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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G02B
管理番号 1344839
異議申立番号 異議2017-700559  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-11-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-06-05 
確定日 2018-09-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6133456号発明「化合物、光学フィルム及び光学フィルムの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6133456号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-16〕について訂正することを認める。 特許第6133456号の請求項1-8、10-16に係る特許を維持する。 特許第6133456号の請求項9についての異議申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6133456号の請求項1?16に係る特許についての出願は、平成20年12月22日(優先権主張平成19年12月28日、平成20年3月18日、平成20年7月2日)に出願した特願2008-325289号の一部を平成26年1月21日に新たな特許出願である特願2014-8335号とし、さらにその一部を平成28年2月2日に新たな特許出願としたものであって、平成29年4月28日にその特許権の設定登録がされ、同年5月24日に特許公報が発行され、その後、その特許について、同年6月5日に特許異議申立人伊藤映美により特許異議の申立てがされ、平成30年2月27日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年4月26日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正」という。)があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人伊藤映美から同年5月28日に意見書が提出されたものである。


第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の趣旨
本件訂正の請求の趣旨は、「特許第6133456号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1?16に訂正することを求める。」というものである。

2 本件訂正請求について
本件訂正前の請求項1?16について、請求項2?4及び請求項9?16は請求項1を引用するものであって、本件訂正によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。また、請求項6?16は請求項5を引用するものであって、本件訂正によって記載が訂正される請求項5に連動して訂正されるものである。請求項1?4及び請求項9?16が一群の請求項を構成するとともに、請求項5?16が一群の請求項を構成し、共通する請求項9?16を有するこれら一群の請求項が組み合わされて請求項1?16が1つの一群の請求項を構成する。
したがって、本件訂正は、一群の請求項である〔請求項1?16〕ごとに請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。

3 訂正の内容
本件訂正の訂正事項は以下のとおりである(下線部は、訂正箇所を示す。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「式(C)で表される基及び重合性基を含む化合物」とあるのを、「式(C)で表される基及び重合性基を含み、ネマチック相を呈する化合物」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?4及び請求項10?16も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、「厚みが0.1?10μmである光学フィルム。」とあるのを、「厚みが0.1?10μmであり、波長450nmの位相差値Re(450)、波長550nmの位相差値Re(550)および波長650nmの位相差値Re(650)が、
Re(450)/Re(550)≦1.009、かつ
0.992≦Re(650)/Re(550)
を満足する光学フィルム。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?4及び請求項10?16も同様に訂正する。)。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に、「R^(1)、R^(2)、R^(3)及びR^(4)は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す」とあるのを、「R^(1)、R^(2)、R^(3)及びR^(4)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す」に訂正し、「G^(a)及びG^(b)は、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基を表す。該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1?4のアルキル基、炭素数1?4のフルオロアルキル基、炭素数1?4アルコキシ基、シアノ基またはニトロ基に置換されていてもよく、」とあるのを、「G^(a)及びG^(b)は、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基を表す。該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1?4のアルキル基又は炭素数1?4のアルコキシ基に置換されていてもよく、」に訂正し、「R^(5)及びR^(6)は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す」とあるのを、「R^(5)及びR^(6)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す」に訂正し、「に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1?4のアルキル基、炭素数1?4アルコキシ基、シアノ基又はニトロ基に置換されていてもよい。該炭素数1?4のアルキル基及び該炭素数1?4アルコキシ基に含まれる水素原子は、フッ素原子に置換されていてもよい。」とあるのを、「に含まれる水素原子は、炭素数1?4のアルキル基又は炭素数1?4のアルコキシ基に置換されていてもよい。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?4及び請求項10?16も同様に訂正する。)。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に、「A^(1)およびA^(2)は、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基又は2価の芳香族炭化水素基を表す。該2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、」とあるのを「A^(1)およびA^(2)は、それぞれ独立に、2価の芳香族炭化水素基を表す。該2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?4及び請求項10?16も同様に訂正する。)。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1に「kおよびlは、それぞれ独立に、0?3の整数を表す」とあるのを「kおよびlは、それぞれ独立に、1?3の整数を表す」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?4及び請求項10?16も同様に訂正する。)。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項4に「式(C)で表される基及び重合性基を含む化合物」とあるのを、「式(C)で表される基及び重合性基を含み、ネマチック相を呈する化合物」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項10?16も同様に訂正する。)。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項4に「R^(1)、R^(2)、R^(3)及びR^(4)は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す」とあるのを「R^(1)、R^(2)、R^(3)及びR^(4)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す」に訂正し、「G^(1)及びG^(2)は、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基を表す。該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1?4のアルキル基、炭素数1?4のフルオロアルキル基、炭素数1?4アルコキシ基、シアノ基またはニトロ基に置換されていてもよく、」とあるのを「G^(1)及びG^(2)は、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基を表す。該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1?4のアルキル基または炭素数1?4のアルコキシ基に置換されていてもよく、」に訂正し、「R^(5)及びR^(6)は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す」とあるのを「R^(5)及びR^(6)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す」に訂正し、「に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1?4のアルキル基、炭素数1?4アルコキシ基、シアノ基又はニトロ基に置換されていてもよい。該炭素数1?4のアルキル基及び該炭素数1?4アルコキシ基に含まれる水素原子は、フッ素原子に置換されていてもよい。」とあるのを「に含まれる水素原子は、炭素数1?4のアルキル基又は炭素数1?4のアルコキシ基に置換されていてもよい。」に訂正し、「F^(1)及びF^(2)は、それぞれ独立に、炭素数1?12のアルキレン基を表す。該アルキレン基に含まれる水素原子は、炭素数1?5のアルキル基、炭素数1?5のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されていてもよく、」とあるのを「F^(1)及びF^(2)は、それぞれ独立に、炭素数1?12のアルキレン基を表す。該アルキレン基に含まれる水素原子は、炭素数1?5のアルキル基又は炭素数1?5のアルコキシ基に置換されていてもよく、」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項10?16も同様に訂正する。)。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項4に「A^(1)及びA^(2)は、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基又は2価の芳香族炭化水素基を表す。該2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、」とあるのを、「A^(1)及びA^(2)は、それぞれ独立に、2価の芳香族炭化水素基を表す。該2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項10?16も同様に訂正する。)。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項4に、「k及びlは、それぞれ独立に、0?3の整数を表す」とあるのを、「k及びlは、それぞれ独立に、1?3の整数を表す」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項10?16も同様に訂正する。)。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項5に、「式(C)で表される基及び重合性基を含む化合物」とあるのを、「式(C)で表される基及び重合性基を含み、ネマチック相を呈する化合物」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6?8及び請求項10?16も同様に訂正する。)。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項5に、「厚みが0.1?10μmである光学フィルム。」とあるのを、「厚みが0.1?10μmであり、波長450nmの位相差値Re(450)、波長550nmの位相差値Re(550)および波長650nmの位相差値Re(650)が、
Re(450)/Re(550)≦1.009、かつ
0.992≦Re(650)/Re(550)
を満足する光学フィルム。」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6?8及び請求項10?16も同様に訂正する。)。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項5に、「R^(1)、R^(2)、R^(3)及びR^(4)は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す」とあるのを、「R^(1)、R^(2)、R^(3)及びR^(4)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す」に訂正し、「G^(a)及びG^(b)は、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基を表す。該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1?4のアルキル基、炭素数1?4のフルオロアルキル基、炭素数1?4アルコキシ基、シアノ基またはニトロ基に置換されていてもよく、」とあるのを、「G^(a)及びG^(b)は、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基を表す。該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1?4のアルキル基又は炭素数1?4のアルコキシ基に置換されていてもよく、」に訂正し、「R^(5)及びR^(6)は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す」とあるのを、「R^(5)及びR^(6)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す」に訂正し、「に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1?4のアルキル基、炭素数1?4アルコキシ基、シアノ基又はニトロ基に置換されていてもよい。該炭素数1?4のアルキル基及び該炭素数1?4アルコキシ基に含まれる水素原子は、フッ素原子に置換されていてもよい。」とあるのを、「に含まれる水素原子は、炭素数1?4のアルキル基又は炭素数1?4のアルコキシ基に置換されていてもよい。」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6?8及び請求項10?16も同様に訂正する。)。

(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項5に、「A^(1)およびA^(2)は、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基又は2価の芳香族炭化水素基を表す。該2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、」とあるのを「A^(1)およびA^(2)は、それぞれ独立に、2価の芳香族炭化水素基を表す。該2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6?8及び請求項10?16も同様に訂正する。)。

(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項5に「kおよびlは、それぞれ独立に、0?3の整数を表す」とあるのを「kおよびlは、それぞれ独立に、1?3の整数を表す」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6?8及び請求項10?16も同様に訂正する。)。

(15)訂正事項15
特許請求の範囲の請求項8に「式(C)で表される基及び重合性基を含む化合物」とあるのを、「式(C)で表される基及び重合性基を含み、ネマチック相を呈する化合物」に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項10?16も同様に訂正する。)。

