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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B29C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B29C
審判 全部申し立て 2項進歩性  B29C
管理番号 1344837
異議申立番号 異議2017-701117  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-11-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-11-29 
確定日 2018-09-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6186243号発明「計量装置、可塑化装置、射出装置、成形装置、及び成形品の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6186243号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?3]、4、5、6、7について訂正することを認める。 特許第6186243号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 第1 主な手続の経緯等

特許第6186243号(設定登録時の請求項の数は7。以下、「本件特許」という。)は、平成25年10月22日に出願された特許出願に係るものであって、平成29年8月4日に設定登録され、特許掲載公報が同年8月23日に発行された。
特許異議申立人 水野英樹(以下、単に「異議申立人」という。)は、平成29年11月28日付けで(受付日:11月29日)、本件特許の請求項1ないし7に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てをした。
当審において、平成30年4月18日付けで取消理由を通知したところ、特許権者から、同年6月18日付けで訂正請求書(以下、当該訂正請求書による訂正請求を「本件訂正請求」という。)及び意見書が提出されたので、同年6月25日付けで異議申立人に対して特許法第120条の5第5項に基づく通知をしたところ、異議申立人から、同年8月1日付けで意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下の訂正事項1ないし10である。なお、下線については訂正箇所に当審が付したものである。

訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、

「前記スクリュが前記材料から受ける抵抗力が所定値を超えたときに」

と記載されているのを

「前記スクリュが前記材料から受ける抵抗力としての回転トルクが所定値を超えたときに」

に訂正する。
請求項1を引用する請求項2ないし3についても同様の訂正を行う。

訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、

「前記スクリュを軸方向に動作させ」

と記載されているのを

「前記スクリュを軸方向に所定の回数微小前後動作させて」

に訂正する。
請求項1を引用する請求項2ないし3についても同様の訂正を行う。

訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項4に、

「前記スクリュが前記材料から受ける抵抗力が所定値を超えたときに」

と記載されているのを

「前記スクリュが前記材料から受ける抵抗力としての回転トルクが所定値を超えたときに」

に訂正する。

訂正事項4
訂正前の特許請求の範囲の請求項4に、

「前記スクリュを軸方向に動作させ」

と記載されているのを

「前記スクリュを軸方向に所定の回数微小前後動作させて」

に訂正する。

訂正事項5
訂正前の特許請求の範囲の請求項5に、

「前記スクリュが前記材料から受ける抵抗力が所定値を超えたときに」

と記載されているのを

「前記スクリュが前記材料から受ける抵抗力としての回転トルクが所定値を超えたときに」

に訂正する。

訂正事項6
訂正前の特許請求の範囲の請求項5に、

「前記スクリュを軸方向に動作させ」

と記載されているのを

「前記スクリュを軸方向に所定の回数微小前後動作させて」

に訂正する。

訂正事項7
訂正前の特許請求の範囲の請求項6に、

「前記スクリュが前記材料から受ける抵抗力が所定値を超えたときに」

と記載されているのを

「前記スクリュが前記材料から受ける抵抗力としての回転トルクが所定値を超えたときに」

に訂正する。

訂正事項8
訂正前の特許請求の範囲の請求項6に、

「前記スクリュを軸方向に動作させ」

と記載されているのを

「前記スクリュを軸方向に所定の回数微小前後動作させて」

に訂正する。

訂正事項9
訂正前の特許請求の範囲の請求項7に、

「前記スクリュが前記材料から受ける抵抗力が所定値を超えたときに」

と記載されているのを

「前記スクリュが前記材料から受ける抵抗力としての回転トルクが所定値を超えたときに」

に訂正する。

訂正事項10
訂正前の特許請求の範囲の請求項7に、

「前記スクリュを軸方向に動作させ」

と記載されているのを

「前記スクリュを軸方向に所定の回数微小前後動作させて」

に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び一群の請求項
(1) 訂正事項1及び2について
ア 訂正事項1は、訂正前の請求項1の「スクリュが前記材料から受ける抵抗力」を「スクリュが前記材料から受ける抵抗力としての回転トルク」へと訂正するものであって、訂正前の請求項1ではその「抵抗力」が如何なる「抵抗力」であるかについては特定されていなかったものを、訂正後の請求項1では「スクリュが前記材料から受ける抵抗力としての回転トルク」と具体的に特定し、限定するものである。
すなわち、当該訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであるといえる。

