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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C09K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09K
審判 全部申し立て 2項進歩性  C09K
管理番号 1344880
異議申立番号 異議2018-700628  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-11-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-07-31 
確定日 2018-10-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第6268650号発明「土壌改良材およびそれを含む培土」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6268650号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6268650号の請求項1?10に係る特許についての出願は、2013年11月6日〔優先権主張2012年11月8日(JP)日本国〕を国際出願日として特許出願され、平成30年1月12日に特許権の設定登録がされ、平成30年1月31日にその特許公報が発行され、その請求項1?10に係る発明の特許に対し、平成30年7月31日に高橋美穂(以下「特許異議申立人」という。)により、その請求項1?10に係る発明の特許に対し、特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第6268650号の請求項1?10に係る発明(以下「本1発明」?「本10発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】孔径が10?1000nmのナノメートルオーダーの気孔、1μm超1000μm以下のマイクロメートルオーダーの気孔及び1mm超のミリメートルオーダーの気孔を有する多孔質セラミックスを構成素材として含有する粒状物を含み、
前記粒状物の粒子径が1mm超、1cm以下であり、
前記粒状物の保水率が20%以上であり、
前記粒状物はpF1.5の遠心処理をした際の三相分布における気相が30%以上であり、
前記粒状物はpF値2.7以下の範囲における水分量が前記粒状物の全体体積に対して5体積%以上である土壌改良材。
【請求項2】前記粒状物の粒子径が1mm超、5mm以下であることを特徴とする請求項1記載の土壌改良材。
【請求項3】前記粒状物の保水率が15%以上であることを特徴とする請求項1または2記載の土壌改良材。
【請求項4】前記粒状物の飽和透水係数が0.1cm/s以上である請求項1から3のいずれか1項に記載の土壌改良材。
【請求項5】前記気孔が相互に連通している請求項1から4のいずれか1項に記載の土壌改良材。
【請求項6】請求項1?5のいずれかの土壌改良材を含む培土。
【請求項7】土壌改良材に用いる粒状物の製造方法であって、前記粒状物は多孔質セラミックスを構成素材として含有し、
有機汚泥及び珪藻土からなる群から選択される少なくとも1種と、発泡剤と、粘土とを含む混合物を焼成して前記多孔質セラミックスとする工程を含み、
前記多孔質セラミックスは、孔径が10?1000nmのナノメートルオーダーの気孔、1μm超1000μm以下のマイクロメートルオーダーの気孔及び1mm超のミリメートルオーダーの気孔を有し、
前記粒状物の粒子径が1mm超、1cm以下であり、
前記粒状物の保水率が20%以上であり、
前記粒状物はpF1.5の遠心処理をした際の三相分布における気相が30%以上であり、
前記粒状物はpF値2.7以下の範囲における水分量が前記粒状物の全体体積に対して5体積%以上である、粒状物の製造方法。
【請求項8】前記粒状物は、粒子径が1mm超、5mm以下である請求項7記載の粒状物の製造方法。
【請求項9】前記発泡剤が、鋳鉄スラグである請求項7又は8に記載の粒状物の製造方法。
【請求項10】前記混合物を焼成して前記多孔質セラミックスとする工程の後に、
前記多孔質セラミックスを破砕して、前記多孔質セラミックスの粒状物を得る破砕工程と、
前記多孔質セラミックスの粒状物を前記粒子径となるよう篩分けし、前記土壌改良材に用いる粒状物を得る工程とをさらに含む、請求項7から9のいずれか1項に記載の粒状物の製造方法。」

第3 申立理由の概要
特許異議申立人は、下記(4)の甲第1号証?甲第6号証(以下、甲各号証を「甲1」のように略記する場合がある。)を提出し、次の(1)?(3)について主張している。

(1)申立ての理由1
本件特許発明1?10(特許異議申立書の第15頁第15行参照)は、甲1に記載された発明(甲1発明)と同一であるから、本件特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきである。

(2)申立ての理由2
本件特許発明1?10は、甲1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきである。

(3)申立ての理由3
本件特許請求の範囲の記載には不備があり、本件特許発明1?5の特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきである。