(16)訂正事項16
特許請求の範囲の請求項8に「R^(1)、R^(2)、R^(3)及びR^(4)は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す」とあるのを「R^(1)、R^(2)、R^(3)及びR^(4)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す」に訂正し、「G^(1)及びG^(2)は、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基を表す。該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1?4のアルキル基、炭素数1?4のフルオロアルキル基、炭素数1?4アルコキシ基、シアノ基またはニトロ基に置換されていてもよく、」とあるのを「G^(1)及びG^(2)は、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基を表す。該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1?4のアルキル基又は炭素数1?4のアルコキシ基に置換されていてもよく、」に訂正し、「R^(5)及びR^(6)は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す」とあるのを「R^(5)及びR^(6)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す」に訂正し、「に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1?4のアルキル基、炭素数1?4アルコキシ基、シアノ基又はニトロ基に置換されていてもよい。該炭素数1?4のアルキル基及び該炭素数1?4アルコキシ基に含まれる水素原子は、フッ素原子に置換されていてもよい。」とあるのを「に含まれる水素原子は、炭素数1?4のアルキル基又は炭素数1?4のアルコキシ基に置換されていてもよい。」に訂正し、「F^(1)及びF^(2)は、それぞれ独立に、炭素数1?12のアルキレン基を表す。該アルキレン基に含まれる水素原子は、炭素数1?5のアルキル基、炭素数1?5のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されていてもよく、」とあるのを「F^(1)及びF^(2)は、それぞれ独立に、炭素数1?12のアルキレン基を表す。該アルキレン基に含まれる水素原子は、炭素数1?5のアルキル基又は炭素数1?5のアルコキシ基に置換されていてもよく、」に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項10?16も同様に訂正する。)。

(17)訂正事項17
特許請求の範囲の請求項8に「A^(1)及びA^(2)は、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基又は2価の芳香族炭化水素基を表す。該2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、」とあるのを、「A^(1)及びA^(2)は、それぞれ独立に、2価の芳香族炭化水素基を表す。該2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、」に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項10?16も同様に訂正する。)。

(18)訂正事項18
特許請求の範囲の請求項8に、「k及びlは、それぞれ独立に、0?3の整数を表す」とあるのを、「k及びlは、それぞれ独立に、1?3の整数を表す」に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項10?16も同様に訂正する。)。

(19)訂正事項19
特許請求の範囲の請求項9を削除する。

(20)訂正事項20
特許請求の範囲の請求項10及び11に、「請求項1?9のいずれか記載の光学フィルム」とあるのを「請求項1?8のいずれか記載の光学フィルム」に訂正する。さらに特許請求の範囲の請求項12及び13に、「請求項1?11のいずれか記載の光学フィルム」とあるのを「請求項1?8、10および11のいずれか記載の光学フィルム」に訂正する。

4 訂正の目的の適否
(1)訂正事項1、6、10、15は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1?8、10?16に係る発明において、「ネマチック相を呈する」との要件を付加することにより、「式(C)で表される基及び重合性基を含む化合物」の範囲を減縮するものである。
したがって、訂正事項1、6、10、15は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。

(2)本件訂正2、11は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1?3、5?8、10?16において、Re(450)/Re(550)及びRe(650)/Re(550)の示す範囲を特定することにより、光学フィルムを減縮するものである。
したがって、訂正事項2、11は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。

(3)訂正事項3?5、7?9、12?14、16?18は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1?8、10?16に係る発明において、式(C)又は式(1)における置換基の選択肢の一部を削除することにより、式(C)又は式(1)で表される基及び重合性基の範囲を減縮するものである。
また、「炭素数1?4」と「アルコキシ基」との間に助詞「の」を加入することにより、明瞭でない記載の釈明を行うものである。
したがって、訂正事項3?5、7?9、12?14、16?18は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものである。

(4)訂正事項19は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項9を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。

(5)訂正事項20は、請求項9が削除されたことにともない、引用する請求項から請求項を除くものであって、訂正事項19との整合を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものである。

(6)むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものといえる。

5 新規事項の有無
(1)訂正事項1、6、10、15について
願書に添付した明細書の段落【0269】、【0272】、【0277】、【0328】、【0332】、【0341】及び【0428】には、化合物(ii-1)、化合物(v-1)、化合物(iv-1)、化合物(v’-1)、化合物(x-1)、化合物(xvii-1)及び化合物(v-6)が「ネマチック相」を示したことが記載されている。当該記載に基づけば、訂正事項1、6、10、15は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてされたものといえる。

(2)訂正事項2、11について
ア 願書に添付した明細書の段落【0475】の表3には、実施例2として、「Re(450)/Re(550)」が「1.009」の値を示し「Re(650)/Re(550)」が「0.992」の値を示す光学フィルムが記載されている。また、実施例3、5?8及び10には、「Re(450)/Re(550)」が何れも1.009以下の値を示し「Re(650)/Re(550)」が何れも0.992以上の値を示す光学フィルムが記載されている。当該記載に基づけば、訂正事項2、11は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてされたものといえる。

イ 特許異議申立人は、平成30年5月28日付けの意見書において、訂正請求書と同時に提出された意見書における特許権者の説明に対し、「この説明は、訂正事項(2)の各部分に関する記載が散在しているというだけのものであり、広範な範囲に散在する事項を組み合わせて、訂正事項(2)といったフィルムに関する特定の概念が導き出すことができることを立証するものではない。」と主張している。

ウ しかし、本件特許の明細書の段落【0005】には「本発明の課題は、広い波長域において一様の偏光変換が可能な光学フィルムを与える新しい化合物を提供することである。」との記載があり、また、段落【0165】には「本発明の光学フィルムの波長分散特性は、光学フィルムにおける化合物(A)に由来する構造単位の含有量によって、任意に決定することができる。光学フィルムにおける構造単位の中で化合物(A)に由来する構造単位の含有量を増加させると、よりフラットな波長分散特性、さらには逆波長分散特性を示す。」との記載がある。これらの記載に基づけば、本件特許の明細書には、光学フィルムにおいて、広い波長域において一様の偏光変換とすることや、よりフラットな波長分散特性、さらには逆波長分散特性を得るという技術事項が記載されていたといえる。そして、本件訂正の訂正事項2及び訂正事項11は、実施例2におけるRe(450)/Re(550)の値1.009及びRe(650)/Re(550)の値0.992を境界として、光学フィルムの特性を、よりフラットな、あるいは、より逆波長分散特性に近い範囲に限定するものといえる。また、限定されたRe(450)/Re(550)及びRe(650)/Re(550)の範囲に含まれる複数の実験例も実施例3、5?8として記載されている。

エ したがって、本件特許の明細書には、Re(450)/Re(550)及びRe(650)/Re(550)の値について、実施例2における値を閾値とし、よりフラットな、あるいは、より逆波長分散特性に近い範囲とする技術事項が記載されていたといえる。よって、特許異議申立人の主張を採用することはできない。

(3)訂正事項3?5、7?9、12?14、16?18は、式(C)又は式(1)における置換基の選択肢の一部を削除するものであり、訂正事項19は、請求項を削除するものであり、訂正事項20は、訂正事項19との整合を図るものであるから、訂正事項3?5、7?9、12?14、16?20が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてされたものであることは明らかである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

6 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1、6、10、15は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1?8、10?16に係る発明における「式(C)で表される基及び重合性基を含む化合物」について、「ネマチック相を呈する」との要件を付加するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項2、11は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1?3、5?8、10?16に係る発明における光学フィルムについて、その光学特性であるRe(450)/Re(550)及びRe(650)/Re(550)の示す範囲を特定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
さらに、訂正事項3?5、7?9、12?14、16?18は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1?8、10?16に係る発明における式(C)又は式(1)における置換基の選択肢の一部を削除することにより、式(C)又は式(1)で表される化合物の範囲を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
そして、訂正事項19は、請求項を削除するものであり、訂正事項20は訂正事項19との整合を図るものであるから、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、本件訂正は、特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

