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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01S
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01S
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G01S
管理番号 1344294
審判番号 不服2017-15896  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-26 
確定日 2018-10-02 
事件の表示 特願2014- 91994「物体検出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月24日出願公開、特開2015-210191、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 本願は、平成26年4月25日の特許出願であって、平成29年2月2日付けで拒絶理由通知がされ、同年4月14日付けで手続補正がされ、同年7月25日付けで拒絶査定(原査定)がされ(送達日:同年8月1日)、これに対し、同年10月26日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

その後、当審において平成30年5月30日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年7月17日付けで手続補正がなされたものである。


第2 本願発明
本願請求項1-4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、平成30年7月17日付け手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-4は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
監視領域に存在する物体を検出する第1検出手段と、前記物体を検出する第2検出手段と、前記第1検出手段によって検出された物体と前記第2検出手段によって検出された物体とが同一の物体であるか否か判断する同一性判断手段とを備えた物体検出装置において、
前記第1検出手段は、自車から前記第1検出手段によって検出された物体までの距離を算出する第1算出手段を有し、
前記第2検出手段は、前記自車から前記第2検出手段によって検出された物体までの距離を算出する第2算出手段を有し、
前記同一性判断手段は、前記第1算出手段によって算出された距離と、前記第2算出手段によって算出された距離との差が所定距離以下であって最も小さい物体を同一の物体であると判断するものであって、
前記同一性判断手段は、前記第1検出手段によって同一方向に複数の物体が検出される一方、前記第2検出手段によって前記同一方向に単一の物体が検出され、前記第1算出手段および前記第2算出手段によって算出された物体までの距離に基づいて、前記第2検出手段によって検出された物体の位置が、前記自車に最も近い手前物体の位置よりも、前記手前物体以外の物体の位置に近いと判断する場合であって、前記手前物体と、前記第2検出手段によって検出された物体との距離が前記所定距離以下であると判断する場合には、 前記第1検出手段によって検出された複数の物体のうち前記手前物体と前記第2検出手段によって検出された物体とが同一の物体であると判断することを特徴とする物体検出装置。
【請求項2】
前記同一性判断手段は、前記第1検出手段によって同一方向に複数の物体が検出される一方、前記第2検出手段によって前記同一方向に単一の物体が検出され、前記第1算出手段および前記第2算出手段によって算出された物体までの距離に基づいて、前記第2検出手段によって検出された物体の位置が、前記手前物体の位置よりも、前記手前物体以外の物体の位置に近いと判断する場合であって、さらに、前記手前物体が自車位置を基準とする所定範囲内にあり、前記手前物体と前記自車との相対速度が所定値以下であり、前記第1検出手段によって検出された複数の物体間の速度差が規定値以下であり、前記手前物体以外の物体が、前記手前物体の位置を基準とする規定範囲内にあると判断する場合、前記手前物体と前記第2検出手段によって検出された物体とが同一の物体であると判断することを特徴とする請求項1記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記所定距離は、前記自車と前記手前物体との距離、または前記自車と前記第2検出手段によって検出された物体との距離が大きいほど大きな値に設定されることを特徴とする請求項1または2に記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記第1検出手段はレーダからなり、前記第2検出手段は撮像機器からなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の物体検出装置。」


第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2012-64026号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審による。以下同様。)

