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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1344718
審判番号 不服2017-11862  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-08 
確定日 2018-10-04 
事件の表示 特願2012-233625「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月12日出願公開、特開2014- 86836〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年10月23日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

手続補正書 :平成27年10月21日
拒絶理由通知 :平成28年 9月30日(起案日)
意見書 :平成28年12月 5日
手続補正書 :平成28年12月 5日
拒絶査定 :平成29年 4月28日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成29年 8月 8日
手続補正書 :平成29年 8月 8日
前置審査報告 :平成29年10月23日
拒絶理由通知(最後)(当審):平成30年 3月23日(起案日)
意見書 :平成30年 5月28日
手続補正書 :平成30年 5月28日

第2 平成30年5月28日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成30年5月28日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 平成30年5月28日付けの手続補正の内容
平成30年5月28日付けの手続補正(以下、「本件第3補正」という。)は、以下に示すように、平成29年8月8日付けの手続補正(以下、「本件第2補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10を、本件第3補正による特許請求の範囲の請求項1ないし10に補正するとともに、図面における図15を、本件第3補正による図15に補正するものである(下線は補正箇所を示す。)。

(本件第3補正前の特許請求の範囲)
【請求項1】
シートに画像を形成する画像形成ユニットを有する画像形成装置であって、
複数ページの画像データに基づき複数ページの画像をシートの一面に集約してレイアウトするための集約設定を受け付ける処理と、
画像データに基づく画像にフォーム画像を合成するための合成設定を受け付ける処理と、
前記集約設定と前記合成設定が指定されたことに基づいて、集約された前記複数ページの画像に跨ってフォーム画像がレイアウトされた合成画像を生成する処理と、
前記集約設定と前記合成設定が指定されたことに基づいて、集約された前記複数ページのうちの一部のページ内のみにフォーム画像がレイアウトされた合成画像を生成する処理と、
生成された合成画像に基づいて前記画像形成ユニットに画像形成させる処理と、
を実行する制御部を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記集約設定と前記合成設定が指定された場合に、集約された前記複数ページの画像に跨ってフォーム画像がレイアウトされた合成画像と、集約された前記複数ページのうちの一部のページ内のみにフォーム画像がレイアウトされた合成画像と、を含む複数の合成画像の中から画像形成に用いる合成画像の選択を受け付けることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記集約設定と前記合成設定が指定されたことに基づいて、集約された前記複数ページのうちの各ページにフォーム画像が合成された合成画像を生成する処理を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
合成するフォーム画像は第1のオブジェクトと第2のオブジェクトを含む複数のオブジェクトを備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1のオブジェクトのレイアウトを変更する操作と前記第2のオブジェクトのレイアウトを変更する操作をそれぞれ受け付けることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記複数ページのうちの第1のページに前記第1のオブジェクトをレイアウトし且つ前記複数ページのうちの第2のページに前記第2のオブジェクトをレイアウトする操作に基づき、集約された前記複数ページの画像に跨ってフォーム画像がレイアウトされた合成画像を生成し、
前記制御部は、前記複数ページのうちの前記第1のページに前記第1のオブジェクト及び前記第2のオブジェクトをレイアウトする操作に基づき、集約された前記複数ページのうちの一部のページ内のみにフォーム画像がレイアウトされた合成画像を生成することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記複数ページのうちの前記第1のページに前記第1のオブジェクト及び前記第2のオブジェクトをレイアウトする操作を受け付けた後、前記第1のページにおける前記第1のオブジェクト及び前記第2のオブジェクトのレイアウトを他のページに適用する操作に基づき、集約された前記複数ページのうちの各ページにフォーム画像が合成された合成画像を生成する処理を実行することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記操作はユーザのタッチ動作に基づく操作であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
情報を表示する表示ユニットを有し、
前記制御部は、合成画像のプレビュー画面を前記表示ユニットに表示させる処理を実行し、前記プレビュー画面の表示中において、前記操作を受け付けることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
原稿を読み取る読取ユニットを有し、
前記画像データは、前記原稿に基づいて生成される画像データであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像形成装置。