7 むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、当該訂正を認める。


第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1?16に係る発明(以下、「本件特許発明1」?「本件特許発明16」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
式(C)で表される基及び重合性基を含み、ネマチック相を呈する化合物を重合してなる光学フィルムであって、厚みが0.1?10μmであり、波長450nmの位相差値Re(450)、波長550nmの位相差値Re(550)および波長650nmの位相差値Re(650)が、
Re(450)/Re(550) ≦ 1.009、かつ
0.992 ≦ Re(650)/Re(550)
を満足する光学フィルム。
-(B^(1)-A^(1))_(k)-E^(1)-G^(a)-D^(a)-Ar^(a)-D^(b)-G^(b)-E^(2)-(A^(2)-B^(2))_(l)- (C)
[式(C)中、Ar^(a)は芳香族複素環を有する2価の基を表し、Ar^(a)基中の芳香環に含まれるπ電子の数N_(πa)は、13以上22以下であり、且つ、(N_(πa)-4)/3<k+l+4の関係を満たす。
D^(a)及びD^(b)は、それぞれ独立に、-CO-O-、-O-CO-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-CR^(1)R^(2)-CR^(3)R^(4)-、-O-CR^(1)R^(2)-、-CR^(1)R^(2)-O-、-CR^(1)R^(2)-O-CR^(3)R^(4)-、-CR^(1)R^(2)-O-CO-、-O-CO-CR^(1)R^(2)-、-CR^(1)R^(2)-O-CO-CR^(3)R^(4)-、-CR^(1)R^(2)-CO-O-CR^(3)R^(4)-、-NR^(1)-CR^(2)R^(3)-、-CR^(1)R^(2)-NR^(3)-、-CO-NR^(1)-、又は-NR^(1)-CO-を表す。R^(1)、R^(2)、R^(3)及びR^(4)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す。
G^(a)及びG^(b)は、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基を表す。該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1?4のアルキル基又は炭素数1?4のアルコキシ基に置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、-O-、-S-又は-NH-に置換されていてもよい。
E^(1)およびE^(2)は、それぞれ独立に、-CR^(5)R^(6)-、-CH_(2)-CH_(2)-、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-O-C(=S)-O-、-CO-NR^(5)-、-NR^(5)-CO-、-O-CH_(2)-、-CH_(2)-O-、-S-CH_(2)-、-CH_(2)-S-又は単結合を表す。R^(5)及びR^(6)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す。
B^(1)およびB^(2)は、それぞれ独立に、-CR^(5)R^(6)-、-CH_(2)-CH_(2)-、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-O-C(=S)-O-、-CO-NR^(5)-、-NR^(5)-CO-、-O-CH_(2)-、-CH_(2)-O-、-S-CH_(2)-、-CH_(2)-S-又は単結合を表す。
A^(1)およびA^(2)は、それぞれ独立に、2価の芳香族炭化水素基を表す。該2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1?4のアルキル基又は炭素数1?4のアルコキシ基に置換されていてもよい。kおよびlは、それぞれ独立に、1?3の整数を表す。]
【請求項2】
Ar^(a)が、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスロリン環、フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環、チアゾール環及び、ベンゾチアゾール環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する2価の基である請求項1記載の光学フィルム。
【請求項3】
G^(a)及びG^(b)が、1,4-シクロヘキシレン基である請求項1または2記載の光学フィルム。
【請求項4】
式(C)で表される基及び重合性基を含み、ネマチック相を呈する化合物が、式(1)で表される基を含む化合物である請求項1記載の光学フィルム。
P^(1)-F^(1)-(B^(1)-A^(1))_(k)-E^(1)-G^(1)-D^(1)-Ar-D^(2)-G^(2)-E^(2)-(A^(2)-B^(2))_(l)-F^(2)-P^(2) (1)
[式(1)中、Arは芳香族複素環を有する2価の基を表し、Ar基中の芳香環に含まれるπ電子の数N_(π)は、13以上22以下であり、且つ、(N_(π)-4)/3<k+l+4の関係を満たす。
D^(1)及びD^(2)は、それぞれ独立に、*-O-CO-(*は、Arに結合する位置を表す)、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-CR^(1)R^(2)-CR^(3)R^(4)-、-O-CR^(1)R^(2)-、-CR^(1)R^(2)-O-、-CR^(1)R^(2)-O-CR^(3)R^(4)-、-CR^(1)R^(2)-O-CO-、-O-CO-CR^(1)R^(2)-、-CR^(1)R^(2)-O-CO-R^(3)R^(4)-、-CR^(1)R^(2)-CO-O-CR^(3)R^(4)-、-NR^(1)-CR^(2)R^(3)-、-CR^(2)R^(3)-NR^(1)-、-CO-NR^(1)-、又は-NR^(1)-CO-を表す。R^(1)、R^(2)、R^(3)及びR^(4)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す。
G^(1)及びG^(2)は、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基を表す。該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1?4のアルキル基または炭素数1?4のアルコキシ基に置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、-O-、-S-又は-NH-に置換されていてもよい。
E^(1)、E^(2)、B^(1)及びB^(2)は、それぞれ独立に、-CR^(5)R^(6)-、-CH_(2)-CH_(2)-、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-O-C(=S)-O-、-CO-NR^(5)-、-NR^(5)-CO-、-O-CH_(2)-、-CH_(2)-O-、-S-CH_(2)-、-CH_(2)-S-又は単結合を表す。R^(5)及びR^(6)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す。
A^(1)及びA^(2)は、それぞれ独立に、2価の芳香族炭化水素基を表す。該2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1?4のアルキル基又は炭素数1?4のアルコキシ基に置換されていてもよい。
k及びlは、それぞれ独立に、1?3の整数を表す。
F^(1)及びF^(2)は、それぞれ独立に、炭素数1?12のアルキレン基を表す。該アルキレン基に含まれる水素原子は、炭素数1?5のアルキル基又は炭素数1?5のアルコキシ基に置換されていてもよく、該アルキレン基に含まれるメチレン基は、-O-又は-CO-に置換されていてもよい。
P^(1)及びP^(2)は、それぞれ独立に、水素原子又は重合性基(ただし、P^(1)及びP^(2)のうち少なくとも1つは、重合性基を表す)を表す。]
【請求項5】
式(C)で表される基及び重合性基を含み、ネマチック相を呈する化合物を重合してなる光学フィルムであって、厚みが0.1?10μmであり、波長450nmの位相差値Re(450)、波長550nmの位相差値Re(550)および波長650nmの位相差値Re(650)が、
Re(450)/Re(550) ≦ 1.009、かつ
0.992 ≦ Re(650)/Re(550)
を満足する光学フィルム。
-(B^(1)-A^(1))_(k)-E^(1)-G^(a)-D^(a)-Ar^(a)-D^(b)-G^(b)-E^(2)-(A^(2)-B^(2))_(l)- (C)
[式(C)中、Ar^(a)は芳香族複素環を有し、ベンゼン骨格を有する2価の基を表し、Ar^(a)基中の芳香環に含まれるπ電子の数N_(πa)は、13以上22以下であり、且つ、(N_(πa)-4)/3<k+l+4の関係を満たし、D^(a)およびD^(b)とは前記ベンゼン骨格のパラ位でそれぞれ結合する。
D^(a)及びD^(b)は、それぞれ独立に、-CO-O-、-O-CO-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-CR^(1)R^(2)-、-CR^(1)R^(2)-CR^(3)R^(4)-、-O-CR^(1)R^(2)-、-CR^(1)R^(2)-O-、-CR^(1)R^(2)-O-CR^(3)R^(4)-、-CR^(1)R^(2)-O-CO-、-O-CO-CR^(1)R^(2)-、-CR^(1)R^(2)-O-CO-CR^(3)R^(4)-、-CR^(1)R^(2)-CO-O-CR^(3)R^(4)-、-NR^(1)-CR^(2)R^(3)-、-CR^(1)R^(2)-NR^(3)-、-CO-NR^(1)-、又は-NR^(1)-CO-を表す。R^(1)、R^(2)、R^(3)及びR^(4)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す。
G^(a)及びG^(b)は、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基を表す。該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1?4のアルキル基又は炭素数1?4のアルコキシ基に置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、-O-、-S-又は-NH-に置換されていてもよい。
E^(1)およびE^(2)は、それぞれ独立に、-CR^(5)R^(6)-、-CH_(2)-CH_(2)-、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-O-C(=S)-O-、-CO-NR^(5)-、-NR^(5)-CO-、-O-CH_(2)-、-CH_(2)-O-、-S-CH_(2)-、-CH_(2)-S-又は単結合を表す。R^(5)及びR^(6)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す。
B^(1)およびB^(2)は、それぞれ独立に、-CR^(5)R^(6)-、-CH_(2)-CH_(2)-、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-O-C(=S)-O-、-CO-NR^(5)-、-NR^(5)-CO-、-O-CH_(2)-、-CH_(2)-O-、-S-CH_(2)-、-CH_(2)-S-又は単結合を表す。
A^(1)およびA^(2)は、それぞれ独立に、2価の芳香族炭化水素基を表す。該2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1?4のアルキル基又は炭素数1?4のアルコキシ基に置換されていてもよい。kおよびlは、それぞれ独立に、1?3の整数を表す。]
【請求項6】
Ar^(a)が、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスロリン環、フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環、チアゾール環及び、ベンゾチアゾール環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する2価の基である請求項5記載の光学フィルム。
【請求項7】
G^(a)及びG^(b)が、1,4-シクロヘキシレン基である請求項5または6記載の光学フィルム。
【請求項8】
式(C)で表される基及び重合性基を含み、ネマチック相を呈する化合物が、式(1)で表される基を含む化合物である請求項5記載の光学フィルム。
P^(1)-F^(1)-(B^(1)-A^(1))_(k)-E^(1)-G^(1)-D^(1)-Ar-D^(2)-G^(2)-E^(2)-(A^(2)-B^(2))_(l)-F^(2)-P^(2) (1)
[式(1)中、Arは芳香族複素環を有し、ベンゼン骨格を有する2価の基を表し、Ar基中の芳香環に含まれるπ電子の数N_(π)は、13以上22以下であり、且つ、(N_(π)-4)/3<k+l+4の関係を満たし、D^(1)およびD^(2)とは前記ベンゼン骨格のパラ位でそれぞれ結合する。
D^(1)及びD^(2)は、それぞれ独立に、*-O-CO-(*は、Arに結合する位置を表す)、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-CR^(1)R^(2)-、-CR^(1)R^(2)-CR^(3)R^(4)-、-O-CR^(1)R^(2)-、-CR^(1)R^(2)-O-、-CR^(1)R^(2)-O-CR^(3)R^(4)-、-CR^(1)R^(2)-O-CO-、-O-CO-CR^(1)R^(2)-、-CR^(1)R^(2)-O-CO-R^(3)R^(4)-、-CR^(1)R^(2)-CO-O-CR^(3)R^(4)-、-NR^(1)-CR^(2)R^(3)-、-CR^(2)R^(3)-NR^(1)-、-CO-NR^(1)-、又は-NR^(1)-CO-を表す。R^(1)、R^(2)、R^(3)及びR^(4)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す。
G^(1)及びG^(2)は、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基を表す。該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1?4のアルキル基又は炭素数1?4のアルコキシ基に置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、-O-、-S-又は-NH-に置換されていてもよい。
E^(1)、E^(2)、B^(1)及びB^(2)は、それぞれ独立に、-CR^(5)R^(6)-、-CH_(2)-CH_(2)-、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-O-C(=S)-O-、-CO-NR^(5)-、-NR^(5)-CO-、-O-CH_(2)-、-CH_(2)-O-、-S-CH_(2)-、-CH_(2)-S-又は単結合を表す。R^(5)及びR^(6)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す。
A^(1)及びA^(2)は、それぞれ独立に、2価の芳香族炭化水素基を表す。該2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1?4のアルキル基又は炭素数1?4のアルコキシ基に置換されていてもよい。
k及びlは、それぞれ独立に、1?3の整数を表す。
F^(1)及びF^(2)は、それぞれ独立に、炭素数1?12のアルキレン基を表す。該アルキレン基に含まれる水素原子は、炭素数1?5のアルキル基又は炭素数1?5のアルコキシ基に置換されていてもよく、該アルキレン基に含まれるメチレン基は、-O-又は-CO-に置換されていてもよい。
P^(1)及びP^(2)は、それぞれ独立に、水素原子又は重合性基(ただし、P^(1)及びP^(2)のうち少なくとも1つは、重合性基を表す)を表す。]
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
波長550nmにおける位相差値(Re(550))が113?163nmのλ/4板用である請求項1?8のいずれか記載の光学フィルム。
【請求項11】
波長550nmにおける位相差値(Re(550))が250?300nmのλ/2板用である請求項1?8のいずれか記載の光学フィルム。
【請求項12】
請求項1?8、10および11のいずれか記載の光学フィルム及び、偏光フィルムを含む偏光板。
【請求項13】
請求項1?8、10および11のいずれか記載の光学フィルムが、カラーフィルタ基板上に直接塗布された配向性ポリマー上に形成されてなるカラーフィルタ。
【請求項14】
請求項12記載の偏光板を含む液晶パネルを備えるフラットパネル表示装置。
【請求項15】
請求項12記載の偏光板を含む有機エレクトロルミネッセンスパネルを備える有機EL表示装置。
【請求項16】
請求項13記載のカラーフィルタを含む液晶表示装置。」

