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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08G
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08G
管理番号 1344876
異議申立番号 異議2018-700253  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-11-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-03-26 
確定日 2018-10-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第6205692号発明「熱硬化性エポキシ樹脂組成物、絶縁層形成用接着フィルム及び多層プリント配線板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6205692号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6205692号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし11に係る特許についての出願は、平成24年9月3日に特許出願され、平成29年9月15日にその特許権の設定登録がされ、同年10月4日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、平成30年3月26日に特許異議申立人森川真帆(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審において平成30年6月11日付けで取消理由を通知し、同年8月7日に意見書が提出された。

第2 本件発明
本件特許の請求項1ないし11に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。(以下、請求項1ないし11に係る発明を、それぞれ、「本件発明1」ないし「本件発明11」ともいい、これらをまとめて、「本件発明」ともいう。)
「【請求項1】少なくともエポキシ樹脂(A)と、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物(B)と、無機充填材と、フェノキシ樹脂と、を含有する樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の前記ナフタレン構造を含む活性エステル化合物(B)の含有量が0.1?30質量%であり、
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、無機充填材の含有量が30?80質量%であり、
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、フェノキシ樹脂の含有量が0.1?10質量%であり、
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、エポキシ樹脂(A)の含有量が10?50質量%であり、
前記ナフタレン構造を含む活性エステル化合物(B)が、ポリナフチレンオキサイド構造とアリールカルボニルオキシ基を有する活性エステル化合物である、熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】前記ナフタレン構造を含む活性エステル化合物(B)が、ポリナフチレンオキサイド構造のナフタレン核にアリールカルボニルオキシ基が結合した活性エステル化合物である、請求項1に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】前記エポキシ樹脂(A)が温度20℃で液状のエポキシ樹脂を含有する、請求項1又は2に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】メッキにより導体層を形成する多層プリント配線板の絶縁層用樹脂組成物である、請求項1?3のいずれか1項に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】請求項1?4のいずれか1項に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物からなる樹脂組成物層を支持フィルム上に有することを特徴とする、絶縁層形成用接着フィルム。
【請求項6】請求項1?4のいずれか1項に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物がシート状繊維基材に含浸されていることを特徴とする、絶縁層形成用プリプレグ。
【請求項7】請求項5に記載の絶縁層形成用接着フィルムの樹脂組成物層及び請求項6に記載の絶縁層形成用プリプレグのいずれかの硬化物よりなるプリント配線板用絶縁体。
【請求項8】請求項7に記載のプリント配線板用絶縁体からなる絶縁層上にパターン加工された導体層回路を有するプリント配線板用絶縁体。
【請求項9】前記絶縁層の算術平均粗さRaが10?200nmであり、二乗平均平方根粗さRqが15?250nmであり、前記絶縁層と導体層のピール強度が0.35kgf/cm(3.43N/cm)以上であることを特徴とする、請求項7又は8に記載のプリント配線板用絶縁体。
【請求項10】請求項8又は9に記載のプリント配線板用絶縁体を多層積層して形成されてなる、多層プリント配線板。
【請求項11】請求項10に記載の多層プリント配線板を用いることを特徴とする半導体装置。」

第3 特許異議の申立ての理由の概要
本件発明1ないし11は、以下の(1)及び(2)の取消理由があるから、請求項1ないし11に係る発明についての特許は、特許法第113条第2号及び第4号に該当し、取り消されるべきものである。証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証(以下、「甲1」等という。)を提出する。
(1)本件発明1ないし11は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていない。
(2)本件発明1ないし11は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
甲1:特開2010-111859号公報
甲2:特開2012-12534号公報

第4 当審が通知した取消理由通知の概要
合議体が請求項1ないし11に係る本件特許に対して通知した取消理由の要旨は以下のとおりであり、申立人が主張する取消理由(2)である。
本件特許の請求項1ないし11に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1ないし11に係る本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

第5 当審の判断
以下に述べるように、取消理由通知に記載した取消理由(2)によっては、本件発明1ないし11に係る特許を取り消すことはできない。

1.取消理由(2)(甲1を主たる引用文献とする進歩性)について
(1)甲1の記載事項
本件特許の出願前に頒布された甲1には、以下の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】(A)エポキシ樹脂、(B)活性エステル化合物、及び(C)脂環式構造含有フェノキシ樹脂を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】上記(C)フェノキシ樹脂の脂環式構造が、テルペン構造及び/又はトリメチルシクロヘキサン構造であることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】上記フェノキシ樹脂の重量平均分子量が、10000?50000であることを特徴とする請求項1又は2記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】エポキシ樹脂組成物の不揮発成分を100重量%とした場合、成分(A)の含有量が10?50重量%、成分(C)の含有量が1?20重量%であり、エポキシ樹脂組成物中に存在するエポキシ基とエポキシ硬化剤の反応基の比率が1:0.4?1:1.1であることを特徴とする、請求項1?3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】さらに(D)無機充填材を含有することを特徴とする、請求項1?4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】エポキシ樹脂組成物の不揮発成分を100重量%とした場合、(D)無機充填材の含有量が10?70重量%であることを特徴とする、請求項5記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】さらに(E)硬化促進剤を含有することを特徴とする、請求項1?6のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】エポキシ樹脂組成物中に含まれるエポキシ樹脂とフェノール性硬化剤の総量を100重量%とした場合、(E)硬化促進剤の含有量が0.1?5重量%であることを特徴とする、請求項7記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】請求項1?8のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物が支持フィルム上に層形成されていることを特徴とする接着フィルム。
【請求項10】請求項1?8のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物が繊維からなるシート状繊維基材中に含浸されていることを特徴とするプリプレグ。
【請求項11】請求項1?8のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物により絶縁層が形成されていることを特徴とする、多層プリント配線板。」

イ 「【0002】近年、電子機器の小型化、高性能化が進み、多層プリント配線板においては、ビルドアップ層が複層化され、配線の微細化及び高密度化が求められていた。」
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】本発明の課題は、エポキシ樹脂組成物の硬化物表面を粗化処理した粗化面の粗度が比較的小さいにもかかわらず、該粗化面がめっき導体に対して高い密着力を示し、かつ絶縁層の低線膨張率化を達成し得るエポキシ樹脂組成物を提供することである。」

