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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1345375
審判番号 不服2017-17732  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-30 
確定日 2018-10-18 
事件の表示 特願2012-156789「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月 3日出願公開、特開2014- 18236〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年7月12日に特許出願したものであって、平成28年6月2日付けで拒絶理由通知がなされ、平成28年8月1日付けで意見書及び手続補正書が提出され、これに対して平成29年2月16日付けで最後の拒絶理由通知がなされ、平成29年4月25日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成29年8月30日付け(発送日:平成29年9月5日)で補正却下の決定がなされるとともに拒絶査定がなされ、これに対して平成29年11月30日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされ、これに対して平成30年2月16日付けで前置報告がなされたものである。

第2 平成29年11月30日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成29年11月30日付けの手続補正(以下、本件補正という)を却下する。

[理由]
1.本件補正の概要
本件補正は特許請求の範囲の請求項1の補正を含むものであり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、
補正前(平成28年8月1日付け手続補正)の
「【請求項1】
A 始動入賞領域への遊技球の入賞に基づき、複数の識別情報を変動表示する変動表示ゲームを表示する表示装置を備える遊技機において、
B 前記始動入賞領域への遊技球の入賞に基づき前記変動表示ゲームの実行権利を始動記憶として所定の上限数まで記憶する始動記憶手段と、
C 前記始動記憶に対応する変動表示ゲームの結果に関する情報を、前記対応する変動表示ゲームの実行前に判定する事前判定手段と、
D 遊技者の操作に応じて操作信号を発生可能な操作手段と、
E 前記始動記憶手段に記憶されている始動記憶に対応する表示を前記表示装置にさせると共に、前記事前判定手段の判定結果に基づいて、前記対応する変動表示ゲームの実行前に特定画像を前記表示装置に表示させる制御手段と、を備え、
E-1 前記制御手段は、前記事前判定手段の判定結果と、前記操作手段の操作信号とに応じて、前記始動記憶の表示と前記特定画像に関連する演出表示を前記表示装置に表示させる
ことを特徴とする遊技機。」
から、補正後(本件補正である平成29年11月30日付け手続補正)の
「【請求項1】
A’ 始動入賞領域への遊技球の入賞に基づき、複数の識別情報を変動表示する変動表示ゲームを表示する表示装置を備え、当該変動表示ゲームの停止結果態様が予め定めた特別結果態様となった場合に、遊技者にとって有利な特別遊技状態を発生させる遊技機において、
B 前記始動入賞領域への遊技球の入賞に基づき前記変動表示ゲームの実行権利を始動記憶として所定の上限数まで記憶する始動記憶手段と、
C 前記始動記憶に対応する変動表示ゲームの結果に関する情報を、前記対応する変動表示ゲームの実行前に判定する事前判定手段と、
D 遊技者の操作に応じて操作信号を発生可能な操作手段と、
E 前記始動記憶手段に記憶されている始動記憶に対応する表示を前記表示装置にさせると共に、前記事前判定手段の判定結果に基づいて、前記対応する変動表示ゲームの実行前に特定画像を前記表示装置に表示させる制御手段と、を備え、
E-1’ 前記制御手段は、
前記特定画像が表示された際に、前記事前判定手段の判定結果と、前記操作手段の操作信号とに応じて、前記表示装置における前記始動記憶に対応する表示と当該特定画像とに関連する演出表示を、前記表示装置に表示させ、
E-2 前記事前判定手段の判定結果として前記特別遊技状態の発生に関する信頼度に基づき、前記特定画像を変更可能にした
ことを特徴とする遊技機。」
へ補正された(記号は分説のため当審で付した。下線は補正箇所を示す。)。

2.補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1における、以下の事項に関する補正、すなわち、
(ア)補正前の請求項1の発明特定事項である「遊技機」に関して、出願当初明細書の【0062】、【0063】に基づいて、「当該変動表示ゲームの停止結果態様が予め定めた特別結果態様となった場合に、遊技者にとって有利な特別遊技状態を発生させ」という事項を追加することにより、「遊技機」において「遊技者にとって有利な特別遊技状態を発生」させること、及び「特別遊技状態を発生させ」るための条件を限定する補正、
(イ)「前記制御手段は、前記事前判定手段の判定結果と、前記操作手段の操作信号とに応じて、前記始動記憶の表示と前記特定画像に関連する演出表示を前記表示装置に表示させ」を、出願当初明細書の【0400】-【0403】、図38に基づいて、「前記制御手段は、前記特定画像が表示された際に、前記事前判定手段の判定結果と、前記操作手段の操作信号とに応じて、前記表示装置における前記始動記憶に対応する表示と当該特定画像とに関連する演出表示を、前記表示装置に表示させ」とすることにより、補正前の請求項1の発明特定事項である「前記始動記憶手段に記憶されている始動記憶に対応する表示を前記表示装置にさせると共に、前記事前判定手段の判定結果に基づいて、前記対応する変動表示ゲームの実行前に特定画像を前記表示装置に表示させる制御手段」について、「演出表示」を行う時点を「前記特定画像が表示された際に」とするとともに、「前記始動記憶の表示と前記特定画像に関連する演出表示」を「前記表示装置における前記始動記憶に対応する表示と当該特定画像とに関連する演出表示」とすることで限定する補正、
(ウ)補正前の請求項1の発明特定事項である「前記制御手段」に関して、出願当初明細書の【0403】、図38に基づいて、「前記事前判定手段の判定結果として前記特別遊技状態の発生に関する信頼度に基づき、前記特定画像を変更可能にした」という事項を追加することにより、「特定画像を変更可能にした」こと、及び「特定画像を変更可能に」することが「事前判定手段の判定結果として」「特別遊技状態の発生に関する信頼度に基づき」行われることを限定する補正である。
そして、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する限定的減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は新規事項を追加するものではない。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)刊行物1
当審において発見された、特開2010-154921号公報(以下、刊行物1という)には以下の記載がある。(下線は合議体が審決にて付した。以下、同じ。)

(ア) 「【0006】
本発明は、かかる実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、遊技機の稼動率を向上させることができる遊技機を提供することである。
【課題を解決するための手段の具体例およびその効果】
【0007】
(1) 遊技媒体(遊技球)による始動領域(第1始動入賞口13、第2始動入賞口14、ゲート32)の通過により変動表示の実行条件(始動入賞)が成立した後、変動表示の開始を許容する開始条件(大当り遊技中でなくかつ先に変動表示を開始した保留記憶に起因する変動表示が終了しているとき)の成立に基づいて、各々が識別可能な識別情報(図柄)の変動表示を実行し、表示結果を導出表示する変動表示部(演出表示装置9)を備え、該変動表示部に導出表示された表示結果が予め定められた特定表示結果(大当り表示結果)となったときに、遊技状態を通常遊技状態よりも遊技者にとって有利な特定遊技状態(大当り遊技状態)に制御する遊技機(パチンコ遊技機1)に制御する遊技機(パチンコ遊技機1)であって、
遊技者が操作可能な操作手段(操作ボタン130)と、
前記実行条件が成立したときに、前記特定遊技状態に制御するか否かを特定するための情報として第1の数値データ群(ランダムRの数値データ群)から第1の数値データ(ランダムRの数値データ)を抽出するとともに、変動表示の変動パターンを特定するための情報として第2の数値データ群(ランダム3,4の数値データ群)から第2の数値データ(ランダム3,4の数値データ)を抽出する数値データ抽出手段(遊技制御用マイクロコンピュータ560、図20のS213、図21のS223)と、
前記実行条件が成立したが前記開始条件が成立していない変動表示について、前記数値データ抽出手段により抽出された前記第1の数値データおよび前記第2の数値データを含む数値情報を保留記憶情報として所定の上限数の範囲内で記憶可能な保留記憶手段(遊技制御用マイクロコンピュータ560、RAM55、図20のS213、図21のS223)と、
該保留記憶手段に記憶された前記保留記憶情報の記憶数を認識可能に表示する(図11)保留記憶表示部(合算保留記憶表示部18c)と、
前記開始条件が成立したことに基づいて、前記保留記憶手段の前記保留記憶情報における前記第1の数値データに基づいて、前記変動表示部で実行される変動表示について、前記特定遊技状態に制御するか否かを、前記識別情報の表示結果が導出表示される以前に決定する事前決定手段(遊技制御用マイクロコンピュータ560、図25のS59、図23のS341?S343)と、
該事前決定手段による決定に応じて、前記保留記憶手段の前記保留記憶情報における前記第2の数値データに基づき、前記変動表示部において実行される変動表示の変動パターン(図12?図16の変動パターン)を選択する変動パターン選択手段(遊技制御用マイクロコンピュータ560、図26のS96,S98)と、
前記変動パターン選択手段が選択した変動パターンに基づいて、当該開始条件が成立した識別情報の変動表示を実行する変動表示実行手段(演出制御用マイクロコンピュータ100、図42のS800?S803)と、
前記保留記憶情報の記憶数に応じて複数設けられ、所定の判定値(ランダム4)が前記複数の変動パターンに割振られたデータテーブルよりなる複数の判定テーブル(図12の通常状態はずれ時第1,2判定テーブル、図13の時短状態はずれ時第1,2判定テーブル)と、
前記実行条件が成立したときに、前記数値データ抽出手段により抽出された数値情報を読出して判定する先読判定手段(遊技制御用マイクロコンピュータ560、図22のS231?S242)とを備え、
前記変動パターン選択手段は、前記複数の判定テーブルのうち、前記保留記憶手段に記憶されている保留記憶情報の記憶数に対応する判定テーブルと、前記第2の数値データとに基づいて変動パターンを選択し(S95?S98)、
前記複数の判定テーブルは、前記所定の判定値として、前記複数の変動パターンのうち特別の変動パターン(スーパーリーチB)については前記保留記憶情報の記憶数に関わらず共通の判定値が割振られており(たとえば、図12および図13の判定テーブルで、スーパーリーチBには、始動記憶数に関わらずランダム3の105?108という同じ判定データが割振られている)、前記特別変動パターン以外の変動パターンについては前記保留記憶情報の記憶数に応じて異なる判定値が割振られ(たとえば、図12および図13の判定テーブルで、通常、ノーマルリーチ、スーパーリーチAには、始動記憶数により異なるランダム3の判定データが割振られている)、
前記先読判定手段により前記共通の判定値に該当する前記第2の数値データが抽出されたと判定されたことに基づいて、前記操作手段に対する操作がされたことを条件として、当該第2の数値データが記憶された保留記憶情報に基づく変動表示の開始条件成立前に、前記保留記憶表示部の表示態様を変化させる保留予告演出(先読み予告)を行なう保留予告演出実行手段(演出制御用マイクロコンピュータ100、図41のS666、図43のS518、図46のS683,S684、図56のS845,S846、図57のS8435)をさらに備えた。」