(本件第3補正後の特許請求の範囲)
【請求項1】
シートに画像を形成する画像形成ユニットを有する画像形成装置であって、
複数ページの画像データに基づき複数ページの画像をシートの一面に集約して合成するための集約設定を受け付ける処理と、
画像データに基づく画像にフォーム画像を合成するための合成設定を受け付ける処理と、
前記集約設定と前記合成設定が指定されたことに基づいて、集約された前記複数ページの画像に跨ってフォーム画像が合成された第1の合成画像を生成する処理と、
前記集約設定と前記合成設定が指定されたことに基づいて、集約された前記複数ページのうちの一部のページ内のみにフォーム画像が合成された第2の合成画像を生成する処理と、
前記第2の合成画像が表示された画面において操作者の所定の指示が入力された後に前記生成された第1の合成画像に基づいて前記画像形成ユニットに画像形成させる処理と、
を実行する制御部を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記集約設定と前記合成設定が指定された場合に、集約された前記複数ページの画像に跨ってフォーム画像が合成された前記第1の合成画像と、集約された前記複数ページのうちの一部のページ内のみにフォーム画像が合成された前記第2の合成画像と、を含む複数の合成画像の中から画像形成に用いる合成画像の選択を受け付けることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記集約設定と前記合成設定が指定されたことに基づいて、集約された前記複数ページのうちの各ページにフォーム画像が合成された第3の合成画像を生成する処理を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
合成するフォーム画像は第1のオブジェクトと第2のオブジェクトを含む複数のオブジェクトを備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1のオブジェクトのレイアウトを変更する操作と前記第2のオブジェクトのレイアウトを変更する操作をそれぞれ受け付けることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記複数ページのうちの第1のページに前記第1のオブジェクトをレイアウトし且つ前記複数ページのうちの第2のページに前記第2のオブジェクトをレイアウトする操作に基づき、集約された前記複数ページの画像に跨ってフォーム画像がレイアウトされた合成画像を生成し、
前記制御部は、前記複数ページのうちの前記第1のページに前記第1のオブジェクト及び前記第2のオブジェクトをレイアウトする操作に基づき、集約された前記複数ページのうちの一部のページ内のみにフォーム画像がレイアウトされた合成画像を生成することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記複数ページのうちの前記第1のページに前記第1のオブジェクト及び前記第2のオブジェクトをレイアウトする操作を受け付けた後、前記第1のページにおける前記第1のオブジェクト及び前記第2のオブジェクトのレイアウトを他のページに適用する操作に基づき、集約された前記複数ページのうちの各ページにフォーム画像が合成された合成画像を生成する処理を実行することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記操作はユーザのタッチ動作に基づく操作であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
情報を表示する表示ユニットを有し、
前記制御部は、合成画像のプレビュー画面を前記表示ユニットに表示させる処理を実行し、前記プレビュー画面の表示中において、前記操作を受け付けることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
原稿を読み取る読取ユニットを有し、
前記画像データは、前記原稿に基づいて生成される画像データであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像形成装置。

(本件第3補正前の図15)


(本件第3補正後の図15)


2 補正の適合性
(1)本件第3補正の補正事項について
本件第3補正は、以下の補正事項(以下、「補正事項1」という。)を含むものである。

(補正事項1)
本件第3補正前の図15(A)の操作部110に表示される画面例の合成プレビュー画像表示領域に表示されている合成プレビュー画像を、本件第3補正後の図15(A)の合成プレビュー画像とする補正。
ここで、本件第3補正後の図15(A)の合成プレビュー画像表示領域には、「A」及び「B」からなる画像(以下、「原稿A及び原稿Bが2in1で集約された集約画像」という。)にフォーム画像が合成された合成プレビュー画像全体が、右に90度回転された状態で表示されることが記載されている。

(2)当初明細書等に記載された事項
本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、以下の記載がある。
なお、下線は、強調のために当審で付したものである。

ア「【0057】
次いで、CPU105はステップS505において作成した合成プレビュー画像を操作部110に表示する(ステップS506)。図6(B)は、合成プレビュー画像の表示例を示す図である。また、図7は、原稿とフォーム画像とを示す図である。本実施の形態においては、図7に示されるように、原稿は原稿A、原稿Bに示される画像を例として用いている。また、フォーム画像は図6に示されるフォーム画像を例として用いている。上記ステップS506は、合成された合成画像を表示するように表示手段を制御する第1表示制御手段に対応する。」

イ「【0077】
図9において、操作部110はタッチパネルでタッチを検知すると(ステップS701でYES)、タッチ操作算出処理を行う(ステップS702)。なお、ステップS701での検知は2点検知とする。このタッチ操作算出処理については後述する。
【0078】
次いで、ピンチイン・ピンチアウト動作が行われたか否か判別する(ステップS703)。ステップS703の判別の結果、ピンチイン・ピンチアウト動作が行われたときは(ステップS703でYES)、最終的な2つのタッチ検出点の座標を取得し、タッチ検出点が属する領域を算出する(ステップS704)。」

