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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1344534
審判番号 不服2018-3439  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-09 
確定日 2018-09-20 
事件の表示 特願2016-229722「プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月 1日出願公開、特開2018- 32367〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成28年8月26日に出願した特願2016-165937号の一部を平成28年11月28日に新たな特許出願としたものであって、平成29年3月1日付けの拒絶理由通知に応答して、平成29年4月13日付けで意見書が提出され、平成29年7月12日付けの拒絶理由通知に応答して、平成29年9月8日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成29年11月27日付けで拒絶査定がなされた。これに対して、平成30年3月9日に拒絶査定不服審判が請求され、手続補正書が提出された。
そして、当審から平成30年4月12日付けで拒絶理由が通知され、平成30年6月1日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.平成30年4月12日付け拒絶理由通知の概要
「 2.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載について下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

(中略)

4.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由2(実施可能要件)について
・請求項1?9
・備考:
発明の詳細な説明は、本願請求項1?9に係る発明の「前記作動指示(「作動指示に基づいて通信可能な記録媒体の外観を撮像し」における「作動指示」)に基づいて、通信可能な携帯端末と前記記録媒体との通信によって前記記録媒体から第1情報を読み取」る点について、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。
「記録媒体」からの「第1情報」の「読み取」りについて、一般に「運転免許証」のようなICチップ内蔵カードからの情報の読み取りにあたってはパスワード入力が求められるところ、発明の詳細な説明では、「記録媒体」が「運転免許証」である例のみが記載され(段落番号0102)、そこでは、「作動指示」に対応する「作動指示ボタン520B」を押すことのみによって外観の写真撮影と運転免許証との通信が行われるとされており、パスワード入力をどのように行うかに係る技術的事項が記載されていない(むしろ、一般的な運転免許証のようなパスワード入力が求められるICチップ内蔵カードからの情報の読み取りのために用いることができない技術が記載されている)。他の段落をみても、この点の合理的な説明となる記載は見当たらない。
なお、審判請求理由において「引用発明」の「暗証番号入力」に係る構成が相違点である旨を前提として主張をしており、このことに鑑みても、一般的な運転免許証のようなICチップ内蔵カードからの情報の読み取りのためのパスワード入力をどのように行うのかは、明示を要しない事項であるといえない。

よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1?9に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
(中略)

●理由4(進歩性)について
・請求項1
・引用文献等:1?3
・備考:
請求項1記載の発明と、引用文献1記載の発明を対比すると以下の点で相違しその余の点で一致している。
(1)引用文献1には、運転免許証の挿入動作という1つの作動指示に基づいて、運転免許証の外観の撮像及び運転免許証との通信によって運転免許証から情報を読み取ることについて記載はない点。
(2)引用文献1の「マルチカードスキャナ3」は「携帯端末」でない点。

(中略)

引 用 文 献 等 一 覧

1.特開2012-203573号公報
2.特開2013-134684号公報
3.特開2003-132304号公報」

3.本願発明
本願請求項1に係る発明は、平成30年6月1日付けで手続補正書による補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。なお、下線は、補正箇所を示す。)
「【請求項1】
作動指示に基づいて通信可能な記録媒体の外観を撮像し、
前記作動指示に基づいて、通信可能な携帯端末と前記記録媒体との通信によって前記記録媒体から第1情報を読み取り、
前記外観に基づく外観情報および前記第1情報を、ネットワークを介してサーバに送信することを前記携帯端末に実行させるプログラム。」

4.当審の判断
(1)引用例
(1-1)当審の拒絶の理由に引用された、特開2012-203573号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審において付加したものである。)

