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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
管理番号 1344831
異議申立番号 異議2018-700035  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-11-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-01-18 
確定日 2018-08-31 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6165406号発明「防振ゴム組成物及び防振ゴム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6165406号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし5〕について、訂正することを認める。 特許第6165406号の請求項1ないし5に係る発明を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6165406号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成21年11月18日を出願日とする出願であって、平成29年6月30日に特許権の設定登録がされ、同年7月19日にその特許公報が発行され、その後平成30年1月18日付けで、その請求項1ないし5に係る発明の特許に対し、特許異議申立人 笹野 拓馬により特許異議の申立てがされ、当審において平成30年4月13日付けで取消理由(以下、「取消理由」という。)が通知され、同年6月14日付けで特許権者 株式会社ブリヂストン(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出されるとともに訂正の請求(以下、「本件訂正の請求」という。)がされ、同年6月27日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、それに対し、同年7月30日付けで特許異議申立人から意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否について

1 訂正の内容

本件訂正の請求による訂正の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1の
「ゴム成分がジエン系ゴムのみからなる防振ゴム組成物であって、充填剤としてカーボンブラックとシリカとを含有し、前記ジエン系ゴムとして天然ゴムを単独で用いると共に、前記シリカが、窒素吸着比表面積(BET法)が80?230m^(2)/gの範囲を満たすシリカゲルであり、カーボンブラック及びシリカの配合量がゴム成分100質量部に対して10?80質量部であり、更に、カーボンブラック(a)とシリカ(b)との配合割合が(a)/(b)=40/60?20/80(質量比)であることを特徴とする防振ゴム組成物。」



「ゴム成分がジエン系ゴムのみからなる防振ゴム組成物であって、充填剤としてカーボンブラック(但し、FEFを除く。)とシリカとを含有し、前記ジエン系ゴムとして天然ゴムを単独で用いると共に、前記シリカが、窒素吸着比表面積(BET法)が80?230m^(2)/gの範囲を満たすシリカゲルであり、カーボンブラック及びシリカの配合量がゴム成分100質量部に対して10?80質量部であり、更に、カーボンブラック(a)とシリカ(b)との配合割合が(a)/(b)=40/60?20/80(質量比)であることを特徴とする防振ゴム組成物。」

に訂正する。

併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし5についても同様の訂正をする。

(2)訂正事項2
明細書の段落【0008】に「充填剤としてカーボンブラックとシリカとを含有し、」と記載されているのを、
「充填剤としてカーボンブラック(但し、FEFを除く。)とシリカとを含有し、」
に訂正する。

(3)訂正事項3
明細書の段落【0013】に「カーボンブラックとしては、公知のものを使用することができ、特に限定されるものではないが、例えば、SRF、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF、FT、MT等のカーボンブラックを挙げることができ、」と記載されているのを、
「カーボンブラックとしては、公知のものを使用することができ、特に限定されるものではないが、例えば、SRF、GPF、HAF、ISAF、SAF、FT、MT等のカーボンブラックを挙げることができ、」
に訂正する。

(4)訂正事項4
明細書の段落【0022】に
「[実施例1?4、比較例1?6、参考例1?8]
下記表1及び表2に示す配合組成で混練し加硫して、実施例1?4及び比較例1?6の各々の防振ゴム用ゴム組成物を所定の条件で所定の形状に加硫硬化させ、」と記載されているのを、
「[実施例1?3、比較例1?6、参考例1?9]
下記表1及び表2に示す配合組成で混練し加硫して、実施例1?3及び比較例1?6の各々の防振ゴム用ゴム組成物を所定の条件で所定の形状に加硫硬化させ、」
に訂正する。

(5)訂正事項5
明細書の段落【0030】の表1

「【表1】


と記載されているのを



に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項及び独立特許要件

(1)訂正事項1について

訂正事項1は、訂正前の請求項1の「ゴム成分がジエン系ゴムのみからなる防振ゴム組成物であって、充填剤としてカーボンブラックとシリカとを含有し、前記ジエン系ゴムとして天然ゴムを単独で用いると共に、前記シリカが、窒素吸着比表面積(BET法)が80?230m^(2)/gの範囲を満たすシリカゲルであり、カーボンブラック及びシリカの配合量がゴム成分100質量部に対して10?80質量部であり、更に、カーボンブラック(a)とシリカ(b)との配合割合が(a)/(b)=40/60?20/80(質量比)であることを特徴とする防振ゴム組成物。」をさらに「ゴム成分がジエン系ゴムのみからなる防振ゴム組成物であって、充填剤としてカーボンブラック(但し、FEFを除く。)とシリカとを含有し、前記ジエン系ゴムとして天然ゴムを単独で用いると共に、前記シリカが、窒素吸着比表面積(BET法)が80?230m^(2)/gの範囲を満たすシリカゲルであり、カーボンブラック及びシリカの配合量がゴム成分100質量部に対して10?80質量部であり、更に、カーボンブラック(a)とシリカ(b)との配合割合が(a)/(b)=40/60?20/80(質量比)であることを特徴とする防振ゴム組成物。」とするものであり、「カーボンブラック」をさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項1の「充填剤としてカーボンブラック(但し、FEFを除く。)」と限定することについては、いわゆる「除くクレーム」とする訂正であって、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2ないし4について

訂正事項2ないし4の明細書の段落【0008】、【0013】、【0022】及び【0030】の表1に係る訂正は、上記訂正事項1に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、願書に添付した明細書の【0008】、【0013】、【0022】及び【0030】の表1の記載を訂正事項1に対応するように訂正するものであるから、当該訂正事項2ないし4は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(3)一群の請求項

本件訂正の請求による訂正は、訂正後の請求項1ないし5についての訂正であるが、訂正前の請求項2ないし5は訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであるので、訂正前の請求項1ないし5は、一群の請求項である。
したがって、本件訂正の請求は、一群の請求項に対して請求されたものである。

(4)独立特許要件

特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし5に対してされているので、訂正後の請求項1ないし5に係る発明については、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

