスレイトール(DTT)を添加し、30分反応させた。
工程(4):反応混合物についてゲルろ過カラムにより過剰のDTTを除去し、還元化抗HER2抗体溶液を得た。
【0117】
工程(5):Cy5のN-ヒドロキシスクシンイミドエステル誘導体(GEヘルスケア社製)1mg(0.00126mmol)を、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を2mM含有したPBS(リン酸緩衝液生理的食塩水)を用いて3nMに調整した。
工程(6):工程(5)で調整した溶液に最終濃度10mMとなるようSM(PEG)12(サーモサイエンティフィック社製、succinimidyl-[(N-maleomidopropionamid)-dodecaethyleneglycol]ester)を混合し、1時間反応させた。
【0118】
工程(7):TAMRAのN-ヒドロキシスクシンイミドエステル誘導体(GEヘルスケア社製)2mg(0.00126mmol)を、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を2mM含有したPBS(リン酸緩衝液生理的食塩水)を用いて3nMに調整した。
工程(8):工程(7)で調整した溶液に最終濃度10mMとなるようSM(PEG)12(サーモサイエンティフィック社製、succinimidyl-[(N-maleomidopropionamid)-dodecaethyleneglycol]ester)を混合し、1時間反応させた。
【0119】
工程(9):工程(6)で得られた反応混合物に、工程(2)で得られた還元化抗ヒトER抗体溶液をPBS中で混合し、1時間反応させた。
工程(10):10mMメルカプトエタノール4μLを添加し、反応を停止させた。
工程(11):ゲルろ過カラムにより過剰のメルカプトエタノールを除去し、Cy5結合した還元化抗ER2抗体溶液(色素G)を得た。
【0120】
工程(12):工程(6)で得られた反応混合物に工程(4)で得られた還元化抗HER2抗体溶液をPBS中で混合し、1時間反応させた。
工程(13):10mMメルカプトエタノール4μLを添加し、反応を停止させた。
工程(14):ゲルろ過カラムにより過剰のメルカプトエタノールを除去し、TAMRA結合した還元化抗HER2抗体溶液(色素H)を得た。
【0121】
以上の処理により形成した粒子A?F,色素G?Hの特性を表8に示す。
【0122】
【表8】

【0123】
[評価実験:(1)粒子A?F,色素G?Hを用いた組織染色]
作製した粒子A?F,色素G?Hを用いてヒト乳房組織の免疫染色を行った。
染色切片はコスモバイオ社製の組織アレイスライド(CB-A712)を用いた。あらかじめDAB染色によりERおよびHER2染色濃度を観察し、(1)ER発現量が高くてHER2発現量も高い、(2)ER発現量が高くてHER2発現量が低い、(3)ER発現量が低くてHER2発現量も低い異なる3種のロットを用意し、それぞれ染色を行った。
【0124】
(1):キシレンを入れた容器に病理切片を30分浸漬させた。途中3回キシレンを交換した。
(2):エタノールを入れた容器に病理切片を30分浸漬させた。途中3回エタノールを交換した。
(3):水を入れた容器に、病理切片を30分浸漬させた。途中3回水を交換した。
(4):10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)に病理切片を30分浸漬させた。
(5):121℃で10分オートクレーブ処理を行った。
(6):PBSを入れた容器に、オートクレーブ処理後の切片を30分浸漬させた。
(7):1%BSA含有PBSを組織に載せて、1時間放置した。
【0125】
(8):1%BSA含有PBSで0.05nMに希釈した抗ヒトER抗体結合した蛍光体内包ナノ粒子A10μLと、1%BSA含有PBSで0.05nMに希釈した抗HER2抗体結合した蛍光体内包ナノ粒子B10μLとを混合し、組織に載せて3時間放置した。
(9):1%BSA含有PBSで0.05nMに希釈した抗ヒトER抗体結合した蛍光体内包ナノ粒子C10μLと、1%BSA含有PBSで0.05nMに希釈した抗HER2抗体結合した蛍光体内包ナノ粒子D10μLとを混合し、(8)とは別なスライドの組織に載せて3時間放置した。
(10):1%BSA含有PBSで0.05nMに希釈した抗ヒトER抗体結合した蛍光体内包ナノ粒子E10μLと、1%BSA含有PBSで0.05nMに希釈した抗HER2抗体結合した蛍光体内包ナノ粒子F10μLとを混合し、(8)および(9)とは別なスライドの組織に載せて3時間放置した。
(11):1%BSA含有PBSで0.05nMに希釈した抗ヒトER抗体結合した色素G10μLと、1%BSA含有PBSで0.05nMに希釈した抗HER2抗体結合した色素H10μLとを混合し、(8)?(10)とは別なスライドの組織に載せて3時間放置した。
【0126】
(12):PBSを入れた容器に、染色後の切片をそれぞれ30分浸漬させた。
(13):Merck Chemicals社製Aquatexを滴下後、カバーガラスを載せ封入した。
【0127】
[評価実験:(2)粒子A?F,色素G?Hを用いて染色した組織の輝点計測]
染色した組織切片に励起光を照射して蛍光発光させ、その組織切片からオリンパス社製DSU共焦点顕微鏡を用いて画像を取得し、ジーオンオングストロング社製輝点計測ソフト、G-countを用いて輝点数および発光輝度を計測した。
Cy5およびQdot655については、励起波長633nm、検出波長660nmとした。TAMRAおよびQdot585については、励起波長543nm、検出波長580nmとして観察を行った。
輝点数は、組織アレイスライド中の8スポットについて各30細胞の輝点を計測し、その平均値を求めた。発光輝度は、8スポットそれぞれについて視野全体の蛍光強度を合算し、その平均値を求めた。
【0128】
表9,表10に、3種のロットと粒子A?F,色素G?Hの組合せとに応じた「実験例1?7」における輝点数および発光輝度の計測結果を示す。
【0129】
【表9】

