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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  H04N
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H04N
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  H04N
審判 全部無効 発明同一  H04N
管理番号 1345277
審判番号 無効2017-800149  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-12-13 
確定日 2018-10-18 
事件の表示 上記当事者間の特許第4681033号発明「画像補正データ生成システム、画像データ生成方法及び画像補正回路」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯

特許第4681033号(以下、「本件特許」という。)の請求項1から5までのそれぞれに係る発明は、平成20年9月4日(優先権主張:平成20年7月31日(以下、「優先日」という。))に出願され、平成23年2月10日にその特許権の設定の登録がされた。

請求人は、平成29年12月13日付けで、本件特許の請求項1から5までのそれぞれに係る発明についての特許を無効にすることについて特許無効審判を請求した。

これに対し、被請求人は、平成30年4月3日付けで答弁書を提出した。

その後、請求人及び被請求人は、当審が同年5月23日付けで送付した審理事項通知書に対し、いずれも同年6月28日付けで口頭審理陳述要領書を提出し、当審は、同年7月12日に第1回口頭審理を行った。


第2 本件特許に係る発明

本件特許の請求項1から5までのそれぞれに係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1から5までのそれぞれに記載された事項によって特定される以下のとおりのものである。ただし、当審において各請求項に記載された事項を構成要件に分説し、AからOまでの符号及びD3からH3までの符号を付した。

「【請求項1】
A 画像を出力するための信号を表示パネルに供給する信号発生手段と、

B 前記表示パネルにおいて表示された出力画像を撮影する撮像手段と、

C 前記信号発生手段及び前記撮像手段に接続される制御手段と、

D を備えた画像補正データ生成システムであって、

E 前記制御手段が、前記信号発生手段に対して、表示パネルの全面に共通する信号値の供給指示を出力する指示手段と、

F 前記撮像手段から、出力画像データを取得する画像取得手段と、

G 前記出力画像データに対し中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうことによって、同出力画像データから高周波成分及び低周波成分を除いたバンドパスデータを算出するバンドパスフィルタ手段と、

H 前記バンドパスデータに対応した画像補正テーブルを出力する補正データ生成手段とを備えたことを特徴とする画像補正データ生成システム。

【請求項2】
I 前記指示手段は、階調毎に表示パネルの全面に共通する信号値の供給指示を出力し、

J 前記画像取得手段は、階調毎に出力画像データを取得し、

K 前記補正データ生成手段は、階調毎に画像補正テーブルを出力することを特徴とする請求項1に記載の画像補正データ生成システム。

【請求項3】
A 画像を出力するための信号を表示パネルに供給する信号発生手段と、

B 前記表示パネルにおいて表示された出力画像を撮影する撮像手段と、

C 前記信号発生手段及び前記撮像手段に接続される制御手段と、

D3 を備えた画像補正データ生成システムを用いて、画像補正データを生成する方法であって、

E3 前記制御手段が、前記信号発生手段に対して、表示パネルの全面に共通する信号値の供給指示を出力する指示段階と、

F3 前記撮像手段から、出力画像データを取得する画像取得段階と、

G3 前記出力画像データに対し中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうことによって同出力画像データから高周波成分及び低周波成分を除いたバンドパスデータを算出するバンドパスフィルタリング段階と、

H3 前記バンドパスデータに対応した画像補正テーブルを出力する補正データ生成段階とを実行することを特徴とする画像補正データ生成方法。

【請求項4】
L 表示パネルに供給される画像信号を調整するための画像補正テーブルを記憶した画像補正回路であって、

M 前記画像補正テーブルはバンドパスデータに対応して生成されており、このバンドパスデータは、前記表示パネルの全面に供給された共通する信号値に基づいて前記表示パネルに表示された出力画像を撮像して得た出力画像データに対して中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なって、同出力画像データから高周波成分及び低周波成分を除くことによって得られ、

N 前記表示パネルに供給される画像信号に対して、前記画像補正テーブルに基づいて、出力画像を補正する信号を出力することにより、前記表示パネルの出力画像を調整するための画像補正回路。

【請求項5】
O 前記画像補正テーブルは階調毎に記録されており、画像信号の座標及び信号値に基づいて線形補間を行なうことによって、出力画像を調整する信号を生成することを特徴とする請求項4に記載の画像補正回路。」

以下では、本件特許の請求項1から5までのそれぞれに係る発明を、対応する請求項の番号を用いて「本件特許発明1」、「本件特許発明2」などという。また、本件特許発明1から5までをまとめて「本件特許発明」という。

第3 請求人の主張
1 請求人が主張する無効理由は以下のとおりである。
(1)無効理由1(特許法第29条第2項違反)
本件特許発明1-5は、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、及び甲第4-6号証に記載の周知技術に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明することができたものであるから、特許を受けることができない。

(2)無効理由2(特許法第29条の2違反)
本件特許発明1-5は、甲第7号証に記載された発明と同一であるから、特許を受けることができない。

(3)無効理由3(特許法第36条第4項第1号違反)
本件特許の明細書には、「中間的な周波数成分」、「高周波成分」及び「低周波成分」について、これらがどのような周波数の成分であるのか、具体的な数値や範囲等が記載されておらず、また、具体的にどのような基準又は手法で周波数の範囲を決定すれば、発明の解決すべき課題を解決できるのかが記載されていないから、本件特許の発明の詳細な説明は、本件特許発明1-5を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。

(4)無効理由4(特許法第36条第6項第2号違反)
本件特許の請求項1、3及び4の記載における「中間的な周波数成分」、「高周波成分」及び「低周波成分」が具体的にどのような周波数成分であるのかが明確でないから、本件特許発明1-5は、明確でない。

2 請求人が提示した証拠方法
請求人が提示した証拠方法は、以下のとおりである。
甲第1号証は本件特許の特許公報、
甲第2号証ないし甲第6号証は本件特許の優先日前に日本国内において頒布された刊行物、
甲第7号証は本件特許の優先日前の日を優先日とする特許出願であって、本件特許の優先日後に公開された特許出願、
甲第8号証は本件特許の特許出願の一部を分割して新たな特許出願としたものの一部を分割して新たな特許出願としたもの(特願2013-156974号)に対して平成26年7月11日付けで通知された拒絶理由通知書の写しである。

甲第1号証:特許第4681033号公報

甲第2号証:特開2005-49841号公報

甲第3号証:特開2007-18876号公報

甲第4号証:特開2002-318520号公報

甲第5号証:特開平11-207998号公報

甲第6号証:特開2007-65916号公報

甲第7号証:特願2008-72423号(特開2008-250319号公報)

甲第8号証:特願2013-156974号に対する平成26年7月11日付け拒絶理由通知書


第4 被請求人の反論
被請求人は、請求人が主張する無効理由1?4は、いずれも妥当ではないと主張する。

被請求人は、以下の証拠方法を答弁書に添付して提出した。

乙第1号証:実験成績証明書


第5 当審の判断
1 無効理由1(特許法第29条第2項違反) について

(1)甲第2号証ないし甲第6号証に記載された事項
ア 甲第2号証
甲第2号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
本発明は複数の表示素子を持つ表示装置に関するものである。特に、表示装置の輝度むらの補正方法に関するものである。」

(イ)「【0017】
本発明によれば輝度むらの周波数成分のうちの一部の周波数成分を残すことで、補正量を減らすことができる。特に、輝度むらの周波数成分のうちの所定の周波数成分を削除するときに、該所定の周波数成分よりも低い周波数成分の少なくとも一部を残す(そのまま維持するかもしくは低減させる)ことで、補正量を減少させながらも輝度むらを視認しにくい構成を実現できる。また、輝度むらの周波数成分のうちの所定の周波数成分を完全には削除せずに残す(そのまま維持するかもしくは低減させる)ことで補正量を抑制すると共に、該所定の周波数成分よりも高い周波数成分をより多く減少させることで輝度むらを認識しにくい構成を実現することができる。」

(ウ)「【0023】
図1(b)は本発明に係る補正値決定装置の回路ブロックを含む説明図である。1は補正回路、2は補正値生成部、3は乗算器、4は演算部、5は補正値を保存(格納)したテーブル(格納手段;具体的にはメモリを用いることができる。メモリとしては半導体メモリを好適に採用できるが、磁気情報を記憶する記憶媒体を用いたメモリも用いることができる。)、6はスイッチ、10は変調回路、11は走査信号発生回路、12は表示パネル、13は表示素子、14は縦方向配線、15は横方向配線、20はむら測定部である。本発明に係る表示装置は、補正回路1、補正値生成部2、乗算器3、演算部4、テーブル5、スイッチ6、変調回路10、走査信号発生回路11、表示パネル12、表示素子13、縦方向配線14、横方向配線15を含んで構成される。
【0024】
(信号の流れ)
テレビ信号のような放送波は不図示のデコーダによりデコードされ、YC分離等の処理を経てデジタルRGB信号に変換される。PC信号はアナログ信号であればAD変換等を経て、デジタルRGB信号に変換される。図1(b)の画像データd1はこのようなデジタルRGB信号を示している。具体的には図1(a)の受信装置300が出力する信号がd1として乗算器3に入力される。なお画像データd1としてはデジタルRGB信号に限らず種々の信号を入力することができる。例えば輝度信号と色差信号とを受信する受信装置300を用いる場合には、輝度信号と色差信号とを受信装置300から補正回路1に出力するようにしてもよい。ただし、補正回路1への入力としてはRGB信号が好適であるので、受信装置300がRGB信号でない信号を受信する装置であれば、受信装置300が受信した信号をRGB信号に変換する回路を有しているのが好ましい。
【0025】
画像データd1は補正回路1に入力される。補正回路1は演算部4とテーブル5を持った補正値生成部2と、補正値生成部2が出力する補正値d4を画像データd1に乗算する乗算器3と、補正値生成部2から出力される測定用データd6と乗算器3の出力d5とを切り換えるスイッチ6からなる。
【0026】
補正回路1から出力される画像データd2は変調回路10に入力され、所定の変調が行われる。その後、画像データd2は、駆動回路を通じて駆動信号として表示素子13に出力され画像表示される。」

(エ)「【0027】
(表示パネル)
次に、表示パネル12について説明する。表示パネル12は表示素子13をマトリクス状に配置した構成である。一つの表示素子は、一画素を構成するRGBのうちのどれか一色に相当する。」

