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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C22C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C22C
管理番号 1343900
異議申立番号 異議2017-701182  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-10-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-12-12 
確定日 2018-08-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6179485号発明「フェライト系ステンレス鋼板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6179485号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔3?4〕について訂正することを認める。 特許第6179485号の請求項1?4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6179485号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成26年8月14日に出願され、平成29年7月28日に特許権の設定登録がされ、同年8月16日に特許掲載公報が発行され、その後、同年12月12日付けで請求項1?4に対し、特許異議申立人である岩谷幸祐(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成30年4月10日付けで当審から特許権者に対して取消理由が通知され、同年5月25日付けで特許権者から意見書の提出とともに訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、同年6月8日付けで当審から申立人に対し訂正請求があった旨を通知するとともに相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人から意見書の提出はされなかったものである。

第2 本件訂正の適否について

1 本件訂正請求の趣旨

本件訂正請求の趣旨は「特許第6179485号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3、4について訂正することを認める。」というものである。

2 訂正事項

本件訂正請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項1のとおりである。なお、下線は特許権者が訂正箇所を示すために付したものである。

(訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項3の「V:0.01?0.30%、Zr:0.01?0.30%、B:0.0003?0.0030%、Mg:0.0005?0.0030%」を「Zr:0.01?0.30%、Mg:0.0005?0.0030%」に訂正する。

3 一群の請求項について

本件訂正前の請求項4は、本件訂正前の請求項3を引用しているから、請求項3?4は、本件訂正前において一群の請求項に該当する。
したがって、本件訂正は、一群の請求項に対してなされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

4 訂正要件の検討

(1)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否

訂正事項1に係る本件訂正は、請求項1又は2に記載のフェライト系ステンレス鋼板が、さらに追加的に含有する1種又は2種以上の元素の選択肢から「V:0.01?0.30%」及び「B:0.0003?0.0030%」を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合し、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(2)独立特許要件

本件訂正請求では、請求項3?4に対して特許異議の申立てがされているので、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項3及び4に記載されている事項により特定される発明に対して、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の適用はない。

5 小括

以上のとおり、本件訂正請求は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであって、かつ、同条第4項及び同条第9項で準用する同法126条第5項?第7項の規定に適合するから、訂正後の請求項〔3?4〕について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて

1 本件発明

前記第2のとおり、本件訂正が認められたので、本件特許の請求項1?4に係る発明(以下、「本件発明1?4」といい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
質量%で、C:0.025%以下、Si:0.05?1.00%、Mn:0.05?1.00%、P:0.040%以下、S:0.030%以下、Al:0.001?0.100%、Cr:12.0?15.0%、Cu:0.10?0.60%、Ni:0.01?0.80%、Ti:0.10?0.40%、Nb:0.010?0.100%およびN:0.020%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
Ti含有量およびNb含有量が、下記式(1)を満たすことを特徴とするフェライト系ステンレス鋼板。
0.10≦Nb/Ti≦0.30 (1)
式(1)における元素記号は、各元素の含有量を意味する。
【請求項2】
さらに、質量%で、Mo:0.01?0.30%、Co:0.01?0.50%およびW:0.01?0.50%のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
【請求項3】
さらに、質量%でZr:0.01?0.30%、Mg:0.0005?0.0030%、Ca:0.0003?0.0030%、Y:0.001?0.20%およびREM(希土類金属):0.001?0.10%のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
【請求項4】
さらに、質量%でSn:0.001?0.50%およびSb:0.001?0.50%のうちから選んだ1種または2種を含有することを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼板。」

2 取消理由の内容

本件訂正前の請求項3及び4に係る発明について、平成30年4月10日付けで当審から特許権者に対して通知した取消理由の内容は以下のとおりである。

「理由1(新規性欠如)
本件特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。

理由2(進歩性欠如)
本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。


(1)本件発明

本件特許の請求項1?4に係る発明(以下、『第1発明』?『第4発明』という。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(2)証拠方法

異議申立人が提出した甲第1号証?甲第5号証(以下、『甲1』?『甲5』という。)は、以下のとおりである。

甲1:特開平11-106875号公報
甲2:特開2012-207298号公報
甲3:特開2007-270226号公報
甲4:特開2010-31315号公報
甲5:特開2001-294991号公報

(3)甲1を主引例とする場合について

ア 本件特許の第3発明は、甲1に記載された発明であるか、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
その理由は、特許異議申立書の第5頁第1行?第8頁第8行,第13頁第17行?第14頁第21行に記載されたとおりである。
ただし、上記で引用した記載のうち、第13頁第18行の『(a)第1発明、第2発明および第3発明について』という記載は、『(a)第3発明について』と読み替え、第14頁第1?2行の『この鋼板は・・・を満足する。』という記載、及び、同頁第4?6行の『請求項3には・・・が記載されており(記載1-1)、』(なお、『・・・』は記載の省略を表す。以下同様。)という記載は削除し、同頁第19行の『よって、第1発明、第2発明および第3発明は、』という記載は、『よって、第3発明は、』と読み替えるものとする。

