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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
管理番号 1343933
異議申立番号 異議2018-700369  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-10-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-05-01 
確定日 2018-09-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第6224741号発明「球状具材含有トッピング調味料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6224741号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6224741号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし7に係る特許は、平成28年1月14日に特許出願され、平成29年10月13日にその特許権の設定登録がされ(特許掲載公報の発行日:平成29年11月1日)、その後、本件特許の請求項1ないし7に係る特許について、平成30年5月1日に特許異議申立人 真角 侑子(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審において平成30年6月20日付けで取消理由を通知し、平成30年8月10日付けで特許権者より意見書が提出されたものである。

第2 本件特許に係る特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は、次のとおりであり、本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下、順に「本件発明1」ないし「本件発明7」という。)は、それぞれ、請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものである。
「【請求項1】
(A)目開き4メッシュパス16メッシュオンの具材を湿重量で調味料全体の10?36重量%及び(B)目開き16メッシュパス100メッシュオンの具材を湿重量で調味料全体の0.1?18重量%を含有し、具材(A)の湿重量の60.7?100重量%が、乾燥状態の具材を、注入法で、具材を保持するための保持縁を持つ固定された半径r(cm)の円板上で対称性のある略円錐状の積層体を形成させた際の、保持縁の最高部と略円錐状の積層体の最高部との差分である高さH(cm)を測定することによって、「tanα=H/r」から求められる安息角αが20°<α<45°である球状具材であり、4メッシュパス16メッシュオンの球状具材を湿重量で調味料全体の10?33重量%含有し、調味料全体の20℃における粘度がB型粘度計で1000mPa・s?6100mPa・sであり、ボストウィック粘度計による測定温度20℃、測定時間30秒の粘度が6?22cmであることを特徴とする球状具材含有トッピング調味料。
【請求項2】
球状具材の素材が、米、フライドライス、粒ごま、マスタードシード、チアシード、キヌア、さのう、オクラの種、バジルシード、粒状たん白、粒状アルギン酸及び粒状でんぷん加工品から選ばれる1種以上である請求項1記載の球状具材含有トッピング調味料。
【請求項3】
目開き4メッシュパス16メッシュオンの具材を湿重量で調味料全体の13.1?36重量%含有する請求項1又は2記載の球状具材トッピング調味料。
【請求項4】
球状具材の素材が、粒ごま及びマスタードシードから選ばれる1種以上である請求項1?3のいずれか1項記載の球状具材含有トッピング調味料。
【請求項5】
粘度調整剤として、キサンタンガム及び加工でんぷんから選ばれる1種以上を含有する請求項1?4のいずれか1項記載の球状具材含有トッピング調味料。
【請求項6】
具材(B)の湿重量と具材(A)中の非球状具材の湿重量の合計が、具材(A)中の球状具材の湿重量の0.1?140重量%である請求項1?5のいずれか1項記載の球状具材含有トッピング調味料。
【請求項7】
(A)目開き4メッシュパス16メッシュオンの具材を湿重量で調味料全体の10?36重量%及び(B)目開き16メッシュパス100メッシュオンの具材を湿重量で調味料全体の0.1?18重量%となるように配合し、具材(A)の湿重量の60.7?100重量%が、乾燥状態の具材を、注入法で、具材を保持するための保持縁を持つ固定された半径r(cm)の円板上で対称性のある略円錐状の積層体を形成させた際の、保持縁の最高部と略円錐状の積層体の最高部との差分である高さH(cm)を測定することによって、「tanα=H/r」から求められる安息角αが20°<α<45°である球状具材であるように調整し、4メッシュパス16メッシュオンの球状具材を湿重量で調味料全体の10?33重量%となるように調整し、調味料全体の20℃における粘度がB型粘度計で1000mPa・s?6100mPa・sに調整し、ボストウィック粘度計による測定温度20℃、測定時間30秒の粘度が6?22cmになるように調整することを特徴とする球状具材含有トッピング調味料の製造法。」