(4)証拠方法
甲第1号証:国際公開第2012/036218号
甲第2号証:特開2002-145679号公報
甲第3号証:新版 図解 土壌の基礎知識、社団法人農山漁村文化協会、平成25年2月15日、第1刷、p.42-53
甲第4号証:特開2007-82411号公報
甲第5号証:新土壌学、株式会社朝倉書店、1995年1月20日、第14刷、p112-114,122-123
甲第6号証:特開2008-178387号公報

第4 当審の判断
1.理由1及び2について
(1)甲各号証の記載事項
ア.甲第1号証(国際公開第2012/036218号)
甲第1号証には、次の記載がある。
摘記1a:請求項1
「[請求項1]直径3nm?360μmの細孔の容積の合計値である細孔容積が0.2cm^(3)/g以上であり、前記細孔容積における直径0.01μm以上1μm未満の細孔の容積の合計値である微細孔容積の割合が30体積%以上であることを特徴とする多孔質セラミックス焼結体。」

摘記1b:段落0004及び0033?0034
「[0004]…緑化基盤材料は、地被植物等を生育させるための土壌の下に敷設されるものであり、緑化基盤材料には、水が浸透しやすく、かつ適度な保水性を有することが必要とされる。このような緑化基盤材料は、建物の屋上等に敷設され、その上に植物を生育させることで、建物の冷却効果を向上できる。…
[0033](製造方法)
板状セラミックス1の製造方法は、原料を混合して混合物を得る混合工程と、前記混合物を成形し成形体を得る成形工程と、前記成形体を焼成する焼成工程とを有する。
[0034]<混合工程>
混合工程は、珪藻土、粘土類、有機汚泥及びスラグを混合し、混合物を得る工程である。このような配合とすることで珪藻土に形成された細孔と、有機汚泥が焼結時に減量して形成された細孔とを有する板状セラミックスを得られる。」

摘記1c:段落0069、0073及び0079
「[0069]本実施形態の板状セラミックスは、…特に緑化基盤材料に好適である。…
[0073]本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。…多孔質セラミックス焼結体の形状は、…板状セラミックスを1?50mm角程度に粉砕した顆粒状であってもよい。また、あらかじめ、1?50mm角程度の顆粒状に焼結したものであってもよい。顆粒状のものは、そのまま、又は壁材や路面材に用いられるブロックやタイルの原料としても用いることができ、保水、拡散、冷水、断熱、及び遮音性などに優れる建築又は土木材料が得られる。…
[0079]…スラグには、鋳鉄スラグを用いた。」

摘記1d:段落0080及び0097
「[0080](実施例1)
表1の混合物の組成に従い、有機汚泥と珪藻土とをミックスマラー(東新工業株式会社製)で混合し一次混合物を得(第一の混合操作)、一次混合物に粘土類とスラグとを添加し、さらに混合し、可塑状態の混合物を得た(第二の混合操作)。得られた混合物を真空土練成形機(高浜工業株式会社製)で成形し、幅60cm、厚み2cmの帯状の一次成形体を得た。この一次成形体を任意のピッチと幅で切断し、厚み2cmの略正方形の平板状の成形体を得た(成形工程)。
得られた成形体を熱風乾燥機で乾燥(180℃、0.5時間)し、含水率1質量%以下とした後、連続式焼結炉を用いて、表1に示す焼成条件にて焼成した。…
[0097][表1]



イ.甲第2号証(特開2002-145679号公報)
甲第2号証には、次の記載がある。
摘記2a:段落0034
「【0034】【表3】
┌────────────┬─────┬─────┬─┬─┬─┐
│ │スラグ粒 │スラグ粒 │ … │
│ │1?2mm│2?3mm│ … │
├────────────┼─────┼─────┼─┼─┼─┤
│ … │ … │ … │ … │
│保水量(V%) │ │ │ │
│コーティング量1Kg │32.6 │28.7 │ … │
│ … │ … │ … │ … │
└────────────┴─────┴─────┴─┴─┴─┘」

ウ.甲第3号証(新版 図解 土壌の基礎知識)
甲第3号証には、次の記載がある。
摘記3a:第49頁
「砂と粘土について考えてみよう。砂は粒子が大きくすき間も大きいので、排水はよいが保水力はほとんどないため、いつも水をやらないと作物が育たない。粘土は粒子が小さくすき間も小さい。小さいすき間にある水は親和力が高いため、粘土ばかりだと保水性はよいが水はけが悪く、多量に雨が降ると水浸しになってしまう。」

