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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) D06F
審判 査定不服 1項2号公然実施 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) D06F
管理番号 1344676
審判番号 不服2017-775  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-19 
確定日 2018-10-05 
事件の表示 特願2016- 15375号「ドラム式洗濯機用使い捨てフィルタ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月 2日出願公開、特開2016-101527号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、出願日が平成26年11月26日であって、平成26年12月2日(4日受付)に新規性の喪失の例外証明書提出書の提出がなされた実用新案登録第3195843号(登録日:平成27年1月14日)に基づく平成27年6月10日の特許出願である特願2015-117617号の一部を平成27年10月6日に新たな特許出願とした特願2015-198457号について、更にその一部を平成28年1月29日に新たな特許出願としたものであって、平成28年10月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成29年1月19日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされ、当審で平成30年2月22日付けの拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の通知がなされ、これに対し平成30年4月27日に意見書の提出がなされたものである。

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、平成29年1月19日の手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
「 【請求項1】
ドラム式洗濯機の格子状に形成されたリントフィルタに装着して使用する使い捨てフィルタであって、リントフィルタの内面に沿って装着される矩形で、目付が60g/m^(2)のポリエステルモノフィラメント製の不織布通水性シートからなる本体部を備えるとともに、該本体部の長手方向の端部に、リントフィルタの胴部の内面に沿って装着される、摘み部を一体に備え、かつ、本体部と摘み部の接合部に両側から切り込みが入れられてなることを特徴とするドラム式洗濯機用使い捨てフィルタ。」

第3 当審拒絶理由
当審拒絶理由は次のとおりである。
(進歩性)本願発明1は、その出願前日本国内又は外国において公然実施をされた発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用例等一覧>
引用例1:洗濯機の毛ごみフィルタの写真及びその図面(無効審判2016-800046号の甲第1号証の1)
引用例2:「ドラム式洗濯機の毛ごみフィルター」の説明書(同 甲第1号証の2)
引用例3:グリーンコープ発行の納品書(兼請求明細書)(同 甲第1号証の3)
引用例4:グリーンコープ発行の「ドラム式洗濯機の毛ごみフィルター」が掲載された2014年10月27号の「GREEN」と題したチラシ(同 甲第1号証の4)
引用例5:平成28年4月2日付け陳述書(同 甲第5号証)
引用例6:特開2011-58135号公報(同 甲第15号証)

第4 当審の判断
1 上記各引用例の記載事項について
(1) 引用例1の記載
引用例1には、以下の事項が記載されている。
「洗濯機の毛ごみフィルター」の写真及び、フィルタに形成されたスリットを明瞭にするための図面が示されている。
(2) 引用例2の記載
洗濯機の毛ごみフィルターに同封されていた説明書であって、「593」の記載、その下に「ドラム式洗濯機の毛ごみフィルター」、「使用方法」に「ゴミや髪くずがいっぱいになりましたら、お取り替えください。」、「フィルターの凸部分を異物フィルターの取っ手側に装着してください。」、「ご注意」の欄に「フィルターが汚れた状態のまま長期間使用されますと、フィルターが目詰まりし水があふれる場合がありますので、ご使用の度にフィルターをご確認ください。・・・洗濯機にエラーが表示される場合は使用中止してください。」、「<材質>ポリエステル <サイズ>8cm×21cm <内容量>10枚」との記載があり、【本品】の図、【異物フィルター】の図、【断面図】の図が示されている。
(3) 引用例3の記載
