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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1344569
審判番号 不服2017-18194  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-07 
確定日 2018-10-16 
事件の表示 特願2012-196427「光学フィルム、光学フィルム用転写体、画像表示装置及び光学フィルムの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月20日出願公開,特開2014- 52497,請求項の数(8)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件拒絶査定不服審判事件に係る出願(以下,「本件出願」という。)は,平成24年9月6日の出願であって,平成28年3月25日付けで拒絶理由が通知され,同年5月27日に意見書及び手続補正書が提出され,同年10月31日付けで拒絶理由が通知され,同年12月22日に意見書及び手続補正書が提出され,平成29年5月8日付けで拒絶理由が通知され,同年7月5日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年9月29日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がなされたものである。
本件拒絶査定不服審判は,これを不服として,同年12月7日に請求されたものであって,本件審判の請求と同時に手続補正書が提出された。

第2 本件出願の請求項1ないし8に係る発明
本件出願の請求項1ないし8に係る発明は,平成29年12月7日提出の手続補正書によって補正された請求項1ないし8に記載された事項によって特定されるものと認められるところ,当該請求項1ないし8の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
透明フィルムによる基材と,
直線偏光板としての機能を担う直線偏光板の光学機能層と,
円偏光板としての機能を担う円偏光板の光学機能層とが光の透過方向に沿って積層されており,
前記円偏光板の光学機能層が,透過光に1/2波長分の位相差を付与する1/2波長板用位相差層と,透過光に1/4波長分の位相差を付与する1/4波長板用位相差層と,前記1/2波長板用位相差層及び前記1/4波長板用位相差層間に設けられた配向層とを少なくとも有する多層構造であり,
前記1/2波長板用位相差層及び前記1/4波長板用位相差層は,位相差層形成樹脂を硬化した物であり,
前記配向層は,配向層形成樹脂を硬化した物であり,
前記位相差層形成樹脂及び前記配向層形成樹脂は,フッ素化合物が添加されており,
前記配向層を形成する前記配向層形成樹脂に添加されるフッ素化合物の濃度は,前記1/2波長板用位相差層を形成する前記位相差層形成樹脂に添加されるフッ素化合物の濃度以上であり,
前記配向層を形成する前記配向層形成樹脂に添加されるフッ素化合物の濃度は,前記1/4波長板用位相差層を形成する前記位相差層形成樹脂に添加されるフッ素化合物の濃度以下であり,
前記配向層を形成する前記配向層形成樹脂と,前記1/2波長板用位相差層を形成する前記位相差層形成樹脂と,前記1/4波長板用位相差層を形成する前記位相差層形成樹脂とは,いずれも,添加されるフッ素化合物の濃度が0.3%以下であること,
を特徴とする光学フィルム。
【請求項2】
前記位相差層形成樹脂及び前記配向層形成樹脂に添加されるフッ素化合物は同一の化合物であること,
を特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
透過光に1/2波長分の位相差を付与する1/2波長板用位相差層と,透過光に1/4波長分の位相差を付与する1/4波長板用位相差層と,前記1/2波長板用位相差層及び前記1/4波長板用位相差層間に設けられた配向層とが光の透過方向に沿って積層された多層構造による転写層と,
前記転写層を保持する支持体とを備え,
前記1/2波長板用位相差層及び前記1/4波長板用位相差層は,位相差層形成樹脂を硬化した物であり,
前記配向層は,配向層形成樹脂を硬化した物であり,
前記位相差層形成樹脂及び前記配向層形成樹脂は,フッ素化合物が添加されており,
前記配向層を形成する前記配向層形成樹脂に添加されるフッ素化合物の濃度は,前記1/2波長板用位相差層を形成する前記位相差層形成樹脂に添加されるフッ素化合物の濃度以上であり,
前記配向層を形成する前記配向層形成樹脂に添加されるフッ素化合物の濃度は,前記1/4波長板用位相差層を形成する前記位相差層形成樹脂に添加されるフッ素化合物の濃度以下であり,
前記配向層を形成する前記配向層形成樹脂と,前記1/2波長板用位相差層を形成する前記位相差層形成樹脂と,前記1/4波長板用位相差層を形成する前記位相差層形成樹脂とは,いずれも,添加されるフッ素化合物の濃度が0.3%以下であること,
を特徴とする光学フィルム用転写体。
【請求項4】
前記位相差層形成樹脂及び前記配向層形成樹脂に添加されるフッ素化合物は同一の化合物であること,
を特徴とする請求項3に記載の光学フィルム用転写体。
【請求項5】
前記支持体は,セパレータフィルムであり,
前記転写層は,前記支持体により被覆される粘着層を備えること,
を特徴とする請求項3又は請求項4に記載の光学フィルム用転写体。
【請求項6】
透明フィルムによる基材と,
直線偏光板としての機能を担う直線偏光板の光学機能層と,
円偏光板としての機能を担う円偏光板の光学機能層とが積層され,
前記円偏光板の光学機能層は,前記直線偏光板の光学機能層の上に,請求項3又は請求項4に記載の光学フィルム用転写体に設けられた前記転写層であること,
を特徴とする光学フィルム。
【請求項7】
請求項1及び請求項2及び請求項6のいずれか1項に記載の光学フィルムを配置したこと,
を特徴とする画像表示装置。
【請求項8】
透過光に1/2波長分の位相差を付与する1/2波長板用位相差層と,透過光に1/4波長分の位相差を付与する1/4波長板用位相差層と,前記1/2波長板用位相差層及び前記1/4波長板用位相差層間に設けられた配向層とが光の透過方向に沿って積層された多層構造による転写層を,前記転写層を保持する支持体上に形成する転写体の製造工程と,
透明基材に,直線偏光板としての機能を担う直線偏光板の光学機能層を形成する直線偏光板の製造工程と,
前記直線偏光板の光学機能層に,前記転写体の製造工程で生産した前記支持体上の転写層を転写する転写工程とを備え,
前記転写体の製造工程は,前記1/2波長板用位相差層及び前記1/4波長板用位相差層を,フッ素化合物が添加された位相差層形成樹脂を硬化させることによって形成し,前記配向層を,フッ素化合物が添加された配向層形成樹脂を硬化させることによって形成し,
前記配向層を形成する前記配向層形成樹脂に添加されるフッ素化合物の濃度は,前記1/2波長板用位相差層を形成する前記位相差層形成樹脂に添加されるフッ素化合物の濃度以上であり,
前記配向層を形成する前記配向層形成樹脂に添加されるフッ素化合物の濃度は,前記1/4波長板用位相差層を形成する前記位相差層形成樹脂に添加されるフッ素化合物の濃度以下であり,
前記配向層を形成する前記配向層形成樹脂と,前記1/2波長板用位相差層を形成する前記位相差層形成樹脂と,前記1/4波長板用位相差層を形成する前記位相差層形成樹脂とは,いずれも,添加されるフッ素化合物の濃度が0.3%以下であること,
を特徴とする光学フィルムの製造方法。」(以下,請求項1ないし8に係る発明をそれぞれ「本件発明1」ないし「本件発明8」という。)


