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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A61K
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部無効 特39条先願  A61K
管理番号 1344708
審判番号 無効2017-800105  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-08-04 
確定日 2018-10-01 
事件の表示 上記当事者間の特許第6072965号発明「非水系毛髪化粧料および毛髪処理方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1 手続の経緯
本件特許第6072965号に係る特許出願は、平成27年12月17日を出願日とする特許出願(特願2015-245750号)の一部を平成28年6月29日に新たな特許出願としたものであって、平成29年1月13日に特許権の設定の登録がされたものであり、その後の主な手続の経緯の概要は以下のとおりである。

平成29年 8月 4日 特許無効審判請求
同年12月 7日 答弁書提出
平成30年 4月 9日付け 審理事項の通知(当審)
同年 5月14日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
同年 5月15日 口頭審理陳述要領書提出(請求人)
同年 5月29日 第1回口頭審理

2 本件発明
本件特許第6072965号の請求項1?5に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下、「本件特許発明1?5」といい、まとめて「本件特許発明」ということがある。)である。
「【請求項1】
下記(A)?(C)の成分が配合されており、濡れた毛髪に塗布後、洗い流さずに前記毛髪を乾燥させる方法で使用されることを特徴とする非水系毛髪化粧料。
(A)紫外線吸収剤
(B)イソノナン酸2-エチルヘキシル、または、安息香酸アルキルおよびイソノナン酸2-エチルヘキシル
(C)揮発性の環状シリコーン
【請求項2】
(D)揮発性の直鎖状ジメチルポリシロキサンが更に配合されている請求項1に記載の非水系毛髪化粧料。
【請求項3】
上記(C)として、(c1)デカメチルシクロペンタシロキサンと(c2)ドデカメチルシクロペンタシロキサンとが配合されている請求項1または2に記載の非水系毛髪化粧料。
【請求項4】
(E)マカデミアナッツ油またはメドウフォーム油が更に配合されている請求項1?3のいずれか1項に記載の非水系毛髪化粧料。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか1項に記載の非水系毛髪化粧料を用いた毛髪処理方法。」

3 請求人の主張の概要及び証拠方法
(1)請求の趣旨
特許第6072965号の請求項1?5に係る発明についての特許を無効にする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。

(2)無効理由に係る主張
特許を無効とする理由は、以下の無効理由1?4であり、証拠方法として書証を申出、甲第1号証ないし甲第4号証の文書を提出する。

無効理由1:本件特許発明1?5は、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1?5に係る発明の特許は、同法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効にすべきである。
無効理由2:本件特許発明1?5は、甲第4号証の特許に係る発明と同一であり、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1?5に係る発明の特許は、同法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効にすべきである。
無効理由3:本件特許発明1?5は、明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず特許を受けることができないものであるから、請求項1?5に係る発明の特許は、同法第123条第1項第4号の規定に該当し、無効にすべきである。
無効理由4:本件特許発明1?5は、不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず特許を受けることができないものであるから、請求項1?5に係る発明の特許は、同法第123条第1項第4号の規定に該当し、無効にすべきである。

(3)証拠方法
甲第1号証:特許第6072965号公報
甲第2号証:本件特許の登録原簿
甲第3号証:特表2004-513162号公報
甲第4号証:特許第6072974号公報

4 被請求人の主張及び証拠方法
(1)答弁の趣旨
結論同旨。

(2)無効主張に対する反論
請求人が主張する無効理由1?4は、いずれも理由がない。
また、証拠方法として書証を申出、乙第1号証の1ないし乙第1号証の3、及び、乙第2号証ないし乙第5号証の文書を提出する。

(3)証拠方法
乙第1号証の1:独国特許出願公開第10055940号明細書
乙第1号証の2:国際公開第02/38537号
乙第1号証の3:カナダ国特許出願公開第2428322号明細書
乙第2号証:訂正2017-390049号審決
乙第3号証:日本パーマネントウェーブ液工業組合 技術委員会編、
「SCIENCE of WAVE改訂版」、新美容出版株式会社、
2002年4月10日、p131
乙第4号証:特開2013-40163号公報
乙第5号証:特開2008-169182号公報

