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審決分類 審判 一部無効 1項1号公知  A23L
審判 一部無効 2項進歩性  A23L
管理番号 1344388
審判番号 無効2016-800134  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-12-09 
確定日 2018-09-25 
事件の表示 上記当事者間の特許第3966527号発明「生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置」の特許無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯の概略
特許第3966527号(以下「本件特許」という。)に係る手続の経緯は,概ね,以下のとおりである。
平成10年 6月12日 出願(特願平10-165696号)
平成19年 6月 8日 特許権の設定登録(請求項の数5)
平成22年 2月25日 訂正2010-390006号審決(訂正認容
,確定)
(平成25年 3月25日 無効2012-800065号審決(請求不成
立,確定))
(平成26年 5月 2日 無効2013-800173号審決(請求不成
立,確定))
(平成26年 9月 3日 無効2014-800012号審決(請求不成
立,確定))
(平成28年 9月14日 無効2015-800211号審決(請求不
成立))
平成28年12月 9日 審判請求書,甲第1号証?甲第15号証
平成29年 1月13日 手続補正書(方式)
(平成29年 3月14日 無効2016-800074号審決(請求不成
立))
平成29年 3月24日 審判事件答弁書,乙第1号証?乙第27号証の
2
平成29年 6月 5日 審判事件弁駁書,甲第16号証?甲第37号証
平成29年 8月21日 審理事項通知書
平成29年 9月26日 口頭審理陳述要領書(被請求人),乙第28号
証?乙第30号証
平成29年10月 2日 口頭審理陳述要領書(請求人),甲38号証?
甲40号証
平成29年10月16日 審理事項通知書
平成29年10月19日 口頭審理陳述要領書(2)(請求人),甲第4
1号証の1?甲第41号証の7
平成29年10月19日 第1回口頭審理
以下,各証拠について,証拠番号に従って「甲1」などという。

第2 本件特許に係る発明
本件特許の請求項1?5に係る発明は,確定した前記訂正2010-390006号審決(甲1)により訂正された訂正明細書及び図面(以下「本件明細書」という。)の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1?5に記載されたとおりのものであるところ,そのうち,請求項1及び3は以下のとおりである。以下,請求項1及び3に係る発明を,それぞれ,「本件発明1」,「本件発明3」という。
【請求項1】
生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,
前記防止手段を,突起・板体の突起物とし,この突起物を,前記選別ケーシングの円周端面に設ける構成とした生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置。
【請求項3】
生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,
前記防止手段を,突起・板体の突起物とし,この突起物を回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構成とした生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置。

第3 請求人らの主張及び証拠方法
請求人らは,特許第3966527号の特許請求の範囲の請求項1及び3に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする,旨の審決を求め,下記4の証拠方法を提出し,以下の無効理由を主張する。
1 無効理由1(特許法29条1項1号)
本件特許の請求項1に記載された発明(本件発明1)及び請求項3に記載された発明(本件発明3)は,平成10年4月28日の被請求人の技研工場における守秘義務を負わない古橋達史が参加した会議において,文書「ダストールの試験機,展示会機から新型への変更点」(甲第8号証)が配布されたことによって,甲第15号証に示される「ダストール」の基本構成及び当該文書の第1項に開示された技術的思想を備えた下記3の構成を有する装置が開示されたことにより,本件特許の出願前に日本国内において公然知られた発明であるから,特許法29条1項1号の規定に該当し,特許を受けることができないものである。よって,その特許は同法123条1項2号に該当し,無効とすべきものである。

2 無効理由2(特許法29条2項)
本件特許の請求項1に記載された発明(本件発明1)及び請求項3に記載された発明(本件発明3)は,平成10年4月28日の被請求人の技研工場における守秘義務を負わない古橋達史が参加した会議において,文書「ダストールの試験機,展示会機から新型への変更点」(甲第8号証)が配布されたことによって,甲第15号証に示される「ダストール」の基本構成及び当該文書の第1項に開示された技術的思想を備えた下記3の構成を有する装置が開示されたことにより,本件特許の出願前に日本国内において公然知られた発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。よって,その特許は同法123条1項2号に該当し,無効とすべきものである。

