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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01P
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G01P
審判 全部申し立て 2項進歩性  G01P
管理番号 1343929
異議申立番号 異議2018-700414  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-10-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-05-22 
確定日 2018-09-03 
異議申立件数
事件の表示 特許第6233455号発明「回転機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6233455号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6233455号の請求項1?8に係る特許についての出願は、平成28年6月9日に特許出願され、平成29年11月2日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成30年5月22日に特許異議申立人中野圭二により特許異議の申立てがされたものである。


2 本件発明
特許第6233455号の請求項1?8の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明8」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
回転軸を中心に軸回転する回転体と、
導電性材料からなり、上記回転体を収容したハウジングと、
少なくとも一対の磁極の並び方向が上記回転体の径方向を向くように上記回転体に取り付けられた磁石と、
上記ハウジングに取り付けられ、上記磁石から発生した磁界の時間変化を検出することにより、上記回転体の回転速度を検出する磁気センサとを備え、
該磁気センサは、上記径方向において、上記磁石よりも外側に配されており、
上記磁気センサの感磁方向は上記径方向に直交していることを特徴とする回転機。
【請求項2】
上記磁気センサは、上記回転体の軸方向において、上記磁石から所定距離離れた位置に配されていることを特徴とする請求項1に記載の回転機。
【請求項3】
上記磁気センサは、上記径方向において、上記ハウジングの外面と内面との中間位置よりも内側に位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転機。
【請求項4】
上記ハウジングには、該ハウジングの外面から上記径方向における内側に凹む凹状部が形成され、該凹状部に上記磁気センサが配されていることを特徴とする請求項1?3のいずれか一項に記載の回転機。
【請求項5】
少なくとも2個の上記磁気センサを備え、該2個の磁気センサは、上記磁石から発生した磁界に基づく出力が互いに異なり、上記2個の磁気センサの出力の差を用いて、上記回転体の回転速度を検出するよう構成されていることを特徴とする請求項1?4のいずれか一項に記載の回転機。
【請求項6】
上記回転機はターボチャージャとして用いられ、上記回転体は上記ターボチャージャのコンプレッサホイールであり、上記ハウジングは上記コンプレッサホイールを収容するコンプレッサハウジングであり、上記磁気センサは上記コンプレッサハウジングに取り付けられていることを特徴とする請求項1?5のいずれか一項に記載の回転機。
【請求項7】
上記磁気センサはマグネトインピーダンスセンサであることを特徴とする請求項1?6のいずれか一項に記載の回転機。
【請求項8】
上記磁石は上記回転軸に取り付けられていることを特徴とする、請求項1?7のいずれか一項に記載の回転機。」


3 申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠として以下の甲第1号証?甲第6号証(以下「甲1」?「甲6」という。)を提出して、請求項1,2,8に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当するか、若しくは同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号により取り消すべきものである旨主張している。また、請求項3?7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号により取り消すべきものである旨主張している。さらに、本件の請求項1に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、同法第113条第4号により取り消すべきものである旨主張している。

(1)甲第1号証:特許5886269号公報
(2)甲第2号証:特開2010-8359号公報
(3)甲第3号証:実願昭57-156339号(実開昭59-60557号)のマイクロフィルム
(4)甲第4号証:特表2008-536038号公報
(5)甲第5号証:特開2002-195854号公報
(6)甲第6号証:特開2006-184269号公報


4 刊行物の記載
(1)甲1には、次の事項が記載されている。(下線は当審による。以下同様。)
「【請求項1】
回転軸と、
回転軸に固定されたセンサマグネットと、
前記回転軸の回転時に、前記センサマグネットにより形成される周期的に変動する磁界を検出するセンサと、を備え、
前記センサは、
ホール効果を利用する素子を有し、
該素子の感磁面が前記センサマグネットの磁化ベクトルに対して垂直とならないように配置され、
前記回転軸の軸方向から見て、前記センサマグネットの外周よりも外側、かつ、径方向から見て前記センサマグネットと重ならない位置に配置されていることを特徴とする回転検出装置。」