(オ)「【0036】
(むら測定部)
本例では、表示装置の使用中にむらの分布が変動することを想定し、ユーザーの指示等によりむらを補正できる機能を備えているものとする。本例のむら測定部20はCCDカメラを使用している。むら測定部20は補正値生成部2からの指示を受け、各表示素子の輝度(約300万個の輝度)を測定する。この輝度測定の際は表示装置の全面を同一の画像データで発光させ、むら測定部20により全面一括で輝度を取り込む。あるいは、CCDカメラの解像度が不足している場合は、表示面を複数のエリアに分割し複数回に分けて測定すればよい。
【0037】
測定された輝度データd20は補正値生成部2に送られ、計算により補正値が作成される。
【0038】
本例では、むら測定部20が測定するものは輝度とした。すなわち輝度を測定したデータを輝度と相関を有するデータとした。しかしながら輝度と相関を有するデータとは輝度を直接測定して得られたデータである必要はない。例えば表示素子の放出電子量や表示素子に流れる電流量など、輝度と相関を有するものであれば他のものでも良い。従って、CCDカメラのように表示装置の外部にむら測定部20を有する構成に限られず、表示装置が装置内部にむら測定部を有するように構成することもできる。」

(カ)「【0039】
(補正回路)
次に補正回路1について説明する。補正回路1は演算部4とテーブル5を持った補正値生成部2と、補正値生成部2が出力する補正値d4を画像データd1に乗算する乗算器3と、補正値生成部2から出力される測定用データd6と乗算器3の出力d5を切り換えるスイッチ6からなる。
【0040】
表示パネル12の輝度むらを補正するための補正値d4はテーブル5に保存されている。同期信号d3に従い補正値d4はテーブル5から読み出され乗算器3へ出力される。同期信号d3は画像データd1の同期信号と同じ信号である。これにより、所定の画素の画像データにその画素に対応する補正値を乗じることができる。画像データd1は図1では一本のラインで示しているが、実際にはRGBの3ラインデータである。同様に、補正値d4もRGBそれぞれ3ライン存在する。
【0041】
乗算器3では、画像データd1のRGBのそれぞれのデータが、補正値d4のRGB補正値各々と乗算される。乗算器3の出力データをd5とする。
【0042】
d6は測定用の画像データである。本例では、全面白、1/2階調データ(フル階調が255ならば128階調)とする。
【0043】
なお、信号d6は、補正値生成部2から必ず供給しなければならないものではなく、外部で生成した測定用画像データとして直接、変調回路10に供給してもよい。
【0044】
スイッチ6は、画像データd5とd6を切り換えるためのスイッチである。スイッチ6は、通常のテレビやPC画像の表示の際はd5を選択し出力する。また、スイッチ6は、むら測定部20による輝度むら測定時には測定用画像データd6を選択し出力する。このスイッチ切り換えは補正値生成部2からの制御信号により行う。
【0045】
補正値生成部2は、通常のテレビやPC画像表示の際は補正値d4を出力している。しかし、補正値d4を更新する際は、測定用画像データd6を出力し、むら測定部20に測定指示を出す。そして、測定された輝度データd20をもとに演算部4が、後述する演算処理を行いデータが算出される。そして、このデータによってテーブルに保存された補正値の更新を行う。
【0046】
ここでは、むら測定部20が指標データ取得手段に相当する。また、演算部4は、指標データ変換回路、輝度目標値空間周波数成分演算回路、空間周波数成分逆変換回路、補正値算出回路に相当する。」

(キ)「【0060】
(補正法2)
次に本例の第二の補正法を説明する。
【0061】
前述した補正法1同様、図3の輝度データd20を使って説明する。
【0062】
補正法1と同様に、補正値生成部2において、入力された輝度データd20をDCT等により空間周波数データに変換する。輝度データd20の空間周波数成分のデータの一部を図9(a)に示す。図9(a)は図4(a)と同じものである。
【0063】
本例では、図9(a)に示すような通過領域100を設けている。通過領域とは、その周波数成分が残っていたとしても人間の目に検知されにくい周波数領域を意味する。例えば、本例では輝度むら識別閾が10%以上の周波数領域は輝度むらを検知しにくいと判断し、輝度むら識別閾が10%以上の周波数領域を通過領域とした。一般的に、低周波成分が通過領域となる。図9(a)では、f10、f01、f11の3つが通過領域である。
【0064】
図9(b)は図6の視覚特性を二次元に拡張したものであり、輝度むら識別閾の周波数成分を二次元的に表している。図9(b)は図4(b)と同じものである。本例では通過領域の周波数成分の合計が、通過領域の輝度むら識別閾の最小値より小さくなるように、通過領域の周波数成分に係数Dをかける。つまり、図9の場合であれば、まず係数Dは以下のように求める。
【数1】

ここで、
Min():()内の最小値
である。次に、通過領域の周波数成分に上記の係数Dをかけ、輝度目標値の周波数成分を
求める。
【数2】

ここで、
Int():()の数値の少数部を切り捨て
である。また、通過領域以外の全ての周波数成分は0とする。
【0065】
こうして求められた輝度目標値の周波数成分を図9(c)に示す。本例の輝度目標値の周波数成分は通過領域のみ値が残り、通過領域以外では0である。この輝度目値の周波数成分を逆DCT等により輝度データ(輝度目標値)に変換する。
【0066】
本例により求められた輝度目標値は、周波数成分の合計が通過領域の輝度むら識別閾の最小値より小さくなっていることから、上記の補正法1による補正よりも均一性の高い補正が可能となる。
【0067】
図3の輝度データに対し本例の処理を行い求められた輝度目標値を図10に示す。本例により求められる輝度目標値はわずかな低周波成分しか含まれていないため、図に示すような7x7という狭い領域では全て100となっている。
【0068】
輝度目標値(図10)を測定された輝度データ(図3)で割ったものを補正値とする。前述したように本例ではPWMで階調表現を行う。図2に示すように、PWMを行うと階調-輝度特性はほぼリニアな特性となるため、階調値に所定係数Cをかけた場合輝度もほぼC倍となる。この特性を利用して画像データ、すなわち階調値に補正値を乗ずることで輝度むら補正を行う。
【0069】
図11に本例の補正値を示す。これは、輝度目標値(図10)を測定された輝度データ(図3)で割ったものである。この補正値をテーブル5に保存する。テレビ信号等の通常の画像を表示する際は、同期信号d3によりテーブル5から補正値を読み出し、補正値d4として乗算器3に出力する。
【0070】
乗算器3では、画像データd1と補正値d4を乗算し輝度むらを補正された画像データd5として出力される。スイッチ6は、テレビ信号等の通常の画像を表示する際は画像データd5を選択出力する。従って、スイッチ6の出力信号d2は輝度むら補正された画像データとなる。」

図1

図6

上記(ア)ないし(キ)の記載から、甲第2号証に記載された発明(以下、「甲第2発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「演算部4とテーブル5を持った補正値生成部2と、補正値生成部2が出力する補正値d4を画像データd1に乗算する乗算器3と、補正値生成部2から出力される測定用データd6と乗算器3の出力d5とを切り換えるスイッチ6とからなる補正回路1と、
CCDカメラを使用し、補正値生成部2からの指示を受け、各表示素子の輝度を測定するむら測定部20と、を有し
輝度むら測定時には、補正値生成部2からの制御信号によりスイッチ6が、測定用画像データd6を選択し、全面白、1/2階調データである測定用画像データd6を表示素子13をマトリクス状に配置した表示パネル12に出力し、
むら測定部20により測定された輝度データd20は補正値生成部2に送られ、
補正値生成部2において、入力された輝度データd20をDCT等により空間周波数データに変換し、人間の目に検知されにくい周波数領域、一般的に、低周波成分である通過領域100を設け、通過領域の周波数成分の合計が通過領域の輝度むら識別閾の最小値より小さくなるように、通過領域の周波数成分に係数Dをかけ、通過領域以外の全ての周波数成分は0として輝度目標値の周波数成分を求め、この輝度目標値の周波数成分を逆DCT等により輝度データ(輝度目標値)に変換し、輝度目標値を測定された輝度データで割ったものを補正値とし、この補正値をテーブル5に保存する、
補正値決定装置。」

イ 甲第3号証
甲第3号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
本発明は、有機EL素子をマトリクス状に配列して形成した有機EL表示装置における表示の不均一性の補正に関する。」

(イ)「【0014】
本発明は、有機EL素子を含む表示画素をマトリクス状に配列して形成した有機EL表示装置の製造方法であって、表示エリアの画像を撮像装置で撮影して、表示ムラが存在するエリアを特定し、特定されたエリアにおける表示画素の有機EL素子を選択的に発光させて、その駆動電流を検出し、検出した駆動電流に基づいて、補正の必要な画素の位置とその補正データを検出し、得られた補正の必要な画素の位置とその補正データをメモリに記憶させることを特徴とする。」

(ウ)「【0037】
「ムラの検出」
i)ムラのあるエリアの抽出
図5に示すように、有機ELパネル100を暗室内に配置し、黒背景とする。有機ELパネル100には、一面フラットな白信号を発生するパネル駆動装置102を接続し、ここから画像信号を有機ELパネル100に供給する。そして、白表示で黒背景の有機ELパネル100の画像をディジタルカメラ104によって、撮影する。この例では、2000×1500画素のディジタルカメラを使用する。
【0038】
次に、得られた撮影画像データは、コンピュータ106に供給される。なお、コンピュータ106は、パネル駆動装置102の動作も制御する。コンピュータ106は、ディジタルカメラ104から供給された画像データについて、次のような処理を行う。
【0039】
まず、撮影画像データにおける輝度変化からエッジ部分を検出し、有機ELパネル100の発光部分の画像データを切り出す。ここでは、図6に示すように、撮影画像全体に対し、発光部の面積の占める割合は約1/4となっている。
【0040】
次に、発光部分の画像から図7(a)のように128×128画素のブロックを切り出し、そのブロック内に明点または暗点等のスポット状のムラがあるかどうかを左上から順に調べる。これらのブロックから、スポット状のムラの存在するエリアを探す最も単純な方法として、各データのうちブロック全体の平均データに対してある閾値より高い、または低いデータを抽出するという方法がある。さらに、全体的なムラや計測誤差のレベルに応じて閾値を変化させる方法として、輝度の標準偏差(σ)を計算し、k×σ(kは定数)を越えたデータのあるエリアをムラの存在するエリアとする方法もある。
【0041】
ここで、有機ELパネルはRGBのドットで構成されており、ドット間には発光していない部分もあるので、このドット周期と、ディジタルカメラ104のCCDの画素によるサンプリング周期とで撮影画像に干渉縞(モアレ)が発生する。また、TFTの製造上の問題で、TFTのトランジスタ特性にばらつきが生じると、図8(a)に示すように、表示エリア全体にわたり、緩やかで連続的な輝度変化が生じる。図8(a)の例では、左上が暗く、右下が明るくなっており、縦横に干渉縞があらわれている。このようなモアレや緩やかな輝度変化などは、スポット状のムラのあるエリアを探す場合に判定ミスをする原因となる。そこで、次のようにして、モアレや緩やかな輝度変化をあらかじめ除去するために、128×128画素のブロックを二次元ディスクリートコサイン変換(DCT)する。
【0042】
図8(b)は、DCTをかけた結果の例であり、通常、モアレ成分はある単一の周波数成分として現れ、表示エリア全体にわたる緩やかな輝度変化は低周波の成分となって現れる。そこで、これらの不要成分を除去した後、逆二次元ディスクリートコサイン変換(IDCT)をかけて再び128×128画素のエリア画像に戻す。そして、このようにしてモアレと緩やかな輝度変化を除去した画像に対し、上述したスポット状のムラの判定を行う。」

