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審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01F 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01F |
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管理番号 | 1344520 |
審判番号 | 不服2017-12866 |
総通号数 | 227 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-11-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-08-31 |
確定日 | 2018-09-20 |
事件の表示 | 特願2013- 80932「軟磁性扁平粉末およびこれを用いた磁性シート」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月27日出願公開、特開2014-204051〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年4月9日の出願であって、平成28年10月31日付け拒絶理由通知に対して同年12月22日付けで手続補正がなされたが、平成29年6月29日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年8月31日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされたものである。 第2 平成29年8月31日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成29年8月31日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正 平成29年8月31日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び明細書についてするもので、 本件補正前の特許請求の範囲(平成28年12月22日付け手続補正により補正された特許請求の範囲)が、 「【請求項1】 組成が質量%で、Feが84.0%以上96.0%以下、Siが3.0%以上8.5%以下、Alが5.4%超え13.0%以下よりなり、下記式(1)を満たし、かつ、アスペクト比が15以上であることを特徴とする軟磁性扁平粉末。 2Si%-Al%≦15.0 ・・・ 式(1) 【請求項2】 5.0%以下の範囲で、Feの一部をV、Cr、Mn、Co、Ni、Cuの1種以上の元素で置換したことを特徴とする請求項1に記載された軟磁性扁平粉末。 【請求項3】 請求項1または2に記載された軟磁性扁平粉末を含有することを特徴とする磁性シート。」 であったところ、 本件補正により、 「【請求項1】 組成が質量%で、Feが85.0%超96.0%以下、Siが3.0%以上8.5%以下、Alが5.4%超え13.0%以下、残部不可避的不純物よりなり、下記式(1)を満たし、かつ、アスペクト比が15以上、保磁力300A/m未満であることを特徴とする軟磁性扁平粉末。 2Si%-Al%≦15.0 ・・・ 式(1) 【請求項2】 5.0%以下の範囲で、Feの一部をV、Cr、Mn、Co、Ni、Cuの1種以上の元素で置換したことを特徴とする請求項1に記載された軟磁性扁平粉末。 【請求項3】 請求項1または2に記載された軟磁性扁平粉末を含有することを特徴とする磁性シート。」 と補正された。 2.補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1の「軟磁性扁平粉末」が「保磁力300A/m未満」であるという事項を追加する補正を含むものである。以下、この追加された事項(以下、「補正事項」という。)について検討する。 審判請求人は、審判請求書において、補正事項について、「明細書段落[0024]、[0025]および[0040]図6に関する記載に基づいて、「保磁力300A/m未満」を追加補正した。」と主張している。 しかし、本願明細書の段落【0039】には「磁性シートの保磁力を保磁力メータで測定した。」と記載されており、段落【0040】及び図7の保磁力は、軟磁性扁平粉末の保磁力ではなく、「磁性シートの保磁力」であると認められる。そして、磁性シートの保磁力と軟磁性扁平粉末の保磁力とが異なるものであることは明らかである。 してみると、図6及び図7を合わせて参照してみても、本願明細書の段落【0024】、【0025】及び【0040】には、磁性シートの保磁力を300A/m未満にすることが記載されているのみであり、軟磁性扁平粉末の保磁力を300A/m未満にすることは、記載も示唆もされていない。 したがって、補正事項は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものといえるから、明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成29年8月31日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年12月22日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。 「【請求項1】 組成が質量%で、Feが84.0%以上96.0%以下、Siが3.0%以上8.5%以下、Alが5.4%超え13.0%以下よりなり、下記式(1)を満たし、かつ、アスペクト比が15以上であることを特徴とする軟磁性扁平粉末。 2Si%-Al%≦15.0 ・・・ 式(1)」 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-152551号公報(以下、「引用例」という。)