3 小括

以上のとおりであるから、本件訂正の請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第4項及び第9項で準用する同法第126条第5ないし7項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1ないし5〕について訂正することを認める。

第3 本件発明

1 本件訂正の請求により訂正された訂正後の請求項1ないし5に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明5」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
ゴム成分がジエン系ゴムのみからなる防振ゴム組成物であって、充填剤としてカーボンブラック(但し、FEFを除く。)とシリカとを含有し、前記ジエン系ゴムとして天然ゴムを単独で用いると共に、前記シリカが、窒素吸着比表面積(BET法)が80?230m^(2)/gの範囲を満たすシリカゲルであり、カーボンブラック及びシリカの配合量がゴム成分100質量部に対して10?80質量部であり、更に、カーボンブラック(a)とシリカ(b)との配合割合が(a)/(b)=40/60?20/80(質量比)であることを特徴とする防振ゴム組成物。
【請求項2】
上記カーボンブラックは、そのヨウ素吸着量が40?140g/kg,DBP吸油量が90?160ml/100gの範囲である請求項1記載の防振ゴム組成物。
【請求項3】
上記カーボンブラックとして、SAF、ISAF、又はHAFを用いる請求項1記載の防振ゴム組成物。
【請求項4】
シランカップリング剤を含有する請求項1?3のいずれか1項記載の防振ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか1項記載のゴム組成物を硬化させてなる防振ゴム。」

2 当審が通知した取消理由について

当審が通知した取消理由の概要は次のとおりである。
「理由1 本件特許発明1、2、4、5は、その出願前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。」

3 取消理由における証拠方法
甲第1号証:特開2009-24045号公報

4 取消理由についての当審の判断

(1)甲第1号証に記載された事項及び甲第1号証に記載された発明

ア 甲第1号証に記載された事項

(ア)
「【請求項1】
ジエン系ゴムとキサントゲン変性クロロプレン系ゴムとの質量比15:85?65:35の組合わせからなるゴム成分と、カーボンブラック10体積%以下を含むことを特徴とする防振ゴム組成物。
【請求項2】
前記ジエン系ゴムが天然ゴムである請求項1に記載の防振ゴム組成物。
【請求項3】
前記カーボンブラックが、ヨウ素吸着量10?70g/kg及びDBP吸油量30?180ml/100gのものである請求項1又は2に記載の防振ゴム組成物。
【請求項4】
さらに、シリカを含む請求項1?3のいずれかに記載の防振ゴム組成物。
【請求項5】
前記シリカが、BET比表面積70?230m^(2)/gのものである請求項4に記載の防振ゴム組成物。
【請求項6】
カーボンブラックとシリカとの合計含有量が、ゴム成分100質量部に対して、10?80質量部である請求項4又は5に記載の防振ゴム組成物。
【請求項7】
さらに、シランカップリング剤を、シリカに対して1?10質量%の割合で含む請求項4?6のいずれかに記載の防振ゴム組成物。
【請求項8】
請求項1?7のいずれかに記載の防振ゴム組成物の加硫物からなる防振ゴム。
【請求項9】
鉄道車輌に用いられる請求項8に記載の防振ゴム。」

(イ)
「【0015】
(カーボンブラック)
本発明の防振ゴム組成物において、充填材として用いられるカーボンブラックとしては、ヨウ素吸着量が10?70g/kg及びDBP吸油量が30?180ml/100gの範囲にあるものが好ましい。このようなカーボンブラックとしては、SRF級グレード、GPF級グレード及びFEF級グレードなどを挙げることができる。また、チッ素吸着比表面積(N_(2)SA)は、10?75m^(2)/g程度である。
上記カーボンブラックの粒径よりも小さな粒径のカーボンブラックを用いると、得られる防振ゴムの動倍率が高くなるおそれがあり、一方上記カーボンブラックの粒径よりも大きな粒径のカーボンブラックを用いると、得られる防振ゴムの補強性が低下するおそれがある。上記性状を有するカーボンブラックを用いることにより、補強性及び低動倍率のバランスした防振ゴムを与えるゴム組成物を得ることができる。
ヨウ素吸着量のより好ましい範囲は、12?60g/kgであり、DBP吸油量のより好ましい範囲は60?180ml/100gである。
なお、上記のヨウ素吸着量は、JIS K 6217-1:2001に準拠して測定した値であり、DBP吸油量は、JIS K 6217-4:2001に準拠して測定した値である。また、窒素吸着比表面積(N_(2)SA)は、ASTM D3037に準拠して測定した値である。
本発明においては、カーボンブラックとして、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の防振ゴム組成物においては、得られる防振ゴムの電気絶縁性を確保する観点から、上記カーボンブラックの含有量は10体積%以下であることを要する。この含有量が10体積%を超えると電気絶縁性を確保することができない場合がある。」

