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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01L
管理番号 1343930
異議申立番号 異議2018-700504  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-10-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-06-20 
確定日 2018-09-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第6251271号発明「ポリピロリドン研磨組成物および研磨方法」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第6251271号の請求項に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6251271号(以下,「本件特許」という。)の請求項1ないし16に係る特許についての出願は,平成25年9月4日(パリ条約による優先権主張2012年9月7日(以下,「本件優先日」という。)米国(US))を国際出願日とするものであって,平成29年12月1日に特許権の設定登録がされ,その後,その特許について,平成30年6月20日に特許異議申立人佐野鐐三により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし6,9ないし11,13ないし16に係る発明(以下,それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明6」,「本件特許発明9」ないし「本件特許発明11」,「本件特許発明13」ないし「本件特許発明16」という。)は,それぞれ,その特許請求の範囲の請求項1ないし6,9ないし11,13ないし16に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりである。
「【請求項1】
(a)0.01重量%?0.1重量%のピロリドンポリマー,
(b)0.05重量%?2重量%のアミノホスホン酸,
(c)0.01重量%?5重量%のテトラアルキルアンモニウム塩,および
(d)水
を含み,7?11.7のpHを有する,研磨組成物。
【請求項2】
0.05重量%?2重量%の速度促進剤をさらに含む,請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項3】
0.01重量%?40重量%のシリカ粒子をさらに含む,請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項4】
前記組成物が研削材を含有しない,請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項5】
前記組成物がケイ素の酸化剤を含有しない,請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項6】
(a)0.01重量%?0.1重量%のピロリドンポリマー,
(b)0.05重量%?2重量%のアミノホスホン酸,
(c)0.01重量%?5重量%のテトラアルキルアンモニウム塩,
(d)0.05重量%?2重量%の速度促進剤,
(e)pH調整剤,
(f)重炭酸塩,および
(g)水
を含む研磨組成物であって,7?11.7のpHを有する,研磨組成物。」

「【請求項9】
前記速度促進剤が,窒素含有ヘテロ環式化合物を含む,請求項6に記載の研磨組成物。
【請求項10】
前記窒素含有ヘテロ環式化合物がトリアゾールを含む,請求項9に記載の研磨組成物。
【請求項11】
前記ピロリドンポリマーが,ポリビニルピロリドンを含む,請求項6に記載の研磨組成物。」

「【請求項13】
前記アミノホスホン酸が,アミノトリメチレンホスホン酸を含む,請求項6に記載の研磨組成物。
【請求項14】
前記テトラアルキルアンモニウム塩が,水酸化テトラメチルアンモニウムを含む,請求項6に記載の研磨組成物。
【請求項15】
基板の研磨方法であって,
(i)基板を,研磨パッドおよび請求項6に記載の研磨組成物と接触させる工程,
(ii)前記基板に対して前記研磨パッドを,それらの間に前記研磨組成物が存在する状態で動かす工程,および
(iii)前記基板を研磨するために前記基板の少なくとも一部分を研削する工程
を含む,方法。
【請求項16】
前記基板がシリコンウェーハである,請求項15に記載の方法。」

第3 申立理由の概要
1 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は,下記2の証拠方法を提出し,次の主張をしている。
(1)本件特許発明1ないし6,9ないし11,13ないし16は,甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明及び甲3号証ないし甲第11号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,請求項1ないし6,9ないし11,13ないし16に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)本件特許発明1ないし6,9ないし11,13ないし16は,発明の詳細な説明に記載したものではないから,請求項1ないし6,9ないし11,13ないし16に係る特許は,特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものである。
2 証拠方法
甲第1号証:国際公開第2011/093223号
甲第2号証:特開2008-053415号公報
甲第3号証:特開2006-080302号公報
甲第4号証:特表2011-523207号公報
甲第5号証:特表2008-532329号公報
甲第6号証:特開2005-347737号公報
甲第7号証:特開平10-309660号公報
甲第8号証:特開2001-007063号公報
甲第9号証:特開2011-097050号公報
甲第10号証:特開2011-181765号公報
甲第11号証:国際公開第2009/041697号

第4 甲号証の記載
1 甲第1号証の記載
(1)甲第1号証
甲第1号証は,本件優先日前に頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった刊行物であって,次のとおりの記載がある。(下線は当審において付加した。以下同じ。)
「【技術分野】
【0001】
本発明は,使用済みのテストウェーハ,表面に傷のあるウェーハなどの半導体ウェーハを再使用するために行われるウェーハの再生方法,及びその方法で使用される研磨用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスは,成膜,露光,エッチング,研磨,洗浄などの多数の工程をシリコンウェーハなどの基板となるウェーハに施すことで製造される。半導体デバイスの製造では,これらの各工程の状態をモニタしたり各工程の条件を検討したりするのに,多数のテストウェーハが使用されている。使用済みのテストウェーハは通常,再使用するために再生処理に供される。
【0003】
また半導体デバイス製造工程において,表面に傷がある等の理由で不良品となったウェーハも再生処理に供される場合がある。
使用済みの半導体ウェーハを再生するにあたっては従来,使用済みの半導体ウェーハをエッチングしてその上に存在する膜を除去した後,半導体ウェーハの表面をラッピング及び/又は研削してから化学機械研磨して,あるいは直接,化学機械研磨して平坦化することが行われる(例えば,特許文献1参照)。半導体ウェーハは所定の厚さ以下になるまで繰り返し再生して使用することができる。したがって,一枚の半導体ウェーハを繰り返し再生して使用できる回数を増やすためには,再生時のウェーハの取り代をできるだけ少なくすることが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-138192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の目的は,より少ない研磨取り代で半導体ウェーハの表面を平坦化して該ウェーハを再生することができる半導体ウェーハの再生方法,及びその方法で使用される研磨用組成物を提供することにある。」

「【発明を実施するための形態】
【0011】
以下,本発明の一実施形態を説明する。
使用済みのテストウェーハを再使用するために行われる本実施形態の半導体ウェーハの再生方法では,使用済みのテストウェーハから半導体ウェーハ上の金属膜や絶縁膜などの膜を除去した後,研磨用組成物を用いて半導体ウェーハの表面を化学機械研磨することが行われる。半導体ウェーハ上の膜の除去は,例えば,ドライエッチング又はウエットエッチングにより半導体ウェーハの表面が露出するまで行われる。膜を除去した後の半導体ウェーハの表面は平坦ではなく,例えば100?2000nmの大きさの段差を有している。この段差は,例えば1000μm以下の幅の凹所が半導体ウェーハの表面に存在することによるものである。段差の原因は,テストウェーハに意図的なエッチングによりパターンが形成されていることによる場合もあれば,意図しない傷の場合もある。上記の化学機械研磨は,膜を除去した後の半導体ウェーハの表面を平坦化する目的,より具体的には同表面の段差の大きさを20nm以下にまで小さくする目的で行われる。
【0012】
半導体ウェーハの再生は,ウェーハ表面上に前記のような原因で形成された段差の大きさを,半導体ウェーハを再使用することができるレベルにまで低減することで完了する。半導体ウェーハを再使用することができるレベルの段差の大きさは,再使用の用途にもよるが,例えば30nm以下であり,好ましくは20nm,さらに好ましくは10nm以下である。再生に必要な取り代は初期の段差の大きさに依存するために特に限定されないが,例えば10000nm以下であり,好ましくは5000nm以下,さらに好ましくは3000nm以下である。
【0013】
ここで使用される研磨用組成物には,半導体ウェーハの表面に吸着して同表面の段差の底部が研磨中にエッチングされるのを抑制する働きをする段差解消剤が少なくとも含まれている。段差解消剤の具体例としては,ポリビニルアルコール類,ポリビニルピロリドン類,ポリエチレングリコール類,セルロース類などの水溶性高分子,及びカルボン酸型,スルホン酸型,リン酸エステル型などの界面活性剤が挙げられる。水溶性高分子及び界面活性剤はノニオン性又はアニオン性であることが好ましい。特に好ましい段差解消剤は,ポリビニルアルコール,ポリビニルピロリドン又はヒドロキシエチルセルロースである。単一種又は複数種のオキシアルキレン単位を有するオキシアルキレン系重合体もまた段差解消剤として使用可能であり,中でもポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールが好ましく用いられる。
【0014】
これらの水溶性高分子及び界面活性剤のうちのいくつかは,従来,シリコンウェーハの仕上げ用研磨用組成物に用いられることは知られているが,シリコンウェーハのナノメートルオーダーのごく微細な表面粗さの低減や,濡れ性の向上を目的として使用されており,段差解消の目的では使用されていない。また,仕上げ用研磨用組成物を本発明の再生方法において使用すると,シリコンウェーハの研磨レートが著しく低く,段差を解消するまでに長時間の研磨を要するため実用的ではない。一方で,シリコンウェーハの製造工程における一次研磨では高い研磨レートが要求されるため,シリコンウェーハの一次研磨用組成物には研磨レートを低下させる働きを有するこれらの水溶性高分子や界面活性剤は用いられていない。」

