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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 B66B 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B66B 審判 全部申し立て 2項進歩性 B66B |
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管理番号 | 1343936 |
異議申立番号 | 異議2018-700441 |
総通号数 | 226 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-10-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-06-01 |
確定日 | 2018-09-14 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6244273号発明「情報表示装置及び情報表示システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6244273号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6244273号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成26年6月30日に特許出願され、平成29年11月17日に特許の設定登録がされ、同年12月6日に特許掲載公報が発行され、その後、平成30年6月1日に、その請求項1?4に係る特許に対し特許異議申立人佐久間都子(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1?4の特許に係る発明は、それぞれその特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下、「本件発明1」?「本件発明4」という。)。 「【請求項1】 エレベーターの乗りかごの位置表示あるいは行き先階情報の少なくとも1つを表示するエレベーター情報表示領域と、 エレベーター利用者に提供するコンテンツを切り替えて表示するコンテンツ切り替え表示領域と、 前記エレベーター利用者に提供する前記コンテンツを常時表示するコンテンツ常時表示領域と、 を備え、前記エレベーターの乗りかごまたはエレベーターホールの少なくとも一方に設置され、前記エレベーター利用者に情報を表示する情報表示装置において、 前記コンテンツ切り替え表示領域には、前記コンテンツが一定時間ごとに切り替えて表示され、 前記コンテンツ常時表示領域には、前記コンテンツ切り替え表示領域に表示される前記コンテンツのうちアイコンにて認知可能なコンテンツが表示される ことを特徴とする情報表示装置。 【請求項2】 請求項1に記載の情報表示装置において、 前記コンテンツには天気予報が含まれる ことを特徴とする情報表示装置。 【請求項3】 請求項1又は2に記載の情報表示装置において、 前記コンテンツ常時表示領域に表示される前記コンテンツは、必要に応じ個別に更新表示される ことを特徴とする情報表示装置。 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の情報表示装置を含む顧客ビルと、 公衆回線網を介して前記顧客ビルの遠隔監視装置と接続された遠隔監視センターと、 前記遠隔監視センターに前記コンテンツを配信するコンテンツ配信サービスと、 を備えた情報表示システム。」 第3 申立理由の概要 1 申立理由1 異議申立人は、証拠として下記の甲第1?8号証を提出し、本件発明1?4は、甲第1?8号証に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件発明1?4に係る特許を取り消すべきものである旨を主張している。 甲第1号証:特開2014-28696号公報 甲第2号証:特開2001-302119号公報 甲第3号証:特開2005-314115号公報 甲第4号証:特開2013-177222号公報 甲第5号証:特開平3-282494号公報 甲第6号証:特開2006-33741号公報 甲第7号証:日本オーチス・エレベータ株式会社、「OTIS 機械室レスフラットベルト式住宅用エレベータ GeN2」、2013年11月、1ページ?32ページ 甲第8号証:米国特許出願公開第2009/0057069号明細書 2 申立理由2 異議申立人は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1?4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、本件発明1?4に係る特許は、特許法第36条第4項第1項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである旨を主張している。 