「【0001】
本発明は、車両に搭載され、自車両の周辺に存在する車両等の対象物を検出するための対象物検出装置、およびその方法の技術分野に関する。」

「【0021】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る車両用対象物検出装置1の概略構成を示すブロック図である。本実施形態に係る車両用対象物検出装置1は、レーダ検出部11と、画像取得部12と、処理部13とを備えている。処理部13は、画像処理部131、および判定部132を含む。
【0022】
レーダ検出部11は、判定部132に接続されている。レーダ検出部11としては、例えばレーザレーダ、マイクロ波レーダ、ミリ波レーダ、および超音波レーダ等を用いることができる。レーダ検出部11は、電磁波等を自車両の周辺に発信し、自車両の周辺に存在する物体に反射する反射波等を受信することにより、自車両周辺に存在する対象物との距離、相対速度、および当該対象物の存在する方向等を検出する。そして、レーダ検出部11は、自車両周辺に存在する対象物との距離、相対速度、および当該対象物の存在する方向等を検出した結果の情報であるレーダ情報を示す信号(以下、レーダ信号と称する)を判定部132に出力する。なお、本実施形態では、レーダ検出部11は自車両の前方の対象物のレーダ情報を検出するように設置されているものとして説明をするが、本発明の趣旨はこれに限られるものではなく、自車両の後方、側方等の他の方向についても適用可能である。
【0023】
画像取得部12は、画像処理部131と接続されている。画像取得部12は、典型的には、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、或いはCCD(Charge Coupled Device)を用いて自車両の周囲の画像を撮像するカメラと、当該カメラで撮像された画像を処理する処理回路とで主に構成される。画像取得部12は、自車両の周囲の画像を上記カメラで撮像し、撮像した画像を示す信号(以下、画像信号と称する)を画像処理部131に出力する。なお、本実施形態では、画像取得部12は自車両の前方の画像を取得するように設置されているものとして説明をするが、本発明の趣旨はこれに限られるものではなく、自車両の後方、側方等の他の方向についても適用可能である。
【0024】
画像処理部131は、画像取得部12および判定部132と接続されている。画像処理部131は、画像取得部12から出力される画像信号を受け取る。画像処理部131は、公知の手法を用いて、画像取得部12から受け取った画像信号によって示される画像に画像処理をするための領域(以下、第1の画像処理領域と称する)を設定する。なお、第1の画像処理領域を設定した画像を、以下、画像処理領域設定画像と称する。第1の画像処理領域を設定するための処理の手法の一例としては、画像にエッジ処理等の画像処理を行うことによって、第1の画像処理領域を設定する手法が挙げられる。
【0025】
画像処理部131は、画像処理領域設定画像における第1の画像処理領域内の対象物の横幅、縦幅、および自車両から見た対象物の横位置等を示す画像情報を取得する。また、例えば、パターンマッチング等により、画像から対象物の種類を特定し、特定した対象物の種類の情報を画像情報に含めても良い。画像処理部131は、画像情報を示す信号(以下、画像情報信号と称する)を判定部132に出力する。
【0026】
判定部132は、典型的には、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)などで主に構成されるECU(Electronic Control Unit)である。判定部132は、レーダ検出部11および画像処理部131と接続されている。判定部132は、レーダ検出部11から出力されるレーダ信号、ならびに画像処理部131から出力される画像情報信号をそれぞれ受け取る。
【0027】
判定部132は、受け取ったレーダ信号で示されるレーダ情報と、同じく受け取った画像情報信号で示される画像情報とをフュージョン処理することにより、対象物の詳細な情報を取得する。」