第3 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は,概略次のとおりである。

本件出願の請求項1ないし8(審決注:平成29年7月5日提出の手続補正書による補正後の請求項1ないし8である。)に係る発明は,引用文献1に記載された発明及び引用文献4や引用文献5等に示される周知技術に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:国際公開第2011/007784号
引用文献4:特開2000-75154号公報
引用文献5:特開2002-90559号公報


第4 原査定の拒絶の理由についての判断
1 引用例
(1)引用文献1
ア 引用文献1の記載
引用文献1は,本件出願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであるところ,当該引用文献1には次の記載がある。(下線は,後述する引用発明の認定に特に関係する箇所を示す。)
(ア) 「技術分野
[0001] 本発明は,積層体の製造方法及び積層体に関する。
背景技術
[0002] 積層体の製造方法及び積層体に関しては,いくつかの技術が開示されている。
[0003] 例えば,特開2004-226752(特許文献1)には,(1)配向基板上に形成された液晶配向が固定化された液晶物質層1を,接着剤層1を介して再剥離性基板1と接着せしめた後,配向基板を剥離して液晶物質層1を再剥離性基板1に転写し,再剥離性基板1/接着剤層1/液晶物質層1からなる積層体(A)を得る第1工程,(2)積層体(A)と同様にして再剥離性基板2上に液晶物質層2を転写し,再剥離性基板2/接着剤層2/液晶物質層2からなる積層体(B)を得る第2工程,(3)前記積層体(A)と積層体(B)を粘・接着剤層を介して貼り合わせ,再剥離性基板1/接着剤層1/液晶物質層1/粘着剤(接着剤)層/液晶物質層2/接着剤層2/再剥離性基板2からなる積層体を得る第3工程,および(4)前記積層体の再剥離性基板1および再剥離性基板2を剥離し,接着剤層1または接着剤層2に偏光板を貼合する第4工程,の各工程を少なくとも経ることを特徴とする光学積層体の製造方法,前記製造方法で得られた光学積層体からなることを特徴とする楕円偏光板または円偏光板などが,開示されている。
・・・(中略)・・・
発明が解決しようとする課題
[0008] 前記特許文献1に記載の液晶層を有する積層体の製造方法は,多数の工程を有する煩雑な方法であり,より簡便な製造方法が求められている。本発明の第一の目的は,新規な積層体の製造方法を提供することである。
[0009] また,液晶層を有する積層体として,より高い光学特性を有する積層体もまた求められる。本発明の第二の目的は,高い光学特性を有する新規な積層体を提供することである。
課題を解決するための手段
[0010] 本発明は以下の発明を提供する。
[0011] [1]第一の透明樹脂層,第一の高分子液晶層,第二の透明樹脂層,および第二の高分子液晶層を含む積層体の製造方法において,
(1)液晶配向性を有するモールド面に接した第一の硬化性樹脂の層を形成し,該モールド面に接した状態で前記第一の硬化性樹脂を硬化させて透明樹脂とし,次いで,モールドを剥離してモールド表面の転写により形成された液晶配向性を有する面(a)を有する前記第一の透明樹脂層を形成すること,
(2)前記第一の透明樹脂層の面(a)上に液晶性モノマーの層を形成して該液晶性モノマーを配向させ,液晶性モノマーが配向した状態で該液晶性モノマーを重合することにより,または,前記第一の透明樹脂層の面(a)上に架橋性高分子液晶の層を形成して該架橋性高分子液晶を配向させ,架橋性高分子液晶が配向した状態で該架橋性高分子液晶を架橋することにより,前記第一の高分子液晶層を形成すること,
(3)前記第一の高分子液晶層の側に第二の硬化性樹脂の層を形成し,該第二の硬化性樹脂の層の表面に,液晶配向性を有するモールド面を,当該モールド面の転写により形成される液晶配向方向が前記面(a)の液晶配向方向と異なるように接触させ,該モールド面に接した状態で前記第二の硬化性樹脂を硬化させて透明樹脂とし,次いで,モールドを剥離してモールド表面の転写により形成された液晶配向性を有する面(b)を有する前記第二の透明樹脂層を形成すること,および,
(4)前記第二の透明樹脂層の面(b)上に液晶性モノマーの層を形成して該液晶性モノマーを配向させ,液晶性モノマーが配向した状態で該液晶性モノマーを重合することにより,または,前記第二の透明樹脂層の面(b)上に架橋性高分子液晶の層を形成して該架橋性高分子液晶を配向させ,架橋性高分子液晶が配向した状態で該架橋性高分子液晶を架橋することにより,前記第二の高分子液晶層を形成すること,を特徴とする積層体の製造方法。
[0012] [2]第一の透明樹脂層,第一の高分子液晶層,第二の透明樹脂層,および第二の高分子液晶層を含む積層体であり,前記第一の透明樹脂層は,前記第一の高分子液晶層に接する面(a)を有し,該面(a)はモールド表面の転写により形成された液晶配向性を有する面であり,前記第一の高分子液晶層は,前記面(a)に接して配向された液晶性モノマーの重合または前記面(a)に接して配向された架橋性高分子液晶の架橋により形成された高分子液晶層であり,前記第二の透明樹脂層は,前記第一の高分子液晶層の前記面(a)に接していない面の側に設けられ,前記第二の高分子液晶層に接する面(b)を有し,該面(b)はモールド表面の転写により形成された液晶配向性を有する面であり,前記第二の高分子液晶層は,前記面(b)に接して配向された液晶性モノマーの重合または前記面(b)に接して配向された架橋性高分子液晶の架橋により形成された高分子液晶層であり,前記第一の高分子液晶層と前記第二の高分子液晶層の高分子液晶の配向方向が異なることを特徴とする,積層体。
発明の効果
[0013]・・・(中略)・・・また,本発明の積層体は,高分子液晶層の光学特性の角度依存性が少ない,波長特性の優れた積層体である。さらに,耐溶剤性や耐水性等の化学的,機械的耐久性に優れた積層体である。
本発明の積層体は,波長板として使用できる。この波長板は,広い波長範囲において広帯域波長板として利用できる。」

