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審決分類 審判 訂正 判示事項別分類コード:857 訂正する F16C
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する F16C
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する F16C
管理番号 1344150
審判番号 訂正2018-390089  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2018-05-25 
確定日 2018-08-30 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第4682919号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4682919号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
特許第4682919号に係る発明は、平成18年6月1日に特許出願されたものであって、平成23年2月18日に特許権の設定登録がされ、その後平成30年5月25日付けで本件審判請求がされたものである。

第2 請求について
1 請求の趣旨
本件審判請求の趣旨は、特許第4682919号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。

2 訂正の内容
本件訂正審判請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)は、次のとおりである(下線は、本件訂正箇所である。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲【請求項1】乃至【請求項4】を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲【請求項5】の「請求項1?4いずれか1項に記載の転がり軸受けの製造方法」とあるうち、請求項1を引用するものについて独立形式に改め、以下のとおり訂正する。
「固定輪と、回転輪と、前記固定輪と前記回転輪により画成された環状空間に周方向に回転自在に配設された複数の転動体と、前記転動体を回転自在に保持する保持器と、前記環状空間の開口端部をシールする一対のシール装置と、を備え、前記一対のシール装置の少なくとも一方は、円環形状の芯金と、前記芯金の周縁部に配設されるシールリップ形状部と、磁気エンコーダの被検出面を前記固定輪と前記回転輪の軸方向端面よりも軸方向内側の位置で有して、前記芯金の軸方向外側の端面に配設される円環形状の磁石部と、を有する転がり軸受の製造方法において、
前記芯金の周縁部に熱硬化性接着剤を塗布して半硬化状態にし、前記芯金を放置する第1の接着剤塗布工程と、
前記第1の接着剤塗布工程の後、前記芯金に対し、前記シールリップ形状部を圧縮成形或いは射出成形で加硫接着にて接合して成形するシールリップ形状部成形工程と、
前記シールリップ形状部成形工程の後、前記芯金の端面部に、前記熱硬化性接着剤を塗布して半硬化状態にし、前記芯金を放置する第2の接着剤塗布工程と、
前記第2の接着剤塗布工程の後、樹脂磁石材料を磁場射出成形して、溶融した前記樹脂磁石材料と前記芯金とを接合させ、前記磁石部を成形する磁石部成形工程と、を含み、
前記樹脂磁石材料は、70?92質量%のフェライト磁性粉と、分子構造中にソフトセグメントを有する変性ポリアミド12とポリアミド12との混合物又は分子構造中にソフトセグメントを有する変性ポリスチレンとポリスチレンとの混合物と、を含有することを特徴とする転がり軸受の製造方法。」
(3)訂正事項3
特許請求の範囲【請求項5】の「請求項1?4いずれか1項に記載の転がり軸受けの製造方法」とあるうち、請求項2を引用するものについて独立形式に改め、新たに請求項6として以下のとおり訂正する。
「固定輪と、回転輪と、前記固定輪と前記回転輪により画成された環状空間に周方向に回転自在に配設された複数の転動体と、前記転動体を回転自在に保持する保持器と、前記環状空間の開口端部をシールする一対のシール装置と、を備え、前記一対のシール装置の少なくとも一方は、円環形状の芯金と、前記芯金の周縁部に配設されるシールリップ形状部と、磁気エンコーダの被検出面を前記固定輪と前記回転輪の軸方向端面よりも軸方向内側の位置で有して、前記芯金の軸方向外側の端面に配設される円環形状の磁石部と、を有する転がり軸受の製造方法において、
前記芯金の周縁部に熱硬化性接着剤を塗布して半硬化状態にし、前記芯金を放置する接着剤塗布工程と、
前記接着剤塗布工程の後、前記芯金に対し、前記シールリップ形状部を圧縮成形或いは射出成形で加硫接着にて接合して成形するシールリップ形状部成形工程と、
前記磁石部を、樹脂磁石材料を用いて、ディスクゲート方式による磁場射出成形により単体の状態で成形する磁石部成形工程と、
前記シールリップ形状部成形工程、及び前記磁石部成形工程の後、前記芯金と前記磁石部とが同心になるように接着を行う接着工程と、を含み、
前記樹脂磁石材料は、70?92質量%のフェライト磁性粉と、分子構造中にソフトセグメントを有する変性ポリアミド12とポリアミド12との混合物又は分子構造中にソフトセグメントを有する変性ポリスチレンとポリスチレンとの混合物と、を含有することを特徴とする転がり軸受の製造方法。」
(4)訂正事項4
特許請求の範囲【請求項5】の「請求項1?4いずれか1項に記載の転がり軸受けの製造方法」とあるうち、請求項3を引用するものについて独立形式に改め、新たに請求項7として以下のとおり訂正する。
「固定輪と、回転輪と、前記固定輪と前記回転輪により画成された環状空間に周方向に回転自在に配設された複数の転動体と、前記転動体を回転自在に保持する保持器と、前記環状空間の開口端部をシールする一対のシール装置と、を備え、前記一対のシール装置の少なくとも一方は、円環形状の芯金と、前記芯金の周縁部に配設されるシールリップ形状部と、磁気エンコーダの被検出面を前記固定輪と前記回転輪の軸方向端面よりも軸方向内側の位置で有して、前記芯金の軸方向外側の端面に配設される円環形状の磁石部と、を有する転がり軸受の製造方法において、
前記芯金を断面略J字形状に加工する芯金加工工程と、
前記磁石部を、樹脂磁石材料を用いて、ディスクゲート方式による磁場射出成形により単体の状態で成形する磁石部成形工程と、
前記芯金加工工程、及び前記磁石部成形工程の後、前記芯金で、前記磁石部の前記被検出部を除く部分を内包するように前記磁石部を加締める加締工程と、を含み、
前記樹脂磁石材料は、70?92質量%のフェライト磁性粉と、分子構造中にソフトセグメントを有する変性ポリアミド12とポリアミド12との混合物又は分子構造中にソフトセグメントを有する変性ポリスチレンとポリスチレンとの混合物と、を含有することを特徴とする転がり軸受の製造方法。」
(5)訂正事項5
特許請求の範囲【請求項5】の「請求項1?4いずれか1項に記載の転がり軸受けの製造方法」とあるうち、請求項4を引用するものについて独立形式に改め、新たに請求項8として以下のとおり訂正する。
「固定輪と、回転輪と、前記固定輪と前記回転輪により画成された環状空間に周方向に回転自在に配設された複数の転動体と、前記転動体を回転自在に保持する保持器と、前記環状空間の開口端部をシールする一対のシール装置と、を備え、前記一対のシール装置の少なくとも一方は、円環形状の芯金と、前記芯金の周縁部に配設されるシールリップ形状部と、磁気エンコーダの被検出面を前記固定輪と前記回転輪の軸方向端面よりも軸方向内側の位置で有して、前記芯金の軸方向外側の端面に配設される円環形状の磁石部と、を有する転がり軸受の製造方法において、