「【0020】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係るモータの正面図である。図2は、第1の実施の形態に係るモータの断面図である。
【0021】
第1の実施の形態に係るDCブラシモータ(以下、「モータ」と称する。)10は、主として、ヨークハウジングとしてのハウジング12と、ロータ14と、コネクタ付きのブラシホルダ16と、金属製のカバー部材であるエンドプレート18と、後述する回転検出装置100と、を備える。ハウジング12は、軸方向Xの一端に開口部12aが形成され
、他端に閉塞された底部12bが設けられている。底部12bは、凹部が形成されており、その凹部に軸受17が収容されている。また、ハウジング12の内壁には、円弧状のステータマグネット19が配置されている。また、ハウジング12やエンドプレート18は、低保持力で強磁性体である電磁鋼板で構成されている。
【0022】
ロータ14は、シャフト20と、コア22と、巻線24と、コミテータ(整流子)26とを備え、シャフト20に固定される。シャフト20は、軸受17および軸受28を介して、ハウジング12およびエンドプレート18に回転可能に支持される回転軸である。また、シャフト20は、出力軸としても機能する。軸受28は、エンドプレート18の中央部に形成されている凹部に収容されている。コア22は、複数の鋼板が積層されたものであり、その中心にはシャフト20が貫通した状態で固定されている。巻線24は、コア22の溝22aに巻き回されており、電流が流れることで磁力を生じさせる。
【0023】
コミテータ26は、コア22と同様にシャフト20に固定されている。コミテータ26は、接触するブラシ(不図示)を通して通電される電流を巻線24に適切なタイミングで流す接点である。ブラシは、例えば、黒鉛等を主成分とするカーボンブラシである。なお、ブラシは、貴金属等を主成分とするフォーク状の金属ブラシの場合もありうる。
【0024】
ブラシホルダ16は、ロータ14が収納される筒型のハウジング12の開口部12aに装着され、ブラシを介したロータ14への給電経路が設けられている。給電経路の途中には、チョークコイル32やコンデンサ、バリスタ等のノイズ抑制素子が搭載され、各素子を結ぶ配線が表面に形成された回路基板34が設けられている。」

「【0033】
図4(a)に示す回転検出装置100は、シャフト20と、シャフト20に固定された環状のセンサマグネット104と、シャフト20の回転時に、センサマグネット104により形成される周期的に変動する磁界を検出するセンサ106と、を備える。センサ106は、磁電変換素子の一種であるホール素子を有し、回路基板34の上に搭載されている。なお、センサ106は、回路基板34の両面のどちらに搭載することも可能である。センサマグネット104は、磁化ベクトルMがシャフト20と垂直となるように構成されており、周方向に複数の磁極が並んでいる。
【0034】
そして、回転検出装置100におけるセンサ106は、感磁面106aがセンサマグネット104の磁化ベクトルMに対して垂直とならないように配置されている。これにより、ホール素子の感磁面106aがセンサマグネット104の磁化ベクトルMに対して平行または斜めとなるような位置に、ホール素子を配置できる。また、センサ106は、センサマグネット104の着磁中心を通る磁化ベクトルMの延長線E上から外れた位置に配置されている。このように、回転検出装置100においては、ホール素子を有するセンサ106の配置の自由度が高まり、回転検出装置100を省スペースで実現できる。
【0035】
ここで、感磁面106aは、回転検出装置100内部のホール効果を生じる半導体薄膜の表面であり、ホール素子が実際に交差する磁束を検出可能な領域と定義できる。また、一般的には、ホール素子が収納されたケースの外面106bと平行な面であることが多い。また、感磁面は、その面と交差する磁束の直交成分を感知するものと捉えることもできる。着磁中心とは、例えば、マグネットの軸方向の長さ範囲において、マグネット表面磁束の軸方向成分が最小となるポイント、と捉えることができる。
【0036】
そして、センサ106は、感磁面106aと、着磁中心を通る磁化ベクトルMの延長線Eとが交差しない位置に配置されている。また、センサ106は、シャフト20の軸方向から見て、センサマグネット104の外周面104aよりも径方向の外側に配置されている。そのため、仮にシャフト20が軸方向に移動してもセンサマグネット104とセンサ106とが干渉することがない。そのため、シャフト20の軸方向において、センサ106およびセンサマグネット104をより近付けることができる。例えば、図4(b)に示す回転検出装置110の場合、センサ106を搭載した回路基板34を、センサマグネット104の外周面104aの正面近傍領域まで近付けられる。つまり、シャフト20の径方向から見て、センサマグネット104とセンサ106とが重なるように配置でき、回転検出装置100の薄型化が可能となる。また、センサマグネット104の小径化、小型化が可能となり、材料費を低減できる。」