洗濯機の毛ごみフィルターをグリーンコープ連合より購入した際の納品書であって、「グリーンコープ」と書かれたロゴ、「納品明細書 10月10日お届け商品」、「デポ07 小倉南」、「組合員13810869 (株)アーランド松本様」、「593洗濯機の毛ごみフィルター」、「27号受」、「♪グリーンコープは、・・・カタログGREEN30号 28ページは、せっけん特集!」と記載され、さらに、「593洗濯機の毛ごみフィルター」の「本体価格」が「448円」であることを示している。
(4) 引用例4の記載
洗濯機の毛ごみフィルターが掲載されたグリーンコープ連合発行のチラシであって、その1頁に「GREEN」、右上の「グリーンコープ」と書かれたロゴ、「2014.10」、「27号」との記載があり、2頁に「ドラム式洗濯機の毛ごみフィルター」、「448円(税込価格483.84円)」、「10枚入」、「材質/ポリエステル サイズ(約)/8×21cm」の記載と、それに隣接して商品の写真が掲載されている。また、同チラシには、「つまんで捨てるだけ!」の記載と共に商品の写真が掲載されている。
(5) 引用例5の記載
株式会社アーランドの社員である榎木晶仁氏の陳述書であって、「今回問題となっております『洗濯機の毛ごみフィルター』(本件フィルター)につきましては、2014年6月2日に新規性喪失の例外規定の適用となった、東都生活協同組合のチラシが配布され、その後、同年7月第5週として同様の本件フィルターが掲載されたコープ九州パレット7月号が、同年9月には、甲1号証の3の、グリーンコープ27号が配布され、当社もフィルター関連製品を多数製造販売していることから、本件フィルターが目に留まりました。
そして、これらのチラシに掲載された本件フィルターを調査研究するため、私は、2014年9月26日に請求人名下で、グリーンコープに本件フィルター10枚入り一セットを発注しました。本体価格は448円でした。
商品受取日は甲1号証の4の納品書に記載されたとおり、2014年10月10日でした。甲第1号証の1に記載の本件フィルターはこの時購入したものであり、甲第1号証の2の説明書も同封されていたことに間違いありません。
入手した製品を、社員の家庭などで実際に使用させてみたところ、いろいろと改善すべき点があることがわかりましたし、後発メーカーとして本件フィルターとの違いも明確に出す必要がありますので、苦労しながらも、私なりに、大きさや、突起、またスリット形状などいろいろと試行錯誤を繰り返し、約2カ月ほどかけて当社の製品が完成いたしました。」と記載されている。

2 公然実施発明について
(1) 認定事実
ア ドラム式洗濯機の毛ごみフィルターに関する経緯について
(ア) 引用例2は、ドラム式洗濯機の毛ごみフィルターの包装袋に同封されていた説明書であって、「593」の記載、その下に「ドラム式洗濯機の毛ごみフィルター」との記載がある。
そして、引用例3には、「593洗濯機の毛ごみフィルター」とある(以下、「593洗濯機の毛ごみフィルター」を「本件フィルター」という。)。さらに、引用例3には、「グリーンコープ」と書かれたロゴ、「27号受」、「593洗濯機の毛ごみフィルター」の「本体価格」が「448円」とあり、引用例4のチラシには、グリーンコープ発行の「2014.10 27号」、「ドラム式洗濯機の毛ごみフィルター」の価格が「448円(税込価格483.84円)」とあることから、本件フィルターは、引用例4のチラシを介して販売されたことが分かる。
そして、引用例3に「納品明細書 10月10日お届け商品」という記載及び引用例4に「2014.10」という記載があることから、本件フィルターは、2014年10月10日にグリーンコープ連合から販売されたことが分かる。
また、引用例5の陳述書において、株式会社アーランドの社員は、本件フィルターを、2014年9月26日に発注し、2014年10月10日にグリーンコープ連合より購入したことを陳述している。
(イ) 上記(ア)より、次のことが分かる。
a 遅くとも平成26年9月26日までに、グリーンコープ連合は、本件フィルターが記載されたチラシを公然に頒布した(引用例4、引用例3、引用例5)。
b 平成26年10月10日、グリーンコープ連合は、株式会社アーランドの社員に対し、本件フィルターを納品した(引用例3)。
イ 本件フィルターの構成について
(ア) 引用例1、引用例2及び引用例4は、本件フィルターに関するものと認められる。
(イ) 引用例2の説明書において、【本品】の図、【異物フィルター】の図及び「フィルターの凸部分を異物フィルターの取っ手側に装着して下さい。」との記載から、本件フィルターは、矩形状の本体部分と凸部分を有し、【本品】の図から、矩形状の本体部分には、長手方向に断続するスリットを、本体部の幅方向に複数列形成してなること、及び本体部分と凸部分の接合部に両側から切り込みが入れられてなることが看取できる。
