• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する C10M
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する C10M
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する C10M
管理番号 1344148
審判番号 訂正2018-390084  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2018-05-17 
確定日 2018-08-30 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5458718号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5458718号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯

本件訂正審判に係る特許は、発明の名称を「潤滑剤組成物及び転がり軸受」とする特許第5458718号(以下、「本件特許」という。)であって、平成21年7月24日を出願日とする特願2009-172925号について、平成26年1月24日、請求項1、2に対して、設定登録を受けたものである。その後、本件特許に対し、平成30年5月17日に訂正審判の請求がなされ、同年6月20日付けで審尋を行い、これに対し、同年7月6日に回答書が提出されたものである。

第2 請求の趣旨及び訂正の内容

1 請求の趣旨

本件訂正審判の請求の趣旨は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。

2 本件訂正の内容

本件訂正審判に係る明細書及び特許請求の範囲の訂正の内容は、以下に示す、訂正事項1ないし4である(これらを併せて「本件訂正」という。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲【請求項1】の「ベンジリデンソルビトール、ジトリリデンソルビトール、非対称のジアルキルベンジリデンソルビトールから選ばれる少なくとも1種のベンジリデンソルビトール系ゲル化剤」との記載を、「ジベンジリデンソルビトール、ジトリリデンソルビトール、非対称のジアルキルベンジリデンソルビトールから選ばれる少なくとも1種のベンジリデンソルビトール系ゲル化剤」に訂正し、特許請求の範囲【請求項1】の「アミノ酸系ゲル化剤:ベンジリデンソルビトール系ゲル化剤=20?80%:80?20%」との記載を、「アミノ酸系ゲル化剤:ベンジリデンソルビトール系ゲル化剤=50%:50%」に訂正する(請求項1を引用する請求項2についても同様に訂正する。)

(2)訂正事項2
明細書段落【0008】の「ベンジリデンソルビトール、ジトリリデンソルビトール、非対称のジアルキルベンジリデンソルビトールから選ばれる少なくとも1種のベンジリデンソルビトール系ゲル化剤」との記載を、「ジベンジリデンソルビトール、ジトリリデンソルビトール、非対称のジアルキルベンジリデンソルビトールから選ばれる少なくとも1種のベンジリデンソルビトール系ゲル化剤」に訂正し、明細書段落【0008】の「アミノ酸系ゲル化剤:ベンジリデンソルビトール系ゲル化剤=20?80%:80?20%」との記載を、「アミノ酸系ゲル化剤:ベンジリデンソルビトール系ゲル化剤=50%:50%」に訂正する。

(3)訂正事項3
明細書段落【0017】の「天然油計」との記載を、「天然油系」に訂正する。

(4)訂正事項4
明細書の段落【0026】の「実施例1?2」との記載を、「実施例1、参考例2」に訂正し、段落【0030】の「実施例1、2」との記載を、「実施例1及び参考例2」に訂正し、段落【0034】の表1中の「実施例2」との記載を、「参考例2」に訂正する。

第3 当審の判断

上記訂正事項1ないし4が、特許法第126条第1項ただし書き各号に掲げる事項を目的とするものであるか否か(訂正の目的の適否)、同条第5項(新規事項の追加の有無)、同条第6項(特許請求の範囲の実質的拡張又は変更の有無)及び同条第7項(独立特許要件充足性)の各規定に適合するものであるか否かについて、訂正事項1から順に以下検討する。

1 訂正事項1

(1)訂正の目的の適否
上記審尋に対する上記回答書で示された特公昭49-7268号公報の「ベンジリデンソルビトールは、ソルビットとベンズアルデヒドとの縮合により得られる固体化合物で、生成物としては、1・3-2・4-ジベンジリデンソルビトール、1・3-2・4-5・6-トリベンジリデンソルビトールがあり」(第1頁右欄第28?33行)との記載、
国際公開第2008/007642号の「[0006] 本発明は、黒色顔料としてカーボンブラックを用いると共に、ベンジリデンソルビトール系のゲル化剤を用いて・・・ゲル化不良なしにクレヨンを製造する方法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0007] 本発明によれば、有機溶剤にカーボンブラックと樹脂成分を溶解、分散させた後、加熱下にジベンジリデンソルビトール、トリベンジリデンソルビトール及びこれらの誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種のゲル化剤を溶解させ・・・ことを特徴とするクレヨンの製造方法が提供される。
発明の効果
[0008] 本発明によれば、有機溶剤にカーボンブラックと樹脂成分を溶解、分散させた後、加熱下に上記ベンジリデンソルビトール系のゲル化剤を溶解させ・・・クレヨンを安定して製造することができる。」との記載、
国際公開第03/041664号の「上記油溶性ゲル化剤としては・・・モノベンジリデンソルビトール、ジベンジリデンソルビトール等のソルビトールのベンジリデン誘導体から選ばれるゲル化剤が挙げられる。」(第19頁第15?22頁)との記載(以上の下線は当審で付した)によれば、モノベンジリデン、ジベンジリデン及びトリベンジリデンを含めてベンジリデンと表現していることが分かるから、「ベンジリデンソルビトール」は、ソルビトールのベンジリデン誘導体の総称であって、「ジベンジリデンソルビトール」の他に「トリベンジリデンソルビトール」及び「モノベンジリデンソルビトール」等を含む上位の概念の化合物であるといえる。