前記芯金に半硬化状態の接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記接着剤塗布工程の後、前記芯金に対し、前記シールリップ形状部と前記磁石部とを同じ樹脂磁石材料を用いて磁場射出成形により単一部材として成形する成形工程と、を含み、
前記樹脂磁石材料は、70?92質量%のフェライト磁性粉と、分子構造中にソフトセグメントを有する変性ポリアミド12とポリアミド12との混合物又は分子構造中にソフトセグメントを有する変性ポリスチレンとポリスチレンとの混合物と、を含有することを特徴とする転がり軸受の製造方法。」
(6)訂正事項6
明細書段落【0008】の「(5)前記樹脂磁石材料は、磁性粉と、分子構造中にソフトセグメントを有する変性ポリアミド12とポリアミド12との混合物又は分子構造中にソフトセグメントを有する変性ポリスチレンとポリスチレンとの混合物と、を含有することを特徴とする(1)?(4)のいずれか1つに記載の転がり軸受の製造方法。」との記載を「(1)?(4)において、前記樹脂材料は、70?92質量%のフェライト磁性粉と、分子構造中にソフトセグメントを有する変性ポリアミド12とポリアミド12との混合物又は分子構造中にソフトセグメントを有する変性ポリスチレンとポリスチレンとの混合物と、を含有する。」に訂正する。
(7)訂正事項7
明細書段落【0057】【表1】の「実施例2」との記載を「参考例2」に訂正する。

第3 当審の判断
1 訂正事項1
(1)訂正の目的
訂正事項1は、【請求項1】乃至【請求項4】を削除するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(2)新規事項追加、及び、特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
訂正事項1は、【請求項1】乃至【請求項4】を削除するものであるから、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲の拡張又は変更するものではないことは明らかである。
2 訂正事項2
(1)訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項5が請求項1?4のいずれか1の記載を引用する記載であるところ、請求項2?4を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立項形式へ改めるための訂正であって、特許法第126条第1項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項2は、訂正前の請求項5の発明特定事項である「磁性粉」について「70?92質量%のフェライト」との限定を付加するものものでもあるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものでもある。
(2)新規事項追加、及び、特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
ア 訂正事項2のうち、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正については、実質的な内容の変更を伴うものではないから、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲の拡張又は変更するものではない。
イ 訂正事項2のうち、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正について、磁性粉の質量%が70?92質量%である点については、明細書段落【0019】に「前記磁石部25の磁石材料としては、特に限定されないが、芯金15の軸方向外側の端面28への接合性を考慮すると、磁性粉を70?92質量%程度含有し」との記載に基づいているから、新規事項を追加するものではない。また、磁性粉をフェライトに特定する点については、明細書段落【0020】の「磁性粉としては、ストロンチウムフェライトやバリウムフェライトなどのフェライト」、同段落【0029】の「磁性粉として、コスト、耐酸化性を考慮すると、フェライト系が最も好適である」、同段落【0030】の「磁性粉は、目標とする磁気特性、使用環境、コストで使い分けを行う。磁気特性がBHmaxで1.4?2.2MGOe程度であれば、ストロンチウムフェライトなどのフェライト系磁性粉での対応で十分である。」、及び、同段落【0057】【表1】の実施例1のSrフェライト(wt%)の欄が89.5との記載に基づいているから、新規事項を追加するものではない。
そして、訂正事項2のうち、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正によって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 訂正事項3
(1)訂正の目的
訂正事項3は、訂正前の請求項5が請求項1?4のいずれか1の記載を引用する記載であるところ、請求項1、3?4を引用しないものとした上で、請求項2を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立項形式へ改めるための訂正であって、特許法第126条第1項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項3は、訂正前の請求項5の発明特定事項である「磁性粉」について「70?92質量%のフェライト」との限定を付加するものものでもあるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものでもある。
(2)新規事項追加、及び、特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
ア 訂正事項3のうち、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正については、実質的な内容の変更を伴うものではないから、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲の拡張又は変更するものではない。
イ 訂正事項3のうち、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正については、上記2(2)イでの説示と同様に、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲の拡張又は変更するものでもない。
4 訂正事項4
(1)訂正の目的
訂正事項4は、訂正前の請求項5が請求項1?4のいずれか1の記載を引用する記載であるところ、請求項1、2、4を引用しないものとした上で、請求項3を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立項形式へ改めるための訂正であって、特許法第126条第1項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項4は、訂正前の請求項5の発明特定事項である「磁性粉」について「70?92質量%のフェライト」との限定を付加するものものでもあるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものでもある。
(2)新規事項追加、及び、特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
ア 訂正事項4のうち、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正については、実質的な内容の変更を伴うものではないから、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲の拡張又は変更するものではない。
