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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する G06F
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する G06F
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する G06F
管理番号 1344145
審判番号 訂正2018-390096  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2018-06-13 
確定日 2018-08-22 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5935081号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5935081号の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、〔3、4〕、〔5、6〕について訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5935081号の請求項1-6に係る特許についての出願は、平成25年4月18日(国内優先権主張 平成24年4月18日)を国際出願日とする出願であって、平成28年5月20日にその特許権の設定登録がされ、その特許に対し、平成30年6月13日に本件訂正審判が請求された。

第2 請求
1.請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第5935081号の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、〔3、4〕、〔5、6〕について、一群の請求項ごとに訂正することを認める、との審決を求めるものである。

2.訂正の内容
(1)一群の請求項1、2に係る訂正
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「コンピュータにおける入力制御方法であって、」と記載されているのを、「表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うことでコンピュータにおける操作入力の多様性を高める入力制御方法であって、」に訂正する。(請求項1を引用する請求項2も同様に訂正する。)

イ 訂正事項2
願書に添付した明細書の段落【0036】の「この場合、後述する力判定部102dは、接触時に所定の力を判定し、非接触時に所定の力を判定しないこととしてもよい。」との記載、段落【0039】の「この場合、表示画面に対して非接触の場合に、所定の押下力または摩擦力が検出されないものとし、表示画面に対して接触があった場合に、所定の押下力または摩擦力があったものとして検出してもよい。」との記載、段落【0077】の「(付記8) 付記3に記載のコンピュータにおいて、前記表示手段と前記位置入力手段は、フローティングタッチ機能付きタッチパネルであって、前記力判定手段は、前記表示手段への接触入力を検出した場合に、前記所定の摩擦力または押下力を検出したものとすること、を特徴とするコンピュータ。」との記載を削除する。

(2)一群の請求項3、4に係る訂正
ア 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3の最初に「表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うことで操作入力の多様性を高めた情報処理装置であって、」との記載を追加する。(請求項3を引用する請求項4も同様に訂正する。)

イ 訂正事項4
願書に添付した明細書の段落【0036】の「この場合、後述する力判定部102dは、接触時に所定の力を判定し、非接触時に所定の力を判定しないこととしてもよい。」との記載、段落【0039】の「この場合、表示画面に対して非接触の場合に、所定の押下力または摩擦力が検出されないものとし、表示画面に対して接触があった場合に、所定の押下力または摩擦力があったものとして検出してもよい。」との記載、段落【0077】の「(付記8) 付記3に記載のコンピュータにおいて、前記表示手段と前記位置入力手段は、フローティングタッチ機能付きタッチパネルであって、前記力判定手段は、前記表示手段への接触入力を検出した場合に、前記所定の摩擦力または押下力を検出したものとすること、を特徴とするコンピュータ。」との記載を削除する。

(3)一群の請求項5、6に係る訂正
ア 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「コンピュータに実行させるためのプログラムであって、」と記載されているのを、「コンピュータにおける操作入力の多様性を高めるために、表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、」に訂正する。(請求項5を引用する請求項6も同様に訂正する。)

イ 訂正事項6
願書に添付した明細書の段落【0036】の「この場合、後述する力判定部102dは、接触時に所定の力を判定し、非接触時に所定の力を判定しないこととしてもよい。」との記載、段落【0039】の「この場合、表示画面に対して非接触の場合に、所定の押下力または摩擦力が検出されないものとし、表示画面に対して接触があった場合に、所定の押下力または摩擦力があったものとして検出してもよい。」との記載、段落【0077】の「(付記8) 付記3に記載のコンピュータにおいて、前記表示手段と前記位置入力手段は、フローティングタッチ機能付きタッチパネルであって、前記力判定手段は、前記表示手段への接触入力を検出した場合に、前記所定の摩擦力または押下力を検出したものとすること、を特徴とするコンピュータ。」との記載を削除する。

第3 当審の判断
1.請求項1、2に係る訂正について(独立特許要件以外)
(1)一群の請求項について
訂正前の請求項1、2は、訂正前の請求項1の記載を訂正前の請求項2が引用しているものであるから、一群の請求項である。
したがって、訂正特許請求の範囲の請求項1、2は、特許法第126条第3項に規定する一群の請求項である。

(2)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正後の請求項1は、訂正前の請求項1の「コンピュータにおける入力制御方法」に対して、「表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うことでコンピュータにおける操作入力の多様性を高める入力制御方法」と限定を加えたものであり、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2も同様である。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
訂正事項1の「表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うことで」、「操作入力の多様性を高める」ことは、本件明細書の段落【0057】?段落【0067】における【図6】のフローチャートの説明である「図6に示すように、まず、位置判定部102cは、タッチパネル114に対する接触を検出する(ステップSA-1)。・・・位置判定部102cによりタッチパネル114に対する接触が検出された場合(ステップSA-1,YES)、力判定部102dは、タッチパネル114に対して力Fが入力されたか否かを判定する(ステップSA-2)。・・・力判定部102dによりタッチパネル114に対する力Fが入力されたと判定された場合(ステップSA-2,YES)、表示制御部102aの表示態様変更部102bは、タッチパネル114に表示中の表示領域を遷移させる処理を行う(ステップSA-3)。・・・力判定部102dにより力Fの入力が検出されない場合(ステップSA-2,NO、または、ステップSA-4,NO)、表示制御部102aは、位置判定部102cにより更新判定される接触位置に従った処理(タッチ入力処理)を実行する。このタッチ入力処理は、タッチパネルに対して接触入力(スライド操作、タップ操作、フリック操作)があった場合に、実行される公知の情報処理であってもよい。」との記載、段落【0011】の「この発明によれば、従来のコンピュータにおいて、操作入力の多様性を高めることができる、入力制御方法、情報処理装置、および、プログラムを提供することができる。」との記載に基づくものである。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
また、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正事項1で「表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うこと」と訂正し、接触操作において、力入力を伴う場合と力入力を伴わない場合を区別したことに伴い、発明の詳細な説明において、接触を力入力と同一視して上記区別ができなくなるような記載を削除し、請求項の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図る訂正である。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項2は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、一群の請求項1、2について行うものであるのは明らかであるから、特許法第126条第4-6項の規定に適合するものである。

2.請求項3、4に係る訂正について(独立特許要件以外)
(1)一群の請求項について
訂正前の請求項3、4は、訂正前の請求項3の記載を訂正前の請求項4が引用しているものであるから、一群の請求項である。
したがって、訂正特許請求の範囲の請求項3、4は、特許法第126条第3項に規定する一群の請求項である。

(2)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正後の請求項3は、訂正前の請求項3の最初に「表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うことで操作入力の多様性を高めた情報処理装置であって、」との記載を追加し、訂正前の請求項3の情報処理装置を限定したものであり、訂正後の請求項3を引用する訂正後の請求項4も同様である。
したがって、訂正事項3に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
訂正事項3の「表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うことで操作入力の多様性を高めた情報処理装置」は、本件明細書の段落【0057】?段落【0067】における【図6】のフローチャートの説明である「図6に示すように、まず、位置判定部102cは、タッチパネル114に対する接触を検出する(ステップSA-1)。・・・位置判定部102cによりタッチパネル114に対する接触が検出された場合(ステップSA-1,YES)、力判定部102dは、タッチパネル114に対して力Fが入力されたか否かを判定する(ステップSA-2)。・・・力判定部102dによりタッチパネル114に対する力Fが入力されたと判定された場合(ステップSA-2,YES)、表示制御部102aの表示態様変更部102bは、タッチパネル114に表示中の表示領域を遷移させる処理を行う(ステップSA-3)。・・・力判定部102dにより力Fの入力が検出されない場合(ステップSA-2,NO、または、ステップSA-4,NO)、表示制御部102aは、位置判定部102cにより更新判定される接触位置に従った処理(タッチ入力処理)を実行する。このタッチ入力処理は、タッチパネルに対して接触入力(スライド操作、タップ操作、フリック操作)があった場合に、実行される公知の情報処理であってもよい。」との記載、段落【0011】の「この発明によれば、従来のコンピュータにおいて、操作入力の多様性を高めることができる、入力制御方法、情報処理装置、および、プログラムを提供することができる。」との記載に基づくものである。
したがって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
また、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正事項3で「表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うこと」と訂正し、接触操作において、力入力を伴う場合と力入力を伴わない場合を区別したことに伴い、発明の詳細な説明において、接触を力入力と同一視して上記区別ができなくなるような記載を削除し、請求項の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図る訂正である。
したがって、訂正事項4に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項4は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、一群の請求項3、4について行うものであるのは明らかであるから、特許法第126条第4-6項の規定に適合するものである。

3.請求項5、6に係る訂正について(独立特許要件以外)
(1)一群の請求項について
訂正前の請求項5、6は、訂正前の請求項5の記載を訂正前の請求項6が引用しているものであるから、一群の請求項である。
したがって、訂正特許請求の範囲の請求項5、6は、特許法第126条第3項に規定する一群の請求項である。

(2)訂正事項5について
ア 訂正の目的
訂正後の請求項5は、訂正前の請求項5の「コンピュータに実行させるためのプログラム」に対して、「コンピュータにおける操作入力の多様性を高めるために、表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理をコンピュータに実行させるためのプログラム」と限定を加えたものであり、訂正後の請求項5を引用する訂正後の請求項6も同様である。
したがって、訂正事項5に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
訂正事項5の「コンピュータにおける操作入力の多様性を高めるために、表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理をコンピュータに実行させる」ことは、本件明細書の段落【0057】?段落【0067】における【図6】のフローチャートの説明である「図6に示すように、まず、位置判定部102cは、タッチパネル114に対する接触を検出する(ステップSA-1)。・・・位置判定部102cによりタッチパネル114に対する接触が検出された場合(ステップSA-1,YES)、力判定部102dは、タッチパネル114に対して力Fが入力されたか否かを判定する(ステップSA-2)。・・・力判定部102dによりタッチパネル114に対する力Fが入力されたと判定された場合(ステップSA-2,YES)、表示制御部102aの表示態様変更部102bは、タッチパネル114に表示中の表示領域を遷移させる処理を行う(ステップSA-3)。・・・力判定部102dにより力Fの入力が検出されない場合(ステップSA-2,NO、または、ステップSA-4,NO)、表示制御部102aは、位置判定部102cにより更新判定される接触位置に従った処理(タッチ入力処理)を実行する。このタッチ入力処理は、タッチパネルに対して接触入力(スライド操作、タップ操作、フリック操作)があった場合に、実行される公知の情報処理であってもよい。」との記載、段落【0011】の「この発明によれば、従来のコンピュータにおいて、操作入力の多様性を高めることができる、入力制御方法、情報処理装置、および、プログラムを提供することができる。」との記載に基づくものである。
したがって、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
また、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項6について
訂正事項6は、訂正事項5で「表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理をコンピュータに実行させること」と訂正し、接触操作において、力入力を伴う場合と力入力を伴わない場合を区別したことに伴い、発明の詳細な説明において、接触を力入力と同一視して上記区別ができなくなるような記載を削除し、請求項の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図る訂正である。
したがって、訂正事項6に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項6は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、一群の請求項5、6について行うものであるのは明らかであるから、特許法第126条第4-6項の規定に適合するものである。

4.請求項1-6に係る訂正について(独立特許要件)
(1)本件発明1-6
上記訂正事項1、3、5に係る訂正は、上述したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるので、訂正後における特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される発明(以下、「本件発明1」、「本件発明2」、・・・、「本件発明6」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。
本件発明1-6は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うことでコンピュータにおける操作入力の多様性を高める入力制御方法であって、
表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出ステップと、
前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力ステップと、
前記位置入力ステップにて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、前記力入力検出ステップにて検出された前記力入力に応じて、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させ、当該変更結果を当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの記憶部に記憶させる変更ステップと、
を含むことを特徴とする入力制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の入力制御方法において、
前記力入力ステップは、
前記力の方向を、直接または間接的に検出し、
前記変更ステップは、
前記力の方向に応じて、前記表示態様を変更すること
を特徴とする入力制御方法。
【請求項3】
表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うことで操作入力の多様性を高めた情報処理装置であって、
表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出手段と、
前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力手段と、
前記位置入力手段にて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、前記力入力検出手段により検出された前記力入力に応じて、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させ、当該変更結果を当該表示対象に対する入力として記憶部に記憶させる変更手段と、
を備えたことを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の情報処理装置において、
前記力入力手段は、
前記力の方向を、直接または間接的に検出し、
前記変更手段は、
前記力の方向に応じて、前記表示態様を変更すること
を特徴とする情報処理装置。
【請求項5】
コンピュータにおける操作入力の多様性を高めるために、表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出ステップと、
前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力ステップと、
前記位置入力ステップにて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、前記力入力検出ステップにて検出された前記力入力に応じて、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させ、当該変更結果を当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの記憶部に記憶させる変更ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項6】
請求項5に記載のプログラムにおいて、
前記力入力ステップは、
前記力の方向を、直接または間接的に検出し、
前記変更ステップは、
前記力の方向に応じて、前記表示態様を変更すること
を特徴とするプログラム。」

(2)関連訴訟における無効の抗弁
本件特許(特許第5935081号)に関し、東京地方裁判所において侵害訴訟(平成29(ワ)014142)が提起され、特許法第168条第5項に基づき裁判所より、特許無効の抗弁がされた旨の通知があった。その理由は以下のとおりである。

無効理由1:(拡大先願違反)本件特許の請求項3に係る発明は、乙第3号証(PCT/US2012/035992号(国際公開WO2012/158337A1))に記載された発明と同一であり、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものであるから、無効とすべきものである。
(被告第2準備書面第29-47頁を参照。)
無効理由2:(新規性欠如)本件特許の請求項3に係る発明は、乙第8号証(特開2007-212975号公報)に記載された発明であり、特許法第29条第1甲第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、無効とすべきものである。
(被告第4準備書面第36-56頁を参照。)
無効理由3:(新規性欠如)本件特許の請求項3に係る発明は、乙第9号証(特開2009-98086号公報)に記載された発明であり、特許法第29条第1甲第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、無効とすべきものである。
(被告第4準備書面第56-73頁を参照。)
無効理由4:(新規性欠如)本件特許の請求項3に係る発明は、乙第10号証(特開2002-22472号公報)に記載された発明であり、特許法第29条第1甲第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、無効とすべきものである。
(被告第4準備書面第73-81頁を参照。)

(3)先願、引用例の記載事項
ア.先願1
上記無効理由1で引用された国際特許出願(以下、「先願1」という。)には、次の技術事項が記載されている。なお、下線は、当審にて付したものである。

「[0045] Fig. 5 illustrates a user 101 contacting the touch screen display 102 of computing device 100 with a force to select one of a plurality of overlaying interface elements. Computing device 100 is illustrated as a mobile phone or smart phone including a speaker 166 and microphone 164, but it should be understood that computing device 100 is not limited thereto. Fig. 5, by way of example, illustrates the touch screen display 102 displaying selectable entries 21 OA, 210B, and 2 IOC in an address book, where each entry includes overlaying interface elements in the form of a name 212, a telephone icon 214 and a text message icon 216. The contact of the user 101 with the touch screen display 102 is illustrated in Fig. 5 as a starburst 220.
Throughout this document the larger the size of the illustrated starburst, the greater the force that is being applied to the touch screen display 102. The contact by user 101 produces relatively little force, as detected by force sensors 106 (shown in Fig. 2), and thus the name 212 is determined to be selected, which may cause the computing device 100 to display, e.g., information about the desired entry. If desired, the touch screen display 102 may provide an indication of which of the overlying interface elements is selected based on the magnitude of the force, as illustrated by box 213. Additionally, if desired, acceptance of a selection of an interface element may be caused by the user 201 quickly removing the contact with the touch screen display 102. In other words, the termination of the contact with the touch screen display 102 is detected and used to accept the selection. Further, the user may retain contact with the touch screen display 102 but the detection of a change in the force level applied to the touch screen display 102 may be used to select another of the interface elements.
[0046] If the user 101 had applied greater force, as illustrated by starburst 222 on entry 210B, the telephone icon 214 for that entry would be selected. Selection of the telephone icon 214 may cause the touch screen display 102 to alter the display of the icon from semi-transparent to opaque, illustrated by the telephone icon 214 being darker than in other entries, or by generating a box 215 around the telephone icon 214 or any other desired manner. Selection of the telephone icon 214 may cause the computing device 100 to call the phone number associated with the entry.
[0047] Application of even greater force, illustrated by starburst 224, may result in selection of text messaging icon 216, which may be displayed by altering the display of the icon from semi-transparent to opaque, by generating a box 217 around the text icon 216 or in any other desired manner. Selection of the text icon 216 may cause the computing device 100 to initiate a text message to the number associated with the entry.
[0048] As can be seen in Fig. 5, the contact with the touch screen display 102, illustrated by starburst 220, 222, and 224, need not be directly on the specific element desired to be selected, rather the magnitude of the force of the contact is used to determine which interface element is selected. It should be noted, however, that the location of the contact on the touch screen display 102 may be used to determine which group of overlaying interface elements, e.g., which entry 210A, 210B, or 210C, is being selected. 」
(訳)「[0045]図5は、ユーザ101が力を入れてコンピューティング・デバイス100のタッチ・スクリーン・ディスプレイ102を触って複数の重なり合うインタフェース要素の1つを選択することを示す。コンピューティング・デバイス100はスピーカ166およびマイクロフォン164を含む携帯電話またはスマート・フォンとして示されているが、コンピューティング・デバイス100はそれに限られないことは理解される。図5は、例として、アドレス帳の中の選択可能なエントリ210A、210B、および210Cを表示するタッチ・スクリーン・ディスプレイ102を示す。各エントリは、重なり合うインタフェース要素を名前212、電話アイコン214およびテキスト・メッセージ・アイコン216の形で含む。ユーザ101のタッチ・スクリーン・ディスプレイ102との接触は図5において星形220で示されている。
本明細書にわたって、示した星形の大きさが大きいほど、タッチ・スクリーン・ディスプレイ102に加えられている力は大きい。ユーザ101による接触は(図2に示す)力センサ106により検出されるように比較的弱い力を生み出すので、名前212が選択されることになる。これにより、コンピューティング・デバイス100に例えば所望のエントリに関する情報を表示させることができる。必要ならば、ボックス213で示すように、タッチ・スクリーン・ディスプレイ102が、重なり合うインタフェース要素のうちどれが選択されるかを力の大きさに基づいて示してもよい。さらに、必要ならば、ユーザ201がタッチ・スクリーン・ディスプレイ102との接触をすぐに離すことによって、インタフェース要素の選択結果を受け入れてもよい。換言すれば、タッチ・スクリーン・ディスプレイ102との接触の終了を検出し、当該終了を用いて選択結果を受け入れる。さらに、ユーザがタッチ・スクリーン・ディスプレイ102との接触を維持し、タッチ・スクリーン・ディスプレイ102に加えられた力レベルの変化の検出結果を用いて別のインタフェース要素を選択してもよい。
[0046]エントリ210B上の星形222で示すようにユーザ101がより強い力を加えた場合、そのエントリに対して電話アイコン214が選択されることになる。電話アイコン214が選択されたことにより、タッチ・スクリーン・ディスプレイ102にアイコンの表示を半透明から不透明に変更することができる。これは、電話アイコン214を他のエントリより暗くすることによって、または、電話アイコン214の周囲に箱215を生成することもしくは他の任意の望ましい方式によって示される。電話アイコン214が選択されることによって、コンピューティング・デバイス100が当該エントリに関連付けられた電話番号に電話をかけるようにしてもよい。
[0047]星形224により示すように、さらに強い力が加わった結果、テキスト・メッセージ・アイコン216が選択されてもよい。当該アイコンの表示を半透明から不透明に変更することによって、テキスト・アイコン216の周囲に箱217を生成することもしくは他の任意の望ましい方式によって、テキスト・メッセージ・アイコン216を表示してもよい。テキスト・アイコン216が選択されることによって、コンピューティング・デバイス100が当該エントリに関連付けられた番号に対してテキスト・メッセージを開始するようにしてもよい。
[0048]図5から分かるように、星形220、222、および224で示すタッチ・スクリーン・ディスプレイ102との接触が、選択したい特定の要素に対して直接行われる必要はなく、当該接触の力の大きさを用いてどのインタフェース要素が選択されるかを判定する。しかし、タッチ・スクリーン・ディスプレイ102上の接触位置を使用してどの重なり合うインタフェース要素のグループ、例えばエントリ210A、210B、または210Cのうちどれが選択されているかを判定してもよいことに留意されたい。」

イ.引用例1
上記無効理由2で引用された特開2007-212975号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。なお、下線は、当審にて付したものである。

「【0044】
[構成の説明]
図1は、本発明の経路表示装置の機能が組み込まれたナビゲーション装置20の概略構成を示すブロック図である。」

「【0053】
体感器31は、ソレノイドやモータ等の振動機能を有する部品から構成され、制御部29からの指令によってユーザが体感可能な程度に振動する。
検知器32は、感圧方式,電磁誘導方式,静電容量方式等のセンサにより、ユーザが検知器32に触れたこと、及び、離れたことを検知することができる。」

「【0056】
図2(b)は、図2(a)において破線で示す切断面Aによって表示部26を切断した断面図である。図2(b)に示すように、ユーザ側に板状の検知器32が配置され、ユーザが指で触れた操作をその位置と共に検知することができるようになっている。そして、その検知器32のユーザ側と反対側の面には、同じく板状の液晶パネル26aが密着して配置されている。そして、検知器32と反対側の面の液晶パネル26aには導光板26bが配置されている。導光板26bは、上端と下端に配置された光源26cから発せられた光を導き、ユーザに液晶パネル26aが発光しているように見せるようになっている。なお、導光板26bのユーザ側と反対側には、体感器31が等間隔で複数配置されており、各体感器31は、制御部29からの指令により個別に動作するようになっている。」