「【0020】
研磨用組成物は,半導体ウェーハを化学的に研磨する働きをする塩基性化合物をさらに含有することが好ましい。塩基性化合物の具体例としては,水酸化カリウム,水酸化ナトリウム,炭酸水素カリウム,炭酸カリウム,炭酸水素ナトリウム,炭酸ナトリウムなどの無機アルカリ化合物,アンモニア,水酸化テトラメチルアンモニウム,炭酸水素アンモニウム,炭酸アンモニウムなどのアンモニウム塩,ピペラジン,1-(2-アミノエチル)ピペラジン,N-メチルピペラジン,メチルアミン,ジメチルアミン,トリメチルアミン,エチルアミン,ジエチルアミン,トリエチルアミン,エチレンジアミン,モノエタノールアミン,N-(β-アミノエチル)エタノールアミン,ヘキサメチレンジアミン,ジエチレントリアミン,トリエチレンテトラミンなどのアミンが挙げられる。中でも好ましい塩基性化合物は,水酸化カリウム,炭酸カリウム,アンモニア,水酸化テトラメチルアンモニウム又はピペラジンであり,特に好ましいのは,水酸化カリウム,炭酸カリウム,水酸化テトラメチルアンモニウム又はピペラジンである。
【0021】
研磨用組成物中の塩基性化合物の含有量は,0.1g/L以上であることが好ましく,より好ましくは0.2g/L以上である。塩基性化合物の含有量が多くなるにつれて,研磨用組成物による半導体ウェーハの研磨速度は向上する。
【0022】
研磨用組成物中の塩基性化合物の含有量はまた,10g/L以下であることが好ましく,より好ましくは8g/L以下である。塩基性化合物の含有量が少なくなるにつれて,塩基性化合物による半導体ウェーハ表面のエッチングを容易にコントロールすることができる。
【0023】
研磨用組成物は,半導体ウェーハを機械的に研磨する働きをする砥粒をさらに含有することが好ましい。砥粒の具体例としては,特に限定されないが,フュームドシリカやコロイダルシリカのようなシリカが挙げられる。中でも好ましい砥粒はコロイダルシリカである。
【0024】
研磨用組成物中の砥粒の含有量は,0.1質量%以上であることが好ましく,より好ましくは0.3質量%以上である。砥粒の含有量が多くなるにつれて,研磨用組成物による半導体ウェーハの研磨速度は向上する。」

「【0028】
研磨用組成物のpHは,9.0?12.0であることが好ましく,より好ましくは10.0?11.0である。研磨用組成物のpHを上記の範囲とした場合,実用上特に好適なレベルの研磨速度を得ることが容易である。所望とするpHを得るためにはpH調整剤を用いてもよい。先に説明した塩基性化合物をpH調整剤として使用することも可能である。
【0029】
本実施形態の再生方法で使用される半導体ウェーハは,半導体デバイスの基板となる半導体ウェーハであれば特に限定されない。半導体としては,シリコン,ゲルマニウム,化合物半導体(GaAs,InAs,GaN)が挙げられるが,中でも化学的にエッチングされやすいシリコンやゲルマニウム,GaAs,特にシリコンが好ましく用いられる。」

「【0035】
・ 前記実施形態の研磨用組成物は,二種類以上の砥粒を含有してもよい。
・ 前記実施形態の研磨用組成物は,少なくとも一種類のキレート剤をさらに含有してもよい。キレート剤を含有する場合,半導体ウェーハの金属汚染を抑制することができる。キレート剤の具体例としては,アミノカルボン酸系キレート剤及び有機ホスホン酸系キレート剤が挙げられる。アミノカルボン酸系キレート剤には,エチレンジアミン四酢酸,エチレンジアミン四酢酸ナトリウム,ニトリロ三酢酸,ニトリロ三酢酸ナトリウム,ニトリロ三酢酸アンモニウム,ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸,ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム,ジエチレントリアミン五酢酸,ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム,トリエチレンテトラミン六酢酸及びトリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウムが含まれる。有機ホスホン酸系キレート剤には,2-アミノエチルホスホン酸,1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸,アミノトリ(メチレンホスホン酸),エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸),ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸),エタン-1,1,-ジホスホン酸,エタン-1,1,2-トリホスホン酸,エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸,エタン-1-ヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸,エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸,メタンヒドロキシホスホン酸,2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸,1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸及びα-メチルホスホノコハク酸が含まれる。中でも好ましいキレート剤は,トリエチレンテトラミン六酢酸,ジエチレントリアミン五酢酸,エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)又はジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)であり,特に好ましいのは,エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)又はトリエチレンテトラミン六酢酸である。
【0036】
・ 前記実施形態の研磨用組成物は,研磨用組成物の原液を水で希釈することにより調製されてもよい。」

「【0039】
次に,本発明の実施例及び比較例を説明する。
砥粒であるコロイダルシリカ,塩基性化合物及び段差解消剤のすべて又は一部を水に混合して実施例1?18及び比較例1?5の研磨用組成物を調製した。研磨用組成物のpHはいずれも10.5に調整した。実施例1?18及び比較例1?5の各研磨用組成物中のコロイダルシリカ,塩基性化合物及び段差解消剤の詳細は表1に示すとおりである。表1中に示すコロイダルシリカの平均一次粒子径の値はいずれも,Micromeritics社製の表面積測定装置である商品名FlowSorb II 2300を使って測定した。表1中に示す段差解消剤の平均分子量の値はいずれも重量平均分子量である。表1中の「塩基性化合物」欄における“PIZ”はピペラジンを,“TMAH”は水酸化テトラメチルアンモニウムを,“KOH”は水酸化カリウムを,“K_(2)CO_(3)”は炭酸カリウムをそれぞれ表す。表1中の“段差解消剤”欄における“PVA”はポリビニルアルコールを,“HEC”はヒドロキシエチルセルロースを,“POE-POP”はポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを,“PVP”はポリビニルピロリドンをそれぞれ表す。
【0040】
実施例1?18及び比較例1?5の各研磨用組成物を用いて,230nmの大きさの初期段差を有するシリコンウェーハの表面を表2に記載の条件で研磨した。研磨は,ケーエルエー・テンコール社の表面欠陥検出装置である“SP2”を用いて得られる差分干渉コントラスト(DIC)マップでシリコンウェーハの表面に段差を確認することができなくなるまで行った。DICマップでは,20nmを超える大きさの段差のみを確認することができる。つまり,研磨により段差の大きさが20nm以下になると,DICマップでは段差を確認することができなくなる。段差を確認することができなくなるまでに要した研磨取り代及び研磨時間を表1の“評価”欄に示す。
【0041】
【表1】(省略)
【0042】
【表2】(省略)
表1に示すように,段差解消剤を含有する実施例1?18の研磨用組成物を用いた場合には,段差解消剤を含有しない比較例1?5の研磨用組成物を用いた場合に比べて少ない研磨取り代でシリコンウェーハの表面を平坦化することができた。」