そして、訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1のベンジリデンソルビトール系ゲル化剤の選択肢のうち「ベンジリデンソルビトール」を、ベンジリデンソルビトールに含まれる化合物である「ジベンジリデンソルビトール」に限定し、特許請求の範囲の請求項1の「アミノ酸系ゲル化剤」と「ベンジリデンソルビトール系ゲル化剤」の質量比を、「20?80%:80?20%」から、「50%:50%」に限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるといえる。
また、特許請求の範囲の請求項2は、請求項1を引用するものであるから、訂正事項1は、請求項2についても、上記請求項1と同様の訂正を行うものであるところ、当該訂正も、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。

(2)新規事項の追加の有無
明細書段落【0026】には、「表1に示す配合にて実施例1?2、比較例1?3の潤滑剤組成物及び合計量を4質量%としてN-2-エチルヘキサノイル-L-グルタミン酸ジブチルアミドとジベンジリデンソルビトールとの配合比率を変えたものを調製した。」との記載があり、同段落【0034】の【表1】には、上記の「実施例1」として、基油のポリオールエステルが96、アミノ酸系ゲル化剤が2、ベンジリデンソルビトール系ゲル化剤(ジベンジリデンソルビトール)が2の潤滑剤組成物が記載されている。この数値は、上記の段落【0026】の記載によれば、質量%を表しているといえるから、「アミノ酸系ゲル化剤」と「ベンジリデンソルビトール系ゲル化剤」との質量比は、2:2、すなわち50%:50%である。
このように、「ジベンジリデンソルビトール」については、上述の段落【0026】、【0034】の【表1】に記載され、「アミノ酸系ゲル化剤」と「ベンジリデンソルビトール系ゲル化剤」との質量比を、1:1とすることは、上述の段落【0034】の【表1】に記載される「実施例1」に示されていた事項であるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第126条第5項に規定する要件を満たすものといえる。

(3)特許請求の範囲の実質的拡張又は変更の有無
訂正事項1は、特許請求の範囲に記載された「ベンジリデンソルビトール」を、ベンジリデンソルビトールに含まれる化合物である「ジベンジリデンソルビトール」に限定し、「アミノ酸系ゲル化剤」と「ベンジリデンソルビトール系ゲル化剤」の質量比を、「20?80%:80?20%」から、「50%:50%」に限定するものであるから、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないといえる。
そうすると、訂正事項1は、特許法第126条第6項に規定する要件を満たすものである。

(4)独立特許要件充足性
訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮するものであるから、先行技術との関係において、特許要件を満たさなくなるような事情は存在せず、また、訂正事項1により、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載に新たな記載不備が生じるわけでもない。
そうすると、訂正事項1は、特許法第126条第7項に規定する要件を満たすものである。

2 訂正事項2

(1)訂正の目的の適否
本件訂正前の明細書段落【0008】には、本件訂正前の請求項1に対応する「ベンジリデンソルビトール」との記載がなされ、「アミノ酸系ゲル化剤」と「ベンジリデンソルビトール系ゲル化剤」の質量比として、本件訂正前の請求項1に対応する「20?80%:80?20%」との記載がなされていたところ、当該請求項1は前記訂正事項1により訂正されたため、両者は整合しないものとなった。
訂正事項2は、当該不整合を解消するためのものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるといえる。

(2)新規事項の追加の有無
上記1(2)のとおり、「ベンジリデンソルビトール」を、「ジベンジリデンソルビトール」とすること、及び「アミノ酸系ゲル化剤」と「ベンジリデンソルビトール系ゲル化剤」との質量比を、50%:50%とすることは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項であるから、訂正事項2は、特許法第126条第5項に規定する要件を満たすものといえる。