「【0057】
[動作の説明]
次に、制御部29が実行する処理のうち、本発明に関連する処理であるオンルートスクロール処理について図3のフローチャートを用いて説明する。オンルートスクロール処理以外の処理(例えば、現在地表示処理や経路算出処理や経路案内処理等)については、広く知られた一般的な処理であるため説明を省略する。
【0058】
オンルートスクロール処理の実行が開始されるのは、操作スイッチ群22、リモコンセンサ23b、又は検知器32がオンルートスクロール処理を意味する指令をユーザから受け付けた際である。ユーザの視点で言えば、目的地への出発前に全走行ルートを確認したい際や、経路案内中に走行ルートを確認したい際である。なお、オンルートスクロール処理が開始されるためには、既に目的地が設定されておりその目的地までの経路が算出されていることが前提である。
【0059】
制御部29は、オンルートスクロール処理の実行を開始すると、まず、表示部26に検知器32に触れる旨を表示する(S100)。本実施例では検知器32と表示部26とが一体になっているため、例えば「ディスプレイに触れるとオンルートスクロールを開始します」というメッセージを表示部26に表示させる。なお、以下の説明においては、検知器32に対する接触操作と表示部26に対する接触操作とを、相互に同じことを意味しているものとして記載する。
【0060】
続いて、制御部29は、ユーザによって検知器32が触れられ、検知器32が検知状態にあるか否かを判定する(S105)。検知器32は検知状態にあると判定した場合は(S105:Yes)、S110へ処理を移行し、検知器32は検知状態にないと判定した場合は(S105:No)、検知状態になるまで本ステップにとどまる。
【0061】
検知状態にあると判定した場合に進むS110では、検知器32上のユーザによって操作された位置を検出する。そして、オンルートスクロールを開始する(S115)。オンルートスクロールというのは、経路上を移動する点(移動点)を表示面上の基準点に一致させた地図をスクロールさせるものであるが、本実施形態ではS110で検出した位置に基準点を移動した後に、オンルートスクロールを開始するようになっている。なお、移動点の経路上における初期位置は、出発地点(本オンルートスクロール処理が目的地への出発前に全走行ルートを事前に確認する旨を意味する指令を受け付けたことによって開始された場合)、又は、現在地点(本オンルートスクロール処理が経路案内中に走行ルートを確認する旨の指令を受け付けたことによって開始された場合)、又は、オンルートスクロール停止時の地点(オンルートスクロールを一旦停止していた場合)である。」

「【0078】
(3)触れられた位置が基準点でないとスクロールしない場合
また、上述した2つの場合と異なり、基準点がユーザによって触れられている場合にのみオンルートスクロールを行うようになっていてもよい。つまり、図6に示すオンルートスクロール処理のフローチャートのように、オンルートスクロール処理開始後、まず、自車位置マークに触れる旨を表示部26に表示させる(S100a)。そして、続くS105aにおいて、自車位置マークがユーザによって触れられたか否かを判定する。自車位置マークがユーザによって触れられていると判定した場合は(S105a:Yes)、S115へ処理を移行し、自車位置マークに触れられていないと判定した場合は(S105:No)、自車位置マークがユーザによって触れられるまで本ステップにとどまる。
【0079】
自車位置マークがユーザによって触れられていると判定した場合に進むS115では、オンルートスクロールを開始する。このステップ以降の処理は上述したものと同じであるため説明を省略する。
【0080】
次に、このように、触れられた位置が基準点であったときに限りオンルートスクロールを開始するようになっている場合において、表示部26に表示される経路図の実例を図7を用いて説明する。図7(a)に示す経路図501は、オンルートスクロール開始直後の状態である。図7(a)に示すように経路図501には、経路Aと、報知ポイントBと、自車位置マークC(上述した移動点に対応)と、経路の全体を示す全体経路図Dとが描かれている。なお、指Eの先端が自車位置マークCを触れていることが確認できる。
【0081】
オンルートスクロールが進み、自車位置マークCが報知ポイントBに到達すると、図7(b)に示すように、指Eの位置に対応する(液晶パネル26aや導光板26bを挟んだ指Eの反対側に位置する)体感器31が作動し、指Eに振動を伝える。また、経路図511の上端に経路関連情報513が表示される。なお、表示されている情報としては、「○○付近で事故発生です」という情報に加え、時間情報として「到着予定18:15頃」という情報も表示されている。したがって、ユーザは事故発生地点に到着する時刻が18:15頃ということを事前に把握することができる。なお、この時間情報の表示は、本例のように時刻として表示させるか、又は現在時刻からの相対時間として表示させるかを、予めユーザの操作により表示設定情報として制御部29に記憶させておくとよい。そして、経路関連情報に時刻情報が含まれていた場合には、記憶させておいた表示設定情報にしたがい、時刻として表示させるか、現在時刻からの相対時間として表示させるかを選択するようになっているとよい。このようになっていれば、ユーザがより早く、正確に時刻情報を認識することができる。
【0082】
その後、ユーザが表示部26を触り続ければ、図7(c)に示すように、自車位置マークCが報知ポイントBを通過した後もオンルートスクロールが引き続き実行される。
このように、触れられた位置が基準点であったときに限りオンルートスクロールを開始するようになっていれば、誤って表示部26の表示面を触れてしまった場合にオンルートスクロールが実行されてしまうということがなくなる。したがって、本例は表示部26の周りにメカニカルなキースイッチが配置されているような場合に適していると言える。」

ウ.引用例2
上記無効理由3で引用された特開2009-98086号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。なお、下線は、当審にて付したものである。

「【0001】
本発明は、ナビゲーション装置に関し、特に、ユーザの操作により地図情報の縮尺(スケール)変更やスクロールを実行可能なナビゲーション装置に関する。」

「【0038】
図3は、拡大スクロールおよび縮小スクロールの処理の流れ示すフロー図である。本フローは、ナビゲーション装置1の起動により開始される。後述するように、拡大スクロールとは、地図のスケールを大きくする処理と、地図のスクロール処理が並行して行われることをいう。また、縮小スクロールとは、地図のスケールを小さくする処理と、地図のスクロール処理が並行して行われることをいう。
【0039】
ここで、拡大・縮小スクロール処理と、スケール変更を伴わない通常のスクロール処理は、例えば、ユーザの操作により、タッチ入力検出装置13や入力装置14などを介して、スクロール機能を動作させるための指示がされると待ち受け状態になるものとする。この状態において、ディスプレイ12には、図4に示すようなUI(User Interface)画面が表示される。
【0040】
図4は、スケール変更およびスクロール操作のUI(User Interface)画面例を示す図である。図4(A)に示すように、ディスプレイ12には、地図300と、現在位置マーク302が表示される。もちろん経路情報などが表示されてもよい。また、ディスプレイ12には、拡大スクロールボタン310と、縮小スクロールボタン312が表示される。ここで、「+」は拡大を、「-」は縮小を意味している。拡大スクロールボタン310および縮小スクロールボタン312は、ディスプレイ12の上下左右の各辺に対応する4方向にそれぞれ表示される。拡大スクロールボタン310は、縮小スクロールボタン312よりも外側に表示される。もちろん、ボタンの形状、配置、表記の仕方などはこれに限られない。例えば、縮小スクロールボタン312を、拡大スクロールボタン310よりも外側に配置してもよい。また、例えば、図4(B)に示すように、拡大スクロールボタン310および縮小スクロールボタン312、8方向にそれぞれ表示するようにしてもよい。
【0041】
上記の拡大スクロールボタン310若しくは縮小スクロールボタン312がタッチされた場合の処理の概要について説明する。拡大スクロールボタン310若しくは縮小スクロールボタン312が表示された領域が、ユーザによりタッチされると、ボタンの位置に対応する方向に画面がスクロールされる。また、スクロールと同時に(並行して)、ボタンに対応するスケール(拡大若しくは縮小)へのスケール変更が行われる。このように、ユーザは、1つのボタンでスクロールおよびスケール変更の操作を行うことができる。
【0042】
なお、スケール変更およびスクロール操作を受け付けるUI画面は、図4(A)、(B)に示すように、スクロール方向に対応するボタンを設ける構成に限られない。例えば、図4(C)に示すように、スケール変更およびスクロール操作を受け付けるための、拡大スクロール領域315(点線314と316の間に挟まれた領域)と、縮小スクロール領域317(点線316に囲まれた領域)を設ける構成とすることもできる。拡大スクロール領域315および縮小スクロール領域317は、ディスプレイ12の中心を円く取り囲む所定の幅を持つ帯状の領域である。この場合、拡大スクロール領域315若しくは縮小スクロール領域317内で、ユーザのタッチ操作が行われると、ディスプレイ12の中心からタッチ位置へ向かう方向に画面がスクロールされる。また、スクロールと同時に、タッチ位置が属する領域の示すスケール(拡大若しくは縮小)へのスケール変更が行われる。拡大スクロール領域315および縮小スクロール317をユーザが認識するための目安として、拡大スクロールボタン310および縮小スクロール312を表示するようにしてもよい。また、拡大スクロール領域315若しくは縮小スクロール領域317上のディスプレイ12の中心から遠い位置ほどスクロールスピードが上がるようにしてもよい。なお、拡大スクロール領域315若しくは縮小スクロール領域317の配置やスクロールの方向は、ディスプレイ12の中心を基準としなくてもよく、例えば、表示された地図の中心を基準としてもよい。」

エ.引用例3
上記無効理由4で引用された特開2002-22472号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。なお、下線は、当審にて付したものである。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ナビゲーション装置の表示装置、ナビゲーション装置の表示方法及びナビゲーション装置の表示処理のためのコンピュータプログラムを記憶した媒体に関し、特に入力手段の選択に基づく表示または入力手段の表示シンボルの切り換えに関する。」

「【0015】表示シンボルデータは、ディスプレイ33に表示されるアイコンなどの表示データである。この表示シンボル60は場合によってディスプレイに分割表示された複数の地図/図形/図である。この表示シンボル60は、後述する複数のキースイッチに対応しており、クリックまたは入力動作されると、情報が入力され、各種処理(処理)が行わる。この処理は、データの入力、出力、転送、表示、記憶、消去、書き込み、読み出し、選択、切り換えである。
【0016】上記処理は、文字の入力、表示画面のスクロール、シフトまたは移動、処理内容のメニューの選択であり、また、ナビゲーションのための出発地、現在位置、目的地または立ち寄り地の設定、選択、変更、決定若しくは切り換え、案内経路または探索経路の一部または全部の設定、選択、変更、決定若しくは切り換え、または地理的表示情報、地図情報または道路情報の設定、選択、変更、決定若しくは切り換えである。」

「【0024】入出力装置30は、ディスプレイ33、タッチスイッチ34、プリンタ35及びスピーカ13から構成される。ディスプレイ33には、ナビゲーション動作中に経路の案内情報が表示される。タッチスイッチ34は、ディスプレイ33の画面上に付着され、透明タッチスイッチが複数、平面マトリクス状に配置されている。透明のタッチスイッチ34は、例えば、透明電極で構成された接触スイッチまたは、圧電スイッチ等で構成される。
【0025】このタッチスイッチ34からは、ナビゲーション装置に対して、出発地、目的地、通過地点等の目的地設定に必要な情報が選択され、入力される。プリンタ35では、通信インターフェイス8を介して出力される地図や施設ガイド等の各種情報が印刷される。スピーカ13からは音声で使用者に各情報が報知される。なお、プリンタ35は、無くても良い。
【0026】上記ディスプレイ33は、CRT、液晶ディスプレイまたはプラズマディスプレイ等であり、広いワイド画面を有していてもよく、場合によって分離できる2枚以上の液晶ディスプレイが並列して構成される。そして、各液晶ディスプレイに、各々、独立した情報が表示されたり、複数の液晶ディスプレイにわたる連続的な地図情報が表示される。」

「【0036】(2)リモコン50
図2はリモコン50を示す。このリモコン50によって図1の上記ナビゲーション装置に対する各種設定が実行される。このリモコン50の上記面中央には方形状の凹部51が形成され、この凹部51の中の底面には3列×4段=12個のキースイッチ(入力手段、スイッチング手段)52が設けられている。このキースイッチ52を押すことによって、上記表示シンボル60が作動されて情報が入力され、上記各種処理が実行される。
【0037】このキースイッチ52の表面には楕円形状の突起の識別部56が設けられている。識別部56を指の先で触ることによって選択されたキースイッチ52またはキースイッチ52の選択された位置が視覚によらないで触覚的に識別される。これらキースイッチ52及び識別部56は情報を入力する手段の位置または領域を表している。
【0038】上記凹部51の内側面には、赤外線カプラ53が設けられ、この凹部51のどのキースイッチ52上に指、ペンまたはその他の入力媒体が入れられたかが検出される。この赤外線カプラ53は、凹部51の内の上側面及び下側面に3つずつ、凹部51の内の右側面及び左側面に4つずつ設けられ、それぞれが対になっており、各対の一方は発光タイプ、他方は受光タイプである。
【0039】これら赤外線カプラ53のそれぞれの発光はマトリックス制御によって順次切り換えられ、発光された赤外線カプラ53と受光すべき赤外線カプラ53の非受光に基づいて、上記指等の入れられた箇所が判別かつ検出される。この指の入れられた箇所に対応したキースイッチ52は、入力動作(操作、動作、スイッチング操作、スイッチング動作)まで達していないが、当該キースイッチ52が選択された状態である。
【0040】これにより、キースイッチ52が入力動作まで達しない状態において、複数のキースイッチ52のうち少なくとも1つが選択されたことが検出される。この検出結果に基づいて当該選択されたキースイッチ52に対応するディスプレイ33上の表示シンボル60の表示状態が後述するように変化される。
【0041】このリモコン50の上端面には赤外線発光部54が設けられ、上記赤外線カプラ53の選択内容つまりいずれかが選択されたかどうか及びどれが選択されたか、さらにはキースイッチ52の入力内容つまりいずれかが入力されたかどうか及びどれが入力されたかの情報が赤外線を使って発信される。この発信された情報は、上記ナビゲーション装置のリモコンインタフェイス15に送られ、情報が入力され各種処理が実行される。」

「【0077】(5)各種処理
図5は、上記ステップSB18のナビゲーションのための各種処理のフローチャートを示す。この処理では、現在位置処理(ステップSA1)、目的地設定処理(ステップSA2)、経路探索処理(ステップSA3)、経路選択処理(ステップSA4)、案内・表示処理(ステップSA5)及び、その他の処理(ステップSA6)が実行される。」

「【0083】この経路探索処理では、上記表示シンボル60のうち、9つの矢印の表示シンボル60に応じたキースイッチ52の操作が判別され、操作された表示シンボル60に応じた方向に表示地図がスクロールされる。」

「【0103】本発明は上記実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記リモコン50の凹部51、キースイッチ52及び赤外線カプラ53は、場合によってナビゲーション装置のディスプレイ33の横に連結して設けられたり、ディスプレイ33と一体に設けられる。この場合、キースイッチ52は上記タッチスイッチ34で代用され、ディスプレイ33は凹部の中に設けられ、この凹部のディスプレイ33の周囲に赤外線カプラ53が設けられる。
【0104】場合によってディスプレイ33またはプレートの裏面にキースイッチ52が設けられ、ディスプレイ33またはプレートを押して傾斜させれば、同様にして情報が入力される。この場合、赤外線カプラ53はディスプレイ33またはプレートの表面に形成されたタッチスイッチで代用され、キースイッチ52はディスプレイ33またはプレートの裏に設けられたキースイッチで代用される。この場合ディスプレイ33またはプレートの表面に形成されたタッチスイッチを指でなぞれば、表示シンボル60を選択できる。そしてこの裏のキースイッチが1個であれば、ディスプレイ33またはプレートを傾斜させないで押すことができる。」


(4)対比・判断
ア.本件発明3、4について
事案に鑑みて、まず、本件発明3、4について検討する。
(ア)先願1との対比・判断
先願1には、特に、上記下線部の記載によれば、次の発明(以下、「先願発明1」という。)が記載されていると認められる。

[先願発明1]
「ユーザ101が力を入れてコンピューティング・デバイス100のタッチ・スクリーン・ディスプレイ102を触って複数の重なり合うインタフェース要素の1つを選択するコンピューティング・デバイス100であって、
タッチ・スクリーン・ディスプレイ102に、アドレス帳の中の選択可能なエントリ210A、210B、および210Cを表示し、各エントリは、重なり合うインタフェース要素を名前212、電話アイコン214およびテキスト・メッセージ・アイコン216の形で含み、
ユーザ101による接触は力センサ106により検出されるように比較的弱い力を生み出すので、名前212が選択されることになり、これにより、コンピューティング・デバイス100に例えば所望のエントリに関する情報を表示させることができ、
ユーザ101がより強い力を加えた場合、そのエントリに対して電話アイコン214が選択されることになり、電話アイコン214が選択されたことにより、タッチ・スクリーン・ディスプレイ102にアイコンの表示を半透明から不透明に変更することができ、これは、電話アイコン214を他のエントリより暗くすることによって、または、電話アイコン214の周囲に箱215を生成することもしくは他の任意の望ましい方式によって示され、電話アイコン214が選択されることによって、コンピューティング・デバイス100が当該エントリに関連付けられた電話番号に電話をかけるようにし、
さらに強い力が加わった結果、テキスト・メッセージ・アイコン216が選択され、当該アイコンの表示を半透明から不透明に変更することによって、テキスト・アイコン216の周囲に箱217を生成することもしくは他の任意の望ましい方式によって、テキスト・メッセージ・アイコン216を表示し、テキスト・アイコン216が選択されることによって、コンピューティング・デバイス100が当該エントリに関連付けられた番号に対してテキスト・メッセージを開始する、コンピューティング・デバイス100。」

本件発明3と先願発明1とを対比する。

先願発明1は、「ユーザ101が力を入れてコンピューティング・デバイス100のタッチ・スクリーン・ディスプレイ102を触って複数の重なり合うインタフェース要素の1つを選択するコンピューティング・デバイス100」であり、本件発明3とは、「情報処理装置」である点で一致する。
また、先願発明1は、「ユーザ101による接触は力センサ106により検出されるように比較的弱い力を生み出すので、名前212が選択されることにな」るが、このときの比較的弱い力を生み出すユーザによる接触は、力センサの出力がほぼ0である場合も含まれると解される。また、「ユーザ101がより強い力を加えた場合、そのエントリに対して電話アイコン214が選択されることにな」り、「さらに強い力が加わった結果、テキスト・メッセージ・アイコン216が選択され」るから、先願発明1は、ユーザがタッチ・スクリーン・ディスプレイにほぼ0の弱い力で接触したときと、より強い力やさらに強い力を加えたときとでは異なる処理がされるものである。
したがって、本件発明3と先願発明1とは、「表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うことで操作入力の多様性を高めた情報処理装置」である点で一致する。

先願発明1では、「ユーザ101が力を入れてコンピューティング・デバイス100のタッチ・スクリーン・ディスプレイ102を触」り、「ユーザ101による接触は力センサ106により検出される」から、この検出を行う手段は、本件発明3の「表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出手段」に相当し、両者は、「表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出手段」を備える点で一致する。

先願発明1は、「ユーザ101が力を入れてコンピューティング・デバイス100のタッチ・スクリーン・ディスプレイ102を触って複数の重なり合うインタフェース要素の1つを選択する」ものであり、「タッチ・スクリーン・ディスプレイ102に、アドレス帳の中の選択可能なエントリ210A、210B、および210Cを表示し、各エントリは、重なり合うインタフェース要素を名前212、電話アイコン214およびテキスト・メッセージ・アイコン216の形で含」む。このように「重なり合うインタフェース要素」を含む「エントリ」は複数あるから、ユーザが、どのエントリが含む重なり合うインタフェース要素の1つを選択しようとしているのか、すなわち、どのエントリを選択しようとしているのかを検出しなければならないのは明らかであり、先願発明1では、ユーザが触った位置を検出しているのは明らかである。この検出を行う手段は、本件発明3の「前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力手段」に相当し、両者は、「前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力手段」を備える点で一致する。

上述したように、先願発明1では、ユーザが触った位置を検出し、どのエントリ210A、210B、および210Cを選択しようとしているのかを検出しているといえるから、選択されたエントリは、本件発明3の「前記位置入力手段にて検出された位置の表示対象」に相当する(なお、先願1では、ユーザが触った位置によりエントリ210A、210B、および210Cを選択しているのであって、名前212を選択しているのではない。名前212は、力センサ106により比較的弱い力が検出されたことで選択される。図5では、名前212を指で触っているようすが示されているが、エントリ210Aを選択するためには、指で触る位置はエントリ210A内のどの位置でも同じ動作となると考えられる。したがって、選択された名前212は、本件発明3の「前記位置入力手段にて検出された位置の表示対象」には相当しない。)。

したがって、本件発明3と先願発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うことで操作入力の多様性を高めた情報処理装置であって、
表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出手段と、
前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力手段と、
を備えたこと特徴とする情報処理装置。」である点。

[相違点]
(相違点1)
本件発明3では、「前記位置入力手段にて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、前記力入力検出手段にて検出された前記力入力に応じて、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させ、当該変更結果を当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの記憶部に記憶させる変更手段」を備えるのに対し、先願発明1は、そのような手段を備えていない点。

よって、本件発明3と先願1に記載された発明との間には相違点があるから、両者は同一であるということはできない。本件発明3の請求項3の記載を引用して記載した請求項4に係る本件発明4についても同様である。