(エ)「【0045】
「補正値の算出」
i)図10に示すように、ムラを含むと判定されたエリアを中心として、左右上下方向に広げた15×9画素の矩形のエリアを考える。このエリアの四隅の、図に示す4画素を同時に、2つ以上の入力電圧(この例では図11の3点Va1,Va2,Va3)で点灯し、各入力電圧に於けるCV電流を測定する。各画素の平均電流(icv)はこのCV電流を4で割った値となるので、入力電圧対icvの関係をプロットする。この結果により、このエリア周辺の平均的なTFTのV-I特性を予想し、プロットする(図11のa)。なお、入力電圧は、駆動TFTに対するゲートソース間電圧Vgsであり、CV電流は有機EL素子に流れる電流icvであり、輝度に対応する。
【0046】
ii)ムラを含むと判定された15×9画素のエリア内の1画素のみについて、2つ以上の入力電圧(この例では3点Va1,Va2,Va3)で点灯し、各入力電圧に於けるCV電流を測定する。これらの結果より、この画素のTFTのV-I特性を予想し、プロットする(図11のb)。同様にして、このエリア内の全ての画素のTFTのV-I特性を予想し、プロットする。
【0047】
iii)図12に示すように、周辺の画素に対する15×9画素のエリア内の画素nのVth(図における横方向のずれ)及びV-Iカーブの傾き(gm)のずれを求める。周辺画素の特性を基準として、それに対するCV電流または輝度の差が最小となるようにゲイン(V-Iカーブの傾き)とオフセット(Vth)を求める。そして、必要な画素について求めたオフセット/ゲインを不揮発性メモリ36に記憶する。この場合、平均的な画素についてのオフセット/ゲインと、補正が必要な画素についてのその画素位置とオフセット/ゲインの補正値として記憶することも好ましい。
【0048】
また、この例では、オフセット/ゲインについて、入力電圧に対し直線としている。このため、オフセット/ゲインの値を記憶することで、入力電圧に対する補正値を算出することができる。しかし、補正値は必ずしも直線としなくてもよく、画素nのTFT特性を周辺画素のTFTの平均的な特性に変換する値をマップとして持ってもよい。」

上記(ア)ないし(エ)の記載から、甲第3号証に記載された発明(以下、「甲第3発明」という。)は、以下のとおりものである。

「有機EL表示装置における明点または暗点等のスポット状のムラがあるかどうかを左上から順に調べる際に、有機ELパネル100を暗室内に配置し、黒背景とし、有機ELパネル100には、一面フラットな白信号を発生するパネル駆動装置102を接続し、ここから画像信号を有機ELパネル100に供給し、白表示で黒背景の有機ELパネル100の画像をディジタルカメラ104によって撮影し、
スポット状のムラのあるエリアを探す場合に判定ミスをする原因となる、緩やかな輝度変化や、有機ELパネルを構成するRGBのドットのドット周期と、ディジタルカメラ104のCCDの画素によるサンプリング周期とで撮影画像に発生する干渉縞(モアレ)を除去するために、撮影画像を二次元ディスクリートコサイン変換(DCT)し、通常、モアレ成分はある単一の周波数成分として現れ、表示エリア全体にわたる緩やかな輝度変化は低周波の成分となって現れるため、これらの不要成分を除去した後、逆二次元ディスクリートコサイン変換(IDCT)をかけてエリア画像に戻し、このようにしてモアレと緩やかな輝度変化を除去した画像に対し、スポット状のムラの判定を行い、
補正が必要な画素について求めたオフセット/ゲインを不揮発性メモリ36に記憶する、
有機EL表示装置の製造方法。」

ウ 甲第4号証ないし甲第6号証
(ア)甲第4号証
甲第4号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0046】バンディングの知覚における人間視覚システムの効果をある程度考慮するために、コントローラ130の設計に人間視覚システム(HVS)・モデルを有利に使用することができる。人間の目は、脳の認知解釈によって、高い空間周波数と極めて低い空間周波数の両方でコントラスト感度の低下を感じる。従って、人間のコントラスト感度関数(CSF:contrast sensitivity function)を、帯域フィルタとして見なすことができる。コントラスト感度関数は、画像の平均輝度,視距離及び印刷解像度の関数である。図12は、様々な視距離のコントラスト感度関数のグラフであり、高い周波数と極めて低い低周波における感度の低下を示している。」

図12



(イ)甲第5号証
甲第5号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0022】この装置の画像形成の解像度は前記インクジェット記録ヘッド33の各インク吐出口33aのピッチLの解像度のK(但し、Kは2以上の整数)倍に設定し、前記ドラム22が1回転する間に前記インクジェット記録ヘッド33はドラム22の回転軸方向にT×L/K(但し、Tはヘッド移動ステップ量で正の整数)だけ移動するようになっている。前記ヘッド移動ステップ量Tは人間の視覚特性を考慮した結果から決定するようになっている。すなわち、人間の目はある周波数帯域を通過するバンドパスフィルタであることが知られており、人間の目に飛び込んでくる画像と、それを検知した網膜が脳へ伝えた画像とは目というバンドパスフィルタにより若干異なった画像となる。」

(ウ)甲第6号証
甲第6号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0060】
図3(b)に示すマトリクスMは、一般にコントラスト感度関数(Contrast Sensitive Function:CSF)の特性、即ち人間の視覚特性を反映した特性を有している。一般に人間のコントラストに対する感度は、空間周波数に依存しており、人間の知覚系は一種のバンドパスフィルタと考えられる。例えば、白黒の縞模様を考えた場合、連続する縞と縞との間隔によって、人間の縞模様に対する感度が変化する。縞の間隔が非常に小さい場合、人間は縞模様を知覚することが困難になる。M(S,T)の値は、例えば図3(b)では、M(5,5)=2.1を中心に、人間のコントラストに対する感度に応じて同心円状に変化するような値となっている。CSFでDCT係数Qj(S,T)を除算した場合、コントラストに対する感度が高い周波数成分のDCT係数が、コントラストに対する感度が低い周波数成分より大きな値で除されるため、効果的な平滑化の効果が得られる。」

図3


(エ)甲第4号証ないし甲第6号証に記載されている周知事実
上記(ア)ないし(ウ)の記載から、以下のことがいえる。

a 甲第4号証及び甲第6号証にはいずれも、「人間の視覚特性はコントラスト感度関数(CSF)として表されること」が記載されている。

b 甲第4号証の図12及び甲第6号証の図3(b)の記載から、人間のコントラスト感度は、所定の周波数において最も高く、周波数が前記所定周波数から高くなるに従って低くなり、前記所定周波数から低くなるに従って低くなる性質を有する。

c 甲第4号証ないし甲第6号証にはいずれも「人間の目は一種のバンドパスフィルタと考えられること」が記載されている。

上記aないしcより、甲第4号証ないし甲第6号証の記載から、「人間の目は一種のバンドパスフィルタと考えられ、そのバンドパスフィルタの特性は、所定の周波数において透過率が最も高く、周波数が前記所定周波数から高くなるに従って低くなり、前記所定周波数から低くなるに従って低くなる性質を示すコントラスト感度関数(CSF)として表されること」が、周知事実であると認められる。


(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲第2発明とを対比すると、以下のとおりである。

(ア)甲第2発明の「全面白、1/2階調データである測定用画像データd6」は、本件特許発明1の「画像を出力するための信号」及び「表示パネルの全面に共通する信号値」に相当する。

(イ)甲第2発明の「表示素子13をマトリクス状に配置した表示パネル12」は、本件特許発明1の「表示パネル」に相当する。

(ウ)甲第2発明の「補正回路1」は、「輝度むら測定時には、」「全面白、1/2階調データである測定用画像データd6を表示素子13をマトリクス状に配置した表示パネル12に出力」するから、本件特許発明1の「画像を出力するための信号を表示パネルに供給する信号発生手段」に相当する手段を含むということができる。

(エ)甲第2発明の「各表示素子の輝度を測定するむら測定部20」が「使用」する「CCDカメラ」は、「測定用画像データd6」を表示した「表示パネル」の「各表示素子の輝度」を撮影していると認められるから、本件特許発明1の「前記表示パネルにおいて表示された出力画像を撮影する撮像手段」に相当する。

(オ)甲第2発明の「補正回路1」は、「輝度むら測定時には、補正値生成部2からの制御信号によりスイッチ6が、測定用画像データd6を選択」するから、「制御信号」を生成する手段を含むことが明らかであり、したがって、本件特許発明1の「制御手段」に相当する手段を含むということができる。

(カ)甲第2発明は、「輝度むら測定時には、補正値生成部2からの制御信号によりスイッチ6が、測定用画像データd6を選択」することによって、「全面白、1/2階調データである測定用画像データd6を表示素子13をマトリクス状に配置した表示パネル12に出力」するのであるから、甲第2発明では、本件特許発明1の「制御手段」に相当する手段が、本件特許発明1の「画像を出力するための信号を表示パネルに供給する信号発生手段」に相当する手段と接続されているということができる。すなわち、甲第2発明は、本件特許発明1の「前記信号発生手段」「に接続される制御手段」に相当する構成を有すると認められる。

