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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G06F
管理番号 1343912
異議申立番号 異議2018-700412  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-10-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-05-21 
確定日 2018-08-31 
異議申立件数
事件の表示 特許第6236534号発明「高速動力車列車の車体局所構造不安定性の有限要素シミュレーション装置及びその方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6236534号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6236534号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)11月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年3月12日、中国)を国際出願日とする出願であって、平成29年11月2日に特許権の設定登録がされ(特許公報発行日 平成29年11月22日)、その後、その特許に対し、平成30年5月21日に特許異議申立人日高賢治により請求項1ないし10に対して特許異議の申立てがされたものである。

2.本件特許発明
本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、各請求項の項番にしたがい「本件特許発明1」ないし「本件特許発明10」という。)。

【請求項1】
車体構造の有限要素モデルを構築するモジュールである第1の部分と、車体構造の境界条件を設定するモジュールである第2の部分と、車体構造の不安定性シミュレーション解析モジュールである第3の部分とを有するとともに、第1の部分と第2の部分が何れも第3の部分に接続された高速動力車列車の車体局所構造不安定性の有限要素シミュレーション装置であって、具体的には、
第1の部分のモジュールは、
ヒューマン・コンピュータインタラクション装置を利用して設計された車体の形状や寸法を取得することによりモデルを構築するとともに、車体の局所に少なくとも1つの凹み部1を設置しシミュレートするための局所凹み領域モデル構築モジュールをさらに含み、
第2の部分のモジュールは、
ヒューマン・コンピュータインタラクション装置によって配置された以下のモジュール、すなわち、車体から少なくとも1つの位置を選択してその自由度を拘束制限する車体境界拘束設定モジュールと、
車体の水平面に、車体が受けられる最大垂直荷重である均一分布荷重を印加すると共に、車体の少なくとも1つの位置に縦方向の圧縮荷重を印加する、車体最大垂直荷重及び圧縮荷重定義モジュールと、
車体最大垂直荷重及び圧縮荷重定義モジュールからのデータを受信し、この最大垂直荷重及び圧縮荷重を線形合成する、複合荷重線形合成モジュールと、
車体モード周波数の範囲値を設定するとともに、第3の部分のモジュールに提供する、車体モード周波数定義モジュールと、
車体の静荷重を設定する、静荷重作業状況定義モジュールと、
静荷重作業状況定義モジュール及び車体モード周波数定義モジュールに接続して、静荷重とモード周波数のデータを取得する、線形座屈解析作業状況定義モジュールとを備え、
第3の部分のモジュールは、
第1の部分、第2の部分のモジュールのデータを取得した後、車体構造不安定性のシミュレーション解析を行い、順次に接続された以下のモジュール、すなわち、
この凹み部の臨界座屈係数を臨界不安定荷重抽出モジュールに出力する臨界座屈係数算出モジュールと、
この凹み部に印加可能な最大荷重を取得し、即ち車体局所構造が不安定になるときの臨界不安定荷重を取得すると共に、出力する臨界不安定荷重抽出モジュールと、
車体局所構造が不安定になったときの臨界不安定荷重を取得し、車体構造強度の解析が行われた後にこの箇所の荷重を抽出すると共に、2つの数値の大きさを比較し、車体構造強度により得られた荷重が臨界不安定性荷重よりも小さければ、この不具合な状態にある車体構造の運行が信頼できる一方、臨界不安定荷重よりも大きければ、この不具合な状態にある車体構造をさらに補強して欠陥部位の剛性を向上する必要があると判断する車体構造強度荷重及び臨界不安定荷重比較解析モジュールとを備える
ことを特徴とする、高速動力車列車の車体局所構造の不安定性のための有限要素シミュレーション装置。
【請求項2】
前記第1の部分のモジュールは、
車体用の材料のパラメータを取得する車体材料パラメータ設定モジュールと、
車体の設計図のデータに基づいて、車体の各部材の構造の板厚の割り当てられた属性値を取得する車体各部材板厚パラメータ設定モジュールと、
設計図に示す車体構造に基づいて車体の有限要素モデルを構築し、車体構造を四角形プレートユニットで、局所を三角形プレートユニットでシミュレートして車体構造の二次元モデルを取得する車体全体有限要素モデル構築モジュールと、
車体全体有限要素モデルの中に局所領域の凹みモデルを構築し、凹み部1の寸法を設定する局所凹み領域モデル構築モジュールとを備える
ことを特徴とする、請求項1に記載の高速動力車列車の車体局所構造の不安定性のための有限要素シミュレーション装置。
【請求項3】
前記第3の部分のモジュールにおいて、該当部分の車体構造が信頼できると判断するモジュールと、該当部分を補強する必要があると判断するモジュールと、体構造強度荷重及び臨界不安定性荷重比較解析モジュールをさらに備え、
データの解析結果に応じて、臨界座屈係数が1以上であれば、車体構造強度荷重及び臨界不安定性荷重比較解析モジュールは該当部分の車体構造が信頼できると判断するモジュールに接続され、臨界座屈係数が1未満であれば、車体構造強度荷重及び臨界不安定性荷重比較解析モジュールは該当部分を補強する必要があると判断するモジュールに接続される
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の高速動力車列車の車体局所構造の不安定性のための有限要素シミュレーション装置。
【請求項4】
前記車体境界拘束設定モジュールにおいて、3方向の並進運動の自由度が車体の4つの空気ばねのところで拘束される
ことを特徴とする、請求項3に記載の高速動力車列車の車体局所構造の不安定性のための有限要素シミュレーション装置。
【請求項5】
前記圧縮荷重は、カプラ取付座に車体の縦方向荷重を印加するように構成されており、
前記最大垂直荷重は、車体の床に均一分布荷重を平面的に印加するように構成されている
ことを特徴とする、請求項1?4のいずれか1項に記載の高速動力車列車の車体局所構造の不安定性のための有限要素シミュレーション装置。
【請求項6】
前記最大垂直荷重が547.6kNであり、即ち車体の床に547.6kNの分布荷重が平面的に印加され、
前記圧縮荷重が1500kNであり、即ちカプラ取付座に1500kNの車体の縦方向荷重が印加される
ことを特徴とする、請求項5に記載の高速動力車列車の車体局所構造の不安定性のための有限要素シミュレーション装置。
【請求項7】
前記車体全体有限要素モデル構築モジュールにおいて、
前記プレートユニットのサイズが20mmと設定され、前記車体モード周波数定義モジュールにおいて、モード周波数の範囲が1?40HZと設定される
ことを特徴とする、請求項2に記載の高速動力車列車の車体局所構造の不安定性のための有限要素シミュレーション装置。
【請求項8】
前記局所凹み領域モデル構築モジュールにおいて、
凹み部の寸法は、凹み深さが4mmであり、凹み長さが3800mmである
ことを特徴とする、請求項7に記載の高速動力車列車の車体局所構造の不安定性のための有限要素シミュレーション装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の高速動力車列車の車体局所構造の不安定性のための有限要素シミュレーション装置に基づく、高速動力車列車の車体局所構造の不安定性のための有限要素シミュレーション方法であって、
前記有限要素シミュレーション装置によって、ヒューマン・コンピュータインタラクション装置を利用して設計された車体の形状や寸法を取得することによりモデルを構築するとともに、前記有限要素シミュレーション装置によって、車体局所凹み領域のモデルを構築し、即ち車体の局所に少なくとも1つの凹み部を設置してシミュレートする第1のステップと、
ヒューマン・コンピュータインタラクション装置を利用して車体構造の境界条件を配置するとともに、以下のステップ、すなわち、
車体から少なくとも1つの位置を選択してその自由度を拘束制限する、車体境界拘束の設定ステップS1と、
車体の水平面に、車体が受けられる最大垂直荷重である均一分布荷重を印加すると共に、車体の少なくとも1つの位置に縦方向の圧縮荷重を印加する、車体最大垂直荷重及び圧縮荷重の定義ステップS2と、
車体最大垂直荷重及び圧縮荷重のデータを設定してから、この最大垂直荷重及び圧縮荷重を線形合成する、複合荷重の線形合成ステップS3と、
車体モード周波数の範囲値を設定する、車体モード周波数の定義ステップS4と、
車体の静荷重を設定する、静荷重作業状況の定義ステップS5と、
設定された静荷重とモード周波数データを配置する線形座屈解析作業状況の定義ステップS6とを、前記有限要素シミュレーション装置によって、順に実行する、第2のステップと、
前記有限要素シミュレーション装置によって、車体構造の不安定性シミュレーション解析を行い、計算によってこの凹み部の臨界座屈係数0.Xを得て、その結果、荷重が最初に印加した荷重のX%になったとき、構造が不安定になったことを確認し、これによって、この構造に印加可能な最大荷重を取得し、臨界座屈係数が1以上であれば、前記有限要素シミュレーション装置によって、この部分の車体構造が信頼できると判断する一方、限界臨界座屈係数が1未満であれば、前記有限要素シミュレーション装置によって、この部分を補強する必要があると判断する第3のステップと
を含む方法。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の高速動力車列車の車体局所構造の不安定性のための有限要素シミュレーション装置に基づく、高速動力車列車の車体局所構造の不安定性のための有限要素シミュレーション方法であって、
前記有限要素シミュレーション装置によって、車体用材料の各パラメータを入力するステップS1と、
前記有限要素シミュレーション装置によって、車体の設計図のデータに基づいて、車体の各部材の構造の板厚に対して属性値の割り当てを行うステップS2と、
前記有限要素シミュレーション装置によって、設計図に示す車体構造に基づいて車体の有限要素モデルを構築し、車体構造を四角形プレートユニットで、局所を三角形プレートユニットでシミュレートして車体構造の二次元モデルを取得するステップS3と、
前記有限要素シミュレーション装置によって、車体全体有限要素モデルにおいて、局所領域の凹みモデルを構築し、凹み領域の凹み深さと凹み長さを設定するステップS4と、
前記有限要素シミュレーション装置によって、車体の境界拘束条件を設定し配置し、車体の4つの空気バネ上に3つの方向の並進運動の自由度を拘束し、前記有限要素シミュレーション装置によって、後続の車体拘束においてこの配置をアクティブ状態のまま保つステップS5と、
前記有限要素シミュレーション装置によって、最大垂直荷重及び圧縮荷重を設定し、前記有限要素シミュレーション装置によって、後続の車体荷重印加において相応するカードをアクティブ状態のまま保つと共に、前記有限要素シミュレーション装置によって、車体の縦方向荷重をカプラ取付座に印加し、前記有限要素シミュレーション装置によって、均一に分布している荷重を車体の床に平面的に印加するステップS6と、
前記有限要素シミュレーション装置によって、複合作業状況の算出を行い、複合作業状況での車体線形座屈を考察するために、前記2種の荷重、即ち最大垂直荷重と圧縮荷重を線形合成するステップS7と、
前記有限要素シミュレーション装置によって、車体のモード周波数のカードを定義し、ここで前記モード周波数の周波数範囲が1?40HzとされるステップS8と、
前記有限要素シミュレーション装置によって、静荷重作業状況を定義し、前記境界拘束条件と複合荷重を選択するステップS9と、
前記有限要素シミュレーション装置によって、線形座屈分析作業状況を定義し、前記定義された静荷重作業状況と車体のモード周波数を選択するステップS10と、
前記有限要素シミュレーション装置によって、臨界座屈係数を算出し、車体構造不安定性のシミュレーション解析を行い、計算によってこの凹み部の臨界座屈係数0.Xを得るステップS11と、
前記有限要素シミュレーション装置によって、結果として荷重が最初に印加した荷重のX%になったとき、構造が不安定になったことが確認され、これによって、この構造に印加可能な最大荷重を取得するステップS12と、
前記有限要素シミュレーション装置によって、前記ステップで得られた車体局所構造に凹みが生じたときの臨界不安定性荷重と、車体構造強度の解析が行われた後に抽出されたこの部位の荷重と、の2つの数値の大きさを比較し解析するステップS13と、
前記有限要素シミュレーション装置によって、車体構造の強度により得られた荷重が臨界不安定性荷重以下であれば、この不具合な状態にある車体構造の運行が信頼できると判断するステップS14と、
前記有限要素シミュレーション装置によって、車体構造の強度により得られた荷重が臨界不安定性荷重よりも大きければ、この不具合状態にある車体構造をさらに補強して不具合な箇所の剛性を向上する必要があると判断するステップS15と
を含む方法。