3 装置の構成(審判請求書25?26頁)
(1) 本件発明1に合わせた構成
A1 生海苔排出口1を有する選別ケーシング2,
A2 及び回転板3,
A3 この回転板3の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する共回
り防止ゴム(防止手段),
A4 並びに異物排出口5
A5 をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液
槽6を有する生海苔異物分離除去装置7において,
B 前記防止手段(A3)を,
B1 共回り防止ゴムとし,
B2 この共回り防止ゴムを,前記選別ケーシング2の円周端面に設け
る構成とした
C 生海苔異物分離除去装置7(A5)における生海苔の共回り防止装
置。

(2) 本件発明3に合わせた構成
A1 生海苔排出口1を有する選別ケーシング2,
A2 及び回転板3,
A3 この回転板3の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する共回
り防止ゴム(防止手段),
A4 並びに異物排出口5
A5 をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液
槽6を有する生海苔異物分離除去装置7において,
B’ 前記防止手段(A3)を,
B’1 共回り防止ゴムとし,
B’2 この共回り防止ゴムを前記選別ケーシング2の円周面に設ける構
成とした
C 生海苔異物分離除去装置7(A5)における生海苔の共回り防止装
置。

4 証拠方法
甲1:特許審決公報(訂正2010-390006号)
甲2:海苔タイムス第1554号の第1面(平成10年4月11日)
甲3:「フルタダストールFD-380K」及び「フルタダストールFD-380S」のカタログ(1998年3月印刷)
甲4:「フルタ海苔機械」のカタログ(1998年4月印刷)
甲5:第六回海苔生産機械・資材展示会実施要領(平成10年4月19日開催)
甲6:第45回愛知の水産研究発表大会プログラム(平成10年4月21日開催)
甲7:第48回浅海増殖研究発表全国大会プログラム(平成10年6月6日開催)
甲8:古橋達史による「ダストール打合せ綴」に綴られた文書「ダストールの試験機,展示会機から新型への変更点」
甲9:古橋達史による日記(1998年)(1月26日?2月1日,3月2日?22日,3月30日?4月19日,4月27日?5月3日,6月8日?14日,7月6日?12日)
甲10の1:古橋達史による備忘録1(業務日誌No.5)
甲10の2:古橋達史による備忘録2(MEMO11年度)
甲10の3:古橋達史による備忘録3(業務日誌No.6)
甲11:古橋達史所蔵の受注台帳(平成12年度)
甲12:古橋達史所蔵の請求書(平成12年4月迄)
甲13:古橋達史所蔵の名刺群
甲14:古橋達史所蔵の売上控(平成11年度)
甲15:「前橋ダストール」の写真集(平成28年12月3日ニチモウ株式会社(請求人)明正達也撮影)
甲16:陳述書(野田商会 野田真宏)
甲17:陳述書(西部機販三重有限会社代表取締役 日下治夫)
甲18:陳述書(内山栄一)
甲19:陳述書(浜田吾則)
甲20:陳述書(浜田千代二)
甲21:陳述書(浜田惠一)
甲22:陳述書(辻卓生)
甲23:陳述書(漣嘉廣)
甲24:陳述書(有限会社常滑ヤマス工業代表取締役 須藤龍二郎)
甲25:古橋達史による日記(1998年)(2月23日?3月1日,5月18日?24日)
甲26:特開平9-313139号公報
甲27:陳述書(古橋達史)
甲28:陳述書(森秋弘)
甲29:陳述書(山田和則)
甲30:陳述書(西村純久)
甲31:写真撮影記録-フルタ電機製 生海苔異物除去機「ダストール」(平成29年4月25日ニチモウ株式会社(請求人)明正達也撮影)
甲32:陳述書(古橋達史)
甲33:古橋達史の備忘録4
甲34:陳述書(有限会社常滑ヤマス工業代表取締役 須藤龍二郎)
甲35:古橋達史による「ダストール打合せ綴」に綴られた文書「報告連絡相談書」(平成10年6月2日)
甲36:平成28年(ワ)第1777号第7回弁論準備手続調書
甲37:平成28年(ワ)第4529号第6回弁論準備手続調書
甲38:平成29年(ネ)第10001号判決書
甲39の1:平成29年(ネ)第10040号判決書
甲39の2:平成29年(ネ)第10040号控訴上申書(1)
甲40:平成28年(ワ)第1777号判決書
甲41の1:特開平11-346733号公報
甲41の2:面接記録(平成19年3月2日)
甲41の3:拒絶理由通知書(平成19年3月15日)
甲41の4:手続補正書(平成19年3月26日)
甲41の5:意見書(平成19年3月26日)
甲41の6:物件提出書(平成19年3月26日)
甲41の7:甲41の6添付のDVD-R
なお,被請求人は,甲8の文書は不知であるとし,それ以外の証拠の成立については争っていない。