ウ 「【0013】[成分(B)の活性エステル化合物]
本発明における(B)活性エステル化合物は、エポキシ樹脂の硬化剤として機能し活性エステルを有するものであれば特に制限はない。1分子中に2個以上の活性エステル基を有する化合物が好ましく、多価カルボン酸を有する化合物とフェノール性水酸基を有する芳香族化合物から得られる1分子中に2個以上の活性エステル基を持つ芳香族化合物がより好ましく、少なくとも2個以上のカルボン酸を1分子中に有する化合物と、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物と、から得られる芳香族化合物であり、かつ該芳香族化合物の分子中に2個以上のエステル基を有する芳香族化合物が更に好ましい。また、直鎖状または多分岐状高分子が含まれていてもよい。また、少なくとも2個以上のカルボン酸を1分子中に有する化合物が脂肪族鎖を含む化合物であればエポキシ樹脂(A)との相溶性を高くすることができ、芳香族環を有する化合物であれば耐熱性を高くすることができる。特に耐熱性等の観点から、カルボン酸化合物とフェノール化合物又はナフトール化合物とから得られる活性エステル化合物が好ましい。カルボン酸化合物としては、具体的には、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。なかでも耐熱性の観点からコハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、イソフタル酸、テレフタル酸がより好ましい。チオカルボン酸化合物としては、具体的には、チオ酢酸、チオ安息香酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、具体的には、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。なかでも耐熱性、溶解性の観点から、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、カテコール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックが好ましく、カテコール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックがより好ましく、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックが更に好ましく、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックが更に一層好ましく、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックが殊更好ましく、ジシクロペンタジエニルジフェノールが特に好ましい。チオール化合物としては、具体的には、ベンゼンジチオール、トリアジンジチオール等が挙げられる。活性エステル化合物は2種以上を併用してもよい。活性エステル化合物としては、特開2004-427761号公報に開示されている活性エステル化合物を用いてもよく、また市販のものを用いることもできる。市販されている活性エステル化合物としては、具体的には、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含むもの、フェノールノボラックのアセチル化物、フェノールノボラックのベンゾイル化物が好ましく、なかでもジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含むものがより好ましい。ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含むものとして、EXB-9451、EXB-9460(DIC(株)製)、フェノールノボラックのアセチル化物としてDC808、フェノールノボラックのベンゾイル化物としてYLH1026(ジャパンエポキシレジン(株)製)、などが挙げられる。
本発明の活性エステル化合物は、1種または2種以上を使用してもよい。」

エ 「【0015】
・・・
活性エステル化合物とその他の硬化剤を併用する場合は、エポキシ樹脂組成物中のすべてのエポキシ硬化剤(活性エステル化合物を含む)を重量100%とすると、活性エステル化合物の重量%が10?100%であるのが好ましく、20?100%であるのがより好ましい。また、エポキシ樹脂組成物中のすべてのエポキシ硬化剤(活性エステル化合物を含む)を重量100%とすると、フェノール系硬化剤の重量%は0?30%であるのが好ましく、0?20%であるのがより好ましい。
【0016】 活性エステル化合物とフェノール化合物(フェノール系硬化剤)を併用することにより、絶縁層表面の算術平均粗さと線膨張率のバランスをとることが可能である。この際、フェノール化合物の割合が多いと、絶縁層表面の算術平均粗さが増大する傾向にあり、フェノール化合物の割合が小さいと、線膨張率が増大する傾向となる。」