(ウ) 引用例2の説明書の【異物フィルター】の図、【断面図】の図及び「フィルターの凸部分を異物フィルターの取っ手側に装着して下さい。」との記載から、本件フィルターは、「異物フィルター」の内面に沿って装着されるといえ、また、当該【異物フィルター】の図及び引用例4のチラシの商品の写真から、「異物フィルター」は格子状に形成されていることが看取できる。
(エ) 引用例2の説明書の「ドラム式洗濯機の毛ごみフィルター」の記載、「使用方法」の「ゴミや髪くずがいっぱいになりましたら、お取り替えください。」との記載、引用例4のチラシの「つまんで捨てるだけ!」という記載及び商品の写真から、本件フィルターは、ドラム式洗濯機用使い捨てフィルタといえる。
(オ) 引用例2の説明書の「ご注意」の「フィルターが汚れた状態のまま長期間使用されますと、フィルターが目詰まりし水があふれる場合がありますので、ご使用の度にフィルターをご確認ください。」との記載から、本件フィルターの本体部分は、通水性シートから構成されているといえる。
(カ) 引用例2の説明書には材質がポリエステルであることが記載され、この記載及び引用例1の写真から、本件フィルターは、ポリエステル製の不織布シートからなると認められる。
(キ) 引用例2の説明書における【異物フィルター】の図及び「フィルターの凸部分を異物フィルターの取っ手側に装着して下さい。」との記載、引用例4のチラシにおける「つまんで捨てるだけ!」の記載及び商品の写真から、本件フィルターは、その凸部分をつまんで捨てるものであると認められる。
(2) 判断
ア 本件フィルターに係る発明が本件出願前に公然実施されていたか
前記(1)アによれば、本件フィルターは、遅くとも平成26年10月10日までには、公然と販売されていたものと認められる。
したがって、本件フィルターに係る発明は、本件出願前に公然実施されていたものと認められる。
イ 本件フィルターに係る発明
前記(1)イによれば、本件フィルターは、ドラム式洗濯機の格子状に形成された異物フィルターに装着して使用する使い捨てフィルタであって、異物フィルターの内面に沿って装着される矩形の通水性シートからなる本体部を備え、該本体部に、本体部の長手方向に断続するスリットを、本体部の幅方向に複数列形成してなるドラム式洗濯機用使い捨てフィルタと認められる。
また、本件フィルターは、該通水性シートが、合成樹脂製の不織布シートからなると認められ、該不織布シートが、ポリエステルからなると認められる。
そして、本件フィルターは、該本体部の長手方向の端部に凸部を一体に備えてなると認められる。
そうすると、本件フィルターに係る発明は、以下のとおりと認められる。

「ドラム式洗濯機の格子状に形成された異物フィルターに装着して使用する使い捨てフィルタであって、異物フィルターの内面に沿って装着される矩形で、ポリエステル製の不織布通水性シートからなる本体部を備え、該本体部に、本体部の長手方向に断続するスリットを、本体部の幅方向に複数列形成してなり、本体部の長手方向の端部に凸部を一体に備え、かつ、本体部と凸部の接合部に両側から切り込みが入れられてなる、ドラム式洗濯機用使い捨てフィルタ。」(以下「公然実施発明」という。)

3 特許法第30条第2項の適用の適否について
(1) 請求人は、分割出願である本願(特願2016-15375号)の基礎となる特願2015-198457号が基礎とする特願2015-117617号がさらに基礎とする実願2014-6265号において、特許法第30条第2項の規定の適用を受けるため、新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書(以下「本件証明書」という。)を提出している。
特許法第30条第2項の規定の適用を受けるためには、出願人は、ア)「特許を受ける権利を有する者の行為に起因して第29条第1項各号のいずれかに該当するに至つた発明」につき、イ)当該発明が特許法第30条第2項の規定の適用を受けることができる発明であることを証明する書面を特許庁長官に提出しなければならない(特許法第30条第3項)。
そこで、本件証明書が、公然実施発明が特許法第30条第2項の規定の適用を受けることができる発明であることを証明する書面といえるかにつき検討する。
ア 本件証明書には、公開者がトップ産業株式会社であり、公開された発明はトップ産業株式会社が一般消費者に対して販売した本件証明書添付のチラシ記載の「ドラム式洗濯機用使い捨てフィルタ(商品名:ドラム式洗濯機の毛ごみフィルター)」である旨が記載されている一方で、公開場所として、東都生活協同組合が特定されており、また、本件証明書添付チラシを見ると、販売者としてトップ産業株式会社を示す記載はなく、その体裁から、東都生活協同組合が販売主体であることが明らかである。