第4 被請求人の主張
被請求人は,本件無効審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする,旨の審決を求め,以下の証拠方法を提出し,請求人が主張する無効理由は理由がないものであると主張する。
乙1:徳岡洋由,「撹拌におけるバッフル効果」,神鋼パンテック技報,1992年12月,Vol.36,No.3,p.5-9
乙2:特開平6-90737号公報
乙3:特開平11-18758号公報
乙4:特開2003-93027号公報
乙5:特開2010-146225号公報
乙6:陳述書(鰐部幸政(被請求人従業員))
乙7:陳述書(古田幹雄(被請求人顧問))
乙8:特許第2662537号公報
乙9:特許第2662538号公報
乙10:「海苔関連機器の製造・販売に関わる業務提携の覚書」(平成7年8月10日)
乙11:海苔タイムス第1484号の第3面(平成8年5月1日)
乙12:特開平11-206345号公報
乙13:「報告連絡相談書」(平成10年1月14日)
乙14:「報告連絡相談書」(平成10年1月20日)
乙15:森秋弘作成のメモ
乙16:「海苔機械関連機器の製造・販売に関わる業務提携について」(平成10年3月11日)
乙17:株式会社親和製作所代理人松本直樹弁護士から被請求人に対する通知(1998年3月13日)
乙18:乙17の通知に対する回答(平成10年3月31日)
乙19:訴状
乙20:「請求書(控)兼売上明細書」(1998年9月25日)
乙21:平成10?11年度ダストール販売一覧表
乙22:陳述書(前田則彦(株式会社親和製作所従業員))
乙23:平成28年(ヨ)第22115号仮処分決定
乙24:「原告意見書(新和解条項案)について」(平成27年9月4日)
乙25:陳述書(前田則彦(被請求人従業員))
乙26:「報告連絡相談書」(平成11年5月7日)
乙27の1:平成27年(ワ)第12480号判決書
乙27の2:平成28年(ネ)第10082号判決書
乙28:平成29年(ネ)第10001号判決書
乙29:平成29年(ネ)第10040号判決書
乙30:平成28年(ワ)第1777号判決書
なお,請求人は乙1?乙30の成立について争っていない。