【表1】は,研磨取り代及び研磨時間の評価を示した表であって,実施例17として,コロイダルシリカを1.0質量%,塩基性化合物であるTMAHを2.0g/L,段差解消剤として平均分子量60000のPVPを0.35g/Lを含む研磨用組成物を用いて,段差を確認することができなくなるまでに要した研磨取り代が2300nmであり,研磨時間が6.8minであること,実施例18として,コロイダルシリカを1.0質量%,塩基性化合物であるTMAHを2.0g/L,段差解消剤として平均分子量1300000のPVPを0.35g/Lを含む研磨用組成物を用いて,段差を確認することができなくなるまでに要した研磨取り代2300nmであり,研磨時間が9.2minであることが記載されている。

(2)甲1発明
前記(1)より,甲第1号証には次の発明(以下,「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「0.35g/LのPVPを含み,
アミノトリ(メチレンホスホン酸)等のキレート剤を含有してもよく,
2.0g/LのTMAHを含み,
水を含み,
pHは10.5である研磨用組成物。」
また,前記(1)より,甲第1号証には次の技術的事項が記載されていると認められる。
・甲第1号証に記載された発明における研磨用組成物は,キレート剤をさらに含有してもよく,キレート剤を含有する場合,半導体ウェーハの金属汚染を抑制することができ,キレート剤の具体例としては,アミノカルボン酸系キレート剤である,エチレンジアミン四酢酸,エチレンジアミン四酢酸ナトリウム,ニトリロ三酢酸,ニトリロ三酢酸ナトリウム,ニトリロ三酢酸アンモニウム,ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸,ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム,ジエチレントリアミン五酢酸,ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム,トリエチレンテトラミン六酢酸及びトリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウム,有機ホスホン酸系キレート剤である,2-アミノエチルホスホン酸,1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸,アミノトリ(メチレンホスホン酸),エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸),ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸),エタン-1,1,-ジホスホン酸,エタン-1,1,2-トリホスホン酸,エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸,エタン-1-ヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸,エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸,メタンヒドロキシホスホン酸,2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸,1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸及びα-メチルホスホノコハク酸が挙げられること。(【0035】)

2 甲第2号証の記載
(1)甲第2号証
甲第2号証は,本件優先日前に頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった刊行物であって,次のとおりの記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は,半導体ウエハを研磨する用途で主に使用される研磨用組成物及びその研磨用組成物を用いた研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,シリコンウエハ等の半導体ウエハの研磨は予備研磨と仕上げ研磨の少なくとも二段階に分けて行われる。そのうち予備研磨は,更なる高品位化及び効率化を目的としてさらに二段階以上に分けて行われることがある。仕上げ研磨で使用可能な研磨用組成物として,例えば特許文献1に記載の研磨用組成物が知られている。特許文献1の研磨用組成物は,水,コロイダルシリカ,ポリアクリルアミドやシゾフィランのような水溶性高分子,及び塩化カリウムのような水溶性塩類を含有している。
【0003】
ところで近年,半導体デバイスのデザインルールが細線化するに従って,研磨用組成物を用いて研磨した後のウエハ表面で観察される欠陥の一種であるLPD(light point defects)について,半導体デバイスの性能に影響するとして,これまで問題とされていなかった小さいサイズのものまで低減が要求されている。具体的には,これまで問題とされていたLPDは0.12μm以上の大きさのものであり,これはウエハ表面に付着したパーティクルが主な原因であるため,洗浄技術の向上によってかなりの低減がなされている。ところが,それよりもサイズの小さいLPD(>0.065μm)は主に予備研磨時にウエハ表面に生じる傷によるもの,つまり研磨加工に起因するものであり,これは仕上げ研磨や洗浄によっては除去できない虞がある。この点,特許文献1の研磨用組成物を用いて仕上げ研磨を行った場合であっても,研磨加工に起因するLPDの数が従来に比べて低減されることはない。
【特許文献1】特開平02-158684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は,研磨用組成物を用いて研磨した後の研磨対象物表面における研磨加工に起因するLPDの数を低減することが可能な研磨用組成物及びその研磨用組成物を用いた研磨方法を提供することにある。」

「【0009】
以下,本発明の一実施形態を説明する。
本実施形態の研磨用組成物は,所定量の水溶性高分子とアルカリと砥粒を水と混合することにより製造される。従って,本実施形態の研磨用組成物は,水溶性高分子,アルカリ,砥粒及び水からなる。この研磨用組成物は,シリコンウエハ等の半導体ウエハを研磨する用途で使用されるものであり,特にウエハの予備研磨,予備研磨が二段階以上に分けて行われる場合には最終段階の予備研磨で使用されるものである。
【0010】
本実施形態の研磨用組成物に含まれる水溶性高分子は,ポリビニルピロリドン及びポリN-ビニルホルムアミドから選ばれる少なくとも一種類である。これらの水溶性高分子は,ウエハ表面に親水膜を形成する作用を有している。この親水膜は,砥粒をはじめとする粗大粒子からウエハに与えられるウエハ表面に対して垂直方向の力を水平方向に分散する働きをし,その結果,研磨時のウエハ表面における欠陥の発生が抑制され,研磨加工に起因するLPDの数が低減するものと推測される。
【0011】
研磨用組成物に含まれる水溶性高分子がポリビニルピロリドンである場合には,ポリN-ビニルホルムアミドである場合に比べて,研磨加工に起因するLPDの数を低減することができる。従って,研磨用組成物に含まれる水溶性高分子はポリビニルピロリドンであることが好ましい。
【0012】
研磨用組成物中の水溶性高分子の含有量は,0.0003g/L以上であることが好ましく,より好ましくは0.001g/L以上,さらに好ましくは0.003g/L以上,最も好ましくは0.005g/L以上である。水溶性高分子の含有量が多くなるにつれて,欠陥の発生を抑制するのに十分な親水膜がウエハ表面に形成されやすくなるために,研磨加工に起因するLPDの数はより大きく低減する。この点において,研磨用組成物中の水溶性高分子の含有量が0.0003g/L以上,さらに言えば0.001g/L以上,もっと言えば0.003g/L以上,さらにもっと言えば0.005g/L以上であれば,研磨加工に起因するLPDの数を大きく低減することができる。
【0013】
研磨用組成物中の水溶性高分子の含有量はまた,0.1g/L以下であることが好ましく,より好ましくは0.02g/L以下,さらに好ましくは0.015g/L以下,最も好ましくは0.01g/L以下である。水溶性高分子による親水膜は研磨用組成物によるウエハの研磨速度(除去速度)の低下を招く。そのため,研磨用組成物中の水溶性高分子の含有量が少なくなるにつれて,親水膜による研磨速度の低下はより強く抑制される。この点において,研磨用組成物中の水溶性高分子の含有量が0.1g/L以下,さらに言えば0.02g/L以下,もっと言えば0.015g/L以下,さらにもっと言えば0.01g/L以下であれば,親水膜による研磨速度の低下を強く抑制することができる。」

