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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A61K 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A61K 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A61K |
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管理番号 | 1344861 |
異議申立番号 | 異議2018-700587 |
総通号数 | 227 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-11-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-07-17 |
確定日 | 2018-10-02 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6260736号発明「固形製剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6260736号の請求項1?3に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6260736号の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成29年10月5日(優先権主張 平成28年12月20日 (JP)日本国)を出願日とする特許出願であって、平成29年12月22日にその特許権の設定登録がされ、平成30年1月17日に特許公報が発行され、その後、その特許に対して、平成30年7月17日付けで特許異議申立人渡邉規雄により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 特許第6260736号の請求項1?3の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される下記のとおりのものである(以下、「本件特許発明1」?「本件特許発明3」という。まとめて「本件特許発明」ということもある。)。 「【請求項1】 (a)イブプロフェン、(b)(b1)アンブロキソール又はその塩、及び(b2)ブロムヘキシン又はその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種、並びに(c)カルボシステインを含有することを特徴とする固形製剤(ただし、アンブロキソール又はその塩及びトラネキサム酸を含有する固形製剤、並びにイブプロフェン、アンブロキソール塩酸塩、L-カルボシステイン、デキストロメトルファン臭化水素酸水和物、ノスカピン、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩、dl-メチルエフェドリン塩酸塩、ベラドンナ総アルカロイド、無水カフェイン、リボフラビン、ヘスペリジン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポビドン、結晶セルロース、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム及びステアリン酸マグネシウムを含有する素錠に、ヒプロメロース、タルク、フマル酸、ステアリン酸、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、精製白糖、ポリビニルアルコール、アラビアゴム末、酸化チタン及びカルナウバロウを含有するコーティング剤が施された糖衣製剤を除く)。 【請求項2】 (b1)アンブロキソール又はその塩がアンブロキソール塩酸塩であることを特徴とする請求項1に記載の固形製剤。 【請求項3】 (b2)ブロムヘキシン又はその塩がブロムヘキシン塩酸塩であることを特徴とする請求項1に記載の固形製剤。」 第3 申立理由の概要 特許異議申立人渡邉規雄は、証拠として甲第1号証?甲第7号証(以下、「甲1」?「甲7」という。)を提出し、請求項1?3に係る特許は、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、および特許法第36条第6項第1号にそれぞれ違反してされたものであるから、請求項1?3に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 第4 提出された証拠について 甲1?甲7には、それぞれ、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付加した。 甲1:特開2006-104186号公報 1a「【請求項1】 カルボシステインおよびアンブロキソールから選ばれる少なくとも1種と、抗炎症剤とを含むことを特徴とする感冒用医薬組成物。 【請求項2】 抗炎症剤が、トラネキサム酸、グリチルリチン酸、リゾチーム、セラペプターゼ、ブロメライン、プロナーゼおよびそれらの塩から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の感冒用医薬組成物。 【請求項3】 さらに、解熱鎮痛消炎剤を含む請求項1記載の感冒用医薬組成物。」(特許請求の範囲) 1b「【0003】 本発明の目的は、かぜの諸症状、特に咳、痰およびのどの痛みを有効に改善または解消できる感冒剤である医薬組成物を提供することにある」(段落【0003】) 1c「【0007】 本発明の医薬組成物において、カルボシステイン、アンブロキソールは、去痰作用として知られている成分であるが、本発明においては鎮咳および去痰成分として配合されるものである。本発明においては、これらは、一方を用いても、両方を用いてもよい。通常、本発明においては成分1日服用量としてカルボシステインは500?1500mg、アンブロキソールは15?90mg配合されるのが好ましい。 本発明の医薬組成物には、さらにカルボシステイン、アンブロキソール以外の去痰剤を配合できる。ここで、去痰剤としては、グアイフェネシン、グアヤコールスルホン酸カリウム、クレゾールスルホン酸カリウム、ヒベンズ酸チペピジン、フドステイン、アセチルシステイン、塩酸メチルシステイン、塩酸エチルシステイン、塩酸ブロムヘキシン、セネガ、オンジ、キキョウ、アンニン、オウヒ、キョウニン、シャゼンシ、シャゼンソウ、トコン、バイモなどが挙げられる。」(段落【0007】) 1d「【0008】 本発明の医薬組成物に用いる抗炎症成分としては、トラネキサム酸(止血成分でもある)、グリチルリチン酸、リゾチーム、セラペプターゼ、ブロメライン、プロナーゼまたはこれらの塩類(カリウム塩,塩酸塩等)などが挙げられ、これらは単独または2種以上を併せて用いることができる。このうち、トラネキサム酸、グリチルリチン酸、塩化リゾチーム、セラペプターゼまたはこれらの塩類が特に好ましい。」(段落【0008】) 1e「【0009】 本発明の医薬組成物に用いる解熱鎮痛消炎剤としては、例えば、・・・(略)・・・が含まれる。具体的には、解熱鎮痛消炎剤としては、例えば、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン、イソプロピルアンチピリン等が好適に用いられ、中でも解熱・鎮痛作用に優れるアセトアミノフェン、イブプロフェンが好ましい。」