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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01B
管理番号 1344241
審判番号 不服2017-14005  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-21 
確定日 2018-10-02 
事件の表示 特願2012-228493「車体剛性試験装置及び車体剛性試験方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月 8日出願公開、特開2014- 81249、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願: 平成24年10月16日
拒絶査定: 平成29年7月21日(送達日:同年同月25日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成29年9月21日
手続補正: 平成29年9月21日
拒絶理由通知: 平成30年5月8日
(以下、「当審拒絶理由」という。発送日:同年同月15日)
手続補正: 平成30年6月6日(以下、「本件補正」という。)


第2 本願発明
本願請求項1-6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願発明は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
車体及び/又はその部品にアクチュエータにより荷重を与える荷重負荷手段と、
前記アクチュエータを制御し、車体及び/又はその部品に負荷する荷重を調整するアクチュエータ制御手段と、
異なる方向から前記車体の画像を取得する2台以上のカメラを備えた3組のステレオカメラと、
当該3組のステレオカメラで取得された画像データを記録しデータ処理手段に出力するステレオカメラ制御/画像データ記録手段と、
前記アクチュエータ制御手段により負荷する荷重と前記3組のステレオカメラの撮映タイミングを同期させ、前記3組のステレオカメラで取得された画像データの時間情報と前記アクチュエータ制御手段から入力される時間情報を対応付け、前記ステレオカメラ制御/画像データ記録手段からの前記3組のステレオカメラで取得された画像データを合成して車体の3次元画像データを生成し、前記荷重の負荷に応じた前記車体及び/又はその部品の変形を前記3次元画像データに基づき動的に追跡し、前記アクチュエータの負荷状況と変位データを同期させて記録して、前記車体及び/又はその部品の動的な変位量の測定を行うデータ処理手段と、
を備えたことを特徴とする車体剛性試験装置。
【請求項2】
前記データ処理手段は、前記3次元画像データと、前記荷重負荷手段より前記車体及び/又はその部品に負荷された荷重に関する情報とを対応付けて記憶することを特徴とする請求項1に記載の車体剛性試験装置。
【請求項3】
前記車体、その部品、又は、その周辺の任意の位置の3次元位置情報を取得するデジタイザを備え、
前記データ処理手段は、前記任意の位置の前記3次元位置情報を用いて、前記3次元画像データの点群データに、3次元座標情報を付与する請求項1又は2に記載の車体剛性試験装置。
【請求項4】
前記デジタイザは、多関節アームに取り付けられ、
前記多関節アームに、さらに前記2台以上のカメラが設置され、前記ステレオカメラの前記3次元位置情報を前記デジタイザによって測定し、
前記ステレオカメラの前記3次元位置情報に基づいて、前記3次元画像データの点群データに、3次元座標情報を付与する請求項3に記載の車体剛性試験装置。
【請求項5】
前記データ処理手段は、
前記ステレオカメラによって撮映される撮影範囲において、少なくとも3箇所以上に設けられた基準マーカーの3次元位置情報を用いて、前記3次元画像データの点群データに、3次元座標情報を付与する請求項1又は2に記載の車体剛性試験装置。
【請求項6】
車体及び/又はその部品に、アクチュエータ制御手段により制御されるアクチュエータにより負荷する荷重を与え、
異なる方向から画像を撮影する2台以上のカメラを有する3組のステレオカメラで、前記アクチュエータ制御手段により負荷する荷重と撮影タイミングを同期させて前記車体を撮映し、
前記3組のステレオカメラで取得された画像を合成して3次元画像データを生成し、
前記3次元画像データの時間情報と前記アクチュエータ制御手段から入力される時間情報を対応付けて、前記荷重の負荷に応じた前記車体及び/又はその部品の変形を前記3次元画像データに基づき動的に追跡し、前記アクチュエータの負荷状況と変位データを同期させて記録して、前記車体及び/又はその部品の動的な変位量の測定を行うことを特徴とする車体剛性試験方法。」


第3 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2006-292737号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審による。以下同様。)