(イ) 「発明を実施するための形態
[0015] 次に,本発明のいくつかの実施形態を,添付する図面を参照して説明することにする。
・・・(中略)・・・
[0017] 本発明の製造方法においては,まず,[1]液晶配向性を有するモールド面に接した第一の硬化性樹脂の層を形成し,該モールド面に接した状態で前記第一の硬化性樹脂を硬化させて透明樹脂とし,次いで,モールドを剥離してモールド表面の転写により形成された液晶配向性を有する面(a)を有する前記第一の透明樹脂層を形成する。
・・・(中略)・・・
[0019] 液晶配向性を有するモールド面に接した第一の硬化性樹脂の層を形成するには,たとえば,図1(a)に示すように,支持基板11の片側の表面に,第一の硬化性樹脂の層12を形成する。・・・(中略)・・・
[0020] 第一の硬化性樹脂は,光硬化性樹脂であることが好ましく,付加重合性不飽和基を有する化合物(例えば,官能性の紫外線硬化性化合物。以下,光重合性化合物と記載する。)および光重合開始剤を含む組成物であることが好ましい。・・・(中略)・・・
[0034] さらに,第一の硬化性樹脂は,界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤を含むことによって,モールドを透明樹脂層12から剥離することが容易となる。
[0035] 界面活性剤は,・・・(中略)・・・より好ましくは,フルオロアルキル基を有する化合物を含む。・・・(中略)・・・
[0036] 硬化性樹脂に含まれる界面活性剤の量は,モールドの透明樹脂層からの剥離性及び透明樹脂層の表面への重合性液晶性材料溶液の塗布性によって決定される。一般的には,硬化性樹脂に含まれる界面活性剤の量を増加させると,モールドの透明樹脂層からの剥離性は改善される。一方,界面活性剤が透明樹脂層の樹脂と完全に相溶しなかったり,透明樹脂層の表面に塗布された重合性液晶性材料溶液がはじかれたりすることがある。また,透明樹脂層と高分子液晶層13との密着性が低下する場合がある。硬化性樹脂に界面活性剤が全く存在しないか,量が少ない場合には,透明樹脂層の表面に対する重合性液晶性材料溶液の塗布性にあまり問題はない。一方,モールドを透明樹脂層12から剥離することが困難になることがある。
界面活性剤の量は,光重合性モノマーや重合性液晶性材料の種類にもよるが,光重合性モノマーと光重合開始剤との合計量に対して1?3質量%が好ましい。
・・・(中略)・・・
[0038] 次に,図1(b)に示すように,第一の硬化性樹脂の層12に,液晶を配向させるための所望のパターンの反転パターンを有するようにモールド18を押し当てる。・・・(中略)・・・
[0041] 次に,第一の硬化性樹脂の層12にモールド18を押し当てた状態を保持したまま,第一の硬化性樹脂を硬化させて第一の透明樹脂とする。第一の透明樹脂層は光学的に等方な層である。・・・(中略)・・・
[0048] 次に,第一の透明層12’からモールド18を剥離することによって,図1(c)に示すように,液晶配向性を有する面(a)を有する第一の透明樹脂層12’を支持基板11上に得る。・・・(中略)・・・
[0051] 本発明においては,つぎに,[2]前記第一の透明樹脂層の面(a)上に液晶性モノマーの層を形成して該液晶性モノマーを配向させ,液晶性モノマーが配向した状態で該液晶性モノマーを重合することにより,または,前記第一の透明樹脂層の面(a)上に架橋性高分子液晶の層を形成して該架橋性高分子液晶を配向させ,架橋性高分子液晶が配向した状態で該架橋性高分子液晶を架橋することにより,前記第一の高分子液晶層を形成する。
[0052] まず,図1(d)に示すように,第一の透明樹脂の層12’に,重合性液晶性材料やその溶液を塗布し,重合性液晶性材料の層14を形成する。
・・・(中略)・・・
[0066] 重合性液晶性材料は,重合開始剤および界面活性剤を含むことができる。重合開始剤として,硬化性樹脂での光重合開始剤と同様の材料を用いることができる。界面活性剤は,後述のように,重合性液晶性材料が透明樹脂層12’の面に沿って配向することに寄与する。界面活性剤として,硬化性樹脂での界面活性剤と同様の材料を用いることができる。重合性液晶性材料に含まれる界面活性剤の量は,重合性液晶性材料の配向を適切に制御する範囲とされる。
・・・(中略)・・・
[0068] つぎに,重合性液晶性材料層中の重合性液晶性材料のメソゲンを配向させる。例えば,重合性液晶性材料を加熱し,液晶温度範囲に保持することで,液晶性モノマーまたは架橋性基を有する高分子液晶のメソゲンが,第一の方向に配向する。このとき,大気と重合性液晶性材料間に界面活性剤が介在することで,液晶性モノマーまたは架橋性基を有する高分子液晶のメソゲンが,透明樹脂層12’の面に対して水平に配向し易くなる。
[0069] つぎに,重合性液晶性材料のメソゲンが配向した状態を保ったまま重合性液晶性材料を重合硬化または架橋させて高分子液晶層14’を得る。・・・(中略)・・・
[0070] つぎに,[3]前記第一の高分子液晶層の側に第二の硬化性樹脂の層を形成し,該第二の硬化性樹脂の層の表面に,液晶を配向させるためのパターンの反転パターンを表面に有するモールドを,当該モールドの転写により形成される液晶配向方向が前記面(a)の液晶配向方向と異なるように接触させ,該モールド面に接した状態で前記第二の硬化性樹脂を硬化させて透明樹脂とし,次いで,モールドを剥離してモールド表面の転写により形成された液晶配向性を有する面(b)を有する前記第二の透明樹脂層を形成する。
[0071] 図1(e)に示すように,第一の高分子液晶層14’の表面に,第二の硬化性樹脂を塗布して,第二の硬化性樹脂の層15を形成する。第二の硬化性樹脂の層は,前記第一の硬化性樹脂と同様の材料を用いて同様の手法にて形成できる。・・・(中略)・・・なお,第一の重合性液晶性材料が界面活性剤を含み,かつ,前記のように,配向方向の制御のために加熱等の処理を行うと,第一の高分子液晶層14’の表面に界面活性剤が偏在する場合がある。この場合,第一の高分子液晶層14’の表面をフッ素系溶媒等の溶媒で洗浄することにより,第一の高分子液晶層14’表面に対する第二の硬化性樹脂の塗布性および密着性が改善される。
[0072] 次に,図1(f)に示すように,第二の硬化性樹脂の層15に,所望のパターンの反転のパターンを有するモールド18を押し当てて,第二の硬化性樹脂の層15に高分子液晶を第二の方向に配向させるための第二のパターン16を形成する。・・・(中略)・・・
[0074] 次に,第二の硬化性樹脂層15にモールド18を押し当てた状態を保持したまま,第二の硬化性樹脂層15に紫外線を照射し,第二の硬化性樹脂を硬化させて,光学的に等方な第二の透明樹脂層15’を得る。
[0075] 次に,第二の透明樹脂層15’からモールド18を剥離することによって,図1(g)に示すように,高分子液晶を第二の方向に配向させるための第二のパターン16を有する第二の透明樹脂層15’を第一の高分子液晶層14’上に得る。・・・(中略)・・・
[0076] つぎに,[4]前記第二の透明樹脂層の面(b)上に液晶性モノマーの層を形成して該液晶性モノマーを配向させ,液晶性モノマーが配向した状態で該液晶性モノマーを重合することにより,または,前記第二の透明樹脂層の面(b)上に架橋性高分子液晶の層を形成して該架橋性高分子液晶を配向させ,架橋性高分子液晶が配向した状態で該架橋性高分子液晶を架橋することにより,前記第二の高分子液晶層を形成する。
[0077] 図1(h)に示すように,第二の透明樹脂層15'に第二の重合性液晶性材料の溶液を塗布し,第二の透明樹脂層層15'に重合性液晶性材料の層17を形成する。・・・(中略)・・・ここで,第二の重合性液晶性材料としては,前記第一の重合性液晶性材と同様のものが使用でき,好ましい態様も同様である。第一の重合性液晶性材料と第二の重合性液晶性材料とは,同じ材料であっても異なる材料であってもよく,リタデーション値の温度依存性が抑えられるため,同じであるほうが好ましい。・・・(中略)・・・
[0078] この後,必要に応じて図(i)に示すように,第一の透明樹脂層12’から支持基板11を剥離してもよい。支持基板11がない場合は,屈曲がより容易でありながら自立するフィルムとしての積層体が得られる。
・・・(中略)・・・
[0083] 図2は,本発明の積層体の例を概略的に説明する図である。図2に示す積層体(液晶フィルム20)は,第一の透明樹脂層21,前記透明樹脂層21に設けられた第一の高分子液晶層23,前記高分子液晶層23に設けられた第二の透明樹脂層24,及び前記透明樹脂層24に設けられた第二の高分子液晶層26を含む。
液晶フィルム20においては,第一の透明樹脂21は,第一の高分子液晶層23の側において,第一の方向に高分子液晶のメソゲンを配向させるための第一のパターン22を備えた面(面(a))を有する。また,第二の透明樹脂層24は,第二の高分子液晶層26の側において,第一の方向と異なる第二の方向に高分子液晶のメソゲンを配向させるための第二のパターン25を備えた面(面(b))を有する。
[0084] 積層体10は,波長板(例えば,1/2波長板,1/4波長板)として機能し,光の偏光状態の変換(例えば,直線偏光(円偏光)から円偏光(直線偏光)への変換)が可能である。
[0085] 第一の高分子液晶層23,第二の高分子液晶層26は,それぞれ第一の方向,第二の方向を軸とする光学異方性を有し,それぞれ波長板として機能する。複数の波長板を積層することで,波長板の広帯域化が図られる。その結果,例えば,約400nm(青色)から約800nm(赤色)までの広い波長範囲において,直線偏光(円偏光)を円偏光(直線偏光)に変換することが可能となる。一例として,リタデーションが(a)1/4波長(λ/4)の一軸配向性基材11と,1/2波長(λ/2)の高分子液晶層13の組み合わせ,または(b)λ/2の一軸配向性基材11と,λ/4の高分子液晶層13の組み合わせにより,広帯域の1/4波長板を得ることができる。」