ウ「【0088】
図9の説明に戻り、算出された領域の組合わせが予め定められたパターンに該当するか否か判別する(ステップS705)。具体的には、ステップS704において算出された2つのタッチ検出点が属する領域の組み合わせをNin1のレイアウト数と現在フォーム合成がされている領域によって予め決定されるパターンに該当するか否かを判別する。
【0089】
このパターンについて説明する。図11は、予め決定されるパターンを示す図である。また、図11(A)は、図10(A)に示した2in1設定時におけるパターン表を示す図である。図11(B)は、4in1設定時におけるパターン表を示す図である。
【0090】
今の場合、フォーム合成が印刷サイズの全面に対して適用されているため、図11(A)において、比較対象となるパターンは面指定において現在の適用面を除いたパターンとなる。従って、比較対象となるパターンはパターン1/2/4/5である。
【0091】
仮に現在適用されているフォーム合成の領域がA面である場合には、比較対象となるパターンはパターン3/4/5となる。
【0092】
そして、図10(A)ではタッチ検出点Aが領域1、タッチ検出点Bが領域3であるため、図11(A)ではパターン2に該当することとなる。
【0093】
図9の説明に戻り、ステップS705の判別の結果、算出された領域の組合わせが予め定められたパターンに該当しないときは(ステップS705でNO)、ステップS701に戻る。
【0094】
一方、ステップS705の判別の結果、算出された領域の組合わせが予め定められたパターンに該当するときは(ステップS705でYES)、該当するレイアウト位置とレイアウトサイズを取得する(ステップS706)。
【0095】
例えば、図10(A)においてはパターン2に該当するため、操作者が指定したい面は図10(A)でのA面であると判定する。よって、レイアウト位置はA面、レイアウトサイズは合成プレビュー画像表示領域の半分のサイズである図10(A)のA面のサイズであるという情報を取得する。
【0096】
次いで、ステップS706において取得したレイアウトサイズに応じてフォーム画像の低解像度画像を変倍する(ステップS707)。例えば、現在適用されているフォーム画像の領域が全面であり、ステップS706において取得したレイアウトサイズがA面である場合には、主走査50%の変倍処理が行われることになる。
【0097】
次に、ステップS706において取得したレイアウト位置に応じてフォーム画像の低解像度画像の合成位置を変更する(ステップS708)。そして、ステップS707,708において作成されたフォーム画像の低解像度画像と合成位置に応じて、合成プレビュー画像を作成する(ステップS709)。ここでのステップS709は、操作者の操作が、第1操作と判別されたときは、フォーム画像を変更された画像のサイズに変倍して変更された画像に合成する第2合成手段に対応する。
【0098】
次いで、ステップS709で作成された合成プレビュー画像を操作部110に表示する(ステップS710)。このステップS710は、第2合成手段、または第3合成手段により合成された画像を表示するように表示手段を制御する第2表示制御手段に対応する。」

エ「【0101】
上記ステップS703の処理に戻り、ステップS703の判別の結果、ピンチイン・ピンチアウト動作が行われなかったときは(ステップS703でNO)、ローテーション動作が行われたか否か判別する(ステップS712)。
【0102】
ステップS712の判別の結果、ローテーション動作が行われなかったときは(ステップS712でNO)、ステップS701に戻る。
【0103】
一方、ステップS712の判別の結果、ローテーション動作が行われたときは(ステップS712でYES)、回転の向きと回転角度とを示す回転情報を取得する(ステップS713)。次いで、現在フォーム画像が適用されている予めレイアウトされたフォーム画像のレイアウト位置とレイアウトサイズを取得する(ステップS714)。
【0104】
そして、取得した回転情報に応じて、フォーム画像の低解像度画像を回転させる(ステップS715)。次いで、回転されたフォーム画像の低解像度画像のサイズとステップS714において取得されたレイアウトサイズに応じてフォーム画像の低解像度画像に対して変倍処理を行う(ステップS707)。
【0105】
そして、ステップS714で取得したレイアウト位置に応じてフォーム画像の合成位置を変更し(ステップS708)、上記ステップS709に進む。ここでのステップS709は、操作者の操作が、第2操作と判別されたときは、フォーム画像を回転するとともに操作対象となっている画像のサイズに変倍して操作者の操作対象となる画像に合成する第3合成手段に対応する。
【0106】
なお、ローテーション動作時はフォーム合成の合成位置は変更されないため、ステップS708の処理が行われても変更前と変更後で合成位置は変わらない。
【0107】
上記ステップS703,712は、操作者の操作が、現在操作者の操作対象となっている画像から、集約画像に含まれる複数の画像のいずれか1つの画像か集約画像全体に変更する第1操作か、現在操作者の操作対象となっている画像に合成されているフォーム画像を回転する第2操作か否かを判別する判別手段に対応する。また、上述したように、第1操作はタッチパネルに対するピンチインまたはピンチアウト操作であり、第2操作は、タッチパネルに対するローテーション操作である。」