5 当合議体の判断
無効理由1?4は、以下述べるとおり、いずれも理由がない。


(1)無効理由1について
ア 甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【請求項4】

【化3】

[式中
R^(1)?R^(4)は相互に独立に、水素、C_(1)-C_(20)-アルキルまたはC_(5)-C_(10)-シクロアルキルである、ただし隣接する炭素原子上の2置換基は一緒になって、場合により置換されていてもよいC_(1)-C_(4)-アルキレン基であってもよく、
更にまた、相互に独立に、少なくとも1メチレン基が酸素、C_(3)-C_(20)-アルケニル、C_(3)-C_(20)-アルキニルまたは基Sにより置換されていてもよい、C_(2)-C_(20)-アルキルであってもよく、
ここでSはシラン、オリゴシロキサンまたはポリシロキサン基であってもよく、
R^(5)?R^(8)は相互に独立に、水素、C_(1)-C_(20)-アルキルまたはC_(5)-C_(10)-シクロアルキルまたはC_(1)-C_(20)-アルコキシ、C_(5)-C_(10)-シクロアルコキシ、ヒドロキシル、アセトキシ、アセトアミノ、カルボキシル、カルボアルコキシまたはカルバモイルであり、
更に、隣接炭素原子上のR^(5)?R^(8)のうちの2置換基は一緒になって3個までのヘテロ原子、とりわけ酸素または窒素を含有する5?7員環を形成することができ、そこで環原子は環外二重結合の酸素(ケト基)により置換されていてもよく、
更に、アルコキシの場合には、相互に独立に、少なくとも1メチレン基が酸素、C_(3)-C_(20)-アルケニル、C_(3)-C_(20)-アルキニルまたは基Sで置換されていてもよいC_(2)-C_(20)-アルキルであってもよい、
ここでSはシラン、オリゴシロキサンまたはポリシロキサン基であってもよく、
Xはシアノ、CON(R)_(2)またはCO_(2)Rであり、ここでRは水素またはC_(1)-C_(8)-アルキルであり、
nは1または0であり、
R^(9)?R^(11)は、n=1の場合には、水素、C_(1)-C_(20)-アルキルまたはC_(5)-C_(10)-シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであってもよく、
更に、R^(9)?R^(11)のうちの2置換基はβ-原子と一緒になって、3個までのヘテロ原子、とりわけ酸素または窒素、を含有してもよい3?7員環を形成することができ、
更に、n=0の場合には、R^(9)およびR^(10)はβ-原子と一緒になってアリールまたはヘテロアリール基である]
のインダニリデン化合物を含んで成る、皮膚および毛髪を保護するための化粧品組成物。

【請求項14】
本発明に従う式Iの化合物に加えて、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニル、…二酸化チタンを含んで成る群からの1種以上の他のUV吸収剤を含有することを特徴とする、請求項4記載の化粧品物質。」

(イ)「【0037】
更に、化粧品調製物において、他のUVフィルターと組み合わせた式Iのインダニリデン誘導体を使用して、日光遮蔽因子の相乗的増加が驚くほどに達成される。日光遮蔽因子の相乗的増加の例は、式Iの化合物および更にメトキシケイ皮酸エチルヘキシルまたはオクトクリレン双方、またはメトキシケイ皮酸エチルヘキシルと2-フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、あるいはメトキシケイ皮酸エチルヘキシルとメチルベンジリデンカンファー、あるいはメトキシケイ皮酸エチルヘキシルと4-t-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、あるいはNeo Heliopan^((R))APとメトキシケイ皮酸エチルヘキシル、との式Iの化合物の組み合わせ物、あるいはオクトクリレン、メチルベンジリデンカンファーおよび酸化亜鉛との式Iの化合物の組み合わせ物、を含んで成る化粧品エマルションである。…
【0045】
式Iの化合物を含む化粧品エマルション中のすべての油成分の使用量は0.5?30重量%、好ましくは、2?15重量%である。すべての前記の油成分および液体油溶性UVフィルターはすべての晶質の油溶性UV吸収剤のための優れた溶媒である。