イ 訂正事項4のうち、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正については、上記2(2)イでの説示と同様に、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲の拡張又は変更するものでもない。
5 訂正事項5
(1)訂正の目的
訂正事項5は、訂正前の請求項5が請求項1?4のいずれか1の記載を引用する記載であるところ、請求項1?3を引用しないものとした上で、請求項4を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立項形式へ改めるための訂正であって、特許法第126条第1項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項5は、訂正前の請求項5の発明特定事項である「磁性粉」について「70?92質量%のフェライト」との限定を付加するものものでもあるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものでもある。
(2)新規事項追加、及び、特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
ア 訂正事項5のうち、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正については、実質的な内容の変更を伴うものではないから、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲の拡張又は変更するものでもない。
イ 訂正事項5のうち、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正については、上記2(2)イでの説示と同様に、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲の拡張又は変更するものでもない。
6 訂正事項6
(1)訂正の目的
訂正前の明細書段落【0008】は訂正前の特許請求の範囲に対応する記載がなされているため、訂正後の特許請求の範囲との関係で不明瞭となる。
訂正事項6は、訂正後の特許請求の範囲の記載と、明細書の記載を整合させるための訂正であり、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(2)新規事項追加、及び、特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
上記1?5に説示のとおり、訂正事項1?5による特許請求の範囲の訂正は、新規事項を追加するものではないから、特許請求の範囲の訂正と明細書の記載を整合させるための訂正である訂正事項6は、新規事項を追加するものではないし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
7 訂正事項7
(1)訂正の目的
訂正事項7は、訂正事項1?5による特許請求の範囲の訂正によって、訂正後の特許請求の範囲の各請求項に係る発明に含まれなくなる実施態様を参考例に訂正するための訂正であり、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(2)新規事項追加、及び、特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
訂正事項7は、訂正後の特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために、「実施例」を「参考例」に訂正するものであるから、新規事項を追加するものではないし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
8 特立特許要件について
上記のとおり、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、訂正事項2?5は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含む訂正であるから、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。そこで以下この点について検討する。
まず、訂正事項1は請求項を削除するものであるから、いわゆる独立特許要件は問題とならない。
次に、訂正事項2?5による訂正後の請求項5?8に係る発明は、訂正前の請求項1?4を引用する請求項5に係る発明を更に限定するものであるところ、訂正後の請求項5?8に係る発明について、特許査定された事情を変更すべき新たな事由を形成するものは現時点では見当たらない。
したがって、訂正後の請求項5?8に係る発明については特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正のうち、訂正事項1?5は、特許法第126条第1項ただし書第1号、あるいは、同条第1項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合するものである。また、訂正事項6及び7は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
転がり軸受の製造方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の回転数を検出するために用いられる磁気エンコーダ機能を備えた転がり軸受に関し、より具体的には、自転車や自動二輪車などのアンチロックブレーキ(ABS)に使用される転がり軸受の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から通常使用されている単列の深溝玉軸受は、回転数を検出することを目的とした磁気エンコーダ機能を付加したものではなかった。
【0003】
また、その一方、通常の複列の玉軸受ユニットである自動車の車輪用転がり軸受には、ABS用に軸受端面に磁気エンコーダが組み込まれているのが一般的である。
【0004】
しかしながら、当該磁気エンコーダはエンコーダ機能のみを有したものであり、別途シール部材が前記磁気エンコーダと別体として組み合わされて設けられていた。この一例としては、特許文献1に示すものが知られている。
【0005】
特許文献1に開示されているシール付回転検出装置は、図6に示す通り、外輪101aに取付けられ、端部にシールリップ形状部102aが付設されるシール部材102と、内輪101bに嵌合されたスリンガ103と、当該スリンガ103の外面へパルスを発生する磁性体からなった磁気エンコーダ104とが取付けられ、当該磁気エンコーダ104からの磁性パルスを近接配設した回転数検出センサ106で感度検出する回転数検出構造を特徴としている。ここで、転がり軸受は、このシール付回転検出装置105によって、内部のグリースの漏洩と、外部からの水分あるいは粉塵の浸入などが防止されている。また、磁気エンコーダ104は、磁性粉が混合されたゴムあるいは、樹脂などの弾性素材に混入させた弾性磁性材料で形成されており、型内で接着剤の塗布されたスリンガ103のフランジ部103aへプレス造形されることで、接合されている。また、一般的にエンコーダ用として用いられているものは、磁性粉としてフェライトを含有したニトリルゴムが用いられており、ロールで練られることで、機械的に磁性粉が配向された状態になっている。
【特許文献1】特開2001-255337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、回転数を検出するために、車輪用転がり軸受で用いられる、シール部材と磁気エンコーダの二部材からなるシール付回転検出装置を配設しようとすると、通常の単列深溝玉軸受では、軸方向寸法に物理的な制約があり、前記シール付回転検出装置を取付ける場合には、転がり軸受の環状隙間を犠牲にすることとなる。したがって、軸受内部に充填するグリース量が減少して、転がり軸受として寿命が短くなる虞があった。
【0007】