(ウ)
「【0022】
[防振ゴム]
本発明の防振ゴムは、前述した本発明の防振ゴム組成物の加硫物からなるものであって、本発明の防振ゴム組成物を所定形状に成形加工後、通常140?180℃程度、好ましくは150?170℃の温度で加硫処理することにより、製造することができる。
本発明の防振ゴムは、破壊特性、低動倍率、耐オゾン性、電気絶縁性及び金属との加硫接着性のいずれも良好であるものにすることができ、これらの性能が要求される用途、例えば鉄道車輌用、特に鉄道車輌用ブッシュに好適に用いられる。上記鉄道車輌用ブッシュは、近くに配置されているモーターから発生するオゾンの影響を受けるため耐オゾン性を有することが必要であり、また、電気絶縁性でないと、電食を引き起こす問題が生じる。
【実施例】
【0023】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例で得られたゴム組成物の加工性及び金属との加硫接着性を評価すると共に、加硫ゴムの諸特性を求めた。
<ゴム組成物の加工性、金属との加硫接着性>
(1)加工性
下記の方法によりミル収縮を求め、加工性を評価した。
未加硫ゴムをロールにてシート化し、収縮具合、表面肌、エッジ切れを目視にて評価した。これら評価項目に対して問題ないものを○で評価し、収縮が大きい、表面肌が悪い、又はエッジ切れを起こす場合には×とした。
(2)金属との加硫接着性
加硫接着は、油圧プレスにて160℃で10分間行い、加硫接着性の評価は、JIS K 6256の金属片とゴムの90度剥離試験に基づき実施し、下記の判定基準に従って評価した。(N=3)
○:剥離試験の際にゴムが破壊される。
×:ゴムと接着剤の界面で剥離が生じる。
なお、金属片は鋼材を使用した。
【0024】
<加硫ゴムの諸特性>
ゴム組成物を160℃で10分間加硫処理したのち、下記試験方法により評価を行った。
(3)常態物性
ゴム硬度Hs:JIS K 6253(タイプA)に準拠して測定した。
破断伸びEb:JIS K 6251に準拠して測定した。
破断強度Tb:JIS K 6251に準拠して測定した。
(4)動特性
静バネ定数Es:JIS K 6385(引張方法)に準拠して測定した。 動倍率Ed(15Hz、0.2%)/Es:JIS K 6385(引張方法)に準拠して測定した。動倍率Ed(15Hz、0.2%)/Esが2以下を合格とした。
(5)耐オゾン性
JIS K 6259に準拠し、オゾン濃度50pphm、40℃、0?20%伸張条件下で動的オゾン劣化試験を24時間及び100時間行い、耐オゾン性を評価した。評価は中央部に亀裂が生じるか否かで判定した。
(6)絶縁抵抗
加硫ゴムシートに1000Vの直流電圧を印加し、電気抵抗(MΩ)を測定した。
【0025】
実施例1?4及び比較例1?5
表1に示す配合割合の各成分を、混練りして、9種のゴム組成物を調製した。 この9種のゴム組成物について、加工性及び金属との加硫接着性を評価すると共に、加硫ゴムの諸特性を求めた。その結果を表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
[注]
1)キサントゲン変性CR:電気化学工業(株)製「DCR-66」
2)天然ゴム:「RSS#1」
3)EPDM:エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体、住友化学(株)製「エスプレン586」
4)カーボンブラック(N550):FEF;ヨウ素吸着量=43g/kg、DBP吸油量=121ml/100g、N_(2)SA(窒素吸着比表面積)=42m^(2)/g、旭カーボン(株)製「旭#65」
5)シリカ:東ソー・シリカ(株)製「ニップシールVN3」、BET比表面積175m^(2)/g
6)シランカップリング剤;DEGUSSA社製「Si69」
7)プロセスオイル;パラフィン系オイル
8)ワックス;Rhein Chemie社製「Antilux654
9)老化防止剤I:精工化学(株)製「ノンフレックスRD」
10)老化防止剤II:精工化学(株)製「オゾノン6C」
11)加硫促進剤I:三新化学工業(株)製「サンセラーCZ」
12)加硫促進剤II:三新化学工業(株)製「サンセラーTT」
【0028】
【表2】

【0029】
表1から下記のことが分かる。
ゴム成分として、天然ゴムのみを用いた比較例1では、加硫ゴムは良好な常態物性及び低動倍率を有するものの、耐オゾン性が悪い。ゴム成分として、キサントゲン変性CRのみを用い、かつカーボンブラックを10体積%より多く含有する比較例4では、ゴム組成物の加工性及び金属との加硫接着性が悪い上、加硫ゴムの破断強度が低く、絶縁性も悪い。ゴム成分として、天然ゴムとEPDMの組合わせを用い、かつカーボンブラックを10体積%より多く含有する比較例5では、加硫ゴムは、破断強度が低く、かつ動倍率が高い上、絶縁性が悪い。
ゴム成分として、天然ゴムとキサントゲン変性CRとの組合わせを用い、かつその中のキサントゲン変性CRの含有量が35質量%未満である比較例2では、良好な常態物性及び低動倍率を有するものの、耐オゾン性が悪い。また、カーボンブラックを10体積%より多く含有する比較例3では、良好な常態物性、低動倍率及び耐オゾン性を有するものの、絶縁性が悪い。
これに対し、本発明のゴム組成物である実施例1?4は、いずれも加工性及び金属との加硫接着性が良好である上、加硫ゴムの常態物性、動倍率、耐オゾン性及び絶縁性が良好である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の防振ゴム組成物は、加工性及び金属との加硫接着性が良好であると共に、破壊特性及び低動倍率を損なわずに耐オゾン性、電気絶縁性を向上させた防振ゴムを与える。この防振ゴムは、鉄道車輌用、特に鉄道車輌用ブッシュに好適に用いられる。」

イ 甲第1号証に記載された発明

甲第1号証に記載された事項、特に、比較例1に関する記載を整理すると、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1-1発明」、「甲1-2発明」という。)が記載されていると認める。

<甲1-1発明>
「天然ゴム100質量部、カーボンブラック(N550)10質量部、シリカ20質量部、シランカップリング剤2.0質量部を含む防振ゴム組成物であって、前記カーボンブラックN550は、FEF;ヨウ素吸着量=43g/kg、DBP吸油量=121ml/100g、N_(2)SA(窒素吸着比表面積)=42m^(2)/g、旭カーボン(株)製「旭♯65」であり、前記シリカは、東ソー・シリカ(株)製の「ニップシールVN3」、BET比表面積175m^(2)/gである防振ゴム組成物。」

<甲1-2発明>
「天然ゴム100質量部、カーボンブラック(N550)10質量部、シリカ20質量部、シランカップリング剤2.0質量部を含む防振ゴム組成物の加硫物からなる加硫ゴムシートであって、前記カーボンブラックN550は、FEF;ヨウ素吸着量=43g/kg、DBP吸油量=121ml/100g、N_(2)SA(窒素吸着比表面積)=42m^(2)/g、旭カーボン(株)製「旭♯65」であり、前記シリカは、東ソー・シリカ(株)製の「ニップシールVN3」、BET比表面積175m^(2)/gである防振ゴム組成物の加硫物からなる加硫ゴムシート。」