「【0016】
本実施形態の研磨用組成物に含まれるアルカリは,例えば,アルカリ金属水酸化物,アンモニア,アミン,第4級アンモニウム塩のいずれであってもよい。これらのアルカリは,ウエハを化学的に研磨する作用を有し,研磨用組成物によるウエハの研磨速度を向上させる働きをする。
【0017】
研磨用組成物に含まれるアルカリがアルカリ金属水酸化物又は第4級アンモニウム塩である場合には,その他のアルカリを用いた場合に比べて,研磨用組成物によるウエハの研磨速度が大きく向上するとともに,研磨後のウエハの表面粗さの増大が抑制される。従って,研磨用組成物に含まれるアルカリは,アルカリ金属水酸化物又は第4級アンモニウム塩であることが好ましい。
【0018】
研磨用組成物中のアルカリの含有量は,0.1g/L以上であることが好ましく,より好ましくは0.25g/L以上,さらに好ましくは0.5g/L以上である。アルカリの含有量が多くなるにつれて,研磨用組成物によるウエハの研磨速度はより大きく向上する。この点において,研磨用組成物中のアルカリの含有量が0.1g/L以上,さらに言えば0.25g/L以上,もっと言えば0.5g/L以上であれば,研磨用組成物によるウエハの研磨速度を大きく向上させることができる。
【0019】
研磨用組成物中のアルカリの含有量はまた,5g/L以下であることが好ましく,より好ましくは4g/L以下,さらに好ましくは3g/L以下である。アルカリは,研磨後のウエハの表面粗さの増大を招く虞がある。そのため,研磨用組成物中のアルカリの含有量が少なくなるにつれて,研磨後のウエハの表面粗さの増大はより強く抑制される。この点において,研磨用組成物中のアルカリの含有量が5g/L以下,さらに言えば4g/L以下,もっと言えば3g/L以下であれば,研磨後のウエハの表面粗さの増大を強く抑制することができる。
【0020】
本実施形態の研磨用組成物に含まれる砥粒は,例えば,コロイダルシリカ及びフュームドシリカのいずれであってもよい。これらの砥粒は,ウエハを機械的に研磨する作用を有し,研磨用組成物によるウエハの研磨速度を向上させる働きをする。」

「【0027】
前記実施形態を次のように変更してもよい。
・ 前記実施形態の研磨用組成物はキレート剤をさらに含有してもよい。キレート剤は,研磨用組成物中の金属不純物と錯イオンを形成してこれを捕捉することにより,金属不純物による研磨対象物の汚染を抑制する働きをする。キレート剤は,アミノカルボン酸系キレート剤又はホスホン酸系キレート剤であってもよく,エチレンジアミン四酢酸,ジエチレントリアミン五酢酸,トリエチレンテトラミン六酢酸,エチレンジアミン四メチル燐酸,又はジエチレントリアミン五メチル燐酸を含むことが好ましい。エチレンジアミン四酢酸,ジエチレントリアミン五酢酸,トリエチレンテトラミン六酢酸,エチレンジアミン四メチル燐酸,及びジエチレントリアミン五メチル燐酸は,金属不純物を捕捉する能力が特に高い。
【0028】
・ 前記実施形態の研磨用組成物には必要に応じて防腐剤や消泡剤のような公知の添加剤を添加してもよい。
・ 前記実施形態の研磨用組成物は使用前に濃縮原液を希釈することによって調製されてもよい。」

「【0030】
水溶性高分子,アルカリ,砥粒及びキレート剤を適宜に水と混合することにより実施例1?53及び比較例1?26の研磨用組成物を調製した。各研磨用組成物中の水溶性高分子,アルカリ,砥粒及びキレート剤の詳細は表1に示すとおりである。
【0031】
表1及び表2の“水溶性高分子”欄中,PVP^(*1)は重量平均分子量が10,000であるポリビニルピロリドンを表し,PVP^(*2)は重量平均分子量が3,500,000であるポリビニルピロリドンを表し,PVP^(*3)は重量平均分子量が1,600,000であるポリビニルピロリドンを表し,PVP^(*4)は重量平均分子量が67,000であるポリビニルピロリドンを表し,PNVFは重量平均分子量が100,000であるポリN-ビニルホルムアミドを表し,PVAは重量平均分子量が62,000であるケン化度95%のポリビニルアルコールを表し,PVMEは重量平均分子量が10,000であるポリビニルメチルエーテルを表し,PEGは重量平均分子量が26,000であるポリエチレングリコールを表し,PEOは重量平均分子量が200,000であるポリエチレンオキサイドを表し,PPPは重量平均分子量が9,000であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体を表し,PEIは重量平均分子量が10,000であるポリエチレンイミンを表し,PAAは重量平均分子量が25,000であるポリアクリル酸を表し,PAA-NH_(4)は重量平均分子量が20,000であるポリアクリル酸アンモニウムを表し,PAA-Naは重量平均分子量が20,000であるポリアクリル酸ナトリウムを表し,PAAMは重量平均分子量が1,000,000であるポリアクリルアミドを表し,PSS-Naは重量平均分子量が100,000であるポリスチレンスルホン酸ナトリウムを表し,HECは重量平均分子量が1,000,000であるヒドロキシエチルセルロースを表し,CMC-Na^(*1)は重量平均分子量が10,000であるカルボキシメチルセルロースナトリウムを表し,CMC-Na^(*2)は重量平均分子量が330,000であるカルボキシメチルセルロースナトリウムを表し,CMC-Na^(*3)は重量平均分子量が90,000であるカルボキシメチルセルロースナトリウムを表し,CMC-Na^(*4)は重量平均分子量が20,000であるカルボキシメチルセルロースナトリウムを表す。
【0032】
表1及び表2の“アルカリ”欄中,TMAHは水酸化テトラメチルアンモニウムを表し,KOHは水酸化カリウムを表し,NaOHは水酸化ナトリウムを表し,NH_(3)はアンモニアを表し,PIZは無水ピペラジンを表し,IMZはイミダゾールを表す。
【0033】
表1及び表2の“砥粒”欄中,CS^(*1)は平均一次粒子径が35nmであるコロイダルシリカを表し,CS^(*2)は平均一次粒子径が200nmであるコロイダルシリカを表し,CS^(*3)は平均一次粒子径が150nmであるコロイダルシリカを表し,CS^(*4)は平均一次粒子径が100nmであるコロイダルシリカを表し,CS^(*5)は平均一次粒子径が55nmであるコロイダルシリカを表し,CS^(*6)は平均一次粒子径が15nmであるコロイダルシリカを表し,CS^(*7)は平均一次粒子径が10nmであるコロイダルシリカを表し,CS^(*8)は平均一次粒子径が5nmであるコロイダルシリカを表す。
【0034】
表1及び表2の“キレート剤”欄中,TTHAはトリエチレンテトラミン六酢酸を表し,DTPAはジエチレントリアミン五酢酸を表し,EDTPOはエチレンジアミン四エチレンホスホン酸を表す。
【0035】
表1及び表2の“研磨速度”欄には,実施例1?53及び比較例1?26の研磨用組成物を用いて,直径200mm,厚さ730μmのシリコンウエハ(p-型,結晶方位<100>,COP(crystal originated particles)フリー)を表3に示す条件で研磨したときに得られる研磨速度を測定した結果を示す。研磨速度は,研磨前後の各ウエハの厚みの差を研磨時間で除することにより求めた。ウエハの厚みの計測には,黒田精工株式会社製の平坦度検査装置“NANOMETRO 300TT”を使用した。
【0036】
表1及び表2の“欠陥”欄には,実施例1?53及び比較例1?26の研磨用組成物を用いて研磨した後のシリコンウエハ表面で測定される研磨加工に起因するLPDの数について評価した結果を示す。具体的には,直径200mm,厚さ730μmのシリコンウエハ(p-型,結晶方位<100>,COPフリー)を,実施例1?53及び比較例1?26の研磨用組成物を用いて表3に示す条件で予備研磨した後,純水で20倍希釈した株式会社フジミインコーポレーテッド製の“GLANZOX-3900”を用いて表4に示す条件でさらに仕上げ研磨した。仕上げ研磨後のウエハに対し,SC-1洗浄(Standard Clean 1)及びIPA(isopropyl alcohol)蒸気乾燥を行ってからケーエルエー・テンコール社製の“SURFSCAN SP1-TBI”を用いてまず第1回目のLPDの測定を行った。その後,同じウエハに対し,再びSC-1洗浄及びIPA蒸気乾燥を行ってから“SURFSCAN SP1-TBI”を用いて第2回目のLPDの測定を行った。第1回目と第2回目の測定で位置が変わらないLPDを研磨加工に起因するLPDと定義し,ウエハ表面当たりの研磨加工に起因するLPDの数を測定した。“欠陥”欄中,◎(優)はウエハ表面当たりの研磨加工に起因するLPDの数が10個未満であったことを示し,○(良)は10個以上20個未満,△(可)は20個以上30個未満,×(不良)は30個以上であったことを示す。
【0037】
表1及び表2の“濡れ”欄には,水溶性高分子の作用によるウエハ表面への親水膜の形成を評価するべく,実施例1?53及び比較例1?26の研磨用組成物を用いて表3に示す条件で研磨した後のシリコンウエハ表面の濡れを評価した結果を示す。具体的には,研磨後のウエハを軽く水洗してから目視により表面の濡れ状態を確認して評価した。“濡れ”欄中,0はウエハ表面が全く濡れていなかったことを示し,3はウエハ表面の30%が濡れていたこと,6はウエハ表面の60%が濡れていたこと,7はウエハ表面の70%が濡れていたこと,8はウエハ表面の80%が濡れていたこと,9はウエハ表面の90%が濡れていたこと,10はウエハ表面の100%が濡れていたことを示す。
【0038】
なお,比較例11の研磨用組成物はゲル化が激しく,ウエハの研磨に使用することができなかった。
【0039】
【表1】(省略)
【0040】
【表2】(省略)」