第3 取消理由の概要
当審において、請求項1ないし7に係る特許に対して通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。

理由1:(明確性)
本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

理由2:(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

理由3:(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。


理由1(特許法第36条第6項第2号)について
請求項1の「調味料全体の20℃における粘度がB型粘度計で1000mPa・s?6100mPa・sであり」との事項、及び請求項7の「調味料全体の20℃における粘度がB型粘度計で1000mPa・s?6100mPa・sに調整し」との事項については、明細書の段落【0031】において、「本発明の粘度はB型粘度計(例えば東機産業社製の「B-II」)を用いて測定することができる。具体的には、20℃に温度調整した調味料をB型粘度計の測定用容器に適量充填し、容器をB型粘度計にセットし、測定粘度に適合したローターを用いて適切な回転数で粘度を測定することができる。」と説明されているが、一般にB型粘度計において、測定粘度に適合したローター及び回転数の組合せが複数ある場合、各組合せで測定した粘度が一致するとはいえない。そうすると、ローターの回転数などの粘度と相関関係がある測定条件が示されていないため、「B型粘度計で1000mPa・s?6100mPa・s」という粘度の数値範囲のみでは、「調味料全体の20℃における粘度」を特定することができない。
よって、本件特許の請求項1ないし7に係る発明は明確ではない。

理由2(特許法第36条第6項第1号)について
発明の詳細な説明の表1ないし3に示す実施例及び比較例において、B型粘度計の測定結果は、どのような測定条件で測定したのか明らかではないため、本件特許の請求項1ないし7に係る発明に規定されているB型粘度計による粘度の測定条件と同一であるか否か不明であり、本件特許の請求項1ないし7に係る発明の「調味料全体の20℃における粘度がB型粘度計で1000mPa・s?6100mPa・s」であるという事項が発明の詳細な説明において記載されているとはいえず、本件特許の請求項1ないし7に係る発明が、発明の詳細な説明おいて発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲のものとはいえない。
よって、本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。

理由3(特許法第36条第4項第1号)について
発明の詳細な説明の記載によっては、本件特許の請求項1ないし7に係る発明の「B型粘度計で1000mPa・s?6100mPa・s」という数値範囲に関し、その測定条件(ローターの回転数及び種類)を特定することができないのであるから、過度な試行錯誤なく本件特許の請求項1ないし7に係る発明の技術的範囲に属する調味料を製造できるとは認められない。
よって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件特許の請求項1ないし7に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。

第4 証拠方法
1 申立人による証拠方法
申立人は、以下の証拠方法を提出している。
(1)甲第1号証:プライミクス株式会社,「文系でもわかるレオロジー その6 粘度計とレオメーター(2)」に関するウエブページの印刷物,p.1,[2018年5月1日検索],インターネット<URL:http://www.primix.jp/mixer_lecture/vol2/06.html>(以下、「甲1」という。)
(2)甲第2号証:特開2015-130811号公報(以下、「甲2」という。)
(3)甲第3号証:特開2013-141413号公報(以下、「甲3」という。)
(4)甲第4号証:特公昭57-53052号公報(以下、「甲4」という。)
(5)甲第5号証:特開2013-35557号公報(以下、「甲5」という。)
(6)甲第6号証:特開2016-77194号公報(以下、「甲6」という。)
(7)甲第7号証:特開2012-207079号公報(以下、「甲7」という。)
(8)甲第8号証:特開2010-11781号公報(以下、「甲8」という。)

2 特許権者による証拠方法
特許権者は、以下の証拠方法を提出している。
(1)乙第1号証:「B形粘度計 取扱説明書」,東機産業株式会社,2006.09,p.i-ii,p.(1)-(5),p.1-36
及び「B形粘度計校正手順書」,東機産業株式会社,2006.09,p.A1-A9(以下、両文献を合わせて「乙1」という。)

