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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 F02B
管理番号 1344552
審判番号 不服2017-16635  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-08 
確定日 2018-09-27 
事件の表示 特願2015-557887「ユニフロー掃気式2サイクルエンジン」拒絶査定不服審判事件〔平成27年7月23日国際公開、WO2015/108144〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)1月16日(優先権主張 2014年1月17日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成29年2月24日付けで拒絶理由が通知され、平成29年5月8日に意見書が提出されるとともに、特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたが、平成29年7月31日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成29年11月8日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成29年5月8日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】
内部に燃焼室が形成されるシリンダと、
前記シリンダ内を摺動するピストンと、
前記シリンダにおける前記ピストンのストローク方向一端側に設けられた排気ポートと、
前記排気ポートを開閉する第1排気弁と、
前記排気ポートに連通し、前記シリンダ内の燃焼作用で生成された排気ガスが前記排気ポートから導かれる排気流路と、
前記排気流路内に設けられ、前記排気流路の開度を可変とする第2排気弁と、
前記第1排気弁を開いた後、前記第2排気弁の開度を小さくするように、前記第1排気弁および前記第2排気弁を制御する制御部と、を備えるユニフロー掃気式2サイクルエンジン。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものを含むものである。

引用文献 特開2003-138943号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献の記載
引用文献には、図面とともに、次の事項が記載されている。なお、下線は、当審で付した。

(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、二サイクル内燃機関のうちユニフロー型の二サイクル内燃機関に関するものである。
【0002】
【従来の技術】この種のユニフロー型二サイクル内燃機関は、従来から良く知られているように、クランク軸に連動して往復動するピストンを内蔵したシリンダの頂部に、クランク軸に同期しして同じ速度で回転するカム軸で開閉作動されるポペット排気弁を設ける一方、前記シリンダの下部に、前記ピストンにおける下死点付近の往復動にて開閉される掃気ポートをシリンダ内に開口するように設け、前記シリンダ内における排気ガスを、前記掃気ポートからシリンダ内に導入される吸気によって前記ポペット排気弁から押し出すように構成している。」