「【0035】
そこで、本実施形態に係る判定部132は、レーダ情報に基いて、自車両から見て同一方向に複数の対象物が存在するか否かを判定し、自車両から見て同一方向に複数の対象物が存在すると判定した場合は、レーダ情報から算出される自車両との距離が最も短い対象物に対して新たな画像処理領域(以下、第2の画像処理領域と称する)を設定する。本実施形態に係る判定部132は、自車両から見て同一方向に複数の対象物が存在すると判定した場合に、レーダ情報から算出される自車両との距離が最も短い対象物に対して第2の画像処理領域を設定することによって、対象物毎の画像情報を取得することができる。そして、判定部132は、取得した対象物毎の画像情報と、対象物毎のレーダ情報をフュージョン処理することによって、対象物の詳細な情報を取得することができる。第2の画像処理領域を設定する処理の具体的な流れを図2Bおよび図2Cを用いて説明する。
【0036】
判定部132は、受け取ったレーダ信号で示される対象物22および対象物21それぞれについてのレーダ情報に基いて、自車両から見て同一方向に複数の対象物が存在するか否かを判定する。自車両から見て同一方向に複数の対象物が存在するか否かを判定する手法の例としては、画像情報とレーダ情報とを参照して、第1の画像処理領域内に対象物が複数あるか否かを判定することによって判定する手法が挙げられる。すなわち、判定部132が、レーダ情報を参照して、第1の画像処理領域内に対象物が複数あると判定した場合、判定部132は、「自車両から見て同一方向に複数の対象物が存在する」と判定する。一方、判定部132が、レーダ情報を参照して、第1の画像処理領域内の対象物が複数ではないと判定した場合、判定部132は、「自車両から見て同一方向に複数の対象物は存在しない」と判定する。なお、対象物が複数あるかどうかを判定する方法の一例としては、レーダ情報で示される自車両と各対象物との相対速度がそれぞれ異なることに基いて判定する手法が挙げられる。
【0037】
判定部132は、自車両から見て同一方向に複数の対象物が存在すると判定した場合は、レーダ情報から算出される自車両との距離が最も短い対象物に対して第2の画像処理領域を設定する。第2の画像処理領域を設定する際の当該画像処理領域の大きさを決める手法の一例としては、以下のような手法が考えられる。対象物が画像上で占める大きさは、対象物自体の大きさ、自車両と対象物との距離、および各対象物間の距離等で決まる。そこで、まず、自車両から見て同一方向に対象物が複数あると判定部132によって判定される状況を予め想定する。すなわち、対象物が自車両から見て同一方向に複数あると処理部13によって判定される状況は、図2Aの画像に係る状況のような、自車両の前方に対象物22が存在し、そのさらに前方に対象物22より幅等の大きい対象物21が存在する状況であって、自車両との距離が最も短い対象物22に該当する車両は二輪車であると予め想定する。次に、対象物自体の大きさ、および自車両と対象物との距離等と、当該対象物が画像上で占める大きさの関係についての情報を、図示していない記憶装置に予め記憶させておく。そして、判定部132が、「自車両から見て同一方向に複数の対象物が存在する」と判定した場合、レーダ情報で示される自車両と対象物との距離や自車両から見た方向等を参照し、予め記憶させておいた、二輪車が画像上で占める大きさを第2の画像処理領域として設定する手法が考えられる。」

したがって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「レーダ検出部11と、画像取得部12と、処理部13とを備え、処理部13は、画像処理部131、および判定部132を含む車両用対象物検出装置1であって(【0021】)、
レーダ検出部11は、自車両周辺に存在する対象物との距離、相対速度、および当該対象物の存在する方向等を検出し、自車両周辺に存在する対象物との距離、相対速度、および当該対象物の存在する方向等を検出した結果の情報であるレーダ情報を示す信号(以下、レーダ信号と称する)を判定部132に出力し(【0022】)、
画像取得部12は、自車両の周囲の画像を撮像し、撮像した画像を示す信号(以下、画像信号と称する)を画像処理部131に出力し(【0023】)、
画像処理部131は、公知の手法を用いて、画像取得部12から受け取った画像信号によって示される画像に画像処理をするための領域(以下、第1の画像処理領域と称する)を設定し、第1の画像処理領域内の対象物の横幅、縦幅、および自車両から見た対象物の横位置等を示す画像情報を取得し、画像情報を示す信号(以下、画像情報信号と称する)を判定部132に出力し、(【0024】、【0025】)、
判定部132は、レーダ検出部11から出力されるレーダ信号、ならびに画像処理部131から出力される画像情報信号をそれぞれ受け取り、受け取ったレーダ信号で示されるレーダ情報と、同じく受け取った画像情報信号で示される画像情報とをフュージョン処理するものであり、(【0026】、【0027】)、
判定部132は、レーダ情報に基いて、自車両から見て同一方向に複数の対象物が存在するか否かを判定し、自車両から見て同一方向に複数の対象物が存在すると判定した場合は、レーダ情報から算出される自車両との距離が最も短い対象物に対して新たな画像処理領域を設定し、取得した対象物毎の画像情報と、対象物毎のレーダ情報をフュージョン処理することによって、対象物の詳細な情報を取得する(【0035】)
車両用対象物検出装置1。」