イ そして、当該訂正事項1は、願書に最初に添付した明細書の段落【0025】、【0027】の記載から、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

ウ 訂正事項2は、訂正前の請求項1の「前記スクリュを軸方向に動作させ」を「前記スクリュを軸方向に所定の回数微小前後動作させて」へと訂正するものであって、訂正前の請求項1ではその「軸方向の動作」が如何なる「軸方向の動作」であるかについては特定されていなかったものを、訂正後の請求項1では「軸方向に所定の回数微小前後動作させて」と具体的に特定し、限定するものである。
すなわち、当該訂正事項2は、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであるといえる。

エ そして、当該訂正事項2は、願書に最初に添付した明細書の段落【0040】の記載から、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

オ 訂正事項1及び2は、訂正前の独立請求項である請求項1を訂正するものであり、訂正前の請求項2ないし3は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものである。そうすると、訂正事項1及び2は、訂正前の請求項1ないし3という一群の請求項ごとに請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項に適合するものである。

(2) 訂正事項3及び4について
ア 訂正事項3は、訂正前の請求項4の「スクリュが前記材料から受ける抵抗力」を「スクリュが前記材料から受ける抵抗力としての回転トルク」へと訂正するものであって、訂正前の請求項4ではその「抵抗力」が如何なる「抵抗力」であるかについては特定されていなかったものを、訂正後の請求項4では「スクリュが前記材料から受ける抵抗力としての回転トルク」と具体的に特定し、限定するものである。
すなわち、当該訂正事項3は、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであるといえる。

イ そして、当該訂正事項3は、願書に最初に添付した明細書の段落【0025】、【0027】の記載から、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

ウ 訂正事項4は、訂正前の請求項4の「前記スクリュを軸方向に動作させ」を「前記スクリュを軸方向に所定の回数微小前後動作させて」へと訂正するものであって、訂正前の請求項4ではその「軸方向の動作」が如何なる「軸方向の動作」であるかについては特定されていなかったものを、訂正後の請求項4では「軸方向に所定の回数微小前後動作させて」と具体的に特定し、限定するものである。
すなわち、当該訂正事項4は、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであるといえる。

エ そして、当該訂正事項4は、願書に最初に添付した明細書の段落【0040】の記載から、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

オ 訂正事項3及び4は、訂正前の独立請求項である請求項4を訂正するものであるから、訂正事項3及び4は、訂正前の請求項4という一群の請求項ごとに請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項に適合するものである。

(3) 訂正事項5及び6について
ア 訂正事項5は、訂正前の請求項5の「スクリュが前記材料から受ける抵抗力」を「スクリュが前記材料から受ける抵抗力としての回転トルク」へと訂正するものであって、訂正前の請求項5ではその「抵抗力」が如何なる「抵抗力」であるかについては特定されていなかったものを、訂正後の請求項5では「スクリュが前記材料から受ける抵抗力としての回転トルク」と具体的に特定し、限定するものである。
すなわち、当該訂正事項5は、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであるといえる。

イ そして、当該訂正事項5は、願書に最初に添付した明細書の段落【0025】、【0027】の記載から、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

ウ 訂正事項6は、訂正前の請求項5の「前記スクリュを軸方向に動作させ」を「前記スクリュを軸方向に所定の回数微小前後動作させて」へと訂正するものであって、訂正前の請求項5ではその「軸方向の動作」が如何なる「軸方向の動作」であるかについては特定されていなかったものを、訂正後の請求項5では「軸方向に所定の回数微小前後動作させて」と具体的に特定し、限定するものである。
すなわち、当該訂正事項6は、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであるといえる。

エ そして、当該訂正事項6は、願書に最初に添付した明細書の段落【0040】の記載から、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

よって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

オ 訂正事項5及び6は、訂正前の独立請求項である請求項5を訂正するものであるから、訂正事項5及び6は、訂正前の請求項5という一群の請求項ごとに請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項に適合するものである。