(2)「【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図1?図3の図面について説明する。
【0021】この図において、符号1は、圧縮着火式のユニフロー型二サイクル内燃機関におけるシリンダブロックを示し、このシリンダブロック1には、図示しないクランク軸に連動して往復動するピストン3を内蔵したシリンダ2を備えており、前記ピストン3の頂面には、燃焼室4が凹み形成されている。
【0022】一方、前記シリンダブロック1の上面には、シリンダヘッド5が、前記シリンダ2の頂部を塞ぐように締結されており、このシリンダヘッド5には、ポペット排気弁6と燃料噴射弁7とが、平面視において前記シリンダ2のほぼ中心の部位にのぞむように設けられている。
【0023】前記シリンダ2の下部には、複数個の掃気ポート8が穿設され、この各掃気ポート8は、前記ピストン3の往復動により、普通の二サイクル内燃機関の場合と同様に、当該ピストン3における下死点前の時期A(クランク角度で下死点前約45度の付近)から下死点後の時期B(クランク角度で下死点後約45度の付近)までの期間L1を開くように構成されている。
【0024】なお、前記各掃気ポート8における内底面8aは、ピストン3が下死点にあるときその頂面3aと一致している。
【0025】また、前記ポペット排気弁6は、前記クランク軸に連動する等して、クランク軸に同期して同じ速度で回転する排気弁用カム軸9により、前記クランク軸、ひいては、当該排気弁用カム軸9の一回転中に一回だけ開くように構成され、更にまた、シリンダ2内には、前記ピストン3の上死点前後付近の時期において燃料が燃料噴射弁7より噴射され、この燃料は、圧縮着火で爆発燃焼するように構成されている。
【0026】また、符号10は、排気タービン10aにブロワー型の圧縮機10bを直結して成る排気ターボ過給機を示し、この排気ターボ過給機10の排気タービン10aにおける排気ガス入り口には、前記ポペット排気弁6からの排気通路11が、排気タービン10aにおける排気ガス出口には、大気中への排気管12が各々接続され、また、前記圧縮機10bの吸い込み側には、エアクリーナ13からの大気空気吸い込み管路14が、更にまた、前記圧縮機10bにおける吐出口には、前記各掃気ポート8の外側を囲うチャンバー15への圧縮吸気管路16が各々接続されている。
【0027】一方、前記ポペット排気弁6からの排気通路11の途中には、第2排気弁としての一つの実施形態であるところのロータリ弁17が設けられ、このロータリ弁17は、前記排気弁用カム軸9からの歯車対18,19を介しての回転伝達により、クランク軸に同期し同じ速度で回転するように構成され、更に、このロータリ弁17には、前記クランク軸、ひいては、当該ロータリ弁17における一回転中のうち、一回だけ前記排気通路11を連通するように開くための通路17aが凹み形成されている。
【0028】この場合、アクセル開度をほぼ一杯にしての負荷の高い運転域において、前記ロータリ弁17にて排気通路11を、通常の二サイクル内燃機関におけるポペット排気弁と同様に、ピストン3における下死点前の時期C(クランク角度で下死点前約70度の付近)から下死点後の時期D(クランク角度で下死点後約30?60度の付近)までの期間L2(クランク角度でほぼ100?130度の期間)を開くように設定する一方、前記ポペット排気弁6を、ピストン3における下死点前の時期E(クランク角度で下死点前約70度の付近)から下死点後の時期F(クランク角度で下死点後約90度の付近)までの期間L3(クランク角度でほぼ160度の期間)を開くように設定する。
【0029】すなわち、前記ポペット排気弁6における開期間L3を、ほぼ160度にするというように大きくする一方、前記ロータリ弁17における開期間L2を、前記ポペット排気弁6における開期間L3内においてこれよりも狭い、通常の二サイクル内燃機関におけるポペット排気弁と同様に、ほぼ100?130度にする。
【0030】前記ロータリ弁17が閉じる時期Dは、掃気ポート8からの過給の効果を重視する場合には、下死点後約30度に、掃気効果を重視する場合には、下死点後約60度にする。
【0031】なお、前記ポペット排気弁6における開時期Eと、前記ロータリ弁16における開時期Cとは、ほぼ同じ時期に設定している。
【0032】また、前記排気弁用カム軸9と、前記クランク軸から当該カム軸9への動力伝達輪20との間には、位相可変手段21が設けられ、この位相可変手段21により、クランク軸に対する前記ポペット排気弁6の開閉のタイミングを、アクセル開度、ひいては、負荷に応じこれに反比例して、回転方向に対して前側に相対的に進み変位するように構成されている。
【0033】なお、前記位相可変手段21としては、例えば、特開平4-109007号公報、特開平8-210158号公報及び特開平8-218823号公報等に記載されている従来公知の油圧式バルブタイミング機構等を使用する。」