2 引用文献2ついて
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2002-341021号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スキャン式FM-CWレーダにおいて、例えばトラック等の大型車両がターゲットであった場合に複数の箇所から反射してくる反射信号を処理する方法に関する。」

「【0040】本発明によれば、以下のように代表値を決めている。図17に示されているように、同一のターゲットの異なる箇所Pa 、Pb 、Pcから反射されたビーム、即ちレーダ信号に基づいて生成されたピークを信号処理する。そして、これら複数のピークから得られた複数の信号からそれぞれ自車からの距離、相対速度、ターゲットの横位置、ターゲットの幅等の値を求め、求めた複数の値から代表値を求める。」

「【0071】次にS12において、各部について求めた距離、相対速度、及び自車が走行しているレーンから横方向へのズレの長さの差が所定の値(閾値:Δr、Δv、Δl)以下であるかどうかを判定する。S12において各ピークに基づいて求めたターゲットの各部の距離、相対速度、角度、及びレーンから横方向へのズレの差が所定の値の範囲内にあれば(Yes)、これらのピークは同じターゲットのピークであると考えられるので、大型車両であるとの判定カウントを行う。即ち、+1をカウントする(S13)。このカウントは各フロー毎に行われる。そして、S14において上記大型車両判定カウント数が所定値以上であるかどうか判定される。これは、S12において大型車両と判定される要件を、大型車両でないにもかかわらず、例えば並行して前方を走行している2台の車両からの複数のピークがたまたま上記要件を満たしている場合が考えられ、1回の判定で必ずしも大型車両とは判定できないためである。S14でカウント数が所定値以上である場合(Yes)、大型車両であると判定される(S15)。しかし、カウント値が所定値以上になっていない場合(No)フローは終了し、次回のフローに進む。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2007-24590号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、物体までの距離相当量(距離自体や距離に対応する視差など)を検出する車載の物体検出装置に関する。」

「【0029】
以下、図面を参照しつつ本発明の物体検出装置の一実施形態について説明する。本実施形態の物体検出装置は、図1に示されるように、車両1に搭載されている。物体検出装置は、画像取得部(撮像手段)2R,2Lと、ミリ波センサ(ミリ波レーダ:第二検出手段)3と、撮像手段2R,2Lによって取得した画像に各種フィルタをかけて処理したり、ミリ波センサ3の検出結果を処理する処理部(判定手段・走行安定状態判断手段)とを備えている。撮像手段2R,2Lは、横方向に一定間隔を設けて配設された一対のCCDカメラ(第一検出手段:画像測距センサ:ステレオカメラ)である。処理部は、CCDカメラ2R,2Lで取得した一対の入力画像に基づいて各種演算を行うもので、CPUやGPU、ROM・RAMなどを備えた物体検出ECU4である。」

「【0033】
本実施形態の物体検出装置によるCCDカメラ2R,2Lの経年変化などによる検出誤差補正制御(及び、その後の物体との距離検出制御)について、図2及び図3のフローチャートを参照しつつ説明する。まず、CCDカメラ2R,2Lによってステレオ画像を取得する(ステップ200)。そして、取得したステレオ画像に基づいて、物体検出ECU4において物体(物標と呼ばれることもある)を検出する(ステップ205)。ステレオ画像による物体検出については上述したとおりである。このときの物体検出の際に、物体との距離は距離自体として算出しても良いし、距離と対応する視差のままとしても良い。
【0034】
ステップ200,205と並行して、ミリ波センサ3によって車両1の前方を走査し手その出力を取得する(ステップ210)。そして、その出力結果に基づいて、物体検出ECU4において物体を検出する(ステップ215)。ステップ205,215の後、CCDカメラ2R,2Lの検出した物体とミリ波センサ3によって検出した物体のうち、同一と思われる物体を特定(確認)する(ステップ220)。この工程は、フュージョンとも呼ばれる。」

上記記載をまとめると、引用文献3には以下の技術事項が記載されている。
「一対のCCDカメラである画像取得部(撮像手段)2R,2Lと、ミリ波センサ(ミリ波レーダ:第二検出手段)3を備え、CCDカメラ2R,2Lの検出した物体とミリ波センサ3によって検出した物体のうち、同一と思われる物体を特定(確認)する車載の物体検出装置。」