(キ)甲第2発明の「補正値決定装置」は、本件特許発明1の「画像補正データ生成システム」に相当する。

(ク)甲第2発明の「補正回路1」は、「輝度むら測定時には、補正値生成部2からの制御信号によりスイッチ6が、測定用画像データd6を選択し、全面白、1/2階調データである測定用画像データd6を表示素子13をマトリクス状に配置した表示パネル12に出力」するから、「補正値生成部2からの制御信号」は、「輝度むら測定時に」「全面白、1/2階調データである測定用画像データd6」の「出力」を指示する信号である。
よって、甲第2発明の「補正回路1」は、「輝度むら測定時に」「全面白、1/2階調データである測定用画像データd6」の「出力」を指示する信号を生成する手段を含むから、本件特許発明1の「前記制御手段が、前記信号発生手段に対して、表示パネルの全面に共通する信号値の供給指示を出力する指示手段」に相当する手段を含むということができる。

(ケ)甲第2発明の「補正回路1」は、「補正値生成部2に」「むら測定部20により測定された輝度データd20」が「送られ」るのであるから、「補正回路1」は、「むら測定部20」が「使用」する「CCDカメラ」に接続されていると認められ、「測定された輝度データd20」を取得するための手段を含むことが明らかであり、したがって、本件特許発明1の「前記撮像手段から、出力画像データを取得する画像取得手段」に相当する手段を含むということができる。
そして、甲第2発明の「補正回路1」が、「むら測定部20」が「使用」する「CCDカメラ」に接続されていることは、本件特許発明1の「制御手段」が、「前記撮像手段に接続される」ことに相当する。

(コ)甲第2発明の「補正回路1」が有する「補正値生成部2」が、「入力された輝度データd20をDCT等により空間周波数データに変換し、」「人間の目に検知されにくい周波数領域」「である通過領域100を設け、通過領域の周波数成分の合計が通過領域の輝度むら識別閾の最小値より小さくなるように、通過領域の周波数成分に係数Dをかけ、通過領域以外の全ての周波数成分は0として輝度目標値の周波数成分を求め」ることは、通過領域100の周波数成分を減衰させることはあるものの通過させ、前記通過領域100以外の周波数成分を通過させない処理を行っていることから、バンドパスフィルタリングを行っていると認められる。
ここで、本件特許発明1の構成要件Gにおける「中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリング」とは、「出力画像データの空間周波数成分のうち、高周波成分及び低周波成分を零とし、中間的な周波数成分は変更しない処理」のことであると解される。
よって、甲第2発明の「補正回路1」が有する「補正値生成部2」が、「入力された輝度データd20をDCT等により空間周波数データに変換し、人間の目に検知されにくい周波数領域、一般的に、低周波成分である通過領域100を設け、通過領域の周波数成分の合計が通過領域の輝度むら識別閾の最小値より小さくなるように、通過領域の周波数成分に係数Dをかけ、通過領域以外の全ての周波数成分は0として輝度目標値の周波数成分を求め」る手段を備えることは、本件特許発明1の「制御手段」が「前記出力画像データに対し中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうことによって、同出力画像データから高周波成分及び低周波成分を除いたバンドパスデータを算出するバンドパスフィルタ手段」を備えることと、「前記出力画像データに対しバンドパスフィルタリングを行なうことによって、同出力画像データから所定の周波数成分を除いたデータを算出するバンドパスフィルタ手段」を備える点で共通する。

(サ)甲第2発明の「補正回路1」が有する「補正値生成部2」が、「この輝度目標値の周波数成分を逆DCT等により輝度データ(輝度目標値)に変換し、輝度目標値を測定された輝度データで割ったものを補正値とし、この補正値をテーブル5に保存」し、「補正値」を「補正値d4を画像データd1に乗算する乗算器3」に出力する手段を備えることは、本件特許発明1の「制御手段」が「前記バンドパスデータに対応した画像補正テーブルを出力する補正データ生成手段とを備え」ることと、「前記データに対応した画像補正テーブルを出力する補正データ生成手段を備え」る点で共通する。

以上のことをまとめると、本件特許発明1と甲第2発明とは、

「A 画像を出力するための信号を表示パネルに供給する信号発生手段と、

B 前記表示パネルにおいて表示された出力画像を撮影する撮像手段と、

C 前記信号発生手段及び前記撮像手段に接続される制御手段と、

D を備えた画像補正データ生成システムであって、

E 前記制御手段が、前記信号発生手段に対して、表示パネルの全面に共通する信号値の供給指示を出力する指示手段と、

F 前記撮像手段から、出力画像データを取得する画像取得手段と、

G’前記出力画像データに対しバンドパスフィルタリングを行なうことによって、同出力画像データから所定の周波数成分を除いたデータを算出するバンドパスフィルタ手段と、

H’前記データに対応した画像補正テーブルを出力する補正データ生成手段とを備えたことを特徴とする画像補正データ生成システム。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
「バンドパスフィルタリング」として、本件特許発明1は、「前記出力画像データに対し中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうことによって、同出力画像データから高周波成分及び低周波成分を除いたバンドパスデータを算出する」のに対し、
甲第2発明は、「入力された輝度データd20をDCT等により空間周波数データに変換し、人間の目に検知されにくい周波数領域、一般的に、低周波成分である通過領域100を設け、通過領域の周波数成分の合計が通過領域の輝度むら識別閾の最小値より小さくなるように、通過領域の周波数成分に係数Dをかけ、通過領域以外の全ての周波数成分は0として輝度目標値の周波数成分を求め」るものであり、「通過領域の周波数成分に係数Dをかけ」ることから、所定の周波数成分を分離するものではなく、出力画像データから除かれる周波数成分が「高周波成分及び低周波成分」ではない点で相違し、
「バンドパスフィルタリング」の内容が相違することに伴い、「補正データ生成手段」が「出力する」「データに対応した画像補正テーブル画像補正テーブル」の、「データ」が、本件特許発明1は、「出力画像データに対し中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうことによって、同出力画像データから高周波成分及び低周波成分を除いたバンドパスデータ」であるのに対し、甲第2発明は、「入力された輝度データd20をDCT等により空間周波数データに変換し、」「人間の目に検知されにくい周波数領域」「である通過領域100を設け、通過領域の周波数成分の合計が通過領域の輝度むら識別閾の最小値より小さくなるように、通過領域の周波数成分に係数Dをかけ、通過領域以外の全ての周波数成分は0として輝度目標値の周波数成分を求め、この輝度目標値の周波数成分を逆DCT等により」「変換」された「輝度データ(輝度目標値)」である点で相違する。

構成要件で表現すれば、本件特許発明1と甲第2発明とは、構成要件A、B、C、D、E、F、G’、H’を備えている点で一致し、本件特許発明1が構成要件G、Hのうち構成要件G’、H’に含まれない部分をさらに備えているのに対し、甲第2発明がこれらの構成要件を欠いている点で相違する。
よって、相違点は構成要件G、Hに係る相違点である。

以下、相違点について検討する。

イ 相違点についての判断
請求人は、本件特許発明1と甲第2発明を対比して、構成要件G、Hの一部が甲第2発明に開示されていないことを主張し(審判請求書7.(5)(5-2)ア(キ)及び(ク)、第30?31ページ)、主張する相違は、概ね上記相違点のとおりである。
そして、請求人は、審判請求書において構成要件Gに係る相違点を「相違点1」とし、当該相違点は、甲第3号証に記載された発明、及び甲第4号証ないし甲第6号証に記載の周知技術から当業者が容易に相当し得たものであると主張する(審判請求書7.(5)(5-2)イ及びウ、第31?33ページ)ので以下検討する。

(ア)甲第3号証について
請求人は、甲第3号証は、構成要件Gに係る相違点を開示していると主張する。

相違点2に係る本件特許発明1の構成要件Gとは「前記出力画像データに対し中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうことによって、同出力画像データから高周波成分及び低周波成分を除いたバンドパスデータを算出するバンドパスフィルタ手段」である。(上記第2)
ここで、「中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリング」とは、上記ア(コ)において述べたように、「出力画像データの空間周波数成分のうち、高周波成分及び低周波成分を零とし、中間的な周波数成分は変更しない処理」のことであると解される。

甲第3号証に記載されている発明(甲第3発明)は、上記(1)イにおいて述べたように、「スポット状のムラのあるエリアを探す場合に判定ミスをする原因となる、緩やかな輝度変化や、有機ELパネルを構成するRGBのドットのドット周期と、ディジタルカメラ104のCCDの画素によるサンプリング周期とで撮影画像に発生する干渉縞(モアレ)を除去するために、撮影画像を二次元ディスクリートコサイン変換(DCT)し」、「モアレ成分」に対応する「ある単一の周波数成分」、及び「表示エリア全体にわたる緩やかな輝度変化」に対応する「低周波の成分」を除去する発明である。
してみると、甲第3発明は、所定の周波数成分以下の周波数成分である「低周波の成分」を零とする処理を行っているとは認められるものの、高周波の成分については「ある単一の周波数成分」のみを零とする処理を行っており、所定の周波数成分以上の周波数成分を全て零とするものでないから、甲第3発明が行っている処理は、「出力画像データの空間周波数成分のうち、高周波成分及び低周波成分を零とし」ているとはいえず、よって、構成要件Gにおける「中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリング」であるとはいえない。

したがって、甲第3号証は、構成要件Gを開示しているとはいえないから、構成要件G、Hに係る相違点を開示しているとはいえない。

(イ)甲第4号証ないし甲第6号証に記載の周知技術について
請求人は、甲第4号証ないし甲第6号証の記載から、

a 人間の目のコントラスト感度関数(CSF)が高周波成分又は低周波成分を除去するバンドパスフィルタ(帯域通過フィルタ)とみなされること

b 人間の視覚特性に合わせるためにバンドパスフィルタによるフィルタリングで画像処理を行うこと

が、周知技術であると主張する。
しかし、上記(1)ウ(エ)において述べたように、甲第4号証ないし甲第6号証の記載から「人間の目は一種のバンドパスフィルタと考えられ、そのバンドパスフィルタの特性は、所定の周波数において透過率が最も高く、周波数が前記所定周波数から高くなるに従って低くなり、前記所定周波数から低くなるに従って低くなる性質を示すコントラスト感度関数(CSF)として表されること」は周知の事実であると認定できるものの、上記a及びbの技術事項は、甲第4号証ないし甲第6号証のいずれにも記載されていないから、周知技術であると認めることはできない。

