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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
管理番号 1344864
異議申立番号 異議2018-700478  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-11-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-06-12 
確定日 2018-10-01 
異議申立件数
事件の表示 特許第6247432号発明「積層体、積層体の製造方法、半導体デバイス、および、半導体デバイスの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6247432号の請求項1?26に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6247432号の請求項1?26に係る特許についての出願は、平成29年2月23日(優先権主張 平成28年2月26日 日本国、平成28年3月24日 日本国)を国際出願日とする特許出願であって、平成29年11月24日に特許権の設定登録(特許公報発行日:同年12月13日)がされ、平成30年6月12日に、特許業務法人朝日奈特許事務所(以下「申立人」という。)から特許異議の申立てがされたものである。


第2 本件発明
特許第6247432号の請求項1?26の特許に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明26」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?26に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

【請求項1】
基板と、少なくとも2層の樹脂層を有し、
前記樹脂層は、それぞれ独立に、膜面の少なくとも一部において、他の樹脂層と接しており、それぞれ独立に、ヤング率が2.8GPaを超えて5.0GPa以下、かつ、破断伸びが50%を超えて200%以下であり、さらに、3次元ラジカル架橋構造を有し、
前記樹脂層のうち、少なくとも1層は、ポリイミドの少なくとも1種を含む、積層体。
【請求項2】
前記樹脂層は、それぞれ独立に、ポリイミドの少なくとも1種を含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記樹脂層は、それぞれ独立に、引張り強度が、160MPaを超えて300MPa以下である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記樹脂層は、合計で、3?7層である、請求項1?3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
前記樹脂層の間に、金属層を有する、請求項1?4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
前記金属層が銅を含む、請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
前記ポリイミドが、-Ar-L-Ar-で表される部分構造を含む、請求項1?6のいずれか1項に記載の積層体;但し、Arは、それぞれ独立に、アリーレン基であり、Lは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1?10の脂肪族炭化水素基、-O-、-CO-、-S-、-SO_(2)-または-NHCO-、ならびに、前記の2つ以上の組み合わせからなる基である。
【請求項8】
感光性樹脂組成物を基板に適用して層状にする、感光性樹脂組成物層形成工程と、
前記感光性樹脂組成物層を露光する露光工程と、
前記露光された感光性樹脂組成物層に対して、ネガ型現像処理を行う現像処理工程とを、前記順に行い、
さらに、再度、前記感光性樹脂組成物層形成工程、前記露光工程、および、前記現像処理工程を、前記順に行うことを含み、
前記感光性樹脂組成物が、ポリイミド前駆体およびポリイミドから選択される樹脂を含み、
さらに、前記樹脂が重合性基を含むこと、および、前記感光性樹脂組成物が重合性化合物を含むことの少なくとも一方を満たす、請求項1?7のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項9】
前記感光性樹脂組成物層形成工程、前記露光工程、および、前記現像処理工程を、前記順に、3?7回行う、請求項8に記載の積層体の製造方法。
【請求項10】
前記現像処理後に、金属層を設けることを含む、請求項8または9に記載の積層体の製造方法。
【請求項11】
前記金属層が銅を含む、請求項10に記載の積層体の製造方法。
【請求項12】
前記金属層を設けた後、さらに、前記金属層を覆うように、前記感光性樹脂組成物層形成工程、前記露光工程、および、前記現像処理工程を、前記順に行う、請求項10または11に記載の積層体の製造方法。
【請求項13】
前記樹脂が、-Ar-L-Ar-で表される部分構造を含む、請求項8?12のいずれか1項に記載の積層体の製造方法;但し、Arは、それぞれ独立に、アリーレン基であり、Lは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1?10の脂肪族炭化水素基、-O-、-CO-、-S-、-SO_(2)-または-NHCO-、ならびに、前記の2つ以上の組み合わせからなる基である。
【請求項14】
前記感光性樹脂組成物が、光重合開始剤を含む、請求項8?13のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項15】
請求項1?7のいずれか1項に記載の積層体を含む半導体デバイス。
【請求項16】
請求項8?14のいずれか1項に記載の積層体の製造方法を含む、半導体デバイスの製造方法。
【請求項17】
前記樹脂がポリイミド前駆体を含む、請求項8?14のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項18】
前記ポリイミド前駆体が、式(2-A)で表される繰り返し単位を有する、請求項17に記載の積層体の製造方法;
【化1】