本発明は上述した状況を鑑みてなされたものであり、軸受寿命の低下を防止し、且つ高精度な回転数検出が可能な転がり軸受の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、下記の構成で達成される。
(1)固定輪と、回転輪と、前記固定輪と前記回転輪により画成された環状空間に周方向に回転自在に配設された複数の転動体と、前記転動体を回転自在に保持する保持器と、前記環状空間の開口端部をシールする一対のシール装置と、を備え、前記一対のシール装置の少なくとも一方は、円環形状の芯金と、前記芯金の周縁部に配設されるシールリップ形状部と、磁気エンコーダの被検出面を前記固定輪と前記回転輪の軸方向端面よりも軸方向内側の位置で有して、前記芯金の軸方向外側の端面に配設される円環形状の磁石部と、を有する転がり軸受の製造方法において、前記芯金の周縁部に熱硬化性接着剤を塗布して半硬化状態にし、前記芯金を放置する第1の接着剤塗布工程と、前記第1の接着剤塗布工程の後、前記芯金に対し、前記シールリップ形状部を圧縮成形或いは射出成形で加硫接着にて接合して成形するシールリップ形状部成形工程と、前記シールリップ形状部成形工程の後、前記芯金の端面部に、前記熱硬化性接着剤を塗布して半硬化状態にし、前記芯金を放置する第2の接着剤塗布工程と、前記第2の接着剤塗布工程の後、樹脂磁石材料を磁場射出成形して、溶融した前記樹脂磁石材料と前記芯金とを接合させ、前記磁石部を成形する磁石部成形工程と、を含むことを特徴とする転がり軸受の製造方法。
(2)固定輪と、回転輪と、前記固定輪と前記回転輪により画成された環状空間に周方向に回転自在に配設された複数の転動体と、前記転動体を回転自在に保持する保持器と、前記環状空間の開口端部をシールする一対のシール装置と、を備え、前記一対のシール装置の少なくとも一方は、円環形状の芯金と、前記芯金の周縁部に配設されるシールリップ形状部と、磁気エンコーダの被検出面を前記固定輪と前記回転輪の軸方向端面よりも軸方向内側の位置で有して、前記芯金の軸方向外側の端面に配設される円環形状の磁石部と、を有する転がり軸受の製造方法において、前記芯金の周縁部に熱硬化性接着剤を塗布して半硬化状態にし、前記芯金を放置する接着剤塗布工程と、前記接着剤塗布工程の後、前記芯金に対し、前記シールリップ形状部を圧縮成形或いは射出成形で加硫接着にて接合して成形するシールリップ形状部成形工程と、前記磁石部を、樹脂磁石材料を用いて、ディスクゲート方式による磁場射出成形により単体の状態で成形する磁石部成形工程と、前記シールリップ形状部成形工程、及び前記磁石部成形工程の後、前記芯金と前記磁石部とが同心になるように接着を行う接着工程と、を含むことを特徴とする転がり軸受の製造方法。
(3)固定輪と、回転輪と、前記固定輪と前記回転輪により画成された環状空間に周方向に回転自在に配設された複数の転動体と、前記転動体を回転自在に保持する保持器と、前記環状空間の開口端部をシールする一対のシール装置と、を備え、前記一対のシール装置の少なくとも一方は、円環形状の芯金と、前記芯金の周縁部に配設されるシールリップ形状部と、磁気エンコーダの被検出面を前記固定輪と前記回転輪の軸方向端面よりも軸方向内側の位置で有して、前記芯金の軸方向外側の端面に配設される円環形状の磁石部と、を有する転がり軸受の製造方法において、前記芯金を断面略J字形状に加工する芯金加工工程と、前記磁石部を、樹脂磁石材料を用いて、ディスクゲート方式による磁場射出成形により単体の状態で成形する磁石部成形工程と、前記芯金加工工程、及び前記磁石部成形工程の後、前記芯金で、前記磁石部の前記被検出部を除く部分を内包するように前記磁石部を加締める加締工程と、を含むことを特徴とする転がり軸受の製造方法。
(4)固定輪と、回転輪と、前記固定輪と前記回転輪により画成された環状空間に周方向に回転自在に配設された複数の転動体と、前記転動体を回転自在に保持する保持器と、前記環状空間の開口端部をシールする一対のシール装置と、を備え、前記一対のシール装置の少なくとも一方は、円環形状の芯金と、前記芯金の周縁部に配設されるシールリップ形状部と、磁気エンコーダの被検出面を前記固定輪と前記回転輪の軸方向端面よりも軸方向内側の位置で有して、前記芯金の軸方向外側の端面に配設される円環形状の磁石部と、を有する転がり軸受の製造方法において、前記芯金に半硬化状態の接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、前記接着剤塗布工程の後、前記芯金に対し、前記シールリップ形状部と前記磁石部とを同じ樹脂磁石材料を用いて磁場射出成形により単一部材として成形する成形工程と、を含むことを特徴とする転がり軸受の製造方法。
(1)?(4)において、前記樹脂磁石材料は、70?92質量%のフェライト磁性粉と、分子構造中にソフトセグメントを有する変性ポリアミド12とポリアミド12との混合物又は分子構造中にソフトセグメントを有する変性ポリスチレンとポリスチレンとの混合物と、を含有する。
【発明の効果】
【0011】
上記(1)の構成によれば、磁石部をシール装置に固着する際、組立性を向上することができ、製造コストを抑制することができる。
上記(2)の構成によれば、磁石部がディスクゲート方式による磁場射出成形により成形されるので、ウェルドが発生せず、強度が上がり信頼性を向上させることができる。 上記(3)の構成によれば、芯金が断面略J字形状となっており、この芯金で検出部を除いた部分を内包するように加締めるので、芯金と磁石部とが機械的に接合して、確実に固定でき、接着剤を用いていないので製造コストをより抑制することができる。
上記(4)の構成によれば、シールリップ形状部が磁石部と同じ磁石材料を用いて成形されているので、製造工程を少なくすることができ、安価に製造することができる。
【0013】
さらに、樹脂磁石材料は、磁性粉と、分子構造中にソフトセグメントを有する変性ポリアミド12とポリアミド12との混合物又は分子構造中にソフトセグメントを有する変性ポリスチレンとポリスチレンとの混合物と、を含有するので、高い磁束密度を達成することができ、回転数の検出精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る転がり軸受について図面に従って詳細に説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態である転がり軸受10は、図1に示すように、回転輪である外輪11と、固定輪である内輪12と、外輪11と内輪12により画成された環状空間に周方向に回転自在に配設された複数の転動体である玉13と、玉13を保持するポケット22が円周方向に所定の間隔で形成された保持器21と、前記環状空間の開口端部で外輪11の軸方向両端部(図では、軸方向一端部のみ図示)に取り付けられた一対のシール装置16,23と、片方のシール装置23に取付けられ、磁気エンコーダとして機能する磁石部25と、当該磁石部25に近接対向して配されたセンサ29と、を備える。
【0015】
転がり軸受10は、例えば、単列深溝玉軸受であり、前記外輪11が自動二輪車の駆動輪または従動輪のホイール(不図示)に同心に内嵌されて固定されるとともに、内輪12が車軸(不図示)に外嵌されることで、前記外輪11を回転可能に支持している。なお、前記外輪11と前記内輪とにより画成される環状空間には、例えばグリースなどの潤滑剤が充填されている。
【0016】
また、転がり軸受10は、前記磁石部25に非接触の状態でセンサ29が対向配置される。当該センサ29は、前記外輪11の回転の検出を、前記外輪11に連結した前記磁石部25の磁束密度の変動を磁気パルスとして検出することにより行う。検出された回転数の情報は、例えば、ABS装置において予め定められている回転数情報との偏差を算出することにより行われるブレーキ制御等に適宜用いられる。なお、センサ29は、固定(非回転)部材に取り付けられていればよく、この転がり軸受10とユニット化されていなくてもよい。
【0017】