(イ) 「【0041】
また、演出表示装置9の表示画面には、第1保留記憶数と第2保留記憶数との合計である合計数(合算保留記憶数)を表示する領域(以下、合算保留記憶表示部18cという。)が設けられている。合計数を表示する合算保留記憶表示部18cが設けられているので、変動表示の開始条件が成立していない実行条件の成立数の合計を把握しやすくすることができる。」

(ウ) 「【0089】
図3は、中継基板77、演出制御基板80、ランプドライバ基板35および音声出力基板70の回路構成例を示すブロック図である。なお、図3に示す例では、ランプドライバ基板35および音声出力基板70には、マイクロコンピュータは搭載されていないが、マイクロコンピュータを搭載してもよい。また、ランプドライバ基板35および音声出力基板70を設けずに、演出制御に関して演出制御基板80のみを設けてもよい。
【0090】
演出制御基板80は、演出制御用CPU101、および演出図柄プロセスフラグ等の演出に関する情報を記憶するRAMを含む演出制御用マイクロコンピュータ100を搭載している。なお、RAMは外付けであってもよい。この実施の形態では、演出制御用マイクロコンピュータ100におけるRAMは電源バックアップされていない。演出制御基板80において、演出制御用CPU101は、内蔵または外付けのROM(この実施の形態では演出制御用マイクロコンピュータ100にROMが設けられている)に格納されたプログラムにしたがって動作し、中継基板77を介して入力される主基板31からの取込信号(演出制御INT信号)に応じて、入力ドライバ102および入力ポート103を介して演出制御コマンドを受信する。また、演出制御用CPU101は、演出制御コマンドに基づいて、VDP(ビデオディスプレイプロセッサ)109に演出表示装置9の表示制御を行なわせる。
【0091】
また、操作ボタン130からの操作信号が、入力ポート107を介して演出制御用マイクロコンピュータ100に入力される。演出制御用マイクロコンピュータ100は、後述するように、操作ボタン130からの操作信号に基づいて、たとえば予告演出等の遊技の演出を行なう。」

(エ) 「【0163】
図11は、先読み予告演出として、ボタン予告が実行されたときの表示状態を示す表示画面図である。
【0164】
図11(A)は、演出表示装置9において、開始した変動中に始動入賞して保留記憶表示が加算された状態を示している。図11(A)においては、図10(C)で示した場合と同様に、加算された保留記憶表示が、すでに記憶されている保留記憶表示の通常態様(たとえば白丸)と異なる態様(予告態様、たとえば黒丸)で表示されており、通常態様と異なる態様で表示されている保留記憶を対象として、先読み予告が行なわれることを示している。図11(B)は、特別図柄の変動停止に対応して、「左」,「中」,「右」の図柄表示エリア9L,9C,9Rの全部で演出図柄が停止表示されて停止図柄が確定し、変動表示が終了している状態を示している。このような保留記憶表示は、少なくとも、操作ボタン130が操作されたときに保留記憶表示が変化するものであればよい。なお、先読み予告が行なわれるときには、保留記憶表示を通常態様と同様の態様で表示するようにしてもよい。
【0165】
図11(C)では、特別図柄の変動開始に対応して新たに開始された演出図柄の変動中であって、いずれの図柄表示エリアにも演出図柄が停止されていないときに、先読み予告としてボタン予告が開始されるときの表示状態を示している。ボタン予告を実行することが決定されたときには、図11(C)に示すように、演出表示装置9において、いずれの図柄表示エリアにも演出図柄が停止されていない変動中の状態において、操作ボタンを示す画像(以下、操作ボタン画像と呼ぶ)90と、「ボタンを押して蛙を葉っぱに乗せて」という操作要求メッセージを示す画像(以下、操作要求メッセージ画像)901とが表示される。これら操作ボタン画像90および操作要求メッセージ画像901の表示は、遊技者による操作ボタン130の操作を促すために実行されるものであり、ボタン操作促進演出という。ボタン操作促進演出が行なわれた後、(D)に示すように、池の中で回転している複数の葉っぱに対し、ハンマを操作して蛙を打出していずれかの葉っぱの上に蛙を乗せる所定のボタン操作ゲームが実行可能であることを画像により示すゲーム開始前演出が行なわれる。ゲーム開始前演出は、所定の操作有効期間内に操作ボタン130が操作されるまで、または、操作ボタン130が操作されずに操作有効期間が経過するまで表示される。
【0166】
ボタン操作促進演出の開始時から操作ボタン130が操作されずにゲーム開始前演出が終了するまでの期間は、遊技者による操作ボタン130の操作を有効に検出する操作有効期間である。操作有効期間内に遊技者による操作ボタン130の操作が検出されると、その操作が検出されたタイミングで、(E)に示すように、ハンマを操作して蛙を打出す画像が表示される。その後、たとえば、(F)に示すようなボタン操作ゲームの勝利画像としての蛙が葉っぱの上に乗る画像、または、ボタン操作ゲームの敗北画像としての蛙が葉っぱの上に乗らない画像(図示省略)が表示される。なお、ボタン操作ゲームの敗北画像としては、蛙が葉っぱの上に乗らない画像ではなく、(D)で表示された画像をフェードアウトさせるようにしてもよい。
・・・
【0167】
そして、(F)に示すようなボタン操作ゲームの勝利画像としての蛙が葉っぱの上に乗る画像が表示された後には、(G)に示すように、合算保留記憶表示部18cにおいて予告の対象となる保留記憶表示が、前述のような黒丸の画像から、黒丸が割れて、たとえば「激熱」というような予告対象の保留記憶表示の内容を示唆するような吹き出しのメッセージ931が付された予告画像930に変化する予告演出が行なわれる。予告画像930としては、メッセージ931の内容が異なる複数種類の画像が設けられており、大当りとなる信頼度を示すために選択されたいずれか1つの画像が表示される。たとえば、勝利画像が表示された後の予告画像としては、「激熱」というメッセージ931を表示する中信頼度予告パターンと、「フィーバー」というメッセージ931を表示する高信頼度予告パターンとが設けられており、ボタン予告において大当りとなるときには、「フィーバー」の方が「激熱」よりも高い確率で選択されて表示される。このような大当りとなる信頼度を示す表示が行なわれることにより、ボタン操作ゲームに勝利したときには、大当りとなる確率が高いことを認識することができるので、遊技者の興趣を向上させることができる。
・・・
【0169】
演出制御用マイクロコンピュータ100では、後述するように、ボタン予告の種別の予告を実行すると決定したときに、予告対象の保留記憶が大当りとなるかはずれとなるかで異なる割合で、高信頼度予告パターン、中信頼度予告パターン、および、低信頼度予告パターンのうちからいずれかの予告パターンを選択する。そして、高信頼度予告パターンまたは中信頼度予告パターンを選択したときには、操作ボタン130の操作に応じて勝利画像を表示した後、選択されているパターンで保留記憶表示を変化させる制御を行なう。また、低信頼度予告パターンを選択したときには、操作ボタン130の操作に応じて敗北画像を表示した後、選択されている低信頼度予告パターンで保留記憶表示を変化させる制御を行なう。」

(オ)「





(カ)(オ)の図11(D)には、(エ)の【0165】に関連して、「池の中で回転している複数の葉っぱに対し、ハンマを操作して蛙を打出していずれかの葉っぱの上に蛙を乗せる所定のボタン操作ゲームが実行可能であることを画像により示すゲーム開始前演出が行なわれ」る際に、同時に「池の中で回転している複数の葉っぱ」「蛙」「ハンマ」の画像が表示されていることが看取できる。