エ.甲第4号証(特開2007-82411号公報)
甲第4号証には、次の記載がある。
摘記4a:段落0024
「【0024】次に…人工軽量材(…)の物性を示す。…
・飽和透水係数:…
・有効水分量:…
・三相分布:…気相率=51%(pF=1.8)
この物性から、特に飽和透水係数及び有効水分量が大きな値を示しているので、保水性が充分あり、植物生育が可能な材としての品質が確保され、積載荷重に制限のある建物屋上へ充分適用できることを示している。」

オ.甲第5号証(新土壌学)
甲第5号証には、次の記載がある。
摘記5a:第113頁
「このように水分張力pFで<1.8あるいは>4.2の水は植物の利用できない水であるとすれば,植物にとって有効な水はpF1.8から4.2の間の水ということになる.」

摘記5b:第123頁
「通気容量でみれば,これが10%以上あれば少なくとも穀類や牧草類に対する通気は良好であると考えてよい.」

カ.甲第6号証(特開2008-178387号公報)
甲第6号証には、次の記載がある。
摘記6a:段落0059
「【0059】…因みに、米検査機関での分析結果では、2mm径の前記珪藻土造粒焼成材の重力テンション30cm(約pF1.5に相当)下での含水率(体積含水率)は37.5%であり、その時の空隙率は34.7%、残りの27.8%が固相…となる試験資料が明らかにされている。」

(2)甲第1号証の刊行物に記載された発明
摘記1cの「本実施形態の板状セラミックスは、…特に緑化基盤材料に好適である。…多孔質セラミックス焼結体の形状は、…板状セラミックスを1?50mm角程度に粉砕した顆粒状であってもよい。」との記載、並びに
摘記1dの「実施例1…表1の混合物の組成に従い、有機汚泥と珪藻土とを…混合し…粘土類とスラグとを添加し…得られた混合物を…成形し…任意のピッチと幅で切断し…得られた成形体を…連続式焼結炉を用いて、表1に示す焼成条件にて焼成した。」との記載、及びその「表1」の記載からみて、甲第1号証の刊行物には、
「有機汚泥(10質量部)と珪藻土(5質量部)と粘土類(30質量部)とスラグ(55質量部)との混合物を成形して得られた成形体を焼成温度1050℃、焼成時間65分の焼成条件にて焼成した板状セラミックス(多孔質セラミックス焼結体)を1?50mm角程度に粉砕した顆粒状の緑化基盤材料。」についての発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

(3)対比
本1発明と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「板状セラミックス(多孔質セラミックス焼結体)を1?50mm角程度に粉砕した顆粒状の緑化基盤材料」は、本1発明の「気孔を有する多孔質セラミックスを構成素材として含有する粒状物」に相当する。
甲1発明の「緑化基盤材料」と、本1発明の「土壌改良材」は、両者とも「材料」である点において共通する。
してみると、本1発明と甲1発明は、両者とも「気孔を有する多孔質セラミックスを構成素材として含有する粒状物を含む材料。」についての発明である点において一致し、次の相違点(α)?(γ)の点において相違する。

(α)多孔質セラミックスの気孔サイズが、本1発明においては「孔径が10?1000nmのナノメートルオーダーの気孔、1μm超1000μm以下のマイクロメートルオーダーの気孔及び1mm超のミリメートルオーダーの気孔を有する」ものとして特定されているのに対して、甲1発明の「板状セラミックス(多孔質セラミックス焼結体)」の気孔サイズは不明な点。

(β)粒状物について、粒子径が、本1発明においては「1mm超、1cm以下」であるのに対して、甲1発明においては「1?50mm角程度」のものであり、保水率が、本1発明においては「20%以上」であるのに対して、甲1発明においては「保水率」は不明であり、本1発明においては「粒状物をpF1.5の遠心処理をした際の三相分布における気相が30%以上」であるのに対して、甲1発明においては、そのような規定はされておらず、本1発明においては「pF値2.7以下の範囲における水分量が粒状物の全体体積に対する5体積%以上」であるのに対して、甲1発明においては、そのような規定はされていない点。

(γ)材料について、本1発明においては「土壌改良材」であるのに対して、甲1発明においては「緑化基盤材料」である点。

(4)判断
(申立ての理由1について)
ア.上記のように本1発明と甲1発明とは、相違点α?γが相違するところ、事案に鑑み、まず、相違点βが実質的な差異であると言えないか否かについて検討する。