3 申立理由3 異議申立人は、本件発明1?4は発明の詳細な説明に記載したものでなく、本件発明1?4に係る特許は、特許法第36条第6項第1項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである旨を主張している。 4 申立理由4 異議申立人は、本件発明1?4は明確でなく、本件発明1?4に係る特許は、特許法第36条第6項第2項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである旨を主張している。 第4 甲各号証の記載 1 甲第1号証 甲第1号証の【図1】及び【図6】を参照すると、モニタ装置4はエレベータの乗りかごに設置されていること、及び日時表示部45は、画像表示部44が切り替えられても常に現在の日時を表示していることが分かる。 甲第1号証には、上記事項及び特に段落【0001】、【0019】?【0025】、【0028】?【0032】、【図1】及び【図3】?【図6】の記載を総合し、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、実施例1として次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「エレベーターの乗りかご1の現在位置を表示するかご位置表示部42と、 利用者への提示情報、注意情報、背景画像情報を切り替え表示して所定の画像を表示する画像表示部44と、 画像表示部44が切り替えられても常に現在の日時を表示する日時表示部45と、 を備え、前記エレベータの乗りかご1に設置され、利用者向けに有効な情報を表示するモニタ装置4において、 前記画像表示部44には、提示情報、注意情報、背景画像情報を、エレベータの状態信号に応じて切り替えて表示される モニタ装置4。」 2 甲第2号証 甲第2号証(特に、段落【0009】、【0020】、【0022】及び【図2】?【図4】を参照。)には、「エレベータ制御システム」に関して、エレベータのかご表示部24及び各階ホール3のホール表示部28における表示を、エレベーター階床やエレベーター走行方向等のエレベーター運行情報表示欄と、年月日及び時刻等の計時情報表示欄と、各種メッセージを表すメッセージ表示欄とから構成することが開示されている。 3 甲第3号証 甲第3号証(特に、段落【0027】、【0029】、【0044】及び【図1】を参照。)には、「エレベータシステム」に関して、エレベータ籠5内の表示部1の表示領域2?4に、コンテンツC1?C3をそれぞれ表示すること、及び時間によって表示コンテンツを切替えることが記載されている。 4 甲第4号証 甲第4号証(特に、段落【0014】、【0015】、【0021】?【0023】、【図1】及び【図2】を参照。)には、「エレベーター装置及びエレベーター装置の乗りかご内の情報表示方法」に関して、センタ51は、公衆通信回線等のネットワーク50を介して接続されるビル100に情報を提供すること、ビル100のエレベータのかご160に表示装置163を備えていること、及び表示装置163に月日及び現在時刻204を表示することが記載されている。 5 甲第5号証 甲第5号証には、「表示案内装置」に関して、次の事項が記載されている。 (1)「1.情報の表示指令と表示情報を出す表示制御手段と、前記表示指令に基づいて表示画面に表示情報をスクロール表示する表示手段を備えた表示案内装置において、前記表示制御手段は、前記表示情報の主題を示すシンボル絵およびタイトルの少なくとも一方を表示手段に伝送する手段を備え、前記表示手段は表示指令に基づいて前記表示画面の所定の領域に前記シンボル絵およびタイトルを少なくとも一方と表示情報を同時に表示する手段を備えていることを特徴とする表示案内装置。 2.上記請求項第1項において、上記所定の領域とは、表示画面を複数に分割したものであり、上記表示手段は表示画面上で、シンボル絵およびタイトルを表示情報より上位となる領域に表示させるものであることを特徴とする表示案内装置。 3.上記請求項第1項において、表示情報は表示手段が設置される乗物の運転情報と該運転情報以外の一般情報であり、前記表示制御手段は、運転情報および一般情報のいずれかの表示指令がないことを確認して、他方の表示指令を出す手段を備えていることを特徴とする表示案内装置。 4.