(ウ) 「[0089] [実施例]
次に,本発明の実施例を具体的に説明することにする。
・・・(中略)・・・
[0099] [合成例4]架橋性高分子液晶(B-2)の合成例
合成例2で得られた高分子液晶(B-1)を用いて,下記の化学反応式(3)に従って,架橋型高分子液晶(B-2)を得た。
[0100][化3]

・・・(中略)・・・
[0103]・・・(中略)・・・
[高分子液晶溶液の調製例]
以下の調製例において,重合開始剤としてはチバスペシャリティーケミカルズ社製のイルガキュアー127(商品名)を用い,界面活性剤としてはセイミケミカル社製のS420(商品番号)を用いた。
・・・(中略)・・・
[0106] なお,表3中のシクロヘキサノン,重合開始剤,および界面活性剤の量は,いずれも架橋性高分子液晶100質量部に対する量である。
[0107] [調製例2-1]
同様に,表3に示す割合に従って,架橋性高分子液晶溶液(b-21)を調製した。ここで,架橋性高分子液晶溶液(b-21)には,架橋性高分子液晶(B-2)の100質量部に対して0.2質量部の界面活性剤も添加した。界面活性剤は,架橋性高分子液晶のメソゲンの水平配向を制御するために用いられる。
[0108] [調製例2-2]
表3に示す割合に従い,シクロヘキサノンを325質量部とする以外は,調製例2-1と同様にして,架橋性高分子液晶溶液(b-22)を得た。
・・・(中略)・・・
[0112][表3]