第5 甲1ないし8及び乙1の記載
1 甲1について
甲1には、以下の記載がある。
(1)「B型粘度計では回転数を変えることが可能ですが、6、12、30、60回転/分といった特定の回転数にしか設定できません。」

(2)「



2 甲2について
甲2には、以下の記載がある。
「【0032】
本発明の液状調味料は、常温(20℃)にてB型粘度計(ローターNo.3、回転数:30rpmの条件)で測定した粘度が、400mPa・s以上8000mPa・s以下となるように設定される。」

3 甲3について
甲3には、以下の記載がある。
「【0039】
【表3】



4 甲4について
甲4には、以下の記載がある。


」(4頁)

5 甲5について
甲5には、以下の記載がある。
「【0067】
<粘度測定結果>
ポン酢ジュレ
・B型粘度計 25℃ローターNo.3?12回転 で測定
3500cp
・B型粘度計 25℃ローターNo.3?30回転 で測定
1840cp」

6 甲6について
甲6には、以下の記載がある。
(1)「【0023】
(粘度)
本発明の液状食品の粘度は、200?10000mPa・sであることが好ましく、500?8000mPa・sであることがより好ましい。」

(2)「【0054】
2.粘度
B型粘度計(ブルックフィールド社製)を使用して測定した。測定温度は20℃、ローター回転数は60rpmとした。ローターは粘度にあわせて最適になるものを選択した。」

7 甲7について
甲7には、以下の記載がある。
(1)「【請求項8】
水溶液濃度6重量%、環境温度25℃、回転速度6rpmの条件でB型回転粘度により粘度を測定した場合に、前記加熱処理後の粘度が、前記加熱処理前の粘度よりも10%以上高い請求項7に記載の澱粉-キシログルカン複合体。」

(2)「【0064】
粘度測定方法:
溶液の粘度測定方法は以下の通りとした。すなわち、2重量%または6重量%に調製した水溶液をトールビーカーに移し25℃の恒温槽に30分間静置後B型粘度計(東機産業株式会社製:TV-20)にてローター回転数6rpmでの粘度を測定した。」

(3)「【0071】



(4)「【0074】



8 甲8について
甲8には、以下の記載がある。
「【0194】
ここでゲル化の有無は、25℃における粘度を測定することによって評価することができる。具体的には、測定対象物(カラギナンの1.5?2.5重量%水溶液)の粘度を、25℃条件下でBL型回転粘度計(ローターNo.2)((株)トキメック製)を用いて回転数12rpmで1分間測定した場合、粘度が4000mPa・s以下であるか否かで判断することができる。」

9 乙1について
乙1には、以下の記載がある。なお、○付き数字を「○数字」に改めた。
(1)「(2)4段変速または8段変速の変速歯車列によってロータの回転数速度が変えられます。4段変速のB形粘度計(形名がBL,BMおよびBH)では・・・
(3)8段変速のB形粘度計(形名がB8L、B8M、B8H、B8R、B8U)においては・・・
(4)BM形、B8M形粘度計にはNo.1からNo.4までの4本のロータ(図2の○11および図15の○2)と狭いガード(図2の○12および図14の○3)があります。BH形B8H形では、No.1からNo.7までの7本のロータ(図2の○11および図16の○2)と幅の広いガード(図2の○12および図16の○3)があります。BL形はBM形と同じNo.1からNo.4までの4本のロータと狭いガードの他にBLアダプタ(§3(13)で後述)があります。すべてのロータおよびガードはステンレス製です。」(§2;3頁1行ないし18行)