(2)本件特許発明1について

本件特許発明1と甲1-1発明を対比する。

甲1-1発明の「天然ゴム」は、本件特許発明1の「ジエン系ゴム」及び「天然ゴム」に相当する。
また、甲1-1発明の「天然ゴム」が「100質量部」であることは、本件特許発明1のゴム成分がジエン系ゴム「のみからなる」こと及び天然ゴムを「単独で用いる」ことに相当する。
甲1-1発明の「カーボンブラック(N550)」、「シリカ」は、本件特許発明1の「カーボンブラック」、「シリカ」に相当する。
また、甲1-1発明の「カーボンブラック」及び「シリカ」を合わせたものは、本件特許発明1の「充填剤」に相当する。
さらに、甲1-1発明の「シリカ」の「BET比表面積175m^(2)/g」は、本件特許発明1の「シリカ」の「窒素吸着比表面積(BET法)80?230m^(2)/g」に重複一致する。
甲1?1発明は、天然ゴム100質量部に対し、「カーボンブラック(N550)」を「10質量部」、「シリカ」を「20質量部」含むことから、「カーボンブラック(N550)」及び「シリカ」の合計は、「30質量部」となり、本件特許発明1の「カーボンブラック及びシリカの配合量がゴム成分100質量部に対して10?80質量部」であることに重複一致する。
また、甲1-1発明は、「カーボンブラック(N550)」を「10質量部」、「シリカ」を「20質量部」含むから、「カーボンブラック(N550)/シリカ」の割合は、「33.3/66.7」(小数第2位四捨五入したもの)となり、当該割合は、本件特許発明1の「カーボンブラック(a)とシリカ(b)との配合割合」が「(a)/(b)=40/60?20/80(質量比)であること」と重複一致する。
そして、甲1-1発明の「防振ゴム組成物」は、本件特許発明1の「防振ゴム組成物」に相当する。

そうすると、両者は、

「ゴム成分がジエン系ゴムのみからなる防振ゴム組成物であって、充填剤としてカーボンブラックとシリカとを含有し、前記ジエン系ゴムとして天然ゴムを単独で用いると共に、前記シリカが、窒素吸着比表面積(BET法)が175m^(2)/gの範囲を満たすシリカであり、カーボンブラック及びシリカの配合量がゴム成分100質量部に対して30質量部であり、更に、カーボンブラック(a)とシリカ(b)との配合割合が(a)/(b)=33.3/66.7(質量比)である防振ゴム組成物。」
との点で一致し、少なくとも次の点で相違する。

<相違点1>
本件特許発明1は、カーボンブラックについて「カーボンブラック(但し、FEFを除く。)」と特定するのに対し、甲1-1発明は、「FEF」である点。

<相違点2>
本件特許発明1は、シリカについて「シリカゲル」と特定するのに対し、甲1-1発明は、そのような特定がない点。

上記相違点1について検討する。

甲1-1発明のカーボンブラックは、FEFである。一方、本件特許発明1の「カーボンブラック(但し、FEFを除く。)」、すなわち、本件特許発明1のカーボンブラックは、FEFを含まないものである。そのため、両者のカーボンブラックは異なるものであるといえる。
したがって、相違点1は実質的な相違点であって、相違点2について判断するまでもなく本件特許発明1は、甲1-1発明であるとはいえない。

(3)本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用するものであるので、本件特許発明1と同様に、甲1-1発明であるとはいえない。

(4)本件特許発明4について
本件特許発明4は、請求項1を直接ないし間接的に引用するものであるので、本件特許発明1及び2と同様に、甲1-1発明であるとはいえない。

(5)本件特許発明5について

本件特許発明5と甲1-2発明を対比する。

甲1-2発明の「天然ゴム」は、本件特許発明5の「ジエン系ゴム」及び「天然ゴム」に相当する。
また、甲1-2発明の「天然ゴム」が「100質量部」であることは、本件特許発明5のゴム成分がジエン系ゴム「のみからなる」こと及び天然ゴムを「単独で用いる」ことに相当する。
甲1-2発明の「カーボンブラック(N550)」、「シリカ」は、本件特許発明5の「カーボンブラック」、「シリカ」に相当する。
また、甲1-2発明の「カーボンブラック」及び「シリカ」を合わせたものは、本件特許発明5の「充填剤」に相当する。
さらに、甲1-2発明の「シリカ」の「BET比表面積175m^(2)/g」は、本件特許発明5の「シリカ」の「窒素吸着比表面積(BET法)80?230m^(2)/g」に重複一致する。
甲1-2発明は、天然ゴム100質量部に対し、「カーボンブラック(N550)」を「10質量部」、「シリカ」を「20質量部」含むことから、「カーボンブラック(N550)」及び「シリカ」の合計は、「30質量部」となり、本件特許発明5の「カーボンブラック及びシリカの配合量がゴム成分100質量部に対して10?80質量部」であることに重複一致する。
また、甲1-2発明は、「カーボンブラック(N550)」を「10質量部」、「シリカ」を「20質量部」含むから、「カーボンブラック(N550)/シリカ」の割合は、「33.3/66.7」(小数第2位四捨五入したもの)となり、甲1-2発明の当該割合は、本件特許発明5の「カーボンブラック(a)とシリカ(b)との配合割合」が「(a)/(b)=40/60?20/80(質量比)であること」と重複一致する。

そして、甲1-2発明の「防振ゴム組成物」は、本件特許発明5の「防振ゴム組成物」に相当する。
さらに、甲1-2発明の「防振ゴム組成物の加硫物からなる加硫ゴムシート」は、本件特許発明5の「ゴム組成物を硬化させてなる防振ゴム」に相当する。

そうすると、両者は、
「ゴム成分がジエン系ゴムのみからなる防振ゴム組成物であって、充填剤としてカーボンブラックとシリカとを含有し、前記ジエン系ゴムとして天然ゴムを単独で用いると共に、前記シリカが、窒素吸着比表面積(BET法)が175m^(2)/gの範囲を満たすシリカであり、カーボンブラック及びシリカの配合量がゴム成分100質量部に対して30質量部であり、更に、カーボンブラック(a)とシリカ(b)との配合割合が(a)/(b)=33.3/66.7(質量比)であることを特徴とする防振ゴム組成物であり、そのゴム組成物を硬化してなる防振ゴム。」
との点で一致し、少なくとも次の点で相違する。