【表2】は,研磨速度,欠陥,濡れの評価を示した表であって,実施例42として,水溶性高分子であるPVP^(※1)を0.010g/L,アルカリであるTMAHを2.0g/L,キレート剤であるEDTPOを0.30g/Lを含む研磨用組成物を用いて,研磨速度0.285μm/分,欠陥◎,濡れ10であることが記載されている。

(2)甲2発明
前記(1)より,甲第2号証には次の発明(以下,「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「0.010g/LのPVP^(※1),
0.30g/LのEDTPO,
2.0g/LのTMAH,
水を含む研磨組成物。」

3 甲第3号証の記載
甲第3号証は,本件優先日前に頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった刊行物であって,次のとおりの記載がある。
「【0001】
本発明は,半導体基板等の研磨対象物の表面を研磨する用途に用いられる研磨用組成物,及びそうした研磨用組成物を用いて半導体基板等の研磨対象物の表面を研磨する方法に関する。」

「【0024】
前記実施形態は以下のように変更されてもよい。
・ 前記実施形態に係る研磨用組成物は研磨促進剤をさらに含有してもよい。研磨促進剤は,研磨対象物を化学的に研磨する役割を担い,研磨用組成物の研磨能力の向上に寄与する。研磨促進剤は,アルカリ金属水酸化物,アルカリ金属塩,アンモニウム水酸化物,及びアンモニウム塩のいずれを含んでもよいが,水酸化リチウム,水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,炭酸カリウム,炭酸水素カリウム,炭酸ナトリウム,炭酸水素ナトリウム,水酸化アンモニウム,炭酸アンモニウム,第4級アンモニウム塩,又は第4級アンモニウム水酸化物のいずれかを含むことが好ましく,水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,又は水酸化テトラメチルアンモニウムのいずれかを含むことがより好ましい。水酸化リチウム,水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,炭酸カリウム,炭酸水素カリウム,炭酸ナトリウム,炭酸水素ナトリウム,水酸化アンモニウム,炭酸アンモニウム,第4級アンモニウム塩,及び第4級アンモニウム水酸化物は,研磨対象物を研磨する能力が高く,水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,及び水酸化テトラメチルアンモニウムは,研磨対象物を研磨する能力が特に高い。」

「【0027】
キレート剤は,鉄,ニッケル,銅,カルシウム,クロム,亜鉛を効果的に捕捉することができるものが好ましい。こうしたキレート剤としては,例えば,アミノカルボン酸系キレート剤又はホスホン酸系キレート剤が挙げられ,より具体的には,エチレンジアミン四酢酸,ジエチレントリアミン五酢酸,トリエチレンテトラミン六酢酸,エチレンジアミン四メチル燐酸,又はジエチレントリアミン五メチル燐酸が挙げられる。
【0028】
研磨用組成物がキレート剤を少量しか含有しない場合,研磨対象物の金属汚染は大して抑制されない。従って,研磨対象物の金属汚染を強く抑制するという観点から見た場合,研磨用組成物中のキレート剤の含有量は,好ましくは0.001質量%以上,より好ましくは0.01質量%以上である。一方,キレート剤を大量に含有する研磨用組成物はゲル化しやすい。従って,ゲル化の防止という観点から見た場合,研磨用組成物中のキレート剤の含有量は,好ましくは0.2質量%以下,より好ましくは0.1質量%以下である。」

4 甲第4号証の記載
甲第4号証は,本件優先日前に頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった刊行物であって,次のとおりの記載がある。
「【技術分野】
【0001】
電子装置中に用いられるシリコンウエハは,典型的には単結晶ケイ素インゴットから調製され,このインゴットは先ずダイアモンド鋸を用いて薄いウエハに切り出され,そして次いで鋸切断工程から生じた表面欠陥を取り除くために研摩される。次いで,このシリコンウエハは,それらが電子装置における使用に許容される前に,極めて小さい表面粗さを有する表面を与えるように,典型的には最終研磨工程を必要とする。」

「【0018】
この研磨組成物は,カリウム塩,すなわち,1種もしくは2種以上のカリウム塩を含んでいる。このカリウム塩は,いずれかの好適なカリウム塩であることができる。好ましくは,カリウム塩は,炭酸水素カリウム,炭酸カリウム,または炭酸水素カリウムおよび炭酸カリウムの混合物である。
【0019】
この研磨組成物は,典型的には0.002質量%以上(例えば,0.02質量%以上,または0.05質量%以上)のカリウム塩を含んでいる。好ましくは,この研磨組成物は,0.2質量%以下(例えば,0.15質量%以下,または0.10質量%以下)のカリウム塩を含んでいる。より好ましくは,この研磨組成物は,0.01質量%?0.2質量%(例えば,0.05質量%?0.15質量%)のカリウム塩を含んでいる。」