表示画面の所定の領域に表示情報をスクロール表示し、上記表示情報の主題を示すシンボル絵とタイトルの少なくともいずれかを停止表示する表示手段を備えたことを特徴とする表示案内装置。 5.乗物の運転制御を行いつつ表示指令を出す運転制御装置、一般情報および運転情報を上記表示指令に基づいて表示装置より表示させる情報制御装置、該情報制御装置の指示に基づいて、上記一般情報または運転情報をスクロールでまたそれらの情報の主題を示すシンボル絵およびタイトルの少なくとも一方を停止させて表示画面の所定の領域に表示する表示装置、上記運転情報を格納しそれを上記情報制御装置に提供する補助記憶媒体、一般情報を上記情報制御手段に提供する手段を少なくとも有することを特徴とする表示案内装置。」(1ページ左下欄5行?2ページ左上欄5行) (2)「〔課題を解決するための手段〕 本発明では、上記目的を達成するために、伝達する情報の主題を示すシンボル絵、タイトルの少なくとも一方を情報内容と同一画面上に常に表示させる制御を行う手段を設けたことにある。 〔作用〕 表示器は、情報内容がスクロールであつても、そのシンボル絵あるいはタイトルを常に表示しているため、途中から見ても、シンボルおよびタイトルにより、スクロール中の情報の主題を理解できるため表示器への注目度は高まり、情報の伝達効率が高い表示となる。」(2ページ右上欄13行?左下欄4行) (3)「本発明は、エレベーターや車両等表示器が設置される場所に関係なく適用が可能とあるが、本実施例では列車の場合について説明する。」(2ページ左下欄7行?9行) (4)「車上情報制御装置7から伝送端末11を介して入力された表示指示をもとに、表示パネル1201上にデーターを書込むことにより、表示画面に任意の絵および文字を表示できる。 次駅案内および速度等の運転情報や、天気予報等の一般情報は、文字によつて表示してもよいし、図形、絵模様により表示してもよい。更には、文字と図形、絵模様を同時に表示してもかまわない。」(3ページ右下欄13行?20行) (5)「第13図は、第11図の表示画面編集データーにより表示する画面の分割および各領域の表示内容を示し、第14図は実際に一般情報である天気予報の情報表示の一例を示す。登録番号1は表示している情報のシンボル絵を表示し、登録番号2は、情報のタイトル、登録番号3は情報内容を流動で表示する。この様に一枚の画面を分割し表示している情報のシンボル絵、情報タイトルを常に表示することにより、表示を見る人は、自分が必要とする情報かどうかの判別が即座にできる他、見る人に興味を持たせることができ、注目度は向上する。」(5ページ左上欄4行?15行) (6)「尚、本発明は、列車以外のバスやエレベーター,エスカレーター等各種の乗物にも適用できる。」(5ページ右上欄4行?5行) (7)第14図を参照すると、表示画面を分割し、分割した右側に表示情報を文字により表示し、分割した左側に当該表示情報の主題を表すシンボル絵を表示したものが看取される。 6 甲第6号証 甲第6号証には、「ディジタル放送受信装置」に関して、次の事項が記載されている。 (1)「【請求項1】 ディジタル方式の放送電波を受信・選局する受信選局手段と、 この受信選局した放送電波に含まれるデータ放送ストリームを復号して、データ放送用の文字データと画像データをそれぞれ取得する取得手段と、 図形パターンと、この図形パターンの読みデータを対応付けて記憶する記憶手段と、 前記取得した画像データと前記記憶手段に記憶された情報とを照合することで、前記画像データに含まれる各々の図形パターンの読みデータを検索する手段と、 前記取得した文字データと前記検索した読みデータとをもとに、音声読み上げ対象の文章データを生成する手段と、 この生成した文章データを音声データに変換する変換手段と を具備したことを特徴とするディジタル放送受信装置。 (2)「【請求項11】 前記文章生成手段は、 前記取得したデータ放送用の文字データおよび画像データに含まれる図形パターンの表示形式、表示サイズおよび表示位置情報のうち少なくとも1つの要素にもとづいて決定された順序により、前記読み上げ用の文章データを生成することを特徴とする請求項1に記載のディジタル放送受信装置。 【請求項12】 前記文章生成手段は、 前記取得したデータ放送用の文字データの表示形式、表示サイズおよび表示位置情報のうち少なくとも1つの要素にもとづいて決定した順序により、前記読み上げ用の文章データを生成する ことを特徴とする請求項2に記載のディジタル放送受信装置。」 (3)「【0012】 図2は、データ放送ストリームのモニタ表示例を示す図である。 