第5 当審の判断
1 無効理由1(29条1項1号)について
請求人らは,本件発明1及び本件発明3は,平成10年4月28日の被請求人の技研工場における守秘義務を負わない古橋達史(以下,単に「古橋」という。)が参加した会議(以下「本件会議」という。)において,文書「ダストールの試験機,展示会機から新型への変更点」(甲8,以下「本件文書」という。)が配布されたことによって,甲15に示される「ダストール」の基本構成及び本件文書の第1項に開示された技術的思想を備えた前記第3・3の構成を有する装置(以下「本件装置」という。)が開示されたことにより,本件特許の出願前に日本国内において公然知られた発明である旨主張している。
(1) 証拠によれば,以下の事実が認められる。
ア 本件文書に記載された事項
本件文書は,「ダストールの試験機,展示会機から新型への変更点」と題する文書で,以下の事項が記載されている(なお,「/」は改行を示す。以下同じ。)。
・「1998年4月28日/フルタ電機(株) 技研工業」
・「1 選別ケースの外周に共回り防止ゴムをつける/選別タンク内の海苔濃度を濃くできる事により良品タンクへの海苔濃度が濃くできる」
イ 甲2に記載された事項
甲2の広告欄には,「ダストール」FD-380K及びFD-380Sの外観写真とともに,以下の事項が記載されている。
・「●良い海苔づくりを推進する。」
・「フルタダストール」
・「新製品」
・「性能アップで作業時間大幅短縮!/異物はミンチ前に除去!!」
・「FD-380K/海水が豊富に使用できる作業場向きです。/メリット:/大型洗浄撹拌槽付ですので海苔が,よりキレイに洗えます。」
・「FD-380S/海水量が少なくてすみます。/メリット:/海水の運搬労力・コストを節約します。」
・「■特長/●すき間調整がワンタッチで出来ます。/●高濃度選別(異物除去)が出来ます。/●異物排出は自動で行います。/●排出時間は自動に設定出来ます。」
・「●良品タンクの撹拌は,回転自在で洗浄効果を高めます。/●少ない海水で選別が出来ます。/●全体がコンパクトにまとめられ狭い場所でも使用できます。」
・「●逆洗機能付/濃い海苔が詰まった時,自動的に逆噴し詰まりを取り除きます。」
・「フルタ電機株式会社」
ウ 甲3に記載された事項
甲3には,「ダストール」FD-380K及びFD-380Sの外観写真とともに,以下の事項が記載されている。
・「●良い海苔づくりを推進する。」
・「フルタダストール」
・「FD-380K」
・「新製品」
・「性能アップで作業時間大幅短縮!/異物はミンチ前に除去!!」
・「海水が豊富に使用できる作業場向きです。/メリット:/大型洗浄撹拌槽付ですので海苔が,よりキレイに洗えます。」
・「■特長/●すき間調整がワンタッチで出来ます。/●高濃度選別(異物除去)が出来ます。/●異物排出は自動で行います。/●排出時間は自動に設定出来ます。/(第1回目を除く)/●良品タンクの撹拌は,回転自在で洗浄効果を高めます。/●少ない海水で選別が出来ます。/●全体がコンパクトにまとめられ狭い場所でも使用できます。」
・「●逆洗機能付/濃い海苔が詰まった時,自動的に逆噴し,詰まりを取り除きます。」
・「FD-380S」
・「海水量が少なくてすみます。/メリット:/海水の運搬労力・コストを節約します。」
・「フルタ電機株式会社」
エ 甲4に記載された事項
甲4には,「ダストール」FD-380K及びFD-380Sの外観写真とともに,以下の事項が記載されている。
・「良い海苔づくりに応える・・・・・・・業界随一のキャリア。」
・「フルタ海苔機械」
・「ごみを除去して海苔の品質を向上します。 ダストール」
・「性能アップで作業時間大幅短縮! 異物はミンチ前に除去!」
・「新製品」
・「FD-380K」
・「海水が豊富に使用できる作業場向きです。/メリット:大型洗浄撹拌槽付きですので海苔が,よりキレイに洗えます。」
・「FD-380S」
・「海水量が少なくてすみます。/メリット:海水の運搬労力・コストを節約します。」
・「■FD-380K・FD-380Sの特長/隙間調整機能付き/・・・/逆洗機能付/隙間に濃い海苔が詰まった時,自動的に逆噴し隙間を広げ洗浄し,詰まりを取り除きます。/必要海水が少量ですみます。/・・・」
・「異物自動排出機能付き/定期的にゴミを自動的に短時間で排出します。/・・・/コンパクト設計/全体がコンパクトにまとめられ狭い場所でも使用できます。」
・「フルタ電機株式会社」
オ 甲9に記載された事項
甲9の4月28日の欄に,以下の事項が記載されている。
・「9 フルタ本社/10 フルタ技研/11 ダストール会議」
・「名鉄大野-神宮前-フルタ本社より技研工場まで送ってもらう」
・「4 1220発大府」
カ 甲15に記載された事項
甲15には,以下の事項が記載されている。
・「

」(2頁)
・「

」(3頁)
・「

」(4頁)
・「

」(5頁)
・「

」(6頁)
・「

」(7頁)
・「

」(8頁)