(キ) (ア)の【0007】の「遊技媒体(遊技球)による始動領域(第1始動入賞口13、第2始動入賞口14、ゲート32)の通過により変動表示の実行条件(始動入賞)が成立した後、変動表示の開始を許容する開始条件(大当り遊技中でなくかつ先に変動表示を開始した保留記憶に起因する変動表示が終了しているとき)の成立に基づいて、各々が識別可能な識別情報(図柄)の変動表示を実行し、表示結果を導出表示する変動表示部(演出表示装置9)を備え、該変動表示部に導出表示された表示結果が予め定められた特定表示結果(大当り表示結果)となったときに、遊技状態を通常遊技状態よりも遊技者にとって有利な特定遊技状態(大当り遊技状態)に制御する遊技機(パチンコ遊技機1)・・・であって、
遊技者が操作可能な操作手段(操作ボタン130)と、
前記実行条件が成立したときに、前記特定遊技状態に制御するか否かを特定するための情報として第1の数値データ群・・・から第1の数値データ・・・を抽出するとともに、変動表示の変動パターンを特定するための情報として第2の数値データ群・・・から第2の数値データ・・・を抽出する数値データ抽出手段(遊技制御用マイクロコンピュータ560・・・)と、」という記載、
「前記実行条件が成立したが前記開始条件が成立していない変動表示について、前記数値データ抽出手段により抽出された前記第1の数値データおよび前記第2の数値データを含む数値情報を保留記憶情報として所定の上限数の範囲内で記憶可能な保留記憶手段・・・と、」という記載、
「該保留記憶手段に記憶された前記保留記憶情報の記憶数を認識可能に表示する・・・保留記憶表示部(合算保留記憶表示部18c)と、」という記載、
「当該開始条件が成立した識別情報の変動表示を実行する変動表示実行手段(演出制御用マイクロコンピュータ100・・・)と、」という記載、
「前記実行条件が成立したときに、前記数値データ抽出手段により抽出された数値情報を読出して判定する先読判定手段(遊技制御用マイクロコンピュータ560・・・)を備え、」という記載、
「前記先読判定手段により前記共通の判定値に該当する前記第2の数値データが抽出されたと判定されたことに基づいて、前記操作手段に対する操作がされたことを条件として、当該第2の数値データが記憶された保留記憶情報に基づく変動表示の開始条件成立前に、・・・保留予告演出(先読み予告)を行なう保留予告演出実行手段(演出制御用マイクロコンピュータ100・・・)をさらに備え」という記載、及び(ウ)の【0091】「・・・操作ボタン130からの操作信号に基づいて、・・・予告演出等・・・を行なう」という記載から、刊行物1には、
「遊技媒体(遊技球)による始動領域(第1始動入賞口13、第2始動入賞口14、ゲート32)の通過により変動表示の実行条件(始動入賞)が成立した後、変動表示の開始を許容する開始条件(大当り遊技中でなくかつ先に変動表示を開始した保留記憶に起因する変動表示が終了しているとき)の成立に基づいて、各々が識別可能な識別情報(図柄)の変動表示を実行し、表示結果を導出表示する変動表示部(演出表示装置9)を備え、該変動表示部に導出表示された表示結果が予め定められた特定表示結果(大当り表示結果)となったときに、遊技状態を通常遊技状態よりも遊技者にとって有利な特定遊技状態(大当り遊技状態)に制御する遊技機(パチンコ遊技機1)であって、
遊技者が操作可能な操作手段(操作ボタン130)であって、操作ボタン130からの操作信号に基づいて、予告演出等を行う、操作手段と、
前記実行条件が成立したときに、前記特定遊技状態に制御するか否かを特定するための情報として第1の数値データ群から第1の数値データを抽出するとともに、変動表示の変動パターンを特定するための情報として第2の数値データ群から第2の数値データを抽出する数値データ抽出手段(遊技制御用マイクロコンピュータ560)と、
前記実行条件が成立したが前記開始条件が成立していない変動表示について、前記数値データ抽出手段により抽出された前記第1の数値データおよび前記第2の数値データを含む数値情報を保留記憶情報として所定の上限数の範囲内で記憶可能な保留記憶手段と、
該保留記憶手段に記憶された前記保留記憶情報の記憶数を認識可能に表示する、演出表示装置9の表示画面に設けられた、合算保留記憶数を表示する領域である、保留記憶表示部(合算保留記憶表示部18c)と、
当該開始条件が成立した識別情報の変動表示を実行する変動表示実行手段(演出制御用マイクロコンピュータ100)と、
前記実行条件が成立したときに、前記数値データ抽出手段により抽出された数値情報を読出して判定する先読判定手段(遊技制御用マイクロコンピュータ560)とを備え、
前記先読判定手段により前記共通の判定値に該当する前記第2の数値データが抽出されたと判定されたことに基づいて、前記操作手段に対する操作がされたことを条件として、当該第2の数値データが記憶された保留記憶情報に基づく変動表示の開始条件成立前に、保留予告演出(先読み予告)を行なう保留予告演出実行手段(演出制御用マイクロコンピュータ100)をさらに備え」
ることが記載されているといえる。

(ク) (イ)の【0041】の「演出表示装置9の表示画面には、・・・合算保留記憶数・・・を表示する領域(・・・合算保留記憶表示部18c・・・)が設けられ」という記載、及び(ウ)の【0090】の「演出制御用CPU101・・・を含む演出制御用マイクロコンピュータ100」、「演出制御用CPU101は、・・・VDP(ビデオディスプレイプロセッサ)109に演出表示装置9の表示制御を行わせ」という記載から、刊行物1には、
「演出表示装置9の表示画面には合算保留記憶数を表示する領域(合算保留記憶表示部18c)が設けられ」、「演出表示装置9の表示制御をVDP(ビデオディスプレイプロセッサ)109に行わせる演出制御用CPU101を含む演出制御用マイクロコンピュータ100」
について記載されているといえる。

(ケ) (エ)の【0163】の「先読み予告演出として、ボタン予告が実行されたときの表示状態」という記載、【0164】の「通常態様と異なる態様で表示されている保留記憶を対象として、先読み予告が行なわれ」という記載、【0165】の「演出表示装置9において、・・・操作ボタンを示す画像・・・90と、「ボタンを押して蛙を葉っぱに乗せて」という操作要求メッセージを示す画像・・・901とが表示され」「池の中で回転している複数の葉っぱに対し、ハンマを操作して蛙を打出していずれかの葉っぱの上に蛙を乗せる所定のボタン操作ゲームが実行可能であることを画像により示すゲーム開始前演出が行なわれ」という記載があり、さらに、(カ)の図面記載事項から、「池の中で回転している複数の葉っぱに対し、ハンマを操作して蛙を打出していずれかの葉っぱの上に蛙を乗せる所定のボタン操作ゲームが実行可能であることを画像により示すゲーム開始前演出が行なわれ」る際に、同時に「池の中で回転している複数の葉っぱ」「蛙」「ハンマ」の画像が表示されているといえるから、【0166】の「遊技者による操作ボタン130の操作が検出されると、その操作が検出されたタイミングで、・・・ハンマを操作して蛙を打出す画像が表示され・・・その後、・・・ボタン操作ゲームの勝利画像としての蛙が葉っぱの上に乗る画像、または、ボタン操作ゲームの敗北画像としての蛙が葉っぱの上に乗らない画像・・・が表示される」という記載とあわせると、刊行物1には、
「先読み予告演出として、ボタン予告が実行されたときの表示状態として、通常態様と異なる態様で表示されている保留記憶を対象として、先読み予告が行なわれ、演出表示装置9において、操作ボタンを示す画像90と、「ボタンを押して蛙を葉っぱに乗せて」という操作要求メッセージを示す画像901とが表示され」、「池の中で回転している複数の葉っぱ、蛙、ハンマの画像が表示されると同時に、池の中で回転している複数の葉っぱに対し、ハンマを操作して蛙を打出していずれかの葉っぱの上に蛙を乗せる所定のボタン操作ゲームが実行可能であることを画像により示すゲーム開始前演出が行なわれ、遊技者による操作ボタン130の操作が検出されると、その操作が検出されたタイミングで、ハンマを操作して蛙を打出す画像が表示され、その後、ボタン操作ゲームの勝利画像としての蛙が葉っぱの上に乗る画像、または、ボタン操作ゲームの敗北画像としての蛙が葉っぱの上に乗らない画像が表示される」
ことが記載されているといえる。

(コ) さらに、上記(エ)において、【0169】に「演出制御用マイクロコンピュータ100では、・・・予告対象の保留記憶が大当りとなるかはずれとなるかで異なる割合で、高信頼度予告パターン、中信頼度予告パターン、および、低信頼度予告パターンのうちからいずれかの予告パターンを選択・・・高信頼度予告パターンまたは中信頼度予告パターンを選択したときには、操作ボタン130の操作に応じて勝利画像を表示・・・制御を行な・・・低信頼度予告パターンを選択したときには、操作ボタン130の操作に応じて敗北画像を表示・・・制御を行なう」という記載があり、上記(ク)において認定したように、刊行物1には「演出表示装置9の表示制御をVDP(ビデオディスプレイプロセッサ)109に行わせる演出制御用CPU101を含む演出制御用マイクロコンピュータ100」が記載されていることと合わせると、刊行物1には
「演出表示装置9の表示制御をVDP(ビデオディスプレイプロセッサ)109に行わせる演出制御用CPU101を含む演出制御用マイクロコンピュータ100では、予告対象の保留記憶が大当りとなるかはずれとなるかで異なる割合で、高信頼度予告パターン、中信頼度予告パターン、および、低信頼度予告パターンのうちからいずれかの予告パターンを選択し、高信頼度予告パターンまたは中信頼度予告パターンを選択したときには、操作ボタン130の操作に応じて勝利画像を表示する制御を行ない、低信頼度予告パターンを選択したときには、操作ボタン130の操作に応じて敗北画像を表示する制御を行なう」
ことが記載されているといえる。