には、「磁気シールド用偏平状Fe基合金粉末」について、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。 ア.「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、各種の磁気記録装置や電子機器などを磁場や電磁波の悪影響から保護するための磁気シールド層や磁気シールドシートなどの形成に用いられる偏平状Fe基合金粉末に関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来、磁気シールド用偏平状Fe基合金粉末として、例えば特開平3-295206号公報に記載されるように、原子%で(以下、%は原子%を示す)、SiおよびAlの内の1種または2種:18?30%、Cr:19%以下(0を含まず)、を含有し、残りがFeと不可避不純物からなる組成を有し、かつX線回折で体心立方型結晶構造を示すものが知られている。また、上記従来の磁気シールド用偏平状Fe基合金粉末は、その他多くのものが、実用に際して、平均厚さ(以下、「d」で示す):0.02?0.6μm、粒度部分布計によって求められた粒径の小さい方から重量を累計して50%になったときの粒径(以下、「D_(50)」で示す):3?60μm、アスペクト比(D_(50)/d):20?500、の粒度に調整されて使用されることも良く知られるところである。」 イ.表2の記載によると、本発明粉末14は、成分組成が原子%で、Siが8.4%、Alが10.3%、Niが1.5%、Crが3.7%、Fe+不純物が残りであり、D_(50)/dが107である。 上記アないしイから、引用例には以下の事項が記載されている。 ・上記アによれば、磁気シールドシートの形成に用いられる偏平状Fe基合金粉末に関するものである。 ・上記イによれば、表2の本発明粉末14は、成分組成が原子%で、Siが8.4%、Alが10.3%、Niが1.5%、Crが3.7%、Fe+不純物が残りであり、D_(50)/dが107である。 ・上記アによれば、D_(50)/dは、アスペクト比である。 そうすると、表2の本発明粉末14に関して上記摘示事項を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「成分組成が原子%で、Siが8.4%、Alが10.3%、Niが1.5%、Crが3.7%、Fe+不純物が残りであり、アスペクト比であるD_(50)/dが107であり、磁気シールドシートの形成に用いられる偏平状Fe基合金粉末。」 3.対比・判断 そこで、本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「磁気シールドシートの形成に用いられる偏平状Fe基合金粉末」は、磁気シールドシートの形成に用いられるものであるから軟磁性であり、本願発明の「軟磁性扁平粉末」に相当する。 (2)引用発明の「成分組成が原子%で、Siが8.4%、Alが10.3%、Niが1.5%、Crが3.7%、Fe+不純物が残り」は、質量%で換算すると、「Siが4.7%、Alが5.5%、Niが1.8%、Crが3.8%、Feが84.2%」であるから、本願発明の「組成が質量%で、Feが84.0%以上96.0%以下、Siが3.0%以上8.5%以下、Alが5.4%超え13.0%以下よりなり、」に相当する。 (3)引用発明の質量%で換算された成分組成は、「Siが4.7%」、「Alが5.5%」であるから、2Si%-Al%を計算すると、2×4.7-5.5=3.9となり、本願発明の「2Si%-Al%≦15.0」を満たすものである。 (4)引用発明の「アスペクト比であるD_(50)/dが107」であることは、本願発明の「アスペクト比が15以上である」ことに相当する。 以上のとおり、本願発明と引用発明とは、次の点で一致し、相違点はない。 <一致点> 「組成が質量%で、Feが84.0%以上96.0%以下、Siが3.0%以上8.5%以下、Alが5.4%超え13.0%以下よりなり、下記式(1)を満たし、かつ、アスペクト比が15以上であることを特徴とする軟磁性扁平粉末。 2Si%-Al%≦15.0 ・・・ 式(1)」 なお、審判請求人は、平成28年12月22日付け意見書において、引用例に関して、「すなわち、Ni,Crを必須元素とし、特許請求の範囲の1部が記載上重複するかのように思われるが、しかし、現実的には実施例である段落[0014]?[0020]の表1?5に記載されている成分組成は、全てNi,Crが含有され」る旨を主張している。 しかし、本願発明は、「Fe」、「Si」、「Al」の質量%を規定しているものの、「Fe」、「Si」、「Al」以外の成分を有することを排除するものではないから、組成にNiやCrを有するものも含むものと認められる。 よって、意見書における上記主張を採用することはできない。 さらに、審判請求人は、平成28年12月22日付け意見書において、引用例に関して、「SiまたはAlの両者が含む成分組成については、Si含有成分が全て本願発明の範囲外であり、実質的に本願発明と引用文献1とは異なる成分組成である。」とも主張している。 しかし、引用発明は、SiとAlの両方を含むものであるから、意見書における上記主張を採用することはできない。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-07-20 |
結審通知日 | 2018-07-24 |
審決日 | 2018-08-06 |
出願番号 | 特願2013-80932(P2013-80932) |
審決分類 |
P
1
8・
561-
Z
(H01F)
P 1 8・ 113- Z (H01F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 久保田 昌晴 |
特許庁審判長 |
酒井 朋広 |
特許庁審判官 |
関谷 隆一 東 昌秋 |
発明の名称 | 軟磁性扁平粉末およびこれを用いた磁性シート |
代理人 | 特許業務法人 有古特許事務所 |