式(2-A)中、A^(1)およびA^(2)は、酸素原子を表し、R^(111)およびR^(112)は、それぞれ独立に、2価の有機基を表し、R^(113)およびR^(114)は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表し、R^(113)およびR^(114)の少なくとも一方は、重合性基を含む基である。
【請求項19】
前記R^(113)およびR^(114)の両方が重合性基を含む基である、請求項18に記載の積層体の製造方法。
【請求項20】
前記ポリイミド前駆体は、全繰り返し単位の50モル%以上が、前記式(2-A)で表される繰り返し単位であって、前記R^(113)およびR^(114)の両方が重合性基を含む基である繰り返し単位である、請求項18または19に記載の積層体の製造方法。
【請求項21】
前記ポリイミド前駆体は、全繰り返し単位の70モル%以上が、前記式(2-A)で表される繰り返し単位であって、前記R^(113)およびR^(114)の両方が重合性基を含む基である繰り返し単位である、請求項19または20に記載の積層体の製造方法。
【請求項22】
前記ポリイミド前駆体は、全繰り返し単位の90モル%以上が、前記式(2-A)で表される繰り返し単位であって、前記R^(113)およびR^(114)の両方が重合性基を含む基である繰り返し単位である、請求項18または19に記載の積層体の製造方法。
【請求項23】
前記感光性樹脂組成物が、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートを含む、請求項8?14および17?22のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項24】
前記樹脂が重合性基を含むこと、および、前記感光性樹脂組成物が重合性化合物を含むことの両方を満たす、請求項8?14および17?23のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項25】
請求項1?7のいずれか1項に記載の積層体の形成用の感光性樹脂組成物であって、
前記感光性樹脂組成物が、ポリイミド前駆体およびポリイミドから選択される樹脂を含み、
さらに、前記樹脂が重合性基を含むこと、および、前記感光性樹脂組成物が重合性化合物を含むことの少なくとも一方を満たす、感光性樹脂組成物。
【請求項26】
請求項8?14および17?24のいずれか1項に記載の積層体の製造方法に用いられる感光性樹脂組成物であって、
前記感光性樹脂組成物が、ポリイミド前駆体およびポリイミドから選択される樹脂を含み、
さらに、前記樹脂が重合性基を含むこと、および、前記感光性樹脂組成物が重合性化合物を含むことの少なくとも一方を満たす、感光性樹脂組成物。


第3 特許異議の申立て理由の概要
申立人の主張する申立て理由は、次のとおりである。
なお、申立人が本件特許異議申立書に添付した甲第1号証等をそれぞれ「甲1」等という。
また、甲1等に記載された発明及び事項を「甲1発明」等及び「甲1事項」等という。

1 甲1発明を主引用例とする特許法29条2項の理由(以下「理由1」という)
本件発明1?11、13?26は甲1発明に基いて、並びに、本件発明12は甲1発明及び甲2事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない発明であるから、本件発明1?26に係る特許は特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。

2 甲2発明を主引用例とする特許法29条2項の理由(以下「理由2」という)
本件発明1、2、5、6、15は甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない発明であるから、本件発明1、2、5、6、15に係る特許は特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。

3 甲3発明を主引用例とする特許法29条2項の理由(以下「理由3」という)
本件発明1、2、4?6、15は甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない発明であるから、本件発明1、2、4?6、15に係る特許は特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。


第4 刊行物の記載
1 甲1
甲1(国際公開第2015/199219号)には、次の記載がある。
(1)段落[0189]?[0190]、及び[図1]によると、配線基板120の一方の面に、再配線層105が形成された絶縁層115を有した積層体である。

(2)[請求項25]?[請求項26]、[請求項36]、段落[0184]、[0200]?[0201]、[0227]によると、再配線用層間絶縁膜に用いられる熱硬化性樹脂組成物が、ポリイミドを含み、且つエチレン性不飽和結合を有するものである。

(3)甲4(特開2005-101463号公報)の段落【0021】?【0034】に記載された事項によれば、甲1の[図1]に記載されたような幅が異なる複数の領域から構成された絶縁層115が、複数の樹脂層から構成されたものであることは技術常識である。

(4)上記(1)及び(2)から、甲1には、次の甲1発明が記載されている。
「配線基板120と再配線層105が形成された少なくとも2層の絶縁層115を有し、
絶縁層115の再配線用層間絶縁膜に用いられる熱硬化性樹脂組成物が、ポリイミドを含み、
且つエチレン性不飽和結合を有する、
積層体。」

2 甲2
甲2(特開2009-60020号公報)には、次の記載がある。
(1)【請求項1】、段落【0030】、【0033】、【0036】?【0037】、【図2】によると、半導体基板10と、2つの独立した層間絶縁膜21,22を有する積層体であって、層間絶縁膜21,22は膜面の少なくとも一部において互いに接している。