上記の記載事項(ア)?(エ)、図面(オ)、図面記載事項(カ)、認定事項(キ)?(コ)から、刊行物1には、

「遊技媒体(遊技球)による始動領域(第1始動入賞口13、第2始動入賞口14、ゲート32)の通過により変動表示の実行条件(始動入賞)が成立した後、変動表示の開始を許容する開始条件(大当り遊技中でなくかつ先に変動表示を開始した保留記憶に起因する変動表示が終了しているとき)の成立に基づいて、各々が識別可能な識別情報(図柄)の変動表示を実行し、表示結果を導出表示する変動表示部(演出表示装置9)を備え、該変動表示部に導出表示された表示結果が予め定められた特定表示結果(大当り表示結果)となったときに、遊技状態を通常遊技状態よりも遊技者にとって有利な特定遊技状態(大当り遊技状態)に制御する遊技機(パチンコ遊技機1)であって、
遊技者が操作可能な操作手段(操作ボタン130)であって、操作ボタン130からの操作信号に基づいて、予告演出等を行う、操作手段と、
前記実行条件が成立したときに、前記特定遊技状態に制御するか否かを特定するための情報として第1の数値データ群から第1の数値データを抽出するとともに、変動表示の変動パターンを特定するための情報として第2の数値データ群から第2の数値データを抽出する数値データ抽出手段(遊技制御用マイクロコンピュータ560)と、
前記実行条件が成立したが前記開始条件が成立していない変動表示について、前記数値データ抽出手段により抽出された前記第1の数値データおよび前記第2の数値データを含む数値情報を保留記憶情報として所定の上限数の範囲内で記憶可能な保留記憶手段と、
該保留記憶手段に記憶された前記保留記憶情報の記憶数を認識可能に表示する、演出表示装置9の表示画面に設けられた、合算保留記憶数を表示する領域である、保留記憶表示部(合算保留記憶表示部18c)と、
当該開始条件が成立した識別情報の変動表示を実行する変動表示実行手段(演出制御用マイクロコンピュータ100)と、
前記実行条件が成立したときに、前記数値データ抽出手段により抽出された数値情報を読出して判定する先読判定手段(遊技制御用マイクロコンピュータ560)とを備え、
前記先読判定手段により前記共通の判定値に該当する前記第2の数値データが抽出されたと判定されたことに基づいて、前記操作手段に対する操作がされたことを条件として、当該第2の数値データが記憶された保留記憶情報に基づく変動表示の開始条件成立前に、保留予告演出(先読み予告)を行なう保留予告演出実行手段(演出制御用マイクロコンピュータ100)をさらに備え、(以上、認定事項(キ)より)
演出表示装置9の表示制御をVDP(ビデオディスプレイプロセッサ)109に行わせる演出制御用CPU101を含む演出制御用マイクロコンピュータ100では、予告対象の保留記憶が大当りとなるかはずれとなるかで異なる割合で、高信頼度予告パターン、中信頼度予告パターン、および、低信頼度予告パターンのうちからいずれかの予告パターンを選択し、高信頼度予告パターンまたは中信頼度予告パターンを選択したときには、操作ボタン130の操作に応じて勝利画像を表示する制御を行ない、低信頼度予告パターンを選択したときには、操作ボタン130の操作に応じて敗北画像を表示する制御を行なうものであって、(認定事項(コ)より)
先読み予告演出として、ボタン予告が実行されたときの表示状態として、通常態様と異なる態様で表示されている保留記憶を対象として、先読み予告が行なわれ、
演出表示装置9において、操作ボタンを示す画像90と、「ボタンを押して蛙を葉っぱに乗せて」という操作要求メッセージを示す画像901とが表示され、池の中で回転している複数の葉っぱ、蛙、ハンマの画像が表示されると同時に、池の中で回転している複数の葉っぱに対し、ハンマを操作して蛙を打出していずれかの葉っぱの上に蛙を乗せる所定のボタン操作ゲームが実行可能であることを画像により示すゲーム開始前演出が行なわれ、遊技者による操作ボタン130の操作が検出されると、その操作が検出されたタイミングで、ハンマを操作して蛙を打出す画像が表示され、その後、ボタン操作ゲームの勝利画像としての蛙が葉っぱの上に乗る画像、または、ボタン操作ゲームの敗北画像としての蛙が葉っぱの上に乗らない画像が表示される、(認定事項(ケ)より)
遊技機(パチンコ遊技機1)」

という発明(以下、「刊行物1発明」という。)が開示されていると認める。

(2)本件補正発明と刊行物1発明との対比及び判断

本件補正発明と刊行物1発明とを対比する。(記号は本件補正発明の発明特定事項に対応させて付した)

(A’) 刊行物1発明における「遊技媒体(遊技球)による始動領域」「の通過により変動表示の実行条件(始動入賞)が成立した後」「各々が識別可能な識別情報(図柄)の変動表示を実行し、表示結果を導出表示する変動表示部(演出表示装置9)」は、本件補正発明における「始動入賞領域への遊技球の入賞に基づき、複数の識別情報を変動表示する変動表示ゲームを表示する表示装置」に、刊行物1発明における「該変動表示部に導出表示された表示結果が予め定められた特定表示結果(大当り表示結果)となったときに、遊技状態を通常遊技状態よりも遊技者にとって有利な特定遊技状態(大当り遊技状態)に制御する遊技機(パチンコ遊技機1)」は、本件補正発明における「当該変動表示ゲームの停止結果態様が予め定めた特別結果態様となった場合に、遊技者にとって有利な特別遊技状態を発生させる遊技機」に相当する。

(B) 刊行物1発明における「前記実行条件が成立した」とは、「遊技媒体(遊技球)による始動領域」「の通過により始動入賞が成立した」ことであるから、本件補正発明の「前記始動入賞領域への遊技球の入賞に基づき」に相当する。
また、刊行物1発明における「前記実行条件が成立したが前記開始条件が成立していない変動表示について、前記数値データ抽出手段により抽出された前記第1の数値データおよび前記第2の数値データを含む数値情報を保留記憶情報として所定の上限数の範囲内で記憶可能な保留記憶手段」について、刊行物1発明では、「当該開始条件が成立した」ときに「変動表示実行手段」が「変動表示を実行する」のであるから、「開始条件が成立していない」状態では、保留記憶情報は変動表示を実行する権利であるといえ、本件補正発明における「前記変動表示ゲームの実行権利を始動記憶として所定の上限数まで記憶する始動記憶手段」に相当する。

(C) 刊行物1発明における「前記実行条件が成立したときに、前記数値データ抽出手段により抽出された数値情報を読出して判定する先読判定手段」について、刊行物1発明は「前記先読判定手段により前記共通の判定値に該当する前記第2の数値データが抽出されたと判定されたことに基づいて、前記操作手段に対する操作がされたことを条件として、当該第2の数値データが記憶された保留記憶情報に基づく変動表示の開始条件成立前に、保留予告演出(先読み予告)を行なう保留予告演出実行手段(演出制御用マイクロコンピュータ100)」を備えており、該「先読判定手段により」「判定されたことに基づいて」「保留記憶情報に基づく変動表示の開始条件成立前」に保留予告演出を行う以上、該「先読判定手段」による判定は、保留記憶情報に基づく変動表示の開始条件成立前に行うことものということができ、これは本件補正発明における「対応する変動表示ゲームの実行前に判定する」ということができる。
そうすると、刊行物1発明における「前記実行条件が成立したときに、前記数値データ抽出手段により抽出された数値情報を読出して判定する先読判定手段」は、本件補正発明の発明特定事項Cである「前記始動記憶に対応する変動表示ゲームの結果に関する情報を、前記対応する変動表示ゲームの実行前に判定する事前判定手段」に相当するといえる。

(D) 刊行物1発明における「遊技者が操作可能な操作手段(操作ボタン130)であって、操作ボタン130からの操作信号に基づいて、予告演出等を行う、操作手段」は、本件補正発明の発明特定事項Dである「遊技者の操作に応じて操作信号を発生可能な操作手段」に相当する。

(E) 刊行物1発明における「該保留記憶手段に記憶された前記保留記憶情報の記憶数を認識可能に表示する、演出表示装置9の表示画面に設けられた、合算保留記憶数を表示する領域である、保留記憶表示部(合算保留記憶表示部18c)」について、「保留記憶表示部(合算保留記憶表示部18c)」を設けた「演出表示装置9」、「該保留記憶手段」は、上記(A)、(B)のとおり、本件補正発明の「表示装置」、「前記始動記憶手段」に相当することから、刊行物1発明において「演算表示装置9の表示画面に設けられた」「保留記憶表示部(合算保留記憶表示部18c)」に「前記保留記憶情報の記憶数を認識可能に表示」することは、本件補正発明における「前記表示装置に」「前記始動記憶手段に記憶されている始動記憶に対応する表示を」することに相当する。
また、刊行物1発明における「演出表示装置9において、操作ボタンを示す画像90と、「ボタンを押して蛙を葉っぱに乗せて」という操作要求メッセージを示す画像901とが表示され、池の中で回転している複数の葉っぱ、蛙、ハンマの画像が表示されると同時に、池の中で回転している複数の葉っぱに対し、ハンマを操作して蛙を打出していずれかの葉っぱの上に蛙を乗せる所定のボタン操作ゲームが実行可能であることを画像により示すゲーム開始前演出が行なわれ」ることについて、「演出表示装置9において」「池の中で回転している複数の葉っぱ、蛙、ハンマの画像が表示され」ることは、「先読み予告演出として、ボタン予告が実行されたときの表示状態として、通常態様と異なる態様で表示されている保留記憶を対象として、先読み予告が行なわれ」た後に行われることから、「先読み予告」の結果に基づいているということができ、かつこれらを表示することは「ゲーム開始前演出」と同時に行われることから、ゲームの実行前に行われるものといえる。
そうすると、刊行物1発明における「保留記憶表示部(合算保留記憶表示部18c)」及び「池の中で回転している複数の葉っぱ、蛙、ハンマの画像」は本件補正発明の「前記始動記憶手段に記憶されている始動記憶に対応する表示」及び「特定画像」に相当し、これらが表示される「演算表示装置9」「の表示制御をVDP(ビデオディスプレイプロセッサ)109に行わせる演出制御用CPU101を含む演出制御用マイクロコンピュータ100」は、本件補正発明の発明特定事項Eである「前記始動記憶手段に記憶されている始動記憶に対応する表示を前記表示装置にさせると共に、前記事前判定手段の判定結果に基づいて、前記対応する変動表示ゲームの実行前に特定画像を前記表示装置に表示させる制御手段」に相当する。

(E-1’) さらに、刊行物1発明において「遊技者による操作ボタン130の操作が検出されると、その操作が検出されたタイミングで、ハンマを操作して蛙を打出す画像が表示され」ることは、本件補正発明における「前記操作手段の操作信号とに応じて」「当該特定画像に関連する演出表示を、前記表示装置に表示させ」ることに相当する。

(E-2) 加えて、刊行物1発明において「予告対象の保留記憶が大当りとなるかはずれとなるかで異なる割合で、高信頼度予告パターン、中信頼度予告パターン、および、低信頼度予告パターンのうちからいずれかの予告パターンを選択し、高信頼度予告パターンまたは中信頼度予告パターンを選択したときには、操作ボタン130の操作に応じて勝利画像としての蛙が葉っぱの上に乗る画像を表示する制御を行ない、低信頼度予告パターンを選択したときには、操作ボタン130の操作に応じて敗北画像としての蛙が葉っぱの上に乗らない画像を表示する制御を行なう」ことについて、「予告対象の保留記憶が大当りとなるかはずれとなるか」は「先読判定」の結果に基づくものであり、これにより「いずれかの予告パターンを選択し」、「高信頼度予告パターンまたは中信頼度予告パターンを選択したときには、操作ボタン130の操作に応じて勝利画像としての蛙が葉っぱの上に乗る画像を表示する制御を行ない、低信頼度予告パターンを選択したときには、操作ボタン130の操作に応じて敗北画像としての蛙が葉っぱの上に乗らない画像を表示する制御を行なう」ことは、「先読判定」の結果に基づき信頼度が選択されて「「蛙」と「葉っぱ」の画像」が変更されるものということができるから、本件補正発明の「前記事前判定手段の判定結果として前記特別遊技状態の発生に関する信頼度に基づき、前記特定画像を変更可能にした」ことに相当する。