(段落【0009】) 1f「【0011】 本発明の医薬組成物の投与形態、剤型は、特に限定するものではないが、例えば、粉末剤、細粒剤、顆粒剤、丸剤、錠剤、カプセル内に上記細粒剤や顆粒剤等を充填したカプセル剤等の固形製剤;液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等の液剤およびゼリー剤等の半固形製剤などの経口投与用製剤、特に、錠剤、顆粒剤、カプセル剤等の経口投与用固形製剤である場合が多い。」(段落【0011】) 1g「【実施例1】 【0012】 以下、本発明の好ましい製剤例を記載するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記例において特に断らない限り、各成分の配合量は成人1日服用量を示し、常法に従い製剤化するものとする。 【表1】 上記処方に従い、日本薬局方製剤総則、錠剤の項に準じて錠剤として製造した。 【実施例2】 【0013】 モルモットを用い、霧化したクエン酸を10分間吸入させて咳を惹起し、薬物投与前の10分間のクエン酸吸入により10?20回の咳を誘発した動物を選択した。咳反射数をもとに無作為化法により群分けし、被験物質投与60分後、再度クエン酸を噴霧吸入させて、被験物質投与前と投与後の咳反射数の比および咳の実測値を測定した。 イブプロフェン(消炎鎮痛成分)、リン酸ジヒドロコデイン(鎮咳成分)、d-マレイン酸クロルフェニラミン(抗ヒスタミン剤)、dl-塩酸メチルエフェドリン(気管支拡張成分)および無水カフェインを含む感冒用組成物をベースとし、被験物質として、以下の表2のA?Fを使用した。 【表2】 結果を表3および図1に示す。 【表3】 表2および図1から明らかなごとく、カルボシステイン単独(被験物質A)に比べ、カルボシステイン+トラネキサム酸(被験物質B)はより高い抑制率を示し、溶媒処置の対照群に比べて有意な鎮咳作用を示しているのに加えて、イブプロフェン等の感冒用組成物(被験物質C)に加えることで(被験物質E、F)、さらに効果が上乗せされ増強される(トラネキサム酸の用量依存性に増強)。」(段落【0012】?【0013】) 1h「 」 (【図1】) 甲2:特開2006-96749号公報 2a「【請求項1】 イブプロフェン、鎮咳成分、気管支拡張成分、抗ヒスタミン成分およびカルボシステインを含有する感冒用医薬組成物。」(特許請求の範囲) 2b「【0012】 本発明感冒薬には、さらにカルボシステイン以外の去痰剤、中枢神経興奮成分、ビタミン成分、抗炎症成分などを配合できる。 ここで、去痰剤としては、グアイフェネシン、グアヤコールスルホン酸カリウム、クレゾールスルホン酸カリウム、ヒベンズ酸チペピジン、杏仁、桜皮、車前草、フドステイン、塩酸アンブロキソール、アセチルシステイン、塩酸メチルシステイン、塩酸エチルシステイン、塩酸ブロムヘキシン,セラペプターゼ、ブロメライン、プロナーゼ、塩化リゾチーム等が挙げられる。」(段落【0012】) 2c「【0013】 本発明の医薬組成物の投与形態や、剤型は、特に限定するものではないが、例えば、粉末剤、細粒剤、顆粒剤、丸剤、錠剤、カプセル内に上記細粒剤や顆粒剤等を充填したカプセル剤等の固形製剤;液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等の液剤およびゼリー剤等の半固形製剤などの経口投与用製剤、特に、錠剤、顆粒剤、カプセル剤等の経口投与用固形製剤である場合が多い。」(段落【0013】) 2d「以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、下記例において特に断らない限り、各成分の配合量は成人1日服用量を示し、常法に従い製剤化するものとする。 【実施例1】 【0015】 【表1】 上記処方に従い、日本薬局方製剤総則、錠剤の項に準じて錠剤として製造した。 【実施例2】 【0016】 モルモットを用い、霧化したクエン酸を10分間吸入させて咳を惹起し、薬物投与前の10分間のクエン酸吸入により10?20回の咳を誘発した動物を選択した。咳反射数をもとに無作為化法により群分けし、被験物質投与60分後、再度クエン酸を噴霧吸入させて、被験物質投与前と投与後の咳反射数の比および咳の実測値を測定した。 イブプロフェン(消炎鎮痛成分)、リン酸ジヒドロコデイン(鎮咳成分)、d-マレイン酸クロルフェニラミン(抗ヒスタミン剤)、dl-塩酸メチルエフェドリン(気管支拡張成分)および無水カフェインを含む感冒用組成物をベースとし、被験物質として、以下の表2のA?Fを使用した。 【表2】 結果を表3および図1に示す。 表2および図1から明らかなごとく、被験物質C(ベース)に、カルボシステインとトラネキサム酸を配合した被験物質EおよびFは、被験物質Cに比べて高い咳抑制率を示し、溶媒処置の対照群に比べて有意な鎮咳作用を示している。」(段落【0015】?【0016】) 2e「 」 (【図1】) 甲3:特表2006-506407号公報 3a「【請求項1】 薬理学的活性化合物として、ブロムヘキシン又はアンブロキソール又は薬理学的に許容され得るそれらの塩及びヨウ化イソプロパミドの組み合わせを含有する医薬組成物。 ・・・(略)・・・ 【請求項3】 塩酸アンブロキソールを含有する、請求項2に記載の医薬組成物。 ・・・(略)・・・ 【請求項7】 解熱剤、鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、刺激薬、ビタミン類、生薬、制酸剤及び粘膜保護剤、抗炎症剤、消炎酵素及び去痰剤からなる群より選ばれる一つ以上の薬理学的活性化合物を含む、請求項1?6のいずれか1項に記載の医薬組成物。 ・・・(略)・・・ 【請求項10】 請求項1?7のいずれか1項に記載の医薬組成物の固体、半固体又は液体製剤。」(特許請求の範囲) 3b「【0005】 本発明の医薬組成物に使用されるアンブロキソール、化学名:トランス-4-[2-アミノ-3,5-ジブロモベンジル]アミノ]シクロヘキサノールは、粘膜潤滑剤に分類される去痰剤であり、それは肺胞界面活性物質の産生の増加により、痰が喀出される気道の膜を潤滑にする作用を有する。アンブロキソールは、ブロムヘキシンの代謝物である。 ・・・(略)・・・ 本発明において、ブロムヘキシンをアンブロキソールの一部又は全体の変わりに使用してもよい。」(段落【0005】) 3c「【0006】 本発明の医薬組成物に使用されるブロムヘキシン、化学名:2-アミノ-3,5-ジブロモ-N-シクロヘキシル-N-メチルベンジルアミンは、気道分泌促進剤に分類される去痰剤であり、それは気道分泌を増加する作用を有する。 本発明において、好ましくは塩酸ブロムヘキシンが使用される。・・・(略)・・・」(段落【0006】) 3d「【0008】 ・・・(略)・・・ 解熱鎮痛剤の例としては、イブプロフェン、アセトアミノフェン、エテンザミド、アスピリン、アスピリンアルミニウム、イソプロピルアンチピリン、ササピリン(sasapyrine)、サリチルアミド、サリチル酸ナトリウム、ラクチルフェネチジン(lactyl phenetidine)等が挙げられる。・・・(略)・・・」(段落【0008】) 3e「【0015】 アンブロキソール以外の去痰剤としては、グアヤコールスルホン酸カリウム、グアイフェネシン、ヨウ化カリウム、アンモニア・ウイキョウ精、炭酸水素ナトリウム、塩酸ブロムヘキシン、フドステイン、カルボシステイン、塩酸メチルシステイン、アセチルシステイン、塩酸エチルシステイン、塩酸エプラジノン、アミノフィリン、テオフィリン、ジプロフィリン、プロキシフィリン、塩化アンモニウム、クレゾール硫酸カリウム、l-メントール、塩酸トリメトキノール、塩酸フェニルプロパノールアミン、塩酸メトキシフェニラミン等が挙げられる。」