(3)特許請求の範囲の実質的拡張又は変更の有無
訂正事項2は、前記訂正事項1により減縮された特許請求の範囲の記載に明細書の記載を整合させるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
そうすると、訂正事項2は、特許法第126条第6項に規定する要件を満たすものである。

3 訂正事項3

(1)訂正の目的の適否
本件訂正前の明細書段落【0017】には、「天然油計」と記載されているが、この記載は、日本語として意味をなさず、文脈からみて「天然油系」の誤記であることは明白である。
そうすると、訂正事項3は、明白な誤記を本来の正しい意味に正すものであるから、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記又は誤訳の訂正を目的とするものといえる。

(2)新規事項の追加の有無
訂正事項3は、単に、日本語として意味をなさない明白な誤記である「天然油計」を、本来の意味である「天然油系」に正すものであるから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第126条第5項に規定する要件を満たすものといえる。

(3)特許請求の範囲の実質的拡張又は変更の有無
訂正事項3は、単なる誤記の訂正にすぎないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
そうすると、訂正事項3は、特許法第126条第6項に規定する要件を満たすものである。

(4)独立特許要件充足性
訂正事項3は、単に、日本語として意味をなさない明白な誤記を、本来の意味に正すものであるから、これにより独立特許要件を充足しなくなるような事情は認められない。
そうすると、訂正事項3は、特許法第126条第7項に規定する要件を満たすものである。

4 訂正事項4

(1)訂正の目的の適否
上記訂正事項1により、特許請求の範囲に記載された「アミノ酸系ゲル化剤」と「ベンジリデンソルビトール系ゲル化剤」との質量比は、50%:50%に限定されたところ、本件訂正前の明細書の段落【0034】の【表1】に記載される「実施例2」は、アミノ酸系ゲル化剤が3(質量%)、ベンジリデンソルビトール系ゲル化剤が1(質量%)であるから、「実施例2」は、「アミノ酸系ゲル化剤」と「ベンジリデンソルビトール系ゲル化剤」との質量比が、本件訂正後の請求項1の「50%:50%」に含まれるものではなく、本件訂正後の特許請求の範囲に係る発明の実施例にあたらない。
そうすると、訂正事項4の明細書段落【0026】、段落【0030】及び段落【0034】の【表1】における各訂正は、当該発明の技術的範囲に含まれなくなる「実施例2」を「参考例2」とし、当該訂正事項1による訂正後の特許請求の範囲の記載と明細書の記載とを整合させるものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるといえる。

(2)新規事項の追加の有無
訂正事項4は、上記訂正事項1による訂正後の特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために、当該発明の技術的範囲に含まれなくなる「実施例2」を「参考例2」に訂正するものである。
そうすると、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第126条第5項に規定する要件を満たすものといえる。

(3)特許請求の範囲の実質的拡張又は変更の有無
訂正事項4は、単に、訂正事項1による訂正後の特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
そうすると、訂正事項4は、特許法第126条第6項に規定する要件を満たすものである。