2 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1?16に係る特許に対して、平成30年2月27日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(1)理由1(サポート要件)
本件特許の請求項1?16に係る発明が解決しようとする課題は、本件特許の明細書の段落【0004】の記載に基づけば、「広い波長域において一様の偏光変換が可能な光学フィルムを与える新しい化合物を提供すること」であるといえる。
しかし、式(C)で表される化合物を重合してなる光学フィルム全てが、必ずしも必要とする偏光特性や液晶性を具備するとは考えられず、フラットな波長分散特性を有する光学フィルムが得られるかを把握することはできないから、本件特許の請求項1?16に係る発明が、発明が解決しようとする課題を解決できたとはいえない。
よって、本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(2)理由2(進歩性)
本件特許の請求項1?16に係る発明は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明に基いて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

<引用文献等一覧>
甲第1号証:特開2007-279705号公報

3 甲号証の記載
(1)甲第1号証の記載事項
本件特許の優先権主張の日前の平成19年10月25日に頒布された刊行物である甲第1号証には、以下の記載がある。(なお、下線は合議体が付与した。)

ア 「【請求項1】
下記一般式(I)もしくは(II)で表される化合物を含有する、又は下記一般式(I)もしくは(II)で表される化合物から誘導される繰り返し単位を含むポリマーを含有する光学異方性層を少なくとも一層有することを特徴とする半透過型液晶表示装置:
【化1】

式中、L^(1)及びL^(2)は各々独立に単結合又は二価の連結基を表し;A^(1)及びA^(2)は各々独立に、-O-、-NR-(Rは水素原子又は置換基を表す)、-S-及び-CO-からなる群から選ばれる基を表し;R^(1)、R^(2)、及びR^(3)は各々独立に置換基を表し;Xは第14?16族の非金属原子を表し、ただし、Xには水素原子又は置換基が結合してもよく;nは0?2の整数を表す;
【化2】

式中、MG^(1)及びMG^(2)はそれぞれ独立に、2?8個の環状基から構成される液晶相の発現を誘起する液晶コア部であり、液晶コア部を構成する環状基としては、芳香族環、脂肪族環、及び複素環のいずれでもよく;MG^(1)及びMG^(2)を構成する環状基の1つは、L^(11)及びL^(12)で置換され;R^(11)、R^(12)、R^(13)、及びR^(14)はそれぞれ液晶コア部の分子長軸方向に置換している液晶相の発現を誘起する柔軟性のある置換基、双極子作用基及び水素結合性基であり;L^(11)及びL^(12)はそれぞれ独立に、液晶コア部MG^(1)及びMG^(2)に置換する連結基であり、下記式(II)-LA又は式(II)-LBで表され;
【化3】

【化4】

式中、*はMG^(1)を構成する環状基に置換する位置を表し;#はP^(1)と連結する位置を表し;A^(11)、A^(13)及びA^(14)はそれぞれ独立に、?O-、-NH-、-S-、-CH_(2)-、-CO-、-SO-、又は-SO_(2)-を表し;A^(12)は-CH=又は-N=を表し;L^(11)及びL^(12)の双方が式(II)-LAで表される基の場合、置換基P^(1)は単結合、又は-CH=CH-、-C≡C-、1,4-フェニレン及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表し;L^(11)及びL^(12)の一方が、式(II)-LBで表される基で、他方が式(II)-LAで表される基の場合、置換基P^(1)は、*=CH-P^(11)-#、又は*=N-P^(11)-#で表され(*は式(II)-LBで表される基との連結位置を表し、#は式(II)-LAで表される基との連結位置を表す);P^(11)は単結合、又は-CH=CH-、-C≡C-、1,4-フェニレン及びこの組み合わせから選ばれる二価の連結基を表し;L^(11)及びL^(12)の双方が式(II)-LBで表される基の場合、置換基P^(1)は、二重結合、=CH-P^(11)-CH=、=N-P^(11)-CH=、=N-P^(11)-N=を表し;P^(11)は上記P^(11)と同義である。

(中略)

【請求項4】
前記光学異方性層が、λ/4板であることを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載の半透過型液晶表示装置。」

イ 「【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、薄型化が可能であり、且つ表示特性の良好な半透過型液晶表示装置を提供することができる。」

ウ 「【0013】
[半透過型液晶表示装置]
本発明の半透過型液晶表示装置の一実施形態の概略断面図を図1に示す。
図1に示す半透過型液晶表示装置は、対向する2枚の透明基板12及び16と、該2枚の透明基板に挟まれた液晶材料からなる液晶層14とを有する液晶セルLC;液晶セルLCを挟んで配置された一対の偏光板10及び18;ならびに液晶セルLCと偏光板10及び18とのそれぞれの間に、光学異方性層11及び17を有する。図中省略したが、背面側偏光板18の背面には、バックライトが配置されている。また、図1の半透過型液晶表示装置には、透過領域と反射領域があり、透過領域には、透明基板16の対向面上に、ITOなどの透明導電膜からなる透過電極15aが、反射領域には、アルミや銀などを使った反射率の高い材料により形成された反射電極15bが形成されている。また、対向配置された基板12の対向面には、透過電極15aと同様、ITO等の透明導電膜からなる対向電極13が形成されている。また図中省略したが、基板12と対向電極13との間には、RGBもしくはRGBWカラーフィルタが配置され、また対向電極13と液晶層14との間には、液晶層14中の液晶分子の配向を制御する配向層が形成されている。

(中略)

【0016】
光学異方性層11及び17は、後述する所定の式(I)もしくは(II)で表される化合物を含有する、又は式(I)もしくは(II)で表される化合物から誘導される繰り返し単位を含むポリマーを含有する層である。
そもそも半透過型液晶表示装置で、色相変化が生じる主原因は、位相差板などの光学異方性物質のもつレターデーションの波長分散特性にある。レターデーションの波長分散特性は、通常、波長が長くなるほどレターデーションが小さくなるもので、例えば、半透過型液晶表示装置でλ/4板は、直線偏光と円偏光を変換する機能を担うが、波長G(550nm)におけるレターデーションがλ/4の137.5nmのものを使った場合、波長R(600nm)に対してはそれより小さく、逆に波長B(450nm)に対してはそれよりも大きくなってしまう。この問題を解決するため、本実施形態では、面内レターデーションが逆波長分散特性(面内レターデーションが、可視光域の光に対して、波長が長波長であるほど大きくなる特性)をもつ所定の光学異方性物質を用いて形成された、λ/4板として機能する光学異方性層11及び17を用いている。」
(合議体注:図1は以下の図である。)