以上のことから、本件補正発明と刊行物1発明は

「始動入賞領域への遊技球の入賞に基づき、複数の識別情報を変動表示する変動表示ゲームを表示する表示装置を備え、当該変動表示ゲームの停止結果態様が予め定めた特別結果態様となった場合に、遊技者にとって有利な特別遊技状態を発生させる遊技機において、
前記始動入賞領域への遊技球の入賞に基づき前記変動表示ゲームの実行権利を始動記憶として所定の上限数まで記憶する始動記憶手段と、
前記始動記憶に対応する変動表示ゲームの結果に関する情報を、前記対応する変動表示ゲームの実行前に判定する事前判定手段と、
遊技者の操作に応じて操作信号を発生可能な操作手段と、
前記始動記憶手段に記憶されている始動記憶に対応する表示を前記表示装置にさせると共に、前記事前判定手段の判定結果に基づいて、前記対応する変動表示ゲームの実行前に特定画像を前記表示装置に表示させる制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記特定画像が表示された際に、前記事前判定手段の判定結果と、前記操作手段の操作信号とに応じて、前記表示装置における前記始動記憶に対応する表示と当該特定画像とに関連する演出表示を、前記表示装置に表示させ、
前記事前判定手段の判定結果として前記特別遊技状態の発生に関する信頼度に基づき、前記特定画像を変更可能にしたことを特徴とする遊技機。」

の点で一致し、相違点はない。

(3)小括
以上のとおり、本件補正発明は、刊行物1発明と同一の発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)審判請求人の主張について
審判請求人は平成29年11月30日付け審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」の「(4)本願発明と引用発明の対比」において、以下の通り主張している。

「(a)補正後の本願請求項1に記載の発明(以降、本願発明と呼ぶ)と、引用文献1の発明を比較すると、引用文献1(当審注:該「引用文献1」は、上記審判請求書の「2.拒絶査定の理由の要点」の(1)の記載からすると、特開2003-340042号公報を示す)は『前記事前判定手段の判定結果として前記特別遊技状態の発生に関する信頼度に基づき、前記特定画像を変更可能にした』という特徴的構成については開示していない。
(b)本願発明では、上記の特徴的構成によって、始動記憶に対応する変動表示ゲームの結果に関する情報を、その変動表示ゲームの実行前に判定し、その判定結果(事前判定手段の判定結果)に基づいて、その変動表示ゲームの実行前に特定画像を表示装置に表示させ、特定画像が表示された際には、その判定結果と、操作手段の操作信号とに応じて、表示装置における始動記憶に対応する表示と特定画像とに関連する演出表示を、表示装置に表示させ、その判定結果(事前判定手段の判定結果)として特別遊技状態の発生に関する信頼度に基づいて、特定画像を変更可能とすることができる。
このように、事前判定手段の判定結果に基づいて特定画像を表示させることにより、変動表示ゲームの停止結果態様について遊技者に期待感を抱かせることができる。また、その特定画像を特別遊技状態(例えば、大当り)の発生に関する信頼度に基づいて変更可能としたことにより、変更された内容によって遊技者は特別遊技状態(例えば、大当り)の発生の期待感を高めることができる。
例えば、事前判定手段の判定結果に基づいて、始動記憶に対応する変動表示ゲームの実行前にUFO画像(特定画像の一例)を表示部35a(表示装置の一例)に表示させることができる(段落[0401]、図38(C))。このように、UFO画像(特定画像の一例)を表示部35a(表示装置の一例)に表示させる場合には、UFO画像(特定画像の一例)を表示部35a(表示装置の一例)の中央に表示させ、変動表示部分については表示部35a(表示装置の一例)の右上に移動させて小さく表示することにより、表示部35a(表示装置の一例)においてUFO画像(特定画像の一例)を表示する広い領域を形成することができる。また、この広い領域を用いてUFO画像(特定画像の一例)の表示、演出表示、UFO画像(特定画像の一例)の変更を行うことにより、遊技者に対して期待感や信頼度が伝わり易くなり、遊技の興趣を高めることができる。
また、例えば、UFO画像(特定画像の一例)が表示された際には、表示部35a(表示装置の一例)に表示される保留表示(始動記憶に対応する表示の一例)及びUFO画像(特定画像の一例)に関連する演出表示として、事前判定手段の判定結果と演出ボタン17の操作とに応じて、位置と角度の変化によりUFO画像の表示態様を変更し、保留表示(始動記憶に対応する表示の一例)からUFO画像(特定画像の一例)に向かって弾丸を発射させる画像(又は動画)を表示部35a(表示装置の一例)に表示させることができる(段落[0402]、[0403]、図38(E)-(H))。このように、保留表示(始動記憶に対応する表示の一例)及びUFO画像(特定画像の一例)の表示に加えて、保留表示(始動記憶に対応する表示の一例)及びUFO画像(特定画像の一例)に関連する演出表示を行うことにより、遊技者に新たな期待感を与え、興趣を高めることができる。
また、例えば、大当りの信頼度が高い場合には、図38(C)-(H)に示すUFO画像(特定画像の一例)を変更して、大当りの信頼度を報知するための他の画像として、UFOが撃破された画像を表示することができる(段落[0403]、図38(I))。このように、UFO画像(特定画像の一例)を変更してUFOが撃破された画像を表示することにより、遊技者は大当り(特別遊技状態の一例)の発生の期待感を高めることができる。
(c)それに対し引用文献1には、まだ変動表示ゲームが開始されていない始動権利G1?G4(上限数(4個)の始動権利が溜まっている)の上方に現在変動中の始動記憶分G0の事前報知を行い、現在変動中の始動記憶分G0の右横付近に消しゴムKを表示させることが記載されている(段落[0090]、図11)。しかし、引用文献1には、現在変動中の始動記憶分G0及び消しゴムKが変更される旨の記載はない。仮に、始動権利表示マーク(黒丸マーク)G1?G4と同様に、現在変動中の始動記憶分G0の黒色を消すような消しゴムKの動作により、現在変動中の始動記憶分G0の下に隠れていた事前報知を表示させ、現在変動中の始動記憶分G0の表示が変更されると仮定したとしても、引用文献1には、消しゴムKの表示が変更される旨の記載及び示唆はない。このように、引用文献1では、消しゴムKの表示が変更されることがないため、引用文献1から、特別遊技状態の発生に関する信頼度に基づいて、消しゴムKを変更するという技術的思想に想到することは困難であると思量される。
(d)従って、本願請求項1(補正後)に係る発明は、引用文献1が開示しない構成及び当該構成による有利な効果を具備するものであり、引用文献と同一でなく、且つ、当業者であっても容易に想到することができないため、新規性及び進歩性を有するものと思量される。」

しかしながら、上記(2)において検討したとおり、本件補正発明は刊行物1発明と同一の発明であり、刊行物1発明は、本件補正発明の「前記事前判定手段の判定結果として前記特別遊技状態の発生に関する信頼度に基づき、前記特定画像を変更可能にした」という発明特定事項に相当する構成を具備するものであって、これにより、刊行物1の【0167】に記載される「大当りとなる信頼度を示す表示が行なわれることにより、ボタン操作ゲームに勝利したときには、大当りとなる確率が高いことを認識することができるので、遊技者の興趣を向上させることができる」ものであって、本件補正発明同様「特定画像の変更により遊技の興趣を高めることができる」といえる。

以上のとおりであるから、審判請求人の主張は採用できない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成28年8月1日付けの手続補正書により補正された、特許請求の範囲の請求項に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、上記第2の1.において記載した次のとおりのものである。

「【請求項1】
A 始動入賞領域への遊技球の入賞に基づき、複数の識別情報を変動表示する変動表示ゲームを表示する表示装置を備える遊技機において、
B 前記始動入賞領域への遊技球の入賞に基づき前記変動表示ゲームの実行権利を始動記憶として所定の上限数まで記憶する始動記憶手段と、
C 前記始動記憶に対応する変動表示ゲームの結果に関する情報を、前記対応する変動表示ゲームの実行前に判定する事前判定手段と、
D 遊技者の操作に応じて操作信号を発生可能な操作手段と、
E 前記始動記憶手段に記憶されている始動記憶に対応する表示を前記表示装置にさせると共に、前記事前判定手段の判定結果に基づいて、前記対応する変動表示ゲームの実行前に特定画像を前記表示装置に表示させる制御手段と、を備え、
E-1 前記制御手段は、前記事前判定手段の判定結果と、前記操作手段の操作信号とに応じて、前記始動記憶の表示と前記特定画像に関連する演出表示を前記表示装置に表示させる
ことを特徴とする遊技機。」

2.拒絶理由通知の概要
平成29年2月16日付け拒絶理由は、本願請求項1記載の発明は、引用文献1である特開2003-340042号に記載された発明であり特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない、または、引用文献1に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

3.刊行物
平成29年2月16日付け拒絶理由通知において提示された、特開2003-340042号公報(以下、刊行物という)には以下の記載がある。(下線は合議体が審決にて付した。以下、同じ。)