【0049】
本発明の目的のための化粧品および皮膚科学的調製物は、脂質相および/または水相中に個々の物質として、または相互とのあらゆる混合物中の1種以上の通常のUV-A、UV-Bおよび/または広域フィルターを含んで成る。それらは驚くべきほどに、高度のUV-A遮蔽能および高度の日光遮蔽因子を特徴とする、あらゆる点で満足な製品である。」

(ウ)「【0059】
本発明に従う化粧品および/または皮膚科学的調製物は通常の組成をもつことができ、化粧品および/または皮膚科学的日光遮蔽のため並びに更に皮膚および/または毛髪の処置、手入れおよび/または洗浄のために並びに、装飾化粧品中のメークアップ製品として使用することができる。従って、本発明に従う調製物はそれらの処方に従って、例えば、皮膚保護クリーム、クレンジング乳液、日焼け止めローション、栄養クリーム、デイクリームもしくはナイトクリーム、等として使用することができる。場合によっては、医薬調製物の基剤として本発明に従う調製物を使用することができ、有利である。とりわけ好ましいものは、皮膚の手入れまたはメークアップ製品の形態の化粧品および皮膚科学的調製物である。具体的な態様は、クリーム、ゲル剤、ローション、アルコール溶液および水溶液/アルコール溶液、エマルションまたはスティック調製物、である。これらの組成物はまた、更なる補助剤および添加剤として、緩和な界面活性剤、共乳化剤、超脂肪添加剤、真珠光沢ワックス、増粘剤(bodying agents)、増粘剤(thickeners)、ポリマー、シリコーン化合物、脂肪、ワックス、安定剤、生物活性成分、消臭活性成分、フケ抑制剤、フィルム形成剤、膨潤剤、ヒドロトロープ剤、保存剤、忌虫剤、日焼け剤、人工自己日焼け剤(self-tanning agent)(例えば、ジヒドロキシアセトン)、安定剤、香油、染料、抗微生物剤等を含んで成ることができる。
【0060】
使用のためには、本発明に従う化粧品および皮膚科学的調製物は、化粧品として通常の方法で十分量を皮膚および/または毛髪に適用される。」

(エ)「【0069】
脂質相は有利には、下記の群の物質から選択することができる、
-鉱油、鉱物ワックス、
-油(例えば、カプリン酸またはカプリル酸のトリグリセリド)および更に天然油(例えば、ヒマシ油)、
-脂肪、ワックス並びに他の天然および合成脂肪物質、好ましくは低炭素数のアルコール(例えば、イソプロパノール、プロピレングリコールまたはグリセロール)との脂肪酸のエステル、または低炭素数のアルカン酸との、または脂肪酸との脂肪アルコールのエステル、
-安息香酸アルキル、
-シリコーン油(例えば、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサンおよびそれらの混合形態)。

【0074】
特に有利な混合物は安息香酸C_(12)-_(15)-アルキルおよびイソステアリン酸2-エチルヘキシルの混合物、安息香酸C_(12)-_(15)-アルキルおよびイソノナン酸イソトリデシルの混合物、安息香酸C_(12)-_(15)-アルキル、イソノナン酸2-エチルヘキシルおよびイソノナン酸イソトリデシルの混合物である。」

(オ)「【0119】

調製実施例12
UVフィルターを含む毛髪コンディショナー
部分 原料 INCI名 重量%
A Emulgade1000NI セテアリルアルコール(および)
セテアレス-20 2.00
Lanette16 セチルアルコール 1.00
Neo Heliopan メトキシケイ皮酸
(R)AV 2-エチルヘキシル 3.00
式Iに従うUV吸収剤 1.00
B 蒸溜水 水 91.70
EdetaBD EDTA二ナトリウム 0.10
Phenonip フェノキシエタノール(および)
メチルパラベン (および)
ブチルパラベン (および)
エチルパラベン (および)
プロピルパラベン 0.40
DehyquartA-CA 塩化セトリモニウム 0.20
NaOH、1%濃度 水酸化ナトリウム 0.30
C 香油 香料 0.30
製法
部分A:80℃に加熱する。
部分B:80℃に加熱する。部分Aに撹拌しながら添加する。
部分C:40℃で添加し、室温に冷却する。」