(ウ)甲第2号証の記載及び甲第4号証ないし第6号証に記載の周知技術から示唆される事項について

請求人は、甲第2号証に記載された発明に甲第3号証に記載された発明を適応する動機付けに関し、甲第2号証に記載の輝度むら識別閾の空間周波数特性と、人間の目のコントラスト感度関数(CSF)とが逆数の関係にあることが知られていることを前提とし、甲第2号証の記載から、「図6を見るに、グラフ曲線の高周波領域(図の右側)は徐々に高くなっており、輝度むら識別閾が高くなっていくことがわかる。当業者にとってみれば、より高い高周波領域に目を向ければ、輝度むら識別閾の値が高く、人間の目に検知されにくい周波数領域が存在することは自明なものである。」とし、続けて「甲2には、「輝度むらの周波数成分のうちの一部の周波数成分を残すことで、補正量を減らすことができる。特に、・・・」との記載があることからすれば(段落0017)、甲2は、単に、通過領域の周波数成分よりも高い周波数成分を0に設定している例を開示するに過ぎず、甲2には、高周波成分のみならず、低周波成分をも削除し得ることが示唆されているといえる。」と主張する。

甲第2発明は、「輝度むらの周波数成分のうちの一部の周波数成分を残すことで、補正量を減らすこと」を目的とした発明であり(段落【0017】参照)、前記目的を達成するための手段は、甲第2発明の「人間の目に検知されにくい周波数領域、一般的に、低周波成分である通過領域100を設け、通過領域の輝度むら識別閾の最小値より小さくなるように、通過領域の周波数成分に係数Dをかけ、通過領域以外の全ての周波数成分は0として輝度目標値の周波数成分を求め」ることである。
一方、上記(イ)において述べたように、甲第4号証ないし甲第6号証には、上記(イ)a及びbの技術は記載されていないものの、上記(1)ウ(エ)で述べたように「人間の目の特性はコントラスト感度関数(CSF)として表されること」は周知の事実であると認められる。
よって、請求人の主張のとおり、甲第2号証に記載の輝度むら識別閾の空間周波数特性と、周知技術であるコントラスト感度関数(CSF)とが逆数の関係にあることが知られており、甲第2号証の図6に記載の輝度むら識別閾の空間周波数特性が、グラフ曲線の高周波領域(図の右側)は徐々に高くなっており、図示されていない高周波領域において輝度むら識別閾が高くなっていくことがわかるとしても、これから示唆されることは、人間の目に検知されにくい周波数領域が、低周波領域だけでなく高周波領域にも有り、高周波領域においても通過領域を設け得ることであり、甲第2発明において「通過領域100」の低周波数側にも人間の目に検知されやすい周波数領域があり、当該周波数領域の周波数成分も0とし得ることではない。

よって、甲第2号証の記載、及び、甲第4号証ないし甲第6号証に記載の周知技術から、甲第2号証に、甲第2発明の「低周波成分である通過領域100」の低周波数側を通過領域とはせず、該低周波側の周波数成分も0とすることが示唆されているとはいえない。

(エ)本件特許発明1についてのまとめ
上記(ア)?(ウ)において述べたように、甲第3号証には相違点に係る構成は開示されていないし、甲第2号証の記載及び甲第4号証ないし甲第6号証に記載の周知技術から、甲第2号証に甲第2発明の「低周波成分である通過領域100」の低周波側を通過領域とはせず、該低周波側の周波数成分も0とすることが示唆されているとはいえないから、甲第2発明に甲第3発明を適用する動機があるともいえない。
よって、請求人の主張は採用することができない。

以上のことから、本件特許発明1は、甲第2発明、甲第3発明、及び甲第4号証ないし甲第6号証に記載の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認めることはできない。

(3)本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含む。したがって、本件特許発明1と同様、本件特許発明2も、当業者が容易に発明をすることができたものと認めることはできない。

(4)本件特許発明3について
本件特許発明3は、本件特許発明1の画像補正データ生成システムを用いる方法の発明であり、相違点2に係る本件特許発明1の構成要件G、Hに対応する、構成要件G3、H3を有するから、本件特許発明1と同様、本件特許発明3も、当業者が容易に発明をすることができたものと認めることはできない。

(5)本件特許発明4、5について
本件特許発明4は、画像補正回路の発明であり、相違点2に係る本件特許発明1の構成要件G、Hに対応する、構成要件M、Nを有するから、本件特許発明1と同様、本件特許発明4も、当業者が容易に発明をすることができたものと認めることはできない。
本件特許発明5は、本件特許発明4の発明特定事項をすべて含む。したがって、本件特許発明4と同様、本件特許発明5も、当業者が容易に発明をすることができたものと認めることはできない。


2 無効理由2(特許法第29条の2違反) について
(1)甲第7号証に記載された事項
甲第7号証には以下の記載がある。

ア 「【0001】
本発明は、表示画像中の欠陥を検出する装置に関する。より具体的には、本発明は、表示画像中のムラ欠陥を検出し、補正する装置に関する。」

イ 「【0013】
本発明に係るムラ欠陥の低減方法は、前記課題を解決するために、前記ディスプレーの複数のピクセルに対して複数のグレーレベルを配分し、前記複数のグレーレベルによって前記各ピクセルを照射し、前記各ピクセルの前記複数のグレーレベルを、前記ディスプレーの外部に配置された画像検知装置によって撮像し、前記ディスプレー上のムラ欠陥を低減するための前記ピクセルに対する補正値を決定し、前記ディスプレーの受信画像を処理して前記ムラ欠陥を低減するために、前記補正値を前記ディスプレーに保存することを特徴としている。」

ウ 「【0027】
図2に示すように、ムラ欠陥を検出・補正する工程は一連のステップとして行われる。補正階調(補正値)を取得・生成することになるが、その値は、変換テーブルとして表現される。その変換テーブルは、ディスプレーの計測を始める前に、変換テーブルの値が単一の値kに設定されている(220)(〔0023〕)。そして、階調ガンマ値変換テーブル160にてガンマ切り換えされる。次に、図1と同様のプロセスを経て、カメラによってムラが撮像される(210)。そして、ピクセルごとに階調が保存され(230)、各々に対して補正階調が計算される(240)。図3に示すように、その補正階調は、ディスプレーのフレーム・バッファメモリ上で機能するムラ変換テーブルに取り込まれる(310)。その後、図4に示すように、ディスプレーに入力された画像データは、ディスプレーに表示される前に、前記変換テーブル(310)によって補正される。
【0028】
第1の工程では、カメラなどの画像撮像装置によって、グレーレベルの関数としてムラが撮像される。カメラ画像中の少なくとも1ピクセルがディスプレーの各ピクセルに対応するよう、カメラは、ディスプレーの解像度と同じかそれ以上の解像度を有する。ディスプレーの解像度が高い場合、あるいはカメラの解像度が低い場合、カメラは、ディスプレー全体の特性を明らかにするために、ディスプレー全体に渡って移動する。好ましいテストパターンが準備され、それがディスプレーに表示されるが、そのテストパターンは、均一領域(すべてのコード値=k)を有し、それが前記カメラに撮像される。そのテストパターンとカメラによる撮像は、ディスプレー階調のコード値すべてに対して行われる(例えば、8ビット/カラー表示に対して256コード値)。あるいは、階調のサブセットを利用しうるが、その場合は、通常は非サンプル階調値が内挿される。
【0029】
ピクセルごとの階調(あるいはサブセットの階調)を生成するために、ディスプレー全体に渡って撮像画像が組み合わされる。ディスプレーにムラがない場合、ムラ補正階調はすべて同じである。補正階調と装置の非統一性とを重ね合わせることにより、結果としてディスプレー全体における実質的な均一性が得られるようにピクセルごとの補正階調が決定される。最初に、ディスプレーの計測を始める前に、ムラ補正変換テーブルの値が単一に設定される。ピクセルごとにムラ補正階調の値を決定した後に、図4に示すように、その値がディスプレー・メモリに読み込まれる。」

エ 「【0031】
このムラ低減技術は、ディスプレーの不均一性を軽減する方法として有効であるが、さらに輝度レベルの最大-最小の幅であるダイナミックレンジも低減する。それに加えて、低減されるダイナミックレンジは、ディスプレーごとに異なるムラの程度に左右されるため、ディスプレーのダイナミックレンジは可変となる。例えば、ディスプレーの左側にあるムラが、右側にあるムラよりも明るくないとする。これは光源の不均一性に起因する典型的なムラであり、すべてのグレーレベルにおいて起こり得る。ムラ補正は、その最大値以上にピクセルを明るくできないため、より暗い方の最大値に合わせるよう、左側の輝度を下げる。さらに、ブラックレベルの場合、より暗い右側は、より明るい左側のブラックレベルに最も適合する。その結果、補正後の最大値は、ディスプレー全体の中で最も低い最大値まで下げられる。そして、補正後の最小値は、ディスプレー全体の中で最も明るい最小値にまで上げられる。このようにして、補正されたディスプレーのダイナミックレンジ(例えば、対数最大値-対数最小値)は、左側あるいは右側のどちらかのダイナミックレンジよりも小さくなる。これにより、補正されたダイナミックレンジは、補正されていないディスプレーのダイナミックレンジよりも小さくなる。同様のダイナミックレンジの軽減が、他の不均一要因の場合においても行われる。例えば、ムラ補正によって、高増幅固定パターンノイズは、全体のダイナミックレンジが軽減される。
【0032】
ピクセルのムラを撮像し変換テーブルを用いてムラを補正する技術は、画像撮像装置の信号対ノイズ比およびムラ補正変換テーブルのビット深さの範囲内において、相対的に正確である。しかしながら、実際にディスプレーを視認する人間の視覚系による現実の影響を考慮に入れると、ダイナミックレンジは、人間の視覚系による現実の影響を考慮しなかった場合のであろう値よりも大きくなる。
【0033】
一例として、特定周波数におけるムラが、観察者にはその変化を視認できない程度に補正された場合を考える。その補正によって、観察者が表示画像からその違いを感知することなく、ディスプレーのダイナミックレンジが小さくなる。画像の左側が右側よりも僅かに暗い場合にムラがあると判断される場合を考える。人間の視覚系はそのような低周波のムラに対する感受性が極めて低く、そのムラを除去することにそれほどの利点を見出せない場合がある。つまり、観察者が容易に視認するには、通常は大きな振幅のムラ波形が必要とされる。ムラによる歪みが観察者にとって感知できないものであれば、たとえ物理的に測定可能であっても、それを補正する実益はない。
【0034】
図5は、視野角に依存するコントラスト感受性関数を説明する図である(〔0014〕)。図5に示すように、人間の視覚系を測定する1つとして、人間の目のコントラスト感受性関数(CSF)がある。CSFは、人の目に容易に感知できるムラのみを補正する際に使用される判断基準の1つである。これは、図3?5において示される技術よりも、補正に係るダイナミックレンジがより大きく維持されるという利点を持つ。
【0035】
人間の視覚系に係るCSFは、空間周波数の関数である。従って、ムラ低減に用いるデジタル周波数に写像(マッピング)されうる。そのマッピングは、観察位置によって左右される。CSFは、その形状、最大感度が変化する。そして、帯域幅は、明順応レベル、ディスプレー・サイズ等の観察条件の関数である。結果として、CSFは、そのディスプレーとその予期した観察条件に適合する条件で選択される。
【0036】
CSFは、点像分布関数(psf)に変換される。変換された点像分布関数(psf)は、撮像したムラ画像を畳み込みによってフィルタリングするために使用される。通常、各グレーレベルに対して異なる点像分布関数が存在する。前記フィルタリングは、CSFを周波数領域に残し、CSFとの乗算のためにムラ画像を周波数領域の画像信号に変換し、逆フーリエ変換により空間領域の画像信号に戻すことによってなされる。
【0037】
図6は、より大きなダイナミックレンジを維持するためにムラ補正を弱めるコントラスト感度モデルの図である(〔0015〕)。図6は、ムラ画像の取得と、ムラ階調の補正計算と、CSFフィルターと、ムラ補正階調変換テーブルと、を含むシステムを説明している。図6が示すように、カメラによるムラの撮像の後に、CSFによるフィルタリング(610)が行われており、これにより、補正に係るダイナミックレンジがより大きく維持されるという利点が得られる(〔0028〕)。図7は、帯域幅を維持するためにCSFを利用する効果を説明する図である。」