(a)「【0026】
[口座開設申込システムの構成]
図1は、本実施形態に係る口座開設申込システムの構成を示す。図1に示すように、本実施形態の口座開設申込システムは、口座開設の申込者等が受付ブースにて使用する電子ペン1Aと、申込者等が窓口にて使用する電子ペン1Bと、受付ブースで申込者が使用する受付ブース用端末2Aと、窓口で窓口担当の行員が使用する窓口用端末2Bと、事務管理部門の行員が受付ブースや窓口での記入内容を確認するためのバックオフィス用端末2Cと、運転免許証を挿入することで運転免許証のIC情報や暗証番号、運転免許証画像を取得すマルチカードスキャナ3と、データ保存用サーバ4と、申込書7等を印刷するプリンター6と、口座開設に必要な事項を記入する申込書7と、を備える。受付ブース用端末2A、窓口用端末2B、バックオフィス用端末2C、データ保存用サーバ4、及びプリンター6は、有線または無線で接続している。また、受付ブース用端末2Aとマルチカードスキャナ3は、有線または無線で接続している。以下、各構成要素について具体的に説明する。
【0027】
(申込書)
まず、申込書(電子ペン用帳票)7について図2を参照して説明する。図2は、プリンター6により印刷された申込書7の上面の概略図を示す。図2に示すように、申込書7の上面は、名前や生年月日などの各種個人情報の記入項目に対応する記入欄が設けられた第1記入部71と、口座番号などの開設する口座に関する記入項目に対応する記入欄が設けられた第2記入部72とを有する。後述するように、申込者は、受付ブースにて電子ペン1Aにより第1記入部71の記入欄に必要な記入項目の記載を行う。また、申込者及び窓口担当者は、窓口にて電子ペン1Bにより第1記入部71及び第2記入部72の記入欄に必要な記入項目を記載する。これらの記入欄は、赤外域に吸収特性を持たないインクにより印刷される。」
(b)「【0029】
申込書7は、事前に印刷されていてもよく、受付ブース用端末2A、窓口用端末2B、バックオフィス用端末2Cからの印刷指示に基づき、任意のタイミングでプリンター6が印刷を行ってもよい。」
(c)「【0039】
(受付ブース用端末)
次に、受付ブース用端末2Aについて図8を参照して説明する。図8は、受付ブース用端末2A及びデータ保存用サーバ4の機能ブロック図である。概略的には、受付ブース用端末2Aは、申込者がタッチパネルなどによる画面の操作や運転免許証の暗証番号入力を行ったり、記入内容を確認したりするための端末である。また、受付ブース用端末2Aは、口座の開設に必要な本人確認記録書を作成し、プリンター6へ出力指示を行う。
【0040】
ここで、受付ブース用端末2Aは、ハードウェアとして、電子ペン1とのデータ通信が可能なアンテナ装置、CPU等のプロセッサ、ROMやRAMといったメモリ、ディスプレイ、マウスやキーボード等で構成されるパーソナルコンピュータ等で構成される。受付ブース用端末2Aは、機能的には、図8に示すように、マウス、キーボード、又は/及びタッチパネルなどの入力手段21、受信手段22、処理手段24、記憶手段25、表示手段26、送信手段27を備える。なお、後述するように、窓口用端末2B及びバックオフィス用端末2Cも、受付ブース用端末2Aと同様のハードウェア構成及び機能構成を有する。」
(d)「【0066】
図13は、ICカード化された運転免許証(IC運転免許証)がマルチカードスキャナ3に挿入された場合に表示される運転免許証の確認画面820Aの一例を示す。運転免許証の確認画面820Aは、マルチカードスキャナ3でスキャンした画像を確認し、暗証番号を入力して、本人確認資料を作成するための画面である。具体的には、運転免許証の確認画面820Aは、運転免許証画像821、822と、暗証番号1入力ボックス823と、暗証番号2入力ボックス824と、数字ボタン825と、訂正ボタン826と、確認ボタン827と、入力しないボタン828とを有する。