(ア) 「【0039】図1は、本発明に係る遊技機の一形態として例示するパチンコ遊技機、特に、いわゆる「第1種」に属するタイプのパチンコ遊技機100を示す正面図である。
【0040】この実施の形態のパチンコ遊技機100は、内部の遊技領域(後述)内に遊技球(遊技媒体)を発射して遊技を行うもので、その前面枠111の前側上半部におけるガラス板の奥側には、遊技領域1aを構成する遊技盤1が設置されている。
【0041】この遊技盤1のガイドレール2で囲まれた遊技領域1aでは、図示しない発射装置によって発射された遊技球が流下するようになっている。また、前記遊技領域1aには、遊技球の通過により普通変動表示ゲームの始動条件を付与する普図始動ゲート6,6、普通変動表示ゲームを表示する普通図柄(普図)表示装置7、普通図柄表示装置7での普通変動表示ゲームの結果如何によって開閉部材9a,9aを開(遊技者にとって有利な開状態)閉(遊技者にとって不利な閉状態)させる始動入賞口(特図始動入賞口)を兼ねた普通変動入賞装置9、始動入賞口への遊技球の入賞に基づき変動表示ゲーム(ここでは特別変動表示ゲーム)を表示する変動表示装置としての特別図柄(特図)表示装置4、特別図柄表示装置4での特別変動表示ゲームの結果如何によって大入賞口5bを閉じた状態(遊技者にとって不利な閉状態)から開放状態(遊技者にとって有利な開状態)に変換するサイクル遊技を行う特別変動入賞装置5、一般入賞口8,…、サイドランプ12,12、風車と呼ばれる打球方向変換部材14,…、多数の障害釘(図示省略)などが配設されている。また、遊技領域1aの最下端部中央にはアウト球を回収するためのアウト穴13が設けられている。
・・・
【0045】変動表示装置(特別図柄表示装置)4は、例えば、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)からなる表示部4aを備えている。前記表示部4aは、その表示状態が変化可能となっており、ここでは、前記普通変動入賞装置(始動入賞口)9への遊技球の入賞に基づき、複数の特別図柄(例えば、図柄、数字、記号などの識別情報)を変動表示可能となっている。また、前記表示部4aには複数の変動表示領域を有し、該変動表示領域の各々に一連の図柄を順次変動表示させた後に停止させることで、特別の遊技価値を付与する大当り遊技状態(特別遊技状態)の発生に関わる変動表示ゲーム(特別変動表示ゲーム)の表示が可能となっている。
・・・
【0047】そして、特別図柄表示装置4の上部には、普通変動入賞装置9に遊技球が入賞して特別変動表示ゲームが未処理となっている未処理回数(特図始動記憶数)を点灯表示する特図始動記憶表示器(特図記憶表示器)4bが設けられている。なお、この実施の形態では、始動権利の上限数は4個となっており、始動記憶表示器4bは4個のLEDで構成されている。そして、始動権利が1増加する毎に1のLEDが点灯表示され、始動権利が1消化される毎に1のLEDが消灯するようになっている。また、この実施の形態では、前記特図始動記憶表示器4b以外に、前記変動表示装置4の表示部4aにも、始動権利の増減に合わせて始動権利表示マーク(黒丸マーク)が表示されるようになっている。
【0048】さらに、この実施の形態では、前記変動表示装置(特別図柄表示装置)4において、変動表示ゲームが終了する前に当該変動表示ゲームの結果を報知(ここでは表示)する事前報知(表示)が可能となっている。ここでは、前記事前報知は、遊技者による操作手段200(後述)の操作に応じて表示状態が変化する補助表示ゲームを前記変動表示装置(特別図柄表示装置)4に新たに表示することで行われ、後述する表示制御装置40に含まれる報知手段に制御されるようになっている。
・・・
【0055】また、特に限定されないが、パチンコ遊技機100の横隣には、遊技球貸出用のプリペイドカード(図示省略)が挿入されるカード挿入口501を有するカードユニット500が設けられている。また、パチンコ遊技機100の前面下部には上皿ユニット130が設けられ、この上皿ユニット130には、排出された遊技球(賞球、貸球)を貯留する上皿105が設けられている。この上皿105には、カード挿入口501にプリペイドカードを挿入した状態で押圧操作することで上皿105への貸球の排出動作を要求する球貸スイッチ108b、カード挿入口501に挿入されたプリペイドカードの返却動作を要求するためのカード返却スイッチ108c、カード挿入口501に挿入されたプリペイドカードに関する情報を表示する貸球用表示部108a、上皿105の遊技球を抜き取って下皿107に流下させるための球抜き操作レバー11等がそれぞれ設けられている。
【0056】また、ここでは、前記上皿ユニット130の左端部に、後述する事前報知を行う際に遊技者が操作する操作手段(ここでは、操作ボタン)200が設けられている。さらに、上皿ユニット130の下側には、上皿105に収容しきれない遊技球を収容する下皿107、遊技領域1aに向けて遊技球を発射する発射装置(図示省略)において発射操作を行うための操作ハンドル104、灰皿10などが設置されている。この灰皿10の後方には、各種音声報知(例えば、賞球排出報知、異常報知など)や遊技演出を行うためのスピーカ61(図2)が設置されている。
【0057】図2は、このパチンコ遊技機に設置された遊技制御装置20、表示制御装置40(ここでは遊技制御装置20とは別個に設けられている)と他の装置の主要制御ブロック図である。
・・・
【0066】表示制御装置40は、遊技制御装置20からの表示指令信号に基づき特別図柄表示装置(変動表示装置)4の表示部4aの表示制御を行うものであり、ここでは、報知手段を含んでいる。」

(イ) 「【0071】この実施の形態に係るパチンコ遊技機100では、報知手段(ここでは、前記表示制御装置40に含まれる)によって、変動表示ゲームの結果を事前に報知可能となっている。また、前記報知手段は、前記操作手段200の操作に基づいて前記事前報知を行うようになっている。さらに、報知手段によって事前報知される変動表示ゲームの結果としては、変動表示ゲームの最終結果(特別表示結果となるか否か)と、変動表示ゲームの途中結果(途中結果の具体例としては、例えばリーチ表示結果となるか否か)が挙げられるが、ここでは、変動表示ゲームの最終結果と途中結果の双方が事前報知可能となっている。また、ここでは、前記表示制御装置40は、前記操作手段200の操作に応じて表示状態が変化する補助表示ゲームを前記変動表示装置4に新たに表示することで前記事前報知を行うようになっている。以下、この補助表示ゲームによって行われる、変動表示ゲームの結果に対する事前報知について、図5?図10を参照しながら、図3及び図4のフローチャートに沿って説明する。
【0072】まず、変動表示ゲームでは、変動表示ゲームの開始条件(始動入賞口9への遊技球の入賞、又は始動権利がある場合の前の変動表示ゲームの終了等)が成立する(図3のS1でYに進む)と、例えば、図5の(a)に示すように、特別図柄表示装置4の表示部4aにおける左変動表示領域R1、中変動表示領域R2、右変動表示領域R3の各変動表示領域で、複数の図柄で構成された図柄列が上から下へ回転して変動開始する。
【0073】次に、事前報知条件の判定処理(図3のS2)を行う。ここでは、前記変動表示ゲームの始動権利を所定の上限数(ここでは4個)の範囲内で記憶可能な始動記憶手段(ここでは遊技制御装置20のRAM21bが相当する)と、前記始動権利の記憶毎に、前記変動表示ゲームの結果を決定するための乱数を抽出する乱数抽出手段(ここでは遊技制御装置20が相当する)と、を備えており、前記報知手段は、前記乱数抽出手段による抽出結果に基づいて前記始動記憶手段に記憶されている始動権利に対する事前報知を行うようになっており、当該事前報知を、その事前報知の対象の始動権利について行われる変動表示ゲームより以前に実行されている変動表示ゲーム中に行うようになっている。なお、ここでは、事前報知条件の判定処理は、各変動表示領域R1?R3の図柄が全て変動しているときに行う。
【0074】図4に示すように、事前報知条件の判定処理では、まず、始動記憶手段における始動記憶(始動権利)の記憶数が3個以上あるか否かの判定を行う(S21)。ここで、始動記憶が2個以下である場合には、事前報知条件を成立させずに当該判定処理を終了させる。
【0075】一方、始動記憶が3個以上ある場合には、次に、始動記憶(始動権利)の中に当り(特別表示結果)となるものがあるかどうかの判定を行う(S22)。ここでは、始動入賞口9に遊技球の入賞があってその始動権利が遊技制御装置20の始動記憶手段に記憶される際に、変動表示ゲームにおける停止図柄データについては、すぐに表示制御装置40の報知手段に表示制御信号の一部として入力されており、この報知手段に入力されている停止図柄データの中に当り(特別表示結果)となるものがあるかどうかを判定する。」