オ「【0127】
図6(C)の画面で操作者はフォーム画像の左右端部をタッチして右90度のローテーション操作を前述したタッチ操作により行う。操作部110には図15(A)のようなフォーム画像を右90度に回転されたフォーム画像が合成されたプレビューが表示される。
【0128】
更に操作者はフォーム画像の左右端部をタッチしてピンチイン動作を前述したタッチ操作により行う。操作部には図15(B)のようなフォーム画像がA面にのみ適用されたプレビュー画像が表示される。この場合はA面が操作対象となっている。」

カ「【図6】



キ「【図7】



ク「【図15】



(3)補正事項1について
ア 補正事項1は、上記(1)のとおり、本件第3補正前の図15(A)の操作部110に表示される画面例の合成プレビュー画像表示領域に表示されている合成プレビュー画像を、本件第3補正後の図15(A)の合成プレビュー画像とする補正である。
ここで、本件第3補正後の図15(A)の合成プレビュー画像表示領域には、「原稿A及び原稿Bが2in1で集約された集約画像」にフォーム画像が合成された合成プレビュー画像全体が、右に90度回転された状態で表示されることが記載されている。

イ 補正事項1に関して、請求人は、平成30年5月28日付けの意見書において、「図15(A)の補正は、出願当初明細書の段落[0127]における「図6(C)の画面で… …右90度のローテーション操作を… …行う。操作部110には図15(A)のようなフォーム画像を右90度に回転されたフォーム画像が合成されたプレビューが表示される。」との記載に基づいています。」と主張している。

ウ 先ず、フォーム画像に対する「ローテーション操作」について検討する。
上記イで請求人が主張する明細書の記載である上記(2)オによれば、図6(C)の画面での操作者による右90度のローテーション操作によって、「操作部110には図15(A)のようなフォーム画像を右90度に回転されたフォーム画像が合成されたプレビューが表示される。」と記載されている。
また、ローテーション動作が操作者によって行われたときのフォーム画像編集処理に関する上記(2)エによれば、ローテーション動作が行われたときは、「フォーム画像の低解像度画像」を回転させることが記載されている。
以上によると、当初明細書等には、ローテーション動作が行われたときに、「フォーム画像」を回転させることは記載されているといえる。
しかしながら、当初明細書等には、「原稿A及び原稿Bが2in1で集約された集約画像」自体を右に90度回転させて表示することは何ら記載されておらず、「原稿A及び原稿Bが2in1で集約された集約画像にフォーム画像が合成された合成プレビュー画像」全体を、右に90度回転させて表示することも何ら記載されていない。

エ 次に、上記ウのローテーション操作後のフォーム画像に対する「ピンチイン動作」について検討する。
フォーム画像編集処理のピンチイン動作に関する上記(2)イ及び上記(2)ウによれば、ピンチイン動作は、レイアウト位置とレイアウトサイズを取得して、フォーム画像の低解像度画像と「原稿A及び原稿Bが2in1で集約された集約画像」の合成画像を作成することが記載されている。しかしながら、ピンチイン動作によって、「原稿A及び原稿Bが2in1で集約された集約画像」を回転することについては何ら記載されていない。
他方、上記(2)オによれば、「更に操作者はフォーム画像の左右端部をタッチしてピンチイン動作を前述したタッチ操作により行う。操作部には図15(B)のようなフォーム画像がA面にのみ適用されたプレビュー画像が表示される。」と記載されているから、「原稿A及び原稿Bが2in1で集約された集約画像」は回転されることなく、「回転されたフォーム画像」が取得されたレイアウト位置とレイアウトサイズに従って合成された合成プレビュー画像が表示されることになる。
とすると、本件第3補正後の図15(A)に記載の合成プレビュー画像表示領域に「原稿A及び原稿Bが2in1で集約された集約画像」が回転された状態の合成プレビュー画像が表示されることも、当初明細書等に記載されたものとはいえない。

オ よって、補正事項1により補正された図15(A)は、当初明細書等に記載されたものではなく、当初明細書等から自明でもないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
したがって、補正事項1に係る補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

3 むすび
以上のとおり、本件第3補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年5月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、上記第2の1に示した(本件第3補正前の特許請求の範囲)に記載のとおり、平成29年8月8日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものである。

2 当審における拒絶の理由
当審における拒絶の理由のうちの理由2及び理由3は、概略、以下のとおりである。
(理由1、4、5は省略する)

理由2.(新規事項)平成28年12月5日付けでした手続補正ならびに平成29年8月8日付けでした手続補正により特許請求の範囲に追加された請求項4?9の記載事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

理由3.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の請求項4?9の記載が発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