イ 甲第3号証に記載された発明
甲第3号証には、上記ア、特に(オ)からみて、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているといえる。
「下記成分を含む、毛髪コンディショナー。
セテアリルアルコール(および)セテアレス-20 2.00重量%
セチルアルコール 1.00重量%
メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 3.00重量%
式Iに従うUV吸収剤 1.00重量%
水 91.70重量%
EDTA二ナトリウム 0.10重量%
フェノキシエタノール(および)パラペン類 0.40重量%
塩化セトリモニウム 0.20重量%
水酸化ナトリウム 0.30重量%
香料 0.30重量%」

ウ 本件特許発明1と甲3発明との対比及び判断
上記ア(ア)及び(イ)によれば、甲3発明の「メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」は、UV吸収剤であるから、甲3発明の「式Iに従うUV吸収剤」及び「メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」は、いずれも本件特許発明1の「紫外線吸収剤」に相当する。
また、甲3発明の「毛髪コンディショナー」は、本件特許発明1の「毛髪化粧料」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲3発明とは、
「下記の成分を含む、毛髪化粧料。
(A)紫外線吸収剤 」で一致する。
そして、両者は、下記の点で相違する。
相違点1:毛髪化粧料において、本件特許発明1は「濡れた毛髪に塗布後、洗い流さずに前記毛髪を乾燥させる方法で使用される」「非水系」であるのに対し、甲3発明は使用方法が明らかではなく、水が91.70重量%含まれている点。
相違点2:本件特許発明1は「揮発性の環状シリコーン」が配合されるのに対し、甲3発明は「揮発性の環状シリコーン」が配合されていない点。
相違点3:本件特許発明1は「イソノナン酸2-エチルヘキシル」が配合されるのに対し、甲3発明は「イソノナン酸2-エチルヘキシル」が配合されていない点。

相違点1について検討する。
甲第3号証には、甲3発明に係る毛髪コンディショナーの使用の態様として「濡れた毛髪に塗布」することの記載ないし示唆はない。仮に、係る毛髪コンディショナーの使用の態様が「濡れた毛髪に塗布」するものであるといえたとしても、「洗い流さずに前記毛髪を乾燥させる方法で使用される」ような態様を当業者が容易に想到し得るとはいえない。
更に、甲3発明は水を91.70重量%含むものであるところ、甲第3号証には、甲3発明に係る毛髪コンディショナーを「非水系」(すなわち「外相が水系ではないもの」。本件明細書【0028】)となしうることについての記載ないし示唆はなく、いずれの証拠を検討しても甲3発明を、「水の含有量は、例えば、5質量%以下」(本件明細書【0028】)のように「非水系」とする動機を見いだすことができない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、甲第3号証に記載された発明からは、本件特許発明1は想到容易であるということはできない。

エ 本件特許発明2?5について
本件特許発明2?5は、いずれも本件特許発明1を直接あるいは間接的に引用するものであり、本件特許発明1で特定される事項を発明特定事項として有するものである。そして、上記ウで述べたとおり、本件特許発明1は、甲第3号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものということはできない以上、本件特許発明2?5も同様に、甲第3号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

オ まとめ
したがって、本件特許発明は、甲第3号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
以上のとおりであるから、無効理由1には理由がない。