(2) 本件会議において開示された装置について
ア 本件会議
甲8及び9に記載された事項(前記(1)ア,オ)によれば,本件特許の出願前である平成10年4月28日に被請求人の技研工場において,本件会議が開催され,古橋が参加したものと認められる。
イ 本件会議において開示された装置の構成
(ア) 基本構成
本件会議にて配布されたとされる本件文書には「ダストールの試験機,展示機から新型への変更点」と記載されているところ,本件文書の記載によれば(前記(1)ア),この「ダストール」の試験機,展示会機は,「選別ケース」を有することがわかる。
そして,甲2?4に記載された事項によれば(前記(1)イ?エ),本件会議の開催当時,被請求人により製造・販売されていた「ダストール」FD-380K型及びFD-380S型は,海苔づくりに使用する洗浄及び異物除去機能を備えた装置であり,その洗浄及び異物除去の過程で隙間の目詰まりを生じた場合には,自動的に逆噴して隙間を広げることによりその詰まりを取り除く,逆洗機能を有するものであることがわかるが,それ以上に,「ダストール」の具体的な構造を窺わせる証拠はない。
請求人らは,「ダストール」の試験機,展示会機が,前橋一幸の海苔作業場に設置された「ダストール」(甲15,以下「前橋ダストール」という。)と,L型金具が取り付けられている点を除き,同じ構成を有し,本件会議において,前橋ダストールの基本構成(構成A1,A2,A4及びA5(前記第3・3))を備えた本件装置が開示された,と主張している。
しかしながら,前橋ダストールの型式は「FD380D-2K」であって,その外観も含め「FD-380K」や「FD-380S」とは異なること(甲2?4,15,乙6,7),その納入は平成12年1月18日とされていること(甲12,15),写真の撮影日は平成28年12月3日とされており(甲15),納入から撮影までの間にその構造等に改変等が加えられた可能性も否定することはできないことなどに鑑みると,「ダストール」の試験機,展示会機が,前橋ダストールの基本構成を有すると断定することはできない。
また,請求人らは,株式会社九研に保管されていた「ダストールFD-380S」(以下「九研ダストール」という。)に係る写真撮影記録(甲31)に基づいて,前橋ダストールがこの九研ダストールと同一の基本構成を有するから,「ダストール」の試験機,展示会機が前橋ダストールの基本構成を備えている旨の主張をしている。
しかしながら,九研ダストールはその納入日が平成10年(甲31)又は不明(甲28)とされていること,写真の撮影日は平成29年4月25日とされており(甲31),納入から撮影までの間にその構造等に改変等が加えられた可能性も否定することはできないことなどに鑑みると,前橋ダストールと九研ダストールが,同一の基本構成を有するとしても,そのことをもって,「ダストール」の試験機,展示会機が前橋ダストールの基本構成を備えているということはできない。
さらに,請求人らは,本件特許の出願の審査段階において提出したDVD-R(甲41の7)に撮影されているダストール(以下「撮影ダストール」という。)が,前橋ダストールと同系統の「D-1L」型であること,前橋ダストールが撮影ダストールと同一の基本構成を有することから,「ダストール」の試験機,展示会機が前橋ダストールの基本構成を備えている旨の主張をしている。
しかしながら,甲41の7は平成19年3月26日に提出されたものであるから,前橋ダストールと撮影ダストールが,同一の基本構成を有するとしても,そのことをもって,「ダストール」の試験機,展示会機が前橋ダストールの基本構成を備えているということはできない。
また,撮影ダストールにより本件発明1及び3の動作を説明した経緯があるとしても,当然に,「ダストール」の試験機,展示会機が前橋ダストールの基本構成を備えているということにはならない。
(イ) 本件文書の第1項に開示された技術思想について
本件文書(甲8)に記載された事項によれば,「ダストール」の試験機,展示会機には,選別ケースがあるとともに,その外周に「共回り防止ゴム」をつけること,それにより「選別タンク内の海苔濃度を濃くできる事により良品タンクへの海苔濃度が濃くできる」ことがわかるが,この「共回り防止ゴム」がいかなる形状のものであり,選別ケースの外周のどの位置に,どのような態様で設けられるかといった具体的な構成や,どのような機能を果たすのかなどは,本件文書に特段示されていない(前記(1)ア)。
この「共回り防止ゴム」に関し,請求人らは,本件会議の開催当時,ダストールを試運転すると生海苔がクリアランスに詰まり,回転円板とともに詰まった状態で回転するという問題点が発生し,その問題点が海苔関係者の間でよく知られており,問題点の解決の試みが進められていたところ,本件会議に出席した古橋は,生海苔がクリアランスに詰まったり,詰まった生海苔が回転円板とともにクリアランスを回る不具合現象が発生することを防止するための「共回り防止ゴム」を選別ケースの外周に設けることを把握し,本件装置の構成(構成A3,B,B1,B2,B’,B’1,B’2及びC(前記第3・3)),作用効果を知得,理解した旨主張し,本件会議において本件装置が開示された,と主張している。
しかしながら,本件文書には,前記(1)アのような記載があるのみで,共回り防止ゴムの具体的な取り付け位置や,共回り防止ゴムの形状(本件発明1及び3のように「突起物」といえるものであるか)等についてなんら特定されていない。本件文書には「共回り防止ゴム」を選別ケースの円周端面あるいは円周面に設置する旨の記載はないから,本件文書の記載から,本件会議において請求人らが主張するような構成を有する本件装置が開示されたものとは認められない。
また,本件発明1及び3の「共回り」という用語について,本件明細書には「前記生海苔の異物分離除去装置,又は回転板とクリアランスを利用する生海苔異物分離除去装置においては,この回転板を高速回転することから,生海苔及び異物が,回転板とともに回り(回転し),クリアランスに吸い込まれない現象,又は生海苔等が,クリアランスに喰込んだ状態で回転板とともに回転し,クリアランスに吸い込まれない現象であり,究極的には,クリアランスの目詰まり(クリアランスの閉塞)が発生する状況等である。この状況を共回りとする。」(【0003】,甲1)と定義されている。
これに対し,本件文書の「共回り防止ゴム」との記載は,本件発明1及び3と同様に「共回り」なる語が用いられているものの,「共回り」が,本件特許の出願前に生海苔異物分離除去装置の分野において,本件明細書に記載の意味と同じ意味に用いられていたものとは認められない。なお,乙4には「生海苔の洗浄熟成機」に関し,「共回りを防止し」(【0014】),「共回りを防止する」(【0021】)といった記載が認められるが,本件明細書で定義された,回転板を用いた場合に生じる問題点としての意味で用いられていないことは,その記載に照らして明らかである。他に,「共回り」なる語が,本件会議の開催当時に,本件明細書に記載の意味と同じ意味で理解されていたことを示す客観的な証拠はないから,本件文書の「共回り防止ゴム」との記載が,本件明細書に記載の意味と同じ意味であるとは認められない。
甲16?23,29によれば,本件会議の開催当時,生海苔異物分離除去装置において隙間の目詰まりの問題が生じることがあることが,海苔関係者の間でよく知られていたことが窺えるが,その目詰まりの原因や機序が,本件明細書(【0003】,【0004】,甲1)に記載されたものであることまでが知られていたとは認められない。
そうすると,生海苔異物分離除去装置において隙間の目詰まりの問題が生じることがあったことから,直ちに,本件文書の「共回り」の記載を,本件明細書に記載された意味での「共回り」の状況等であるということはできない。
そうすると,仮に,「ダストール」の試験機,展示会機が前橋ダストールの基本構成を備えるとしても,本件会議時に,古橋に,本件文書に記載された事項が開示されたことにより,請求人らが主張するような構成を有する本件装置が開示されたものとは認められない。
請求人らは,認識主体は古橋であり,本件発明1及び3における共回り防止手段としての突起物という技術的思想が古橋によって認識された旨を主張する(口頭審理陳述要領書9?10頁)。
しかしながら,たとえ古橋が優れた知見を有していたとしても,本件文書に記載された事項が開示されたことにより本件装置が開示されたと認められないことは上記のとおりであり,本件文書に記載された事項が開示されたことにより古橋が本件装置を知得したことを示す客観的な証拠はないから,請求人らの主張は採用することができない。
ウ 以上を踏まえると,本件会議において本件装置が開示されたものとは認められない。
そして,本件会議において,以下の装置に係る発明が開示されたものと認める(以下「引用発明」という。)。
(引用発明)
「選別ケース及び共回り防止ゴムを有する海苔づくりに使用する洗浄及び異物除去機能を備えた装置において,
この共回り防止ゴムを,前記選別ケースの外周に設ける構成とした,海苔づくりに使用する洗浄及び異物除去機能を備えた装置における,選別タンク内の海苔濃度を濃くできる事により良品タンクへの海苔濃度が濃くできる装置。」