「【0022】
この研磨組成物は,9?12のpH(例えば,9?11,または9?10,または10?11,または10?11,または11?12)を有している。この研磨組成物は,所望により,pH調節剤,例えば水酸化アンモニウム,水酸化カリウム,硝酸,硫酸,またはリン酸を含んでいる。この研磨組成物は,所望により,pH緩衝系,例えば炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムを含む緩衝系を含んでいる。多くのこのようなpH緩衝系が,当技術分野ではよく知られている。この研磨組成物がpH調節剤および/または緩衝系を含む場合には,この研磨組成物は,pHをここで説明する範囲に維持するのに十分な量のpH調節剤および/または緩衝系を含むであろう。
【0023】
この研磨組成物は,所望により,キレート化剤(例えば,錯化剤)を含でいる。このキレート化剤は,いずれかの好適なキレート化剤またはキレート化剤の組合せであることができる。好適なキレート化剤の非限定的な例としては,エチレンジアミン四酢酸(「EDTA」,イミノ二酢酸,シュウ酸,クエン酸,4,5-ジヒドロキシ-1,2-ベンゼンジスルホン酸,サリチルヒドロキサム酸,テトラエチレンペンタミン,トリス(メチレンホスホン酸),1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸,ニトリロトリ(メチルホスホン酸),ジエチレントリアミンペンタキス(メチレンホスホン酸),および2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸が挙げられる。
【0024】
この研磨組成物は,典型的には0.001質量%以上(例えば,0.01質量%以上,または0.02質量%以上)のキレート化剤を含んでいる。好ましくは,この研磨組成物は,0.1質量%以下(例えば,0.09質量%以下,または0.08質量%以下)のキレート化剤を含んでいる。より好ましくは,この研磨組成物は,0.001質量%?0.1質量%(例えば,0.01質量%?0.09質量%,または0.02質量%?0.08質量%)のキレート化剤を含んでいる。」

5 甲第5号証の記載
甲第5号証は,本件優先日前に頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった刊行物であって,次のとおりの記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は,シリコンウエハの表面欠陥を大きく減少させ,それによってシリコンウエハの表面マイクロラフネスおよびヘイズ(Haze)を改善するスラリー組成物に関する。」

「【0035】
本発明で用いられるリン酸系キレート剤の例として,エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)のナトリウム塩,エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)のアンモニウム塩,アミノトリ(メチレンホスホン酸),ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸),及びこれらの混合物が含まれる。
【0036】
本発明で使用されるリン酸系キレート剤は,酢酸系キレート剤と類似する構造を有するため,酢酸系キレート剤と類似する分散安定化の効果が発揮できる。しかし,酢酸系に比べてエッチング性が高いため,研磨品質に影響を与える効果の点では,僅かな差があるものと考えられる。リン酸系キレート剤の使用量は,0.0002?5重量%になるよう使用することが望ましい。リン酸系キレート剤を下限値未満で使用する場合は,研磨品質が改善せず,上限値を超えて使用する場合は,表面マイクロラフネスを増加させるなど,望ましくない。」

6 甲第6号証の記載
甲第6号証は,本件優先日前に頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった刊行物であって,次のとおりの記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は,シリコンウェハーに対する金属汚染を効率よく防止することを可能とする研磨組成物に関するものである。」

「【0028】
アミノポリホスホン酸は,アミノポリカルボン酸のカルボキシル基(-COOH)をホスホン酸(-PO_(3)H_(2))に変えたホスホン酸系キレート剤である。なお,アミノポリカルボン酸は,EDTAに代表される多座キレート剤で,分析化学の分野では非常にポピュラーな試薬である。本発明に使用されるアミノポリホスホン酸は,キレート剤として市販されており,容易に入手できる。具体的には,分子中に窒素原子に結合したメチレンホスホン酸基を2個以上有するキレート剤,又はこれらの塩(アンモニウム塩,有機アミン塩,アルカリ金属塩など)が挙げられる。好ましくは,分子中に窒素原子に結合したメチレンホスホン酸基を2?6個有するものが挙げられる。具体的には,ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(以下NTMPという),エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)(以下ETMPという),ジエチレントリアミンペンタキス(メチレンホスホン酸)(以下EPMPという)及びこれらの塩などが挙げられる。これらの化合物は2種類以上併用することも可能である。
【0029】
上記アミノポリホスホン酸の添加量は種類によって異なり,本発明の効果が達成される限り特別の限定はないが,研磨組成物全量の質量に対して0.001?10質量%,好ましくは0.01?10質量%,更に好ましくは0.1?5質量%である。添加量が0.001質量%未満であれば,十分な添加効果が得られないため,金属汚染の防止効果が十分で無いことがある。逆に10質量%を越えて添加しても,添加による更なる効果は期待できない。」

7 甲第7号証の記載
甲第7号証は,本件優先日前に頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった刊行物であって,次のとおりの記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は研磨剤に関する。さらに詳しくは,シリコンウェハおよびシリコンウェハ上に形成したポリシリコン膜を化学機械研磨する際に用いる新規な仕上げ研磨剤(以下,単に研磨剤ともいう)を提供するものである。」

「【0028】本発明の仕上げ研磨剤は,シリカを含んでいてもよい。シリカを含まない研磨剤は,研磨速度が非常に低いがウェハ表面の仕上がり具合に優れているという特徴がある。また,シリカを含まないため,表面の清浄度に優れている。一方,シリカを含んだ研磨剤はウェハ表面を平坦化するのに十分な研磨速度を有している。上記のシリカを含んだ研磨剤と含まない研磨剤はそれぞれ目的に応じて使い分けることができる。」

8 甲第8号証の記載
甲第8号証は,本件優先日前に頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった刊行物であって,次のとおりの記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,チョクラルスキー法(以下,CZ法という。)により作られたシリコンウェーハの面質を調整するためのウェーハの研磨方法及びこの方法により研磨されたシリコンウェーハに関する。更に詳しくは,LSI等の半導体装置を製造するために用いられるシリコンウェーハの研磨方法に関するものである。」

「【0017】次に本発明の研磨液及び研磨装置について説明する。本発明の研磨液は,シリコンウェーハの表面粗さ等の面質を調整するためのファイナル研磨用の研磨液であって,請求項1に係る研磨液の場合,pHが12.0を超えて14.0以下,好ましくは12.2以上13.0以下のアルカリ性水溶液であることを特徴とする。また請求項2に係る研磨液の場合,pHが8.0以上14.0以下,好ましくは10.0以上13.0以下のアルカリ性水溶液であることを特徴とする。pH値が上記下限値未満ではウェーハ表面のマイクロスクラッチ,ダメージの低減効果に乏しく,上限値を超えると,研磨液の取扱いが困難になる。この研磨液は,SiO_(2)のような砥粒を含むコロイダルシリカ研磨液(請求項1),又は砥粒を含まず,アルカリと増粘剤を含有する研磨液(請求項2)である。本発明の目的は,ウェーハの面質を調整することにあるため,ウェーハ表面の取り代が僅かであり,砥粒を含まなくてもよい。pH値を上記範囲内に調整するためのpH調整剤としては,アンモニア,水酸化アルカリ,炭酸アルカリ,ヒドラジン,有機アミン類等のアルカリ性水溶液が用いられる。これらの中でアンモニア水溶液が,ウェーハの面荒れを比較的小さくするため,ファイナル研磨用スラリーとして好ましい。砥粒は平均粒径が0.1μm以下のSiO_(2)微粒子が好ましい。」