(2)無効理由2について
ア 甲第4号証に係る特許発明
甲第4号証に掲載された特許第6072974号の請求項1?5に係る特許については、平成29年6月12日に特許請求の範囲を訂正することを主旨とする訂正審判の請求がされ、訂正2017-390049号事件として審理された結果、平成29年8月14日付けで当該請求を認容する審決がされ、この審決は確定している。(乙2。訂正後の甲第4号証の特許に係る発明は下記のとおりであり、以下それぞれ「甲4訂正発明1?5」という。)
「【請求項1】
下記(A)?(C)の成分が配合され、エタノールを含まず、下記(B)成分の配合量が2質量%以上、濡れた毛髪に塗布後、洗い流さずに前記毛髪を乾燥させる方法で使用されることを特徴とする非水系毛髪化粧料。
(A)2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル
(B)安息香酸アルキルまたはイソノナン酸2-エチルヘキシル
(C)揮発性の環状シリコーン
【請求項2】
(D)揮発性の直鎖状ジメチルポリシロキサンが更に配合されている請求項1に記載の非水系毛髪化粧料。
【請求項3】
上記(C)として、(c1)デカメチルシクロペンタシロキサンと(c2)ドデカメチルシクロペンタシロキサンとが配合されている請求項1または2に記載の非水系毛髪化粧料。
【請求項4】
(E)マカデミアナッツ油またはメドウフォーム油が更に配合されている請求項1?3のいずれか1項に記載の非水系毛髪化粧料。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか1項に記載の非水系毛髪化粧料を用いた毛髪処理方法。」

イ 本件特許発明1と甲4訂正発明1との対比及び判断
甲4訂正発明1の「(A)2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル」は、甲第4号証の記載(【0015】)からみて「紫外線吸収剤」である。
そうすると、本件特許発明1と甲4訂正発明1とは、
「下記の成分が配合され、濡れた毛髪に塗布後、洗い流さずに前記毛髪を乾燥させる方法で使用されることを特徴とする非水系毛髪化粧料。
(A)紫外線吸収剤
(B)イソノナン酸2-エチルヘキシル
(C)揮発性の環状シリコーン」で一致する。
そして、両者は、下記の点で相違する。
相違点4:本件特許発明1はエタノールの有無について特定されていないのに対し、甲4訂正発明1は「エタノールを含まず」と特定されている点。
相違点5:本件特許発明1は(B)成分の配合量について規定されていないのに対し、甲4訂正発明1は「(B)成分の配合量が2質量%以上」と特定されている点。
相違点6:(A)成分において、本件特許発明1は「紫外線吸収剤」と規定されているのに対し、甲4訂正発明1は「2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル」と特定されている点。

上記相違点4ないし6について検討する。
本件特許発明1は、エタノールの有無、(B)成分の配合量、及び、(A)成分の紫外吸収剤の具体的構造を、何ら特定しない発明である。
これに対し、甲4訂正発明1は、エタノールを含まないこと(相違点4)、(B)成分の配合量が2質量%以上であること(相違点5)、(A)成分の紫外線吸収剤が「2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル」であること(相違点6)を特定したものである。
甲4訂正発明1は、エタノールを含まないことにより、吸湿や白濁が生じにくく(甲第4号証【0029】)、(B)成分の配合量を2質量%以上と特定することにより、(B)成分の使用によるドライ後の指通りの効果をより良好に確保するものであり(甲第4号証【0013】、【0019】)、また、(A)成分の紫外線吸収剤を実施例において効果が確認された具体的な化合物に特定したものである(甲第4号証表1)。
そうすると、相違点4ないし6は、実質的な相違点であり、本件特許発明1と甲4訂正発明1とは同一の発明であるとはいえない。

請求人は、両発明は作用効果が全く同一であり、そのための解決方法である配合成分も基本的に同一で、相違点も成分の一部を列挙していたうちの代表例やより好ましいとされていた方に限定したに過ぎず、発明の技術的思想を異ならしめる類のものでないことを総合すれば、本件特許発明1と訂正後の甲4発明は技術的思想を異にするものではなく、同一の発明であることが明白である旨主張するが(口頭審理陳述要領書7頁7?17行)、本件特許発明1と甲4訂正発明1とは、相違点4ないし6において発明特定事項が相違し、技術的思想を異にするものであるのは明らかである。このため、請求人の上記主張は採用できない。

ウ 本件特許発明2?5について
本件特許に係る請求項2の記載と甲第4号証の特許に係る請求項2の記載、本件特許に係る請求項3の記載と甲第4号証の特許に係る請求項3の記載、本件特許に係る請求項4の記載と甲第4号証の特許に係る請求項4の記載、本件特許に係る請求項5の記載と甲第4号証の特許に係る請求項5の記載は、それぞれ同一の文言となっている。
そうすると、それぞれの本件特許発明と甲4訂正発明との間には、上記イに記載したとおりの相違点が存在し、上記イで検討したことと同様の理由で、本件特許発明2と甲4訂正発明2、本件特許発明3と甲4訂正発明3、本件特許発明4と甲4訂正発明4、本件特許発明5と甲4訂正発明5とは同一の発明であるとはいえない。