前記片方のシール装置23は、断面L字形の円環形状である芯金15と、芯金15の内径側周縁部に形成され、内輪12の端部外周面に設けられたシール溝20に摺接するシールリップ形状部24と、を有する。また、前記シール装置23は、前記外輪11の軸方向端部の内周面に設けられる段部17に嵌合される。なお、もう一方のシール装置16は、シール溝20に摺接するリップ形状部19を有した接触シールを構成する。
【0018】
前記磁石部25は、芯金15の軸方向外側の端面(接合面)28に取付けられる。当該磁石部25は、当該磁石部25の軸方向外側の端面26とは段差を有して形成される被検出面27に、N極が着磁されたN極着磁部と、S極が着磁されたS極着磁部と、が周方向に順次配置されるとともに、前記外輪11の軸方向端面11aより軸方向内側に位置するように配されている。
【0019】
また、前記磁石部25の磁石材料としては、特に限定されないが、芯金15の軸方向外側の端面28への接合性を考慮すると、磁性粉を70?92質量%程度含有し、熱可塑性樹脂あるいはゴムをバインダーとした磁石コンパウンドを好適に用いることができる。
【0020】
磁性粉としては、ストロンチウムフェライトやバリウムフェライトなどのフェライト、ネオジウム-鉄-ボロン、サマリウム-コバルト、サマリウム-鉄などの希土類磁性粉を用いることができ、さらにフェライトの磁気特性を向上させるためにランタンなどの希土類元素を混入させたものであってもよい。磁性粉の含有量が70質量%未満の場合は、磁気特性が劣るとともに、細かいピッチで円周方向に多極磁化させるのが困難となり、好ましくない。それに対し、磁性粉の含有量が92質量%を越える場合は、バインダー量が少なくなりすぎて、磁石全体の強度が低くなると同時に、成形が困難となり、実用性が低下する。
【0021】
バインダーとして熱可塑樹脂を用いる場合は、射出成形可能なものが好適であり、具体的には、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド12、ポリアミド612、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、変性ポリアミド6T、ポリアミド9T、分子構造中にソフトセグメントを有する変性ポリアミド12、分子構造中にソフトセグメントを有する変性ポリエステル樹脂、分子構造中にソフトセグメントを有する変性ポリスチレンなどを用いることができる。なお、磁石部25に融雪剤として使用される塩化カルシウムが水とともにかかる可能性があるため、吸水性が少ないポリアミド12、変性ポリアミド12、変性ポリエステル、変性ポリスチレンを樹脂バインダーとする方が、より好ましい。
【0022】
さらに、転がり軸受10の使用環境で想定される急激な温度変化(熱衝撃)による亀裂発生を防止するバインダーとしては、添加することで曲げ撓み性、耐亀裂性が向上する変形ポリアミド12とポリアミド12との混合物、変性ポリスチレンとポリスチレンとの混合物としたものが最も好適である。また、耐熱衝撃性バインダーとしては、上記説明したソフトセグメントを有しない樹脂と、変性ポリアミド12などの同様の役割をする、その他の耐衝撃性向上材との組合せであってもよい。
【0023】
その他の耐衝撃性向上材としては、各種の加硫ゴム超微粒子を用いることができる。具体的には、スチレンブタジエンゴム、アクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、カルボキシル変性アクリロニトリルブタジエンゴム、シリコンゴム、クロロプレンゴム、水素添加ニトリルブタジエンゴム、カルボキシル変性水素添加ニトリルゴム、カルボキシル変性スチレンブタジエンゴムの中から選ばれる少なくとも一種類で、平均粒子径で30?300nmの範囲に入る微細な微粒子である。平均粒子径で30nm未満の場合は、製造コストがかかるとともに、微細すぎて劣化しやすく好ましくない。平均粒子径で300nmを越える場合は、分散性が低下するとともに、耐衝撃性の改善を均一に行うことが難しく好ましくない。上記説明した加硫ゴム超微粒子の中で、ペレット製造および実際の磁石部25成形時の劣化を考慮すると、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム)、カルボキシル変性アクリロにトリルブタジエンゴム、アクリルゴム、シリコンゴム、水素添加ニトリルゴム、カルボキシル変性水素添加ニトリルゴムが好適であり、さらにその中でも、分子構造中にカルボキシル基やエステル基などの有機官能基を有するものが樹脂バインダーとの相互作用が比較的強く、さらに好適であり、具体的にはカルボキシル変性アクリロニトリルブタジエンゴム、アクリルゴム、カルボキシル変性水素添加ニトリルゴムがある。これらの加硫ゴム超微粒子は、熱や酸素での劣化を防止して、4,4´-(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンなどのジフェニルアミン系防止材、2-メルカプトベンズイミダゾールなどの二次老化防止剤などを含有させたものとしてもよい。
【0024】
さらに耐衝撃性向上材として混入させるものとしては、その他エチレンプロピレン非共役ジエンゴム(EPDM)、無水マレイン酸変性エチレンプロピレン非共役ジエンゴム(EPDM)、エチレン/アクリレート共重合体、アイオノマーなども使用可能である。これら化合物はペレット状であり、磁性体粉、熱可塑性樹脂などと混入して押出機でペレット化する際に、流動化し、バインダー中にミクロ分散される。
【0025】
また、上記変性樹脂あるいは加硫ゴム超微粒子などからなる耐衝撃性向上材の添加量は、熱可塑性樹脂と併せたバインダー全質量中で、5?60質量%、より好ましくは10?40質量%である。添加量が5質量%未満の場合は、少なすぎて耐衝撃性の改善効果が少なく好ましくない。添加量が60質量%を越える場合は、耐衝撃性は向上するものの、樹脂成分が少なくなることで引張強度などが低下するため実用性が低くなる。
【0026】
さらに、バインダーである熱可塑性樹脂および耐衝撃性向上材(変性樹脂あるいは加硫ゴム超微粒子など)の熱などによる劣化を防止するために、元々材料に添加されているものの他に、酸化防止効果の高いアミン系酸化防止剤を添加すると、熱による劣化が防止でき、より好適である。使用されるアミン系酸化防止剤をとしては、4,4´-(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、4,4´-ジオクチルジフェニルアミンなどのジフェニルアミン系化合物、N,N´-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N´-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N´-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N,N´-ビス(1-メチルヘプチル)-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N´?フェニル-p-フェニレンジアミンなどのp-フェニレンジアミン系化合物が好適である。
【0027】
上記アミン系酸化防止剤の添加量としては、熱可塑性樹脂と耐衝撃性向上材からなるバインダー質量と酸化防止剤質量を加えた合算質量に対して、0.5?2.0質量%程度である。アミン系酸化防止剤の添加量が0.5質量%未満の場合は、酸化防止の改善効果が十分でなく好ましくない。また、酸化防止剤の添加量が、2.0質量%を越える場合は、酸化防止の効果があまり変わらなくなるとともに、その分、磁性体粉やバインダーの量が減るため、磁気特性や機械的強度の低下に結びつき好ましくないとともに、場合によっては成形品の表面にブルームなどを引き起こし、これが芯金15との接合に悪影響を及ぼすことが想定でき好ましくない。バインダーとして通常のソフトセグメントを有しない熱可塑性樹脂のみでは、23℃での曲げ撓み量(t=3.0mm、ASTM D790:スパン間距離50mm)が1?2mmの範囲であったのに対し、耐衝撃性向上材を含有させることで、23℃での曲げ撓み量(t=3.0mm、ASTM D790:スパン間距離50mm)が2?15mmの範囲に入るようになる。それによって、撓み性に優れることで、耐亀裂性が高いものとなっており、高温から低温そして低温から高温が繰り返されるなど厳しい環境で使用しても磁石部25に亀裂などの破損が発生しにくいものとなる。