イ 本件特許の第4発明は、甲1及び甲5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
その理由は、特許異議申立書の前記ア(ア)で引用した箇所に加えて、第13頁第4?15行,第15頁第1?13行に記載されたとおりである。

ウ なお、本件特許の第1発明及び第2発明は、Vを成分として含有しない一方、甲1の請求項2には、Vを必須の成分として含有することが記載されており、発明の詳細な説明にも『Nb,Vは、本発明の主要元素であり』(【0028】)と記載されているから、甲1に記載された発明においてVの含有量を0質量%又は不可避的不純物とみなせる量にすることは、当業者であっても容易になし得たこととはいえない。

(3)甲第2号証を主引例とする場合について

本件特許の第3発明及び第4発明は、甲2に記載された発明であるか、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
その理由は、特許異議申立書の第5頁第1行?第6頁第6行,第8頁第9行?第9頁末行,第10頁『記載2-2:表1』,第15頁第14行?第16頁第22行に記載されたとおりである。
ただし、上記で引用した記載のうち、第16頁第15?19行の『この鋼15は・・・当業者が容易になしえることである。』という記載は削除するものとする。」

3 当審の判断

事案に鑑み、前記2の当審から通知した取消理由と取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由とをまとめて検討する。

(1)特許異議申立理由

申立人の主張する特許異議申立理由は以下のとおりである。
なお、前記2の当審から通知した取消理由は、下記の申立理由1-1、1-2、1-4、2-1、2-2に包含される。

ア 甲第1号証を主たる引用文献とする新規性欠如・進歩性欠如の申立理由

(申立理由1-1)
本件発明1?3は、甲第1号証に記載された発明であるから、本件特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。

(申立理由1-2)
本件発明1?3は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第第2項の規定に違反してされたものである。

(申立理由1-3)
本件発明1?3は、甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第第2項の規定に違反してされたものである。

(申立理由1-4)
本件発明4は、甲第1号証及び甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第第2項の規定に違反してされたものである。

イ 甲第2号証を主たる引用文献とする新規性欠如・進歩性欠如の申立理由

(申立理由2-1)
本件発明3及び4は、甲第2号証に記載された発明であるから、本件特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。

(申立理由2-2)
本件発明3及び4は、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第第2項の規定に違反してされたものである。

(申立理由2-3)
本件発明3及び4は、甲第2号証?甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第第2項の規定に違反してされたものである。

ウ 証拠方法

甲第1号証:特開平11-106875号公報
甲第2号証:特開2012-207298号公報
甲第3号証:特開2007-270226号公報
甲第4号証:特開2010-31315号公報
甲第5号証:特開2001-294991号公報