図5

図6


オ 上記アないしエ及び図面の記載から、以下のことが認められる。

(ア) 甲第7号証には、「前記ディスプレーの複数のピクセルに対して複数のグレーレベルを配分し、前記複数のグレーレベルによって前記各ピクセルを照射し、前記各ピクセルの前記複数のグレーレベルを、前記ディスプレーの外部に配置された画像検知装置によって撮像し、前記ディスプレー上のムラ欠陥を低減するための前記ピクセルに対する補正値を決定し、前記ディスプレーの受信画像を処理して前記ムラ欠陥を低減するために、前記補正値を前記ディスプレーに保存する」「ムラ欠陥の低減方法」について記載されている。(【0013】)

(イ) 上記(ア)の「前記ディスプレーの複数のピクセルに対して複数のグレーレベルを配分し、前記複数のグレーレベルによって前記各ピクセルを照射し、」の工程は、「均一領域を有」する「テストパターン」を「ディスプレーに表示される」ことが、「ディスプレー階調のコード値すべてに対して行われる」ことにより実行される。(【0028】)

(ウ) 上記(ア)の「ディスプレーの」「前記各ピクセルの前記複数のグレーレベルを、前記ディスプレーの外部に配置された画像検知装置によって撮像」する工程の、「画像検知装置」は、カメラであり(【0028】)、カメラの撮像により取得された画像は「ムラ画像」という。(【0037】、図6)

(エ)
a 上記(ア)の「前記ディスプレー上のムラ欠陥を低減するための前記ピクセルに対する補正値を決定」する工程は、「カメラによるムラの撮像の後に、CSFによるフィルタリング」がなされ、CSFによるフィルタリングがなされた画像に基づいて「ムラ階調の補正計算」を行うことにより実行される。(【0037】、図6)

b 上記aの「カメラによるムラの撮像の後に」なされる「CSFによるフィルタリング」とは、「CSFとの乗算のためにムラ画像を周波数領域の画像信号に変換し、逆フーリエ変換により空間領域の画像信号に戻すことによってなされる」ものであり(【0036】)、「CSF」とは、「人間の目のコントラスト感受性関数」である。(【0034】)

c 上記aの「ムラ階調の補正計算」とは、「補正階調と装置の非統一性とを重ね合わせることにより、結果としてディスプレー全体における実質的な均一性が得られるようにピクセルごとの補正階調」を「決定する」ものである。(【0029】)

d 上記aないしcをまとめると、上記(ア)の「前記ディスプレー上のムラ欠陥を低減するための前記ピクセルに対する補正値を決定」する工程は、「人間の目のコントラスト感受性関数」である「CSFとの乗算のためにムラ画像を周波数領域の画像信号に変換し、逆フーリエ変換により空間領域の画像信号に戻すことによって」「CSFによるフィルタリング」がなされ、CSFによるフィルタリングがなされた画像に基づいて、「補正階調と装置の非統一性とを重ね合わせることにより、結果としてディスプレー全体における実質的な均一性が得られるようにピクセルごとの補正階調」を「決定する」ことにより実行される。

(オ) 上記(ア)の「前記ディスプレーの受信画像を処理して前記ムラ欠陥を低減するために、前記補正値を前記ディスプレーに保存する」工程は、「その補正階調は、ディスプレーのフレーム・バッファメモリ上で機能するムラ変換テーブルに取り込まれる」ことにより実行される。(【0027】)

(カ) 甲第7号証に記載のムラ欠陥の低減方法は、上記(ア)に記載の工程に加え、さらに、「ディスプレーに入力された画像データは、ディスプレーに表示される前に、前記変換テーブル(310)によって補正される」工程を有する。(【0027】)

(キ) 上記(ア)ないし(カ)を踏まえて、甲第7号証の上記アないしエの記載をまとめると、甲第7号証には、以下の工程を備えるムラ欠陥の低減方法が記載されている。

「均一領域を有するテストパターンをディスプレーに表示されることが、ディスプレー階調のコード値すべてに対して行われ、
ディスプレーの各ピクセルの複数のグレーレベルを、ディスプレーの外部に配置されたカメラによって撮像し、ムラ画像を取得し、
人間の目のコントラスト感受性関数であるCSFとの乗算のためにムラ画像を周波数領域の画像信号に変換し、逆フーリエ変換により空間領域の画像信号に戻すことによってCSFによるフィルタリングがなされ、
CSFによるフィルタリングがなされた画像に基づいて、補正階調と装置の非統一性とを重ね合わせることにより、結果としてディスプレー全体における実質的な均一性が得られるようにピクセルごとの補正階調を決定し、
その補正階調は、ディスプレーのフレーム・バッファメモリ上で機能するムラ変換テーブルに取り込まれ、
ディスプレーに入力された画像データは、ディスプレーに表示される前に、前記変換テーブルによって補正される、
ムラ欠陥の低減方法。」

甲第7号証の段落【0001】に「本発明は、表示画像中の欠陥を検出する装置に関する。より具体的には、本発明は、表示画像中のムラ欠陥を検出し、補正する装置に関する。」と記載されているように、甲第7号証には、上記ムラ欠陥の低減方法を実行し、表示画像中のムラ欠陥を検出し補正する装置の発明も記載されており、具体的には以下の構成を有する発明(以下、「甲第7発明」という。)が記載されていると認められる。

「均一領域を有するテストパターンをディスプレーに表示されることが、ディスプレー階調のコード値すべてに対して行われるようにする手段と、
ディスプレーの各ピクセルの複数のグレーレベルを撮像し、ムラ画像を取得する、ディスプレーの外部に配置されたカメラと、
人間の目のコントラスト感受性関数であるCSFとの乗算のためにムラ画像を周波数領域の画像信号に変換し、逆フーリエ変換により空間領域の画像信号に戻すことによってCSFによるフィルタリングを行う手段と、
CSFによるフィルタリングが行われた画像に基づいて、補正階調と装置の非統一性とを重ね合わせることにより、結果としてディスプレー全体における実質的な均一性が得られるようにピクセルごとの補正階調を決定する手段と、
その補正階調を、ディスプレーのフレーム・バッファメモリ上で機能するムラ変換テーブルに取り込む手段と、
ディスプレーに入力された画像データを、ディスプレーに表示される前に、前記変換テーブルによって補正する手段と、
を備えた、表示画像中のムラ欠陥を検出し補正する装置。」

(2)本件特許発明1について
ア 対比

(ア)甲第7発明の「均一領域を有するテストパターン」は、本件特許発明1の「画像を出力するための信号」及び「表示パネルの全面に共通する信号値」に相当する。

(イ)甲第7発明の「ディスプレーの各ピクセルの複数のグレーレベルを撮像し、ムラ画像を取得する、ディスプレーの外部に配置されたカメラ」は、本件特許発明1の「前記表示パネルにおいて表示された出力画像を撮影する撮像手段」に相当する。

(ウ)甲第7発明の「均一領域を有するテストパターンをディスプレーに表示されることが、ディスプレー階調のコード値すべてに対して行われるようにする手段」は、「均一領域を有するテストパターン」の信号を供給する手段を備えていると認められるから、甲第7発明は、本件特許発明1の「画像を出力するための信号を表示パネルに供給する信号発生手段」に相当する手段を備えるということができる。

(エ)甲第7発明は、「ディスプレー」に「均一領域を有するテストパターン」を「ディスプレー階調のコード値すべてに対して」「表示」させるために、「ディスプレー階調のコード値すべて」のそれぞれについて、「均一領域を有するテストパターン」の「表示」を指示する手段を備えていると認められるから、甲第7発明の「均一領域を有するテストパターンをディスプレーに表示されることが、ディスプレー階調のコード値すべてに対して行われるようにする手段」は、本件特許発明1の「前記信号発生手段に対して、表示パネルの全面に共通する信号値の供給指示を出力する指示手段」に相当する手段を備えるということができる。

(オ)甲第7発明の「人間の目のコントラスト感受性関数であるCSFとの乗算のためにムラ画像を周波数領域の画像信号に変換し、逆フーリエ変換により空間領域の画像信号に戻すことによってCSFによるフィルタリングを行う手段」は、甲第7号証の図5のグラフから、「周波数領域の画像信号に変換」した「ムラ画像」を「CSFと乗算」する「CSFによるフィルタリング」は、CSFが零より大きい周波数成分についてはCSFの値に応じた透過率で透過し、CSFが零である周波数成分については透過率が零であるバンドパスフィルタリングを行う手段であると認められるから、本件特許発明1の「前記出力画像データに対し中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうことによって、同出力画像データから高周波成分及び低周波成分を除いたバンドパスデータを算出するバンドパスフィルタ手段」と、「前記出力画像データに対しバンドパスフィルタリングを行なうことによって、所定の周波数成分を除いたデータを算出するバンドパスフィルタ手段」である点で共通する。