(ウ) 「【0075】・・・そして、始動記憶の中に当りとなるものがある場合には、相対的に事前報知条件が成立し易い方の乱数に基づく振分処理(S23)を行い、20%の確率で事前報知条件を成立させる(S24)。
【0076】また、S22で始動記憶の中に当りとなるものがない場合には、相対的に事前報知条件が成立し難い方の乱数に基づく振分処理(S25)を行い、5%の確率で事前報知条件を成立させる(S24)。すなわち、ここでは、始動記憶手段の中に当り(特別表示結果)となる始動権利が記憶されている方が、当りとなる始動権利が記憶されていない場合と比べて、事前報知が行われやすい(高い確率で事前報知を行う)ようになっている。
【0077】この事前報知条件の判定処理が終了すると、事前報知条件が成立しているか否かの判定を行う(図3のS3)。ここで、事前報知条件が成立していない場合は、事前報知なしの変動表示ゲームがそのまま行われ、図5の(b)に示すように、各変動表示領域R1?R3で、例えば左図柄Z1、右図柄Z3、中図柄Z2の順で図柄を停止させ、変動表示ゲームの結果を導出する。なお、事前報知なしの変動表示ゲームの場合は、始動権利を表示する始動権利表示マーク(黒丸マーク)G1,G2,G3,G4(ここでは始動権利が4つ記憶されている)は、縮小表示状態のままである。
【0078】一方、事前報知条件が成立しているか否かの判定(S3)で、事前報知条件が成立している場合は、操作有効化手段(ここでは、表示制御装置40が相当する)が操作部(操作手段、ここでは操作ボタン)200の入力を有効化すると共に、事前報知が可能なチャンスタイム(補助表示ゲーム)の開始となる(S4,S5)。なお、ここでは、所定の確率で成立する事前報知条件が成立することによって、操作有効化手段が操作手段200を有効にするようになっており、当該操作手段200が有効となることにより、前記事前報知が可能となるようにされている。また、前記したように、始動記憶手段の中に当り(特別表示結果)となる始動権利が記憶されている方が、当りとなる始動権利が記憶されていない場合と比べて、操作有効化手段による、操作手段の有効化が行われやすい(高い確率で操作手段を有効にする)ようになっている。
【0079】そして、図6の(a)に示すように、画面上部に「チャンスタイム!!」という文字情報G5が表示されると共に、画面下部の始動権利表示マーク(黒丸マーク)G1?G4が、拡大表示状態となる。また、効果音及びランプ、LED等の装飾表示も行う。なお、ここでは、図6の(a)では、始動記憶手段に記憶されている始動権利はG1,G2,G3の3つである(G4は白丸であり、始動権利が記憶されていないことを示している)が、その後、始動入賞口9に遊技球が入賞して、図6の(b)の状態になったときには、始動記憶手段に記憶されている始動権利はG1,G2,G3,G4の4つになっている。
【0080】それから、図6の(b)に示すように、1番左側の(1番古い始動権利である)始動権利表示マークG1の所に事前報知を行うための演出画像として消しゴムKが表示される。それと共に、画面上部の文字情報G5が「チャンスタイム!!操作部を操作せよ」という表示になる。ここで、遊技者が操作部(操作ボタン)200の操作を行う(操作部の入力が有る)と(図3のS6でYに進む)、図6の(c)に示すように、消しゴムKが黒丸マークの黒色を消すような動作を行い、所定回数(例えば、3回)操作ボタンを押すと、黒丸マークの下に隠れていた事前報知の表示が現れる(G1)。ここでは、G1で表す始動権利は「外れ」と表示され、1番左側の始動権利(次に変動表示ゲームが行われる始動権利)に対する変動表示ゲームの結果(最終結果)が外れであることが事前報知される。
・・・
【0096】また、この実施の形態では、遊技の進行を制御する遊技制御装置と、前記報知手段を含むと共に前記遊技制御装置からの表示制御信号に基づいて前記変動表示装置の表示制御を行う表示制御装置と、を備え、前記表示制御装置は、前記操作手段からの操作信号を入力する入力手段を備え、該入力手段からの入力信号に基づいて前記事前報知を所定の画像表示により行うようにしたので、より明確に事前報知を行うことができると共に、遊技者はより興味をもって操作手段を操作することとなり興趣性を高めることができる。また、操作手段の操作がどのように影響しているかを分かり易くすることができる。」

(エ) (ア)の【0039】の「本発明に係る遊技機の一形態として例示する・・・パチンコ遊技機100」との記載、【0040】?【0047】の「この実施の形態のパチンコ遊技機100は、・・・前面枠111の前側上半部におけるガラス板の奥側には遊技領域1aを構成する遊技盤1が設置され」「遊技領域1aでは、・・・始動入賞口への遊技球の入賞に基づき変動表示ゲーム(ここでは特別変動表示ゲーム)を表示する変動表示装置としての特別図柄(特図)表示装置4・・・が設けられ」「変動表示装置(特別図柄表示装置)4は、・・・液晶表示装置・・・からなる表示部4aを備え」「前記変動表示装置4の表示部4aに・・・始動権利表示マーク・・・が表示され」との記載、【0055】?【0056】の「パチンコ遊技機100の前面下部には上皿ユニット130が設けられ、」「前記上皿ユニット130の左端部に、・・・遊技者が操作する操作手段(ここでは、操作ボタン)200が設けられ」との記載、【0057】の「このパチンコ遊技機に設置された・・・表示制御装置40」との記載、【0066】の「表示制御装置40は、・・・特別図柄表示装置(変動表示装置)4の表示部4aの表示制御を行うものであり、・・・報知手段を含んでいる」との記載があること、さらには(ウ)の【0096】の「この実施の形態では、・・・操作手段からの操作信号を入力する」という記載があることから、操作手段(ここでは、操作ボタン)200)」は「操作信号」を発生するものということができること、から、刊行物には、
「前面枠111の前側上半部におけるガラス板の奥側には遊技領域1aを構成する遊技盤1が設置され、遊技領域1aでは、始動入賞口への遊技球の入賞に基づき変動表示ゲーム(ここでは特別変動表示ゲーム)を表示する変動表示装置としての特別図柄(特図)表示装置4が設けられ、変動表示装置(特別図柄表示装置)4は、液晶表示装置からなる表示部4aを備え、前記変動表示装置4の表示部4aに始動権利表示マークが表示され、前面下部には上皿ユニット130が設けられ、前記上皿ユニット130の左端部に、遊技者が操作する操作手段(ここでは、操作ボタン)200であって、操作信号を発生する操作手段が設けられ、特別図柄表示装置(変動表示装置)4の表示部4aの表示制御を行うものであり、報知手段を含んでいる表示制御装置40が設置されたパチンコ遊技機100」
が記載されているものといえる。

(オ) (イ)の【0071】「パチンコ遊技機100では、報知手段(・・・前記表示制御装置40に含まれる)によって、変動表示ゲームの結果を事前に報知可能となって」、「変動表示ゲームの結果に対する事前報知について、・・・図3・・・のフローチャートに沿って説明する」、【0073】の「事前報知条件の判定処理(図3のS2)を行う」、【0074】【0075】の「事前報知条件の判定処理では、・・・始動入賞口9に遊技球の入賞があってその始動権利が遊技制御装置20の始動記憶手段に記憶される際に、・・・表示制御装置40の報知手段に表示制御信号の一部として入力されており、この報知手段に入力されている停止図柄データの中に当り(特別表示結果)となるものがあるかどうかを判定する」という記載から、刊行物には「報知手段」が行う「変動表示ゲームの結果に対する事前報知」において、「事前報知条件の判定処理を行う」こと、「事前報知条件の判定処理では、始動入賞口9に遊技球の入賞があってその始動権利が遊技制御装置20の始動記憶手段に記憶される際に、表示制御装置40の報知手段に表示制御信号の一部として入力されており、この報知手段に入力されている停止図柄データの中に当り(特別表示結果)となるものがあるかどうかを判定する」ことが記載されているといえる。
そして、(イ)の【0072】の「変動表示ゲームでは、・・・始動入賞口9への遊技球の入賞・・・が成立する・・・と、・・・特別図柄表示装置4の表示部4aにおける左変動表示領域R1、中変動表示領域R2、右変動表示領域R3の各変動表示領域で、複数の図柄で構成された図柄列が・・・変動開始」、【0073】の「前記変動表示ゲームの始動権利を所定の上限数・・・の範囲内で記憶可能な始動記憶手段・・・と、・・・を備え」「前記報知手段は、前記乱数抽出手段による抽出結果に基づいて前記始動記憶手段に記憶されている始動権利に対する事前報知を行うようになっており、当該事前報知を、その事前報知の対象の始動権利について行われる変動表示ゲームより以前に実行されている変動表示ゲーム中に行う」との記載と合わせて、刊行物には、
「前記表示制御手段40に含まれる報知手段によって、変動表示ゲームの結果を事前に報知可能となっており、
変動表示ゲームでは、始動入賞口9への遊技球の入賞が成立すると、特別図柄表示装置4の表示部4aにおける左変動表示領域R1、中変動表示領域R2、右変動表示領域R3の各変動表示領域で、複数の図柄で構成された図柄列が変動開始するものであり、
前記変動表示ゲームの始動権利を所定の上限数の範囲内で記憶可能な始動記憶手段と、を備え、
前記報知手段は、変動表示ゲームの結果に対する事前報知において、事前報知条件の判定処理を行い、始動入賞口9に遊技球の入賞があってその始動権利が遊技制御装置20の始動記憶手段に記憶される際に、表示制御装置40の報知手段に表示制御信号の一部として入力されており、この報知手段に入力されている停止図柄データの中に当り(特別表示結果)となるものがあるかどうかを判定し、当該事前報知を、その事前報知の対象の始動権利について行われる変動表示ゲームより以前に実行されている変動表示ゲーム中に行う、
パチンコ遊技機100」
が記載されているものといえる。

(カ) (ウ)の【0075】?【0076】の「始動記憶の中に当りとなるものがある場合には、・・・20%の確率で事前報知条件を成立させ」「始動記憶の中に当りとなるものがない場合には、・・・5%の確率で事前報知条件を成立させ」、【0077】?【0078】の「事前報知条件の判定処理が終了すると、事前報知条件が成立しているか否かの判定を行」い、「事前報知条件が成立している場合は、・・・事前報知が可能なチャンスタイム・・・の開始とな」り、【0079】?【0080】の「画面上部に「チャンスタイム!!」という文字情報G5が表示され」「画面下部の始動権利表示マーク」「1番左側の・・・始動権利表示マークG1の所に事前報知を行うための演出画像として消しゴムKが表示され」「遊技者が操作部(操作ボタン)200の操作を行う・・・と・・・、・・・消しゴムKが黒丸マークの黒色を消すような動作を行い、・・・黒丸マークの下に隠れていた事前報知の表示が現れ」「G1で表す始動権利は「外れ」と表示され、1番左側の始動権利・・・に対する変動表示ゲームの結果・・・が外れであることが事前報知され」という記載から、刊行物には、
「始動記憶の中に当りとなるものがある場合には、20%の確率で事前報知条件を成立させ、始動記憶の中に当りとなるものがない場合には、5%の確率で事前報知条件を成立させ、事前報知条件の判定処理が終了すると、事前報知条件が成立しているか否かの判定を行い、事前報知条件が成立している場合は、事前報知が可能なチャンスタイムの開始となり、画面上部に「チャンスタイム!!」という文字情報G5が表示され、1番左側の画面下部の始動権利表示マークG1の所に事前報知を行うための演出画像として消しゴムKが表示され、遊技者が操作部(操作ボタン)200の操作を行うと、消しゴムKが黒丸マークの黒色を消すような動作を行い、消しゴムKが黒丸マークの下に隠れていた事前報知の表示が現れ、G1で表す始動権利は「外れ」と表示され、1番左側の始動権利に対する変動表示ゲームの結果が外れであることが事前報知され」ること、
が記載されているものといえる。