オ 「【実施例】
【0061】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明をいかなる意味においても制限するものではない。なお、以下の記載において、「部」は「重量部」を意味する。
【0062】
(実験例1)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」)30部と、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量291、日本化薬(株)製「NC3000H」)30部とをメチルエチルケトン(以下「MEK」と略称する。)15部、シクロヘキサノン15部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、活性エステル化合物(DIC(株)製「EXB9460-65T」、活性エステル当量223、固形分65%のトルエン溶液)80部、硬化促進剤(広栄化学工業(株)製、「4-ジメチルアミノピリジン」)0.5部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、アミノシラン処理付「SO-C2」(株)アドマテックス製)120部、フェノキシ樹脂(特開平2006-176658号公報の実施例1と同様に、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンと3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビフェノールジグリシジルエーテルとから合成されたフェノキシ樹脂、不揮発分30重量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液、重量平均分子量30000)40部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した(固形分244部 シリカ49重量%、エポキシ基とエポキシ硬化剤の反応基の比率1:0.87)。
次に、かかる樹脂ワニスをポリエチレンテレフタレート(厚さ38μm、以下「PET」と略称する。)上に、乾燥後の樹脂厚みが40μmとなるようにダイコーターにて塗布し、80?120℃(平均100℃)で6分間乾燥した(残留溶媒量約2重量%)。次いで樹脂組成物の表面に厚さ15μmのポリプロピレンフィルムを貼り合わせながらロール状に巻き取った。ロール状の接着フィルムを幅507mmにスリット(slit)し、これより507×336mmサイズのシート状の接着フィルムを得た。
【0063】
(実験例2)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」)30部と、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量291、日本化薬(株)製「NC3000H」)30部とをメチルエチルケトン(以下「MEK」と略称する。)15部、シクロヘキサノン15部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、活性エステル化合物(DIC(株)製「EXB9460-65T」、活性エステル当量223、固形分65%のトルエン溶液)40部、フェノール系硬化剤LA7052(DIC(株)製、トリアジン構造含有フェノールノボラック樹脂、フェノール水酸基当量120、固形分60%のMEK溶液)15部、硬化促進剤(広栄化学工業(株)製、「4-ジメチルアミノピリジン」)0.5部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、アミノシラン処理付「SO-C2」(株)アドマテックス製)100部、フェノキシ樹脂(特開平2006-176658号公報の実施例1と同様に、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンと3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビフェノールジグリシジルエーテルとから合成されたフェノキシ樹脂、不揮発分30重量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液、重量平均分子量30000)40部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した(固形分207部、シリカ48重量%、エポキシ基とエポキシ硬化剤の反応基の比率1:0.72)。次に、かかる樹脂ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0064】
(実験例3)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」)30部と、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量291、日本化薬(株)製「NC3000H」)30部とをメチルエチルケトン(以下「MEK」と略称する。)15部、シクロヘキサノン15部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、活性エステル化合物(DIC(株)製「EXB9460-65T」、活性エステル当量223、固形分65%のトルエン溶液)40部、フェノール系硬化剤LA7052(DIC(株)製、トリアジン構造含有フェノールノボラック樹脂、フェノール水酸基当量120、固形分60%のMEK溶液)15部、硬化促進剤(広栄化学工業(株)製、「4-ジメチルアミノピリジン」)0.5部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、アミノシラン処理付「SO-C2」(株)アドマテックス製)100部、フェノキシ樹脂(特開2006-176658号公報の実施例1において、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンの代わりにテルペンジフェノールを使用して同様に合成されたフェノキシ樹脂、不揮発分40重量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液、重量平均分子量30000)30部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した(固形分207部、シリカ48重量%、エポキシ基とエポキシ硬化剤の反応基の比率1:0.72)。次に、かかる樹脂ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0065】
(実験例4)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」)30部と、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量291、日本化薬(株)製「NC3000H」)30部とをメチルエチルケトン(以下「MEK」と略称する。)15部、シクロヘキサノン15部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、活性エステル化合物(DIC(株)製「EXB9460-65T」、活性エステル当量223、固形分65%のトルエン溶液)80部、硬化促進剤(広栄化学工業(株)製、「4-ジメチルアミノピリジン」)0.5部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、アミノシラン処理付「SO-C2」(株)アドマテックス製)130部、フェノキシ樹脂(特開平2006-176658号公報の実施例1と同様に、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンと3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビフェノールジグリシジルエーテルとから合成されたフェノキシ樹脂、不揮発分30重量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液、重量平均分子量30000)40部、コアシェル型アクリルゴム粒子(三菱レイヨン(株)製「W450」)8部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した(固形分252部、シリカ50重量%、エポキシ基とエポキシ硬化剤の反応基の比率1:0.87)。次に、かかる樹脂ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0066】
(比較例1)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」)30部と、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量291、日本化薬(株)製「NC3000H」)30部とをメチルエチルケトン(以下「MEK」と略称する。)15部、シクロヘキサノン15部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、活性エステル化合物(DIC(株)製「EXB9460-65T」、活性エステル当量223、固形分65%のトルエン溶液)80部、硬化促進剤(広栄化学工業(株)製、「4-ジメチルアミノピリジン」)0.5部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、アミノシラン処理付「SO-C2」(株)アドマテックス製)120部、フェノキシ樹脂(重量平均分子量50000、ジャパンエポキシレジン(株)製「1256B40」ビスフェノールA構造フェノキシ樹脂、不揮発分40重量%のMEK溶液)30部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した(固形分244部、シリカ49重量部、エポキシ基とエポキシ硬化剤の反応基の比率1:0.87)。次に、かかる樹脂ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0067】
(比較例2)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」)30部と、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量291、日本化薬(株)製「NC3000H」)30部とをメチルエチルケトン(以下「MEK」と略称する。)15部、シクロヘキサノン15部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、活性エステル化合物(DIC(株)製「EXB9460-65T」、活性エステル当量223、固形分65%のトルエン溶液)40部、フェノール系硬化剤LA7052(DIC(株)製、トリアジン構造含有フェノールノボラック樹脂、フェノール水酸基当量120、固形分60%のMEK溶液)15部、硬化促進剤(広栄化学工業(株)製、「4-ジメチルアミノピリジン」)0.5部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、アミノシラン処理付「SO-C2」(株)アドマテックス製)100部、フェノキシ樹脂(重量平均分子量50000、ジャパンエポキシレジン(株)製「1256B40」(ビスフェノールA構造フェノキシ樹脂、不揮発分40重量%のMEK溶液)30部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した(固形分207部、シリカ48重量部、エポキシ基とエポキシ硬化剤の反応基の比率1:0.72)。次に、かかる樹脂ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0068】
(比較例3)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」)30部と、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量291、日本化薬(株)製「NC3000H」)30部とをメチルエチルケトン(以下「MEK」と略称する。)15部、シクロヘキサノン15部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、フェノール系硬化剤LA7052(DIC(株)製、トリアジン構造含有フェノールノボラック樹脂、フェノール水酸基当量120、固形分60%のMEK溶液)40部、硬化促進剤(広栄化学工業(株)製、「4-ジメチルアミノピリジン」)0.5部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、アミノシラン処理付「SO-C2」(株)アドマテックス製)100部、フェノキシ樹脂(特開平2006-176658号公報の実施例1と同様に、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンと3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビフェノールジグリシジルエーテルとから合成されたフェノキシ樹脂、不揮発分30重量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液、重量平均分子量30000)40部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した(固形分196部、シリカ51重量%、エポキシ基とエポキシ硬化剤の反応基の比率1:0.75)。次に、かかる樹脂ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0069】
(比較例4)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」)30部と、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量291、日本化薬(株)製「NC3000H」)30部とをメチルエチルケトン(以下「MEK」と略称する。)15部、シクロヘキサノン15部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、フェノール系硬化剤SN485(東都化成(株)製、ナフトールアラルキル型、フェノール水酸基当量215)の50%MEK溶液60部、硬化促進剤(広栄化学工業(株)製、「4-ジメチルアミノピリジン」)0.5部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、アミノシラン処理付「SO-C2」(株)アドマテックス製)120部、フェノキシ樹脂(特開平2006-176658号公報の実施例1と同様に、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンと3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビフェノールジグリシジルエーテルとから合成されたフェノキシ樹脂、不揮発分30重量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液、重量平均分子量30000)40部、コアシェル型アクリルゴム粒子(三菱レイヨン(株)製、「W450」)8部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した(固形分199.5、シリカ50重量%、エポキシ基とエポキシ硬化剤の反応基の比率1:0.73)。次に、かかる樹脂ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0070】
<ピール強度およびRa値測定用サンプルの調製>
(1)積層板の下地処理
内層回路の形成されたガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板[銅箔の厚さ18μm、基板厚み0.3mm、松下電工(株)製R5715ES]の両面をメック(株)製CZ8100に浸漬して銅表面の粗化処理をおこなった。
(2)接着フィルムのラミネート
実施例及び比較例で作成した接着フィルムを、バッチ式真空加圧ラミネーターMVLP-500((株)名機製作所製、商品名)を用いて、積層板の両面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃、圧力0.74MPaでプレスすることにより行った。
(3)樹脂組成物の硬化
ラミネートされた接着フィルムからPETフィルムを剥離し、180℃、30分の硬化条件で樹脂組成物を硬化した。
(4)粗化処理
積層板を、膨潤液である、アトテックジャパン(株)のジエチレングリコールモノブチルエーテル含有のスエリングディップ・セキュリガンドPに60℃で5分間浸漬し、次に粗化液として、アトテックジャパン(株)のコンセントレート・コンパクトP(KMnO_(4):60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に80℃で20分間浸漬、最後に中和液として、アトテックジャパン(株)のリダクションショリューシン・セキュリガントPに40℃で5分間浸漬した。この粗化処理後の積層板について、絶縁層の算術表面粗さ(Ra)の測定を行った。
(5)セミアディティブ工法によるメッキ
絶縁層表面に回路を形成するために、積層板を、PdCl_(2)を含む無電解メッキ用溶液に浸漬し、次に無電解銅メッキ液に浸漬した。150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、エッチングレジストを形成し、エッチングによるパターン形成の後に、硫酸銅電解メッキを行い、30±5μmの厚さで導体層を形成した。次に、アニール処理を180℃にて60分間行った。この積層板についてメッキ銅のピール強度の測定を行った。
【0071】
[メッキ導体層の引き剥がし強さ(ピール強度)]
積層板の導体層に、幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれ、この一端を剥がしてつかみ具(株式会社ティー・エス・イー、オートコム型試験機 AC-50C-SL)で掴み、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重を測定した。
【0072】
[粗化後の表面粗度]
非接触型表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ社製WYKO NT3300)を用いて、VSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして得られる数値により算術平均粗さ(Ra)の値を求めた。また10点の平均粗さを求めることにより測定した。
【0073】
[線膨張係数の測定]
実施例1?3および比較例1?4で得られた接着フィルムを190℃で90分熱硬化させてシート状の硬化物を得た。その硬化物を、幅約5mm、長さ約15mmの試験片に切断し、(株)リガク製熱機械分析装置(Thermo Plus TMA8310)を使用して、引張加重法で熱機械分析を行った。試験片を前記装置に装着後、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定における25℃から150℃までの平均線熱膨張率を算出した。
【0074】
結果を表1に示す。
【0075】
【表1】