イ.ここで、上記相違点βに関して、特許異議申立人は、特許異議申立書の第11頁第26?29行において「甲1発明の実施例1として記載された板状セラミックスと、本件特許発明の実施例1として記載された多孔質セラミックスの板状物とを比較すると、その原料及び製造方法がほぼ同じであるから、これらは物としてほとんど同一である。」旨主張している。
しかしながら、甲1発明の実施例1として記載された板状セラミックス(平板状の成形体)の焼成条件は、[0097][表1](摘記1d)に示されるような温度勾配を有し、表1から、焼成温度[到達温度]が1050℃で、焼成時間は65分であり、連続式焼結炉によって焼成されていることから、成形体は、「ゾーン5」の終端部において1050℃程度に到達し、「ゾーン6」で1050℃程度の焼成温度で、6.5分焼成されているものと解される。
してみると、本1発明の実施例について、発明の詳細な説明には、「連続式焼結炉を用いて、焼成温度1050℃、焼成温度での滞留時間7分間の焼成条件にて焼成した(焼成工程)。」(【0077】)という程度の記載しか無く、温度勾配といった焼成条件が不明である上に、焼成温度における滞留時間が異なっていることから、本1発明の「多孔質セラミックス」と、甲1発明の実施例1として記載された「板状セラミックス」が、物として同じであると、直ちにはいうことができない。
したがって、本1発明と甲1発明とは、相違点βにおいて実質的に相違するから、本1発明及び本1発明を引用する本2発明?本6発明は、甲1発明と同一とはいえない。

ウ.次に、上記相違点γに関して、本件特許明細書の段落0035の「本実施形態の土壌改良材を水はけの悪い粘土質の土または保水性の悪い砂などに混ぜることにより、これらの土や砂の性質を改良し、植物の育成に適した培土とすることができる。」との記載にあるように、本1発明の「土壌改良材」は、土や砂などに直接混ぜるためのものであるのに対して、甲第1号証の段落0004(摘記1b)の「緑化基盤材料は、地被植物等を生育させるための土壌の下に敷設されるもの」との記載にあるように、甲1発明の「緑化基盤材料」は、土や砂などに直接混ぜるためのものではないという点において、本1発明の「土壌改良材」と甲1発明の「緑化基盤材料」が同一のものであるということができない。
したがって、本1発明と甲1発明とは、相違点γにおいて実質的に相違するから、本1発明及び本1発明を引用する本2発明?本6発明は、甲1発明と同一とはいえない。

エ.さらに、本7発明について、特許異議申立人は、特許異議申立書の第14頁第26?28行において「本件特許発明7の製造方法は、本件特許発明1と同じ構成であるから、(ア)で述べた通り、本件特許発明7は甲1発明と同一である。」と主張し、同第15頁第15行において「本件特許発明1?10は甲1発明と同一である」と主張しているが、本1発明と甲1発明とが同一とはいえないことは、上記イ.及びウ.に示したとおりである。
したがって、本7発明と甲1発明とは、同一であるとはいえないから、本7発明及び本7発明を引用する本8発明?本10発明は、甲1発明と同一とはいえない。

(申立ての理由2について)
事案に鑑み、まず、相違点βについて検討する。
ア.甲1発明の「顆粒状の緑化基盤材料」について、「保水率」、「pF1.5の遠心処理をした際の三相分布における気相」及び「pF値2.7以下の範囲における水分量」がどの程度のものが望ましいものであるかは、甲1?甲6の記載からは明らかではない。
そして、甲1発明の粒子径は「1?50mm角程度」であり、1mm以下、1cm超のものが含まれる場合があるところ、その中から、本1発明のように、粒子径が1mm超、1cm以下のものを選択し、その上で、「保水率」、「pF1.5の遠心処理をした際の三相分布における気相」、及び、「pF値2.7以下の範囲における水分量」を本1発明の範囲のものとする動機付けを、甲1?甲6の記載からは見出すことができない。
したがって、特許異議申立人の主張及び証拠方法(甲1?甲6に記載の発明及び周知技術)によっては、本1発明の構成を当業者が容易に導き出し得るとはいえない。