3.申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠として下記甲第1?8号証を提出し、本件特許発明1、2、7、8は、甲第1?3、8号証に記載された発明及び周知技術(甲第4、6、7号証)から容易に想到されるものであり、本件特許発明3?6、9、10は、甲第1?3、5、8号証に記載された発明及び周知技術(甲第4、6、7号証)から容易に想到されるものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨主張している。


甲第1号証:特開2010-49319号公報
甲第2号証:”JIS E 7105:2006 鉄道車両-旅客車用構体-荷重試験方法”,JISハンドブック 69 鉄道,第1版,一般財団法人日本規格協会,2014年7月23日,p.2434-2441
甲第3号証:”JIS E 7106:2006 鉄道車両-旅客車用構体-設計通則”,JISハンドブック 69 鉄道,第1版,一般財団法人日本規格協会,2014年7月23日,p.2442-2455
甲第4号証:特開2015-187767号公報
甲第5号証:壱岐哲夫、倉本美男、安藤清,”船体局部構造の座屈強度解析に関する研究”,日本造船学会論文集,社団法人日本造船学会,昭和50年12月,第138号,p.330-341
甲第6号証:富岡隆弘,”旅客の乗車で車体振動が変わる”,RRR,財団法人研友社,2009年7月1日,第66巻,第7号,p.18-21
甲第7号証:吉田秀久,”人体車体連成振動系の解明と鉄道車体のスマート構造化”,日本機械学会誌,社団法人日本機械学会,2006年12月5日,第109巻,第1057号,p.77
甲第8号証:特開2013-52734号公報

4.各甲号証の記載
(1)甲第1号証
ア.甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、「有限要素法を用いた車両用耐衝突補強材の評価方法、コンピュータプログラム及びコンピュータで読み取り可能な記憶媒体」(発明の名称)に関して、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付したものである。

(ア)「【0003】
車両の衝突安全性は重要な性能の一つであり、その性能向上が進められている。一般にこの性能は実際に車を製作して、衝突試験を行うことにより評価されていた。しかしながら、このような試験は膨大な時間とコストを要するため試験回数の低減が試行されている。
そこで用いられているのが有限要素法を用いた衝突解析である。この衝突解析では、車両の各部位を有限要素と呼ばれる小さな領域に分割した上で、動的陽解法という手法により解析を行うものである。デジタル化された車両を仮想空間の中で実際の衝突試験と同じ条件で変形させ、その際の衝撃吸収特性を評価することにより、実験回数の低減が図られてきた。」

(イ)「【0021】
図1に示すように、本実施形態の車両用耐衝突補強材の評価方法は、車両用耐衝突補強材の形状を有限要素に分割したメッシュ等に基づいて有限要素法の座屈固有値解析を複数の固有モード次数について行う解析ステップS1と、変形集中の解析位置と評価対象位置とを対比する対比ステップS2と、一致した解析位置の固有モード次数における座屈固有値を抽出する固有値抽出ステップS3と、抽出された座屈固有値を評価値として比較する評価ステップS4と、から概略構成されている。」

(ウ)「【0024】
図2には、評価対象の車両用耐衝突補強材の一例を示す。図2に示す車両用耐衝突補強材は、自動車用のセンターピラー補強材のモデルである。自動車のセンターピラーは、一般にボディサイドアウタパネルとその中に位置するセンターピラー補強材(車両用耐衝突補強材)とで構成される。センターピラー補強材は更に、アウタ側の補強材と、インナ側の補強材の2つの部品で構成される。センターピラーの最も外側に位置するボディサイドアウタパネルは、主に強度の低い軟鋼により作製され、衝撃荷重の吸収にはほとんど寄与しない。従って、側面衝突時の衝撃エネルギーは、主にセンターピラー補強材により吸収される。自動車のセンターピラー部は、車種によって形状等が様々であるが、本実施形態では、図2に示す車両用耐衝突補強材1をモデルとして説明する。」

(エ)「【0027】
解析ステップS1は、図1に示すように、車両用耐衝突補強材1の形状を有限要素に分割してメッシュを生成するメッシュ生成ステップS11と、車両用耐衝突補強材1の物理量及び境界条件を決める条件設定ステップS12と、メッシュ、物理量及び境界条件に基づいて座屈固有値解析を行う座屈固有値解析ステップS13と、座屈固有値解析によって得られた結果を抽出する抽出ステップS14とから構成される。
【0028】
先ず、メッシュ生成ステップS11では、図2に示す車両用耐衝突補強材1の形状を有限要素に分割してメッシュのデータを生成する。メッシュの生成は、例えば、市販の有限要素法の解析パッケージ等に含まれるメッシュ生成プログラムを用いることが出来る。有限要素の形状としては、三角形、四角形のいずれでもよい。有限要素の大きさは、車両用耐衝突補強材1の大きさ、形状、境界条件に応じて適宜設定すればよい。
【0029】
次に、条件設定ステップS12では、車両用耐衝突補強材1の物理量と境界条件とを設定する。物理量は、車両用耐衝突補強材1を構成する金属板の板厚、弾性率等であり、金属板の物性値をそのまま用いればよい。また境界条件は、車両用耐衝突補強材1の拘束位置、荷重位置及び荷重量である。」

(オ)「【0033】
図2に示す車両用耐衝突補強材1の場合は、例えば、長手方向一端部1aを荷重位置とし、他端部1bを拘束位置とし、荷重量を600Nとし、荷重方向は、図2のZ軸方向とする。尚、ここで決定した拘束位置は、後のステップにおいて変更される場合がある。
【0034】
次に、座屈固有値解析ステップS13では、メッシュ、物理量及び境界条件に基づいて座屈固有値解析を行う。座屈固有値解析は、有限要素法の一種であり、座屈モードと、座屈固有値とを求める解析法である。例えば、解析ソフトウェアとして、静的陰解法の汎用構造解析有限要素法コードであるNASTRANを用いることができる。座屈固有値解析は、1次からn次の複数の固有モード次数について行えばよい。固有モード次数の上限に特に制限はないが、本実施形態では10次まで行えば十分である。
【0035】
次に、抽出ステップS14では、座屈固有値解析ステップS13において得られた結果を抽出する。図3には、解析結果の一例を示す。図3(a)は1次モードの解析結果であり、図3(b)は2次モードの解析結果である。1次モードでは、図3(a)に示すように変形集中が見られず、車両用耐衝突補強材全体が撓んだ状態が示されている。一方、2次モードでは、図3(b)に示すように、車両用耐衝突補強材の長手方向のほぼ中央に、変形集中が生じている。この変形集中の位置を解析位置Kとする。本例では、1次及び2次モードの解析結果を示したが、変形集中の解析位置は固有モード次数によって変動するので、例えば1?10次までモード解析を行えば、複数の解析位置が求められる。」