そうすると、本件証明書の「…トップ産業株式会社が、一般消費者に、…ドラム式洗濯機の毛ごみフィルター…を販売した。」とは、トップ産業株式会社の当該フィルターの東都生活協同組合への納品等の行為に起因して、東都生活協同組合が当該フィルターを販売したことを意味すると解される。
よって、本件証明書により特定され、かつ、証明された発明は、東都生活協同組合により販売された「ドラム式洗濯機用使い捨てフィルタ(商品名:ドラム式洗濯機の毛ごみフィルター)」であると認めるのが相当である。
イ しかるに、前記2(1)ア(イ)a、bのとおり、公然実施発明の「公然実施」に該当する具体的事実は、遅くとも平成26年10月10日までに、グリーンコープ連合がした本件フィルターの公然譲渡行為であるところ、グリーンコープ連合と東都生活協同組合とは法人格を異にし、販売地域も異なるほか、グリーンコープ連合による前記公然譲渡行為と東都生活協同組合による販売とが同一主体による販売であるとみることもできないから、本件証明書が、グリーンコープ連合による本件フィルターの販売を示す具体的事実を記載していると認めることはできない。
よって、本件証明書は、特許法第30条第3項規定の第29条第1項各号のいずれかに該当するに至つた発明として、公然実施発明を特定するものと認めることはできない。
ウ 以上のとおりであるから、本件証明書は、公然実施発明が特許法第30条第2項の規定の適用を受けることができる発明であることを証明する書面であるとはいえない。
(2) 小括
したがって、公然実施発明は、特許法第30条第2項の規定の適用を受けることができない。

4 特許法第29条第2項について
(1) 対比
本願発明1と公然実施発明とを、その有する機能に照らして対比すると、公然実施発明の「異物フィルター」及び「凸部」は、それぞれ本願発明1の「リントフィルタ」及び「摘み部」に相当するから、本願発明と公然実施発明とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。
(一致点)
「ドラム式洗濯機の格子状に形成されたリントフィルタに装着して使用する使い捨てフィルタであって、リントフィルタの内面に沿って装着される矩形で、ポリエステル製の不織布通水性シートからなる本体部を備えるとともに、該本体部の長手方向の端部に、リントフィルタの胴部の内面に沿って装着される、摘み部を一体に備え、かつ、本体部と摘み部の接合部に両側から切り込みが入れられてなるドラム式洗濯機用使い捨てフィルタ。」
(相違点)
本体部をなすポリエステル製の不織布通水性シートについて、本願発明1が「ポリエステルモノフィラメント製」であり、「目付が60g/m^(2)」であるのに対し、公然実施発明においては、ポリエステルモノフィラメント製であるか不明であり、また、目付についても不明である点。
(2) 前記相違点について検討する。
公然実施発明は、ドラム式洗濯機の格子状に形成された異物フィルターに装着して使用する使い捨てフィルタに係る発明であるが、ドラム式洗濯機には各種あり、異物フィルターに係る状況も異なることが予想されるから、各種のドラム式洗濯機に実際に装着しその性能(ごみの捕集性能、通水性能等)を確認、検討するといったことは、当業者であれば研究開発を行う上で通常行う事項であると認められる。
特に、ドラム式洗濯機は、本来備えられている異物フィルターにより、通水性能を妨げることなくごみを捕集可能となっているものと認められるところ、ドラム式洗濯機の毛ごみフィルターはさらにごみの捕集性能を高めようとするものであるから、ドラム式洗濯機の毛ごみフィルターの装着がドラム式洗濯機の所与の通水性能、ひいては運転性能に影響を与える可能性があることは技術的に明らかである。
この点、引用例2には、「フィルターが汚れた状態のまま長時間使用されますと、フィルターが目詰まりし水があふれる場合があります」、「洗濯機にエラーが表示される場合は使用中止してください。」と記載され、ドラム式洗濯機の毛ごみフィルターの装着がドラム式洗濯機の通水性能に影響する可能性が窺われる。また、株式会社アーランドの社員が「入手した製品を、社員の家庭などで実際に使用させてみたところ、いろいろと改善すべき点があることがわかりました」(引用例5)と陳述していることに照らしても、実際に装着し、ドラム式洗濯機の毛ごみフィルターの性能を確認、検討することは研究開発上必要な事項といえるとともに、当業者にとって格別困難なこととも認められない。
そして、ドラム式洗濯機の毛ごみフィルターの性能を決める上で目付の程度が重要であること(目付量が大きければ捕集性能が向上する反面、通水性能が低下し、目付量が小さければ捕集性能が向上しないが、通水性能は低下しないこと)は技術的に明らかであるから、ドラム式洗濯機の毛ごみフィルターの性能を確認、検討し、ごみの捕集性能と通水性能のバランスを図りながら、その目付を最適化することは、当業者が通常の創作能力の発揮の範囲内にてなすことと認められる。