【0130】
【表10】

【0131】
表9から、蛍光有機色素を単独で抗体に結合した実験例4では、蛍光強度が弱くバックグランド光と区別がつかず、標的とする生体物質が検出できなかった。これに対し、蛍光物質内包粒子を用いた実験例1?3では、蛍光強度が高く、標的とする生体物質の検出が容易に可能となった。
表10から、ER2およびHER2の発現量の異なる切片を用いた実験例5?7では、それぞれの発現量に応じて輝点数および蛍光強度が変化しており、蛍光物質,生体物質認識部位が互いに異なる粒子を染色試薬として使用すれば、複数の生体物質の発現レベルを同一切片で計測できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明は、微量の生体物質を定量的に検出するのに好適に利用することができる。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体物質認識部位が結合された、蛍光物質を複数集積した樹脂粒子を、染色試薬として用いて組織切片を染色した情報から、前記樹脂粒子に基づく輝点数及び/又は発光輝度を計測するために行う組織染色方法において、
前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子が、前記蛍光物質が前記樹脂粒子内部に分散された樹脂粒子又は前記蛍光物質が前記樹脂粒子外部に集積した樹脂粒子であり、当該樹脂粒子の平均粒子径が30nm?800nmであり、前記蛍光物質が、有機蛍光色素であって、
目的とする生体物質と前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子とを、反応させたのち、未反応の前記蛍光物質を複数集積した樹脂粒子を除去する工程を有する、組織染色方法。
【請求項2】
請求項1に記載の組織染色方法において、
前記蛍光物質が前記樹脂粒子内部に分散された樹脂粒子は、前記蛍光物質を複数内包した樹脂粒子である組織染色方法。
【請求項3】 (削除)
【請求項4】
病理切片から生体物質を特異的に検出する生体物質検出方法において、
染色試薬を用いて前記病理切片を染色する工程と、
染色後の前記病理切片から前記生体物質を検出する工程とを、有しており、
前記病理切片を染色する工程では、前記染色試薬として、第1の生体物質認識部位が結合し、かつ、第1の蛍光物質を複数集積した第1の樹脂粒子と、前記第1の生体物質認識部位とは異なる第2の生体物質認識部位が結合し、かつ、前記第1の蛍光物質とは異なる蛍光波長を有する第2の蛍光物質を複数集積した第2の樹脂粒子とを、用い、
前記第1の樹脂粒子が、前記第1の蛍光物質が前記第1の樹脂粒子内部に分散された樹脂粒子又は前記第1の蛍光物質が前記第1の樹脂粒子外部に集積した樹脂粒子であり、
前記第2の樹脂粒子が、前記第2の蛍光物質が前記第2の樹脂粒子内部に分散された樹脂粒子又は前記第2の蛍光物質が前記第2の樹脂粒子外部に集積した樹脂粒子であり、
前記第1及び第2の樹脂粒子の平均粒子径がそれぞれ30nm?800nmであり、前記第1の蛍光物質及び前記第2の蛍光物質が、有機蛍光色素であることを特徴とする生体物質検出方法。
【請求項5】
病理切片から生体物質を特異的に検出する生体物質検出方法において、
染色試薬を用いて前記病理切片を染色する工程と、
染色後の前記病理切片から前記生体物質を検出する工程とを、有しており、
前記病理切片を染色する工程では、前記染色試薬として、第1の生体物質認識部位が結合し、かつ、有機蛍光色素である第1の蛍光物質を複数集積した第1の粒子と、前記第1の生体物質認識部位とは異なる第2の生体物質認識部位が結合し、かつ、前記第1の蛍光物質とは異なる蛍光波長を有する有機蛍光色素である第2の蛍光物質を複数集積した第2の粒子とを、用い、
前記生体物質を検出する工程では、
前記第1の粒子及び前記第2の粒子における1粒子あたりの輝度と、
輝点数の計測に基づいて求められる輝度分布のピーク値と、から、
前記第1の粒子及び前記第2の粒子の数を求めることを特徴とする生体物質検出方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の生体物質検出方法において、
前記第1の生体物質認識部位が抗ヒトER抗体であり、
前記第2の生体物質認識部位が抗HER2抗体であることを特徴とする生体物質検出方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-07-23 
出願番号 特願2015-58870(P2015-58870)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (G01N)
P 1 651・ 121- YAA (G01N)
P 1 651・ 55- YAA (G01N)
P 1 651・ 537- YAA (G01N)
P 1 651・ 851- YAA (G01N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 草川 貴史  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 福島 浩司
渡戸 正義
登録日 2017-04-21 
登録番号 特許第6128153号(P6128153)
権利者 コニカミノルタ株式会社
発明の名称 組織染色方法および生体物質検出方法  
代理人 特許業務法人光陽国際特許事務所  
代理人 特許業務法人光陽国際特許事務所  
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