3 理由2(新規事項)についての判断
(1)平成28年12月5日付けでした手続補正ならびに平成29年8月8日付けでした手続補正の内容
平成28年12月5日付けの手続補正(以下、「本件第1補正」という。)は、以下に示すように、平成27年10月21日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7を、本件第1補正による補正後の請求項1ないし10に補正するものであり、平成29年8月8日付けの手続補正(以下、「本件第2補正」という。)は、以下に示すように、本件第1補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10を、本件第2補正による補正後の請求項1ないし10に補正するものである(下線は補正箇所を示す。)。

(本件第1補正前の特許請求の範囲)
【請求項1】
複数の画像データを1ページに集約した集約画像を印刷することを指示する集約印刷設定をユーザから受け付ける第1の受付手段と、
画像データとフォーム画像を合成した合成画像を印刷することを指示する合成印刷設定をユーザから受け付ける第2の受付手段と、
前記第1の受付手段が前記集約印刷設定を受け付け、かつ、前記第2の受付手段が前記合成印刷設定を受け付けた場合に、前記集約画像に1つのフォーム画像をレイアウトする第1のレイアウト処理、及び前記複数の画像データのそれぞれにフォーム画像をレアイウトする第2のレイアウト処理のいずれかを選択する選択手段と、
前記選択手段によって選択されたレイアウト処理によって生成された画像を印刷する印刷手段とを備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
画像データを所定の範囲内で繰り返し配置して印刷することを指示するリピート印刷設定をユーザから受け付ける第1の受付手段と、
画像データとフォーム画像を合成した合成画像を印刷することを指示する合成印刷設定をユーザから受け付ける第2の受付手段と、
前記第1の受付手段が前記リピート印刷設定を受け付け、かつ、前記第2の受付手段が前記合成印刷設定を受け付けた場合に、画像データを繰り返し配置した後の画像全体に1つのフォーム画像をレイアウトする第1のレイアウト処理、及び繰り返し配置されている画像データのそれぞれにフォーム画像をレイアウトする第2のレイアウト処理のいずれかを選択する選択手段と、
前記選択手段によって選択されたレイアウト処理によって生成された画像を印刷する印刷手段とを備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
原稿を読み取る読取手段を更に備え、
前記画像データは、前記原稿に基づいて生成される画像データであることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記選択手段は、ユーザ指示に従って、前記第1のレイアウト処理と前記第2のレイアウト処理のいずれかを選択することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
複数の画像データを1ページに集約した集約画像を印刷することを指示する集約印刷設定をユーザから受け付ける第1の受付ステップと、
画像データとフォーム画像を合成した合成画像を印刷することを指示する合成印刷設定をユーザから受け付ける第2の受付ステップと、
前記第1の受付ステップで前記集約印刷設定を受け付け、かつ、前記第2の受付ステップで前記合成印刷設定を受け付けた場合に、前記集約画像に1つのフォーム画像をレイアウトする第1のレイアウト処理、及び前記複数の画像データのそれぞれにフォーム画像をレアイウトする第2のレイアウト処理のいずれかを選択する選択ステップとを有することを特徴とする画像処理設定方法。
【請求項6】
画像データを1ページの範囲内で繰り返し配置して印刷することを指示するリピート印刷設定をユーザから受け付ける第1の受付ステップと、
画像データとフォーム画像を合成した合成画像を印刷することを指示する合成印刷設定をユーザから受け付ける第2の受付ステップと、
前記第1の受付ステップで前記リピート印刷設定を受け付け、かつ、前記第2の受付ステップで前記合成印刷設定を受け付けた場合に、画像データを繰り返し配置した後の画像全体に1つのフォーム画像をレイアウトする第1のレイアウト処理、及び繰り返し配置されている画像データのそれぞれにフォーム画像をレイアウトする第2のレイアウト処理のいずれかを選択する選択ステップとを有することを特徴とする画像処理設定方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の画像処理設定方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。