(段落【0015】) 3f「【0016】 ・・・(略)・・・ 本発明の医薬組成物への製剤添加剤として、以下のものが使用可能であるが、それらに限定されない:安定剤、界面活性剤、流動化剤、滑沢剤、可溶化剤、還元剤、緩衝剤、甘味剤、塩基、吸着剤、矯味剤、結合剤、サスペンジョン、懸濁化剤、抗酸化剤、光沢剤、被覆剤、湿潤剤、湿潤改質剤、充填剤、消泡剤、清涼剤(refrigerative agent)、着色剤、香料添加剤(flavoring agent)、芳香剤(perfume)、糖コーティング剤、等張化剤、軟化剤、乳化剤、発泡剤、pH調整剤、希釈剤、賦形剤、分散剤、崩壊剤、芳香剤(fragrance)、乾燥剤、防腐剤、保存剤、可溶化剤、溶解剤、溶媒、流動化剤、帯電防止剤、増量剤、モイスチャライジング剤(moisturizing agent)等。」(段落【0016】) 3g「【0023】 ・・・(略)・・・ 【実施例4】 【0024】 糖衣錠 通常の方法において、以下の成分でタブレットパウダーを製造し、1錠当たり270mgを有するように成型した。 塩酸アンブロキソール 90g ヨウ化イソプロパミド 12g イブプロフェン 900g リン酸ジヒドロコデイン 48g dl-塩酸メチルエフェドリン 120g マレイン酸クロルフェニラミン 15g 無水カフェイン 150g 硝酸チアミン 48g アスコルビン酸 600g コーンスターチ 1257g ラクトース 936g 結晶性セルロース 360g ヒドロキシプロピルセルロース 180g 軽質無水ケイ酸 90g タルク 36g ステアリン酸マグネシウム 18g 【0025】 コーティング・パンにおいて、ヒドロキシプロピルセルロース5質量%を含有するコーティング液(エチルアルコール:蒸留水=1:1)を使用し、錠剤当たりの質量が10mg増加するまで、この錠剤を被覆した。その後、酸化チタン2質量%、炭酸カルシウム3質量%、アラビアゴム粉末1質量%及びサッカロース60質量%を含有する溶液を使用し、錠剤当たりの質量が180mg増加するまで錠剤を被覆した。その後、サッカロース60質量%を含有する溶液を、1錠当たりの質量が10mg増加するまで、被覆用に使用した。 【実施例5】 【0026】 顆粒剤 通常の方法において、以下の成分を使用することにより顆粒を製造し、それを顆粒剤として1300mgを有するようにカートリッジに詰めた。 塩酸アンブロキソール 90g ヨウ化イソプロパミド 12g イブプロフェン 900g リン酸ジヒドロコデイン 48g 塩酸メチルエフェドリン 120g マレイン酸クロルフェニラミン 15g 無水カフェイン 150g 硝酸チアミン 48g アスコルビン酸 600g コーンスターチ 293g D-マンニトール 5240g 酒石酸 200g アスパルテーム 40g アセスルファムカリウム 40g 香料 4g 【実施例6】 【0027】 錠剤 以下の成分を均一に混合し、混合した粉末を直接圧縮により、1錠当たり300mgを有するように成型し、錠剤を製造した。 塩酸アンブロキソール 45g ヨウ化イソプロパミド 6g イブプロフェン 450g リン酸ジヒドロコデイン 24g メキタジン 6g 塩酸プソイドエフェドリン 60g テオフィリン 150g 塩化リゾチーム 90g 無水カフェイン 75g フルスルチアミン 24g リボフラビン 12g ラクトース 443g 結晶性セルロース 390g ステアリン酸マグネシウム 15g タルク 10g 」 (段落【0023】?【0027】) 甲4:特開平10-101581号公報 4a「【請求項6】 (a)イブプロフェン、(b)ノスカピン又はその塩、(c)塩酸ブロムヘキシン、塩酸アンブロキソール及び塩化リゾチームからなる群より選ばれる1種または2種以上の薬物並びに(d)還元剤を配合した経口投与用製剤。 ・・・(略)・・・ 【請求項11】 (a)塩酸ブロムヘキシン、塩酸アンブロキソール及び塩化リゾチームからなる群より選ばれる1種または2種以上の薬物、(b)イブプロフェン、(c)抗ヒスタミン薬並びに(d)還元剤を配合した経口投与用製剤。」(特許請求の範囲) 4b「【0002】 【従来の技術】総合感冒薬には、去痰薬として塩酸ブロムヘキシン、グアイフェネシンあるいは塩酸アンブロキソール、消炎酵素薬として塩化リゾチームなど、鎮痛薬としてアセトアミノフェン、エテンザミドあるいはイブプロフェンなどが配合されるが、これらのうちには、ある種の化合物(ポリエチレングリコール、ノスカピン又はその塩、抗ヒスタミン薬など)と共存(接触)させると、保存中に分解するものがあり、効力の低下あるいは商品価値の低下などにつながっていた。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ポリエチレングリコール、ノスカピンもしくはその塩または抗ヒスタミン薬が製剤中に存在しても、塩酸ブロムヘキシン、塩酸アンブロキソールまたは塩化リゾチームを経時的に安定に含有する製剤(感冒薬)を提供することにある。 【0004】 【課題を解決するための手段】本発明者らは鋭意研究を進めた結果、ある特定の種類の還元剤を製剤中に配合したり、製剤の剤形をカプセル剤とするなどの改良をすることにより前記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成した。」(段落【0002】?【0004】) 4c「【0006】本発明において、還元剤とは、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ジブチルヒドロキシアニソール)、安息香酸またはその塩類、没食子酸プロピル、ヒドロキノン、dl-α-トコフェロール、d-α-トコフェロール、酢酸トコフェロール、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム及びレシチンからなる群より選ばれる1種または2種以上であるが、好ましくはBHT、BHA、没食子酸プロピル、ヒドロキノン、d-α-トコフェロール及びdl-α-トコフェロールからなる群より選ばれる1種または2種以上である。」(段落【0006】) 4d「【0008】 【発明の効果】本発明により、塩酸ブロムヘキシンや塩酸アンブロキソール、塩化リゾチームなどを含有する製剤中の各成分の安定化が可能になった。従って、効果の高い感冒薬を提供できる。」(段落【0008】) 4e「【0009】 【実施例】以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。 比較例1 成分 配合量(g) 塩酸ブロムヘキシン 12 ポリエチレングリコール6000 20 マンニトール 200 HPC-L 15 セイセイスイ 適量 上記処方に基づき、撹拌造粒法で散剤を製した。 【0010】実施例1 比較例1で製造した散剤をカプセルに充填した。 実施例2 比較例1で製造した散剤にBHT4gを添加し,撹拌造粒法で散剤を製した。 実施例3 比較例1で製造した散剤をビンに充填後,ビン内を窒素パージした。 【0011】比較例2 成分 配合量(g) イブプロフェン 450 塩酸ブロムヘキシン 12 塩化リゾチーム 60 ノスカピン 48 マンニトール 500 アビセルPH-101 400 HPC-L 50 セイセイスイ 適量 上記処方に基づき、撹拌造粒法により散剤を製した。 