また、上記図4(a)から、センサ106の感磁面106aが、シャフト20の径方向に平行である構成、すなわち、センサ106の感磁方向が、シャフト20の径方向に直交している構成が読み取れる。そうすると、上記記載より甲1には次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「甲1発明」という。)

「ロータ14に備えられ、回転軸であり、また、出力軸としても機能するシャフト20と、(【0022】)
低保持力で強磁性体である電磁鋼板で構成されている、ハウジング12及びエンドプレート18であって、筒型のハウジング12にロータ14が収納される、ハウジング12及びエンドプレート18と、(【0021】、【0024】)
シャフト20に固定された環状のセンサマグネット104であって、磁化ベクトルMがシャフト20と垂直となるように構成されており、周方向に複数の磁極が並んでいるセンサマグネット104と、(【0033】)
回路基板34の上に搭載され、シャフト20の回転時に、センサマグネット104により形成される周期的に変動する磁界を検出するセンサ106であって、磁電変換素子の一種であるホール素子を有するセンサ106とを備え、(【0033】)
センサ106は、シャフト20の軸方向から見て、センサマグネット104の外周面104aよりも径方向の外側に配置されており、(【0036】)
センサ106の感磁方向が、シャフト20の径方向に直交しているDCブラシモータ。(【0021】、図4(a))」

(2)甲2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0016】
本実施形態による回転角検出装置1は、リング状に成形され、径方向に着磁された永久磁石2を有している。この永久磁石2は、例えば、回転体である自動車のステアリングホイール(図示しない)に接続されステアリングホイールの回転を車輪に伝えるためのシャフトAの途中部分の外周面に、内周面を当接して取り付けられており、回転体であるステアリングホイールの回転に伴って円周方向θに回転するようになっている。
【0017】
永久磁石2の外周面側部であって、一の径の延長線上には、第1の磁気検出素子である第1のホール素子3が、磁気検出面を前記一の径の延長線方向rに向けて設けられており、径の延長線方向rの磁気強度(径の延長線方向rにx軸を取った場合、磁界のx成分)を検出するようになっている。また、永久磁石2と第1のホール素子3との間であって、前記一の径の延長線上には、第2の磁気検出素子である第2のホール素子4が、磁気検出面を永久磁石2の円周方向θに向けて設けられており、永久磁石2の円周方向θの磁気強度(径の延長線方向rにx軸を取り、x軸に直交する方向であって回転軸方向でない方向にy軸を取った場合、磁界のy成分)を検出するようになっている。第1のホール素子3は、磁気検出面の中心が一の径の延長線上に位置し、第2のホール素子4は、相対する2組の磁気検出面に直交する側面のいずれか一方の中心が一の径の延長線上に位置している。なお、磁気検出面とは、ホール素子を構成する半導体薄膜において、電流を流す方向と直交する方向に磁場が貫通する貫通面である。」

(3)甲3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「第4図に示す如く、過給機1は回転軸2を水平状態で回転自在に支持するための軸受部3の両側にタービン室4とブロア室5とを一体的に有するケーシング6を備え、・・・」(第5頁第13行?同第16行)

「そして、このように非磁性体11によって閉塞された貫通孔10内には上記可動磁石9のN・S極の回転移動を起電力パルスとして得るための検出コイル12が設けられている。」(第7頁第5行?同第9行)