(4) 訂正事項7及び8について
ア 訂正事項7は、訂正前の請求項6の「スクリュが前記材料から受ける抵抗力」を「スクリュが前記材料から受ける抵抗力としての回転トルク」へと訂正するものであって、訂正前の請求項6ではその「抵抗力」が如何なる「抵抗力」であるかについては特定されていなかったものを、訂正後の請求項6では「スクリュが前記材料から受ける抵抗力としての回転トルク」と具体的に特定し、限定するものである。
すなわち、当該訂正事項7は、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであるといえる。

イ そして、当該訂正事項7は、願書に最初に添付した明細書の段落【0025】、【0027】の記載から、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

よって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

ウ 訂正事項8は、訂正前の請求項6の「前記スクリュを軸方向に動作させ」を「前記スクリュを軸方向に所定の回数微小前後動作させて」へと訂正するものであって、訂正前の請求項6ではその「軸方向の動作」が如何なる「軸方向の動作」であるかについては特定されていなかったものを、訂正後の請求項6では「軸方向に所定の回数微小前後動作させて」と具体的に特定し、限定するものである。
すなわち、当該訂正事項8は、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであるといえる。

エ そして、当該訂正事項8は、願書に最初に添付した明細書の段落【0040】の記載から、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

よって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

オ 訂正事項7及び8は、訂正前の独立請求項である請求項6を訂正するものであるから、訂正事項7及び8は、訂正前の請求項6という一群の請求項ごとに請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項に適合するものである。

(5) 訂正事項9及び10について
ア 訂正事項9は、訂正前の請求項7の「スクリュが前記材料から受ける抵抗力」を「スクリュが前記材料から受ける抵抗力としての回転トルク」へと訂正するものであって、訂正前の請求項7ではその「抵抗力」が如何なる「抵抗力」であるかについては特定されていなかったものを、訂正後の請求項7では「スクリュが前記材料から受ける抵抗力としての回転トルク」と具体的に特定し、限定するものである。
すなわち、当該訂正事項9は、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであるといえる。

イ そして、当該訂正事項9は、願書に最初に添付した明細書の段落【0025】、【0027】の記載から、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

よって、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

ウ 訂正事項10は、訂正前の請求項7の「前記スクリュを軸方向に動作させ」を「前記スクリュを軸方向に所定の回数微小前後動作させて」へと訂正するものであって、訂正前の請求項7ではその「軸方向の動作」が如何なる「軸方向の動作」であるかについては特定されていなかったものを、訂正後の請求項7では「軸方向に所定の回数微小前後動作させて」と具体的に特定し、限定するものである。
すなわち、当該訂正事項10は、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであるといえる。

エ そして、当該訂正事項10は、願書に最初に添付した明細書の段落【0040】の記載から、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

よって、訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

オ 訂正事項9及び10は、訂正前の独立請求項である請求項7を訂正するものであるから、訂正事項9及び10は、訂正前の請求項7という一群の請求項ごとに請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項に適合するものである。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?3]、4、5、6、7について訂正することを認める。

第3 本件発明

上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められるので、本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明7」という。)は、平成30年6月18日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される以下に記載のとおりのものである。