(イ)引用例1との対比・判断
引用例1には、特に、上記下線部の記載によれば、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明1]
「経路表示装置の機能が組み込まれたナビゲーション装置20であって、
検知器32は、感圧方式のセンサにより、ユーザが検知器32に触れたこと、及び、離れたことを検知することができるものであり、
ユーザ側に板状の検知器32が配置され、ユーザが指で触れた操作をその位置と共に検知することができるようになっており、その検知器32のユーザ側と反対側の面には、同じく板状の液晶パネル26aが密着して配置されており、
制御部29は、ユーザによって検知器32が触れられ、検知器32が検知状態にあるか否かを判定し(S105)、検知状態にあると判定した場合に、検知器32上のユーザによって操作された位置を検出し、オンルートスクロールを開始する(S115)ものであり、
オンルートスクロールというのは、経路上を移動する点(移動点)を表示面上の基準点に一致させた地図をスクロールさせるものであり、
基準点がユーザによって触れられている場合にのみオンルートスクロールを行うようになっていてもよく、その場合、自車位置マークがユーザによって触れられていると判定した場合に、オンルートスクロールを開始し、
オンルートスクロールが進み、自車位置マークCが報知ポイントBに到達すると、指Eの位置に対応する体感器31が作動し、指Eに振動を伝え、また、経路図511の上端に経路関連情報513が表示される、ナビゲーション装置。」

本件発明3と引用発明1とを対比する。

引用発明1の「ナビゲーション装置20」は、「情報処理装置」といえるものであるから、本件発明3と引用発明1は、「情報処理装置」である点では共通するものである。

引用発明1は、「検知器32が配置され」、「検知器32は、感圧方式のセンサにより、ユーザが検知器32に触れたこと、及び、離れたことを検知することができるものであ」るから、引用発明1の「検知器32」は、本件発明3の「表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出手段」に相当し、両者は、「表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出手段」を備える点で一致する。

引用発明1の「検知器32」は、「ユーザが指で触れた操作をその位置と共に検知することができるようになって」いるから、引用発明1の「検知器32」は、本件発明3の「前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力手段」に相当し、両者は、「前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力手段」を備える点で一致する。

引用発明1は、「基準点がユーザによって触れられている場合にのみオンルートスクロールを行うようになって」いる場合、「自車位置マークがユーザによって触れられていると判定した場合に、オンルートスクロールを開始」するもの(オンルートスクロールとは、経路上を移動する点(移動点)を表示面上の基準点に一致させた地図をスクロールさせるもの)であり、この場合、ユーザにより触られている自動車位置マークは、オンルートスクロールが開始されても基準点を動かずに、地図のみがスクロールされる。そのときには、相対的には、地図の経路上を自動車位置マークが移動するといえる。
引用発明1のこの動作は、本件発明3の「前記位置入力手段にて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、前記力入力検出手段にて検出された前記力入力に応じて、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させ」る「変更手段」の動作に相当する。
したがって、本件発明3と引用発明1とは、「前記位置入力手段にて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、前記力入力検出手段にて検出された前記力入力に応じて、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させる変更手段」を備えるといえる点で共通する。

したがって、本件発明3と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「情報処理装置であって、
表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出手段と、
前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力手段と、
前記位置入力手段にて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、前記力入力検出手段により検出された前記力入力に応じて、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させる変更手段と、
を備えたことを特徴とする情報処理装置。」である点。

[相違点]
(相違点2)
本件発明3は、「表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うことで操作入力の多様性を高めた情報処理装置」であるのに対し、引用発明1は、そのような情報処理装置ではない点。
(相違点3)
「変更手段」が、本件発明3では、「当該変更結果を当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの記憶部に記憶させる」のに対し、引用発明1では、変更結果をそのような入力として記憶させるとは特定されていない点。

上記相違点2について検討する。
本件発明3は、「表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うことで操作入力の多様性を高めた情報処理装置」である。
これに対し、引用発明1は、検知器にユーザが指で触れた操作をその位置と共に検知し、オンルートスクロールを開始するものであって、表示画面への接触操作により処理を行う情報処理装置といえるにとどまり、該接触操作を、力入力を伴う場合と伴わない場合とに分け、それぞれの場合で互いに異なる処理を行うことまでは、引用例1に記載乃至示唆はされていないし、引用発明1において、そのようにする動機はない。
したがって、相違点3について検討するまでもなく、本件発明3が、引用例1に記載された発明であるということはできず、また、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。本件発明3の請求項3の記載を引用して記載した請求項4に係る本件発明4についても同様である。

(ウ)引用例2との対比・判断
引用例2には、特に、上記下線部の記載によれば、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明2]
「ユーザの操作により地図情報の縮尺(スケール)変更やスクロールを実行するナビゲーション装置であって、
ディスプレイ12には、拡大スクロールボタン310と、縮小スクロールボタン312が表示され、拡大スクロールボタン310若しくは縮小スクロールボタン312が表示された領域が、ユーザによりタッチされると、ボタンの位置に対応する方向に画面がスクロールされ、また、スクロールと同時に(並行して)、ボタンに対応するスケール(拡大若しくは縮小)へのスケール変更が行われ、このように、ユーザは、1つのボタンでスクロールおよびスケール変更の操作を行うことができるナビゲーション装置。」

本件発明3と引用発明2とを対比する。

引用発明2の「ユーザの操作により地図情報の縮尺(スケール)変更やスクロールを実行するナビゲーション装置」は、ディスプレイ12に表示されたボタンにユーザがタッチして操作を行うものであるから、「表示画面への接触操作により処理を行う情報処理装置」といえるものであるから、本件発明3と引用発明2は、「表示画面への接触操作により処理を行う情報処理装置」である点では共通するものである。

引用発明2では、「拡大スクロールボタン310若しくは縮小スクロールボタン312が表示された領域が、ユーザによりタッチされると、ボタンの位置に対応する方向に画面がスクロールされ」るから、引用発明2は、ユーザによりタッチされた位置を検出する動作を行っているといえる。引用発明2のこの動作を行う手段は、本件発明3の「オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力手段」に相当し、両者は、「オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力手段」を備える点で一致する。

引用発明2で、「拡大スクロールボタン310若しくは縮小スクロールボタン312が表示された領域が、ユーザによりタッチされると、ボタンの位置に対応する方向に画面がスクロールされ」る場合、ユーザによりタッチされているボタンは動かずに、画面の地図のみがスクロールされる。そのときには、相対的には、画面の地図に対してボタンが移動するといえる。
引用発明2のこの動作を行う手段は、本件発明3の「前記位置入力ステップにて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ」、「当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させ」る「変更手段」に相当する。
したがって、本件発明3と引用発明2とは、「前記位置入力手段にて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させる変更手段」を備えるといえる点では共通する。

したがって、本件発明3と引用発明2との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「表示画面への接触操作により処理を行う情報処理装置であって、
オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力手段と、
前記位置入力手段にて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させる変更手段と、
を備えたことを特徴とする情報処理装置。」である点。

[相違点]
(相違点4)
本件発明3は、「表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うことで操作入力の多様性を高めた情報処理装置」であるのに対し、引用発明2は、そのような情報処理装置ではない点。
(相違点5)
本件発明3は、「表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出手段」、および、「前記位置入力手段にて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、前記力入力検出手段にて検出された前記力入力に応じて、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させ、当該変更結果を当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの記憶部に記憶させる変更手段」を備えるのに対し、引用発明2では、そのような力入力検出手段、および、変更手段を備えない点。

上記相違点4について検討する。
本件発明3は、「表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うことで操作入力の多様性を高めた情報処理装置」である。
これに対し、引用発明2は、ディスプレイの拡大スクロールボタン若しくは縮小スクロールボタンが表示された領域が、ユーザによりタッチされると、ボタンの位置に対応する方向に画面がスクロールされ、スクロールと同時に、ボタンに対応するスケール(拡大若しくは縮小)へのスケール変更が行われるものであって、表示画面への接触操作により処理を行う情報処理装置といえるにとどまり、該接触操作を、力入力を伴う場合と伴わない場合とに分け、それぞれの場合で互いに異なる処理を行うことまでは、引用例2に記載乃至示唆はされていないし、引用発明2において、そのようにする動機はない。
したがって、相違点5について検討するまでもなく、本件発明3が、引用例2に記載された発明であるということはできず、また、引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。本件発明3の請求項3の記載を引用して記載した請求項4に係る本件発明4についても同様である。

(エ)引用例3との対比・判断
引用例3には、特に、下線部の記載によれば、実施例として次の装置が記載されていると認められる。

「ナビゲーション装置の入力手段の選択に基づく表示装置であって、
ディスプレイ33に表示されるアイコン等の表示シンボル60は、複数のキースイッチに対応しており、クリックまたは入力動作されると、情報が入力され、スクロール等の処理が行われ、
入出力装置30は、ディスプレイ33、タッチスイッチ34等から構成され、タッチスイッチ34は、ディスプレイ33の画面上に付着され、透明タッチスイッチが複数、平面マトリクス状に配置されており、
リモコン50には方形状の凹部51が形成され、この凹部51の中の底面には3列×4段=12個のキースイッチ52が設けられており、上記凹部51の内側面には、赤外線カプラ53が設けられ、この凹部51のどのキースイッチ52上に指等の入力媒体が入れられたかが検出され、発光された赤外線カプラ53と受光すべき赤外線カプラ53の非受光に基づいて、上記指等の入れられた箇所が判別かつ検出され、この指の入れられた箇所に対応したキースイッチ52は、入力動作まで達していないが、当該キースイッチ52が選択された状態であり、この検出結果に基づいて当該選択されたキースイッチ52に対応するディスプレイ33上の表示シンボル60の表示状態が変化され、
ナビゲーションのための各種処理のうち経路探索処理では、上記表示シンボル60のうち、9つの矢印の表示シンボル60に応じたキースイッチ52の操作が判別され、操作された表示シンボル60に応じた方向に表示地図がスクロールされる、装置。」

そして、引用例3の【0103】、【0104】には、この実施例の装置を変更する例が記載されており、その変更内容は、「赤外線カプラ53」、「キースイッチ52」を、それぞれ、「ディスプレイ33の表面に形成されたタッチスイッチ」、「ディスプレイ33の裏に設けられた1個のキースイッチ」で代用するものである。
上記実施例の装置に、このように代用する変更をした場合には、ディスプレイ33の表面に形成されたタッチスイッチを指で触ることにより、表示シンボルが選択されて表示状態が変化され、さらにディスプレイ33を押してディスプレイ33の裏に設けられた1個のキースイッチを操作することにより、該選択された表示シンボル60に対応した処理がされるものとなるのは当業者に明らかである。
したがって、引用例3には、上記実施例の装置を変更する例として、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明3]
「ナビゲーション装置の入力手段の選択に基づく表示装置であって、
ディスプレイ33には、アイコン等の表示シンボル60が表示され、
入出力装置30は、ディスプレイ33、タッチスイッチ34等から構成され、タッチスイッチ34は、ディスプレイ33の画面上に付着され、透明タッチスイッチが複数、平面マトリクス状に配置されており、
ディスプレイ33の表面に形成されたタッチスイッチを指で触ることにより、表示シンボル60が選択されて表示状態が変化され、さらにディスプレイ33を押してディスプレイ33の裏に設けられた1個のキースイッチを操作することにより、該選択された表示シンボル60に対応した処理がされ、
ナビゲーションのための各種処理のうち経路探索処理では、上記表示シンボル60のうち、9つの矢印の表示シンボル60に応じた方向に表示地図がスクロールされる、装置。」

本件発明3と引用発明3とを対比する。
引用発明3は、「ナビゲーション装置の入力手段の選択に基づく表示装置」であるから、本件発明3とは、「情報処理装置」である点で一致する。
また、引用発明3は、「ディスプレイ33の表面に形成されたタッチスイッチを指で触ることにより、表示シンボル60が選択されて表示状態が変化され、さらにディスプレイ33を押してディスプレイ33の裏に設けられた1個のキースイッチを操作することにより、該選択された表示シンボル60に対応した処理がされ」るものであって、タッチスイッチを指で触ったときと、さらにディスプレイ33を押してキースイッチを操作したときとでは異なる処理がされるから、本件発明3と引用発明3とは、「表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うことで操作入力の多様性を高めた情報処理装置」である点で一致する。

引用発明3の「さらにディスプレイ33を押してディスプレイ33の裏に設けられた1個のキースイッチを操作すること」は、該1個のキースイッチによって検出されるから、この1個のキースイッチは、本件発明3の「表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出手段」に相当し、両者は、「表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出手段」を備える点で一致する。

引用発明3の「ディスプレイ33の表面に形成されたタッチスイッチを指で触ること」は、「ディスプレイ33の画面上に付着され、透明タッチスイッチが複数、平面マトリクス状に配置されて」いる「タッチスイッチ34」によって検出されるから、この「タッチスイッチ34」は、本件発明3の「前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力手段」に相当し、両者は、「前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力手段」を備える点で一致する。

引用発明3の「経路探索処理」では、ディスプレイ33の表面に形成されたタッチスイッチを指で触ることにより、矢印の表示シンボルが選択され、さらにディスプレイ33を押してディスプレイ33の裏に設けられた1個のキースイッチを操作することにより、該選択された矢印の表示シンボル60に応じた方向に表示地図がスクロールされることとなり、そのときには、操作された矢印の表示シンボルの表示は変化しないと考えられる。
したがって、引用発明3の経路探索処理を行う手段は、「前記位置入力手段にて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、前記力入力検出手段にて検出された前記力入力に応じて、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させ」る「変更手段」ということができる。
よって、本件発明3と引用発明3とは、「前記位置入力手段にて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、前記力入力検出手段にて検出された前記力入力に応じて、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させる変更手段」を備えるといえる点では共通するといえる。

したがって、本件発明3と引用発明3との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うことで操作入力の多様性を高めた情報処理装置であって、
表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出手段と、
前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力手段と、
前記位置入力手段にて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、前記力入力検出手段にて検出された前記力入力に応じて、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させる変更手段と、
を備えたことを特徴とする情報処理装置。」である点。

[相違点]
(相違点6)
「変更手段」が、本件発明3では、「当該変更結果を当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの記憶部に記憶させる」のに対し、引用発明3は、変更結果をそのような入力として記憶させるとは特定されていない点。

相違点6について検討する。
本件発明3は、「変更手段」が、「当該変更結果を当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの記憶部に記憶させる」ものである。
本件発明3のこの発明特定事項に関して、本件明細書の【0062】、【0035】には、次のように記載されている。
「【0062】
図8に示すように、利用者が表示要素「B」上の接触位置で左方向に力Fを加えた場合、表示態様変更部102bは、表示領域の遷移処理を開始する。図9は、表示領域の遷移処理によって、表示領域がWINDOW1からWINDOW2へ移行する途中の段階の表示画面例を示す図である。図9に示すように、表示態様変更部102bは、力Fが検出された時点で表示制御部102aにより表示中であった表示領域(背景の表示要素「WINDOW1」ならびに表示要素「A」,「B」,「C」)を表示画面に対して相対的に移動させ、この移動と連動して別の表示要素「WINDOW2」を表示させる。このとき、図9に示すように、表示態様変更部102bは、力Fが検出された時点での接触位置に対応する表示要素「B」については、表示領域の遷移処理の期間中、位置判定部102dにより更新判定される接触位置に保持しつづける。ここで、図10は、表示領域の遷移処理の終了段階の表示画面例を示す図である。」
「【0035】
これら記憶部106の各構成要素のうち、要素ファイル106aは、表示画面の表示要素として表示可能なデータを記憶する要素データ記憶手段である。例えば、要素ファイル106aは、アイコンや文字、記号、図形、立体表示対象などの表示対象となるデータを記憶してもよい。・・・(中略)・・・また、後述する制御部102の処理により、移動、回転、拡大・縮小された結果は、要素ファイル106aに反映されてもよい。例えば、要素ファイル106aのフォルダXに格納されていた表示対象Aが、表示制御によってフォルダYに移動された場合、要素ファイル106aは、制御部102の制御により、表示対象AのデータをフォルダXからフォルダYに移動させて保存する。」
これらの記載によれば、本件発明3の「当該変更結果」とは、例えば、表示要素「B」の背景の表示要素「WINDOW1」を表示要素「WINDOW2」に変更した結果であり、「当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの記憶部に記憶させる」とは、例えば、表示対象となるアイコンのデータをフォルダXからフォルダYに移動させて保存することを意味しており、すなわち、例えば、表示要素(=表示対象)「B」の背景の表示要素「WINDOW1」を表示要素「WINDOW2」に変更した結果、表示要素(=表示対象)「B」のデータをフォルダXからフォルダYに移動させて保存することを意味しているといえる。
換言すれば、本件発明3の「当該変更結果を当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの記憶部に記憶させる」とは、(背景の変更などの)変更結果を、(フォルダYに保存することなどの)表示対象に対する情報として記憶することを意味しているといえる。
これに対し、引用発明3においては「表示地図がスクロールされ」た結果が、本件発明3の「変更結果」に、また、引用発明3における「(例えば、右向きの)矢印の表示シンボル」が、本件発明3の「表示対象」に対応付けられる。
しかしながら、引用発明3では、「表示地図がスクロールされ」た結果は、「矢印の表示シンボル」自体に対する情報と特に関連はないから、引用例3には、「表示地図がスクロールされ」たという変更結果を、「矢印の表示シンボル」である表示対象に対する情報として記憶させようとする動機はない。
したがって、本件発明3は、引用例3に記載された発明であるということはできず、また、引用例3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。本件発明3の請求項3の記載を引用して記載した請求項4に係る本件発明4についても同様である。

(オ)その他
引用例1乃至3に記載された発明を組み合わせても、本件発明3、4は当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる理由は見当たらない。

(カ)まとめ
他に、本件発明3、4が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。
したがって、訂正後における特許請求の範囲の請求項3、4に記載された事項により特定される発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであり、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。

イ.本件発明1、2について
(ア)先願1との対比・判断
先願1には、特に、上記下線部の記載によれば、次の発明(以下、「先願発明1’」という。)が記載されていると認められる。

[先願発明1’]
「ユーザ101が力を入れてコンピューティング・デバイス100のタッチ・スクリーン・ディスプレイ102を触って複数の重なり合うインタフェース要素の1つを選択する方法であって、
タッチ・スクリーン・ディスプレイ102に、アドレス帳の中の選択可能なエントリ210A、210B、および210Cを表示し、各エントリは、重なり合うインタフェース要素を名前212、電話アイコン214およびテキスト・メッセージ・アイコン216の形で含み、
ユーザ101による接触は力センサ106により検出されるように比較的弱い力を生み出すので、名前212が選択されることになり、これにより、コンピューティング・デバイス100に例えば所望のエントリに関する情報を表示させることができ、
ユーザ101がより強い力を加えた場合、そのエントリに対して電話アイコン214が選択されることになり、電話アイコン214が選択されたことにより、タッチ・スクリーン・ディスプレイ102にアイコンの表示を半透明から不透明に変更することができ、これは、電話アイコン214を他のエントリより暗くすることによって、または、電話アイコン214の周囲に箱215を生成することもしくは他の任意の望ましい方式によって示され、電話アイコン214が選択されることによって、コンピューティング・デバイス100が当該エントリに関連付けられた電話番号に電話をかけるようにし、
さらに強い力が加わった結果、テキスト・メッセージ・アイコン216が選択され、当該アイコンの表示を半透明から不透明に変更することによって、テキスト・アイコン216の周囲に箱217を生成することもしくは他の任意の望ましい方式によって、テキスト・メッセージ・アイコン216を表示し、テキスト・アイコン216が選択されることによって、コンピューティング・デバイス100が当該エントリに関連付けられた番号に対してテキスト・メッセージを開始する、方法。」

本件発明1と先願発明1’とを対比する。

先願発明1’は、「ユーザ101が力を入れてコンピューティング・デバイス100のタッチ・スクリーン・ディスプレイ102を触って複数の重なり合うインタフェース要素の1つを選択する方法」であり、本件発明1とは、「コンピュータにおける」「入力制御方法」である点で一致する。
また、先願発明1’は、「ユーザ101による接触は力センサ106により検出されるように比較的弱い力を生み出すので、名前212が選択されることにな」るが、このときの比較的弱い力を生み出すユーザによる接触は、力センサの出力がほぼ0である場合も含まれると解される。また、「ユーザ101がより強い力を加えた場合、そのエントリに対して電話アイコン214が選択されることにな」り、「さらに強い力が加わった結果、テキスト・メッセージ・アイコン216が選択され」るから、先願発明1’は、ユーザがタッチ・スクリーン・ディスプレイにほぼ0の弱い力で接触したときと、より強い力やさらに強い力を加えたときとでは異なる処理がされるものである。
したがって、本件発明1と先願発明1’とは、「表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うことでコンピュータにおける操作入力の多様性を高める入力制御方法」である点で一致する。

先願発明1’では、「ユーザ101が力を入れてコンピューティング・デバイス100のタッチ・スクリーン・ディスプレイ102を触」り、「ユーザ101による接触は力センサ106により検出される」から、この検出される動作は、本件発明1の「表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出ステップ」に相当し、両者は、「表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出ステップ」を含む点で一致する。

先願発明1’は、「ユーザ101が力を入れてコンピューティング・デバイス100のタッチ・スクリーン・ディスプレイ102を触って複数の重なり合うインタフェース要素の1つを選択する」ものであり、「タッチ・スクリーン・ディスプレイ102に、アドレス帳の中の選択可能なエントリ210A、210B、および210Cを表示し、各エントリは、重なり合うインタフェース要素を名前212、電話アイコン214およびテキスト・メッセージ・アイコン216の形で含」む。このように「重なり合うインタフェース要素」を含む「エントリ」は複数あるから、ユーザが、どのエントリが含む重なり合うインタフェース要素の1つを選択しようとしているのか、すなわち、どのエントリを選択しようとしているのかを検出しなければならないのは明らかであり、先願発明1’では、ユーザが触った位置を検出しているのは明らかである。この検出する動作は、本件発明1の「前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力ステップ」に相当し、両者は、「前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力ステップ」を含む点で一致する。