(本件第1補正後の特許請求の範囲)
【請求項1】
シートに画像を形成する画像形成ユニットを有する画像形成装置であって、
複数ページの画像データに基づき複数ページの画像をシートの一面に集約してレイアウトするための集約設定を受け付ける処理と、
画像データに基づく画像にフォーム画像を合成するための合成設定を受け付ける処理と、
前記集約設定と前記合成設定が指定されたことに基づいて、集約された前記複数ページの画像に跨ってフォーム画像がレイアウトされた合成画像を生成する処理と、
前記集約設定と前記合成設定が指定されたことに基づいて、集約された前記複数ページのうちの一部のページ内にフォーム画像がレイアウトされた合成画像を生成する処理と、
生成された合成画像に基づいて前記画像形成ユニットに画像形成させる処理と、
を実行する制御部を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記集約設定と前記合成設定が指定された場合に、集約された前記複数ページの画像に跨ってフォーム画像がレイアウトされた合成画像と、集約された前記複数ページのうちの一部のページ内にフォーム画像がレイアウトされた合成画像と、を含む複数の合成画像の中から画像形成に用いる合成画像の選択を受け付けることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記集約設定と前記合成設定が指定されたことに基づいて、集約された前記複数ページのうちの各ページにフォーム画像が合成された合成画像を生成する処理を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
合成するフォーム画像は第1のオブジェクトと第2のオブジェクトを含む複数のオブジェクトを備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1のオブジェクトのレイアウトを変更する操作と前記第2のオブジェクトのレイアウトを変更する操作をそれぞれ受け付けることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記複数ページのうちの第1のページに前記第1のオブジェクトをレイアウトし且つ前記複数ページのうちの第2のページに前記第2のオブジェクトをレイアウトする操作に基づき、集約された前記複数ページの画像に跨ってフォーム画像がレイアウトされた合成画像を生成し、
前記制御部は、前記複数ページのうちの前記第1のページに前記第1のオブジェクト及び前記第2のオブジェクトをレイアウトする操作に基づき、集約された前記複数ページのうちの一部のページ内にフォーム画像がレイアウトされた合成画像を生成することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記複数ページのうちの前記第1のページに前記第1のオブジェクト及び前記第2のオブジェクトをレイアウトする操作を受け付けた後、前記第1のページにおける前記第1のオブジェクト及び前記第2のオブジェクトのレイアウトを他のページに適用する操作に基づき、集約された前記複数ページのうちの各ページにフォーム画像が合成された合成画像を生成する処理を実行することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記操作はユーザのタッチ動作に基づく操作であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
情報を表示する表示ユニットを有し、
前記制御部は、合成画像のプレビュー画面を前記表示ユニットに表示させる処理を実行し、前記プレビュー画面の表示中において、前記操作を受け付けることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
原稿を読み取る読取ユニットを有し、
前記画像データは、前記原稿に基づいて生成される画像データであることを特徴とする
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像形成装置。

(本件第2補正後の特許請求の範囲)
【請求項1】
シートに画像を形成する画像形成ユニットを有する画像形成装置であって、
複数ページの画像データに基づき複数ページの画像をシートの一面に集約してレイアウトするための集約設定を受け付ける処理と、
画像データに基づく画像にフォーム画像を合成するための合成設定を受け付ける処理と、
前記集約設定と前記合成設定が指定されたことに基づいて、集約された前記複数ページの画像に跨ってフォーム画像がレイアウトされた合成画像を生成する処理と、
前記集約設定と前記合成設定が指定されたことに基づいて、集約された前記複数ページのうちの一部のページ内のみにフォーム画像がレイアウトされた合成画像を生成する処理と、
生成された合成画像に基づいて前記画像形成ユニットに画像形成させる処理と、
を実行する制御部を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記集約設定と前記合成設定が指定された場合に、集約された前記複数ページの画像に跨ってフォーム画像がレイアウトされた合成画像と、集約された前記複数ページのうちの一部のページ内のみにフォーム画像がレイアウトされた合成画像と、を含む複数の合成画像の中から画像形成に用いる合成画像の選択を受け付けることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記集約設定と前記合成設定が指定されたことに基づいて、集約された前記複数ページのうちの各ページにフォーム画像が合成された合成画像を生成する処理を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
合成するフォーム画像は第1のオブジェクトと第2のオブジェクトを含む複数のオブジェクトを備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1のオブジェクトのレイアウトを変更する操作と前記第2のオブジェクトのレイアウトを変更する操作をそれぞれ受け付けることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記複数ページのうちの第1のページに前記第1のオブジェクトをレイアウトし且つ前記複数ページのうちの第2のページに前記第2のオブジェクトをレイアウトする操作に基づき、集約された前記複数ページの画像に跨ってフォーム画像がレイアウトされた合成画像を生成し、
前記制御部は、前記複数ページのうちの前記第1のページに前記第1のオブジェクト及び前記第2のオブジェクトをレイアウトする操作に基づき、集約された前記複数ページのうちの一部のページ内のみにフォーム画像がレイアウトされた合成画像を生成することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記複数ページのうちの前記第1のページに前記第1のオブジェクト及び前記第2のオブジェクトをレイアウトする操作を受け付けた後、前記第1のページにおける前記第1のオブジェクト及び前記第2のオブジェクトのレイアウトを他のページに適用する操作に基づき、集約された前記複数ページのうちの各ページにフォーム画像が合成された合成画像を生成する処理を実行することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記操作はユーザのタッチ動作に基づく操作であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
情報を表示する表示ユニットを有し、
前記制御部は、合成画像のプレビュー画面を前記表示ユニットに表示させる処理を実行し、前記プレビュー画面の表示中において、前記操作を受け付けることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
原稿を読み取る読取ユニットを有し、
前記画像データは、前記原稿に基づいて生成される画像データであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像形成装置。