(カ)「【0041】
(固有値抽出ステップS3)
次に、解析位置Kと評価対象位置H1とが一致した場合は、固有値抽出ステップS3に進み、解析位置Kの固有モード次数における座屈固有値を抽出する。本例では、固有モード次数が2次になる。従って2次モードの座屈固有値が、車両用耐衝突補強材1の評価対象位置H1における耐座屈性能を表す評価値となる。
【0042】
(評価ステップS4)
次に、評価ステップS4では、形状または物理量のうち少なくとも一以上が異なる複数の車両用耐衝突補強材同士について、それぞれ抽出された座屈固有値を評価値として比較する。
すなわち前述したように、形状、板厚、弾性率等が相互に異なる複数の車両用耐衝突補強材について、S1?S3の各ステップを行って座屈固有値をそれぞれ求める。この場合の固有モード次数は、変形集中の解析位置Kと評価対象位置H1との対比によって決定された先の固有モード次数を用いる。本例の場合は2次モードの座屈固有値を用いる。
【0043】
そして、各車両用耐衝突補強材毎に座屈固有値を対比する。最も高い座屈固有値を示した形状が、評価対象位置H1において耐座屈性能に最も優れた車両用耐衝突補強材となる。」

(キ)「【0049】
また、本実施形態の評価方法は、車両用耐衝突補強材の形状、板厚、弾性率等の物理量及び境界条件をパラメータとして耐座屈性能を容易に評価できる。また、変形集中の解析位置と評価対象位置とが一致しない場合は、座屈固有値解析における境界条件を変更して再度座屈固有値解析を行うことで、境界条件の最適化を図ることができ、評価対象位置における座屈性能を正確に予測できる。これにより、車両用耐衝突補強材を単独で評価できる。」

(ク)「【0050】
また、本実施形態の評価方法を実現するべく、コンピュータに対し,上記実施の形態の評価方法を実現するためのコンピュータプログラムを供給し,そのコンピュータ(CPUあるいはMPU)に格納された該プログラムに従って評価することも、本発明の範疇に含まれる。」

(ケ)「【実施例】
【0053】
(実施例1)
本発明の評価方法の車両のセンターピラー補強材への適用について検討した。
実際の車両のセンターピラー部は、一般にボディサイドアウタパネルとその中に位置するセンターピラー補強部材(アウタ側、インナ側の2部品)で構成される。一番外側に位置するボディサイドパネルは主に強度の低い軟鋼により作製され、衝撃荷重の吸収にはほとんど寄与せず、側面衝突時の衝撃エネルギーは主にセンターピラー補強部材により吸収される。
【0054】
実際に用いられているセンターピラー補強材は形状等様々であるが、ここではモデル部材を用いた。その形状を図4及び図5に示す。ここで対象とするのはセンターピラー補強部材11のインナ側部材11Bとアウタ側部材11Aであり、この部分を取り出して予測を行った。先ず、センターピラー補強材の形状を複数の有限要素に分割してメッシュを生成した(ステップS11)。」

(コ)「【0055】
次に、本発明の評価方法を適用するための境界条件としての荷重位置と拘束位置を図6に示す。実際の衝突変形では、センターピラー補強部材11のアウタ部材11Aの下部を中心に変形が始まり、その後上部に圧縮の荷重が作用する。センターピラー補強部材11は、このような圧縮荷重下で高い変形抵抗を示す構造が優れたものであると考えられる。このような衝突時の変形を模擬して、アウタ側部材11Aに圧縮荷重が加わるように上端のルーフサイドレール12との結合部を荷重位置Mとし、この荷重位置Mに対して車両外側方向に600Nの荷重を与えた(ステップS12)。また下端に関しては完全拘束としたが(ステップS12)、その位置に関しては解析結果を参照しながら最適化を行った。すなわち、当初の拘束位置を、下端のサイドシル13との結合部とした。
また、センターピラー補強部材11を構成する鋼板の厚みを1.8mmに設定し、弾性率を210GPaに設定した(ステップS12)。」

(サ)「【0057】
図7に今回の解析で使用した拘束位置を示す。拘束位置L1はサイドシルとの結合箇所であり、これを最初の拘束位置として座屈固有値解析を行った(ステップS13)。その結果を図8(a)に示す。これは1次モードでの変形状態であるが、変形集中の解析位置K1がセンターピラー補強材の下部に現れている。これは高次までの解析を行っても同様であった(ステップS13?S14)。
【0058】
実際の部材で変形が集中し、折れが観察される評価対象位置はセンターピラー補強材の上部であり、変形集中の解析位置K1と評価対象位置とが一致しない結果になった(ステップS2)。これではその部分の特性を評価できない。そこで、拘束位置を上方に100mm移動させて図7に示すように新たな拘束位置L2を設定し(ステップS5)、再度解析を行った(ステップS13)。その結果を図8(b)に示すが、拘束位置L2では、拘束位置L1の場合と変形状態がほとんど変化せず、変形集中の解析位置K2がセンターピラー補強材の下部に現れた。これは、高次モードでも同様であった(ステップS13?S14)。従って、変形集中の解析位置K2と評価対象位置とが一致しない結果になった(ステップS2)。
【0059】
そこでさらに、拘束位置L2から100mm上方に拘束位置を移動させて新たに拘束位置L3を設置し、座屈固有値解析を行った(ステップS5、S13)。その結果、図8(c)に示すように、1次モードにおける解析位置K3がセンターピラー補強材の上部に生じ、評価対象位置にほぼ重なる結果になった(ステップS2)。従って、拘束位置L3を境界条件とし、固有モード次数として1次モードを採用することで、座屈固有値を評価することにより(ステップS3、S4)、実際のセンターピラー補強部材の耐座屈性を予測することが可能になった。」

(シ)「【0060】
次に、座屈変形しやすい上部に凹ビードを設けたこと以外は図4及び図5に示すセンターピラー補強材と同一形状のセンターピラー補強材を用いて、座屈固有値解析を行った。境界条件は図6の場合と同様に、上端を荷重位置Mに設定して600Nの荷重入力を加えることとし、下部は図7に示す拘束位置L3にて完全拘束した。
【0061】
用いた形状は、凹ビードのないNo.1部材と、図9に示す位置に深さ5mmの凹ビード18をセンターピラー補強部材のアウタ側部材に与えたNo.2部材、位置はNo.2と同じであるが凹ビードの深さを3mmとしたNo.3である。
【0062】
なお、図4、図5及び図9に示すセンターピラー用補強材11のアウタ側部材11Aの形状について詳細に説明すると、このアウタ側部材11Aは、薄板が例えば凸状にプレス成形加工されてなるものであって、上下方向に延在する本体部16と、本体部16の幅方向両側に設けた折曲部13と、折曲部13を介して本体部16と一体化された一対の側壁部14、14と、側壁部14、14に設けられた溶接部となるフランジ部15と、から概略構成されている。また、本体部16の上端側には、車両のサイドルーフレールに溶接される上側結合部16Aが設けられ、一方、本体部16の下端側には、車両のサイドシルに溶接される下側結合部16Bが設けられている。そして、本体部2に凹ビード18が設けられている。
【0063】
No.1からNo.3の部材について同じ境界条件で解析を行った結果、いずれも1次モードで上部に変形が生じ、そのときのそれぞれ座屈固有値は5338(No.1)、15863(No.2)、9834(No.3)となった。すなわちほぼ同じ変形モードで、深さ5mmの凹ビードを設けたNo.2は凹ビード無しのNo.1の3倍、深さ3mmの凹ビードを設けたNo.3はNo.1の2倍の座屈抵抗を示すとの結果が得られ、凹ビードの付与が効果があるという結果が得られた。」

(ス)「【0069】
これら2種類のモデル部材に対して、表2に示すNo.4?No.19の部材を想定した。ストレート部材の断面形状を図12に示す。図12(a)に示すように凹ビードがないものをNo.4、No.12とし、図12(b)に示すように凹ビードの幅が20mmのものをNo.5、No.13とし、図12(c)に示すように凹ビードの幅が40mmのものをNo.6、No.14とした。」

(セ)「【0070】
【表2】



(ソ)「【0079】
当該モードでの座屈荷重は、境界条件として与えた荷重(今回は600N)と座屈固有値の積で計算でき、座屈固有値が高いものほど座屈荷重が高く、従って座屈しにくいと言える。今回の解析では高次までの計算を行い、衝突変形での局部座屈とほぼ同等となる座屈モードを探索し(ステップS2、S5、S1)、そのモードでの座屈固有値を求めた(ステップS3)。」

(タ)「【図1】



(チ)「【図6】



(ツ)「【図7】



(テ)「【図9】



(ト)「【図13】



イ.甲第1号証に記載される発明
以下、甲第1号証に記載される発明を認定する。

(ア)コンピュータについて
上記ア.(イ)によれば、甲第1号証には、「車両用耐衝突補強材の評価方法」が記載されている。
また、上記ア.(ク)によれば、甲第1号証には、「本実施形態の評価方法」を実現する「コンピュータ」が記載されている。
したがって、甲第1号証には、『車両用耐衝突補強材の評価方法を実現するコンピュータ』の発明が記載されている。