「【請求項1】
内部に材料を収容するバレルと、
前記バレル内に配されたスクリュと、
前記スクリュを回転させる回転駆動部と、
前記スクリュを軸方向に動作させる軸動駆動部と、を備え、
前記軸動駆動部は、前記スクリュが前記材料から受ける抵抗力としての回転トルクが所定値を超えたときに、前記スクリュの回転が停止している状態で、前記スクリュを軸方向に所定の回数微小前後動作させて前記バレルの内側にせん断力を作用させることを特徴とする計量装置。
【請求項2】
計量工程中に前記スクリュを軸方向に動作させ前記バレルの内側にせん断力を作用させることを特徴とする請求項1に記載の計量装置。
【請求項3】
前記スクリュを回転させる前に前記スクリュを軸方向に動作させ前記バレルの内側にせん断力を作用させることを特徴とする請求項1に記載の計量装置。
【請求項4】
内部に材料を収容するバレルと、
前記バレル内に配されたスクリュと、
前記スクリュを回転させる回転駆動部と、
前記スクリュを軸方向に動作させる軸動駆動部と、を備え、
前記軸動駆動部は、前記スクリュが前記材料から受ける抵抗力としての回転トルクが所定値を超えたときに、前記スクリュの回転が停止している状態で、前記スクリュを軸方向に所定の回数微小前後動作させて前記バレルの内側にせん断力を作用させることを特徴とする可塑化装置。
【請求項5】
内部に材料を収容するバレルと、
前記バレル内に配されたスクリュと、
前記スクリュを回転させる回転駆動部と、
前記スクリュを軸方向に動作させる軸動駆動部と、を備え、
前記軸動駆動部は、前記スクリュが前記材料から受ける抵抗力としての回転トルクが所定値を超えたときに、前記スクリュの回転が停止している状態で、前記スクリュを軸方向に所定の回数微小前後動作させて前記バレルの内側にせん断力を作用させることを特徴とする射出装置。
【請求項6】
内部に材料を収容するバレルと、
前記バレル内に配されたスクリュと、
前記スクリュを回転させる回転駆動部と、
前記スクリュを軸方向に動作させる軸動駆動部と、を備え、
前記軸動駆動部は、前記スクリュが前記材料から受ける抵抗力としての回転トルクが所定値を超えたときに、前記スクリュの回転が停止している状態で、前記スクリュを軸方向に所定の回数微小前後動作させて前記バレルの内側にせん断力を作用させることを特徴とする成形装置。
【請求項7】
内部に材料を収容するバレル内に配されたスクリュを回転して前記材料を可塑化し、可塑化された前記材料から受ける抵抗力に基づき前記材料を計量し、計量された前記材料を金型内に射出することで成形品を製造する成形品の製造方法であって、
前記材料を可塑化する際に、前記スクリュが前記材料から受ける抵抗力としての回転トルクが所定値を超えたときに、前記スクリュの回転が停止している状態で、前記スクリュを軸方向に所定の回数微小前後動作させて前記バレルの内側にせん断力を作用させることを特徴とする成形品の製造方法。」

第4 取消理由の概要

平成30年4月18日付けで通知した取消理由は、概略、以下のとおりである。

「本件特許の請求項1?7に係る発明は、本件特許の優先日前に頒布された下記の刊行物に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

・・・
(1)刊行物
刊行物1: 特開平9-254206号公報(特許異議申立書の証拠方法である甲第1号証。以下、単に「甲1」という。)
刊行物3: 特公平7-41652号公報(特許異議申立書の証拠方法である甲第3号証。以下、単に「甲3」という。)
刊行物4: 特開2004-17490号公報(特許異議申立書の証拠方法である甲第4号証。以下、単に「甲4」という。) 」

第5 合議体の判断

当合議体は、以下に述べるように、上記取消理由には、理由がないと判断する。

1 甲1に記載された発明
甲1には、次の発明(以下、「甲1発明A」という。)が記載されていると認める。

「内部に材料を収容するシリンダと、
シリンダ内に配されたスクリュと、
スクリュを回転させるスクリュ回転用モータと、
スクリュを軸方向に動作させる射出用モータと、を備え、
射出用モータは、スクリュ回転用モータの回転により背圧が上限指令値(H)になったとき、スクリュ回転用モータを停止すると共に、射出用モータを作動させてスクリュを後退させる、
計量装置。」

また、上記甲1発明Aの計量装置を兼ねた可塑化装置及び射出装置並びに成形装置である以下の発明も記載されていると認める。
「内部に材料を収容するシリンダと、
シリンダ内に配されたスクリュと、
スクリュを回転させるスクリュ回転用モータと、
スクリュを軸方向に動作させる射出用モータと、を備え、
射出用モータは、スクリュ回転用モータの回転により背圧が上限指令値(H)になったとき、スクリュ回転用モータを停止すると共に、射出用モータを作動させてスクリュを後退させる、
可塑化装置。」(以下、「甲1発明B」という。)

「内部に材料を収容するシリンダと、
シリンダ内に配されたスクリュと、
スクリュを回転させるスクリュ回転用モータと、
スクリュを軸方向に動作させる射出用モータと、を備え、
射出用モータは、スクリュ回転用モータの回転により背圧が上限指令値(H)になったとき、スクリュ回転用モータを停止すると共に、射出用モータを作動させてスクリュを後退させる、
射出装置。」(以下、「甲1発明C」という。)