(2)段落【0036】によると、層間絶縁膜21,22はポリイミド等の感光性樹脂を含んで構成されており、感光性樹脂はネガ型であってもよいことが理解できる。

(3)上記(1)及び(2)から、甲2には、次の甲2発明が記載されている。
「半導体基板10と2層の層間絶縁膜21,22を有し、
前記層間絶縁膜21,22は、それぞれ独立に、膜面の少なくとも一部において、互いに接しており、
前記層間絶縁膜21,22はポリイミド等のネガ型の感光性樹脂を含む、
積層体。」

3 甲3
甲3(国際公開第2011/125380号)には、次の記載がある。
(1)[請求項1]、段落[0120]、[0131]、[0139]、[図10A]によると、半導体基板201と第1配線構造層210と第2配線構造層220で構成される積層体であって、第2配線構造層220は4つの第2絶縁層221を有し、第2絶縁層221は一部が互いに接している。

(2)段落[0139]?[0140]によると、第2絶縁層221はポリイミド樹脂で形成することができるとともに、感光性材料とすることができる。

(3)段落[0139]によると、ポリイミド樹脂は、膜強度、引張弾性率及び破断伸び率等の機械的特性が優れているため、高い信頼性を得ることができるものである。

(4)段落[0141]によると、第2絶縁層の材料の25℃における弾性率を0.15?8GPaとすることで、半導体素子にかかる応力を第2絶縁層の変形により緩和することができ、第1配線構造層への応力伝搬を効率的に低減させることができる。

(5)上記(1)?(4)から、甲3には次の甲3発明が記載されている。
「半導体基板201と、少なくとも2層の第2絶縁層221を有し、
前記第2絶縁層221は、それぞれ独立に、膜面の少なくとも一部において、他の第2絶縁層221と接しており、
前記第2絶縁層の弾性率が0.15?8GPaであり、
前記第2絶縁層221は感光性材料のポリイミド樹脂である、
積層体。」


第5 判断
1 理由1(甲1発明を主引用例とする特許法29条2項)についての判断
(1)対比
本件発明1と甲1発明を対比すると、少なくとも以下の点で相違している。
<相違点>
樹脂層について、本件発明1の「少なくとも2層の樹脂層」は「それぞれ独立に、ヤング率が2.8GPaを超えて5.0GPa以下、かつ、破断伸びが50%を超えて200%以下である」としているのに対して、甲1発明の絶縁層115のヤング率、及び破断伸びが明らかでない点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
(a)本件発明1は、樹脂層同士の密着性向上という技術的課題(段落【0005】)を解決するために、樹脂層のヤング率及び破断伸びの数値範囲を特定するものであって、実施例(段落【0243】?【0267】)の記載によると、種々の材料の組合せや配合量によってヤング率及び破断伸びの両条件を満たす樹脂(【表1】の感光性樹脂組成物(1)?(25))と満たさない樹脂(【表1】の比較例用感光性樹脂組成物(1)?(8))が調製できるけれども、両条件を満たした樹脂であれば課題を解決することができる(段落【0013】、段落【0014】、【表2】)として、両条件を特定するものである。

(b)一方、甲1には、本件発明1の樹脂層に相当する絶縁層115同士の密着性という技術的課題、及び絶縁層115のヤング率及び破断伸びを所定の範囲内とすることは、記載も示唆もされていない。

(c)申立人は甲3の記載から、甲1発明も上記相違点における本件発明1に係る構成を備える蓋然性が高い旨主張する。(申立書第54ページ第15行?第55ページ第2行)

しかし、甲3にはポリイミド樹脂を用いることにより引張弾性率や破断伸び率等を向上させることが可能である旨記載されているけれども、甲3には、弾性率の一種であるヤング率や、破断伸びについて具体的な数値の記載はないから、甲3の記載から甲1発明が上記相違点における本件発明1に係る構成を備えたものである蓋然性が高いとまではいえない。

(d)以上のとおりであるから、甲1発明において、上記相違点に係る本件発明1の構成を備えることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
よって、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(e)したがって、本件発明1は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない発明とはいえない。

(3)本件発明2?26について
本件発明2?26は、本件発明1を引用するものであるから、本件発明1の構成を全て含み、さらに本件発明1の構成を限定するものであるので、本件発明1と同様に、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない発明とはいえない。

(4)小括
よって、本件発明1?26は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない発明とはいえないから、本件発明1?26に係る特許は、特許法113条2号に該当せず、取り消すことはできない。