上述したように、先願発明1’では、ユーザが触った位置を検出し、どのエントリ210A、210B、および210Cを選択しようとしているのかを検出しているといえるから、選択されたエントリは、本件発明1の「前記位置入力ステップにて検出された位置の表示対象」に相当する(なお、先願発明1’では、ユーザが触った位置によりエントリ210A、210B、および210Cを選択しているのであって、名前212を選択しているのではない。名前212は、力センサ106により比較的弱い力が検出されたことで選択される。図5では、名前212を指で触っているようすが示されているが、エントリ210Aを選択するためには、指で触る位置はエントリ210A内のどの位置でも同じ動作となると考えられる。したがって、選択された名前212は、本件発明1の「前記位置入力ステップにて検出された位置の表示対象」には相当しない。)。

したがって、本件発明1と先願発明1’との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うことでコンピュータにおける操作入力の多様性を高める入力制御方法であって、
表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出ステップと、
前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力ステップと、
を含むことを特徴とする入力制御方法。」である点。

[相違点]
(相違点7)
本件発明1では、「前記位置入力ステップにて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、前記力入力検出ステップにて検出された前記力入力に応じて、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させ、当該変更結果を当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの記憶部に記憶させる変更ステップ」を含むのに対し、先願発明1’は、そのようなステップを含まない点。

したがって、本件発明1と先願1に記載された発明とは同一であるということはできない。本件発明1の請求項1の記載を引用して記載した請求項2に係る本件発明2についても同様である。

(イ)引用例1との対比・判断
引用例1には、特に、上記下線部の記載によれば、次の発明(以下、「引用発明1’」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明1’]
「経路表示装置の機能が組み込まれたナビゲーション装置20の経路表示方法であって、
検知器32は、感圧方式のセンサにより、ユーザが検知器32に触れたこと、及び、離れたことを検知することができるものであり、
ユーザ側に板状の検知器32が配置され、ユーザが指で触れた操作をその位置と共に検知することができるようになっており、その検知器32のユーザ側と反対側の面には、同じく板状の液晶パネル26aが密着して配置されており、
制御部29は、ユーザによって検知器32が触れられ、検知器32が検知状態にあるか否かを判定し(S105)、検知状態にあると判定した場合に、検知器32上のユーザによって操作された位置を検出し、オンルートスクロールを開始する(S115)ものであり、
オンルートスクロールというのは、経路上を移動する点(移動点)を表示面上の基準点に一致させた地図をスクロールさせるものであり、
基準点がユーザによって触れられている場合にのみオンルートスクロールを行うようになっていてもよく、その場合、自車位置マークがユーザによって触れられていると判定した場合に、オンルートスクロールを開始し、
オンルートスクロールが進み、自車位置マークCが報知ポイントBに到達すると、指Eの位置に対応する体感器31が作動し、指Eに振動を伝え、また、経路図511の上端に経路関連情報513が表示される、ナビゲーション装置の経路表示方法。」

本件発明1と引用発明1’とを対比する。

引用発明1’の「ナビゲーション装置20の経路表示方法」は、「ユーザが指で触れた操作」で「オンルートスクロールを開始する」ものであるから、本件発明1と引用発明1’は、「コンピュータにおける入力制御方法」である点では共通するものである。

引用発明1’は、「検知器32が配置され」、「検知器32は、感圧方式のセンサにより、ユーザが検知器32に触れたこと、及び、離れたことを検知することができるものであ」るから、引用発明1’の「検知器32」による検知は、本件発明1の「表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出ステップ」に相当し、両者は、「表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出ステップ」を含む点で一致する。

引用発明1’の「検知器32」は、「ユーザが指で触れた操作をその位置と共に検知することができるようになって」いるから、引用発明1’の「検知器32」による検知は、本件発明1の「前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力ステップ」に相当し、両者は、「前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力ステップ」を含む点で一致する。

引用発明1’は、「基準点がユーザによって触れられている場合にのみオンルートスクロールを行うようになって」いる場合、「自車位置マークがユーザによって触れられていると判定した場合に、オンルートスクロールを開始」するもの(オンルートスクロールとは、経路上を移動する点(移動点)を表示面上の基準点に一致させた地図をスクロールさせるもの)であり、この場合、ユーザにより触られている自動車位置マークは、オンルートスクロールが開始されても基準点を動かずに、地図のみがスクロールされる。そのときには、相対的には、地図の経路上を自動車位置マークが移動するといえる。
引用発明1’のこの動作は、本件発明1の「前記位置入力ステップにて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、前記力入力検出ステップにて検出された前記力入力に応じて、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させ」る「変更ステップ」に相当する。
したがって、本件発明1と引用発明1’とは、「前記位置入力ステップにて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、前記力入力検出ステップにて検出された前記力入力に応じて、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させる変更ステップ」を含むといえる点で共通する。

したがって、本件発明1と引用発明1’との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「コンピュータにおける入力制御方法であって、
表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出ステップと、
前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力ステップと、
前記位置入力ステップにて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、前記力入力検出ステップにより検出された前記力入力に応じて、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させる変更ステップと、
を含むことを特徴とする入力制御方法。」である点。

[相違点]
(相違点8)
本件発明1は、「表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うことでコンピュータにおける操作入力の多様性を高める入力制御方法」であるのに対し、引用発明1’は、そのような入力制御方法ではない点。
(相違点9)
「変更ステップ」が、本件発明1では、「当該変更結果を当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの記憶部に記憶させる」のに対し、引用発明1’では、変更結果をそのような入力として記憶させるとは特定されていない点。

相違点8について検討する。
本件発明1は、「表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うことでコンピュータにおける操作入力の多様性を高める入力制御方法」である。
これに対し、引用発明1’は、検知器にユーザが指で触れた操作をその位置と共に検知し、オンルートスクロールを開始するものであって、表示画面への接触操作により処理を行うコンピュータにおける入力制御方法といえるにとどまり、該接触操作を、力入力を伴う場合と伴わない場合とに分け、それぞれの場合で互いに異なる処理を行うことまでは、引用例1に記載乃至示唆はされていないし、引用発明1’において、そのようにする動機はない。
したがって、相違点9について検討するまでもなく、本件発明1が、引用例1に記載された発明であるということはできず、また、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。本件発明1の請求項1の記載を引用して記載した請求項2に係る本件発明2についても同様である。

(ウ)引用例2との対比・判断
引用例2には、特に、上記下線部の記載によれば、次の発明(以下、「引用発明2’」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明2’]
「ナビゲーション装置に関し、ユーザの操作により地図情報の縮尺(スケール)変更やスクロールを実行する方法であって、
ディスプレイ12には、拡大スクロールボタン310と、縮小スクロールボタン312が表示され、拡大スクロールボタン310若しくは縮小スクロールボタン312が表示された領域が、ユーザによりタッチされると、ボタンの位置に対応する方向に画面がスクロールされ、また、スクロールと同時に(並行して)、ボタンに対応するスケール(拡大若しくは縮小)へのスケール変更が行われ、このように、ユーザは、1つのボタンでスクロールおよびスケール変更の操作を行うことができる方法。」

本件発明1と引用発明2’とを対比する。

引用発明2’の「ナビゲーション装置に関し、ユーザの操作により地図情報の縮尺(スケール)変更やスクロールを実行する方法」は、「コンピュータにおける入力制御方法」といえるものであるから、本件発明1と引用発明2’は、「コンピュータにおける入力制御方法」である点では共通するものである。

引用発明2’では、「拡大スクロールボタン310若しくは縮小スクロールボタン312が表示された領域が、ユーザによりタッチされると、ボタンの位置に対応する方向に画面がスクロールされ」るから、引用発明2’は、ユーザによりタッチされた位置を検出する動作を行っているといえる。引用発明2’のこの動作は、本件発明1の「前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力ステップ」に相当し、両者は、「オブジェクトが表示画面に接触した位置を検出する位置入力ステップ」を含む点で一致する。

引用発明2’で、「拡大スクロールボタン310若しくは縮小スクロールボタン312が表示された領域が、ユーザによりタッチされると、ボタンの位置に対応する方向に画面がスクロールされ」る場合、ユーザによりタッチされているボタンは動かずに、画面の地図のみがスクロールされる。そのときには、相対的には、画面の地図に対してボタンが移動するといえる。
引用発明2’のこの動作は、本件発明1の「前記位置入力ステップにて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ」、「当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させ」る「変更ステップ」に相当する。
したがって、本件発明1と引用発明2’とは、「前記位置入力ステップにて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させる変更ステップ」を含むといえる点では共通する。

以上をまとめると、本件発明1と引用発明2’との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「コンピュータにおける入力制御方法であって、
オブジェクトが表示画面に接触した位置を検出する位置入力ステップと、
前記位置入力ステップにて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させる変更ステップと、
を含むことを特徴とする入力制御方法。」である点。

[相違点]
(相違点10)
本件発明1は、「表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うことでコンピュータにおける操作入力の多様性を高める入力制御方法」であるのに対し、引用発明2’は、そのような入力制御方法ではない点。
(相違点11)
本件発明1は、「表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出ステップ」、および、「前記位置入力ステップにて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、前記力入力検出ステップにて検出された前記力入力に応じて、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させ、当該変更結果を当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの記憶部に記憶させる変更ステップ」を含むのに対し、引用発明2’では、そのような力入力検出ステップ、および、変更ステップを含まない点。

相違点10について検討する。
本件発明1は、「表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うことでコンピュータにおける操作入力の多様性を高める入力制御方法」である。
これに対し、引用発明2’は、ディスプレイの拡大スクロールボタン若しくは縮小スクロールボタンが表示された領域が、ユーザによりタッチされると、ボタンの位置に対応する方向に画面がスクロールされ、スクロールと同時に、ボタンに対応するスケール(拡大若しくは縮小)へのスケール変更が行われるものであって、表示画面への接触操作により処理を行う入力制御方法といえるにとどまり、該接触操作を、力入力を伴う場合と伴わない場合とに分け、それぞれの場合で互いに異なる処理を行うことまでは、引用例2に記載乃至示唆はされていないし、引用発明2’において、そのようにする動機はない。
したがって、相違点11について検討するまでもなく、本件発明1が、引用例2に記載された発明であるということはできず、また、引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。本件発明1の請求項1の記載を引用して記載した請求項2に係る本件発明2についても同様である。

(エ)引用例3との対比・判断
引用例3には、特に、上記下線部の記載によれば、実施例として次の方法が記載されていると認められる。

「ナビゲーション装置の入力手段の選択に基づく表示方法であって、
ディスプレイ33に表示されるアイコン等の表示シンボル60は、複数のキースイッチに対応しており、クリックまたは入力動作されると、情報が入力され、スクロール等の処理が行われ、
入出力装置30は、ディスプレイ33、タッチスイッチ34等から構成され、タッチスイッチ34は、ディスプレイ33の画面上に付着され、透明タッチスイッチが複数、平面マトリクス状に配置されており、
リモコン50には方形状の凹部51が形成され、この凹部51の中の底面には3列×4段=12個のキースイッチ52が設けられており、上記凹部51の内側面には、赤外線カプラ53が設けられ、この凹部51のどのキースイッチ52上に指等の入力媒体が入れられたかが検出され、発光された赤外線カプラ53と受光すべき赤外線カプラ53の非受光に基づいて、上記指等の入れられた箇所が判別かつ検出され、この指の入れられた箇所に対応したキースイッチ52は、入力動作まで達していないが、当該キースイッチ52が選択された状態であり、この検出結果に基づいて当該選択されたキースイッチ52に対応するディスプレイ33上の表示シンボル60の表示状態が変化され、
ナビゲーションのための各種処理のうち経路探索処理では、上記表示シンボル60のうち、9つの矢印の表示シンボル60に応じたキースイッチ52の操作が判別され、操作された表示シンボル60に応じた方向に表示地図がスクロールされる、方法。」

そして、引用例3の【0103】、【0104】には、この実施例の方法を変更する例が記載されており、その変更内容は、「赤外線カプラ53」、「キースイッチ52」を、それぞれ、「ディスプレイ33の表面に形成されたタッチスイッチ」、「ディスプレイ33の裏に設けられた1個のキースイッチ」で代用するものである。
上記実施例の方法に、このように代用する変更をした場合には、ディスプレイ33の表面に形成されたタッチスイッチを指で触ることにより、表示シンボルが選択されて表示状態が変化され、さらにディスプレイ33を押してディスプレイ33の裏に設けられた1個のキースイッチを操作することにより、該選択された表示シンボル60に対応した処理がされることとなる。
したがって、上記引用例3には、上記実施例の方法を変更する例として、次の発明(以下、「引用発明3’」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明3’]
「ナビゲーション装置の入力手段の選択に基づく表示方法であって、
ディスプレイ33には、アイコン等の表示シンボル60が表示され、
入出力装置30は、ディスプレイ33、タッチスイッチ34等から構成され、タッチスイッチ34は、ディスプレイ33の画面上に付着され、透明タッチスイッチが複数、平面マトリクス状に配置されており、
ディスプレイ33の表面に形成されたタッチスイッチを指で触ることにより、表示シンボル60が選択されて表示状態が変化され、さらにディスプレイ33を押してディスプレイ33の裏に設けられた1個のキースイッチを操作することにより、該選択された表示シンボル60に対応した処理がされ、
ナビゲーションのための各種処理のうち経路探索処理では、上記表示シンボル60のうち、9つの矢印の表示シンボル60に応じた方向に表示地図がスクロールされる、方法。」

本件発明1と引用発明3’とを対比する。
引用発明3’は、「ナビゲーション装置の入力手段の選択に基づく表示方法」であり、本件発明1とは、「コンピュータにおける」「入力制御方法」である点で一致する。
また、引用発明3’は、「ディスプレイ33の表面に形成されたタッチスイッチを指で触ることにより、表示シンボル60が選択されて表示状態が変化され、さらにディスプレイ33を押してディスプレイ33の裏に設けられた1個のキースイッチを操作することにより、該選択された表示シンボル60に対応した処理がされ」るものであって、タッチスイッチを指で触ったときと、さらにディスプレイ33を押してキースイッチを操作したときとでは異なる処理がされるから、本件発明1と引用発明3’とは、「表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うことでコンピュータにおける操作入力の多様性を高める入力制御方法」である点で一致する。

引用発明3’の「さらにディスプレイ33を押してディスプレイ33の裏に設けられた1個のキースイッチを操作すること」は、該1個のキースイッチによって検出されるから、この検出される動作は、本件発明1の「表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出ステップ」に相当し、両者は、「表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出ステップ」を含む点で一致する。

引用発明3’の「ディスプレイ33の表面に形成されたタッチスイッチを指で触ること」は、「ディスプレイ33の画面上に付着され、透明タッチスイッチが複数、平面マトリクス状に配置されて」いる「タッチスイッチ34」によって検出されるから、この検出される動作は、本件発明1の「前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力ステップ」に相当し、両者は、「前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力ステップ」を含む点で一致する。

引用発明3’の「経路探索処理」では、ディスプレイ33の表面に形成されたタッチスイッチを指で触ることにより、矢印の表示シンボルが選択され、さらにディスプレイ33を押してディスプレイ33の裏に設けられた1個のキースイッチを操作することにより、該選択された矢印の表示シンボル60に応じた方向に表示地図がスクロールされることとなり、そのときには、操作された矢印の表示シンボルの表示は変化しないと考えられる。
したがって、引用発明3’の経路探索処理は、「前記位置入力ステップにて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、前記力入力検出ステップにて検出された前記力入力に応じて、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させ」るステップということができる。
よって、本件発明1と引用発明3’とは、「前記位置入力ステップにて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、前記力入力検出ステップにて検出された前記力入力に応じて、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させる変更ステップ」を含むといえる点では共通するといえる。

したがって、本件発明1と引用発明3’との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うことでコンピュータにおける操作入力の多様性を高める入力制御方法であって、
表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出ステップと、
前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力ステップと、
前記位置入力ステップにて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、前記力入力検出ステップにて検出された前記力入力に応じて、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させる変更ステップと、
を含むことを特徴とする入力制御方法。」である点。

[相違点]
(相違点12)
「変更ステップ」が、本件発明1では、「当該変更結果を当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの記憶部に記憶させる」のに対し、引用発明3’は、変更結果をそのような入力として記憶させるとは特定されていないない点。

相違点12について検討する。
本件発明1は、「変更手段」が、「当該変更結果を当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの記憶部に記憶させる」ものである。
本件発明1のこの発明特定事項に関して、本件明細書の【0062】、【0035】には、次のように記載されている。
「【0062】
図8に示すように、利用者が表示要素「B」上の接触位置で左方向に力Fを加えた場合、表示態様変更部102bは、表示領域の遷移処理を開始する。図9は、表示領域の遷移処理によって、表示領域がWINDOW1からWINDOW2へ移行する途中の段階の表示画面例を示す図である。図9に示すように、表示態様変更部102bは、力Fが検出された時点で表示制御部102aにより表示中であった表示領域(背景の表示要素「WINDOW1」ならびに表示要素「A」,「B」,「C」)を表示画面に対して相対的に移動させ、この移動と連動して別の表示要素「WINDOW2」を表示させる。このとき、図9に示すように、表示態様変更部102bは、力Fが検出された時点での接触位置に対応する表示要素「B」については、表示領域の遷移処理の期間中、位置判定部102dにより更新判定される接触位置に保持しつづける。ここで、図10は、表示領域の遷移処理の終了段階の表示画面例を示す図である。」
「【0035】
これら記憶部106の各構成要素のうち、要素ファイル106aは、表示画面の表示要素として表示可能なデータを記憶する要素データ記憶手段である。例えば、要素ファイル106aは、アイコンや文字、記号、図形、立体表示対象などの表示対象となるデータを記憶してもよい。・・・(中略)・・・また、後述する制御部102の処理により、移動、回転、拡大・縮小された結果は、要素ファイル106aに反映されてもよい。例えば、要素ファイル106aのフォルダXに格納されていた表示対象Aが、表示制御によってフォルダYに移動された場合、要素ファイル106aは、制御部102の制御により、表示対象AのデータをフォルダXからフォルダYに移動させて保存する。」
これらの記載によれば、本件発明3の「当該変更結果」とは、例えば、表示要素「B」の背景の表示要素「WINDOW1」を表示要素「WINDOW2」に変更した結果であり、「当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの記憶部に記憶させる」とは、例えば、表示対象となるアイコンのデータをフォルダXからフォルダYに移動させて保存することを意味しており、すなわち、例えば、表示要素(=表示対象)「B」の背景の表示要素「WINDOW1」を表示要素「WINDOW2」に変更した結果、表示要素(=表示対象)「B」のデータをフォルダXからフォルダYに移動させて保存することを意味しているといえる。
換言すれば、本件発明3の「当該変更結果を当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの記憶部に記憶させる」とは、(背景の変更などの)変更結果を、(フォルダYに保存することなどの)表示対象に対する情報として記憶することを意味しているといえる。

これに対し、引用発明3’においては「表示地図がスクロールされ」た結果が、本件発明1の「変更結果」に、また、引用発明3’における「(例えば、右向きの)矢印の表示シンボル」が、本件発明1の「表示対象」に対応付けられる。
しかしながら、引用発明3’では、「表示地図がスクロールされ」た結果は、「矢印の表示シンボル」自体に対する情報と特に関連はないから、引用例3には、「表示地図がスクロールされ」たという変更結果を、「矢印の表示シンボル」である表示対象に対する情報として記憶させようとする動機はない。
したがって、本件発明1は、引用例3に記載された発明であるということはできず、また、引用例3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。本件発明1の請求項1の記載を引用して記載した請求項2に係る本件発明2についても同様である。

(オ)その他
引用例1乃至3に記載された発明を組み合わせても、本件発明1、2は当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる理由は見当たらない。

(カ)まとめ
他に、本件発明1、2が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。
したがって、訂正後における特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであり、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。

ウ.本件発明5、6について
(ア)先願1との対比・判断
先願1には、特に、上記下線部の記載によれば、次の発明(以下、「先願発明1’’」という。)が記載されていると認められる。

[先願発明1’’]
「ユーザ101が力を入れてコンピューティング・デバイス100のタッチ・スクリーン・ディスプレイ102を触って複数の重なり合うインタフェース要素の1つを選択するプログラムであって、
タッチ・スクリーン・ディスプレイ102に、アドレス帳の中の選択可能なエントリ210A、210B、および210Cを表示し、各エントリは、重なり合うインタフェース要素を名前212、電話アイコン214およびテキスト・メッセージ・アイコン216の形で含み、
ユーザ101による接触は力センサ106により検出されるように比較的弱い力を生み出すので、名前212が選択されることになり、これにより、コンピューティング・デバイス100に例えば所望のエントリに関する情報を表示させることができ、
ユーザ101がより強い力を加えた場合、そのエントリに対して電話アイコン214が選択されることになり、電話アイコン214が選択されたことにより、タッチ・スクリーン・ディスプレイ102にアイコンの表示を半透明から不透明に変更することができ、これは、電話アイコン214を他のエントリより暗くすることによって、または、電話アイコン214の周囲に箱215を生成することもしくは他の任意の望ましい方式によって示され、電話アイコン214が選択されることによって、コンピューティング・デバイス100が当該エントリに関連付けられた電話番号に電話をかけるようにし、
さらに強い力が加わった結果、テキスト・メッセージ・アイコン216が選択され、当該アイコンの表示を半透明から不透明に変更することによって、テキスト・アイコン216の周囲に箱217を生成することもしくは他の任意の望ましい方式によって、テキスト・メッセージ・アイコン216を表示し、テキスト・アイコン216が選択されることによって、コンピューティング・デバイス100が当該エントリに関連付けられた番号に対してテキスト・メッセージを開始する、プログラム。」