(3) 本件発明1について
本件発明1と引用発明とを,その機能に照らして対比すると,引用発明の「洗浄及び異物除去機能を備えた装置」は,本件発明1の「生海苔異物分離除去装置」に相当し,引用発明の「選別ケース」は「高濃度選別(異物除去)」(甲2,3)に係るものと認められ,本件発明1の「選別ケーシング」に相当することは技術的に明らかであるとともに,本件発明1と同様に,生海苔排出口や異物排出口を有することも技術的に明らかである。
そうすると,本件発明1と引用発明とは,
「生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び異物排出口を有する生海苔異物分離除去装置における,装置。」
である点で一致し,以下の点で相違する。
(相違点1)
本件発明1は,「生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板」,「並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する」のに対し,引用発明については,生海苔排出口を有する選別ケーシング,異物排出口を有するものの,その他の構成を備えるか不明である点。
(相違点2)
本件発明1は,生海苔異物分離除去装置が「回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段」を有し,「前記防止手段を,突起・板体の突起物とし,この突起物を,前記選別ケーシングの円周端面に設ける構成とした生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置」であるのに対し,引用発明においては,海苔づくりに使用する洗浄及び異物除去機能を備えた装置が「共回り防止ゴム」を有し,「この共回り防止ゴムを,前記選別ケーシングの外周に設ける構成とした,海苔づくりに使用する洗浄及び異物除去機能を備えた装置における,選別タンク内の海苔濃度を濃くできる事により良品タンクへの海苔濃度が濃くできる装置」である点。
相違点2について検討すると,引用発明は,当該構成を備えることにより選別タンク内の海苔濃度を濃くできるが(前記(1)ア),この構成が回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止し得るものとは認められない。すなわち,本件文書において,「共回り防止ゴム」の具体的な構成や機能は明らかにされておらず(前記(1)ア),その記載からは,本件発明1の「共回り」の意味(前記(2)イ(イ))における共回りを防止する突起物であるか不明であるとともに,そうであるとする証拠も特段ない。
そして,本件発明1は,当該「防止手段」を備えることにより,「共回りの発生を無くし,かつクリアランスの目詰まりを無くすこと,又は効率的・連続的な異物分離(異物分離作業の能率低下,当該装置の停止,海苔加工システム全体の停止等の回避)が図れること,またこの防止手段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置できること等」(本件明細書【0029】,甲1)の効果を奏するものであるから,この相違点は実質的なものである。
そうすると,仮に,引用発明が相違点1に係る本件発明1の構成を備えるとしても,本件発明1が引用発明であるとは認められない。
よって,本件発明1は,引用発明であるとは認められない。