(イ)メッシュのデータの生成について
上記ア.(イ)、(エ)、(タ)によれば、甲第1号証には、「解析ステップS1」の「メッシュ生成ステップS11では、図2に示す車両用耐衝突補強材1の形状を有限要素に分割してメッシュのデータを生成する。メッシュの生成は、例えば、市販の有限要素法の解析パッケージ等に含まれるメッシュ生成プログラムを用いることが出来る」と記載されている。
したがって、甲第1号証には、『メッシュ生成プログラムを用いて車両用耐衝突補強材の形状を有限要素に分割してメッシュのデータを生成する』ことが記載されている。

(ウ)物理量及び境界条件について
上記ア.(イ)、(エ)、(タ)によれば、甲第1号証には、「解析ステップS1」の「条件設定ステップS12では、車両用耐衝突補強材1の物理量と境界条件とを設定する。物理量は、車両用耐衝突補強材1を構成する金属板の板厚、弾性率等であり、金属板の物性値をそのまま用いればよい。また境界条件は、車両用耐衝突補強材1の拘束位置、荷重位置及び荷重量である」と記載されている。
したがって、甲第1号証には、『車両用耐衝突補強材の物理量(車両用耐衝突補強材を構成する金属板の板厚、弾性率等)と境界条件(車両用耐衝突補強材の拘束位置、荷重位置及び荷重量)とを設定する』ことが記載されている。

(エ)座屈固有値解析について
上記ア.(イ)によれば、甲第1号証には、「車両用耐衝突補強材の形状を有限要素に分割したメッシュ等に基づいて有限要素法の座屈固有値解析を複数の固有モード次数について行う解析ステップS1」が記載されている。
また、上記ア.(オ)、(タ)によれば、甲第1号証には、「解析ステップS1」の「座屈固有値解析ステップS13では、メッシュ、物理量及び境界条件に基づいて座屈固有値解析を行う。座屈固有値解析は、有限要素法の一種であり、座屈モードと、座屈固有値とを求める解析法である。」と記載されている。
また、上記ア.(カ)によれば、甲第1号証には、「解析位置Kの固有モード次数における座屈固有値を抽出する」と記載されている。
したがって、甲第1号証には、『メッシュ、物理量及び境界条件に基づいて座屈固有値解析を行い、解析位置の座屈固有値を抽出する』ことが記載されている。

(オ)座屈固有値の評価について
上記ア.(イ)、(カ)、(シ)、(ス)、(セ)、(タ)によれば、甲第1号証には、「評価ステップS4では、形状または物理量のうち少なくとも一以上が異なる複数の車両用耐衝突補強材同士について、それぞれ抽出された座屈固有値を評価値として比較する」、「最も高い座屈固有値を示した形状が、評価対象位置H1において耐座屈性能に最も優れた車両用耐衝突補強材となる」と記載されている。
したがって、甲第1号証には、『形状または物理量のうち少なくとも一以上が異なる複数の車両用耐衝突補強材同士について、それぞれ抽出された座屈固有値を評価値として比較し、最も高い座屈固有値を示した形状を、評価対象位置において耐座屈性能に最も優れた車両用耐衝突補強材とする』ことが記載されている。

(カ)センターピラー補強材について
上記ア.(ウ)によると、甲第1号証には、「図2に示す車両用耐衝突補強材は、自動車用のセンターピラー補強材のモデルである。」と記載されている。
また、上記ア.(ケ)によれば、甲第1号証には、「実際に用いられているセンターピラー補強材は形状等様々であるが、ここではモデル部材を用いた」、「センターピラー補強材の形状を複数の有限要素に分割してメッシュを生成した」と記載されている。
また、上記ア.(サ)、(ツ)によれば、甲第1号証には、「拘束位置L1」、「拘束位置L2」、「拘束位置L3」を設定して座屈固有値解析を行うことが記載されている。
また、上記ア.(コ)、(シ)、(チ)、(ツ)によれば、甲第1号証には、「座屈変形しやすい上部に凹ビードを設けたこと以外は図4及び図5に示すセンターピラー補強材と同一形状のセンターピラー補強材を用いて、座屈固有値解析を行った。境界条件は図6の場合と同様に、上端を荷重位置Mに設定して600Nの荷重入力を加えることとし、下部は図7に示す拘束位置L3にて完全拘束した」と記載されている。
また、上記ア.(シ)、(テ)、(ト)によれば、甲第1号証には、「本体部2に凹ビード18が設けられている」と記載されている。
したがって、甲第1号証には、『車両用耐衝突補強材を自動車用のセンターピラー補強材とし、センターピラー補強材のモデル部材の本体部に凹ビードを設け、センターピラー補強材の形状を複数の有限要素に分割してメッシュを生成し、センターピラー補強材の上端を荷重位置に設定して荷重入力を加え、センターピラー補強材の複数の拘束位置のうちの下部の拘束位置で完全拘束して座屈固有値解析を行う』ことが記載されている。

(キ)まとめ
以上によると、甲第1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。甲1発明の各構成については、以下、構成a?構成fと称する。

(甲1発明)
(a)メッシュ生成プログラムを用いて車両用耐衝突補強材の形状を有限要素に分割してメッシュのデータを生成し、
(b)車両用耐衝突補強材の物理量(車両用耐衝突補強材を構成する金属板の板厚、弾性率等)と境界条件(車両用耐衝突補強材の拘束位置、荷重位置及び荷重量)とを設定し、
(c)メッシュ、物理量及び境界条件に基づいて座屈固有値解析を行い、解析位置の座屈固有値を抽出し、
(d)形状または物理量のうち少なくとも一以上が異なる複数の車両用耐衝突補強材同士について、それぞれ抽出された座屈固有値を評価値として比較し、最も高い座屈固有値を示した形状を、評価対象位置において耐座屈性能に最も優れた車両用耐衝突補強材とする
(e)車両用耐衝突補強材の評価方法を実現するコンピュータにおいて、
(f)車両用耐衝突補強材を自動車用のセンターピラー補強材とし、センターピラー補強材のモデル部材の本体部に凹ビードを設け、センターピラー補強材の形状を複数の有限要素に分割してメッシュを生成し、センターピラー補強材の上端を荷重位置に設定して荷重入力を加え、センターピラー補強材の複数の拘束位置のうちの下部の拘束位置で完全拘束して座屈固有値解析を行う
(e)コンピュータ。

(2)甲第2号証
ア.甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、次に掲げる事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付したものである。

(ア)「5.6.1 垂直荷重試験 垂直荷重試験は,次による。
(中略)

b) 荷重の負荷方法 荷重の負荷方法は,次による。
1) 試験荷重は,床面への等分布負荷とし,油圧,エアーバッグ,水タンク,砂袋,鉄塊,鋳物用なまこなどを用いて,設定した最大荷重まで段階的に垂直荷重を増・減し,それぞれの段階ごとに,測定を行う。
(中略)
2) 質量の大きな機器を取り付ける車両は,別途,その取付け部分に機器質量に対応する集中荷重を負荷して測定する。」(第2436頁第6?19行目)

イ.甲第2号証に記載される技術
上記ア.(ア)によると、甲第2号証には、以下の技術が記載されている。

「試験荷重は、床面への等分布負荷とし、設定した最大荷重まで段階的に垂直荷重を増・減し、それぞれの段階ごとに、測定を行い、質量の大きな機器を取り付ける車両は、別途、その取付け部分に機器質量に対応する集中荷重を負荷して測定する技術。」

(3)甲第3号証
ア.甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、次に掲げる事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付したものである。

(ア)「d) 車両質量
1) 運転整備状態における車体質量(m_(1)) すべての搭載部品を含む完全に組み立てられた車体の質量。
(中略)
2) 最大積載質量(m_(2)) 車両の構造及び運用条件に応じて決められる乗務員の質量,座席及び立席乗車人員(^(1))の質量(^(2)),手荷物領域に搭載される手荷物の質量(^(3))などの総和。」(第2443頁第15?21行目)

(イ)「5.3 車体に作用する上下方向の荷重
a) 運行時の最大荷重 運行中に構体に加わる上下方向の最大荷重は,運行中の振動による増加分を考慮し,通常は表3の値とする。これによらない場合には,受渡当事者間の協定による。

」(第2445頁第10?12行目)

(ウ)「5.4 車体に対する静荷重の重ね合わせ 車体が,満足すべき静的強度をもっていることを保証するため,設計・製作者は表4の静的荷重の重ね合わせを考慮しなければならない。

」(第2445頁第22?23行目、第2446頁先頭)

(エ)「5.5 機器取付部に対する荷重 機器取付部構体には,その機器自身に作用する重力加速度による荷重のほかに走行中の車体の振動に伴う機器の慣性力(機器の質量と振動加速度との積)に起因する力が作用する。走行中の振動加速度の実測値がある場合は発注者はそれを指定し,実測値が利用できない場合は,JIS E 4031の中で規定している”1C”に区分する加速度を考慮して,片振幅で約3m/s^(2)の加速度が,前後・左右及び上下の三方向に別個に作用するものとする。」(第2446頁第1?5行目)

イ.甲第3号証に記載される技術
上記ア.(ア)?(エ)によると、甲第3号証には、以下の技術が記載されている。

「運行時の最大荷重の値は対象車両によって異なること。」
「車体が、満足すべき静的強度をもっていることを保証するため、設計・製作者は前後方向の圧縮荷重及び上下方向の静的荷重の線形合成で表される静的荷重の重ね合わせを考慮すること。」
「機器取付部構体には、その機器自身に作用する重力加速度による荷重のほかに走行中の車体の振動に伴う機器の慣性力(機器の質量と振動加速度との積)に起因する力が作用すること。」