第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比する。

ア 引用発明の「レーダ検出部11」は、「自車両周辺に存在する対象物との距離、相対速度、および当該対象物の存在する方向等を検出」するものであり、当該検出が可能な「自車両周辺」は、本願発明1の「監視領域」に相当する。よって、引用発明の「自車両周辺に存在する対象物との距離、相対速度、および当該対象物の存在する方向等を検出」する「レーダ検出部11」は、本願発明1の「監視領域に存在する物体を検出する第1検出手段」に相当する。

イ 引用発明の「画像取得部12」及び「画像処理部131」は、「自車両の周囲の画像を撮像し」、「第1の画像処理領域内の対象物の横幅、縦幅、および自車両から見た対象物の横位置等を示す画像情報を取得」するものであるから、本願発明1の「前記物体を検出する第2検出手段」に相当する。

ウ 引用発明の「レーダ検出部11」は、「自車両周辺に存在する対象物との距離、相対速度、および当該対象物の存在する方向等を検出した結果の情報であるレーダ情報を示す信号」を「出力」するものであるから、その内部に「対象物との距離」を算出する構成を有していると認められる。
よって、上記アを踏まえると、引用発明の「レーダ検出部11」は、本願発明1の「前記第1検出手段」が有する「自車から前記第1検出手段によって検出された物体までの距離を算出する第1算出手段」に相当する構成を有しているといえる。

エ 引用発明の「車両用対象物検出装置1」は、本願発明1の「物体検出装置」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点がある。
(一致点)
「監視領域に存在する物体を検出する第1検出手段と、前記物体を検出する第2検出手段と、を備えた物体検出装置において、
前記第1検出手段は、自車から前記第1検出手段によって検出された物体までの距離を算出する第1算出手段を有する
物体検出装置。」

(相違点)
(相違点1)
本願発明1の「第2検出手段」は、「前記自車から前記第2検出手段によって検出された物体までの距離を算出する第2算出手段を有し」ているのに対し、引用発明の「画像取得部12」及び「画像処理部131」は、距離を算出する手段を有していない点。

(相違点2)
本願発明1は、「前記第1検出手段によって検出された物体と前記第2検出手段によって検出された物体とが同一の物体であるか否か判断する同一性判断手段」であって、「前記第1算出手段によって算出された距離と、前記第2算出手段によって算出された距離との差が所定距離以下であって最も小さい物体を同一の物体であると判断するものであって、」「前記第1検出手段によって同一方向に複数の物体が検出される一方、前記第2検出手段によって前記同一方向に単一の物体が検出され、前記第1算出手段および前記第2算出手段によって算出された物体までの距離に基づいて、前記第2検出手段によって検出された物体の位置が、前記自車に最も近い手前物体の位置よりも、前記手前物体以外の物体の位置に近いと判断する場合であって、前記手前物体と、前記第2検出手段によって検出された物体との距離が前記所定距離以下であると判断する場合には、前記第1検出手段によって検出された複数の物体のうち前記手前物体と前記第2検出手段によって検出された物体とが同一の物体であると判断する」「同一性判断手段」を備えるのに対し、
引用発明は「受け取ったレーダ信号で示されるレーダ情報と、同じく受け取った画像情報信号で示される画像情報とをフュージョン処理する」「判定部132」であって、「レーダ情報に基いて、自車両から見て同一方向に複数の対象物が存在するか否かを判定し、自車両から見て同一方向に複数の対象物が存在すると判定した場合は、レーダ情報から算出される自車両との距離が最も短い対象物に対して新たな画像処理領域を設定し、取得した対象物毎の画像情報と、対象物毎のレーダ情報をフュージョン処理する」「判定部132」を備えるものの、「判定部132」は、「レーダ検出部11」によって検出された物体と「画像取得部12」及び「画像処理部131」によって検出された物体とが同一の物体であるか否か判断するものではない点。