エ 「【0021】
以下に、本発明の半透過型液晶表示装置に用いられる光学異方性層について、作製に用いられる材料、作製方法等を詳細に説明する。
[光学異方性層]
本発明でいう光学異方性層は、位相差を測定したときにReが実質的に0でない入射方向が一つでもある、即ち等方性でない光学特性を有していれば特に限定はないが、光学特性を制御しやすいなどの観点から、少なくとも一種の液晶性化合物を含有する液晶層に紫外線を照射することで硬化させて形成された層であることが望ましい。
【0022】
[液晶性化合物を含有する組成物からなる光学異方性層]
前記光学異方性層は、上記の様に、液晶表示装置の視野角を補償する光学異方性層として機能する。光学異方性層単独で充分な光学補償能を有する態様はもちろん、他の層(例えば、光学補償層や偏光板の保護フィルム)との組み合わせで光学補償に必要とされる光学特性を満足する態様も本発明でいう範囲に含まれる。
【0023】
前記光学異方性層は、少なくとも一つの液晶性化合物を含有する組成物から形成されることが好ましい。一般的に、液晶性化合物はその形状から、棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。本発明では、いずれの液晶性化合物を用いることもできるが、棒状液晶性化合物又は円盤状液晶性化合物を用いるのが好ましい。2種以上の棒状液晶性化合物、2種以上の円盤状液晶性化合物、又は棒状液晶性化合物と円盤状液晶性化合物との混合物を用いてもよい。温度変化や湿度変化を小さくできることから、反応性基を有する棒状液晶性化合物又は円盤状液晶性化合物を用いて形成するのがより好ましく、混合物の場合少なくとも1つは1液晶分子中の反応性基が2以上あることがさらに好ましい。液晶性化合物は二種類以上の混合物でもよく、その場合少なくとも1つが2以上の反応性基を有していることが好ましい。前記光学異方性層の厚さは、0.1?20μmであることが好ましく、0.5?10μmであることがさらに好ましい。

(中略)

【0027】
具体的には、下記一般式(I)又は後述する一般式(II)で表される液晶化合物が挙げられる。下記の所定の化合物を用いることで、可視光の波長領域において、波長450nmで測定した位相差△nd(450nm)と、波長550nmで測定した位相差△nd(550nm)と、波長650nmで測定した位相差△nd(650nm)とが、△nd(450nm)<△nd(550nm)<△nd(650nm)を満たす光学異方性層を容易に、しかも薄層で形成することができる。これらの液晶性化合物は、添加剤として光学異方性層中に単分子構造のまま含有されていてもよいし、これらの液晶性化合物が重合性基を有する場合は、これらの液晶性化合物から誘導される繰り返し単位を有する高分子の状態で、前記光学異方性層中に含有されていてもよい。
【0028】
【化5】

【0029】
式中、L^(1)及びL^(2)は各々独立に単結合又は二価の連結基を表す。A^(1)及びA^(2)は各々独立に、-O-、-NR-(Rは水素原子又は置換基を表す。)、-S-及び-CO-からなる群から選ばれる基を表す。R^(1)、R^(2)、及びR^(3)は各々独立に置換基を表す。Xは第14?16族の非金属原子を表す(ただし、Xには水素原子又は置換基が結合してもよい)。nは0?2の整数を表す。
【0030】
特に下記一般式(I')で表される液晶化合物が好ましい。
【0031】
【化6】

【0032】
一般式(I')中、L^(1)及びL^(2)は各々独立に単結合又は二価の連結基を表す。A^(1)及びA^(2)は各々独立に、-O-、-NR-(Rは水素原子又は置換基を表す。)、-S-及び-CO-からなる群から選ばれる基を表す。R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)及びR^(5)は各々独立に置換基を表す。nは0?2の整数を表す。
【0033】
一般式(I)又は(I')において、L^(1)及びL^(2)が表す二価の連結基としては、好ましくは下記の例が挙げられる。
【0034】
【化7】

【0035】
さらに好ましくは-O-、-COO-、-OCO-である。
【0036】
一般式(I)又は(I')において、R^(1)は置換基であり、複数存在する場合は同じでも異なっていてもよく、環を形成してもよい。置換基の例としては下記のものが適用できる。

(中略)

【0039】
アリール基(好ましくは炭素数6?30の置換又は無置換のアリール基、例えばフェニル基、p-トリル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは5又は6員の置換又は無置換の、芳香族又は非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3?30の5又は6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2-フリル基、2-チエニル基、2-ピリミジニル基、2-ベンゾチアゾリル基)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1?30の置換又は無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert-ブトキシ基、n-オクチルオキシ基、2-メトキシエトキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6?30の置換又は無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2-メチルフェノキシ基、4-tert-ブチルフェノキシ基、3-ニトロフェノキシ基、2-テトラデカノイルアミノフェノキシ基)、

(中略)

【0047】
R^(1)は好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、シアノ基、アミノ基であり、さらに好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、シアノ基、アルコキシ基である。
【0048】
R^(2)、R^(3)は各々独立に置換基を表す。例としては上記R^(1)の例があげられる。好ましくは置換もしくは無置換のベンゼン環、置換もしくは無置換のシクロヘキサン環である。より好ましくは置換基を有するベンゼン環、置換基を有するシクロヘキサン環であり、さらに好ましくは4位に置換基を有するベンゼン環、4位に置換基を有するシクロヘキサン環である。
【0049】
R^(4)、R^(5)は各々独立に置換基を表す。例としては上記R^(1)の例があげられる。好ましくは、ハメットの置換基定数σp値が0より大きい電子吸引性の置換基であることが好ましく、σp値が0?1.5の電子吸引性の置換基を有していることがさらに好ましい。このような置換基としてはトリフルオロメチル基、シアノ基、カルボニル基、ニトロ基等が挙げられる。また、R4とR5とが結合して環を形成してもよい。
なお、ハメットの置換基定数のσp、σmに関しては、例えば、稲本直樹著「ハメット則-構造と反応性-」(丸善)、日本化学会編「新実験化学講座14 有機化合物の合成と反応V」2605頁(丸善)、仲谷忠雄著「理論有機化学解説」217頁(東京化学同人)、ケミカル レビュー,91巻,165?195頁(1991年)等の成書に詳しく解説されている。
【0050】
A^(1)及びA^(2)は各々独立に、-O-、-NR-(Rは水素原子又は置換基)、-S-及び-CO-からなる群から選ばれる基を表す。好ましくは-O-、-NR-(Rは置換基を表し、例としては上記R^(1)の例が挙げられる。)又は-S-である。
【0051】
Xは第14?16族の非金属原子を表す。ただし、Xには水素原子又は置換基が結合してもよい。Xは=O、=S、=NR、=C(R)Rが好ましい(ここでRは置換基を表し、例としては上記R^(1)の例が挙げられる。)。
nは0?2の整数を表し、好ましくは0、1である。
【0052】
前記一般式(I)又は(I')で表される化合物が、重合性基を有していると、光学異方性層の光学特性が熱等によって変動しないので、好ましい。重合性基としては、後述する一般式(III)で表される化合物が有する置換基Qの例示と同様である。なお、前記一般式(I)又は(I')で表される化合物は、例えば、R^(2)及び/又はR^(3)の置換基として重合性基を有していてもよい。
【0053】
以下に、一般式(I)又は(I')で表される化合物の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によって何ら限定されることはない。下記化合物に関しては、指定のない限り括弧( )内の数字にて例示化合物(X)と示す。

(中略)

【0055】
【化9】

(中略)



(中略)


【0056】
【化10】

(中略)




オ 「【0096】
光学異方性層は、前記一般式(I)又は(II)で表される化合物、及び所望により他の液晶性化合物を含有する組成物(例えば塗布液)を、後述する配向層の表面に塗布し、所望の液晶相を示す配向状態とした後、該配向状態を熱又は電離放射線の照射により固定することで作製された層であるのが好ましい。液晶性化合物として、反応性基を有する棒状液晶性化合物を用いる場合、二軸性を発現させるためにはコレステリック配向もしくは傾斜角が厚み方向に徐々に変化しながらねじれたハイブリッドコレステリック配向を、偏光照射によって歪ませることが必要である。偏光照射によって配向を歪ませる方法としては、二色性液晶性重合開始剤を用いる方法(EP1389199 A1)や分子内にシンナモイル基等の光配向性官能基を有する棒状液晶性化合物を用いる方法(特開2002-6138号公報)が挙げられる。

(中略)

【0101】
[液晶性化合物の配向状態の固定化]
配向させた液晶性化合物は、配向状態を維持して固定することが好ましい。固定化は、液晶性化合物に導入した反応性基の重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれるが、光重合反応がより好ましい。光重合開始剤の例には、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)が含まれる。」

カ 「【0116】
前記光学異方性層の厚みについては特に制限されないが、薄型化の観点からは、0.1?20μmであるのが好ましく、0.1?10μmであるのがより好ましい。」