第4 結び

以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号、第2号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであって、かつ、同条第5項から第7項までの規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
潤滑剤組成物及び転がり軸受
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤組成物及び転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
各種産業機械や車両、電機機器、各種モータや自動車部品等に使用される転がり軸受には、潤滑性を付与するためにこれまでグリース組成物が封入されている。また、近年では装置や機器の小型軽量化や高速化、省エネルギー化等を目的として低トルク化も要求されてきている。特に車両用の転がり軸受では、低温での起動性も求められている。
【0003】
低トルク化のためには、混和ちょう度の低いグリース組成物を封入することが考えられるが、一方でグリース漏洩が起こりやすくなる。そこで、増ちょう剤とゲル化剤とを併用して半固形状とした潤滑剤組成物を用いることが提案されている(例えば、特許文献1?3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58-219297号公報
【特許文献2】特開2005-139398号公報
【特許文献3】国際公開特許WO2006-051671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゲル化剤を用いて半固形状にした潤滑剤組成物は、軸受が回転してない状態ではせん断されずに硬化したままであり、軸受が回転するとせん断力が作用して流動性を示すようになるため、潤滑性を維持しつつ、漏洩を抑えることができる。また、増ちょう剤の量を減じることができるため、相対的に基油量が増すという効果もある。
【0006】
しかし、従来のゲル化剤を用いて半固形状にした潤滑剤組成物は、増ちょう剤の配合割合が多いため、せん断力が作用したときの流動性が十分ではなく、流動するまでの時間にも問題がある。また、硬化状態と流動状態とを繰り返す過程において元の硬化状態または流動状態に戻る復元性(流動-復元可逆性)も十分とはいえない。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、ゲル化剤を用いて半固形状にした潤滑剤組成物の流動性や流動-復元可逆性をより高めるとともに、潤滑寿命が長く低トルクでもある転がり軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の潤滑剤組成物及び転がり軸受を提供する。
(1)N-2-エチルヘキサノイル-L-グルタミン酸ジブチルアミド、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-α、γ-n-ジブチルアミドから選ばれる少なくとも1種のアミノ酸系ゲル化剤と、
ジベンジリデンソルビトール、ジトリリデンソルビトール、非対称のジアルキルベンジリデンソルビトールから選ばれる少なくとも1種のベンジリデンソルビトール系ゲル化剤とを、
質量比で、アミノ酸系ゲル化剤:ベンジリデンソルビトール系ゲル化剤=50%:50%にて混合したゲル化剤のみで基油を増ちょうしてなることを特徴とする潤滑剤組成物。
(2)内輪と、外輪と、前記内輪及び前記外輪の間に転動自在に配された複数の転動体と、前記内輪及び前記外輪の間に形成される内部空間に、上記(1)記載の潤滑剤組成物を充填したことを特徴とする転がり軸受。
【発明の効果】
【0009】
本発明の潤滑剤組成物に配合される特定のアミノ酸系ゲル化剤及び特定のベンジリデンソルビトール系ゲル化剤は、共に水素結合を形成しやすい化学構造を有するため、これらを特定の混合比率で併用することにより、より少ない配合量で基油を増ちょうすることができる。また、本発明の潤滑剤組成物は、これらゲル化剤の作用により粘性の変化量も大きく、低トルク化を図ることができ、流動-可逆回復性にも優れる。
【0010】
また、このような潤滑剤組成物を充填した転がり軸受では、潤滑剤の漏洩が無く、潤滑寿命に優れるとともに、低トルクにもなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】試験1で得られた、ゲル化剤の種類及びその配合量と、不混和ちょう度との関係を示すグラフである。
【図2】試験2で得られた、アミノ酸系ゲル化剤とベンジリデンソルビトール系ゲル化剤との配合比率と、ちょう度回復率との関係を示すグラフである。
【図3】試験2で得られた、実施例1の潤滑剤組成物の3サイクル間の不混和ちょう度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
〔潤滑剤組成物〕
本発明の潤滑剤組成物は、増ちょう剤を用いることなく、アミノ酸系ゲル化剤とベンジリデンソルビトール系ゲル化剤とを併用して基油を増ちょうしたものである。
【0013】
(ゲル化剤)
アミノ酸系ゲル化剤として、ベンジリデンソルビトール系ゲル化剤との相乗効果が高いことから、N-2-エチルヘキサノイル-L-グルタミン酸ジブチルアミド、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-α、γ-n-ジブチルアミドを用いる。また、これらを併用してもよい。
【0014】
ベンジリデンソルビトール系ゲル化剤として、アミノ酸系ゲル化剤との相乗効果が高いことから、ベンジリデンソルビトール、ジトリリデンソルビトール、非対称のジアルキルベンジリデンソルビトールを用いる。また、これらを併用してもよい。
【0015】
後述する試験1にも示すように、アミノ酸系ゲル化剤とベンジリデンソルビトール系ゲル化剤とを併用することにより、相乗効果により、それぞれ単独で用いた場合に比べて潤滑剤組成物中の配合量を削減できる。但し、アミノ酸系ゲル化剤とベンジリデンソルビトール系ゲル化剤との配合量が総量で8質量%を超えると初期ちょう度が硬くなりすぎ、転がり軸受への充填作業をはじめとして適用箇所に適用するときのハンドリング性が低下する。また、せん断を与えても十分な流動性が得られない。一方、2質量%未満では基油の増ちょう作用が十分ではなく、初期から柔らかすぎて転がり軸受等の適用箇所から漏洩しやすくなる。好ましくは3?6質量%である。
【0016】