(2)「(6)ロータと回転数の組合わせの選定
B形粘度計でロータと回転数との組合せによる測定範囲は「§14各形式の測定上限値表と換算乗数表」の表6-1?表6-7に示すとおりです。測定しようとする液のおよその粘度がわかっているときは、適当な組合せを「§14各形式の測定上限値表と換算乗数表」の表6-1?表6-7から選んで用いて下さい。
粘度が前もってまったく不明の液を測定する場合は、B形粘度計のどの形式でもロータ番号の大きい方から小さい方へ、回転数は低速から高速の方へと変速して行くのが適当な方法です。たとえば、BH形を例にとると、ロータをNo.7、No.6、No.5、No.4、No.3、No.2、No.1の順につけかえ、各ロータに対して、回転数を2、4、10、20rpm、と順次高い方へ変速して、指針が目盛板上でなるべくフルスケール(目盛100)近くなるような組合せを見つけて下さい。こうすると、スケールアウト(振り切れ)が避けられます。またフルスケール近くで測ることは相対誤差の点で有利になります。やむを得ない場合以外は目盛板上で指度が10以下の組合せを避けてください。」(§3;8頁1行ないし13行)

(3)「(13)測定値の取扱い
a)粘度計の指度からmPa・sであらわした絶対粘度値を得るには、§14「各形式の測定上限値表と換算乗数表」から、使用しているロータと回転数に対応した換算乗数を見出し、これを掛けて得られます。」(§3;11頁24行ないし27行)

(4)「

」(§4;20頁)

(5)「

」(§14;32頁)

(6)「

」(§14;33頁)

第6 判断
1 取消理由1(特許法第36条第6項第2号)について
(1)検討
甲1及び乙1には、B型粘度計において6、12、30、60回転/分(rpm)といった複数の回転数を設定可能であることが記載されている(上記第5の1(1)並びに9(2)、(5)及び(6))。
また、甲3ないし5には、B型粘度計で測定した粘度が、回転数によって異なることが記載されている(上記第5の3ないし5)。
さらに、甲2ないし8には、B型粘度計で測定した粘度とともに、ロータの種類と回転数を付記したことが記載されている(上記第5の2ないし8)。
これらを合わせてみると、B型粘度計で測定した粘度は、ロータの種類と回転数に応じて異なることがあり、測定結果である粘度とともに、ロータの種類と回転数を記載することが、本件特許の出願前に行われていたことが分かる。
そして、本件特許の請求項1及び7においては、B型粘度計で測定した調味料全体の20℃における粘度に関し、「B型粘度計で1000mPa・s?6100mPa・s」という粘度の数値範囲のみが記載され、本件特許の明細書(特に、段落【0031】ないし【0032】)においても、B型粘度計で測定した際のロータの種類と回転数は記載されていないところ、それにより「調味料全体の20℃における粘度」を特定することができるか否かについて、以下に検討する。
乙1は、本件特許の明細書の段落【0031】に記載された東機産業社製の「B-II」というB型粘度計についての取扱説明書であり、mPa・sであらわした絶対粘度値は、粘度計の指度に表6-1の換算乗数表から見出した使用しているロータの種類と回転数に対応した換算乗数を掛けて得られるものであって(上記第5の9(3)及び(6))、表6-1の測定上限値表の記載によれば、複数のロータの種類と回転数の組合せにおいて、同じ測定上限値となっており(上記第5の9(5))、複数のロータの種類と回転数の組合せのそれぞれで粘度の測定が可能である。
ところで、乙1には、「またフルスケール近くで測ることは相対誤差の点で有利になります。」(上記第5の9(2))と記載されている。
この記載によれば、B型粘度計においては、測定可能なロータの種類と回転数の組合せが複数ある場合、相対誤差の観点から、最もフルスケール近くで測定した値を採用するといえる。すなわち、指針が目盛板上でなるべくフルスケール(目盛100)近くなるような一の最適なロータの種類と回転数の組合せにおいて、粘度を測定することになるから、B型粘度計で測定した粘度とともに、ロータの種類と回転数が示されていなくても、測定結果である粘度から、ロータの種類と回転数を特定することができる。
そして、本件特許の請求項1及び7のように、B型粘度計で測定した粘度のみが記載されている場合には、粘度は最適なロータの種類と回転数の組合せで測定したものとして特定することができると解するのが妥当である。
そうすると、請求項1及び7において、B型粘度計で測定した調味料全体の20℃における粘度に関し、「B型粘度計で1000mPa・s?6100mPa・s」という粘度の数値範囲のみが記載されているとしても、「調味料全体の20℃における粘度」を特定することができるものといえるから、本件発明1ないし7は明確である。

