ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08J |
---|---|
管理番号 | 1344802 |
審判番号 | 不服2017-8801 |
総通号数 | 227 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-11-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-06-16 |
確定日 | 2018-10-01 |
事件の表示 | 特願2014-545067「発泡体、およびHCFOまたはHFO発泡剤を含む発泡体から作られる物品」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月13日国際公開、WO2013/082963、平成27年 1月 5日国内公表、特表2015-500362〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2012年(平成24年)9月21日(パリ条約による優先権主張 2011年12月9日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする特許出願であって、平成26年8月7日に手続補正書が提出され、平成28年5月25日付けで拒絶理由が通知され、同年10月27日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年2月14日付けで拒絶査定され、平成29年6月16日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1?18に係る発明は、平成29年6月16日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項により特定されるものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。 「現場注入熱硬化性発泡体パネルの低温貯蔵用途での使用であって、該熱硬化性発泡体が、50から75モル%のトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンおよび25から50モル%のシクロペンタンを含む発泡剤組成物を含む、使用。」 第3 原審の拒絶査定の概要 原査定の理由は、「この出願については、平成28年5月25日付け拒絶理由通知書に記載した理由1,2,4によって、拒絶をすべきものです。」というものであり、本願発明については、理由1、2を査定の理由とするものである。そして理由1、2については要するに、当該理由1として、本願発明は、その優先権主張日前に頒布された下記の刊行物3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができず、当該理由2として、同刊行物の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 刊行物3:特表2011-510119号公報 第4 当審の判断 当審は、 上記拒絶査定の理由と同一の理由により、本願は、特許法第49条第2号の規定により拒絶すべきものである、 と判断する。以下詳述する。 1 刊行物3の記載 刊行物3には、以下の記載がある。 (1)「多くの適用において、ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートのフォームのための成分をプレブレンド配合において用意するのが好都合である。最も典型的には、フォーム配合物はプレブレンドされて、二つの成分にされる。イソシアネートと任意の特定の界面活性剤と発泡剤は第一の成分を構成し、これは通常「A」成分と呼ばれる。ポリオールまたはポリオールの混合物、界面活性剤、触媒、発泡剤、難燃剤、およびその他のイソシアネート反応性成分は第二の成分を構成し、これは通常「B」成分と呼ばれる。従って、AおよびBの副成分を、小さな調製物を得るための手混合によって、そして好ましくはブロック、スラブ、ラミネート、現場注入パネル、およびその他の物品、スプレーされたフォーム、フロスおよび類似物を形成するための機械混合法によって混合することにより、ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートのフォームが容易に調製される。任意に、難燃剤、着色剤、補助発泡剤、およびさらに他のポリオールなどの他の成分を、混合ヘッドまたは反応位置に第三の流れとして添加することができる。しかし、最も好ましくは、これらは全て上記の一つのB成分の中に組み込まれる。」