(3)「【0034】この構成において、シリンダ2内における爆発によるピストン3の下降動の途中においてポペット排気弁6及びロータリ弁17が開くことにより、シリンダ2内の排気ガスは、排気通路11を介して排気ターボ過給機10における排気タービン10aに流出して、排気ターボ過給機10を駆動する一方、この排気ターボ過給機10の駆動によりその圧縮機10bで圧縮された吸気は、各掃気ポート8の外側を囲うチャンバー15に送られてここに蓄えられ、そして、ピストン3の下降動にて各掃気ポート8が開いた瞬間、前記チャンバー15に蓄えられた圧縮吸気が各掃気ポート8よりシリンダ2内に勢い良く導入され、この勢いの良い圧縮吸気の押し込みにより前記シリンダ2内の掃気が行われる。
【0035】そして、前記シリンダ2内からの排気ガスの排気通路11を介しての排出は、当該排気通路11におけるポペット排気弁6及びロータリ弁17の両方が共に開いているときに行われ、この場合、前記ロータリ弁17における開期間L2は、前記ポペット排気弁6における開期間L3内においてこれよりも狭い期間に設定されていることにより、前記排気ガスの排出は、前記ポペット排気弁6にて制御されることなく、専ら、前記ロータリ弁17にて制御されることになるから、前記ポペット排気弁6は、圧縮行程及び爆発行程において、シリンダ内の圧力を逃がすことがなく且つこの圧力に耐えるように閉じるという構成のみで良いことになる。
【0036】これにより、排気弁用カム軸9の一回転のうち前記ポペット排気弁6を開き作動する角度、つまり、開作動角度θを、ポペット排気弁6における開期間L3(クランク角度でほぼ160度)にするように大きくできて、この排気弁用カム軸のカム9aにおけるカムプロフィールの立ち上がり勾配を緩やかにすることができるから、前記ポペット排気弁6における排気弁用カム軸9の回転数に対する開閉作動の追従性を大幅に向上できる。
【0037】また、前記ポペット排気弁6における開期間L3と、ロータリ弁17における開期間L2とは、アクセル開度をほぼ一杯にしての高負荷の運転域においては、図3に実線で示す位置にあるが、アクセル開度を中くらいしての中負荷の運転域においては、前記位相可変手段21により、図3に一点鎖線で示すように、アクセル開度をほぼ一杯にしたときよりもΔθ1だけ進むように変位し、また、アクセル開度を小さくしての低負荷の運転域においては、前記位相可変手段21により、図3に一点鎖線で示すように、アクセル開度をほぼ一杯にしたときよりも更に大きくΔθ2だけ進むように変位する。
【0038】これにより、ロータリ弁17における開時期C及びポペット排気弁6における開時期Eを、負荷の低い運転域において、C′,E′,C″,E″にと次第に進ませて、シリンダ2内の排気ガスの排気を開始する時期を早めることができるから、負荷の低い運転域において、排気ターボ過給機10に対して、高い温度の排気ガス、つまり、大きい排気エネルギーを有する排気ガスを供給することができ、排気ターボ過給機10の作動が負荷の低い運転域において低下すること確実に回避できる。
【0039】なお、前記実施の形態は、シリンダ2内に、ヒストン3の上死点前の時期において燃料を燃料噴射弁7より噴射供給し、この燃料を、圧縮着火する場合であったが、本発明は、この圧縮着火式の二サイクル内燃機関に限らず、図1に二点鎖線で示すように設けた点火栓22による火花点火式の二サイクル内燃機関に対しても同様に適用できることはいうまでもない。
【0040】また、圧縮着火及び火花点火のいずれの場合においても、ロータリ弁17の閉時期Dの付近において、シリンダ2内に燃料を追加して供給することにより、排気ガスの温度を高くなるから、排気タービン10aの効率をアップすることができる。」

(4)上記(2)の段落【0021】の「符号1は、圧縮着火式のユニフロー型二サイクル内燃機関におけるシリンダブロックを示し、このシリンダブロック1には、図示しないクランク軸に連動して往復動するピストン3を内蔵したシリンダ2を備えており、前記ピストン3の頂面には、燃焼室4が凹み形成されている」という記載及び図1の記載から、引用文献には、内部に燃焼室4が形成されるシリンダ2と、前記シリンダ2内を摺動するピストン3とを備えるユニフロー掃気式2サイクルエンジンが記載されていることが分かる。

(5)上記(2)の段落【0022】の「一方、前記シリンダブロック1の上面には、シリンダヘッド5が、前記シリンダ2の頂部を塞ぐように締結されており、このシリンダヘッド5には、ポペット排気弁6と燃料噴射弁7とが、平面視において前記シリンダ2のほぼ中心の部位にのぞむように設けられている。」という記載、段落【0027】の「一方、前記ポペット排気弁6からの排気通路11の途中には、第2排気弁としての一つの実施形態であるところのロータリ弁17が設けられ、このロータリ弁17は、前記排気弁用カム軸9からの歯車対18,19を介しての回転伝達により、クランク軸に同期し同じ速度で回転するように構成され、更に、このロータリ弁17には、前記クランク軸、ひいては、当該ロータリ弁17における一回転中のうち、一回だけ前記排気通路11を連通するように開くための通路17aが凹み形成されている。」という記載及び図1の記載から、引用文献に記載されたユニフロー掃気式2サイクルエンジンには、排気通路11の入口を開閉するポペット排気弁6が設けられていることが分かる。また、段落【0027】の上記記載から、前記ポペット排気弁6からの排気通路11の途中には、第2排気弁としてのロータリ弁17が設けられ、当該ロータリ弁17における一回転中のうち、一回だけ前記排気通路11を連通するように開くための通路17aが凹み形成されていることが分かる。