カ 「【産業上の利用可能性】
【0077】
エポキシ樹脂組成物の硬化物表面を粗化処理した粗化面の粗度が比較的小さいにもかかわらず、該粗化面がめっき導体に対して高い密着力を示し、かつ線膨張率が小さい絶縁層を達成し得るエポキシ樹脂組成物、接着フィルム、プリプレグ、多層プリント配線板を提供できるようになった。更にこれらを搭載した、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ、テレビ、等の電気製品や、自動二輪車、自動車、電車、船舶、航空機、等の乗物も提供できるようになった。」

(2)甲2の記載事項
本件特許の出願前に頒布された甲2には、以下の事項が記載されている。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアリーレンオキシ構造を主骨格としており、該構造の芳香核に、アリールカルボニルオキシ基を有する活性エステル樹脂(A)、及びエポキシ樹脂(B)を必須成分とすることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記活性エステル樹脂(A)が、ポリアリーレンオキシ構造を繰り返し単位とする主骨格を有し、該構造の芳香核に、アリールカルボニルオキシ基を有しており、かつ、その軟化点が60?170℃の範囲にあるものである請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記活性エステル樹脂(A)がポリアリーレンオキシ構造を主骨格としており、該構造の芳香核に、アリールカルボニルオキシ基及びフェノール性水酸基からなる群から選択される官能基を有しており、かつ、該官能基中のアリールカルボニルオキシ基の存在割合が40%以上となるものである請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記活性エステル樹脂(A)が、ナフチレンオキシ構造を前記ポリアリーレンオキシ構造として有するものである請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。」

イ 「【0001】
本発明は、その硬化物において優れた難燃性、耐熱性、低誘電正接を発現し、かつ、溶剤溶解性に優れた性能を有する熱硬化性樹脂組成物、その硬化物、及びこれに用いる活性エステル樹脂、並びに、該熱硬化性樹脂組成物半導体封止材料、プリプレグ、回路基板、及びビルドアップフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂及びその硬化剤を必須成分とするエポキシ樹脂組成物は、その硬化物において優れた耐熱性と絶縁性を発現することから、半導体や多層プリント基板などの電子部品用途において広く用いられている。
この電子部品用途のなかでも多層プリント基板絶縁材料の技術分野では、近年、各種電子機器における信号の高速化、高周波数化が進んでいる。しかしながら、信号の高速化、高周波数化に伴って、十分に低い誘電率を維持しつつ低い誘電正接を得ることが困難となりつつある。
【0003】
そこで、高速化、高周波数化された信号に対しても、十分に低い誘電率を維持しつつ十分に低い誘電正接を発現する硬化体を得ることが可能な熱硬化性樹脂組成物の提供が望まれている。
・・・
【0004】
然し乍ら、電子部品における高周波化や小型化の傾向から多層プリント基板絶縁材料にも極めて高度な耐熱性が求められているところ、前記したフェノールノボラック樹脂中のフェノール性水酸基をアリールエステル化して得られる活性エステル化合物は、アリールエステル構造の導入により硬化物の架橋密度が低下してしまい、硬化物の耐熱性が十分でないものであった。このように耐熱性と低誘電率・低誘電正接とは両立が困難なものであった。
【0005】
一方、前記した半導体や多層プリント基板の分野に用いられる絶縁材料は、ダイオキシン問題に代表とする環境問題への対応が不可欠となっており、近年、添加系のハロゲン系難燃剤を用いることなく、樹脂自体に難燃効果を持たせた所謂ハロゲンフリーの難燃システムの要求が高まっている。ところが、前記したフェノールノボラック樹脂中のフェノール性水酸基をアリールエステル化して得られる活性エステル化合物は、誘電特性は良好になるものの、その分子構造内に燃焼しやすいペンダント状の芳香族炭化水素基が多く含まれることになる為、硬化物の難燃性に劣り、前記したハロゲンフリーの難燃システムを構築することが出来ないものであった。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、その硬化物において低誘電率、低誘電正接でありながら、優れた耐熱性と難燃性とを兼備させた熱硬化性樹脂組成物、その硬化物、これらの性能を発現させる活性エステル樹脂、前記組成物から得られる半導体封止材料、プリプレグ、回路基板、及びビルドアップフィルムを提供することにある。」

ウ 「【0012】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の熱硬化性樹脂組成物で用いる活性エステル樹脂(A)は、ポリアリーレンオキシ構造を主骨格としており、該構造の芳香核に、アリールカルボニルオキシ基を有するものである。本発明では、アリールカルボニルオキシ基の導入により、硬化物に低誘電率、低誘電正接といった優れた誘電特性を与えることができると共に、分子主骨格にポリアリーレンオキシ構造を有することから、優れた耐熱性及び難燃性を兼備させることができる。本来、アリールカルボニルオキシ基を樹脂構造中に有する活性エステル樹脂は、該アリールカルボニルオキシ基に起因して耐熱性や難燃性が低下するところ、本発明ではこのような耐熱性や難燃性の低下が殆ど認められないのは、特筆すべき点である。
・・・
【0015】
ここで、活性エステル樹脂(A)の主骨格を構成するポリアリーレンオキサイド構造は、具体的には、ポリナフチレンオキサイド構造、及び炭素原子数1?4のアルキル基で置換されたポリナフチレンオキサイド構造などのナフチレンオキサイド系構造、並びに、ポリフェニレンオキサイド構造、及び炭素原子数1?4のアルキル基で置換されたポリフェニレンオキサイド構造などのフェニレンオキサイド系構造が挙げられる。これらのなかでも特に本発明ではナフチレンオキサイド系構造を有するものが、難燃効果が一層顕著なものとなる他、誘電正接も低くなる点から好ましい。更に、難燃効果の点から中でもポリナフチレンオキサイド構造或いはメチル基含有ポリナフチレンオキシサイド構造が好ましく、特にポリナフチレンオキサイド構造であることが好ましい。」

エ 「【0088】
本発明の熱硬化性樹脂組成物における前記活性エステル樹脂(A)、及びエポキシ樹脂(B)の配合量は、硬化性及び硬化物の諸物性が良好なものとなる点から前記活性エステル樹脂(A)中のエステルを構成するカルボニルオキシ基およびフェノール性水酸基の両者を官能基とした1当量に対して、前記エポキシ樹脂(B)中のエポキシ基が0.8?1.2当量となる割合であることが好ましい。」

