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審決分類 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E02D
管理番号 1344870
異議申立番号 異議2018-700562  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-11-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-07-10 
確定日 2018-10-15 
異議申立件数
事件の表示 特許第6261135号発明「山留壁の架構構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6261135号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6261135号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成26年11月5日の出願であって、平成29年12月22日付けでその特許権の設定登録がされ、平成30年1月17日に特許掲載公報が発行された。その後、平成30年7月10日付けで特許異議申立人廣瀬敏一(以下「申立人」という。)より請求項1?3に対して特許異議の申立てがされたものである。

第2 特許異議の申立てについて
1 請求項1?3に係る発明
請求項1?3に係る発明(以下、「本件発明1」等、あるいはまとめて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
山留壁の内面に横架する腹起と、前記腹起に接続する切梁と、を備えた山留壁の架構構造であって、
前記腹起は、複数の鋼材を連結してなる鋼材の一部に高張力鋼製の高強度梁を少なくとも有し、
腹起を構成する鋼材の連結部の地盤側にカバープレートを位置させ、
前記地盤側のカバープレートと腹起を構成する鋼材の掘削側に位置させた切梁の端部とにより腹起の連結部を連結したことを特徴とする、
山留壁の架構構造。
【請求項2】
前記腹起しを構成する複数の鋼材が高強度梁と、該高強度梁よりも低強度な梁材とからなることを特徴とする、請求項1に記載の山留壁の架構構造。
【請求項3】
前記腹起しを構成する複数の鋼材が高張力鋼製の高強度梁からなることを特徴とする、請求項1に記載の山留壁の架構構造。」

2 特許異議申立て理由の概要
請求項1?3に係る特許に対しての特許異議申立て理由の要旨は、次のとおりである。
(1)本件の請求項1?3に係る特許は、特許請求の範囲の請求項1?3の記載が不明確であることから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対しされたものであり、特許法第113条第4号の規定により取り消されるべきである。
(2)本件の請求項1?3に係る特許は、特許請求の範囲の請求項1?3に係る発明が発明の詳細な説明に記載されたものではないことから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対しされたものであり、特許法第113条第4号の規定により取り消されるべきである。

