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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B25B
管理番号 1344852
異議申立番号 異議2018-700442  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-11-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-06-01 
確定日 2018-09-28 
異議申立件数
事件の表示 特許第6241475号発明「電動レンチ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6241475号の請求項1ないし15に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6241475号の請求項1?15に係る特許についての出願は、2013年(平成25年)4月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年4月3日、スウェーデン)を国際出願日として特許出願され、平成29年11月17日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成30年6月1日に特許異議申立人 西野 隆志により特許異議の申立てがされたものである。

2.本件発明
特許第6241475号の請求項1?15の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定されるとおりのものである。

3.申立理由の概要
特許異議申立人西野 隆志は、証拠として以下の刊行物を提出し、請求項1?15に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1?15に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
刊行物1: 特開2011-161580号公報
刊行物2: 特開2008-55580号公報
刊行物3: 特開2006-315125号公報
刊行物4: 特開2001-277146号公報
刊行物5: 特開平9-70771号公報
刊行物6: 特開2001-88051号公報


4.刊行物の記載
(1)刊行物1には、「インパクト工具」として、モータにより駆動される回転打撃機構部を備えたインパクト工具であって、ネジやボルトの締め付けに際し、ハンマでアンビルを回転方向に打撃するモードと、ハンマとアンビルとが一体的に回転し、ハンマがアンビルを打撃しないモードを有する工具であって、モードの切替を電気的に行う切替部材(操作者により押下されるトグルスイッチ32を例示)を備えた工具の発明が記載されている。また、回転打撃機構部は、一定時間逆回転した後に正回転されるハンマ151に設けられた突出部152の打撃面152aが、アンビル156に設けられた突出部157の被打撃面157aに衝突させることでインパクト駆動(「パルスモード(2)」とも呼称)がなされるように,工具内蔵の制御部50の演算部51が、トグルスイッチ32の押下、あるいは、より高い締め付けトルクが必要になった状態を検出するかのいずれかにて、モータ3を駆動することが記載されている。
(2)刊行物2には、「インパクト式のネジ締め装置」と題して、ネジを締め付けるインパクト式のネジ締め装置であって、ネジにトルクを供給する出力軸15と、出力軸15を二つの反対の回転方向に選択的に駆動するように設けられるモータ11と、モータ11の駆動を制御する制御装置4と、モータ11を出力軸15に接続する遊星歯車機構12とを有する装置であって、制御装置4は、設定器45の入力により運転制御モードを速度制御モードとインパクトモードとに切替制御するものであり、ネジの締め付けに際しては、最初に速度制御モードで出力軸15を高速回転させ、出力軸15に発生する締付トルクTQが予め設定された着座トルクTSに達したとき、あるいは手動にて、モータ11が正方向と逆方向の回転を繰り返すインパクトモードに切替るとした発明が記載されている。
(3)刊行物3には、「インパクト式のネジ締め装置の制御方法および装置」と題して、ネジ締め動作の際、最初は速度制御モードで回転し、締め付けトルクTSに達した後、モードが切り換えられて、遊星歯車機構12の遊び内で電流制御モードとなりパルス状の電流が間欠的に供給され、衝撃トルクを発生させるネジ締め装置の発明が記載されている。
(4)刊行物4にはボルトやナットなどのねじ類の締め付け作業及び緩め作業に、インパクトレンチやインパクトドライバのような動力駆動回転工具が使用されるという技術的事項が、刊行物5にはハンマドリルに、打撃伝達機構と回転伝達機構とを切り換える動作できるよう、運動変換部材の第1スリーブを軸方向移動させる第1クラッチ機構と、セカンドピニオンと遊合する第2スリーブを移動させる第2クラッチ機構が設けられたという技術的事項が、刊行物6には回転衝撃工具について、連続回転でねじ締めを行い、ねじ締め負荷が大きくなるとリングギヤ13が回動し周知の間欠打撃駆動を行い、更にねじ締め負荷が大きくなると、揺動アーム35の動作により高速回転・打撃ありの状態となるという、機械的手段によるねじ締め方向のみの切り換え動作に関する技術的事項が、それぞれ記載されている。


5.判断
(1)請求項1に係る発明について
請求項1に係る発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、「電動機が順方向に駆動される際に連続したトルクを発生するように、また逆方向に駆動される際にはトルクパルスを供給するように電動機を制御するようにされ」た「第一の駆動モード」を、「制御ユニット」がもつように作られた「電動レンチ」であることが記載されていない。
刊行物1には、「正逆切替レバー14」と「パルスモード/ドリルモード切替スイッチ32」が示され、それぞれを切り替えれば4とおりの組み合わせができることは理解できるものの、正転の場合にはドリルモードで、逆転の場合はパルスモードとなる、請求項1に係る発明における「第一の駆動モード」に相当する構成は記載されていない。
また、この点については、刊行物2ないし6にも記載されていない。
したがって、請求項1に係る発明は、上記刊行物1、刊行物2、または3に記載された発明を主たる発明とし、他の刊行物4ないし6に記載された技術的事項から当業者が容易になし得るものではない。
特許異議申立人西野 隆志は、前記「第一の駆動モード」が前述のとおり特定されている点については、刊行物1の制御回路基板9により制御されるモータ3の挙動に関して、段落0035に正逆切替レバー14でモータの回転方向を切り替える旨の記載があるとともに、段落0010に、ハンマがアンビルを打撃する第1のモードと、ハンマとアンビルとが一体的に回転する第2のモードとが、ダイヤルスイッチにて切り替えられるとする記載を引用して、駆動モードと回転方向とが該レバー14及び該スイッチの操作で任意に選択できること、また、本件明細書の段落0002?0004で従来周知と自認されていることを挙げて、請求項1に係る発明が「電動機が順方向に駆動される際に連続したトルクを発生するように、また逆方向に駆動される際にはトルクパルスを供給するように電動機を制御するようにされ」た「第一の駆動モード」を、「制御ユニット」がもつように作られた「電動レンチ」であることは設計的事項であり、当業者が容易に推考し得た事項であると主張しているが、当該「第一の駆動モード」の特定が意味するところは、電動レンチが当該駆動モードに設定されている場合には、ジョイントを緩める際に、必ずトルクパルスを供給する動きを電動レンチがなすことを指すところ、特許異議申立人が提出した証拠のいずれにも、電動工具がレンチとされた際、緩める動作をインパクト駆動で開始することを示すものがないことが明らかである以上、これを容易想到と扱うことができないのが相当であるから、かかる主張は理由がない。
(2)請求項2ないし15に係る発明について
請求項2ないし15に係る発明は、請求項1に係る発明を更に減縮したものであるから、上記請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により、上記刊行物1ないし6に基づいて当業者が容易になし得るものではない。
以上のとおり、請求項1?15に係る発明は、刊行物1ないし6に記載された発明または技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

6.むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-09-18 
出願番号 特願2015-503783(P2015-503783)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B25B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 亀田 貴志  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 西村 泰英
中川 隆司
登録日 2017-11-17 
登録番号 特許第6241475号(P6241475)
権利者 アトラス・コプコ・インダストリアル・テクニーク・アクチボラグ
発明の名称 電動レンチ  
代理人 坂田 泰弘  
代理人 八木田 智  
代理人 浜野 孝雄  
代理人 久保 幸雄  

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