<相違点3>
本件特許発明5は、カーボンブラックについて「カーボンブラック(但し、FEFを除く。)」と特定するのに対し、甲1-2発明は、「FEF」である点。

<相違点4>
本件特許発明5は、シリカについて「シリカゲル」と特定するのに対し、甲1-2発明は、そのような特定がない点。

上記相違点3について検討する。

甲1-2発明のカーボンブラックは、FEFである。一方、本件特許発明5の「カーボンブラック(但し、FEFを除く。)」、すなわち、本件特許発明5のカーボンブラックは、FEFを含まないものである。そのため、両者のカーボンブラックは異なるものであるといえる。
したがって、相違点3は実質的な相違点であって、相違点4について判断するまでもなく本件特許発明5は、甲1-2発明であるとはいえない。

(6)小括
したがって、取消理由1は理由がない。

5 取消理由で採用しなかった特許異議申立ての理由についての判断

(1)取消理由で採用しなかった特許異議申立ての理由及び証拠方法

ア 取消理由で採用しなかった特許異議申立ての理由は、概ね次のとおりである。

(新規性)訂正前の本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。 (以下、「取消理由A」という。)

(進歩性)訂正前の本件特許の請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は同法113条第2号に該当し、取り消すべきものである。(以下、「取消理由B」という。)

(進歩性)訂正前の本件特許の請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は同法113条第2号に該当し、取り消すべきものである。(以下、「取消理由C」という。)

(進歩性)訂正前の本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、甲第4号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は同法113条第2号に該当し、取り消すべきものである。(以下、「取消理由D」という。)

(進歩性)訂正前の本件特許の請求項2、3に係る発明は、甲第4号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は同法113条第2号に該当し、取り消すべきものである。(以下、「取消理由E」という。)

イ 証拠方法
甲第1号証:特開2009-24045号公報
甲第2号証:特開2009-7421号公報
甲第3号証:特開2008-208329号公報
甲第4号証:特開2009-256576号公報
甲第5号証:ゴム用語辞典、1997年9月発行、付表、ASTM
D1765-96によるゴム用カーボンブラックの分類 No.2
甲第6号証:特開2004-285209号公報

(2)取消理由で採用しなかった特許異議申立ての理由についての判断

ア 取消理由Aについて

甲第2号証の段落【0026】、表1の比較例3の記載を整理すると、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

<甲2発明>
「天然ゴム(NR)100質量部、カーボンブラック(HAF)(商品名:シーストKH、東海カーボン株式会社製、窒素吸着比表面積が93m^(2)/g)20質量部、シリカ(Nipsil AQ)(東ソー・シリカ株式会社製)40質量部、ステアリン酸3質量部、亜鉛華5質量部、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(促進剤CZ)(商品名:ノクセラーCZ、大内新興化学工業株式会社製)0.5質量部、ジベンゾチアジルジスルフィド(促進剤DM)(商品名:ノクセラーDM、大内新興化学工業株式会社製)1.5質量部、硫黄2質量部を配合されてなるゴム組成物。」

本件特許発明1と甲2発明を対比すると、少なくとも次の点で相違する。

<相違点5>
本件特許発明1は「防振」ゴム組成物と特定するのに対し、甲2発明は、そのような特定はない点。

上記相違点5について検討する。
甲第2号証の段落【0006】には、ゴム組成物をトレッドに用いたタイヤを提供する旨記載されている。
しかしながら、甲第2号証には、当該ゴム組成物を、「防振」のために用いることは、記載も示唆もされていない。
なお、特許異議申立人は、「タイヤを用途とするような軟質のゴム組成物(要約)は当然に防振性を有する防振ゴム組成物であるということができる。」(特許異議申立書第12頁第14?15行)と主張するが、甲第1ないし6号証には、当該主張を裏付ける事実はない。
したがって、相違点5は、実質的な相違点であるから、本件特許発明1は、甲2発明であるとはいえない。
また、本件特許発明2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲2発明であるとはいえない。

よって、取消理由Aには理由がない。

イ 取消理由B及びCについて

甲第1号証には、「カーボンブラックとして、SAF、ISAF、又はHADを用いる」ことは、記載も示唆もされていない。
したがって、本件特許発明3は、甲1-1発明及び甲第1号証に記載された事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

また、甲第6号証の段落【0036】には、
「本発明の防振ゴム配合組成物は、カーボンブラックを上記シリカと併用してもよい。この場合のカーボンブラックとしては特に限定されるものではないが、ゴム補強性、動倍率の低減効果などの観点から、例えばHAF、FEF、GPF級のカーボンブラックが好ましく、その配合量も通常の範囲で使用されるが、シリカとの合計量で100重量部程度であり、その合計量が多すぎると加工性が悪化し混練工程での作業性や分散性が低下するおそれがある。」と記載されている。
しかしながら、甲1-1発明において、カーボンブラックをFEFから、HAFに変更する動機付けは、甲第6号証の記載からは見いだすことができない。
仮に、変更できたとしても、本件特許発明1が奏する「高い防振性能(低動倍率)と高い耐久性とを両立し得る」との作用効果は、甲第6号証の記載から当業者が予測することができるとはいえない。
したがって、本件特許発明3は、甲1-1発明および甲第6号証に記載された事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

なお、特許異議申立人は、平成30年7月30日提出の意見書で
「防振ゴムでは一般的な課題である動倍率と耐久性の両立のために、より小粒径のカーボンブラック(SAF、ISAF、又はHAF)を選択しただけであり、単なる設計事項といえる。」と主張する。
しかしながら、甲第1ないし6号証には、当該主張を裏付ける事実は見あたらず、甲1-1発明において、カーボンブラックとしてHAF等を選択することが単なる設計事項であるとはいえない。