【0028】
バインダーとしてゴムを用いる場合は、耐油性と耐熱性を兼ね備えたニトリルゴム、アクリルゴム、水素添加ニトリルゴム、フッ素ゴムなどが好適である。
【0029】
また、磁性粉として、コスト、耐酸化性を考慮すると、フェライト系が最も好適であるが、磁気特性を優先して希土類系を使用した場合、フェライト系に比べて、耐酸化性が低いので、長期間に亘って安定した磁気特性を維持させるために、露出した磁石部25の表面に、更に表面処理層を設けてもよい。表面処理層としては、電気あるいは無電解ニッケルメッキ、エポキシ樹脂塗膜、シリコン樹脂塗膜、フッ素樹脂塗膜などを具体的に用いることができる。
【0030】
磁性粉は、目標とする磁気特性、使用環境、コストで使い分けを行う。磁気特性がBHmaxで1.4?2.2MGOe程度であれば、ストロンチウムフェライトなどのフェライト系磁性粉での対応で十分である。ただし、より回転数の検出精度を上げるために、BHmaxをより高めの1.6?2.2MGOeの範囲とする場合は、磁場成形時の配向性が悪いゴム系バインダーでのフェライト配向では達成が難しく、熱可塑性樹脂を中心としたバインダーでの配合とし、磁場射出成形が必要となる。また、さらに回転数の検出精度を上げるために、BHmaxを2.2?5MGOe程度とする場合は、ストロンチウムフェライトなどのフェライト系磁性粉と希土類系磁性粉とのハイブリッド化、あるいは希土類系磁性粉のみでの配合となる。
【0031】
芯金15の材質としては、磁石材料の磁気特性を低下せず、一定以上の耐食性を有する電気亜鉛メッキ鋼板(最表面にリン酸塩処理を施したSECC-Pなど)などの磁性材料が好適である。この最表面にリン酸塩処理を施した電気亜鉛メッキ鋼板は、表面にリン酸塩による凹凸が存在し、接着剤などを用いた磁石部との接合に好適である。また、耐食性が必要とする場合は、フェライト系ステンレス(SUS430など)、マルテンサイト系ステンレス(SUS410など)など磁性ステンレスを使用することができ、さらにより高い耐食性が必要な場合は、Moなどを添加して耐食性を向上させたSUS434、SUS444などの高耐食性磁性フェライト系ステンレスなどの磁性材料が好適である。芯金15が磁性ステンレスの場合に、磁石部25と接着による接合を行う場合は、少なくとも軸方向外側の端面(接合面)28に、接着剤との接合力を向上させるために微細な凹凸を設けた方が好適であり、凹凸を設ける方法としては、ショットブラスト処理やプレス成形時の金型表面の凹凸の転写による方法などの機械的なものの他、一度表面処理した表面を酸などによって化学エッチングするものであってもよい。接合面28に凹凸を設けると、そこに接着剤が入り込み、アンカー効果により磁石部25とシール装置23本体との接合力が強固になり、より好適である。
【0032】
シールリップ形状部24は、芯金15に加硫接着されており、材質としては、ニトリルゴムをベースとした配合で適当である。使用環境によって、さらに耐熱性が必要な場合は、水素添加ニトリルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコンゴムなどに材料を変更すると、より好適である。
【0033】
芯金15と磁石部25の接合方法としては、接着剤を用いた接合が最も好適である。それ以外の接着方法としては、加締めや、シール装置本体に貫通孔や切り欠きを設けて、機械的に接合する形態であってもよい。
【0034】
接合に用いられる接着剤としては、成形時に同時に接着する場合は、インサート成形時に、溶融した高圧の樹脂磁性材料やゴム磁石材料の流動物によって、脱着して流失しない程度まで半硬化状態になっており、溶融樹脂や流動ゴムからの熱、あるいはそれに加えて成形後の2次加熱によって完全に硬化状態となる必要がある。使用可能な接着剤としては、溶剤での希釈が可能で、2段階に近い硬化反応が進むフェノール樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤などが、耐熱性、耐薬品性、ハンドリング性を考慮して好ましい。また、磁石部25を別体で成形し、芯金15と接着接合するのに好適に用いる接着剤としては、特に接着固定できれば種類は限定されないが、耐熱性、耐水性を考慮すると、一液エポキシ系接着剤が最も好適であり、特に上記で説明したような溶剤希釈が可能な特定のものである必要がない。
【0035】
磁石部25の成形法としては、磁石材料が熱可塑性樹脂をバインダーとする樹脂磁石の場合、機械的強度が低下するウェルド部が発生しないディスクゲート方式、あるいはそれと類似のリングゲート方式の磁場射出成形で成形するのが磁気特性の面では最も好適である。このディスクゲート方式で、別体で成形した磁石部25は、芯金15への後接着する場合は適用可能である。しかしながら、芯金15をコアにしたインサート成形では、金型構造が妨げとなり不可能である。この場合は、ピンゲートなどのゲートを磁石部25の被検出面27以外に設けたピンゲート方式の磁場射出成形となる。このピンゲートは、ゲート跡が突出し、検出に悪影響を及ぼす虞があることから、ゲートを有する部分を被検出面27より、若干肉薄とし、センサ29との干渉を防止した形状とした方がより好適である。
【0036】
磁石材料がゴム磁石である場合、磁石部25の成形を射出成形で行うのであれば、樹脂磁石と同じようにディスクゲート方式とすることが望ましいが、成形と同時に加硫接着するのであれば、同じようにピンゲート方式での成形となる。圧縮成形で行うのであれば、金型中(下型)に芯金15を配設した状態で、シート状にした未加硫のゴム磁石を被せて加硫接着を行うことで、成形される。
【0037】
ここで、本実施形態に係る転がり軸受10の代表的製造方法を説明する。なお、本発明に係る製造方法はこれにより何ら制限を受けるものではなく、上述したように適宜様々な製造方法が適用できる。
【0038】
シール装置23は芯金15(電気亜鉛メッキ鋼板製:最表面がリン酸塩処理)をコアとして成形される。当該芯金15の内周部分近傍に、フェノール系樹脂とエポキシ樹脂から少なくとも一方を含有する熱硬化性接着剤(溶剤希釈)を塗布後、半硬化状態とし、それを金型中に配置し、放置する。その後、シールリップ形状部24を圧縮成形あるいは射出成形で加硫接着にて接合する。次に、シールリップ形状部24を配設した芯金15の接合面28に、上記した接着剤を塗布後、半硬化状態とし、それを金型中に配置し、放置する。この状態で、樹脂磁石原料を射出成形(インサート成形)することで、溶融した磁石材料が芯金15と接合され、磁石部25が成形される。
【0039】
また、射出成形時に、アキシャル方向に磁界をかける磁場射出成形を行うことで、磁石部25中の磁性粉粒子がその方向に配向し、磁石部25がアキシャル異方性となり高い磁気特性を発揮できる状態となっている。射出成形のゲートは、前記磁石部25の被検出面27を除く肉薄部分に周方向に等間隔で配置された4点ピンゲートとなっている。また、接着剤の半硬化被膜を施した状態でインサート成形を行い、成形時の金型内での熱、さらに必要に応じて2次加熱を行うことで、磁石部25と芯金15は強固に接合される。この製造方法は、ゴム磁石材料についても未加硫のゴム材料を使用することで適用可能である。これにより、磁石部25が固着されたシール装置23が形成される。以上により、磁石部25が固着されたシール装置23が形成される。
【0040】