上記の記載事項(ア)?(ウ)及び認定事項(エ)?(カ)から、刊行物には、

「前面枠111の前側上半部におけるガラス板の奥側には遊技領域1aを構成する遊技盤1が設置され、遊技領域1aでは、始動入賞口への遊技球の入賞に基づき変動表示ゲーム(ここでは特別変動表示ゲーム)を表示する変動表示装置としての特別図柄(特図)表示装置4が設けられ、変動表示装置(特別図柄表示装置)4は、液晶表示装置からなる表示部4aを備え、前記変動表示装置4の表示部4aに始動権利表示マークが表示され、前面下部には上皿ユニット130が設けられ、前記上皿ユニット130の左端部に、遊技者が操作する操作手段(ここでは、操作ボタン)200であって、操作信号を発生する操作手段が設けられ、特別図柄表示装置(変動表示装置)4の表示部4aの表示制御を行うものであり、報知手段を含んでいる表示制御装置40が設置されたパチンコ遊技機100であって、(認定事項(エ)より)
前記表示制御手段40に含まれる報知手段によって、変動表示ゲームの結果を事前に報知可能となっており、
変動表示ゲームでは、始動入賞口9への遊技球の入賞が成立すると、特別図柄表示装置4の表示部4aにおける左変動表示領域R1、中変動表示領域R2、右変動表示領域R3の各変動表示領域で、複数の図柄で構成された図柄列が変動開始するものであり、
前記変動表示ゲームの始動権利を所定の上限数の範囲内で記憶可能な始動記憶手段と、を備え、
前記報知手段は、変動表示ゲームの結果に対する事前報知において、事前報知条件の判定処理を行い、始動入賞口9に遊技球の入賞があってその始動権利が遊技制御装置20の始動記憶手段に記憶される際に、表示制御装置40の報知手段に表示制御信号の一部として入力されており、この報知手段に入力されている停止図柄データの中に当り(特別表示結果)となるものがあるかどうかを判定し、当該事前報知を、その事前報知の対象の始動権利について行われる変動表示ゲームより以前に実行されている変動表示ゲーム中に行い、(認定事項(オ)より)
始動記憶の中に当りとなるものがある場合には、20%の確率で事前報知条件を成立させ、始動記憶の中に当りとなるものがない場合には、5%の確率で事前報知条件を成立させ、事前報知条件の判定処理が終了すると、事前報知条件が成立しているか否かの判定を行い、事前報知条件が成立している場合は、事前報知が可能なチャンスタイムの開始となり、画面上部に「チャンスタイム!!」という文字情報G5が表示され、1番左側の画面下部の始動権利表示マークG1の所に事前報知を行うための演出画像として消しゴムKが表示され、遊技者が操作部(操作ボタン)200の操作を行うと、消しゴムKが黒丸マークの黒色を消すような動作を行い、消しゴムKが黒丸マークの下に隠れていた事前報知の表示が現れ、G1で表す始動権利は「外れ」と表示され、1番左側の始動権利に対する変動表示ゲームの結果が外れであることが事前報知される、(認定事項(カ)より)
パチンコ遊技機100」

の発明(以下、刊行物発明という)が記載されているものと認められる。

4.本願発明と刊行物発明との対比及び判断
本願発明と刊行物発明とを対比する。(記号は本願発明の発明特定事項に対応させて付した)

(A) 刊行物発明における「始動入賞口への遊技球の入賞に基づき変動表示ゲーム(ここでは特別変動表示ゲーム)を表示する変動表示装置としての特別図柄(特図)表示装置4が設けられ、変動表示装置(特別図柄表示装置)4は、液晶表示装置からなる表示部4aを備え」た「パチンコ遊技機100」について、上記「特別図柄表示装置4」の「液晶表示装置からなる表示部4a」は、「始動入賞口」「への遊技球の入賞が成立すると、特別図柄表示装置4の表示部4aにおける左変動表示領域R1、中変動表示領域R2、右変動表示領域R3の各変動表示領域で、複数の図柄で構成された図柄列が変動開始するものであ」ることから、複数の表示領域で、複数の図柄で構成された図柄列が変動開始するということができ、「複数の識別情報を変動表示する」といえる。
そうすると、刊行物発明の上記「パチンコ遊技機100」は、本願発明の発明特定事項Aである「始動入賞領域への遊技球の入賞に基づき、複数の識別情報を変動表示する変動表示ゲームを表示する表示装置を備える遊技機」に相当する。

(B) 刊行物発明における「前記変動表示ゲームの始動権利を所定の上限数の範囲内で記憶可能な始動記憶手段」は、「変動表示ゲーム(ここでは特別変動表示ゲーム)」が「始動入賞口への遊技球の入賞に基づ」くことから、本願発明の発明特定事項Bである「前記始動入賞領域への遊技球の入賞に基づき前記変動表示ゲームの実行権利を始動記憶として所定の上限数まで記憶する始動記憶手段」に相当する。

(C) 刊行物発明における「前記報知手段は、変動表示ゲームの結果に対する事前報知において、事前報知条件の判定処理を行」うことについて、当該判定処理において「始動入賞口9に遊技球の入賞があってその始動権利が遊技制御装置20の始動記憶手段に記憶される際に、表示制御装置40の報知手段に表示制御信号の一部として入力されており、この報知手段に入力されている停止図柄データの中に当り(特別表示結果)となるものがあるかどうかを判定」するものであり、「当該事前報知を、その事前報知の対象の始動権利について行われる変動表示ゲームより以前に実行されている変動表示ゲーム中に行」うことから、当該事前報知は明らかに「事前報知の対象の始動権利について行われる変動表示ゲームより以前に実行される」といえる。
そうすると、刊行物発明の上記「変動表示ゲームの結果に対する事前報知において、事前報知条件の判定処理を行」う「報知手段」は、本願発明の発明特定事項Cである「前記始動記憶に対応する変動表示ゲームの結果に関する情報を、前記対応する変動表示ゲームの実行前に判定する事前判定手段」に相当する。

(D) 刊行物発明における「遊技者が操作する操作手段(ここでは、操作ボタン)200であって、操作信号を発生する操作手段」は、本願発明の発明特定事項Dである「遊技者の操作に応じて操作信号を発生可能な操作手段」に相当する。

(E) 刊行物発明における「1番左側の画面下部の始動権利表示マークG1の所に事前報知を行うための演出画像として消しゴムKが表示され」ることについて、該「事前報知を行うための」「消しゴムKが表示され」たときは、「事前報知条件が成立している場合」であるが、該条件が成立しているかどうかは、「始動記憶の中に当たりとなるものがある」という結果に基づいていることから、刊行物発明における「1番左側の画面下部の始動権利表示マークG1」、「事前報知を行うための演出画像として」の「消しゴムK」、は、本願発明の「前記始動記憶手段に記憶されている始動記憶に対応する表示」、「事前判定手段の判定結果に基づいて、対応する変動表示ゲームの実行前に」表示装置に表示される「特定画像」、にそれぞれ相当する。
さらに、刊行物発明は「前記変動表示装置4の表示部4aに始動権利表示マークが表示され」、「特別図柄表示装置(変動表示装置)4の表示部4aの表示制御を行うものであり、報知手段を含んでいる表示制御装置40が設置され」ていることから、該「表示制御装置40」は、本願発明の発明特定事項Eである「前記始動記憶手段に記憶されている始動記憶に対応する表示を前記表示装置にさせると共に、前記事前判定手段の判定結果に基づいて、前記対応する変動表示ゲームの実行前に特定画像を前記表示装置に表示させる制御手段」に相当する。

(E-1) 刊行物発明における「1番左側の始動権利表示マークG1の所に事前報知を行うための演出画像として消しゴムKが表示され、遊技者が操作部(操作ボタン)200の操作を行うと、消しゴムKが黒丸マークの黒色を消すような動作を行い、消しゴムKが黒丸マークの下に隠れていた事前報知の表示が現れ、G1で表す始動権利は「外れ」と表示され、1番左側の始動権利に対する変動表示ゲームの結果が外れであることが事前報知される」ことについて、「遊技者が操作部(操作ボタン)200の操作を行うと、」「消しゴムKが黒丸マークの黒色を消すような動作を行」うことは、本願発明の発明特定事項(E-1)である「事前結果判定手段の判定結果と、前記操作手段の操作信号とに応じて、前記始動記憶の表示と前記特定画像に関連する演出表示」に相当し、これらの表示を行う「表示制御装置40」は、本願発明の「制御手段」に相当する。

以上のことから、本願発明と刊行物発明は、

「始動入賞領域への遊技球の入賞に基づき、複数の識別情報を変動表示する変動表示ゲームを表示する表示装置を備える遊技機において、
前記始動入賞領域への遊技球の入賞に基づき前記変動表示ゲームの実行権利を始動記憶として所定の上限数まで記憶する始動記憶手段と、
前記始動記憶に対応する変動表示ゲームの結果に関する情報を、前記対応する変動表示ゲームの実行前に判定する事前判定手段と、
遊技者の操作に応じて操作信号を発生可能な操作手段と、
前記始動記憶手段に記憶されている始動記憶に対応する表示を前記表示装置にさせると共に、前記事前判定手段の判定結果に基づいて、前記対応する変動表示ゲームの実行前に特定画像を前記表示装置に表示させる制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記事前判定手段の判定結果と、前記操作手段の操作信号とに応じて、前記始動記憶の表示と前記特定画像に関連する演出表示を前記表示装置に表示させる
ことを特徴とする遊技機。」

の点で一致し、相違点はない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物発明と同一の発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶されるべきものである。
 
審理終結日 2018-08-16 
結審通知日 2018-08-21 
審決日 2018-09-03 
出願番号 特願2012-156789(P2012-156789)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 芝沼 隆太澤田 真治  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 ▲高▼橋 祐介
川崎 優
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人後藤特許事務所  

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