(【0131】) (2)「フォーム 本発明は、本発明の組成物を含む発泡剤を含むポリマーフォーム配合物により調製されたあらゆるフォーム(閉じた気泡フォーム(closed cell foam)、閉じていない気泡フォーム(open cell foam)、硬質のフォーム、柔軟なフォーム、スキン層付きフォーム等を含むが、これらに限定されない)に関する。本願出願人らは、フォーム、特に本発明に記載のポリウレタンフォームのような熱硬化性フォームの一つの利点は、好ましくは熱硬化性フォームの態様と関連して、特にそして好ましくは低温条件下で、例えばK-ファクターまたはラムダにより測定することのできる、非常にすぐれた熱特性を達成できる能力であるということを見出した。本発明のフォームは、特に本発明の熱硬化性フォームは種々の用途に用いることができると意図されているが、ある好ましい態様において、本発明は、冷蔵庫用フォーム、冷凍庫用フォーム、冷蔵庫/冷凍庫用フォーム、パネル用フォーム、及び他の低温又は極低温製造装置を含む、本発明に記載の装置用フォームを含む。」(【0142】) (3)「特定の好ましい態様において、本発明に記載のフォームは、本発明の好ましい発泡剤の多くが関連する低オゾン層破壊係数及び低地球温暖化係数に加えて、断熱効率(特に、熱硬化性フォーム)、寸法安定性、圧縮強さ、断熱効率の経時変化を含む1つ又は2つ以上の非常にすぐれた特徴、性質、及び/又は特性を提供する。ある非常に好ましい態様において、本発明は、フォーム製品に形成されるフォームのような熱硬化性フォームを提供し、それは、同じ発泡剤(又は、通常用いられる発泡剤であるHFC-245fa)を同じ量で用いるが、本発明に記載の式Iの化合物を有さずに作製されたフォームに比べて改善された熱伝導性を示す。ある非常に好ましい態様において、熱硬化性フォーム、及び好ましくは本発明のポリウレタンフォームは、40°Fで、約0.14以下のK-ファクター(BTU in/hr ft^(2) °F)を示し、より好ましくは0.135以下、そして更に好ましくは0.13以下を示す。更に、ある態様においては、熱硬化性フォーム、及び好ましくは本発明のポリウレタンフォームは75°Fで、約0.16以下のK-ファクター(BTU in/hr ft^(2) °F)を示し、より好ましくは0.15以下、そして更に好ましくは0.145以下を示す。」(【0143】) (4)「実施例9-ポリウレタンフォームk-ファクター この実施例は、ポリウレタンフォームの製造において使用した場合の本発明にしたがった発泡剤の予想外の性能を更に実証する。三つの機器用ポリウレタンフォームをつくり、各々は、異なる発泡剤を使用することを除いては、実質的に同じ材料、手順、及び装置を用いて形成した。ポリオール系は、液体発泡剤との使用に適合された商業的に入手可能な機器タイプの配合物である。フォーム装置を使用してフォームを形成する。発泡剤は、本質的に等しいモル濃度で使用する。形成後、各フォームをk-ファクターを測定するのに適するサンプルへと切断し、k-ファクターは以下の表8Bに示すようなものであった。発泡剤全体を基準とした重量パーセントの発泡剤組成を以下の表8Aに開示する:」(【0180】) (5) (【0182】) (6)「実施例14-ポリウレタンフォームk-ファクター 実施例9と同じポリオール配合物及びイソシアネートを用いて更なる実験を行った。フォームはハンドミックスにより調製する。一連の発泡剤は、式IIにしたがった化合物、すなわち、トランスHFCO-1233zd(CF_(3)CH=CHCl)と、以下の追加の化合物:イソ-ペンタン、ノルマル-ペンタン、及びシクロペンタンの各々との組合せからなる。HFCO-1233zd:追加の化合物のモル比が25:75、50:50、及び75:25で、各々の追加の化合物の組合せで三種の発泡剤を形成する。各発泡剤組成物は、起泡可能な組成物に対して実施例9における発泡剤とほぼ同じモルパーセントで存在する。許容可能なフォームが形成され、好ましくは、k-ファクターは上述の実施例9において示したものとほぼ等しいか又はそれより良好であることがわかった。」(【0189】) 2 刊行物3に記載された発明 上記記載事項(6)から、刊行物3には、ポリオール配合物及びイソシアネートを用い、トランスHFCO-1233zd(CF_(3)CH=CHCl)と、シクロペンタンの、モル比が50:50の組み合わせである発泡剤を用いて製造したポリウレタンフォーム、及び、ポリオール配合物及びイソシアネートを用い、トランスHFCO-1233zd(CF_(3)CH=CHCl)と、シクロペンタンの、モル比が75:25の組み合わせである発泡剤を用いて製造したポリウレタンフォームが記載されているといえるから、刊行物3には 「トランスHFCO-1233zd(CF_(3)CH=CHCl)と、シクロペンタンの、モル比が50:50又は75:25の組み合わせである発泡剤を用いて形成したポリウレタンフォーム」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 