(4)甲第4号証
ア.甲第4号証の記載事項
甲第4号証には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付したものである。

(ア)「【背景技術】
【0002】
従来、自動車車体等に用いられる、板材からプレス成形によって製造される部品の開発工程において、コンピュータを用いて様々な成形条件でプレス成形のシミュレーションを行い、シミュレーション結果に基づいて部品の破断の有無を判定することで、金型の製造前に、部品の破断が生じない適切な成形条件を求めることが知られている。
【0003】
この破断判定は、具体的には、メッシュに分割された部品モデルの各要素の板厚中心における成形後の最大主ひずみε1及び最小主ひずみε2を有限要素法により求め、これら最大主ひずみε1及び最小主ひずみε2が、図15に示すような、予め材料毎に用意されたひずみの成形限界線図(FLD:Forming Limit Diagram、以下、「FLD」という。)において、成形限界線を境界とする破断発生領域と破断非発生領域のいずれに存在するかを確認し、破断発生領域に存在する場合に破断が発生し、また破断非発生領域に存在しても成形限界線に近いほど破断の危険性が高いと判定していた。」

(イ)「【0006】
また、理論FLDは、例えば、Marciniak and Kuczynski Theory(以下、「MK法」という)等を用いて計算により求められる。このMK法とは、変形前の材料に板厚が不均一な不整部分が存在すると仮定し、この不整部分で局部くびれが発生して破断すると考える理論である。具体的には、図16に示すように、板厚が均一な均一部(a)の両面に中立面に対して対称に直線状の溝部(b)が設けられ、この溝部(b)の板厚tbが均一部(a)の板厚taよりも薄いものを変形前のモデルとして設定する。このモデルに対して、板材の材料特性を考慮して、板材の均一部(a)の板厚中心に溝部(b)の延びる方向に対して中立面上で所定角度傾いた方向に応力(σ1、σ2)を与えて変形させたときの溝部(b)の板厚中心のひずみを演算する。この演算結果に基づいて、溝部(b)のみにひずみが集中した際にこの溝部(b)に破断が発生したと想定し、このときの溝部(b)におけるひずみを成形限界ひずみとする。」

(ウ)「【0041】
(1)プレス成形解析システムの概要
図1は、プレス成形解析システム1の中心となるコンピュータ10の構成を示す図である。このコンピュータ10は、CPU等の処理装置11と、メモリまたはハードディスク等の記憶装置12と、キーボード、マウスまたはCD-ROMドライブ等の入力装置13と、液晶ディスプレイまたはプリンタ等の出力装置14とを有する。」

(エ)「【0048】
(1-2)記憶装置
図3は、図1の記憶装置12の構成を概略的に示すブロック図である。記憶装置12はプログラム記憶部12Aとデータ記憶部12Bとから主に構成されている。プログラム記憶部12Aは、自動メッシュ作成プログラム(メッシャ)PR1、シミュレーションプログラム(ソルバ)PR2、破断判定プログラムPR3及び結果表示プログラムPR4をそれぞれ格納するプログラム格納部12A1?12A4を有している。各プログラムPR1?PR4は、上述の処理装置11における形状モデル生成部410、シミュレーション部420、破断判定処理部500、結果表示部430によってそれぞれ実行される。」

(オ)「【0066】
(3)破断判定モデル
破断判定処理部500において取り扱う破断判定モデルについて、図10を参照しながら説明する。図10(a)は、メッシュ化されたブランク形状モデルの一要素を拡大した図であり、図10(b)は、破断判定モデルにおける領域A、Bの境界部の拡大断面図である。
【0067】
図10(a)に示すように、ブランク形状モデルは、本実施形態では、4つの節点で構成された複数のシェル要素でメッシュ化されており、各要素の内部には、平面視で4箇所(×で図示)に配置され、各箇所で板厚方向Zに2つの積分点が中立面に対して対称に設けられている。
【0068】
そして、本発明では、各要素の表裏面に幅及び深さが一定の溝部がその中立面に対して対称に仮想的に設けられているものとする。この溝部が設けられた領域を仮想不整領域Bと呼び、該仮想不整領域Bの周辺にある領域を周辺領域Aと呼ぶ。仮想不整領域Bと周辺領域Aとの境界線は、全体座標(X、Y、Z)に対して所定角度θだけXY平面内で回転した局所座標(n、t、Z)のt軸方向に延びている。」

イ.甲第4号証に記載される技術
上記ア.(ア)?(オ)によると、甲第4号証には、以下の技術が記載されている。

「自動車車体等に用いられる、板材からプレス成形によって製造される部品の開発工程において、コンピュータを用いて様々な成形条件で有限要素法によりプレス成形のシミュレーションを行い、シミュレーション結果に基づいて部品の破断の有無を判定することで、金型の製造前に、部品の破断が生じない適切な成形条件を求める技術において、変形前の材料に板厚が不均一な不整部分が存在すると仮定するMK法により求められた理論FLDを用い、コンピュータが、プログラム記憶部に格納されるプログラムを用いて、メッシュ化されたブランク形状モデルの表裏面に幅及び深さが一定の溝部をその中立面に対して対称に仮想的に設ける技術。」

(5)甲第5号証
ア.甲第5号証の記載事項
甲第5号証には、次に掲げる事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付したものである。

(ア)「筆者らは,これまで,有限要素法による座屈強度解析の実用化を図るべく,計算プログラムの開発,船体構造解析並びに実験等による確認を行い,その有用性を確め,適確に船体構造の座屈強度を把握する道を拓いてきた。」(第330頁第23?25行目)

(イ)「2.1 基本理論
変分原理によれば,構造物の歪エネルギーU,外力のなす仕事Wとするとき,(1)式で定義されるポテンシャルΠ,
Π=U-W (1)
を最小にする条件,即ち
δΠ=δU-δW=0 (2)
として応力分布が得られ,さらに,仮想変位による変分が零となる条件
δ(ΔΠ)=δ(ΔU-ΔW)=0 (3)
より座屈荷重,モードが得られる。」(第330頁第31行目?第331頁第2行目)

(ウ)「この非線形固有方程式を解くには,Fig.3に示す様に行う。即ち,荷重増分の各ステップで[K_(G)]を計算し,このときの固有値を求め,この固有値λ(P)が
λ(P)=1 (59)
となる荷重が非線形固有値問題(56)の解を与える。」(第334頁第20?23行目)

(エ)「



イ.甲第5号証に記載される技術
上記ア.(ア)?(エ)によると、甲第5号証には、以下の技術が記載されている。

「有限要素法による船体構造の座屈強度解析を行う場合に、仮想変位による変分が零となる条件を示す式から得られる非線形固有方程式について固有値を求め、固有値が1となる荷重を非線形固有値問題の解とする技術。」

(6)甲第6号証
ア.甲第6号証の記載事項
甲第6号証には、次に掲げる事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付したものである。

(ア)「(1)高速試験車両の定置加振試験
高速試験車両を対象に,車両を定置した状態で加振器により上下に加振し,車体の振動加速度を測定する定置加振試験を行って,旅客乗車と鉄塊積載時の車体振動を比較しました。(中略)その14Hz付近にあるピークが車体上下曲げ振動によるもので,ピーク周波数は車体上下曲げ振動の固有振動数に対応します。このように5?15Hz程度の周波数領域に卓越した単一のピークを持つ(この周波数領域には固有振動数がひとつだけ)のがこの車両の特徴です。」(第19頁左欄第11?25行目)

(イ)「(2)通勤形車両の定置加振試験
次に,ステンレス鋼製車体をもつ通勤形車両の定置加振試験を行いました。ステンレス鋼製通勤形車両の車体曲げ振動は,上記の高速試験車両や後述する新幹線と異なる特徴を持つことがわかっています。すなわち,屋根,床,側面が独立して変形する傾向が強く,5?15Hzの周波数に複数の固有振動数をもつ(振動の強さと周波数の関係をグラフにすると,ピークが複数ある)という特徴です。」(第19頁右欄第16?23行目)

イ.甲第6号証に記載される技術
上記ア.(ア)?(イ)によると、甲第6号証には、以下の技術が記載されている。

「高速試験車両及び通勤形車両の車体における上下曲げ振動の固有振動数は、それぞれ5?15Hz程度の周波数領域に存在すること。」

(7)甲第7号証
ア.甲第7号証の記載事項
甲第7号証には、次に掲げる事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付したものである。

(ア)「近年,鉄道車両は高速化,省エネルギー化,振動騒音による環境負荷低減化などの理由から,大幅な軽量化が進展している.しかし軽量化に伴い車体剛性の低下を招き,車体上下方向の弾性振動が増加する傾向にある.特に車体上下弾性振動はその固有振動数が8?14Hz程度であり,乗客が上下方向に敏感な周波数帯であることから,乗り心地悪化の原因となっている.」(第77頁左欄第2?11行目)

イ.甲第7号証に記載される技術
上記ア.(ア)によると、甲第7号証には、以下の技術が記載されている。

「鉄道車両の車体上下弾性振動はその固有振動数が8?14Hz程度であること。」

(8)甲第8号証
ア.甲第8号証の記載事項
甲第8号証には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付したものである。