この点に関し、本願明細書をみても、「リントフィルタ24の通水性を損ねることがないように、目付が60?100g/m^(2)程度、好ましくは、80g/m^(2)程度、・・・を好適に用いることができる。」(【0022】)と記載されているものの、想定される目付の範囲の中で、特に60g/m^(2)に限定することの技術的な意味合いについて特段記載はなく、目付を60g/m^(2)に限定することに臨界的意義は認められない。
また、不織布シートをポリエステルで構成する際に、ポリエステルモノフィラメントによることは、本願出願前に周知の事項であり(引用例6【0047】)、さらに、引用例6に記載されているように、目付が30?300g/m^(2)のポリエステルモノフィラメント製の不織布が従前より知られていることからしても(【0047】)、目付を60g/m^(2)にすることはおよそ採用し得ない事項とも認められないから、ドラム式洗濯機の毛ごみフィルターの目付を60g/m^(2)にすることは、当業者が容易に想到できる事項と認められる。
よって、公然実施発明において、上記相違点に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到できる事項と認められる。
さらに、本願発明1の効果をみても、公然実施発明から当業者が十分に予測し得る範囲内のものであって格別ではない。
なお、請求人は、ア.「引用例6には、目付が30?300g/m^(2)のポリエステルモノフィラメントからなる繊維構造体が記載されていますが、本願発明のドラム式洗濯機用使い捨てフィルタにおいて、特定の目付のものを用いることを示唆する記載はありません。」、イ.「本願発明のドラム式洗濯機用使い捨てフィルタは、『ドラム式洗濯機の格子状に形成されたリントフィルタに装着して使用する使い捨てフィルタ』であることを前提構成とし、『リントフィルタの内面に沿って装着される矩形で、目付が60g/m^(2)のポリエステルモノフィラメント製の不織布通水性シートからなる本体部を備えるとともに、該本体部の長手方向の端部に、リントフィルタの胴部の内面に沿って装着される、摘み部を一体に備え、かつ、本体部と摘み部の接合部に両側から切り込みが入れられてなる』ことを構成要件として有し、これにより、上記明細書記載の作用効果に加え、目付が60g/m^(2)のポリエステルモノフィラメント製の不織布通水性シートからなるため、糸屑の捕集性能と通水性能とのバランスを維持しながら、形態安定性(復元力)が高い本体部及び摘み部をリントフィルタ24の胴部24cの内面に沿って安定して装着することができるものであります」、及びウ.「引用例1-5に係る引用発明のものは、目付が70g/m^(2)のポリエステルモノフィラメント製の不織布通水性シートを用いているものであるため、糸屑の捕集性能は十分ある反面、通水性能が必ずしも十分でなく、頻繁ではないものの使用中にドラム式洗濯機が停止する問題があるものであり、この点で、かかる数値限定に臨界的意味がある」(平成30年4月27日の意見書(5)の項参照。)と主張している。
しかしながら、上記アの主張については、引用例6は、目付が30?300g/m^(2)のポリエステルモノフィラメント製の不織布が従前より知られていることを示すものであり、上記イの主張については、上述のとおり、ドラム式洗濯機の毛ごみフィルターの性能を確認、検討し、ごみの捕集性能と通水性能のバランスを図りながら、目付を最適化することは、当業者が通常の創作能力の発揮の範囲内にてなすことであるから、いずれも採用できない。
また、上記ウの主張については、目付が60g/m^(2)であるポリエステルモノフィラメント製の不織布通水性シートを用いることと、目付が70g/m^(2)のポリエステルモノフィラメント製の不織布通水性シートを用いることとを対比することは、明細書の記載に基づかないものであり、採用できない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明1は、公然実施発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-08-01 
結審通知日 2018-08-09 
審決日 2018-08-22 
出願番号 特願2016-15375(P2016-15375)
審決分類 P 1 8・ 112- WZ (D06F)
P 1 8・ 121- WZ (D06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村山 睦  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 山崎 勝司
莊司 英史
発明の名称 ドラム式洗濯機用使い捨てフィルタ  
代理人 森 治  

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