キ 「【0133】
[その他の構成部材]
本発明の半透過型液晶表示装置が有する、反射層を含む反射領域、透過領域、カラーフィルタ層、及び光学補償層は、従来公知の種々の方法で形成することができる。前記カラーフィルタ層又は光学補償層についても、転写材料を利用して形成してもよい。また、カラーフィルタの製造においては、特開平11-248921号公報、特許3255107号公報に記載のように、カラーフィルタを形成する着色樹脂組成物を重ねることで土台を形成し、その上に透明電極を形成し、更に必要に応じて分割配向用の突起を重ねることでスペーサを形成することが、コストダウンの観点で好ましい。また、光学補償層は、前記一般式(VI)で表される棒状液晶性化合物、又は前記一般式(VIII)で表される円盤状液晶性化合物を含有する重合性組成物を、配向膜等の表面に塗布して、液晶性分子を配向させた後、該配向状態に重合により固定して形成するのが好ましい。前記重合性組成物中に用いられる材料、固定化方法、塗布液の調製、配向膜についての具体例は、前記光学異方性層の形成時に用いられる材料及び方法と同様である。」

(2)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証の記載事項ウには、光学異方性層が半透過型液晶表示装置のλ/4板として機能することが記載されており、甲第1号証の記載事項エには、この光学異方性層が、液晶性化合物を含有する組成物から形成される(段落【0023】)ものであり、これらの液晶性化合物が重合性基を有する場合は、これらの液晶性化合物から誘導される繰り返し単位を有する高分子の状態で、光学異方性層中に含有される(段落【0027】)と記載されている。そして、例示化合物(56)及び(57)は、何れも両端部にエチレン性不飽和基からなる重合性基を有しており、これらの例示化合物は、これらの例示化合物から誘導される繰り返し単位を有する高分子の状態で、光学異方性層中に含有するものといえる。そうすると、甲第1号証には、以下の発明が記載されている。
「下記一般式(I)で表される液晶性化合物から誘導される繰り返し単位を有する高分子が含有され、λ/4板として機能する光学異方性層において、前記一般式(I)で表される液晶化合物が下記式(56)又は(57)で表される化合物である、
光学異方性層。

」(以下、「引用発明」という。)

4 判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について

ア 理由1(特許法第36条第6項第1号:サポート要件)
(ア)本件訂正後の請求項1?8、10?16に係る発明が解決しようとする課題は、本件特許の明細書の段落【0004】の記載に基づけば、「広い波長域において一様の偏光変換が可能な光学フィルムを与える新しい化合物を提供すること」であるといえる。
一方、本件訂正後の請求項1?8、10?16に係る発明は、いずれも、光学フィルムが、ネマチック相を呈する化合物を重合してなるとする要件、及び、式(C)で表される化合物が、電気吸引性の高い置換基で置換された場合は除かれたものであり、そして、光学フィルムが、波長450nmの位相差値Re(450)、波長550nmの位相差値Re(550)および波長650nmの位相差値Re(650)が、以下を満足するとする要件を具備するものとなった。
Re(450)/Re(550) ≦ 1.009、かつ
0.992 ≦ Re(650)/Re(550)

そうすると、本件訂正後の請求項1?8、10?16に係る発明は、化合物が液晶性を具備するものに限定されており、当該化合物を重合して得られる光学フィルムが所望の光学特性を有するものに限定されているといえる。
よって、本件訂正後の請求項1?8、10?16に係る発明は、課題を解決できることは明らかであるから、特許法第36条第6項第1号の要件を満たすものといえる。

(イ)特許異議申立人は、平成30年5月28日付けの意見書において、「本件特許明細書の記載と上記乙号証から把握される技術常識等に基づいて、当業者が、本件特許発明の課題を解決することができると認識できるのは、せいぜい、化合物の長軸方向と概ね直交して交差する方向に、芳香族複素環を含む、π電子密度の高い分子構造(Ar^(a))を有する場合に限られる。」とし、取消理由1は解消していないと主張する。
しかし、本件訂正後の請求項1?8、10?16に係る発明は、Ar^(a)の構造を直接特定していないものの、光学フィルムがRe(450)/Re(550)≦1.009、かつ0.992≦Re(650)/Re(550)とする要件を具備するものである。光学フィルムが当該要件を具備するためには、光学フィルムに含まれる式(C)で表される化合物が、必然的に化合物の長軸方向と概ね直交して交差する方向に、芳香族複素環を含む、π電子密度の高い分子構造(Ar^(a))を有することとなる。
したがって、本件訂正後の請求項1?8、10?16に係る発明は、広い波長域において一様の偏光変換が可能な光学フィルムを与えるという効果を奏することは明らかである。
よって、特許異議申立人の主張には理由がない。

イ 理由2(特許法第29条第2項:進歩性)
(ア)本件特許発明1について
a 対比
本件特許発明1と引用発明とを対比する。

(a)引用発明の「λ/4板として機能する光学異方性層」は、光学的な機能を有する層であって、その形状がフィルム状であることは明らかである。
したがって、引用発明の「λ/4板として機能する光学異方性層」は、本件特許発明1の「光学フィルム」に相当する。

(b)引用発明の高分子を構成する例示化合物(56)又は(57)は、何れも両端部にエチレン性不飽和基を有しているから、本件特許発明1の「重合性基」を有しているといえる。
引用発明の高分子を構成する例示化合物(56)又は(57)の芳香族複素環構造と、本件特許発明1の式(C)におけるAr^(a)で表される構造とは、「芳香族複素環を有する2価の基」である点で共通する。
引用発明の例示化合物(56)又は(57)における芳香族複素環を有する2価の基に結合する「-O-CO-」は、本件特許発明1の式(C)における「D^(a)」及び「D^(b)」に相当する。
引用発明の例示化合物(56)又は(57)における上記「-O-CO-」に結合する「ベンゼン環」と、本件特許発明1の式(C)における「G^(a)」及び「G^(b)」とは、「2価の環式炭化水素基」である点で共通する。
引用発明の例示化合物(56)又は(57)の上記「ベンゼン環」に結合する、「-O-CO-」、「-O-」、「-O-CO-O-」は、本件特許発明1の「E^(1)」及び「E^(2)」に包含される。
引用発明の例示化合物(56)又は(57)における上記「-O-CO-」に結合する「ベンゼン環」は、本件特許発明1の「A^(1)」及び「A^(2)」に相当し、上記「ベンゼン環」に結合する「-O-」又は「-O-COO-」は、本件特許発明1の式(C)における「B^(1)」及び「B^(2)」にそれぞれ包含される。そして、引用発明の例示化合物(56)又は(57)は、k=l=1である化合物に相当する。
そうすると、引用発明の例示化合物(56)又は(57)と、本件特許発明1の「式(C)で表される基及び重合性基を含み、ネマチック相を呈する化合物」とは、「式(C)’で表される基及び重合性基を含む化合物であって、式(C)’が-(B^(1)-A^(1))_(k)-E^(1)-環式炭化水素基-D^(a)-芳香族複素環-D^(b)-環式炭化水素基-E^(2)-(A^(2)-B^(2))_(l)-」である点で共通する。

(c)引用発明の「光学異方性層」は、液晶性化合物から誘導される繰り返し単位を有する高分子が含有されるものである。
したがって、引用発明の「光学異方性層」は、本件特許発明1の「化合物を重合してなる光学フィルム」との要件を満たしている。

(d)以上より、本件特許発明1と引用発明とは、
「式(C)’で表される基及び重合性基を含む化合物を重合してなる光学フィルム。
-(B^(1)-A^(1))_(k)-E^(1)-環式炭化水素基-D^(a)-芳香族複素環-D^(b)-環式炭化水素基-E^(2)-(A^(2)-B^(2))_(l)- (C)’
[式(C)中、Ar^(a)は芳香族複素環を有する2価の基を表す。
D^(a)及びD^(b)は、それぞれ独立に、-CO-O-、-O-CO-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-CR^(1)R^(2)-CR^(3)R^(4)-、-O-CR^(1)R^(2)-、-CR^(1)R^(2)-O-、-CR^(1)R^(2)-O-CR^(3)R^(4)-、-CR^(1)R^(2)-O-CO-、-O-CO-CR^(1)R^(2)-、-CR^(1)R^(2)-O-CO-CR^(3)R^(4)-、-CR^(1)R^(2)-CO-O-CR^(3)R^(4)-、-NR^(1)-CR^(2)R^(3)-、-CR^(1)R^(2)-NR^(3)-、-CO-NR^(1)-、又は-NR^(1)-CO-を表す。R^(1)、R^(2)、R^(3)及びR^(4)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す。
E^(1)およびE^(2)は、それぞれ独立に、-CR^(5)R^(6)-、-CH_(2)-CH_(2)-、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-O-C(=S)-O-、-CO-NR^(5)-、-NR^(5)-CO-、-O-CH_(2)-、-CH_(2)-O-、-S-CH_(2)-、-CH_(2)-S-又は単結合を表す。R^(5)及びR^(6)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す。
B^(1)およびB^(2)は、それぞれ独立に、-CR^(5)R^(6)-、-CH_(2)-CH_(2)-、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-O-C(=S)-O-、-CO-NR^(5)-、-NR^(5)-CO-、-O-CH_(2)-、-CH_(2)-O-、-S-CH_(2)-、-CH_(2)-S-又は単結合を表す。
A^(1)およびA^(2)は、それぞれ独立に、2価の芳香族炭化水素基を表す。該2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1?4のアルキル基又は炭素数1?4のアルコキシ基に置換されていてもよい。kおよびlは、それぞれ独立に、1?3の整数を表す。]」である点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]本件特許発明1の化合物は、ネマチック相を呈し、式(C)の芳香族複素環を有する2価の基であるAr^(a)が、芳香環に含まれるπ電子の数N_(πa)は、13以上22以下であり、且つ、(N_(πa)-4)/3<k+l+4の関係を満たす構造であるのに対し、引用発明の例示化合物(56)及び(57)は、液晶性化合物であるものの、ネマチック相を呈するとされておらず、芳香族複素環を有する2価の基が、上記条件を満たしておらず、さらに、本件特許発明1の化合物は、式(C)のG^(a)及びG^(b)が2価の脂環式炭化水素基で表される構造を有するのに対し、引用発明の例示化合物(56)及び(57)は、ベンゼン環で表される構造を有する点。
[相違点2]本件特許発明1の光学フィルムは、厚みが0.1?10μmであるのに対し、引用発明の光学異方性層は厚さを特定していない点。
[相違点3]本件特許発明1の光学フィルムは、波長450nmの位相差値Re(450)、波長550nmの位相差値Re(550)および波長650nmの位相差値Re(650)が、以下の条件を満足するのに対し、引用発明は、以下の条件を満足するか不明である点。
Re(450)/Re(550) ≦ 1.009、かつ
0.992 ≦ Re(650)/Re(550)