(2)各甲号証の記載事項

ア 甲第1号証(特開平11-106875号公報)には、以下の記載がある。

「【請求項2】C:0.001?0.015wt%、
Si:1.0wt%以下、
Mn:1.0wt%以下、
P:0.05wt%以下、
S:0.010wt%以下、
Cr:8?30wt%、
Al:0.08wt%以下、
N:0.005?0.015wt%、
O:0.0080wt%以下、
Ti:0.25wt%以下で、Ti/N≧12を満足して含み、
NbおよびVが、(Nb+V):0.05?0.10wt%かつ、V/Nb:2?5を満足して含有し、さらにMo:2.0wt%以下、Ni:1.0wt%以下およびCu:1.0wt%から選ばれる1種又は2種以上を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする深絞り性と耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は・・・特に深絞り性と耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法に関する。」
「【0007】
【発明が解決しようとする課題】・・・従来技術によって製造したフェライト系ステンレス鋼では、未だ、深絞り性と耐リジング性が十分なレベルには至っておらず、特に過酷な深絞り加工が施された場合に、リジングが発生するという問題があった。本発明は、このような従来技術の実状に鑑み、深絞り性と深絞り加工時の耐リジングとを共に向上させたフェライト系ステンレス鋼板およびその製造技術を提案することにある。・・・」
「【0014】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の基礎となった実験について述べる。
(実験1)・・・
【0015】(実験2)・・・
【0016】(実験3)・・・
【0017】以上の各実験結果から、成形加工性(特に深絞り性)と、過酷な深絞り加工が施される場合の耐リジング性の改善には、Ti/N≧12かつ、(Nb+V)≧0.05wt%かつ、2≦V/Nb≦5の条件が必要不可欠であり、さらに脱スケール後の表面光沢の点から(Nb+V)≦0.10wt%であることが必要不可欠であることがわかった。」
「【0028】(Nb+V):0.05?0.10wt%、V/Nb:2?5
Nb,Vは、本発明の主要元素であり、前述した実験結果より明らかなように、(Nb+V)が0.05wt%を超えると・・・成形加工性が著しく改善される。・・・一方、0.10wt%を超えて添加すると、脱スケール後の表面光沢が著しく低下し、実用上の支障になる・・・。一方、V/Nbについては、耐リジング性の点から、その特性が向上する2?5の範囲とする。
【0029】Mo:2.0wt%以下、Cu:1.0wt%以下、Ni:1.0wt%以下
Mo,CuおよびNiは、いずれも、ステンレス鋼の耐食性向上に有効な元素であり、添加量が増すほど耐食性は向上する。・・・Cu量の上限は1.0wt%とする。さらに・・・Ni量の上限は1.0wt%とする。・・・
【0030】B:0.0005?0.0030wt%、Ca:0.0007?0.0030wt%、Mg:0.0005?0.0030wt%
B,CaおよびMgは、いずれも、微量の添加により、Ti含有鋼の連続鋳造の際に発生しやすい・・・イマージョンノズルの閉塞を防止するのに有効な元素である。・・・Bは0.0005wt%以上、Caは0.0007wt%以上、Mgは0.0005wt%以上をそれぞれ添加することにより、ノズル閉塞度が著しく低下する・・・。・・・しかし、過剰な添加は耐食性の劣化を招くので、いずれの元素ともその上限を0.0030wt%とする。」
「【0032】
【実施例】・・・表1に示す組成を有する鋼を・・・厚さ200mmの連鋳スラブとし・・・熱間圧延機にて・・・板厚4mmの熱延鋼帯に圧延した。得られた熱延鋼帯を・・・連続焼鈍し、酸洗の後、冷間圧延により、板厚0.8mmの鋼帯とした。この冷延鋼帯を・・・連続仕上げ焼鈍し、酸洗後、スキンパス圧延を行って・・・ステンレス鋼板とした。・・・」
「【0034】
【表1】


なお、「・・・」は、記載の省略を表す(以下同様)。

イ 甲第2号証(特開2012-207298号公報)には、以下の記載がある。

「【請求項1】
質量%で、
C:0.01%以下、
Si:1%以下、
Mn:1%以下、
P:0.04%以下、
S:0.005%以下、
Mo:0.1%以下、
Cr:11%?19%、
Ti:10×(C+N)以上0.3%以下、
Al:0.02?0.2%、
N:0.015%以下、
B:0.0004%?0.0015%、
をそれぞれ含有し、かつ固溶Bを0.0003%以上含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼組成を有し、
JIS G0571規定のシュウ酸電解エッチングを行った際に、ボライドを起因とするエッチピットが、粒界上に2×10^(-5)個/μm以下であることを特徴とする疲労特性に優れた容器用フェライト系ステンレス鋼板。
【請求項2】
質量%で、さらに
V:0.005?0.2%、
Nb:0.005?0.2%、
の1種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の疲労特性に優れた容器用フェライト系ステンレス鋼板。
【請求項3】
さらに、質量%で、
Ni:0.005?0.5%、
Cu:0.005?0.5%、
Sn:0.005?0.3%、
の1種以上を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の疲労特性に優れた容器用フェライト系ステンレス鋼板。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は・・・特に、自動車用燃料タンク等の使用中に圧力変動のある容器用に使用される疲労特性に優れたフェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らが、高純度フェライト系ステンレス鋼板を容器用として適用したところ、加工性は良好であるものの、疲労特性が想定よりも良くないことが判明した。・・・しかし・・・従来技術で製造されたフェライト系ステンレス鋼板では、良好な疲労特性を確保することは困難であった。・・・
【0007】
そこで、本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、良加工性を有する高純度フェライト系ステンレス鋼板において、B添加量を調整するとともに、粒界上へのボライドの析出を抑制することにより疲労特性を向上させた容器用フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。」
「【0016】
・・・また、%は特に断りがない場合は質量%を意味する。」
「【0022】
Cr:11?19%
Crは耐食性を発現するための必須な元素である。その効果を発現するためには、11%以上の添加が必要である。しかし、過度の添加は加工性が低下するため、19%を上限とする。・・・」
「【0027】
B:0.0004%?0.0015%
固溶B:0.0003%以上
Bは本発明において、疲労特性を向上させるために非常に重要な元素である。Bを固溶Bとして粒界に偏析させることにより粒界強化を図ることができる。・・・その効果を発現させるためには、0.0004%以上の添加が必要である。しかし、0.0015%を超えて添加すると・・・疲労特性向上の効果が消滅するため、上限を0.0015%とする。
また、このようなB添加による効果発現は、固溶B量に左右される・・・ため、固溶Bを0.0003%以上含有する必要がある。・・・」
「【0030】
V:0.005?0.2%
Vは、固溶Vとして粒界に偏析することにより、疲労特性を向上させる効果を有する。その効果は、0.005%以上の添加で発現する。しかし、過度に添加すると加工性が低下するため、Vの含有量を0.005?0.2%とすることが好ましい。」
「【0032】
また、本実施形態において、上記元素に加えて、Ni:0.005?0.5%、Cu:0.005?0.5%、Sn:0.005?0.3%の一種以上を添加してもよい。
Ni、Cu、Snはそれぞれ、耐食性を向上させる元素であり、耐食性の向上が必要な場合添加できる。その効果を発現させるためには、0.005%以上の添加が望ましい。しかし、Ni、Cu、Snは多量に添加すると、加工性を著しく低下させるため、その上限を、Ni、Cuは0.5%、Snは0.3%とすることが望ましい。
【0033】
また、本実施形態におけるフェライト系ステンレス鋼板は、上記した元素以外の残部は実質的にFeからなり、不可避不純物をはじめ、本発明の作用効果を害さない元素を微量に添加することができる。」
「【実施例】
【0041】
・・・
【0042】
本実施例では、まず、表1及び表2に示す成分組成の鋼を溶製してスラブに鋳造し、スラブを熱間圧延して4mm厚の熱延コイルとした。その後、この熱延コイルを酸洗し、0.8mm厚まで冷間圧延を行い冷延板とした。次いで、水素-窒素混合雰囲気にて焼鈍した後、酸洗を行い、製品板とした。・・・」
「【0046】
【表1】