(4)甲4には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0007】
本発明の課題は、排気ガスタービン過給機の回転する構成部分(タービンホイール、コンプレッサーホイール、過給機軸)の回転数を経済的に、確実にかつ正確に検出するようにすることである。」

「【0023】
排気ガスタービン過給機の図2に示すコンプレッサー3は、過給機軸5の回転数の測定のための公知技術のセンサー12を備えている。排気ガスタービン過給機の過給機軸5にコンプレッサーホイール9を配置してある。過給機軸5のコンプレッサー側の端部にマグネット5を設けてあり、マグネット(磁石)は、1つの北極Nと1つの南極Sとを有している。過給機軸5の回転はマグネット15の回転を生ぜしめ、したがって北極及び南極によって生ぜしめられる磁場はセンサー12に対する関係を変化させる。公知技術ではセンサー12は、別個の構成部分若しくは独立の構成部分としてコンプレッサーケーシング11の切欠き内に配置されている。このためにシール27を設けてあり、シールはコンプレッサーケーシング11をセンサー12の領域で密閉している。コンプレッサーケーシング11内へのセンサー12の組み付けは比較的に煩雑であり、それというのはコンプレッサーケーシング11は比較的に高い熱負荷を受ける構成部分であり、したがって異なる熱膨張係数はコンプレッサーケーシング11とセンサー12との間に応力を生ぜしめることになるからである。さらに、コンプレッサーケーシング11内へのセンサー12の組み付けは、排気ガスタービン過給機1の製作の際の付加的な1つの作業工程を必要としており、このような作業工程は排気ガスタービン過給機の製作費を高くしている。
【0024】
図3に本発明に基づくコンプレッサーケーシング11の実施例を示してある。排気ガスタービン過給機1のコンプレッサー3は、コンプレッサーケーシング11、過給機軸5、及び過給機軸上に配置されたコンプレッサーホイール9を含んでいる。空気入口10で過給機軸5のコンプレッサー側の端部にマグネット15を配置してある。マグネットの北極N及び南極Sは、過給機軸5の回転に際して過給機軸5と一緒に回転する。これによってセンサー12に対する磁場の変化は、センサー部材13によって検出される。センサー12は実施例ではセンサー部材13及び信号形成電子装置14から成っており、信号形成電子装置14はセンサー部材13と一緒にリードフレーム20に配置されている。このように形成されたセンサー12は、コンプレッサーケーシング11の材料内に完全に埋め込まれている。つまりセンサー12は、後からコンプレッサーケーシング11内に組み立てられ若しくは組み付けられるのではなく、コンプレッサーケーシング11の射出成形若しくはダイカスト成形時にコンプレッサーケーシング11内に埋め込まれており、これによってセンサー12はコンプレッサーケーシング11自体の統合された構成部分若しくは一体の構成部分を成している。コンプレッサーケーシング11は射出成形でプラスチック製の構成部分として製造されてよい。最新のプラスチックは耐熱性を有していて、排気ガスタービン過給機1のコンプレッサーケーシング11の材料として適するようになっている。コンプレッサーケーシング11はさらにアルミニウムから精密にダイカスト成形されてもよい。センサー12をアルミニウム製のコンプレッサーケーシング11内に統合するためには、センサー部材13、信号形成電子装置14及びリードフレーム20を予め電気的に絶縁して、これらの構成部分とアルミニウム製のコンプレッサーケーシング11との電気的な接触を避けるようになっているとよい。」

(5)甲5には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0033】MIセンサである感磁素子10は、例えば、線状の零磁歪アモルファス磁性体である(図2)。特に、検出軸方向に線状に伸びたアモルファスワイヤが用いられる。アモルファス磁性体には、例えば、CoSiB 系、FeCoSiB 系、FeSiB 系これらの合金等の磁性体を用いることができる。具体的な寸法を示せば、長さ3mm、直径30μmである。この素子は磁気インピーダンス効果素子であり、外部磁場H0 が変化するとインピーダンスが変化する素子である。この効果は、周回方向の磁気異方性と表皮効果に依存するものである。アモルファス磁性体は、この周回方向の磁気異方性と表皮効果が大きい。本実施例は、この磁気インピーダンス効果を有効に使用するものである。例えば、図4の磁気インピーダンス特性においては、P点近傍を、図5の磁気インピーダンス特性においてはW1の領域を用いれば外部磁場変動に応じてインピーダンスが大きく変化する。この特性を使用する。即ち、感磁素子10のインピーダンス変化から永久磁石7の運動、即ち回転体の回転状態が検出できる。勿論、図3の領域W3を使用することも可能である。」