本件発明5と先願発明1’’とを対比する。

先願発明1’’は、「ユーザ101が力を入れてコンピューティング・デバイス100のタッチ・スクリーン・ディスプレイ102を触って複数の重なり合うインタフェース要素の1つを選択するプログラム」であり、本件発明5とは、「コンピュータに実行させるためのプログラム」である点で一致する。
また、先願発明1’’は、「ユーザ101による接触は力センサ106により検出されるように比較的弱い力を生み出すので、名前212が選択されることにな」るが、このときの比較的弱い力を生み出すユーザによる接触は、力センサの出力がほぼ0である場合も含まれると解される。また、「ユーザ101がより強い力を加えた場合、そのエントリに対して電話アイコン214が選択されることにな」り、「さらに強い力が加わった結果、テキスト・メッセージ・アイコン216が選択され」るから、先願発明1’’は、ユーザがタッチ・スクリーン・ディスプレイにほぼ0の弱い力で接触したときと、より強い力やさらに強い力を加えたときとでは異なる処理がされるものである。
したがって、本件発明5と先願発明1’’とは、「コンピュータにおける操作入力の多様性を高めるために、表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理をコンピュータに実行させるためのプログラム」である点で一致する。

先願発明1’’では、「ユーザ101が力を入れてコンピューティング・デバイス100のタッチ・スクリーン・ディスプレイ102を触」り、「ユーザ101による接触は力センサ106により検出される」から、この検出される動作は、本件発明5の「表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出ステップ」に相当し、両者は、「表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出ステップ」を実行させる点で一致する。

先願発明1’’は、「ユーザ101が力を入れてコンピューティング・デバイス100のタッチ・スクリーン・ディスプレイ102を触って複数の重なり合うインタフェース要素の1つを選択する」ものであり、「タッチ・スクリーン・ディスプレイ102に、アドレス帳の中の選択可能なエントリ210A、210B、および210Cを表示し、各エントリは、重なり合うインタフェース要素を名前212、電話アイコン214およびテキスト・メッセージ・アイコン216の形で含」む。このように「重なり合うインタフェース要素」を含む「エントリ」は複数あるから、ユーザが、どのエントリが含む重なり合うインタフェース要素の1つを選択しようとしているのか、すなわち、どのエントリを選択しようとしているのかを検出しなければならないのは明らかであり、先願発明1’’では、ユーザが触った位置を検出しているのは明らかである。この検出する動作は、本件発明5の「前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力ステップ」に相当し、両者は、「前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力ステップ」を実行させる点で一致する。

上述したように、先願発明1’’では、ユーザが触った位置を検出し、どのエントリ210A、210B、および210Cを選択しようとしているのかを検出しているといえるから、選択されたエントリは、本件発明5の「前記位置入力ステップにて検出された位置の表示対象」に相当する(なお、先願発明1’’では、ユーザが触った位置によりエントリ210A、210B、および210Cを選択しているのであって、名前212を選択しているのではない。名前212は、力センサ106により比較的弱い力が検出されたことで選択される。図5では、名前212を指で触っているようすが示されているが、エントリ210Aを選択するためには、指で触る位置はエントリ210A内のどの位置でも同じ動作となると考えられる。したがって、選択された名前212は、本件発明5の「前記位置入力ステップにて検出された位置の表示対象」には相当しない。)。

したがって、本件発明5と先願発明1’’との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「コンピュータにおける操作入力の多様性を高めるために、表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出ステップと、
前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力ステップと、
を実行させるためのプログラム。」である点。

[相違点]
(相違点13)
本件発明5では、「前記位置入力ステップにて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、前記力入力検出ステップにて検出された前記力入力に応じて、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させ、当該変更結果を当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの記憶部に記憶させる変更ステップ」を実行させるのに対し、先願発明1’’は、そのようなステップを実行させない点。

したがって、本件発明5と先願1に記載された発明とは同一であるということはできない。本件発明5の請求項5の記載を引用して記載した請求項6に係る本件発明6についても同様である。

(イ)引用例1との対比・判断
引用例1には、特に、上記下線部の記載によれば、次の発明(以下、「引用発明1’’」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明1’’]
「経路表示装置の機能が組み込まれたナビゲーション装置20の経路表示プログラムであって、
検知器32は、感圧方式のセンサにより、ユーザが検知器32に触れたこと、及び、離れたことを検知することができるものであり、
ユーザ側に板状の検知器32が配置され、ユーザが指で触れた操作をその位置と共に検知することができるようになっており、その検知器32のユーザ側と反対側の面には、同じく板状の液晶パネル26aが密着して配置されており、
制御部29は、ユーザによって検知器32が触れられ、検知器32が検知状態にあるか否かを判定し(S105)、検知状態にあると判定した場合に、検知器32上のユーザによって操作された位置を検出し、オンルートスクロールを開始する(S115)ものであり、
オンルートスクロールというのは、経路上を移動する点(移動点)を表示面上の基準点に一致させた地図をスクロールさせるものであり、
基準点がユーザによって触れられている場合にのみオンルートスクロールを行うようになっていてもよく、その場合、自車位置マークがユーザによって触れられていると判定した場合に、オンルートスクロールを開始し、
オンルートスクロールが進み、自車位置マークCが報知ポイントBに到達すると、指Eの位置に対応する体感器31が作動し、指Eに振動を伝え、また、経路図511の上端に経路関連情報513が表示される、ナビゲーション装置の経路表示プログラム。」

本件発明5と引用発明1’’とを対比する。

引用発明1’’の「ナビゲーション装置20の経路表示プログラム」は、「コンピュータに実行させるためのプログラム」といえるのは明らかであるから、本件発明5と引用発明1’’は、「コンピュータに実行させるためのプログラム」である点では共通するものである。

引用発明1’’は、「検知器32が配置され」、「検知器32は、感圧方式のセンサにより、ユーザが検知器32に触れたこと、及び、離れたことを検知することができるものであ」るから、引用発明1’’の「検知器32」による検知は、本件発明5の「表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出ステップ」に相当し、両者は、「表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出ステップ」を実行させる点で一致する。

引用発明1’’の「検知器32」は、「ユーザが指で触れた操作をその位置と共に検知することができるようになって」いるから、引用発明1’’の「検知器32」による検知は、本件発明5の「前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力ステップ」に相当し、両者は、「前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力ステップ」を実行させる点で一致する。

引用発明1’’は、「基準点がユーザによって触れられている場合にのみオンルートスクロールを行うようになって」いる場合、「自車位置マークがユーザによって触れられていると判定した場合に、オンルートスクロールを開始」するもの(オンルートスクロールとは、経路上を移動する点(移動点)を表示面上の基準点に一致させた地図をスクロールさせるもの)であり、この場合、ユーザにより触られている自動車位置マークは、オンルートスクロールが開始されても基準点を動かずに、地図のみがスクロールされる。そのときには、相対的には、地図の経路上を自動車位置マークが移動するといえる。
引用発明1’’のこの動作は、本件発明5の「前記位置入力ステップにて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、前記力入力検出ステップにて検出された前記力入力に応じて、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させ」る「変更ステップ」に相当する。
したがって、本件発明5と引用発明1’’とは、「前記位置入力ステップにて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、前記力入力検出ステップにて検出された前記力入力に応じて、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させる変更ステップ」を実行させるといえる点で共通する。

したがって、本件発明5と引用発明1’’との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「コンピュータに実行させるためのプログラムであって、
表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出ステップと、
前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力ステップと、
前記位置入力ステップにて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、前記力入力検出ステップにより検出された前記力入力に応じて、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させる変更ステップと、
を実行させるためのプログラム。」である点。

[相違点]
(相違点14)
本件発明5は、「コンピュータにおける操作入力の多様性を高めるために、表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理をコンピュータに実行させるためのプログラム」であるのに対し、引用発明1’’は、そのようなプログラムではない点。
(相違点15)
「変更ステップ」が、本件発明5では、「当該変更結果を当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの記憶部に記憶させる」のに対し、引用発明1’’では、変更結果をそのような入力として記憶されるとは特定されていない点。

相違点14について検討する。
本件発明5は、「コンピュータにおける操作入力の多様性を高めるために、表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理をコンピュータに実行させるためのプログラム」である。
これに対し、引用発明1’’は、検知器にユーザが指で触れた操作をその位置と共に検知し、オンルートスクロールを開始するものであって、表示画面への接触操作により処理をコンピュータに実行させるためのプログラムといえるにとどまり、該接触操作を、力入力を伴う場合と伴わない場合とに分け、それぞれの場合で互いに異なる処理を行うことまでは、引用例1に記載乃至示唆はされていないし、引用発明1’’において、そのようにする動機はない。
したがって、相違点15について検討するまでもなく、本件発明5が、引用例1に記載された発明であるということはできず、また、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。本件発明5の請求項5の記載を引用して記載した請求項6に係る本件発明6についても同様である。

(ウ)引用例2との対比・判断
引用例2には、特に、上記下線部の記載によれば、次の発明(以下、「引用発明2’’」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明2’’]
「ナビゲーション装置に関し、ユーザの操作により地図情報の縮尺(スケール)変更やスクロールを実行するプログラムであって、
ディスプレイ12には、拡大スクロールボタン310と、縮小スクロールボタン312が表示され、拡大スクロールボタン310若しくは縮小スクロールボタン312が表示された領域が、ユーザによりタッチされると、ボタンの位置に対応する方向に画面がスクロールされ、また、スクロールと同時に(並行して)、ボタンに対応するスケール(拡大若しくは縮小)へのスケール変更が行われ、このように、ユーザは、1つのボタンでスクロールおよびスケール変更の操作を行うことができるプログラム。」

本件発明5と引用発明2’’とを対比する。

引用発明2’’の「ナビゲーション装置に関し、ユーザの操作により地図情報の縮尺(スケール)変更やスクロールを実行する方法」は、「コンピュータに実行させるためのプログラム」といえるものであるから、本件発明5と引用発明2’’は、「コンピュータに実行させるためのプログラム」である点では共通するものである。

引用発明2’’では、「拡大スクロールボタン310若しくは縮小スクロールボタン312が表示された領域が、ユーザによりタッチされると、ボタンの位置に対応する方向に画面がスクロールされ」るから、引用発明2’’は、ユーザによりタッチされた位置を検出する動作を行っているといえる。引用発明2’’のこの動作は、本件発明5の「前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力ステップ」に相当し、両者は、「オブジェクトが表示画面に接触した位置を検出する位置入力ステップ」を実行させる点で一致する。

引用発明2’’で、「拡大スクロールボタン310若しくは縮小スクロールボタン312が表示された領域が、ユーザによりタッチされると、ボタンの位置に対応する方向に画面がスクロールされ」る場合、ユーザによりタッチされているボタンは動かずに、画面の地図のみがスクロールされる。そのときには、相対的には、画面の地図に対してボタンが移動するといえる。
引用発明2’’のこの動作は、本件発明5の「前記位置入力ステップにて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ」、「当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させ」る「変更ステップ」に相当する。
したがって、本件発明5と引用発明2’’とは、「前記位置入力ステップにて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させる変更ステップ」を実行させる点では共通する。

したがって、本件発明5と引用発明2’’との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「コンピュータに実行させるためのプログラムであって、
オブジェクトが表示画面に接触した位置を検出する位置入力ステップと、
前記位置入力ステップにて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させる変更ステップと、
を実行させるためのプログラム。」である点。

[相違点]
(相違点16)
本件発明5は、「コンピュータにおける操作入力の多様性を高めるために、表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理をコンピュータに実行させるためのプログラム」であるのに対し、引用発明2’’は、そのようなプログラムではない点。
(相違点17)
本件発明5は、「表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出ステップ」、および、「前記位置入力ステップにて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、前記力入力検出ステップにて検出された前記力入力に応じて、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させ、当該変更結果を当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの記憶部に記憶させる変更ステップ」を実行させるのに対し、引用発明2’’では、そのような力入力検出ステップ、および、変更ステップを実行させるものではない点。

相違点16について検討する。
本件発明5は、「コンピュータにおける操作入力の多様性を高めるために、表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理をコンピュータに実行させるためのプログラム」である。
これに対し、引用発明2’’は、ディスプレイの拡大スクロールボタン若しくは縮小スクロールボタンが表示された領域が、ユーザによりタッチされると、ボタンの位置に対応する方向に画面がスクロールされ、スクロールと同時に、ボタンに対応するスケール(拡大若しくは縮小)へのスケール変更が行われるものであって、表示画面への接触操作により処理をコンピュータに実行させるためのプログラムといえるにとどまり、該接触操作を、力入力を伴う場合と伴わない場合とに分け、それぞれの場合で互いに異なる処理を行うことまでは、引用例2に記載乃至示唆はされていないし、引用発明2’’において、そのようにする動機はない。
したがって、相違点17について検討するまでもなく、本件発明5が、引用例2に記載された発明であるということはできず、また、引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。本件発明5の請求項5の記載を引用して記載した請求項6に係る本件発明6についても同様である。

(エ)引用例3との対比・判断
引用例3には、特に、上記下線部の記載によれば、実施例として次のプログラムが記載されていると認められる。

「ナビゲーション装置の入力手段の選択に基づく表示プログラムであって、
ディスプレイ33に表示されるアイコン等の表示シンボル60は、複数のキースイッチに対応しており、クリックまたは入力動作されると、情報が入力され、スクロール等の処理が行われ、
入出力装置30は、ディスプレイ33、タッチスイッチ34等から構成され、タッチスイッチ34は、ディスプレイ33の画面上に付着され、透明タッチスイッチが複数、平面マトリクス状に配置されており、
リモコン50には方形状の凹部51が形成され、この凹部51の中の底面には3列×4段=12個のキースイッチ52が設けられており、上記凹部51の内側面には、赤外線カプラ53が設けられ、この凹部51のどのキースイッチ52上に指等の入力媒体が入れられたかが検出され、発光された赤外線カプラ53と受光すべき赤外線カプラ53の非受光に基づいて、上記指等の入れられた箇所が判別かつ検出され、この指の入れられた箇所に対応したキースイッチ52は、入力動作まで達していないが、当該キースイッチ52が選択された状態であり、この検出結果に基づいて当該選択されたキースイッチ52に対応するディスプレイ33上の表示シンボル60の表示状態が変化され、
ナビゲーションのための各種処理のうち経路探索処理では、上記表示シンボル60のうち、9つの矢印の表示シンボル60に応じたキースイッチ52の操作が判別され、操作された表示シンボル60に応じた方向に表示地図がスクロールされる、プログラム。」

そして、引用例3の【0103】、【0104】には、この実施例のプログラムを変更する例が記載されており、その変更内容は、「赤外線カプラ53」、「キースイッチ52」を、それぞれ、「ディスプレイ33の表面に形成されたタッチスイッチ」、「ディスプレイ33の裏に設けられた1個のキースイッチ」で代用するものである。
上記実施例のプログラムに、このように代用する変更をした場合には、ディスプレイ33の表面に形成されたタッチスイッチを指で触ることにより、表示シンボルが選択されて表示状態が変化され、さらにディスプレイ33を押してディスプレイ33の裏に設けられた1個のキースイッチを操作することにより、該選択された表示シンボル60に対応した処理がされることとなる。
したがって、上記引用例3には、上記実施例のプログラムを変更する例として、次の発明(以下、「引用発明3’’」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明3’’]
「ナビゲーション装置の入力手段の選択に基づく表示プログラムであって、
ディスプレイ33には、アイコン等の表示シンボル60が表示され、
入出力装置30は、ディスプレイ33、タッチスイッチ34等から構成され、タッチスイッチ34は、ディスプレイ33の画面上に付着され、透明タッチスイッチが複数、平面マトリクス状に配置されており、
ディスプレイ33の表面に形成されたタッチスイッチを指で触ることにより、表示シンボル60が選択されて表示状態が変化され、さらにディスプレイ33を押してディスプレイ33の裏に設けられた1個のキースイッチを操作することにより、該選択された表示シンボル60に対応した処理がされ、
ナビゲーションのための各種処理のうち経路探索処理では、上記表示シンボル60のうち、9つの矢印の表示シンボル60に応じた方向に表示地図がスクロールされる、プログラム。」

本件発明5と引用発明3’’とを対比する。
引用発明3’’は、「ナビゲーション装置の入力手段の選択に基づく表示プログラム」であり、本件発明5とは、「コンピュータに実行させるためのプログラム」である点で一致する。
また、引用発明3’’は、「ディスプレイ33の表面に形成されたタッチスイッチを指で触ることにより、表示シンボル60が選択されて表示状態が変化され、さらにディスプレイ33を押してディスプレイ33の裏に設けられた1個のキースイッチを操作することにより、該選択された表示シンボル60に対応した処理がされ」るものであって、タッチスイッチを指で触ったときと、さらにディスプレイ33を押してキースイッチを操作したときとでは異なる処理がされるから、本件発明5と引用発明3’’とは、「コンピュータにおける操作入力の多様性を高めるために、表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理をコンピュータに実行させるためのプログラム」である点で一致する。

引用発明3’’の「さらにディスプレイ33を押してディスプレイ33の裏に設けられた1個のキースイッチを操作すること」は、該1個のキースイッチによって検出されるから、この検出される動作は、本件発明5の「表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出ステップ」に相当し、両者は、「表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出ステップ」を実行させる点で一致する。

引用発明3’’の「ディスプレイ33の表面に形成されたタッチスイッチを指で触ること」は、「ディスプレイ33の画面上に付着され、透明タッチスイッチが複数、平面マトリクス状に配置されて」いる「タッチスイッチ34」によって検出されるから、この検出される動作は、本件発明5の「前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力ステップ」に相当し、両者は、「前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力ステップ」を実行させる点で一致する。

引用発明3’’の「経路探索処理」では、ディスプレイ33の表面に形成されたタッチスイッチを指で触ることにより、矢印の表示シンボルが選択され、さらにディスプレイ33を押してディスプレイ33の裏に設けられた1個のキースイッチを操作することにより、該選択された矢印の表示シンボル60に応じた方向に表示地図がスクロールされることとなり、そのときには、操作された矢印の表示シンボルの表示は変化しないと考えられる。
したがって、引用発明3’’の経路探索処理は、「前記位置入力ステップにて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、前記力入力検出ステップにて検出された前記力入力に応じて、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させ」るステップということができる。
よって、本件発明5と引用発明3’’とは、「前記位置入力ステップにて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、前記力入力検出ステップにて検出された前記力入力に応じて、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させる変更ステップ」を実行させるといえる点では共通するといえる。

したがって、本件発明5と引用発明3’’との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「コンピュータにおける操作入力の多様性を高めるために、表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出ステップと、
前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力ステップと、
前記位置入力ステップにて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、前記力入力検出ステップにて検出された前記力入力に応じて、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させる変更ステップと、
を実行させるためのプログラム。」である点。

[相違点]
(相違点18)
「変更ステップ」が、本件発明5では、「当該変更結果を当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの記憶部に記憶させる」のに対し、引用発明3’’は、変更結果をそのような入力として記憶させるとは特定されていない点。

相違点18について検討する。
本件発明5は、「変更手段」が、「当該変更結果を当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの記憶部に記憶させる」ものである。
本件発明5のこの発明特定事項に関して、本件明細書の【0062】、【0035】には、次のように記載されている。
「【0062】
図8に示すように、利用者が表示要素「B」上の接触位置で左方向に力Fを加えた場合、表示態様変更部102bは、表示領域の遷移処理を開始する。図9は、表示領域の遷移処理によって、表示領域がWINDOW1からWINDOW2へ移行する途中の段階の表示画面例を示す図である。図9に示すように、表示態様変更部102bは、力Fが検出された時点で表示制御部102aにより表示中であった表示領域(背景の表示要素「WINDOW1」ならびに表示要素「A」,「B」,「C」)を表示画面に対して相対的に移動させ、この移動と連動して別の表示要素「WINDOW2」を表示させる。このとき、図9に示すように、表示態様変更部102bは、力Fが検出された時点での接触位置に対応する表示要素「B」については、表示領域の遷移処理の期間中、位置判定部102dにより更新判定される接触位置に保持しつづける。ここで、図10は、表示領域の遷移処理の終了段階の表示画面例を示す図である。」
「【0035】
これら記憶部106の各構成要素のうち、要素ファイル106aは、表示画面の表示要素として表示可能なデータを記憶する要素データ記憶手段である。例えば、要素ファイル106aは、アイコンや文字、記号、図形、立体表示対象などの表示対象となるデータを記憶してもよい。・・・(中略)・・・また、後述する制御部102の処理により、移動、回転、拡大・縮小された結果は、要素ファイル106aに反映されてもよい。例えば、要素ファイル106aのフォルダXに格納されていた表示対象Aが、表示制御によってフォルダYに移動された場合、要素ファイル106aは、制御部102の制御により、表示対象AのデータをフォルダXからフォルダYに移動させて保存する。」
これらの記載によれば、本件発明3の「当該変更結果」とは、例えば、表示要素「B」の背景の表示要素「WINDOW1」を表示要素「WINDOW2」に変更した結果であり、「当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの記憶部に記憶させる」とは、例えば、表示対象となるアイコンのデータをフォルダXからフォルダYに移動させて保存することを意味しており、すなわち、例えば、表示要素(=表示対象)「B」の背景の表示要素「WINDOW1」を表示要素「WINDOW2」に変更した結果、表示要素(=表示対象)「B」のデータをフォルダXからフォルダYに移動させて保存することを意味しているといえる。
換言すれば、本件発明5の「当該変更結果を当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの記憶部に記憶させる」とは、(背景の変更などの)変更結果を、(フォルダYに保存することなどの)表示対象に対する情報として記憶することを意味しているといえる。