【0047】
【表2】



ウ 甲第3号証(特開2007-270226号公報)には、以下の記載がある。

「【請求項1】
質量%で、
C:0.010%以下、
N:0.010%以下、
Si:0.25%以下、
Mn:0.2%以下、
P:0.03%以下、
S:0.01%以下、
Cr:16.0?20.0%、
Mo:0.5?2.0%未満、
Ti:0.05?0.25%、
Nb:0.05?0.40%、を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、下記(A)式および(B)式を満足することを特徴とする、加工性、溶接性、耐すき間腐食性に優れた貯湯タンク用フェライト系ステンレス鋼。
ここに、
(Ti+Nb)/(C+N)≧20 かつ 0.2≦Ti/(Nb+Ti)≦0.8・・・・(A)
21.5≦(Cr+3.3Mo)≦26・・・・(B)」
「【技術分野】
【0001】
本発明は・・・具体的には・・・給湯システムに付属する貯湯タンクに用いられる・・・フェライト系ステンレス鋼に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
・・・
【0009】
・・・本発明は、Moなどの高価な合金元素を低減した比較的安価な鋼であって、65?70℃の低温の給湯温度において適正な加工性、溶接性、耐すき間腐食性を有する貯湯タンク用フェライト系ステンレス鋼を提供することを課題とする。」
「【0013】
本発明者らは、貯湯タンク用材料の必要特性である、耐すき間腐食性、溶接性、加工性について、新たな合金設計を試み、そのいくつかの成分について実験室溶解を実施し評価した。・・・」
「【0015】
・・・何れの鋼種も(Ti+Nb)/(C+N)≧20を満足する組成とし・・・た。・・・
【0016】
・・・すき間腐食が生じなかった組成範囲は、Cr+3.3Moが・・・21.5以上26以下、かつTi/(Nb+Ti)が0.2以上であることが判明した。・・・またTi/(Nb+Ti)が0.8をこえると・・・外観上問題があるだけでなく・・・すき間腐食も発生する場合があった。・・・」

エ 甲第4号証(特開2010-31315号公報)には、以下の記載がある。

「【0002】
排気系部品にはフェライト系ステンレス鋼板・鋼管が多用されてきている。たとえば、SUH409Lは、Crを11%含有し・・・優れた加工性を有する鋼種であり・・・凝縮水腐食に対してもある程度の抵抗性を発揮するため、最も多く用いられている。また・・・Crを17%含有するAISI439・・・など、耐凝縮水腐食性と塩害耐食性を高めた鋼種も使用されている。」
「【0004】
本発明では、SUH409L(11Cr系)とAISI439(17Cr系)の中間に位置付けられる鋼種を研究開発の対象とし・・・特に、使用温度が400℃以下の条件で適用されることを前提とする。この場合、SUH409Lよりも凝縮水耐食性と湿食主体の塩害耐食性に優れ、加工性とコストがAISI439より優れることが最も重要な問題となる。・・・」