データ放送デコーダ8がデータ記憶部7から読み出したデータ放送ストリームは、表示部11に表示する画面(図2参照)における文字データや画像データなどの表示位置情報などが記述されるBML(Broadcasting Markup Language)ファイル、表示部11に表示するための文字データが定義されるバイナリテーブル(Binary Table)ファイル、および表示部11に表示する画像データを示す図形ファイルを含む。 【0013】 図2に示したモニタ表示例では、ニュースと天気予報を表示しており、この表示内容は、BMLファイル(ファイル名“news.bml”)、ニュース本文の文字データを定義するバイナリテーブルファイル(ファイル名“news.tbl”)、ニュースタイトルロゴの画像データを示す図形ファイル(ファイル名“title.png”)、および、天気の種別の画像データを示す図形ファイル(ファイル名“weather.png”)をもとに、データ放送デコーダ8が制御する。」 (4)「【0068】 次に、本発明の第4の実施形態にしたがった車載用放送受信装置の動作について説明する。 図13は、本発明の第4の実施形態にしたがった車載用放送受信装置の表示部11に表示される第1の表示画面の例を示す図である。 【0069】 図14は、本発明の第4の実施形態にしたがった車載用放送受信装置の読み上げ文生成部24が取得した情報である、第1の表示画面中の音声読み上げ可能な情報を記述したテキストファイルの一例を示す図である。図14に示したテキストファイルは、図13に示した第1の表示画面中のニュースタイトル、天気予報、およびニュース本文の内容およびこれらの表示位置の情報を含む。」 (5)「【0073】 図15は、本発明の第4の実施形態にしたがった車載用放送受信装置の表示部11に表示される第2の表示画面の例を示す図である。この第2の表示画面は、前述した第1の表示画面中の“次のニュース>”に関連付けられているイベント(onclick=”pageUp();”)を、制御部1が自動的に発行することにより表示される。 【0074】 図16は、本発明の第4の実施形態にしたがった車載用放送受信装置の読み上げ文生成部24が取得した、第2の表示画面中の音声読み上げ可能な情報を記述したテキストファイルの一例を示す図である。図16に示したテキストファイルは、図15に示した第2の表示画面中のニュースタイトル、天気予報、およびニュース本文の内容およびこれらの表示位置の情報を含む。」 (6)【図2】には、ディジタル放送受信装置のモニタにおけるモニタ表示例が示されており、また、【図13】及び【図15】には、それぞれ表示画面の例が示されており、これらの図面を参照すると、表示画面の例が異なると、表示画面の中央のニュース本文の内容は変更されているのに対して、表示画面の左上のニュースタイトルのロゴ、及び同右上の天気の種別の図形は、その内容及び表示位置が変更されていないことが看取される。 また、【図13】においては、ニュース本文に「本日午後にも来年度予算案衆院通過の見込み」と表示され、【図15】においては、ニュース本文に「台風21号が静岡県沖を北上中」と表示されているのが分かる。 7 甲第7号証 甲第7号証は、「機械室レスフラットベルト式住宅用エレベータ」に関する資料であり、その16ページの「かご内コーディネート例」の右上端には、かご内操作盤の液晶タイプのインジケータが、18ページの「乗場コーディネート例」の左下には、乗場モニターを配した例が、それぞれ記載されている。 また、4ページ6行?8行には、遠隔監視装置によりフラットベルトを監視することが記載されている。 8 甲第8号証 甲第8号証の段落[0023]には、エレベータを待っている、又は乗車している視聴者に週間天気予報を図と説明文で伝えることが記載されている。 第5 判断 1 申立理由1について (1)本件発明1について 本件発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「乗りかご1の現在位置を表示する」ことと、本件発明1の「乗りかごの位置表示あるいは行き先階情報の少なくとも1つを表示する」こととは、「乗りかごの位置表示を表示する」点において一致する。そして、甲1発明の「エレベーターの乗りかご1の現在位置を示すかご位置表示部42」は、本件発明1の「エレベーターの乗りかごの位置表示を表示するエレベーター情報表示領域」に相当する。 甲1発明の「利用者への提示情報、注意情報、背景画像情報を切り替え表示して所定の画像を表示する画像表示部44」は、本件発明1の「エレベーター利用者に提供するコンテンツを切り替えて表示するコンテンツ切り替え表示領域」に相当する。 甲1発明の「画像表示部44が切り替えられても常に現在の日時を表示する日時表示部45」は、現在の日時の情報を常時表示するものであるので、本件発明1の「エレベーター利用者に提供する前記コンテンツを常時表示するコンテンツ常時表示領域」と「エレベーター利用者に情報を常時表示する常時表示領域」である限りで共通する。 