「【0001】
本発明は4輪車の車体のねじり剛性を測定する方法に関し、特に完成車の車体のねじり剛性を測定する方法に関する。」

「【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施形態1)
図1に第1の実施形態に係る車体のねじり剛性試験方法に用いるベース体となる修正機10を示す。本修正機10は基準となる平面11を上面に有する。
まず、車体固定工程として4輪車の車体を修正機10上に固定する。具体的には、車体を基準線や基準点と車体の所定箇所が一致するように修正機上に載せる。これにより、車体の幅方向の中心と、修正機の中心が一致する。そして、車体のサスペンションアームが取り付けられている4箇所の位置に対し、ジャッキを使って車体を平行になるように持ち上げて固定する。その後、必要であれば、車体のゆがみを修正する車体修正工程を行う。」

「【0014】
続いて、前記車体の残りのハブを、荷重付加装置を介して前記修正機10に固定する荷重付加手段固定工程を行う。図5に荷重付加装置40の斜視図を示す。荷重付加装置40は長方形状の板体よりなる基板43、基板43の上面に固定される荷重センサーを内蔵した筒状体よりなる荷重測定部42、荷重測定部42の上面にピストン41bが固定され、シリンダー41a内のピストン41bが油圧により伸張する伸張部41、伸張部41のシリンダー41aに固定される板状体により形成される回動板44とから構成される。回動板44にはハブに固定するためのボルト穴44aが設けられている。伸張部41のシリンダ41aの上端と下端にはそれぞれフランジ部41c、41dが設けられている。また、回動板44には回動板44の面に対して垂直にこれらの各フランジ部41c、41dを挟むように溶接固定されるそれぞれ2枚の板体からなる上部連結部44b、下部連結部44cが形成されている。シリンダ41aの下端側のフランジ部41dと回動板44の下端連
結部44cとはピン44caによって回動可能に固定されている。一方、シリンダ41aの上端側のフランジ部41cと回動板44の上端連結部44bとは、上端連結部44bに形成されるほぼ回動板44の面に垂直に伸びる長穴44baと、この長穴に係合するフランジ部41cに固定されたピン41baとによって長穴の長手方向に移動可能かつ回動可能に固定されている。なお、図では荷重測定部42に接続される電線および伸張部41のシリンダに接続される油圧パイプは省略している。
このような構成を有する荷重付加装置40を修正機10と前記車体の残りのハブに図6に示すように固定する。すなわち、修正機10に荷重付加装置40の基板43を固定し、ハブに荷重付加装置40の回動板44を固定する。この状態で荷重付加装置40の伸長部41が伸びた場合、回動板44に固定されたハブは傾くことになるが、回動板44は伸張部41に対して下端部で回動し上端部で長穴44baに沿って移動可能であるので、測定時のハブの移動に対して伸張部4には曲げ応力が働くことなく、ハブの動きに追従することができる。
【0015】
荷重付加手段固定工程が終了すると、次に、荷重付加装置40を伸長させる荷重付加工程を行う。なお、この工程を行う前に、車体の前方に設置したレーザーレベルにより車体の所定の位置、ここでは、サスペンションアームの取り付け位置に対応する車体の表面部位の位置を測定しておく。このサスペンションアームの取り付け位置は、車体の荷重を支える位置であり、前記支持体が固定されて直接荷重を受ける位置でもある。この位置は車体の内部に存するが位置はわかっているので、図7の正面図に示すようにサスペンションアームの取付位置Saに対応する車体の表面位置Baを測定点とする。荷重付加工程は、所定の油圧を荷重付加装置40のピストン41bにかけることにより行う。この荷重は走行時にタイヤにかかる荷重を基準に設定される。その後、前記荷重付加工程によりかけられた荷重を測定する荷重測定工程として、荷重付加装置40の荷重測定部42から出力される電流値の変化に基づき荷重を計測し、移動量測定工程として荷重付加時の車体の所定位置に対応する車体の表面位置Baをレーザーレベルにより測定し、荷重付加前の位置との差を移動量として計測する。測定結果については、実験装置自体の歪や、取り付け箇所のゴムブッシュの歪などを考慮にいれて補正をすることが望ましい。なお、この状態で、レーザー式三次元測定器により車体表面の変形を測定するようにすることもできる。その後、前輪の左右のハブ固定具30と荷重付加装置40とを入れ替えて同様の試験を行う。
【0016】
なお、上記実施形態では、3輪のハブを固定し、残りの一箇所の車輪のハブを移動させるように構成したが、例えば、後輪2輪のハブのみを固定し、前輪のいずれかのハブもしくは両方のハブを移動させるようにして車体にねじりを加えてもよい。前輪の両方に荷重を加える場合は、左右交互に荷重を加えることでねじりを発生させる。
また、上記実施の形態では、荷重の付加による車体の変形量をレーザーレベルにより測定した車体の一点の移動量としたが、複数点の測定をしてもよく、また、接触式アーム型3次元測定装置、非接触式アーム型3次元測定装置、各種の光応用3次元測定装置(フォトグラメトリー測定等)、GPSを用いた3次元測定装置などを用いて測定をすることもできる。さらに、荷重付加装置40の伸長量を測定し、これを移動量とすることもできる。また、上記実施の形態では荷重付加装置40は伸長することにより荷重を付加しているが、これは圧縮により荷重を付加するようにすることもできる。また、荷重付加装置40は、伸張部41の動きを上下に固定したまま回動板44の回動によりハブの動きに追従しているが、基板43を回動可能として全体を回動させることで回動板44を伸張部41に固定するようにしてもよい。」