(2)まとめ
したがって、請求項1ないし7に係る特許は、取消理由1によって、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとすることはできない。

2 取消理由2(特許法第36条第6項第1号)について
(1)検討
上記取消理由2について検討すると、上記1(1)で述べたとおり、B型粘度計で測定した粘度のみが記載されている場合には、粘度は最適なロータの種類と回転数の組合せで測定したものとして特定することができると解するのが妥当であるから、発明の詳細な説明の表1ないし3に示す実施例及び比較例において、B型粘度計で測定した粘度は、最適なロータの種類と回転数の組合せで測定したものということができる。
そうすると、発明の詳細な説明の表1ないし3に示す実施例及び比較例におけるB型粘度計で測定した結果である粘度は、本件発明1ないし7に規定されているB型粘度計による粘度と、同じ最適なロータの種類と回転数で測定したものであるといえるから、本件発明1ないし7の「調味料全体の20℃における粘度がB型粘度計で1000mPa・s?6100mPa・s」であるという事項は、発明の詳細な説明において記載されているといえ、本件発明1ないし7は、発明の詳細な説明おいて発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているものではない。

(2)まとめ
したがって、請求項1ないし7に係る特許は、取消理由2によって、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとすることはできない。

3 取消理由3(特許法第36条第4項第1号)について
(1)検討
上記取消理由3について検討すると、上記1(1)で述べたとおり、B型粘度計で測定した粘度のみが記載されている場合には、粘度は最適なロータの種類と回転数の組合せで測定したものとして特定することができると解するのが妥当であるから、発明の詳細な説明の記載によって、本件発明1ないし7の「B型粘度計で1000mPa・s?6100mPa・s」という数値範囲に関し、ロータの種類と回転数を特定することができるといえる。
そうすると、過度な試行錯誤なく本件発明1ないし7の技術的範囲に属する調味料を製造できるものと認められ、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1ないし7について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているものである。

(2)まとめ
したがって、請求項1ないし7に係る特許は、取消理由3によって、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとすることはできない。

4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許法第36条第6項第2号(明確性)に係る特許異議申立理由(以下、「申立理由1」という。)について
ア 申立理由1の概要
申立人の主張する申立理由1は、概略以下のとおりである。
(ア)「乾燥状態の具材」の意味について(特許異議申立書12頁17行ないし14頁末行)
本件明細書の段落【0022】の記載は、明らかに各具材が調味液中に分散され、調味液によって膨潤されたものについて、水分を切る、水洗する、50℃程度の高温にて乾燥、安息角の測定というプロセスにより、「安息角αが20°<α<45°である球状具材」に該当するか否かが判断されることを前提としているものである。
しかしながら、実施例・比較例について記載された段落【0037】の記載から、各具材の安息角を先に測定し、その後に「増粘剤を水で膨潤させた後に、他の原料を加えて均一に混合した」というプロセスを経て、各具材が調味液中に分散され、調味液によって膨潤されていることが分かる。
仮に段落【0022】に記載されているように、水分を切り、水洗し、乾燥するというステップを経た後に安息角を測定したとしても、配合前の乾燥状態とは形も大きさも大きく異なっていることは自明であり、段落【0037】で記載されているように、調味液に配合する前の材料そのものについて測定した安息角と一致するとは到底考えられない。
このように、本件明細書には、本件発明1の「安息角aが20°<α<45°である球状具材であり」という規定の測定条件に関して、明らかに矛盾した記載がなされており、その測定の前提となる「乾燥状態の具材」がどのような状態のものなのか理解することが出来ない。そのため、第三者において、どのような具材をどの程度配合されれば、本件発明1の「安息角αが20°<α<45°である球状具材」に該当し、かつ「具材(A)の湿重量の60.7?100重量%」という数値範囲を充足するのか判断する手段が存在しない。
従って、第三者においてどのような調味料であれば本件発明の技術的範囲に含まれるか判別することが不可能となるのであるから、当該規定は第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるという他ない。同様のことは、本件発明1を引用する本件発明2乃至6、並びに本件発明1と同様の規定がなされている本件発明7においても当て嵌まる。