甲1発明の「エレベータの乗りかご1に設置され」ることと、本件発明1の「エレベーターの乗りかごまたはエレベーターホールの少なくとも一方に設置され」ることとは、「エレベータの乗りかごに設置され」ることにおいて一致する。そして、甲1発明の「前記エレベータの乗りかご1に設置され、利用者向けに有効な情報を表示するモニタ装置4」は、本件発明1の「前記エレベーターの乗りかごに設置され、前記エレベーター利用者に情報を表示する情報表示装置」に相当する。 甲1発明の「前記画像表示部44には、提示情報、注意情報、背景画像情報を」「切り替えて表示」されることは、本件発明1の「前記コンテンツ切り替え表示領域には、前記コンテンツが」「切り替えて表示」されることに相当する。 以上のことから、本件発明1と甲1発明とは次の点で一致する。 「エレベーターの乗りかごの位置表示を表示するエレベーター情報表示領域と、 エレベーター利用者に提供するコンテンツを切り替えて表示するコンテンツ切り替え表示領域と、 前記エレベーター利用者に提供する情報を常時表示する常時表示領域と、 を備え、前記エレベーターの乗りかごに設置され、前記エレベーター利用者に情報を表示する情報表示装置において、 前記コンテンツ切り替え表示領域には、前記コンテンツが切り替えて表示される 情報表示装置。」 一方で、両者は次の点で相違する。 [相違点1] コンテンツ切り替え表示領域におけるコンテンツの表示に関して、本件発明1においては、「一定時間ごとに切り替えて表示」されるのに対して、 甲1発明においては、「エレベータの状態信号に応じて切り替えて表示」される点。 [相違点2] 本件発明1においては、「コンテンツ常時表示領域」は「前記コンテンツ」を常時表示する構成、及び、「前記コンテンツ常時表示領域には、前記コンテンツ切り替え表示領域に表示される前記コンテンツのうちアイコンにて認知可能なコンテンツが表示される」との構成を備えているのに対して、 甲1発明においては、かかる構成を備えておらず、日時表示部45には、現在の日時のみが表示される点。 上記相違点について検討する。 事案に鑑み、上記相違点2について先に検討する。 本件特許明細書には、「例えば、エレベーターの乗りかごに乗って移動する時間を考えた場合、乗車時間は短く、最大最下階から最上階までの階床間の移動時間である。また、一般的に、エレベーター利用者のそれぞれの知りたい情報は異なるため、一定時間毎に画面を切り替えると、エレベーター利用者は、切り替えのタイミング次第では自分にとって有用な情報を一切見ることなくエレベーターを降車することもある。」(段落【0005】)、「そこで、本発明が解決しようとする課題は、不特定多数の利用者に対して、短い時間で効率よく情報提供を行うことができるようにすることにある。」(段落【0006】)、「コンテンツ切り替え表示領域32には、エレベーター利用者に提供するコンテンツ表示として、例えば図1のコンテンツ配信サービス9より取得した天気予報やニュースなどが表示される。この領域は、一定時間毎に表示内容が切り替えられる。この領域は、各種コンテンツを予め設定した優先順位に基づき一定時間毎に表示切り替えを行うため、利用客によっては見ることができない場合もある。しかし、ニュースのような文字列を表示するコンテンツや、絵や図からなるコンテンツの場合は、利用客に認知してもらう表示として必要な領域となる。」(段落【0018】)、「しかし、全ての利用客が短い乗車時間の中で見ることができるとは限らない。そのため、本実施形態では、コンテンツ常時表示領域33に晴れや雨など天気を表すアイコン33bを、前記詳細な情報に代えて表示させる。また、各アイコン表示内容はそれぞれ個別更新可能であり、他のアイコンや領域とは別の更新頻度にて最新の情報表示を行うことができる。」(段落【0019】)、及び「このように構成することで、エレベーターの短い乗車時間においても簡易的に天気予報を確認することができ、また、比較的長い乗車時間を有する乗客においては、詳細な情報も合わせて見ることが可能となる。 」(段落【0020】)と記載されている。 そうすると、本件発明1においては、一定時間毎に表示切り替えられるコンテンツの内容を、アイコンで常時表示することにより、エレベータ利用者が短い乗車時間で、簡易的に情報を確認できるようにするためのものといえる。 ア 甲第2号証について 甲第2号証には、メッセージ表示欄に表示されるメッセージに関連した情報を、アイコンにして常時表示することについては、記載も示唆もされていない。 そうすると、甲第2号証に記載された事項は、上記相違点2に係る本件発明1の構成について示唆するものではない。 