b 判断
上記[相違点1]について検討すると、甲第1号証の記載事項エの段落【0048】には、上記一般式(I)又は(I')で表される化合物について、置換もしくは無置換のシクロヘキサン環であることが好ましいと記載されている。しかし、甲第1号証において例示される化合物は、いずれも、中心芳香族複素環構造に対し、2つのシクロヘキサン環あるいは2つのベンゼン環が連なる構造が連結されるもののみであり、中心芳香族複素環構造に対し、シクロヘキサン環を介してベンゼン環が連なる構造が連結される構造については、例示も示唆もない。そして、本件特許の明細書に記載された実施例からみて、シクロヘキサン環を介してベンゼン環が連なる構造を有する化合物は、そのような構造を有さない化合物に比べて、より好ましい光学特性を奏するものといえる。
そうすると、引用発明の化合物の構造をシクロヘキサン環を介してベンゼン環が連なる構造に変更することが、当業者が容易になし得たということはできない。

よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

(イ)本件特許発明2?8、10?16について
本件特許発明5は、本件特許発明1の「式(C)で表される基及び重合性基を含み、ネマチック相を呈する化合物を重合してなる光学フィルム」であり、式(C)の芳香族複素環を有する2価の基であるAr^(a)が、芳香環に含まれるπ電子の数N_(πa)は、13以上22以下であり、且つ、(N_(πa)-4)/3<k+l+4の関係を満たす構造であり、さらに、式(C)のG^(a)及びG^(b)が2価の脂環式炭化水素基で表される構造を有するとする構成を有している。そして、本件特許発明2?4及び6?8、10?16は、本件特許発明1又は本件特許発明5を更に減縮したものである。
そうすると、本件特許発明2?8、10?16も、本件特許発明1についての判断と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人は、本件訂正前の請求項1?16に係る発明について、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると主張している。
しかし、本件特許発明1又は本件特許発明5と甲第2号証に記載された発明とは、ネマチック相を発現する液晶化合物からなる光学フィルムである点で一致するものの、本件特許発明1又は本件特許発明5における化合物(C)と甲第2号証に記載された発明の液晶化合物とは、その化学構造が相違している。
特許異議申立人は、特許異議申立書において、甲第2号証の一般式(II)で表される化合物の好適例とされる段落[0118]の[化18]の上から2番目に記載されているベンゾチアゾール基を2つ有する化合物において「ここで、[化18]に記載の置換基Rとして記載されている置換基を適宜に組み合わせて光学異方性膜を形成し得るところ、4つのRのうち2つを「G-5」、「G-11」、「G-17」、「G-23」の置換基とし、残りの2つを「G-6」、「G-12」、「G-18」、「G-24」の置換基とすれば、当該化合物は(C)で表される基を含む化合物となり、よって、式(C)で表される基を含む化合物を容易に想到し得る。」と主張している。しかしながら、「G-5」?「G24」は、それぞれ別の化学構造における置換基として記載されているものであり、適宜に組み合わせることが可能であるとする根拠を見いだせない。そして、本件特許の明細書に記載された実施例からみて、シクロヘキサン環を介してベンゼン環が連なる構造を有する化合物は、そのような構造を有さない化合物に比べて、より好ましい光学特性を奏するものであり、そのような効果は甲第2号証の記載に基づいて当業者が予測し得たものということができない。
よって、特許異議申立人の主張は採用できない。