(イ)「球状具材」の意味について(特許異議申立書15頁1行ないし18頁21行)
上記(ア)において述べたとおり、「乾燥状態の具材」の意味が理解できない以上、安息角αを測定する条件が決められないことで「球状具材」の定義も不明確となり、本件発明1の「球状具材」という規定に関しても明確性要件違反であることは明白であるが、そのことは以下の点からも明らかである。
球状具材の定義は「安息角α(°)が20°<α<45°」を満たす具材ということだけには限られないと解釈できるにも拘わらず、一体どのような基準を以って「球状」具材と言えるのか、本件明細書にはその判断基準が全く示されていない以上、「球状具材」が明確性を欠くことは既に明らかと言える。
さらに、「同じ食材であっても、その形状によって安息角が所定の範囲に収まるものと収まらないものが混在する場合」においては特に、そのうちどの部分が球状具材に該当し、それが全体で何重量部含まれているか特定する手段が存在しないのであるから、第三者が実施しようとする製品において、本件発明1における「具材(A)の湿重量の60.7?100重量%が、・・・安息角αが20°<α<45°である球状具材」という要件を充足するか否か判断することは不可能である。
従って、第三者においてどのような調味料であれば本件発明の技術的範囲に含まれるか判別することが不可能となるのであるから、本件発明1の「球状具材」という規定は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるという他ない。同様のことは、本件発明1を引用する本件発明2乃至6、並びに本件発明1と同様の規定がなされている本件発明7においても当て嵌まる。

イ 検討
(ア)「乾燥状態の具材」の意味について
本件特許の請求項1及び7には、「具材(A)の湿重量の60.7?100重量%が、乾燥状態の具材を、注入法で、具材を保持するための保持縁を持つ固定された半径r(cm)の円板上で対称性のある略円錐状の積層体を形成させた際の、保持縁の最高部と略円錐状の積層体の最高部との差分である高さH(cm)を測定することによって、「tanα=H/r」から求められる安息角αが20°<α<45°である球状具材」と記載されている。
この記載に関し、本件特許の明細書の段落【0022】には、「安息角を測定する際には具材は具材同士が粘着しない程度に乾燥している必要がある。湿状態の具材は水分をふるいなどでよく切った後、必要に応じて具材に付着した調味液成分が完全に流れ落ちるまで水洗し、その後50℃程度の高温にて水分が具材同士粘着しない程度に蒸発するまで乾燥させてからその安息角を測定することができる。」と記載されている。
また、本件特許の明細書の段落【0037】には、「表1?表3に示すトッピング調味料を製造した。具体的には最初に各具材、粒ごま(竹本油脂社製)、タピオカ、ブラックタピオカ(ギャバン社製)、チアシード、イエローマスタードシード、あらびき胡椒(カネカサンスパイス社製)、すり胡麻(かどや製油社製)、バジルシード(ティラキタ社製)(当審注:「))」は「)」の誤記である。)の安息角を測定し球状具材と非球状具材を選別した。具体的には具材を保持するための保持縁を持つ固定された半径4.25(cm)の円板上に乾燥状態の具材をゆっくりと上部から落下させ、具材が対称性のある略円錐状の積層体を形成し、それ以上の具材を注入しても具材が保持縁からあふれ落ちて積層体高さが変化しない状態の、保持縁の最高部と略円錐状の積層体の最高部との差分である高さH(cm)を測定し、「tanα=H/4.25」から安息角α(°)を算出した。」と記載されている。
これら記載によると、本件特許の請求項1及び7における「乾燥状態の具材」は、具材同士が粘着しない程度に乾燥し、安息角を測定することが可能な状態の具材と認められる。
そして、上記段落【0022】の記載によれば、具材に調味液成分が付着している場合は、調味液成分が完全に流れ落ちるまで水洗し、具材を水分以外は除いた状態としてから乾燥させるのであるから、「乾燥状態の具材」は、トッピング調味料に配合前の乾燥状態又は湿状態の具材から得たものか、配合後の湿状態の具材から得たものかを問うものではない。
そうすると、「乾燥状態の具材」がどのような状態のものであるか理解することができないとはいえない。