(4) 本件発明3について
本件発明3と引用発明とを,その機能に照らして対比すると,両者は,前記相違点1(前記(3))と同様の点で相違するから,本件発明3は引用発明であるとは認められない。
仮に,この点で相違しないとしても,両者は,以下の点で相違する。
(相違点3)
本件発明3は,生海苔異物分離除去装置が「回転板,この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段」を有し,「前記防止手段を,突起・板体の突起物とし,この突起物を回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構成とした生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置」であるのに対し,引用発明においては,海苔づくりに使用する洗浄及び異物除去機能を備えた装置が「共回り防止ゴム」を有し,「この共回り防止ゴムを,前記選別ケーシングの外周に設ける構成とした,海苔づくりに使用する洗浄及び異物除去機能を備えた装置における,選別タンク内の海苔濃度を濃くできる事により良品タンクへの海苔濃度が濃くできる装置」である点。
そして,本件発明1の場合と同様に(前記(3)),引用発明の当該構成が,本件発明3の「共回り」の意味(前記(2)イ(イ))における「回転板,この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段」とは認められず,本件発明3は,この点を備えることにより,「請求項1の目的を達成できること,またこの防止手段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置できること等」(本件明細書【0031】,甲1)の効果を奏するものであるから,この相違点は実質的なものである。
そうすると,仮に,引用発明が前記相違点1と同様の点に係る本件発明3の構成を備えるとしても,本件発明3が引用発明であるとは認められない。
よって,本件発明3は,引用発明であるとは認められない。