(ア)「【0041】
以下、上述した各実施形態の鉄道車両用車体の有限要素法(FEM)による評価結果について、以下説明する本発明の比較例1、2と対比して説明する。
比較例1の鉄道車両用車体は、実施形態1の鉄道車両用車体から、側構連結部材100、荷棚端部連結部材110、荷棚基部連結部材120、減衰装置200,210,220を撤去したものであり、通常使われる通勤型車両の条件に該当する。
また、比較例2の鉄道車両用車体は、実施形態1の鉄道車両用車体から、側構連結部材100、荷棚端部連結部材110、荷棚基部連結部材120に設けられる減衰要素200,210,220を除去し、この除去箇所を直結してリジットに結合したものである。」

(イ)「【0043】
車体はまくらはりの位置(4点)で、空気ばねであるまくらばねに相当する剛性を持つスプリング要素により台車枠のモデル上に支持した。
台車枠、輪軸は、質量と慣性モーメントを考慮した剛体として考慮し、けん引装置や軸ばねは、スプリング要素としてモデル化した。
【0044】
各連結部材は、外径30mmのステンレス鋼と普通鋼のクラッド管とし、粘弾性部材の厚さは6mmとした。また、外筒は鋼製で外径48.6mmとした。これらはいずれもソリッド要素でモデル化し、金属部の材料特性は、一般的に使用されているものを与え、粘弾性体については、材料の諸元値を参照し、せん断弾性率として0.66N/mm2を設定した。
粘弾性体の長さは設計パラメータであり、それに比例して剛性値を変更することができるため、ここでは例えば15mm(第1実施形態)、75mm(第2実施形態)の場合についてモデルを作成した。
このモデルで連結部材及び外筒の間に、連結部材の軸方向、もしくは連結部材が回転しないような軸直角方向の静荷重を加え、それぞれの条件で発生した変位との関係から、並進ばねの特性を求めた。
また、連結部材の一端のみに軸直角方向の荷重を加え、そのときの変位(回転角)からこじり剛性を、また軸回りのモーメントを与えたときの変位(回転角)から、ねじり剛性を求めた。」

(ウ)「【0046】
これらのFEMモデルに対して、周波数応答解析を行い、車輪位置に上下加速度外乱を与えて、車体の代表点における加速度PSDを求めた。
代表的な測定点のPSDについて、第1実施形態、第2実施形態、比較例1、比較例2を比較したものを図7乃至図10に示す。
図7乃至図10は、各実施形態及び比較例のFEMによる周波数応答解析結果を示すグラフである。
図7は床上台車直上、図8は床上中央部、図9は床上中央部窓際、図10は腰掛フレーム上のデータをそれぞれ示している。
各図において、横軸は周波数を示し、縦軸は加速度PSDを示している。」

(エ)「【図7】



(オ)「【図8】



(カ)「【図9】



(キ)「【図10】



イ.甲第8号証に記載される技術
上記ア.(ア)?(キ)によると、甲第8号証には、以下の技術が記載されている。

「鉄道車両用車体を有限要素法により評価するために、
車体をまくらはりの位置で、空気ばねであるまくらばねに相当する剛性を持つスプリング要素により台車枠のモデル上に支持し、
モデルの連結部材及び外筒の間に、連結部材の軸方向、もしくは連結部材が回転しないような軸直角方向の静荷重を加え、
FEMモデルに対して、5?20Hzの周波数の範囲で、周波数応答解析を行い、車輪位置に上下加速度外乱を与えて、車体の代表点における加速度を求める技術。」

5.判断
(1)本件特許発明1について
ア.本件特許発明1
本件特許発明1は、上記2.に示した請求項1に係る発明であるが、ここに再掲する。
なお、本件特許発明1の各構成の符号は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成A?構成Eと称する。

(本件特許発明1)
(A)車体構造の有限要素モデルを構築するモジュールである第1の部分と、
(B)車体構造の境界条件を設定するモジュールである第2の部分と、
(C)車体構造の不安定性シミュレーション解析モジュールである第3の部分とを有するとともに、
(D)第1の部分と第2の部分が何れも第3の部分に接続された
(E)高速動力車列車の車体局所構造不安定性の有限要素シミュレーション装置であって、具体的には、
(A)第1の部分のモジュールは、
(A1)ヒューマン・コンピュータインタラクション装置を利用して設計された車体の形状や寸法を取得することによりモデルを構築するとともに、車体の局所に少なくとも1つの凹み部1を設置しシミュレートするための局所凹み領域モデル構築モジュールをさらに含み、
(B)第2の部分のモジュールは、
(B1)ヒューマン・コンピュータインタラクション装置によって配置された以下のモジュール、すなわち、車体から少なくとも1つの位置を選択してその自由度を拘束制限する車体境界拘束設定モジュールと、
(B2)車体の水平面に、車体が受けられる最大垂直荷重である均一分布荷重を印加すると共に、車体の少なくとも1つの位置に縦方向の圧縮荷重を印加する、車体最大垂直荷重及び圧縮荷重定義モジュールと、
(B3)車体最大垂直荷重及び圧縮荷重定義モジュールからのデータを受信し、この最大垂直荷重及び圧縮荷重を線形合成する、複合荷重線形合成モジュールと、
(B4)車体モード周波数の範囲値を設定するとともに、第3の部分のモジュールに提供する、車体モード周波数定義モジュールと、
(B5)車体の静荷重を設定する、静荷重作業状況定義モジュールと、
(B6)静荷重作業状況定義モジュール及び車体モード周波数定義モジュールに接続して、静荷重とモード周波数のデータを取得する、線形座屈解析作業状況定義モジュールとを備え、
(C)第3の部分のモジュールは、
(C1)第1の部分、第2の部分のモジュールのデータを取得した後、車体構造不安定性のシミュレーション解析を行い、順次に接続された以下のモジュール、すなわち、
この凹み部の臨界座屈係数を臨界不安定荷重抽出モジュールに出力する臨界座屈係数算出モジュールと、
(C2)この凹み部に印加可能な最大荷重を取得し、即ち車体局所構造が不安定になるときの臨界不安定荷重を取得すると共に、出力する臨界不安定荷重抽出モジュールと、
(C3)車体局所構造が不安定になったときの臨界不安定荷重を取得し、車体構造強度の解析が行われた後にこの箇所の荷重を抽出すると共に、2つの数値の大きさを比較し、車体構造強度により得られた荷重が臨界不安定性荷重よりも小さければ、この不具合な状態にある車体構造の運行が信頼できる一方、臨界不安定荷重よりも大きければ、この不具合な状態にある車体構造をさらに補強して欠陥部位の剛性を向上する必要があると判断する車体構造強度荷重及び臨界不安定荷重比較解析モジュールとを備える
ことを特徴とする、
(E)高速動力車列車の車体局所構造の不安定性のための有限要素シミュレーション装置。

イ.甲1発明
甲1発明は、上記4.(1)イ.(キ)に示した発明であるが、ここに再掲する。

(甲1発明)
(a)メッシュ生成プログラムを用いて車両用耐衝突補強材の形状を有限要素に分割してメッシュのデータを生成し、
(b)車両用耐衝突補強材の物理量(車両用耐衝突補強材を構成する金属板の板厚、弾性率等)と境界条件(車両用耐衝突補強材の拘束位置、荷重位置及び荷重量)とを設定し、
(c)メッシュ、物理量及び境界条件に基づいて座屈固有値解析を行い、解析位置の座屈固有値を抽出し、
(d)形状または物理量のうち少なくとも一以上が異なる複数の車両用耐衝突補強材同士について、それぞれ抽出された座屈固有値を評価値として比較し、最も高い座屈固有値を示した形状を、評価対象位置において耐座屈性能に最も優れた車両用耐衝突補強材とする
(e)車両用耐衝突補強材の評価方法を実現するコンピュータにおいて、
(f)車両用耐衝突補強材を自動車用のセンターピラー補強材とし、センターピラー補強材のモデル部材の本体部に凹ビードを設け、センターピラー補強材の形状を複数の有限要素に分割してメッシュを生成し、センターピラー補強材の上端を荷重位置に設定して荷重入力を加え、センターピラー補強材の複数の拘束位置のうちの下部の拘束位置で完全拘束して座屈固有値解析を行う
(e)コンピュータ。

ウ.本件特許発明1と甲1発明との対比
(ア)本件特許発明1の構成Aについて
構成aの「車両用耐衝突補強材」は、車体の構造の一部であり、構成aの「有限要素」の「メッシュ」は、「有限要素モデル」といえるから、構成aの「メッシュ生成プログラムを用いて車両用耐衝突補強材の形状を有限要素に分割してメッシュのデータを生成する」ことは、「車体構造の有限要素モデルを構築する」ことといえ、構成eの「車両用耐衝突補強材の評価方法を実現するコンピュータ」は、「車体構造の有限要素モデルを構築するモジュールである第1の部分」に相当する部分を有しているといえる。
したがって、本件特許発明1と甲1発明は、「車体構造の有限要素モデルを構築するモジュールである第1の部分」を有する点で一致する。

(イ)本件特許発明1の構成Bについて
構成bの「車両用耐衝突補強材」の「境界条件(車両用耐衝突補強材の拘束位置、荷重位置及び荷重量)」を設定することは、車体構造の境界条件を設定することといえるから、構成eの「車両用耐衝突補強材の評価方法を実現するコンピュータ」は、「車体構造の境界条件を設定するモジュールである第2の部分」に相当する部分を有しているといえる。
したがって、本件特許発明1と甲1発明は、「車体構造の境界条件を設定するモジュールである第2の部分」を有する点で一致する。