オ 甲第5号証(特開2001-294991号公報)には、以下の記載がある。

「【請求項1】 mass%で、
C :0.0005?0.03%、
Si:0.01?1%、
Mn:0.01?1%、
P :0.04%未満、
S :0.0001?0.01%、
Cr:10?25%、
Ti:0.01?0.8%、
Al:0.005?0.1%、
N :0.0005?0.03%、
Mg:0.0005?0.01%
を含有し、最大径が0.05?5μmのMg系介在物をTiNで覆った形態を有する介在物が3個/mm^(2)以上の密度で鋼中存在し、さらに、{100},{110},{111}コロニーのうち最も大きいコロニーの大きさが圧延方向に2000μm以下、幅方向に500μm以下、板厚方向に300μm以下であることを特徴とする成形性とリジング特性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。」
「【請求項6】 mass%で、
Sb:0.0002?0.005%、
Sn:0.001?0.1%
の1種もしくは2種を、さらに含有することを特徴とする請求項1?5のいずれか記載の成形性とリジング特性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、成形性とリジング特性に優れたフェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法に関する。」
「【0015】
【発明の実施の形態】以下本発明について詳細に説明する。なお、下記の説明における%とはmass%を示すものである。・・・」
「【0027】Sb,Sn:これらの元素は圧延時に変形帯を生成しやすくするため、リジング向上効果がある。Sb:0.0002%、Sn:0.001%以上で効果を発揮するためこれを下限とした。しかしSb:0.005%、Sn:0.1%超添加すると強度上昇等成形性への悪影響をもたらすため、これを上限とした。」

(3)甲第1号証を主たる引用文献とする新規性欠如・進歩性欠如の申立理由について

ア 甲第1号証に記載された発明

前記「(2)」「ア」によれば、甲第1号証には、以下の事項が記載されている。

(ア)甲第1号証に記載された発明は、特に深絞り性と耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法に関するものである(【0001】)。

(イ)従来技術によって製造したフェライト系ステンレス鋼では、未だ、深絞り性と耐リジング性が十分なレベルには至っておらず、特に過酷な深絞り加工が施された場合に、リジングが発生するという問題があった。
そこで、このような従来技術の実状に鑑み、甲第1号証に記載された発明では、深絞り性と深絞り加工時の耐リジングとを共に向上させたフェライト系ステンレス鋼板及びその製造技術を提案することを発明が解決しようとする課題とした(【0007】)。

(ウ)甲1号証に記載された発明の基礎となった実験によれば、成形加工性(特に深絞り性)と、過酷な深絞り加工が施される場合の耐リジング性の改善には、Ti/N≧12かつ、甲1号証に記載された発明の主要元素であるNb及びVについて、(Nb+V)≧0.05wt%かつ、2≦V/Nb≦5の条件が必要不可欠であり、さらに脱スケール後の表面光沢の点から(Nb+V)≦0.10wt%であることが必要不可欠であることがわかった(【0014】?【0017】、【0028】)。

(エ)また、甲1号証に記載された発明のフェライト系ステンレス鋼板に任意に添加できる元素には、Cu:1.0wt%以下、Ni:1.0wt%以下(【請求項2】、【0029】)、B:0.0005?0.0030wt%(【0030】)等がある。

(オ)実施例には、表1(【0034】)の鋼番号13にある、C:0.009wt%、Si:0.44wt%、Mn:0.21wt%、P:0.024wt%、S:0.003wt%、Cr:13.2wt%、Al:0.029wt%、N:0.007wt%、O:0.0015wt%、Ti:0.14wt%、Nb:0.018wt%、V:0.039wt%、B:0.0008wt%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる組成の鋼からフェライト系ステンレス鋼板を製造した例が記載されている(【0032】)。

以上によれば、甲第1号証には、表1の鋼番号13に基づいて認定した以下の「甲1発明」が記載されているものと認められる。

(甲1発明)
C:0.009wt%、Si:0.44wt%、Mn:0.21wt%、P:0.024wt%、S:0.003wt%、Cr:13.2wt%、Al:0.029wt%、N:0.007wt%、O:0.0015wt%、Ti:0.14wt%、Nb:0.018wt%、V:0.039wt%、B:0.0008wt%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼板。