(2)補正の適合性
ア 本件第1補正及び本件第2補正の補正事項について
本件第1補正及び本件第2補正は、以下の補正事項(以下、「補正事項2」という。)を含むものである。

(補正事項2)
請求項4に、「合成するフォーム画像は第1のオブジェクトと第2のオブジェクトを含む複数のオブジェクトを備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。」、
請求項5に、「前記制御部は、前記第1のオブジェクトのレイアウトを変更する操作と前記第2のオブジェクトのレイアウトを変更する操作をそれぞれ受け付けることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。」、
請求項6に、「前記制御部は、前記複数ページのうちの第1のページに前記第1のオブジェクトをレイアウトし且つ前記複数ページのうちの第2のページに前記第2のオブジェクトをレイアウトする操作に基づき、集約された前記複数ページの画像に跨ってフォーム画像がレイアウトされた合成画像を生成し、前記制御部は、前記複数ページのうちの前記第1のページに前記第1のオブジェクト及び前記第2のオブジェクトをレイアウトする操作に基づき、集約された前記複数ページのうちの一部のページ内にフォーム画像がレイアウトされた合成画像を生成することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。」という記載を追加する補正。

イ 補正事項2について
補正事項2のうち、請求項5に対する補正について検討する。

(ア)補正事項2による補正後の請求項4及び請求項5の「第1のオブジェクト」及び「第2のオブジェクト」に関して、請求人は、平成28年12月5日付けの意見書において、「補正後請求項4における「合成するフォーム画像は第1のオブジェクトと第2のオブジェクトを含む複数のオブジェクトを備える」との補正は、出願当初明細書の段落[0057]、図6、図7に基づく補正です。」と主張している。
また、請求人は、平成28年12月5日付けの意見書において、「補正後請求項5における「前記制御部は、前記第1のオブジェクトのレイアウトを変更する操作と前記第2のオブジェクトのレイアウトを変更する操作をそれぞれ受け付ける」との補正は、出願当初明細書の段落[0127]、段落[0128]に基づく補正です。」と主張している。

(イ)先ず、「第1のオブジェクト」及び「第2のオブジェクト」について検討する。
上記(ア)で請求人が主張する明細書の記載である上記第2の2(2)ア、上記第2の2(2)カ及び上記第2の2(2)キによれば、フォーム画像が、「XXX株式会社」、「CONFIDENTIAL」という2つの文字列を含むことが記載されているから、当該2つの文字列は、補正事項2による補正後の請求項4及び請求項5における「第1のオブジェクト」及び「第2のオブジェクト」に、それぞれ対応し得るものといえる。

(ウ)次に、「第1のオブジェクトのレイアウトを変更する操作」と「第2のオブジェクトのレイアウトを変更する操作」を「それぞれ受け付ける」ことについて検討する。
補正事項2による補正後の請求項5における「第1のオブジェクトのレイアウトを変更する操作」と「第2のオブジェクトのレイアウトを変更する操作」を「それぞれ受け付ける」は、少なくとも、以下のa及びbの二通りに解釈できる。

a 「第1のオブジェクト」である「XXX株式会社」という文字列のレイアウトを変更する操作である「第1のオブジェクトのレイアウトを変更する操作」と、「第2のオブジェクト」である「CONFIDENTIAL」という文字列のレイアウトを変更する操作である「第2のオブジェクトのレイアウトを変更する操作」という2つの操作を受け付けること。

b 「第1のオブジェクトのレイアウトを変更する操作」は、操作者がフォーム画像の左右端部をタッチして「ローテーション動作」または「ピンチイン・ピントアウト動作」をするときの一方のタッチであり、「第2のオブジェクトのレイアウトを変更する操作」は、他方のタッチであり、これらの2つのタッチを受け付けること。

(エ)先ず、上記(ウ)aの解釈をした場合について検討する。
上記(ア)で請求人が主張する明細書の記載である上記第2の2(2)オによれば、図6(C)の画面での操作者による右90度のローテーション操作によって、「操作部110には図15(A)のようなフォーム画像を右90度に回転されたフォーム画像が合成されたプレビューが表示される」こと、及び、当該ローテーション操作後の操作者によるフォーム画像に対するピンチイン動作によって、「操作部には図15(B)のようなフォーム画像がA面にのみ適用されたプレビュー画像が表示される」ことが記載されている。
また、上記第2の2(2)エによれば、ローテーション動作が行われたときは、「フォーム画像の低解像度画像」を回転させると記載されている。
また、上記第2の2(2)イ及び上記第2の2(2)ウによれば、ピンチイン・ピンチアウト動作は、レイアウト位置とレイアウトサイズを取得して、フォーム画像の低解像度画像と「原稿A及び原稿Bが2in1で集約された集約画像」の合成画像を作成することが記載されている。