(ウ)本件特許発明1の構成Cについて
構成cの「メッシュ、物理量及び境界条件に基づいて座屈固有値解析を行い、解析位置の座屈固有値を抽出する」ことは、車体構造の不安定性シミュレーション解析を行うことといえるから、構成eの「車両用耐衝突補強材の評価方法を実現するコンピュータ」は、「車体構造の不安定性シミュレーション解析モジュールである第3の部分」に相当する部分を有しているといえる。
したがって、本件特許発明1と甲1発明は、「車体構造の不安定性シミュレーション解析モジュールである第3の部分とを有する」点で一致する。

(エ)本件特許発明の構成Dについて
上記(ウ)の「第3の部分」は、上記(ア)の「第1の部分」で生成された「メッシュ」と、上記(イ)の「第2の部分」で設定された「境界条件」に基づくものであるから、「第1の部分と第2の部分が何れも第3の部分に接続された」ものといえる。
したがって、本件特許発明1と甲1発明は、「第1の部分と第2の部分が何れも第3の部分に接続された」点で一致する。

(オ)本件特許発明1の構成Eについて
構成eの「車両用耐衝突補強材」は、車体の局所構造といえ、構成eの「車両用耐衝突補強材の評価方法を実現するコンピュータ」は、上記(ア)?(エ)で述べたとおり、「第1の部分」、「第2の部分」及び「第3の部分」に相当する部分を有している。
したがって、構成eの「車両用耐衝突補強材の評価方法を実現するコンピュータ」と構成Eは、「車体局所構造不安定性の有限要素シミュレーション装置」である点で共通する。
ただし、車体局所構造不安定性が、本件特許発明1では、「高速動力車列車」のものであるのに対し、甲1発明では、「高速動力車列車」のものとは特定されていない点で、両発明は相違する。

(カ)本件特許発明1の構成A1について
一般に、車体設計の技術分野において、ヒューマン・コンピュータインタラクション装置を利用して設計された車体の形状や寸法を取得することによりモデルを構築することは技術常識であるから、構成fの「センターピラー補強材のモデル部材」は、ヒューマン・コンピュータインタラクション装置を利用して設計された車体の形状や寸法を取得することにより構築されたものといえる。
また、構成fの「センターピラー補強材のモデル部材の本体部に凹ビードを設け、センターピラー補強材の形状を複数の有限要素に分割してメッシュを生成する」ことは、車体の局所に少なくとも1つの凹み部1を設置しシミュレートすることといえる。
以上によれば、上記(ア)の「第1の部分のモジュール」は、「ヒューマン・コンピュータインタラクション装置を利用して設計された車体の形状や寸法を取得することによりモデルを構築するとともに、車体の局所に少なくとも1つの凹み部1を設置しシミュレートするための局所凹み領域モデル構築モジュール」に相当する部分をさらに含むといえる。
したがって、本件特許発明1と甲1発明は、「第1の部分のモジュール」が、「ヒューマン・コンピュータインタラクション装置を利用して設計された車体の形状や寸法を取得することによりモデルを構築するとともに、車体の局所に少なくとも1つの凹み部1を設置しシミュレートするための局所凹み領域モデル構築モジュール」をさらに含む点で一致する。

(キ)本件特許発明1の構成B1について
構成fの「センターピラー補強材」は、「車体」の一部であるから、構成fの「センターピラー補強材の複数の拘束位置のうちの下部の拘束位置で完全拘束する」ことは、車体から少なくとも1つの位置を選択してその自由度を拘束制限することといえる。
また、一般に、車体設計の技術分野において、ヒューマン・コンピュータインタラクション装置によって、座屈固有値解析の設定を行うモジュールが配置されることは技術常識である。
以上によれば、上記(イ)の「第2の部分のモジュール」は、「ヒューマン・コンピュータインタラクション装置によって配置された以下のモジュール」のうちの「車体から少なくとも1つの位置を選択してその自由度を拘束制限する車体境界拘束設定モジュール」に相当する部分を備えるといえる。
したがって、本件特許発明1と甲1発明は、「第2の部分のモジュール」が、「ヒューマン・コンピュータインタラクション装置によって配置された以下のモジュール、すなわち、車体から少なくとも1つの位置を選択してその自由度を拘束制限する車体境界拘束設定モジュール」を備える点で一致する。

(ク)本件特許発明1の構成B2について
甲1発明は、「車体の水平面に、車体が受けられる最大垂直荷重である均一分布荷重を印加すると共に、車体の少なくとも1つの位置に縦方向の圧縮荷重を印加する、車体最大垂直荷重及び圧縮荷重定義モジュール」は備えていない。

(ケ)本件特許発明1の構成B3について
甲1発明は、「車体最大垂直荷重及び圧縮荷重定義モジュールからのデータを受信し、この最大垂直荷重及び圧縮荷重を線形合成する、複合荷重線形合成モジュール」は備えていない。

(コ)本件特許発明1の構成B4について
甲1発明は、「車体モード周波数の範囲値を設定するとともに、第3の部分のモジュールに提供する、車体モード周波数定義モジュール」は備えていない。

(サ)本件特許発明1の構成B5について
構成fの「センターピラー補強材の上端を荷重位置に設定して荷重入力を加える」ことは、車体の静荷重を設定することといえるから、上記(イ)の「第2の部分のモジュール」は、「車体の静荷重を設定する、静荷重作業状況定義モジュール」に相当する部分を備えるといえる。
したがって、本件特許発明1と甲1発明は、「車体の静荷重を設定する、静荷重作業状況定義モジュール」を備える点で一致する。

(シ)本件特許発明1の構成B6について
甲1発明は、「静荷重作業状況定義モジュール及び車体モード周波数定義モジュールに接続して、静荷重とモード周波数のデータを取得する、線形座屈解析作業状況定義モジュール」は備えていない。

(ス)本件特許発明1の構成C1について
構成fの「凹ビード」は、「この凹み部」に相当し、構成cの「座屈固有値」は、「臨界座屈係数」に相当するから、構成fの「センターピラー補強材のモデル部材の本体部に凹ビードを設け」、「座屈固有値解析を行う」こと、及び、構成cの「座屈固有値解析を行い、解析位置の座屈固有値を抽出する」ことは、この凹み部の臨界座屈係数を出力することといえる。
また、上記(エ)で述べたとおり、「第1の部分と第2の部分が何れも第3の部分に接続された」のであるから、「第3の部分のモジュール」は、第1の部分、第2の部分のモジュールのデータを取得した後、車体構造不安定性のシミュレーション解析を行うものといえる。
以上によれば、上記(ウ)の「第3の部分のモジュール」は、「第1の部分、第2の部分のモジュールのデータを取得した後、車体構造不安定性のシミュレーション解析を行い、順次に接続された以下のモジュール」のうちの、「この凹み部の臨界座屈係数を出力する臨界座屈係数算出モジュール」に相当する部分を備えるといえる。
したがって、構成eの「車両用耐衝突補強材の評価方法を実現するコンピュータ」と構成C1は、「第3の部分のモジュール」が、「第1の部分、第2の部分のモジュールのデータを取得した後、車体構造不安定性のシミュレーション解析を行い、順次に接続された以下のモジュール、すなわち、この凹み部の臨界座屈係数を出力する臨界座屈係数算出モジュール」を備える点で共通する。
ただし、以下の(セ)で述べるように、甲1発明は、「臨界不安定荷重抽出モジュール」を備えていないから、「この凹み部の臨界座屈係数」の出力先が、本件特許発明1では、「臨界不安定荷重抽出モジュール」であるのに対し、甲1発明では、「臨界不安定荷重抽出モジュール」でない点で、両発明は相違する。

(セ)本件特許発明1の構成C2について
構成cは、「座屈固有値」を抽出するものであって、「この凹み部に印加可能な最大荷重」、即ち「車体局所構造が不安定になるときの臨界不安定荷重」は取得していない。
したがって、甲1発明は、「この凹み部に印加可能な最大荷重を取得し、即ち車体局所構造が不安定になるときの臨界不安定荷重を取得すると共に、出力する臨界不安定荷重抽出モジュール」は備えていない。

(ソ)本件特許発明1の構成C3について
甲1発明は、「車体局所構造が不安定になったときの臨界不安定荷重を取得し、車体構造強度の解析が行われた後にこの箇所の荷重を抽出すると共に、2つの数値の大きさを比較し、車体構造強度により得られた荷重が臨界不安定性荷重よりも小さければ、この不具合な状態にある車体構造の運行が信頼できる一方、臨界不安定荷重よりも大きければ、この不具合な状態にある車体構造をさらに補強して欠陥部位の剛性を向上する必要があると判断する車体構造強度荷重及び臨界不安定荷重比較解析モジュール」は備えていない。

(タ)まとめ
以上の対比結果をまとめると、本件特許発明1と甲1発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。

[一致点]
(A)車体構造の有限要素モデルを構築するモジュールである第1の部分と、
(B)車体構造の境界条件を設定するモジュールである第2の部分と、
(C)車体構造の不安定性シミュレーション解析モジュールである第3の部分とを有するとともに、
(D)第1の部分と第2の部分が何れも第3の部分に接続された
(E’)車体局所構造不安定性の有限要素シミュレーション装置であって、具体的には、
(A)第1の部分のモジュールは、
(A1)ヒューマン・コンピュータインタラクション装置を利用して設計された車体の形状や寸法を取得することによりモデルを構築するとともに、車体の局所に少なくとも1つの凹み部1を設置しシミュレートするための局所凹み領域モデル構築モジュールをさらに含み、
(B)第2の部分のモジュールは、
(B1)ヒューマン・コンピュータインタラクション装置によって配置された以下のモジュール、すなわち、車体から少なくとも1つの位置を選択してその自由度を拘束制限する車体境界拘束設定モジュールと、
(B5)車体の静荷重を設定する、静荷重作業状況定義モジュールと、
を備え、
(C)第3の部分のモジュールは、
(C1’)第1の部分、第2の部分のモジュールのデータを取得した後、車体構造不安定性のシミュレーション解析を行い、順次に接続された以下のモジュール、すなわち、
この凹み部の臨界座屈係数を出力する臨界座屈係数算出モジュール、
を備える
ことを特徴とする、
(E’)車体局所構造の不安定性のための有限要素シミュレーション装置。