オ 「実施例】
【0141】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。尚、150℃における溶融粘度及び軟化点測定、GPC測定、13C-NMR、FD-MSスペクトルは以下の条件にて測定した。
【0142】
1)150℃における溶融粘度:ASTM D4287に準拠した。
2)軟化点測定法:JIS K7234に準拠した。
3)GPC:
・装置:東ソー株式会社製「HLC-8220 GPC」により下記の条件下に測定した。
カラム:東ソー株式会社製 TSK-GEL G2000HXL+G2000HXL
+G3000HXL+G4000HXL
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1ml/min
検出器:RI
4)13C-NMR:日本電子株式会社製「NMR GSX270」により測定した。
5)FD-MS :日本電子株式会社製 二重収束型質量分析装置「AX505H(FD505H)」により測定した。
【0143】
合成例1
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、2,7-ジヒドロキシナフタレンを160g(1.0モル)、ベンジルアルコール25g(0.25モル)、キシレン160g、パラトルエンスルホン酸・1水和物2gを仕込み、室温下、窒素を吹き込みながら撹拌した。その後、140℃に昇温し、生成する水を系外に留去しながら4時間攪拌した(同時に留去するキシレンは系内に戻す)。その後、150℃に昇温し、生成する水とキシレンを系外に留去しながら3時間攪拌した。反応終了後、20%水酸化ナトリウム水溶液2gを添加して中和した後、水分およびキシレンを減圧下除去してフェノール性水酸基含有樹脂(A-1)を178g得た。得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A-1)は褐色固体であり、水酸基当量は178グラム/当量、軟化点は130℃であった。得られたフェノール性水酸基含有樹脂のGPCチャートを図1に示す。
【0144】
フェノール性水酸基含有樹脂(A-1)のMS(図2)及び13C-NMRによる構造解析を行うと共に、更に、トリメチルシリル化法によるMS(図3)の測定に用いるため、フェノール性水酸基含有樹脂(A-1)をトリメチルシリル化し、次いで、MSより以下のa.?f.のピークを確認した。得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A-1)のFD-MSのスペクトルを図2に、トリメチルシリル化法によるFD-MSのスペクトルを図3に示した。
【0145】
a.2,7-ジヒドロキシナフタレン(Mw:160)にベンジル基(分子量Mw:90)が1個付加したピーク(M+=250)、更にベンジル基(分子量Mw:90)が2個付加したピーク(M+=340)。
従って2,7-ジヒドロキシナフタレン1モルにベンジル基が1モル結合した構造の化合物および2モル結合した構造の化合物であることを確認した。
【0146】
b.2,7-ジヒドロキシナフタレン2量体のピーク(M+=302)、更に、これにトリメチルシリル基(分子量Mw:72)が2個付加したピーク(M+=446)。
従って、b.は、2,7-ジヒドロキシナフタレン2量体エーテル化合物であることを確認した。
【0147】
c.2,7-ジヒドロキシナフタレン3量体のピーク(M+=444)、更に、これにトリメチルシリル基(分子量Mw:72)が2個付加したピーク(M+=588)及び3個付加したピーク(M+=660)。
従って、c.は、2,7-ジヒドロキシナフタレン3量体エーテル化合物および2,7-ジヒドロキシナフタレン2量体エーテルの1モルに2,7-ジヒドロキシナフタレンが1モル核脱水して生成した構造の3量体化合物であることを確認した。
【0148】
d.2,7-ジヒドロキシナフタレン4量体のピーク(M+=586)、更に、これにトリメチルシリル基(分子量Mw:72)が2個付加したピーク(M+=730)及び3個付加したピーク(M+=802)。
従って、d.は、2,7-ジヒドロキシナフタレン4量体エーテル化合物および2,7-ジヒドロキシナフタレン3量体エーテルの1モルに2,7-ジヒドロキシナフタレンが1モル核脱水して生成した構造の4量体化合物であることを確認した。
【0149】
e .2,7-ジヒドロキシナフタレン5量体のピーク(M+=729)、更に、これにトリメチルシリル基(分子量Mw:72)が2個付加したピーク(M+=873)及び3個付加したピーク(M+=944)及び4個付加したピーク(M+=1016)。
従って、e.は、2,7-ジヒドロキシナフタレン5量体エーテル化合物および2,7-ジヒドロキシナフタレン4量体エーテルの1モルに2,7-ジヒドロキシナフタレンが1モル核脱水して生成した構造の5量体化合物および2,7-ジヒドロキシナフタレン3量体エーテルの1モルに2,7-ジヒドロキシナフタレンが2モル核脱水して生成した構造の5量体化合物であることを確認した。
【0150】
f .b?eのそれぞれにベンジル基(分子量Mw:90)が1個付加したピーク、更にベンジル基(分子量Mw:90)が2個付加したピーク。
従ってb?eのそれぞれに1モルにベンジル基が1モル結合した構造の化合物および2モル結合した構造の化合物であることを確認した。
【0151】
合成例2
ベンジルアルコール54g(0.5モル)に変えた以外は合成例1と同様に反応し、フェノール性水酸基含有樹脂(A-2)を207g得た。このフェノール性水酸基含有樹脂(A-2)は褐色固体であり、水酸基当量は166グラム/当量、軟化点は110℃であった。
【0152】
合成例3
反応温度を150℃3時間とし、ベンジルアルコール108g(1.0モル)に変え、キシレン160gを添加しなかった以外は合成例1と同様に反応を行い、フェノール性水酸基含有樹脂(A-3)を240g得た。このフェノール性水酸基含有樹脂(A-3)は褐色固体であり、水酸基当量は160グラム/当量、軟化点は77℃であった。
【0153】
合成例4
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、2,7-ジヒドロキシナフタレン160g(1.0モル)を仕込み、窒素を吹き込みつつ攪拌しながら200℃に加熱し、溶融させた。溶融後、48%水酸化カリウム水溶液23g(0.2モル)を添加した。その後、分留管を用いて48%水酸化カリウム水溶液由来の水および生成する水を抜き出した後、更に5時間反応させた。反応終了後、更にメチルイソブチルケトン1000gを加え、溶解後、分液ロートに移した。次いで洗浄水が中性を示すまで水洗後、有機層から溶媒を加熱減圧下に除去し、フェノール性水酸基含有樹脂(A-4)150gを得た。得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A-4)は褐色固体であり、水酸基当量は120g/eq、融点は179℃であった。図4のGPCチャートより未反応の原料(2,7-ジヒドロキシナフタレン)の残存率はGPCによる面積比で64%であることを確認した。
図5に示すFT-IRチャートの結果より、原料(2,7-ジヒドロキシナフタレン)と比較して芳香族エーテル由来の吸収(1250cm-1)が新たに生成したことが確認され、水酸基同士が脱水エーテル化反応したことが推定された。
図6に示すMSチャートの結果より、2,7-ジヒドキシナフタレンが3分子間脱水して生成した2,7-ジヒドロキシナフタレン3量体構造(Mw:444)および5分子間脱水して生成した2,7-ジヒドロキシナフタレン5量体構造(Mw:728)を確認し
た。
【0154】
更に図7に示すトリメチルシリル化法によるMSより2,7-ジヒドロキシナフタレン3量構造(Mw:444)に、トリメチルシリル基分の分子量(Mw:72)が2個(M+=588)、3個(M+=660)付いたピークを確認した。
更に2,7-ジヒドキシナフタレンが5分子間脱水して生成した2,7-ジヒドロキシナフタレン5量構造(Mw:728)に、トリメチルシリル基分の分子量(Mw:72)が3個(M+=945)、4個(M+=1018)付いたピークを確認した。
以上より、フェノール性水酸基含有樹脂(A-4)は、原料の2,7-ジヒドロキシナフタレンの含有率がGPCによる面積比で全体の64%であり、その他は、下記構造式
【0155】
【化17】