【0012】実施例4 比較例2で製造した散剤をカプセルに充填した。 実施例5 比較例2で製造した散剤にBHT4gを添加し、撹拌造粒法で散剤を製した。 実施例6 比較例2で製造した散剤にヒドロキノン8gを添加し,撹拌造粒法で散剤を製した。 実施例7 比較例2で製造した散剤をビンに充填後,ビン内を窒素パージした。 【0013】比較例3 成分 配合量(g) イブプロフェン 450 塩酸ブロムヘキシン 12 塩化リゾチーム 60 d-マレイン酸クロルフェニラミン 3.5 マンニトール 500 アビセルPH-101 400 HPC-L 50 セイセイスイ 適量 上記処方に基づき、撹拌造粒法により散剤を製した。 【0014】実施例8 比較例3で製造した散剤をカプセルに充填した。 実施例9 比較例3で製造した散剤にBHT4gを添加し、撹拌造粒法で散剤を製した。 実施例10 比較例3で製造した散剤にd-α-トコフェロール6gを添加し,撹拌造粒法で散剤を製した。 実施例11 比較例3で製造した散剤をビンに充填後、ビン内を窒素パージした。 【0015】比較例4 成分 配合量(g) イブプロフェン 450 塩酸ブロムヘキシン 12 塩化リゾチーム 60 d-マレイン酸クロルフェニラミン 3.5 ノスカピン 48 ポリエチレングリコール6000 50 マンニトール 500 アビセルPH-101 400 HPC-L 50 セイセイスイ 適量 上記処方に基づき、撹拌造粒法により散剤を製した。 【0016】実施例12 比較例4で製造した散剤をカプセルに充填した。 実施例13 比較例4で製造した散剤にBHT4gを添加し、撹拌造粒法で散剤を製した。 実施例14 比較例4で製造した散剤にヒドロキノン8gを添加し、撹拌造粒法で散剤を製した。 実施例15 比較例4で製造した散剤をビンに充填後、ビン内を窒素パージした。 【0017】試験例[安定性試験] 比較例1?4及び実施例1?15で製造した製剤を全てビンに充填、密栓し(実施例3,7,11,15は充填後窒素パージ),50℃-1週間,40℃-3週間での塩酸ブロムヘキシン,塩化リゾチームの安定性を評価した(表1?4)。なお、塩酸ブロムヘキシンはHPLC法により、塩化リゾチームは濁度法によりそれぞれ定量した。数値は全て対直後%である。 【0018】 【表1】 【0019】 【表2】 【0020】 【表3】 【0021】 【表4】 」(段落【0009】?【0021】) 甲5:日本呼吸器学会雑誌 第45巻第4号(平成19年4月10日発行)第273頁 5a「PP470 カルボシステイン(S-CMC)の抗酸化作用に関する研究 杏林製薬研究センター研究一部:○井上昌子,石橋祐二 【目的】COPD等の呼吸器疾患の発症や憎悪に関与すると考えられる酸化ストレスに対するS-CMCの作用を検討した.【方法】1)活性酸素種(ROS)消去能:ラット好中球・ヒト気道上皮細胞株(NCI-H292)及び化学的な産生系ROS(OH・,HOCl,H2O2,ONOO-)及び2)酸化還元体:酸化還元電位(ORP)及びROSとの反応生成物量について,それぞれ測定した.対照薬は,N-アセチルシステインを用いた.【結果】1)S-CMC(0.1-10000μmo/L)は各種ROSを消去した.特に、NCI-H292細胞由来ROSに対するS-CMCの消去能は、他のROSと比べて強力であった.2)S-CMCのORPはマイナス値を示し,S-CMCの酸化体の1つであるS=O体がROSとの反応で確認された.【考察】S-CMCはその構造に起因した還元力によってROSを直接消去することが判明した.また,NCI-H292細胞から産生したROS消去能は,好中球由来及び化学的に発生させたROSと比べて強力であった.以上のことから,S-CMCは直接的なROS消去に加え,細胞内の酸化ストレスの消去機構を活性化させる等の作用も有する可能性が示唆される.【結論】S-CMCは糖鎖含量の調節に起因した気道粘液成分の正常化だけでなく,抗酸化能も有する去痰薬と考えられる.」 甲6:特許第4899304号公報 6a「【請求項1】 (A)塩酸アンブロキソール及び (B)硝酸チアミン、ビスイブチアミン、およびアスコルビン酸またはその塩からなる群より選択される1種以上を含有し、 (A)成分及び(B)成分が別々の造粒物であるか、又は、(A)成分及び(B)成分の一方の成分のみが造粒物であって、かつもう一方の成分が該造粒物内に含まれていないことを特徴とする内服用固形製剤。」(特許請求の範囲) 6b「【0007】 本発明者らは、上記目的を達成するために塩酸アンブロキソールを配合した内服用固形製剤の安定化を図るべく安定化手段を種々試み検討を行ったところ、(A)塩酸アンブロキソールと(B)ビタミンB1類およびアスコルビン酸またはその塩からなる群より選択される1種以上の少なくとも一方を造粒物とすると、塩酸アンブロキソールの安定化が著しく図れ、安定性の高い製剤が得られることを見出した。」(段落【0007】) 甲7:特開2007-55924号公報 7a「【請求項1】 イブプロフェンを含有する核粒子と、タルク及びコーティング基剤を含有し且つ前記核粒子を覆うコーティング層とを備えるイブプロフェン含有製剤、並びに、 塩酸アンブロキソール含有製剤、 を含有することを特徴とする固形製剤。 【請求項2】 前記イブプロフェン含有製剤及び前記塩酸アンブロキソール含有製剤が造粒物であることを特徴とする請求項1に記載の固形製剤。」(特許請求の範囲) 7b「【0005】 本発明は、イブプロフェンと塩酸アンブロキソールとを含有する固形製剤において、イブプロフェン含有製剤のコーティング中に凝集が起こらず作業性に優れ、且つ塩酸アンブロキソールの経時的分解が十分に抑制されて安定な固形製剤を提供することを目的とする。」(段落【0005】) 第5 合議体の判断 (1)特許法第29条第1項第3号、及び同法同条第2項について (1.1)甲1を主引用例とする場合 (1.1.1)本件特許発明1,2について 甲1には、摘記1aに「カルボシステインおよびアンブロキソールから選ばれる少なくとも1種と、トラネキサム酸、グリチルリチン酸、リゾチーム、セラペプターゼ、ブロメライン、プロナーゼおよびそれらの塩から選ばれる少なくとも1種である抗炎症剤、さらに、解熱鎮痛消炎剤を含む感冒用医薬組成物。」が記載され、抗炎症剤のうち具体的にはトラネキサム酸を用いること(摘記1g【表1】、【表2】)、カルボシステイン単独に比べてカルボシステインとトラネキサム酸を併用すると咳の抑制率がより高く、さらにイブプロフェン等の感冒用組成物と組み合わせることでトラネキサム酸の用量に依存してより効果が増強されることが記載されている(摘記1g、表3の説明部分)。また、摘記1fには固形製剤とすることが記載され、摘記1gの実施例1では錠剤として製造することが記載されている。 まとめると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 「カルボシステインおよびアンブロキソールから選ばれる少なくとも1種、抗炎症剤としてトラネキサム酸、さらに、解熱鎮痛消炎剤としてイブプロフェンを含む、固形製剤である感冒用医薬組成物。」 本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、両者は次の点で相違する。 