イ 本件発明1について

(ア)対比

a 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「wt%」(重量%)が「質量%」と同一の単位であることは当業者の技術常識であるから、両者は各成分元素の含有量に関して、「質量%で、C:0.009%、Si:0.44%、Mn:0.21%、P:0.024%、S:0.003%、Al:0.029%、Cr:13.2%、Ti:0.14%、Nb:0.018%およびN:0.007%を含有」する点で一致する。

b 甲1発明のTi含有量に対するNb含有量の比は、0.018wt%/0.14wt%=0.13であるから、甲1発明と本件発明1は、「Ti含有量およびNb含有量が、元素記号が各元素の含有量を意味するとして、Nb/Ti=0.13を満たす」点で一致する。

c したがって、本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。

(一致点)
質量%で、C:0.009%、Si:0.44%、Mn:0.21%、P:0.024%、S:0.003%、Al:0.029%、Cr:13.2%、Ti:0.14%、Nb:0.018%およびN:0.007%を含有し、Ti含有量およびNb含有量が、元素記号が各元素の含有量を意味するとして、Nb/Ti=0.13を満たすフェライト系ステンレス鋼板。

(相違点1)
本件発明1は、「質量%で、」「Cu:0.10?0.60%、Ni:0.01?0.80%」を含有するのに対して、甲1発明では、「Cu」及び「Ni」が成分元素として特定されていない点。

(相違点2)
本件発明1では、「O」が成分元素として特定されていないのに対して、甲1発明は、「O:0.0015wt%」を含有する点。

(相違点3)
本件発明1では、「V」が成分元素として特定されていないのに対して、甲1発明は、「V:0.039wt%」を含有する点。

(相違点4)
本件発明1では、「B」が成分元素として特定されていないのに対して、甲1発明は、「B:0.0008wt%」を含有する点。

(イ)相違点の判断

a 相違点1?4はいずれも実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲1発明であるということはできない。

b 次に、事案に鑑み、相違点3について検討すると、前記「ア」「(イ)」及び「(ウ)」にあるとおり、甲第1号証に記載された発明では、Nb及びVは、深絞り性と深絞り加工時の耐リジングとを共に向上させたフェライト系ステンレス鋼板を提案するという課題解決のために必要な「主要元素」であって、その含有量を「0.05wt%≦(Nb+V)≦0.10wt%」かつ「2≦V/Nb≦5」とすることが必要不可欠であるとされているところ、甲1発明において、「0.039wt%」含有されているVを取り除いて「0wt%」又は不可避的不純物とみなせる含有量にまで低減することには、阻害要因があるというべきであり、このようにすることは、当業者であっても容易になし得たこととは到底いえない。
そして、以上の判断は、他の甲号証の記載によって左右されるものではない。

c よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明、又は、甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

ウ 本件発明2?4について

a 本件発明2?4は、いずれも本件発明1を引用しており、本件発明1と同様に「V」が成分元素として特定されていないから、前記「イ」「(イ)」の判断がそのまま妥当する。

b よって、本件発明2及び3は、甲第1号証に記載された発明であるということはできず、甲第1号証に記載された発明、又は、甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。
また、本件発明4は、甲第1号証及び甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

エ 小括

以上のとおりであるから、甲第1号証を主たる引用文献とする新規性欠如・進歩性欠如の申立理由である申立理由1-1?1-4は、いずれも理由がない。

(4)甲第2号証を主たる引用文献とする新規性欠如・進歩性欠如の申立理由について

ア 甲第2号証に記載された発明

前記「(2)」「イ」によれば、甲第2号証には、以下の事項が記載されている。

(ア)甲第2号証に記載された発明は、特に、自動車用燃料タンク等の使用中に圧力変動のある容器用に使用される疲労特性に優れたフェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法に関するものである(【0001】)。

(イ)従来技術で製造された高純度フェライト系ステンレス鋼板を容器用として適用すると、加工性は良好であるものの、良好な疲労特性を確保することは困難であった(【0006】)。
そこで、上記実情に鑑み、甲第2号証に記載された発明は、良加工性を有する高純度フェライト系ステンレス鋼板において、B添加量を調整するとともに、粒界上へのボライドの析出を抑制することにより疲労特性を向上させた容器用フェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法を提供することを発明が解決しようとする課題とした(【0007】)。

(ウ)甲第2号証に記載された発明において、Bは、疲労特性を向上させるために非常に重要な元素であり、Bを固溶Bとして粒界に偏析させることにより粒界強化を図ることができる。その効果を発現させるためには、0.0004%以上の添加が必要であるが、0.0015%を超えて添加すると疲労特性向上の効果が消滅するため、上限を0.0015%とする。また、このようなB添加による効果発現は、固溶B量に左右されるため、固溶Bの含有量を0.0003%以上にする必要がある(【0027】)。