3 当審の判断
(1)第36条第6項第2号(明確性要件違反)について
「高張力鋼」は、「普通、特殊鋼を熱処理し、非常に強度の大きいものに改良したもの。一般に鋼中の炭素含有量が多いほど引張り強度は大きく伸び率が小さい。」(建築大辞典第2版、株式会社彰国社、1997年4月10日、第3刷)を意味するなど、鋼材分野の技術用語として一般的な用語であり、その意味するところは明らかである。
そして、本件発明の「高張力鋼製の高強度梁」は、上記「高張力鋼」の定義を参酌しても、通常の鋼材よりも高強度の梁を意味していると解することが自然である。このような解釈は、本件明細書における「【0003】これらの一般的な鋼材に対し、腹起の支間長を長くするべく、該鋼材を高強度化するには、各鋼材の素材を高強度の素材としたり、鋼材の寸法を大きくして断面係数を高くしたりする方法がある。」、「【0026】・・・例えば、梁材12の素材に一般鋼材(例えばSS400材)を用い、高強度梁11の素材として高強度の鋼材(例えばSM490A等)を用いた場合、腹起10の耐力向上、腹起10の軽量化および資材コストの削減の並立を図ることができる点で有益性がある。」の「一般的な鋼材」、「一般鋼材」と「高強度の鋼材」に関する記載内容とも、整合している。
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。」)において「しかしながら,上記のとおり,本件特許権者の手続補正によって請求項1に記載の「高強度梁」が「高張力鋼製の高強度梁」と補正されたものの,補正によって追加された「高張力鋼製」という定義は,「高強度梁」と同様に,比較の基準もしくは程度が不明確な表現であり,補正後の請求項1に係る発明は,依然として物の発明としての構成が不明確であるといわざるを得ない。このため,「高張力鋼製の高強度梁」という表現では,請求項1に係る発明の技術的範囲を明確に画定することができない。」(申立書3頁19行?26行)、「しかし,もし仮に,請求項1に記載の「高強度梁」に引張強さ490N/mm^(2)未満または断面係数6520cm^(3)未満の鋼材が含まれると解釈した場合,どの程度の引張強さまたは断面係数の鋼材が「高強度梁」に含まれるのかが不明確となる。例えば,本件特許の現在の請求項1の表現では,引張強さ480N/mm^(2),400N/mm^(2),または300N/mm^(2)の鋼材が「高強度梁」に含まれるのか否かを判断することができない。」(申立書4頁7行?13行)と主張している。
しかしながら、本件発明は、本件明細書において記載されているように「【0003】これらの一般的な鋼材に対し、腹起の支間長を長くするべく、該鋼材を高強度化するには、各鋼材の素材を高強度の素材としたり、鋼材の寸法を大きくして断面係数を高くしたりする方法がある。・・・【0004】 前記したように各鋼材を高強度化する際には、これらの鋼材同士を連結するためのカバープレートも同時に強度向上を図る必要が生じる。・・・ このカバープレートの強度向上には、・・・多用な観点から設計変更が求められることとなる。しかし、上記した設計変更後のカバープレートは、いわゆる既製品から外れた特注製品となり、コスト高や施工性の低下が生じる要因となり得る。」ことを課題として、「腹起は、複数の鋼材を連結してなる鋼材の一部に高張力鋼製の高強度梁を少なくとも有し、腹起を構成する鋼材の連結部の地盤側にカバープレートを位置させ、前記地盤側のカバープレートと腹起を構成する鋼材の掘削側に位置させた切梁の端部とにより腹起の連結部を連結したこと」により、「【0006】・・・従来の鋼材から高強度化した鋼材の連結部を、切梁との接続箇所に配することで、従来の鋼材に用いるカバープレートを連結部の地盤側に設置することで足り、高強度化した鋼材の連結部にそのまま用いることができ、コスト高や施工性の低下の問題を回避することができる。」との効果を奏するものであるから、通常の鋼材よりも高強度の梁とすれば足りるものであり、上記したように、「高張力鋼製の高強度梁」について、通常の鋼材よりも高強度の梁を意味していることが明らかであることから、申立人が主張するような、境界的、臨界的な定義まで必要であるとはいえず、「高張力鋼製の高強度梁」の記載は不明瞭であるというほどのものではない。
したがって、本件の請求項1?3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえない。

(2)第36条第6項第1号(サポート要件違反)について
本件発明1?3の各構成について、本件明細書の【0005】、【0009】?【0017】、【0026】に記載されていることは明らかである。
申立人は、申立書において「そうすると,もし仮に,請求項1に記載の「高強度梁」に,引張強さ490N/mm^(2)未満もしくは断面係数6520cm^(3)未満の鋼材,または,SM490A,SM490YB,SM520C,もしくはSMA490以外の鋼材が含まれると解釈した場合,発明の詳細な説明中に記載も示唆もされていない事項が請求項1に記載されていることとなる。」(申立書4頁下から4行?5頁2行)と主張しているが、本件明細書の「【0012】・・・引張強さが490N/mm^(2)以上、または断面係数が6520cm^(3)以上を具備していることが好ましい。」、「【0013】・・・例えばSM490A、SM490YB、SM520C、SMA490等の高強度鋼を採用することができる。」の記載では好適な例が示されているにすぎず、それ以外のものを排除しているわけではないから、「高強度梁」が実施例に基づく数値や素材のみに限定されているとは解されない。そして、上記したように本件発明1?3の各構成は、本件明細書の【0005】、【0009】?【0017】、【0026】に記載されていることから、本件発明は発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。
したがって、本件の請求項1?3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえない。

第3 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-10-02 
出願番号 特願2014-225143(P2014-225143)
審決分類 P 1 652・ 537- Y (E02D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 苗村 康造  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 井上 博之
住田 秀弘
登録日 2017-12-22 
登録番号 特許第6261135号(P6261135)
権利者 ヒロセホールディングス株式会社
発明の名称 山留壁の架構構造  
代理人 山口 朔生  
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