よって、取消理由B及びCには理由がない。

ウ 取消理由D及びEについて

甲第4号証の請求項1、段落【0057】、【0058】、【0072】、【0075】、表3の実施例11の記載を整理すると、以下の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。

<甲4発明>
「天然ゴム100重量部、酸化亜鉛5重量部、ステアリン酸1重量部、老化防止剤2重量部、ワックス2重量部、鉱物油(ナフテン系オイル)5重量部、シランカップリング剤(種類A)2重量部、シリカA(平均粒子径:5μm、シラノール基密度:14.4個/nm^(2) 、BET比表面積:15m^(2) /g)15重量部、カーボンブラックA(FT系)(旭カーボン社製、旭♯15(平均粒子径:122nm、CTAB比表面積:12m^(2)/g)5重量部、加硫促進剤(CBS)2重量部、加硫促進剤(TMTD)1重量部、加硫剤(硫黄)1重量部を配合した防振ゴム組成物。」

本件特許発明1と甲4発明を対比すると、少なくとも次の点で相違する。

<相違点6>
本件特許発明1は、シリカの窒素吸着比表面積(BET法)が「80?230m^(2)/gの範囲」であるのに対し、甲4発明は「15m^(2)/g」である点。

上記相違点6について検討する。

特許異議申立人が特許異議申立書第14頁第7?9行で主張するように、確かに、甲第4号証の段落【0073】には、
「〔シリカa(比較例用)〕
平均粒子径:20μm、シラノール基密度:2.6個/nm^(2)、BET比表面積:210m^(2)/g」
と記載されており、当該シリカaのBET比表面積は、本件特許発明1の「80?230m^(2)/gの範囲」を満たすと認められる。
しかしながら、当該シリカaは、比較例1のカーボンブラックを含まない防振ゴム組成物において使用されているものである。そのため、カーボンブラックを含む防振ゴム組成物である実施例11に基づく甲4発明の「シリカA(平均粒子径:5μm、シラノール基密度:14.4個/nm^(2)、BET比表面積:15m^(2)/g)」の代わりに、カーボンブラックを含まない防振ゴム組成物である比較例1のシリカa(比較例用)「平均粒子径:20μm、シラノール基密度:2.6個/n 、BET比表面積:210m^(2)/g」に変更する動機付けは甲第4号証には存在しないといえる。
仮に、変更できたとしても、本件特許発明1が奏する「高い防振性能(低動倍率)と高い耐久性とを両立し得る」との作用効果は、甲第4号証の記載から当業者が予測することができるとはいえない。
したがって、相違点6は、甲4発明から当業者が容易に想到し得たとはいえない。そのため、本件特許発明1は、甲4発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本件特許発明2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであるので、本件特許発明1と同様に、甲4発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
さらに、甲第6号証には、「窒素吸着比表面積(BET法)が80?230m^(2)/gの範囲を満たすシリカゲル」は記載も示唆もされていないから、請求項1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2ないし3は、甲4発明及び甲第6号証に記載された事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