イ 甲第3号証について 甲第3号証に記載された事項は、エレベータ籠5内の表示部1の表示領域2?4に、コンテンツC1?C3をそれぞれ表示し、時間によって表示コンテンツを切り替えることを開示しているものの、コンテンツC1?C3は互いに関連するものではないし、1つのコンテンツの内容をアイコンにして常時表示するものでないから、甲第3号証に記載された事項は、上記相違点2に係る本件発明1の構成について示唆するものではない。 ウ 甲第4号証について 甲第4号証には、メッセージ表示欄に表示されるメッセージに関連した情報を、アイコンにして常時表示することについては、記載も示唆もされていない。 そうすると、甲第4号証に記載された事項は、上記相違点2に係る本件発明1の構成について示唆するものではない。 エ 甲第5号証について 甲第5号証には、表示画面を3つに分割し、1つの領域に表示情報を表す文字をスクロールさせ、他の2つの領域に表示情報の主題を表すシンボル絵とタイトルを、それぞれ同時に表示することにより、途中からみても、シンボル絵又はタイトルによりスクロール中の情報の主題を理解できることが開示されている(前記「第4 5」を参照。)。 しかし、スクロール表示されている情報の内容をシンボル絵とタイトルで表示するから、当該シンボル絵とタイトルは、スクロール表示する情報と同時に切り替わるものであって、常時表示とはいえない。 そうすると、甲1発明に適用しても、シンボル絵は常時表示とはならない。 また、甲1発明の日時表示部45は、常に表示されてはいるものの、日時を表示するためのものにすぎず、当該表示部に、日時以外の他のコンテンツを表示することについては、甲第1号証に記載も示唆もされていない。 そうすると、甲1発明に甲第5号証に記載された事項を適用しても、甲1発明におけるモニタ画面40の分割した1つの領域に表示情報を文字により表示し、分割した他の領域に当該表示情報の主題を表すシンボル絵を表示させ、これらを同時に切り替えるものとなり、表示情報の主題を表すシンボル絵のみを常時表示するものとはならず、また、甲1発明の「日時表示部45」にシンボル絵のみを常時表示する構成にする動機付けもない。 したがって、甲第5号証に記載された事項は、上記相違点2に係る本件発明1の構成について示唆するものではない。 オ 甲第6号証について 甲第6号証には、「デジタル放送受信装置」に関して、放送電波に含まれるデータ放送ストリームから、文字データと画像データをそれぞれ取得し、文字データと画像データから読み上げ用の文書データを作成することが記載されており、甲第6号証の属する技術分野は、甲1発明と異なる。 また、甲第6号証には、「ディジタル放送受信装置」の表示画面の例として、【図2】、【図13】及び【図15】でニュース本文(文字データ)とともに、天気予報の種別のシンボル(画像データ)表示を行っており、特に、【図15】においては、表示画面の例のニュース本文に台風情報が表示されることが記載されている(前記「第4 6」を参照。)ものの、甲第6号証には、文字データと画像データとの間に関連性があることが記載ないし示唆されていない。 そうすると、技術分野が異なることから、甲1発明に甲第6号証に記載された事項を組み合わせる動機付けはなく、また、組み合わせたとしても、アイコンにより関連するコンテンツの表示がなされるものではない。 したがって、甲第6号証に記載された事項は、上記相違点2に係る本件発明1の構成について示唆するものではない。 カ 甲第7号証について 甲第7号証に記載された事項は、エレベータの、かご内操作盤の液晶タイプのインジケータ、及び乗場モニターを開示しているものの、エレベータ利用者に提供するコンテンツをアイコンにして常時表示することについては、記載も示唆もされていない。 そうすると、甲第7号証に記載された事項は、上記相違点2に係る本件発明1の構成について示唆するものではない。 キ 甲第8号証について 甲第8号証に記載された事項は、スクリーン54に天気予報のアイコンを表示することを開示しているものの、エレベータ利用者に提供するコンテンツをアイコンにして常時表示することについては、記載も示唆もされていない。 そうすると、甲第8号証に記載された事項は、上記相違点2に係る本件発明1の構成について示唆するものではない。 ク 小括 以上のことから、引用発明を上記相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、甲第2?8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲第2?8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (2)本件発明2?4について 本件発明2?4は、本件発明1を更に減縮したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、甲第1?8号証に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (3)小括 以上のことから、異議申立人が主張する申立理由1は、理由がない。 