これに対し、引用発明3’’においては「表示地図がスクロールされ」た結果が、本件発明5の「変更結果」に、また、引用発明3’’における「(例えば、右向きの)矢印の表示シンボル」が、本件発明5の「表示対象」に対応付けられる。
しかしながら、引用発明3’’では、「表示地図がスクロールされ」た結果は、「矢印の表示シンボル」自体に対する情報と特に関連はないから、引用発明3’’において、「表示地図がスクロールされ」たという変更結果を、「矢印の表示シンボル」である表示対象に対する情報として記憶させようとする動機はない。
したがって、本件発明5は、引用例3に記載された発明であるということはできず、また、引用例3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。本件発明5の請求項5の記載を引用して記載した請求項6に係る本件発明6についても同様である。

(オ)その他
引用例1乃至3に記載された発明を組み合わせても、本件発明5、6は当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる理由は見当たらない。

(カ)まとめ
他に、本件発明5、6が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。
したがって、訂正後における特許請求の範囲の請求項5、6に記載された事項により特定される発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであり、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。

第4 むすび
以上のとおり、本件訂正審判の請求に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第3項ないし第7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
入力制御方法、コンピュータ、および、プログラム
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力制御方法、コンピュータ、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンや、リトグラフ(石板)状のコンピュータや、タブレット端末などのハンドヘルドデバイス等の様々な形態のコンピュータが開発されている。これらのハンドヘルドデバイスでは、従来型の携帯電話やノートパソコン等に備えられていた操作ボタンやマウスやキーボード等の入力手段の代わりに、タッチパネルを備えていることが多い。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の装置では、タッチパネルを2本の指で操作することにより、画像の拡大・縮小等の操作や、重力加速度センサを用いて表示画面における上方向を決定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特許第4892061号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のハンドヘルドデバイスでは、マウスやキーボードや操作ボタン等の入力手段を省略した代わりに、タッチパネル等の入力手段を用いて入力操作を補っていたが、タッチパネル等による入力方式では入力操作の多様性に限界があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、コンピュータにおける操作入力の多様性を高めることができる、入力制御方法、コンピュータ、および、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するため、本発明は、コンピュータにおける入力制御方法であって、表示画面に接触したオブジェクトの摩擦力による入力を、直接的または間接的に検出する摩擦入力検出ステップと、前記摩擦入力検出ステップにて検出された前記摩擦力による入力に応じて、対象データを変更または出力態様を変更する変更ステップと、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の情報処理装置(コンピュータ)は、表示画面に接触したオブジェクトの摩擦力による入力を、直接的または間接的に検出する摩擦入力検出手段と、前記摩擦入力検出手段により検出された前記摩擦力による入力に応じて、対象データを変更または出力態様を変更する変更手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、コンピュータに実行させるためのプログラムであって、表示画面に接触したオブジェクトの摩擦力による入力を、直接的または間接的に検出する摩擦入力検出ステップと、前記摩擦入力検出ステップにて検出された前記摩擦力による入力に応じて、対象データを変更または出力態様を変更する変更ステップと、を実行させることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記のプログラムをコンピュータ読取可能に格納した記録媒体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、従来のコンピュータにおいて、操作入力の多様性を高めることができる、入力制御方法、情報処理装置、および、プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施形態の基本原理を示す原理構成図である。
【図2】図2は、本実施の形態が適用される情報処理装置100の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】図3は、情報処理装置100をタッチパネル114の側面から見た構成の一例である。
【図4】図4は、タッチパネル114に対する接触面の形状の遷移例を示す図である。
【図5】図5は、タッチパネル114に対する接触面の圧力分布(等圧線)の遷移例を示す図である。
【図6】図6は、本実施の形態における情報処理装置100の表示情報処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】図7は、表示制御部102aの制御によるタッチパネル114の表示画面を含む情報処理装置100の外観の一例を示す図である。
【図8】表示態様変更部102bによる表示領域の遷移処理を説明するための、操作と画面遷移の一例を示す図である。
【図9】図9は、表示領域の遷移処理によって、表示領域がWINDOW1からWINDOW2へ移行する途中の段階の表示画面例を示す図である。
【図10】図10は、表示領域の遷移処理の終了段階の表示画面例を示す図である。
【図11】図11は、表示制御部102aのタッチ入力処理によって、図10の表示画面から更新された表示画面の一例を示す図である。
【図12】図12は、図14および図15において摩擦力方向の変遷を説明するために用いる図式(円形グラフ)の意味を説明するための図である。
【図13】図13は、摩擦力方向の変遷による入力の一例を示す図である。
【図14】図14は、摩擦力方向の遷移によって、文字を入力する例を示した図である。
【図15】図15は、摩擦力方向の遷移によって、文字や数字を入力する例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の本実施の形態にかかる、入力制御方法、情報処理装置、および、プログラム、並びに、記録媒体の実施の形態を、以下に図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
[本実施の形態の概要]
本実施の形態は、コンピュータにおける入力制御方法、当該入力制御方法を実行するコンピュータ(情報処理装置)、および、当該入力制御方法を実行させるためのプログラム、並びに、当該プログラムをコンピュータ読取可能に記録した記録媒体に関する。
【0015】
本実施の形態では、コンピュータは、表示画面に接触したオブジェクトの摩擦力による入力を、直接的または間接的に検出する。そして、本実施形態のコンピュータは、検出された摩擦力による入力に応じて、対象データを変更または出力態様を変更する。
【0016】
ここで、オブジェクトとは、タッチパネル等の表示画面に接触させて操作可能な物体であって、例えば、利用者の体の一部(手や指等)、スタイラスペン等であってもよい。対象データを変更とは、対象データの数値を増減させることや、対象データ(文字列等)に文字等を追加すること、対象データを複製(コピー)すること、対象データに関連付けられた情報(リンク情報、格納先等)を変更すること等のように、データ自体を変更することを特徴とする。一方、出力態様を変更するとは、表示画面の拡大・縮小、出力音声の増減、再生/一時停止等の操作等のように、データ自体を変更することなく出力態様を変更することを特徴とする。しかしながら、また、対象データの変更であるか出力態様の変更であるか、いずれに属するかを厳密にカテゴリー分けする必要はない。両者は、一体として同時に行われてもよく、一方の処理だけが実行されてもよいものである。
【0017】
ここで、本実施形態のコンピュータにおいて、摩擦力による入力を検出する場合に、摩擦力の方向を、直接的または間接的に検出してもよい。その際、本コンピュータは、摩擦力の方向に応じて、対象データまたは出力態様を変更してもよい。
【0018】
なお、変更する対象の対象データは、予め定められた任意のデータであっても、利用者が指定したデータであってもよい。例えば、本実施の形態のコンピュータにおいて、オブジェクトが表示画面に接触した位置を検出する位置入力手段(タッチパネル等)を更に備え、位置入力手段により検出された位置に対応する表示対象や表示要素を、変更する対象のデータとしてもよい。同様に、出力態様を変更する対象の出力は、予め定められた任意の出力(音声出力や表示出力)であってもよく、利用者が指定した出力であってもよい。例えば、本実施の形態のコンピュータにおいて、音声を検出する音声検出手段(マイク等)を更に備え、利用者が音声にて指定した出力(スケジュール呼び出しのために日時指定を行うための表示要素の出力、再生音楽のボリューム増減、再生音楽の変更など)を変更対象としてもよい。このように、本実施形態によれば、操作入力の多様性を高めることができる。特に、従来のタッチパネルにおいては、位置履歴による軌跡の入力等のように、利用者は、表示画面を見ながら入力する必要があったが、本実施の形態によれば、利用者は、摩擦力の方向等による物理感覚的な入力によって、表示画面を注視することなくも文字入力や、再生ボリュームの増減、日時指定等を行うことができる。なお、本実施の形態の詳細(ハードウェア構成や処理の詳細等)については以下に詳述する。
【0019】
[実施形態]
以下、本発明にかかるマウスアクションに類似した入力操作の実施の形態の概要について説明し、その後、本実施の形態の構成および処理等について詳細に説明する。
【0020】
本実施の形態は、概略的に、以下の基本的特徴を有する。ここで、図1は、本発明の実施形態の基本原理を示す原理構成図である。
【0021】
まず、図1に示すように、本実施の形態にかかるコンピュータは、表示手段と、当該表示手段に対する位置入力手段を備える。利用者は、位置入力手段を介して、表示手段の表示画面上の位置を指定することができる。表示画面上の位置指定によって、利用者は、表示手段に表示される表示要素を指定することができる。なお、表示画面に表示される表示要素は、一つに限らず、アイコン等の表示対象や背景等からなる複数の要素を含む。図1の例では、表示画面は、表示要素Aと表示要素Bから構成されている。
【0022】
一例として図1に示すように、利用者は、表示画面上において手や指等を使って位置を指示すると、位置入力手段は、指示された位置を検出する。図1の例では、位置入力手段は、カメラなどの撮像手段であり、利用者の手や指等を直接撮像して指示位置を検出しているが、これに限られず、位置入力手段は、表示手段とともにタッチパネル等として構成されてもよい。また、図1の例では、利用者は、手や指等を用いて位置を指定しているが、これに限られず、スタイラス等の道具を用いて位置を指定し、位置入力手段は、その道具で指定された位置を検出してもよい。また、図1の例では、表示画面を二次元の平面としているが、これに限られず、曲面や、球体等の三次元の立体であってもよい。
【0023】
そして、本実施の形態にかかるコンピュータは、位置入力手段を介して、連続的に位置入力が行われた場合と、表示手段に対して所定の摩擦力または押下力が直接または間接的に検出された場合との間で、表示手段に表示する表示要素に対する変化態様を異ならせる。すなわち、本実施の形態にかかるコンピュータは、位置入力された場合と、摩擦力や押下力等の力入力された場合との間で、対応する表示要素の変化態様を異ならせる。例えば、位置入力にかかる表示要素と、力入力にかかる表示要素とを、別の態様で変化させる。変化態様は、一例として、拡大、縮小、移動(フォルダの上位層または下位層あるいは同位層のフォルダへの移動を含む。)、回転等であってもよい。
【0024】
一例として、本実施の形態にかかるコンピュータは、表示手段に対して所定の摩擦力または押下力が直接または間接的に検出された場合に、表示手段における表示要素を、移動、拡大、縮小、または、回転させるステップと、位置入力手段を介して入力される位置に対応する表示要素を連続的に入力される位置に保持するステップとを、同時に、並列的に、あるいは、互いに繰り返し実行する。また、本実施の形態にかかるコンピュータは、表示手段に対して所定の摩擦力もしくは押下力が直接または間接的に検出された場合に、表示要素を表示手段に対して相対的に移動させるとともに、位置入力手段を介して入力される位置に対応する表示要素を連続的に入力される位置に保持し続ける。
【0025】
例えば、図1の画面例において、利用者が、手や指やスタイラスペン等を使って、表示要素Aの位置を指示したとすると、本コンピュータは、表示要素Aを、位置入力手段を介して連続的に入力される間、その指示位置に保持し続ける。すなわち、位置入力開始から位置入力終了までの間、指示位置が移動したときは、その指示位置に沿って表示要素Aが移動されることになり、反対に、位置入力開始から位置入力終了までの間、指示位置が同じ位置の場合は、その指示位置どおり表示要素Aが同じ位置に固定されることになる。その上で、本実施の形態にかかるコンピュータは、表示手段に対して所定の摩擦力もしくは押下力が直接または間接的に検出された場合に、各表示要素を表示手段に対して相対的に移動させる。その際、位置入力手段を介して連続的に入力される位置に対応する表示要素については、相対的な移動対象の例外となる。すなわち、図1の例で、利用者が表示要素Aの位置を指示しながら所定の力入力を行うと、コンピュータは、表示要素A以外の表示要素(すなわち表示要素B)を表示手段に相対的に移動させる。なお、その間、表示要素Aは、連続的に入力される位置下に置かれる。
【0026】
以上が、本実施の形態の概要である。本実施の形態によれば、利用者は、表示手段に対する位置入力に加えて、力入力を同時に行うことができるので、位置入力と連動させた複雑な入力(例えば、マウスアクション類似の入力)を、簡単な入力操作で行うことができる。例えば、位置入力にかかる表示要素と、位置入力にかからない表示要素とを、異なる変化態様で制御することができる。
【0027】
より具体的には、従来、大画面の表示手段とマウス等のポインティングデバイスを備えたコンピュータ(デスクトップ型パーソナルコンピュータ等)では、複数のウィンドウを表示しながら、ウィンドウ間で表示対象をドラッグアンドドロップする等のマウスアクションによる入力操作が可能であった。近年、ハンドヘルドデバイス等のように、比較的小さな画面の表示手段と、タッチパネル等のポインティングデバイスを備えたコンピュータでは、複数のウィンドウを表示するほどの画面領域がない。そのため、連続的な位置入力(フリック操作やスライド操作など)等によって画面を遷移させたり、ボタンやスイッチ等を使って、アプリケーションやウィンドウを切り替えたりすることが考えられる。しかしながら、ドラッグアンドドロップ等のマウスアクションに相当する操作を行うには、上述の切り替えまたは画面遷移のための操作と、表示対象の指定操作を同時に行わなければならず、操作が煩雑になるというという問題がある。より具体的には、本願発明者は以下のように当該問題を分析した。
【0028】
比較的大きな表示画面とマウスを備えたコンピュータでは、表示画面の中に複数のウィンドウを表示させておけるため、ドラッグアンドドロップ時に、表示領域を遷移させる必要がない。しかしながら、比較的小さな表示画面とタッチパネルを備えたコンピュータでは、複数のウィンドウを並列的に表示させておけるほどの表示領域がないため、タッチパネルのスライド操作によって、ドラッグアンドドロップ操作を行うのは難しい。そこで、ドラッグアンドドロップ操作時に、表示領域を遷移させて、表示中のウィンドウから非表示のウィンドウに切り替えて、前者のウィンドウ中の表示対象を後者のウィンドウにドロップすることが考えられる。しかしながら、その場合にも表示領域を遷移させるためのボタン(例えば、ウィンドウ切り替えスイッチ)が必要になり、利用者は、表示対象を指定する操作とともに当該ボタンを押下しなければならず操作が複雑になるという問題点がある。
【0029】
本願発明者は、この問題点に鑑み、画面の遷移やウィンドウの切り替えといった入力操作と、アイコンや文字列等の表示対象の移動させる入力操作を、一つに統合する必要があると考えた。そして、鋭意検討の結果、本願発明者は、接触等における位置入力操作において、位置入力と同時に力入力を行えるよう構成すれば、両者を統合することができることを発見した。すなわち、本願発明によれば、利用者は、位置を指定する際に、入力する力を自由に調整することが可能であるので、一つの入力操作において、力と位置(座標)との2つの入力を行うことができる。例えば、一方では、力入力によって、画面遷移やウィンドウの切り替えといった操作を行いながら、他方では、位置入力によって、表示対象の移動といった操作を、同時に行うことができる。
【0030】
なお、力入力においては、方位性や方向性を検出してもよく、本実施の形態にかかるコンピュータは、その方位性や方向性にあわせて、表示要素を、移動、回転(例えば、右方向なら右回転で左方向なら左回転など)、あるいは、拡大・縮小(例えば、下方向なら拡大で上方向なら縮小など)等の変化を起こさせてもよい。
【0031】
以上が、本発明の本実施の形態の概要の説明を終える。なお、上記の説明では、位置入力にかかる表示要素以外の表示要素を、所定の力入力に従って表示変更させる例について説明した場合があったが、これに限られず、位置入力にかかる表示要素を、所定の力入力に従って表示変更させてもよい。例えば、一方では、位置入力によって、画面遷移やウィンドウの切り替えといった操作を行いながら、他方では、力入力によって、表示対象の移動といった操作を、同時に行わせてもよい。
【0032】
[情報処理装置100の構成]
まず、本実施の形態にかかるコンピュータの一例である情報処理装置100の構成について説明する。図2は、本実施の形態が適用される情報処理装置100の構成の一例を示すブロック図であり、該構成のうち本実施の形態に関係する部分のみを概念的に示している。
【0033】
図2において情報処理装置100は、概略的に、情報処理装置100の全体を統括的に制御するCPU等の制御部102、通信回線等に接続されるルータ等の通信装置(図示せず)に接続される通信制御インターフェース部104、検出装置112やタッチパネル114等に接続される入出力制御インターフェース部108、および、各種のデータベースやテーブルなどを格納する記憶部106を備えて構成されており、これら各部は任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0034】
記憶部106に格納される各種のデータベースやテーブル(要素ファイル106a等)は、固定ディスク装置等のストレージ手段であり、各種処理に用いる各種のプログラムやテーブルやファイルやデータベースやウェブページ等を格納する。
【0035】
これら記憶部106の各構成要素のうち、要素ファイル106aは、表示画面の表示要素として表示可能なデータを記憶する要素データ記憶手段である。例えば、要素ファイル106aは、アイコンや文字、記号、図形、立体表示対象などの表示対象となるデータを記憶してもよい。また、要素ファイル106aは、背景となるデータを記憶してもよい。なお、本実施の形態において、背景は、表示対象と比較して下層のレイヤーとして位置づけられる。すなわち、表示対象は、背景上に重畳表示される。なお、本実施の形態において、表示要素は、複数のウィンドウのうちの一つを構成してもよい。背景は、例えば、デスクトップの背景であってもよく、ウィンドウの背景を規定してもよい。なお、これら表示要素となるデータのデータ形式は、画像データや、文字データ等に限られず、任意のデータ形式であってもよい。また、後述する制御部102の処理により、移動、回転、拡大・縮小された結果は、要素ファイル106aに反映されてもよい。例えば、要素ファイル106aのフォルダXに格納されていた表示対象Aが、表示制御によってフォルダYに移動された場合、要素ファイル106aは、制御部102の制御により、表示対象AのデータをフォルダXからフォルダYに移動させて保存する。
【0036】
また、図2において、入出力制御インターフェース部108は、検出装置112やタッチパネル114の制御を行う。ここで、タッチパネル114は、表示手段と、当該表示手段に対する位置を入力するための位置入力手段とを備える。より具体的には、タッチパネル114は、液晶パネル等の表示装置と、タッチパッド等の位置入力装置を組み合わせた入出力手段である。タッチパネル114は、表示画面上で、指定された位置または領域を検出するために、圧力を検出してもよく、電気抵抗の変化を検出してもよく、一例として、抵抗膜方式やマトリックス方式、感圧式、電磁誘導方式、静電容量方式等のタッチパネルであってもよい。また、タッチパネル114は、接触時においても非接触時においても、位置を検出することができる、フローティングタッチ機能付きタッチパネルであってもよい。なお、タッチパネル114は、表示手段と位置入力手段が一体化された一実施形態であって、本発明にかかる表示手段と位置入力手段は、これに限定されず別の構成としてもよい。タッチパネル114の表示手段としては、モニタ(家庭用テレビやタッチスクリーンモニタ等を含む)等を用いることができる。
【0037】
また、検出装置112は、摩擦力や押下力等の力を検出する検出手段である。なお、検出装置112は、所定の力の有無を検出してもよく、力のスカラー量あるいはベクトル量を検出してもよい。前者の場合、一例として、検出装置112は、メカニカルスイッチ等のように、所定値以上の力の有無によってオン/オフが切り替わり、それに応じて所定の電気信号が発生するように構成してもよい。一例として、後者の場合、検出装置112は、ピエゾ素子等の圧力センサ等のように、所定の力に応じた電流や電気信号等を発生させるよう構成してもよい。
【0038】
例えば、検出装置112は、利用者がタッチパネル114の表示画面に対して略垂直方向に押下した場合に、所定の押下力を検出してもよい。また、検出装置112は、利用者がタッチパネル114の表示画面に対して略水平方向に接触摩擦をもってスライドさせることにより、所定の摩擦力を検出してよい。なお、これら表示画面の押下やスライドには、利用者にクリック感等を感じさせるようにハプティックに構成してもよい。例えば、タッチパネル114は、情報処理装置100の本体(筐体)に対して、可動式に構成されてもよく、例えば、物理的に、押下、平行移動、スライド、回動可能に構成してもよい(例えば、特表2008-532115号公報参照)。また、情報処理装置100は、所定の力を検出した場合に、クリック音を音声出力装置(図示せず)から出力してもよい。
【0039】
なお、上記のように検出装置112が機械的に直接、摩擦力または押下力を検出することに限られず、間接的に摩擦力または押下力が検出されてもよい。例えば、後述する制御部102が、タッチパネルへの接触による入力位置の占める領域が、所定の形状から変化した場合に、所定の摩擦力を検出してもよい。また、タッチパネル114が感圧式タッチパネルである場合に、後述する制御部102が、タッチパネルへの接触による圧力分布が、所定の圧力分布から変化した場合に、所定の摩擦力を検出してもよい。このような場合、検出装置112は、タッチパネル114および制御部102(力判定部102d等)によって代替することができるので、個別に検出手段として検出装置112を設けなくともよい。また、検出装置112は、表示画面への接触による力の強さを検出することに限られず、表示画面への接触による力の有無を検出してもよい。なお、タッチパネル114がフローティングタッチ機能付きタッチパネルである場合には、タッチパネル114にて表示画面上の位置とともに、接触状態/非接触状態を検出することができるので、検出手段として個別に検出装置112を設けなくともよい。また、検出装置112は、指紋読取装置であって、予め登録された指紋の模様から指先を動かした際に生じる微細な指紋の模様のねじれを検出することによって、摩擦力を検出してもよい。なお、本実施の形態において、説明の便宜上、検出装置112が力を検出するものとして説明することがあるが、上述したように、検出装置112として個別に構成しない場合には、説明上の検出装置112とは、検出手段として機能するタッチパネル114および/または制御部102等であるものとする。
【0040】