よって、取消理由D及びEには理由がない。

第4 結語

上記第3のとおりであるから、取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
防振ゴム組成物及び防振ゴム
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のトーショナルダンパー、エンジンマウント、マフラーハンガー等の高温環境下で使用される防振ゴムに好適に使用できる防振ゴム用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の各種車両では、搭乗者の快適性を向上させるために、振動や騒音の発生源となる部位に様々な防振材を配置し、室内への振動や騒音の侵入を低減する試みがなされてきた。例えば、振動や騒音の主たる発生源であるエンジンに対しては、トーショナルダンパー、エンジンマウント等の構成部材に防振ゴムを用いることでエンジン駆動時の振動を吸収し、室内への振動及び騒音の侵入や、周辺環境への騒音の拡散を低減している。
【0003】
このような防振ゴムの基本的な特性としては、エンジン等の重量物を支える強度特性や、その振動を吸収し抑制する防振性能が要求される。更に、エンジンルーム等の高温環境下で使用される防振ゴムに求められる性能としては、動倍率が低く防振性能に優れるのは勿論のこと、耐熱性や耐久性が高いことが求められる。特に、近年では、エンジンの高出力化や、室内空間拡大などによるエンジンルームの省スペース化に伴い、エンジンルーム内の温度は上昇する傾向にあり、より過酷な環境で使用されることが多くなっていることから、自動車用防振ゴムの耐熱性などに対する要求もより厳しいものとなっている。
【0004】
低動倍と耐熱性とを両立させるために、基材ゴムにシリカゲルを配合した技術が特開2006-131871号公報(特許文献1)に提案されている。また、低動倍と耐熱性とを両立させるために、基材ゴムに大粒径・ハイストラクチャーカーボンを配合する技術が特開2006-143859号公報(特許文献2)に提案されている。しかしながら、一般に、低動倍と耐熱性との関係や低動倍と耐久性との関係は二律背反の関係にあり、また、上記の従来技術よりも更なる次元で動倍率低減と耐久性を向上させることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-131871号公報
【特許文献2】特開2006-143859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、低動倍と高い耐久性とを両立し得る防振ゴム組成物、及び該ゴム組成物を硬化させてなる防振ゴムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、ジエン系ゴムに小粒径・カーボンブラックとシリカとを混合することにより、従来達成し得なかった高次元での低動倍率と耐久性との両立を図ることができることを知見し、本発明をなすに至った。即ち、本発明の防振ゴム組成物は、従来技術では適用が困難であった小粒径カーボンを用い、これを一部シリカに置換することにより動倍率の低減化と高い耐久性とを実現させたものである。
【0008】
従って、本発明は下記の防振ゴム組成物及び防振ゴムを提供する。
[1]ゴム成分がジエン系ゴムのみからなる防振ゴム組成物であって、充填剤としてカーボンブラック(但し、FEFを除く。)とシリカとを含有し、前記ジエン系ゴムとして天然ゴムを単独で用いると共に、前記シリカが、窒素吸着比表面積(BET法)が80?230m^(2)/gの範囲を満たすシリカゲルであり、カーボンブラック及びシリカの配合量がゴム成分100質量部に対して10?80質量部であり、更に、カーボンブラック(a)とシリカ(b)との配合割合が(a)/(b)=40/60?20/80(質量比)であることを特徴とする防振ゴム組成物。
[2]上記カーボンブラックは、そのヨウ素吸着量が40?140g/kg,DBP吸油量が90?160ml/100gの範囲である[1]記載の防振ゴム組成物。
[3]上記カーボンブラックとして、SAF、ISAF、又はHAFを用いる[1]記載の防振ゴム組成物。
[4]シランカップリング剤を含有する[1]?[3]のいずれか1項記載の防振ゴム組成物。
[5]上記[1]?[4]のいずれか1項記載のゴム組成物を硬化させてなる防振ゴム。
【発明の効果】
【0009】
本発明の防振ゴム組成物は、高い防振性能(低動倍率)と高い耐久性とを両立し得るものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の防振ゴム組成物では、ゴム成分としてジエン系ゴムが使用される。
ジエン系ゴムとしては、公知のものを用いることができ、特に制限されるものではないが、具体的には、公知の天然ゴムや、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、スチレン-イソプレン共重合体、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、クロロプレンゴム、イソブチレン-イソプレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、エポキシ化天然ゴム、アクリレートブタジエンゴム等の合成ゴム、及びこれら天然ゴム又は合成ゴムの分子鎖末端が変性されたものなどを用いることができ、これらの中から1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。本発明においては、特に天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)を好適に用いることができる。
【0011】
また、上記ジエン系ゴム以外のゴムをゴム成分中に配合することもできる。このゴムとしては、アクリルゴム及びエチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)などが挙げられる。
【0012】
加硫剤としては、特に制限はないが、例えば、硫黄や過酸化物等を挙げることができる。硫黄を用いる場合、その配合量は、ゴム成分100質量部に対して0.1?5質量部、好ましくは0.2?3.0質量部である。これらの配合量を逸脱すると、ゴムの架橋密度が高くなり、防振性能等の基本物性や耐久性が悪くなるおそれがある。また、過酸化物を加硫剤として用いることもでき、市販品を1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの加硫剤の配合量は、上記ゴム成分100質量部に対して通常1?10質量部、好ましくは2?8質量部である。この配合量が10質量部を超えると、ゴムが硬化しすぎて破断伸びの低下及び耐久性の低下等を招くおそれがあり、1質量部未満になると、架橋密度の低下,破断強度の低下,動倍率の悪化,圧縮永久歪みの悪化,及び耐久性の低下等を招くおそれがある。
【0013】
本発明では、カーボンブラックを充填剤として配合することが推奨される。カーボンブラックとしては、公知のものを使用することができ、例えば、SRF、GPF、HAF、ISAF、SAF、FT、MT等のカーボンブラックを挙げることができ、本発明においては、HAFを好適に用いることができる。また、これらのカーボンブラックは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、カーボンブラックについては、ヨウ素吸着量40?140g/kg及びDBP吸油量90?160ml/100gを満たすものを用いることが好ましい。従来技術では、このような小粒径・カーボンブラックでは耐久性が向上し得たものの、動倍率が上昇してしまい採用されなかったが、本発明では小粒径・カーボンブラックを配合しても動倍率の低減を図ることができる。カーボンブラックの配合量については、低動倍率化の点から、上記ゴム成分100質量部に対し、10?80質量部であることが好ましい。
【0014】
また、シリカを充填剤として配合することが推奨され、特に、窒素吸着比表面積(BET法)が80?230m^(2)/gの範囲のシリカゲルを用いることが好ましい。BET比表面積が80m^(2)/g未満では十分な耐久性を確保することが困難であり、また、230m^(2)/gを超えてしまうと、シリカゲルの基材ゴムに対する分散が困難となる。この場合、シリカの配合量については、低動倍率化の点から、上記ゴム成分100質量部に対し、10?80質量部であることが好ましい。
【0015】
カーボンブラック(a)とシリカ(b)との配合割合については、(a)/(b)=80/20?20/80(質量比)であることが条件とされる。カーボンブラック(a)の配合割合が上記範囲よりも多くなると、低動倍率と耐久性との両立が困難になり、逆に、シリカ(b)の配合割合が多くなると、加工性に問題が生じてしまう。
【0016】
また、上記シリカに対してシランカップリング剤を含有することができる。シランカップリング剤の種類については特に制限はなく公知の市販品を1種又は2種以上用いることができる。上記シランカップリング剤の配合量は、上記シリカの配合量に対して1?10質量%であり、好ましくは5?10質量%である。この配合量が1質量%未満であると、分散性及び補強性向上効果を十分に発揮できないおそれがあり、一方、10質量%より多く配合しても配合量に見合った効果が得られない場合もあり、工業的及び経済的にも好ましいものではない。