9 甲第9号証の記載
甲第9号証は,本件優先日前に頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった刊行物であって,次のとおりの記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は,シリコンウェハの研磨処理に用いる研磨組成物に関する。」

「【0062】
本発明の研磨組成物においては,砥粒を含まずとも十分な効果が発揮されるが,本発明の好ましい特性を損なわない範囲で,砥粒を含んでいてもよい。たとえば,より高速な研磨速度が求められるような場合は,砥粒を含む方が好ましい。」

10 甲第10号証の記載
甲第10号証は,本件優先日前に頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった刊行物であって,次のとおりの記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は,シリコンウェーハなどの半導体基板を研磨する用途で主に使用される研磨用組成物,及びその研磨用組成物を用いて半導体基板を研磨する方法に関する。」

「【0024】
<二酸化ケイ素>
研磨用組成物中に随意で含まれる二酸化ケイ素は,半導体基板を機械的に研磨する働きを有する。」

11 甲第11号証の記載
甲第11号証は,本件優先日前に頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった刊行物であって,次のとおりの記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は,シリコンウェハの研磨処理に用いる研磨組成物に関する。」

「【0004】
(省略)
本発明の研磨組成物においては,砥粒を含まずとも十分な効果が発揮されるが,本発明の好ましい特性を損なわない範囲で,砥粒を含んでいてもよい。」

第5 申立理由についての判断
1 本件特許発明1の甲1発明に対する進歩性について
(1)本件特許発明1と甲1発明との対比
ア 甲1発明の「PVP」は,「ポリビニルピロリドン」(上記第4の1(1)【0039】)であり,本件特許発明1の「ピロリドンポリマー」に属するものである。
また,甲1発明の「0.35g/L」は,略0.035重量%である。
よって,甲1発明の「0.35g/LのPVP」は,本件特許発明1の「(a)0.01重量%?0.1重量%のピロリドンポリマー」に相当する。
イ 甲1発明の「アミノトリ(メチレンホスホン酸)等のキレート剤」における「アミノトリ(メチレンホスホン酸)」は,本件特許発明1の「(b)アミノホスホン酸」に属するものである。
ウ 甲1発明の「TMAH」は,「水酸化テトラメチルアンモニウム」(上記第4の1(1)【0039】)であり,本件特許発明1の「テトラアルキルアンモニウム塩」に属するものである。
また,甲1発明の「2.0g/L」は,略0.2重量%である。
よって,甲1発明の「2.0g/LのTMAH」は,本件特許発明1の「(c)0.01重量%?5重量%のテトラアルキルアンモニウム塩」に相当する。
エ 甲1発明の「水」は,本件特許発明1の「(d)水」に相当する。
オ 甲1発明の「pHは10.5」は,本件特許発明1の「7?11.7のpH」に包含されるものである。
カ 甲1発明の「研磨組成物」は,下記相違点を除いて,本件特許発明1の「研磨組成物」に相当する。
キ すると,本件特許発明1と甲1発明とは,下記クの点で一致し,下記ケの点で相違する。

ク 一致点
(a)0.01重量%?0.1重量%のピロリドンポリマー,
(c)0.01重量%?5重量%のテトラアルキルアンモニウム塩,および
(d)水
を含み,7?11.7のpHを有する,研磨組成物。

ケ 相違点
本件特許発明1は,「アミノホスホン酸」を含み,さらに,その「アミノホスホン酸」は「0.05重量%?2重量%」であるのに対し,甲1発明では,「アミノトリ(メチレンホスホン酸)等のキレート剤を含有してもよく」とするものであって,その含有量も特定されていない点。(以下,「相違点1」という。)

(2)判断
・ 相違点1について
甲第1号証に,「研磨組成物は,少なくとも1種類のキレート剤をさらに含有してもよい。」こと,「キレート剤は半導体ウェーハの金属汚染を抑制することができる。」ことが記載されていることから(上記第4の1(1)【0035】),「キレート剤を含有してもよく」と特定されている甲1発明において,半導体ウェーハの金属汚染を抑制することを目的として,必要量のキレート剤を含有することを選択することは,当業者が容易に想到しえたことといえるとしても,甲第1号証には,キレート剤の具体例として,アミノカルボン酸系キレート剤である,エチレンジアミン四酢酸,エチレンジアミン四酢酸ナトリウム,ニトリロ三酢酸,ニトリロ三酢酸ナトリウム,ニトリロ三酢酸アンモニウム,ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸,ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム,ジエチレントリアミン五酢酸,ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム,トリエチレンテトラミン六酢酸及びトリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウム,有機ホスホン酸系キレート剤である,2-アミノエチルホスホン酸,1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸,アミノトリ(メチレンホスホン酸),エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸),ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸),エタン-1,1,-ジホスホン酸,エタン-1,1,2-トリホスホン酸,エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸,エタン-1-ヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸,エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸,メタンヒドロキシホスホン酸,2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸,1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸及びα-メチルホスホノコハク酸が挙げられており,これら甲第1号証に記載されたキレート剤のうちから特に「アミノホスホン酸」を選択する動機を,甲第1号証ないし甲第11号証の記載からは,見出すことはできない。
しかも,本件特許発明1は,「研磨を受ける基板の低い表面欠陥をもたらし,かつ高い除去速度を達成する研磨組成物の必要性が存在する。」(本件特許明細書【0004】)という課題を解決しようとする発明であって,本件特許明細書【0047】-【0049】,【表1】に記載されるように,コロイドシリカを含有する場合において,除去速度:5500オングストローム/分,PSD:1.4nm,あるいは,コロイドシリカを含有しない場合において,除去速度:4300オングストローム/分,PSD:1.5nmが得られるという効果を奏するところ,甲1発明において,「アミノトリ(メチレンホスホン酸)等のキレート剤」を,半導体ウェーハの金属汚染を抑制するという目的を果たす程度の量で含有させたものが,上記効果を奏することを,当業者が予測し得たとは,甲第1号証ないし甲第11号証に記載された技術的事項,及び,技術常識を勘案しても認めることはできない。
してみれば,「アミノトリ(メチレンホスホン酸)等のキレート剤」の含有量を「0.05重量%?2重量%」とすることの容易性を検討するまでもなく,甲1発明において,相違点1について本件特許発明1の構成を採用することは,甲第1号証ないし甲第11号証に記載された技術的事項からは,当業者が容易になし得たこととは認められない。

(3)まとめ
したがって,本件特許発明1は,甲1発明及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではないから,本件特許の請求項1に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

2 本件特許発明1の甲2発明に対する進歩性について
(1)本件特許発明1と甲2発明との対比
ア 甲2発明の「PVP^(※1)」は,「ポリビニルピロリドン」(上記第4の2(1)【0031】)であり,本件特許発明1の「(a)ピロリドンポリマー」に属するものである。
イ 甲2発明の「EDTPO」は,「エチレンジアミン四エチレンホスホン酸」(上記第4の2(1)【0034】)であり,本件特許発明1の「(b)アミノホスホン酸」に属するものである。
ウ 甲2発明の「TMAH」は,「水酸化テトラメチルアンモニウム」(上記第4の2(1)【0032】)であり,本件特許発明1の「テトラアルキルアンモニウム塩」に属するものである。
また,甲2発明の「2.0g/L」は,略0.2重量%である。
よって,甲2発明の「2.0g/LのTMAH」は,本件特許発明1の「(c)0.01重量%?5重量%のテトラアルキルアンモニウム塩」に相当する。
エ 甲2発明の「水」は,本件特許発明1の「(d)水」に相当する。
オ 甲2発明の「研磨組成物」は,下記相違点を除いて,本件特許発明1の「研磨組成物」に相当する。
カ すると,本件特許発明1と甲2発明とは,下記キの点で一致し,下記クの点で相違する。