エ まとめ
したがって、本件特許発明は、甲第4号証の特許に係る発明と同一であるということはできない。
以上のとおりであるから、無効理由2には理由がない。

(3)無効理由3について
ア 本件明細書の記載
本件明細書には以下の記載がある。
「【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、紫外線吸収剤が配合されており、低温安定性に優れ、かつドライ後の毛髪の指通りを良好にし得る非水系毛髪化粧料と、前記非水系毛髪化粧料を用いた毛髪処理方法とを提供することにある。

【0011】
本発明の実施形態に基づき、本発明を以下に説明する。
本実施形態の非水系毛髪化粧料は、(A)紫外線吸収剤、(B)安息香酸アルキルまたはイソノナン酸2-エチルヘキシル、および(C)揮発性の環状シリコーンが配合されている。(A)紫外線吸収剤は、紫外線による毛髪の損傷を防止するための成分であり、(C)揮発性の環状シリコーンは、非水系毛髪化粧料の媒体(溶媒)となる成分であるが、これらは相溶性が低い。
【0012】
本実施形態の非水系毛髪化粧料は、(B)安息香酸アルキルまたはイソノナン酸2-エチルヘキシルを使用することで、(A)成分の(C)成分への溶解性を高めて透明な外観とすることを可能とし、かつ低温下でもその透明な外観を維持できるといった低温安定性の確保も可能とした。
【0013】
また、上記の通り、(A)成分を配合した毛髪化粧料を濡れた毛髪に塗布し、乾燥させると、乾燥途中に毛髪が束となって、乾燥後にもその束の状態が維持されてしまうため、乾燥後(ドライ後)の毛髪の指通り性が悪くなる。しかし、(A)成分および(C)成分と共に(B)成分も配合することで、毛髪が束になることを抑制できるため、本実施形態の非水系毛髪化粧料を用いた場合には、ドライ後の毛髪の指通り性も良好となる。」
「【0016】
非水系毛髪化粧料における(A)成分の配合量は、紫外線から毛髪を保護する機能をより良好に確保する観点から、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。また、非水系毛髪化粧料中の(A)成分の量をある程度制限して、非水系毛髪化粧料における低温安定性をより良好に高める観点から、非水系毛髪化粧料における(A)成分の配合量は、10質量%以下であることが好ましく、6質量%以下であることがより好ましい。
【0017】
本実施形態の非水系毛髪化粧料において、(B)成分には、安息香酸アルキルおよびイソノナン酸2-エチルヘキシルのうちのいずれか一方のみを用いてもよく、両方を用いてもよい。

【0019】
非水系毛髪化粧料における(B)成分の配合量〔安息香酸アルキルおよびイソノナン酸2-エチルヘキシルのうちのいずれか一方のみを用いる場合は、その量であり、両方を用いる場合は、それらの合計量である。非水系毛髪化粧料における(B)成分の配合量について、以下同じ。〕は、(B)成分の使用による上記の効果をより良好に確保する観点から、2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。また、(B)成分の配合量が多くなるとドライ後の毛髪の柔らかさが損なわれる虞があることから、非水系毛髪化粧料における(B)成分の配合量は、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。
【0020】
(C)成分である揮発性の環状シリコーンとしては、例えば、下記式(1)で表されるものが挙げられる。

【0025】
なお、非水系毛髪化粧料には、(C)成分として、(c1)デカメチルシクロペンタシロキサンと(c2)ドデカメチルシクロヘキサシロキサンとが配合されていることが好ましく、この場合には、ドライ後の毛先のまとまりが、より良好となる。
【0026】
非水系毛髪化粧料における(C)成分の配合量は、例えば、50?90質量%である。
【0027】
なお、(C)成分として(c1)と(c2)とを配合する場合には、それらの配合比率は、質量基準で、例えば、(c2)/(c1)=0.001?0.1とすればよい。」
「【0055】
【表1】