相違点1:本件特許発明1は「(a)イブプロフェンと(b)(b1)アンブロキソール又はその塩、及び(b2)ブロムヘキシン又はその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種、並びに(c)カルボシステイン」の3成分を同時に含有し、かつ、アンブロキソール又はその塩及びトラネキサム酸を含むものを除外するものであるところ、甲1発明はカルボシステインとアンブロキソールの両者を共に含有することが必須ではなく、トラネキサム酸を含む点。 上記相違点1について検討する。 摘記1bにはカルボシステインとアンブロキソールについて「一方を用いても、両方を用いてもよい。」と記載されており、概念としてはカルボシステインとアンブロキソールの両者を併用するものを含むものの、そのような具体例は示されていない。甲1発明は、「かぜの諸症状、特に咳、痰およびのどの痛みを有効に改善又は解消できる感冒剤である医薬組成物を提供する」(摘記1b)ことを解決すべき課題とするものであるが、摘記1gに記載される実施例2の被検物質を用いた検討と実施例1の「好ましい製剤例」(表1)から見て、当該課題は必須成分の抗炎症剤としてトラネキサム酸を含有することにより達成されており、抗炎症剤を他の化合物に変更する必要性は見出せない。特に、医薬の分野においては、単独で効果の類似した薬剤であっても、他の薬剤と組み合わせた場合にも同様の効果を発揮するとは限らないことを考慮すれば、甲1発明の「カルボシステインおよびアンブロキソールから選ばれる少なくとも1種」として、カルボシステインを単独で含むことに換えてカルボシステインとアンブロキソールの併用とするに当たり、さらに抗炎症剤をトラネキサム酸以外の化合物に変更しても、鎮咳作用において同等の効果を奏するかは明らかとはいえない。ましてや、アンブロキソールとイブプロフェンを併用した場合に生じるアンブロキソールの安定性低下の問題を認識し、それがカルボシステインの存在によって解消されることを予測できるという根拠も見当たらない。 イブプロフェンとアンブロキソールが共存する場合に安定性が低下することは甲7に記載されており(摘記7b)、甲7を参照してこの問題を想定できたとしても、甲7には安定性低下の解決方法として、コーティングしたイブプロフェン顆粒とアンブロキソール含有顆粒とを別に製造してから両者を混合することは記載されているが、カルボシステインが存在すればアンブロキソールの安定性低下を防止できることは記載されていない。 安定性の点に関し、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、イブプロフェンとアンブロキソール塩酸塩を同一の造粒物中に含有する固形製剤において、カルボシステインを加えた場合にアンブロキソール塩酸塩の含量低下を抑制できたことが実施例1?4と比較例1?5によって示されており(表1及び表2)、本件特許発明1は相違点1に係る構成によって顕著な効果を奏するものといえる。 よって、甲1発明においてカルボシステインに加えてアンブロキソールも含むものとし、さらに、トラネキサム酸を他の抗炎症剤に替えて本件特許発明1の構成とすることは、当業者といえども容易に想到するとはいえない。 したがって、本件特許発明1は、甲1発明と同一ではなく、また、甲1発明に基いて当業者が容易に発明できたものでもない。 本件特許発明2は本件特許発明1の(b)成分を(b1)アンブロキソールの塩であるアンブロキソール塩酸塩に限定するものであり、甲1にはアンブロキソール塩酸塩を用いることは明記されていないものの、アンブロキソールを塩酸塩として使用することは周知慣用の技術に過ぎない。 しかしながら、本件特許発明2と甲1発明とを対比すると両者は依然として相違点1と同じ点で相違しており、よって、上記に説示したとおり、本件特許発明2は甲1発明と同一ではなく、また、甲1発明に基いて当業者が容易に発明できたものでもない。 (1.1.2)本件特許発明3について 本件特許発明3は、本件特許発明1の(b)成分を(b2)ブロムヘキシンの塩であるブロムヘキシン塩酸塩に限定するものであるから、本件特許発明3と甲1発明とを対比すると、両者は、次の点で相違する。 相違点1’:本件特許発明3は「(a)イブプロフェンと(b)(b2)ブロムヘキシン塩酸塩、並びに(c)カルボシステイン」の3成分を同時に含有するものであるところ、甲1発明はカルボシステインおよびアンブロキソールから選ばれる少なくとも1種と、抗炎症剤及び解熱鎮痛消炎剤との併用であり、解熱鎮痛消炎剤としてイブプロフェンを含む点。 上で述べたように、甲1には「カルボシステインおよびアンブロキソールから選ばれる少なくとも1種」として具体的にカルボシステインを単独で使用する例が記載されている。甲1には、さらに去痰剤を配合できること、去痰剤として塩酸ブロムヘキシンを挙げられることも記載されている(摘記1c)が、ここに挙げられる去痰剤を配合した具体例は示されていない。そうすると、列挙される去痰剤のうち、特に塩酸ブロムヘキシンを選択して配合する理由は特に見出せず、イブプロフェン及びカルボシステインと共存させることで塩酸ブロムヘキシンの安定性を向上させられることも予測できるものではない。 そして、本件特許発明3は、イブプロフェンとブロムヘキシン塩酸塩が共存する固形製剤において、カルボシステインを加えることでブロムヘキシン塩酸塩の含量低下を抑制できたことが実施例5と比較例6によって示されている(表3、表4) よって、本件特許発明3は甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に基いて当業者が容易に発明できたものでもない。 したがって、甲1を主引用例とする異議申立人の主張には理由がない。 (1.2)甲2を主引用例とする場合 甲2には、摘記2aに「イブプロフェン、鎮咳成分、気管支拡張成分、抗ヒスタミン成分およびカルボシステインを含有する感冒用医薬組成物。」が記載され、さらに、摘記2cに多くの場合に経口投与用固形製剤とすることが記載され、摘記2dの実施例1は錠剤として製造されている。 まとめると、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。 「イブプロフェン、鎮咳成分、気管支拡張成分、抗ヒスタミン成分およびカルボシステインを含有する固形製剤である感冒用医薬組成物。」 本件特許発明と甲2発明とを対比すると、両者は次の点で相違する。 相違点2:本件特許発明1は「(b)(b1)アンブロキソール又はその塩、及び(b2)ブロムヘキシン又はその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種」を含有するものであるところ、甲2発明は(b)の成分を含有することが特定されていない点。 上記相違点2について検討する。 甲2にはカルボシステイン以外の去痰剤を配合できること、去痰剤として塩酸アンブロキソール、塩酸ブロムヘキシンを挙げられることが記載されている(摘記2b)。 甲2発明は「かぜの諸症状、特に咳、痰およびのどの痛みを有効に改善又は解消できるかぜ薬製剤である感冒用医薬組成物を提供すること」を課題とするものであるが(摘記2b)、実施例2の各種被検物質を用いた検討の結果と実施例1の「好ましい製剤例」(摘記2d、表1?表3)から見て、上記課題はカルボシステインとともに抗炎症剤としてトラネキサム酸を含有し、イブプロフェン、リン酸ジヒドロコデイン等を含む感冒用組成物をベースとすることにより達成されており、さらに去痰剤を追加して配合する必要性は見出せないし、さらなる鎮咳去痰効果の向上を期待して去痰剤を配合するとしても、列挙された多数の薬剤から、とりわけ塩酸アンブロキソールまたは塩酸ブロムヘキシンを選択して採用する理由も見当たらない。 