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「修正機10と車体のハブに固定され(【0014】)、所定の油圧をピストン41bにかけることにより荷重付加工程を行う荷重付加装置40と(【0015】)、
フォトグラメトリー測定を行う光応用3次元測定装置と(【0016】)、を備え、
移動量測定工程として荷重付加時の車体の所定位置に対応する車体の表面位置Baを測定し、荷重付加前の位置との差を移動量として計測する(【0015】及び【0016】)、
車体のねじり剛性を測定する方法に用いる(【0001】)装置。」

2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2010-32339号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0042】
図15はこの車体100の撮像処理及び基準点の位置測定処理の概念図である。ここでは、いわゆるフロントエンジンタイプの車体(サンプルを含む)100を例示している。車体100の床裏部102には多数の貫通孔が形成されており、例えば、リアトランクに浸入した水を抜くための小孔103、フロントボンネットに収容されるべきエンジンを車体100に固定する際に利用される小孔104,105が形成されている。ここでは、これら小孔103,104,105をそれぞれ、カメラ33の撮像対象であってその後の位置測定の対象である基準点P1,P2,P3として利用している。
【0043】
図14中ステップS2においては、例えばロボット6aに取り付けられた2台のカメラ33で基準点P1に対応する小孔103を、ロボット6bに取り付けられた2台のカメラ33で基準点P2に対応する小孔104を、ロボット6cに取り付けられた2台のカメラ33で基準点P3に対応する小孔105をそれぞれステレオ視で撮像する。」

3.引用文献3について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開平11-132731号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明のビデオ式非接触伸び計は、2つの標線マークが付された試験片をカメラで刻々と撮像して得られる画像データを用いて、試験片の標線マーク間の伸びを計測するビデオ式非ビデオ式非接触伸び計において、設定されたタイミングで、試験片の画像データを、その時点における伸びおよび荷重データと関連づけて記憶する手段を備えていることによって特徴づけられる。」

4.引用文献4について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2008-96377号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0029】
図2のように、2台1組の撮像装置による画像を用いて標点の絶対座標を求めることができるが、この2台の撮像装置によっては、供試体の一部が撮像されることになり、変形特性を評価するためには、そのような供試体の一部を撮像した画像だけでは不十分であり、供試体の全周にわたっての画像が必要であるため、より多くの位置での撮像を行うようにする三軸試験装置を用いることになる。
〔三軸試験装置〕
(A)同期撮像型三軸試験装置(TC)
図3(a)?(c)は8台の同型の撮像装置を配置した画像計測による三軸試験装置の主要部分を上方から見た状態を示し、図3(a)は図3(b)のA-A面で切断して上方から見た図であり、図3(b)は図3(a)のB-B面で切断して示した図である。水平面(X-Y平面)内に配設された下部ペデスタル1の中心位置を通る鉛直方向(Z方向)の直線を中心軸として円筒形のセル2が設けられている。セル2は円柱形壁部を有し密閉型であり、円柱形の供試体の中心軸を試験装置のZ軸と一致させてその両端面を支持する支持部材3,3がセル内に設けられている。」