このほか、検出装置112としては、超音波や電磁波式の距離測定器や、近接センサ、公知の力検出装置等を用いることができる。また、以下の実施の形態において、検出装置112は、表示平面に対する摩擦力の方位性を検出することができる形態について説明する場合がある。例えば、利用者は、検出装置112に向かって、指や手を表示画面に接触させて、上方向、下方向、右方向、あるいは、左方向に、物理的にタッチパネル114を可動にスライドさせることができるように構成してもよい。ここで、図3は、情報処理装置100をタッチパネル114の側面から見た構成の一例である。
【0041】
図3に示すように、情報処理装置100の構成の一例として、タッチパネル114は筐体に対し物理的にスライド可能に構成される。なお、筐体は、タッチパネル114が所定の範囲内で可動するように制限している。また、タッチパネル114と筐体の間には、図示のごとく、金属製等のばね部材が取り付けられており、ポジションP1/P2/P3の3つの位置のいずれかで安定するように、ばね力が付勢されている。そして、図3上図に示すように、ポジションP2において、利用者が、タッチパネル114の画面の指を接触させて、ばね山を乗り越えられる程度の力Fでタッチパネル114をスライドさせると、図3下図に示すように、ポジションP2からポジションP1に位置を切り替えることができる。検出装置112は、位置センサ等によって、ポジションP1/P2/P3の3つの位置のいずれであるかを検出することができるように構成される。これにより、検出装置112は、間接的に利用者がタッチパネルに加えた力を検出することができる。なお、図3の例では、一側面のみを提示して検出装置112が1つの方向の力を読み取る例について説明したが、これに限られず、上下左右の4方向であってもよく、平面状の360度全方向であってもよく、押下力も含めた半球状の各方位性であってもよい。
【0042】
また、図2において、制御部102は、OS(Operating System)等の制御プログラム、各種の処理手順等を規定したプログラム、および所要データを格納するための内部メモリを有し、これらのプログラム等により、種々の処理を実行するための情報処理を行う。制御部102は、機能概念的に、表示制御部102a、表示態様変更部102b、位置判定部102c、および、力判定部102dを備えて構成されている。
【0043】
このうち、表示制御部102aは、要素ファイル102aに記憶された要素データに基づいて、タッチパネル114に、複数の表示要素からなる表示画面が表示されるよう制御する表示制御手段である。ここで、表示制御部102aは、図2に示すように、表示態様変更部102bを備えて構成されている。なお、要素データは、要素ファイル106aを制御することにより読み込むことに限られず、ネットワーク300を介して、外部システム200の記憶部(要素データベース等)からダウンロードすることにより取り入れてもよく、また、受信装置118を介して、電波等を受信することにより取得してもよい。
【0044】
また、表示態様変更部102bは、検出された摩擦力等による入力に応じて、対象データを変更または出力態様を変更する変更手段の具体的一形態である。例えば、表示態様変更部102bは、位置判定部102cにより連続的な位置入力が判定された場合と、力判定部102dにより所定の力が検出された場合との間で、対応する表示要素の変化態様を異ならせるように制御する表示態様変更手段である。本実施の形態において、表示態様変更部102bは、力判定部102dにより所定の力が判定された場合に、位置判定部102cにより判定された入力位置に対応する表示要素以外の表示要素が、移動(スクロールや、画面遷移等)、回転、あるいは、拡大・縮小されるように制御する。より具体的には、表示態様変更部102bは、力判定部102dにより所定方向の力が判定された場合に、位置判定部102cにより判定された入力位置に対応する表示要素以外の表示要素を、その方向(方位性)に対応するように移動、回転、あるいは、拡大・縮小させる。なお、表示態様変更部102bは、位置判定部102cにより判定された入力位置に対応する表示要素については、連続的に入力される位置に保持する。例えば、位置入力開始から位置入力終了まで位置が移動した場合には、表示態様変更部102bは、その指示位置に沿って表示要素を移動させる。一方、位置入力開始から位置入力終了まで位置が同じ位置の場合は、表示態様変更部102bは、その指示位置どおり表示要素を同じ位置に保つ。なお、表示態様変更部102bは、位置判定部102cにより判定された入力位置に対応する表示要素がない場合は、表示要素全体を、移動、回転、あるいは、拡大・縮小させる。表示要素は、表示中の要素に限られない。すなわち、移動、回転、拡大・縮小などの表示態様の変更によって、表示領域外の要素を表示する必要がある場合は、それらの要素も表示要素に含まれることになる。
【0045】
ここで、一例として、表示態様の変更が「移動」の場合には、表示態様変更部102bは、入力位置に対応する表示要素以外の表示要素を、力判定部102dにより右方向の力が判定された場合に右方向に移動させ、左方向の力が判定された場合に左方向に移動させ、上方向の力が判定された場合に上方向に移動させ、下方向の力が判定された場合に下方向に移動させてもよい。なお、利用者にとって入力位置にかかる表示要素(例えば、タッチパネル114への接触点の表示要素)が、その他の表示要素に対して相対的に意図した方向に沿って動いているように見えるように、上記とは逆方向に移動制御してもよい。すなわち、表示態様変更部102bは、入力位置に対応する表示要素以外の表示要素を、力判定部102dにより右方向の力が判定された場合に左方向に移動させ、左方向の力が判定された場合に右方向に移動させ、上方向の力が判定された場合に下方向に移動させ、下方向の力が判定された場合に上方向に移動させてもよい。なお、上記においては、方向は、上下左右の4方向としたが、これに限られず、例えば、検出装置112による表示平面方向の360度の全方向の検出に従って、その方向に合わせた表示要素の移動制御を行ってもよい。また、摩擦力に伴って検出される表示平面方向の方位性のみならず、押下力による表示画面に対する押下方向(奥行き方向)と組み合わせて、接触点から球状のベクトルを検出できるようにしてもよい。その場合、例えば、情報処理装置100は、上下左右の二次元平面の移動方向のみならず、奥行きの次元を合わせて3次元の方向に連動させて、移動制御を行うことができる。
【0046】
また、表示態様の変更が「拡大・縮小」の場合には、表示態様変更部102bは、入力位置に対応する表示要素以外の表示要素を、力判定部102dにより上方向の力が判定された場合に縮小表示させ、下方向の力が判定された場合に拡大表示させてもよい。また、表示態様の変更が「回転」の場合には、表示態様変更部102bは、入力位置に対応する表示要素以外の表示要素を、力判定部102dにより右方向の力が判定された場合に右回りに回転されるよう表示制御し、左方向の力が判定された場合に左回りに回転されるよう表示制御してもよい。なお、回転の場合にも、利用者にとって入力位置にかかる表示要素が、その他の表示要素に対して相対的に意図した回転方向に沿って動いているように見えるように、上記とは逆方向に回転制御してもよい。
【0047】
また、位置判定部102cは、タッチパネル114の位置入力手段を介して入力される、タッチパネル114の表示手段上の位置を検出する位置判定手段である。例えば、位置判定部102cは、タッチパネル114を介して、表示画面における接触点の座標(X,Y)を取得する。このように、位置判定部102cは、表示中の要素と接触点が対応付け可能に、位置を取得する。このほか、位置判定部102cは、公知のタッチパネル技術を用いて、表示画面上の位置を検出してもよい。
【0048】
また、力判定部102dは、タッチパネル114の表示手段への接触による所定の力を、タッチパネル114の位置入力手段を介して間接的に、または、任意の検出手段(検出装置112等)によって直接的に、判定する力判定手段である。ここで、所定の力とは、所定の閾値以上の力であってもよく、上述した図3のようにメカニカルにスイッチングするように構成されている場合は、その力(ばね山を超える力)であってもよい。後者の場合は、力判定部102dは、スイッチング自体を検出することで、所定の力を判定してもよい。例えば、力判定部102dは、タッチパネル114への接触による入力位置の占める領域が、所定の形状から変化した場合に、所定の摩擦力を検出してもよい。より具体的には、力判定部102dは、タッチパネル114への接触による入力位置の占める領域が、垂直に押圧された指の接触面の形状から変化した場合に、所定の摩擦力を検出してもよい。ここで、図4は、タッチパネル114に対する接触面の形状の遷移例を示す図である。
【0049】
図4<MA-0>に示すように、利用者は、指をつかって、通常のスライド操作やタッチ操作等を行う場合、斜線で示した領域の形状とする。つぎに、利用者が、表示画面に対して垂直方向に奥に(表示画面の裏側方向へ)押下した場合、<MA-1>に示すように、接触面の領域の周囲全体が広がることになる(なお、破線の領域は、初期の領域である)。これによって、力判定部102dは、押下力Fを判定することができる。また、利用者が、表示画面に対して摩擦を使って図の右方向へ力を加えた場合、<MA-2>に示すように、初期の接触面の領域の右側が広がることになる。これによって、力判定部102dは、右方向の摩擦力Fを判定することができる。また、利用者が、表示画面に対して摩擦を使って図の左方向へ力を加えた場合、<MA-3>に示すように、初期の接触面の領域の左側が広がることになる。これによって、力判定部102dは、左方向の摩擦力Fを判定することができる。一例として、力判定部102dは、入力された力Fが所定の閾値を超えた場合に、所定の力が入力されたと判定する。なお、力判定部102dは、形状の遷移から力Fを検出することに限られず、形状自体に基づいて力Fを検出してもよいものである。
【0050】
他の例として、タッチパネル114が感圧式タッチパネルである場合に、力判定部102dは、タッチパネル114への接触による圧力分布が、所定の圧力分布から変化した場合に、所定の力を検出してもよい。より具体的には、力判定部102dは、タッチパネル114への接触による圧力分布が、垂直に押圧された指の接触による圧力分布から変化した場合に、所定の力を検出してもよい。ここで、図5は、タッチパネル114に対する接触面の圧力分布(等圧線)の遷移例を示す図である。
【0051】
図5<MB-0>に示すように、利用者は、指をつかって、通常のスライド操作やタッチ操作等を行う場合、斜線で示した領域の形状とする。つぎに、利用者が、表示画面に対して垂直方向に奥に(表示画面の裏側方向へ)押下した場合、<MB-1>に示すように、接触面の領域の周囲全体に比較的均一に圧力分布が広がることになる。これによって、力判定部102dは、押下力Fを判定することができる。また、利用者が、表示画面に対して摩擦を使って図の右方向へ力を加えた場合、<MB-2>に示すように、初期の接触面の領域の右側の圧力が大きくなる。これによって、力判定部102dは、右方向の摩擦力Fを判定することができる。また、利用者が、表示画面に対して摩擦を使って図の左方向へ力を加えた場合、<MB-3>に示すように、初期の接触面の領域の左側の圧力が大きくなる。これによって、力判定部102dは、左方向の摩擦力Fを判定することができる。一例として、力判定部102dは、入力された力Fが所定の閾値を超えた場合に、所定の力が入力されたと判定する。なお、力判定部102dは、圧力分布の遷移に基づいて力Fを検出することに限られず、圧力分布自体に基づいて力Fを検出してもよいものである。
【0052】
また、図2において、通信制御インターフェース部104は、情報処理装置100とネットワーク300(またはルータ等の通信装置)との間における通信制御や、情報処理装置100と受信装置118との間における通信制御を行う装置である。すなわち、通信制御インターフェース部104は、他の端末または局と、通信回線(有線、無線を問わない)を介してデータを通信する機能を有する。また、ここで、図2において、受信装置118は、放送局等から電波等を受信する受信手段であり、例えばアンテナ等である。
【0053】
すなわち、情報処理装置100は、画像データに関する外部データベースや本発明にかかるプログラム等の外部プログラム等を提供する外部システム200と、ネットワーク300を介して通信可能に接続して構成されていてもよく、また、情報処理装置100は、画像データ等を発信する放送局等と、受信装置118を介して受信可能に接続して構成されていてもよい。また、この情報処理装置100は、ルータ等の通信装置および専用線等の有線または無線の通信回線を介して、ネットワーク300に通信可能に接続されていてもよい。
【0054】
ここで、図2において、ネットワーク300は、情報処理装置100と外部システム200とを相互に接続する機能を有し、例えば、インターネット等である。
【0055】
また、図2において、外部システム200は、ネットワーク300を介して、情報処理装置100と相互に接続され、利用者に対して画像データに関する外部データベースやプログラム等の外部プログラム等を実行するウェブサイトを提供する機能を有する。
【0056】
ここで、外部システム200は、WEBサーバやASPサーバ等として構成していてもよく、そのハードウェア構成は、一般に市販されるワークステーション、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置およびその付属装置により構成していてもよい。また、外部システム200の各機能は、外部システム200のハードウェア構成中のCPU、ディスク装置、メモリ装置、入力装置、出力装置、通信制御装置等およびそれらを制御するプログラム等により実現される。
【0057】
[表示情報処理]
次に、このように構成された本実施の形態における情報処理装置100の表示情報処理の一例について、以下に図6を参照して詳細に説明する。図6は、本実施の形態における情報処理装置100の表示情報処理の一例を示すフローチャートである。
【0058】
なお、以下の処理を始めるにあたって、タッチパネル114には、表示制御部102aの制御により、何らかの表示要素が表示されていることを前提とする。ここで、図7は、表示制御部102aの制御によるタッチパネル114の表示画面を含む情報処理装置100の外観の一例を示す図である。図7に示すように、情報処理装置100は、矩形で示す領域の表示画面を有するタッチパネル114を備えている。そして、図7に示すように、この例では、表示制御部102aは、表示画面上に、矩形の対角線で示す領域の背景「WINDOW1」という表示要素とともに、当該背景上の位置に対応付けて、表示要素「A」、表示要素「B」、および表示要素「C」を重畳表示させている。一例として、表示要素「A」、「B」、および「C」は、文字や記号であってもよく、アイコンであってもよい。
【0059】
図6に示すように、まず、位置判定部102cは、タッチパネル114に対する接触を検出する(ステップSA-1)。なお、位置判定部102cは、タッチパネル114への接触を検出しなかった場合(ステップSA-1,NO)、接触が検出されるまで当該処理を繰り返し実行する。
【0060】
位置判定部102cによりタッチパネル114に対する接触が検出された場合(ステップSA-1,YES)、力判定部102dは、タッチパネル114に対して力Fが入力されたか否かを判定する(ステップSA-2)。ここで、本実施形態の表示情報処理において、力Fとは、接触による摩擦によって利用者により入力された所定の閾値以上の力を意味する。このことは、力判定部102dが直接、力の量自体を計測することを意味しない。すなわち、図3にて上述したように、タッチパネル114が筐体に対して非連続的に移動するようメカニカルに構成されている場合、力判定部102dは、タッチパネル114の筐体に対する位置を読み取ることによって、位置が移動した場合に、当該構成が規定する所定の力F入力があったと擬制してもよい。
【0061】
力判定部102dによりタッチパネル114に対する力Fが入力されたと判定された場合(ステップSA-2,YES)、表示制御部102aの表示態様変更部102bは、タッチパネル114に表示中の表示領域を遷移させる処理を行う(ステップSA-3)。なお、表示体表変更部102bは、位置判定部102cにより検出された接触位置に対応する表示要素がある場合は、この表示領域の遷移処理の間、位置判定部102cにより検出され更新される接触位置に、当該表示要素を保持し続ける。ここで、図8?図10は、表示態様変更部102bによる表示領域の遷移処理を説明するための、操作と画面遷移の一例を時系列で示す一連の図である。
【0062】
図8に示すように、利用者が表示要素「B」上の接触位置で左方向に力Fを加えた場合、表示態様変更部102bは、表示領域の遷移処理を開始する。図9は、表示領域の遷移処理によって、表示領域がWINDOW1からWINDOW2へ移行する途中の段階の表示画面例を示す図である。図9に示すように、表示態様変更部102bは、力Fが検出された時点で表示制御部102aにより表示中であった表示領域(背景の表示要素「WINDOW1」ならびに表示要素「A」,「B」,「C」)を表示画面に対して相対的に移動させ、この移動と連動して別の表示要素「WINDOW2」を表示させる。このとき、図9に示すように、表示態様変更部102bは、力Fが検出された時点での接触位置に対応する表示要素「B」については、表示領域の遷移処理の期間中、位置判定部102dにより更新判定される接触位置に保持しつづける。ここで、図10は、表示領域の遷移処理の終了段階の表示画面例を示す図である。
【0063】
図10に示すように、WINDOW1からWINDOW2への移行が完了する段階では、表示態様変更部102bは、移行後の背景の表示要素「WINDOW2」を表示するとともに、位置判定部102cにより更新判定される接触位置下に表示要素「B」を重畳表示させる。なお、図10の例では、背景の表示要素「WINDOW2」上に、もともと重畳表示されるべき表示要素がないが、これに限られず、重畳表示される表示要素(たとえば、表示要素「D」など)があってもよい。
【0064】
図6の説明に戻り、力判定部102dは、力Fの入力が持続している場合は(ステップSA-4,YES)、上述の表示領域の遷移処理を継続して行い、力Fの入力が終了したと判定すると(ステップSA-4,NO)、表示領域の遷移処理を終了して以下のタッチ入力処理に移行する。
【0065】
すなわち、力判定部102dにより力Fの入力が検出されない場合(ステップSA-2,NO、または、ステップSA-4,NO)、表示制御部102aは、位置判定部102cにより更新判定される接触位置に従った処理(タッチ入力処理)を実行する。このタッチ入力処理は、タッチパネルに対して接触入力(スライド操作、タップ操作、フリック操作)があった場合に、実行される公知の情報処理であってもよい。ここで、図11は、表示制御部102aのタッチ入力処理によって、図10の表示画面から更新された表示画面の一例を示す図である。なお、図11の破線矢印は、図10の表示段階から移動した表示要素「B」の軌跡を示すものであって、表示画面上には表示されない。
【0066】
図11に示すように、利用者が力Fの入力を終えることによって、表示領域の遷移処理が完了しても、利用者は、継続して接触による入力を行うことができる。すなわち、利用者は、押下しながらの接触によって発生した摩擦力(力F)を緩めることによって、当該接触は維持したままで、通常のタッチパネルの操作に移行することができる。図11に示すように、利用者は、WINDOW2へ遷移した後、表示要素「B」に対して、スライド入力することによって、WINDOW2上の所望の位置に表示要素「B」を配置することができる。以上の表示情報処理を行うことによって、利用者からみれば、複数のウィンドウ間において、表示要素をドラッグアンドドロップ類似の操作を行わせることができる。
【0067】
以上で、本実施の形態における、情報処理装置100の表示情報処理の一例の説明を終える。なお、上述の処理は、終了指示があるまで(ステップSA-6,NO)繰り返し実行してもよい。また、一例として、タッチ処理を行っている場合に(ステップSA-5)、力Fの入力があれば、表示領域の遷移処理(ステップSA-3)に処理を戻してもよい。
【0068】
なお、上述の表示情報処理の例では、表示態様の変化として、表示領域を相対的に移動させる例を代表として説明したが、本実施の形態はこれに限られず、拡大・縮小等の表示態様変化を発生させてもよいものである。例えば、表示制御部102aが、背景の表示要素として地図を表示し、地図上のPOIとしてアイコンの表示要素を重畳表示していた場合、利用者が、このPOI表示要素をタッチしながら、表示態様変更部102bは、上方向に力Fがかかると、比較的小縮尺の地図を表示させ、下方向に力Fがかかると、比較的大縮尺の地図を表示させてもよい。
【0069】
また、上述の例では、接触前に、接触位置に対応する表示要素が予め表示されることを前提に説明を行ったが、これに限られず、接触前に表示要素が表示されていなくとも、接触にともなって表示要素が表示されてもよい。例えば、地図表示の例では、任意の地点を接触することによって、そこに出発地点としての表示要素を出現させ、これを他の地点までドラッグすることによって、その地点(目的地等)までのリンクを形成させてもよい。すなわち、本実施の形態は、ある場所から他の場所へ表示要素を移動させる用途に用いることに限られず、ある場所と他の場所を関連付ける(リンク形成など)ために用いてもよいものである。たとえば、力Fの方向性(上方向、下方向、または左右方向)によって、それぞれ上位層、下位層、または同位層のフォルダへの移動を実行して、当初のフォルダと力F入力終了後のフォルダのフォルダ間を関連付け(リンク付け)してもよい。以上のように、本実施形態によれば、従来のハンドヘルドデバイスでは、ウィンドウ間等におけるドラッグアンドドロップ操作等のマウスアクションに相当する入力や編集作業を行うことが難しかったという問題点を解消し、マウスやキーボード等の入力手段を用いずともアクション入力を容易に行うことができる。
【0070】
(付記1)
表示手段と当該表示手段に対する位置入力手段とを備えたコンピュータにおいて、
前記位置入力手段を介して、連続的に位置入力が行われた場合と、前記表示手段に対して所定の摩擦力または押下力が直接または間接的に検出された場合との間で、前記表示手段に表示する表示要素に対する変化態様を異ならせること、
を特徴とするコンピュータ。
【0071】
(付記2)
付記1に記載のコンピュータにおいて、
前記表示手段に対して所定の摩擦力または押下力が直接または間接的に検出された場合に、前記表示手段における前記表示要素を、移動、拡大、縮小、または、回転させるとともに、前記位置入力手段を介して入力される位置に対応する前記表示要素については連続的に入力される位置に保持すること、
を特徴とするコンピュータ。
【0072】
(付記3)
付記1または2に記載のコンピュータは、記憶部と制御部とを備え、
前記記憶部は、
前記表示要素として、前記表示手段上に表示させるための背景と、前記背景上に重畳表示させるための表示対象とを、任意のデータ形式で記憶し、
前記制御部は、
前記表示手段上に前記背景および前記表示対象が重畳表示されるよう制御する表示制御手段と、
前記位置入力手段を介して入力される、前記表示手段上の位置を検出する位置判定手段と、
前記表示手段への接触による所定の摩擦力または押下力を、前記位置入力手段を介して間接的に、または、任意の検出手段によって直接的に、判定する力判定手段と、
を備え、
前記表示制御手段は、
前記位置判定手段により判定された前記位置にある前記表示対象を、連続的に入力される位置に保持するとともに、前記力判定手段により前記摩擦力または前記押下力が検出された場合に前記背景を前記表示手段に対して相対的に移動させて表示すること、
を特徴とするコンピュータ。
【0073】
(付記4)
付記3に記載のコンピュータにおいて、
前記表示手段および前記位置入力手段は、タッチパネルであって、
前記力判定手段は、
前記タッチパネルへの接触による入力位置の占める領域が、所定の形状から変化した場合に、前記所定の摩擦力を検出すること、
を特徴とするコンピュータ。
【0074】
(付記5)
付記4に記載のコンピュータにおいて、
前記所定の形状は、垂直に押圧された指の接触面の形状であること、
を特徴とするコンピュータ。
【0075】
(付記6)
付記3に記載のコンピュータにおいて、
前記表示手段と前記位置入力手段は、感圧式タッチパネルであって、
前記力判定手段は、
前記タッチパネルへの接触による圧力分布が、所定の圧力分布から変化した場合に、前記所定の摩擦力を検出すること、
を特徴とするコンピュータ。
【0076】
(付記7)
付記6に記載のコンピュータにおいて、
前記所定の圧力分布は、垂直に押圧された指の接触による圧力分布であること、
を特徴とするコンピュータ。
【0077】(削除)
【0078】
(付記9)
表示手段と当該表示手段に対する位置入力手段を備えたコンピュータにおいて実行される情報処理方法であって、
前記表示手段に対して所定の摩擦力または押下力が直接または間接的に検出された場合に、前記表示手段における表示要素を、移動、拡大、縮小、または、回転させるとともに、前記位置入力手段を介して入力される位置に対応する表示要素については連続的に入力される位置に保持すること、
を特徴とする情報処理方法。
【0079】
(付記10)