(2)相違点についての判断
本願発明1の内容に鑑み、相違点2について検討する。

引用文献2には、スキャン式FM-CWレーダにおいて、トラック等の大型車両がターゲットであった場合に複数の箇所から反射してくる反射信号を処理する方法が記載されているのみであって、レーダ以外の検出手段により物体を検出すること、及び2つの検出手段により検出された物体が同一の物体であるか否か判断することについては記載されていないから、相違点2に係る本願発明1の構成は記載も示唆もされていない。

引用文献3には、「車載の物体検出装置」が「一対のCCDカメラである画像取得部(撮像手段)2R,2Lと、ミリ波センサ(ミリ波レーダ:第二検出手段)3を備え、CCDカメラ2R,2Lの検出した物体とミリ波センサ3によって検出した物体のうち、同一と思われる物体を特定(確認)する」という技術事項が記載されているものの、どのようにして同一と思われる物体を特定するのかが記載されていないから、相違点2に係る本願発明1の構成は記載も示唆もされていない。

したがって、相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2、3に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2-4について
本願発明2-4は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明1の特定事項を全て含む発明であるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2及び3に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。


第5 原査定の概要及び原査定についての判断
1 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

ア 理由1(新規性)について
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
・請求項1-8
・引用文献1

イ 理由2(進歩性)について
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項1-8
・引用文献1

・請求項6
・引用文献1-2

・請求項7
・引用文献1-3

ウ 理由3(サポート要件)について
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
・請求項2-4,6-7
各条件節に示された事項(「場合」の前に記載された部分)が「同一の物体であると判断すること」の十分条件として定義されている。一方、発明の詳細な説明によれば、図2の説明から自明なとおり、これらの事項は「同一の物体であると判断すること」の必要条件でしかなく、十分条件とすることは記載も示唆もされていない。

<引用文献等一覧>
1.特開2012-064026号公報
2.特開2002-341021号公報
3.特開2007-024590号公報

2 原査定の拒絶の理由についての判断
ア 理由1(新規性)について
上記第4の1(1)に記載したように、本願発明1と引用発明を対比すると、本願発明1と引用発明との間には、相違点1及び相違点2があるから、本願発明1は引用発明ではない。
本願発明2-4は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明1の特定事項を全て含む発明である。よって、本願発明2-4と引用発明との間には、少なくとも相違点1及び相違点2があるから、本願発明2-4は引用発明ではない。

イ 理由2(進歩性)について
上記第4に記載した理由により、本願発明1-4は、当業者であっても引用発明、引用文献2、3に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

ウ 理由3(サポート要件)について
本願明細書には、「前記第1検出手段によって同一方向に複数の物体が検出される一方、前記第2検出手段によって前記同一方向に単一の物体が検出され、前記第1算出手段および前記第2算出手段によって算出された物体までの距離に基づいて、前記第2検出手段によって検出された物体の位置が、前記自車に最も近い手前物体の位置よりも、前記手前物体以外の物体の位置に近いと判断する場合」に、「前記第1検出手段によって検出された複数の物体のうち前記手前物体と前記第2検出手段によって検出された物体とが同一の物体であると判断する」条件として、複数の条件が記載されているが、本願明細書に記載されている発明が、上記複数の条件を全て満たす場合にのみ同一と判断するもののみが記載されているものではなく、上記複数の条件の内の一つ、又は複数の条件を満たす場合に同一の物体と判断しても良いことは、当業者にとって明らかである。

以上の理由により、原査定は維持できない。


第6 当審拒絶理由について
当審では、請求項1-4の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年7月17日付け手続補正書による補正の結果、この拒絶の理由は解消した。


第7 むすび
以上のとおり、本願発明1-4は、引用発明ではないし、当業者が引用文献1-3に基づいて容易に発明できたものではないし、発明の詳細な説明に記載したものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-09-18 
出願番号 特願2014-91994(P2014-91994)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01S)
P 1 8・ 537- WY (G01S)
P 1 8・ 113- WY (G01S)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲高▼場 正光  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 須原 宏光
▲うし▼田 真悟
発明の名称 物体検出装置  
代理人 吉田 豊  

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