で表される2,7-ジヒドロキシナフタレン3量体エーテル化合物、
下記構造式
【0156】
【化18】

で表される2,7-ジヒドロキシナフタレン2量体エーテルに2,7-ジヒドロキシナフタレンが1分子核脱水して生成した3量体化合物、及び下記構造式
【0157】
【化19】

で表される2,7-ジヒドロキシナフタレン3量体エーテルに2,7-ジヒドロキシナフタレンが2分子核脱水して生成した5量体化合物となっていることが解析された。
【0158】
実施例1
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコにフェノール性水酸基含有樹脂(A-1)178g(フェノール性水酸基の量:1モル)とメチルイソブチルケトン(以下、「MIBK」と略記する。]816gを仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。次いで、塩化ベンゾイル126.5g(0.90モル)を仕込みその後、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液189.0gを3時間かけて滴下した。次いでこの条件下で1.0時間撹拌を続けた。反応終了後、静置分液し、水層を取り除いた。更に反応物が溶解しているMIBK相に水を投入して約15分間撹拌混合し、静置分液して水層を取り除いた。水層のPHが7になるまでこの操作を繰り返した。その後、デカンタ脱水で水分を除去し、続いて減圧脱水でMIBKを除去し、活性エステル樹脂(B-1)を得た。この活性エステル樹脂(B-1)の官能基当量は仕込み比より272グラム/当量、軟化点は125℃であった。またフェノール性水酸基に対するフェニルカルボニルオキシ化率は90%であった。得られた活性エステル樹脂(B-1)のGPCチャートを図8に示す。MSスペクトル(図9)からフェノール性水酸基含有樹脂(A-1)に含まれるそれぞれの化合物に塩化ベンゾイルが脱塩酸を伴い反応する化合物のピークを活性エステル樹脂(B-1)に確認した。13C-NMR(図10)の165ppmピークよりエステル基由来のカルボニルの炭素の生成を確認した。
【0159】
実施例2
フェノール性水酸基含有樹脂(A-2)166g(フェノール性水酸基の量:1モル)に変えた以外は実施例1と同様に反応し、活性エステル樹脂(B-2)を得た。この活性エステル樹脂(B-2)の官能基当量は仕込み比より260グラム/当量、軟化点は105℃、フェノール性水酸基に対するフェニルカルボニルオキシ化率は90%であった。
【0160】
実施例3
フェノール性水酸基含有樹脂(A-3)160g(フェノール性水酸基の量:1モル)に変えた以外は実施例1と同様に反応し、活性エステル樹脂(B-3)を得た。この活性エステル樹脂(B-3)の官能基当量は仕込み比より254グラム/当量、軟化点は70℃、フェノール性水酸基に対するフェニルカルボニルオキシ化率は90%であった。
【0161】
実施例4
フェノール性水酸基含有樹脂(A-4)120g(フェノール性水酸基の量:1モル)に変えた以外は実施例1と同様に反応し、活性エステル樹脂(B-4)を得た。この活性エステル樹脂(B-4)の官能基当量は仕込み比より214グラム/当量、軟化点は150℃、フェノール性水酸基に対するフェニルカルボニルオキシ化率は90%であった。
【0162】
実施例5
塩化ベンゾイル70.3g(0.50モル)に変えた以外は実施例1と同様に反応し、活性エステル樹脂(B-5)を得た。この活性エステル樹脂(B-5)の官能基当量は仕込み比より230グラム/当量、軟化点は128℃、フェノール性水酸基に対するフェニルカルボニルオキシ化率は50%であった。
【0163】
実施例6
塩化ベンゾイル140.5g(1.00モル)に変えた以外は実施例1と同様に反応し、活性エステル樹脂(B-6)を得た。この活性エステル樹脂(B-6)の官能基当量は仕込み比より282グラム/当量、軟化点は125℃、フェノール性水酸基に対するフェニルカルボニルオキシ化率は100%であった。得られた活性エステル樹脂(B-6)のGPCチャートを図11に示す。
【0164】
比較例1
フェノール性水酸基含有樹脂(A-1)をフェノールノボラック樹脂(DIC(株)製「TD-2131」)105gに変えた以外は実施例1と同様に反応し、活性エステル樹脂(A-3)を188g得た。この活性エステル樹脂(B-7)の官能基当量は仕込み比より199グラム/当量であった。
【0165】
実施例7?12及び比較例2?5(熱硬化性樹脂組成物の調整及び物性評価)
下記の表1記載の配合に従い組成物を調整した。ここで、エポキシ樹脂は、DIC(株)製「N-770」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量:183g/eq)を用い、硬化剤として活性エスエル樹脂(B-1)?(B-7)、並びにフェノール性水酸基含有樹脂(A-1)及び(A-4)、DIC(株)製「TD-2131」(フェノールノボラック樹脂、水酸基当量:105g/eq.)を用いた。また、各組成物を調整するにあたり、硬化触媒としてジメチルアミノピリジン0.5phrを加え、最終的に各組成物の不揮発分(N.V.)が58質量%となるようにメチルエチルケトンを配合した。
次いで、下記の如き条件で硬化させて積層板を試作し、下記の方法で耐熱性、誘電特性及び難燃性を評価した。結果を表1に示す。
<積層板作製条件>
基材:日東紡績株式会社製 ガラスクロス「#2116」(210×280mm)
プライ数:6 プリプレグ化条件:160℃
硬化条件:200℃、40kg/cm2で1.5時間、成型後板厚:0.8mm
【0166】
<耐熱性(ガラス転移温度)>
粘弾性測定装置(DMA:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置RSAII、レクタンギュラーテンション法;周波数1Hz、昇温速度3℃/min)を用いて、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度をガラス転移温度として評価した。
<誘電率及び誘電正接の測定>
JIS-C-6481に準拠し、アジレント・テクノロジー株式会社製インピーダンス・マテリアル・アナライザ「HP4291B」により、絶乾後23℃、湿度50%の室内に24時間保管した後の試験片の1GHzでの誘電率および誘電正接を測定した。
<難燃性>
UL-94試験法に準拠し、厚さ0.8mmの試験片5本用いて燃焼試験を行った。
<溶剤溶解性試験>
配合した不揮発分(N.V.)が58質量%のメチルエチルケトン溶液を0℃で60日間保管後の外観で判定。
【0167】
【表1】