(カ)甲第7発明の「その補正階調を、ディスプレーのフレーム・バッファメモリ上で機能するムラ変換テーブルに取り込む手段」は、「ムラ変換テーブル」を「ディスプレーに入力された画像データを、ディスプレーに表示される前に、前記変換テーブルによって補正する手段」に出力すると認められる。
よって、甲第7発明の「CSFによるフィルタリング行われた画像に基づいて、補正階調と装置の非統一性とを重ね合わせることにより、結果としてディスプレー全体における実質的な均一性が得られるようにピクセルごとの補正階調を決定する手段」及び「その補正階調を、ディスプレーのフレーム・バッファメモリ上で機能するムラ変換テーブルに取り込む手段」は、本件特許発明1の「前記バンドパスデータに対応した画像補正テーブルを出力する補正データ生成手段」と、「前記データに対応した画像補正テーブルを出力する補正データ生成手段」である点で共通する。

(キ)甲第7発明の、「表示画像中のムラ欠陥を検出し補正する装置」は、本件特許発明1の「画像補正データ生成システム」に相当する。

以上のことをまとめると、本件特許発明1と甲第7発明とは、

「A 画像を出力するための信号を表示パネルに供給する信号発生手段と、

B 前記表示パネルにおいて表示された出力画像を撮影する撮像手段と、

D を備えた画像補正データ生成システムであって、

E’前記信号発生手段に対して、表示パネルの全面に共通する信号値の供給指示を出力する指示手段と、

F 前記撮像手段から、出力画像データを取得する画像取得手段と、

G’前記出力画像データに対しバンドパスフィルタリングを行なうことによって、同出力画像データから所定の周波数成分を除いたデータを算出するバンドパスフィルタ手段と、

H’前記データに対応した画像補正テーブルを出力する補正データ生成手段を備えたことを特徴とする画像補正データ生成システム。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本件特許発明1は、「前記信号発生手段に対して、表示パネルの全面に共通する信号値の供給指示を出力する指示手段」、「前記出力画像データに対しバンドパスフィルタリングを行なうことによって、同出力画像データから所定の周波数成分を除いたデータを算出するバンドパスフィルタ手段」、及び「前記データに対応した画像補正テーブルを出力する補正データ生成手段」を備え、「前記信号発生手段及び前記撮像手段に接続される」「制御手段」を備えるのに対し、甲第7発明は、「制御手段」を備えるのか否か不明な点。

(相違点2)
「バンドパスフィルタリング」として、本件特許発明1は、「前記出力画像データに対し中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうことによって、同出力画像データから高周波成分及び低周波成分を除いたバンドパスデータを算出する」のに対し、
甲第7発明は、「CSFとの乗算のためにムラ画像を周波数領域の画像信号に変換し、CSFと乗算した周波数領域の画像信号を逆フーリエ変換により空間領域の画像信号に戻す」「CSFによるフィルタリング」を行うものであり、所定の周波数成分を分離するものではなく、出力画像データから除かれる周波数成分が「高周波成分及び低周波成分」ではない点で相違し、
「バンドパスフィルタリング」の内容が相違することに伴い、「補正データ生成手段」が「出力する」「データに対応した画像補正テーブル画像補正テーブル」の、「データ」が、本件特許発明1は、「出力画像データに対し中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうことによって、同出力画像データから高周波成分及び低周波成分を除いたバンドパスデータ」であるのに対し、甲第7発明は、「CSFとの乗算のためにムラ画像を周波数領域の画像信号に変換し、CSFと乗算した周波数領域の画像信号を逆フーリエ変換により空間領域の画像信号に戻」した「画像信号」である点で相違する。

構成要件で表現すれば、本件特許発明1と甲第7発明とは、構成要件A、B、D、E’、F、G’、H’を備えている点で一致し、本件特許発明1が構成要件C、及び構成要件E、G、Hのうち構成要件E’、G’、H’に含まれない部分をさらに備えているのに対し、甲第7発明がこれらの構成要件を欠いている点で相違し、相違点1は構成要件C、E、相違点2は構成要件G、Hに係る相違点である。

イ 相違点1についての判断
一般の装置において、装置が備える各構成を制御するための制御手段を設けることは、例を挙げるまでもなく当業者が通常実施している常套手段である。よって、甲第7発明においても「カメラ」(本件特許発明1の「撮像手段」に相当)、及び本件特許発明1の「画像を出力するための信号を表示パネルに供給する信号発生手段」に相当する手段を制御するための制御手段を設けることは、当業者が通常実施する技術事項に過ぎず、当該制御手段を制御対象である「カメラ」(本件特許発明1の「撮像手段」に相当)、及び本件特許発明1の「画像を出力するための信号を表示パネルに供給する信号発生手段」に相当する手段に接続することは、当然実施される技術事項である。
加えて、甲第7発明の、「均一領域を有するテストパターンをディスプレーに表示されることが、ディスプレー階調のコード値すべてに対して行われるようにする手段」が含む本件特許発明1の前記信号発生手段に対して、表示パネルの全面に共通する信号値の供給指示を出力する指示手段に相当する手段、「CSFによるフィルタリングを行う手段」(本件特許発明1の「前記出力画像データに対しバンドパスフィルタリングを行なうことによって、同出力画像データから所定の周波数成分を除いたデータを算出するバンドパスフィルタ手段」に相当)、及び「CSFによるフィルタリング行われた画像に基づいて、補正階調と装置の非統一性とを重ね合わせることにより、結果としてディスプレー全体における実質的な均一性が得られるようにピクセルごとの補正階調を決定する手段」及び「その補正階調を、ディスプレーのフレーム・バッファメモリ上で機能するムラ変換テーブルに取り込む手段」(本件特許発明1の「前記データに対応した画像補正テーブルを出力する補正データ生成手段」に相当)を、上記「制御手段」に備えさせることは、当業者が適宜実施可能な設計事項に過ぎない。

ウ 相違点2についての判断
請求人は、本件特許発明1と甲第7発明を対比して、請求書において相違点2に係る構成要件Gが甲第7号証に開示されていることを主張し(審判請求書7.(6)(6-2)ア(キ)、第44、45ページ)、口頭審理陳述要領書において甲第7号証に構成要件Gが記載されているに等しいと主張する。(口頭審理陳述要領書6.(3)ア(キ)?(コ)、第8?13ページ)
以下、それぞれの主張について検討する。

(ア)請求書の主張について
請求人は、請求書において、甲第4号証ないし甲第6号証から「CSFによるフィルタリングは、カメラにより撮像されたデータに対し中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうことによって、同出力画像データから高周波成分及び低周波成分を除いたバンドパスデータを算出するものであること」が周知技術であり、当該周知技術を踏まえると、甲第7号証は、上記相違点2に係る構成要件G「前記出力画像データに対し中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうことによって、同出力画像データから高周波成分及び低周波成分を除いたバンドパスデータを算出するバンドパスフィルタ手段」を開示していると主張する。

しかし、上記1(1)ウ(エ)において述べたように、甲第4号証ないし甲第6号証の記載から認定できる周知事実は、「人間の目は一種のバンドパスフィルタと考えられ、そのバンドパスフィルタの特性は、所定の周波数において透過率が最も高く、周波数が前記所定周波数から高くなるに従って低くなり、前記所定周波数から低くなるに従って低くなる性質を示すコントラスト感度関数(CSF)として表されること」であり、「CSFによるフィルタリングは、カメラにより撮像されたデータに対し中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうことによって、同出力画像データから高周波成分及び低周波成分を除いたバンドパスデータを算出するものであること」については、甲第4号証ないし甲第6号証のいずれにも記載されていないから、周知技術であると認めることはできない。

よって、甲第4号証ないし甲第6号証の記載の技術事項を参酌しても、甲第7発明の「CSFによるフィルタリング」が「中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリング」であるとはいえないから、甲第7号証には、上記相違点2に係る構成要件G「前記出力画像データに対し中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうことによって、同出力画像データから高周波成分及び低周波成分を除いたバンドパスデータを算出するバンドパスフィルタ手段」が開示されているとはいえない。
さらに、甲第4号証ないし甲第6号証から「カメラにより撮像されたデータに対し中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうことによって、同出力画像データから高周波成分及び低周波成分を除いたバンドパスデータを算出する」ことが周知技術であるとは認められないから、甲第7号証の「CSFによるフィルタリング」を「前記出力画像データに対し中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリング」に置き換えることが、周知技術、慣用技術の転換であるとも認められない。

(イ)口頭審理陳述要領書の主張について
請求人は、口頭審理陳述要領書において、

a 「甲7の請求項9には、「人間の視覚系によって視認可能な前記ディスプレー上のムラ欠陥を低減するために前記ピクセルの補正値を決定する一方で、人間の視覚系によって視認できない前記ディスプレー上のムラ欠陥は低減しないように前記ピクセルの補正値を決定し、」との記載があることから、甲7は、CSFの空間周波数特性に完全一致したフィルタリングに限定するものでないことが理解できる。つまり、甲7の請求項9は、ディスプレイ上のムラ欠陥を低減するか否かを、該ムラ欠陥が視認可能であるか否かを基準にしているものと認められる。」

b 段落【0033】、【0034】の記載から「甲7は、CSFを、人間の視覚系によって視認可能な空間周波数のむらのみを補正するための1つの判断基準として使用し、視認できない空間周波数のむらはたとえ物理的に測定可能であっても補正しないという技術的思想を開示するものと理解できる。」

c 「上述したように、甲7は、視認可能な空間周波数のむらのみを補正し、視認できない空間周波数のむらはたとえ物理的に測定可能であっても補正しない技術的思想を有するものであるから、視認可能なむらを含む画像データのみを分離するものでなければならず」

と主張し、「コントラスト感度が最大値の10%以下のときの空間周波数のむらについては、視認できないむらであると仮定」すれば、甲第7号証には、構成要件G「前記出力画像データに対し中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうことによって、同出力画像データから高周波成分及び低周波成分を除いたバンドパスデータを算出するバンドパスフィルタ手段」が開示されているに等しいと主張する。