表示手段と当該表示手段に対する位置入力手段を備えたコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記表示手段に対して所定の摩擦力または押下力が直接または間接的に検出された場合に、前記表示手段における表示要素を、移動、拡大、縮小、または、回転させるとともに、前記位置入力手段を介して入力される位置に対応する表示要素については連続的に入力される位置に保持すること、
を特徴とするプログラム。
【0080】
以上詳述に説明したように、本実施形態によれば、マウスやキーボード等の入力手段を用いずともアクション入力操作を容易に行うことができる、コンピュータ、情報処理装置、表示処理方法、および、プログラム、ならびに、記録媒体を提供することができる。
【0081】
[摩擦力方向の変遷による入力]
摩擦力方向の変遷による入力方式の実施の形態について以下に図12?図15を参照して説明する。
【0082】
従来、タッチパネルやタッチパッド等に対する様々な入力方法が開発されている。例えば、画面上の一点を押して離すタップ入力以外にも、フリック入力、ピンチイン入力、ピンチアウト入力など、さまざまな入力方法が開発されている。しかしながら、従来のタッチパネル等の入力方式では、タッチパネル平面における位置の入力か、入力位置の変遷(軌跡)による入力か、複数の位置の関係など、タッチパネル面に対する位置入力以外の入力方式がなかったため、多様な入力を行えないという問題を有していた。
【0083】
例えば、アップル社製iPodでは、物理的な円環形状のホイール構成があり画面水平方向の物理障害に合わせたスライド操作入力が可能であるものの、特許文献1に記載の方法では、表示された仮想スクロールホィールを見ながら、その形状に合わせて利用者が操作を行わなければならず、運転中や歩行中に入力操作を行うことが困難であるというデメリットがあった。
【0084】
また、タッチパネル等においては、画面上をスライドさせる操作によって音量を増減させるようなアナログな入力操作が容易に行うことができるものの、垂直方向以外に物理的障害がないことに起因して、タップ入力以外にインクリメントな入力を確実に増減を行う手段がないという問題点を有していた。
【0085】
本実施の形態は、上記に鑑みてなされたもので、タッチパネルやタッチパッド等の画面に対する操作入力においても、画面水平方向の物理障害を利用しながら操作感覚を得られる確実な操作入力を実現することができる、コンピュータ、情報処理装置、表示処理方法、および、プログラムを提供することを主な目的とする。具体的なハードウェア構成については、上述したような情報処理装置100を用いることができる。
【0086】
ここで、図12は、図14および図15において摩擦力方向の変遷を説明するために用いる図式(円形グラフ)の意味を説明するための図である。なお、図12では、図4で示したように、タッチパネル114に対する接触面の形状の遷移によって摩擦力方向を検出する例を用いて図説しているが、これは単に説明のためであって、摩擦力方向の検出方法はこれに限られない。
【0087】
図12に示すように、円の中心は、摩擦力方向がなく垂直方向に奥に(表示画面の裏側方向へ)向かってdいることを示す。また、図12の円の外周における各方位は、各方位に対して摩擦力方向が向かっていることを示している。ここで、図13は、摩擦力方向の変遷による入力の一例を示す図である。図13において、「DAY」の欄は日付の数値を示し、「H.R」の欄は、1日24時間における時の数値を示し、「MIN.」の欄は、時分の分の数値を示す。
【0088】
図13に示すように、利用者が、情報処理装置100のタッチパネル114の一部を指で押下したまま時計回り(図の「+」の向き)に指を動かすと、情報処理装置100の位置判定部102cは、タッチパネル114の接触点の位置にある表示要素(図の例では時の数値)を対象データとして特定し、表示態様変更部102bは、摩擦力の方向の変遷に従って、表示要素を変更させる。例えば、表示態様変更部102bは、摩擦力方向が時計回りに一周する度に、数値を1つインクリメントしてもよい。
【0089】
これとは反対に、図13に示すように、利用者が、情報処理装置100のタッチパネル114の一部を指で押下したまま反時計回り(図の「-」の向き)に指を動かすと、情報処理装置100の位置判定部102cは、タッチパネル114の接触点の位置にある表示要素(図の例では時の数値)を対象データとして特定し、表示態様変更部102bは、一例として、摩擦力方向が反時計回りに一周する度に、数値を1つデクリメントしてもよい。このように、スケジュールの呼び出し等のために日時指定を行うことができる。
【0090】
摩擦力方向の遷移による入力の他の例について説明する。ここで、図14および図15は、摩擦力方向の遷移によって、文字や数字を入力する例を示した図である。図14の左上の円グラフは、図12で説明した円グラフを参照のために図示しているものである。その他の欄の左上には、摩擦力方向の変遷による各入力によって識別される文字や数字の例を示している。なお、図12の円グラフにおいて、黒丸は、摩擦力方向の変遷の初期位置を示している。
【0091】
図14および図15に示すように、摩擦力方向の変遷による入力によれば、利用者は摩擦による物理的感覚をもちながら、表示画面を注視することなく文字や数字や図形等を入力することができる。
【0092】
なお、入力された文字や数字や図形や記号等は、直接、文字列等に入力されるために用いられることに限られず、所定のアルゴリズムを呼び出すために用いてもよいものである。例えば、情報処理装置100の位置判定部102cは、タッチパネル114の接触点の位置にある表示要素(図の例では時の数値)を対象データとして特定し、表示態様変更部102b等の制御部102は、摩擦力方向の変遷による入力によって「C」が入力された場合には対象データをコピーしてもよく、「X」が入力された場合には対象データをカットしてもよく、「P」が入力された場合には対象データをペーストしてもよい。
【0093】
このように、本実施形態によれば、操作入力の多様性を高めることができる。特に、従来のタッチパネルにおいては、位置履歴による軌跡の入力等のように、利用者は、表示画面を見ながら入力する必要があったが、本実施の形態によれば、利用者は、摩擦力の方向等による物理感覚的な入力によって、表示画面を注視することなくも文字入力や、再生ボリュームの増減、日時指定等を行うことができる。
【0094】
[付記1](メインクレーム)
画面上を押圧する操作体の圧力分布および/または接触領域を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出される前記圧力分布および/または前記接触領域に基づいて、前記画面上を滑ることなく接触状態で移動した前記操作体の移動方向を判定する移動方向判定手段と、
前記移動方向判定手段により判定された前記移動方向を入力として当該入力に応じた機能制御を行う機能制御手段、
を備える、情報処理装置。
【0095】
[付記2](遷移形状)
付記1に記載の情報処理装置において、
前記機能制御手段は、
前記移動方向判定手段により判定された前記移動方向の遷移に応じた形状が、所定の形状である場合に当該形状に応じた機能を実現する制御を行うことを特徴とする情報処理装置。
【0096】
[付記3](カウンタ)
付記1に記載の情報処理装置において、
前記機能制御手段は、
前記移動方向判定手段により判定された前記移動方向の遷移に応じてカウンタをインクリメントするカウント手段、
を更に備え、
前記カウンタに応じた機能制御を行うことを特徴とする情報処理装置。
【0097】
[付記4](デクリメント)
付記3に記載の情報処理装置において、
前記機能制御手段は、
前記移動方向判定手段により判定された前記移動方向の遷移が1つ前の状態に戻った場合に、前記カウンタをデクリメントすることを特徴とする情報処理装置。
することを特徴とする情報処理装置。
【0098】
[付記5](インクリメント・デクリメント)
付記3または4に記載の情報処理装置において、
前記機能制御手段は、
前記移動方向判定手段により判定された前記移動方向が右回りの場合に前記カウンタをインクリメントし、左回りの場合に前記カウンタをデクリメントすることを特徴とする情報処理装置。
【0099】
[付記6](文字変換)
付記3に記載の情報処理装置において、
前記機能制御手段は、
前記カウント手段によりカウントされた前記カウンタに応じて、表示される文字候補を変更すること
を特徴とする情報処理装置。
【0100】
[付記7](拡大縮小)
付記3に記載の情報処理装置において、
前記機能制御手段は、
前記カウント手段によりカウントされたカウンタに応じて、拡縮率を変更することを特徴とする情報処理装置。
【0101】
[付記8](数値の増減)
付記3に記載の情報処理装置において、
前記機能制御手段は、
前記カウント手段によりカウントされた前記カウンタに応じて、表示される数値を増減させることを特徴とする情報処理装置。
【0102】
[付記9](操作体の遷移の形状:1周、半周、矩形、星)
付記3乃至4のいずれか一つに記載の情報処理装置において、
前記制御手段は、
前記移動方向判定手段により判定される前記移動方向の遷移に応じた前記操作体の軌道が円軌道の場合、一周または半周でインクリメントし、前記操作体の軌道が角のある図形の場合、角を描くたびにインクリメントすることを特徴とする情報処理装置。
【0103】
以上で、実施の形態の説明を終える。
【0104】
[他の実施の形態]
さて、これまで本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施の形態にて実施されてよいものである。
【0105】
上述の実施形態において、画面を押す力によって、カーソルがマウスオーバー状態から押下状態に変化する。すなわち、強いときは、クリックや、ドラッグドロップ等の状態に、弱いときは、マウスオーバーやカーソル移動の状態に変化してもよい。
【0106】
例えば、情報処理装置100がスタンドアローンの形態で処理を行う場合を一例に説明したが、情報処理装置100は、クライアント端末(情報処理装置100とは別筐体である)からの要求に応じて処理を行い、その処理結果を当該クライアント端末に返却するようにしてもよい。
【0107】
また、実施の形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0108】
このほか、上記文献中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0109】
また、情報処理装置100に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
【0110】
例えば、情報処理装置100の各装置が備える処理機能、特に制御部102にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPU(Central Processing Unit)および当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。尚、プログラムは、後述する、コンピュータに本発明に係る方法を実行させるためのプログラム化された命令を含む、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、必要に応じて100に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDD(Hard Disk Drive)などの記憶部106などには、OS(Operating System)と協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。
【0111】
また、このコンピュータプログラムは、100に対して任意の300を介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。
【0112】
また、本発明に係るプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USBメモリ、SDカード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM、EEPROM、CD-ROM、MO、DVD、および、Blu-ray Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
【0113】
また、「プログラム」とは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードやバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OS(Operating System)に代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施の形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成、読み取り手順、あるいは、読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。プログラムが、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラム製品として本発明を構成してもよい。
【0114】
記憶部106に格納される各種のデータベース等(要素ファイル106a)は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、および、ウェブページ用ファイル等を格納する。
【0115】
また、情報処理装置100は、既知のパーソナルコンピュータ、ワークステーション等の情報処理装置として構成してもよく、また、該情報処理装置に任意の周辺装置を接続して構成してもよい。また、情報処理装置100は、該情報処理装置に本発明の方法を実現させるソフトウェア(プログラム、データ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0116】
更に、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じて、または、機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。なお、以下に、本発明にかかるクレームの他の例を列挙する。
【0117】
(クレームA)
タッチパネルディスプレイを備えた電子機器において、
タッチパネルディスプレイに対する摩擦力を検出すると、表示中の表示領域を遷移させるとともに、遷移前の上記表示領域内に当該摩擦力を発生させた接触点に対応する表示対象があった場合には当該表示画面の遷移時に当該接触点に対応する表示位置に当該表示対象を保持することを特徴とする電子機器。
【0118】
(クレームB)
タッチパネル式の入出力手段を備えたコンピュータにおいて、
タッチパネルの表面に対する摩擦力を検出可能な摩擦力検出手段を更に備えており、
上記コンピュータは、
上記摩擦力検出手段により摩擦力を検出すると、表示面に表示中の表示内容を表示面に対して移動させるとともに、上記タッチパネル上の当該摩擦力の発生させた接触点にある選択可能な表示内容中の表示対象を接触点に維持することを特徴とする、コンピュータ。
【0119】
(クレームC)
タッチパネルディスプレイを備えた電子機器において、
タッチパネルディスプレイに対する摩擦力を検出すると、表示中のウィンドウを他のウィンドウに切り替えるとともに、切替前の上記ウィンドウ内に選択可能な表示対象が、当該摩擦力を発生させた接触点にあった場合には、切替後のウィンドウ内の当該接触点に対応する表示位置に当該表示対象を移動させることを特徴とする電子機器。
【0120】
(クレームD)
表示部と、上記表示部の表示面上での座標の入力を受け付ける入力部と、上記表示部の表示面に対する摩擦力を直接的または間接的に検出する摩擦力検出部と、制御部と、を少なくとも備えた電子機器であって、
上記制御部は、
上記入力部を介して座標が入力された場合であって、上記表示部に表示されている表示領域に当該座標に対応する表示対象がある場合に、連続的に入力される座標に対応する表示位置に当該表示対象を保持する表示対象制御手段と、
上記摩擦力検出部を介して所定の摩擦力が検出された場合に、上記表示部に表示されている上記表示領域を遷移させる表示領域遷移手段と、
を備え、
上記表示対象制御手段は、
上記表示領域変更手段による上記表示領域の遷移が行われる前後にわたって、上記連続的に入力される座標に対応する表示位置に当該表示対象を保持しつづけること、
を特徴とする、電子機器。
【0121】
(クレームE)
表示部と、上記表示部の表示面上での座標の入力を受け付ける入力部と、上記表示部の表示面に対する摩擦力を直接的または間接的に検出する摩擦力検出部と、制御部と、を少なくとも備えた電子機器であって、
上記制御部は、
上記入力部を介して座標が入力された場合であって、上記表示部に表示されている表示領域に当該座標に対応する表示対象がある場合に、当該表示対象を選択する表示対象制御手段と、
上記摩擦力検出部を介して所定の摩擦力が検出された場合に、上記表示部に表示されている上記表示領域を遷移させる表示領域遷移手段と、
を備え、
上記表示対象制御手段は、
上記表示対象を選択中に、上記表示領域変更手段による上記表示領域の遷移が行われた場合に、当該表示領域の遷移前後にわたって当該表示対象を選択しつづけること、
を特徴とする、電子機器。
【0122】
(クレームF)
クレームEに記載の電子機器において、
上記表示対象制御手段は、
上記表示対象を選択中に、上記表示領域変更手段による上記表示領域の遷移が行われた場合に、当該表示領域の遷移前後にわたって当該表示対象を選択しつづけるとともに、
上記表示領域の遷移後に、上記入力部を介して入力される座標が遷移した場合、遷移される座標に従って当該選択中の上記表示対象を上記表示領域に対し移動させること、
を特徴とする、電子機器。
【0123】
(クレームG)
タッチパネル式の入力手段と表示手段を備えたコンピュータにおいて、
更に、前記タッチパネル上の摩擦を直接あるいは間接に検出する検出手段を備え、
前記入力手段を介して前記タッチパネル上でスライド操作が検出された場合と、前記検出手段を介して前記摩擦が検出された場合との間で、前記表示手段上に表す表示要素に対する変化態様を異ならせること、
を特徴とするコンピュータ。
【0124】
(クレームH)
入力手段と表示手段が一体化された入出力手段と、記憶部と、制御部とを備えたコンピュータにおいて実行される情報処理方法であって、
前記記憶部は、
前記タッチパネル上に表示させるための背景と、前記背景上に重畳表示させるための表示対象とを、任意のデータ形式で記憶し、
前記制御部において実行される、
前記タッチパネル上に前記背景および前記表示対象が重畳表示されるよう制御する表示制御ステップと、
前記タッチパネルへの接触により入力される座標を検出する座標検出ステップと、
前記タッチパネルへの接触による所定の摩擦を直接または間接に検出する摩擦検出ステップと、
を含み、
前記表示制御ステップにおいて、
前記座標検出ステップにて検出された前記座標に対応する前記表示対象を連続的に入力される当該座標の変化に従って前記背景に対して移動させるとともに、前記摩擦検出ステップにて前記摩擦が検出された場合に前記背景を上記タッチパネルに対して移動させること、
を特徴とする情報処理方法。
【0125】
(クレームI)
入力手段と表示手段が一体化されたタッチパネルと、前記タッチパネル上に表示させるための背景と前記背景上に重畳表示させるための表示対象とを任意のデータ形式で記憶する記憶部と、制御部とを備えたコンピュータに実行させるためのプログラムにおいて、
前記制御部において、
前記タッチパネル上に前記背景および前記表示対象が重畳表示されるよう制御する表示制御ステップと、
前記タッチパネルへの接触により入力される座標を検出する座標検出ステップと、
前記タッチパネルへの接触による所定の摩擦を直接または間接に検出する摩擦検出ステップと、
を実行させるためのプログラムであって、
前記表示制御ステップにおいて、
前記座標検出ステップにて検出された前記座標に対応する前記表示対象を連続的に入力される当該座標の変化に従って前記背景に対して移動させるとともに、前記摩擦検出ステップにて前記摩擦が検出された場合に前記背景を上記タッチパネルに対して移動させること、
を特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0126】
100 情報処理装置
102 制御部
102a 表示制御部
102b 表示態様変更部
102c 位置判定部
102d 力判定部
104 通信制御インターフェース部
106 記憶部
106a 要素ファイル
108 入出力制御インターフェース部
112 検出装置
114 タッチパネル
200 外部システム
300 ネットワーク
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うことでコンピュータにおける操作入力の多様性を高める入力制御方法であって、
表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出ステップと、
前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力ステップと、
前記位置入力ステップにて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、前記力入力検出ステップにて検出された前記力入力に応じて、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させ、当該変更結果を当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの記憶部に記憶させる変更ステップと、
を含むことを特徴とする入力制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の入力制御方法において、
前記力入力ステップは、
前記力の方向を、直接または間接的に検出し、
前記変更ステップは、
前記力の方向に応じて、前記表示態様を変更すること
を特徴とする入力制御方法。
【請求項3】
表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理を行うことで操作入力の多様性を高めた情報処理装置であって、
表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出手段と、
前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力手段と、
前記位置入力手段にて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、前記力入力検出手段により検出された前記力入力に応じて、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させ、当該変更結果を当該表示対象に対する入力として記憶部に記憶させる変更手段と、
を備えたことを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の情報処理装置において、
前記力入力手段は、
前記力の方向を、直接または間接的に検出し、
前記変更手段は、
前記力の方向に応じて、前記表示態様を変更すること
を特徴とする情報処理装置。
【請求項5】
コンピュータにおける操作入力の多様性を高めるために、表示画面への接触操作において力入力を伴うか否かによって異なる処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
表示画面にスライドせずに接触したオブジェクトの力入力を、直接的または間接的に検出する力入力検出ステップと、
前記オブジェクトが前記表示画面に接触した位置を検出する位置入力ステップと、
前記位置入力ステップにて検出された位置の表示対象を前記位置に保持しつつ、前記力入力検出ステップにて検出された前記力入力に応じて、当該表示対象以外の表示態様を変更することにより、当該表示対象を相対的に変更させ、当該変更結果を当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの記憶部に記憶させる変更ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項6】
請求項5に記載のプログラムにおいて、
前記力入力ステップは、
前記力の方向を、直接または間接的に検出し、
前記変更ステップは、
前記力の方向に応じて、前記表示態様を変更すること
を特徴とするプログラム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2018-07-25 
結審通知日 2018-07-27 
審決日 2018-08-09 
出願番号 特願2013-554735(P2013-554735)
審決分類 P 1 41・ 851- Y (G06F)
P 1 41・ 856- Y (G06F)
P 1 41・ 853- Y (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 円子 英紀  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 山田 正文
千葉 輝久
登録日 2016-05-20 
登録番号 特許第5935081号(P5935081)
発明の名称 入力制御方法、コンピュータ、および、プログラム  
代理人 諌山 太郎  
代理人 諌山 太郎  

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