「【0047】図10において、上部の磁気センサ150の感磁素子10を第1感磁素子10a、側部の磁気センサ150の感磁素子を10bとすれば、検出回路のそれぞれの比較回路17a、17bからは図12に示すパルス波形で出力a(図11のA点での波形)、出力b(図11のB点での波形)が送出される。そして、それらの信号の位相差を位相検出回路18bで検出する。即ち、第1感磁素子10aの出力aに対する第2感磁素子10bの出力の位相を見る。例えば、位相が90°以内であれば、図10において回転体の回転方向は右回転、270°以上であれば左回転となる。このように、複数の磁気センサ150を用いれば、回転体の回転数出力に加え回転方向までも判別することができる。又、図3に示す特性で、領域W3を使用する場合も、上記と全く同様に構成することが可能である。さらに、感磁素子10a,10bの特性が図3に示す特性であって、領域W0を使用する場合には、薄膜磁石20a、20bを取り除けば良い。それぞれの同様なパルス波形の出力a、出力bが得られる。これにより、同様に回転方向が判別される。」

(6)甲6には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項6】
前記第1の磁気検出手段及び第2の磁気検出手段は、磁気インピーダンス(MI)センサであることを特徴とする請求項2?請求項4のいずれか1項に記載の電流センサ。」

「【0013】
請求項1,2の発明では、導体に流れる電流を2つの導体部に分流し、各導体部近傍に設けられた磁気検出手段で各導体部に流れる電流に起因して生じる磁界を検出する。この際、各磁気検出手段は、導体部周囲に生じる磁界を互いに逆方向となる向きで検出するので、2つの磁気検出手段で検出された磁界を減算すれば、結果として2つの磁界を加算したことになり、この結果を用いて導体に流れる電流を求めることができる。また、導体の外部から各磁気検出手段に印加される外部磁界は、2つの磁気検出手段で検出された磁界を減算することにより相殺されるので、外部磁界の影響を回避することができる。」


5 判断
(1)請求項1に係る発明について(特許法第29条第1項第3号、同条第2項)
本件発明1と甲1発明とを対比すると、本件発明1においては、「磁気センサ」が「導電性材料からなり、上記回転体を収容したハウジング」である「上記ハウジングに取り付けられ、」るのに対し、甲1発明では、「センサ106」が「回路基板34の上に搭載され、」るとされている。したがって、本件発明1は甲1発明と同一ではない。

特許異議申立人は、特許異議申立書(「3.申立ての理由」「(4)具体的理由(本件特許を取り消すべき理由)」の「ウ 引用発明」)において、甲1には、
「・・・ハウジング12に取り付けられ、センサマグネット104から発生した磁界の時間変化を検出することにより、シャフト20の回転速度を検出するセンサ106とを備え、・・・ていることを特徴とするDCブラシモータ10。」
が記載されていると主張しているが、上記「4 刊行物の記載」「(1)」において述べたとおり、甲1発明は
「・・・回路基板34の上に搭載され、シャフト20の回転時に、センサマグネット104により形成される周期的に変動する磁界を検出するセンサ106であって、磁電変換素子の一種であるホール素子を有するセンサ106とを備え、・・・ているDCブラシモータ。」
であって、「センサ106」は「回路基板34の上に搭載され、」ており、また甲1の図2を見ても、センサ106はハウジング12及びエンドプレート18から隔離して配置されている。そして、甲1のその他の記載にも、センサ106をハウジング12またはエンドプレート18に取り付けた構成に言及した、もしくはそれを示唆するものは認められない。
したがって、上記主張は採用できない。