しかし、仮に、上記主張のとおり、甲第7号証に記載の「CSFによるフィルタリング」が、甲第7号証の図5に記載の「CSF」を「ムラ画像を周波数領域の画像信号に変換し」た画像と「乗算」するものに限らず、甲第7号証に、コントラス感度が所定値以下となる低周波及び高周波の周波数領域を「人間の視覚系によって視認できない」周波数領域とし、「人間の視覚系によって視認できない前記ディスプレー上のムラ欠陥は低減しないように」当該周波数領域については値を零とした「CSF」を「ムラ画像を周波数領域の画像信号に変換し」た画像と「乗算」する「CSFによるフィルタリング」が記載されているに等しいとしても、甲第7号証に記載されているに等しい発明は、周波数領域の画像信号に変換されたムラ画像の、コントラスト感度が所定値以下となる低周波領域と高周波領域を零とし、それ以外の中間的な周波数成分については、CSFの大きさに応じた係数を掛ける「CSFによるフィルタリング」を行う発明であり、この「CSFによるフィルタリング」は、「中間的な周波数成分は変更しない処理」を行っていないから、「中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリング」であるとはいえない。

(ウ)本件特許発明1についてのまとめ
上記(ア)及び(イ)において述べたように、甲第7号証に、構成要件Gが記載されていると認められず、記載されているに等しいとも認められない。さらに、甲第7発明の「CSFによるフィルタリング」を「前記出力画像データに対し中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリング」に置き換えることが、周知技術、慣用技術の転換であるとも認められない。
よって、構成要件G、Hに係る相違点2は実質的な相違点であり、課題解決のための具体化手段における微差ともいえないから、甲第7発明と本件特許発明1が同一であるとはいえない。

(3)本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含む。したがって、本件特許発明1と同様、本件特許発明2も、甲第7発明と同一であるとはいえない。

(4)本件特許発明3について
本件特許発明3は、本件特許発明1の画像補正データ生成システムを用いる方法の発明であり、相違点2に係る本件特許発明1の構成要件G、Hに対応する、構成要件G3、H3を有するから、本件特許発明1と同様、本件特許発明3も、甲第7発明と同一であるとはいえない。

(5)本件特許発明4、5について
本件特許発明4は、画像補正回路の発明であり、相違点2に係る本件特許発明1の構成要件G、Hに対応する、構成要件M、Nを有するから、本件特許発明1と同様、本件特許発明4も、甲第7発明と同一であるとはいえない。
本件特許発明5は、本件特許発明4の発明特定事項をすべて含む。したがって、本件特許発明4と同様、本件特許発明5も、甲第7発明と同一であるとはいえない。


3 無効理由3(特許法第36条第4項第1号違反)及び無効理由4(特許法第36条第6項第2号違反)について

無効理由3及び4についてまとめて検討する。

(1)本件特許の明細書の記載

本件特許の明細書には以下の記載がある。

ア 「【0004】
ディスプレイに完全にフラットな画像(全画素同一値)を入力した場合、理想的には完全にフラットな画像が出力される。しかし、実際には各ピクセルで明るさが僅かに異なり、それが表示むらとなって現れる。このような表示むらが液晶パネルにおいて発生する原因は、セルギャップのむらや、バックライトの明るさの分布に依存する。
【0005】
そして、これらの表示むらを画一的に除去したのでは、不都合が生じることがある。すなわち、液晶自体のむらが1%以下、多い場合にも5%程度に対して、バックライトの周辺減光は多いときは30%程度もある。このような表示むらを補正する場合、完全な白(100%グレー)画像に対して、データ値を補正して、それ以上明るくすることはできないので、マイナス側に補正するしかない。従って、表示むらを画一的に除去するための補正を行なった場合、液晶パネルにおける周辺減光の影響を受けて、中心部付近の輝度を低下させてしまうことになる。すなわち、多いときは30%もパネルの輝度を落とすことになる。
【0006】
また、個々のディスプレイ毎に補正を行なう場合には、できるだけ効率的に補正できることが望ましい。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、表示むらを効率的に抑制するための画像補正データ生成システム、画像補正データ生成方法及び画像補正回路を提供することにある。」

イ 「【0040】
・ 本実施形態では、バンドパスフィルタリングを行なった分布を用いて画像補正テーブルを生成する。これにより、緩やかな輝度の変化については補正が行なわれない。液晶自体のむらが1%以下、多い場合にも5%程度に対して、バックライトの周辺減光は多いときは30%程度もあることがある。仮に低周波数成分の除去(ローカット)を行なわないで補正した場合、完全な白(100%グレー)画像に対して、液晶パネル10における周辺減光の影響を受けて、中心部付近の輝度を低下させてしまうことになる。
【0041】
このような場合、画面全体のなだらかな光量変化は人間の眼には検知され難く、ローカットを行なわない補正により液晶パネル10の輝度が落ちたことのみが目に付くことになる。
【0042】
また、非常に細かいむら(空間周波数の高い成分)も人間の眼に検知され難い。更に、非常に細かい表示むら(高周波数成分)を補正するには、正確に測定画像と液晶のピクセル位置の相関を取る必要があり、僅かでもずれるとかえって表示むらを作りこむことになる。従って、高周波数成分の除去(ハイカット)を行なうことにより、簡易かつ効率的に画像補正テーブルを生成することができる。」

(2)本件特許の明細書の記載から理解できる事項
上記(1)ア及びイの記載から、以下のことがいえる。

ア 上記(1)アの記載から、本件特許の明細書には、セルギャップのむらや、バックライトの明るさの分布に依存する表示むらを画一的に除去したのでは不都合が生じることがあることが、解決するべき課題とし、表示むらを効率的に抑制することを目的とすることが記載されている。

イ 上記(1)イの記載から、本件特許の明細書には、人間の眼には検知され難い周波数成分である低周波成分、高周波成分については、補正を行わないことで、上記アに記載の課題を解決し、上記アに記載の目的を達成する発明が記載されている。

ウ 段落【0005】、【0040】の記載から、低周波成分についての補正をおこなうことにより生じる不都合は、段落【0005】に例示された、「バックライトの周辺減光」による「液晶パネルにおける周辺減光の影響を受けて、中心部付近の輝度を低下させてしまうこと」であると理解でき、段落【0042】の記載から、高周波成分についての補正をおこなうことにより生じる不都合は、「正確に測定画像と液晶のピクセル位置の相関を取る必要があり、僅かでもずれるとかえって表示むらを作りこむことになる」ことであると理解できる。

エ 上記アないしウより、本件特許の明細書には、人間の眼には検知され難い周波数成分である低周波成分、高周波成分について表示むらを除去することは、かえって「中心部付近の輝度の低下」及び「表示むらを作りこむこと」という不都合が生じるため、このような低周波成分、高周波成分については補正を行わないことにより、「表示むらを画一的に除去したのでは不都合が生じることがある」という課題を解決し、表示むらを効率的に抑制する発明が記載されている。

(3) 請求人の主張及び当審の判断
ア 請求人の主張
請求人は、「本件特許の明細書の発明の詳細な説明は、本件特許の請求項1、3及び4のバンドパスフィルタリングで分離される「中間的な周波数成分」、並びにバンドパスデータから除かれる「高周波成分」及び「低周波成分」、これらがどのような周波数の成分であるのか、具体的な数値や範囲等が全く記載されておらず、また、具体的にどのような基準又は手法で周波数の範囲を決定すれば本件発明の解決すべき課題を解決することができるのかが全く記載されていない。
そのため、本件特許の請求項1、3及び4の記載における「中間的な周波数成分」、「高周波成分」及び「低周波成分」が具体的にどのような周波数成分であるのかは、本件特許の発明の詳細な説明の記載、及び本件特許の出願時における技術常識に照らしても、当業者が明確に理解することは極めて困難である。」と主張し、
「以上のとおり、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件特許発明1?5について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号の規定により特許を受けることができないものである。
また、本件特許の請求項1?5の記載は、特許を受けようとする発明が明確でないから、特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができないものである。」と主張する。(審判請求書7.(7)(7-3)-(7-5)、第51-52ページ)

イ 当審の判断
本件特許の明細書には、上記(2)エにおいて述べたように、人間の眼には検知され難い周波数成分である低周波成分、高周波成分について表示むらを除去することは、かえって「中心部付近の輝度の低下」及び「表示むらを作りこむこと」という不都合が生じるため、このような低周波成分、高周波成分については補正を行わないことにより、「表示むらを画一的に除去したのでは不都合が生じることがある」という課題を解決し、表示むらを効率的に抑制する発明が記載されている。
一方、「人間の眼には検知され難い周波数成分」の範囲は、表示パネルまでの距離、表示パネルの性能等の条件により異なり、一意に定まるものではないが、上記した種々の条件に基づいて当業者が適宜決定しうるものであることは明らかである。
したがって、本件特許発明は、高周波成分及び低周波成分の具体的な範囲を定めることに技術的意義を有する発明ではなく、表示パネルまでの距離、表示パネルの性能等の条件によって異なる高周波側及び低周波側の「人間の眼には検知され難い周波数成分」の範囲に応じて、その範囲に入る高周波成分及び低周波成分を除き、中間的な周波数成分のみを分離し、その中間的な周波数成分のむらを除去することによって、表示むらを画一的に除去したのでは不都合が生じることがあるという課題を解決することに技術的意義を有する発明として明確に理解することができる。そして、本件特許発明の実施に際しては、高周波側及び低周波側の両方における「人間の眼には検知され難い周波数成分」の範囲を、表示パネルまでの距離、表示パネルの性能等に応じて任意に定めればよいことは明らかである。
そうすると、高周波成分及び低周波成分の範囲が具体的な数値範囲として特定されていないからといって、本件特許発明は明確でないとか、本件特許発明を実施することができないということはできない。
したがって、請求人の主張は、採用することができない。

(4)小括
したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、本件特許発明1-16を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているということができ、また、本件特許発明1-16は明確である。

第6 むすび
以上に述べたとおり、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1ないし5のそれぞれに係る発明についての特許を無効にすることはできない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論の通り審決する。
 
審理終結日 2018-08-23 
結審通知日 2018-08-27 
審決日 2018-09-07 
出願番号 特願2008-227139(P2008-227139)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (H04N)
P 1 113・ 536- Y (H04N)
P 1 113・ 537- Y (H04N)
P 1 113・ 161- Y (H04N)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 清水 稔
▲うし▼田 真悟
登録日 2011-02-10 
登録番号 特許第4681033号(P4681033)
発明の名称 画像補正データ生成システム、画像データ生成方法及び画像補正回路  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
代理人 塩谷 英明  
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