イ.次に、本1発明の効果について、本1発明は、本件特許明細書の段落0087の「本発明の土壌改良材は、植物の育成に適した土に改良することができ、本発明の土壌改良材を含む土は、植物の育成に優れた培土である。」との記載にあるように、本1発明は土や砂などの土壌を植物の育成に適した土壌に改良することができるという効果を奏するのに対して、甲1発明は、甲第1号証の段落0004(摘記1b)の「緑化基盤材料は、地被植物等を生育させるための土壌の下に敷設されるものであり、…建物の屋上等に敷設され、その上に植物を生育させることで、建物の冷却効果を向上できる。」との記載にあるように、土壌そのものを改良するものではなく、建物の冷却効果を向上できるという効果を奏するものであって、本1発明の効果を示唆するところがないから、特許異議申立人の主張及び証拠方法によっては、本1発明の効果が自明であるとはいえない。

ウ.してみると、相違点α及びγについて検討するまでもなく、特許異議申立人の主張及び証拠方法によっては、本1発明及び本1発明を引用する本2発明?本6発明が、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、本件特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。

エ.次に、本7発明について検討すると、本7発明は本1発明と同様な粒状物を発明特定事項として有しており、本1発明と同様の理由により、甲1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本7発明を引用する本8発明?本10発明も、本7発明と同様に、甲1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(申立ての理由1及び2についてのまとめ)
以上総括するに、特許異議申立人の主張及び証拠方法によっては、本1発明?本10発明に係る本件特許が、特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえないから、申立の理由1及び2には理由がない。

2.理由3について
(1)拡張ないし一般化について
記載不備に関して、特許異議申立人は、特許異議申立書の第15頁第20?30行において「(ア)本件請求項1における『多孔質セラミックスを構成素材として含有する粒状物』は、特定の大きさの気孔を有し、粒子径が特定の範囲内のものであり、保水率が特定範囲であること、三相分布が特定範囲であること及び水分量が特定範囲であることが規定されている。しかし、発明の詳細な説明には、特定の原料を特定の条件で焼成して得られる多孔質セラミックスを用いた粒状物がこれらの規定を満足するという発明が記載されているのみである。したがって、出願時の技術常識に照らしても、本件特許発明1の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。本件特許発明2?5についても同様である。」と主張している。

しかるに、特許異議申立人の上記「発明の詳細な説明には、特定の原料を特定の条件で焼成して得られる多孔質セラミックスを用いた粒状物がこれらの規定を満足するという発明が記載されている」との主張にあるように、本件特許明細書の段落0076?0086には、実施例1?3の具体例として当該「これらの規定を満足するという発明」が発明の詳細な説明に記載されているといえる。
そして、本件特許明細書の段落0007には、粒状物の保水率が「15%以上」であり、pF値2.7以下の範囲における水分量が「5体積%以上」であれば、本件特許発明の課題を解決できると記載されているので、これら2つの条件さえ満たしていれば、気孔の大きさ、粒子径、及び三相分布の範囲が、どのような範囲にあっても、本件特許発明の課題は解決できると認識できるものと自然には解される。
さらに、上記「15%以上」及び「5体積%以上」という数値範囲の範囲内において、本件特許発明の改題を解決できないといえる技術常識の存在などの具体的な根拠も見当たらない。
してみると、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明の規定を満足する実施例1?3による具体的な裏付けの記載がなされており、なおかつ、出願時の技術常識に照らして、本件特許発明1の範囲まで発明を拡張ないし一般化できないといえる事情も見当たらないので、本件特許の請求項1及び請求項1を引用する請求項2?5の記載が、サポート要件に違反すると直ちに認めることはできない。

なお、特許異議申立人の上記「出願時の技術常識に照らして、本件特許発明1の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。」との主張にある「技術常識」とは、具体的にどのような内容の技術常識を意味するのかが明らかにされていないので、このような主張及び証拠方法によっては、本1発明の範囲にまで発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できないとはいえない。
また、上記「本件特許発明2?5についても同様である」との主張及び証拠方法によっては、本2発明?本5発明の範囲にまで発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できないとはいえない。
さらに、本1発明の「孔径が10?1000nmのナノメートルオーダーの気孔、1μm超1000μm以下のマイクロメートルオーダーの気孔及び1mm超のミリメートルオーダーの気孔を有する」という範囲の全てにまで発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できないといえる合理的な理由や技術常識の存在などの具体的な根拠は見当たらず、同様に、本1発明の「前記粒状物の粒子径が1mm超、1cm以下であり」という範囲、「前記粒状物の保水率が20%以上であり」という範囲(及び本4発明の「15%以上」という範囲)、「前記粒状物はpF1.5の遠心処理をした際の三相分布における気相が30%以上であり」という範囲、並びに「前記粒状物はpF値2.7以下の範囲における水分量が前記粒状物の全体体積に対して5体積%以上である」という範囲の全てにまで発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できないといえる具体的な根拠も見当たらない。