[0113]・・・(中略)・・・
[光硬化性樹脂の調製]
[調製例3]
・・・(中略)・・・
[0114] [調製例4]
撹拌機及び冷却管を装着した300mLの4つ口フラスコに,70gのトリシクロデカンジメタノールジアクリラート(新中村化学工業社製,NK エステル A-DCP),30gのネオペンチルグリコールジアクリラート(新中村化学工業社製,NK エステル A-NPG),5.0gの光重合開始剤2(チバスペシャリティーケミカルズ社製,IRGACURE184),1.0gの重合禁止剤1,及び1.5gの界面活性剤(セイミケミカル社製,S420)を投入した。フラスコの内部を常温に保ち,遮光した状態で,1時間撹拌して,光硬化性樹脂2を得た。光硬化性樹脂2の粘度は,50mPa・秒であった。
[0115] [例1]
下記の工程[a],[b],及び[c]を順次に行うことによって,ガラス基板上に,透明樹脂層及び水平配向した高分子液晶層を有する液晶単層積層体1を得た。
[0116] [a]紫外線硬化性樹脂層の作製
ガラス基板の表面に,光硬化性樹脂2をスピンコート法により塗布して,紫外線硬化性樹脂層を作製した。
[0117] [b]透明樹脂層1の作製
[a]で得られた紫外線硬化性樹脂層の表面に,ラビング処理したポリイミド付ガラス基板(EHC社製水平配向処理基板)を押圧した。本工程[b]においては,[a]のガラス基板の辺が,水平配向処理基板のラビング方向と略平行になるように,[a]のガラス基板に対する水平配向処理基板の配置を調整した。つぎに,紫外線硬化性樹脂層の表面に水平配向処理基板を押圧した状態を保ったまま,室温で紫外線硬化性樹脂層に700mJの強度の紫外線を照射することによって,紫外線硬化性樹脂層を硬化させた。つぎに,前記水平配向処理基板を,硬化した紫外線硬化性樹脂層から剥離することによって,水平配向処理基板のラビング溝が転写された透明樹脂層1を作製した。透明樹脂層1の膜厚は8.7μmであった。
[0118] [c]高分子液晶層1の作製
架橋性高分子液晶溶液(a-21)を透明樹脂層1の上にスピンコート法により塗布し,50℃で10分間乾燥し,つぎに100℃で3分間保持することによって,架橋性高分子液晶溶液(a-21)に含まれる架橋性高分子液晶(A-2)のメソゲンの配向処理を行った。この配向処理を行うことによって,架橋性高分子液晶(A-2)のメソゲンが透明樹脂層1の上で[a]のガラス基板の表面に対して水平に配向した。
[0119] その後,窒素雰囲気下,60℃で照度260mW/cm^(2)の紫外線を5分間照射して,架橋性高分子液晶(A-2)の光重合(架橋)を行うことによって,架橋した高分子液晶層1を作製した。
[0120] このように,工程[a],[b],及び[c]の操作を行うことによって,ガラス基板上に,透明樹脂層1,水平配向した高分子液晶層1がこの順序で積層された液晶単層積層体1を得た。
[0121] [例2]
工程[a]において,光硬化性樹脂2をガラス基板上へスピンコートし,80℃で5分間乾燥させることによってトルエンを除去し,紫外線硬化樹脂層を作製したことを除いては,例1と同様にして液晶単層積層体2を作製した。
・・・(中略)・・・
[0124] [例1]?[例4]で得られた液晶単層積層体の膜厚,リタデーション値,ヘーズ値などを表5に示す。
[0125][表5]

[例5]
例1で得られた液晶単層積層体1を用いて,下記の工程[d]及び[e]を順次に行うことによって,液晶複層積層体1を得た。
[0126] [d]配向制御層2の作製
液晶単層積層体1の高分子液晶層1上へ,例1と同様にして光硬化性樹脂2を塗布して,紫外線硬化性樹脂層を作製した。つぎに,高分子液晶層1上に作製した紫外線硬化性樹脂層の表面に,ラビング処理したポリイミド付ガラス基板(EHC社製水平配向処理基板)を押圧した。この際,工程[b]において透明樹脂層1に形成した溝の方向に対するポリイミド付ガラス基板のラビング溝の方向のなす角度(以下,積層軸の角度ともいう)が60°であるように,液晶単層積層体1に対するポリイミド付ガラス基板の配置を調整した。高分子液晶層1上に作製した紫外線硬化性樹脂層にポリイミド付ガラス基板を押圧した状態を保ったまま,室温で紫外線硬化性樹脂層に700mJの紫外線を照射することによって,紫外線硬化性樹脂層を硬化させた。つぎに,硬化した紫外線硬化性樹脂層からポリイミド付ガラス基板を剥離することによって,ポリイミド付ガラス基板のラビング溝が転写された透明樹脂層2を作製した。透明樹脂層2の厚さは8.5μmであった。
[0127] [e]高分子液晶層2の作製
工程[d]で得られた透明樹脂2の上に,架橋性高分子液晶溶液(a-22)をスピンコート法によって塗布し,50℃で10分間乾燥した後に100℃で3分間保持することによって,架橋性高分子液晶溶液(a-22)に含まれる架橋性高分子液晶(A-2)のメソゲンを[a]のガラス基板の表面に対して水平に配向させた。
[0128] その後,窒素雰囲気下,60℃で照度260mW/cm^(2)の紫外線を5分間照射して,架橋性高分子液晶(A-2)の架橋を行うことによって,高分子液晶層2を作製した。
[0129] 工程[a],[b]及び[c]に加えて以上の工程[d]及び[e]を実行したことによって,工程[a]のガラス基板上に,透明樹脂層1,水平配向した高分子液晶層1,透明樹脂層2,水平配向した高分子液晶層2がこの順序で積層された液晶複層積層体1を得た。
[0130] つぎに,液晶複層積層体1から工程[a]のガラス基板を剥離することによって,液晶ポリマー積層フィルム1を得た。
[0131] [例6]
液晶単層積層体1を例2で得られた液晶単層積層体2に変更し,表6に示す材料を用いる以外は,例5に示す方法と同様にして液晶ポリマー積層フィルム2を作製した。
・・・(中略)・・・
[0134] [例5]?[例8]で得られた液晶ポリマー積層フィルムの厚さ,リタデーション値,ヘーズ値等を表7に示す。
[0135][表6]

[広帯域波長板としての評価]
例5?例8でそれぞれ得られた液晶ポリマー積層フィルム1?4の,450nm,550nm,及び650nmの波長におけるリタデーション値及び楕円率を測定した。結果を表7に示す。
[0136][表7]

その結果,450?650nmの波長における液晶ポリマー積層フィルム1?4の楕円率が0.85以上であり,液晶ポリマー積層フィルム1?4は,広帯域四分の一波長板として機能することが確認された。」

イ 引用文献1に記載された発明
前記アで摘記した記載から,引用文献1に,例6で得られた液晶ポリマー積層フィルム2として,次の発明が記載されていると認められる。(なお,混乱を避けるため,ガラス基板上に形成した紫外線硬化性樹脂層を「第1紫外線硬化性樹脂層」と,高分子液晶層1上に形成した紫外線硬化性樹脂層を「第2紫外線硬化性樹脂層」と表現した。)