2 理由2(甲2発明を主引用例とする特許法29条2項)についての判断
(1)対比
本件発明1と甲2発明を対比すると、少なくとも以下の点で相違している。
<相違点>
樹脂層について、本件発明1の「少なくとも2層の樹脂層」は「それぞれ独立に、ヤング率が2.8GPaを超えて5.0GPa以下、かつ、破断伸びが50%を超えて200%以下である」としているのに対して、甲2発明の2層の層間絶縁膜21,22は、ヤング率及び破断伸びを特定していない点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
(a)本件発明1の技術的課題と解決手段については、上記第5 (2) (a)で述べたとおりである。

(b)一方、甲2には、本件発明1の樹脂層に相当する層間絶縁膜21,22同士の密着性という技術的課題、及び層間絶縁膜21,22のヤング率及び破断伸びを所定の範囲内とすることは、記載も示唆もされていない。

(c)申立人は甲3の記載から、甲2発明も上記相違点における本件発明1に係る構成を備える蓋然性が高い旨主張する。(申立書第59ページ第7行?第60ページ第1行)

しかし、甲3にはポリイミド樹脂を用いることにより引張弾性率や破断伸び率等を向上させることが可能である旨記載されているけれども、甲3には、弾性率の一種であるヤング率や、破断伸びについて具体的な数値の記載はないから、甲3の記載から甲2発明が上記相違点における本件発明1に係る構成を備えたものである蓋然性が高いとまではいえない。

(d)以上のとおりであるから、甲2発明において、上記相違点に係る本件発明1の構成を備えることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
よって、本件発明1は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(e)したがって、本件発明2は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない発明とはいえない。

(3)本件発明2?26について
本件発明2?26は、本件発明1を引用するものであるから、本件発明1の構成を全て含み、さらに本件発明1の構成を限定するものであるので、本件発明1と同様に、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない発明とはいえない。

(4)小括
よって、本件発明1?26は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない発明とはいえないから、本件発明1?26に係る特許は、特許法113条2号に該当せず、取り消すことはできない。

3 理由3(甲3発明を主引用例とする特許法29条2項)についての判断
(1)対比
本件発明1と甲3発明を対比すると、少なくとも以下の点で相違している。
<相違点>
樹脂層について、本件発明1の「少なくとも2層の樹脂層」は「それぞれ独立に、ヤング率が2.8GPaを超えて5.0GPa以下、かつ、破断伸びが50%を超えて200%以下である」としているのに対して、甲3発明の少なくとも2層の第2絶縁層221は弾性率が0.15?8GPaであるもののヤング率及び破断伸びを特定していない点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
(a)本件発明1の技術的課題と解決手段については、上記第5 (2) (a)で述べたとおりである。

(b)一方、甲3には、本件発明1の樹脂層に相当する第2絶縁層221同士の密着性という技術的課題、及び第2絶縁層221のヤング率及び破断伸びを所定の範囲内とすることは、記載も示唆もされていない。

(c)たとえ甲3発明が、上記第4 3 (3)で示すように、ポリイミド樹脂を用いることにより引張弾性率や破断伸び率等を向上させることが可能であるとしていても、甲3における弾性率の特定(上記第4 3 (4))は、応力緩和を目的とした変形のために弾性率を所定の範囲とするものであって、第2絶縁層221同士の密着性を向上する目的ではなく、第2絶縁層221のヤング率を特定するものでも破断伸びを特定するものでもなく、そのような示唆もされていないし、根拠となるべき他の証拠も提出されていない。

(d)よって、甲3発明において、上記相違点に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(f)したがって、本件発明1は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない発明とはいえない。

(3)本件発明2?26について
本件発明2?26は、本件発明1を引用するものであるから、本件発明1の構成を全て含み、さらに本件発明1の構成を限定するものであるので、本件発明1と同様に、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない発明とはいえない。

(4)小括
よって、本件発明1?26は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない発明とはいえないから、本件発明1?26に係る特許は、特許法113条2号に該当せず、取り消すことはできない。


第6 むすび

以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1?26に係る特許を取り消すことはできない。
また他に本件発明1?26に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-09-21 
出願番号 特願2017-550955(P2017-550955)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B32B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 平井 裕彰飛彈 浩一増田 亮子  
特許庁審判長 門前 浩一
特許庁審判官 久保 克彦
横溝 顕範
登録日 2017-11-24 
登録番号 特許第6247432号(P6247432)
権利者 富士フイルム株式会社
発明の名称 積層体、積層体の製造方法、半導体デバイス、および、半導体デバイスの製造方法  
代理人 特許業務法人特許事務所サイクス  

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