また、イブプロフェンと併用した場合に生じるアンブロキソールやブロムヘキシンの安定性低下の問題を認識し、さらにその問題がカルボシステインの存在によって解消できることを予測できるともいえない。 イブプロフェンと塩酸アンブロキソールが共存する場合に安定性が低下することは甲7に記載されており(摘記7b)、甲7を参照してこの問題を認識できたとしても、甲7には安定性低下の解決方法として、コーティングしたイブプロフェン顆粒とアンブロキソール含有顆粒とを別に製造してから両者を混合することは記載されているが、カルボシステインが存在すればアンブロキソールの安定性低下を防止できることは記載されていない。 よって、甲2発明においてさらに去痰剤も含むものとし、去痰剤として塩酸アンブロキソールまたは塩酸ブロムヘキシンを選択して本件特許発明1の構成とすることは、当業者といえども容易に想到するものとはいえない。 そして、上記(1.1.1)及び(1.1.2)で説示したとおり、安定性の点に関し、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、イブプロフェンと同時にアンブロキソール塩酸塩またはブロムヘキシン塩酸塩を含有する固形製剤において、カルボシステインによりアンブロキソール塩酸塩またはブロムヘキシン塩酸塩の含量低下を抑制できたことが示されており(表1?表4)、本件特許発明1は相違点2に係る構成によって顕著な効果を奏するものといえる。 よって、本件特許発明1は、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 本件特許発明2、本件特許発明3は、本件特許発明1において(b)の成分をそれぞれアンブロキソール塩酸塩、ブロムヘキシン塩酸塩に限定したものであるから、甲2発明との相違点はいずれも甲2発明が(b)の成分を含有することを特定されていない点であり、実質的に相違点2と同じである。そうすると、その検討も、本件特許発明1について上記に説示したとおりである。 よって、本件特許発明2、3は、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 したがって、甲2を主引用例とする異議申立人の主張は理由がない。 (1.3)甲3を主引用例とする場合 甲3には、摘記3gより、塩酸アンブロキソールとイブプロフェンとを含有する錠剤または顆粒剤が記載されており、錠剤、顆粒剤のいずれも固形製剤であるから、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているといえる。 「イブプロフェン及び塩酸アンブロキソールを含有する固形製剤。」 (1.3.1)本件特許発明1、2について 本件特許発明1と甲3発明とを対比すると、両者は次の点で相違する。 相違点3:本件特許発明1はカルボシステインを含有するのに対し、甲3発明はそのように特定されない点。 上記相違点3について検討する。 甲3には、固形製剤に追加で含有させ得る薬剤として、去痰剤が請求項7に挙げられており(摘記3a)、またアンブロキソール以外の去痰剤として20を超える薬剤が挙げられる中にカルボシステインが含まれている(摘記3e)。 しかしながら、列挙される去痰剤のうち実施例において使用されているのはテオフィリンのみ(摘記3g、実施例4)であって、甲3発明において去痰剤をさらに添加する場合にも多数の中からテオフィリンでなく特にカルボシステインを選択する動機は見出せない。カルボシステインにより塩酸アンブロキソールの安定性の低下を防止することについても、甲3には記載も示唆も見当たらない。 この点について、異議申立人は、次のように主張する。 甲4にはイブプロフェンとともに塩酸ブロムヘキシン、塩酸アンブロキソールまたは塩化リゾチームから選ばれる薬物と還元剤とを含有した経口投与製剤において、塩酸ブロムヘキシンや塩酸アンブロキソールの経時安定性の課題を解決できたことが記載されており(摘記4a、4b)、甲3にも還元剤を添加できることが記載される(摘記3f)。そして、カルボシステインが還元作用を有することは甲5に開示されるように広く知られているから、甲3発明において、安定性向上のために還元剤としてカルボシステインを配合することは、甲4,5に基いて当業者が容易に想到し得るものである。 しかしながら、甲4には塩酸ブロムヘキシンや塩酸アンブロキソールが保存中に分解する問題はポリエチレングリコール、ノスカピン又はその塩、抗ヒスタミン薬などとの共存(接触)に起因するものであることが記載されており(摘記4b)、イブプロフェンと塩酸アンブロキソールを併用する甲3発明において、甲4を参照しても当業者が直ちに安定性改善の必要性を認識できるとはいえない。 他方、甲3発明に係る実施例のうち、実施例4、実施例5で使用されているマレイン酸クロルフェニラミンは抗ヒスタミン剤に該当する。ここで甲4の「ある種の化合物(ポリエチレングリコール、ノスカピン又はその塩、抗ヒスタミン薬など)と共存(接触)させると、保存中に分解するものがあり」(摘記4b)という記載を参照し還元剤を採用するとしても、甲4には還元剤について「本発明において、還元剤とは、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ジブチルヒドロキシアニソール)、安息香酸またはその塩類、没食子酸プロピル、ヒドロキノン、dl-α-トコフェロール、d-α-トコフェロール、酢酸トコフェロール、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム及びレシチンからなる群より選ばれる1種または2種以上」(摘記4c)と記載され、カルボシステインは挙げられておらず、実施例で使用されているのもBHT、ヒドロキノン、d-α-トコフェロールのみである(摘記4d)。甲3にも還元剤を添加剤として使用可能であることは記載されるが(摘記3f)、具体的な化合物は例示されておらず、カルボシステインの還元剤としての作用についても言及されていない。 甲5には、確かにカルボシステインの抗酸化作用について記載されているものの、細胞株における活性酸素種および化学的な産生系由来の活性酸素種の消去能と、酸化還元電位や活性酸素種との反応生成物量について確認した結果が示されるのみであって(摘記5a)、固形製剤中における還元剤としての、カルボシステインによる製剤の保存安定性に関する効果は明らかでない。また、そのような用途についての記載もなく、ましてや、イブプロフェンと併用する場合の塩酸アンブロキソールの安定性向上については、全く記載も示唆もない。 してみると、甲4、甲5を参照しても、甲3発明において塩酸アンブロキソールの安定性向上のためにカルボシステインをさらに配合することは当業者といえども容易に想到するとはいえず、その効果も予測できない。 よって、本件特許発明1、2は甲3発明と同一ではないし、甲3?5に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (1.3.2)本件特許発明3について 本件特許発明3は、本件特許発明1において(b)成分を(b2)ブロムヘキシン又はその塩のうち塩酸ブロムヘキシンにさらに限定して特定するものであって、甲3発明とは上記相違点3と同じ点で相違する。 よって、(1.3.1)で説示したのと同様に、本件特許発明3は甲3発明と同一ではないし、甲3?5に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。