なお、磁石部25は、脱磁後、周方向に多極着磁される。その着磁される極数は70?130極程度、好ましくは、90?120極である。極数が70極未満の場合には、極数が少なすぎて回転数を精度よく検出することが難しくなる。また、極数が130極を越える場合には、検出する磁束密度が低下すると同時に、各ピッチが小さくなりすぎて、単一ピッチ誤差を小さく抑えることが難しく、実用性が低くなってしまう。
【0041】
したがって、本実施形態によれば、シール装置23は、磁性材料で形成されて多極着磁された磁石部25が固着され、且つ前記磁石部25は、外輪11の軸方向端面11aよりも軸方向内側に位置するので、小型化を可能にしながらも軸受内部に充填する潤滑剤の量の減少を抑制でき軸受寿命の低下を防止することができる。加えて、多極着磁された磁石部25により高精度な回転数検出が可能となる。さらに、組立性を向上することができ、製造コストを抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、磁石部25が磁性粉と、ゴム及び熱可塑性樹脂の少なくとも一方と、を含有して多極着磁されているので、1回転から得られる検出信号の分解能を高めることができ、高精度な回転数検出が可能である。
【0043】
さらに、本実施形態によれば、シールリップ形状部24は、内輪12と摺接するようにして設けられるので、粉塵等の異物の転がり軸受10内部への進入と転がり軸受10内部に充填された潤滑剤の漏洩をさらに防止することができる。
【0044】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について、図2に従って説明する。図2は第2実施形態に係る転がり軸受40の断面図である。本実施形態では、磁石部25の被検出面27を除く部分の芯金15の接合面28に、周方向に等間隔で配置された8箇所の貫通孔41を設けている。これ以外の様態は第1実施形態と同じである。
【0045】
したがって、本実施形態によれば、第1実施形態と同じ作用効果を奏するが、特に、シール装置23に貫通孔41が形成されるので、当該貫通孔41部分にも磁石材料が入り込むことで、シール装置23と磁石部25との接合をより強固なものにできる。
【0046】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態について、図3に従って説明する。図3は第3実施形態に係る転がり軸受50の断面図である。本実施形態では、磁石部51の軸方向外側の端面52に段差がない構造となっている。それ以外の様態は、第1実施形態と同じである。
【0047】
ここで、本実施形態に係る転がり軸受50の代表的製造方法を説明する。なお、本発明に係る製造方法はこれにより何ら制限を受けるものではなく、適宜様々な製造方法が適用できる。
【0048】
磁石部51は、内径部側からのディスクゲート方式による磁場射出成形により成形される。これによって、ウェルドが発生しないため、強度が上がり信頼性を向上させることができる。別体で成形した磁石部51と、別途シールリップ形状部24を取付けた、芯金15を接着剤で接合する。この接合の際は、芯金15と磁石部51とが同心となるように、例えば冶具なども用いて接着を行う。なお、この製造方法で用いる接着剤は、第1実施形態および第2実施形態とで用いた溶剤希釈型の接着剤を用いる必要はなく、熱硬化、嫌気性、水分硬化、UV硬化などのエポキシ系、ウレタン系、アクリル系などの接着剤が適用可能である。
【0049】
したがって、本実施形態によれば、第1実施形態と同じ作用効果を奏することができるが、特に、磁石部51の端面52に段差を設けていないため、磁石部51の磁気特性を向上させることができる。
【0050】
(第4実施形態)
次に、本発明に係る第4実施形態について、図4に従って説明する。図4は本実施形態に係る転がり軸受60の断面図である。本実施形態では、磁石部25と芯金15とは接着剤による接合ではなく、芯金55が断面略J字形状となっており、当該芯金55で検出部27を除いた部分を内包するように加締める。これにより、前記芯金55と磁石部25とが機械的に接合する。また、磁石部25は、第3実施形態と同様な製造方法が実施され、別体で、磁場射出成形が施される。また芯金55が外輪11の軸受端面11aの内側を位置するように、磁石部25の軸方向外側の端面26と被検出面27とには段差が設けられる。
【0051】
したがって、本実施形態によれば、第1実施形態と同じ作用効果を奏するが、芯金15と磁石部25とを機械的に接合しているので、確実に固定でき、接着剤を用いていないので製造コストをより抑制することができる。
【0052】
(第5実施形態)
本発明に係る第5実施形態を図5に従って、説明する。図5は、第5実施形態に係る転がり軸受70の断面図である。
【0053】
本実施形態では、磁石部25とシールリップ形状部71とは同じ磁石材料を用いて単一部材として成形される。ただし、リップ形状部71は内輪11とは非接触な状態で形成される。また、本実施形態のシール装置23の製造は、芯金15に半硬化状態の接着剤を塗布した状態で磁場射出成形(インサート成形)が施されて行われる。
【0054】
したがって、本実施形態によれば、第1実施形態と同じ作用効果を奏するが、特に、リップ形状部71が磁石部25と同じ磁石材料を用いて成形されているので、製造工程を少なくすることができ、安価に製造することができる。
【0055】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、などが可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材料、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、などは本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【実施例】
【0056】
次に、本発明に基づいて製作した転がり軸受について実施例を挙げて説明する。
本実施形態に係る磁石部における磁石材料の配合と物性について試験を行った(表1参照)。なお、本実施例は第1実施形態で述べた転がり軸受を用いて行った。
【0057】
【表1】

【0058】
ただし、Srフェライト:磁場配向用異方性Srフェライト、FERO TOP FM-201(戸田工業製)
Sm_(2)Co_(17):Sm_(2)Co_(17) XG28/20(CHENGDU MAGNETIC MATERIAL SCIENCE AND TECHNOLOGY CO.,LTD)
PA12(wt%):PA12パウダーP3012U(ヒンダードフェノール系酸化防止剤含有、宇部興産製)
変性PA12(wt%):UBEPAE1210U(ヒンダードフェノール系酸化防止剤含有、宇部興産製)
シランカップリング剤:γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、A-1100(日本ユニカー製)
アミン系酸化防止剤:N,N´-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、ノクラックDP(大内新興化学工業製)
【0059】
上記の転がり軸受の製造方法は、第1実施形態の説明で述べたものと同様であるが、特に磁場射出成形を行う際、金型での冷却時に反転脱磁を行い、磁石部25を減磁し、この減磁後、脱磁機を用いて表面磁束密度を2mT以下に脱磁後、回転式の単極着磁で、100極にN極とS極を交互に着磁を施した。また、接着剤を完全に硬化させるため、減磁後、150℃で1時間加熱した。芯金15は、最表層にリン酸塩処理を施して電気亜鉛メッキ鋼板から形成した。
【0060】
また、接着剤としては、ノボラック型フェノール樹脂を主成分とする固形分30%のフェノール樹脂系接着剤(東洋化学研究所製メタロックN-15)を用い、更にメチルエチルケトンで3倍希釈し、浸漬処理で接合面28の表面に塗布した。その後、室温で30分乾燥してから、120℃で30分乾燥機中に放置することで半硬化状態とした。