「下記[調製例4]により得られた光硬化性樹脂2をガラス基板上へスピンコートし,80℃で5分間乾燥させることによってトルエンを除去し,第1紫外線硬化樹脂層を作製し,前記第1紫外線硬化性樹脂層の表面に,ラビング処理したポリイミド付ガラス基板であるEHC社製水平配向処理基板を,前記ガラス基板の辺が前記水平配向処理基板のラビング方向と略平行になるように配置を調整して,押圧し,室温で700mJの強度の紫外線を照射することによって,前記第1紫外線硬化性樹脂層を硬化させ,前記水平配向処理基板を,硬化した前記第1紫外線硬化性樹脂層から剥離することによって,前記水平配向処理基板のラビング溝が転写された膜厚が9.0μmの透明樹脂層1を作製し,
下記[調製例2-1]により得られた架橋性高分子液晶溶液(b-21)を前記透明樹脂層1の上にスピンコート法により塗布し,50℃で10分間乾燥し,100℃で3分間保持することによって,前記架橋性高分子液晶溶液(b-21)に含まれる架橋性高分子液晶(B-2)のメソゲンを前記ガラス基板の表面に対して水平に配向させ,その後,窒素雰囲気下,60℃で照度260mW/cm^(2)の紫外線を5分間照射して,前記架橋性高分子液晶(B-2)の架橋を行うことによって,膜厚が0.90μmの高分子液晶層1を作製し,
前記高分子液晶層1上へ,前記透明樹脂層1を作製するときと同様にして前記光硬化性樹脂2を塗布して,第2紫外線硬化性樹脂層を作製し,前記第2紫外線硬化性樹脂層の表面に,ラビング処理したポリイミド付ガラス基板であるEHC社製水平配向処理基板を,前記透明樹脂層1に形成した溝の方向に対する前記水平配向処理基板のラビング溝の方向のなす角度が60°であるように配置を調整して,押圧し,室温で700mJの強度の紫外線を照射することによって,前記第2紫外線硬化性樹脂層を硬化させ,前記水平配向処理基板を,硬化した前記第2紫外線硬化性樹脂層から剥離することによって,前記水平配向処理基板のラビング溝が転写された膜厚が8.9μmの透明樹脂層2を作製し,
前記透明樹脂層2の上に,下記[調製例2-2]により得られた架橋性高分子液晶溶液(b-22)をスピンコート法によって塗布し,50℃で10分間乾燥した後に100℃で3分間保持することによって,前記架橋性高分子液晶溶液(b-22)に含まれる架橋性高分子液晶(B-2)のメソゲンを前記ガラス基板の表面に対して水平に配向させ,その後,窒素雰囲気下,60℃で照度260mW/cm^(2)の紫外線を5分間照射して,前記架橋性高分子液晶(B-2)の架橋を行うことによって,膜厚が1.81μmの高分子液晶層2を作製し,
前記ガラス基板を剥離することによって得られた液晶ポリマー積層フィルム2であって,
波長450nmにおけるリタデーション値及び楕円率が112nm及び0.86であり,波長550nmにおけるリタデーション値及び楕円率が137nm及び0.99であり,波長650nmにおけるリタデーション値及び楕円率が153nm及び0.92であり,広帯域四分の一波長板として機能する液晶ポリマー積層フィルム2。

[調製例4]
撹拌機及び冷却管を装着した300mLの4つ口フラスコに,70gのトリシクロデカンジメタノールジアクリラート(新中村化学工業社製,NK エステル A-DCP),30gのネオペンチルグリコールジアクリラート(新中村化学工業社製,NK エステル A-NPG),5.0gの光重合開始剤2(チバスペシャリティーケミカルズ社製,IRGACURE184),1.0gの重合禁止剤1,及び1.5gの界面活性剤(セイミケミカル社製,S420)を投入し,フラスコの内部を常温に保ち,遮光した状態で,1時間撹拌することにより,粘度が50mPa・秒の光硬化性樹脂2を得た。

[調製例2-1]
次の割合にしたがい,架橋性高分子液晶溶液(b-21)を調製する。
下記構造式の架橋性高分子液晶(B-2) 100質量部
シクロヘキサノン 635質量部
重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製イルガキュアー127) 1質量部
界面活性剤(セイミケミカル社製S420(商品番号)) 0.2質量部

[架橋性高分子液晶(B-2)の構造式]


[調製例2-2]
次の割合にしたがい,シクロヘキサノンを325質量部とする以外は,調製例2-1と同様にして,架橋性高分子液晶溶液(b-22)を調製する。
架橋性高分子液晶(B-2) 100質量部
シクロヘキサノン 325質量部
重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製イルガキュアー127) 1質量部
界面活性剤(セイミケミカル社製S420(商品番号)) 0.2質量部」(以下,「引用発明」という。)


2 本件発明1について
(1)対比
ア 本件発明1の「円偏光板」とは,本件明細書の【0002】等の記載によると,入射した直線偏光を円偏光に変換して出射し,入射した円偏光を直線偏光に変換して出射する部材のことを指していると解される。
しかるに,引用発明の「液晶ポリマー積層フィルム2」は,広帯域四分の一波長板として機能するものであって,引用文献1の[0085]にも説明されており,技術常識からも明らかなように,直線偏光(円偏光)を円偏光(直線偏光)に変換することが可能であるから,「円偏光板としての機能を担う円偏光板の光学機能層」からなる「光学フィルム」といえる。
したがって,引用発明は,本件発明1と,「円偏光板としての機能を担う円偏光板の光学機能層を有」する「光学フィルム」である点で共通する。

イ 引用発明の「高分子液晶層1」及び「高分子液晶層2」が,それぞれ1/4波長板及び1/2波長板として機能する層であることは,引用文献1の[0085]の記載や,引用文献1の表5及び表6に示された液晶単層積層体2(ガラス基板,透明樹脂層1及び高分子液晶層1からなる積層体)のリタデーション値,「高分子液晶層1」及び「高分子液晶層2」の膜厚等から,当業者に自明である。したがって,引用発明の「高分子液晶層1」及び「高分子液晶層2」は,本件発明1の「透過光に1/4波長分の位相差を付与する1/4波長板用位相差層」及び「透過光に1/2波長分の位相差を付与する1/2波長板用位相差層」にそれぞれ相当する。
また,引用発明の「透明樹脂層2」は,「高分子液晶層1」(本件発明1の「1/4波長板用位相差層」に相当する。以下,「(1)対比」欄において,「」で囲まれた引用発明の構成に付した()中の文言は,当該引用発明の構成に対応する本件発明1の発明特定事項を表す。)と「高分子液晶層2」(1/2波長板用位相差層)の間に位置し,「高分子液晶層2」中の架橋性高分子液晶(B-2)のメソゲンをガラス基板の表面に対して水平に配向させるという機能を有する層であるから,本件発明1の「1/2波長板用位相差層及び1/4波長板用位相差層間に設けられた配向層」に相当する。
そして,前記アで述べたように,引用発明は,「円偏光板としての機能を担う円偏光板の光学機能層」からなる「光学フィルム」であるから,引用発明は,それが有する「円偏光板の光学機能層」が,「透過光に1/2波長分の位相差を付与する1/2波長板用位相差層と,透過光に1/4波長分の位相差を付与する1/4波長板用位相差層と,前記1/2波長板用位相差層及び前記1/4波長板用位相差層間に設けられた配向層とを少なくとも有する多層構造であ」る点で,本件発明1と一致する。