また、アミノ酸系ゲル化剤とベンジリデンソルビトール系ゲル化剤との配合比率は、質量比で、アミノ酸系ゲル化剤:ベンジリデンソルビトール系ゲル化=20?80%:80?20%とする。アミノ酸系ゲル化剤及びベンジリデンソルビトール系ゲル化剤とも、20%未満または80%超では、相乗効果が低くなり、流動-復元可逆性の向上度合が低下する。好ましくは、アミノ酸系ゲル化剤:ベンジリデンソルビトール系ゲル化=40?70%:60?30%である。
【0017】
(基油)
基油は、アミノ酸系ゲル化剤及びベンジリデンソルビトール系ゲル化剤を溶解できる潤滑油であれば制限は無く、鉱油系、合成油系または天然油系の潤滑剤を目的に応じて選択できる。鉱油系潤滑油としては、減圧蒸留、油剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、硫酸洗浄、白土精製、水素化精製等を適宜組み合わせて精製したものが好ましい。合成油系潤滑油としては、炭化水素系油、芳香族系油、エステル系油、エーテル系油が挙げられる。天然油系潤滑油としては、牛脂、豚脂、大豆油、菜種油、米ぬか油、ヤシ油、パーム油、パーム核油等の油脂系油またはこれらの水素化物が挙げられる。これらの基油はそれぞれ単独でも、2種以上を混合して使用することもできる。これらの潤滑油の中でも、極性を有するものが好適であり、ポリオールエステル油やエーテル系油がより好ましい。
【0018】
また、基油の動粘度は、潤滑性及び低トルクを考慮して、10?400mm^(2)/s(40℃)が好ましく、20?250mm^(2)/s(40℃)がより好ましい。
【0019】
(添加剤)
本発明の潤滑剤組成物においては、その各種性能をさらに向上させるため、所望により種々の添加剤を混合してもよい。添加剤としては、アミン系、フェノール系、硫黄系、ジチオリン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛等の酸化防止剤、スルフォン酸金属塩、エステル系、アミン系、ナフテン酸金属塩、コハク酸誘導体等の防錆剤、リン系、ジチオリン酸亜鉛、有機モリブデン等の極圧剤、脂肪酸、動植物油等の油性向上剤、ベンゾトリアゾール等の金属不活性化剤等、潤滑用に使用される添加剤を単独で、または2種以上混合して用いることができる。尚、これら添加剤の添加量は、本発明の目的を損なわない程度であれば特に限定されるものではない。
【0020】
(製造方法)
本発明の潤滑剤組成物を製造する方法には、先ず、基油にアミノ酸系ゲル化剤及びベンジリデンソルビトール系ゲル化剤、更に添加剤をそれぞれ所定量加え、ゲル化剤が溶解するまで加熱攪拌する。次いで、予め水冷したアルミニウム製バットに上記潤滑剤組成物を流し込み、バットを冷水で冷却することでゲル状物を得る。そして、ゲル状物を3本ロールミルにかけることで潤滑剤組成物を得る。
【0021】
〔転がり軸受〕
本発明はまた、上記の潤滑剤組成物を封入した転がり軸受を提供する。但し、転がり軸受の種類や構造には制限がなく、軸受空間に上記の潤滑剤組成物を充填して構成される。
【0022】
本発明の転がり軸受は、潤滑剤組成物により潤滑寿命が長く、低トルクである。
【実施例】
【0023】
以下に、実施例及び比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0024】
(試験1)
ポリオールエステル油(動粘度33mm^(2)/s、40℃)に、(A)N-2-エチルヘキサノイル-L-グルタミン酸ジブチルアミドのみ、(B)ジベンジリデンソルビトールのみ、(C)N-2-エチルヘキサノイル-L-グルタミン酸ジブチルアミドとジベンジリデンソルビトールを等量づつ、それぞれ配合量が3質量%、4質量%または5質量%となるように添加し、加熱攪拌して溶解した後、予め水冷したアルミニウム製バットに流し込み、バットを冷水で冷却してゲル状に固化させ、3本ロールミルにかけて潤滑剤組成物を得た。
【0025】
そして、各潤滑剤組成物の不混和ちょう度を測定した。結果を図1に示すが、アミノ酸系ゲル化剤とベンジリデンソルビトール系ゲル化剤とを併用することにより、同じ配合量でも不混和ちょう度を下げることができる。
【0026】
(試験2)
表1に示す配合にて実施例1、参考例2、比較例1?3の潤滑剤組成物及び合計量を4質量%としてN-2-エチルヘキサノイル-L-グルタミン酸ジブチルアミドとジベンジリデンソルビトールとの配合比率を変えたものを調製した。即ち、ポリオールエステル油(動粘度33mm^(2)/s、40℃)96gに、アミノ酸系ゲル化剤としてN-2-エチルヘキサノイル-L-グルタミン酸ジブチルアミド、ベンジリデンソルビトール系ゲル化剤としてジベンジリデンソルビトールを所定量添加し、加熱攪拌して溶解した後、予め水冷したアルミニウム製バットに流し込み、バットを冷水で冷却してゲル状に固化させ、3本ロールミルにかけて潤滑剤組成物を得た。
【0027】
また、比較例4として、ポリオールエステル油(動粘度33mm^(2)/s、40℃)92gに、12-ヒドロキシステアリン酸リチウムを8g添加し、加熱して溶解させた後、予め水冷したアルミニウム製バットに流し込み、バットを冷水で冷却してゲル状に固化させ、3本ロールミルにかけて潤滑剤組成物を得た。
【0028】
そして、各潤滑剤組成物について、下記の(1)せん断流動性試験及び(2)流動-復元可逆性試験を行った。
【0029】
(1)せん断流動性試験
潤滑剤組成物の初期不混和ちょう度を測定した。また、自転-公転式攪拌機を用い、自転1370r/min、公転1370r/minにて3分間攪拌してせん断を加えた後、不混和ちょう度を測定した。
【0030】
結果を表1に併記するが、せん断付与前の不混和ちょう度とせん断付与後の不混和ちょう度との差が大きいほど粘性変化が大きく好ましい。また、せん断付与後の不混和ちょう度が360以上(降伏応力を持たないちょう度)であれば、せん断による流動性有りと評価できる。実施例1及び参考例2の潤滑性組成物は、粘性変化が大きく、流動性も有する。
【0031】
(2)流動-復元可逆性試験を行った。
自転-公転式撹拌機を用い、潤滑剤組成物を自転1370r/min、公転1370r/minにて3分間撹拌してせん断を加えた後、不混和ちょう度を測定し、40℃で3時間放置した後、再度不混和ちょう度測定することを1サイクルとし、これを3回繰り返す。そして、せん断1回目直後及び3サイクル後の各不混和ちょう度を測定し、下記式から粘性回復率を求めた。
尚、この粘性回復率は、せん断を繰り返し受けたときの回復性能を示す指標であり、この値が高いほど、せん断を繰り返し受けても回復性が低下しないことを示す。また、100%の時に初期のちょう度まで回復したことになる。
【0032】
【数1】