【0168】
表1の脚注:
B-1:実施例1で得られた活性エステル樹脂(B-1)
B-2:実施例2で得られた活性エステル樹脂(B-2)
B-3:実施例3で得られた活性エステル樹脂(B-3)
B-4:実施例4で得られた活性エステル樹脂(B-4)
B-5:実施例5で得られた活性エステル樹脂(B-5)
B-6:実施例6で得られた活性エステル樹脂(B-6)
B-7:比較例1で得られた活性エステル樹脂(B-7)
N-770:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(DIC(株)製「N-770」、エポキシ当量:183g/eq.)
TD-2131:フェノールノボラック樹脂(DIC(株)製「TD-2131」水酸基当量:105g/eq.)
A-1:合成例1で得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A-1)
A-4:合成例4で得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A-4)
*1:1回の接炎における最大燃焼時間(秒)
*2:試験片5本の合計燃焼時間(秒)
なお、「自消」で示した評価結果は、V-1に要求される難燃性(ΣF≦250秒且つFmax≦30秒)は満たさないが、燃焼(炎のクランプ到達)には至らず消火したレベルである。」

(3)甲1に記載された発明
甲1の上記(1)ア(請求項1を引用する請求項4を引用する請求項5を更に引用する請求項6)の記載からみて、甲1には、以下の発明が記載されている。
「(A)エポキシ樹脂、(B)活性エステル化合物、及び(C)脂環式構造含有フェノキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物であって、
エポキシ樹脂組成物の不揮発成分を100重量%とした場合、成分(A)の含有量が10?50重量%、成分(C)の含有量が1?20重量%であり、エポキシ樹脂組成物中に存在するエポキシ基とエポキシ硬化剤の反応基の比率が1:0.4?1:1.1であり、
さらに(D)無機充填材を含有し、エポキシ樹脂組成物の不揮発成分を100重量%とした場合、(D)無機充填材の含有量が10?70重量%であるエポキシ樹脂組成物。」(以下、「甲1発明」という。)

(4)本件発明1について
甲1発明の「(A)エポキシ樹脂」、「(B)活性エステル化合物」、「(C)脂環式構造含有フェノキシ」及び「(D)無機充填材」は、それぞれ、本件発明1の「エポキシ樹脂(A)」、「活性エステル化合物(B)」、「フェノキシ樹脂」及び「無機充填材」に相当する。そして、本件発明1の「エポキシ樹脂(A)」と甲1発明の「(A)エポキシ樹脂」の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の10?50質量%で重複し、本件発明1の「無機充填材」と甲1発明の「(D)無機充填材」の含有量は同じく30?70質量%で重複し、本件発明1の「フェノキシ樹脂」と甲1発明の「(C)脂環式構造含有フェノキシ樹脂」の含有量は同じく1?10質量%で重複する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「少なくともエポキシ樹脂(A)と、活性エステル化合物(B)と、無機充填材と、フェノキシ樹脂と、を含有する樹脂組成物であり、
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、無機充填材の含有量が30?70質量%であり、
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、フェノキシ樹脂の含有量が1?10質量%であり、
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、エポキシ樹脂(A)の含有量が10?50質量%である、エポキシ樹脂組成物。」
である点で一致し、少なくとも次の点で相違する。

[相違点]
活性エステル化合物に関して、本件発明1では、「樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の前記ナフタレン構造を含む活性エステル化合物(B)の含有量が0.1?30質量%であり」、「前記ナフタレン構造を含む活性エステル化合物(B)が、ポリナフチレンオキサイド構造とアリールカルボニルオキシ基を有する活性エステル化合物である」のに対して、甲1発明では、「(B)活性エステル化合物」である点。

上記相違点について検討する。
まず、甲1発明は多層プリント配線板の絶縁層形成に好適なエポキシ樹脂組成物であり(上記1(1)イ)、上記多層プリント配線板はコンピューターや携帯電話等の電気機器や乗物に搭載されるものである(上記1(1)カ)。このような用途では、ビルドアップ層の複層化、配線の微細化及び高密度化と併せて、高周波信号を使って大量のデータを高速で処理することが行われており、信号の高周波化に伴う伝送損失を抑制するために誘電正接が低い絶縁層が求められること(必要があれば、甲2の上記1(1)ウ、特開2011-132507号公報の段落0002、特開2010-285594号公報の段落0002、特開2007-51226号公報の段落0002を参照。)は、本願出願時に自明な課題又は当業者が容易に想定し得る課題であったと解される。
そして、甲2の上記1(1)ウによると、ポリアリーレンオキシ構造を主骨格とし、該構造の芳香核に、アリールカルボニルオキシ基を有する活性エステル化合物を用いることにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化物に低誘電率及び低誘電正接の誘電特性を与えることが理解できる。
そうすると、甲1発明のエポキシ樹脂組成物において、甲2に記載された活性エステル化合物を用いて、その誘電正接を低くするための一応の動機付けがあったと解される。

次に、本件発明1の効果について検討すると、本件発明1は「前記熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、低誘電正接を示し、めっき層との密着性に優れた粗化面を形成することができ、多層プリント配線板のビルドアップ層の高複層化、高密度化に対応できる特性をバランスよく備えた絶縁層となる硬化物層を形成できる」(段落0014)という効果を奏するものである。そして、その具体的な指標として、「絶縁層の算術平均粗さRaが10?200nmであり、二乗平均平方根粗さRqが15?250nmであり、前記絶縁層と導体層のピール強度が0.35kgf/cm(3.43N/cm)以上であ」り(請求項9)、絶縁層の誘電正接が0.009以下である(段落0058)ことが、本件特許の明細書に例示されている(実施例の表1も参照)。
一方、甲2には、上記活性エステル樹脂の添加による絶縁層の算術平均粗さRa及び二乗平均平方根粗さRq、並びに絶縁層と導体層のピール強度への影響について一切記載されていない。また、上記活性エステル樹脂の添加により、絶縁層の算術平均粗さRaが10?200nmであり、二乗平均平方根粗さRqが15?250nmであり、前記絶縁層と導体層のピール強度が0.35kgf/cm(3.43N/cm)以上となること、あるいは、上記活性エステル樹脂の添加により、絶縁層の表面粗さ及び絶縁層と導体層のピール強度に影響を与えないことが、本願出願時の技術常識であったことを示す証拠も見当たらない。そうすると、低誘電正接を示し、めっき層との密着性に優れ、微細粗化面を形成できるという、多層プリント配線板のビルドアップ層の高複層化及び高密度化に対応できる特性をバランスよく備える、本件発明1の上記効果は、甲1及び甲2の記載から当業者が予測し得たということはできない。