「【0034】
画像処理部11では、8台の撮像装置のうちの隣接する2台1組の撮像装置により得られた画像を左右1組の視差のある画像として、〔画像計測による三軸試験〕において説明した画像処理を行い供試体Sにおける歪みを求め、さらに荷重付加装置4からの付加荷重信号と合わせて供試体Sの変形特性を求める。なお、ここでは、8台の撮像装置を配置した例について説明したが、三軸試験を行うためには円周方向に等間隔に撮像装置を配置するという条件であれば、特に8台に限られることはなく、一般的にN台の撮像装置を配置してもよい。ただし、隣接する2台の撮像装置の間隔は、中心角が30°?60°であるのが好ましく、それからすれば、6≦N≦12とするのがよい。
図3(a)?(c)においては、可撓性の円筒形メンブレン内に砂質材料を充填した供試体について変形特性を測定するための同期撮像型三軸試験装置を示しているが、一般的な均一材料としての供試体の場合には、供試体を収納支持して圧力流体を充填するための密閉型のセルを備えることは必要でなく、ペデスタル1の面に垂直に支持部材3,3により供試体を支持して、周面を撮像する形態として供試体の変形特性を測定することができる。
(B)軸・供試体連動回転型三軸試験装置(RTC)
図4は、可撓性の円筒形メンブレン内に砂質材料を充填した供試体について変形特性を測定するための軸・供試体連動回転型三軸試験装置を示しており、セル、ペデスタルの部分を断面で示している。水平面(X-Y平面)内に配設された下部ペデスタル1の中心位置を通る鉛直方向(Z方向)の直線を中心軸として円筒形のセル2が設けられている。セル2は円柱形壁部を有し密閉型であり、円柱形の供試体の中心軸を試験装置のZ軸と一致させてその両端面を支持する支持部材3,3がセル内に設けられる。支持部材3,3はセルの支軸はセル2の上下の中心位置でOリングで枢支されセル外まで延びている。一方の支軸の端側には支持部材3,3に支持された供試体Sに軸方向の荷重を付加する荷重付加装置4が設けられ、他方の支軸の端側には支持部材3,3をそれに支持された供試体Sとともに回転させる回転駆動装置6が設けられている。5はセル2内に外部から圧力を付加する外部の圧力付加装置5である。」

「【0040】
直径50mm、高さ100mmの円柱状メンブレン内に地盤材料を充填したものを供試体として、変形特性の測定を行う例について説明する。供試体のメンブレンには、図1のように各格子点を中心として標点が付されている。標点は直径2mm、間隔が5mmである。最初に供試体に荷重が付加されていない初期状態について8台の撮像装置での撮像を行う。8台の撮像装置による各組の視差のある画像をもとにして供試体の格子点の3次元座標を求めたものは、図5(a)のようになる。
【0041】
次に、圧縮荷重を加えて供試体が変形する過程において、逐次8台の撮像装置による撮像を行い、その荷重の状態での供試体の標点の3次元座標を求める。圧縮荷重が増大して供試体に加わる応力がピークに達する前の供試体の変形状は図5(b)のようになり、さらに荷重を増大させ、応力がピークを超えた残留状態において、図(c)のようになる。この図におけるワイヤーフレームは、メンブレンに施された各標点の中心の3次元座標を直線で結ぶことにより構築される。圧縮荷重の各段階において、各標点の3次元座標とその変化量とを求め、これから各標点の位置における歪みが求められる。歪みとしては、軸歪み(ε_(a))、半径歪み(ε_(r))が求められ、これからポアソン比ν=-ε_(r)/ε_(a)が求められる。」