(6)上記(2)の段落【0028】の「この場合、アクセル開度をほぼ一杯にしての負荷の高い運転域において、・・・」という記載、段落【0031】の「なお、前記ポペット排気弁6における開時期Eと、前記ロータリ弁16における開時期Cとは、ほぼ同じ時期に設定している。」という記載、上記(3)の段落【0038】の「これにより、ロータリ弁17における開時期C及びポペット排気弁6における開時期Eを、負荷の低い運転域において、C′,E′,C″,E″にと次第に進ませて、シリンダ2内の排気ガスの排気を開始する時期を早めることができる」という記載及び図3の記載から、ポペット排気弁6における開時期は図3のE(高負荷時)、E′(中負荷時)、E″(低負荷時)であり、ロータリ弁17における開時期は図3のC(高負荷時)、C′(中負荷時)、C″(低負荷時)であることが分かる。

(7)上記(2)の段落【0028】の「この場合、アクセル開度をほぼ一杯にしての負荷の高い運転域において、前記ロータリ弁17にて排気通路11を、通常の二サイクル内燃機関におけるポペット排気弁と同様に、ピストン3における下死点前の時期C(クランク角度で下死点前約70度の付近)から下死点後の時期D(クランク角度で下死点後約30?60度の付近)までの期間L2(クランク角度でほぼ100?130度の期間)を開くように設定する一方、前記ポペット排気弁6を、ピストン3における下死点前の時期E(クランク角度で下死点前約70度の付近)から下死点後の時期F(クランク角度で下死点後約90度の付近)までの期間L3(クランク角度でほぼ160度の期間)を開くように設定する。」という記載及び図3の記載から、ロータリ弁17は、高負荷時にはクランク角度180度(下死点)から(下死点後の時期Dまで、)開度を次第に小さくすることが分かる。同様に、中負荷時にはクランク角度150度付近から開度を次第に小さくし、低負荷時にはクランク角度120度付近から開度を次第に小さくすることが分かる。そして、いずれの場合においても、ポペット排気弁6の開時期E(高負荷時)、E′(中負荷時)、E″(低負荷時)の後に、ロータリ弁17の開度を小さくする制御を行っていることが分かる。

(8)上記(3)の段落【0037】の「また、前記ポペット排気弁6における開期間L3と、ロータリ弁17における開期間L2とは、アクセル開度をほぼ一杯にしての高負荷の運転域においては、図3に実線で示す位置にあるが、アクセル開度を中くらいしての中負荷の運転域においては、前記位相可変手段21により、図3に一点鎖線で示すように、アクセル開度をほぼ一杯にしたときよりもΔθ1だけ進むように変位し、また、アクセル開度を小さくしての低負荷の運転域においては、前記位相可変手段21により、図3に一点鎖線で示すように、アクセル開度をほぼ一杯にしたときよりも更に大きくΔθ2だけ進むように変位する。」という記載から、ポペット排気弁6における開期間L3と、ロータリ弁17における開期間L2とは、位相可変手段21により変位することが分かる。すなわち、ロータリ弁17における開期間L2は、位相可変手段21を含む制御手段により制御されることが分かる。

2 引用発明
上記1の記載並びに図面の記載を総合すると、引用文献には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

<引用発明>
「内部に燃焼室4が形成されるシリンダ2と、
前記シリンダ2内を摺動するピストン3と、
前記シリンダ2における前記ピストン3のストローク方向一端側に設けられた排気通路11の入口と、
前記排気通路11の入口を開閉するポペット排気弁6と、
前記排気通路11の入口に連通し、前記シリンダ2内の燃焼作用で生成された排気ガスが前記排気通路11の入口から導かれる排気通路11と、
前記排気通路11内に設けられ、前記排気通路11を開閉するロータリ弁17と、
前記ポペット排気弁6の開時期の後に、前記ロータリ弁17の開度を小さくするように、前記ポペット排気弁6および前記ロータリ弁17を制御する位相可変手段21を含む制御手段と、を備えるユニフロー掃気式2サイクルエンジン。」