第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?8、10?16に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?8、10?16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件請求項9に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項9に対して特許異議申立人がした特許異議申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(C)で表される基及び重合性基を含み、ネマチック相を呈する化合物を重合してなる光学フィルムであって、厚みが0.1?10μmであり、波長450nmの位相差値Re(450)、波長550nmの位相差値Re(550)および波長650nmの位相差値Re(650)が、
Re(450)/Re(550)≦1.009、かつ
0.992≦Re(650)/Re(550)
を満足する光学フィルム。
-(B^(1)-A^(1))_(k)-E^(1)-G^(a)-D^(a)-Ar^(a)-D^(b)-G^(b)-E^(2)-(A^(2)-B^(2))_(l)- (C)
[式(C)中、Ar^(a)は芳香族複素環を有する2価の基を表し、Ar^(a)基中の芳香環に含まれるπ電子の数N_(πa)は、13以上22以下であり、且つ、(N_(πa)-4)/3<k+l+4の関係を満たす。
D^(a)及びD^(b)は、それぞれ独立に、-CO-O-、-O-CO-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-CR^(1)R^(2)-CR^(3)R^(4)-、-O-CR^(1)R^(2)-、-CR^(1)R^(2)-O-、-CR^(1)R^(2)-O-CR^(3)R^(4)-、-CR^(1)R^(2)-O-CO-、-O-CO-CR^(1)R^(2)、-CR^(1)R^(2)-O-CO-CR^(3)R^(4)-、-CR^(1)R^(2)-CO-O-CR^(3)R^(4)-、-NR^(1)-CR^(2)R^(3)-、-CR^(1)R^(2)-NR^(3)-、-CO-NR^(1)-、又は-NR^(1)-CO-を表す。R^(1)、R^(2)、R^(3)及びR^(4)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す。
G^(a)及びG^(b)は、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基を表す。該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1?4のアルキル基又は炭素数1?4のアルコキシ基に置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、-O-、-S-又は-NH-に置換されていてもよい。
E^(1)およびE^(2)は、それぞれ独立に、-CR^(5)R^(6)-、-CH_(2)-CH_(2)-、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-O-C(=S)-O-、-CO-NR^(5)-、-NR^(5)-CO-、-O-CH_(2)-、-CH_(2)-O-、-S-CH_(2)-、-CH_(2)-S-又は単結合を表す。R^(5)及びR^(6)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す。
B^(1)およびB^(2)は、それぞれ独立に、-CR^(5)R^(6)-、-CH_(2)-CH_(2)-、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-O-C(=S)-O-、-CO-NR^(5)-、-NR^(5)-CO-、-O-CH_(2)-、-CH_(2)-O-、-S-CH_(2)-、-CH_(2)-S-又は単結合を表す。
A^(1)およびA^(2)は、それぞれ独立に、2価の芳香族炭化水素基を表す。該2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1?4のアルキル基又は炭素数1?4のアルコキシ基に置換されていてもよい。kおよびlは、それぞれ独立に、1?3の整数を表す。]
【請求項2】
Ar^(a)が、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスロリン環、フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環、チアゾール環及び、ベンゾチアゾール環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する2価の基である請求項1記載の光学フィルム。
【請求項3】
G^(a)及びG^(b)が、1,4-シクロヘキシレン基である請求項1または2記載の光学フィルム。
【請求項4】
式(C)で表される基及び重合性基を含み、ネマチック相を呈する化合物が、式(1)で表される基を含む化合物である請求項1記載の光学フィルム。
P^(1)-F^(1)-(B^(1)-A^(1))_(k)-E^(1)-G^(1)-D^(1)-Ar-D^(2)-G^(2)-E^(2)-(A^(2)-B^(2))_(l)-F^(2)-P^(2) (1)
[式(1)中、Arは芳香族複素環を有する2価の基を表し、Ar基中の芳香環に含まれるπ電子の数N_(π)は、13以上22以下であり、且つ、(N_(π)-4)/3<k+l+4の関係を満たす。
D^(1)及びD^(2)は、それぞれ独立に、*-O-CO-(*は、Arに結合する位置を表す)、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-CR^(1)R^(2)-CR^(3)R^(4)-、-O-CR^(1)R^(2)-、-CR^(1)R^(2)-O-、-CR^(1)R^(2)-O-CR^(3)R^(4)-、-CR^(1)R^(2)-O-CO-、-O-CO-CR^(1)R^(2)-、-CR^(1)R^(2)-O-CO-R^(3)R^(4)-、-CR^(1)R^(2)-CO-O-CR^(3)R^(4)-、-NR^(1)-CR^(2)R^(3)-、-CR^(2)R^(3)-NR^(1)-、-CO-NR^(1)-、又は-NR^(1)-CO-を表す。R^(1)、R^(2)、R^(3)及びR^(4)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す。
G^(1)及びG^(2)は、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基を表す。該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1?4のアルキル基または炭素数1?4のアルコキシ基に置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、-O-、-S-又は-NH-に置換されていてもよい。
E^(1)、E^(2)、B^(1)及びB^(2)は、それぞれ独立に、-CR^(5)R^(6)-、-CH_(2)-CH_(2)-、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-O-C(=S)-O-、-CO-NR^(5)-、-NR^(5)-CO-、-O-CH_(2)-、-CH_(2)-O-、-S-CH_(2)-、-CH_(2)-S-又は単結合を表す。R^(5)及びR^(6)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す。
A^(1)及びA^(2)は、それぞれ独立に、2価の芳香族炭化水素基を表す。該2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1?4のアルキル基又は炭素数1?4のアルコキシ基に置換されていてもよい。
k及びlは、それぞれ独立に、1?3の整数を表す。
F^(1)及びF^(2)は、それぞれ独立に、炭素数1?12のアルキレン基を表す。該アルキレン基に含まれる水素原子は、炭素数1?5のアルキル基又は炭素数1?5のアルコキシ基に置換されていてもよく、該アルキレン基に含まれるメチレン基は、-O-又は-CO-に置換されていてもよい。
P^(1)及びP^(2)は、それぞれ独立に、水素原子又は重合性基(ただし、P^(1)及びP^(2)のうち少なくとも1つは、重合性基を表す)を表す。]
【請求項5】
式(C)で表される基及び重合性基を含み、ネマチック相を呈する化合物を重合してなる光学フィルムであって、厚みが0.1?10μmであり、波長450nmの位相差値Re(450)、波長550nmの位相差値Re(550)および波長650nmの位相差値Re(650)が、
Re(450)/Re(550)≦1.009、かつ
0.992≦Re(650)/Re(550)
を満足する光学フィルム。
-(B^(1)-A^(1))_(k)-E^(1)-G^(a)-D^(a)-Ar^(a)-D^(b)-G^(b)-E^(2)-(A^(2)-B^(2))_(l)- (C)
[式(C)中、Ar^(a)は芳香族複素環を有し、ベンゼン骨格を有する2価の基を表し、Ar^(a)基中の芳香環に含まれるπ電子の数N_(πa)は、13以上22以下であり、且つ、(N_(πa)-4)/3<k+l+4の関係を満たし、D^(a)およびD^(b)とは前記ベンゼン骨格のパラ位でそれぞれ結合する。
D^(a)及びD^(b)は、それぞれ独立に、-CO-O-、-O-CO-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-CR^(1)R^(2)-、-CR^(1)R^(2)-CR^(3)R^(4)-、-O-CR^(1)R^(2)-、-CR^(1)R^(2)-O-、-CR^(1)R^(2)-O-CR^(3)R^(4)-、-CR^(1)R^(2)-O-CO-、-O-CO-CR^(1)R^(2)-、-CR^(1)R^(2)-O-CO-CR^(3)R^(4)-、-CR^(1)R^(2)-CO-O-CR^(3)R^(4)-、-NR^(1)-CR^(2)R^(3)-、-CR^(1)R^(2)-NR^(3)-、-CO-NR^(1)-、又は-NR^(1)-CO-を表す。R^(1)、R^(2)、R^(3)及びR^(4)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す。
G^(a)及びG^(b)は、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基を表す。該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1?4のアルキル基又は炭素数1?4のアルコキシ基に置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、-O-、-S-又は-NH-に置換されていてもよい。
E^(1)およびE^(2)は、それぞれ独立に、-CR^(5)R^(6)-、-CH_(2)-CH_(2)-、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-O-C(=S)-O-、-CO-NR^(5)-、-NR^(5)-CO-、-O-CH_(2)-、-CH_(2)-O-、-S-CH_(2)-、-CH_(2)-S-又は単結合を表す。R^(5)及びR^(6)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す。
B^(1)およびB^(2)は、それぞれ独立に、-CR^(5)R^(6)-、-CH_(2)-CH_(2)-、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-O-C(=S)-O-、-CO-NR^(5)-、-NR^(5)-CO-、-O-CH_(2)-、-CH_(2)-O-、-S-CH_(2)-、-CH_(2)-S-又は単結合を表す。
A^(1)およびA^(2)は、それぞれ独立に、2価の芳香族炭化水素基を表す。該2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1?4のアルキル基又は炭素数1?4のアルコキシ基に置換されていてもよい。kおよびlは、それぞれ独立に、1?3の整数を表す。]
【請求項6】
Ar^(a)が、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスロリン環、フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環、チアゾール環及び、ベンゾチアゾール環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する2価の基である請求項5記載の光学フィルム。
【請求項7】
G^(a)及びG^(b)が、1,4-シクロヘキシレン基である請求項5または6記載の光学フィルム。
【請求項8】
式(C)で表される基及び重合性基を含み、ネマチック相を呈する化合物が、式(1)で表される基を含む化合物である請求項5記載の光学フィルム。
P^(1)-F^(1)-(B^(1)-A^(1))_(k)-E^(1)-G^(1)-D^(1)-Ar-D^(2)-G^(2)-E^(2)-(A^(2)-B^(2))_(l)-F^(2)-P^(2) (1)
[式(1)中、Arは芳香族複素環を有し、ベンゼン骨格を有する2価の基を表し、Ar基中の芳香環に含まれるπ電子の数N_(π)は、13以上22以下であり、且つ、(N_(π)-4)/3<k+l+4の関係を満たし、D^(1)およびD^(2)とは前記ベンゼン骨格のパラ位でそれぞれ結合する。
D^(1)及びD^(2)は、それぞれ独立に、*-O-CO-(*は、Arに結合する位置を表す)、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-CR^(1)R^(2)-、-CR^(1)R^(2)-CR^(3)R^(4)-、-O-CR^(1)R^(2)-、-CR^(1)R^(2)-O-、-CR^(1)R^(2)-O-CR^(3)R^(4)-、-CR^(1)R^(2)-O-CO-、-O-CO-CR^(1)R^(2)-、-CR^(1)R^(2)-O-CO-R^(3)R^(4)-、-CR^(1)R^(2)-CO-O-CR^(3)R^(4)-、-NR^(1)-CR^(2)R^(3)-、-CR^(2)R^(3)-NR^(1)-、-CO-NR^(1)-、又は-NR^(1)-CO-を表す。R^(1)、R^(2)、R^(3)及びR^(4)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す。
G^(1)及びG^(2)は、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基を表す。該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1?4のアルキル基又は炭素数1?4のアルコキシ基に置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、-O-、-S-又は-NH-に置換されていてもよい。
E^(1)、E^(2)、B^(1)及びB^(2)は、それぞれ独立に、-CR^(5)R^(6)-、-CH_(2)-CH_(2)-、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-O-C(=S)-O-、-CO-NR^(5)-、-NR^(5)-CO-、-O-CH_(2)-、-CH_(2)-O-、-S-CH_(2)-、-CH_(2)-S-又は単結合を表す。R^(5)及びR^(6)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す。
A^(1)及びA^(2)は、それぞれ独立に、2価の芳香族炭化水素基を表す。該2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1?4のアルキル基又は炭素数1?4のアルコキシ基に置換されていてもよい。
k及びlは、それぞれ独立に、1?3の整数を表す。
F^(1)及びF^(2)は、それぞれ独立に、炭素数1?12のアルキレン基を表す。該アルキレン基に含まれる水素原子は、炭素数1?5のアルキル基又は炭素数1?5のアルコキシ基に置換されていてもよく、該アルキレン基に含まれるメチレン基は、-O-又は-CO-に置換されていてもよい。
P^(1)及びP^(2)は、それぞれ独立に、水素原子又は重合性基(ただし、P^(1)及びP^(2)のうち少なくとも1つは、重合性基を表す)を表す。]
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
波長550nmにおける位相差値(Re(550))が113?163nmのλ/4板用である請求項1?8のいずれか記載の光学フィルム。
【請求項11】
波長550nmにおける位相差値(Re(550))が250?300nmのλ/2板用である請求項1?8のいずれか記載の光学フィルム。
【請求項12】
請求項1?8、10および11のいずれか記載の光学フィルム及び、偏光フィルムを含む偏光板。
【請求項13】
請求項1?8、10および11のいずれか記載の光学フィルムが、カラーフィルタ基板上に直接塗布された配向性ポリマー上に形成されてなるカラーフィルタ。
【請求項14】
請求項12記載の偏光板を含む液晶パネルを備えるフラットパネル表示装置。
【請求項15】
請求項12記載の偏光板を含む有機エレクトロルミネッセンスパネルを備える有機EL表示装置。
【請求項16】
請求項13記載のカラーフィルタを含む液晶表示装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-08-27 
出願番号 特願2016-17764(P2016-17764)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (G02B)
P 1 651・ 121- YAA (G02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 植野 孝郎  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 清水 康司
宮澤 浩
登録日 2017-04-28 
登録番号 特許第6133456号(P6133456)
権利者 住友化学株式会社
発明の名称 化合物、光学フィルム及び光学フィルムの製造方法  
代理人 中山 亨  
代理人 中山 亨  
代理人 森住 憲一  
代理人 坂元 徹  
代理人 梶田 真理奈  
代理人 森住 憲一  
代理人 坂元 徹  
代理人 梶田 真理奈  

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