【0067】
運転免許証画像821は、マルチカードスキャナ3によりスキャンされた運転免許証の表面の画像である。運転免許証画像822は、マルチカードスキャナ3によりスキャンされた運転免許証の裏面の画像である。暗証番号1入力ボックス823は、運転免許証のICに登録された暗証番号1を入力するためのテキストボックスである。暗証番号2入力ボックス824は、運転免許証のICに登録された暗証番号2を入力するためのテキストボックスである。数字ボタン825は、暗証番号の数字を入力するためのボタンである。訂正ボタン826は、暗証番号1入力ボックス823又は暗証番号2入力ボックス824で入力された数字を1つずつ消去し、訂正するためのボタンである。
【0068】
確認ボタン827は、暗証番号1入力ボックス823又は/及び暗証番号2入力ボックス824に入力された暗証番号と、運転免許証のICから取得した暗証番号とを照合を開始するためのボタンである。確認ボタン827が選択された後、受付ブース用端末2Aは、暗証番号の照合結果に基づき、行員が申込者の本人確認を行うための資料である本人確認資料を作成し、バックオフィスにあるプリンター6に当該本人確認資料を印刷させる。このとき、受付ブース用端末2Aは、IC運転免許証に記憶されたIC情報を用いて本人確認資料を作成してもよい。入力しないボタン828は、暗証番号を入力しない場合に選択されるボタンである。入力しないボタン828が選択された場合、受付ブース用端末2Aは、暗証番号の確認がされていない場合に相当する本人確認資料を作成し、バックオフィスにあるプリンター6に当該本人確認資料を印刷させる。また、受付ブース用端末2Aは、運転免許証の提示があった旨の情報をデータ保存用サーバ4へ送信し、データベース5に申込データとして記憶させる。
【0069】
図14は、ICカード化されていない運転免許証(非IC運転免許証)がマルチカードスキャナ3に挿入された場合に受付ブース用端末2Aに表示される運転免許証の確認画面820Bの一例を示す。図14に示すように、運転免許証の確認画面820Bは、運転免許証画像821、822と、確認ボタン827とを有する。そして、受付ブース用端末2Aは、確認ボタン827が選択された場合、非IC運転免許証が確認された場合に対応する本人確認資料を作成し、バックオフィスにあるプリンター6に当該本人確認資料を印刷させる。また、受付ブース用端末2Aは、運転免許証の提示があった旨の情報をデータ保存用サーバ4へ送信し、データベース5に申込データとして記憶させる。」
(e)「【0121】
(変形例8)
受付ブース用端末2Aは、マルチカードスキャナ3を介して運転免許証のICに格納されたIC情報を読み取った場合、当該IC情報を、申込書7への記入項目の一部に反映させて、申込者が電子ペン1Aにより記載すべき記入項目を削減してもよい。具体的には、この場合、受付ブース用端末2Aは、図16?図18に示す申込書記入ナビゲーション画面840の各記入欄に、IC情報から読み取った対応する情報を表示すると共に、当該記入欄の項目名を、未記入項目一覧リスト842から削除する。また、受付ブース用端末2Aは、当該IC情報をデータ保存用サーバ4に送信し、申込データとしてデータベース5に記憶させる。」
(f)「【0123】
(変形例10)
図1に示す口座開設申込システムの構成は一例であり、本発明が適用可能な構成は、これに限定されない。例えば、これに代えて、バックオフィス用端末2Cとデータ保存用サーバ4とは、1台の端末装置により実現されてもよい。」