「内部に材料を収容するシリンダと、
シリンダ内に配されたスクリュと、
スクリュを回転させるスクリュ回転用モータと、
スクリュを軸方向に動作させる射出用モータと、を備え、
射出用モータは、スクリュ回転用モータの回転により背圧が上限指令値(H)になったとき、スクリュ回転用モータを停止すると共に、射出用モータを作動させてスクリュを後退させる、
成形装置。」(以下、「甲1発明D」という。)

さらに、計量は背圧を一定値とすることで行われている(すなわち、可塑化された材料から受ける抵抗力である背圧に基づき材料は計量されている)との当業者の技術常識を踏まえれば、甲1発明Aを利用した成形品の製造方法として、以下の発明が記載されていると認める。

「内部に材料を収容するシリンダ内に配されたスクリュを回転して前記材料を可塑化し、可塑化された前記材料から受ける抵抗力に基づき前記材料を計量し、計量された前記材料を金型内に射出することで成形品を製造する成形品の製造方法であって、
前記材料を可塑化する際に、前記スクリュが前記材料から受ける背圧が所定値を超えたときに、前記スクリュの回転が停止している状態で、前記スクリュを軸方向に動作させる成形品の製造方法。」(以下、「甲1発明E」という。)

2 本件発明1と甲1発明Aとの対比・判断
甲1発明Aの「シリンダ」、「スクリュ回転用モータ」、「射出用モータ」は、それぞれ、本件発明1の「バレル」、「回転駆動部」、「軸動駆動部」に相当する。
甲1発明Aの「射出用モータは、スクリュ回転用モータの回転により背圧が上限指令値(H)になったとき、スクリュ回転用モータを停止」することは、背圧とはスクリュが溶融樹脂材料から受ける力であるから、本件発明1と「記軸動駆動部は、前記スクリュが前記材料から受ける抵抗力」が「所定値を超えたときに、前記スクリュの回転が停止」することに相当する。

そうすると、本件発明1と甲1発明Aとは、
「内部に材料を収容するバレルと、
前記バレル内に配されたスクリュと、
前記スクリュを回転させる回転駆動部と、
前記スクリュを軸方向に動作させる軸動駆動部と、を備え、
前記軸動駆動部は、前記スクリュが前記材料から受ける力が所定値を超えたときに、前記スクリュの回転が停止している状態で、前記スクリュを軸方向に動作させる計量装置。」で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
前記スクリュが材料から受ける力に関して、本件発明1は「スクリュが前記材料から受ける抵抗力としての回転トルク」と特定するのに対し、甲1発明Aは、「背圧」である点。

<相違点2>
スクリュを軸方向に動作させることに関して、本件発明1は「所定の回数微小前後動作させてバレルの内側にせん断力を作用させる」と特定するのに対し、甲1発明Aは、この点を特定しない点。

事案に鑑み、相違点2から検討する。
スクリュを軸方向に動作させることに関して、甲1発明Aは、単に「射出用モータを作動させてスクリュを後退させる」ものであって、「所定の回数微小前後動作させ」るものではないから、相違点2は実質的な相違点である。
してみれば、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明ということはできない。

3 本件発明2ないし3と甲1発明Aとの対比・判断
本件発明2ないし3は、本件発明1を直接又は間接的に引用する発明であるから、少なくとも上記2で検討した相違点2の点で、甲1発明Aと実質的に相違するから、本件発明2ないし3は、甲1に記載された発明ということはできない。

4 本件発明4と甲1発明Bとの対比・判断
本件発明4と甲1発明Bとを対比すると、上記2での検討と同様に、上記2に記載の相違点1及び2で相違し、相違点2については上記2に記載のとおり、実質的な相違点である。してみれば、相違点1について検討するまでもなく、本件発明4は、甲1に記載された発明ということはできない。

5 本件発明5と甲1発明Cとの対比・判断
本件発明5と甲1発明Cとを対比すると、上記2での検討と同様に、上記2に記載の上記相違点1及び2で相違し、相違点2については上記2に記載のとおり、実質的な相違点である。してみれば、相違点1について検討するまでもなく、本件発明5は、甲1に記載された発明ということはできない。