2 申立理由2について 異議申立人は、本件発明1の「前記コンテンツ常時表示領域には、前記コンテンツ切り替え表示領域に表示される前記コンテンツのうちアイコンにて認知可能なコンテンツが表示される」ことに関して、コンテンツの中に詳細情報と、詳細情報のうち関連する情報(以下、「関連情報」という。)とが存在するか、あるいは詳細情報のみが存在するかを判定する機能(以下、「機能1」という。)が必要であるが、本件特許明細書には当該機能について記載されておらず、 コンテンツの中に詳細情報と関連情報とが含まれると判定した場合に、コンテンツ常時表示領域33にアイコンとして表示する関連情報を選別する機能(以下、「機能2」という。)が必要であるが、本件特許明細書には当該機能について記載されておらず、 関連情報が顧客ビル1が存在する地域と、それ以外の地域とが混在している場合に、コンテンツ常時表示領域32に表示するアイコンとして表示される情報を選定する機能(以下、「機能3」という。)が必要であるが、本件特許明細書には当該機能について記載されておらず、 コンテンツ配信サービス9が、詳細情報とともに、顧客ビル1が存在する地域の関連情報(以下、「特定の関連情報」という。)を配信している場合には、詳細情報と特定の関連情報との関連付けが必要であるが、本件特許明細書には当該関連付けについて記載されておらず、また、詳細情報と特定の関連情報とに偶然関連性が見出されるような場合であっても、本件特許の権利範囲内に存することとなり、権利範囲として不等な範囲を包含するものであり、 したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1?4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、本件発明1?4に係る特許は、特許法第36条第4項第1項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである旨を主張している。 本件特許明細書には、「コンテンツ配信サービス9から遠隔監視センター8側に配信される天気予報、ニュースといったコンテンツは、受信処理装置10で取得し、データ格納装置11に格納後、配信処理装置12で配信先及び配信内容を選定する。そして、選定された配信先及び配信内容が通信装置13と公衆回線網7を介して配信対象の顧客ビル1に対してコンテンツ配信を行う。顧客ビル1の遠隔監視装置6は遠隔監視センター8より受信した各種コンテンツを情報制御装置4に伝送する。情報表示制御装置4は情報表示装置3に対して表示設定を行う。 」(段落【0014】)、及び「・・・コンテンツ配信サービル9から遠隔監視センター8に配信される各種コンテンツを遠隔監視センター8で選定して顧客ビル1の遠隔監視装置6に配信し・・・」(段落【0027】)と記載されている。 上記の記載から、本件特許明細書には、顧客ビル1の遠隔監視装置6に配信するコンテンツを、遠隔監視センター8で選定することが開示されているといえる。 ここで、「詳細情報」に関連した「特定の関連情報」を、遠隔監視センター8で選定し、顧客ビル1の遠隔監視装置6に配信することは、十分に予測し得ることといえる。 そうすると、たとえ発明の詳細な説明に、上記機能1?3、及び詳細情報と特定の関連情報との関連付けについて記載されていなくとも、本件発明1?4を当業者は実施できると解される。 なお、特許法第36条第4項第1項の規定は、発明の詳細な説明の記載は、「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものがその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである必要があること」であるところ、異議申立人の、詳細情報と関連情報とに偶然関連性が見出されるような場合であっても、本件特許の権利範囲内に存することとなり、権利範囲として不等な範囲を包含する旨の主張は、上記特許法第36条第4項第1項の規定と関係するものとはいえないので、採用しない。 以上のことから、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、特許法第36条第4項第1項に規定する要件を満たすものである。 よって、異議申立人が主張する申立理由2は、理由がない。 