(イ)「球状具材」の意味について
上記(ア)で述べたとおり、本件特許の請求項1及び7における「乾燥状態の具材」は、具材同士が粘着しない程度に乾燥し、安息角を測定することが可能な状態の具材と認められるところ、本件特許の請求項1及び7に記載されているとおり、「乾燥状態の具材を、注入法で、具材を保持するための保持縁を持つ固定された半径r(cm)の円板上で対称性のある略円錐状の積層体を形成させた際の、保持縁の最高部と略円錐状の積層体の最高部との差分である高さH(cm)を測定することによって、「tanα=H/r」から求められる安息角αが20°<α<45°である」ものを、「球状具材」と定義しているのであるから、「球状具材」の定義が不明確であるとはいえない。
これについて、本件特許の明細書の段落【0022】ないし【0024】及び【0037】並びに表4の記載を参酌しても、矛盾するものではない。
また、申立人は、同じ種類の食材であっても、その形状によって安息角が所定の範囲に収まるものと収まらないものが混在する場合を想定した主張をするが、安息角αが20°<α<45°であるものを、「球状具材」と定義している以上、その範囲に収まらないものは、非球状具材として扱うのであるから、「具材(A)の湿重量の60.7?100重量%が、・・・安息角αが20°<α<45°である球状具材」という要件を充足するか否か判断することが不可能であるとはいえない。

(ウ)小括
上記(ア)及び(イ)の検討によれば、本件発明1ないし7は明確である。

ウ まとめ
したがって、請求項1ないし7に係る特許は、申立理由1によって、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとすることはできない。

(2)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)に係る特許異議申立理由(以下、「申立理由2」という。)について
ア 申立理由2の概要(特許異議申立書20頁21行ないし22頁5行)
申立人の主張する申立理由2は、概略以下のとおりである。
上記(1)ア(ア)において述べたとおり、「安息角αが20°<α<45°である球状具材であり」という規定の測定条件となる「乾燥状態の具材」に関し、本件明細書の段落【0022】と段落【0037】で矛盾した記載がなされており、その技術的意味を理解することはできない。
本件発明のサポート要件を充足するためには、調味液に分散され膨潤した後の具材を指標に、「安息角αが20°<α<45°」に該当することによって本件発明の課題が解決できることを示すことが最低限必要と考えられる。
しかるところ、本件明細書の【表4】で示された安息角は、調味液に入れる前の具材についての値であって、実施例・比較例について、調味液に分散され膨潤した後の具材について安息角が20°<α<45°の数値範囲に含まれるか否か測定された形跡は存在しない。その上、調味液に入れる前の具材について安息角が20°<α<45 ゜の数値範囲に含まれてさえいれば、調味液に分散され膨潤し形がどんなに変形しても本件発明の技術的課題を解決し得るなどと言えないことは、技術常識から明らかである。
以上のことから、本件明細書の表4で示されている安息角の値と、本件発明の「安息角αが20°<α<45°である」との対応関係は何ら示されておらず、それゆえ、本件発明1の「具材(A)の湿重量の60.7?100重量%が、・・・安息角αが20°<α<45°である球状具材であり」という規定について、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとは認められない。
同様のことは、本件発明1を引用する本件発明2乃至6、並びに本件発明1と同様の規定がなされている本件発明7においても当て嵌まる。