(エ)また、Crは耐食性を発現するための必須な元素であり、その効果を発現するためには、11%以上の添加が必要である。しかし、過度の添加は加工性が低下するため、19%を上限とする(【0022】)。

(オ)さらに、任意に添加できる元素として、V:0.005?0.2%(【0030】)、Sn:0.005?0.3%(【0032】)等があり、残部は実質的にFeからなり、不可避的不純物をはじめ、本発明の作用効果を害さない元素を微量に添加することができる(【0033】)。

(カ)実施例には、表1(【0046】)の「実施例15」にある、質量%で(【0016】)、C:0.009%、N:0.009%、Si:0.20%、Mn:0.20%、P:0.030%、S:0.0010%、Cr:18.0%、Ni:0.10%、Mo:0.02%、Al:0.07%、Ti:0.20%、B:0.0006%、V:0.05%、Nb:0.05%、Cu:0.10%、Sn:0.1%をそれぞれ含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼から容器用フェライト系ステンレス鋼板を製造した例が記載されている(【0041】、【0042】、【0046】、【0047】)。

以上によれば、甲第2号証には、「実施例15」に基づいて認定した以下の「甲2発明」が記載されているものと認められる。

(甲2発明)
質量%で、C:0.009%、N:0.009%、Si:0.20%、Mn:0.20%、P:0.030%、S:0.0010%、Cr:18.0%、Ni:0.10%、Mo:0.02%、Al:0.07%、Ti:0.20%、B:0.0006%、V:0.05%、Nb:0.05%、Cu:0.10%、Sn:0.1%をそれぞれ含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する容器用フェライト系ステンレス鋼板。

イ 本件発明3について

(ア)本件訂正後の請求項3は、請求項1又は2を引用しており、請求項2は請求項1を引用しているから、本件発明3は、請求項1、2の両者を順次引用した請求項3に係る「本件発明3A」と、請求項1のみを引用した請求項3に係る「本件発明3B」とからなる。

(イ)本件発明3Aと甲2発明との対比

a 本件発明3Aと甲2発明とを対比すると、両者は各成分元素の含有量に関して、「質量%で、C:0.009%、Si:0.20%、Mn:0.20%、P:0.030%、S:0.0010%、Al:0.07%、Cu:0.10%、Ni:0.10%、Ti:0.20%、Nb:0.05%およびN:0.009%を含有し、」「さらに、質量%で、Mo:0.02%」を含有する点で一致する。

b 甲2発明のTi含有量に対するNb含有量の比は、0.05質量%/0.20質量%=0.25であるから、甲2発明と本件発明3Aは、「Ti含有量およびNb含有量が、元素記号が各元素の含有量を意味するとして、Nb/Ti=0.25を満たす」点で一致する。

c したがって、本件発明3Aと甲2発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。

(一致点)
質量%で、C:0.009%、Si:0.20%、Mn:0.20%、P:0.030%、S:0.0010%、Al:0.07%、Cu:0.10%、Ni:0.10%、Ti:0.20%、Nb:0.05%およびN:0.009%を含有し、さらに、質量%で、Mo:0.02%を含有し、Ti含有量およびNb含有量が、元素記号が各元素の含有量を意味するとして、Nb/Ti=0.25を満たすフェライト系ステンレス鋼板。

(相違点1A)
本件発明3Aは、「質量%で、」「Cr:12.0?15.0%」を含有するのに対して、甲2発明は、「質量%で、」「Cr:18.0%」を含有する点。

(相違点2A)
本件発明3Aでは、「V」が成分元素として特定されていないのに対して、甲2発明は、「質量%で、」「V:0.05%」を含有する点。

(相違点3A)
本件発明3Aでは、「B」が成分元素として特定されていないのに対して、甲2発明は、「質量%で、」「B:0.0006%」を含有する点。

(相違点4A)
本件発明3Aでは、「Sn」が成分元素として特定されていないのに対して、甲2発明は、「質量%で、」「Sn:0.1%」を含有する点。

(ウ)本件発明3Bと甲2発明との対比

a 本件発明3Bと甲2発明とを対比すると、両者は各成分元素の含有量に関して、「質量%で、C:0.009%、Si:0.20%、Mn:0.20%、P:0.030%、S:0.0010%、Al:0.07%、Cu:0.10%、Ni:0.10%、Ti:0.20%、Nb:0.05%およびN:0.009%を含有」する点で一致する。

b 甲2発明のTi含有量に対するNb含有量の比は、0.05質量%/0.20質量%=0.25であるから、甲2発明と本件発明3Bは、「Ti含有量およびNb含有量が、元素記号が各元素の含有量を意味するとして、Nb/Ti=0.25を満たす」点で一致する。

c したがって、本件発明3Bと甲2発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。

(一致点)
質量%で、C:0.009%、Si:0.20%、Mn:0.20%、P:0.030%、S:0.0010%、Al:0.07%、Cu:0.10%、Ni:0.10%、Ti:0.20%、Nb:0.05%およびN:0.009%を含有し、Ti含有量およびNb含有量が、元素記号が各元素の含有量を意味するとして、Nb/Ti=0.25を満たすフェライト系ステンレス鋼板。