3 申立理由3について 異議申立人は、上記申立理由2に関連して、本件発明1の「前記コンテンツ常時表示領域には、前記コンテンツ切り替え表示領域に表示される前記コンテンツのうちアイコンにて認知可能なコンテンツが表示される」について、本件特許明細書の発明の詳細な説明に何ら記載されていないので、本件発明1?4は発明の詳細な説明に記載したものでなく、したがって、本件発明1?4に係る特許は、特許法第36条第6項第1項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである旨を主張している。 本件特許明細書の段落【0019】には、天気予報を表示する場合として、コンテンツ切り替え表示領域に表示される前記コンテンツについては、「晴れや雨などといった天気を表す図」とともに、「最高最低気温や降水確率を表示する」及び「今日と明日の天気予報を合わせて表示する」ことが例示されており、また、コンテンツ常時表示領域のアイコンにて認知可能なコンテンツについては、「晴れや雨など天気を表すアイコン33b」を表示することが例示されている。 そうすると、本件発明1の「前記コンテンツ常時表示領域には、前記コンテンツ切り替え表示領域に表示される前記コンテンツのうちアイコンにて認知可能なコンテンツが表示される」について、発明の詳細な説明に具体的に記載されているといえる。 なお、異議申立人は、申立理由2に関連して、申立理由3を主張している。 しかし、申立理由3は、上述のとおり、申立理由2と関係なく判断できるものであるから、異議申立人の上記主張は採用しない。 したがって、本件発明1?4は発明の詳細な説明に記載したものであり、特許法第36条第6項第1項に規定する要件を満たすものである。 よって、異議申立人が主張する申立理由3は、理由がない。 4 申立理由4について 異議申立人は、上記申立理由2に関連して、発明の詳細な説明には、コンテンツのうちアイコンにて認知可能なコンテンツの選択方法について、何ら記載、示唆されていないので、課題の解決手段が不明確であり、したがって、本件発明1?4に係る特許は、特許法第36条第6項第2項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである旨を主張している。 特許法第36条第6項第2項の規定は、特許請求の範囲の記載に関して「特許を受けようとする発明が明確であること」であるところ、本件発明1には、コンテンツ常時表示領域に表示するコンテンツの選択について、「前記コンテンツ切り替え表示領域に表示される前記コンテンツのうちアイコンにて認知可能なコンテンツ」と、明確に記載されている。 そして、上記アイコンにて認知可能なコンテンツが、コンテンツ常時表示領域に表示されることにより、「前記コンテンツ常時表示領域33には、日時情報33aあるいはアイコン33bにて認知可能なコンテンツの少なくとも一方が常時表示されるので、短い乗車時間においても簡易的に必要な日時情報33aあるいはアイコン33bにより示される天気情報等を確認することができる」(本件特許明細書の段落【0025】)ので、「不特定多数の利用者に対して、短い時間で効率よく情報提供を行うことができる」(本件特許明細書の段落【0008】)という効果を奏することができるから、課題の解決手段も明確であるといえる。 なお、異議申立人は、申立理由2に関連して、申立理由4を主張している。 しかし、申立理由4は、上述のとおり、申立理由2と関係なく判断できるものであるから、異議申立人の上記主張は採用しない。 したがって、本件発明1、及び本件発明1を引用する本件発明2?4は、特許を受けようとする発明が明確であるから、特許法第36条第6項第2項に規定する要件を満たすものである。 よって、異議申立人が主張する申立理由4は、理由がない。 第6 むすび したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2018-09-03 |
出願番号 | 特願2014-134406(P2014-134406) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(B66B)
P 1 651・ 537- Y (B66B) P 1 651・ 536- Y (B66B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 有賀 信 |
特許庁審判長 |
平田 信勝 |
特許庁審判官 |
小関 峰夫 内田 博之 |
登録日 | 2017-11-17 |
登録番号 | 特許第6244273号(P6244273) |
権利者 | 株式会社日立ビルシステム |
発明の名称 | 情報表示装置及び情報表示システム |
代理人 | 特許業務法人 武和国際特許事務所 |