ウ 引用発明の「高分子液晶層1」(1/4波長板用位相差層)及び「高分子液晶層2」(1/2波長板用位相差層)は,架橋性高分子液晶溶液(b-21)及び架橋性高分子液晶溶液(b-22)をそれぞれ塗布,乾燥し,架橋性高分子液晶溶液(b-21)及び架橋性高分子液晶溶液(b-22)中の架橋性高分子液晶(B-2)を架橋することによって得られたものであるところ,当該「架橋性高分子液晶(B-2)」は「位相差層形成樹脂」といえ,「高分子液晶層1」及び「高分子液晶層2」は「位相差層形成樹脂を硬化した物」といえる。
したがって,引用発明の「高分子液晶層2」及び「高分子液晶層1」は,本件発明1の「1/2波長板用位相差層」及び「1/4波長板用位相差層」と,「位相差層形成樹脂を硬化した物であ」る点で一致する。

エ 引用発明の「透明樹脂層2」(配向層)は,光硬化性樹脂2を塗布し,光硬化性樹脂2中のトリシクロデカンジメタノールジアクリラート(新中村化学工業社製,NK エステル A-DCP)及びネオペンチルグリコールジアクリラート(新中村化学工業社製,NK エステル A-NPG)を硬化することによって得られたものであるところ,当該「トリシクロデカンジメタノールジアクリラート(新中村化学工業社製,NK エステル A-DCP)」及び「ネオペンチルグリコールジアクリラート(新中村化学工業社製,NK エステル A-NPG)」は「配向層形成樹脂」といえ,「透明樹脂層2」は「配向層形成樹脂を硬化した物」といえる。
したがって,引用発明の「透明樹脂層2」は,本件発明1の「配向層」と,「配向層形成樹脂を硬化した物であ」る点で一致する。

オ AGCセイミケミカル株式会社のウェブサイトの製品紹介(URL:http://www.seimichemical.co.jp/product/fluoro/properties/)によると,引用発明の架橋性高分子液晶溶液(b-21),光硬化性樹脂2及び架橋性高分子液晶溶液(b-22)のいずれにも含有されている「界面活性剤(セイミケミカル社製S420(商品番号))」は,フッ素系界面活性剤である「サーフロン」に属する製品であるから,本件発明1の「フッ素化合物」に相当する。したがって,引用発明の「架橋性高分子液晶(B-2)」及び「トリシクロデカンジメタノールジアクリラート(新中村化学工業社製,NK エステル A-DCP)及びネオペンチルグリコールジアクリラート(新中村化学工業社製,NK エステル A-NPG)」は,本件発明1の「位相差層形成樹脂」及び「配向層形成樹脂」と,「フッ素化合物が添加されて」いる点で一致する。
そして,引用発明の「高分子液晶層1」(1/4波長板用位相差層),「透明樹脂層2」(配向層)及び「高分子液晶層2」(1/2波長板用位相差層)における「界面活性剤(セイミケミカル社製S420(商品番号))」(フッ素化合物)の濃度は,それぞれ,約0.2質量%(≒0.2/(100+1+0.2)×100),約1.4質量%(≒1.5/(70+30+5.0+1.0)×100)及び約0.2質量%(≒0.2/(100+1+0.2)×100)である。そうすると,引用発明では,「透明樹脂層2」(配向層)を形成する「トリシクロデカンジメタノールジアクリラート(新中村化学工業社製,NK エステル A-DCP)及びネオペンチルグリコールジアクリラート(新中村化学工業社製,NK エステル A-NPG)」(配向層形成樹脂)に添加される「界面活性剤(セイミケミカル社製S420(商品番号))」(フッ素化合物)の濃度が,「高分子液晶層2」(1/2波長板用位相差層)を形成する「架橋性高分子液晶(B-2)」(位相差層形成樹脂)に添加される「界面活性剤(セイミケミカル社製S420(商品番号))」(フッ素化合物)の濃度以上である。また,引用発明では,「高分子液晶層2」(1/2波長板用位相差層)を形成する「架橋性高分子液晶(B-2)」(位相差層形成樹脂)と「高分子液晶層1」(1/4波長板用位相差層)を形成する「架橋性高分子液晶(B-2)」(位相差層形成樹脂)に添加される「界面活性剤(セイミケミカル社製S420(商品番号))」(フッ素化合物)の濃度が,0.3質量%以下である。したがって,引用発明は,「配向層を形成する配向層形成樹脂に添加されるフッ素化合物の濃度は,1/2波長板用位相差層を形成する前記位相差層形成樹脂に添加されるフッ素化合物の濃度以上であり,1/2波長板用位相差層を形成する位相差層形成樹脂と,1/4波長板用位相差層を形成する位相差層形成樹脂とは,添加されるフッ素化合物の濃度が0.3%以下である」という本件発明1の発明特定事項に相当する構成を具備している。

カ 前記アないしオに照らせば,本件発明1と引用発明は,
「円偏光板としての機能を担う円偏光板の光学機能層を有し,
前記円偏光板の光学機能層が,透過光に1/2波長分の位相差を付与する1/2波長板用位相差層と,透過光に1/4波長分の位相差を付与する1/4波長板用位相差層と,前記1/2波長板用位相差層及び前記1/4波長板用位相差層間に設けられた配向層とを少なくとも有する多層構造であり,
前記1/2波長板用位相差層及び前記1/4波長板用位相差層は,位相差層形成樹脂を硬化した物であり,
前記配向層は,配向層形成樹脂を硬化した物であり,
前記位相差層形成樹脂及び前記配向層形成樹脂は,フッ素化合物が添加されており,
前記配向層を形成する前記配向層形成樹脂に添加されるフッ素化合物の濃度は,前記1/2波長板用位相差層を形成する前記位相差層形成樹脂に添加されるフッ素化合物の濃度以上であり,
前記1/2波長板用位相差層を形成する前記位相差層形成樹脂と,前記1/4波長板用位相差層を形成する前記位相差層形成樹脂とは,添加されるフッ素化合物の濃度が0.3%以下である,
光学フィルム。」
である点で一致し,次の点で相違する。

相違点1:
本件発明1は,透明フィルムによる基材と,直線偏光板としての機能を担う直線偏光板の光学機能層と,円偏光板としての機能を担う円偏光板の光学機能層とが光の透過方向に沿って積層された光学フィルムであるのに対して,
引用発明は,広帯域四分の一波長板として機能する液晶ポリマー積層フィルム2,すなわち,「円偏光板としての機能を担う円偏光板の光学機能層」からなる光学フィルムであって,透明フィルムによる基材と直線偏光板としての機能を担う直線偏光板の光学機能層は積層されていない点。