イ 本件特許発明の課題
本件特許発明は、「紫外線吸収剤が配合されており、低温安定性に優れ、かつドライ後の毛髪の指通りを良好にし得る非水系毛髪化粧料と、前記非水系毛髪化粧料を用いた毛髪処理方法とを提供すること」(【0007】)をその課題とするものである。

ウ 課題が解決できると認識できる範囲
本件明細書には、「(B)安息香酸アルキルまたはイソノナン酸2-エチルヘキシルを使用することで、(A)成分の(C)成分への溶解性を高めて透明な外観とすることを可能とし、かつ低温下でもその透明な外観を維持できるといった低温安定性の確保も可能とした」(【0012】)ものであり、「(A)成分および(C)成分と共に(B)成分も配合することで、毛髪が束になることを抑制できるため、本実施形態の非水系毛髪化粧料を用いた場合には、ドライ後の毛髪の指通り性も良好となる」(【0013】)とあるように、(A)紫外線吸収剤と、その溶媒である(C)揮発性の環状シリコーンを含む非水系毛髪化粧料において、(B)安息香酸アルキルまたはイソノナン酸2-エチルヘキシルを使用することで、(A)成分の(C)成分への溶解性を高めて低温下でも透明な外観を維持でき、かつ、毛髪が束になることを抑制できるためドライ後の毛髪の指通り性も良好となることが記載されている。
また、実施例1bには、(A)特定の紫外線吸収剤、(C)特定の揮発性の環状シリコーンに加え、(B)イソノナン酸2-エチルヘキシルを配合した非水系毛髪化粧料は、「低温安定性」が○、毛髪が濡れた状態で塗布し乾燥させた場合に「ドライ後の毛髪の指通り性」が◎と評価されたことが記載されている。実施例1aには、実施例1bの(B)イソノナン酸2-エチルヘキシルに代えて、(B)安息香酸アルキルを用いた場合には、「低温安定性」が○、「ドライ後の毛髪の指通り性」が○と評価されたことが記載されている。
そうすると、(A)紫外線吸収剤、及び、その溶媒である(C)揮発性の環状シリコーンを含む非水系毛髪化粧料に加え、(B)安息香酸アルキルまたはイソノナン酸2-エチルヘキシルを配合することにより、「低温安定性」と「ドライ後の毛髪の指通り性」の双方の目的を達成しうることを当業者が認識することができる。
また、本件明細書には、「(B)成分には、安息香酸アルキルおよびイソノナン酸2-エチルヘキシルのうちのいずれか一方のみを用いてもよく、両方を用いてもよい。」(【0017】)と記載されていることを併せ考慮すると、(B)成分として、安息香酸アルキルおよびイソノナン酸2-エチルヘキシルの両方を用いた場合においても、上記双方の目的を達成しうることを当業者が認識することができる。

エ 本件特許発明について
上記ウによれば、(A)紫外線吸収剤、及び、その溶媒である(C)揮発性の環状シリコーンに加え、(B)イソノナン酸2-エチルヘキシル、または、安息香酸アルキルおよびイソノナン酸2-エチルヘキシルを配合した非水系毛髪化粧料を、濡れた毛髪に塗布後、洗い流さずに乾燥させて使用するものである本件特許発明は、「低温安定性」と「ドライ後の毛髪の指通り性」の双方の目的を達成しうることを当業者が認識することができる範囲内のものということができる。
したがって、本件特許発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものといえるから、請求項1ないし5の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合するものである。