(g)以上の記載によれば、引用例1の受付ブース端末2Aは、コンピュータであり、プログラムで稼働することは明らかである。

以上のことから、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「電子ペン1A及び1B、受付ブース用端末2A、窓口用端末2B、バックオフィス用端末2C、マルチカードスキャナ3、データ保存用サーバ4、およびバックオフィスにあるプリンタ6(【0068】)、事前に又は受付ブース用端末2A、窓口用端末2B、バックオフィス用端末2Cからの印刷指示に基づき印刷されたものであり(【0029】)申込書7とを備え(【0027】)、そのうち、受付ブース用端末2A、窓口用端末2B、バックオフィス用端末2C、データ保存用サーバ4、およびプリンタは有線または無線で接続したものである、口座開設申込みシステム(【0026】、【図1】)であって、
マルチカードスキャナ3と有線または無線で接続し(【0026】)、口座の開設に必要な本人確認記録書を作成してプリンター6へ出力指示を行うものである(【0039】)、受付ブース用端末2Aのプロセッサ(【0040】)において、
申込手続き開始画面で画面へのタッチを検出した場合に表示される運転免許証の挿入画面において運転免許証ボタンが選択された場合に、マルチカードスキャナ3に運転免許証を挿入すべき旨を表示した画面を表示し、その後、マルチカードスキャナ3に運転免許証が挿入されたことを検知すると、ICカード化された運転免許証(IC運転免許証)がマルチカードスキャナに挿入された場合の運転免許証の確認画面(【0066】-【0068】、【図13】、以下「IC運転免許証の確認画面」)又はICカード化されていない運転免許証(非IC運転免許証)がマルチカードスキャナ3に挿入された場合の運転免許証の確認画面(【0069】、【図14】、以下「非IC運転免許証の確認画面)を表示し、
このうち、IC運転免許証の確認画面は、本人確認資料を作成するための画面であって、マルチカードスキャナ3によりスキャンされた運転免許証の表面及び裏面の画像、暗証番号1入力ボックス、暗証番号2入力ボックス、数字ボタン、訂正ボタン、確認ボタン、入力しないボタンを有するものであり、
この確認ボタンが選択された後、入力された暗証番号と運転免許証のICから取得した暗証番号の照合結果に基づき、本人確認資料を作成し、プリンター6に印刷させ、このとき、IC免許証に記憶されたIC情報を用いて本人確認資料を作成してもよく、運転免許証の提示があった旨の情報をデータ保存用サーバ4へ送信し、データベース5に申込データとして記憶させ、
また、非IC運転免許証の確認画面は、マルチカードスキャナ3によりスキャンされた運転免許証の表面及び裏面の画像と確認ボタンを有するものであり、確認ボタンが選択された場合、本人確認資料を作成し、プリンター6に印刷させ、運転免許証の提示があった旨の情報をデータ保存用サーバ4へ送信し、データベース5に申込データとして記憶させる、
ことを実行させるプログラム。」

(1-2)当審の拒絶の理由に引用された、特開2013-134684号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審において付加したものである。)

(a)「【0022】
端末操作者は交通違反の反則金納付手続きを開始するにあたり、運転免許証13を読取部103に挿入する(S101)。
【0023】
読取部103は、運転免許証13のICチップに格納された免許証番号1050を読み取るとともに、運転免許証13表面に印刷された免許証顔写真1051をスキャンする。免許証記録入力部105は、免許証番号1050と免許証顔写真1051を格納する(S102)。」

以上の記載によれば、引用例2には次のことが記載されている。

「運転免許証の挿入によって、運転免許証ICチップに格納された免許証番号を読み取るとともに、免許証の顔写真をスキャンすること。」(以下、「引用例2の記載事項」という。)

(1-3)当審の拒絶の理由に引用された、特開2003-132304号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審において付加したものである。)

(a)「【0007】また、証明用媒体認証装置は、人物の少なくとも顔画像およびそれに対応する個人情報が表面に印刷され、かつ、少なくとも前記顔画像が記憶媒体に記憶されることにより発行された、前記記憶媒体を備えた証明用媒体を受入れ、この受入れた証明用媒体の表面から前記顔画像を読取る第1の読取手段と、前記受入れた証明用媒体の記憶媒体から前記顔画像を読取る第2の読取手段と、前記第1の読取手段により証明用媒体の表面から読取られた顔画像と前記第2の読取手段により証明用媒体の記憶媒体から読取られた顔画像とを照合することにより当該証明用媒体の真偽を判定する判定手段とを具備している。」
(b)「【0017】次に、本実施の形態に係る証明用媒体認証装置について説明する。図3は、本実施の形態に係る証明用媒体認証装置の外観構成を概略的に示すものである。図3において、証明用媒体認証装置31は、前述したように発行されたIDカード21の認証を行なうもので、たとえば、ハンディタイプとして形成されており、前面にIDカード21を挿入セットするカード挿入部32が形成され、背面にタッチパネル付き液晶表示部33が設けられている。」
(c)「【0020】次に、このような構成においてIDカードの認証処理について図5に示すフローチャートを参照して説明する。まず、認証を受けようとするIDカード所持者は、所持するIDカード21を認証者へ提示する。認証者は、この提示されたIDカード21を受取って、その表面に印刷されている顔画像23とIDカード所持者の顔とを見比べて、両者が一致するかを確認する。一致していれば、そのIDカード21をカード挿入部32に挿入セットし、液晶表示部33に表示されているスタートボタンを押下することにより、CPU38は、認証処理をスタートさせ、ラインセンサ36および読取部35の各読取動作を開始させる(ステップS11)。
【0021】ラインセンサ36は、セットされたIDカード21表面の顔画像23の部分を読取走査し、その読取データをサンプリングパターン作成部37へ送る。また、読取部35は、セットされたIDカード21のメモリチップ25から顔画像のサンプリングパターンを読出し、CPU38へ送る(ステップS12)。」