イ 検討
上記(1)イ(ア)で述べたとおり、本件特許の請求項1及び7における「乾燥状態の具材」は、具材同士が粘着しない程度に乾燥し、安息角を測定することが可能な状態の具材と認められ、トッピング調味料に配合前の乾燥状態又は湿状態の具材から得たものか、配合後の湿状態の具材から得たものかを問うものではない。
そして、本件発明1ないし7は、その乾燥状態の具材について安息角αを求め、求められた安息角αが20°<α<45°であるか否かにより、具材が球状具材か非球状具材かを判別しているところ、「乾燥状態の具材」がトッピング調味料に配合前の乾燥状態又は湿状態の具材から得たものか、配合後の湿状態の具材から得たものかということが、具材が球状具材か非球状具材かを判別するのに影響があるとまでは認めることができない。
そうすると、本件発明1ないし7は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているものではない。

ウ まとめ
したがって、請求項1ないし7に係る特許は、申立理由2によって、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとすることはできない。

(3)特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)に係る特許異議申立理由(以下、「申立理由3」という。)について
ア 申立理由3の概要(特許異議申立書23頁1行ないし8行)
申立人の主張する申立理由3は、概略以下のとおりである。
本件明細書によれば、調味液に入れる前の状態で「安息角αが20°<α<45°である」という要件を満たす具材についても、調味液に入れられ膨潤された後に「球状具材」と「非球状具材」に振り分けられているものが存在するが、一体どのような基準で「球状具材」と「非球状具材」に振り分けているのか理解することが出来ないのであるから、本件発明1の「具材(A)の湿重量の60.7?100重量%が、・・・安息角αが20°<α<45°である球状具材であり」という要件を満たす調味料を過度な試行錯誤なく製造できるとは認められない。
同じことは、本件発明1を引用する本件発明2乃至6、並びに本件発明1と同様の規定がなされている本件発明7においても当て嵌まる。

イ 検討
上記(2)イで述べたとおり、本件発明1ないし7は、乾燥状態の具材について安息角αを求め、求められた安息角αが20°<α<45°であるか否かにより、具材が球状具材か非球状具材かを判別しているところ、「乾燥状態の具材」がトッピング調味料に配合前の乾燥状態又は湿状態の具材から得たものか、配合後の湿状態の具材から得たものかということが、具材が球状具材か非球状具材かを判別するのに影響があるとまでは認めることができない。
そして、本件特許の明細書には、その段落【0022】ないし【0024】及び【0037】において、「乾燥状態の具材を、注入法で、具材を保持するための保持縁を持つ固定された半径r(cm)の円板上で対称性のある略円錐状の積層体を形成させた際の、保持縁の最高部と略円錐状の積層体の最高部との差分である高さH(cm)を測定することによって、「tanα=H/r」から求められる安息角α」が「20°<α<45°である」か否かによって、具材が球状具材であるか、非球状具材であるかの判別をすることについて、具体的な説明がされている。
そうすると、過度な試行錯誤なく本件発明1ないし7の技術的範囲に属する調味料を製造できるものと認められ、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1ないし7について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているものである。

ウ まとめ
したがって、請求項1ないし7に係る特許は、申立理由3によって、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとすることはできない。

第7 むすび
したがって、請求項1ないし7に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由並びに証拠によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-08-29 
出願番号 特願2016-5349(P2016-5349)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (A23L)
P 1 651・ 536- Y (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小倉 梢  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 槙原 進
莊司 英史
登録日 2017-10-13 
登録番号 特許第6224741号(P6224741)
権利者 株式会社Mizkan 株式会社Mizkan Holdings
発明の名称 球状具材含有トッピング調味料  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  
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