異議申立人の主張には理由がない。 したがって、甲3を主引用例とする異議申立人の主張には理由がない。 (1.4)甲4を主引用例とする場合 異議申立人は主張していないが、甲4を主引用例とする場合についても検討する。 甲4には、摘記4aに「(a)塩酸ブロムヘキシン、塩酸アンブロキソール及び塩化リゾチームからなる群より選ばれる1種または2種以上の薬物、(b)イブプロフェン、(c)抗ヒスタミン薬並びに(d)還元剤を配合した経口投与用製剤。」が記載され、摘記4dには、塩酸ブロムヘキシン、または塩酸ブロムヘキシンと塩化リゾチームを含む散剤、あるいは散剤をカプセルに充填した実施例が記載され、散剤は固形製剤に該当する。 そうすると、甲4には次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されているといえる。 「(a)塩酸ブロムヘキシン、(b)イブプロフェン、(c)抗ヒスタミン薬並びに(d)還元剤を配合した固形製剤。」 本件特許発明1と甲4発明とを対比すると、両者は次の点で相違する。 相違点4:本件特許発明1は、カルボシステインを含有するのに対して甲4発明は還元剤を含有する点。 上記相違点4について検討する。 甲4発明は、塩酸ブロムヘキシン、塩酸アンブロキソール、塩化リゾチームがポリエチレングリコール、ノスカピン、又は抗ヒスタミン薬などと共存(接触)する場合に保存中に分解し、効力の低下等を招く問題を、還元剤を配合することによって解決しようとするものである。甲4には還元剤について「本発明において、還元剤とは、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ジブチルヒドロキシアニソール)、安息香酸またはその塩類、没食子酸プロピル、ヒドロキノン、dl-α-トコフェロール、d-α-トコフェロール、酢酸トコフェロール、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム及びレシチンからなる群より選ばれる1種または2種以上」(摘記4c)と記載され、カルボシステインは挙げられておらず、実施例で使用されているのもBHTやヒドロキノンのみである(摘記4d)。一方、甲5には、「カルボシステイン(S-CMC)の抗酸化作用に関する研究」と題した報告があり、カルボシステインの還元力に関する検討結果が記載されている。しかしながら、甲5に記載される内容は、細胞株における活性酸素種および化学的な産生系由来の活性酸素種の消去能と、酸化還元電位や活性酸素種との反応生成物量について確認した結果であって、製剤中における還元剤としての、製剤の保存安定性に関する効果については示されてない。また、そのような用途について記載も示唆もない。また、カルボシステインは去痰薬として周知ではあるものの、製剤中に還元剤として配合されているという根拠も見出せない。 そうすると、甲4発明において、還元剤としてカルボシステインを採用することは当業者が容易に想到するとはいえず、また、カルボシステインによって塩酸ブロムヘキシンや塩酸アンブロキソールの安定性を向上できることが予測できるという根拠も見出せない。 そして、本件特許発明1は、イブプロフェンとブロムヘキシン塩酸塩を含有する造粒物において、カルボシステインを加えるとブロムヘキシン塩酸塩の含量低下が抑制できることが実施例5と比較例6によって確認できる。 してみると、本件特許発明1は甲4発明および甲5に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、本件特許発明2は、本件特許発明1の(b)成分を(b1)アンブロキソールの塩であるアンブロキソール塩酸塩に限定するものであり、本件特許発明3は、本件特許発明1の(b)成分を(b2)ブロムヘキシンの塩であるブロムヘキシン塩酸塩に限定するものであって、両者はいずれも甲4発明との対比において相違点4と同じ点で相違する。 よって、本件特許発明2および本件特許発明3は甲4発明および甲5に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)特許法第36条第6項第1号について 特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆるサポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載からみて、本件特許発明の解決しようとする課題は、(a)イブプロフェンと、(b)として(b1)アンブロキソール又はその塩及び(b2)ブロムヘキシン又はその塩からなる群より選ばれる1種とを配合した医薬組成物において、簡便な手段で安定性に優れた医薬組成物を提供すること、と認められる(【0006】?【0009】)。そして、この課題を解決する手段として、(a)及び(b)とともに(c)カルボシステインを含有する固形製剤とすることを発明の特定事項としており、固形製剤の形態や各成分の含有量について特に制限を設けていない。 これに対し、異議申立人は、次の(ア)?(ウ)の旨を述べ、本件特許発明は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないと主張する。 (ア)本件特許発明1は、請求項1に記載のとおりの構成を有し、(a)成分としてイブプロフェンと、(b)成分としてアンブロキソール又はその塩及びブロムヘキシン又はその塩からなる群より選ばれる1種を配合した医薬組成物において、簡便な手段で安定性に優れた医薬組成物を提供することを技術課題として設定する。実施例として、(c)成分のカルボシステインを配合することにより、アンブロキソール塩酸塩の含量の低下を抑制することができる点について開示する。一方、明細書には、固形製剤において(a)成分、(b)成分、(c)成分がどのような形態で混合されてもよい旨が記載されており、各成分を異なる造粒物に含有することも許容されている。 しかしながら、本件特許発明1において、(a)?(c)成分を同時に混合した構成以外は、本件特許発明の課題を解決できない。例えば、甲6、甲7に記載されるような、(b)成分の塩酸アンブロキソールを他の活性成分と別顆粒化したり、一方をコーティングする場合には安定化の課題がそもそも生じず、(a)成分と(b)成分とを混合する構成においても、(c)成分と併用する際に、一方を別顆粒化したり、コーティングすることにより、(c)成分による(b)成分の安定性向上効果は得られないと思料する。本件明細書の実施例においても、(a)?(c)成分を混合した後に造粒した造粒物を用いて評価しているのみである。 さらに、本件明細書には、発明が解決しようとする課題の欄に、簡便な手段で安定性に優れた医薬組成物を提供することを挙げるが、本件特許発明1は別顆粒化及び顆粒のコーティングをも含むものであり、これはコストの増大、製造の複雑化を招く製造方法である。 つまり、(b)成分と(a)成分が混合された場合に安定性低下の課題が生じる点、(c)成分が(b)成分と混合された場合に安定性向上効果を発揮する点、別顆粒化及び顆粒のコーティングはコストが増大し、製造が複雑化する点より、本件特許発明は、明らかに本件特許発明の課題を解決することができない態様を含むものである。よって、本件特許発明1は、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求しており、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしていない。 