また、本件発明1は、「導電性材料からなり、上記回転体を収容したハウジング」である「上記ハウジングに取り付けられ、」る「磁気センサ」の「感磁方向は上記(回転体の)径方向に直交している」という組合せの構成を備えるものであって、そのような組合せの構成は甲2?甲6に記載も示唆もされていない。そして本件発明1は、上記のように、導電性材料からなるハウジングに磁気センサを、感磁方向が径方向に直交するように取り付けることによって、磁石の磁界と、渦電流に起因する磁界とが打消し合わず、回転体の回転速度が高くなっても、磁気センサの高い出力を維持でき、回転体の回転速度を正確に検出することが可能になる、という特有の効果を奏する(本件特許公報、段落【0010】)ものであって、該効果は、ハウジングが導電性材料からなることや、磁気センサがハウジングに取り付けられることや、磁気センサの感磁方向が回転体の径方向に直交することといった、個々の構成のみによっては実現できないものである。
そうすると、甲2?甲6に基づいて、上記のような組合せの構成を甲1発明に採用することは、当業者が容易に想到し得たものでもなく、したがって、本件発明1は、甲1?甲6に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(2)請求項2,8に係る発明について(特許法第29条第1項第3号、同条第2項)
本件発明2,8は、本件発明1を更に減縮したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、甲1に記載された発明と同一ではなく、また甲1?甲7に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)請求項3?7に係る発明について(特許法第29条第2項)
本件発明3?7は、本件発明1を更に減縮したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、甲1?甲7に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)請求項1の記載について(特許法第36条第6項第2号)
特許異議申立人は、特許異議申立書(「3.申立ての理由」「(4)具体的理由(本件特許を取り消すべき理由)」の「ソ 特許法第36条第6項第2号について」)において、
「本件特許公報の段落【0012】には、「本発明では、磁気センサによって、磁石の磁界の変化を測定している。そのため、磁気センサを、磁石の磁界を測定できないように取り付けた場合は、本発明から除外される。例えば図26に示すごとく・・・したがって、磁石4の磁界を測定できず、回転体2の回転速度を測定できなくなる。このような磁気センサ5の取り付け方は、本発明から除外される。」と記載されている。しかし、本件発明1は、このような構成・・・もその技術的範囲に含んでおり、発明が明確ではない。」
と主張している。
しかしながら、本件請求項1には、
「・・・ 上記ハウジングに取り付けられ、上記磁石から発生した磁界の時間変化を検出することにより、上記回転体の回転速度を検出する磁気センサとを備え、・・・ていることを特徴とする回転機。」
と記載されており、本件発明1が「磁石から発生した磁界の時間変化を検出することにより、上記回転体の回転速度を検出する磁気センサ」を備えるものであることが特定されている。そして、上記主張における「磁気センサ5」は、「磁石4の磁界を測定できず、回転体2の回転速度を測定できなくなる」ものであるから、本件請求項1において特定される、「磁石から発生した磁界の時間変化を検出することにより、上記回転体の回転速度を検出する磁気センサ」に該当しないことは明らかといえる。
そうすると、本件請求項1に記載された本件発明1は、上記主張で指摘するような構成をその技術的範囲に含んではおらず、本件請求項1の記載は明確であって、請求人の主張を採用することはできない。

以上のとおり、本件の請求項1,2,8に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当するものではなく、また同法第29条第2項の規定に違反してなされたものでもないから、同法第113条第2号により取り消すことはできない。
また、本件の請求項3?7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、同法第113条第2号により取り消すことはできない。
さらに、本件の請求項1に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしており、同法第113条第4号により取り消すことはできない。


6 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-08-23 
出願番号 特願2016-114992(P2016-114992)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G01P)
P 1 651・ 113- Y (G01P)
P 1 651・ 537- Y (G01P)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岡田 卓弥  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 中塚 直樹
▲うし▼田 真悟
登録日 2017-11-02 
登録番号 特許第6233455号(P6233455)
権利者 愛知製鋼株式会社
発明の名称 回転機  
代理人 特許業務法人あいち国際特許事務所  
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