(相違点1B)
本件発明3Bでは、「Mo」が成分元素として特定されていないのに対して、甲2発明は、「質量%で、」「Mo:0.02%」を含有する点。

(相違点2B)
本件発明3Bは、「質量%で、」「Cr:12.0?15.0%」を含有するのに対して、甲2発明は、「質量%で、」「Cr:18.0%」を含有する点。

(相違点3B)
本件発明3Bでは、「V」が成分元素として特定されていないのに対して、甲2発明は、「質量%で、」「V:0.05%」を含有する点。

(相違点4B)
本件発明3Bでは、「B」が成分元素として特定されていないのに対して、甲2発明は、「質量%で、」「B:0.0006%」を含有する点。

(相違点5B)
本件発明3Bでは、「Sn」が成分元素として特定されていないのに対して、甲2発明は、「質量%で、」「Sn:0.1%」を含有する点。

(エ)相違点の判断

a 相違点1A?4A及び1B?5Bはいずれも実質的な相違点であるから、本件発明3は、甲2発明であるということはできない。

b 次に、事案に鑑み、相違点3A及び4Bについて検討すると、前記「ア」「(イ)」及び「(ウ)」にあるとおり、甲第2号証に記載された発明では、疲労特性を向上させた容器用フェライト系ステンレス鋼板を提供するという課題解決のために、Bは、非常に重要な元素であり、Bを固溶Bとして粒界に偏析させることにより粒界強化を図るためには、0.0004%以上0.0015%以下の添加が必要であるとされているところ、甲2発明において、不可避的不純物とは区別して「質量%で、」「0.0006%」含有されているBを取り除いて「0wt%」又は不可避的不純物とみなせる含有量にまで低減することには、阻害要因があるというべきであり、このようにすることは、当業者であっても容易になし得たこととは到底いえない。
そして、以上の判断は、他の甲号証の記載によって左右されるものではない。

c よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲第2号証に記載された発明、又は、甲第2号証?甲第4号証に記載された発明に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

ウ 本件発明4について

a 本件発明4は本件発明3を引用しており、本件発明3と同様に「B」が成分元素として特定されていないから、前記「イ」「(エ)」の判断がそのまま妥当する。

b よって、本件発明4は、甲第2号証に記載された発明であるということはできず、甲第2号証に記載された発明、又は、甲第2号証?甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

エ 小括

以上のとおりであるから、甲第2号証を主たる引用文献とする新規性欠如・進歩性欠如の申立理由である申立理由2-1?2-3は、いずれも理由がない。

第4 結論

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件訂正後の請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正後の請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、C:0.025%以下、Si:0.05?1.00%、Mn:0.05?1.00%、P:0.040%以下、S:0.030%以下、Al:0.001?0.100%、Cr:12.0?15.0%、Cu:0.10?0.60%、Ni:0.01?0.80%、Ti:0.10?0.40%、Nb:0.010?0.100%およびN:0.020%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
Ti含有量およびNb含有量が、下記式(1)を満たすことを特徴とするフェライト系ステンレス鋼板。
0.10≦Nb/Ti≦0.30 (1)
式(1)における元素記号は、各元素の含有量を意味する。
【請求項2】
さらに、質量%で、Mo:0.01?0.30%、Co:0.01?0.50%およびW:0.01?0.50%のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
【請求項3】
さらに、質量%でZr:0.01?0.30%、Mg:0.0005?0.0030%、Ca:0.0003?0.0030%、Y:0.001?0.20%およびREM(希土類金属):0.001?0.10%のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
【請求項4】
さらに、質量%でSn:0.001?0.50%およびSb:0.001?0.50%のうちから選んだ1種または2種を含有することを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼板。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-07-31 
出願番号 特願2014-165249(P2014-165249)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (C22C)
P 1 651・ 121- YAA (C22C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鈴木 葉子  
特許庁審判長 板谷 一弘
特許庁審判官 金 公彦
長谷山 健
登録日 2017-07-28 
登録番号 特許第6179485号(P6179485)
権利者 JFEスチール株式会社
発明の名称 フェライト系ステンレス鋼板  
代理人 森 和弘  
代理人 森 和弘  
代理人 井上 茂  
代理人 井上 茂  
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