本件特許発明2、3についても同様である。 (イ)(b)成分として(b1)アンブロキソール塩酸塩を用いる場合について、本件明細書の発明の詳細な説明では、実施例において、(b1)アンブロキソール塩酸塩の含有量に対して(c)L-カルボシステインの含有量が1?33.3倍のもので効果を奏することが示されるのみであり、両者の含有量比がそれ以外の場合、例えば、(b1)アンブロキソール塩酸塩に対して(c)L-カルボシステインが1倍未満であっても、実施例と同様の効果を示すのかについて十分な説明もない。 してみると、(b1)アンブロキソール塩酸塩の含有量に対して(c)L-カルボシステインの含有量が1倍未満のものを含む本件特許発明1の全範囲にまで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとは認められない。同時に、本件特許発明2,3についてもその全範囲にまで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとは認められない。 (ウ)(b)成分として(b2)ブロムヘキシン塩酸塩を用いる場合について、本件明細書の発明の詳細な説明では、実施例において、(b2)ブロムヘキシン塩酸塩の含有量に対して(c)L-カルボシステインの含有量が125倍のもので効果を奏することが示されるのみであり、両者の含有量比がそれ以外の場合であっても、実施例と同様の効果を示すのかについて十分な説明もない。 してみると、(b2)ブロムヘキシン塩酸塩の含有量に対して(c)L-カルボシステインの含有量が125倍未満のものを含む本件特許発明1の全範囲にまで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとは認められない。同時に、本件特許発明2,3についてもその全範囲にまで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとは認められない。 しかしながら、下記のとおり、異議申立人の上記主張には理由がない。 (ア)について 確かに、本件特許発明は、固形製剤であること以外には組成物の形態等を特定しておらず、(a)、(b)、(c)を種々の組合せあるいは単独で含む顆粒を形成してから、さらにはそれらにコーティングを施した後に、全体を混合する態様をも含むものである。 しかしながら、3成分を混合した造粒物(実施例1?5)と、(c)カルボシステインが含まれない造粒物(比較例1?6)の結果を見れば、3成分が接触する形で含まれる実施例1?5では、カルボシステインを含まない比較例1?6に比べて(b1)アンブロキソール塩酸塩または(b2)ブロムヘキシン塩酸塩の残存率が改善されていることが確認でき、(a)成分と(b)成分とを同一顆粒に含有する固形製剤においてさらに(c)を添加するという簡便な手段によって安定性に優れた固形製剤を提供できることを当業者が認識できる。具体的な製剤の態様として、異議申立人が提示する甲6、甲7に記載されるような(a)と(b)とを別顆粒にし、さらにコーティングを備える構成を除外するものではないが、そのような構成は製造工程やコストの上での不利は考えられるものの、(b)成分の安定性が損なわれるものとは考え難く、むしろ、(b)の安定化を図る上でさらに別角度からの手段を講じるものといえる。本件特許発明は、単にカルボシステインの添加という簡便な手段で(b)の安定性を改善できるものであるところ、このようなさらなる安定化手段を追加するかは、コストや製造工程への影響など、他の条件を考慮して当業者が適宜決定できることである。 また、各成分を個別に造粒する例として、製造例4として示される処方は(a)イブプロフェンを含有する造粒物A、(b1)アンブロキソール塩酸塩と(c)カルボシステインと含有する造粒物Bとを他の成分と共に混合、打錠して錠剤としたものであり、アンブロキソール含有量の低下が抑制されたことが記載され、ここで造粒物A、Bのいずれにもコーティングを設けることは記載されていない。 そうすると、(a)?(c)の3成分がある程度接触できる状態で製剤中に共存する場合、つまり(a)?(c)が同時に固形製剤に含有されていれば(b)成分の安定性が良好なものが得られることを当業者は認識し、多種多様な形態をとり得る「固形製剤」において、そのような手段による課題の解決に適した態様を選択することができるといえるのであり、いずれの態様であっても発明の課題が解決できることに変わりはない。 よって、いわゆるサポート要件に関する異議申立人の主張のうち(ア)については理由がない。 (イ)について 異議申立人の述べるとおり、実施例において(b1)アンブロキソール塩酸塩と(c)カルボシステインとを含む場合の効果が具体的に示されているのは、両者の含有量比が特定の範囲にある例のみである。 しかしながら、実施例1?4において(b1)の残存率はそれぞれ98.4%、98.0%、98.7%、98.7%と、(b1)に対して(c)が1?33.3倍という広い範囲にわたってほぼ同程度の効果を示しており、特にこの範囲の上限や下限付近で残存率が減じる傾向があるなどといった様子は観察されていない。(b1)と(c)が1:1である実施例4、実施例3では残存率がともに98.7%であり、(b1)に対して(c)が33.3倍である実施例1、2よりも良好な結果といえ、(c)が少ないと残存率が下がるなどという傾向も見られない。また、上記実施例の範囲以外、例えば(c)が(b1)よりも少ない場合には明らかに効果を期待できない、という具体的または理論的な根拠も示されていない。そうすると、単に具体的に効果の示される量比の範囲が限られるからといって、それ以外の範囲では(b1)の安定化という効果が得られないとはいえず、異議申立人の主張(イ)には理由がない。 (ウ)について 本件特許明細書において、(b2)ブロムヘキシン塩酸塩を用いた具体例は、異議申立人の述べるように(c)カルボシステインが(b2)の125倍含有される実施例5のみである。しかしながら、ブロムヘキシンとアンブロキソールとは、骨格を同じくし置換基が2箇所で異なるのみという互いに類似した化学構造を有しており、化学特性の上でも類似した性質を有すると考えられる。実際に、実施例5の結果は残存率99.1%と実施例1?4に遜色なく、含有量比が変動した場合にもアンブロキソールと同様にカルボシステインによる安定化の効果を期待できると考えられ、これを具体的に否定する根拠は示されていない。 よって、(イ)について説示したのと同様に、(ウ)についても異議申立人の主張には理由がない。 第6 むすび 以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2018-09-21 |
出願番号 | 特願2017-195170(P2017-195170) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
Y
(A61K)
P 1 651・ 113- Y (A61K) P 1 651・ 121- Y (A61K) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 小堀 麻子 |
特許庁審判長 |
滝口 尚良 |
特許庁審判官 |
淺野 美奈 前田 佳与子 |
登録日 | 2017-12-22 |
登録番号 | 特許第6260736号(P6260736) |
権利者 | 大正製薬株式会社 |
発明の名称 | 固形製剤 |
代理人 | 特許業務法人 津国 |