第5 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「燃焼室4」は、その機能、構造、又は技術的意義からみて、本願発明における「燃焼室」に相当し、以下同様に、「シリンダ2」は「シリンダ」に、「ピストン3」は「ピストン」に、「排気通路11の入口」は「排気ポート」に、「ポペット排気弁6」は「第1排気弁」に、「排気通路11」は「排気流路」に、「ロータリ弁17」は「第2排気弁」に、それぞれ相当する。
また、引用発明のロータリ弁17について、段落【0027】の記載と図1の記載とをあわせみると、ロータリ弁17はその回転につれて排気通路11の開口面積を変化させるものであるから、排気通路11の開度を可変とするものであるということができる。また、本願発明における「排気流路の開度を可変とする第2排気弁」について、本願の請求項1には、「第2排気弁の開度を小さくする」ことが特定されるにとどまる。これらからみて、引用発明における「排気通路11を開閉するロータリ弁17」は、本願発明における「排気流路の開度を可変とする第2排気弁」に相当する。
また、本願発明における「第1排気弁の開いた後」とは、本願明細書の段落【0052】及び図4Aに記載される「t1」の後であるから、引用発明における「ポペット排気弁6の開時期の後に」は、本願発明における「第1排気弁を開いた後」に相当する。
また、本願発明における「第2排気弁の開度を小さくする」時期は、本願明細書の段落【0052】及び図4Aに記載されるt2であるから、引用発明における「ロータリ弁17の開度を小さくする」時期(高負荷時にはクランク角度180度、中負荷時にはクランク角度150度付近、低負荷時にはクランク角度120度付近)に相当し、したがって、引用発明における「ロータリ弁17の開度を小さくする」は、本願発明における「第2排気弁の開度を小さくする」に相当する。
また、引用発明における「位相可変手段21を含む制御手段」は、その機能、構造、又は技術的意義からみて、本願発明における「制御部」に相当する。

以上のことから、本願発明と引用発明とは、
「内部に燃焼室が形成されるシリンダと、
前記シリンダ内を摺動するピストンと、
前記シリンダにおける前記ピストンのストローク方向一端側に設けられた排気ポートと、
前記排気ポートを開閉する第1排気弁と、
前記排気ポートに連通し、前記シリンダ内の燃焼作用で生成された排気ガスが前記排気ポートから導かれる排気流路と、
前記排気流路内に設けられ、前記排気流路の開度を可変とする第2排気弁と、
前記第1排気弁を開いた後、前記第2排気弁の開度を小さくするように、前記第1排気弁および前記第2排気弁を制御する制御部と、を備えるユニフロー掃気式2サイクルエンジン。」
という点で一致し、相違点はない。

なお、請求人は、審判請求書において、「これに対し、本願発明は、本願の出願当初明細書の段落0045?0049及び図4A等に記載されているように、第1排気弁を開いた後に、第2排気弁の開度を小さくする制御を行うものである。すなわち、第1排気弁を開いた後に、一時的に第2排気弁を全開状態から開度を小さく(排気ガスの通過流量を少なく)し、さらに再び全開状態とする。このような構成により、第1排気弁開弁中に、排気ガスの流速を低下させ、排気ポートから燃料ガスが吹き抜けることを防止している。したがって、第2排気弁は第1排気弁が開弁する時点で開放状態であり、また、第1排気弁の開弁後に、第2排気弁を閉弁することはない。」と主張している。
しかしながら、本願の請求項1に係る発明は、「一時的に第2排気弁を全開状態から開度を小さく(排気ガスの通過流量を少なく)し、さらに再び全開状態とする」ことも、「第2排気弁は第1排気弁が開弁する時点で開放状態であり、また、第1排気弁の開弁後に、第2排気弁を閉弁することはない。」ことも、「燃料ガス」を用いることも、発明特定事項として特定していない。
また、本願明細書の段落【0058】ないし【0061】及び図面の【図4B】に記載された実施形態においては、第1排気弁の開弁後に、第2排気弁144を完全に閉じている(特に段落【0060】を参照。)から、「第1排気弁の開弁後に、第2排気弁を閉弁することはない。」という請求人の主張に反するものである。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-07-25 
結審通知日 2018-07-31 
審決日 2018-08-16 
出願番号 特願2015-557887(P2015-557887)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (F02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齊藤 彬津田 健嗣  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 金澤 俊郎
粟倉 裕二
発明の名称 ユニフロー掃気式2サイクルエンジン  
代理人 高橋 久典  
代理人 寺本 光生  
代理人 清水 雄一郎  
代理人 西澤 和純  

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