3 本願発明と引用発明との対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明における 「トランスHFCO-1233zd(CF_(3)CH=CHCl)」は、本願発明の「トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン」に相当し、引用発明の「トランスHFCO-1233zd(CF_(3)CH=CHCl)と、シクロペンタンのモル比」である「50:50」及び「75:25」は、いずれも本願発明の「50から75モル%のトランス1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンおよび25から50モル%のシクロペンタン」とのモル比に包含されるから、引用発明の「トランスHFCO-1233zd(CF_(3)CH=CHCl)と、シクロペンタンの、モル比が50:50又は75:25の組み合わせである発泡剤」は、本願発明の「50から75モル%のトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンおよび25から50モル%のシクロペンタンを含む発泡剤組成物」に相当する。 また、引用発明の「ポリウレタンフォーム」は、記載事項(2)の「ポリウレタンフォームのような熱硬化性フォーム」との記載及び発泡剤を用いて形成されていることからみて、本願発明の「熱硬化性発泡体」に相当する。 さらに引用発明の「ポリウレタンフォーム」は、「トランスHFCO-1233zd(CF_(3)CH=CHCl)と、シクロペンタンのモル比が50:50又は75:25の組み合わせである発泡剤を用いて形成されていることから、当該発泡剤を含むということができる。 してみると、本願発明と引用発明とは、 「50から75モル%のトランス1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンおよび25から50モル%のシクロペンタンを含む発泡剤組成物を含む、熱硬化性発泡体」 という点で一致し、以下の点で一応相違する。 (相違点1) 本願発明は「熱硬化性発泡体」が「現場注入熱硬化性発泡体パネル」であるのに対して、引用発明では「ポリウレタンフォーム」である点。 (相違点2) 本願発明は「低温貯蔵用途での使用」であるのに対して、引用発明では使用については特定されていない点。 4 判断 上記相違点について検討する。 相違点1について、刊行物3には、イソシアネートと発泡剤を含む「A」成分と、ポリオールまたはポリオールの混合物を含む「B」成分を、「現場注入パネル」を形成するための機械混合法によって混合することにより、ポリウレタンのフォームが調製されることが記載されている(記載事項(1))から、刊行物3には、ポリウレタンのフォームを現場注入パネルとすることが記載されているといえる。 してみると、相違点1は実質的な相違点ではない。 相違点2について、刊行物3には、 フォームを、「冷蔵庫用フォーム、冷凍庫用フォーム、冷蔵庫/冷凍庫用フォーム」の用途に用いることができることが記載されており(記載事項(2))、また、ポリウレタンフォームが「40°Fで、約0.14以下のK-ファクター(BTU in/hr ft^(2) °F)を示すことが記載されている(記載事項(3))。さらに記載事項(4)ないし(6)によれば、実際にポリウレタンフォームの40°Fでのk-ファクターを測定している。 ここで、フォームを「冷蔵庫用フォーム、冷凍庫用フォーム、冷蔵庫/冷凍庫用フォーム」の用途に用いることは、フォームの「使用」に他ならない。 そして、本願明細書の段落【0033】には、「55°F未満の温度で測定したK値は0.14未満を示した。これは、広範な低温貯蔵用途、例えば冷蔵庫および冷凍庫での使用に有利であり」と記載されているから、刊行物3に記載された「冷蔵庫用」、「冷凍庫用」および「冷蔵庫/冷凍庫用」はいずれも本願発明の「低温貯蔵用途」に相当するといえるし、「40°F」の温度も「55°F未満」であって「低温」であるといえる。 してみると、刊行物3には、引用発明のポリウレタンフォームの、低温貯蔵用途での使用が実質的に記載されているといえる。 よって、相違点2は実質的な相違点ではない。 したがって、本願発明は、引用発明との間で実質的に相違する点が存在せず、刊行物3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。 5 請求人の主張について 請求人は審判請求書の「3-2 理由1および2に対する意見」において、以下の2点のとおり主張する。 (1)「図3に示すように、シクロペンタンの量が50モル%以下となると急激に熱伝導率が低下する。