また、熱硬化性エポキシ樹脂組成物における活性エステル化合物(B)の含有量に関して、本件発明1では0.1?30重量%であるが、甲第2号証には、活性エステル樹脂の含有量を熱硬化性樹脂組成物の0.1?30重量%とすることは記載されておらず、「前記活性エステル樹脂(A)中の該官能基の全ての含有量が、官能基当量200?300g/eqの範囲となる割合である」こと(上記(2)アの請求項7)、「前記活性エステル樹脂(A)中のエステルを構成するカルボニルオキシ基およびフェノール性水酸基の両者を官能基とした1当量に対して、前記エポキシ樹脂(B)中のエポキシ基が0.8?1.2当量となる割合であることが好ましい」(上記(2)エ)こと、及び、活性エステル樹脂の含有量を53.9?60.6質量%とした実施例が記載されているのみである。他方、甲1には、エポキシ樹脂組成物中の活性エステル化合物の含有量を、21質量%(実施例1の配合割合から算出した。実施例2?4についても同じ。)、12.5質量%(実施例2及び3)、及び22.4質量%(実施例4)とすること、エポキシ樹脂組成物に対する活性エステル化合物(B)を含むエポキシ硬化剤の量を10?100%とすること(上記(1)エ)は記載されているが、甲1発明において、甲第2号証の活性エステル樹脂(A)を0.1?30重量%の含有量で配合することを動機付ける記載は見当たらない。
そうすると、上記相違点は実質的な相違点であり、本件発明1は、甲1発明並びに甲1及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)本件発明2ないし11についての判断
本件発明2ないし11は、本件発明1に対し、さらに請求項2ないし11に記載された技術的事項を追加したものである。
そうすると、本件発明1で特定される組成物をその発明特定事項として含む本件発明2ないし11についても、上記1(4)で記載したのと同じ理由によって、甲1発明並びに甲1及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものといえない。

(6)小結
以上のとおりであるから、取消理由(2)によっては、請求項1ないし11に係る本件特許を取り消すことはできない。

第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
以下に述べるように、取消理由通知に採用しなかった特許異議の申立ての取消理由(1)(サポート要件)によっても、本件発明1ないし11に係る特許を取り消すことはできない。

1.取消理由(1)の概要
申立人が主張する理由は、要するに、本件発明の熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、活性エステル化合物が、「ポリナフチレンオキサイド構造とアリールカルボニルオキシ基を有する」こと(要件1)、及び、「樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の前記ナフタレン構造を含む活性エステル化合物(B)の含有量が0.1?30質量%であ」ること(要件2)を発明特定事項とし、実施例3及び4は要件1及び要件2を満たすが、実施例3の誘電正接は0.009であって比較例1と同じであり、実施例4の絶縁層の算術平均粗さRa及び二乗平方根粗さRqはそれぞれ120nm及び150nmであって比較例1よりも大きいから、本件発明1が要件1及び要件2を備えることによって本件発明の課題を解決するとはいえず、本件発明1?11はサポート要件を満たさないという理由(以下、「取消理由(1a)」という。)、及び、実施例1?4の熱硬化性エポキシ樹脂組成物(活性エステル化合物として「EXB9411-65BK」を使用)が、比較例1の熱硬化性エポキシ樹脂組成物(活性エステル化合物として「HPC8000-65T」を使用)に比べて、誘電正接の数値が小さく、粗化処理後のRa及びRqの数値が小さく、ピール強度の数値が高い絶縁層を形成することが把握できるとしても、「EXB9411-65BK」と「HPC8000-65T」とはポリナフチレンオキサイド構造の有無以外でも相違し、実施例1?4の効果は「EXB9411-65BK」の使用によるものにすぎないから、本件発明1ないし11はサポート要件を満たさないという理由(以下、「取消理由(1b)」という。)である(申立書の12?17頁、項目イ)。

2.当審の判断
まず、特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(平成17年(行ケ)第10042号、「偏光フィルムの製造法」事件)。

取消理由(1a)について、本件発明1が解決しようとする課題は、「低誘電正接を示すとともに、めっき層との密着性、エッチング性に優れた微細凹凸を有する粗化面を形成することができるという多層プリント配線板のビルドアップ層の高複層化、高密度化に対応できる特性をバランスよく備えた絶縁層を形成できる熱硬化性エポキシ樹脂組成物」(段落0009)を提供することであると解される。そして、その評価の具体例として、「絶縁層の算術平均粗さRaが10?200nmであり、二乗平均平方根粗さRqが15?250nmであり、前記絶縁層と導体層のピール強度が0.35kgf/cm(3.43N/cm)以上であ」り(請求項9)、絶縁層の誘電正接が0.009以下である(段落0058)ことが、本件特許の明細書(実施例の表1も参照)の記載から理解することができる。
そうすると、本件発明1ないし11が上記課題を解決するものであり、実施例3及び4のある特性が比較例と同じか劣ることを根拠にサポート要件を満たさないということはできず、申立人が主張する取消理由(1a)によって取り消すことはできない。

次に、取消理由(1b)については、本件発明1は、「ナフタレン構造を含む活性エステル化合物(B)が、ポリナフチレンオキサイド構造とアリールカルボニルオキシ基を有する活性エステル化合物である」ことを特定事項の一つとするものであり、申立人は、本件発明1の活性エステル化合物が上記要件1を満たすのみでは上記課題を解決するか否かは不明である旨の主張の根拠として、上記要件1及び2を満たし、上記「EXB9411-65BK」以外の活性エステル化合物を用いる場合に、上記課題を解決できない証拠を提示していないし、そのような証拠や技術常識などの技術的根拠は見当たらない。そして、上述のように、本件発明1が上記課題を解決するものであることは、実施例1ないし4から確認することができる。
そうすると、本件発明1ないし11に係る特許はサポート要件を満たすものであり、申立人が主張する取消理由(1b)によっても取り消すことはできない。

したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明から、当業者は、本件発明1ないし11が解決しようとする課題が、本件発明1ないし11の構成により解決できることを理解できるのであるから、本件発明1ないし11は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものということができ、本件特許はサポート要件を満たしている。

3.まとめ
申立人の本件特許異議の申立てにおける取消理由(1)は理由がなく、取消理由(1)によって本件発明1ないし11に係る特許を取り消すことはできない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1ないし11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1ないし11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-10-10 
出願番号 特願2012-193114(P2012-193114)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (C08G)
P 1 651・ 121- Y (C08G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中村 英司  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 近野 光知
橋本 栄和
登録日 2017-09-15 
登録番号 特許第6205692号(P6205692)
権利者 味の素株式会社
発明の名称 熱硬化性エポキシ樹脂組成物、絶縁層形成用接着フィルム及び多層プリント配線板  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  
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