[相違点]
(相違点1)
車体局所構造不安定性が、本件特許発明1では、「高速動力車列車」のものであるのに対し、甲1発明では、「高速動力車列車」のものとは特定されていない点。

(相違点2)
本件特許発明1は「車体の水平面に、車体が受けられる最大垂直荷重である均一分布荷重を印加すると共に、車体の少なくとも1つの位置に縦方向の圧縮荷重を印加する、車体最大垂直荷重及び圧縮荷重定義モジュール」(構成B2)を備えているのに対し、甲1発明は備えていない点。

(相違点3)
本件特許発明1は「車体最大垂直荷重及び圧縮荷重定義モジュールからのデータを受信し、この最大垂直荷重及び圧縮荷重を線形合成する、複合荷重線形合成モジュール」(構成B3)を備えているのに対し、甲1発明は備えていない点。

(相違点4)
本件特許発明1は「車体モード周波数の範囲値を設定するとともに、第3の部分のモジュールに提供する、車体モード周波数定義モジュール」(構成B4)を備えているのに対し、甲1発明は備えていない点。

(相違点5)
本件特許発明1は「静荷重作業状況定義モジュール及び車体モード周波数定義モジュールに接続して、静荷重とモード周波数のデータを取得する、線形座屈解析作業状況定義モジュール」(構成B6)を備えているのに対し、甲1発明は備えていない点。

(相違点6)「この凹み部の臨界座屈係数」(構成C1)の出力先が、本件特許発明1では、「臨界不安定荷重抽出モジュール」であるのに対し、甲1発明では、「臨界不安定荷重抽出モジュール」でない点。

(相違点7)
本件特許発明1は「この凹み部に印加可能な最大荷重を取得し、即ち車体局所構造が不安定になるときの臨界不安定荷重を取得すると共に、出力する臨界不安定荷重抽出モジュール」(構成C2)を備えているのに対し、甲1発明は備えていない点。

(相違点8)
本件特許発明1は「車体局所構造が不安定になったときの臨界不安定荷重を取得し、車体構造強度の解析が行われた後にこの箇所の荷重を抽出すると共に、2つの数値の大きさを比較し、車体構造強度により得られた荷重が臨界不安定性荷重よりも小さければ、この不具合な状態にある車体構造の運行が信頼できる一方、臨界不安定荷重よりも大きければ、この不具合な状態にある車体構造をさらに補強して欠陥部位の剛性を向上する必要があると判断する車体構造強度荷重及び臨界不安定荷重比較解析モジュール」(構成C3)を備えているのに対し、甲1発明は備えていない点。

エ.相違点の判断
事案に鑑み、まず、相違点8について検討する。

甲第2?8号証には、上記4.(2)イ.、上記4.(3)イ.、上記4.(4)イ.、上記4.(5)イ.、上記4.(6)イ.、上記4.(7)イ.、上記4.(8)イ.で認定したとおりの技術が記載されている。
しかしながら、「車体構造強度の解析」を行うことは、甲第2?8号証のいずれにも記載されておらず、「車体構造強度の解析が行われた後にこの箇所の荷重を抽出する」ことも、甲第2?8号証のいずれにも記載されていない。
また、「車体局所構造が不安定になったときの臨界不安定荷重」を取得し、「車体構造強度の解析が行われた後にこの箇所の荷重を抽出する」と共に、「2つの数値の大きさを比較する」ことも、甲第2?8号証のいずれにも記載されていない。
さらに、2つの数値の大きさを比較し、「車体構造強度により得られた荷重が臨界不安定性荷重よりも小さければ、この不具合な状態にある車体構造の運行が信頼できる一方、臨界不安定荷重よりも大きければ、この不具合な状態にある車体構造をさらに補強して欠陥部位の剛性を向上する必要があると判断する」ことも、甲第2?8号証のいずれにも記載されていない。
したがって、相違点8に係る構成である、「車体局所構造が不安定になったときの臨界不安定荷重を取得し、車体構造強度の解析が行われた後にこの箇所の荷重を抽出すると共に、2つの数値の大きさを比較し、車体構造強度により得られた荷重が臨界不安定性荷重よりも小さければ、この不具合な状態にある車体構造の運行が信頼できる一方、臨界不安定荷重よりも大きければ、この不具合な状態にある車体構造をさらに補強して欠陥部位の剛性を向上する必要があると判断する車体構造強度荷重及び臨界不安定荷重比較解析モジュール」は、甲第2?8号証のいずれにも記載されていない。

特許異議申立人は、特許異議申立書において、「ここで、車体構造強度の解析行われた後にこの部位から抽出した荷重と、車体局所構造が不安定になったときの臨界不安定荷重との2つの数値の大きさを比較して、抽出した荷重が臨界不安定荷重よりも大きければ、当該箇所を補強して剛性を向上する必要があると判断することは、座屈解析により当該箇所に補強が必要か否かを判断する上で当業者が当然に行う事項である。」(特許異議申立書第34頁第21?26行目)と主張しているが、「車体構造強度の解析行われた後にこの部位から抽出した荷重と、車体局所構造が不安定になったときの臨界不安定荷重との2つの数値の大きさを比較して、抽出した荷重が臨界不安定荷重よりも大きければ、当該箇所を補強して剛性を向上する必要があると判断すること」が、当業者が当然に行う事項であると認めるに足る証拠は提出されていないから、特許異議申立人の主張は採用できない。

また、上記4.(1)ア.(ソ)によれば、甲第1号証には、「当該モードでの座屈荷重は、境界条件として与えた荷重(今回は600N)と座屈固有値の積で計算でき、座屈固有値が高いものほど座屈荷重が高く、従って座屈しにくいと言える」とは記載されているものの、甲1発明は、「形状または物理量のうち少なくとも一以上が異なる複数の車両用耐衝突補強材同士について、それぞれ抽出された座屈固有値を評価値として比較し、最も高い座屈固有値を示した形状を、評価対象位置において耐座屈性能に最も優れた車両用耐衝突補強材とする」(構成d)ものであって、「座屈荷重」の数値により車両用耐衝突補強材の評価を行うものではない。
さらに、上記4.(1)ア.(シ)によれば、甲第1号証には、「深さ5mmの凹ビードを設けたNo.2は凹ビード無しのNo.1の3倍、深さ3mmの凹ビードを設けたNo.3はNo.1の2倍の座屈抵抗を示すとの結果が得られ、凹ビードの付与が効果があるという結果が得られた」と記載されているから、構成fの「凹ビード」は「不具合な状態」をシミュレートするものとはいえず、甲1発明は、「不具合な状態にある車体構造」に対する評価を行うものではない。
したがって、仮に、「車体構造強度の解析行われた後にこの部位から抽出した荷重と、車体局所構造が不安定になったときの臨界不安定荷重との2つの数値の大きさを比較して、抽出した荷重が臨界不安定荷重よりも大きければ、当該箇所を補強して剛性を向上する必要があると判断すること」が、当業者が当然に行う事項であったとしても、甲1発明において、「車体構造強度により得られた荷重が臨界不安定性荷重よりも小さければ、この不具合な状態にある車体構造の運行が信頼できる一方、臨界不安定荷重よりも大きければ、この不具合な状態にある車体構造をさらに補強して欠陥部位の剛性を向上する必要があると判断する」ことは、当業者が容易に想到し得ることではない。

そして、相違点8に係る構成は、周知技術ともいえないから、甲1発明において、相違点8に係る構成を導き出すことは、当業者が容易に想到し得ることではない。

よって、相違点8に係る構成は、甲1発明及び甲第2?8号証に記載された技術事項から、当業者が容易になし得るものとはいえない。

以上のとおり、本件特許発明1は、当業者が少なくとも相違点8に係る構成を容易に導き出すことはできないから、甲1発明及び甲第2?8号証に記載された技術事項から、当業者が容易になし得るものとはいえない。

オ.小括
以上のとおり、本件特許発明1は、甲1発明及び甲第2?8号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

(2)本件特許発明2ないし10について
本件特許発明2ないし10は、本件特許発明1を引用する発明であるから、本件特許発明2ないし10は、少なくとも上記相違点8に係る構成を有している発明である。
したがって、本件特許発明2ないし10は、本件特許発明1と同様、甲1発明及び甲第2?8号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

6.むすび
以上のとおり、本件請求項1ないし10に係る特許は、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-08-22 
出願番号 特願2016-542183(P2016-542183)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G06F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松浦 功  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 坂東 大五郎
小池 正彦
登録日 2017-11-02 
登録番号 特許第6236534号(P6236534)
権利者 中▲車▼青▲島▼四方▲機車車▼輌股▲分▼有限公司
発明の名称 高速動力車列車の車体局所構造不安定性の有限要素シミュレーション装置及びその方法  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 弟子丸 健  
代理人 ▲吉▼田 和彦  
代理人 磯貝 克臣  
代理人 山本 泰史  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 松下 満  
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