5.引用文献5について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開2009-14501号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0014】
<システム構成>
図1は、本実施形態における3次元形状モデルデータの作成方法のプラットフォームとなるシステムの構成を示す図である。
【0015】
10が本実施形態において計測対象とする車両である。ただし、本発明は車両に限定されるものではなく、複数の部品が組み付けられて構成される製品に広く適用することができるものである。20,30は計測手段であり、具体的には20は、第1撮像手段としての座標測定カメラである。この座標測定カメラは、いわゆる3次元デジタイザで、例えば、CogniTens社のOptigo 11が好適であるが、一般のデジタル一眼レフカメラを使用することもできる。30は、第2撮像手段としての3次元測定カメラである。上記の座標測定カメラ20と比較すると、この3次元測定カメラ30は、31,32,33で示される3つのCCDカメラを装備し、1ショットで3枚の2次元画像データを得ることができ、高速な撮影が可能となっている点が特徴である。このような3次元測定カメラとしては、例えば、CogniTens社のOptigo 200などが好適である。座標測定カメラ20及び3次元測定カメラ30は共に可搬性があり、計測対象である車両10をあらゆる角度から手持ち撮影が可能である。もっとも、3次元測定カメラ30について図示のように、多関節アーム付きの台車34によって支持されていてもよい。」

「【0054】
また、上述の実施形態では、計測対象を車両としたが、計測対象が小物の製品の場合は、3つのCCDカメラを備えた3次元測定カメラ30のみを用いて、少なくとも3点のターゲットマークを重複させて撮像するようにし、画像処理によりターゲットマークの3次元座標値データと3次元形状モデルデータとを取得するようにしてもよい。」

6.引用文献6について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6(特開2003-148926号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0010】三次元位置センサ10の三次元のローカル座標系は、関節アーム20のグローバル座標系と一致するようにキャリブレーションにより設定されている。関節アーム20からは、支柱24の回転位置、アーム22、23の回動位置で規定される関節22aの座標値データ(Xo、Yo、Zo)及び三次元位置センサ10の姿勢を規定する関節22aの法線ベクトル(i_(1)、j_(1)、k_(1))及び方向ベクトル(i_(2)、j_(2)、k_(2))がパソコンに送出される。三次元位置センサ10からは三次元位置形状データがローカル座標系の三次元座標値(x、y、z)としてパソコンに送出される。
【0011】このように構成された可搬式三次元形状計測装置の動作は次の通りである。例えば自動車のボデー部分である計測対象物1の近辺に装置を運んで基部20を据え置く。三次元位置センサ10を計測対象物1に対してアーム22、23、支柱24の操作により例えば10×10cmの範囲を計測するのに必要な標準的な距離位置に設定し、関節22aにより姿勢を設定する。」


第4 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

まず、引用発明における「修正機10と車体のハブに固定され、所定の油圧をピストン41bにかけることにより荷重付加工程を行う荷重付加装置40」は、本願発明1における「車体」「にアクチュエータにより荷重を与える荷重負荷手段」に相当する。
次に、引用発明の「フォトグラメトリー測定を行う光応用3次元測定装置」と、本願発明1の「異なる方向から前記車体の画像を取得する2台以上のカメラを備えた3組のステレオカメラ」とは、技術常識(フォトグラメトリー測定が、写真三角測量を応用した測定であること)をふまえると、「異なる方向から前記車体の画像を取得する複数のカメラ」である点で共通するといえる。
また、引用発明における「車体のねじり剛性を測定する方法に用いる装置」は、本願発明1における「車体剛性試験装置」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「車体にアクチュエータにより荷重を与える荷重負荷手段と、
異なる方向から前記車体の画像を取得する複数のカメラと、
を備えたことを特徴とする車体剛性試験装置。」

(相違点1)本願発明1は「前記アクチュエータを制御し、車体及び/又はその部品に負荷する荷重を調整するアクチュエータ制御手段」という構成を備えるのに対し、引用発明がそのような構成を備えていることは明示されてはいない点。

(相違点2)本願発明1のカメラは「2台以上のカメラを備えた3組のステレオカメラ」であるのに対し、引用発明における「フォトグラメトリー測定を行う光応用3次元測定装置」のカメラが具体的にどのような構成のものであるかは不明である点。

(相違点3)本願発明1は「当該3組のステレオカメラで取得された画像データを記録しデータ処理手段に出力するステレオカメラ制御/画像データ記録手段」という構成を備えるのに対し、引用発明がそのような構成を備えていることは明示されてはいない点。