6 本件発明6と甲1発明Dとの対比・判断
本件発明6と甲1発明Dとを対比すると、上記2での検討と同様に、上記2に記載の相違点1及び2で相違し、相違点2については上記2に記載のとおり、実質的な相違点である。してみれば、相違点1について検討するまでもなく、本件発明6は、甲1に記載された発明ということはできない。

7 本件発明7と甲1発明Eとの対比・判断
本件発明7と甲1発明Eとを対比すると、上記2での検討と同様に、上記2に記載の相違点1及び2で相違し、相違点2については上記2に記載のとおり、実質的な相違点である。してみれば、相違点1について検討するまでもなく、本件発明7は、甲1に記載された発明ということはできない。

8 まとめ
以上のことから、当審が平成30年4月18日付けで通知した取消理由には、理由がない。

第6 異議申立人が主張する取消理由について

異議申立人は、特許異議申立書において、本件特許の請求項1ないし7に対して、下記の証拠方法に基づいて、甲第1号証を主たる引用文献とする特許法第29条第2項に基づく特許異議申立理由(以下、「取消理由1」という。)を主張し、平成30年8月1日提出の意見書において、新たに、本件発明1ないし7は特許法第36条第6項第2号の規定する要件を満たしていないので、特許法第113条第4項により取り消されるべき(以下、「取消理由2」という。)と主張するので、以下に検討する。

<特許異議申立書に添付された証拠方法>
甲第1号証 : 特開平9-254206号公報(以下、「甲1」という。)
甲第2号証 : 特開2001-260176号公報(以下、「甲2」という。)
甲第3号証 : 特公平7-41652号公報(以下、「甲3」という。)
甲第4号証 : 特開2004-17490号公報(以下、「甲4」という。)
甲第5号証 : 特開2009-148916号公報(以下、「甲5」という。)
<平成30年8月1日提出の意見書に添付された証拠方法>
甲第6号証 : 特開2004-114509号公報(以下、「甲6」という。)
甲第7号証 : 特開平11-170318号公報(以下、「甲7」という。)
甲第8号証 : 特開平2-26722号公報(以下、「甲8」という。)

1 取消理由1について
(1)本件発明1ないし3
甲1には、上記第5 1のとおりの発明が記載されており、本件発明1と甲1発明Aとを対比すると、上記第5 1に記載のとおりの一致点で一致し、相違点1及び2で相違しているので、当該相違点2についてさらに検討する。
甲1発明Aにおいて、前記スクリュが材料から受ける力が所定値を超えたときにスクリュを軸方向に後退させるのは、計量工程時の背圧を一定に保持するためである。そして、スクリュを軸方向に所定の回数微小前後動作させてバレルの内側にせん断力を作用させることが周知(甲7及び甲8)であったとしても、甲1発明Aにおいてスクリュを軸方向に所定の回数微小前後動作させてしまうと背圧を一定に保持することができなくなってしまうから、上記周知の技術を採用することには阻害要因がある。
そうすると、相違点2は、当業者において容易想到とはいえない。
よって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
本件発明2ないし3は、いずれも本件発明1を直接又は間接的に引用する発明であるから、少なくとも上記相違点2の点で、甲1に記載された発明と相違しており、上記相違点2は、上記のとおり当業者においても容易想到といえないから、本件発明2ないし3も、甲1に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明4ないし7
本件発明4ないし7と上記第5 1に記載の甲1発明Bないし甲1発明Eをそれぞれ対比すると、少なくとも上記相違点2で相違し、当該相違点2は、上記(1)での検討のとおり、想到容易でないから、本件発明3ないし7は、甲1に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
(3)まとめ
以上のとおり、異議申立人が主張する取消理由1は理由がない。

2 取消理由2について
異議申立人は、請求項1?7の「所定の回数微小前後動作させて」との記載は、「所定の回数」が文言上1回及び複数回数の両方を含む得るので明確でなく、「微小前後動作」との記載は微小距離がどの程度の長さを意味しているか不明りょうであるので明確でなく、「所定の回数微小前後動作させて」は、文言上前後方向に動作するもの全てを含みうるので、その範囲を特定することができず明確でない旨主張する。
しかし、「所定の回数」は、1回以上の適宜の回数であることは明らかであり、「微小距離」と「微小前後動作」は、「バレルの内側にせん断力を作用させる」ような「微小」な「前後動作」であるものがすべて含まれることもまた明らかであるから、請求項1?7の「所定の回数微小前後動作させて」との記載は明確である。
よって、異議申立人が主張する取消理由2は理由がない。