さらに表6Bに記載のとおり、シクロペンタンの量が50モル%以下となると不粘着時間が長くなる。不粘着時間が長いことはポットライフが長いことであるので、現場注入熱硬化性発泡体パネルの製造において作業性を向上できる。 以上、本願発明は『1233zd(E)と、50モル%以下のシクロペンタンとのブレンドは、評価した温度全体にわたって、初期熱伝導率に対して著しい影響を及ぼさない・・・優れた熱的性質と発泡剤の許容可能なコストとのバランスが取れる発泡体を探索している現場注入用途では特に有益である』との効果を奏する(出願時明細書段落0079)。」 (2)「本願発明は1233zd(E)と25から50モル%以下のシクロペンタンを含む発泡剤組成物を用いる点および現場注入熱硬化性発泡体パネルの低温貯蔵用途での使用に関する点で、引用文献3に記載の発明と相違する。引用文献3には本願発明の効果を示唆する具体的な物性値等は開示されていない。」 上記各主張について検討する。 上記主張(1)につき検討する。 まず、本願の図3に係る発泡体は、本願明細書の記載(【0067】)からみて、「手動混合法によって調製した」「発泡体を、104°Fで金型に注入し、離型する前に15分間硬化させた」ものであるから、同発泡体は、金型を使用し、離型するものであると解するのが相当である。そうすると、仮に、図3から、シクロペンタンの使用量と熱伝導率の関係が看取できるとしても、同図から、本願発明の「現場注入熱硬化性発泡体パネル」に係るシクロペンタンの使用量と熱伝導率の関係が確認できるものでない。 次に、確かに、表6Bの記載から、シクロペンタンを50モル%又は25モル%を使用した場合に、75モル%使用した場合に比して、不粘着時間が長くなることは看取できる。しかし、本願明細書には、「ポットライフ」(「可使時間」ともいう。)に係る記載はないのみならず、「不粘着時間が長」ければ「ポットライフが長い」との技術常識もない。そうすると、「不粘着時間が長」ければ「ポットライフが長い」ということを前提に、「不粘着時間が長いことはポットライフが長いことである」との主張は、本願明細書の記載に基づかないものである上、その前提において妥当とはいえないから、請求人の主張は採用できない。 また、本願明細書の記載を検討しても、「優れた熱的性質と発泡剤の許容可能なコストとのバランスが取れる発泡体を探索している現場注入用途では特に有益である」ということについて、「現場注入用途」が、他の用途、例えば本願明細書段落【0051】に記載された「ブロック」、「スラブ」、「積層品」等に対して「特に有益である」ことについての具体的理由は何ら示されていない。 主張(2)につき検討すると、本願発明は、上記4で説示したとおりの理由により、引用発明と実質的に相違するものではなく、使用される熱硬化性発泡体としては同一であるから、引用発明のフォームも、本願発明のものと同様の熱的性質を有するものと理解するのが自然である。 ちなみに、刊行物3には、「実施例14」としてポリウレタンフォームのk-ファクターにつき実施例9のものとほぼ等しいかそれより良好である旨が記載されており、「実施例9」では、40°Fにおいて0.116又は0.119のk-ファクターが達成されていることが記載されているのであるから(上記記載事項(4)ないし(6)参照)、引用発明のフォームが、本願発明に係る熱硬化性発泡体と同等以上の熱的性質を有しているものとも解することができる。 よって請求人の上記審判請求書の主張(1)及び(2)はいずれも当を得ないものであるから採用することができず、上記4の検討結果を左右するものではない。 6 当審の判断のまとめ 以上のとおりであるから、本願については、他の請求項について検討するまでもなく、上記4に示した理由により拒絶すべきものである。 第5 むすび 以上のとおりであるから、本願については、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審理終結日 | 2018-05-08 |
結審通知日 | 2018-05-09 |
審決日 | 2018-05-22 |
出願番号 | 特願2014-545067(P2014-545067) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(C08J)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大村 博一 |
特許庁審判長 |
大熊 幸治 |
特許庁審判官 |
橋本 栄和 海老原 えい子 |
発明の名称 | 発泡体、およびHCFOまたはHFO発泡剤を含む発泡体から作られる物品 |
代理人 | 宮前 徹 |
代理人 | 中西 基晴 |
代理人 | 小野 新次郎 |
代理人 | 新井 規之 |
代理人 | 山本 修 |