(相違点4)本願発明1は「前記アクチュエータ制御手段により負荷する荷重と前記3組のステレオカメラの撮映タイミングを同期させ、前記3組のステレオカメラで取得された画像データの時間情報と前記アクチュエータ制御手段から入力される時間情報を対応付け、」「前記荷重の負荷に応じた前記車体及び/又はその部品の変形を前記3次元画像データに基づき動的に追跡し、前記アクチュエータの負荷状況と変位データを同期させて記録して、前記車体及び/又はその部品の動的な変位量の測定を行うデータ処理手段」という構成を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

(相違点5)本願発明1は「前記ステレオカメラ制御/画像データ記録手段からの前記3組のステレオカメラで取得された画像データを合成して車体の3次元画像データを生成」する「データ処理手段」という構成を備えるのに対し、引用発明がそのような構成を備えていることは明示されてはいない点。

(2)相違点についての判断
本願発明1の内容に鑑み、上記相違点4について検討する。
相違点4に係る本願発明1の「前記アクチュエータ制御手段により負荷する荷重と前記3組のステレオカメラの撮映タイミングを同期させ、前記3組のステレオカメラで取得された画像データの時間情報と前記アクチュエータ制御手段から入力される時間情報を対応付け、」「前記荷重の負荷に応じた前記車体及び/又はその部品の変形を前記3次元画像データに基づき動的に追跡し、前記アクチュエータの負荷状況と変位データを同期させて記録して、前記車体及び/又はその部品の動的な変位量の測定を行うデータ処理手段」という構成は、荷重の負荷と車体及び/又はその部品の変形を同期させて測定記録する手段と解されるものであり、そのような手段は上記引用文献2-6には記載されていない。
なお、上記引用文献3には、「試験片の画像データを、その時点における伸びおよび荷重データと関連づけて記憶する手段」が、また上記引用文献4には、「荷重付加装置4からの付加荷重信号と合わせて供試体Sの変形特性を求める」構成が記載されているが、これらはいずれも試験材料の力学的な特性試験に関するものであって、引用発明のような車体の剛性測定とはその対象分野が大きく異なる。また、車体及び/又はその部品の剛性試験において、上記のような同期測定を行うことが周知な技術事項であったとも認められないから、当業者といえども引用文献3,4の技術事項を引用発明に適用しようとする動機を見いだすことはできない。
したがって、その他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1ないし6に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2-5について
本願発明2-5も、上記相違点4に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし6に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明6について
本願発明6は、本願発明1に対応する方法の発明であり、上記相違点4に係る本願発明1の構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用文献1ないし6に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1-3,7-8については上記引用文献1-4に基づいて、請求項4,6については上記引用文献1-5に基づいて、また請求項5については上記引用文献1-6に基づいて、いずれも当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、本件補正により補正された請求項1-6は、それぞれ「前記アクチュエータ制御手段により負荷する荷重と前記3組のステレオカメラの撮映タイミングを同期させ、前記3組のステレオカメラで取得された画像データの時間情報と前記アクチュエータ制御手段から入力される時間情報を対応付け、」「前記荷重の負荷に応じた前記車体及び/又はその部品の変形を前記3次元画像データに基づき動的に追跡し、前記アクチュエータの負荷状況と変位データを同期させて記録して、前記車体及び/又はその部品の動的な変位量の測定を行うデータ処理手段」という事項、もしくはそれに対応する事項を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1-6は、当業者であっても、引用文献1ないし6に基づいて容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定を維持することはできない。


第6 当審拒絶理由について
1.特許法第36条第6項第1号について
当審では、請求項1-6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知しているが、本件補正において補正された結果、この拒絶の理由は解消した。


第7 むすび
以上のとおり、本願発明1-6は、当業者が引用文献1ないし6に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-09-18 
出願番号 特願2012-228493(P2012-228493)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G01B)
P 1 8・ 121- WY (G01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 眞岩 久恵  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 ▲うし▼田 真悟
中塚 直樹
発明の名称 車体剛性試験装置及び車体剛性試験方法  
代理人 磯村 哲朗  
代理人 坂井 哲也  
代理人 熊坂 晃  
代理人 尾崎 大介  

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