相違点2:
本件発明1では,「配向層」を形成する「配向層形成樹脂」に添加される「フッ素化合物」の濃度が,「1/4波長板用位相差層を形成する位相差層形成樹脂」に添加される「フッ素化合物」の濃度以下であり,かつ,0.3%以下であるのに対して,
引用発明では,「透明樹脂層2」を形成する「トリシクロデカンジメタノールジアクリラート(新中村化学工業社製,NK エステル A-DCP)及びネオペンチルグリコールジアクリラート(新中村化学工業社製,NK エステル A-NPG)」に添加される「界面活性剤(セイミケミカル社製S420(商品番号))」の濃度は約1.4質量%であって,「高分子液晶層1」を形成する「架橋性高分子液晶(B-2)」に添加される「界面活性剤(セイミケミカル社製S420(商品番号))」の濃度である約0.2質量%という値を超えており,かつ,0.3質量%も超えている点。

(2)判断
事案に鑑みて,まず相違点2について判断する。
ア 引用発明において,「透明樹脂層2」を形成する「トリシクロデカンジメタノールジアクリラート(新中村化学工業社製,NK エステル A-DCP)及びネオペンチルグリコールジアクリラート(新中村化学工業社製,NK エステル A-NPG)」に添加される「界面活性剤(セイミケミカル社製S420(商品番号))」の量は,引用文献1の[0036]に説明されているように,モールドの透明樹脂層からの剥離性及び透明樹脂層の表面への重合性液晶性材料溶液の塗布性によって決定されたものであって,光重合性モノマーと光重合開始剤との合計量に対して1ないし3質量%という好ましいとされた範囲内の値に設定されている。

イ 引用発明において,「配向層を形成する配向層形成樹脂に添加されるフッ素化合物の濃度は,1/2波長板用位相差層を形成する位相差層形成樹脂に添加されるフッ素化合物の濃度以上であり,1/2波長板用位相差層を形成する位相差層形成樹脂と,1/4波長板用位相差層を形成する位相差層形成樹脂とは,添加されるフッ素化合物の濃度が0.3%以下である」という本件発明1の発明特定事項(一致点)に相当する構成を具備しつつ,相違点2に係る本件発明1の発明特定事項に相当する構成をも具備したものとするには,「透明樹脂層2」を形成する「トリシクロデカンジメタノールジアクリラート(新中村化学工業社製,NK エステル A-DCP)及びネオペンチルグリコールジアクリラート(新中村化学工業社製,NK エステル A-NPG)」に添加される「界面活性剤(セイミケミカル社製S420(商品番号))」の濃度を,「高分子液晶層1」を形成する「架橋性高分子液晶(B-2)」に添加される「界面活性剤(セイミケミカル社製S420(商品番号))」の濃度であり,「高分子液晶層2」を形成する「架橋性高分子液晶(B-2)」に添加される「界面活性剤(セイミケミカル社製S420(商品番号))」の濃度でもある「約0.2質量%」という値に変更する必要がある。
しかしながら,当該「約0.2質量%」という値は,前記アで述べた「モールドの透明樹脂層からの剥離性及び透明樹脂層の表面への重合性液晶性材料溶液の塗布性」から好ましいとされた「1ないし3質量%」という範囲の下限値の1/5程度の量にしかならない。
そうすると,引用文献1の記載に接した当業者は,引用発明において,「透明樹脂層2」を形成する「トリシクロデカンジメタノールジアクリラート(新中村化学工業社製,NK エステル A-DCP)及びネオペンチルグリコールジアクリラート(新中村化学工業社製,NK エステル A-NPG)」に添加される「界面活性剤(セイミケミカル社製S420(商品番号))」の濃度を「約0.2質量%」に変更すると,透明樹脂層2を作製するに際して,EHC社製水平配向処理基板を透明樹脂層2から剥離することが困難になると理解すると認められる。
そして,引用文献1の[0011]や[0012]の記載等から把握されるように,引用発明において,「透明樹脂層2」を,モールド(EHC社製水平配向処理基板)の表面の形状(ラビング溝)を転写する方法で形成することは,必須の構成なのであって,それ以外の方法で形成することについては記載も示唆もされていない。

ウ また,原査定で周知例として例示された引用文献4及び引用文献5のいずれにも,モールドのラビング溝を転写して配向層を形成するに際して,配向層に含有させるフッ素系界面活性剤の濃度を「約0.2質量%」程度としても,モールドを配向層から剥離することが困難にならないようにする技術は,記載も示唆もされていない。

エ 以上によれば,たとえ引用文献4や引用文献5の記載から把握される周知技術の存在を考慮したとしても,当業者は,引用発明において,「透明樹脂層2」を形成する「トリシクロデカンジメタノールジアクリラート(新中村化学工業社製,NK エステル A-DCP)及びネオペンチルグリコールジアクリラート(新中村化学工業社製,NK エステル A-NPG)」に添加される「界面活性剤(セイミケミカル社製S420(商品番号))」の濃度を「約0.2質量%」に変更しようとすること(すなわち,相違点2に係る本件発明1の発明特定事項に相当する構成を具備したものにすること)はないというべきである。
したがって,相違点1について検討するまでもなく,本件発明1は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 本件発明2ないし8について
請求項2は,請求項1の記載を引用する形式で記載されており,本件発明2は,本件発明1の発明特定事項を全て有し,これに限定を加えたものに該当するところ,本件発明1が,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものでない以上,本件発明2も,同様の理由で,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件発明3は,相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を具備しており,本件発明3と引用発明とは,少なくとも相違点2と同様の点で相違するところ,引用発明において,相違点2に係る本件発明3の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,前記2(2)で述べたとおり,当業者が容易に想到し得たことではないから,本件発明3も,同様の理由で,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
請求項4ないし6は,請求項3の記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されており,本件発明4ないし6は,いずれも,本件発明3の発明特定事項を全て有し,これに限定を加えたものに該当するところ,本件発明3が,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものでない以上,本件発明4ないし6も,同様の理由で,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
請求項7は,請求項1又は請求項3の記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されており,本件発明7は,本件発明1又は本件発明3の発明特定事項を全て有し,これに限定を加えたものに該当するところ,本件発明1及び本件発明3が,いずれも,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものでない以上,本件発明7も,同様の理由で,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件発明8は,相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を具備しており,本件発明8と引用発明とは,少なくとも相違点2と同様の点で相違するところ,引用発明において,相違点2に係る本件発明8の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,前記2(2)で述べたとおり,当業者が容易に想到し得たことではないから,本件発明8も,同様の理由で,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。


第5 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本件出願を拒絶することはできない。
また,他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-10-02 
出願番号 特願2012-196427(P2012-196427)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 後藤 亮治  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 清水 康司
関根 洋之
発明の名称 光学フィルム、光学フィルム用転写体、画像表示装置及び光学フィルムの製造方法  
代理人 林 一好  
代理人 正林 真之  
代理人 芝 哲央  
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