キ 一致点
「(a)ピロリドンポリマー,
(b)アミノホスホン酸,
(c)0.01重量%?5重量%のテトラアルキルアンモニウム塩,および,
(d)水,
を含む研磨組成物。」

ク 相違点
(ア)本件特許発明1の「ピロリドンポリマー」は「0.01重量%?0.1重量%」であるのに対し,甲2発明のPVP^(※1)は,略0.001重量%である点。(以下,「相違点2」という。)
(イ)本件特許発明1の「アミノホスホン酸」は「0.05重量%?2重量%」であるのに対し,甲2発明のEDTPOは,略0.03重量%である点。(以下,「相違点3」という。)
(ウ)本件特許発明1の「pH」は「7?11.7」であるのに対し,甲2発明では,そのような特定はなされていない点。(以下,「相違点4」という。)

(2)判断
・ 相違点2および3について
甲第2号証において,「水溶性高分子の含有量が多くなるにつれて,欠陥の発生を抑制するのに十分な親水膜がウエハ表面に形成されやすくなるために,研磨加工に起因するLPDの数はより大きく低減する。この点において,研磨用組成物中の水溶性高分子の含有量が0.0003g/L以上,さらに言えば0.001g/L以上,もっと言えば0.003g/L以上,さらにもっと言えば0.005g/L以上であれば,研磨加工に起因するLPDの数を大きく低減することができる。」,(上記第4の2(1)【0012】)こと,「水溶性高分子による親水膜は研磨用組成物によるウエハの研磨速度(除去速度)の低下を招く。そのため,研磨用組成物中の水溶性高分子の含有量が少なくなるにつれて,親水膜による研磨速度の低下はより強く抑制される。この点において,研磨用組成物中の水溶性高分子の含有量が0.1g/L以下,さらに言えば0.02g/L以下,もっと言えば0.015g/L以下,さらにもっと言えば0.01g/L以下であれば,親水膜による研磨速度の低下を強く抑制することができる。」(上記第4の2(1)【0013】)ことが記載されており,研磨加工に起因するLPDの数を低減するため,および,親水膜による研磨速度の低下を抑制するために,研磨用組成物中の水溶性高分子の含有量を0.0003g/L以上0.1g/L以下(略0.00003質量%以上0.01質量%以下)に調整することが記載されているといえる。
ここで甲2発明の水溶性高分子であるPVP^(*1)の含有量を,略0.001重量%から,本件特許発明1で特定する範囲である0.01重量%?0.1重量%とすることには,甲2発明の研磨用組成物中の水溶性高分子の上限の範囲を規定する研磨速度の低下を抑制する目的に反することとなるから,阻害要因があるといえる。
さらに,甲第2号証において,「キレート剤は,研磨用組成物中の金属不純物と錯イオンを形成してこれを捕捉することにより,金属不純物による研磨対象物の汚染を抑制する働きをする。」ことが記載されており(上記第4の2(1)【0027】),甲2発明において,研磨対象物の金属汚染を抑制する程度にキレート剤の含有量を調整することが,当業者が容易に想到し得たことといえたとしても,甲2発明において,PVP^(*1),EDTPO,及び,TMAHの各含有量を,本件特許発明1で特定する範囲のものとした場合に,本件特許明細書に記載された効果を奏することを,当業者が予測し得たとは,甲第1号証ないし甲第11号証に記載された技術的事項,及び,技術常識を勘案しても認めることはできない。
してみれば,甲2発明において,相違点2,3について本件特許発明1の構成を採用することは,甲第1号証ないし甲第11号証に記載された技術的事項からは,当業者が容易になし得たこととは認められない。

(3)まとめ
したがって,本件特許発明1は,甲2発明及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではないから,本件特許の請求項1に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

3 本件特許発明2ないし6,9ないし11,13ないし16の進歩性について
本件特許発明1を引用した本件特許発明2ないし5については,本件特許発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから,本件特許発明1と同様に,甲1発明又は甲2発明及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また,独立請求項である本件特許発明6は,本件特許発明1の発明特定事項をすべて含むものであり,本件特許発明6を引用した本件特許発明9ないし11,13ないし16についても,本件特許発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから,本件特許発明1と同様に,甲1発明又は甲2発明及び甲第1号証ないし甲第11号証に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって,本件特許の請求項2ないし6,9ないし11,13ないし16に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

4 記載要件について
ア 本件特許発明の課題及び課題を解決するための手段
本件特許発明1ないし6,9ないし11,13ないし16(以下,まとめて「本件特許発明」という。)の課題は「研磨を受ける基板の低い表面欠陥をもたらし,かつ高い除去速度を達成する研磨組成物」(本件特許明細書【0004】)を得ることであり,課題を解決する手段として,「(a)0.01重量%?0.1重量%のピロリドンポリマー,(b)0.05重量%?2重量%のアミノホスホン酸,(c)0.01重量%?5重量%のテトラアルキルアンモニウム塩,および(d)水を含み,7?11.7のpHを有する研磨組成物」(本件特許明細書【0005】),及び,より具体的な実施例として,表1に示す量のポリビニルピロリドン(PVP)0.04重量%,アミノトリ(メチレン)ホスホン酸(ATMP)0.39重量%,水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)2.63%,水を含む研磨組成物1A,1B(本件特許明細書【0047】-【0048】,【表1】)が記載されている。
ここで,具体的な実施例の研磨組成物1A,1Bのピロリドンポリマー,アミノホスホン酸,テトラアルキルアンモニウム塩の含有量の範囲が1点であるとはいえ,本件特許発明の課題を解決できるものとして,ピロリドンポリマー,アミノホスホン酸,テトラアルキルアンモニウム塩の含有量は,本件特許明細書の【0010】,【0012】,【0014】に記載されるように,範囲を有するものと理解するのが当業者にとって普通であり,また,本件特許発明1のピロリドンポリマー,アミノホスホン酸,テトラアルキルアンモニウム塩の含有量の範囲において,本件特許発明の課題を解決できないことが明らかとは認められないから,本件特許発明1のピロリドンポリマー,アミノホスホン酸,テトラアルキルアンモニウム塩の含有量の範囲は,当業者が本願課題を解決しうると認識できる範囲であるといえる。
なお,本件特許明細書に,研磨組成物の含有物のひとつ(たとえばアミノホスホン酸)の含有量の範囲に対応した効果が記載されていないからといって,本件特許発明が,課題を解決する手段を反映していないとはいえない。
イ まとめ
したがって,本件特許発明1ないし6,9ないし11,13ないし16は,発明の詳細な説明に記載したものであり,本件特許は,特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものではない。

第6 結び
以上のとおりであるから,特許異議の申立ての理由及び証拠によっては,請求項1ないし6,9ないし11,13ないし16に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に請求項1ないし6,9ないし11,13ないし16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-08-29 
出願番号 特願2015-531167(P2015-531167)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (H01L)
P 1 652・ 537- Y (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鈴木 和樹  
特許庁審判長 加藤 浩一
特許庁審判官 恩田 春香
河合 俊英
登録日 2017-12-01 
登録番号 特許第6251271号(P6251271)
権利者 キャボット マイクロエレクトロニクス コーポレイション
発明の名称 ポリピロリドン研磨組成物および研磨方法  
代理人 石田 敬  
代理人 永坂 友康  
代理人 蛯谷 厚志  
代理人 青木 篤  
代理人 古賀 哲次  
代理人 小林 良博  
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