オ 請求人の主張について
(ア)請求人は、表2の実施例2を取り上げる等して、本件特許発明は(A)?(C)の配合比が特定されていないので、発明が解決しようとする目的効果を達成することができない範囲を広く含んでいる旨を主張する。
しかしながら、上記のとおり、「低温安定性」と「ドライ後の毛髪の指通り性」の双方の目的を達成するためには、本件特許発明に係る(A)?(C)を配合した非水系毛髪化粧料であれば足り、(A)?(C)の配合量(配合比)が、本件明細書に好ましい範囲として記載された範囲や実施例1bのものに限られることをうかがわせる根拠はない。
なお、請求人が指摘する実施例2は、(B)成分として安息香酸アルキルのみを含むものであり、本件特許発明の(B)成分を含むものではなく、また、実施例2で評価されたのは「ドライ中の指通り性」と「均一感のある柔らかさ」であり、本件特許発明の課題と直接は関係がない項目であるから、実施例2は、本件特許発明の(A)?(C)の配合量(配合比)に関するサポート要件の判断に影響を与えるものではない。
したがって、この点に係る請求人の主張には理由がない。

(イ)請求人は、本件特許発明の(B)成分のうち「安息香酸アルキルおよびイソノナン酸2-エチルヘキシル」について、配合比が特定されておらず、両者を同時に配合することについて実質的な技術的根拠が記載されていない旨を主張する。
しかしながら、上記のとおり、本件明細書の【0017】及び実施例1a、1bの記載等を考慮すれば、本件特許発明において(B)成分として「安息香酸アルキルおよびイソノナン酸2-エチルヘキシル」を用いる場合も、(B)成分として「イソノナン酸2-エチルヘキシル」のみを用いる場合と同様に、その配合比を特定するまでもなく、「低温安定性」と「ドライ後の毛髪の指通り性」の双方の目的を達成しうることを当業者が認識することができる。
したがって、この点に係る請求人の主張には理由がない。

カ 以上のとおり、無効理由3には理由がない。

(4)無効理由4について
ア 請求項1の記載から、本件特許発明1は、非水系毛髪化粧料の発明であって、当該化粧料は、(A)紫外線吸収剤、(B)イソノナン酸2-エチルヘキシル、または、安息香酸アルキルおよびイソノナン酸2-エチルヘキシル、(C)揮発性の環状シリコーンの成分が配合されており、濡れた毛髪に塗布後、洗い流さずに前記毛髪を乾燥させる方法で使用されるものであることを明確に把握することができる。
同様に、請求項1を直接又は間接的に引用し、本件特許発明1の発明特定事項を含む請求項2ないし5の記載から、本件特許発明2ないし5の内容を明確に把握することができる。
したがって、請求項1ないし5の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件に適合する。

イ 請求人は、以下の点から、本件特許発明1?5は不明確であり、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない旨主張する。
「本件特許発明は(A)?(C)成分のそれぞれについて全て配合量が明確に限定されていない。配合比すら示されていない本件特許発明は配合量によっては所定の効果を奏しないことは明らかである。よって、本件特許発明は発明の外延が明確ではない。」
しかし、請求項1ないし5の記載から本件特許発明1ないし5の内容を明確に把握することができることは、前記アのとおりであり、原告が指摘する配合比(配合量)が発明特定事項として特定されていないからといって、発明が不明確になるものということはできない。配合比(配合量)によって所定の効果を奏しない場合があるか否かは、本件における特許法第36条第6項第2号の検討において関係がない。
請求人の上記主張は、特許法第36条第6項第2号に関する独自の解釈であり、採用できない。

ウ 以上のとおり、無効理由4には理由がない。

6 むすび
以上のとおり、本件特許発明1?5は、特許法第29条第2項第39条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえないから、本件特許は、特許法123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものではない。
また、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号、同第2号に規定する要件に違反するものではないから、本件特許は、特許法123条第1項第4号の規定により無効とされるべきものではない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-08-02 
結審通知日 2018-08-06 
審決日 2018-08-20 
出願番号 特願2016-128392(P2016-128392)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (A61K)
P 1 113・ 4- Y (A61K)
P 1 113・ 537- Y (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松村 真里  
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 関 美祝
大熊 幸治
登録日 2017-01-13 
登録番号 特許第6072965号(P6072965)
発明の名称 非水系毛髪化粧料および毛髪処理方法  
代理人 川口 太一郎  
代理人 小松 陽一郎  
代理人 三嶋 隆子  
代理人 濱田 俊明  
代理人 合路 裕介  
代理人 村上 雅秀  
代理人 藤野 睦子  
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