以上の記載によれば、引用例3には次のことが記載されている。

「IDカード21を挿入し、スタートボタンを押下することで、ラインセンサ36および読み取り部35を動作させ、IDカード21表面の顔写真を読み出し、読み取り部35はメモリチップ21から顔画像を読み出すこと。」(以下、「引用例3の記載事項1」という。)
「証明用媒体認証装置31がハンディタイプであること。」(以下、「引用例3の記載事項2」という。)

(2)対比
次に、本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「IC運転免許証」は、本願発明の「通信可能な」ものである「記録媒体」に相当する。

引用発明の、マルチカードスキャナ3と有線または無線で接続された「受付ブース用端末2A」は、携帯端末ではないものの、プログラムを実行する通信可能な端末である点で、本願発明の「携帯端末」に対応するものである。
そして、引用発明においては、マルチカードスキャナ3に運転免許証を挿入すべき旨を表示した画面を見た者が自身の「記録媒体(IC運転免許証)」をマルチカードスキャナ3に挿入し、この「記録媒体(IC運転免許証)」の挿入が検知されて、その後のマルチカードスキャナ3における「記録媒体(IC運転免許証)」の外観のスキャンによる確認画面に表示される運転免許証の画像の取得が行われるところ、このような「記録媒体(IC運転免許証)」の挿入は、端末及びこれに接続されたマルチカードスキャナ3にこのような画像の取得を行わせるための作動指示でもあるから、本願発明の「作動指示」に相当する。
さらに、引用発明の「スキャン」は、本願発明の「撮像」に相当し、引用発明における、作動指示が検知されてマルチカードスキャナ3における「記録媒体(IC運転免許証)」の外観のスキャンによる確認画面に表示される運転免許証の画像の取得を行うことは、本願発明の「作動指示に基づいて、通信可能な記録媒体の外観を撮像する」ことに相当し、取得された「画像」は、本願発明の「外観に基づく外観情報」に相当する。

引用発明は、この外観情報と「IC免許証に記憶されたIC情報」を含む「本人確認資料」を作成するものであるところ、引用発明の本人確認資料の作成に用いられる「IC免許証に記憶されたIC情報」は、「記録媒体(IC運転免許証)」に記憶されたものが読み取られて作成に用いられることになるから、本願発明の「第1情報」に相当しており、さらに、引用発明の端末は、暗証番号の照合のために「記録媒体(IC運転免許証)」からの情報の読み取りのための通信が可能なものであり、読取りが前記作動指示(前記媒体の外観を撮像するための作動指示)に基づくものではないものの、「端末と前記記録媒体との通信によって前記記録媒体から第1情報を読み取」るものである点において、本願発明と共通している。
そして、引用発明は、外観情報と第1情報を含む本人確認資料を有線又は無線の接続を通じてバックオフィスのプリンタ6に送信して印刷するものであるから、送信先がプリンタ6であってサーバと明示されていない点を除き、「前記外観に基づく外観情報及び前記第1情報をネットワークを介して」「送信する」点でも、本願発明と共通している。