(5) 以上のとおり,本件会議において本件装置が開示されたものとは認められず,本件発明1及び3が引用発明であるとも認められないが,たとえ,本件会議において本件装置が開示されたものとしても,本件発明1及び3が公然知られた発明になったとは認められない。
すなわち,特許法29条1項にいう「公然」とは,秘密状態を脱した状態に至ったことをいい,秘密保持義務を負うなどして発明者のために発明の内容を秘密にする義務を負う関係にある者が発明の技術的内容を知ったというだけでは,「公然」との要件を満たさないというべきである。なお,上記関係は,法律上又は契約上秘密保持義務を課せられた場合のほか,社会通念上又は商慣習上当事者間で当然に秘密にすることが求められ,かつ期待されている場合などにも生ずると解するのが相当である。
これを本件についてみると,平成10年当時,古橋が代表者を務める西部機販は,被請求人による生海苔異物分離除去装置の試験,開発に協力していたものであるところ(乙7,甲27),このような試験,開発中の生海苔異物分離除去装置について,「選別ケースの外周に共回り防止ゴムをつける」といった変更を施すことは,試験,開発段階の事項である上,当業者に広く知られた問題を解決し得る手段であるとの技術的な意味合いに照らせば,客観的にみて被請求人の営業秘密であることが被請求人及び西部機販にとって明らかである。
そうすると,被請求人及び西部機販の間に秘密保持義務についての明示的な合意がないとしても(なお,被請求人はあると主張している(乙7)。),両者は,この点について社会通念上又は商慣習上当事者間で当然に秘密とすることが求められ,かつ期待されている関係にあるというのが相当であるから,西部機販の代表者である古橋は,被請求人に対し,試験,開発内容について守秘義務を負うものと認められる。
よって,本件会議において本件装置が開示されたことにより,本件発明1及び3が公然知られた発明になったとは認められない。

(6) まとめ
以上のとおり,本件発明1及び3は,引用発明であるとは認められない。
仮に,本件会議において本件装置が開示されたとしても,本件発明1及び3は公然知られた発明であるとは認められない。
よって,本件発明1及び3は,特許法29条1項1号に該当するものではなく,その特許は同法123条1項2号に該当するものではない。

2 無効理由2(29条2項)について
請求人らは,本件発明1及び本件発明3は,本件会議において,本件文書が配布されたことによって,本件装置が開示されたことにより,本件特許の出願前に日本国内において公然知られた発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張している。
(1) 既に述べたとおり,本件会議において本件装置が開示されたものとは認められない。
そして,本件会議において開示された引用発明は,本件発明1及び3と相違するところがある(前記1(3),(4))。
この相違点についてみるに,各証拠をみても,引用発明において,本件発明1及び3の「共回り」(前記(2)イ(イ))に係る課題についての認識があるとは認められないから,この相違点に係る本件発明1及び3の構成とすることについて,動機付けは特段認められないとともに,本件発明1及び3は,この相違点に係る構成を備えることにより,既に述べたような効果を奏するものである(前記1(3),(4))。
よって,本件発明1及び3は,引用発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(2) また,既に述べたとおり,本件会議にて本件装置が開示されたとしても,本件装置に係る発明は公然知られた発明であるとは認められないから(前記1(5)),本件装置に係る発明を前提に,本件発明1及び3について,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるとすることはできない。

(3) まとめ
以上のとおり,本件発明1及び3は,引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
仮に,本件会議において本件装置が開示されたとしても,本件装置に係る発明が公然知られた発明であるとは認められない。
よって,本件発明1及び3は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものではなく,その特許は同法123条1項2号に該当するものではない。

第6 むすび
以上のとおりであるから,請求人の主張する無効理由1及び2はいずれも理由がなく,請求人の主張及び証拠方法によっては本件発明1及び3に係る特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については,特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-12-04 
結審通知日 2017-12-06 
審決日 2017-12-19 
出願番号 特願平10-165696
審決分類 P 1 123・ 121- Y (A23L)
P 1 123・ 111- Y (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山中 隆幸千葉 直紀三原 健治  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 莊司 英史
窪田 治彦
登録日 2007-06-08 
登録番号 特許第3966527号(P3966527)
発明の名称 生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置  
代理人 中尾 俊輔  
代理人 小南 明也  
代理人 伊藤 高英  
代理人 中尾 俊輔  
代理人 伊藤 高英  
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