第7 むすび

以上のとおりであるから、当審において通知した取消理由及び異議申立人が主張する取消理由によっては、本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に材料を収容するバレルと、
前記バレル内に配されたスクリュと、
前記スクリュを回転させる回転駆動部と、
前記スクリュを軸方向に動作させる軸動駆動部と、を備え、
前記軸動駆動部は、前記スクリュが前記材料から受ける抵抗力としての回転トルクが所定値を超えたときに、前記スクリュの回転が停止している状態で、前記スクリュを軸方向に所定の回数微小前後動作させて前記バレルの内側にせん断力を作用させることを特徴とする計量装置。
【請求項2】
計量工程中に前記スクリュを軸方向に動作させ前記バレルの内側にせん断力を作用させることを特徴とする請求項1に記載の計量装置。
【請求項3】
前記スクリュを回転させる前に前記スクリュを軸方向に動作させ前記バレルの内側にせん断力を作用させることを特徴とする請求項1に記載の計量装置。
【請求項4】
内部に材料を収容するバレルと、
前記バレル内に配されたスクリュと、
前記スクリュを回転させる回転駆動部と、
前記スクリュを軸方向に動作させる軸動駆動部と、を備え、
前記軸動駆動部は、前記スクリュが前記材料から受ける抵抗力としての回転トルクが所定値を超えたときに、前記スクリュの回転が停止している状態で、前記スクリュを軸方向に所定の回数微小前後動作させて前記バレルの内側にせん断力を作用させることを特徴とする可塑化装置。
【請求項5】
内部に材料を収容するバレルと、
前記バレル内に配されたスクリュと、
前記スクリュを回転させる回転駆動部と、
前記スクリュを軸方向に動作させる軸動駆動部と、を備え、
前記軸動駆動部は、前記スクリュが前記材料から受ける抵抗力としての回転トルクが所定値を超えたときに、前記スクリュの回転が停止している状態で、前記スクリュを軸方向に所定の回数微小前後動作させて前記バレルの内側にせん断力を作用させることを特徴とする射出装置。
【請求項6】
内部に材料を収容するバレルと、
前記バレル内に配されたスクリュと、
前記スクリュを回転させる回転駆動部と、
前記スクリュを軸方向に動作させる軸動駆動部と、を備え、
前記軸動駆動部は、前記スクリュが前記材料から受ける抵抗力としての回転トルクが所定値を超えたときに、前記スクリュの回転が停止している状態で、前記スクリュを軸方向に所定の回数微小前後動作させて前記バレルの内側にせん断力を作用させることを特徴とする成形装置。
【請求項7】
内部に材料を収容するバレル内に配されたスクリュを回転して前記材料を可塑化し、可塑化された前記材料から受ける抵抗力に基づき前記材料を計量し、計量された前記材料を金型内に射出することで成形品を製造する成形品の製造方法であって、
前記材料を可塑化する際に、前記スクリュが前記材料から受ける抵抗力としての回転トルクが所定値を超えたときに、前記スクリュの回転が停止している状態で、前記スクリュを軸方向に所定の回数微小前後動作させて前記バレルの内側にせん断力を作用させることを特徴とする成形品の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-08-29 
出願番号 特願2013-219555(P2013-219555)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (B29C)
P 1 651・ 537- YAA (B29C)
P 1 651・ 121- YAA (B29C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 深草 祐一大塚 徹▲高▼橋 理絵  
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 阪▲崎▼ 裕美
大島 祥吾
登録日 2017-08-04 
登録番号 特許第6186243号(P6186243)
権利者 東芝機械株式会社
発明の名称 計量装置、可塑化装置、射出装置、成形装置、及び成形品の製造方法  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 峰 隆司  
代理人 森川 元嗣  
代理人 角田 さやか  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 峰 隆司  
代理人 飯野 茂  
代理人 森川 元嗣  
代理人 角田 さやか  
代理人 飯野 茂  
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