そして、上記(イ)のとおり、フォーム画像は、「XXX株式会社」、「CONFIDENTIAL」という2つの文字列を含むのであるから、「ローテーション動作」という1つの操作により、「第1のオブジェクト」である「XXX株式会社」という文字列と、「第2のオブジェクト」である「CONFIDENTIAL」という文字列のレイアウトを変更しているといえる。
しかしながら、「ローテーション動作」は1つの操作であって、2つの操作ではないから、「第1のオブジェクトのレイアウトを変更する操作」と「第2のオブジェクトのレイアウトを変更する操作」に対応するものとはいえない。
また、「ローテーション動作」と同様に、「ピンチイン・ピンチアウト動作」も1つの操作であって、2つの操作ではないから、「第1のオブジェクトのレイアウトを変更する操作」と「第2のオブジェクトのレイアウトを変更する操作」に対応するものとはいえない。

よって、上記(ウ)aの解釈をした場合、「第1のオブジェクトのレイアウトを変更する操作」と、「第2のオブジェクトのレイアウトを変更する操作」を、「それぞれ受け付ける」ことは、当初明細書等に記載されたものとはいえない。

(オ)次に、上記(ウ)bの解釈をした場合について検討する。
上記第2の2(2)イ及び上記第2の2(2)エによれば、タッチパネルで2点のタッチを検知すると、ピンチイン・ピンチアウト動作またはローテーション動作が行われたか否かを判別することが記載されている。
また、上記(エ)のとおり、ローテーション動作が行われたときは、「フォーム画像の低解像度画像」を回転させ、ピンチイン・ピンチアウト動作は、レイアウト位置とレイアウトサイズを取得して、フォーム画像の低解像度画像と「原稿A及び原稿Bが2in1で集約された集約画像」の合成画像を作成するものである。
そして、上記(イ)のとおり、フォーム画像は、「XXX株式会社」、「CONFIDENTIAL」という2つの文字列を含むのであるから、2点のタッチを検知すると、「ピンチイン・ピンチアウト動作」または「ローテーション動作」により、「第1のオブジェクト」である「XXX株式会社」という文字列と、「第2のオブジェクト」である「CONFIDENTIAL」という文字列のレイアウトを変更しているといえる。
しかしながら、当初明細書等には、2点のタッチのうちの一方が「第1のオブジェクト」である「XXX株式会社」という文字列のレイアウトを変更する操作であることは記載されておらず、2点のタッチのうちの他方が「第2のオブジェクト」である「CONFIDENTIAL」という文字列のレイアウトを変更する操作であることも記載されていない。
また、当初明細書等には、1点のタッチを検知した場合に、「第1のオブジェクト」である「XXX株式会社」という文字列、または、「第2のオブジェクト」である「CONFIDENTIAL」という文字列のレイアウトを変更することも何ら記載されていない。
したがって、操作者がフォーム画像の左右端部をタッチしてローテーション操作またはピンチイン・ピントアウト動作をするときの一方のタッチが「第1のオブジェクトのレイアウトを変更する操作」であり、他方のタッチが「第2のオブジェクトのレイアウトを変更する操作」であるともいえない。

よって、上記(ウ)bの解釈をした場合も、「第1のオブジェクトのレイアウトを変更する操作」と、「第2のオブジェクトのレイアウトを変更する操作」を、「それぞれ受け付ける」ことは、当初明細書等に記載されたものとはいえない。

(カ)以上によると、補正事項2により追加された請求項5の「第1のオブジェクトのレイアウトを変更する操作」と、「第2のオブジェクトのレイアウトを変更する操作」を、「それぞれ受け付ける」という記載は、当初明細書等に記載されたものではなく、当初明細書等から自明でもないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
したがって、補正事項2に係る補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

4 理由3(サポート要件)についての判断
上記3で述べたとおり、本件第2補正による補正後の請求項5の「前記制御部は、前記第1のオブジェクトのレイアウトを変更する操作と前記第2のオブジェクトのレイアウトを変更する操作をそれぞれ受け付ける」という記載は、当初明細書等に記載されたものでないから、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。
よって、本願の請求項5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

第4 むすび
以上のとおり、平成28年12月5日付けでした手続補正ならびに平成29年8月8日付けでした手続補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
また、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本願は、その余の理由について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-08-02 
結審通知日 2018-08-07 
審決日 2018-08-20 
出願番号 特願2012-233625(P2012-233625)
審決分類 P 1 8・ 561- WZ (H04N)
P 1 8・ 537- WZ (H04N)
P 1 8・ 55- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 粕谷 満成鈴木 明  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 坂東 大五郎
渡辺 努
発明の名称 画像形成装置  
代理人 別役 重尚  

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