【0017】
オイルとしては、公知のものを使用することができ、特に制限されないが、具体的には、アロマティック油、ナフテニック油、パラフィン油等のプロセスオイルや、やし油等の植物油、アルキルベンゼンオイル等の合成油、ヒマシ油等を使用することができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
本発明においては、加硫を促進する観点から、亜鉛華(ZnO)や脂肪酸等の加硫促進助剤を配合することができる。脂肪酸としては飽和、不飽和あるいは直鎖状、分岐状のいずれの脂肪酸であってもよく、脂肪酸の炭素数としても特に制限されるものではないが、例えば炭素数1?30、好ましくは15?30の脂肪酸、より具体的にはシクロヘキサン酸(シクロヘキサンカルボン酸)、側鎖を有するアルキルシクロペンタン等のナフテン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸(ネオデカン酸等の分岐状カルボン酸を含む)、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)等の飽和脂肪酸、メタクリル酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸、ロジン、トール油酸、アビエチン酸等の樹脂酸などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明においては、亜鉛華及びステアリン酸を好適に用いることができる。これら加硫促進助剤の配合量は上記ゴム成分100質量部に対し、好ましくは1?15質量部、より好ましくは2?10質量部である。
【0019】
老化防止剤としては、公知のものを用いることができ、特に制限されないが、フェノール系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、アミン系老化防止剤などを挙げることができる。これら老化防止剤の配合量は上記ゴム成分100質量部に対し、通常0.5?10質量部、好ましくは1?5質量部である。
【0020】
本発明のゴム組成物を得る際、上記各成分の配合方法に特に制限はなく、全ての成分原料を一度に配合して混練しても良いし、2段階あるいは3段階に分けて各成分を配合して混練を行ってもよい。なお、混練に際してはロール、インターナルミキサー、バンバリーローター等の混練機を用いることができる。更に、シート状や帯状等に成形する際には、押出成形機、プレス機等の公知の成形機を用いればよい。
【実施例】
【0021】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0022】
[実施例1?3、比較例1?6、参考例1?9]
下記表1及び表2に示す配合組成で混練し加硫して、実施例1?3及び比較例1?6の各々の防振ゴム用ゴム組成物を所定の条件で所定の形状に加硫硬化させ、成型物を作製した。得られた成型物を本発明の防振ゴムの評価体とした。得られた成型物について、硬度(Hs)、引張伸び(Eb)、引張強さ(Tb)及び耐久性を下記JIS規格に準拠して測定を行い評価した。その結果も表1及び表2に併記する。
【0023】
[硬度(Hs)]
JIS K 6253(タイプA)に準拠
[引張伸び(Eb)]
JIS K 6251に準拠
[引張強さ(Tb)]
JIS K 6251に準拠
[耐久性(伸張疲労耐久性)]
35℃で0?200%伸長を繰り返し、破断するまでの回数を計数とした。比較例1の破断回数「100」を基準としてインデックス表示で示した。
[静バネ定数(Ks)及び動倍率(Kd/Ks)]
JIS K 6385に準拠し、Kdは100Hzで測定した。動倍率(Kd/Ks)はKd/KsとKsとの関係により評価を行った。
[加工性]
インジェクション成形加工により加工性を判断した。「○」は加工性が良好、「×」は加工性が悪いことを示す。
【0024】
上記の配合についての詳細は下記の通りである。
【0025】
ゴム成分
(1)天然ゴム(NR)、「RSS#1」
(2)ポリブタジエンゴム(BR)、JSR社製の「BR01」
【0026】
カーボンブラック
いずれも旭カーボン(株)製のカーボンブラック
(1)HAF、商品名「#70」
ヨウ素吸着量 82g/kg,DBP吸油量 102ml/100g
(2)ISAF、商品名「#80N」
ヨウ素吸着量 121g/kg,DBP吸油量 114ml/100g
(3)FEF、商品名「#65」
ヨウ素吸着量 43g/kg,DBP吸油量 121ml/100g
(4)FT、商品名「アサヒサーマル」
ヨウ素吸着量 27g/kg,DBP吸油量 28ml/100g
(5)SAF、商品名「#110」
ヨウ素吸着量 145g/kg,DBP吸油量 113ml/100g
【0027】
シリカ
東ソー・シリカ(株)製の沈降式シリカ
(1)「NIPSIL VN3」窒素吸着比表面積(BET法)180?230m^(2)/g
(2)「NIPSIL E75」窒素吸着比表面積(BET法)30?60m^(2)/g
シランカップリング剤
ビス-3-トリエトキシシリルプロピルテトラスルフィド(TESPT)、エボニックデグッサ製
【0028】
ナフテン系オイル
出光興産(株)製「ダイアナプロセスオイルNS-100」
WAX
Rhein Chemie社製「Antilux654」
老化防止剤:RD
2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体、大内新興化学工業(株)製「ノクラック224」
老化防止剤:6PPD
N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、大内新興化学工業(株)製「ノクラック6C」
【0029】
加硫促進剤:TMTD
テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、大内新興化学工業(株)製「ノクセラーTT」
加硫促進剤:CBS
N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
上記表1及び表2の結果より、本発明にかかる実施例のゴム組成物は、動倍率が低く、耐久性及び加工性が良好であった。
これに対して、比較例1,2,5は、実施例に比べて動倍率が悪かった。比較例3,4は、実施例に比べて加工性が悪かった。比較例6は、実施例に比べて耐久性が悪かった。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分がジエン系ゴムのみからなる防振ゴム組成物であって、充填剤としてカーボンブラック(但し、FEFを除く。)とシリカとを含有し、前記ジエン系ゴムとして天然ゴムを単独で用いると共に、前記シリカが、窒素吸着比表面積(BET法)が80?230m^(2)/gの範囲を満たすシリカゲルであり、カーボンブラック及びシリカの配合量がゴム成分100質量部に対して10?80質量部であり、更に、カーボンブラック(a)とシリカ(b)との配合割合が(a)/(b)=40/60?20/80(質量比)であることを特徴とする防振ゴム組成物。
【請求項2】
上記カーボンブラックは、そのヨウ素吸着量が40?140g/kg,DBP吸油量が90?160ml/100gの範囲である請求項1記載の防振ゴム組成物。
【請求項3】
上記カーボンブラックとして、SAF、ISAF、又はHAFを用いる請求項1記載の防振ゴム組成物。
【請求項4】
シランカップリング剤を含有する請求項1?3のいずれか1項記載の防振ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか1項記載のゴム組成物を硬化させてなる防振ゴム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-08-22 
出願番号 特願2009-263030(P2009-263030)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C08L)
P 1 651・ 113- YAA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小森 勇  
特許庁審判長 岡崎 美穂
特許庁審判官 小柳 健悟
長谷部 智寿
登録日 2017-06-30 
登録番号 特許第6165406号(P6165406)
権利者 株式会社ブリヂストン
発明の名称 防振ゴム組成物及び防振ゴム  
代理人 小島 隆司  
代理人 特許業務法人英明国際特許事務所  
代理人 重松 沙織  
代理人 小島 隆司  
代理人 石川 武史  
代理人 正木 克彦  
代理人 小林 克成  
代理人 石川 武史  
代理人 重松 沙織  
代理人 小林 克成  
代理人 正木 克彦  
代理人 特許業務法人英明国際特許事務所  
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