【0033】
結果を表1及び図2に示すが、(N-2-エチルヘキサノイル-L-グルタミン酸ジブチルアミド:ジベンジリデンソルビトール)比が20?80%:80?20%の範囲にあるとき、特に良好な粘性回復率が得られている。
【0034】
【表1】

【0035】
また、実施例1の潤滑剤組成物の3サイクル間の不混和ちょう度の変化を図3に示すが、良好な流動-可逆回復性を示している。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-2-エチルヘキサノイル-L-グルタミン酸ジブチルアミド、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-α、γ-n-ジブチルアミドから選ばれる少なくとも1種のアミノ酸系ゲル化剤と、
ジベンジリデンソルビトール、ジトリリデンソルビトール、非対称のジアルキルベンジリデンソルビトールから選ばれる少なくとも1種のベンジリデンソルビトール系ゲル化剤とを、
質量比で、アミノ酸系ゲル化剤:ベンジリデンソルビトール系ゲル化剤=50%:50%にて混合したゲル化剤のみで基油を増ちょうしてなることを特徴とする潤滑剤組成物。
【請求項2】
内輪と、外輪と、前記内輪及び前記外輪の間に転動自在に配された複数の転動体と、前記内輪及び前記外輪の間に形成される内部空間に、請求項1記載の潤滑剤組成物を充填したことを特徴とする転がり軸受。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2018-08-03 
結審通知日 2018-08-07 
審決日 2018-08-20 
出願番号 特願2009-172925(P2009-172925)
審決分類 P 1 41・ 852- Y (C10M)
P 1 41・ 851- Y (C10M)
P 1 41・ 853- Y (C10M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中野 孝一  
特許庁審判長 冨士 良宏
特許庁審判官 原 賢一
日比野 隆治
登録日 2014-01-24 
登録番号 特許第5458718号(P5458718)
発明の名称 潤滑剤組成物及び転がり軸受  
代理人 松山 美奈子  
代理人 松山 美奈子  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