したがって、特許異議申立人の上記(ア)の主張及び証拠方法によっては、本1発明?本5発明にサポート要件の記載不備があるとはいえず、本件特許が特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであるとはいえない。

(2)原料及び焼成条件に関する要件について
記載不備に関して、特許異議申立人は、特許異議申立書の第15頁第31行?第16頁第12行において「(イ)本件明細書の発明の詳細な説明に記載された課題は、保水性に優れ、また、水はけもよく、土の中に空気を供給することで、植物の育成に適する土を作ることである。そして、その課題を解決するために、少なくとも粘土、スラグ及び有機汚泥を原料として特定の焼成条件で焼成してなる多孔質セラミックスを用いることのみが発明として記載されている。本件明細書の段落0033及び段落0039の記載によれば、本件特許発明1のように、ナノメートルオーダーの気孔、マイクロメートルオーダーの気孔及びミリメートルオーダーの気孔を併せ持つためには、特定の原料を組み合わせた混合物を、焼成条件で焼成することが必要である。しかし、請求項1?5には、原料及び焼成条件に関する要件は含まれておらず、発明の課題を解決するための手段が反映されていないから、請求項1?5は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。」と主張している。

しかしながら、本件特許明細書の段落0033の「気孔の孔径は、原料の種類や、焼成条件を組み合わせることにより調節できる。」との記載、及び同段落0039の「発泡剤を用いることで多孔質セラミックスの粒状物に大きなミリメートルオーダーの気孔を形成することができ、珪藻土を用いることで多孔質セラミックスの粒状物にマイクロメートルオーダーの気孔を形成することができる。」との記載について、当該「発泡剤」や「珪藻土」は、多様な孔径の気孔を形成するための材料としての単なる例示を示したにすぎないものと自然には解され、同段落0033の「有機汚泥を用いることで多孔質セラミックスの粒状物にマイクロメートルオーダーの気孔を形成…することができる。」との記載及び技術常識をも参酌するに、例えば「珪藻土」の代わりに「有機汚泥」などの他の材料を用いても「マイクロメートルオーダーの気孔」を形成できると普通に解されるから、原料の種類や焼成条件などを特定しなければ、本1発明の「保水性に優れ、また、水はけもよく、土の中に空気を供給することで、植物の育成に適する土を作る」という課題を解決できなくなると認識することはできない。

そして、本件特許明細書の段落0031の「特に孔径が大きな気孔と小さな気孔が混在…することにより、多孔質セラミックス内に多くの空隙を形成し、酸素をはじめとする空気の保持と雨水等に含まれる微量な栄養素を吸収保持するとの観点より好ましい。」との記載にある作用機序の説明によれば、多様な孔径の気孔を混在して形成することは、本1発明の『保水性に優れ、また、水はけもよく、土の中に空気を供給することで、植物の育成に適する土を作る』という課題の解決に重要であると認識できるが、本件特許明細書の全ての記載及び本願出願時の技術常識を精査しても、原料の種類や焼成条件の範囲を特定しなければ本1発明の課題を解決できないといえる合理的な理由は見当たらない。

したがって、特許異議申立人の上記(イ)の主張及び証拠方法によっては、本1発明?本5発明にサポート要件の記載不備があるとはいえず、本件特許が特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、本1発明?本10発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本1発明?本10発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-10-11 
出願番号 特願2014-545733(P2014-545733)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (C09K)
P 1 651・ 113- Y (C09K)
P 1 651・ 121- Y (C09K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 柴田 啓二  
特許庁審判長 川端 修
特許庁審判官 木村 敏康
日比野 隆治
登録日 2018-01-12 
登録番号 特許第6268650号(P6268650)
権利者 小松精練株式会社
発明の名称 土壌改良材およびそれを含む培土  
代理人 志賀 正武  
代理人 鈴木 三義  
代理人 高橋 詔男  
代理人 村山 靖彦  
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