そうすると、本願発明と引用発明は、
[一致点]
「作動指示に基づいて通信可能な記録媒体の外観を撮像し、
通信可能な端末と前記記録媒体との通信によって前記記録媒体から第1情報を読み取り、
前記外観に基づく外観情報および前記第1情報を、ネットワークを介して送信することを前記端末に実行させるプログラム。」である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
(相違点1)
記録媒体からの第1情報の読み取りが、本願発明では、「前記作動指示に基づいて」、つまり、記録媒体の外観の撮像の際の作動指示に基づいてなされるのに対し、引用発明では、暗証番号の入力がなされた後になされ、「前記作動指示に基づいて」なされるのではない点。
(相違点2)
端末が、本願発明では、「携帯端末」であるのに対し、引用発明では、マルチカードスキャナ3と接続された受付ブース用端末2Aであって、携帯端末ではない点。
(相違点3)
外観に基づく外観情報及び第1情報の送信先が、本願発明では、「サーバ」であるのに対し、引用発明では、「プリンタ6」である点

(3)当審の判断
(相違点1について)
記録媒体からの情報の読み取りを、記録媒体の外観の撮像の際の作動指示に基づいて行うことは、(1-2)で上述した引用例2の記載事項や(1-3)で上述した引用例3の記載事項1にあるように、周知技術である。
そして、引用発明も、記録媒体の外観の撮像と記録媒体からの情報の読み取りを行うものであるから、そのための構成として上記周知技術を採用し、記録媒体からの情報の読み取りを、記録媒体の外観の撮像の際の作動指示に基づいて行うようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

なお、請求人は、平成30年6月1日付けの意見書において引用発明への引用例2及び引用例3それぞれに記載された発明の適用が阻害される旨主張するが、引用発明への上記周知技術の適用ができない旨の主張となっておらず、拒絶理由に対する反論になっていない。また、引用発明がIC運転免許証からの情報の読み出しのための暗証入力を行うものであるとしても、これを記憶媒体の外観の撮像と記録媒体からの情報の読みとりの間に行う必要は必ずしもないから、このことは、上記周知技術の適用を阻害する事由にならない。さらに、2に上述した当審拒絶理由通知においても示したように、本願明細書の発明の詳細な説明においては、本願発明に対応する記載(特に第3実施形態に係る記載)において、「記録媒体」が「運転免許証」である例のみを記載しているにもかかわらずIC運転免許証からの情報の読み出しのための暗証番号入力をどのように行うかに係る技術的事項を記載していない。このことから、引用発明がIC運転免許証からの情報の読み出しのための暗証入力を行うものであることにより容易想到というための論理づけが阻害される旨の主張は、本願明細書の記載内容に即した主張とならず、採用の余地がないものである。

(相違点2について)
撮像機能を含む携帯端末は周知であり、認証用の記憶媒体の外観の撮像を行う機能を含む携帯端末についても、(1-3)で上述した引用例3の記載事項2にあるように、周知である。
そして、引用発明の「受付ブース用端末装置2A」は、システムの他の構成と「無線」で接続されるものであり得るから、受付ブース用とはいえ、一定の位置に固定されたものに限定されていない。
してみると、引用発明のマルチカードスキャナ3と接続された受付ブース用端末2Aを、周知の撮像機能を含む携帯端末により構成することは、当業者が適宜なし得たことである。

(相違点3について)
本願発明の「サーバ」は、サーバである以上何らかの資源を共有するものであるものの、どのような資源を共有するものであるかを特定していないところ、引用例1の【0027】の記載によれば、引用発明の「プリンタ6」は、受付ブース用端末2A、窓口用端末2B、バックオフィス用端末2Cにより共有され、プリンタサーバとしての機能を有するものである。してみると、この点は、実質的な相違点ではない。
また、引用発明においては、データ保存用サーバ4へ送信してデータベース5に申込データとして記憶させられるのは「運転免許証の提示があった旨の情報」にとどまるものの、この「運転免許証の提示」はそもそも本人確認のためのものであるから、「運転免許証の提示があった旨の情報」として外観情報と第1情報を含む本人確認資料をもデータベースへの記憶すべくデータ保存用サーバ4へ送信するようにすることは、適宜なし得たことである。

そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明、引用例2及び引用例3の作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(4)まとめ
してみると、本願発明は、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、請求項1に係る発明は、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
 
審理終結日 2018-07-23 
結審通知日 2018-07-24 
審決日 2018-08-06 
出願番号 特願2016-229722(P2016-229722)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 雅士  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 石川 正二
相崎 裕恒
発明の名称 プログラム  
代理人 特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ  

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