【0061】
このようにして試験片を製作し、被検出面27に対してエアギャップを1mmとしてセンサ29を取付け、被検出面27から出力される信号を確認した結果、回転数の検出に問題ないことを確認した。これにより、本発明の有効性が実証された。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】第1実施形態に係る転がり軸受の断面図である。
【図2】第2実施形態に係る転がり軸受の断面図である。
【図3】第3実施形態に係る転がり軸受の断面図である。
【図4】第4実施形態に係る転がり軸受の断面図である。
【図5】第5実施形態に係る転がり軸受の断面図である。
【図6】従来の転がり軸受の断面図である。
【符号の説明】
【0063】
10,40,50,60,70 転がり軸受
11 外輪(回転輪)
12 内輪(固定輪)
13 玉(転動体)
15,65 芯金
17 段部
20 シール溝
21 保持器
22 ポケット部
23 シール装置
24,71 リップ形状部
25,51 磁石部
26,52 端面
27 被検出面
28 端面(接合面)
29 センサ
41 貫通孔
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(削除)
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】
固定輪と、回転輪と、前記固定輪と前記回転輪により画成された環状空間に周方向に回転自在に配設された複数の転動体と、前記転動体を回転自在に保持する保持器と、前記環状空間の開口端部をシールする一対のシール装置と、を備え、前記一対のシール装置の少なくとも一方は、円環形状の芯金と、前記芯金の周縁部に配設されるシールリップ形状部と、磁気エンコーダの被検出面を前記固定輪と前記回転輪の軸方向端面よりも軸方向内側の位置で有して、前記芯金の軸方向外側の端面に配設される円環形状の磁石部と、を有する転がり軸受の製造方法において、
前記芯金の周縁部に熱硬化性接着剤を塗布して半硬化状態にし、前記芯金を放置する第1の接着剤塗布工程と、
前記第1の接着剤塗布工程の後、前記芯金に対し、前記シールリップ形状部を圧縮成形或いは射出成形で加硫接着にて接合して成形するシールリップ形状部成形工程と、
前記シールリップ形状部成形工程の後、前記芯金の端面部に、前記熱硬化性接着剤を塗布して半硬化状態にし、前記芯金を放置する第2の接着剤塗布工程と、
前記第2の接着剤塗布工程の後、樹脂磁石材料を磁場射出成形して、溶融した前記樹脂磁石材料と前記芯金とを接合させ、前記磁石部を成形する磁石部成形工程と、を含み、
前記樹脂磁石材料は、70?92質量%のフェライト磁性粉と、分子構造中にソフトセグメントを有する変性ポリアミド12とポリアミド12との混合物又は分子構造中にソフトセグメントを有する変性ポリスチレンとポリスチレンとの混合物と、を含有することを特徴とする転がり軸受の製造方法。
【請求項6】
固定輪と、回転輪と、前記固定輪と前記回転輪により画成された環状空間に周方向に回転自在に配設された複数の転動体と、前記転動体を回転自在に保持する保持器と、前記環状空間の開口端部をシールする一対のシール装置と、を備え、前記一対のシール装置の少なくとも一方は、円環形状の芯金と、前記芯金の周縁部に配設されるシールリップ形状部と、磁気エンコーダの被検出面を前記固定輪と前記回転輪の軸方向端面よりも軸方向内側の位置で有して、前記芯金の軸方向外側の端面に配設される円環形状の磁石部と、を有する転がり軸受の製造方法において、
前記芯金の周縁部に熱硬化接着剤を塗布して半硬化状態にし、前記芯金を放置する接着剤塗布工程と、
前記接着剤塗布工程の後、前記芯金に対し、前記シールリップ形状部を圧縮成形或いは射出成形で加硫接着にて接合して成形するシールリップ形状部成形工程と、
前記磁石部を、樹脂磁石材料を用いて、ディスクゲート方式による磁場射出成形により単体の状態で成形する磁石部成形工程と、
前記シールリップ形状部成形工程、及び前記磁石部成形工程の後、前記芯金と前記磁石部とが同心になるように接着を行う接着工程と、を含み、
前記樹脂磁石材料は、70?92質量%のフェライト磁性粉と、分子構造中にソフトセグメントを有する変性ポリアミド12とポリアミド12との混合物又は分子構造中にソフトセグメントを有する変性ポリスチレンとポリスチレンとの混合物と、を含有することを特徴とする転がり軸受の製造方法。
【請求項7】
固定輪と、回転輪と、前記固定輪と前記回転輪により画成された環状空間に周方向に回転自在に配設された複数の転動体と、前記転動体を回転自在に保持する保持器と、前記環状空間の開口端部をシールする一対のシール装置と、を備え、前記一対のシール装置の少なくとも一方は、円環形状の芯金と、前記芯金の周縁部に配設されるシールリップ形状部と、磁気エンコーダの被検出面を前記固定輪と前記回転輪の軸方向端面よりも軸方向内側の位置で有して、前記芯金の軸方向外側の端面に配設される円環形状の磁石部と、を有する転がり軸受の製造方法において、
前記芯金を断面略J字形状に加工する芯金加工工程と、
前記磁石部を、樹脂磁石材料を用いて、ディスクゲート方式による磁場射出成形により単体の状態で成形する磁石部成形工程と、
前記芯金加工工程、及び前記磁石部成形工程の後、前記芯金で、前記磁石部の前記被検出部を除く部分を内包するように前記磁石部を加締める加締工程と、を含み、
前記樹脂磁石材料は、70?92質量%のフェライト磁性粉と、分子構造中にソフトセグメントを有する変性ポリアミド12とポリアミド12との混合物又は分子構造中にソフトセグメントを有する変性ポリスチレンとポリスチレンとの混合物と、を含有することを特徴とする転がり軸受の製造方法。
【請求項8】
固定輪と、回転輪と、前記固定輪と前記回転輪により画成された環状空間に周方向に回転自在に配設された複数の転動体と、前記転動体を回転自在に保持する保持器と、前記環状空間の開口端部をシールする一対のシール装置と、を備え、前記一対のシール装置の少なくとも一方は、円環形状の芯金と、前記芯金の周縁部に配設されるシールリップ形状部と、磁気エンコーダの被検出面を前記固定輪と前記回転輪の軸方向端面よりも軸方向内側の位置で有して、前記芯金の軸方向外側の端面に配設される円環形状の磁石部と、を有する転がり軸受の製造方法において、
前記芯金に半硬化状態の接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記接着剤塗布工程の後、前記芯金に対し、前記シールリップ形状部と前記磁石部とを同じ樹脂磁石材料を用いて磁場射出成形により単一部材として成形する成形工程と、を含み、
前記樹脂磁石材料は、70?92質量%のフェライト磁性粉と、分子構造中にソフトセグメントを有する変性ポリアミド12とポリアミド12との混合物又は分子構造中にソフトセグメントを有する変性ポリスチレンとポリスチレンとの混合物と、を含有することを特徴とする転がり軸受の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2018-07-30 
結審通知日 2018-08-01 
審決日 2018-08-20 
出願番号 特願2006-153539(P2006-153539)
審決分類 P 1 41・ 857- Y (F16C)
P 1 41・ 851- Y (F16C)
P 1 41・ 853- Y (F16C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 瀬川 裕  
特許庁審判長 平田 信勝
特許庁審判官 小関 峰夫
尾崎 和寛
登録日 2011-02-18 
登録番号 特許第4682919号(P4682919)
発明の名称 転がり軸受の製造方法  
代理人 松山 美奈子  
代理人 松山 美奈子  

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